令和7年6月27日宣告令和7年(わ)第471号判決【当事者の表示省略】上記の者に対する傷害被告事件について、当裁判所は、検察官大澤厳斗及び 同松木涼馬並びに私選弁護人金帝憲出席の上審理し、次のとおり判決する。 主文 被告人を懲役3年に処する。 未決勾留日数中30日をその刑に算入する。 この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、令和5年4月甲大学乙学部に入学したが、やがて、複数の学生からくさいなどと悪口を言われていじめを受けていると思うようになり、令和7年1月10日午前、また学生からいじめられたらこれで殴ってやろうと考えて 同学部の教室にあった金槌(令和7年立川支領第278号符号2)を持ち出し、これを上着のポケットに忍ばせて、同日午後3時40分頃から東京都町田市a町b番地甲大学乙学部c号館d教室で講義を受けていたところ、同教室内にいた学生らからくさいと言われた気がしたため、いじめを終わらせるためには同人らを前記金槌で殴るほかないと決意し、同日午後3時45分頃、前記d教室 において、第1 A(当時22歳)に対し、その頭部を前記金槌で1回殴る暴行を加え、よって、同人に全治まで約10日間を要する後頭部挫創の傷害を負わせた第2 B(当時20歳)に対し、その頭部を前記金槌で1回殴る暴行を加え、よって、同人に全治まで約10日間を要する頭部挫創の傷害を負わせた 第3 C(当時20歳)に対し、その頭部を前記金槌で1回殴る暴行を加え、 よって、同人に全治まで約7日間を要する頭部打撲の傷害を負わせた第4 D(当時19歳)に対し、その頭部等を前記金槌で複数回殴る暴行を加え、よって その頭部を前記金槌で1回殴る暴行を加え、 よって、同人に全治まで約7日間を要する頭部打撲の傷害を負わせた第4 D(当時19歳)に対し、その頭部等を前記金槌で複数回殴る暴行を加え、よって、同人に全治まで約10日間を要する頭部挫創、左手打撲の傷害を負わせた第5 E(当時20歳)に対し、その頭部を前記金槌で1回殴る暴行を加え、 よって、同人に全治まで約10日間を要する後頭部挫創の傷害を負わせた第6 F(当時21歳)に対し、その右腕等を前記金槌で複数回殴る暴行を加え、よって、同人に全治まで約14日間を要する右肘打撲傷、右肩関節打撲傷、右上腕筋挫傷等の傷害を負わせた第7 G(当時21歳)に対し、その頭部を前記金槌で1回殴る暴行を加え、 よって、同人に全治まで約10日間を要する頭部挫創の傷害を負わせた第8 H(当時22歳)に対し、その頭部等を前記金槌で複数回殴る暴行を加え、よって、同人に全治まで約7日間を要する頭部打撲、左第4・5指擦過傷の傷害を負わせたものである。 【証拠の標目省略】【法令の適用省略】(量刑の理由)当時大学2年生であった被告人は、判示の経緯で、講義中であった大学の教室内において、所携の金槌で学生8名を殴打し、傷害を負わせた。 犯行の態様は、多数の学生が講義を受けている中、無防備な被害者らに次々と襲いかかり、その頭部等を金槌で殴打したという危険で衝撃的なものであった。幸いにも、各被害者らに生じた傷害の程度はいずれも重傷にまでは至らなかったものの、突然、予想外の被害に遭った被害者らが受けた精神的打撃は大きく、「人が多くいる場所に行くのが怖くなった。」「誰かが自分の後ろに立 つのが怖くなった。」などと述べる者もおり、結果を軽視することはできない。 った被害者らが受けた精神的打撃は大きく、「人が多くいる場所に行くのが怖くなった。」「誰かが自分の後ろに立 つのが怖くなった。」などと述べる者もおり、結果を軽視することはできない。 経緯、動機をみると、被告人は、大学内でいじめを受けていると思い、大学側に相談するなどしても被告人が望むような対応をしてもらえなかったと感じたことから、判示のとおり本件犯行に及んだもので、関係証拠上、被告人が述べるいじめが全くなかったとはいえないが、そうであるからといって、本件犯行が正当化される余地はない。しかも、実際に被害にあった8名の学生は、いず れも被告人とは面識がないか、あまり接点のないものであって、被告人の悪口を言うなどした事実はなかった。客観的にみれば、経緯、動機に酌量の余地は見出せない。もっとも、捜査段階で実施された精神鑑定の結果によれば、被告人は、強迫性障害と自閉スペクトラム症を抱えており、その特性の影響により悪口を言われたという思いにとらわれ、本件行為がもたらす弊害を十分に予測 することもできなかった可能性が高い。上記精神障害は本件犯行に関する被告人の意思決定に(著しくはないが)かなりの程度影響を及ぼしていたと認められ、これにより、被告人に対する責任非難は相応に減弱するというべきである。 以上によれば、本件の犯情は良くなく、主文程度の懲役刑は免れないが、実刑をもって臨むほかないとはいえない。その他、被告人が事実を素直に認めて 真摯に反省し、被害者らに対し謝罪の言葉を述べていること、判示第1ないし第3、第6ないし第8の各被害者にそれぞれ20万円、判示第4の被害者に30万円、判示第5の被害者に25万円(合計175万円)を支払って被害者全員との間で示談を成立させ、いずれも、被告人を許し、刑事処罰を求めない旨書かれ 各被害者にそれぞれ20万円、判示第4の被害者に30万円、判示第5の被害者に25万円(合計175万円)を支払って被害者全員との間で示談を成立させ、いずれも、被告人を許し、刑事処罰を求めない旨書かれた書面を得ていること、被告人の母が、書面で、被告人を帰国させて監 督する旨申し出ていること、本邦における前科がないことなどを併せ考慮すると、刑の執行を猶予して、社会内で更生に努める機会を与えるのが相当である。 (求刑懲役3年)令和7年6月30日東京地方裁判所立川支部刑事第3部 裁判長裁判官中島経太 裁判官酒井孝之 裁判官長崎壮汰
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