【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 理 由 被告人A弁護人入江清上告趣意は、「一、現今弾劾式刑事訴訟ニ於テハ糺問主義 ニ則リ刑事々件処理ニ当ツテ其ノ採証ノ法則ハ証拠
主文 本件上告を棄却する。 理由 被告人A弁護人入江清上告趣意は、「一、現今弾劾式刑事訴訟ニ於テハ糺問主義ニ則リ刑事々件処理ニ当ツテ其ノ採証ノ法則ハ証拠ノ取捨選択ヲ一ニ審判裁判所ノ専権ニ委ネ之ヲ攻撃ス上告理由ハ「云々ー詮スルニ本件上告理由ハ裁判所ノ専権ニ属スル採証ノ法則ヲ云々スルモノニシテ到底採用ニ値セズ結局論旨理由ナキニ帰ス」ト云フガ如キ陳腐ニ付シタル言辞ニテ殆ド悉クガ排斥セラレ居ルガ今日ハ已ニ新憲法モ施行セラレ刑事訴訟法ノ応急措置ニ関スル法律第二条ニ依レバ刑事訴訟法ハ日本憲法裁判所法及ビ検察庁法ノ制定ノ趣旨ニ適合スル様ニ之ヲ解釈セネバナラヌト規定シテ解釈ノ原則ヲ示シタノデアルガ之ニ依ツテ裁判所ニ於テモ之レマデニ於テ最モ堅城デアツタ採証ノ法則ニ付テモ自ラ新憲法ノ人権尊重ノ意味アラシテ被告人ノ人権擁護ノ為メナラバ自ラ其ノ考へ方ヲ急角度ニ変ヘネバナラヌ時代ガ到来シタデハナイカト思ハレル、二、凡ソ犯罪ハ人ノ精神界ノ現象ガ外界ニ発動シテ行為トナリ結果ノ成不成ヲ決スルノデアルガ行為ノ結果ニ対スル採証ハ外界的事象ニ属シ人証物証書証等外部的証拠ニ依ツテ内部精神的挙証ニ比較シテ容易ニ立証出来テ事実ノ真相ニ近接スル事ガ出来ルガ一面犯罪構成要素タル犯意即チ精神界ノ事象ニ付テハ被告人自身ノ自白アルモ其ノ精神鑑定ニ依ルノ外現代ノ科学上其ノ真実ヲ把握スル事ハ何人ニモ出来得ナイト思フ此ノ故ニ刑事訴訟法上鑑定ハ他ノ証拠調ベト異リ特異ノ存在ニシテ最重要ナル事項ニ属シ之ガ申請アリタル場合ニ於テハ他ノ外部的証拠ト異リ裁判所ニ於テハ最モ厳粛ナル態度ヲ以テ之ガ審理ニ臨マルバキモノト思フ殊ニ本件ノ如ク一杯気嫌デ偶発的ニ人ヲ殺害スル如キ平常人ノ夢想ダニセザル重大ナル犯罪事件ニ付テハ何アツテ被告人ノ精神鑑定ノ挙ニ先ヅ出デザリシカ即チ モ厳粛ナル態度ヲ以テ之ガ審理ニ臨マルバキモノト思フ殊ニ本件ノ如ク一杯気嫌デ偶発的ニ人ヲ殺害スル如キ平常人ノ夢想ダニセザル重大ナル犯罪事件ニ付テハ何アツテ被告人ノ精神鑑定ノ挙ニ先ヅ出デザリシカ即チ被告人ノ行為ハ心神喪失或ハ耗弱中或ハ先天的或ハ後天的精神病者ノ行為ナルヤ否- 1 -ヤヲ先ヅ第一ニ徹底的ニ究明シテ而シテ後犯罪帰責ヲ明ニスルハ只ニ鑑定ノ妙蹄ナルノミナラズ之ハ被告人ノ公正ナル裁判ヲ受クルノ権利ニ属シ新憲法ニ於テハ人権尊重ノ精神ニ添フ司法運用ノ妙所ナリト思フ、三、然ルニ本件ハ原審以来被告人ノ精神鑑定ヲ引続キ申請シ来リタル事ハ一件記録上明ニナツテ居ルガ其事ニ付テハ悉ク排斥セラレテ居ル事ハ判決理由中ニモ記サレテ居リ又記録編綴ノ鑑定不許可ノ決定書ニモソウナツテ居ル此事ハ被告人ノ本件ニ付テ最モ利益トスル証拠云ハバ被告人ノ法律上ノ権利ヲ排斥セラレタノデアツテ今日人権尊重ノ新憲法ノ精神ニ背馳スルモノト思フ今日如何ナル裁判ニ於テモ本件ノ如キ発作的精神発動ニ基ク行為ハ鑑定ノ結果ヲ待ツタ上デナクテハ断定シ得マイ裁判所ガ本件ノ如ク決定書ニアル如ク検事ノ意見ヲ聴イタダケデ直ニ其ノ精神状態ガ完全カ不完全カ判ル様テハ簡単デアツテ鑑定ノ必要ハドコニモナイト思フ本弁護人ノ聴ク処ニ依レバ本件被告人ハ遺伝的精神病者ト聞イテ居ルガ其ノ真否ハ知ラナイガ其点事実ナルカ否カ猶ホ其ノ因ツテ来ル原因等ニ付テハ昭和二十一年十一月十二日福岡控訴院ニ呈出昭和二十一年五月十二日熊本地方裁判所ニ呈出各鑑定申請書(記録添付)モ御参考ニ御覧願ヒマス右ノ次第デ鑑定ノ結果本件被告人が心神喪失者デアルカ否カ帰責ノ問題ハ重大デアツテ精神病者ナラバ刑罰ヲ科スル又問題デアリ彼是御詮議ノ上相当ノ御裁判アラン事ヲ希フ」というにある。 本件再上告は、昭和二十二年十月二十二日東京高等裁判所が上告審として言 カ否カ帰責ノ問題ハ重大デアツテ精神病者ナラバ刑罰ヲ科スル又問題デアリ彼是御詮議ノ上相当ノ御裁判アラン事ヲ希フ」というにある。 本件再上告は、昭和二十二年十月二十二日東京高等裁判所が上告審として言渡した上告棄却の判決に対し刑訴応急措置法第十七条に基ずいて申立てたものである。 憲法第八十一条が「最高裁判所は一切の法律、命令、規則叉は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」と規定しているのに対応して、前記法条は高等裁判所が上告審としてした判決であつても、その判決において法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかについて判断をした場合にその判断が不当であることを理由とするときに限り、違憲審査につき最終決定権- 2 -を有する最高裁判所に更に上告することを許し、その最終審判を受けることを得せしめたものである。それ故、高等裁判所がその判決において右の判断をしていないとき又はその判断が不当であることを理由としないときは、最高裁判所に再上告をすることができないことは言うまでもない。然るに、本件再上告人は、さきに東京高等裁判所の上告審において只事実誤認又は量刑不当を主張したのみで毫も憲法適否の判断を求めた事実もなく従つてまた同裁判所の判決においても憲法適否の点について全然判断をしていない。それのみならず、本件再上告の理由においても憲法適否の判断が不当であることを主張していないのである。それ故、本件再上告の申立は、許容することができない。 よつて刑事訴訟法第四百四十六条により主文のとおり判決する。 この判決は裁判官全員の一致した意見である。 検察官下秀雄関与昭和二十三年二月十二日最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官斎藤悠輔裁判官 一致した意見である。 検察官下秀雄関与昭和二十三年二月十二日最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官斎藤悠輔裁判官沢田竹治郎裁判官真野毅裁判官岩松三郎- 3 -
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