主文 被告人を懲役13年に処する。 未決勾留日数中180日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,A,B,C,D,E及びFと共謀の上,第1 平成25年6月28日午前4時10分頃,広島市a区b町c番d号所在の医院東側駐車場において,同所に駐車中の普通乗用自動車3列目後部座席にGを乗車させ,被告人及び前記6名が被害者の両脇等に乗車して同車を発進させ,その頃から同日午前5時40分頃までの間,広島県呉市e町所在のHの北東約750メートル付近市道上に至るまで,同人を前記3列目後部座席に乗車させたまま同車を疾走させるなどし,その間,同人が同車内から脱出することを不能にし,もって同人を不法に監禁し第2 前記同日午前4時10分頃から同日午前5時頃までの間,同県内を走行中の前記自動車内において,前記Gに対し,その顔面及び腹部等を多数回殴打し,その顔面等にたばこの火を数回押し付け,その身体に馬乗りになって押さえ付けるなどの暴行を加え,その後,同人の手提げバッグ内に現金及びキャッシュカードが在中していることを認めるや,前記第1記載の犯行及び前記暴行により反抗を抑圧されている同人から現金等を強取するなどしようと企て,同日午前5時頃,同県内を走行中の同車内において,同人に対し,その身体を押さえ付ける暴行を継続したまま,どうせ死ぬのだから財布などはもういらないだろう,キャッシュカードの暗証番号を言ったら許してやるなどの趣旨の発言をし,キャッシュカードの暗証番号を教えなければ更なる暴行を加えかねない気勢を示して脅迫し,同人から,同人所有又は管理の現金約4万4000円及び同人名義のキャッシュカード等在中の前記バッグ1個(時価合計不詳)を強取するとともに,同キャ ッシュカードの暗証番号を聞き出し,同人名義の預金口座 ら,同人所有又は管理の現金約4万4000円及び同人名義のキャッシュカード等在中の前記バッグ1個(時価合計不詳)を強取するとともに,同キャ ッシュカードの暗証番号を聞き出し,同人名義の預金口座から預金の払戻しを受け得る地位を取得し,もって財物を強取するとともに財産上不法の利益を得た上,その頃から同日午前5時40分頃までの間,同県内を走行中の同車内において,同人に対し,その身体を押さえ付ける暴行を継続し,さらに,同日午前5時40分頃,前記第1記載の市道上において,同車から降車させた同人に対し,多数回にわたり,その顔面及び腹部等を拳で殴り,足で蹴るなどの暴行を加え,引き続き,同市道の南方約27メートル付近山道上に同人を連行し,同日午前6時頃,同所において,被告人及びBが,殺意をもって,順次,前記Gの頸部を両手で強く絞め付け,よって,その頃,同所において,同人を頸部圧迫による窒息により死亡させて殺害し第3 前記第2記載の犯行に引き続き,前記第2記載の山道上において,前記Gの死体を同山道東側斜面に投棄した上,同死体をそのまま放置して立ち去り,もって死体を遺棄したものである。 (証拠の標目)略なお,被告人は,公訴事実記載の「どうせ死ぬけえ,財布とかもういらんでしょ。」という発言は,誰もしていないと述べるが,共犯者であるA,C,D及びEは,それぞれ異なる立場にありながら,当公判廷において,誰が発言したかという点については曖昧であるものの,一致して,どうせ死ぬのだから財布とかもういらないんだろうという趣旨の発言が自動車内でなされたと供述している。金品を奪われることに抵抗を示していた被害者に対し,共犯者のいずれかからそのような発言がなされたという経緯は自然である。それらの供述については十分に信用性が認められ,自動車内において 供述している。金品を奪われることに抵抗を示していた被害者に対し,共犯者のいずれかからそのような発言がなされたという経緯は自然である。それらの供述については十分に信用性が認められ,自動車内において,どうせ死ぬのだから財布などはもういらないだろうという趣旨の発言があった事実を認めることができる。 ただし,この発言が被告人又は共犯者らの誰によってなされたのかは,本件の証拠関係からは明らかにすることができなかった。 (法令の適用)被告人の判示第1の所為は,刑法60条,220条に,判示第2の所為は,同法60条,240条後段に,判示第3の所為は,同法60条,190条にそれぞれ該当するところ,判示第2の罪については無期懲役刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるが,判示第2の罪について無期懲役刑を選択したので,同法46条2項本文により,他の刑を科さず,なお平成26年法律第23号附則2条本文により同法による改正前の少年法51条2項を適用して被告人を懲役13年に処し,刑法21条を適用して未決勾留日数中180日をその刑に算入することとし,訴訟費用は刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (処遇の選択及び量刑の理由)第1 処遇の選択について 1 弁護人は,少年法55条に基づき,被告人を家庭裁判所に再移送すべきであると主張している。この点について,当裁判所の判断を示す。 2 本件犯情及び被告人の関与の度合いについて検討する。 ⑴ 被告人は従前から被害者に対して愛憎相半ばする感情を抱いていたところ,無料通信アプリであるLINEのグループチャット上で被告人が被害者に対して悪口を言ったことに応じて,被害者が言い返してきたため立腹し,本件において被害者に対して監禁や暴行をしようと考えるに至っている。こ 信アプリであるLINEのグループチャット上で被告人が被害者に対して悪口を言ったことに応じて,被害者が言い返してきたため立腹し,本件において被害者に対して監禁や暴行をしようと考えるに至っている。このような動機は短絡的かつ身勝手なものである。 さらに,被害者に対して抱いていた怒りを根底に据えながら,本件一連の犯行の中で,被告人が当時交際していたBが被害者の手を押さえ付ける行為を恋人同士が手をつないでいるかのように思い込んだり,返り血が飛ぶからという理由でカッターナイフで刺すことをBから制止され たことをもBが被害者をかばっていると思い込んだりして,その嫉妬心から怒りを爆発させ,殺意を抱いて,被害者の首を絞める行為に至っている。 Bが被害者と意思を通じあっているとか被害者をかばっているとか思い込むなど,被告人の被害者に対する殺害動機の形成過程に,いささか奇妙なところが見受けられる。このように,被告人が唐突に被害者に対して嫉妬心を抱いたり,被害者に対する怒りをコントロールできなくなったりすることには,被告人の人格の構成要素となっている素行障害,境界性パーソナリティ及び未分化なサディズムが影響しており,これらの障害の背景には,持続的に虐待を受けてきたという被告人の過酷な生い立ちがあると認められる。 しかしながら,このような被告人の生い立ちについては同情できるものの,本件の被害者に対する殺意の形成と直接的な関係があるわけではなく,これらの点を考慮しても,被害者に殺意を抱くに至ったことにつき,酌量すべき点があるとはいえない。結局,被害者に対する殺害動機は,理不尽で自己中心的なものであると言わざるを得ない。 ⑵ 次に犯行態様についてみると,被告人と共犯者らは,E及びFが被害者の味方のふりをして被害者を誘い出し,本件自動車の3列目後 殺害動機は,理不尽で自己中心的なものであると言わざるを得ない。 ⑵ 次に犯行態様についてみると,被告人と共犯者らは,E及びFが被害者の味方のふりをして被害者を誘い出し,本件自動車の3列目後部座席の真ん中に座らせ,多数人で囲み,逃げ場のない車内に監禁した。本件自動車内では,被告人を含む複数人が,被害者に対し一方的に殴るなどの暴力をふるうとともに,被告人は共犯者からたばこをもらい受けながら,顔に対するものも含み複数回にわたって火の点いたたばこを押し付けるという暴行を行っている。さらに,f市道上で自動車を降りてからも,被告人のほか,B,C,Aという男性3名で,無抵抗の被害者に対して,手加減することなく苛烈な暴行を加えており,このような行為態様は残虐である。 さらに,f山道では,被告人が被害者に馬乗りになりながら二度にわたり首を絞めた後,Bにおいて,その拍動等を確認しながら確実に被害者を死に至らしめ,その死体を斜面に投げ捨て,その場に放置して立ち去るなど,凄惨かつ残酷な行為をしている。 このような残虐な犯行によって,被害者の命が奪われており,かかる結果はあまりにも重大である。犯行から約1年が経過した現在においても,被害者遺族が被告人に対して強い処罰感情を抱いていることも当然であるというべきである。 ⑶ 被告人の犯行への関与の度合いをみると,被告人は,本件一連の犯行の発端となる監禁や暴行の計画を立て,自動車内やf市道上での暴行は先頭を切って行い,更には最後の首絞め行為も二度にわたって自ら行っていることからすると被告人は終始主導的立場にあったということができる。 ただし,強盗の点については,被告人が言い出したとは認められず,被告人が特に主導的であったとまではいえない。また,自動車内における暴行までは,他の 人は終始主導的立場にあったということができる。 ただし,強盗の点については,被告人が言い出したとは認められず,被告人が特に主導的であったとまではいえない。また,自動車内における暴行までは,他の共犯者らもそれを煽るような言動をしており,f市道上での暴行は,B,C及びAも積極的に行っており,共犯者らへの体面を気にする被告人の心情も相まって,犯行がエスカレートしたという側面もある。 しかし,これらの点を考慮しても,本件犯行の全体にわたり,被告人が終始主導的な立場にあったという評価は揺るがない。 ⑷ 以上の事情からすると,本件犯情の悪質性は顕著であり,被告人の犯行への関与の度合いは大きい。 3 以上に加え,弁護人が,家庭裁判所への移送が相当である理由として挙げた点についても検討する。 ⑴ 前記に述べたとおり,被告人の生い立ちについて同情すべき面がある ことは十分に考慮すべきである。 ⑵ 本件においては,被告人の自首が成立する。被害者の母親からの電話等によって追い詰められて自首に至った経緯や出頭後も共犯者の犯行について虚偽の供述をしていた経緯は指摘できるものの,被告人が共犯者の反対を押し切って自首をしたことによって,被害者の遺体が発見され,本件犯行の全体像が明らかになったことは事実であり,この点は,行為後の情況として,相当程度考慮すべきである。 また,少年審判後の変化として,被告人と母親との関係が改善し,相互に自身の心情や事情を伝えることができるようになってきたこと,そのことによって被告人が被害者とその遺族の気持ちについても理解できるようになってきたことが認められるとともに,被告人自身も更生へ向けた意欲を見せていることも認められる。 4 以上,弁護人の挙げた点についてはそれぞれ考慮すべきであ 族の気持ちについても理解できるようになってきたことが認められるとともに,被告人自身も更生へ向けた意欲を見せていることも認められる。 4 以上,弁護人の挙げた点についてはそれぞれ考慮すべきであり,被告人の更生という観点では,少年院における処遇の適切さを否定することはできない。しかしながら,被告人の抱える問題点に照らしてみて刑事施設では被告人の更生が期待できずどうしても少年院での処遇が不可欠であるとまではいえない。そして,何より本件犯情が前記のごとく極めて悪質であり,被告人の関与の度合いが大きいことからすると,本件は,被告人に対して保護処分を選択することが社会的に許容される事案であるということはできない。 よって,当裁判所は,本件につき,被告人を保護処分に付するのが相当であるとは認められず,刑事処分に付するのが相当と判断した。 第2 量刑について前記のような本件事案の性質,特に本件犯行の残虐性,動機の短絡さ,結果の重大性,被告人の役割の大きさからすると,強盗殺人を犯した18歳未満の少年に科すことができる有期の懲役刑の上限に近い刑を科すべき である。 その上で,強盗の点については被告人が主導的であったとまではいえないこと,本件犯行動機に被告人の不遇な成育歴に由来する障害が影響していること,被告人の自首によって事案が解明されたこと,少年審判後に被告人と母との関係が改善し,更生環境が整いつつあることなどを考慮し,有期懲役刑の上限よりはやや軽い主文の刑が相当であると判断した。 (検察官の求刑)懲役15年(弁護人の意見)家庭裁判所への移送平成26年11月4日広島地方裁判所刑事第2部 裁判長裁判官伊藤 寿 (弁護人の意見) 家庭裁判所への移送 平成26年11月4日 広島地方裁判所刑事第2部 裁判長 裁判官 伊藤寿 裁判官 三芳純平 裁判官 細田裕司
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