平成22(行ウ)304 審査結果無効確認及びその損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成23年1月28日 東京地方裁判所
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平成23年1月28日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成22年(行ウ)第304号審査結果無効確認及びその損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成22年11月10日判決神奈川県大和市〈以下略〉原告 X東京都千代田区〈以下略〉被告国処分行政庁特許庁長官同指定代理人豊島英征同小倉栄同下田一博同平瀬知明同市川勉同天道正和主文 原告の無効等確認の訴え及び義務付けの訴えをいずれも却下する。 原告の損害賠償金の支払請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求 被告は,原告に対し,8946万円を支払え。 原告が千九百七十年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約に基づく国際出願(PCT/JP2006/307179)について平成18年8月18日にした国際予備審査の請求に対して,①特許庁審査官が作成し平成18年10月10日付けで送付した国際予備審査機関の見解書の請求の範囲21 及び22の進歩性についての見解に係る部分,及び②特許庁審査官が作成し平成19年7月3日付けで送付した国際予備審査報告書の請求の範囲9ないし13の進歩性についての見解に係る部分が無効であることを確認する。 特許庁長官は,①前項の国際予備審査機関の見解書及び国際予備審査報告書が無効である事実を認め,無効な審査結果によって原告が被った損害を賠償し,②特許庁審査官の特許法29条に基づく実体審査の る。 特許庁長官は,①前項の国際予備審査機関の見解書及び国際予備審査報告書が無効である事実を認め,無効な審査結果によって原告が被った損害を賠償し,②特許庁審査官の特許法29条に基づく実体審査の在り方,審査業務の取組姿勢を見直し,再発を防止せよ。 第2事案の概要 本件は,原告が千九百七十年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約(以下「PCT」という。)に基づき,特許庁長官に対し国際出願をし,その後,国際予備審査の請求をした原告が,特許庁審査官が作成した国際予備審査機関の見解書及び国際予備審査報告書は特許法29条に則さない無効な審査に基づくものであると主張して,被告に対し,①国家賠償法1条1項に基づき損害賠償金8946万円の支払を求め,②行政事件訴訟法36条,3条4項に基づき上記見解書及び報告書に係る審査結果が無効であることの確認を求めるとともに,③同法37条の3,3条6項2号に基づき,特許庁長官に対し,上記見解書及び報告書に係る審査結果が無効であることを認め,原告が被った損害を賠償し,特許庁審査官の特許法29条に基づく実体審査の在り方及び審査業務の取組姿勢を見直し,再発を防止することの義務付けを求める事案である。 前提となる事実(証拠等を掲記した事実を除き,当事者間に争いがない。)(1) 原告は,平成18年3月29日,平成17年4月18日を出願日とする特願2005-119427号を基礎とするパリ条約に基づく優先権を主張して,発明の名称を「微弱電流施療具」とする発明につき,特許庁長官に対し,PCTに基づく国際出願(国際出願番号:PCT/JP2006/307179。以下「本件国際出願」という。)をした。(乙4) (2) 特許庁審査官は,本件国際出願について国際調査報告及び国際調査機関の見解書を作成し,特許庁は 号:PCT/JP2006/307179。以下「本件国際出願」という。)をした。(乙4) (2) 特許庁審査官は,本件国際出願について国際調査報告及び国際調査機関の見解書を作成し,特許庁は,原告に対し,平成18年6月20日,これらの書類を送付した。(乙5,6)原告は,平成18年8月15日,世界知的所有権機関(WIPO)の国際事務局(以下「国際事務局」という。)に対し,PCT19条に基づく補正書を提出した。(乙7)(3) 原告は,平成18年8月18日,特許庁長官に対し,本件国際出願に係る国際予備審査の請求(以下「本件国際予備審査請求」という。)をした。(乙8)特許庁審査官は,本件国際予備審査請求の請求の範囲全28項のうち,請求の範囲20につき新規性が欠如し,また,全ての請求の範囲について進歩性が欠如する旨の見解を記載した国際予備審査機関の見解書(以下「本件見解書」という。)を作成し,特許庁は,平成18年10月10日,原告にこれを送付した。(乙9)(4) 本件見解書の送付を受け,原告は,平成18年11月7日,特許庁に対し,答弁書及び手続補正書を提出した。(乙10,11)原告は,特許庁に対し,平成19年1月30日,答弁書及び手続補正書を提出し,また,同年4月16日にも,答弁書及び手続補正書を提出した。(乙12~15)(5) 特許庁審査官は,平成19年6月13日,本件国際予備審査請求の請求の範囲全28項のうち,請求の範囲20につき新規性が欠如し,また,請求の範囲1~15,18,20,25~28について進歩性が欠如する旨の見解を記載した国際予備審査報告書(以下「本件報告書」という。)を作成し,特許庁は,同年7月3日,原告及び国際事務局にこれを送付した。(甲10,乙16)なお,請求の範囲5~13に係る上記各補正が出願時における た国際予備審査報告書(以下「本件報告書」という。)を作成し,特許庁は,同年7月3日,原告及び国際事務局にこれを送付した。(甲10,乙16)なお,請求の範囲5~13に係る上記各補正が出願時における開示の範囲 を超えてされたものと認められたため,本件報告書は,その補正がされなかったものとして作成されている。 (6) 原告は,日本以外の国の指定官庁(又は選択官庁)に本件国際出願の明細書及び請求の範囲等の翻訳文を提出していない。 争点 (1) 国家賠償法1条1項の違法の有無(争点1)(2) 損害の有無及び額(争点2)(3) 無効等確認の訴えの適法性(争点3)(4) 義務付けの訴えの適法性(争点4) 争点に関する当事者の主張(1) 争点1(国家賠償法1条1項の違法の有無)についてア原告の主張①特許庁審査官が,本件国際予備審査請求の請求の範囲21及び22について,特許法29条に則さない当業者には絶対になし得ない論理付けによって特許性(進歩性)がない旨の無効な審査をして本件見解書を作成し,平成18年10月10日,特許庁がこれを原告に送付した行為,及び②特許庁審査官が,本件国際予備審査請求の請求の範囲9ないし13について,特許法29条に則さない当業者には絶対になし得ない論理付けによって特許性(進歩性)がない旨の無効な審査をして本件報告書を作成し,平成19年7月3日,特許庁がこれを原告及び国際事務局に送付した行為は,特許庁審査官及び特許庁長官の法的職務義務に違反するものであり,国家賠償法1条1項の違法な行為である。 国内特許出願においては,本件国際予備審査請求の請求の範囲9ないし13,21及び22と全く同じ構成の発明につき,特許性ありとして登録査定がされていることからしても,本件見解書及び本件報告書における審査結果 出願においては,本件国際予備審査請求の請求の範囲9ないし13,21及び22と全く同じ構成の発明につき,特許性ありとして登録査定がされていることからしても,本件見解書及び本件報告書における審査結果が無効であることは明らかである。 イ被告の主張(ア) 国際予備審査は,PCT33条(1)に規定されるように,新規性,進歩性,産業上の利用可能性についての予備的なかつ拘束力のない見解を示すことを目的とするものであるから,国際予備審査機関の見解書及び国際予備審査報告に不服がある場合であっても,PCTの規定上,これらに対する不服申立ての申請をすることは許されておらず,不服のある者は,当該国際出願の国内移行の手続を行い選択国の国内出願とした上で,選択国の特許法の規定に従って行われる国内出願の審査の中で自己の主張をなすべきことが本来的に予定されている。このことは,国際予備審査機関の判断に法令違反等の瑕疵がある場合であっても同様であり,その瑕疵は,選択国の法律による不服申立制度によって是正されることが本来的に予定されているのである。 そして,国際予備審査機関による特許性の有無についての見解は,事柄の性質上,専門的知識と経験に基づく高度に技術的な判断であるから,国際予備審査を行う国際予備審査機関の各審査官の判断に一定の範囲で裁量が認められているということができ,このことを併せ考えれば,国際予備審査を担当した審査官が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と審査をして国際予備審査機関の見解書や国際予備審査報告書を作成したと認め得るような事情があり国家賠償法上違法と評価される場合としては,当該国際予備審査に法令違反の瑕疵が存在する場合のほか,国際予備審査当時に存在した資料に基づく審査官の判断が明らかに不合理と認められるなど,審査官が上記 り国家賠償法上違法と評価される場合としては,当該国際予備審査に法令違反の瑕疵が存在する場合のほか,国際予備審査当時に存在した資料に基づく審査官の判断が明らかに不合理と認められるなど,審査官が上記の裁量を逸脱ないし濫用し,違法な国際予備審査に対する救済を選択国における不服申立制度による是正にゆだねるものとするだけでは不相当と解されるような特別な事情がある場合に限られると解すべきである。 (イ) 国際予備審査機関の見解書には,国際予備審査機関の見解の根拠を十 分に記述するものとされている(特許協力条約に関する規則(以下「PCT規則」という。)66.2(b))。 本件見解書(乙9)の第Ⅴ欄「1.見解」には,請求の範囲21及び22は,いずれも新規性及び産業上の利用可能性はあるが,進歩性はないと記載されている。そして同欄「2.文献及び説明」には,見解の依拠する文献1ないし14(いずれも国内特許文献)が列挙されており,請求の範囲ごとに,見解の依拠する文献が特定され,新規性や進歩性を有しない理由が記載されている。 請求の範囲21について進歩性を有しないと判断した理由は,本件国際出願に係る発明である微弱電流施療具の基本構成を開示する先行技術たる文献8と本件の発明との差異を明らかにして,同じく圧電体を用いた発電装置の技術分野に属し,当該差異に係る本件の発明の構成を開示する先行技術たる文献13及び14に記載されている周知技術との組合せにより本件の発明が全体として自明であると評価するものである。 請求の範囲22について進歩性を有しないと判断した理由は,本件国際出願に係る発明である微弱電流施療具の基本構成を開示する先行技術たる文献9と本件の発明との差異を明らかにして,同じく圧電体を用いた発電装置の技術分野に属し,当該差異に係る本件の発明の構成を開示 国際出願に係る発明である微弱電流施療具の基本構成を開示する先行技術たる文献9と本件の発明との差異を明らかにして,同じく圧電体を用いた発電装置の技術分野に属し,当該差異に係る本件の発明の構成を開示する先行技術たる文献2,13及び14に記載されている周知技術との組合せにより本件の発明が全体として自明であると評価するものである。 したがって,本件見解書における請求の範囲21及び22の進歩性に関する判断は,PCT,PCT規則及びPCT国際調査及び予備審査ガイドライン(以下「ガイドライン」という。)に適合している。 (ウ) 国際予備審査報告には,PCT33条(2),(3)又は(4)に規定する新規性,進歩性又は産業上の利用可能性についての見解,当該見解に関連する技術に関する文献及び説明を記載しなければならないとされている (PCT35条(2),PCT規則70.6,70.7,70.8,特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律施行規則(以下「国際出願法規則」という。)56条1項7号,8号)。 本件報告書(乙16)の第V欄「1.見解」には,請求の範囲9ないし13については,いずれも新規性及び産業上の利用可能性はあるが,進歩性はないと記載されている。そして,同欄「2.文献及び説明」には,見解の依拠する文献1ないし11(国内特許文献10件,国際公開公報1件)が列挙されており,請求の範囲ごとに,見解の依拠する文献が特定され,新規性や進歩性を有しない理由が記載されている。 請求の範囲9ないし13について進歩性を有しないと判断した理由は,本件国際出願に係る発明である微弱電流施療具の基本構成を開示する先行技術たる文献1又は文献3と本件の発明との間の差異を明らかにして,同じく電流施療具の技術分野に属し,当該差異に係る本件の発明の構成を開示する先行技術たる である微弱電流施療具の基本構成を開示する先行技術たる文献1又は文献3と本件の発明との間の差異を明らかにして,同じく電流施療具の技術分野に属し,当該差異に係る本件の発明の構成を開示する先行技術たる文献5又は6のいずれかとの組合せにより,又は当業者の一般的技術知識を考慮することにより,本件の発明が全体として自明であると評価するものである。 したがって,本件報告書における請求の範囲9ないし13の進歩性に関する判断は,PCT,PCT規則及びガイドラインに適合している。 (エ) 本件見解書で列挙された文献1ないし14並びに本件報告書で列挙された文献1ないし11は,いずれも国内特許文献ないし国際公開公報であり,PCT規則64.1(a)で定義された「先行技術」に該当する。 本件報告書に示された文献3は,本件国際出願の優先日(2005(平成17)年4月18日)と国際出願日(2006(平成18)年3月29日)の間に公開されたもの(公開日:2005(平成17)年5月19日)であるところ,文献3は,国際出願日が基準日となる請求の範囲(5ないし13,15,18,20,25,27及び28)に係る発明(本件 報告書第Ⅱ欄3参照)ついての先行技術として列挙されたものであり,PCT規則64.1(a),(b)に適合している。 したがって,上記各文献は,いずれもPCT及びPCT規則に適合している。 (オ) 以上のとおり,本件国際出願の国際予備審査の方法は妥当なものであり,本件見解書及び本件報告書の内容がPCT,PCT規則,特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律(以下「国際出願法」という。),国際出願法規則等に適合したものであることは明らかであるから,国際予備審査を担当した特許庁審査官の審査に不適切な点はない。 よって,本件国際出願に係る国際予備審査にお (以下「国際出願法」という。),国際出願法規則等に適合したものであることは明らかであるから,国際予備審査を担当した特許庁審査官の審査に不適切な点はない。 よって,本件国際出願に係る国際予備審査において,特許庁審査官の審査がその裁量を濫用,逸脱したものでないことはもちろん,選択国の不服申立制度による国際予備審査の是正にゆだねるものとするだけでは不相当と解されるような特別な事情があるとは到底認めることができず,本件見解書を作成して原告に送付した行為及び本件報告書を作成して原告・国際事務局に送付した行為に国家賠償法1条1項の違法はない。 (カ) 原告は,請求の範囲9ないし13,21及び22に係る発明について,我が国の特許法に基づく特許査定を受けているにもかかわらず,本件国際予備審査において進歩性が認められなかったことをもって本件見解書及び本件報告書における上記各請求の範囲に係る審査結果が無効であると主張する。 しかしながら,進歩性の判断は,専門知識と経験に基づく高度に技術的な判断であり,かつ,「当該技術分野の専門家」にとって「先行技術」からみて「自明のもの」といえるか否かという審査官による価値判断を経て決定される要素に基づいてなされるものであるから(PCT33条(3)),仮に同じ発明についての判断であっても審査官によって判断が区々になることは十分に考えられるところである。 さらに,本件見解書において請求の範囲21及び22の進歩性に関する判断が依拠する文献(乙9)と同請求の範囲に係る発明と類似する発明である特願2006-154209号及び特願2006-040655号の進歩性に関する判断が依拠する文献(乙18及び19)は異なっており,また,本件報告書において請求の範囲9ないし13の進歩性に関する判断が依拠する文献(乙16)と 号及び特願2006-040655号の進歩性に関する判断が依拠する文献(乙18及び19)は異なっており,また,本件報告書において請求の範囲9ないし13の進歩性に関する判断が依拠する文献(乙16)と同請求の範囲に係る発明と類似する発明である特願2006-028210号の請求項1ないし5に係る発明の進歩性に関する判断が依拠する文献(乙17)も異なっているのであるから,その判断が区々になることは何ら不自然ではない。 したがって,原告の上記主張は本件見解書及び本件報告書における審査結果の無効を基礎付けるものではない。 (2) 争点2(損害の有無及び額)についてア原告の主張本件国際予備審査請求について,特許庁審査官が特許法29条に則さない無効な審査を行い,特許庁が無効な審査結果である本件見解書及び本件報告書を原告・国際事務局へ送付したため,原告は,本件国際出願につき国際特許権を取得することができず損害を被った。 原告が被った損害の額は,①本件国際出願の請求の範囲9ないし13に係る発明の実施品である「ピエゾ手袋」の諸外国における特許料53億4600万円(売上予想額1782億円×0.03)の1%である5346万円と,②本件国際出願の請求の範囲21に係る発明の実施品である「ピエゾ履き具」及び請求の範囲22に係る発明の実施品である「ピエゾ踏み台」の諸外国における特許料3600万円(各1800万円の合計)との合計8946万円である。 イ被告の主張(ア) 前記(1)イ(ア)のとおり,国際予備審査報告は,「予備的なかつ拘束力 のない見解」を示すものにすぎないから,国際予備審査報告に何らかの法的効力があるわけではなく,国際出願の出願人が後に権利を取得したい国際出願の選択国に国内移行をする際の判断資料となることがあり得るとしても,そのよ すものにすぎないから,国際予備審査報告に何らかの法的効力があるわけではなく,国際出願の出願人が後に権利を取得したい国際出願の選択国に国内移行をする際の判断資料となることがあり得るとしても,そのような効果は飽くまで事実上のものである。また,出願人に不利な内容の国際予備審査報告書が出願人の知らない間に作成されることを防ぎ,出願人が意見を述べる機会を確保することを目的として送付される国際予備審査機関の見解書にも何ら法的効力はなく,国際出願の選択国に国内移行をする際の判断資料となることも予定されていない。 原告は,本件国際出願について,本件見解書及び本件報告書の記載内容にかかわらず,選択国への国内移行の手続を行うことができたのに,自らの意思によりその手続を行わなかったのであるから,原告が,本件国際出願の選択国で本件国際出願に係る特許権を取得することができなかったのは,自らの意思により国内移行の手続を行わなかったからであり,本件見解書及び本件報告書の作成・送付との間に因果関係はない。 (イ) 原告主張の損害額は否認ないし争う。 (3) 争点3(無効等確認の訴えの適法性)についてア原告の主張前記(1)アのとおり,本件見解書における請求の範囲21及び22につき特許性がない旨の審査並びに本件報告書における請求の範囲9ないし13につき特許性がない旨の審査は,特許法29条に則さない当業者には絶対になし得ない論理付けによってなされた無効なものであるから,これらが無効であることの確認を求める。 イ被告の主張無効等確認の訴えは,「処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟」であるから,いわゆる処分性が必要となる(行政事件 訴訟法3条4項)。そして,「処分」とは,公権力の主体たる国又は公共団体 ,「処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟」であるから,いわゆる処分性が必要となる(行政事件 訴訟法3条4項)。そして,「処分」とは,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうものと解される。 国際予備審査報告は,PCTの締結国間における出願手続の簡素化を目的として定められた国際出願手続の中において,各国で特許権を付与するか否かを判断する各国の特許法に基づく手続の前に,出願人の請求により,国際予備審査機関が予備的なかつ拘束力のない見解を示すものであって,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法により認められているものではない。これは,国際予備審査報告書を作成する手続の中で出願人に反論の機会を与えるために作成される国際予備審査機関の見解書についても同様である。 したがって,本件見解書及び本件報告書は,無効等確認の対象である「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」,「審査請求,異議申立てその他の不服申立てに対する行政庁の裁決,決定その他の行為」のいずれにも該当しないことから,原告の無効等確認の訴えは訴訟要件を欠く不適法な訴えである。 (4) 争点4(義務付けの訴えの適法性)についてア原告の主張前記(1)アのとおり,本件見解書及び本件報告書における審査結果は無効であり,無効な審査結果が国際事務局に報告されれば,出願人である原告は国際特許権を取得することができなくなり損害が生じるのであるから,特許庁長官は,本件見解書及び本件報告書における審査結果が無効であることを認め,これにより原告が被った損害を賠償し,今後,特許庁審査官により無効な審査がされない きなくなり損害が生じるのであるから,特許庁長官は,本件見解書及び本件報告書における審査結果が無効であることを認め,これにより原告が被った損害を賠償し,今後,特許庁審査官により無効な審査がされないよう,特許庁審査官の特許法29条に基づく実体審査の在り方,審査業務の取組姿勢を見直して再発を防止するべきで あるにもかかわらず,何ら処分又は裁決をしない。 イ被告の主張原告が,特許庁長官に対して義務付けることを求める本件見解書及び本件報告書が無効である事実を認め,損害を賠償するという行為は,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものに該当せず,義務付けの訴えの対象である「処分又は裁決」(行政事件訴訟法3条6項柱書き)に該当しないことは明らかである。 また,特許庁長官に対して義務付けることを求める特許庁審査官の特許法29条に基づく実体審査の在り方,審査業務の取組姿勢を見直し,再発を防止するという行為は,行政庁に当該行為を求めることのできる法的根拠が全く明らかではなく,求めている行為の内容も一般的,抽象的なものであるから,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものではなく,義務付けの訴えの対象である「処分又は裁決」に該当しないことは明らかである。 したがって,原告の義務付けの訴えも訴訟要件を欠く不適法な訴えである。 第3当裁判所の判断 PCT,PCT規則及び関係法令によれば,PCTの目的及びPCT国際出願の手続の概要は,以下のとおりである。 (1) PCTの目的PCTに基づく国際出願(以下「PCT国際出願」という。)は,一つの出願願書をPCTに従って提出することにより,PCT加盟国である全ての国に同時に出願(国内出願)したのと同じ効果を与える出願制度であ PCTに基づく国際出願(以下「PCT国際出願」という。)は,一つの出願願書をPCTに従って提出することにより,PCT加盟国である全ての国に同時に出願(国内出願)したのと同じ効果を与える出願制度である。これは,締約国における出願手続や審査の簡素化等を目的とするものである(PCT前文,3条,11条(3))。 (2) PCT国際出願の手続の概要 PCT国際出願は,国際的な出願手続であり,実際にPCT国際出願に係る発明が締約国において特許を取得するためには,各国特許法所定の手続を経る必要がある。具体的には,優先日(PCT2条(xi))から30か月以内に,特許を取得したい国の指定官庁(又は選択官庁)(PCT2条(xⅲ),(xⅳ))に,PCT国際出願の明細書及び請求の範囲等の翻訳文を提出し,必要な手数料を支払う必要がある(PCT22条(1))。 上記翻訳文の提出後,例えば我が国の特許を取得するのであれば,我が国の特許法が定める手続に基づいて審査が行われ,特許査定(特許法51条)又は拒絶査定(同49条)がされることになる。 PCT国際出願を行ってから上記翻訳文を提出するまでのPCTに基づく手続の概要は以下のとおりである。 ア方式審査PCT国際出願は,国際的に統一された出願願書等の出願書類を,受理官庁(我が国においては特許庁)に所定の言語で作成し,提出する(PCT3条(4),PCT規則12.1)。 PCT国際出願を受理した受理官庁は,提出された出願書類がPCT条約所定の国際出願日認定のための要件(PCT11条(1))及び様式上の要件(PCT14条(1)(a))を満たしているかの方式審査を行う。 イ国際調査PCT国際出願は,すべて国際調査という先行技術調査に付される(PCT15条)。 国際調査を行う国際調査機関は,国際調査報告と共に,国際 (1)(a))を満たしているかの方式審査を行う。 イ国際調査PCT国際出願は,すべて国際調査という先行技術調査に付される(PCT15条)。 国際調査を行う国際調査機関は,国際調査報告と共に,国際調査機関の見解書(PCT規則43の2.1)を作成し,それらの写しを出願人及び国際事務局に送付する(PCT規則44.1)。国際調査機関の見解書は,後記エの国際予備審査(PCT31条以下)の過程において国際予備審査機関が作成する見解書と同様,PCT国際出願に係る発明が新規性,進歩 性及び産業上の利用可能性を備えているかについての国際調査機関の予備的なかつ拘束力のない見解を示すものであり,同じ基準に基づいて審査されるものである(PCT規則43の2.1(b)及び(c)参照)。 国際出願法8条1項は,特許庁長官は,国際出願につき,審査官に国際調査報告(PCT18条)を作成させなければならない旨規定している。 ウ国際公開PCT国際出願の内容は,優先日から18か月を経過した後速やかに,国際事務局によって,国際調査報告と共に統一的に公開(国際公開)される(PCT21条,PCT規則48.2)。また,国際出願は,国際調査報告と共に国際事務局が指定官庁に送達する(PCT20条)。 エ国際予備審査(ア) PCT国際出願は,出願人の請求により,国際予備審査の対象となる(PCT31条(1))。国際予備審査は,PCT国際出願に係る発明が新規性,進歩性及び産業上の利用可能性を有するものかどうかについて,国際予備審査機関による予備的なかつ拘束力のない見解を示すものであり(PCT33条(1)),その報告(国際予備審査報告)は国際事務局及び出願人に送付される(PCT規則71.1)。 この国際予備審査制度の目的は,PCT国際出願の出願人が,国際出願された発明の特許性 り(PCT33条(1)),その報告(国際予備審査報告)は国際事務局及び出願人に送付される(PCT規則71.1)。 この国際予備審査制度の目的は,PCT国際出願の出願人が,国際出願された発明の特許性に関する判断を国際調査機関の見解書に加えて入手することにより,あるいは国際出願の内容を補正し,特許性について否定的な見解を示した国際調査機関の見解書に対して応答等することにより,特許取得の可能性を精査し,コストの効率化及び適正化を図ることを可能にすることにある。 (イ) 国際予備審査に当たっては,当該国際出願の請求の範囲に記載されている発明が,所定の基準日に当該技術分野の専門家にとって規則に定義する先行技術からみて自明のものではない場合には,進歩性を有するも のとされている(PCT条約33条(3))。この「規則に定義する先行技術」とは,世界のいずれかの場所において書面による開示(図面その他の図解を含む。)によって公衆が利用することができるようにされているすべてのものであり(PCT規則64.1(a)),「基準日」とは,当該国際予備審査の対象である国際出願が先の出願に基づく優先権の有効な主張を伴う場合には,先の出願の日をいい,それ以外の場合には,当該国際予備審査の対象である国際出願の国際出願日をいう(PCT規則64.1(b))。 また,「自明のものではない」かどうかを判断するに際しては,個々の請求の範囲と先行技術全体との関係に考慮を払うとともに,請求の範囲と個々の文献又はその抜粋との関係のみでなく,個々の文献又はその抜粋の結合が当該技術分野の専門家にとって自明である場合には,請求の範囲とそのような結合との関係についても考慮を払うこととされている(PCT規則65.1)。 (ウ) 国際予備審査報告には,当該国際出願の請求の範囲に記載されて 専門家にとって自明である場合には,請求の範囲とそのような結合との関係についても考慮を払うこととされている(PCT規則65.1)。 (ウ) 国際予備審査報告には,当該国際出願の請求の範囲に記載されている発明がPCT33条(1)から(4)までに規定する新規性,進歩性(自明のものではないもの)及び産業上の利用可能性の基準に適合していると認められるかどうかを各請求の範囲について記述し,その記述の結論を裏付けると認められる文献を列記し,場合により必要な説明を付するとされており,当該国際出願の請求の範囲に記載されている発明がいずれかの国内法令により特許を受けることができる発明であるかどうか又は特許を受けることができる発明であると思われるかどうかの問題についてのいかなる陳述をも記載してはならないとされている(PCT35条(2))。 これは,国際予備審査の性格が予備的で,選択国を拘束しないものであることから,国際予備審査がいずれの国内法令からも独立し,PCT 33条に規定された要件によってのみ行われることを明らかにするものといえる。 (エ) 国際予備審査機関は,国際予備審査報告を作成し,これを国際事務局及び出願人に送付する(PCT35条(1),PCT規則71.1)。 (オ) 国際予備審査機関は,当該国際出願のいずれかの請求の範囲に記載されている発明が,新規性,進歩性(自明のものではないもの)又は産業上の利用可能性を有するものとは認められないため,当該請求の範囲について国際予備審査報告が否定的となると認めた場合等には,その旨を国際予備審査機関の見解及びその根拠を十分に記載した見解書で出願人に通知する(PCT規則66.2)。 通常,前記イのとおり,国際調査機関により見解書が作成されており,当該見解書は,国際予備審査機関の書面による見解 関の見解及びその根拠を十分に記載した見解書で出願人に通知する(PCT規則66.2)。 通常,前記イのとおり,国際調査機関により見解書が作成されており,当該見解書は,国際予備審査機関の書面による見解(見解書)とみなされる(PCT規則66.1の2)。 (カ) 出願人は,国際予備審査報告が作成される前に,所定の方法で及び所定の期間内に,請求の範囲,明細書及び図面について補正をする権利を有するが,この補正は出願時における国際出願の開示の範囲を超えてしてはならない(PCT34条(2)(b))。 国際予備審査機関が,補正が出願時における国際出願の開示の範囲を超えてされたものと認める場合には,国際予備審査報告は,その補正がされなかったものとして作成するものとし,報告には,その旨及びその開示の範囲を超えてされた補正と認める理由を表示することとされている(PCT規則70.2(c))。 (キ) 国際予備審査機関の見解を公式に見直すための規定は,発明の単一性の欠如における追加手数料の支払に対する異議申立てを除いて存在しない(PCT34条(3),PCT規則68.3)。 (ク) 国際出願法12条1項は,特許庁長官は,国際予備審査の請求があっ たときは,当該国際出願につき,審査官に国際予備審査報告(PCT35条)を作成させなければならない旨規定している。 争点1(国家賠償法1条1項の違法の有無)について(1) 原告は,特許庁審査官が,本件見解書において本件国際予備審査請求の請求の範囲21及び22につき,本件報告書において本件国際予備審査請求の請求の範囲9ないし13につき,それぞれ特許性(進歩性)がない旨の審査をしたことが特許法29条に則さない論理付けであって無効であるから,これらの書面を作成・送付した行為が違法であると主張する。 請求の範囲9ないし13につき,それぞれ特許性(進歩性)がない旨の審査をしたことが特許法29条に則さない論理付けであって無効であるから,これらの書面を作成・送付した行為が違法であると主張する。 しかし,前記1(2)エ(ウ)のとおり,国際予備審査は,予備的で選択国を拘束しないものであり,いずれの国内法令からも独立し,PCT33条に規定された要件によってのみ行われるものであるから,国際予備審査報告においては,当該国際出願の請求の範囲に記載されている発明がいずれかの国内法令により特許を受けることができる発明であるかどうか又は特許を受けることができる発明であると思われるかどうかの問題についてのいかなる陳述をも記載してはならないとされている(PCT35条(2))。 したがって,本件国際予備審査請求に係る国際予備審査報告を作成する特許庁審査官に対し,本件国際予備審査請求の請求の範囲に係る発明につき,我が国の特許法29条に基づく特許性(進歩性)の有無の判断を求めることを前提とする原告の主張は,PCT35条(2)に反する行為を求めるものであって,失当である。 (2) また,前記1(2)エ(ウ),(オ)のとおり,国際予備審査機関の見解書には,特許性を有しない旨の見解及びその根拠を十分に記載するものとされており,国際予備審査報告には,当該国際出願の請求の範囲に記載されている発明がPCT33条(1)ないし(4)までに規定する新規性,進歩性(自明のものではないもの)及び産業上の利用可能性の基準に適合していると認められるかどうかを各請求の範囲について記述し,その記述の結論を裏付けると認められ る文献を列記し,場合により必要な説明を付するものとされているが,①本件見解書の第Ⅴ欄には,請求の範囲21及び22につき,進歩性を有しない旨の見解及びその結 述の結論を裏付けると認められ る文献を列記し,場合により必要な説明を付するものとされているが,①本件見解書の第Ⅴ欄には,請求の範囲21及び22につき,進歩性を有しない旨の見解及びその結論を裏付けると認められる文献が記載され,当該文献についての説明が付されており(乙9),また,②本件報告書の第Ⅴ欄には,請求の範囲9ないし13につき,進歩性を有しない旨の見解,その結論を裏付けると認められる文献が記載され,当該文献についての説明が付されている(乙16)ことから,本件見解書及び本件報告書の記載は,PCT35条(2),PCT規則66.2の規定に則したものである。また,本件報告書の第Ⅱ欄の3における請求の範囲5-13,15-28に係る各発明の基準日に関する記載も,PCT規則70.2(c)の規定に則したものである。 原告は,特許庁審査官が当業者には絶対になし得ない論理付けによって特許性(進歩性)がない旨の無効な審査をしたと主張するが,具体的にどのような論理付けをしたことが違法だと主張するのか明らかではなく,本件見解書及び本件報告書における特許性(進歩性)に係る見解がPCT等の関係法令に違反した無効なものであると認めるに足りる主張立証はない。 さらに,前記1(2)エ(ア),(ウ)のとおり,国際予備審査は,いずれの国内法令からも独立し,PCT国際出願に係る発明が新規性,進歩性及び産業上の利用可能性を有するものかどうかについて,国際予備審査機関による予備的なかつ拘束力のない見解を示すものである(PCT33条(1))から,仮に国際予備審査機関が違法な判断に基づき特許性を否定する旨の国際予備審査報告を作成し,これを国際事務局に送付したとしても,出願人が特許を取得したい締約国の指定官庁(又は選択官庁)が国際予備審査報告の見解に法的に拘束されるこ 判断に基づき特許性を否定する旨の国際予備審査報告を作成し,これを国際事務局に送付したとしても,出願人が特許を取得したい締約国の指定官庁(又は選択官庁)が国際予備審査報告の見解に法的に拘束されることはない上,そもそも原告は日本以外の国の指定官庁(又は選択官庁)に明細書の翻訳文等必要な書面を提出していないのであるから,特許庁が本件見解書及び本件報告書を原告・国際事務局に送付したことが,原告が本件国際出願に係る発明につき日本以外の国で特許を取得できなかった ことと相当因果関係のある原因行為であると認めることはできない。 その他,原告が主張する行為に関係法令に違反する事実は認められない。 以上からすると,特許庁審査官が本件見解書及び本件報告書を作成し,特許庁がこれらの書面を原告・国際事務局に送付するに当たり,特許庁審査官及び特許庁長官がその職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と行為をしたと認め得るような事情は認められないから,原告主張の行為に国家賠償法1条1項にいう違法があったということはできない。 (3) 原告は,我が国では,本件国際予備審査請求の請求の範囲9ないし13,21及び22と全く同じ構成の発明につき,特許性ありとして登録査定がされていることから,本件見解書及び本件報告書における特許性(進歩性)の審査結果が無効であることは明らかであると主張するが,上記(1)のとおり,国際予備審査は,いずれの国内法令からも独立してPCT33条に規定された要件によってのみ行われるものであるから,我が国の特許法に基づき特許査定がされたことをもって本件見解書及び本件報告書における特許性についての審査結果が無効であるということはできず,原告の主張を採用することはできない。 (4) 以上検討したところによれば,原告の国家賠償法1条1 ことをもって本件見解書及び本件報告書における特許性についての審査結果が無効であるということはできず,原告の主張を採用することはできない。 (4) 以上検討したところによれば,原告の国家賠償法1条1項に基づく損害賠償金8946万円の支払請求は,理由がない。 争点3(無効等確認の訴えの適法性)について無効等確認の訴えは,「処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟」である(行政事件訴訟法3条4項)ところ,「処分」とは,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうものと解される。 これを本件についてみると,前記1のとおり,国際予備審査は,締約国における出願手続や審査の簡素化等を目的として定められたPTC国際出願手続の 中において,締約国において特許権を付与するか否かを判断する各国特許法所定の手続を経る前に,出願人の請求により,国際予備審査機関が「予備的なかつ拘束力のない見解」を示すにすぎないものであるから,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものということはできない。 したがって,国際予備審査の結果である国際予備審査報告書及びこれに記載された見解,国際予備審査機関の見解書及びこれに記載された見解は,無効等確認の訴え(行政事件訴訟法36条,3条4項)の対象である「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」(同法3条2項)にも,「審査請求,異議申立てその他の不服申立てに対する行政庁の裁決,決定その他の行為」(同法3条3項)にも該当しないから,本件見解書及び本件報告書ないしこれらに記載された見解が無効であることの確認を求める原告の無効等確認の訴えは不適法なものであ する行政庁の裁決,決定その他の行為」(同法3条3項)にも該当しないから,本件見解書及び本件報告書ないしこれらに記載された見解が無効であることの確認を求める原告の無効等確認の訴えは不適法なものである。 争点4(義務付けの訴えの適法性)について行政事件訴訟法3条6項2号により行政庁に義務付けを求め得る「処分又は裁決」とは,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうものと解される。 原告は,特許庁長官に対し,本件見解書及び本件報告書が無効である事実を認め,無効な審査結果によって原告が被った損害を賠償し,特許庁審査官の特許法29条に基づく実体審査の在り方,審査業務の取組姿勢を見直し,再発を防止することの義務付けを求めるが,原告が求めるものは,いずれも直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものということはできないから,行政事件訴訟法3条6項2号により行政庁に義務付けを求め得る「処分又は裁決」に該当しない。 したがって,特許庁長官に対し,上記義務付けを求める原告の訴えは不適法なものである。 結論 よって,その余の点について判断するまでもなく,原告の無効等確認の訴え及び義務付けの訴えはいずれも不適法であるから却下することとし,原告の国家賠償法1条1項に基づく損害賠償金の支払請求は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部裁判長裁判官岡本岳裁判官鈴木和典裁判官坂本康博

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