○ 主文控訴人Aの、主たる請求中差押処分の取消を求める部分に対する控訴を棄却する。控訴人らの主たる請求中差押処分の無効を求める部分に対する原判決を取消す。被控訴人が、昭和三七年一一月二〇日なした控訴人Aに対する昭和三五年分所得税の賦課処分、並びに同日なした控訴人Bに対する同年分所得税賦課処分中、本税については金五二、五〇〇円、加算税については金一三、〇九六円を各超える部分はいずれも無効であることを確認する。控訴人Aの予備的請求につき、被控訴人が、控訴人Aに対し、別紙第二目録記載の不動産につき昭和三八年六月二六日なした差押処分は無効であることを確認する。訴訟費用は第一、二審を通じて被控訴人の負担とする。○ 事実控訴人ら代理人は、「原判決を取消す。第一、主たる請求(二)被控訴人が昭和三七年一一月二〇日なした控訴人Aに対する昭和三五年分所得税の賦課処分、並びに右同日なした控訴人Bに対する同年分所得税賦課処分中、本税については金五二、五〇〇円、加算税については金一三、〇九六円を各超える部分はいずれも無効であることを確認する。(二)被控訴人が控訴人A所有の別紙第二目録記載の不動産に対して昭和三八年六月二六日なした差押処分はこれを取消す。(三)訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。第二、予備的請求、主たる請求の(二)が認められないときは、被控訴人が控訴人Aに対し、同人所有の別紙第二目録記載の不動産につき昭和三八年六月二六日なした差押処分は無効であることを確認する。」との判決を求め、被控訴人指定代理人は控訴棄却の判決を求めた。当事者双方の主張および証拠関係は、次のとおり付加するほか、原判決事実摘示と同一(ただし、原判決中「年度所得税」とあるを「年分所得税」と、同六枚目表四行目「昭和三〇年」とあるのは「昭和三二年」と、同一〇枚目表五行目 および証拠関係は、次のとおり付加するほか、原判決事実摘示と同一(ただし、原判決中「年度所得税」とあるを「年分所得税」と、同六枚目表四行目「昭和三〇年」とあるのは「昭和三二年」と、同一〇枚目表五行目から六行目および一二枚目表八行目ならびに同一五枚目表七行目に「昭和三七年度」とあるをいずれも「昭和三五年分」と、それぞれ訂正する)であるから、ここにこれを引用する。 は「昭和三二年」と、同一〇枚目表五行目 および証拠関係は、次のとおり付加するほか、原判決事実摘示と同一(ただし、原判決中「年度所得税」とあるを「年分所得税」と、同六枚目表四行目「昭和三〇年」とあるのは「昭和三二年」と、同一〇枚目表五行目から六行目および一二枚目表八行目ならびに同一五枚目表七行目に「昭和三七年度」とあるをいずれも「昭和三五年分」と、それぞれ訂正する)であるから、ここにこれを引用する。控訴代理人は請求原因の補充として次のとおり述べ、かつ被控訴人の法律上の主張は全部争うと述べた。一、およそ行政処分が無効といゝ得るためにはその瑕疵が重大かつ明白であることを要し、その明白とは処分要件の存在を肯定する処分庁の認定の誤りであることが外形上客観的に明白であることを要するとしても、本件は、その瑕疵が外形上客観的に明白な場合に該当する。その理由は次のとおりである。(一) 控訴人Aは本件課税処分に先だつ調査の段階で被控訴人の呼出しに応じ出頭して事の次第を述べている。また、本件各物件の実質的所有者たる訴外Cも出頭して事情を述べているので被控訴人は課税処分前に瑕疵の存在を知つていたはずである。したがつて、瑕疵に客観的に明白であつたというべきである。(二) かりに控訴人らが出頭しなかつたとしても、本件処分の瑕疵の原因たる不動産所有権が何人に帰属するかということは別段難かしいことではなく、特に権限ある国家機関の判断をまつて初めて判明するといつたようなものでもなく、まさに何人の判断によつても容易に判明する事実なのである。(三) 行政処分の瑕疵が客観的に明白である場合には、処分要件の存否に関する行政庁の判断が格別の調査をまつまでもなくなにびとの目にも明白な誤りと認められる場合のみならず、行政庁に当然要求される程度の調査によつて判明すべき事実関係に照らして、明らかに誤認と認められるような 行政庁の判断が格別の調査をまつまでもなくなにびとの目にも明白な誤りと認められる場合のみならず、行政庁に当然要求される程度の調査によつて判明すべき事実関係に照らして、明らかに誤認と認められるような場合をも包合すると解せられるところ、本件についても被控訴人が譲受入側の調査と同様の調査を控訴人A及びCになすことによつて容易に判明したことも明らかである。二、被控訴人主張の事実は争う。被控訴指定代理人は次のとおり述べた。 格別の調査をまつまでもなくなにびとの目にも明白な誤りと認められる場合のみならず、行政庁に当然要求される程度の調査によつて判明すべき事実関係に照らして、明らかに誤認と認められるような場合をも包合すると解せられるところ、本件についても被控訴人が譲受入側の調査と同様の調査を控訴人A及びCになすことによつて容易に判明したことも明らかである。二、被控訴人主張の事実は争う。被控訴指定代理人は次のとおり述べた。(一) 控訴人らは別紙第一目録記載(一)ないし(三)の物件(以下本件物件(一)ないし(三)と称する)の登記名義が控訴人らになつていた事実を知りながらこれを容認しており、しかも、右(一)(二)の土地を控訴人A名義をもつて売却されることをも了解していたものである。そのことは、次の事実から明らかである。(1) 控訴人らは昭和二八年頃Cに何らの担保を供することなく金三〇万円を貸付けていたが、Cの事業経営の悪化にともないCは債権者からの財産の隠匿とあいまつて、控訴人らからの借入金の担保の目的で、昭和二八年六月一〇日本件(一)(二)の土地につき、控訴人ら主張のとおりの仮登記をなした。このことはCの内妻D(控訴人Bの姉)を通じ控訴人らは了知している。本件建物につき、控訴人ら主張の登記をしたことについても、登記後承諾を得ている。すくなくとも控訴人Bに対しては固定資産税納税通知書が送達されているから同人は当然知悉している筈である。(2) Cは訴外Eから昭和三五年九月融資を受けるに際し、本件各物件を担保に提供したが、その際Eは控訴人ら宅に赴き、本件各物件の仮登記名義人あるいは所有名義人であつた控訴人らの了解を得ている。すくなくともその際、控訴人らは本件各物件の名義人であることを認識したはずである。(3) その後本件(一)の土地が売却された 各物件の仮登記名義人あるいは所有名義人であつた控訴人らの了解を得ている。すくなくともその際、控訴人らは本件各物件の名義人であることを認識したはずである。(3) その後本件(一)の土地が売却された際、買主の求めに応じ控訴人Aは売買代金の授受に立ち会い右土地が控訴人A名義で売買されることを了解し、Cが受取つた金を数えたり登記所まで同道したりしているのである。(4) 本件物件の所有権移転登記手続に使用された印鑑証明の控訴人Aの印鑑は、控訴人Aが横浜市<以下略>に転入した昭和三四年一二月一日の後たる昭和三五年三月二一日登録されているものであつて、同年九月一三日以降本件土地につきなされた登記の半年も前にCが控訴人A名義を冒用して登録したとするのは著しく経験則に反し、右印鑑登録は控訴人Aに無断でなされたとすることはできない以上、本件物件の譲渡その他契約関係書類に使用された印章を偽造されたと解する余地はない。 鑑証明の控訴人Aの印鑑は、控訴人Aが横浜市<以下略>に転入した昭和三四年一二月一日の後たる昭和三五年三月二一日登録されているものであつて、同年九月一三日以降本件土地につきなされた登記の半年も前にCが控訴人A名義を冒用して登録したとするのは著しく経験則に反し、右印鑑登録は控訴人Aに無断でなされたとすることはできない以上、本件物件の譲渡その他契約関係書類に使用された印章を偽造されたと解する余地はない。控訴人Bの印鑑登録は昭和三五年一月九日現住所に転入後の同年四月二三日なされ、右印鑑は昭和四七年七月一四日廃印届がなされ、他に登録印鑑はない。よつて、右登録は控訴人Bが自己の所有として訴外Fに対する譲渡を承認している原判決添付別紙第一目録(四)記載の土地につき昭和三五年五月六日所有権移転登記する必要に迫られたもので(登記に要する印鑑証明書の有効期間は三ヶ月であること(不動産登記法施行細則四四条)、及び居住者の登録印鑑につきなされる印鑑証明制度の趣旨からかく解するほかはない。)この印鑑をもつて、本件(三)の建物の登記がなされているもので、本件(三)の建物の売買契約書その他の関係書類に押捺された印章もまた、同一の印鑑によるものと推測される。したがつて、本件物件処分のため控訴人らの印章が偽造されたことはなく、したがつてまた、控訴人らは本件各物件が 物の売買契約書その他の関係書類に押捺された印章もまた、同一の印鑑によるものと推測される。したがつて、本件物件処分のため控訴人らの印章が偽造されたことはなく、したがつてまた、控訴人らは本件各物件が控訴人らの名義であることを知悉していたものというべきである。(5) 控訴人らは被控訴人の控訴人らに対する昭和三六年三月一〇日の第一回出署依頼から昭和三七年一一年二〇日控訴人に対する当該処分送達までの間、本件物件の譲渡について十二分の説明ないし立証を行わず、しかも控訴人Aは課税処分後昭和三七年一二月二一日付でなされた異議申立を、自ら後に取下げている。これらの事実は、控訴人らが本件各物件の譲渡を承認していることの証左とすべきである。(二) 控訴人らは登記上の表見的権利関係の存在によつて利益を享受していたものである。すなわち、前項(1)記載の貸付債権の残額一〇万円(二〇万円は昭和二九年頃までに返済されていた)のうち五万円は、本件土地代金のうちから、前項(3)記載の売買代金の授受に立会つた際、Cから控訴人Aに支払われていることからしてもこのことは明らかである。 は、控訴人らが本件各物件の譲渡を承認していることの証左とすべきである。(二) 控訴人らは登記上の表見的権利関係の存在によつて利益を享受していたものである。すなわち、前項(1)記載の貸付債権の残額一〇万円(二〇万円は昭和二九年頃までに返済されていた)のうち五万円は、本件土地代金のうちから、前項(3)記載の売買代金の授受に立会つた際、Cから控訴人Aに支払われていることからしてもこのことは明らかである。証拠として控訴代理人は甲第四号証、同第五号証の一ないし三を提出し、当審証人G、同Hの各証言ならびに当審における控訴人A本人尋問の結果(第一、二回)を援用し、乙第一一号証につき控訴人Aの署名およびその名下の印影が控訴人の印顆により顕出されたことは認め、その余の部分の成立は否認、その余の乙号各証の成立は認める、と述べ、被控訴人指定代理人は、乙第下ないし第一五号証を提出し、当審証人Eの証言を援用し、甲号各証の成立は認める、と述べた。○ 理由第一、本案前の抗弁について被控訴人の本案前の抗弁について、当裁判所も原判決中この部分の説示(原判決三枚目表一行目から四枚目裏五行目までと同様に判断するものであ 成立は認める、と述べた。○ 理由第一、本案前の抗弁について被控訴人の本案前の抗弁について、当裁判所も原判決中この部分の説示(原判決三枚目表一行目から四枚目裏五行目までと同様に判断するものであるから、ここにこれを引用する。第二、主たる請求についてつぎに、主たる請求中、控訴人らに対する課税処分の無効確認を求める部分につき判断する。一、被控訴人が昭和三七年一一月二〇日、本件物件(一)土地の控訴人A名義から訴外Iへの譲渡(昭和三五年一一月七日)、同(二)の土地の控訴人A名義から訴外Jへの譲渡(昭和三五年一二月二四日)、右(一)土地上の同(三)の建物の控訴人B名義から控訴人Aへの譲渡(昭和三五年九月二日)につき、控訴人らに昭和三五年中に譲渡所得を生じたとして、控訴人Aに対し昭和三五年分所得税一一一万八四八〇円、加算税二七万九五〇〇円、控訴人Bに対し、本件係争外の土地である別紙第一目録記載(四)の土地の譲渡をも含めて、昭和三五年分所得税八二万五七一〇円、加算税二〇万六二五〇円の賦課決定をしたこと、は当事者間に争いがない。二、原審証人Cの証言により真正に成立したことを認め得る甲第一号証の一、二、原本の存在とその成立に争いのない甲第一号証の三及び乙第一〇号証、成立に争いのない乙第三乃至第五号証、原審証人C、同I、同D、当審証人Hの各証言、原審および当審(第一、二回)における控訴人Aならびに原審における控訴人B各本人尋問の結果(但し控訴人ら本人の供述中後記信用しない部分を除く)を綜合すると、次のとおりの事実を認めることができる。 人Cの証言により真正に成立したことを認め得る甲第一号証の一、二、原本の存在とその成立に争いのない甲第一号証の三及び乙第一〇号証、成立に争いのない乙第三乃至第五号証、原審証人C、同I、同D、当審証人Hの各証言、原審および当審(第一、二回)における控訴人Aならびに原審における控訴人B各本人尋問の結果(但し控訴人ら本人の供述中後記信用しない部分を除く)を綜合すると、次のとおりの事実を認めることができる。控訴人Aと控訴人Bは夫婦で、Cは控訴人Bの異母姉Dの内縁の夫であるが、控訴人らは昭和二八年五月頃Dの要請により三〇万円を貸した。Cは当時電気関係の会社(お茶の水電気株式会社、後にゲルマン電気株式会社、さらに新ゲルマ は夫婦で、Cは控訴人Bの異母姉Dの内縁の夫であるが、控訴人らは昭和二八年五月頃Dの要請により三〇万円を貸した。Cは当時電気関係の会社(お茶の水電気株式会社、後にゲルマン電気株式会社、さらに新ゲルマン電気化学株式会社等と社名変更)を経営していたが、経営状態が悪く、Dに繋がる縁で控訴人らから借りた金もCの事業経営資金として使われた。本件(一)ないし(三)の物件は、真実はCの所有に属するものであつたが会社の名義となつており、しかもCは既に相当の借財もあつた。Dは、控訴人らからの借用金については証書も作成せず担保提供の話もなかつたが、借りた前記借金の担保にもなり、また債権者の差押も避けられるし、控訴人Aの旧姓片井広告名義にすれば控訴人Aに悪用される虞れもないと考えてCにこのことをすゝめたので、Cは控訴人らに無断で、本件(一)(二)の土地につき昭和二八年六月一〇日控訴人A名義に所有権移転請求権保全の仮登記をしておいた。その後Cの事業が思わしくなく、債権者に追求される虞れがあつたので、Dはせめて自己の居住していた建物を確保したいとCに頼み、Cは同(三)の建物につき昭和三二年一一月一三日控訴人B名義に所有権移転登記を経由した。その後Cは、自己の債務を返済するため右(一)(二)の土地を売却する必要に迫られ、なお、(一)の土地の売却には、同土地とその地上の右(三)の建物との所有名義人を同一にしておくことが有利と考えて、控訴人ら名義の印章を無断購入して印鑑登録をしたうえ、控訴人ら名義の売買契約書、登記申請書、委任状等を偽造、これを行使して、(一)の土地につき昭和三五年九月一三日控訴人Aに対する所有権移転の本登記を、(三)の建物につき同日控訴人Bから同控訴人Aに対する所有権移転登記を経由したうえ、(三)の建物な取毀す約束で(一)の土地を同年一〇月二八日代 三)の建物との所有名義人を同一にしておくことが有利と考えて、控訴人ら名義の印章を無断購入して印鑑登録をしたうえ、控訴人ら名義の売買契約書、登記申請書、委任状等を偽造、これを行使して、(一)の土地につき昭和三五年九月一三日控訴人Aに対する所有権移転の本登記を、(三)の建物につき同日控訴人Bから同控訴人Aに対する所有権移転登記を経由したうえ、(三)の建物な取毀す約束で(一)の土地を同年一〇月二八日代 三五年九月一三日控訴人Aに対する所有権移転の本登記を、(三)の建物につき同日控訴人Bから同控訴人Aに対する所有権移転登記を経由したうえ、(三)の建物な取毀す約束で(一)の土地を同年一〇月二八日代金八五〇万円でIに売り渡し、(三)の建物はその頃Cが取毀して控訴人A名義で昭和三五年一一月二九日取壊により建物の滅失の登記をなし、また(二)の土地につき同年一二月一三日控訴人Aに対する所有権移転の本登記を経由したうえ、同月二四日これを代金三九万五一〇〇円でJに売り渡した。被控訴人は、主として登記簿の記載に依拠して、これに買受人I、同Jに対し売買契約書、領収書等の提出を求めたり陳述を聴くなどいわゆる反面調査の結果を加え、さらに昭和三六年三月一〇日および同三七年九月二〇日の二回にわたり控訴人Aに出頭を求めたが応じなかつたとして、同年九月二六日控訴人らに対し昭和三五年分の譲渡所得の税額を通知したうえ、同三七年一一月二〇日本件の決定に及んだが、控訴人らからは適法な異議申立期間内にその申立てがなかつた。以上の事実を認めることができ、ほかに、右認定を左右するに足る証拠はない。三、以上の事実からすれば、本件(一)(二)の土地および(三)の建物につきなされた右各登記、ならびに本件(一)(二)の土地の売却は、いずれもCが控訴人らに無断でしたことで、控訴人らは本件(一)(二)の土地および(三)の建物のいずれについてもこれを所有したことはなく、したがつて、控訴人ら名義でなされたこれらの土地建物の譲渡のいずれについても、被控訴人主張の譲渡所得を生ずるに由ないものであつたということになる。四、したがつて、本件課税処分はその法定の処分要件を欠く過誤をおかしているといえるが、かかる課税処分の効力について考えると、このような処分要件を欠く行政処分については、まず、行政上の うことになる。四、したがつて、本件課税処分はその法定の処分要件を欠く過誤をおかしているといえるが、かかる課税処分の効力について考えると、このような処分要件を欠く行政処分については、まず、行政上の不服申立てをし、これが容れられなかつたときはじめて当該処分の取消しを訴求すべきものとされており、このような行政上、または司法上の救済手続のいずれにおいても、その不服申立てについては法定期間の遵守が要求され、その所定期間を徒過した後においては、もはや、当該処分の内容上の過誤を理由としてその効力を争うことはできないのが原則である。 いて考えると、このような処分要件を欠く行政処分については、まず、行政上の不服申立てをし、これが容れられなかつたときはじめて当該処分の取消しを訴求すべきものとされており、このような行政上、または司法上の救済手続のいずれにおいても、その不服申立てについては法定期間の遵守が要求され、その所定期間を徒過した後においては、もはや、当該処分の内容上の過誤を理由としてその効力を争うことはできないのが原則である。しかし、例外的には課税処分についても当然これを無効とすべき場合があり、無効な行政処分の表見的効力にもとずく執行等の行政措置の続けられることを防ぐ防訴訟的場合に無効確認訴訟の許されることは本案前の抗弁について説示したとおりである。そこで、如何なる場合に課税処分の当然無効を認めるかといえば、一般に、課税処分が課税庁と被課税者との間にのみ存するもので、処分の存在を信頼する第三者の保護を考慮する必要のないこと等を勘案すれば、当該処分における内容上の過誤が課税要件の根幹についてのそれであつて、徴税行政の安定とその円滑な運営の要請を斟酌してもなお、不服申立期間の徒過による不可争的効果の発生を理由として被課税者に右処分による不利益を甘受させることが、著しく不当と認められるような例外的な事情のある場合には、前記の過誤による瑕疵は、当該処分を当然無効ならしめるものと解するのが相当である。五、そこで、本件の具体的場合について検討すれば、本件課税処分は、前述したように課税要件を欠くものであるから課税要件の根幹についての重大な過誤をおかした瑕疵を帯有するものということができる。ついで、控訴人らにかかる瑕疵ある課税処分の不可争的効果による不利益 は、前述したように課税要件を欠くものであるから課税要件の根幹についての重大な過誤をおかした瑕疵を帯有するものということができる。ついで、控訴人らにかかる瑕疵ある課税処分の不可争的効果による不利益を甘受させることが著しく不当と認められるような例外的事情とは何かといえば、たとえば、控訴人らがCのなした上記各登記の経由過程について完全に無関係とはいえず、事後において明示または黙示的にこれを容認していたとか、又は表見的権利関係に基づいてなんらかの特別の利益を享受していた等の特段の事情のないことをいうと解せられる。六、よつて、進んで、右の特段の事情の存否について判断する。 の不可争的効果による不利益を甘受させることが著しく不当と認められるような例外的事情とは何かといえば、たとえば、控訴人らがCのなした上記各登記の経由過程について完全に無関係とはいえず、事後において明示または黙示的にこれを容認していたとか、又は表見的権利関係に基づいてなんらかの特別の利益を享受していた等の特段の事情のないことをいうと解せられる。六、よつて、進んで、右の特段の事情の存否について判断する。(一) まず、前記各登記手続が当初において、Cによつて控訴人らに無断で、その名義を冒用することによりなされたもので、控訴人らに全く関係なく経由されたことは、前記認定により明らかである。(二) 被控訴人は、控訴人らにおいて、Cがほしいまゝにした登記を事後的に容認していた旨主張するので、この点につき判断すると、原審証人Dは本件(一)(二)の土地につき控訴人A名義の仮登記をなした後間もなく控訴人Bに、控訴人A名義の登記をなしたことを告げた旨供述しているけれども、原審における控訴人B本人尋問の結果に照し措信し難く、また、本件(三)の建物が控訴人B名義になつた後、控訴人B宛てに固定資産税納税通知書が送達されたことを認めうる証拠はない。したがつて控訴人Bが本件(イ)の建物が自己名義をもつて登記されていることを知悉していたものと推認することができない。しかしながら、当審証人Eは、昭和三五年九月頃Cの依頼により本件(一)の土地を担保にしてCに金融をするに際し、Eは担保に提供された土地の名義が控訴人Aとなつているため名義人の同意を確認するため控訴人Aの自宅を訪問し確認を得た旨供述しているけれ Cの依頼により本件(一)の土地を担保にしてCに金融をするに際し、Eは担保に提供された土地の名義が控訴人Aとなつているため名義人の同意を確認するため控訴人Aの自宅を訪問し確認を得た旨供述しているけれども当審における控訴人A本人の供述(第二回)はEとの面識を否定しており、前記証人Eの証言によつても控訴人Aとの面識の有無については同人の記憶が必ずしも確実でないので、前記証人Eの証言もまた、記憶の正確さにおいて疑問の余地があるので、採用することができない。その他、被控訴人は、控訴人Aが本件(一)(二)の土地が自己の名義に登記されていたことを知悉していたことを裏付ける事情として、控訴人Aが本件(一)の土地の訴外Iとの売買契約のため売買代金の授受に立ち会い登記所まで同道したと主張し、原審証人I、同Cの各証言中には右主張にあう部分があり、不動産の売買において登記名義人である控訴人Aの立会を求めたことには十分合理性のあることと考えられるので右各証言は信用することができ、控訴人Aは売買代金の授受に立会い、登記所に同道した事実を認めることができる。 していたことを裏付ける事情として、控訴人Aが本件(一)の土地の訴外Iとの売買契約のため売買代金の授受に立ち会い登記所まで同道したと主張し、原審証人I、同Cの各証言中には右主張にあう部分があり、不動産の売買において登記名義人である控訴人Aの立会を求めたことには十分合理性のあることと考えられるので右各証言は信用することができ、控訴人Aは売買代金の授受に立会い、登記所に同道した事実を認めることができる。当審(第一回)および原審における控訴人A本人の供述中、右認定に反する部分は信用しない。けれども、前掲証人I、同Cの各証言および前掲控訴人本人供述の一部を綜合しても、控訴人AはDに頼まれて売買代金の授受や登記所に立会つたという以上に、あたかも本件(一)の土地の所有者として振舞い、売買取引において土地の所有者として、買主であるIと交渉を持つたり、なんらかの要求をしたような事実を認めることはできずほかに、これらの事実を認めることのできる証拠はない。却で原審並に当審における控訴人Aの本人尋問の結果、原審における控訴人Bの本人尋問の結果を綜合すると控訴人らは本件問題の売買についてCと一度も交渉を持つたことなく、従つて本 ることのできる証拠はない。却で原審並に当審における控訴人Aの本人尋問の結果、原審における控訴人Bの本人尋問の結果を綜合すると控訴人らは本件問題の売買についてCと一度も交渉を持つたことなく、従つて本件売買及び各登記のなされたことは全然知らず、昭和三七年六月改印届をするに当つてDらがA名義の印章を作成していた事実を知つたけれども右印章で本件登録がなされたことは気付かず、同年一一月の本件賦課処分の通知により始めてこれを知り、Dを通じてCらに善処方を申入れると共に直ちに税務署に出頭し本件各譲渡は控訴人らの全然関知しないところである旨を申出たものであることを認めることができる。然るときは、売買代金の授受のための登記所への同道の事実があつたとしてもそれをもつて、控訴人らが本件各物件が自己名義であることを知悉しながら容認していたことの証左とすることはできない。被控訴人はまた、本件(一)(二)の土地の本登記および移転登記手続に使用された控訴人Aの印章の印鑑登録が昭和三五年三月二一日になされていること、および、本件(三)の土地の移転登記に使用された控訴人B名義の印章の印鑑登録が昭和三五年四月二三日になされ、この印章は控訴人B所有の別紙第一目録記載(四)の土地の所有権移転登記手続に使用されたと推測されることから、経験則上控訴人らは本件各物件の各登記手続のなされたこと、したがつてまた、本件各物件が控訴人らの名義であつたことを知悉していたはずであると主張するけれども、Cが控訴人ら名義の印章を勝手に購入して印鑑登録をしたことは前記認定のとおりであり、成立について争いのない乙一五号証によると、本件(一)(二)の土地の登記手続に使用された印章が控訴人主張の時期に登録されたことが認められるけれども、右印鑑登録の時期と本件(一)(二)の登記に使用されるまで、期間があ こと、したがつてまた、本件各物件が控訴人らの名義であつたことを知悉していたはずであると主張するけれども、Cが控訴人ら名義の印章を勝手に購入して印鑑登録をしたことは前記認定のとおりであり、成立について争いのない乙一五号証によると、本件(一)(二)の土地の登記手続に使用された印章が控訴人主張の時期に登録されたことが認められるけれども、右印鑑登録の時期と本件(一)(二)の登記に使用されるまで、期間があ のない乙一五号証によると、本件(一)(二)の土地の登記手続に使用された印章が控訴人主張の時期に登録されたことが認められるけれども、右印鑑登録の時期と本件(一)(二)の登記に使用されるまで、期間があつたからといつて、そのことのみをもつて前記認定を覆えず資料となし得ないし、本件建物の登記手続に使用されたのと同一の印章が控訴人B所有の別紙第一目録記載(四)の土地の所有権移転登記手続について使用されたことを認めることのできる証拠はない。したがつて、被控訴人の前記主張を認めるに由なきものといわざるを得ない。かえつて、原審証人C、当審証人Gの各証言、当審(第一回)および原審における控訴人A本人の供述の一部によると、控訴人Aは本件課税処分のなされた昭和三七年一一月二〇日以前において、被控訴人の呼出に応じて税務署に赴き、Cもまた出頭して、本件各物件が実質的にCに帰属していた事情を述べていることが認められる。控訴人Aの署名部分およびその名下の印影が控訴人Aの印顆により顕出されたことに争いがないことにより成立を推定される乙第一一号証によると、控訴人Aは昭和三七年一二月二一日付で本件課税処分につき控訴人Aの提出した異議を、昭和三八年三月四日取下げていることが認められるけれども、当審(第一回)における控訴人A本人の供述の一部によると、控訴人Aが右意義申立を取下げたのは、担当者に異議申立の期間が過ぎているから取下げるよう勧奨されたので控訴人Aはそれに対し再び事情を述べたところ、「わかつた」と言われたのですべて解決と早呑込して取下げたことが認められるので、右異議申立の取下によつて、課税処分を承認し、名義人であつたことを容認していたものと解するのは相当ではない。以上要するに、控訴人らが、本件各物件につき控訴人ら名義をもつてなされた前記各登記を、事後において容認し 下によつて、課税処分を承認し、名義人であつたことを容認していたものと解するのは相当ではない。 事情を述べたところ、「わかつた」と言われたのですべて解決と早呑込して取下げたことが認められるので、右異議申立の取下によつて、課税処分を承認し、名義人であつたことを容認していたものと解するのは相当ではない。以上要するに、控訴人らが、本件各物件につき控訴人ら名義をもつてなされた前記各登記を、事後において容認し 下によつて、課税処分を承認し、名義人であつたことを容認していたものと解するのは相当ではない。以上要するに、控訴人らが、本件各物件につき控訴人ら名義をもつてなされた前記各登記を、事後において容認していたものとは認められない。(三」次に、被控訴人は、控訴人らが登記上の表見的権利関係の存在によつて利益を享受していたかどうかについて判断するに、前記認定の控訴人AのCに対する貸金残額五万円を、控訴人Aは本件(一)の土地の売買代金から支払いを受けたと主張し、前掲証人Cの証言中には右の主張にそう部分があるけれども、前記認定のように控訴人AはDに頼まれ代金の受領を確認するために登記所に行つたにすぎず、受取つた代金の一部から五万円を受取つたとしても昭和二八年五月に無理して好意的に貸した三〇万円の内金五万円を七年後に受取つたからといつて利益の享受には当らず、控訴人らが本件各物件の表見上の名義を利用して融資を受けたとか、債権回収のために売却をすゝめたり、前記五万円のほかに売却代金の配分を受けた等の利益を享受した事実を認めることのできる証拠がなく、控訴人らとしては要求すれば当然代金の中から一〇万円の弁済を受けられた筈であることを考え合わせると、控訴人らが本件各物件の表見的権利を利用して利益を享受したものと認めるのは相当ではない。七、以上の認定のとおり、特段の事情の認められない本件においては、結局、本件各課税処分はその根幹において瑕疵があり、かつ控訴人らに、瑕疵のある課税処分の不可争的効果による不利益を甘受させることが著しく不当と認められる例外的な場合に該当すると解せられるので、被控訴人の控訴人らに対する本件各課税処分は無効というべきである。もつとも、控訴人Bに対する課税、本税八二万五、七一〇円、加算税二〇万六、二五〇円中には同人所有の別紙第一目録記載(四 解せられるので、被控訴人の控訴人らに対する本件各課税処分は無効というべきである。もつとも、控訴人Bに対する課税、本税八二万五、七一〇円、加算税二〇万六、二五〇円中には同人所有の別紙第一目録記載(四)の物件の訴外Fに対する譲渡に対する課税も含まれるとして本税五万二、五〇〇円、加算税一万三〇九六円の部分は有効であることを自認しているところであり、被控訴人は、右(四)の物件に関する課税額が右金額を超えることについての主張立証をしていないので、被控訴人は右(四)の物件についての課税額が控訴人主張の額であることを明らかに争わないものと看做すべく、然るときは、本件課税処分の無効確認を求める控訴人らの請求は正当として認容すべきものと判断する。 も含まれるとして本税五万二、五〇〇円、加算税一万三〇九六円の部分は有効であることを自認しているところであり、被控訴人は、右(四)の物件に関する課税額が右金額を超えることについての主張立証をしていないので、被控訴人は右(四)の物件についての課税額が控訴人主張の額であることを明らかに争わないものと看做すべく、然るときは、本件課税処分の無効確認を求める控訴人らの請求は正当として認容すべきものと判断する。第三、予備的請求について次いで、予備的請求について判断すると、被控訴人が控訴人Aに対する本件課税処分に基づいて、同人所有の別紙第二目録記載の不動産に対し、昭和三八年六月二六日差押処分をなしたことは当事者間に争いなく、被控訴人の控訴人Aに対する本件課税処分が無効である以上、この課税処分に基いてなされた差押処分もまた無効であることは多言を要しないところである。第四、結語以上の次第であるから控訴人Aの主位的請求中差押処分の取消を求める部分について、請求を却下した原判決の判断は正当であるからこの部分に関する控訴人Aの控訴を棄却すべく、その余の請求について、右と判断を異にする原判決は不当で、控訴人らの本件控訴は理由があるから、原判決を取消すべく、民事訴訟法第三八四条、第三八六条、第九五条、第九六条、第九三条、第八九条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。(裁判官石田哲一小林定人野田愛子)別紙(省略) 主文 れ適用して、主文のとおり判決する。(裁判官石田哲一小林定人野田愛子) 別紙(省略)
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