平成21(ワ)555 地位確認等請求事件(通称 日本トムソン黙示の労働契約)

裁判年月日・裁判所
平成23年2月23日 神戸地方裁判所 姫路支部
ファイル
hanrei-pdf-81169.txt

判決文本文36,747 文字)

平成23年2月23日神戸地方裁判所姫路支部平成21年(ワ)第555号地位確認等請求事件 主文 被告は,原告ら各自に対し,各50万円及びこれに対する平成21年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,これを5分し,その4を原告らの負担とし,その余は被告の負担とする。 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求 原告A,同B,同C及び同Dが,被告に対し,それぞれ雇用契約上の地位を有することを確認する。 被告は,原告A,同B,同C及び同Dに対し,平成21年11月から本判決確定に至るまで,毎月5日限り,別紙1の各原告に対応する1月平均欄記載の金額及びこれに対する各支払期日の翌日から各支払済みまで年6分の割合による金員をそれぞれ支払え。 被告は,原告らに対し,各300万円及びこれに対する平成21年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。 第2事案の概要本件は,株式会社S(以下「S」という。)と雇用契約を締結し,同社・被告間の出向協定,業務委託(請負)契約ないし労働者派遣契約に基づき,被告姫路工場(以下,単に「姫路工場」という。)で就労していた原告らが,いわゆる派遣切りをされ,その後,被告と直接期間雇用契約を締結したものの,更新されなかったこと等につき,精神的苦痛を被ったとして,被告に対し,不法行為に基づ き,慰謝料各300万円及びこれに対する上記期間雇用契約が終了した日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(請求の趣旨3項)をそれぞれ求めるほか,原告A,同B に基づ き,慰謝料各300万円及びこれに対する上記期間雇用契約が終了した日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(請求の趣旨3項)をそれぞれ求めるほか,原告A,同B,同C及び同D(以下,この4名を併せて「原告Aら4名」という。)が,同人ら・被告間には,期間の定めのない黙示の労働契約が成立しており,したがって解雇は無効である等として,被告に対し,雇用契約上の地位を有することの確認(同1項),及び,前記期間雇用契約が終了した月の翌月から本判決が確定するまでの間の各給与として,Sによる解雇(派遣切り)の直近3か月間に同社から支給されていた給与の平均額による支払及びこれに対する各支払期日の翌日から各支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払(同2項)をそれぞれ求めた事案である。 前提事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。 (1)当事者ア原告らは,Sと雇用契約を締結し,姫路工場で就労し,ベアリングの製造業務に従事していた者である(別紙2の「契約締結月」欄参照。なお,上記雇用契約締結当時のSの名称は,そのほかに,株式会社T,同U及び同Vと様々であるが,本件での呼称は,「S」に統一する。)。 (甲A1の1ないし7,甲A2,甲B1,甲C1の1・2,甲D1の1・2,甲E1の1・2,甲F1の1ないし7,甲G1の1ないし7,甲H1の1ないし6,甲I1の1ないし5)イ被告は,軸受(ベアリング)等の製造,販売等を業とする株式会社である。同社の生産拠点には,姫路工場のほか,岐阜製作所及び鎌倉工場がある(なお,姫路工場及び鎌倉工場は,同社の業務組織上,岐阜製作所の一部門であるが,本件では,所在地としてのそれを指す。)。 ある。同社の生産拠点には,姫路工場のほか,岐阜製作所及び鎌倉工場がある(なお,姫路工場及び鎌倉工場は,同社の業務組織上,岐阜製作所の一部門であるが,本件では,所在地としてのそれを指す。)。 (甲6,乙1) ウSは,請負業,労働者派遣事業,有料職業紹介事業等を業とする株式会社である。 (甲1,甲2,乙8,乙9)(2)事実経過の概略ア被告は,平成15年12月1日,Sとの間で,出向協定(以下「本件出向協定」という。)を締結し,同社からの社員の受入れを開始した。 その後,被告・S間の契約関係は,平成17年10月1日から業務委託(請負)契約(以下「本件業務委託契約」という。)となり,平成18年8月21日からは労働者派遣契約(以下「本件派遣契約」という。)に変更された。 (甲35,甲36,甲37の1ないし40)イ原告らは,平成16年4月ないし平成20年4月の間にSと雇用契約を締結し(別紙2参照),その後,被告・S間の本件出向協定,本件業務委託契約ないし本件派遣契約に基づき,姫路工場で就労し,ベアリングの製造業務に従事していた。 ウ原告らは,平成21年2月3日,Sから,同社が被告から本件派遣契約を平成21年3月31日をもって中途解除する旨の通知を受けたため,同日をもって中途解雇(前記雇用契約の本来の終期は,平成21年8月20日である。)する旨の解雇予告通知を受けた。 (甲14,甲A1の7,甲A2,甲B1,甲C1の1・2,甲D1の1・2,甲E1の1・2,甲F1の6・7,甲G1の6・7,甲H1の5・6,甲I1の4・5)エ兵庫労働局は,平成21年3月23日,被告及びSに対し,労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(以下「労働者派遣 ,甲H1の5・6,甲I1の4・5)エ兵庫労働局は,平成21年3月23日,被告及びSに対し,労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(以下「労働者派遣法」という。)違反(派遣期間制限違反)及び職業安定法違反(労働者供給事業禁止違反)があったとして,同年4月23日ま でに,原告ら派遣労働者の雇用の安定を図るための具体的方策を講じて報告するようにとの是正指導(以下「本件是正指導」という。)を行った。 (甲39,乙2)オそこで,被告は,本件派遣契約の解除につき,平成21年3月31日付けから同年4月23日付けと変更し,Sも,前記解雇を同日付けに変更した。 さらに,被告は,同年4月23日,原告らとの間で,期間を同月24日から同年9月30日までとして,期間雇用契約(以下「本件期間雇用契約」という。)を締結した。この際,原告らは,上記期間制限等につき,異議を留める旨を述べた。 (甲17ないし甲23,甲25,甲27,乙3の1ないし9)カ本件期間雇用契約は,平成21年9月30日をもって,更新されることなく終了した。 争点 (1)原告Aら4名・被告間の労働契約の成否(争点1)(原告Aら4名の主張)ア被告による「採用への関与」(事前面接)による,同社との間の労働契約の成立最高裁判所平成21年12月18日第二小法廷判決・民集63巻10号2754頁(以下「松下PDP事件判決」という。)は,発注元が請負業者による採用に関与していたとは認められないことを,発注元との間の労働契約が成立したとは認められないことの根拠の一つとしているが,このことは逆に,「採用への関与」が認められた場合には,当初から,黙示の労働契約の成立が認定され得ることを示唆した を,発注元との間の労働契約が成立したとは認められないことの根拠の一つとしているが,このことは逆に,「採用への関与」が認められた場合には,当初から,黙示の労働契約の成立が認定され得ることを示唆したものと解される。 本件では,姫路工場長(当時)であったEらが,原告Aら4名につき,工場見学の際に面接をし,油の臭いを嫌わずに仕事ができるという,被告 が予定した作業に適応できる能力を持つことを確認して採用を決定し,それと同時に,Sは,既に被告との間で締結していた本件出向協定,本件業務委託契約ないし本件派遣契約に基づき,原告Aら4名を労働者として被告に提供することを最終的に確定し,原告Aら4名は,上記面接後に姫路工場での就労を開始したのであるから,被告が,原告Aら4名の採用に関与していることは明らかである。 そして,事前面接が実施され派遣先での就労が実現した場合,同面接の時点では,派遣元・派遣労働者間で雇用契約が締結されていない以上,派遣先を含めた三者の関係を労働者派遣の概念で説明することはできず,派遣元の行ったことは,法的にも私的な職業紹介であると評価するしかないから,労働契約は,派遣元のあっせんを受けて,派遣先・派遣労働者間に,事前面接の段階で黙示に成立したと理解せざるを得ない。 したがって,事前面接が行われた本件では,原告Aら4名には,被告との間で,黙示の労働契約が成立する。 イ偽装出向下での労働契約の成立ところで,本件出向協定によれば,出向とは在籍出向のことであることが明示されているところ,在籍型出向については,出向労働者は,出向元事業主との間に雇用契約関係があるだけではなく,出向元事業主・出向先事業主間の出向契約により,出向労働者を出向先事業主に雇用させることを約して行われるから,労働者派遣には該当しない 労働者は,出向元事業主との間に雇用契約関係があるだけではなく,出向元事業主・出向先事業主間の出向契約により,出向労働者を出向先事業主に雇用させることを約して行われるから,労働者派遣には該当しない。もっとも,その形態は,労働者供給に該当するので,その在籍型出向が,①労働者を離職させるのではなく,関係会社において雇用機会を確保する,②経営指導,技術指導の実施,③職業能力開発の一環として行う,④企業グループ内の人事交流の一環として行う等の目的を有しない場合は,それは業として行われる出向で,しかも労働者派遣ではないから,違法な労働者供給であり職業安定法44条違反を構成するところ,被告が本件出向協定に基づき実施し た出向形態での外部労働者の受入れは,人材派遣会社であるSが「業として」行うものにほかならず,労働者派遣ではなく,違法な労働者供給であることは,本件是正指導の内容から明らかである。そうすると,本件出向協定が締結された後これが本件業務委託契約に切り替えられる平成17年10月1日以前に,姫路工場での就労を開始した原告A及び同Dについては,松下PDP事件判決は妥当せず,Sとの間だけではなく,被告との間でも二重に労働契約が成立していたこととなる。 そして,原告A及び同Dについては,姫路工場での就労開始時,労働者派遣法の適用はなく,事前面接は労働者派遣法26条に違反するものではないから,被告との間の完全な労働契約(黙示の労働契約)の成否は,「採用への関与」の問題を措き,「使用従属関係」「労務給付関係」「賃金支払関係」の3つの指標で判断せざるを得ないところ,この3つの指標を用いても,やはり黙示の労働契約の成立を認めることができる。 すなわち,被告は,Sによる原告A及び同Dの採用後,同社に対し,一貫して業務委託料(派遣料)を出来高では るを得ないところ,この3つの指標を用いても,やはり黙示の労働契約の成立を認めることができる。 すなわち,被告は,Sによる原告A及び同Dの採用後,同社に対し,一貫して業務委託料(派遣料)を出来高ではなく時間給として支払い(1人1時間1700円。なお,本件出向協定の時代も,時間単価で被告がSに負担する料金が決められていた。),同社から同人らに対し支給される諸手当についても全額負担し,昇給も決定していた以上,同人らの賃金は,被告が実質的に決定していたと評価できるし,被告は,原告ら社外労働者の配置をすべて決定し,それにSが関与することは一切なく,本件出向協定が本件業務委託契約に切り替えられた後も,原告A及び同Dが業務を遂行するために必要な設備,機械,器材,材料等は,すべて被告が所有し調達するもので,対してSは何らの設備等も有しておらず,製造する商品(ベアリング)に対する専門的技術,経験を有しているのも被告の正社員であり,Sはそれらの経験を有していなかった上,原告A及び同Dに対し,作業上の指揮命令権を取得し,出退勤の管理を行っていたにとどまらず, 配置,懲戒,解雇(雇止め)に関する権限をも保持していたことからすれば,被告は,労務給付請求権を有していたと評価できるのであって,かかる使用従属関係の実態に鑑みれば,原告A及び同D・被告間には,労働関係展開中も黙示の労働契約が存続していたといえ,仮に採用時(就労開始時)には黙示の労働契約は成立していないと考える立場に立っても,本件では,労働関係展開中に,上記使用従属関係を基礎とする黙示の労働契約が成立していたこととなる。 ウまとめ以上のとおり,原告Aら4名・被告間には,①被告が同人らの「採用に関与」したことによって,姫路工場での就労開始当初から,また,②特に本件出向協定下で就労を開始した いたこととなる。 ウまとめ以上のとおり,原告Aら4名・被告間には,①被告が同人らの「採用に関与」したことによって,姫路工場での就労開始当初から,また,②特に本件出向協定下で就労を開始した原告A及び同D・被告間には,「使用従属関係」「労務給付関係」「賃金支払関係」の3指標がいずれも認められることにより,「採用への関与」の問題を措いても,やはり黙示の労働契約が成立している。 そして,原告A及び同Dについては,上記黙示の労働契約成立後,本件業務委託契約,本件派遣契約へと契約形態が変更された旨の説明もなければ,就労実態にも変化がなかった以上,上記労働契約が本件出向協定の解除によって影響を受ける余地はないし,翻って「採用への関与」を理由に成立する黙示の労働契約も,請負,労働者派遣への切替えによって解消されることはない。 また,原告Aら4名・被告間で成立する労働契約は,黙示のものであり,当事者間に雇用期間に関する合意が存在しない以上,原則形態である期間の定めのないものとなると考えるべきである。 (被告の主張)ア松下PDP事件判決同判決は,あくまでも,事実関係を総合して,これまでの枠組みに沿っ た黙示の意思表示の認定手法により,雇用契約の存否を判断したものにすぎず,事前面接行為があればそれだけで黙示の労働契約関係が認められると述べたとは明らかに解し得ないし,また,事前面接があった場合には,賃金額の事実上の決定についての判断が緩められるとか不要であるとかいう経験則を示したものでも全くない。 イ工場見学の経緯姫路工場において,就業決定前に工場見学がされるようになった経緯は,平成15年の出向社員受入れから約3か月間に,就業した7人のうち3人もが,油のにおいが体質的に合わないなどという理由で退職した 経緯姫路工場において,就業決定前に工場見学がされるようになった経緯は,平成15年の出向社員受入れから約3か月間に,就業した7人のうち3人もが,油のにおいが体質的に合わないなどという理由で退職した事態を受けて,就業希望者が事前に工場を見学し,職場環境及び業務内容を本人が見れば,少なくとも油のにおいが体質的に合わないなどという理由ですぐに辞めることがなくなるし,逆にいえば,そういう人は見学すれば就業を希望しないということで,外部会社と話し合って,実施されるようになったものであり,その目的からして,就業予定場所以外の場所を見学させても何の意味もなく,時間も無駄であるため,見学をする範囲は,就業予定場所に限定されており,その際,部屋に通してパンフレットの配布や,業務の説明等を行う必要性もないから,実際にも行っていなかった。さらに,被告は,工場見学に訪れた外部会社の社員につき,1人も受入れを拒んだことはない。そして,工場見学後の就業の意志の確認は,Sの社員(当時)であったFがしており,Eが就業可能期間等を質問したことはない。 したがって,Eにおいて,見学者の採否を判断したことはないし,Sの側で,被告に対し採否の判断を委ねたこともない。 ウ本件出向協定から本件派遣契約に至る経緯そもそも,被告は,平成14年のリストラの教訓として,外部社員活用の方針をとり,これに則って,主力工場である岐阜製作所において平成15年ころから請負化を進め,姫路工場についても同じように請負化を導入 する方針をとり,Sと協議をしたが,姫路工場の多品種少量生産の特色からして,即時の請負化の導入は難しいとの指摘がなされたため,まずは技能習得のために出向社員として受入を始め(本件出向協定),平成16年11月からは常駐管理者としてFが配置されたこと,一定の技能習得が進 て,即時の請負化の導入は難しいとの指摘がなされたため,まずは技能習得のために出向社員として受入を始め(本件出向協定),平成16年11月からは常駐管理者としてFが配置されたこと,一定の技能習得が進んだことから,平成17年10月から,当初からの構想であった請負化に着手したが(本件業務委託契約),現実には,姫路工場の社員からの段取り指示などが生じる場面が見られる状況にあり,また,折からの偽装派遣問題の浮上に伴い,労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(労働省告示第37号)の実際的運用に関する当局のハードルが引き上げられていった中では,請負体制を継続するのは困難であるとの意向がSから示されため,平成18年8月20日,自主的に派遣契約に切り替えることとした(本件派遣契約)。 そして,被告は,原告らを含む社外の人材に対し自ら給与を支払ったことは一度もなく,それは各請負会社・派遣会社から支払われており,派遣料金についても,1時間あたり1700円と定め,それに関して契約されている割増率はこれを賃金とみた場合の法定割増率そのものとなっており,その意味で,何ら被告のSに対する賃金決定に関する支配を示すものではない。 また,原告らについては,被告において,兵庫労働局の強い指導(本件是正指導)を受けた結果,やむなく期間を定めて直接雇用した経過からすれば,被告において,原告らが自社の社員であるとか労働契約の他方当事者であるとの認識を有していたとの事情は一切なく,原告Aら4名も,Sとの間で,自署により雇用契約を締結し,同社から被告に派遣されるに当たり,「上記の条件で雇用・派遣されることに同意いたします」との不動文字のもとに自署していることが明らかであること,原告Aら4名は,本件前にも派遣社員として働いた経験を有していること等から れるに当たり,「上記の条件で雇用・派遣されることに同意いたします」との不動文字のもとに自署していることが明らかであること,原告Aら4名は,本件前にも派遣社員として働いた経験を有していること等からすれば,同人 らは,自らの雇用契約の相手方がSであることを十分に理解していたと考える以外にない。 エ出向労働関係についてそもそも,出向における二重労働関係とは,出向労働者と出向元及び出向先との間に,それぞれ完全な労働契約関係が存在する関係を意味するものではなく,出向労働者はもともと出向元の使用者と労働契約を結んだのであり,基本的には,出向によりその労働契約関係の一部が出向先に移転すると考えられている。 したがって,労働者及び出向先は,それぞれが有する権利を主張し,相手方が負う義務の履行を請求することができるが,出向先は,労働者の地位を失わせる解雇や懲戒解雇を行うことはできず,出向労働者も,出向先の労働者たる地位まで有するものではない。 したがって,そもそも出向労働関係にあることを理由として原告A及び同Dが,被告に対し,労働者たる地位の確認を求める主張は,独自の見解にすぎず,証拠上,明らかに請負・派遣という後の契約形態を経ていること,それについて原告A及び同Dが一定の説明をSから受けていることなどの事実関係を無視した議論にすぎず,失当というほかはない。 オまとめしたがって,原告Aら4名・被告間に,黙示の労働契約が成立すると解する余地はない。 (2)解雇(更新拒絶)の無効(争点2)(原告Aら4名の主張)ア労働契約法16条の(類推)適用前記のとおり,上記原告Aら4名・被告間には,期間の定めのない黙示の労働契約の成立が認められるから,平成21年2月の派遣切りは,労働契 原告Aら4名の主張)ア労働契約法16条の(類推)適用前記のとおり,上記原告Aら4名・被告間には,期間の定めのない黙示の労働契約の成立が認められるから,平成21年2月の派遣切りは,労働契約法16条に違反するものであって,無効である。 また,原告Aら4名・被告間に成立する黙示の労働契約が,仮に有期契約にすぎないと解した場合でも,①原告Aら4名は,姫路工場で行われている軸受(ベアリング)の製造業務という基幹業務に,正社員と渾然一体となって従事していたこと,②契約の更新回数は多いもので6回であり,原告Aら4名以外の者も含め,社外労働者の中で「雇止め」された者は誰一人おらず,更新が当然の前提となっていたこと,③派遣切り直前の契約期間も,ほとんどの者が2年,短い者でも1年4か月であり,有期契約としては異例の長期であり,かかる期間自体,長期雇用が前提とされていたと解されること,④更新に際しては,期間雇用契約書や派遣労働者雇入通知書がSから一方的に郵送されてくるだけで,更新手続も極めて形式的なもので,更新が当然の前提となっていたこと,それ故,原告Aら4名は,当然に契約は更新されると期待していたし,かかる期待は法的保護に値するものといえることからすれば,上記雇止めについては,当然に解雇法理(労働契約法16条)が類推適用されることとなる。 さらに,仮に原告Aら4名・被告間に黙示の労働契約の成立が認められないとすると,その雇用契約(直接契約)は,平成21年4月23日に成立したものと考えるほかないことになるところ,同契約は,期間を同月24日から同年9月30日までとする有期契約であり,原告Aら4名は,最初の期間満了時に,一度も契約を更新されることなく雇止めされたことになるが,①本件是正指導によって成立した上記直接契約は,本 同月24日から同年9月30日までとする有期契約であり,原告Aら4名は,最初の期間満了時に,一度も契約を更新されることなく雇止めされたことになるが,①本件是正指導によって成立した上記直接契約は,本来,期間の定めのない契約として実現されなければならなかったのであり,その雇止めは法的には解雇と評価されなければならないし(従って,当然に労働契約法16条が適用される。),②仮に有期契約によって直接契約を実現すること自体は許されるとしても,「雇用の安定」を図る措置を講じるようにとの本件是正指導からすれば,実質的には「1か月」だけの雇用を確保するに過ぎない直接契約では「雇用の安定」を図る措置とは到底評価でき ないのであって,その雇止めには信義則の観点から労働契約法16条が類推適用されなければならない。 イ整理解雇4要件そして,整理解雇については,①整理解雇を行う経営上の必要性があること,②希望退職者の募集等,整理解雇回避措置を尽くしていること,③人選基準が合理性を有していること,④労働組合ないし労働者代表と十分な協議を尽くしたこと,の4要件を満たす必要があるところ,①被告は,平成21年3月期の決算が2億円の赤字見込みとなったとして,派遣切りを行っておきながら,実際の決算では4億4500万円の黒字を確保しており,平成22年3月期には単年度で一定の赤字を出したようではあるが,派遣労働者を受け入れるようになって以降,この5年間で内部留保を約155億円増やし,約500億円もの内部留保を保有していること,②被告には,人員整理(派遣切り)を行うに際し,姫路工場,岐阜製作所及び鎌倉工場を含めた全正社員を対象に希望退職者の募集を行うべき義務があり,仮に正社員の雇用を優先し,原告ら9名の契約社員の人員削減はやむを得ないと考えるにしても,希望退職者の募集 工場,岐阜製作所及び鎌倉工場を含めた全正社員を対象に希望退職者の募集を行うべき義務があり,仮に正社員の雇用を優先し,原告ら9名の契約社員の人員削減はやむを得ないと考えるにしても,希望退職者の募集だけではなく,岐阜製作所への転勤も整理解雇回避措置として検討すべき義務が存在したことと相俟って,岐阜製作所も含めた全社の契約社員を対象に希望退職者の募集を行うべき義務があったにもかかわらず,これらを実施していないこと,③被告が,期間雇用社員であったという理由で原告らを正社員に先立ち人員整理の対象とする基準には合理性を認めることはできず,仮に正社員の雇用の優先確保は仕方がないとの考え方を採用するにしても,岐阜製作所を含めた全契約社員につき,誰を切って,誰を残すのかについて何らかの人選基準を設定した形跡もないこと,④原告ら派遣労働者との十分な協議も何ら尽くしていないことに加え,被告が原告らを雇い止めするに際し,再就職のあっせんや退職金の支給,上積みなどを検討した節は一切なく,また,期間 満了慰労金7万5000円のみの支給をもって一定の配慮などと評価することはおよそ不可能であり,格段の配慮をしていないことからすれば,本件では,上記整理解雇4要件をどれも満たしていない。 ウまとめしたがって,本件における解雇(雇止め)は,いずれも無効である。 (被告の主張)ア被告は,平成21年2月3日,Sに対しやむなく本件派遣契約を解除する旨を通知して以来,同年3月23日には本件是正指導を受け,その対応に苦慮していた。そして,同指導への対応を検討し,兵庫労働局との相談を進める中で,同労働局からは,結局,派遣労働者全員の直接雇用をする以外には是正報告として受理しないとの見解が示され,その中で可能な方法を模索した結果が,本件期間雇用契約だったのであ 労働局との相談を進める中で,同労働局からは,結局,派遣労働者全員の直接雇用をする以外には是正報告として受理しないとの見解が示され,その中で可能な方法を模索した結果が,本件期間雇用契約だったのである。 そして,本件期間雇用契約は,平成21年4月23日を初回として,一度も更新をされておらず,また,仮に原告Aら4名・被告間に黙示の労働契約が成立しているとした場合,原告Aら4名の個別の更新回数のみをとってみても,このうち原告B及び同Cについては更新をしたことがなく,原告A及び同Dについては5回ないし6回の更新をしたものではあるが,同更新手続は,いずれもSによってきちんとなされていたことが明らかで,また採用に際しての言動についても,長期継続雇用に関するものがあったとみるべき証拠はない上,正社員への登用についても,これに関する原告A及び同Dの契約書の記載は,被告ではなくSの正社員を指していることが明らかで,しかも無限定・無条件に正社員化が認められるものでもない。 したがって,本件においては,解雇法理の適用はないというべきである。 イまた,原告Aら4名の個別の更新回数については上述のとおりであり,採用及び契約手続はSにおいて個別に契約書によって行っていたこと,それに原告Aら4名がその都度署名をしていることなどに加え,もともと本 件期間雇用契約は,本件是正指導を契機とするものであって,業務上の必要性に基づくものではなく,むしろ人員の余剰を生じたものであり,そのために姫路工場においては,一時帰休の日数を増日して対応したものであったこと,これまで,被告においては期間雇用を行ったことがなく,期間雇用社員としては原告らのほかに例がないこと,被告側からは,平成21年10月1日以降の契約更新につき,契約書の文言上,その判断は被告に留保されて まで,被告においては期間雇用を行ったことがなく,期間雇用社員としては原告らのほかに例がないこと,被告側からは,平成21年10月1日以降の契約更新につき,契約書の文言上,その判断は被告に留保されている上に,団体交渉の場において,現実的には現下の経営環境,姫路工場の状況に照らして,大幅な景気の回復がない限り困難である旨を伝えてきたこと等からすれば,原告Aら4名において,本件期間雇用契約が同年8月21日以降も継続される(更新される)との期待が合理的に生じているものとは解されず,同年10月1日以降についての合理的期待の有無についても同様に消極に解するほかなく,本件に関し,雇止めに解雇法理の類推適用をするのは前提を欠いているというべきである。 (3)賃金請求権の有無(争点3)(原告Aら4名の主張)原告Aら4名に対する賃金は,形式的にはSから,毎月20日締めの翌月5日払いとして支払われていたところ,本件における解雇(更新拒絶)は無効であって,原告Aら4名・被告間の労働契約関係は現在も継続しており,原告Aら4名は,被告に対し,労働契約上の地位を有している以上,少なくともSから支給を受けていた解雇直前3か月間の給与の平均額につき,賃金請求権を有している。 (被告の主張)否認する。本件の雇止めは有効であるから,賃金請求権は発生していない。 (4)被告の不法行為(争点4)(原告らの主張)ア派遣元を介在させた違法状態下で就労させ続けた行為の違法性 雇用においては,直接雇用が大原則であり,三者間労働関係は,法が許容する場合に,法の規制を遵守する限りにおいて認められるに過ぎないところ,被告は,当初は偽装出向及び偽装請負という違法状態のもとで,偽装請負を労働者派遣に切り替えてからも,この時点で既に原告ら全員との る場合に,法の規制を遵守する限りにおいて認められるに過ぎないところ,被告は,当初は偽装出向及び偽装請負という違法状態のもとで,偽装請負を労働者派遣に切り替えてからも,この時点で既に原告ら全員との関係で派遣可能期間を徒過していたのであるから,労働者派遣法35条の2に違反する状態のもとで原告らを被告工場で就労させてきたように,原告らは,姫路工場での就労を開始した当初から平成21年3月末日に派遣切りされるまでの全期間,直接雇用の原則に反する違法状態下での就労を余儀なくされてきたのである。 そのような就労を強いてきたことにつき,被告に故意,少なくとも過失があることは明白であるが,不安定かつ違法な状態下で就労させられること自体,労働者に精神的打撃を与えるものであるというだけでなく,この間,原告らは,被告が直接雇用の原則を遵守して原告らを雇用していれば当然原告らに支払われていた労働の対価の一部を,実質Sにピンはねされ続けてきたのであって,そのこと自体が,原告らに対し,重大な精神的打撃を被らせるものであることも明白である。 イ派遣切りしたことの違法性原告ら・被告間においては,黙示の労働契約が成立しているから,平成21年2月に予告された派遣切りの実質は解雇(雇止め)ということになるところ,権利濫用にあたる解雇は,使用者に故意・過失のある限り,労働者の雇用を保持する利益や名誉を侵害する不法行為になるのであるから,原告らには,派遣切りされたことにつき,相応の慰謝料が認められるべきである。 ウ直接雇用下で手当の支給を打ち切ったことの違法性被告は,自ら全額を負担して,原告Gを除く原告らに対し,技能手当等の諸手当を支給していたところ,直接契約(本件期間雇用契約)において, 原告らが,更新を前提としていないだけでなく,賃金も派遣時に比して ,自ら全額を負担して,原告Gを除く原告らに対し,技能手当等の諸手当を支給していたところ,直接契約(本件期間雇用契約)において, 原告らが,更新を前提としていないだけでなく,賃金も派遣時に比して大幅に減額されることから異議を留めたにもかかわらず,これに耳を傾けることなく,諸手当の支給を全面的に打ち切った。 しかし,本来,直接雇用下での賃金は,当然に直接契約切替直前の賃金を維持するものでなければならず,そもそも合理的な理由もないのに賃金をカットすることなど許されないところ,原告らは,直接契約締結後も従前と同じ業務に従事し,しかも手当は従前からSではなく被告が全額を負担しており,これをカットしなければならない理由は何もないこと等からすれば,被告が,合理的な理由もなく諸手当をカットして直接契約を締結したことは,少なくとも従前と同じ条件で直接契約が締結されると期待していた原告らの合理的な期待を裏切るもので,違法である。 エ直接雇用を更新しなかったことの違法性原告らが,兵庫労働局に対して行った,違法派遣であることを指摘して直接雇用を求める旨の申告は,まさに公益通報者保護法2条にいう「公益通報」であるところ,被告は,同労働局から,「雇用の安定」を図る措置を講じるようにとの本件是正指導を受け,その方策として直接雇用を採用しておきながら,一度も更新することなく,最初の期間満了時に雇止めをしたものであり,本件是正指導に反するものであるばかりか,原告らとの関係では,明らかに不利益取扱いであって,公益通報者保護法にも違反するものとして違法である。 また,被告が本件期間雇用契約を一度も更新することなく,実質的には僅か1か月雇用を確保しただけで原告らを雇止めしたのは,被告が労働組合を嫌悪しているからとしか考えられないところ,被告の有期契約への固執 ,被告が本件期間雇用契約を一度も更新することなく,実質的には僅か1か月雇用を確保しただけで原告らを雇止めしたのは,被告が労働組合を嫌悪しているからとしか考えられないところ,被告の有期契約への固執は,その意味で,不当労働行為的色彩を帯びているのであり,そのこと自体,労働組合法7条1号,3号の不当労働行為を構成する。 オまとめ 上記各違法事由は,全体として1つの不法行為を構成するところ,これらの事情に鑑みたとき,被告の解雇(更新拒絶)及び本件是正指導後の不誠実な対応によって原告らが被った甚大な精神的苦痛を金銭に見積もれば,各自金300万円を下らない。 (被告の主張)黙示の労働契約の成立を前提とした主張については,そもそも,本件においては,同契約は成立しておらず,不法行為を構成するとはいえない。 また,原告らの姫路工場における就労は,原告ら・S間の雇用契約をもとにして,被告・S間の本件出向協定,本件業務委託契約ないし本件派遣契約によって行われたものであり,それ自体が不法行為を構成するものではなく,原告ら各人の処遇は,原告ら・S間で契約をして定められているものであって,それらの事情が被告との関係で不法行為を構成すると解すべき理由はなく,また,雇止めが違法であると解することもできず,これについて不法行為が成立すると解する理由はない上に,雇止めの理由は,急激な減産からの回復がされていない中で本件是正指導によりやむなく行った直接雇用を期間満了によって終了したものにすぎず,労働組合に対する不当労働行為であるなどの理由ではない。 したがって,原告ら主張の不法行為が成立しないことは明らかである。 第3争点に対する判断 本案前の答弁について被告は,答弁書において,請求の趣旨第1項に関し,訴え却下を求めている したがって,原告ら主張の不法行為が成立しないことは明らかである。 第3争点に対する判断 本案前の答弁について被告は,答弁書において,請求の趣旨第1項に関し,訴え却下を求めているが,これは,同書面陳述当時,いまだ本件期間雇用契約が存続していたことによるものであるから,同契約終了後である現時点(口頭弁論終結時)においては,理由がない。 認定事実前記前提事実に加え,証拠(各項末尾掲記)及び弁論の全趣旨によれば,以 下の事実を認めることができる。 (1)被告は,平成15年12月当時,姫路工場につき,ベアリング製造の請負化を目指していたが,Sとの協議の結果,同社には同製造に関する技能,経験がなく,いきなり請負化しても単独での運用は難しいため,まずは被告がSから出向の形態で同社の社員を受け入れ,出向者が技能を習得することができたと判断された時点において,請負形態での運用に移行することとした。 そこで,被告は,同月1日,Sとの間で,同社からの出向社員を被告の事業に協力させることを目的として,「出向社員の取り扱いに関する協定書」(本件出向協定)を締結し,同社からの社員の受入れを開始した。 なお,被告では,その当時,姫路工場において,工場見学は実施していなかったが,当初受け入れた出向社員4名のうち3名が3か月以内に辞めたという事態を受け,Sと話し合った結果,就業前に工場見学をしてもらい,職場環境や業務内容を本人に見てもらうことで,姫路工場で使用する油のにおいが体質的に合わないとか,液体が肌に合わないなどという理由ですぐに辞めるといったトラブルを避けるため,工場見学を開始することとした。 (甲35,乙15ないし乙17,証人E4(尋問調書の丁数を示すが,当該箇所に限定する趣旨ではない。以下同じ。)・5・29・31,同 るといったトラブルを避けるため,工場見学を開始することとした。 (甲35,乙15ないし乙17,証人E4(尋問調書の丁数を示すが,当該箇所に限定する趣旨ではない。以下同じ。)・5・29・31,同H2・11)(2)ア原告Aは,平成16年4月19日,Sとの間で,契約期間につき同日から同年10月18日まで,配属事業所につき姫路工場,従事する業務につきベアリング加工・組立・検査,賃金につき基本賃金:時間給1200円(その他,通勤手当や所定時間外,休日及び深夜の割増あり。)で毎月20日締切・翌月5日支払,特記事項として「会社が必要とする優秀な技術又は経験を有する者は,期間満了後正社員として採用する事もある。」等の条件で,雇用契約を締結し,姫路工場での就労を開始し,同契約は半年ごとに更新された。 なお,原告Aは,同年4月15日,Sの担当者とともに,姫路工場を訪れた。そして,原告Aは,被告社員のIから,業務内容に関する説明を受けたほか,Iとともに,3人で工場見学をし,その後で,Iからいつから出勤できるかを聞かれたので,いつからでも答えたところ,同月19日から出勤することとなり,同出勤の際,前記契約の契約書を作成した。 イまた,原告Dは,平成17年3月18日,Sとの間で,契約期間につき同月22日から同年4月5日まで,基本賃金につき時間給840円とするほかは,主に原告Aと同条件で雇用契約を締結し,姫路工場での就労を開始し,その後は,基本賃金につき時間給1200円として,半年ごとに更新された。 なお,原告Dは,平成17年2月ころにFの面接を受け,その後,同人から,合格したので姫路工場の見学をしてもらいたい旨を言われ,同年3月17日,Fとともに,姫路工場に赴き,事務所にて,Eからベアリングの製造工程の説明を受け,今までこういう仕事の 受け,その後,同人から,合格したので姫路工場の見学をしてもらいたい旨を言われ,同年3月17日,Fとともに,姫路工場に赴き,事務所にて,Eからベアリングの製造工程の説明を受け,今までこういう仕事の経験があるかといったことを聞かれた後,3人で工場見学をした。同見学後,事務所に戻ったところ,Fは,Eに対し,原告Dはやる気があるのでお願いしたいこと,給料日の締めが毎月20日だから,翌21日以降から就労を開始するのがよいのではないかと言ったところ,Eは,同月22日から来てもらおうかなどと言った。そして,原告Dは,Fから,契約書を渡され,署名押印して持ってくるように言われたので,署名押印し,同月22日に初出勤した際,これをFに渡した。 ウさらに,原告J,同K及び同Lは,別紙2の「契約締結月」欄記載の時期に,Sとの間で雇用契約を締結し,姫路工場での就労を開始し,同契約は基本的に半年ごとに更新された。 (甲A1の1ないし4,甲A7,甲A8,甲F1の1ないし4,甲F3,甲F4,甲G1の1ないし4,甲H1の1ないし3,甲I1の1・2,乙15, 乙17,証人E10・14・23・24,原告A本人1・2・6・21,同D本人1ないし3・11)(3)その後,被告及びSは,同社の社員の技能習得や,常駐管理者等の体制の点から,請負に切り替えても問題ないであろうと考え,平成17年10月1日,期間につき同日から平成18年3月31日まで(ただし,原則として6か月ごとに更新される。),契約料金につき1人1時間当たり1700円として,本件業務委託契約を締結した。 しかし,Sと同社の社員との雇用契約は,何ら改められることはなく,上記業務委託は,依然として,S社員の技能や経験が不足しており,その実態は,専ら被告正社員がSの社員に対する段取り等の指揮監督を行 しかし,Sと同社の社員との雇用契約は,何ら改められることはなく,上記業務委託は,依然として,S社員の技能や経験が不足しており,その実態は,専ら被告正社員がSの社員に対する段取り等の指揮監督を行い,両者が混在して業務に従事しており,本件出向協定のときと格段の変化はなく,さらに,これらの一部が指揮命令に当たるとして業務改善命令を受けるなど,請負というには程遠いものであった。 そこで,被告は,業務委託から労働者派遣に切り替えたいというSからの強い要望を受け,平成18年8月20日,同社との間で,契約料金につき1人1時間当たり1700円,契約期間につき同月21日から平成19年8月20日までとして,本件派遣契約を締結した。また,被告は,Sとの間で,同社の個々の社員につき,派遣期間を同日までとして,労働者派遣個別契約を締結した。 (甲36,甲37の1・2・7・8・12・17・18・21・26・28・29・33・34,甲52,乙15,乙16,証人E3・25ないし27・33,同H3ないし6・23ないし25)(4)原告Aは,平成18年8月21日,Sとの間で,採用区分につき派遣社員,契約期間につき同日から平成19年8月20日まで,就業場所につき姫路工場,従事する業務につきベアリングの製造,賃金につき基本賃金:時給1200円(その他,通勤,年功及びセッターの各種手当,並びに所 定時間外,休日及び深夜の割増あり。)で毎月20日締切・翌月5日支払等の条件で,雇用契約を締結した。 また,原告Dも,平成18年8月21日,Sとの間で,手当の種類及び額が異なるほかは原告Aと同条件で,派遣社員として雇用契約を締結した。 さらに,原告J,同K及び同Lも,同日,Sとの間で,原告Aや同Dと類似の条件で(基本賃金:時給1200円の点は同じである。),派 額が異なるほかは原告Aと同条件で,派遣社員として雇用契約を締結した。 さらに,原告J,同K及び同Lも,同日,Sとの間で,原告Aや同Dと類似の条件で(基本賃金:時給1200円の点は同じである。),派遣社員として雇用契約を締結した。 (甲A1の5,甲F1の5,甲G1の5,甲H1の4,甲I1の3)(5)被告は,平成19年1月26日,全日本金属情報機器労働組合日本トムソン支部(以下「JMIU支部」という。)に対し,派遣受入期間につき,1年から3年に延長し,平成21年8月20日までと変更することにつき意見を求めたところ,JMIU支部は,平成19年2月21日,被告に対し,本件派遣契約は,平成18年8月21日より派遣受入開始となっているものの,実際には,平成15年12月から,「請負」という形式のもと,実態は正社員が業務指示を行う等の偽装請負が続けられてきており,この間,労働者は,実態として派遣として従事していたのであるから,組合としては,派遣期間延長ではなく,直接雇用すべきものと考える旨を回答した。 これに対し,被告は,平成19年3月8日のJMIU支部との団体交渉において,本件を団体交渉事項とは考えていない旨を改めて示すとともに,派遣延長の理由として,外部社員の活用の必要性を挙げた。 そして,被告は,派遣受入期間を,平成21年8月20日までと変更し,原告A,同D,同J,同K及び同Lにかかる派遣契約についても,平成19年8月21日以降のものは,その終期が平成21年8月20日までとなった。 (甲12,甲13,甲17,甲37の3ないし6・9ないし11・13ない し16・19・20・22ないし25・27・30ないし32・35ないし40,甲38の1ないし3・6ないし8・11ないし13・16・17・20・21・24・25・28ないし31 し11・13ない し16・19・20・22ないし25・27・30ないし32・35ないし40,甲38の1ないし3・6ないし8・11ないし13・16・17・20・21・24・25・28ないし31,甲52,甲A1の6・7,甲A2,甲F1の6・7,甲G1の6・7,甲H1の5・6,甲I1の4・5,証人M2・3)(6)ア原告Bは,平成19年9月26日,Sとの間で,派遣労働者として,契約期間につき同日から平成21年8月20日まで,就業場所につき姫路工場,従事する業務につきベアリングの加工,賃金につき基本賃金:時給1200円(所定時間外,休日及び深夜の割増あり。また,遅くとも平成20年9月21日以降は,交通費及び技能手当の支給あり。但し,試用期間(2週間)中の賃金等は減額。)等の条件で,雇用契約を締結した。 なお,原告Bは,平成19年8月ころ,Sの社員のNから,被告で工場見学をしてもらいたい旨を言われ,同年9月21日,Fとともに姫路工場に行った。そして,原告Bは,Eから仕事に関する説明を受けた後,3人で姫路工場の見学を行い,Eから,ここでやってもらおうと思うとか,ライン作業ではないので快適に仕事ができるであろうなどと言われた。その後,原告Bは,Fから,2,3日後に決められても困るので,今すぐ決めてほしい旨を言われたので,姫路工場で就労する旨を即答したところ,Fは,Eのもとへ向かった。さらに,原告Bは,Fとともに,Eのところに行き,そこで,Eから,いつころから来てもらえるかという趣旨のことを言われたので,同月26日から行ける旨を回答した。そして,原告Bは,同日,前記雇用契約の契約書に署名押印した。 イまた,原告Cは,平成19年8月21日,Sとの間で,派遣労働者として,契約期間につき同日から平成21年8月20日まで,就業場所につき して,原告Bは,同日,前記雇用契約の契約書に署名押印した。 イまた,原告Cは,平成19年8月21日,Sとの間で,派遣労働者として,契約期間につき同日から平成21年8月20日まで,就業場所につき姫路工場,従事する業務につきベアリングの加工,賃金につき基本賃金:時給1200円(所定時間外,休日及び深夜の割増あり。また,遅くとも 平成20年8月21日以降は,技能手当の支給あり。但し,試用期間(2週間)中の賃金等は減額。)等の条件で,雇用契約を締結した。 なお,原告Cは,上記契約に先立ち,Fから口頭で面接を受け,その際,姫路工場長の面接を受ける必要がある旨を言われた。そこで,原告Cは,平成19年8月7日,Fらとともに姫路工場に赴き,Eの面接を受けた。 その際,Eは,原告Cの履歴書のコピーを見ながら,同人に対し,以前の派遣契約の際の仕事内容,同種の仕事内容の経験の有無とか,交替勤務であるが大丈夫であるか,といった質問をし,また,研磨工場の旋盤のところで働いてもらう旨を述べた。そして,Eから,仕事の工程や内容の説明を受けた後,仮に来ることになった場合はすぐに来ることができるかを聞かれたので,すぐに行ける旨を答えた。その後,原告Cは,就業初日(同月21日)までに,F及びEとともに,姫路工場の見学をし,おおまかな仕事内容の説明を受け,就業初日の朝に,前記雇用契約の契約書に署名押印した。 ウさらに,原告O及び同Gは,別紙2の「契約締結月」欄の時期に,Sとの間で,契約期間につき平成21年8月20日まで,派遣労働者として,従事する業務につきベアリングの加工,賃金につき基本賃金:時給1200円(所定時間外,休日及び深夜の割増あり。また,原告Oについては,交通費及び遅くとも平成20年5月21日以降にセッター手当の支給あり。 但し,試用期間(2 ングの加工,賃金につき基本賃金:時給1200円(所定時間外,休日及び深夜の割増あり。また,原告Oについては,交通費及び遅くとも平成20年5月21日以降にセッター手当の支給あり。 但し,試用期間(2週間)中の賃金等は減額。)等の条件で,雇用契約を締結した。 (甲B1,甲C1の1・2,甲C3,甲C4,甲D1の1・2,甲D3,甲D4,甲E1の1・2,乙17,原告B本人2ないし7・9・14,原告C本人2ないし5・9・10)(7)その後,被告は,Sに対し,平成20年11月ころから,姫路工場での生産量の減少を理由に,本件派遣契約の終了を打診していたが,平成21年2 月3日,同年3月31日付けでの同社の派遣労働者全員の派遣契約解除を通知した。 これを受け,S神戸支店長P及びNは,同年2月3日,原告らに対し,原告ら・S間の雇用契約につき,解雇予告通知を行い,「…貴殿と弊社における雇用契約を終了せざるを得ない状況との判断に至りました。付きましては労働基準法(法二〇条)に則り,平成二十一年三月三十一日付で解雇する旨,取り急ぎ書面にて通知します。」等と記載された「解雇予告通知書」を渡し,これに署名するよう要求したが,原告らは,最終的に上記署名を拒否した。 (甲14,乙4,証人H6・7,同Q1)(8)原告らは,平成21年2月5日までに,JMIUに加入するとともに,原告ら及びJMIU支部は,同月16日,兵庫労働局に対し,本件業務委託契約は偽装請負であり,この期間も通算すると,派遣期間は5年以上となり,製造業における派遣の制限期間3年を大きく上回っているとして,労働者派遣法48条1項,49条の2第1項に基づき,被告が同法40条の4に基づき原告らに対し雇用契約の申込みをしなければならない旨を,被告に対して指導,助言,勧告するよう求めた。 いるとして,労働者派遣法48条1項,49条の2第1項に基づき,被告が同法40条の4に基づき原告らに対し雇用契約の申込みをしなければならない旨を,被告に対して指導,助言,勧告するよう求めた。 兵庫労働局は,同年3月23日,被告及びSに対し,平成15年12月1日から平成18年8月20日までの間に連続して出向及び業務請負として行われていた業務の実態は,出向目的がなく,適正な請負事業とも判断されず,労働者派遣に該当するから,Sが平成18年8月21日から連続して行っている労働者派遣は,既に派遣可能期間の制限を超えており,職業安定法44条,労働者派遣法35条の2及び同法40条の2第1項に違反すると認め,両社に対し,当該業務につき,労働者の雇用の安定を図るための措置を講ずることを前提に,直ちに労働者派遣を中止するよう是正指導をした。 これを受け,被告は,平成21年3月30日,本件派遣契約の解除通知を撤回し,改めて同年4月23日付けに変更し,Sも,原告らの解雇を,同日 付けに変更した。 (甲15,甲17ないし甲23,甲39,甲52,甲A3,乙2,証人M4ないし6)(9)被告人事総務部第1課課長のQは,平成21年4月2日,同部第2課課長のR及びEとともに,兵庫労働局を訪れ,被告の経営環境等を説明したが,同労働局からは,派遣労働者につき,被告において直接雇用することも考えるよう促された。 Q,E及び被告訴訟代理人の石橋達成(以下「石橋」という。)は,同月7日,兵庫労働局を訪れ,上記直接雇用の件について,派遣労働者の数人について,時給1200円により,平成21年9月末までの有期といった条件で雇用することを考えている旨を伝え,また,石橋は,同月以降の処遇について,期間満了により終了するが業務量等により更新することがあると て,時給1200円により,平成21年9月末までの有期といった条件で雇用することを考えている旨を伝え,また,石橋は,同月以降の処遇について,期間満了により終了するが業務量等により更新することがあるといった一般的な契約文言で対処することを考えているが,実際には被告の経営環境が大きく好転しない限り悲観的であり,同月以降の更新は難しい旨を述べた。これに対し,同労働局からは,派遣労働者の全員につき直接雇用することを検討するよう依頼された。 Q,R及びEは,同年4月14日,再度,兵庫労働局を訪れ,派遣労働者全員を直接雇用する方針を伝え,説明資料として,同雇用契約の募集・応募用紙を提出したところ,同労働局からは,是正報告をこの方針で受理する旨をいわれた。なお,上記募集・応募用紙には,契約期間満了後の更新に関する文言は,記載されていなかった。 (甲25,乙4,証人Q2ないし5・11ないし15)(10)被告は,平成21年4月14日,JMIU支部に対し,原告らにつき同月24日付けで,契約期間につき同日から同年9月30日まで,賃金につき時間給1200円(ほかに,時間外及び休日出勤の手当並びに交通費の支給あり。)で毎月末日締切・翌月15日支払,契約期間満了時に慰労金として7 万5000円を支給する等の条件で期間雇用社員として雇用したいと考えているとして,前記募集・応募用紙を渡し,原告らにつき,同月16日に同雇用契約の募集説明会を行い,同月20日に同契約手続を行う予定である旨を伝えるとともに,同年上半期から下半期にかけて業績が良くならない限り,契約更新は難しく,現在の受注状況が続くのであれば,契約更新は難しい旨を述べた。 これに対し,JMIU支部は,被告に対し,同年9月末までに限定した雇用では雇用の安定にならず認めることはできない 約更新は難しく,現在の受注状況が続くのであれば,契約更新は難しい旨を述べた。 これに対し,JMIU支部は,被告に対し,同年9月末までに限定した雇用では雇用の安定にならず認めることはできないから,引き続き正社員化を求める等として,同年4月16日に本社交渉を開催することを申し入れた。 これに対し,被告は,同月20日に前記の説明会及び契約手続を一括して行うこととしたが,正社員化の要求については,同月16日の本社交渉において,これを拒否した。 (甲25,甲26,甲44,甲52,甲A5,乙4,証人M7ないし9,証人Q5・11ないし15)(11)JMIU支部の組合員らは,平成21年4月15日,兵庫労働局を訪れ,同労働局に対し,被告の雇用計画案は,直接雇用ではあるものの,同年9月30日までの有期のものであり,これでは雇用の安定につながらないので,被告に対する指導をしてほしい旨を要請した。 また,JMIU支部の組合員らは,同年4月20日にも,兵庫労働局を訪れ,同労働局に対し,「雇用の安定」とは解雇予告付きではなく継続した雇用が保障されること及び派遣の時の労働条件を下回らないことが最低限必要であるところ,被告の上記提案はこれを満たさないこと,被告及びSがいまだ「是正計画書」を同労働局に提出していないため,同労働局が,両社に対して,同計画書の是非を判断するまで雇用契約を留保することとし,雇用の安定を講ずるという本件是正指導に沿って,指導するよう要請する旨の要請書を提出したところ,同労働局からは,是正報告書を被告からファックスで 取り寄せ,労働局として判断したものを午後2時までにJMIU支部に報告する旨の回答を得た。そこで,JMIU支部は,同日,被告に対し,是正計画書が提出されない場合には,午後2時からの前記雇用契約に関する説明会の実 局として判断したものを午後2時までにJMIU支部に報告する旨の回答を得た。そこで,JMIU支部は,同日,被告に対し,是正計画書が提出されない場合には,午後2時からの前記雇用契約に関する説明会の実施の延期をお願いする場合があることを伝え,同説明会の延期を申し入れた。 もっとも,被告は,同日,上記説明会を開催し,その際,Fとの間で,上記(10)認定の条件で,期間雇用契約を締結した。なお,同契約書には,「本契約は,本契約に定める契約期間の満了により終了する。ただし,職場の状況,本人の能力等を勘案して契約更新をすることがある。」との文言が記載されていた。 また,被告は,同日,兵庫労働局の求めに従い,前記期間雇用契約に関する募集要項,労働契約書及び誓約保証書をファックスで送信した。 (甲45ないし甲48,甲52,乙4,乙12,証人M8・9・11ないし13・29・30,証人Q6ないし8)(12)被告は,平成21年4月21日,兵庫労働局に対し,是正報告書を提出し,受理された。 ところで,JMIU支部は,同日前後,「本契約は,本契約に定める契約期間の満了により終了する。ただし,職場の状況,本人の能力等を勘案して契約更新をすることがある。」との文言が挿入された契約書のサンプルを入手したのを受けて,「雇用の安定」を実現するためには正社員化を実現するほかないし,百歩譲って有期契約を認めるとしても,Sとの契約同様,更新を前提とすることが大前提であるが,他方,就労を実現し,生活のための資金を確保できる最大の機会でもあることから,期間が限定されていること,更新が原則となっていないこと,賃金もダウンすることに異議を留めて契約書を提出し,就労を開始することで意志統一をするとともに,被告に対し,同契約に関する募集説明会及び契約手続の実施を要請した。 ,更新が原則となっていないこと,賃金もダウンすることに異議を留めて契約書を提出し,就労を開始することで意志統一をするとともに,被告に対し,同契約に関する募集説明会及び契約手続の実施を要請した。 なお,被告は,このころ,JMIU支部に対し,同年9月30日以降の契約更新の可能性について質問をされた際にも,経営環境が大きく好転しない限りは,更新は難しい旨を回答した。 (甲27,甲49,甲52,乙4,証人M14・15・33・34,同Q8・9・16・18・19)(13)被告は,平成21年4月23日,姫路工場で入社説明会(期間雇用契約の募集説明会)を実施した。この席で,原告Aは,参加した原告らを代表して,Qに対し,賃金は派遣時よりダウンするし,契約期間も同年9月末まででは労働局のいう雇用の安定には程遠いが,生活を維持するための収入を確保するため,やむなく異議を留めて契約したいと述べた。これに対し,Qは,異議を留めた契約書の提出を拒否することなく,受領した。 また,原告らは,同年4月24日,原告ら訴訟代理人の吉田竜一を通じて,被告に対し,被告の提案は,直接雇用するものであるとはいえ,従前,認められていた諸手当を全く認めない点で賃金ダウンを招来するものであるというだけでなく,雇用期間を同年9月30日までに限定し,不更新を原則としている点で,実質的に期間満了時に派遣切りを行うものと異なるところがなく,雇用の安定を図るものとは言い難く,納得できないとした上で,生活を維持するための収入を確保するため,やむなく直接雇用の募集に応募し,契約書を提出したが,同提出後,契約書に記載された賃金,契約期間,更新方法については異議を留めたものであり,あくまで正社員化を求めている旨を書面で通知した。 (甲33の1・2,甲52,乙3の1ない 書を提出したが,同提出後,契約書に記載された賃金,契約期間,更新方法については異議を留めたものであり,あくまで正社員化を求めている旨を書面で通知した。 (甲33の1・2,甲52,乙3の1ないし9)(14)被告は,平成21年3月10日,JMIU支部に対し,姫路工場につき,同年4月から6月まで毎月2日間の一時帰休を実施することを説明し協力を求めていたが,さらに本件期間雇用契約締結後,同年5月は4日間,6月は5日間,7月は5日間,8月は2日間にわたり,一時帰休を行った。 また,被告は,本件期間雇用契約締結後も,JMIU支部に対し,団体交渉等の席において,経営環境等を勘案すると,同年9月以降の同契約の更新は難しい旨を,重ねて説明していたが,同年8月25日の団体交渉において,経営環境を説明の上,更新しない旨を正式に伝えた。 (乙4,乙15,証人E17,同Q9・10)(15)被告(E)は,平成21年8月26日,Iを伴い,原告らに対し,本件期間雇用契約の期間満了による終了を通知するとともに,「期間雇用社員契約期間満了通知書」を渡そうとしたが,同人らが受け取らなかったため,これを郵送した。 そして,本件期間雇用契約は,同年9月30日の経過をもって,終了した。 (乙4,乙15) 争点1(原告Aら4名・被告間の労働契約の成否)について(1)判断基準ア原告Aら4名は,松下PDP事件判決につき,同判決が,発注元が請負業者による採用に関与していたとは認められないことを,発注元・労働者間の労働契約が成立したとは認められない根拠の一つとしていることから,「採用への関与」が認められた場合には,当初から,黙示の労働契約の成立が認定され得ることを示唆したものであるなどと主張する。 しかし,松下PDP事件判決は,その 根拠の一つとしていることから,「採用への関与」が認められた場合には,当初から,黙示の労働契約の成立が認定され得ることを示唆したものであるなどと主張する。 しかし,松下PDP事件判決は,その判文からしても,事実関係等に現れた全事情を総合的に判断した上で,発注元・労働者間の雇用契約関係が黙示的に成立していたものと評価することはできないと判断したものであることは明らかであって,同事実関係等に現れた事情のうち特に重要なものとして,誰が労働者の給与等の額を決定していたかとか,誰が労働者の配置を含む具体的な就業態様を決定し得る地位にあったかといった事情とともに,並列的に,発注元が請負業者による労働者の採用に関与していたかを挙げているにすぎず,仮に,全事情のうち,発注元による上記採用へ の関与がとみに大きく,その結果として,敢えて他の事情を判断するまでもなく,発注元・労働者間に黙示の労働契約が成立したものと評価できる場合があり得ることは格別,「採用への関与」がありさえすれば同契約が成立するといった規範を示したものとは到底解されない。 イまた,原告Aら4名は,本件出向協定が,Sが「業として」行うものにほかならず,労働者派遣ではなく,違法な労働者供給であり職業安定法44条違反を構成することを前提に,原告A及び同Dについては,松下PDP事件判決は妥当せず,Sとの間のみならず,被告との間でも二重に労働契約が成立していたなどと主張する。 この点,業務委託(請負)契約を前提とする場合,仮にその実態が労働者派遣であっても,労働者は,請負業者との間にのみ労働契約関係を有し,発注元との間には同関係を有しないのに対し,出向の場合,労働者は,出向元企業との労働関係を維持しつつ,出向先との労働契約関係に入るものであるから,業務委託契約の事案を前提とす み労働契約関係を有し,発注元との間には同関係を有しないのに対し,出向の場合,労働者は,出向元企業との労働関係を維持しつつ,出向先との労働契約関係に入るものであるから,業務委託契約の事案を前提とする松下PDP事件判決が,出向関係下の事例において,直接に妥当するものとまではいえない。 もっとも,松下PDP事件判決は,労働者・請負業者間の労働契約の有効性と,労働者・発注元間の労働契約の成否とを区別して判断しており,結局,出向関係の場合であれ,業務委託契約関係の場合であれ,労働者・就労先企業間に,黙示の労働契約の成立が認められるか否かは,同判示のとおり,事実関係等に現れた全事情を総合的に判断するほかはないというべきである。 (2)事実関係に基づく判断ア採用への関与について(ア) 前記2(2),(6)認定のとおり,原告Aら4名は,Sの社員であるFないしNの面接を受けた後(原告Aを除く。),姫路工場を訪れ,EないしIから業務内容等に関する説明を受け,同人らとともに,同工場の見 学をしているところ,原告Aら4名は,これをもって,Eら(被告正社員)が,原告Aら4名につき,被告の予定した作業に適応できる能力を持つか否かを確認して採用を決定したと主張する。 しかし,前記2(1)認定のとおり,姫路工場で工場見学を行うようになったのは,被告・S間で話し合った結果,Sの採用予定者に,事前に工場見学をしてもらい,職場環境,業務内容を本人に見てもらうことで,後のトラブルを避けるためであったにすぎない。 加えて,証拠(乙15ないし乙17,証人E5・6・28,同H8ないし10)によれば,Sにおいては,自社の募集広告に対する応募者に対し,面接及びテストを行い,希望の職種や履歴書等から総合的に採用の可否を検討し,採用可と判断した場合には,就業先 6・28,同H8ないし10)によれば,Sにおいては,自社の募集広告に対する応募者に対し,面接及びテストを行い,希望の職種や履歴書等から総合的に採用の可否を検討し,採用可と判断した場合には,就業先となる職場を見てもらい,その上で本人の意思を確認し,同人の了解が得られた場合に,雇用契約を締結することとしていたこと,被告が,これまでに,姫路工場に見学に来た者の就労を拒否したことは一度もないのに対し,自ら就労を取り止めた工場見学者は10名ないし20名にのぼることが認められる。 そうすると,原告Aら4名が,工場見学の当日に,Eらから,業務内容に関する説明や過去の職歴に関する質問を受けたことを考慮しても(Eの陳述(乙15,乙17)及び証言は,これに反する限度において,採用することができない。),Sによる労働者の採用は,姫路工場見学の前に同社によって既に決定されているのであって,これに被告が関与して,採用の可否を事実上決定したとは認められないといわねばならない。 (イ) なお,原告Aら4名は,被告の予定した作業に適応できる能力を持つことの内実を,油の臭いを嫌わずに仕事ができるということであると捉えているようであるが,これは労働者の技術的な能力に何ら関するもの ではなく,労働者の体質面ないし健康面に直結する事柄であって,仮にこれを目的として事前面接をしたところで,それが被告との間の黙示の労働契約を認めるための一事情になるとは到底解されない。また,仮にこの点を措くとしても,上記(ア)認定説示のとおり,被告は,姫路工場の見学に来た者の就労を拒否したことはなく,逆に工場見学の後に自ら就労を取り止めた者は10名ないし20名にのぼることからすれば,原告Aら4名がいうところの「被告が予定した作業に適応できる能力を持つ」か否かを最終的に判断して したことはなく,逆に工場見学の後に自ら就労を取り止めた者は10名ないし20名にのぼることからすれば,原告Aら4名がいうところの「被告が予定した作業に適応できる能力を持つ」か否かを最終的に判断していたのは,被告でもSでもなく,応募者(就労予定者)自身であったというほかはない。 (ウ) 加えて,原告Aら4名は,同人ら・S間の雇用契約の締結が,就労初日にされていることも,被告が原告Aら4名の採否を決定していたことの一事情として主張する。 しかし,前記(ア)認定説示のとおり,Sによる労働者の採用は,姫路工場見学の前に同社によって既に決定されていたことは明らかである。 そして,証拠(乙16,証人H10・12・23)によれば,Sが,工場見学の前に雇用契約を締結しなかった理由(趣旨)は,採用者の方から,就労予定現場を見ずに雇用契約をした後で,説明を受けていた話と異なるといったことを申し出られても,次の仕事をすぐに紹介できるわけではないし,入社手続が無駄になってしまうため,これを避けることにあったことが認められる。これらによれば,雇用契約の締結が就労初日,すなわち工場見学後であったことが,同見学(事前面接)の際に被告が採用を事実上決定していたことを示す事情にはなり得ないというべきである。 また,前記2(2),(6)認定のとおり,EないしIは,姫路工場見学の際に,原告Aら4名に対し,就労開始日時につき質問等をしているが(Eの陳述(乙17)及び証言は,これに反する限度において,採用す ることができない。),被告としても,就労者の受入れに当たっての準備が必要であり,仮にいきなり出勤されたりしたら困惑すると考えられることからすれば(証人E24),就労開始日時に関する質問も,上記準備をするに当たってのおおよその見通しを立てる目的でされ たっての準備が必要であり,仮にいきなり出勤されたりしたら困惑すると考えられることからすれば(証人E24),就労開始日時に関する質問も,上記準備をするに当たってのおおよその見通しを立てる目的でされたものであると理解するのが相当であって,上記質問が採否の決定等他の目的のもとにされたものであることを的確に示す証拠はない。 (エ) そして,以上の説示からすれば,姫路工場の見学が,原告Aら4名からの申し出により実施されたものでないことが,上記判断を左右するものでないことは,明らかである。 また,原告Aについては,Sの社員による面接の詳細については必ずしも明らかではないが,証拠(甲A7,甲A8,原告A本人3ないし5)によれば,原告Aは,他の人材派遣会社からSに紹介されたところ,同社は原告Aの製造系で就労したいという希望を予め把握しており,同人は,Sの社員から,製造業の仕事なら紹介できると言われた後,姫路工場の見学に赴いていることが認められることからすれば,Sによる面接等を経て工場見学を行うというおおまかな流れは,他の原告ら(原告B,同C及び同D)と同様であって,原告Aのみ別異に解すべき理由は見当たらない。 イ使用従属関係・労務給付関係・賃金支払関係について(ア)前記2(1),(3)認定及び証拠(甲52,甲A7,甲C3,甲D3,甲F3,乙15,証人E6・17ないし19・24・26,同H19・21,原告A本人8ないし10・17ないし19,同B本人7・8,同C本人6,同D本人3・4)によれば,姫路工場では,本件出向協定当時から,原告ら受入労働者に対する作業内容の指導,残業や休日出勤の指示等の指揮監督は,専ら被告の正社員が行っており,常駐管理者であったFは,工場とは別の建物で,出退勤の管理や給与の計算等を行ってい たに 告ら受入労働者に対する作業内容の指導,残業や休日出勤の指示等の指揮監督は,専ら被告の正社員が行っており,常駐管理者であったFは,工場とは別の建物で,出退勤の管理や給与の計算等を行ってい たにすぎず,同指揮監督をするSの社員は存在しなかったこと,生産ラインにおいても,被告の正社員と受入労働者とが混在して業務に従事しており,受入労働者が使用する機材や制服,更衣室,ロッカー等は,全て被告が用意していたことのほか,そもそも,被告が,Sに対し,姫路工場で勤務する受入労働者の補充を依頼する際は,現場からの要請に基づき,同社員の就労場所や配置を事前に決定していたことが認められる。 また,証拠(甲35)によれば,本件出向協定においても,被告は,出向者につき,同人の責めに帰すべき事由が発生した場合には,出向期間中にかかわらず,同人の出向を取り消すことができる権限を有していたことが認められる。 これらによれば,被告が,原告Aら4名に対し,作業上の指揮命令権のほか,配置・懲戒の権限を有していたといえる。 (イ)a(a)次に,原告Aら4名は,被告が,Sに対し,業務委託料を一貫して出来高ではなく時間給として支払い,Sから原告Aら4名に対し支給される諸手当についても全額負担し,昇給も決定していた以上,同人らの賃金は,被告が実質的に決定していたと主張する。 (b)しかし,被告が,Sに対し,業務委託料等を出来高ではなく時間給として支払っていた点については,それは両者間の契約内容の問題にすぎず,また,Sが,自己の雇用する従業員に対し賃金としていくらを支払うか,被告から支払を受ける業務委託料等から,どの程度を自己の利益分として差し引くかは,まさにSが自ら決定すべき事柄であって,それに被告が関与するとは考えがたく,同関与 に対し賃金としていくらを支払うか,被告から支払を受ける業務委託料等から,どの程度を自己の利益分として差し引くかは,まさにSが自ら決定すべき事柄であって,それに被告が関与するとは考えがたく,同関与を認めるに足りる証拠も見当たらず,かえって,証拠(甲35)によれば,本件出向協定においては,賃金及び賞与につき,Sが同社の定める基準により支給し,それにかかわる費用は別に定める基準により両社がそれぞれ負担すると定められていること,出向者にか かわる保険についても,労災保険を除いては,健康保険,厚生年金保険及び雇用保険は,いずれもSの取扱いに従い,その保険料は同社が負担していたことが認められる。 これによれば,被告が,Sの社員であった原告Aら4名の賃金を決定していたとは,認められないといわざるを得ない。 (c)また,年功手当,セッター手当及び技能手当については(前記2(4),(6)認定参照),証拠(証人H15・16・29ないし31・33・34)によれば,Sが,姫路工場におけるベアリング製造工程の同社による請負化を目指す過程において,同社の社員のモチベーションを維持するために支給することとし,被告に掛け合い,その負担をさせたものであることが認められる。 そうすると,上記手当の支給は,Sが主体的に決定したものであることは明らかである。 なお,上記認定のとおり,上記手当を支給することとした経緯からすれば,それは,本来,Sが負担すべきものであって,被告が負担すべきものとは解し難い面があるのは事実である。しかし,業務請負・派遣会社は,業務委託元・派遣先から支払を受ける業務委託料ないし派遣料のなかで,自己の従業員に対し給与等を支払いつつ自らの存続を図るものであることからすれば,業務請負・派遣会社が,業務委託元・派遣先に対し,新たな手当 元・派遣先から支払を受ける業務委託料ないし派遣料のなかで,自己の従業員に対し給与等を支払いつつ自らの存続を図るものであることからすれば,業務請負・派遣会社が,業務委託元・派遣先に対し,新たな手当を支給するに当たり,業務委託料ないし派遣料そのものの改訂,ないし,それとは別に手当分の上乗せを要請することは十分にあり得ることというべきであり,本件も,この趣旨のもとに捉え得るというべきである。 bまた,原告Aら4名は,被告が,原告A及び同Dに対し,作業上の指揮命令権を取得し,出退勤の管理を行っていたにとどまらず,配置,懲戒,解雇(雇止め)に関する権限をも保持していたことから,労務 給付請求権を有していたと評価できると主張する。 この点,被告が,原告Aら4名に対し,作業上の指揮命令権のほか,配置,懲戒の権限を有していたことは,前記(ア)説示のとおりである。 しかし,証拠(甲35)によれば,本件出向協定において,被告が出向社員に対して有する懲戒権限は,出向者が自己の責めに帰すべき事由を生じさせた場合に,その者をSに復帰させるにとどまり,それを超えて,同出向者を同社から解雇する権限までをも有していたわけではないことは,明らかである。 この点,原告Aら4名は,Sが,原告らとの間で,同人らが姫路工場で就労する限りにおいて雇用契約を締結する意思しか有せず,被告もその旨を十分認識していたことからすれば,実質的には被告が原告らを解雇する権限を保有していたと評することが可能である旨を主張する。 しかし,Sが,どのような趣旨の下に自社の社員を採用するかは,同社独自の問題であって,仮に上記原告Aら4名主張のとおりであるとしても,あくまで原告らを解雇する権限を有するのはSのみであって,それが被 かし,Sが,どのような趣旨の下に自社の社員を採用するかは,同社独自の問題であって,仮に上記原告Aら4名主張のとおりであるとしても,あくまで原告らを解雇する権限を有するのはSのみであって,それが被告による出向社員に対する懲戒権限と連動していたからといって,そのことから直ちに,被告が原告Aら4名に対する解雇権限を有していたということにはならないというべきである。 (3)まとめ以上のとおり,被告は,Sによる原告Aら4名の採用に関与していたとは認められない上に,原告Aら4名に対する作業上の指揮監督権や配置・懲戒の権限を有していたものの,解雇権限まで有していた訳ではなく,賃金や諸手当についても,Sが主体的に決定していたことが認められる。 これらの諸事情を総合考慮すると,原告Aら4名・被告間の黙示の労働契約が成立していたとまで評価することは困難というべきである。 したがって,原告Aら4名・被告間に黙示の労働契約が成立したとする原告Aら4名の主張は,理由がない。 争点2(解雇(更新拒絶)の無効)について(1)上記3説示のとおり,原告Aら4名・被告間には,黙示の労働契約の成立は認められないから,同契約の成立を前提としてその解雇(更新拒絶)の無効をいう原告Aら4名の主張には,理由がない。 (2)アそして,黙示の労働契約の成立が認められないとすると,原告Aら4名・被告間に成立したのは,本件期間雇用契約ということになるところ,原告Aら4名は,①本件是正指導によって成立した本件期間雇用契約は,本来,期間の定めのない契約として実現されなければならなかったのであり,②仮に有期契約によって直接契約を実現すること自体は許されるとしても,「雇用の安定」を図る措置を講じるようにとの本件是正指導からすれば,実質的には「1か月」だけの されなければならなかったのであり,②仮に有期契約によって直接契約を実現すること自体は許されるとしても,「雇用の安定」を図る措置を講じるようにとの本件是正指導からすれば,実質的には「1か月」だけの雇用を確保するにすぎない本件期間雇用契約では,「雇用の安定」を図る措置とは到底評価できない旨を主張する。 しかし,前記2(9),(10),(12)認定のとおり,被告は,平成21年4月7日の時点で,兵庫労働局に対し,本件是正指導に基づく措置として,派遣労働者の数人につき,時給1200円により,同年9月末までの有期という条件で雇用することを考えていること,及び,同月以降の処遇につき,契約上は,期間満了により終了するが業務量等により更新することがあるといった文言で対処することを考えているが,実際には,被告の経営環境が大きく好転しない限り,更新は難しい旨を述べたこと,これに対し,兵庫労働局からは,派遣労働者全員の直接雇用を検討するよう指導されたものの,有期といった契約条件に関する指導がされた事実はなく,かえって,被告が,同年4月14日,同労働局に対し,派遣労働者全員を直接雇用する旨の方針を伝えたところ,同労働局からは,当該方針のもとに是正 報告書を受理する旨を言われ,実際に,同月21日には是正報告書が受理されたことが認められる。 これらの事実経過からすれば,本件是正指導にある「雇用の安定」とは,期間の定めのない契約や,更新を前提とする有期契約の実現までをも意味するものではないといわざるを得ない。 イなお,この点につき,原告Aら4名は,厚生労働省職業安定局「労働者派遣事業関係業務取扱要領」(平成21年5月・甲58)によれば,「雇入れの指導又は助言,勧告,公表の内容」として,「法の規定により派遣先に対し派遣労働者を雇い入れるよう指 生労働省職業安定局「労働者派遣事業関係業務取扱要領」(平成21年5月・甲58)によれば,「雇入れの指導又は助言,勧告,公表の内容」として,「法の規定により派遣先に対し派遣労働者を雇い入れるよう指導又は助言,勧告する際には,…期間の定めなき雇用によるよう指導又は助言,勧告する。」(250頁)とあることを理由に,本来,本件是正指導による直接契約は期間の定めのないものとして実現されるべきである旨を主張する。 しかし,上記記載は,直接には厚生労働大臣による指導,助言ないし勧告の在り方につき定めたものにすぎないし,仮にこの点を措くとしても,上記ア説示のとおり,本件では,兵庫労働局が,本件期間雇用契約を内容とする是正報告書を受理したことは明らかであって,上記記載から,直ちに,原告Aら4名・被告間の直接契約が期間の定めのないものとして実現されなければならないとまではいえない。 ウまた,原告Aら4名は,当初,原告らに開示された契約案では,更新条項は存しなかったのに対し,最終的に原告らとの間で交わされた本件期間雇用契約書においては,更新条項が挿入されていることや,就業場所についても,姫路工場に限定されていたこれまでの契約と異なり,異動命令の可能性に触れていることからすれば,期間満了時には更新のための最大限の努力をすること,姫路工場での更新が難しい場合も,原告らを姫路工場から異動させることによって契約の更新を検討する旨を兵庫労働局に報告し,同労働局もこの点を評価して,被告の直接契約案を受理したものであ ると考えられるとする。 しかし,前記ア説示のとおり,被告は,既に平成21年4月7日の時点で,兵庫労働局に対し,契約の更新につき,その旨の文言は入れるものの,契約更新自体は難しい旨を伝えていたことからすれば,仮に更新のために最大限の ア説示のとおり,被告は,既に平成21年4月7日の時点で,兵庫労働局に対し,契約の更新につき,その旨の文言は入れるものの,契約更新自体は難しい旨を伝えていたことからすれば,仮に更新のために最大限の努力をする旨を伝えていたとしても,それは,景気動向を睨みながらの努力を意味するものであると考えるのが相当であって,同労働局が,それを超える「努力」を期待して,是正報告書を受理したかは,はなはだ疑問である。 さらに,姫路工場からの異動の点についても,兵庫労働局がこれに関心を示していたことを認めるに足りる証拠はなく,前記2(11)認定のとおり,JMIU支部は,本件期間雇用契約につき,雇用期間(及び賃金)を問題として活動していたことは認められるものの,鎌倉工場や岐阜製作所への異動をも考慮して,本件期間雇用契約を更新するよう,被告に直接求めたり,あるいは兵庫労働局に対し被告への指導等を求めていたことを認めるに足りる証拠もない。 したがって,被告が,兵庫労働局に対し,姫路工場での更新が難しい場合には,原告らを姫路工場から異動させることによって契約の更新を検討する旨を報告し,同労働局がこの点を評価して是正報告書を受理したものと推認することはできない。 (3)したがって,本件の雇止めが,無効であるとは認められない。 争点3(賃金請求権の有無)について上記4説示のとおり,本件における更新拒絶は無効とはいえないから,原告Aら4名には,同更新拒絶後の被告に対する賃金請求権は発生していない。 したがって,この点に関する原告Aら4名の主張には,理由がない。 争点4(被告の不法行為)について(1)原告らが主張する被告の違法性のうち,派遣切りしたことの違法性につい ては,原告ら・被告間において黙示の労働契約が成立していることを前提とする主張であ 争点4(被告の不法行為)について(1)原告らが主張する被告の違法性のうち,派遣切りしたことの違法性につい ては,原告ら・被告間において黙示の労働契約が成立していることを前提とする主張であるところ,原告Aら4名については,前記3説示のとおり,同契約の成立は認められず,他の原告らについても,原告Aら4名と同様,被告との間に黙示の労働契約が成立したことを認めるに足りる証拠はないから,理由がない。 (2)また,前記2(9)ないし(12)認定のとおり,被告は,平成21年4月7日の時点で,兵庫労働局に対し,本件是正指導に基づく措置として,派遣労働者の賃金につき時給1200円の条件で雇用することを考えていることを伝え,同月14日には,その旨の記載のある募集・応募用紙を提出し,JMIU支部に対しても,同様の説明をし,同募集・応募用紙を交付したこと,そして,兵庫労働局は,同月20日に,JMIU支部から,「雇用の安定」とは派遣労働時の労働条件を下回らないこと等が最低限必要である旨の要望を受けたにもかかわらず,同月21日,被告から,賃金につき上記条件のままで是正報告書を受理したことが認められる。 このような一連の経過からすれば,原告らに,被告との間で従前の労働者派遣契約下の雇用契約と同様の条件で直接契約が締結されるとの期待が生じていたとみるのは困難である。 したがって,同期待が裏切られたことを前提に,従前の手当等の支給を打ち切ったことの違法をいう原告らの主張には,理由がない。 (3)さらに,本件期間雇用契約を更新しなかったことが本件是正指導に反しないことは,前記4(2)説示からして,明らかである。また,同更新をしなかったことが,兵庫労働局に対し被告への指導等を求めた原告らに対する不利益取扱いであるとか,被告が労働組合を嫌悪してい 導に反しないことは,前記4(2)説示からして,明らかである。また,同更新をしなかったことが,兵庫労働局に対し被告への指導等を求めた原告らに対する不利益取扱いであるとか,被告が労働組合を嫌悪していることによるものであることを示す的確な証拠はないから,これが不当労働行為を構成するとの原告らの主張にも,理由がない。 (4)しかし,前記2(1),(3),(5),(8)認定のとおり,被告はSとの本件出向 協定を2年足らずで本件業務委託契約に切り替え,さらに1年足らずで本件派遣契約に切り替えており,その間,専ら被告正社員がSの社員に対する指揮監督を行い,両者が混在して業務に従事するという就業実態には何ら変わりはなく,その点について業務改善命令を受けたにもかかわらず,何ら改善することなく,更に本件是正指導を受けたものであって,もともと,本件出向協定締結時から姫路工場におけるベアリング製造工程のSによる請負化を目指していたことを考え合わせると,本件出向協定が締結された平成15年12月当初から,その実態は労働者派遣であったというべきである。しかも,製造業における労働者派遣は,平成16年3月1日になって初めて解禁されたものであり,当初は1年間の派遣しか認められておらず,平成19年3月1日以降も3年間の派遣しか認められていなかったにもかかわらず,被告は,Sとともに,偽装出向,偽装請負,労働者派遣と契約形態を巧みに変化させながら,本件是正指導がされた平成21年3月23日までの間をみても,実に5年超の長きにわたって,違法に労働者派遣を実施していたことが明らかである。 そして,本件出向協定を締結し,その後2年も経たないうちに本件業務委託契約に切り替えたものの,わずか1年足らずでさらに本件派遣契約に変更し,派遣労働期間も当初の1年から3年に変更するといっ である。 そして,本件出向協定を締結し,その後2年も経たないうちに本件業務委託契約に切り替えたものの,わずか1年足らずでさらに本件派遣契約に変更し,派遣労働期間も当初の1年から3年に変更するといった経緯等からすれば,被告が,前記違法状態にあること,及び,本来は早期に完全な業務委託(請負)等を実現しなければならないことを十分認識していたと推認される。 それにもかかわらず,被告は,これらを実現することなく,本件派遣契約を締結し,漫然と派遣労働を継続したのであるから,これは,法が許容する場合に限って三者間労働関係を認めている労働関係法規の趣旨に反するものであって,原告らに対し,不法行為を構成するというべきである。 そして,上記説示のとおり,原告らは,5年超の長きにわたる違法な派遣労働下において,就労をさせられたという違法の重大性にかんがみれば,同 人らに対する慰謝料としては,各50万円が相当である(なお,前記2認定のとおり,各原告らの姫路工場での就労期間には差異があるが,違法な労働者派遣状態が継続している期間,当該違法性の重大さは刻々と増幅しているものと考えられるので,同契約及び同就労開始の先後により,慰謝料の額に差を設けるべきとはいえない。)。 第4 結論 以上の次第で,原告らの請求は,被告に対し,各50万円及びこれに対する平成21年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払をそれぞれ求める限度で理由があるから,この範囲でこれを認容し,その余の請求は,いずれも理由がないから,これを棄却すべきである。 よって,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所姫路支部裁判長裁判官中村隆次裁判官吉澤暁子 文のとおり判決する。 神戸地方裁判所姫路支部 裁判長裁判官 中村隆次 裁判官 吉澤暁子 裁判官 舘野俊彦

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る