平成21年2月5日判決言渡平成18年(ワ)第15301号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成20年12月4日判決主文 原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求 被告は,原告Aに対し,2269万4605円及びこれに対する平成17年1月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告は,原告Bに対し,2269万4605円及びこれに対する平成17年1月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要 本件は,Cが,被告の開設するD病院(以下「被告病院」という。)に入院中,下部消化管内視鏡検査(以下「下部内視鏡検査」という。)を実施するための前処置としての高圧浣腸が行われた後にS状結腸穿孔に起因する汎発性腹膜炎を発症し,その後敗血症により死亡したことにつき,Cの相続人である原告らが,被告病院の医師らには,下部内視鏡検査及びその前処置としての高圧浣腸を行う時期の判断を誤った過失,説明義務違反があるなどと主張し,被告に対し,不法行為(使用者責任)ないしは診療契約上の債務不履行に基づき,損害賠償及びこれに対するCが死亡した日である平成17年1月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 前提となる事実(当事者間に争いがない事実及び証拠により容易に認定できる事実) (1)当事者等アC(昭和3年3月23日生)は,平成16年12月21日,被告病院において,下部内視鏡検査を実施するための前処置としての高圧浣腸を受けた。平成17年1月28日午前3時45分,Cは,敗血症により死亡した。 イ原告Aと原告Bは,Cの子である。 ウ被告は,被告病院を開設している。 (2)診療経過の概要 の前処置としての高圧浣腸を受けた。平成17年1月28日午前3時45分,Cは,敗血症により死亡した。 イ原告Aと原告Bは,Cの子である。 ウ被告は,被告病院を開設している。 (2)診療経過の概要アCは,平成8年8月18日に遭った交通事故により外傷性頸部症候群・腰椎捻挫を発症し,同月19日から被告病院麻酔科(ペインクリニック)への通院を開始した。(乙A1の179頁)イCは,平成15年1月20日,腰部圧迫骨折のため,被告病院麻酔科に入院し,同月31日に退院した。 ウCは,平成16年11月1日,被告病院麻酔科を受診し,腰下肢痛治療のため同科に緊急入院することとなった。(乙A4の47頁)エ同月12日,感染症の併発が疑われ,熱源精査目的のため,Cは麻酔科から腎臓内科に転科した。(乙A2の10,18頁,A4の52頁)オ同年12月21日,看護師がCに対し,下部内視鏡検査の前処置として高圧浣腸を実施した。その後,腹痛の持続等をCが訴えたため下部内視鏡検査の実施は中止された。緊急CT検査の結果,うっ血性心不全の増悪とフリーエアーが認められたため,Cは第2外科に転科し,緊急開腹手術が行われた。(乙A2の46,130,131頁,乙A5の76,77頁)カ平成17年1月28日午前3時45分,Cの死亡が確認され,同日,剖検が実施された。(甲A8,乙A5の5ないし7頁) 争点 本件の争点は,次の4点である。 (1)下部内視鏡検査及び前処置としての高圧浣腸を行う時期の判断を誤った 過失の有無(2)説明義務違反の有無(3)因果関係の有無(4)損害額 争点に対する当事者の主張は,次のとおりである。 (1)争点(1)(下部内視鏡検査及び前処置としての高圧浣腸を行う時期の判断を誤った過失の有無)について(原告らの主張)ア平成16年 損害額 争点に対する当事者の主張は,次のとおりである。 (1)争点(1)(下部内視鏡検査及び前処置としての高圧浣腸を行う時期の判断を誤った過失の有無)について(原告らの主張)ア平成16年12月21日当時,高圧浣腸に着手する時点で,Cは栄養不良による全身衰弱状態に陥っていたこと(ア)低アルブミン血症は栄養不良の指標となるところ,Cの血中アルブミン値は,平成16年(以下,平成16年については,表記を原則として省略する。)11月22日には3.5g/dLであったのが,12月13日には2.5g/dLに著しく低下しており,Cに高圧浣腸による大腸穿孔が生じる前日の12月20日には,血中アルブミン値が2.4g/dLとさらに低下し,あわせて「食欲不振も変わらず。今週中に中心静脈栄養を実施する」旨予定されていた。 (イ)また,12月18日には,医師から原告らに対し,低栄養による低蛋白血症状があること,IVH(中心静脈栄養管理)が必要となる可能性があることが説明されており(乙A2の41,42頁),IVHの必要性にまで言及されているということからも,Cが経口摂取不十分,栄養不良により全身衰弱状態にあったことは確実と考えられる。 (ウ)したがって,12月21日,高圧浣腸に着手する時点で,亡Cは,摂食不良が長く続いたため,著しい栄養不良状態に陥っていたことが認められる。 (エ)なお,カルテ(乙A2の44頁)の12月20日欄の「食事3分の 1~3分の2摂取」とのE医師の記載は,その上段に,同日にF医師が,血中アルブミン値が2.4g/dLとさらに低下していたことと併せて,「食欲不振も変わらず。今週中に中心静脈栄養を実施する。」旨を記載していることと整合せず,極めて不自然な記載であるから,その確実性,正確性が強く疑われ,信用性に欠ける。 (オ) いたことと併せて,「食欲不振も変わらず。今週中に中心静脈栄養を実施する。」旨を記載していることと整合せず,極めて不自然な記載であるから,その確実性,正確性が強く疑われ,信用性に欠ける。 (オ)また,経過表の記載(乙A2の153頁)によれば,12月15日まではCの摂食量は極めて少量であるのに対し,12月16日以降20日までは,顕著に食事量が増えており,平均すると3分の1から2分の1に達している。しかし,上記食事量の記載のうち,12月16日以降の分については,正確に記録されているとは考え難く,記録の信憑性が極めて疑わしい。特に,検査前日の12月20日には食事制限があるはずであり,また夕刻にはCに対し下剤であるラキソベロンが投与されていたにもかかわらず,経過表によれば同日の食事量が固形物を含めてそれまでで最大量となっているのであり,著しく不自然である。 (カ)仮に,Cが上記カルテないし経過表のとおり12月16日以降20日まで食事を増量し約3分の1から2分の1の量をとっていたとしても,摂取カロリーは467カロリーから700カロリーにすぎず,これはどんどん栄養不良が進行してゆくべき数値であるから,同月21日当時に,Cの栄養不良による全身衰弱状態が改善していたとは考えられない。 イ12月21日当時,Cは,著しい栄養不良により,呼吸循環不全状態に陥っていたこと(ア)Cは,①の血中アルブミン値が12月13日には2.5g/dLまで低下していたのが,同月20日には2.4g/dLとさらに減少していたこと,②同月10日ころから右肺に湿性ラ音が生じうっ血性心不全の症状が顕著となっていたが,同月20日当時には気道狭窄はなく湿性ラ音があり(気道閉塞はなく肺水腫があったことを示す症状と思われる。),胸水 が増悪し,呼吸苦が生じていたこと,③上記②の呼吸 不全の症状が顕著となっていたが,同月20日当時には気道狭窄はなく湿性ラ音があり(気道閉塞はなく肺水腫があったことを示す症状と思われる。),胸水 が増悪し,呼吸苦が生じていたこと,③上記②の呼吸苦については,低栄養による低蛋白血症(低アルブミン血症)があるため肺などに水分が漏れ出てむくみや胸水となり,呼吸苦の原因となっていることが認められる。 (イ)そうであれば,Cは,同月21日当時,著しい栄養不良のため,うっ血性心不全や胸水,肺水腫を生じるほどの重い低アルブミン血症に陥っており,呼吸循環不全状態に陥っていたものということができる。また,全身衰弱状態となり,免疫系が弱まっていた。 (ウ)被告は,12月20日の動脈血ガス分析結果で,酸素飽和度が96. 7%であったことから,Cが呼吸循環不全状態にあったことを否定するようである。 しかし,上記動脈血ガス分析結果は,十分な酸素飽和度を保つようナザール鼻マスクにより2リットルの酸素投与(Oナザール2リット ル)が行われていた状態下の検査結果である。呼吸循環不全状態にあったかどうかを調べるには,鼻マスクによる酸素投与をしない場合の動脈血ガス分析結果ないし酸素飽和度がどのような値であったかが重要であるが,それは測定されていない。 しかも,この動脈血ガス分析結果は,測定日は12月20日であるとしても,書面の記載上,分析対象の血液の提出日が同月8日であった可能性があり,そうすると,採取後時間が経った血液についての動脈血ガス分析結果は数値が変わることが当然なので,信用性が乏しい。 ウ栄養不良による全身衰弱状態かつ呼吸循環不全状態にあるCに対し,担当医が,下部内視鏡検査及び前処置としての高圧浣腸を行う時期を決定する場合に負うべき注意義務上記ア,イのような全身状態にあるCに対し,直ちに下部内視鏡検 弱状態かつ呼吸循環不全状態にあるCに対し,担当医が,下部内視鏡検査及び前処置としての高圧浣腸を行う時期を決定する場合に負うべき注意義務上記ア,イのような全身状態にあるCに対し,直ちに下部内視鏡検査ないし前処置としての高圧浣腸を行えば,同検査自体により呼吸循環不全状 態が悪化する危険があるとともに(甲B第9号証によれば,呼吸循環不全状態は,下部内視鏡検査により病状が悪化する可能性が高く絶対禁忌であり,どうしても検査が必要な場合は厳重なモニタリングによる全身管理を行うべきものとされている。),大腸穿孔を生じる危険が高まる。そればかりか,万一,大腸穿孔を生じた場合,免疫系が弱まっていることから,腹膜炎が重症化する危険や敗血症が起こり重症化し敗血症性ショックに至り予後不良となる危険が高まる。呼吸循環不全状態の存在もかかる症状の悪化を加速する。 担当医は,かかるCに対しては,例外的に下部内視鏡検査を行うべき緊急の必要性がある場合を除き,中心静脈栄養などにより栄養不良を改善し免疫系を強化する治療を尽くすとともに,アルブミン製剤投与及び利尿剤投与によりうっ血性心不全や肺水腫,胸水などの呼吸循環不全状態を解消ないし改善する治療を尽くした後に下部内視鏡検査を行うべき義務(以下「本件注意義務」という。)がある。 ここに,例外的に下部内視鏡検査を行うべき緊急の必要性がある場合とは,極めて限定的に解するべきであり,具体的には,多量の鮮血による下血があるような場合に限られる。本件においては,レントゲン検査,胸・腹・骨盤CT検査,腹部エコー検査,シンチグラフィ,種々の癌の腫瘍マーカー検査などが施行されていたにもかかわらず,腹部腫瘍等の悪性・重大な疾患を疑わせる所見は存在せず,12月20日時点では白血球数が5200に,CRP値が1.1にそれぞれ低下しており 々の癌の腫瘍マーカー検査などが施行されていたにもかかわらず,腹部腫瘍等の悪性・重大な疾患を疑わせる所見は存在せず,12月20日時点では白血球数が5200に,CRP値が1.1にそれぞれ低下しており,ますます腹部腫瘍の疑いは少なくなっていた。食欲不振及び黒色便が持続していたものの,S状結腸から下行結腸までの間の出血による黒色便は考えられないこと等からすれば,これらにより先ず疑うべきはむしろ上部消化管からの出血であった。もっとも,検査データに表れない癌などの炎症源たる疾病が存在する可能性はゼロとはいえないので,下部内視鏡検査の必要性を否定し去 ることはできないが,本件における下部内視鏡検査の有用性は,炎症源である疾病の不存在を確定するためという消極的意義に留まるものであったというべきである。他方,Cは,前述のとおり,全身衰弱状態及び呼吸循環不全状態にあったから,下部内視鏡検査及び前処置としての高圧浣腸を施行して穿孔を生じるリスクは高く,万一穿孔事故が起こった場合には,予後不良となる蓋然性が高かった。そうすると,当時において,上記の危険性は下部内視鏡検査の有用性を遙かに上回るというべきであって,下部内視鏡検査を施行する意味は乏しく,それを行う緊急の必要性があったなどとは到底いえない。 エ担当医の過失しかし,担当医は本件注意義務を怠り,上記のような全身状態にあったCに対し,多量の鮮血による下血などもなく,直ちに下部内視鏡検査を行うべき緊急の必要性が存しないにもかかわらず,直ちに下部内視鏡検査の前処置としての高圧浣腸を施行した。 したがって,担当医には,下部内視鏡検査及び前処置としての高圧浣腸を行う時期の判断を誤った過失がある。 オ被告の主張への反論被告は,下部内視鏡検査を行う時期の決定について,患者の全身状態を考慮して判断すること 当医には,下部内視鏡検査及び前処置としての高圧浣腸を行う時期の判断を誤った過失がある。 オ被告の主張への反論被告は,下部内視鏡検査を行う時期の決定について,患者の全身状態を考慮して判断することが必要とまではいえず,担当医ないし主治医の裁量によるとの立場に立っていると思われる。その理由は,患者の全身状態を最もよく分かっているのは担当医ないし主治医であるからとするもののようである。 しかしながら,患者の全身状態を最もよく把握しているべき担当医が,患者の全身状態を把握できていなかった場合は,上記のような理論は直ちに破綻する。本件はまさにそのような場合であった。このような場合に医師の裁量権なるものがあるとすれば,それは過失を隠蔽する隠れ蓑にすぎ ない。すなわち,患者の全身状態を考慮して下部内視鏡検査を行う時期を決定することまでは必要とせず,医師の裁量の範囲内とする被告の立場によると,全身状態不良の患者に大腸穿孔が起こった場合の予後が不良となる事態を最大限回避することができない。しかし,全身状態不良の患者に対し下部内視鏡検査ないし前処置としての高圧浣腸を行おうとする時点で,仮に,患者に下部内視鏡検査の偶発症としての大腸穿孔が起こった場合,全身状態不良のままだと予後不良となる蓋然性が高いことは容易に予見可能であり,かつ,下部内視鏡検査を行う時期を患者の全身状態不良を改善した後とすることによって上記の結果が起こるのを回避することも可能である。このような場合に医師の裁量権は認められない。 (被告の主張)ア消化管精査の決断に至った経緯本件で被告病院の医師らが最終的に消化管精査の決断に至るまでには長い経過がある。Cは,平成8年に追突車両事故にて外傷性頸部症候群・腰椎捻挫を発症し,被告病院麻酔科ペインクリニック外来に通院していた。 平成16年1 の医師らが最終的に消化管精査の決断に至るまでには長い経過がある。Cは,平成8年に追突車両事故にて外傷性頸部症候群・腰椎捻挫を発症し,被告病院麻酔科ペインクリニック外来に通院していた。 平成16年11月1日両腰背部痛が増悪し,麻酔科に入院,神経ブロック療法を開始するも,発熱が出現,白血球,炎症反応(CRP値)の上昇を認め,熱源精査目的にて同月12日腎臓内科に転科になった。入院時,上気道炎症状や腹痛などの自覚症状に乏しかったが,発熱,炎症反応上昇より何らかの感染症を疑い,広域スペクトラムの抗生剤(モダシン)投与を開始した。しかし炎症反応の低下を認めず,胸部CT検査にて右肺中葉,下葉に淡い線状影あり,異型肺炎を疑いテトラサイクリン系抗生剤(ミノマイシン)を投与したところ,解熱,炎症反応も速やかに低下したが,その後も吐気や軽度の腹痛,下痢などを訴え,炎症反応も完全に陰転化はしなかった。CT検査やシンチグラフィーにて指摘されている仙腸関節炎疑いについては,腎臓内科転科前より整形外科にて精査が行われており,M RI検査の結果から仙腸関節炎の活動性は考えにくいとのことであった。 12月10日のCT検査にて胆嚢炎を指摘され,超音波にて胆嚢壁の肥厚も認めたことにより,補液と胆嚢移行性に優れた抗生剤(スルペラゾン)にて経過観察をしていた。また以前より便潜血陽性であり,炎症巣の確定ができていなかったことから,悪性疾患の否定,炎症の原因特定の目的で,C本人及び原告らの同意のもと下部内視鏡検査を予定した。 このように,消化管精査以外の検査はほとんど行ったにもかかわらず,発熱,炎症反応高値,食欲低下,便潜血陽性の原因がつかめず,全身状態は悪化した。悪性疾患の存在も疑われたCに,腫瘍性病変,炎症性腸疾患との鑑別や,出血の有無を診断する上で有用な下部内視鏡検査は必 ,発熱,炎症反応高値,食欲低下,便潜血陽性の原因がつかめず,全身状態は悪化した。悪性疾患の存在も疑われたCに,腫瘍性病変,炎症性腸疾患との鑑別や,出血の有無を診断する上で有用な下部内視鏡検査は必要不可欠であった。医師の立場からすれば,これらの原因病巣が腸管内に存在することが疑われ,さらに原因不明のまま経過したのであれば全身状態のさらなる悪化を招くことが明白であったため(もし悪性腫瘍が存在していた場合,経過観察していたのでは進行,転移の可能性が大きい。),早期診断,治療が必須と考えるのが当然である。消化管精査を施行せず原因不明のまま経過したとしても,全身状態の悪化から死亡していた可能性が高い。 イアルブミン投与等によって原告の全身状態が改善したか原告は,Cの栄養状態が改善されて,全身状態,体力,免疫力も改善され,腎不全,呼吸循環不全も改善された状態であったならば,救命されたと推測し,Cの全身状態が改善することを前提とするもののようである。 しかし,発熱,炎症反応高値,食欲低下,便潜血陽性の原因が不明なまま全身状態を改善させることは不可能であり,また,Cの腎不全も慢性腎不全であるため改善することは全く不可能である。慢性腎不全と原因不明の疾病が進行している状態において,仮に検査を延期してアルブミン投与などを継続しても,Cの全身状態が改善する可能性は乏しかったといわざるを得ない。まして,栄養状態の改善のみならず,腸管の脆弱性が改善し穿 孔を免れたかどうかについては,短期間で腸管の状態まで回復するとは到底考えられないというべきである。 ウ原告らは,本件患者の栄養状態が改善した後に下部内視鏡検査を行うべきであり,さもなければ偶発症に対し予後が悪いことを説明した上で検査すべきであると主張するもののようである。 しかし,現在のガイドラインで らは,本件患者の栄養状態が改善した後に下部内視鏡検査を行うべきであり,さもなければ偶発症に対し予後が悪いことを説明した上で検査すべきであると主張するもののようである。 しかし,現在のガイドラインでは,原告ら主張のようなことは求められていないし,従前の大腸内視鏡ガイドラインでも,「全身状態の不良な患者においては,内視鏡を行う有用性が上回る場合にのみ,熟練した内視鏡医が行うことが望ましい」(甲B54)とされているところ,本件診療経過においては,患者の症状の悪化にもかかわらず,各種検査で原因が明らかとならなかったため,内視鏡検査が必要だったのであり,実施及びその最終決定は被告病院の内視鏡センターの医師が行うことになっていた。なお,実際には全身状態が悪化した患者だからこそ内視鏡検査を施行して原因を特定して直ちに治療に移るべきであるのに,その判断に迷うことになるため,そもそも「マスト」ではなく,「ベター(=「望ましい」)」であった従前のガイドラインにおける記載さえも,新しいガイドラインでは削除されている。現在のガイドラインでは,内視鏡検査の実施について,担当医の裁量が認められることがよりはっきりしたものと考える。 エ過失がないこと被告病院の医師らが,仮に検査を延期したところで改善の可能性は低いと判断し,検査を計画したことに過失はない。 仮に検査を延期したとしても,他方で熱源がわからず,ますます状態が悪化したり,急変したりする危険性があり,その危険の観点からも,検査を延期しなかった点につき,被告の過失は否定されるべきである。 (2)争点(2)(説明義務違反の有無)について(原告らの主張) ア本件における被告の具体的な説明義務患者が検査を受けるに当たって,医師は,患者に対し,その検査を行うべきか否かを判断するのに十分な情報を与え説明を 務違反の有無)について(原告らの主張) ア本件における被告の具体的な説明義務患者が検査を受けるに当たって,医師は,患者に対し,その検査を行うべきか否かを判断するのに十分な情報を与え説明を行うべき義務がある。 本件において,被告病院の医師らは,Cにとって大腸内視鏡検査及びその術前措置である高圧浣腸(以下,総称して「本件検査」という。)を受けるかどうかを判断決定する前提となる情報を与えなくてはならなかった。 具体的には,Cが12月21日ころ,全身状態不良,呼吸循環不全の状態にあったことを踏まえて,(ア)本件検査による大腸穿孔の危険性があること,(イ)大腸穿孔が生じた場合には汎発性腹膜炎が発症すること,(ウ)Cに大腸穿孔が生じた場合,体力と免疫力が低下しているため,短期間に重症化する危険があること,(エ)上記(ウ)の場合の改善の方法,見込み,(オ)本件検査を行わない場合のCの予後の5点について,できるだけ具体的に説明すべき義務があった。 イ本件の説明義務違反(ア)本件同意書への署名は,12月18日ではなく同月12日に行われていると考えられる。また,本件検査の最終的な同意(撤回のない確定的な同意)は12月18日になされた。 (イ)被告病院の医師らは,下部内視鏡検査を勧める際及び12月18日,Cと原告らに対し,大腸穿孔の危険性(上記イの内容)について説明を行わず,逆に,同日,F医師は口頭で「何の危険もない」と説明していた。 ウ予想される被告の主張に対する反論について(ア)被告らは,検査に危険がある以上,医師たるもの「危険がない」などというはずがないと反論するかもしれない。 しかし,本件においては,C及び原告らは独特の価値観と強い信念で内視鏡検査を拒んでいたが,被告病院の医師らは,通常と異なる判断に 見えるCの自己決定権を というはずがないと反論するかもしれない。 しかし,本件においては,C及び原告らは独特の価値観と強い信念で内視鏡検査を拒んでいたが,被告病院の医師らは,通常と異なる判断に 見えるCの自己決定権を尊重する姿勢ではなく,何故誰でもが普通に受けている内視鏡検査をC及び原告らが拒むのか理解に苦しみ,何度断られても同意を求めて働きかけ続けている状態だった。そのような状況の中,責任者であるF医師としては,「熱源精査のためにどうしても検査しなければならない」,「是非とも検査したい」という強い信念のもと,これまで同意を拒んできた原告らを同意する方向に強く押す説明をすることが必要であったのであり,F医師が「危険がない」と発言すること自体は不自然ではなくあり得ないことではない。 (イ)また,被告らは,「鎮静をかけるから苦しくない。大丈夫。」という説明をしただけであるのに,原告らが勝手に「危険がない」と説明されたと混同したと反論するかもしれない。 確かにG医師は,Cと原告Bに対し,「鎮静をかければ患者本人がわからないうちに検査をしてしまうことができる。」と説明している(乙A2)。しかし,原告Bは,鎮静をかけられるからという理由で同意したのではなく,F医師から何も危険はないと言われたから同意した旨を明快に述べている。したがって,鎮静をかけるという問題と危険性の問題が原告らにより混同されたということは全くあり得ない。 (被告の主張)ア被告病院の医師らによる説明(ア)本件では,熱源精査・悪性腫瘍の否定のためには,消化管精査が不可欠であり,逆に行わない方が問題である。通常であれば消化管精査は入院早期に施行するものであったが,C本人の同意が得られず,行えなかった。本件下部内視鏡検査の前には,被告病院の消化管内視鏡検査の説明書に沿い,合併症(内視鏡施行時の ある。通常であれば消化管精査は入院早期に施行するものであったが,C本人の同意が得られず,行えなかった。本件下部内視鏡検査の前には,被告病院の消化管内視鏡検査の説明書に沿い,合併症(内視鏡施行時の消化管穿孔を含む)の十分な説明を行い,上部・下部消化管内視鏡検査の同意書を得た。 今回,高圧浣腸を施行したが,前処置が十分奏功せず腸管に便が残存 している場合は高圧浣腸を行うことは一般的である。 (イ)原告らは,検査理由の説明は具体的には行われなかったと主張する。 しかし,担当医は,C及び原告Bに対し,12月6日,「消化器症状,便潜血陽性や貧血等の検査結果より,上記検査を施行した方がよいでしょう。(検査の方法,合併症については別紙参照)」(乙A2の99頁)と説明している。同月12日も同様である(乙A2の100頁)。 そして,別紙には,「検査の目的」,「検査の方法」,「偶発症・合併症」などが記載されている(乙A3の1,2)。 なお,被告病院は,説明・同意書に「検査の方法,合併症については別紙参照」などと記載しているのに(乙A2の99,100頁),原告らは,当該別紙を交付もされていなければ,見たこともなく,口頭で説明もされていないと主張するが,およそ信用できない。 (ウ)被告病院の医師らは,様々な検査と治療を行ってきたが,炎症反応高値,発熱,便潜血陽性の原因は不明であり,あと施行していない検査は消化管検査であり,消化管内病変,特に悪性腫瘍の診断が必須となることをC及び原告らに説明した。しかし,下部内視鏡検査は穿孔の危険性があることをC及び原告らに説明した。下部内視鏡検査の穿孔の危険性についての説明は,下部内視鏡検査を施行する患者には全例説明しており,本例のみ説明していないということはあり得ない。 被告病院は,「悪性腫瘍の可能性も含めて検査する必 た。下部内視鏡検査の穿孔の危険性についての説明は,下部内視鏡検査を施行する患者には全例説明しており,本例のみ説明していないということはあり得ない。 被告病院は,「悪性腫瘍の可能性も含めて検査する必要」があること(乙A2の41頁),「検査によって腸に穴があく(穿孔)などの合併症」やその場合に「他科とも協力し,外科手術を含めた,最善の処置」を行うこと(乙A3の1)等を説明している。その反面,「説明過多となり余計な不安を与えないよう配慮が必要である」から,説明する医師には裁量が認められるべきである。 (エ)原告らは,被告病院の担当医が検査に誘導したのであり,説明義務 を果たしていれば検査に同意しなかったと主張する。しかしながら,11月25日,担当医が上部消化管内視鏡検査(以下「上部内視鏡検査」という。)を勧めたが,Cが「それだけは嫌です・・・」と述べ(乙A2の30頁),12月6日,Cの娘からも拒絶されたため(乙A2の99頁),粘り強く説得するとともに,十分に考える時間をおいた上で,同月12日,上部内視鏡検査と下部内視鏡検査の同意を得(乙A2の100頁),しかしそれでも,同月15日,鎮静をかけた上での下部内視鏡検査であれば承諾するということになったため(乙A2の38頁),そちらを先行させたものであるから,原告らの主張に理由はない。 イ患者が下部内視鏡検査を嫌がっていた理由は,検査が「怖い」,「苦しい」というものであった。 ウまた,F医師は,「全く危険性のない検査です。」とは断じて言っていない。 (3)争点(3)(因果関係の有無)について(原告らの主張)ア下部内視鏡検査及び前処置としての高圧浣腸を行う時期の判断を誤った過失とCの死亡という結果との因果関係について(ア)穿孔の原因Cは,担当医の指示を受けて看護師が施行した下部 (原告らの主張)ア下部内視鏡検査及び前処置としての高圧浣腸を行う時期の判断を誤った過失とCの死亡という結果との因果関係について(ア)穿孔の原因Cは,担当医の指示を受けて看護師が施行した下部内視鏡検査の前処置としての高圧浣腸により大腸穿孔(ないし大腸憩室穿孔)を生じた。 (イ)因果関係仮に,担当医が本件注意義務を尽くしていたならば,Cは,大腸穿孔を生じた時点では,栄養状態が改善され免疫系も強化されていたはずであり,呼吸循環不全状態も解消されていたはずであるから,大腸穿孔による細菌性の腹膜炎が重症化する危険性も,敗血症などの感染症を引き起こす危険性も,敗血症が重症化する危険性も,いずれも低下させるこ とができていたものであり,大腸穿孔後の予後は本件の場合よりもはるかに良好なものとなった蓋然性が高かったということができる。 そうである以上,担当医の本件注意義務違反とCの死亡という結果との間には相当因果関係が認められる。 イ説明義務違反とCの死亡という結果との因果関係についてCの「延命のためにつらい積極的な治療はしない,つらい検査をしてまでも延命する必要はない,嫌なものは嫌だ」という信念は非常に強固なものであり,原告ら家族もこれを理解して支えていた。医師からの特別な強力な後押しがない限り,Cは同意することはなかったのである。その後押しとなったのが,F医師の「危険はない」という言葉であった。この「危険がない」という条件付けがなければ,原告らが同意することはなかった。 したがって,本件説明義務が適切に尽くされていれば,いやそれどころか,単にただ一言「検査には大腸穿孔の危険がわずかだがある」とでも説明しただけであっても,C及び原告らは本件検査に同意せず,医師がその後何度も説得を続けたとしても絶対に本件検査を受けることはなかった。 本 にただ一言「検査には大腸穿孔の危険がわずかだがある」とでも説明しただけであっても,C及び原告らは本件検査に同意せず,医師がその後何度も説得を続けたとしても絶対に本件検査を受けることはなかった。 本件同意は錯誤に基づくものであって無効である。 このように,本件説明義務違反がなければ本件検査は行われなかったのであるから,本件検査による大腸穿孔によるCの死亡という結果は生じなかったことは疑いがない。 したがって,本件説明義務違反とCの死亡という結果には因果関係がある。 (被告の主張)ア下部内視鏡検査及び前処置としての高圧浣腸を行う時期の判断を誤った過失とCの死亡という結果との因果関係について検査を延期しても,大腸穿孔を回避できたか否かについては,否定的であるから,因果関係も存在しない。 イ説明義務違反とCの死亡という結果との因果関係について争う。 (4)争点(4)(損害額)について(原告らの主張)アCの損害以下のとおり,Cは合計3528万9210円の損害を被り,原告A及び原告Bは,それぞれCの損害額の2分の1の損害賠償請求権を相続した。 (ア)逸失利益a83歳までの逸失利益919万0500円Cは死亡時76歳であったので,平均余命14年の2分の1の期間7年間(ライプニッツ係数5.7863)稼働できたはずであり,生活費控除30%,年収額合計226万9030円(①家事従事者として,賃金センサス(女子労働者・全学歴・年齢別平均)による65歳以上の平均年収294万7400円の5割に相当する147万3700円,及び,②Cの受給していた老齢基礎年金(国民年金)年額79万5330円を合算した金額)として,逸失利益は次式により算出される。 226万9030円×0.7×5.7863≒919万0500円b83歳以降平均余命までの逸失 老齢基礎年金(国民年金)年額79万5330円を合算した金額)として,逸失利益は次式により算出される。 226万9030円×0.7×5.7863≒919万0500円b83歳以降平均余命までの逸失利益184万1270円83歳以降平均余命までの7年間については,生活費控除60%として,老齢基礎年金分の逸失利益は次式により算出される。 79万5330円×0.4×5.7863=184万1270円(イ)慰謝料2400万円(ウ)治療費支払額25万7440円イ原告ら固有の損害1010万円(ア)原告Aの遺族固有の慰謝料300万円 (イ)原告Bの遺族固有の慰謝料300万円(ウ)弁護士費用410万円(被告の主張)争う。 原告らは,Cが83歳までの7年間就労可能であったと主張するが,Cには脊柱管狭窄症があり,今般の入院の際に見られた全身状態が改善する蓋然性も乏しいことから,原告らの主張は現実性に欠ける。 第3争点に対する判断 診療経過等前記前提となる事実並びに証拠(乙A1ないしA5,乙B9,証人H,証人F)及び弁論の全趣旨によれば,本件の診療経過等について,次の事実が認められる。 (1)Cは,平成8年8月18日に遭った交通事故により外傷性頸部症候群・腰椎捻挫を発症し,腰痛等を訴えて,同月19日から被告病院麻酔科(ペインクリニック)に通院し,腰部旁脊椎神経ブロックや鎮痛剤の処方等の加療を受けるようになった。(乙A1の122頁以下,179頁以下,A2の1頁)。 (2)Cは,平成11年5月25日,被告病院麻酔科医師に対し,左腹部がつる感じがし,腸が気になるなどと左腹部の違和感を訴え,8年前に下部内視鏡検査を他院で行ったところ,腸の一部が細くなっているが特に治療する必要はないといわれた旨を告げた。 そこで,同年6月 左腹部がつる感じがし,腸が気になるなどと左腹部の違和感を訴え,8年前に下部内視鏡検査を他院で行ったところ,腸の一部が細くなっているが特に治療する必要はないといわれた旨を告げた。 そこで,同年6月1日から,Cは,被告病院消化器内科(第2内科)にも通院を開始した。消化器内科医師は,触診の結果,腹部に腫瘍の触知はなく,排便時の血液付着は痔が疑われた。なお,平成12年2月8日には大腸ポリープ,大腸癌の疑いが持たれ,同年4月24日には,便潜血のため,注腸X線造影検査がなされたが,異常は認められなかった。 (乙A1の37頁以下,176頁,200頁以下)(3)Cは,Cr(クレアチニン)値1.7mg/dL(女性の基準値は0.5~0. 9)と腎機能障害が出現したため,慢性腎不全(NSAID(非ステロイド性抗炎症薬)による薬剤性腎障害)により,平成13年8月2日から,被告病院腎臓内科への通院を開始した。(乙A1の5頁以下,A2の1頁)(4)Cは,腰痛が増悪し,寝返りを打つのも辛いとの症状を訴え,腰椎圧迫骨折の診断により,平成15年1月20日,被告病院麻酔科に緊急入院した。 Cは,連日腰部旁脊椎神経ブロック等の治療を受けて,歩行ができるまでに回復したため,同月31日に退院し,その後は同科に通院して腰部旁脊椎神経ブロックやレーザー治療等の加療を受けていた。(乙A1の156頁以下,A4の1頁以下)(5)Cは,平成16年2月16日から,転倒による左橈骨遠位端骨折等により被告病院整形外科に通院を開始した。(乙A1の78頁以下)(6)Cは,平成16年11月1日,被告病院麻酔科を受診した。Cは,ここのところ腰下肢痛が強くトイレに立って行くこともできない,夜もよく眠れない旨を訴え,腰下肢痛治療のため被告病院麻酔科に緊急入院することとなり,腰部旁脊椎神経ブ ,被告病院麻酔科を受診した。Cは,ここのところ腰下肢痛が強くトイレに立って行くこともできない,夜もよく眠れない旨を訴え,腰下肢痛治療のため被告病院麻酔科に緊急入院することとなり,腰部旁脊椎神経ブロック療法及び薬物療法が開始された(腰部脊柱管狭窄症,腰椎前方すべり症,変形性腰椎症,腰椎圧迫骨折の診断がなされている。)。また,Cは慢性腎不全であったため,腎臓内科も併診し,F医師を班長とするF班(I医師,E医師,G医師)が担当することになった。なお,食事は腎臓病食とされた。(乙A4の32,47,54,64頁)(7)同月2日,Cの体温は37.3度,WBC(白血球数)値は6400/uL(基準値は3500~9000),CRP(C反応性蛋白)値は3.1mg/dL(基準値は<0.2),Cr値は1.7mg/dLであった。腰椎のCT検査が行われた。(乙A2の26,109頁,A4の48,56頁)(8)同月4日,Cの体温は36.9度,WBC値は12400,CRP値は 5.2であり,微熱があるとして腎臓内科のG医師にコンサルトがなされた結果,その指示により,抗生剤セファメジンα0.5g/Vの点滴静脈注射が開始された。同月2日に行われた腰椎CT検査の結果からは,椎体炎,椎間板炎,脊髄炎等脊椎系の感染はなさそうであるとの所見が得られた。(乙A4の48,49頁)(9)同月5日,発熱のため神経ブロックはしばらく中止されることとなり,薬物療法(ボルタレン錠(25mg)の頓用等)が継続された。感染症原因菌検索のため,中間尿の培養検査がなされたが,陰性であった。胸部レントゲン検査がなされた。(乙A2の1頁,A4の50,60頁,67頁以下,91頁以下)(10)同月6日,Cの体温は37.7度,WBC値は13300,CRP値は7.3,Cr値は2.0,Alb(ア ントゲン検査がなされた。(乙A2の1頁,A4の50,60頁,67頁以下,91頁以下)(10)同月6日,Cの体温は37.7度,WBC値は13300,CRP値は7.3,Cr値は2.0,Alb(アルブミン)値は3.4g/dL(基準値は4.0~5.1)であった。G医師は,感染症の疑いにつき,WBC値,CRP値がいずれも上昇しており,同月4日から開始したセファメジンの効果が見られないとして,抗生剤を変更することとし,モダシン静脈注射用0. 5g/Vの点滴静脈注射が開始された。前日の胸部レントゲン検査の結果に特に異常は認められず,原発巣は不明であった。G医師は,NSAIDと感染症にてCr値が上昇傾向にあり,NSAIDの内服によっても痛みが取れない様子であるとして,その内服をいったん中止するよう麻酔科医に促した。 また,血液検査により腫瘍マーカーの一種SCCの検査をオーダーしたが,後日基準値以下との結果が判明した。(乙A2の109頁,A4の50,58頁)(11)同月8日,麻酔科医師は,Cのボルタレン服用を中止し,湿布薬カトレップで対処することとした。Cの体温は37.5度であったが,感冒症状は見られなかった。腰椎MRI検査が行われた。G医師は,Cを腎臓内科に転科・転棟させるべく準備を進め始めていた。(乙A4の51,57頁) (12)同月9日,Cの体温は,午後3時50分には38.1度,午後5時には36.4度,WBC値は8100,CRP値は8.3,Cr値は1.8であった。(乙A4の74,83頁)。 麻酔科医師からの依頼により,整形外科医師がCを診察した。両仙腸関節等に疼痛が集中しており,レントゲン検査の所見上強直性変化が見られたことなどから,整形外科医師は,化膿性脊椎炎,リウマチ性脊椎炎,慢性関節リウマチ関連疾患を疑い,血液検査,骨シンチグ た。両仙腸関節等に疼痛が集中しており,レントゲン検査の所見上強直性変化が見られたことなどから,整形外科医師は,化膿性脊椎炎,リウマチ性脊椎炎,慢性関節リウマチ関連疾患を疑い,血液検査,骨シンチグラフィ,ガリウムシンチグラフィのオーダーを出し,また,コルセットを処方した。(乙A1の85頁以下,91,201頁)G医師は,感染症原因菌検索のため,尿検査,喀痰検査を行ったが,有意菌の検出は見られなかった。(乙A2の18頁,A4の61頁以下)(13)同月10日ころから,腰痛の痛み止めには,主としてレペタン坐薬(0. 2)が用いられるようになった。(乙A4の52,75,84頁)(14)同月11日,CのWBC値は5900,CRP値は3.8,Cr値は1. 7,Alb値は3.2であった。蛋白分画検査が行われた。(乙A2の109,154頁,A4の59頁)(15)同月12日,かねて感染症の併発が疑われていたため,熱源精査目的のため,Cは麻酔科から腎臓内科に転科した。蛋白分画検査が行われた。抗生剤は,モダシン投与が継続された。炎症性消耗性貧血が疑われたほか,便潜血反応陽性であったものの,理学所見上は問題なく,Cは切れ痔がある旨述べていたが,経過によって上部・下部内視鏡検査を実施することが検討された。なお,腰痛が持続していたため,感染症が治まったら再度麻酔科に転科することが予定されていた。(乙A2の10頁,18頁以下,109頁,A4の52,95頁)(16)同月13日,Cの体温は36.8度(ただし,鎮痛剤ナパ末を服用していた。)であった。上腹部不快感や嘔気を訴えたため,G医師は,レペタン 坐薬の影響も考えられるとしながら,ストレス性やNSAIDによる胃潰瘍も否定できないとして,消化性潰瘍治療薬オメプラール錠20の投与を開始したところ,翌日には胃 訴えたため,G医師は,レペタン 坐薬の影響も考えられるとしながら,ストレス性やNSAIDによる胃潰瘍も否定できないとして,消化性潰瘍治療薬オメプラール錠20の投与を開始したところ,翌日には胃部不快感は落ち着いた。なお,オメプラール錠20の投与はその後も腎臓内科入院中継続された。(乙A2の19,110,112,122頁)(17)同月16日,Cの体温は37.6度,WBC値は6100,CRP値は6.8,Cr値は2.0,Alb値は3.5であった。(乙A1の87頁,A2の109,154頁)レントゲン検査,心電図検査,胸部・腹部・骨盤部単純CT検査,骨シンチグラフィが行われた。CT検査にて,右中葉,下葉に淡い線状影が認められ,炎症性変化が疑われ,両側腎嚢胞が認められたが,他には明らかな異常所見は見られなかった。骨シンチグラフィによっては,第3腰椎全体,第5腰椎左側,両側仙腸関節部の異常集積のみ認められた。感染症原因菌検索のため普通便の検査が行われた。(乙A1の201頁,A2の60,80,154頁)(18)同月17日,腰椎MRI検査が行われたが,炎症所見は認められなかった。(乙A1の87頁,A2の62頁)(19)同月18日,Cの体温は37.2度,WBC値は7100,CRP値は10.2,Alb値は3.3であった。G医師は,モダシンの投与を開始して13日目であるが,抗生剤をモダシンに再変更しても炎症が改善せず腎機能障害が進んできたため,翌日でモダシンの使用を一旦終了することとした。 抗好中球細胞質抗体検査(PR3-ANCA,MPO-ANCA)が行われたが,異常は認められなかった。(乙A2の26,74頁)(20)同月20日,NSAID長期服用症,前日から引き続き便潜血があるため,消化器内科へのコンサルトが検討された。 ガリウムシンチグ 行われたが,異常は認められなかった。(乙A2の26,74頁)(20)同月20日,NSAID長期服用症,前日から引き続き便潜血があるため,消化器内科へのコンサルトが検討された。 ガリウムシンチグラフィが行われ,右仙腸関節の異常集積のみ認められた。 レントゲン検査の結果や理学上,明らかな肺炎像は認められてはいなかったものの,16日の胸部CT検査により右中肺野の炎症性変化が認められたことから,異型肺炎が疑われ,抗生剤ミノマイシンカプセル100mgの投与が開始された。 その他,問題点としては,腰痛,貧血,慢性腎不全に合併する内分泌異常である二次性副甲状腺機能亢進症が指摘された。 (乙A2の26頁以降,29,63,109頁)(21)同月22日,Cの体温は36.4度,WBC値は4400,CRP値は3.0,Cr値は2.3,Alb値は3.5であった。二次性副甲状腺機能亢進症のためになされた血清による骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)検査の結果は54.2U/L(女性の基準値は9.6~35.4,癌の骨転移の判定基準は28.3以上,腎性骨異栄養症(線維性骨炎)・代謝性骨疾患の判定基準は35.5以上)であった。酸素投与をしない状態での血液ガス検査の結果,Ph値は7.313,PCO(動脈血酸素分圧)値は3 5.7㎜Hg,PO値は80.4㎜Hg,HCOAct値は17.7mmol/L, BE(vt)値は-7.6mmol/L,OSat値は95%,AnGap値は 13.4mmol/Lであり,低酸素血症はないが,代謝性アシドーシスと診断されたため,炭酸水素ナトリウムの投与が開始された。ミノマイシン投与後CRP値が低下し,解熱もしているため,再びペインコントロールを麻酔科にしてもらうことが検討された。(乙A2の27頁以下,75-2,77,109, 素ナトリウムの投与が開始された。ミノマイシン投与後CRP値が低下し,解熱もしているため,再びペインコントロールを麻酔科にしてもらうことが検討された。(乙A2の27頁以下,75-2,77,109,154頁)(22)同月24日,Cの体温は36.7度,WBC値は4500,CRP値は1.1,Cr値は2.1であった。(乙A2の154頁)(23)同月25日,CのPO値は76.8,OSatは94.4%であった。 便潜血持続陽性であり,消化管出血を否定できないため,被告病院の医師が上部内視鏡検査をCに勧めたが,Cは「それだけは嫌です・・・。」と述べ, 拒否した。なお,上腹部不快感の訴えはなかった。(乙A2の30,75-3頁)(24)同月29日,CのWBC値は5200,CRP値は2.5,Cr値は2. 0であった。酸素投与なしでPOは92.5㎜Hg,OSatは96.5% であった。クラミジアニューモニエIgM抗体の検査が行われたが,後日陰性と判明した。Cは,便が出かかかっているが自力排泄できず苦しいなどと訴えたため,グリセリン浣腸60mLが施行された。(乙A2の30頁以下,77,125,154頁)(25)12月1日,Cの体温は,37.2度であった。腹部エコー検査が施行され,両腎萎縮,多発腎嚢胞の所見が得られた。Cは下剤を希望した。また,腰痛に対しては,レーザー治療が開始された。(乙A1の173頁,A2の31頁,56頁以下,125,154頁)(26)同月2日,Cの体温は36.9度であった。G医師の診察に対し,Cは,レーザー治療で腰痛は入院時の半分程度にまで軽快したが,便通がないので坐薬の使用を希望したため,レシカルボン坐薬が挿肛された。また,G医師は,日常生活動作が改善すれば退院との方針を立て,原告らに対し,内科的治療が終 は入院時の半分程度にまで軽快したが,便通がないので坐薬の使用を希望したため,レシカルボン坐薬が挿肛された。また,G医師は,日常生活動作が改善すれば退院との方針を立て,原告らに対し,内科的治療が終了した旨告げた。(乙A2の32,126,154頁)(27)同月4日の診療経過ア原告BからE医師に対し,Cが食事時に吐気などの症状があり食事摂取が進んでいないとの訴えがあり,E医師がCに確認したが,はっきりしなかった。排便がなかなかない旨Cは訴え,腸蠕動音の低下が認められたため,グリセリン浣腸30mLが施行された。 イE医師は,消化器症状,便潜血陽性や貧血等の検査結果から上部内視鏡検査を施行した方がよいこと等の説明を行った。そして,E医師は,原告Bに対し,上記に加え,「検査の方法,合併症については別紙参照」とE医師が記載した「説明・同意書」(以下「本件同意書1」という。)を交 付した。 (乙A2の32,99,126頁)(28)同月6日の診療経過ア原告Bは,本件同意書1の下部の親族欄に原告Bの住所及び氏名を記載し,「説明を受けましたが,同意いたしません。」との選択肢に印を付けてE医師に提出し,上部内視鏡検査を拒否した。(乙A2の99頁,A4の33頁)イ同日,原告Bは,上部内視鏡検査を拒否すること,今週中の退院はまだ無理と思うので,もう少しリハビリしてからにしてほしい旨E医師に述べた。E医師は,胃潰瘍の可能性等も考慮した上で,内服治療で様子を見ることとした。なお,同日,レントゲン検査がなされた。(乙A2の33,153頁)(29)同月7日午前9時30分ころ,Cは余り便通がないとして医師の診察を希望したため,F医師が診察し,レシカルボン坐薬が挿肛された。血液ガス検査の結果,PO値は76.0,OSat値は95.3%,Na値は13 月7日午前9時30分ころ,Cは余り便通がないとして医師の診察を希望したため,F医師が診察し,レシカルボン坐薬が挿肛された。血液ガス検査の結果,PO値は76.0,OSat値は95.3%,Na値は13 5.9mmol/Lであったが,K+値1.98mmol/Lと低カリウム血症が見られたため,それまでなされていたカリメート投与は中止され,K.C.Lエリキシル(100mg/mL)の投与が開始された。また,心電図モニターの装着がなされた。Cは,同日夜にも排便の不調を訴え,希望して下剤であるプルセニドを内服した。(乙A2の33,75-6,126頁)(30)同月8日午前6時50分ころ,Cは呼吸苦を訴えた。体温は36.1度,SpO値は93%でありOナザール2リットルの投与が開始された。咳や 痰,胸部症状は見られず,前夜と比べて心電図モニター上に著変は見られなかった。動脈血ガス分析が行われたところ,Oナザール3リットルの投与 をしている状態でPO値が98.9,OSat値が97.7%であった。 また,K+値が1.76と低カリウム血症が持続していたため,ソリターT 3号及びアスパラK注の点滴静注が開始されたところ,K+値2.3と若干の上昇が見られた。G医師は,原告らに対し,尿細管性アシドーシス,高カリウム血症に対するカリメート内服中に,低カリウム血症になり,点滴にてゆっくり補正していることを説明し,全身倦怠感や食欲不振は低カリウム血症の関与もあるとして経過を追っていくとの方針を立てた。SCC,ProGRP,NSEといった腫瘍マーカーの検査や,副甲状腺ホルモン(PTH)-インタクト,骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)の検査がなされた。なお,同日昼ころのCの体温は37.0度であった。(乙A2の20頁以下,33,70,127,15 や,副甲状腺ホルモン(PTH)-インタクト,骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)の検査がなされた。なお,同日昼ころのCの体温は37.0度であった。(乙A2の20頁以下,33,70,127,153頁)(31)同月9日,Cは腰痛がひどい旨訴えた。Cの体温は36.7度,WBC値は10300と上昇し,CRP値は3.3,Cr値は2.1,K値は2. 5であった。G医師は,6日に実施されたレントゲン検査の結果も参照しつつ,ミノマイシンでいったんCRP値が低下したが,WBC値の上昇が見られていることにつき,これまで第1,3セフエム系抗生剤では効果がなく,ミノマイシンは効果ありと考えられたことから,異型肺炎の混合感染も考えられていたが,改めて炎症巣を検索するとの方針を立て,13日に胸・腹・骨盤CT検査を,18日にガリウムシンチグラフィをそれぞれ予定した。Cは,便が頻回にあり不快感強くすっきりしない旨訴えたため,G医師は,消化管運動促進剤であるガスモチン錠(5mg)を処方した。(乙A2の21頁以下,127,153頁)(32)同月10日,CはI医師の診察を受け,腰痛を訴えた。I医師は,腰痛につき,レーザー治療は初期は効果があったが最近は効き目がなさそうであるとし,15日に骨シンチグラフィを予定したほか,便秘については,疼痛の上昇による消化管運動低下によるものであってペインコントロールが重要と考えた。低カリウム血症については,食事摂取量が相変わらず少ないとして,点滴静注の継続とした。 Cの体温は36.4度であったが,WBC値は18200と更に上昇し,CRP値は4.5,Cr値は2.3であった。G医師は,結局ミノマイシンの効果はなかったと判断し,改めてモダシン静注用0.5g/Vの投与を開始し,右肺に湿性ラ音が認められたため,翌日ポータブルレントゲ CRP値は4.5,Cr値は2.3であった。G医師は,結局ミノマイシンの効果はなかったと判断し,改めてモダシン静注用0.5g/Vの投与を開始し,右肺に湿性ラ音が認められたため,翌日ポータブルレントゲン検査を予定した。 (乙A2の23,24,153頁)(33)同月11日の診療経過アCの体温は36.5度,WBC値は18300,CRP値は5.3,K値は3.6であった。ポータブル胸部レントゲン検査にて,心胸郭比の増強(60.5%→63.8%)及び肺うっ血の増強が見られた。ポータブルエコー検査上,左房・左室・下大静脈は虚脱し,右房・右室の状況は不明であり,左室壁運動には問題がなかったが,心エコー検査を依頼することとした。(乙A2の24頁以下,34,153頁)イCの動脈血ガス分析がなされたところ,Oナザール酸素3リットルを 投与してPO値が98.6,OSat値が97.7%,K+値3.48 であったほか,Na値113.1と低ナトリウム血症の進行が見られ,現在Cが食事をほとんどとれていない状況であるとして,G医師は,点滴に塩化ナトリウムを追加することとした。(乙A2の24,75-6頁)ウCの食事摂取状況は不良であり,朝食中には嘔気をときどき催していた。 (乙A2の24,35,127頁)エ原告Bが来院した際,G医師は,原告Bに対し,Cには現在電解質異常(低ナトリウム血症,低カリウム血症)があり,点滴にて治療中であること,これは悪心など消化器症状の原因のひとつと考えられるが,電解質異常が増悪する以前から消化器症状が見られていたので,状態が落ち着いたら上部・下部内視鏡検査を施行することを検討してほしい旨を説明した。 これに対し,原告Bは,上部・下部内視鏡検査については考えてみる,腎 機能が悪化し最悪の場合には人工透析を導入しなければ 着いたら上部・下部内視鏡検査を施行することを検討してほしい旨を説明した。 これに対し,原告Bは,上部・下部内視鏡検査については考えてみる,腎 機能が悪化し最悪の場合には人工透析を導入しなければならなくなったとしてもよいからCの痛みをとってあげたいという気持ちになってきている旨述べた。(乙A2の34頁)(34)同月12日の診療経過アCのWBC値は13900と低下傾向にあったが,CRP値は5.6と変わらず,Cr値は2.8に上昇した。少量の軟便が頻回にあったのが,前日から水様下痢様便になっており,陰部発赤,ただれが見られたため,G医師は午前中に軟膏を,夕方には排便が少量ずつ頻回に見られたため整腸剤ビオフェルミンR錠(6mg)を,それぞれ処方した。(乙A2の34,128頁)イ午後2時ころ,Cは腹痛と嘔気を訴えたため,E医師の指示により,グリセリン浣腸60mLが施行されたところ,茶色水様便,粘液便が出た。その後,腹痛は軽減した。(乙A2の128頁)ウ午後3時ころ,G医師は,C及び原告Bに対し,上部・下部消化管内視鏡検査についての説明を行った。そして,G医師は,原告Bに対し,「説明・同意書」(以下「本件同意書2」という。)を交付した。なお,本件同意書2には,G医師により,内容欄に「別紙」と手書きで記載されている。そして,C及び原告Bは,本件同意書2の下部の患者本人欄及び親族欄にC及び原告Bの住所と氏名を記載し,「私は,上記の説明(説明書)を受け,その医療行為を受けることに同意いたします。なお,医療上から,上記の内容を緊急に変更する必要が生じた場合は,その変更処置を受けることについても同意いたします。」との選択肢に印を付けて提出した。 (乙A2の100頁)エ午後4時42分ころ,Cが呼吸苦を訴えたため,E医師がCを診察した。 C が生じた場合は,その変更処置を受けることについても同意いたします。」との選択肢に印を付けて提出した。 (乙A2の100頁)エ午後4時42分ころ,Cが呼吸苦を訴えたため,E医師がCを診察した。 Cは,嘔気が少し改善し昼食を少しとったところ,お腹がはって胸が苦しい旨を訴えたが,胸痛は見られなかった。Cの体温は36.5度,OS at値は96%であり,ナザール鼻マスクによる酸素投与が2リットルから3リットルに増量された。胸部レントゲン検査にて,心拡大,肺うっ血増悪が認められたが,腹部レントゲン検査によっても腸にニボー(鏡面像)は認められなかった。また,E医師は,原告Bから,上部・下部内視鏡検査を施行して欲しい旨の連絡を受けた。(乙A2の35頁以下,128頁)(35)同月13日,Cの体温は36.2度,Oナザール3リットル施行にて, OSat値は97.7%であった。Cは,E医師に対し,胸の苦しさはと れ,昨日より呼吸が楽であるが,今度は下痢に悩まされている旨訴えた。 E医師は,食事摂取不良のため連日1000mLの点滴を行っており,電解質補正がされるに従いやや嘔気は治まってきているようであるが,点滴により尿量があまり得られず浮腫が増悪傾向にあると診断するとともに,低アルブミン血症(Alb2.5)があり,血管内虚脱している状態であるため,明日Alb2V点滴を開始するとの方針を立てたが,原告らと会うことができずにその同意書を受領することができないために保留とした。 なお,同日ころ,8日に行われた腫瘍マーカー等の検査結果が判明し,SCC値0.6ng/mL(基準値1.5以下),ProGRP59.0pg/mL(基準値46未満),NSE(神経特異エノラーゼ)3.7ng/mL(基準値10以下),副甲状腺ホルモン(PTH)-インタクト150pg/m g/mL(基準値1.5以下),ProGRP59.0pg/mL(基準値46未満),NSE(神経特異エノラーゼ)3.7ng/mL(基準値10以下),副甲状腺ホルモン(PTH)-インタクト150pg/mL(基準値10~65),骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)31.4U/Lであった。 (乙A2の36,70,75-5頁)(36)同月14日,Cの体温は,36.5度,WBC値は11200,CRP値は6.8,Cr値は2.7,K値は5.6であった。Cは,嘔気は治まってきた旨述べる一方で,やはり内視鏡検査はしたくない旨述べた。同意書が得られないためアルブミン製剤の投与は保留されていたが,脱水が改善され たためか尿量の増量が見られた。(乙A2の37頁)(37)同月15日,Cは,鎮静をかけてであれば下部内視鏡検査を受けてもよい旨を述べたため,E医師は下部内視鏡検査のオーダーを出した。(乙A2の38頁)(38)同月16日,低蛋白血症の改善を図るべく,ネオアミューの点滴静注と,呼吸苦,胸水貯留,軽度の肺うっ血があるため利尿剤ラシックスの投与(同日は静注,翌日からラシックス錠(20mg)経口投与)がそれぞれ開始された。また,排便回数が頻回でCの苦痛が大きいため,ガスモチンの投与が中止された。右肺の炎症性変化と仙腸関節炎が疑われたが加療にもかかわらず改善が見られないために13日に行われた胸部・腹部・骨盤部単純CT検査の結果,左心機能不全疑い,両側胸水,胆嚢炎,両側腎嚢胞,L-4椎体圧迫骨折の疑い,右側仙腸関節炎の疑い,左恥骨骨折の疑いとの所見が得られた。腹部CT検査で胆嚢はやや緊満,周囲壁が肥厚しており,周囲に浸出液が見られ,胆嚢炎が疑われたため,腹部エコー検査が実施されて胆嚢炎が確認された。エコー画像上,明らかな泥汁等は見られず周囲の浸出液も 。腹部CT検査で胆嚢はやや緊満,周囲壁が肥厚しており,周囲に浸出液が見られ,胆嚢炎が疑われたため,腹部エコー検査が実施されて胆嚢炎が確認された。エコー画像上,明らかな泥汁等は見られず周囲の浸出液も明らかではなく陳旧性の像との所見であった。血液データ上,胆道系酵素(ALP,γ-GTP)やBil(ビリルビン)値の上昇はなく活動性のある炎症の存在は否定的であったが,炎症巣不明の感染症があるため,抗生剤スルペラゾン静注用1g/Vの投与を開始して様子を見ることとされた。また,15日に右仙腸関節炎の経過観察のため行われた骨シンチグラフィの結果,両側仙腸関節炎(前回より集積低下),慢性恥骨結合炎(前回より集積低下),第3腰椎圧迫骨折との所見が得られた。(乙A2の38頁以下,61,64頁)(39)同月17日,Cの体温は36.6度であった。Cは,今日は痛みはだいぶ軽減している旨述べていた。胸部レントゲン検査にて,両側胸水,うっ血の上昇が見られた。低アルブミン血症による胸水(血管内脱水)と考えられ,うっ血性心不全も呈していることから,早急な利尿を得るためにアルブミン 点滴が必要と考えられたため,原告らが来院時に同意書を徴求することとされた。(乙A2の40頁)(40)同月18日の診療経過アCの体温は36.7度であった。Cは,息苦しさや,便通がうまくいかない旨を訴えた。E医師は,レントゲン検査,CT検査上,心嚢液貯留傾向があり前日の尿量も少なく,息切れも出現していることから,ラシックス40mg静注を施行し,尿量により翌日以降も同様とするが,ラシックスにより血圧が低下するようならアルブミン点滴をするとの方針を立てた。 また,15日の骨シンチグラフィと同様の目的で,ガリウムシンチグラフィが行われたが,両側仙腸関節の異常集積は認められたものの,その他 により血圧が低下するようならアルブミン点滴をするとの方針を立てた。 また,15日の骨シンチグラフィと同様の目的で,ガリウムシンチグラフィが行われたが,両側仙腸関節の異常集積は認められたものの,その他に異常集積は認められなかった。(乙A2の41,65頁)イF医師及びE医師は,原告Bに対し,腰痛が原因で麻酔科に入院し,原因不明の炎症精査加療目的で腎臓内科に転科となったこと,CT検査,エコー,シンチグラフィ等の検査を行ったが,内科的には明らかな炎症巣を確定できておらず,抗生剤にてCRP値が10から3へと低下はしているが,いまだ陽性が続いていること,あと調べていないのは消化管のみで,消化器症状もあり,悪性の可能性も含め検査する必要があること,また,低栄養による低蛋白血症もあり,そのために肺などに水分が漏れ出てむくみや胸水となり,現在の呼吸苦の原因となっていること,アミノ酸製剤(ネオアミュー)にて対応しているが,治療効果としては,アルブミン製剤を投与することが効果的で望ましいと考えられること,今後食事摂取量低下が続くようなら,IVH(中心静脈栄養・高カロリー輸液)を行う必要があると考えていることなどを説明した。これに対し,原告Bは,アルブミン製剤の使用や,上部・下部内視鏡検査の施行に同意した。なお,上部・下部内視鏡検査は,経験豊富な内視鏡センターの消化器内視鏡医師が施行することが予定されていた。(乙A2の41,42頁,B9,証人 H)(41)同月19日の診療経過アCは,「よく眠れた。苦しくない。」と述べた。 診察の結果,湿性ラ音があった。うっ血性心不全については,ラシックス内服後,症状は軽くなっており,利尿も良好で,食事摂取量も1/3~1/4と増えているとして,レントゲン検査により点滴量の減量を検討するとの方針が立てられた。また うっ血性心不全については,ラシックス内服後,症状は軽くなっており,利尿も良好で,食事摂取量も1/3~1/4と増えているとして,レントゲン検査により点滴量の減量を検討するとの方針が立てられた。また,翌日から3日間アルブミン製剤の点滴投与を行うこととされた。(乙A2の42頁)イ同日ころ,F医師は,原告Bに対し,炎症の原因は不明であり,CT検査にて胆嚢炎の疑いとの所見が得られているが,活動性のあるものかは疑わしく,胆道系酵素の上昇は認められず慢性的なものかもしれないが,一応,抗生剤を投与していること,食欲不振の原因も不明であるが,消化管精査にて悪性所見が見つかる可能性もあること,このままこの状態が続けば中心静脈栄養管理をすることを説明したところ,原告Bは「お願いします。」と返答した。(乙A2の43頁)(42)同月20日(月曜日),血液ガス分析の結果,Oナザール2リットル 投与の状態で,PO値は86.4,OSatは96.7%であった。Cの WBC値は5200,CRP値は1.1,Cr値は2.4,Na値は135. 6,K値は3.5であった。Alb値は2.4と減少傾向にあり,食欲不振も変わらなかったことから,今週中にIVH(中心静脈栄養・高カロリー輸液)を実施することとなった。アルブミン製剤2V(バイアル)の点滴投与が開始された。また,胸部レントゲンにて胸水の増量が見られたほか,聴診により湿性ラ音は認められたが,気道(気管)狭窄音は認められなかった。 (乙A2の43,44,153頁,証人F)同日夜,E医師は,Cの尿量が1200mLあり,食事を3分の1から3分の2程度摂取しているが,呼吸苦の訴えがあり,アルブミン製剤の点滴もな されたことから,同日分のソリターT1等の点滴の残は破棄し,ラシックス40mgを更に点滴投与することとした 3分の1から3分の2程度摂取しているが,呼吸苦の訴えがあり,アルブミン製剤の点滴もな されたことから,同日分のソリターT1等の点滴の残は破棄し,ラシックス40mgを更に点滴投与することとした。(乙A2の43,147頁)また,同日付けの診療録には,「WeeklySummary」として,「ペインコントロールにて麻酔科入院中原因不明の感染症発症し精査加療にて転科となっている。各種培養検査を行うが明らかな起因菌認めずCT等でも感染巣不明であった。12/13施行のCTにて胆嚢壁の肥厚を認めアクティブな胆嚢炎は否定的であるが現在スルペラゾン使用にて炎症反応は1.1mg/dLまで低下している。消化器症状(嘔気,食欲不振,黒色便)持続し食事摂取量低下による低栄養状態のため上部下部内視鏡検査にて精査を進める予定。」旨の記載がある。(乙A2の45頁)なお,Cは,就寝前,下部内視鏡検査の前処置として,ラキソベロン液(75mg/10mL)1本を服用した。(乙A2の152頁)(43)12月21日の診療経過ア午前10時ころ,Cは,被告病院の看護師に対し「ほんと,不安だわ。 そうね,安定剤飲めるなら飲みたいです。」と述べ,同日実施予定の下部内視鏡検査への不安が強い状態であった。腸の蠕動が下腹部において聞かれたが,上腹部ではほとんど聞こえなかった。(乙A2の130頁)イ午前10時30分ころ,Cの排便が少しずつしか出ないため,看護師がCを車椅子用トイレに誘導し,高圧浣腸(微温湯500mL)を施行した。 Cは浣腸液を我慢できず,浣腸液を入れながら排泄している状況であり,軟便が少量排泄された。(乙A2の130頁)ウ同日午後0時ころ,Cのオムツ内部はさらに軟便で,泥状や水様にならなかった。Cが浣腸を我慢できず効果的な浣腸ができないため,レシカルボン坐薬の あり,軟便が少量排泄された。(乙A2の130頁)ウ同日午後0時ころ,Cのオムツ内部はさらに軟便で,泥状や水様にならなかった。Cが浣腸を我慢できず効果的な浣腸ができないため,レシカルボン坐薬の挿入がなされた。午後0時55分ころ,排便があった旨の連絡を受けて看護師が訪室したが,レシカルボン坐薬が溶けたものの排泄であった。看護師が摘便したが便に触れなかった。 エ午後1時40分ころから,Cは腹痛・便意を訴え,同50分には「おなか痛い,痛い。うんちが出ない。」と訴えた。看護師が車椅子用トイレに誘導したところ,Cは軟便が少量出たが残便感があり「浣腸してうんち出して・・。」と述べた。看護師はCと相談の上,グリセリン浣腸60mLを施行したが,排液がそのまま出る状態であり,便はほとんどなかった。 オ午後2時30分ころ,Cは,「もう私,ダメだわ。死んじゃうのよ。」と訴え,興奮していた。腹痛の持続,頻呼吸,酸素飽和度低下によりドクターコールがなされ,G医師が診察したところ,腹部の痛みが強く,腹部は固く,反跳痛があり,蠕動音は低下していた。下部内視鏡検査の実施は中止された。理学所見上,大腸穿孔,腹膜炎が疑われ,ポータブルレントゲン検査の結果,心不全が悪化しており,透過性の低下が見られた。緊急CT検査の結果,うっ血性心不全の増悪と,腸管穿孔を意味するフリーエアーが認められたため,第2外科へ至急コンサルトとされ,Cは同科に転科した。(乙A2の46,131頁)カ午後5時30分ころ,緊急手術のため,CはICUに入室した。(乙A2の131頁)午後6時30分ころ,腎臓内科の医師及び第2外科のJ医師は,原告らに対して,次のような説明をした。Cは胃から腸にかけてのどこかに穴が空いており,汎発性腹膜炎の状態にあり,敗血症になりかかっている。下部消化管に穴 ころ,腎臓内科の医師及び第2外科のJ医師は,原告らに対して,次のような説明をした。Cは胃から腸にかけてのどこかに穴が空いており,汎発性腹膜炎の状態にあり,敗血症になりかかっている。下部消化管に穴が空いている場合は,細菌が多いために,腹膜炎が起こり,敗血症にかかり,生命の危険もある。手術の危険は,全身状態が悪いためかなり厳しい,時間との戦いである。合併症として,出血と塞栓症がある。 (乙A5の12,13頁)キ引き続き午後7時ころ,E医師は,原告らに対し,数日前から心不全に伴う呼吸状態の悪化が見られていたが,利尿剤にて改善をはかっている状態であったところ,本日,消化管穿孔を発症するとともに心不全の方が増 悪し,更に呼吸状態が悪くなっており,これ以上悪くなると気管内挿管等の処置も必要となる可能性があること,現時点で必要なことは胸に貯まった水を引いて呼吸状態を改善させることであり,手術の後に持続的血液透析濾過という治療を行うこと等につき説明をした。(乙A2の48頁)ク午後7時30分から午後9時45分まで,被告病院外科のK医師を術者,J医師らを助手として緊急手術が施行された。K医師が開腹したところ,汚染腹水が約700mL貯留していた。続いて穿孔部を検索したところ,S状結腸の直腸に近い辺りの憩室部分に径数mmの穿孔部が認められた。その肛門側にも憩室が見られ,数㎝肛門側には漿膜が一部損傷していた。その他の腹腔内,臓器には明らかな異常は認められなかった。穿孔部周囲をトリミングし,全層で30バイクリルにて縫合閉鎖し,続いて漿膜筋層を縫合し,さらに周囲の脂肪織を穿孔部に蓋をするように縫合した。横行結腸を双口式人工肛門とし,創部の左側(腹直筋外側縁)に人工肛門を造設した。腹腔内を温生理食塩水10リットルにて洗浄,止血し,他に穿孔していないこと 囲の脂肪織を穿孔部に蓋をするように縫合した。横行結腸を双口式人工肛門とし,創部の左側(腹直筋外側縁)に人工肛門を造設した。腹腔内を温生理食塩水10リットルにて洗浄,止血し,他に穿孔していないことを確認し,両側横隔膜下,ダグラス窩にプリーツドレーンを挿入し閉鎖式とした。エチガードにて閉腹し,温生理食塩水1リットルで創部を洗浄した。人工肛門を双口式とし,筋膜に数針固定,皮膚,漿膜,粘膜を12針固定して手術は終了した。(乙A5の2,76,77頁)ケ術後,J医師から原告らに対し,術中の所見について,診断としては大腸憩室穿孔であり,穿孔部がS状結腸のほとんど直腸に近いところであったこと,人口肛門を造設したこと,便が腹腔内に洩れることによる細菌性腹膜炎及び敗血症を呈していたのでエントドキシンの吸着が必要であることの説明がなされた。(乙A5の10,11頁)(44)緊急手術後の診療経過術後,炎症所見等は改善傾向にあったものの,肺水腫の状態は一向に改善せず呼吸器の離脱は不可能であった。一度抜管するも,やはり呼吸苦が出現 し,再度挿管となった。その後,肺炎所見も呈し始めたため,抗生剤PAPMを同月23日から施行し,炎症所見は改善傾向を示した。 しかし,同月27日ころからビリルビン値,γ-GTP値の上昇が認められ,抗生剤が変更された。ビリルビン値の上昇が依然として認められたため,平成17年1月3日にはすべての抗生剤の使用が中止された。また,他の肝障害をきたすおそれのある薬剤もすべて中止された。 同月5日ころから,急激にWBC値の上昇が認められ,同月9日時点では最大25800まで上昇した。真菌血症による感染症状と考えられたため,同月6日から抗真菌薬ジフルカンを投与したが,依然としてWBC値の上昇が認められた。このため,MRSA(メシチリン耐性黄色 点では最大25800まで上昇した。真菌血症による感染症状と考えられたため,同月6日から抗真菌薬ジフルカンを投与したが,依然としてWBC値の上昇が認められた。このため,MRSA(メシチリン耐性黄色ブドウ球菌)も原因菌として関与しているものと考えられ,同月9日から抗生剤バンコマイシンの投与が開始されたところ,WBC値の低下が認められた。 経腸栄養については順調にカロリーアップを行うことができ,ビリルビン値についても感染の改善と共にどんどん改善傾向にあった。MRSA肺炎については連日の気管支鏡によりみるみる改善し,全身状態も落ち着き,一時は意識障害も認められていたが,脳CT検査上及び脳波上は異常がなく,神経内科医師によりDIC(播種性血管内凝固症候群)脳症と診断され,1~2週間にて意識障害も改善するであろうとのコメントが寄せられた。 ところが,同月27日の昼ころ,Cは突然の血圧低下を示し,WBC値も午前8時には12300であったものが3100まで低下し,凝固機能も低下傾向にあり敗血症からDICにまで移行しつつある状況と判断された。その後,血圧低下のためCHDF(持続的血液濾過透析)を止めたが血圧は改善せず,感染源の可能性のあるすべてのカテーテル類を交換したが,血圧は上昇しなかった。(乙A5の2,3頁,443頁以下)(45)その後,昇圧剤の使用や輸血などがなされたが,血圧は徐々に低下していき,同月28日午前3時45分,Cの死亡が確認された。直接死因として は敗血症,その原因としてはS状結腸穿孔と考えられた。同日,剖検が実施された。(甲A8,乙A5の5ないし7頁,73頁)被告病院病院病理部作成の剖検診断書には,臨床診断として「S状結腸穿孔」,主病診断名として「1.肺化膿症+敗血症(微小膿瘍:心臓,腎臓+脾炎220g)2.限局性化膿性 A5の5ないし7頁,73頁)被告病院病院病理部作成の剖検診断書には,臨床診断として「S状結腸穿孔」,主病診断名として「1.肺化膿症+敗血症(微小膿瘍:心臓,腎臓+脾炎220g)2.限局性化膿性腹膜炎(S状結腸穿孔術後状態)+腹水700cc」,副病変として「1.萎縮腎+慢性腎盂腎炎(80/80g)2.肺うっ血水腫(470/450g)」,偶発所見として「1.甲状腺濾胞腺腫2.十二指腸潰瘍(U1-Ⅱ)」と記載されている。(乙A5の5頁)また,被告病院病院病理部作成の剖検報告書には,主病変として「1.敗血症(腎盂腎炎+器質化肺炎+心筋内小膿瘍+化膿性心膜炎+脾腫220g)2.萎縮腎(80g,80g)」,副病変として「1.S状結腸穿孔術後状態(癒着や腹膜炎を認めない)2.無気肺(両下葉)+うっ血水腫(470g,450g)3.十二指腸潰瘍(いわゆるkissingulcer4. 急性胆嚢炎5.右前胸部筋層下出血」,死因として「敗血症が考えられます。」,コメントとして「1.敗血症の原因として腎盂腎炎もしくは肺炎が推定されます。 2.臨床的に指摘されている右前胸部筋層下血腫,十二指腸潰瘍および薬剤性肝炎と死因との関連性は乏しい印象を受けます。」と記載されている。(乙A5の6頁) 医学的知見等証拠(甲B9,B10,B13.B15,B23,B24,B27,B42,B45,B49,B54,乙B1,B2,B4,B5)によれば,以下の医学的知見等が認められる。 (1)下部内視鏡検査についてア適応あらゆる大腸疾患や,大腸疾患を疑う症例での除外診断のため,あるい は便潜血陽性などの検査所見があれば適応となる(棟方昭博,多田正大,松井敏幸「大腸内視鏡ガイドライン」(日本消化器内視鏡学会卒後教育委員会編,日本消化器内視鏡学会監修『消化 診断のため,あるい は便潜血陽性などの検査所見があれば適応となる(棟方昭博,多田正大,松井敏幸「大腸内視鏡ガイドライン」(日本消化器内視鏡学会卒後教育委員会編,日本消化器内視鏡学会監修『消化器内視鏡ガイドライン』〔第2版〕。2002(平成14)年12月1日発行。甲B54,乙B2。(以下「平成14年ガイドライン」という。)))。近年,便潜血陽性者の精査は大腸内視鏡検査が最もよい適応となっている(『新消化器内視鏡マニュアル』(2002(平成14)年4月10日発行。甲B9(以下「内視鏡マニュアル」という。)))。 ただし,大腸の検査法は内視鏡検査のみではないことを念頭に置き,複数回の腹部手術を有する場合や前回挿入を断念した症例などは,注腸造影検査を選択することも考慮すべきであり,また,内視鏡検査は,腹部単純X線検査,超音波検査,CT検査など他の検査との優先順位を考慮して選択すべきであるとか(五十嵐正広,津田純郎,小林広幸「大腸内視鏡ガイドライン」(『消化器内視鏡ガイドライン』〔第3版〕(2006(平成18)年10月1日発行。甲B45(以下「平成18年ガイドライン」という。))),内視鏡検査には常に一定の確率で発生する避け難いリスクがあるから,個々の患者について,検査から予測される有用性とリスクを常に秤にかけ,慎重に適応を決めなければならず,検査を依頼するときには,本当に必要な検査かどうか熟考し,患者の全身状態を把握し,最適な検査時期を選択すべきであり,合併症について十分な説明を行い,同意を得ることが必要である(『プライマリ・ケア医のための消化器疾患アプローチ』(2003(平成15)年3月10日発行。甲B42(以下「消化器疾患アプローチ」という。)))との指摘がなされている。 イ禁忌内視鏡マニュアルには,絶対禁忌として,①急性腹膜 化器疾患アプローチ』(2003(平成15)年3月10日発行。甲B42(以下「消化器疾患アプローチ」という。)))との指摘がなされている。 イ禁忌内視鏡マニュアルには,絶対禁忌として,①急性腹膜炎,②腸管穿孔,③呼吸循環不全状態(検査により病状が悪化する可能性が高い。どうして も検査が必要な場合は厳重なモニタリングによる全身管理を行う。),④腹部大動脈瘤が挙げられ,大腸内視鏡手技の熟練の程度によって異なる相対禁忌として,①重症炎症性腸疾患(前処置や検査で病状が悪化する可能性が高い。鑑別診断が必要な場合は最小限の観察にとどめる。),②腸閉塞,③妊娠,④高度な腹水,⑤高度な腸管癒着,⑥前処置不良状態,⑦検査を嫌がっている被験者(検査に対して協力が得られない場合は中止すべきである。),⑧大量の腸管出血が挙げられている(甲B9)。 平成14年ガイドライン(甲B54)によれば,「禁忌は消化管穿孔,炎症性腸疾患に伴う中毒性巨大結腸症などである。禁忌は術者の熟練度によって異なるし,また婦人科的手術後などの高度癒着例,重篤な急性炎症あるいは全身状態の不良な患者においては,内視鏡を行う有用性が上回る場合にのみ,熟練した内視鏡医が行うことが望ましい。また,事前に内視鏡の必要性,その方法,合併症などにつき説明をした上で同意が得られない場合にも禁忌である。」とされている。 平成18年ガイドライン(甲B45)には,大腸内視鏡の禁忌として,腹膜刺激症状を有するもの,消化管穿孔例もしくはその疑いがあるもの,イレウスもしくはその疑いがあるもの,中毒性巨大結腸症が挙げられているが,検査医の熟練度によって禁忌の基準は異なるとされる。また,患者の同意が得られない場合も禁忌とされている。 ウ前処置下部内視鏡検査を施行する際には,腸管内の便を排泄させる前処置が必要 れているが,検査医の熟練度によって禁忌の基準は異なるとされる。また,患者の同意が得られない場合も禁忌とされている。 ウ前処置下部内視鏡検査を施行する際には,腸管内の便を排泄させる前処置が必要となるが,高度の便秘症患者では緩下剤を増量するなどの工夫が必要となる一方,血便を主訴とする場合や潰瘍性大腸炎患者など前処置で病態が悪化するおそれのある場合には,無処置あるいは浣腸程度の前処置で施行することが望ましい。 ニフレックなどの洗浄液を飲用する方法もあるが,それができない場合, 前日検査食を摂取し就寝前にラキソベロン等の緩下剤を服用し,当日微温湯800~1000mLで数回洗浄するといったBrown変法の応用などにより前処置を行う。洗浄効果が足りない場合は,追加で洗浄液を1~2リットル服用させるか,適宜高圧浣腸(500mL)を追加するとよいとされる。(平成18年ガイドライン(甲B45),平成14年ガイドライン(甲B54))エ偶発症(合併症)内視鏡マニュアル(甲B9),平成18年ガイドライン(甲B45)及び平成14年ガイドライン(乙B2)には,大腸内視鏡検査に伴う偶発症としては,概ね,①前処置における大量の緩下剤内服による悪心・嘔吐,悪寒,血圧低下,電解質異常など,②前投薬投与としての抗コリン薬投与による尿閉,眼圧上昇,心負荷,鎮静薬投与による呼吸循環抑制,呼吸停止,薬剤アレルギー反応,③通常検査(手技)による出血や消化管穿孔などが挙げられている。 日本消化器内視鏡学会における偶発症の全国調査結果によれば,平成5年から平成9年までの間に実施された大腸内視鏡検査258万7689件中,偶発症発生率は0.040%(穿孔が多い。),死亡率は0.00081%であった(消化器疾患アプローチ(甲42))。 また,平成10年から平成14年までの間 施された大腸内視鏡検査258万7689件中,偶発症発生率は0.040%(穿孔が多い。),死亡率は0.00081%であった(消化器疾患アプローチ(甲42))。 また,平成10年から平成14年までの間に実施された大腸内視鏡検査294万5518件中,偶発症を生じたのは2038件で偶発症発生率は0,069%,うち死亡数は26件で死亡率は0.00088%であるとされ,内視鏡検査全般における死亡数325件中,70歳以上の者は164件であり,前処置に伴う死亡例の78%,検査に伴う死亡例の80%が60歳以上であり,高齢者の検査では前処置も含めた細心の注意が必要である,大腸内視鏡の偶発症の90%以上は出血と穿孔で占められており,その他は基礎疾患に関連したと思われる意識障害,呼吸停止,心停止,痙 攣,ショックなどであるとされている(北野正剛,松井敏幸,藤田直孝「偶発症対策ガイドライン」(前掲『消化器内視鏡ガイドライン』。甲B45(以下「平成18年偶発症対策ガイドライン」という。)))。 オインフォームドコンセントについて平成14年ガイドライン(甲B54)には,「大腸内視鏡においても他の内視鏡と同様に,前処置,前投薬も含めた偶発症が発生する可能性があるため,術前に十分な説明を行い同意を得る必要がある。大腸内視鏡の必要性,前処置および方法,発生しうる偶発症の種類とその頻度,対処法などについて説明を行い,同意を得る。口頭だけではなく,具体的に説明内容を記載した文書を示し,理解できたかどうかを確認するためにも署名してもらうことが望ましい。最近は未成年者,あるいは高齢者を対象とすることも多くなってきており,被検者本人だけではなく家族に対する説明が必要となることもある。被検者は内視鏡に対して不安を抱いていることが多いので,説明することによってさらに余計な不 高齢者を対象とすることも多くなってきており,被検者本人だけではなく家族に対する説明が必要となることもある。被検者は内視鏡に対して不安を抱いていることが多いので,説明することによってさらに余計な不安を与えないような配慮を忘れてはならない。」と記載されている。 平成18年偶発症対策ガイドライン(甲B45)には,「説明すべき項目として,(1)大腸内視鏡検査の目的と必要性,(2)前処置・前投薬を含めた検査の具体的な方法と手順,(3)偶発症の可能性と発生頻度,(4)検査後の注意事項などが必要である。また,ポリペクトミーやEMRなどの治療内視鏡をその場で行う施設では,(5)治療を行う可能性と必要性,(6)治療手技の具体的な内容,(7)治療に伴う偶発症と発生頻度,(8)偶発症発生時の対応についても具体的な説明を行う。」と記載されている。 平成18年ガイドライン(甲B45)には,「検査の必要性を十分に説明する。前処置や前投薬について説明する(副作用の説明も含む)。発生しうる偶発症の種類や頻度,対処法を説明する。説明過多となり余計な不安を与えないよう配慮が必要である。口頭のみならず説明書を示し同意を 得る。同意書への署名が必要である。同意書は保管する。未成年者や高齢者では,家族に対する説明と同意が必要である。」と記載されている。 (2)下部内視鏡検査の前処置としての高圧浣腸についてア目的田渕崇文,島崎二郎「術前・術後に必要な処置浣腸および高圧浣腸」(『消化器外科』第29巻第4号。2006(平成18)年4月発行。乙B1。)によれば,浣腸の目的は,経肛門的に大腸内に薬液を注入して大腸への刺激により腸の蠕動運動を促進させ,腸内容の排泄を促すことにあり,50%グリセリン等が用いられる。高圧浣腸は,S状結腸から口側結腸内の内容排除が目的であり,腸内 門的に大腸内に薬液を注入して大腸への刺激により腸の蠕動運動を促進させ,腸内容の排泄を促すことにあり,50%グリセリン等が用いられる。高圧浣腸は,S状結腸から口側結腸内の内容排除が目的であり,腸内容を排泄するのに通常の浣腸では不十分な場合の排便誘発を目的として行う場合と,大腸内視鏡検査や大腸の手術の前処置及び小児の腸重積症などの整復治療に行う場合とがある。このときに用いられる浣腸液としては,2%石鹸水や微温湯が用いられる。 イ適応浣腸及び高圧浣腸の適応として,検査前処置の場合は大腸内視鏡検査及び注腸検査が挙げられている(乙B1)。 ウ禁忌浣腸及び高圧浣腸の禁忌につき,前記アの文献(乙B1)によれば,禁忌として「(1)消化管穿孔およびその疑い。(2)流産の可能性の高い妊婦。 (3)下部消化管手術後や直腸肛門内に炎症や創傷を有する患者。(4)急性腹症。(5)中毒性巨大結腸症。(6)重篤な心疾患・高血圧症・心不全などの循環状態不良な患者。」と記載されている。 『Latest看護技術プラクティス』(2003(平成15)年9月30日発行。甲B16)によれば,①頭蓋内圧亢進症状のある患者,又は予測されるとき,②重症の高血圧患者,動脈瘤・心疾患のある患者,③腹腔内炎症・腸管内出血のある患者,腸管穿孔のある患者,又は予測される とき,④下部消化管(直腸,結腸など)術後の患者,⑤全身衰弱の強い患者,⑥悪心・嘔吐,激しい腹痛などで急性腹症が疑われる患者,血圧変動が激しいときが挙げられている。 『Q&Aで分かる根拠が見つかる看護技術のなぜ?ガイドブック』〔改訂・増補2版〕(2006(平成18)年11月10日発行。甲B49)によれば,血圧の変動が激しい患者,直腸や結腸の手術を行った直後の患者,重篤な高血圧,動脈瘤,心疾患などの患者,脳圧亢進症状の 〔改訂・増補2版〕(2006(平成18)年11月10日発行。甲B49)によれば,血圧の変動が激しい患者,直腸や結腸の手術を行った直後の患者,重篤な高血圧,動脈瘤,心疾患などの患者,脳圧亢進症状のある(あるいは予測される)患者,衰弱している患者が挙げられ,また,虫垂炎,潰瘍性大腸炎,腸出血などがある時に浣腸をすると,腸壁が刺激されて蠕動運動が高まり,炎症が悪化して腸穿孔を起こすこともあるとされている。 エ方法・手技浣腸は,患者の体位を左側臥位とし,浣腸器の先端に潤滑剤を塗布し,肛門から浣腸器をゆっくり挿入して,浣腸液を注入し,その後肛門から抜去し,便意をしばらく我慢させた上,排便させ,排便内容を確認するという手順をたどる。高圧浣腸の場合は,患者の体位を左側臥位とし,カテーテルの先端に潤滑剤を塗布し,ゆっくりと肛門から挿入し,点滴用スタンドにつるしたイリゲーターにゴム管を接続し,温めた浣腸液を満たし先端をカテーテルに接続して,浣腸液を100~200mL/minの割合で注入し,その後カテーテルを肛門から抜去し,便意を少し我慢させた上,排便させ,排便内容を確認するとの手順をたどる(乙B1)。 挿入する深さについては,5㎝以下では肛門管内に浣腸液を注入してしまい,肛門括約筋を刺激して早く便意を引き起こす一方,挿入が長すぎるとS状結腸への移行部の腸壁損傷,直腸穿孔の危険があるなどとして,概ね5~10㎝が妥当とされている(甲B16,B49,乙B1)。 なお,『看護技術ベーシックス』(2005(平成17)年3月10日 発行。甲B17)には,低蛋白血症や人工透析実施中の患者,糖尿病患者などでは直腸粘膜が傷つきやすいといわれている旨の記載がある。 また,高圧浣腸について,浣腸液の入ったイリゲーターをスタンドにつるす場合は,液面から肛門までが50 症や人工透析実施中の患者,糖尿病患者などでは直腸粘膜が傷つきやすいといわれている旨の記載がある。 また,高圧浣腸について,浣腸液の入ったイリゲーターをスタンドにつるす場合は,液面から肛門までが50cmになるようにスタンドの高さを調節する必要があり,50cm以上の高さから注入すると流速が早くなり,腸粘膜に対する高圧の機械的刺激が生じるだけでなく,直腸内圧が上昇して浣腸開始の早期から強い腹痛や便意が生じやすくなり,浣腸液だけが排出されて効果を得られない旨指摘するものもある(甲B49)。 (3)大腸穿孔について大腸穿孔の原因疾患としては,大腸癌,憩室炎,特発性大腸穿孔,炎症性腸疾患,宿便性大腸穿孔や内視鏡挿入時の穿孔などの医原性穿孔がある。大腸穿孔では,発症後比較的早期から重篤な細菌性腹膜炎を呈するが,上部消化管穿孔と比較して発症が突発的ではないこと,腹腔内遊離ガスが認められることが少ないこと,憩室炎による穿孔,特発性大腸穿孔,癌腫の穿孔などでは発症初期に腹膜刺激症状が弱いことが多いため,診断が遅れる傾向にあるほか,高齢者が多く,自覚症状や腹部所見に乏しいことも診断の遅れの要因となる。大腸穿孔の場合,腹膜炎も重症となることが多く,予後不良の症例が多いので,早急に診断して手術を行い,強力に全身管理を行うことが救命できる方法であるとされる。(甲B13)(4)大腸憩室について憩室とは,腸管壁が腸管外側に嚢状に突出した状態をいい,腸管運動の亢進と腸管壁の脆弱性により発症すると考えられている。憩室症ではコラーゲン架橋形成の増加が認められるが,架橋形成の増加により腸管壁が脆弱になる。架橋形成は,加齢や低繊維食による短鎖脂肪酸の低下により増加する。 なお,昭和62年から平成2年までの4年間になされた1万5803例の注腸検査の結果,憩室が存在した頻 の増加により腸管壁が脆弱になる。架橋形成は,加齢や低繊維食による短鎖脂肪酸の低下により増加する。 なお,昭和62年から平成2年までの4年間になされた1万5803例の注腸検査の結果,憩室が存在した頻度は,70歳以上では21.1%であった との報告がある。 合併症のない憩室の診断は,注腸造影検査や大腸内視鏡検査で行われることが多い。憩室炎の診断は,腹部所見から憩室炎を疑い,WBC値やCRP値の上昇を血液検査で確認し,CT検査や超音波検査で行う。CTにおける憩室診断は,sensitivity(真の陽性と偽陰性の合計に対する真の陽性の比率)が69~95%と良好であり,超音波検査のsensitivityも84~98%と良好である。大腸内視鏡検査では,憩室に一致した浮腫,発赤,膿の付着が観察されるが,穿孔を誘発する可能性があり禁忌と考えられる。(甲B27,B28,なお乙B4,B5)(5)便秘について便秘の場合,癌を常に考慮した鑑別診断を行うことがポイントであり,経口摂取の低下,脱水による水分不足により起こる場合,また,胃潰瘍,十二指腸潰瘍などの潰瘍や炎症での瘢痕・狭窄,胃癌,大腸癌等での内腔狭窄,腹部大動脈瘤等による外部からの圧迫といった器質性便秘ないし消化管の機械的通過障害で起こる場合,中高年,女性,高齢者,長期臥床者に多く,食事摂取量が少ないとか,運動不足,薬剤等で起こりやすくなる弛緩性便秘等がある。診断のためには,問診により原因の絞り込みを行い,癌年齢の患者では原則として大腸癌の検査を行うべきとされ,見逃してはならない重要な疾患としては,悪性腫瘍(大腸癌の存在をまず考えることが重要である。)が挙げられるほか,糖尿病,甲状腺疾患,下垂体疾患,精神・神経疾患,あるいは薬剤による全身性代謝疾患が挙げられている(甲B10)。 (6)下痢 悪性腫瘍(大腸癌の存在をまず考えることが重要である。)が挙げられるほか,糖尿病,甲状腺疾患,下垂体疾患,精神・神経疾患,あるいは薬剤による全身性代謝疾患が挙げられている(甲B10)。 (6)下痢について下痢の場合,重症度を正確に判定し,的確な全身管理をすること,慢性下痢では,高齢者は悪性腫瘍を念頭に置くことがポイントであり,考えられる疾患としては,浸透圧性下痢,分泌性下痢・炎症性下痢(腸管感染症,炎症性腸疾患が原因であり,腹部の理学所見,血液検査(CRP値)を参考にす べきとされる。),消化管運動異常による下痢,腸管の通過障害(大腸癌の初発症状のこともあり,内視鏡,造影検査,CT検査などを用いた鑑別診断が必要とされる。),全身疾患に伴う下痢(甲状腺機能亢進症等の内分泌疾患などを疑うとされる。)等が挙げられている(甲B10)。 (7)便潜血について真赤な色の血が排便時に出るとか便に混じる場合,最も多い原因は痔である。 消化器からの出血がある場合,赤い色の鮮血であれば,肛門に近い大腸で出血し,大腸癌や大腸ポリープなどが原因であることが考えられる。色あせた黒っぽい血液の場合,上記と同様の原因により,盲腸から横行結腸辺りで出血していることが考えられる。小腸から上で出血した場合には,黒い色をしたタール便が見られ,その原因としては食道静脈瘤,胃癌,胃潰瘍,十二指腸潰瘍などが考えられる(甲B15)。 (8)慢性腎不全について慢性腎不全とは,腎の排泄機能が次第に低下し,生体の内部環境の恒常性の維持が不可能になった状態を指し,血清Cr値が2mg/dL以上あるいはBUNが20mg/dL以上を持続しているものを指す。病期(1期(腎予備機能低下期),2期(腎機能障害期),3期(腎機能不全期),4期(尿毒症)に分類される。)が進むに従い,消化器系 L以上あるいはBUNが20mg/dL以上を持続しているものを指す。病期(1期(腎予備機能低下期),2期(腎機能障害期),3期(腎機能不全期),4期(尿毒症)に分類される。)が進むに従い,消化器系症状(食欲不振,嘔気,嘔吐,下痢・便秘,下血),呼吸器系症状(咳嗽,喀痰(血痰),呼吸困難,尿毒症性肺症,胸水),循環器系症状(心不全(起坐呼吸),高血圧,尿毒症性心膜炎(心タンポナーデ)),神経系症状(全身倦怠,精神症状,末梢神経症状,痙攣,昏睡,意識症状)がより強く発現する。2期以降は貧血が,3期以降は代謝性アシドーシスが,それぞれ出現し得うる。また,カリウム,マグネシウムの排泄障害,及び活性型ビタミンDの低下,リンの排泄障害のため,高カリウム,高マグネシウム,高リン,低カルシウム血症を呈する。食 欲不振,悪心(むかつき),嘔吐などを自覚し,胃炎,胃潰瘍,消化管出血などの消化器症状を合併することがある。(甲B23,B24) 争点(1)(下部内視鏡検査及び前処置としての高圧浣腸を行う時期の判断を誤った過失の有無)について前記1の事実及び前記2の医学的知見等に基づいて,被告病院の医師らに,下部内視鏡検査及び前処置としての高圧浣腸を行う時期の判断を誤った過失があったか否かについて検討する。 (1)前記1認定の事実によれば,Cの症状及びこれに対する診療の経緯の概要は,次のとおりである。 Cは,平成16年11月1日に強い腰下肢痛を訴えて被告病院麻酔科に入院し,腰部旁脊椎神経ブロック療法及び薬物療法が開始されたが,発熱が見られたため,薬物療法のみに変更となったが,WBC値やCRP値の上昇も見られ,感染症の疑いから抗生剤が投与され(当初はセファメジンが投与されたが,効果が見られなかったためにモダシンに変更された。),腰椎CT検査,胸部レント 変更となったが,WBC値やCRP値の上昇も見られ,感染症の疑いから抗生剤が投与され(当初はセファメジンが投与されたが,効果が見られなかったためにモダシンに変更された。),腰椎CT検査,胸部レントゲン検査,尿培養検査,腫瘍マーカー検査,腰椎MRI検査,喀痰検査,蛋白分画検査などがなされたが,状況は好転せず原発巣は不明のままであったことから,熱源精査の目的で,同月12日に腎臓内科に転科した。 Cは,便潜血反応が陽性であったことなどもあって,既に同12日ころから上部・下部内視鏡検査の実施が検討されるようになり,同月16日以降もレントゲン検査,心電図検査,胸部・腹部・骨盤部単純CT検査,骨シンチグラフィ等の各種検査が引き続き行われた。胸部CT検査の結果から異型肺炎が疑われ,同月20日にはミノマイシンの投与が開始されたところ,同月22日には体温,WBC値,CRP値の低下が見られたが,便潜血陽性は持続しており,消化管出血を否定できない状態が続き,同月29日ころからはWBC値,CRP値は再度上昇に転じ,また発熱も見られるようになったほ か,Cは便秘も訴えるようになった。 Cには,消化管症状が見られ,便潜血陽性や貧血等の検査結果から,E医師は,同年12月4日に,上部内視鏡検査を勧めたが,同月6日,原告Bは,これを拒否したので,E医師は,胃潰瘍の可能性等も考慮して,内服治療で様子を見ることとした。 12月7日ころから,Cは低カリウム血症となり,翌8日からは呼吸苦を訴えナザールによる酸素投与も行われるようになった。WBC値やCRP値が更に上昇傾向にあったため,ミノマイシンは効果がないと判断して,同月10日からはモダシンの投与が再開された。同月11日のポータブル胸部レントゲン検査により心胸郭比及び肺うっ血の増強が,ポータブルエコー検査により左房・左 め,ミノマイシンは効果がないと判断して,同月10日からはモダシンの投与が再開された。同月11日のポータブル胸部レントゲン検査により心胸郭比及び肺うっ血の増強が,ポータブルエコー検査により左房・左室・下大静脈の虚脱等が認められた。同日,G医師は,原告Bに対し,Cには以前から消化器症状が見られていたので,状態が落ち着いたら,上部・下部内視鏡検査を施行するように勧めた。 同月12日ころから,Cには嘔吐や下痢が見られるようになった。腫瘍マーカー等の検査が行われたほか,施行された胸部レントゲン検査により心拡大や肺うっ血増悪が認められたが,腹部レントゲン検査によってもニボーは認められなかった。G医師は,C及び原告Bに対し,上部・下部消化管内視鏡検査について説明を行い,C及び原告Bは,これに同意し,本件同意書2を提出した。 同月13日ころから低アルブミン血症が見られ,うっ血性心不全も呈するようになったため,アルブミンの投与が検討されたが,同意書が得られなかったため,同月16日からネオアミューの投与と,利尿剤ラシックスの投与が開始された。CT検査やエコー検査により胆嚢炎が確認されたが,血液データ上は胆道系酵素やBil値の上昇は見られなかったため,活動性のある炎症の存在は否定的であった。改めて施行された骨シンチグラフィ,ガリウムシンチグラフィの結果,前回同様両側仙腸関節炎などは確認されたが,内 科的に明らかな炎症巣を確定することができなかった。そこで,炎症巣不明の感染症があるため,抗生剤をスルペラゾンに変更して様子を見ることとされた。 同月18日,F医師及びE医師は,原告Bに対し,腰痛が原因で麻酔科に入院し,原因不明の炎症精査加療目的で腎臓内科に転科となったこと,CT検査,エコー,シンチグラフィ等の検査を行ったが,内科的には明らかな炎症巣を確定 及びE医師は,原告Bに対し,腰痛が原因で麻酔科に入院し,原因不明の炎症精査加療目的で腎臓内科に転科となったこと,CT検査,エコー,シンチグラフィ等の検査を行ったが,内科的には明らかな炎症巣を確定できておらず,抗生剤にてCRP値が10から3へと低下はしているが,いまだ陽性が続いていること,あと調べていないのは消化管のみで,消化器症状もあり,悪性の可能性も含め検査する必要があること,また,低栄養による低蛋白血症もあり,そのために肺などに水分が漏れ出てむくみや胸水となり,現在の呼吸苦の原因となっていること,アミノ酸製剤(ネオアミュー)で対応しているが,治療効果としては,アルブミン製剤を投与することが効果的で望ましいと考えられること,今後食事摂取量低下が続くようなら,IVH(中心静脈栄養・高カロリー輸液)を行う必要があると考えていることなどを説明した。これに対し,原告Bは,アルブミン製剤の使用や,上部・下部内視鏡検査の施行に同意した。なお,上部・下部内視鏡検査は,経験豊富な内視鏡センターの消化器内視鏡医師が施行することが予定されていた。 同月20日,原告らの同意が得られたため,アルブミン製剤の投与が開始されたが,Alb値は2.4で食欲不振が持続していたために同週中にIVHを開始することとされた。同日,WBC値は5200,CRP値は1.1まで低下していた(ただし,CRP値は基準値をいまだ超えていた。)。胸部レントゲンにより胸水の増量が見られ,聴診により湿性ラ音が確認され,同日夜には呼吸苦の訴えがあったため,ラシックスの追加投与がなされた。 こうした経緯を経て,同月21日,下部内視鏡検査を実施すべく,その前処置として高圧浣腸が実施され,その後S状結腸憩室穿孔が生じた。 (2)Cに下部内視鏡検査を施行する必要性があったか否かについて,検討す 緯を経て,同月21日,下部内視鏡検査を実施すべく,その前処置として高圧浣腸が実施され,その後S状結腸憩室穿孔が生じた。 (2)Cに下部内視鏡検査を施行する必要性があったか否かについて,検討する。 下部内視鏡検査は,あらゆる大腸疾患や,大腸疾患を疑う症例での除外診断のため,あるいは便潜血陽性などの検査所見があれば適応となる(前記2(1)ア)。 Cは,便潜血陽性が持続し,また,感染症が疑われて,胸部・腹部・骨盤部レントゲン検査やCT検査,エコー検査を初めとする各種検査を何度も施行されたにもかかわらず,炎症巣を確定するに至らず,あとはほぼ消化管精査を残すのみといった状況にあったものであるから,Cには,下部内視鏡検査の適応があり,かつ,実際に便秘,下痢,嘔気,食欲不振といった消化器症状が見られていたことにも照らすと,その必要性は高かったと認められるものというべきである。 (3)アもっとも,原告らは,下部内視鏡検査を実施する必要性があったことは認めつつ,12月21日時点では,Cが栄養不良による全身衰弱状態かつ呼吸循環不全状態にあって,下部内視鏡検査及び前処置としての高圧浣腸を施行した場合,穿孔を生じるリスクは高かったのであるから,IVHにより栄養不良の改善及び免疫系を強化する治療を尽くすとともに,アルブミン製剤及び利尿剤の投与により呼吸循環不全状態を解消ないし改善する治療を尽くした後に下部内視鏡検査を実施すべきであった旨主張する。 イ確かに,同月20日の時点におけるAlb値は2.4で食欲不振が持続していたために同週中にはIVHの開始が予定されているような状態であったし,うっ血性心不全の状態にあって,胸水の増加や湿性ラ音が確認され,Oナザール2リットルの投与がなされるような状況にあったのであ るから,Cは,当時,栄養不良による全身状 ているような状態であったし,うっ血性心不全の状態にあって,胸水の増加や湿性ラ音が確認され,Oナザール2リットルの投与がなされるような状況にあったのであ るから,Cは,当時,栄養不良による全身状態不良かつ呼吸循環状態不良であったものと認められる。 そして,内視鏡マニュアルでは,呼吸循環不全状態の場合は絶対禁忌で あるが,どうしても検査が必要な場合は厳重なモニタリングによる全身管理を行うべきものとされ,消化器内科医・内視鏡学会専門医であるN医師は,下部内視鏡検査を実施する意義はあったが,前記のような状態の改善を待つべきであった旨供述している(甲B38,証人N)。 また,平成14年ガイドラインでは,全身状態の不良な患者においては内視鏡検査を行う有用性が上回る場合にのみ熟練した内視鏡医が行うことが望ましいとされており,消化器内科医であるL医師は,Cの一般状態等からすると,下部内視鏡検査の実施を決定した時期が不適切とは断じ難いが,待機するのが妥当であったとし(乙B6),腎臓内科医である栗原怜医師は,全身状態の比較的良好であった腎臓内科への転科当初あるいは全身状態の改善を待ってから下部内視鏡検査を施行するのがベターであったが,検査の承諾を得るのに手間取り結果的には全身状態の悪化した時期に承諾が得られたといった経緯を考慮すると直ちに時期が不適切であったとはいえないとしている(乙B8,証人M)。 そして,平成18年ガイドラインでは,全身状態不良等を特に禁忌として挙げてはいないが,検査医の熟練度によって禁忌の基準は異なるとされ,被告病院内視鏡センター教授のH医師は,検査の実施に当たり呼吸循環動態が問題となることは前提としつつ,CRP値が1.1と改善傾向にあり,Oナザール2リットル投与の状態でOSat値が96.7%あって前日 には量はとも 授のH医師は,検査の実施に当たり呼吸循環動態が問題となることは前提としつつ,CRP値が1.1と改善傾向にあり,Oナザール2リットル投与の状態でOSat値が96.7%あって前日 には量はともかくも食事がとれる状態であり,また,看護師に検査に対する不安を伝えられるような状態であったことからすれば,高圧浣腸及び下部内視鏡検査の施行に問題はない旨述べている(乙B9,証人H)。 ウ以上の諸見解を総合的に考察すると,全身状態不良や呼吸循環状態の不良があれば絶対的に下部内視鏡検査を施行してはならないといった画一的な基準があるとは認められず,具体的な患者の状態につき検査の必要性と検査をした場合の危険性とをよく比較検討して,検査の実施の可否を決す べきであると考えられる。 (4)そこで,これらを踏まえて,被告病院の医師らが,Cについて,下部内視鏡検査及び前処置としての高圧浣腸を行うこととしたことについて,過失があったか否かについて検討する。 アCに対する下部内視鏡検査施行の必要性は,前述のとおり,高かったものというべきである。 原告らは,各種検査によっても腹部腫瘍等の悪性・重大な疾患を疑わせる所見は存在せずWBC値やCRP値も改善していたから腹部腫瘍の疑いは低くなっており,本件における下部内視鏡検査の有用性は炎症源である疾病の不存在を確定するためという消極的意義にとどまるものにすぎないなどと,下部内視鏡検査の必要性が余り高くないかの主張をする。 しかしながら,各種の検査を実施しても炎症巣が確定できない状況下において,便潜血陽性が続き,また,便秘・下痢等の消化器症状も継続していたことなどからすると,Cに対する下部内視鏡検査が上記のような消極的意義にとどまるものであるなどとはいえず,この点の原告らの主張は採用できない。 イ他方,原告らは, 下痢等の消化器症状も継続していたことなどからすると,Cに対する下部内視鏡検査が上記のような消極的意義にとどまるものであるなどとはいえず,この点の原告らの主張は採用できない。 イ他方,原告らは,検査をした場合の危険性について,当時のCに対して下部内視鏡検査を施行した場合には,検査自体により呼吸循環不全が悪化する危険があるとともに,大腸穿孔を生じる危険性が高く,それを生じると予後不良となる危険性が高かったなどと主張する。 前記の医学的知見及びN医師の証言によれば,上記のような危険性があることは否定できず,全国調査の結果によれば,偶発症の発生率は,0. 040~0.069%程度,死亡率は0.00081~0.00088%であって,偶発症の大半は出血と穿孔であり,死亡例には高齢者が多いとされている。そして,Cは,当時,76歳と高齢であり,基礎疾患として慢性腎不全があり,低蛋白血症・低アルブミン血症が存在したことから腸 管粘膜はより脆弱であったと考えられる(甲B38,乙B9)。そうすると,Cに対する下部内視鏡検査の施行は,一般人と比較した場合,より危険性が高かったとはいうことができよう(なお,具体的にどの程度危険性が増加するというべきかが数値化等されたデータは証拠上見当たらない。)。 しかしながら,本件において穿孔が生じたのは,腸管壁の脆弱なS状結腸の憩室部分であったが,腹部のCT検査・エコー検査によってもその存在は確認されていなかったものである。また,①IVHやアルブミン製剤の投与等によって,全身の栄養状態や呼吸循環動態の改善を図り得たかどうか,②仮にそれが可能であったとしても,腸管壁の状態まで改善が図られ得たかどうかについては,証人N医師の証言や証人M医師の証言などによっても,そもそも①の点についての可能性が高かったとまでは認め難く, ,②仮にそれが可能であったとしても,腸管壁の状態まで改善が図られ得たかどうかについては,証人N医師の証言や証人M医師の証言などによっても,そもそも①の点についての可能性が高かったとまでは認め難く,②の点については不明というほかない。 ウこれらからすると,被告病院担当医師らが,栄養不良による全身状態不良及び呼吸循環状態不良であったCに対して平成16年12月21日に下部内視鏡検査を実施することとしたことが違法であるとは断じ難く,被告病院担当医師らに原告らが主張する上記義務違反があったとは認められないというべきである。 (5)アなお,原告らは,①下部内視鏡検査より先に上部内視鏡検査を行うべきであったのにそうしなかった点が不適切であり,②S状結腸穿孔の原因は,高圧浣腸の際の看護師のカテーテル挿入の手技ミスによる可能性があるなどとも主張している。 イまず,①につき,消化器外科医・日本消化器内視鏡学会指導医であるO医師は,Cが黒色便を呈していたことからすればまず疑うのは上部消化管出血であるから,まず上部内視鏡検査を行うべきであり,それによって十二指腸潰瘍が発見されたから下部内視鏡検査は不要となった可能性が高い 旨述べており(甲B52),N医師もタール便が見られていたならやはり上部内視鏡検査を先に行うべきであったなどと述べている(甲B38,証人N)。 確かにG医師は,平成16年12月20日に「WeeklySummary」として,Cに黒色便が持続している旨を記載しているが,その記載自体,緊急な上部内視鏡検査を要するタール便(証人F,証人N)というものではない上,診療録や看護記録上,他に黒色便があったとの記載はなく,F医師もこれを否定していることからして,少なくともCにタール便があったとは認め難い。そして,下部内視鏡検査を行うべき必要性が ものではない上,診療録や看護記録上,他に黒色便があったとの記載はなく,F医師もこれを否定していることからして,少なくともCにタール便があったとは認め難い。そして,下部内視鏡検査を行うべき必要性が高かったのは前述のとおりである上,上部内視鏡検査については侵襲性も高いことなどを併せ考えれば,まず上部内視鏡検査を行うべきとは認められない。 ウ②については,原告らは単に憶測を述べるにすぎないものであって,本件全証拠によっても,看護師の手技ミスがあったとは認めることはできない。 エしたがって,原告らのこれらの主張も失当である。 争点(2)(説明義務違反の有無)について(1)12月4日の説明についてア前記1の事実及び証拠(乙A2の32,99頁,A3の2)によれば,12月4日,E医師の原告Bに対する術前説明について,以下の事実が認められる。 同日,E医師は,原告Bに対し,上部消化管内視鏡検査を施行した方がよい旨の説明を行った。原告Bは受けてもよいと返答した。そして,E医師は,内容欄に「消化器症状,便潜血陽性や貧血等の検査結果より上記検査を施行した方がよいでしょう。(検査の方法,合併症については別紙参照)」と手書きで記載した上で,原告Bに対し,本件同意書1を交付した。 この際,E医師は,被告病院作成の「内視鏡検査(上部消化管)を受け られる患者様へ」と題する書面(乙A3の2)を示しながら,①検査の目的,②検査の方法,③偶発症・合併症等について説明した。具体的には,①検査の目的として,上部内視鏡検査は口から内視鏡を入れて食道・胃・十二指腸の病気(炎症,潰瘍,ポリープ,癌など)の有無を調べる検査であること,②検査の方法として,口から内視鏡を入れて,食道,胃,十二指腸の一部をくまなく観察し写真を撮ること,検査時間は約10分から15分程度 気(炎症,潰瘍,ポリープ,癌など)の有無を調べる検査であること,②検査の方法として,口から内視鏡を入れて,食道,胃,十二指腸の一部をくまなく観察し写真を撮ること,検査時間は約10分から15分程度であるが,病気があった場合などには生検などの処置を行うのでもう少し時間がかかること,③偶発症・合併症については,上部内視鏡検査による偶発症は麻酔薬によるショックや出血,穿孔が挙げられること,全国集計によればこれらの偶発症の発生頻度は0.062%,死亡率は0. 0007%であること,万が一このような偶発症が生じた場合には,腎臓内科は他科とも協力し,外科手術を含めた最善の処置を行うことを説明した。 同月6日,原告Bは,本件同意書1下部の親族欄に原告Bの住所及び氏名を記載し,「説明を受けましたが,同意いたしません。」との選択肢に印を付けてE医師に提出し,上部消化管内視鏡検査を拒否した。 イなお,原告Bは,本件同意書1はもらったが別紙をもらった記憶はなく手元にもないなどと供述する。 しかし,本件同意書1の内容欄に「消化器症状,便潜血陽性や貧血等の検査結果より上記検査を施行した方がよいでしょう。(検査の方法,合併症については別紙参照)」と手書きで記載されているにもかかわらず,説明の際に別紙が全く示されなかったということは考え難く,また,原告Bは別紙を「私はいただいていません。」,読んだ記憶は「ありません。」と供述しながら,他方,「この時点では私は同意することは考えておらず,同意はしていませんので,多分ここに関しては,説明があってもなくても,私の中で同意はしていないと決めていたので,気に留めていなかったと思 います。」と述べるなど,12月4日のE医師の説明内容についての原告Bの記憶はあいまいであって,その供述は採用することができず,その他前記認定を ないと決めていたので,気に留めていなかったと思 います。」と述べるなど,12月4日のE医師の説明内容についての原告Bの記憶はあいまいであって,その供述は採用することができず,その他前記認定を左右するに足りる証拠はない。 (2)12月11日の説明について前記1の事実及び証拠(乙A2の34頁)によれば,12月11日,G医師の原告Bに対する術前説明について,以下の事実が認められる。 同日,原告Bが来院した際,G医師は,原告Bに対し,Cには現在電解質異常(低ナトリウム血症,低カリウム血症)があり,点滴にて治療中であり,消化器症状の原因のひとつと考えられるが,電解質異常が増悪する以前から消化器症状が見られており,状態が落ち着いたら上部・下部内視鏡検査を施行することを検討してほしい旨を説明した。これに対し,原告Bは,上部・下部内視鏡検査については考えてみると述べるとともに,ペインコントロールについて,腎機能が悪化し最悪の場合には人工透析を導入しなければならなくなったとしてもよいからCの痛みをとってあげたいという気持ちになってきている旨述べた。 (3)12月12日の説明についてア前記1の事実及び証拠(乙A2の36,100頁)によれば,12月12日,G医師のC及び原告Bに対する術前説明について,以下の事実が認められる。 同日午後3時ころ,G医師は,C及び原告Bに対し,上部・下部消化管内視鏡検査についての説明を行った。そして,G医師は,内容欄に「別紙」と手書きで記載した上で,原告Bに対し,本件同意書2を交付した。 この際,G医師は,被告病院作成の「内視鏡検査(上部消化管)を受けられる患者様へ」と題する書面(乙A3の2)及び「大腸内視鏡検査を受けられる患者様へ」と題する書面(乙A3の1)を示しながら,内視鏡検査の①検査の目的,②検査の方法,③ 視鏡検査(上部消化管)を受けられる患者様へ」と題する書面(乙A3の2)及び「大腸内視鏡検査を受けられる患者様へ」と題する書面(乙A3の1)を示しながら,内視鏡検査の①検査の目的,②検査の方法,③偶発症・合併症等について説明した。 下部内視鏡検査については,具体的には,①検査の目的としては,大腸ポリープや癌,潰瘍,炎症等の有無を調べるために肛門から内視鏡を入れて直腸から大腸全部を観察する検査であること,②検査方法は,肛門から内視鏡を入れて直腸から大腸の一番奥(盲腸)まで腸の中を調べること,所要時間は約20分程度であるが,病気があった場合などには生検等の処置を行うのでもう少し時間のかかる場合もあること,検査中は小さな病変を見逃さないために腸の中に空気を入れて膨らませるので,検査中や検査後にお腹の張った感じや軽い痛みを感じることがあるが多くの場合は安静やトイレでガスを出すことで楽になること,③偶発症・合併症としては,大腸の穿孔や出血があり,発生頻度は全国集計で0.051%であること,万が一検査によって大腸穿孔等の合併症が起きた場合には,腎臓内科は他科とも協力し外科手術も含めた処置を行うことを説明した。 同日,C及び原告Bは,本件同意書2下部の患者本人欄及び親族欄にC及び原告Bの住所と氏名を記載し,「私は,上記の説明(説明書)を受け,その医療行為を受けることに同意いたします。なお,医療上から,上記の内容を緊急に変更する必要が生じた場合は,その変更処置を受けることについても同意いたします。」との選択肢に印を付けた。 イなお,原告らは,「大腸内視鏡検査を受けられる患者様へ」と題する書面(乙A3の1)の交付はなかったと主張し,原告Bも,別紙の交付を受けたことはなく,別紙を見たり医師が朗読した記憶はないなどと,原告らの主張に沿う供述をする。 鏡検査を受けられる患者様へ」と題する書面(乙A3の1)の交付はなかったと主張し,原告Bも,別紙の交付を受けたことはなく,別紙を見たり医師が朗読した記憶はないなどと,原告らの主張に沿う供述をする。 しかし,本件同意書2には,医療行為の内容として,「別紙」との手書きの記載しかないにもかかわらず,説明の際に別紙が全く示されなかったのに,C及び原告Bが同意したということは考え難い。原告Bは,別紙の交付を受けたことはなく,別紙を見たり医師が朗読した記憶はないと供述しながら,他方では,「これを書いたときに,私,ここに別紙と書いてあ るのは,この裁判になって同意書を見てこれに気づきましたが,このときにこの別紙に関して私がどう考えていたかというのは分かりません。」と供述しており,12月12日のG医師の説明内容についての原告Bの記憶・供述はあいまいである。 原告Bは,同月4日に上部消化管内視鏡検査の勧めを受けながら,同月6日にはこれを拒否していることからすれば,内視鏡検査の内容・危険性等については,強い関心があったものと推測されるが,それにもかかわらず,原告Bの内視鏡検査の内容等の説明についての供述はあいまいであって,その供述を採用することはできず,その他前記認定を左右するに足りる証拠はない。 (4)12月18日の説明について前記1の事実及び証拠(乙A2の41,42頁,証人F)によれば,12月18日,F医師のCに対する術前説明について,以下の事実が認められる。 同日,F医師及びE医師は,原告Bに対し,「腰痛が原因で麻酔科に入院し,原因不明の炎症精査加療目的で当科に転科となりました。CT,エコー,シンチなど行いましたが,内科的には明らかな炎症巣確定できず。抗生剤にてCRP10→3へと低下はしていますが,いまだ陽性続いています。あと調べていないの 目的で当科に転科となりました。CT,エコー,シンチなど行いましたが,内科的には明らかな炎症巣確定できず。抗生剤にてCRP10→3へと低下はしていますが,いまだ陽性続いています。あと調べていないのは消化管のみで,消化器症状もあり,悪性の可能性も含め検査する必要があります。また,低栄養による低蛋白血症もあり,そのために肺などに水分が漏れ出てむくみや胸水となり,現在の呼吸苦の原因となっています。アミノ酸製剤にて対応していますが,治療効果としては,アルブミン製剤を投与することが効果的で望ましいと考えます。また今後食事摂取量低下続くようなら,中心静脈栄養管理を行う必要があると考えています。」旨説明した。これに対し,原告Bは,アルブミン製剤を使ってください,上部・下部内視鏡検査を施行してくださいと口頭で返答し,下部内視鏡検査に最終的に同意した。F医師は,同月12日に既に上部・下部内視鏡検査の同 意書をC及び原告Bから取っていることを確認した上で,診療録に,「GF,CF施行してください。 同意書()」と記載した。 Ö(5)医師は,患者の疾患の治療のために検査を実施するに当たっては,診療契約に基づき,特別の事情のない限り,患者又はその親族に対し,当該疾患の診断(病名と病状),実施予定の検査の内容,検査に付随する危険性などについて説明すべき義務があると解される。 これを本件についてみると,被告病院の担当医らは,C又は原告らに対しては,Cの病状,実施予定の下部内視鏡検査の内容,下部内視鏡検査に付随する危険性などについて説明する義務があったというべきである。 本件では,前記のとおり,12月12日,G医師は,下部内視鏡検査について具体的な説明をしており,その中で,下部内視鏡検査の偶発症として大腸穿孔があること,発生頻度などについても説明していたこと る。 本件では,前記のとおり,12月12日,G医師は,下部内視鏡検査について具体的な説明をしており,その中で,下部内視鏡検査の偶発症として大腸穿孔があること,発生頻度などについても説明していたことが認められる。 また,同月18日,F医師及びE医師は,同月12日にC及び原告Bから同意書をとってあることを踏まえて,Cの病状及び内科的には明らかな炎症巣の確定ができていないことを説明し,下部内視鏡検査の必要性を説き,原告Bから下部内視鏡検査について最終的な同意を得ていることが認められる。 これらの事実からすれば,本件において,被告病院担当医師らは,Cの病状,実施予定の下部内視鏡検査の内容,下部内視鏡検査に付随する危険性などについて説明を尽くしたというべきであり,被告病院担当医師らに説明義務違反があったということはできない。 第4 結論 以上のとおりであるから,原告らの本件請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第35部 裁判長裁判官浜秀樹裁判官三井大有裁判官鈴木理紗は,差し支えにつき,署名押印することができない。 裁判官浜秀樹
▼ クリックして全文を表示