平成24(行ケ)10164 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成24年12月10日 知的財産高等裁判所 2部 判決 請求棄却
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判決文本文16,938 文字)

- 1 -平成24年12月10日判決言渡平成24年(行ケ)第10164号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成24年11月26日判決 原告エンデバーハウス株式会社 訴訟代理人弁理士徳岡修二竹内公孝北東慎吾 被告株式会社コスモプロジェクト 訴訟代理人弁護士吉原省三小松勉三輪拓也上田敏成弁理士苫米地正敏 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 原告の求めた裁判特許庁が無効2011-800153号事件について平成24年3月27日にし- 2 -た審決を取り消す。 第2 事案の概要本件は,特許庁から特許無効審決を受けた特許権者である原告が,審判請求人を被告として審決取消訴訟を提起した事案である。争点は容易想到性である。 1 特許庁における手続の経緯原告は,発明の名称を「断熱材」とする特許第4743676号(出願日:平成13年7月25日,優先権主張:平成12年8月3日,設定登録日:平成23年5月 である。 1 特許庁における手続の経緯原告は,発明の名称を「断熱材」とする特許第4743676号(出願日:平成13年7月25日,優先権主張:平成12年8月3日,設定登録日:平成23年5月20日,請求項の数:2)に係る本件特許の特許権者である。 被告は,平成23年9月1日,本件特許について無効審判(無効2011-800153号)の請求をした。 特許庁は,平成24年3月27日,「特許第4743676号の請求項1ないし請求項2に係る発明についての特許を無効とする。」との審決をし,その謄本は,同年4月5日,原告に送達された。 なお,原告は,本件訴訟係属中の平成24年5月29日,本件特許について,特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的として,訂正審判を請求したが,同年9月19日付けの訂正拒絶審決を受けた(甲15,乙3)。 2 本件発明の要旨本件発明の要旨は,特許第4743676号公報(甲14)の特許請求の範囲に記載されたものであり,これを分説して示すと,次のとおりである(請求項に応じて「本件発明1」,「本件発明2」という。)。 【請求項1】A.マトリックス繊維およびマトリックス繊維の融点よりも低い融点を有する成分を含む低融点繊維を混綿し,B.カーディングして形成したウェブを,クロスレイヤー処理によって積層した後,熱処理により一体化して形成した短繊維集合体からなり,- 3 -C.前記マトリックス繊維のうち少なくとも1種類がサイドバイサイド型の中空構造を有し,D.前記低融点繊維により繊維相互間の接触部の一部で接着しており,E.該繊維集合体の積層方向の一方の表面が1mm未満の厚さで膜状化していることを特徴とするF.断熱材。 【請求項2】G.低融点繊維の含量が5~95wt%で 触部の一部で接着しており,E.該繊維集合体の積層方向の一方の表面が1mm未満の厚さで膜状化していることを特徴とするF.断熱材。 【請求項2】G.低融点繊維の含量が5~95wt%であることを特徴とする請求項1記載の断熱材。 3 審決の理由の要点審決は,「本件発明1ないし本件発明2は,特開2000-199161号公報(甲1)に記載された発明(甲1発明)と,国際公開第99/43903号公報(甲2)に記載された発明(甲2発明)ないし特開平4-245965号公報(甲3)に記載された発明(甲3発明)及び周知技術に基づいて,当業者がその出願前に容易に発明をすることができたものである。」と判断した。 審決が上記判断の前提として認定した甲1~3発明,本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点,本件発明1と甲1発明との相違点についての判断,本件発明2と甲1発明との一致点及び相違点,本件発明2と甲1発明との相違点についての判断は,以下のとおりである。 (1) 甲1発明(分説記号は本件発明と対応する。)a.繊維長51mmのマトリックス繊維と繊維長51mmでかつマトリックス繊維の融点よりも低い融点を有する成分を鞘とする熱融着繊維を混綿し,b.カード機フィードローラーに投入し,シリンダーローラー,ドッファを通してウェブとし,さらにこのウェブをクロスレイヤーを通して所定の目付けとなるように積層した状態とし,さらにこれをスチームセット等の加熱処理を施し,熱融着繊維を溶融,接着させた不織布からなり,- 4 -c.前記マトリックス繊維が中空構造を有し,g.前記熱融着繊維の含量が5~60wt%であり,d.前記熱融着繊維により繊維相互間の接触部の一部で接着しており,e.熱処理により表面が膜状になっている,f 繊維が中空構造を有し,g.前記熱融着繊維の含量が5~60wt%であり,d.前記熱融着繊維により繊維相互間の接触部の一部で接着しており,e.熱処理により表面が膜状になっている,f.不織布吸音材。 (2) 甲2発明(A)熱収縮率の異なる2種のポリマーからなるサイドバイサイド型複合繊維の中空率5~30%の中空糸である,カット長25~150mmのポリエステル繊維と(B)鞘に芯より融点が低い低融点成分を使用した,カット長25~76mmの芯鞘型複合繊維とを混綿したカードウェブを積層した後に熱処理して形成された繊維積層体であって,立体的に連続した繊維の交絡部が上記芯鞘型複合繊維の鞘部の溶融によって融着されてなるポリエステル繊維製の住宅用断熱材。 (3) 甲3発明捲縮を付与した,熱的性質の異なる2種類のポリエステルを組み合わせて,サイド-バイ-サイド型に複合紡糸し,延伸し,必要に応じて機械捲縮をかけて得た,単繊度6~80デニールのポリエステル中空潜在捲縮性複合繊維の短繊維と,ポリエチレンテレフタレートを芯成分重合体,融点230℃以下のポリエステルを鞘成分重合体とした単繊度3~50デニールのポリエステル系中空芯鞘型複合繊維の短繊維とからなる繊維絡合体の成形体であって,該成形体の繊維の接触点の少なくとも一部が芯鞘型複合繊維の鞘成分重合体によって融着されていて,見かけ密度0. 12~0.45g/cm3,厚さ10mm以上において,荷重1.0Kg/cm2時の圧縮率が20%以下であることを特徴とする堅綿成形体。 (4) 本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点ア一致点「A. マトリックス繊維およびマトリックス繊維の融点よりも低い融点を有する成分を含む低融点繊維を混綿し,- 5 -B. カーディングし 1と甲1発明との一致点及び相違点ア一致点「A. マトリックス繊維およびマトリックス繊維の融点よりも低い融点を有する成分を含む低融点繊維を混綿し,- 5 -B. カーディングして形成したウェブを,クロスレイヤー処理によって積層した後,熱処理により一体化して形成した短繊維集合体からなり,C’.前記マトリックス繊維のうち少なくとも1種類が中空構造を有し,D. 前記低融点繊維により繊維相互間の接触部の一部で接着しており,E’.該繊維集合体の積層方向の一方の表面が膜状化しているF’.短繊維集合体。」である点イ相違点[相違点1]構成C.に関して本件発明1では,マトリックス繊維のうち少なくとも1種類がサイドバイサイド型の中空構造を有しているのに対し,甲1発明では,マトリックス繊維のうち少なくとも1種類が中空構造であるものの,サイドバイサイド型であると特定されていない点。 [相違点2]構成E.に関して本件発明1では,膜状化している表面の厚さが1mm未満であるのに対し,甲1発明では,膜状になっている表面の厚さが特定されていない点。 [相違点3]構成F.に関して本件発明1は「断熱材」であるのに対し,甲1発明は「吸音材」である点(5) 本件発明1と甲1発明との相違点についての審決判断ア相違点1について甲1発明と甲2発明ないし甲3発明とは,いずれも自動車等の内装材や壁材等の建材として用いられる,マトリックス繊維と低融点繊維を混綿し,熱処理によって低融点繊維の低融点成分を溶融させ,繊維相互間の接触部の一部を溶融固定した短繊維不織布である点で共通するから,甲1発明に係る「短繊維集合体」における「中空構造」の「マトリックス繊維」として,甲1発明と同一の技術分野であ 分を溶融させ,繊維相互間の接触部の一部を溶融固定した短繊維不織布である点で共通するから,甲1発明に係る「短繊維集合体」における「中空構造」の「マトリックス繊維」として,甲1発明と同一の技術分野であり,同様の作用を有する,甲2発明ないし甲3発明における「サイドバイサイド型の中空複合繊維」を用いることは,当業者が容易に想到できたことである。 - 6 -イ相違点2ないし相違点3について自動車などの内装材や建材として用いられる短繊維集合体(不織布)が,一定程度の吸音性や断熱性を備えることは,例えば実願昭60-17841号(実開昭61-136003号)のマイクロフィルム(甲7)や特開平8-226059号公報(甲13)に記載があるように,当業者にとって周知の事項である。 また,表面が膜状化された短繊維集合体(不織布)を断熱材として用いること,膜状化していない短繊維集合体の部分が吸音,断熱等の諸機能を発揮すること,膜状化している部分の厚さは,求められる短繊維集合体の構造強度,吸音,断熱等の程度に応じて設定されるものであることも,例えば甲13に記載があるように,いずれも当業者にとって周知の事項である。 さらに,本件明細書に記載された実施例及び比較例は,いずれも膜状化している部分の厚さが不明であり,膜状化している部分の厚さによる熱伝導率への影響を評価することができないため,本件発明1の構成E.に係る数値限定の上限値に,臨界的意義はもちろん,明細書の記載に基づいた格別な技術的意義も認められない。 したがって,甲1発明における「吸音材」における「膜状化している」部分の厚さを適宜設定し,断熱材として用いることは,前記周知技術を前提とすれば,当業者が容易に想到できたことであり,膜状化している部分の厚さを「1mm未満」とすることによる効果も,当 膜状化している」部分の厚さを適宜設定し,断熱材として用いることは,前記周知技術を前提とすれば,当業者が容易に想到できたことであり,膜状化している部分の厚さを「1mm未満」とすることによる効果も,当業者が予測できる範囲のものである。 ウまとめ以上のとおり,本件発明1は,甲1発明と,甲2発明ないし甲3発明及び周知技術に基づいて,当業者がその出願前に容易に発明をすることができたものである。 (6) 本件発明2と甲1発明との一致点及び相違点ア一致点「A. マトリックス繊維およびマトリックス繊維の融点よりも低い融点を有する成分を含む低融点繊維を混綿し,B. カーディングして形成したウェブを,クロスレイヤー処理によって積層した後,熱処理により一体化して形成した短繊維集合体からなり,- 7 -C’.前記マトリックス繊維のうち少なくとも1種類が中空構造を有し,G. 低融点繊維の含量が5~95wt%であり,D. 前記低融点繊維により繊維相互間の接触部の一部で接着しており,E’.該繊維集合体の積層方向の一方の表面が膜状化しているF’.短繊維集合体。」である点イ相違点本件発明1と甲1発明との相違点1~3で相違する。 (7) 本件発明2と甲1発明との相違点についての審決判断本件発明1と甲1発明との相違点についての判断のとおりである。 第3 原告主張の審決取消事由 1 取消事由1(本件発明1と甲1発明の相違点2及び3についての判断の誤り)(1) 審決は,「膜状化している部分の厚さは,求められる短繊維集合体の構造強度,吸音,断熱等の程度に応じて設定されるものであることも,例えば甲13に記載があるように,いずれも当業者にとって周知の事項である。」(14頁21~ いる部分の厚さは,求められる短繊維集合体の構造強度,吸音,断熱等の程度に応じて設定されるものであることも,例えば甲13に記載があるように,いずれも当業者にとって周知の事項である。」(14頁21~24行)と認定したが,誤りである。 ア甲13に記載された発明(甲13発明)は,強化繊維と粉粒状もしくは繊維状の熱可塑性樹脂を含む混合物の成形品(プリフォーム体)における片面側を,熱可塑性樹脂の溶融固化により基材部(支持層)として形成し,他方側を熱可塑性樹脂の不十分溶融もしくは非溶融に基づく強化繊維の膨出により空隙内包部として形成した繊維強化樹脂成形品としたものである。そして,甲13の【0036】に「・・・吸音,断熱,振動防止等の作用を有する空隙内包部と,強化層となる支持層が,強化繊維を介して結合一体化され,基材等による構造強度の補強などを要することなくそのままの形態で吸音部材,断熱部材,衝撃吸収部材等として有効に活用でき,・・・」と記載されているように,甲13発明においては,吸音,断熱等- 8 -の諸機能を発揮するのは専ら空隙内包部であり,支持層は空隙内包部を支持,補強することで,繊維強化樹脂成形品に構造強度を与えているに過ぎない。また,甲13発明は,甲13【0002】~【0007】等に記載のとおり,優れた吸音特性等を有する空隙内包部に対して,鋼板等の金属基材の片面に接着剤等で接合する手数が無くなるように,熱可塑性樹脂の溶融固化によって基材部を形成したことを特徴とするものである。したがって,甲13の記載では,支持層の厚さは,空隙内包部の厚さや重量に応じて決定されることが認められるだけである。 また,甲13【0026】の記載からして,甲13発明の支持層の厚み寸法は,強度を高めるために一例が示されているだけで,断熱性を向上させるために や重量に応じて決定されることが認められるだけである。 また,甲13【0026】の記載からして,甲13発明の支持層の厚み寸法は,強度を高めるために一例が示されているだけで,断熱性を向上させるために設定されるものではない。甲13発明の支持層は,吸音材等となる空隙内包部を支持するために強化・剛性化されたものなので,空隙内包部の厚さや重量が大きければ支持層の厚さが大きくなり,空隙内包部の厚さや重量が小さければ支持層の厚さが小さくなる性質のものである。 イ一方,本件発明1は,全体が中空構造のサイドバイサイド型複合繊維からなっており,短繊維集合体の膜状化した層と残りの層とが一体的に機能することによって断熱効果が発揮されるものであって,対流抑止機能(断熱材内部の空気の対流を抑止すること)及び熱伝導抑止機能(断熱材の内部と外部との熱伝導を抑止すること)が最大限に発揮されるように,さらに,生産性及び作業性が向上するように,短繊維集合体の表面に形成される膜状層の厚さを1mm未満とすることを特徴とするものである。 すなわち,本件明細書(甲14)【0022】の「繊維集合体の積層方向の一方の表面(断熱材の片面)に薄い膜を形成させることにより,熱が入射してきた場合,表皮に相当する膜部分によって伝熱が遮断される」の記載からも理解されるとおり,膜状層の存在により,繊維集合体の内部に蓄えられた空気が外部に逃げないようになっているため,対流抑止機能が発揮され,膜状層は空気より熱伝導率が大きいので,膜状層をできるだけ薄くすることで,それを介した繊維集合体内外の熱交換を- 9 -小さくでき,熱伝導抑止機能が向上するものである。 ウ以上のとおり,甲13発明は,本件発明1とは,基本的な構造及び膜状層(支持層)を設ける目的が相違するので,甲13発明を本件 を- 9 -小さくでき,熱伝導抑止機能が向上するものである。 ウ以上のとおり,甲13発明は,本件発明1とは,基本的な構造及び膜状層(支持層)を設ける目的が相違するので,甲13発明を本件発明1に対する周知技術として認めることは不当である。 (2) 審決は,「本件明細書に記載された実施例及び比較例は,いずれも膜状化している部分の厚さが不明であり,膜状化している部分の厚さによる熱伝導率への影響を評価することができないため,本件発明1の構成E.に係る数値限定の上限値に,臨界的意義はもちろん,明細書の記載に基づいた格別な技術的意義も認められない。」(14頁25~29行)と判断するが,誤りである。 本件明細書(甲14)【0021】に「繊維集合体の積層方向の一方の表面を1mm未満の厚さに膜状化させる。」と記載され,さらに,同【0022】に「繊維集合体の積層方向の一方の表面(断熱材の片面)に薄い膜を形成させることにより,熱が入射してきた場合,表皮に相当する膜部分によって伝熱が遮断される。」と記載されているように,本件発明1は,薄い膜状層(表皮)を形成することで伝熱を遮断するもので,熱伝導抑止機能を向上させるために,膜状層の厚さを1mm未満としたものである。すなわち,本件発明1の構成E「該繊維集合体の積層方向の一方の表面が1mm未満の厚さで膜状化していることを特徴とする」は,膜状層の熱伝導率が空気の熱伝導率より大きいことから,繊維集合体の内部と外部との空気の熱交換を小さくするために,膜状層の厚さをできるだけ薄くすることで熱伝導抑止機能を向上させたという技術的意義を有するものである。できるだけ薄くするという構成が不明確にならないように,膜状層の厚さを1mm未満に数値限定したものであるから,数値限定に臨界的意義は求められるべきではない。 させたという技術的意義を有するものである。できるだけ薄くするという構成が不明確にならないように,膜状層の厚さを1mm未満に数値限定したものであるから,数値限定に臨界的意義は求められるべきではない。 (3) 審決は,「したがって,甲1発明における「吸音材」における「膜状化している」部分の厚さを適宜設定し,断熱材として用いることは,前記周知技術を前提とすれば,当業者が容易に想到できたことであり,膜状化している部分の厚さを「1mm未満」とすることによる効果も,当業者が予測できる範囲のものである。」- 10 -(14頁30~34行)と判断するが,誤りである。 ア甲1の【0014】に「・・・すなわち音が入射してきた場合,表皮に相当する膜部分によって特定の周波数で共振が発生するという膜吸音効果により,特定の周波数に吸音率の最大点ピークを移動させることが可能となる。これにより対象とする周波数領域の吸音性能が改善される。」と記載されているとおり,甲1発明における吸音材の膜状化している部分の厚さは,音の特定の周波数に基づいて決定されるものである。 イ甲13発明における支持層は,上記(1)アで主張したとおり,吸音材等となる空隙内包部を支持するために強化・剛性化されたものであって,その厚さは空隙内包部の厚さや重量に基づいて決定されるものである。 ウ一方,本件発明1は,断熱性能の向上及び生産コストの低下のために,膜状層の厚さをできるだけ薄くして1mm未満にしたものである。上記ア及びイのとおり,甲1発明及び甲13発明にはこの点に関して動機付けがないので,審決の上記判断は不当である。 2 取消事由2(本件発明2の進歩性についての判断の誤り)本件発明2は,本件発明1にさらに「低融点繊維の含量が5~95wt%である」構成を付 機付けがないので,審決の上記判断は不当である。 2 取消事由2(本件発明2の進歩性についての判断の誤り)本件発明2は,本件発明1にさらに「低融点繊維の含量が5~95wt%である」構成を付加したものであるから,審決の,本件発明2についての進歩性判断にも,取消事由1と同様の誤りがある。 第4 被告の反論 1 取消事由1(本件発明1と甲1発明の相違点2及び3についての判断の誤り)に対して(1) 原告の主張(1)に対してア本件発明1においても,「中空構造の繊維を使用することにより,…断熱性にも優れた繊維集合体を得ることが可能である」(本件明細書【0011】),「中空構造の繊維では,繊維の中空部分に空気が保持される」(【0012】)と- 11 -されており,甲13発明と同様に,空気を保持する繊維集合体の部分が,断熱機能を発揮するものである。また,支持層について,本件発明1は「表面部分を膜状化させることにより,密度の低い自立しにくい繊維集合体も硬度が増して自立可能となるうえ,曲げ強さや衝撃強さ等の機械的強度も向上する。」(【0022】)とされており,甲13発明の支持層と同様,本件発明1の膜状層も,支持・補強機能をも目的としている。 イ原告は,本件発明1と甲13発明の相違点として,本件発明1の膜状層の対流抑止機能及び熱伝導抑止機能を強調するが,いずれも明細書に基づかない主張である。すなわち,本件明細書には,対流抑止機能は中空構造の繊維を使用することの効果としか記載されておらず,原告が説明する,膜状層の存在により繊維集合体の内部に蓄えられた空気が外部に逃げないようになっているため対流抑止機能が発揮されることについては,何ら記載されていない。また,本件明細書には,「熱が入射してきた場合,表皮に相当する膜部 繊維集合体の内部に蓄えられた空気が外部に逃げないようになっているため対流抑止機能が発揮されることについては,何ら記載されていない。また,本件明細書には,「熱が入射してきた場合,表皮に相当する膜部分によって伝熱が遮断される。」(【0022】)と記載されており,膜状層をできるだけ薄くすることで,それを介した繊維集合体内外の熱交換を小さくでき,熱伝導抑止機能が向上するとの原告の説明と矛盾するうえ,膜状層をできるだけ薄くすること自体,明細書には記載がない。 ウ以上のとおり,原告による本件発明1の説明は,本件明細書に基づくものではなく,本件発明1と甲13発明とはその基本構造及び膜状層(支持層)を設ける目的が相違するとは認められず,むしろ重なり合っているのだから,審決が本件発明1に対する周知技術として甲13発明を引用したことに誤りはない。 (2) 原告の主張(2)に対してア原告は,本件発明1は,繊維集合体の内部と外部との空気の熱交換を小さくするために,膜状層の厚さを「できるだけ薄くする」ことで熱伝導抑止機能を向上させたものであって,「できるだけ薄くする」という構成が不明確にならないように,膜状層の厚さを「1mm未満」に数値限定したものであるので,数値限定には臨界的意義を要さない旨主張する。 - 12 -しかし,本件明細書には,膜状層をできるだけ薄くすることについて記載されておらず,発明の構成として特定できる事項でもないから,原告の上記主張は失当である。 イ本件明細書の実施例及び比較例では,膜状層の厚さが不明であり,原告が指摘する【0021】及び【0022】においても,「1mm未満」という数値が記載されているだけで,それに至る根拠は示されていないので,膜状層の厚さによる熱伝導率への影響を評価することができない 告が指摘する【0021】及び【0022】においても,「1mm未満」という数値が記載されているだけで,それに至る根拠は示されていないので,膜状層の厚さによる熱伝導率への影響を評価することができない。 したがって,数値限定の臨界的意義はもちろん,明細書の記載に基づいた格別の技術的意義も認めることができないとした審決の判断に誤りはない。 (3) 原告の主張(3)に対してア原告は,甲1発明及び甲13発明には,膜状層の厚さをできる限り薄くすることに関する動機付けがないので,甲1発明の「吸音材」における「膜状化している」部分の厚さを適宜設定し,断熱材として用いることはできない旨主張する。 しかし,膜状層の厚さを「できる限り薄くする」ことは,本件明細書に記載されていないのだから,原告の主張は前提を欠くものであって,失当である。 イ甲13発明では,膜状層の厚さは,求められる断熱性能等の程度に応じて0.5~10mm程度で設定されるものとされており(【0026】),この範囲において断熱性能等に関する膜状層の最適値を実験的に確認し,膜状層の厚さを0.5mm以上,1mm未満と定めることは,当業者が適宜なし得ることであるから,審決の判断に誤りはない。 2 取消事由2(本件発明2の進歩性についての判断の誤り)に対して上記のとおり,取消事由1は理由がなく,本件発明1の進歩性判断に誤りはないから,本件発明2の進歩性判断にも誤りはなく,取消事由2に理由はない。 第5 当裁判所の判断 1 取消事由1(本件発明1と甲1発明の相違点2及び3についての判断の誤り)- 13 -について(1) 原告の主張(1)についてア特開平8-226059号公報(甲13)には,以下の記載がある。 【要約】【構成】 強化繊維と 3についての判断の誤り)- 13 -について(1) 原告の主張(1)についてア特開平8-226059号公報(甲13)には,以下の記載がある。 【要約】【構成】 強化繊維と粉粒状もしくは繊維状の熱可塑性樹脂を含む混合物の成形品における片面側が,熱可塑性樹脂の溶融固化による基材部として形成され,他方側が熱可塑性樹脂の不十分溶融もしくは非溶融に基づく強化繊維の膨出による空隙内包部として形成された繊維強化樹脂成形品とその製法を開示する。 【効果】 繊維間空隙を残し吸音,断熱,振動防止等の作用を有する空隙内包部と,強化層となる支持層が,強化繊維を介して結合一体化され,基材等による構造強度の補強などを要することなくそのままの形態で吸音部材,断熱部材,衝撃緩衝部材等として有効に活用でき,また本発明法によれば,こうした特徴を有する繊維強化樹脂成形品を,簡単な手順で効率よく製造することができる。 【特許請求の範囲】【請求項1】 強化繊維と粉粒状もしくは繊維状の熱可塑性樹脂を含む混合物の成形品における片面側が,熱可塑性樹脂の溶融固化による基材部として形成され,他方側が熱可塑性樹脂の不十分溶融もしくは非溶融に基づく強化繊維の膨出による空隙内包部として形成されたものであることを特徴とする繊維強化樹脂成形品。 ・・・・・・【0010】【作用】上記の様に本発明の繊維強化樹脂成形品は,強化繊維と粉粒状もしくは繊維状の熱可塑性樹脂を含む混合物の成形品における片面側が,熱可塑性樹脂の溶融固化により構造強度の高められた基材部として形成され,他方側は熱可塑性樹脂の不十分溶融もしくは非溶融に基づく強化繊維の膨出により,吸音,断熱,衝撃吸収等の諸機能を発揮する空隙内包部として形成されたものであり,これらが一体となって,構造強度と吸音等の諸 方側は熱可塑性樹脂の不十分溶融もしくは非溶融に基づく強化繊維の膨出により,吸音,断熱,衝撃吸収等の諸機能を発揮する空隙内包部として形成されたものであり,これらが一体となって,構造強度と吸音等の諸機能性を兼ね備えたものとなるばかりでなく,従来の吸音材等に比- 14 -べて取扱い性が極めて良好で且つリサイクル性においても非常に優れた特徴を発揮する。 ・・・・・・【0012】本発明を実施するに当たっては,原料素材として強化繊維と,繊維状もしくは粉粒状の熱可塑性樹脂を,例えば後述する様な気流混合法等によって均一に混合した綿状混合体を使用し,該綿状混合体を予備成形することにより,最終成形品とほぼ同一寸法・形状のプリフォーム体を製造する。 ・・・・・・【0014】プリフォーム体としての形状を安定化させる他の方法としては,予備成形工程で綿状混合体を,その中に含まれる熱可塑性樹脂の溶融温度付近まで昇温した状態で比較的低い圧力で加圧し,熱可塑性樹脂の一部を溶融させて強化繊維同士の絡み合い部に該溶融樹脂を付着せしめ,プリフォーム体としての形状を整えながら冷却固化させる方法を採用することもできる。このときの加熱には,加熱板や赤外線を用いた加熱や熱風加熱など公知の任意の加熱法を採用することが可能である。 【0015】かくして得られるプリフォーム体は,一部が溶融固化していることもある熱可塑性樹脂と強化繊維の間に無数の隙間を有するものであり,それ自身で吸音,断熱,衝撃緩衝等の諸機能を備えているが,基本的に繊維同士が絡まり合っただけのものであるから構造強度に乏しく,これをそのままで吸音材等として使用するには,先に述べた従来のガラス繊維マット等と同様に金属板の如き補強用の基材と貼り合わせて強化しなければならない。 【0016】そこで本発明では,このプリ しく,これをそのままで吸音材等として使用するには,先に述べた従来のガラス繊維マット等と同様に金属板の如き補強用の基材と貼り合わせて強化しなければならない。 【0016】そこで本発明では,このプリフォーム体の有する吸音等の諸機能を保持したままで全体としての構造強度を高めるため,該プリフォーム体の片側を熱可塑性樹脂の溶融温度以上に加熱し,該片側の熱可塑性樹脂を溶融し強化繊維の繊維間隙間に流延させた状態で冷却固化させる一方,反対側は熱可塑性樹脂の溶融温度より低い温度に保って不十分加熱もしくは非加熱の状態で繊維間隙間を実質的にそのまま残した空隙内包部とする。 - 15 -・・・・・・【0018】図3は,該プリフォーム体2を改質する工程を追って示す断面模式図であり,図3(A)に示す如くプリフォーム体2を上下型3a,3bの間に挟み込み,該上下型3a,3bの上面側或は下面側(図では下面側)から,プリフォーム体2を熱可塑性樹脂の溶融温度以上に加熱する。そうすると,該プリフォーム体2における加熱面側(下面側)の熱可塑性樹脂Rは溶融し,図3(B)に示す如く強化繊維の繊維間隙間に熱可塑性樹脂Rが流延して充満される。この状態で,必要により適度に加圧整形してから冷却すると,図3(C)に示す如くプリフォーム体2の加熱面側には,熱可塑性樹脂が強化繊維間の隙間に浸入して冷却固化した剛性の支持層4が形成されると共に,その反対面,即ち不十分加熱もしくは非加熱の上面側は,プリフォーム体2に形成されていた繊維間隙間がそのまま空隙内包部5として残される。その結果,該支持層4が全体としての構造強度を保障すると共に,空隙内包部5は吸音,断熱,衝撃緩和等の諸機能を発揮することになり,そのままで吸音材等として有効に利用することのできる繊維強化樹脂成形体となる。 ・・・・・・ 全体としての構造強度を保障すると共に,空隙内包部5は吸音,断熱,衝撃緩和等の諸機能を発揮することになり,そのままで吸音材等として有効に利用することのできる繊維強化樹脂成形体となる。 ・・・・・・【0026】プリフォーム体の片面側に形成される支持層の厚みは,求められる複合成形体の構造強度や吸音,断熱,衝撃緩和性能の程度に応じて設定すべきものであって一律に決めることはできないが,標準的な基準としては示すならば,強化層となる支持層の厚さは0.5~10mm程度,より一般的には1~5mm程度とし,繊維間空隙を残したままで吸音等の機能層としての作用を発揮する部分,即ち非加熱の空隙内包部の厚さは1~200mm,より一般的には5~50mmの範囲が好ましい。 ・・・・・・【0036】【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており,繊維間空隙を残し吸音,断熱,振動防止等の作用を有する空隙内包部と,強化層となる支持層が,強化繊維を介して結合一体化され,基材等による構造強度の補強などを要することなくそのままの形態- 16 -で吸音部材,断熱部材,衝撃緩衝部材等として有効に活用でき,また本発明法によれば,こうした特徴を有する繊維強化樹脂成形品を,簡単な手順で効率よく製造することができる。 イ上記記載から見て,甲13には,強化繊維と粉粒状もしくは繊維状の熱可塑性樹脂を含む混合物の成形品における片面側が,熱可塑性樹脂の溶融固化により構造強度の高められた支持層として形成され,他方側は熱可塑性樹脂の不十分溶融もしくは非溶融に基づく強化繊維の膨出により,吸音,断熱,衝撃吸収等の諸機能を発揮する空隙内包部として形成されたものであって,支持層と空隙内包部が一体となって,構造強度と吸音,断熱,衝撃吸収等の諸機能を兼ね備えるよう,求められる構造強度や吸音 音,断熱,衝撃吸収等の諸機能を発揮する空隙内包部として形成されたものであって,支持層と空隙内包部が一体となって,構造強度と吸音,断熱,衝撃吸収等の諸機能を兼ね備えるよう,求められる構造強度や吸音,断熱,衝撃吸収性能の程度に応じて支持層の厚みが設定されるもの(甲13発明)が記載されている。甲13発明の支持層は,本件発明1の膜状化している部分に相当すると認められるから,審決が「膜状化している部分の厚さは,求められる短繊維集合体の構造強度,吸音,断熱等の程度に応じて設定されるものであること」を示す例として甲13を挙げたことに誤りはない。 原告は,本件発明1の膜状層は,繊維集合体内部の空気を外部へ逃がさないことで対流抑止機能を発揮するだけでなく,1mm未満とすることで繊維集合体内外の熱交換を小さくして熱伝導抑止機能を発揮するものであるのに対して,甲13発明の支持層は,成形品に構造強度を与えるに過ぎず,空隙内包部の厚さや重量の増加に応じて厚くなるものであることから,甲13発明と本件発明1とは,基本的な構造及び膜状層(支持層)を設ける目的が相違し,甲13発明を本件発明1に対する周知技術とすることはできない旨主張する。 しかし,本件明細書(甲14)には「繊維集合体の積層方向の一方の表面(断熱材の片面)に薄い膜を形成させることにより,熱が入射してきた場合,表皮に相当する膜部分によって伝熱が遮断される。また表面部分を膜状化させることにより,密度の低い自立しにくい繊維集合体も硬度が増して自立可能となるうえ,曲げ強さや衝撃強さ等の機械的強度も向上する。」(【0022】)と記載されており,本- 17 -件発明1の膜状層は,断熱作用を発揮するのみならず,強度を付与する役割をも有するものである。 また,甲13発明は,上記認定のとおり,構造強度の高い支 0022】)と記載されており,本- 17 -件発明1の膜状層は,断熱作用を発揮するのみならず,強度を付与する役割をも有するものである。 また,甲13発明は,上記認定のとおり,構造強度の高い支持層と吸音,断熱,衝撃吸収等の諸機能を発揮する空隙内包部とが一体となって,構造強度と吸音,断熱,衝撃吸収等の諸機能を兼ね備えるものであり,支持層の厚みは,原告が主張するように空隙内包部の厚さや重量のみに依存するのではなく,求められる構造強度や吸音,断熱,衝撃緩和性能の程度に応じて設定されるものである。 そうしてみると,本件発明1と甲13発明とは,断熱等の機能を主に発揮する繊維集合体と強度向上の役割を有する膜状層とが一体となって,強度と断熱等の機能を兼ね備えるものとして,基本的構造と膜状層を設ける目的が共通するといえる。 よって,審決が,甲13発明を本件発明1に対する周知技術として引用したことに誤りはない。 (2) 原告の主張(2)についてア本件明細書(甲14)には,本件発明1に含まれる実施例1~8と,サイドバイサイド型中空繊維を用いていない比較例1が記載され,いずれの例においても全体厚みは15mmであるが,膜状層の厚みについては記載されていないので,膜状層の厚みと熱伝導率との関係について具体的に評価することはできない。よって,審決が,本件発明1の「1mm未満の厚さで膜状化している」という数値限定の上限値に臨界的意義を認めることができないと判断したことに誤りはない。 また,本件明細書の【0028】には「赤外線ヒータ,熱板あるいは熱ローラ等,熱的処理による膜状化の場合,膜状層の厚さは1mm未満となる。この場合,厚さが薄いことにより施工時の鋲打ちがより容易となるため好ましい。」と記載されているが,これは,厚さが1mm未満程度 ローラ等,熱的処理による膜状化の場合,膜状層の厚さは1mm未満となる。この場合,厚さが薄いことにより施工時の鋲打ちがより容易となるため好ましい。」と記載されているが,これは,厚さが1mm未満程度に薄ければ施工が容易になるという一般的傾向を述べたものにすぎず,格別な技術的意義とまでは認められない。その他には,膜状層の厚さを1mm未満とすることの技術的意義に関する記載は見いだせない。 したがって,審決が,本件発明1の「1mm未満の厚さで膜状化している」とい- 18 -う数値限定の上限値に,明細書の記載に基づいた格別な技術的意義を認めることができないと判断したことにも誤りはない。 イ原告は,本件明細書の段落【0022】の記載を根拠に,膜状層の熱伝導率が空気の熱伝導率よりも大きいことから,本件発明1では膜状層の厚さをできるだけ薄くすることで熱伝導抑止機能を向上させたという技術的意義を主張する。 しかし,本件明細書には「表皮に相当する膜部分によって伝熱が遮断される」と記載されているにすぎず,膜部分がどのような機構により伝熱を遮断するのか明らかではないから,膜状層の厚さをできるだけ薄くすることで熱伝導抑止機能を向上させることができることが,記載するまでもなく当業者に自明な事項であるとまでは認められない。よって,原告が主張する本件発明1の技術的意義は,本件明細書の記載に基づいたものではなく,採用できない。 (3) 原告の主張(3)についてア自動車などの内装材や建材として用いられる短繊維集合体が,吸音性や断熱性を備えることは,当業者にとって周知であるから(甲7,甲8,甲13),甲1の吸音材が断熱性をも兼ね備えていることは,自明である。そうすると,甲1発明に係る吸音材を断熱材としても用いることができることは,当業者に自明 当業者にとって周知であるから(甲7,甲8,甲13),甲1の吸音材が断熱性をも兼ね備えていることは,自明である。そうすると,甲1発明に係る吸音材を断熱材としても用いることができることは,当業者に自明であって,その際,膜状化部分の厚さは適宜変更しうるものであるから,審決における容易想到性の判断に誤りはない。 また,上記(2)で判示したとおり,審決が,本件発明1の「1mm未満の厚さで膜状化している」という数値限定の上限値に,臨界的意義も格別な技術的意義を認めることができないと判断したことに誤りはないから,同様に,審決が,膜状化部分の厚さを1mm未満とすることによる効果は当業者が予測できる範囲のものであると判断したことにも誤りはない。 イ原告は,甲1発明における吸音材の膜状化部分の厚さは音の特定の周波数に基づいて決定されるものであり,甲13発明における支持層の厚さは空隙内包部の厚さや重量に基づいて決定されるものであるから,本件発明1のように,断熱- 19 -性能の向上及び生産コストの低下のために膜状層をできるだけ薄く1mm未満とすることの動機付けがない旨主張する。 甲1の段落【0014】には,膜状化している部分の共振により,特定の周波数の音を吸音できることが記載されている。しかし,膜状化している部分の共振周波数は,その厚さのみならず,面積,形状,密度,硬度,材質などにより影響を受けることが明らかであるから,上記記載が,膜状化している部分の厚さが吸音の対象となる音の周波数に基づいて決定されることを意味しているとは認められない。また,甲13発明における支持層の厚さは,空隙内包部の厚さや重量のみに依存するのではなく,求められる構造強度や吸音,断熱,衝撃緩和性能の程度に応じて設定されるものである。しかも,自動車などの内装材や建材とし 13発明における支持層の厚さは,空隙内包部の厚さや重量のみに依存するのではなく,求められる構造強度や吸音,断熱,衝撃緩和性能の程度に応じて設定されるものである。しかも,自動車などの内装材や建材として用いられる短繊維集合体が,吸音性や断熱性を備えることは,当業者にとって周知であるから,甲1の吸音材が,例えば甲13発明のように断熱性をも兼ね備えていることは,自明であり,断熱性の向上の観点や,生産コストの低下という普遍的な観点から膜状層の厚さを検討することには動機付けがある。 (4) 以上によれば,原告が主張する取消事由1は理由がない。 2 取消事由2(本件発明2の進歩性についての判断の誤り)について取消事由2は,本件発明2の進歩性判断についても,取消事由1と同様の誤りがあるというものである。上記のとおり,取消事由1は理由がなく,本件発明1の進歩性判断に誤りはない。したがって,取消事由1と同様に取消事由2も理由はない。 第6 結論以上によれば,原告主張の取消事由には理由がない。よって,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 - 20 - 裁判長裁判官塩月秀平 裁判官池下朗 裁判官古谷健二郎 古谷健二郎

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