平成24(行ケ)4等 選挙無効請求事件(第1事件,第2事件)

裁判年月日・裁判所
平成25年3月25日 広島高等裁判所 選挙
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判決文本文33,049 文字)

平成25年3月25日判決言渡平成24年(行ケ)第4号(第1事件),第5号(第2事件)選挙無効請求事件 主文 1 第1事件について(1) 平成24年12月16日施行の衆議院議員選挙の広島県第1区における選挙を無効とする。なお,その効果は,平成25年11月26日の経過をもって発生するものとする。 (2) 訴訟費用は,被告の負担とする。 2 第2事件について(1) 平成24年12月16日施行の衆議院議員選挙の広島県第2区における選挙を無効とする。なお,その効果は,平成25年11月26日の経過をもって発生するものとする。 (2) 訴訟費用は,被告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 第1事件(1) 原告A,原告B及び原告Cア平成24年12月16日施行の衆議院議員選挙の広島県第1区における選挙を無効とする。 イ訴訟費用は,被告の負担とする。 (2) 被告ア原告A,原告B及び原告Cの各請求をいずれも棄却する。 イ訴訟費用は,原告A,原告B及び原告Cの負担とする。 2 第2事件(1) 原告Dア平成24年12月16日施行の衆議院議員選挙の広島県第2区における 選挙を無効とする。 イ訴訟費用は,被告の負担とする。 (2) 被告ア原告Dの請求を棄却する。 イ訴訟費用は,原告Dの負担とする。 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は,平成24年12月16日施行の衆議院議員選挙(以下「本件選挙」という。)について,広島県第1区の選挙人である原告A,原告B及び原告Cが,衆議院小選挙区選出議員の選挙(以下「小選挙区選挙」という。)の選挙区割りに関する公職選挙法等の規定は憲法に違反し無効であるから,これに基づいて施行された本件選挙の広島県第1区における選挙 告Cが,衆議院小選挙区選出議員の選挙(以下「小選挙区選挙」という。)の選挙区割りに関する公職選挙法等の規定は憲法に違反し無効であるから,これに基づいて施行された本件選挙の広島県第1区における選挙も無効であると主張して提起した選挙無効訴訟(第1事件)及び広島県第2区の選挙人である原告Dが,上記と同じ理由により,本件選挙の広島県第2区における選挙は無効であると主張して提起した選挙無効訴訟(第2事件)である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,公知の事実であるか,掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 昭和25年に制定された公職選挙法は,衆議院議員の選挙制度につき,中選挙区単記投票制を採用し,当該制度の下での各選挙区の議員定数を定めた別表第1の末尾において,同別表は同法施行の日から5年ごとに直近に行われた国勢調査の結果によって更正されるのを例とするものと定めていた。 上記の制定時においては,選挙区間の投票価値の較差は最大1.51倍(上記の制定前の臨時統計調査結果による。)であった。 その後,都市部への急速な人口集中があったにもかかわらず,議員定数に係る上記別表の更正は長く行われず,昭和39年に至って初めて議員定数を19増加させる改正が行われるにとどまった。その結果,昭和47年に施行 された総選挙時における選挙区間の投票価値の較差は最大4.99倍にまで拡大し,最高裁判所昭和51年4月14日大法廷判決・民集30巻3号223頁(以下「昭和51年判決」という。)においては,当該較差の下での議員定数の配分規定は違憲であると判断されるに至った。昭和51年判決の事件の係属中である昭和50年には,議員定数を20増加させる同法の改正が行われたが,この改正後の議員定数に基づいて昭和55年に施行された総選挙時における選挙区 と判断されるに至った。昭和51年判決の事件の係属中である昭和50年には,議員定数を20増加させる同法の改正が行われたが,この改正後の議員定数に基づいて昭和55年に施行された総選挙時における選挙区間の投票価値の較差はなお最大3.94倍に達しており,最高裁判所昭和58年11月7日大法廷判決・民集37巻9号1243頁においては,憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとは断定し難いものの,当該較差は憲法の選挙権の平等の要求に反する程度に至っているとされた。さらに,同じ議員定数の定めに基づいて同年に施行された総選挙時における選挙区間の投票価値の較差は最大4.40倍に拡大し,最高裁判所昭和60年7月17日大法廷判決・民集39巻5号1100頁(以下「昭和60年判決」という。)においては,再び当該較差の下での議員定数の配分規定が違憲であると判断され,また,同年の国勢調査時には選挙区間の投票価値の較差は最大5.12倍にまで拡大した。こうした一連の事態を踏まえ,昭和61年の公職選挙法改正において,初めて議員定数の削減を含むいわゆる8増7減の改正が行われ,さらに,平成4年の同法改正では9増10減の改正が行われた。これらの措置によって,ある程度較差は抑えられたが,依然として最大較差が3倍に近い状況が残されたまま推移してきた。 このような中で,平成2年4月の第8次選挙制度審議会の答申において,政策本位,政党本位の選挙を実現することを目的として,従来の中選挙区単記投票制に代えて新たに小選挙区比例代表並立制を導入し,小選挙区選挙の選挙区間の人口の較差は1対2未満とすることを基本原則とし,選挙区間の不均衡是正については,改定の原案を作成するための権威ある第三者機関を 設けて,10年ごとに見直しを行う制度とする旨の提言がされ,その答申を踏ま 差は1対2未満とすることを基本原則とし,選挙区間の不均衡是正については,改定の原案を作成するための権威ある第三者機関を 設けて,10年ごとに見直しを行う制度とする旨の提言がされ,その答申を踏まえて制度改正のための法案の立案作業が進められた。 (2) このような経緯を経て,平成6年1月に公職選挙法の一部を改正する法律(同年法律第2号)が成立し,その後,同年法律第10号及び第104号によりその一部が改正され,これらにより,衆議院議員の選挙制度は,従来の中選挙区単記投票制から小選挙区比例代表並立制に改められた(以下,上記改正後の当該選挙制度を「本件選挙制度」という。)。 平成17年9月11日施行の衆議院議員選挙(以下「前々回選挙」という。),平成21年8月30日施行の衆議院議員選挙(以下「前回選挙」という。)及び本件選挙の施行当時の本件選挙制度によれば,衆議院議員の定数は480人とされ,そのうち300人が小選挙区選出議員,180人が比例代表選出議員とされ(公職選挙法4条1項),小選挙区選挙については,全国に300の選挙区を設け,各選挙区において1人の議員を選出し,比例代表選出議員の選挙(以下「比例代表選挙」という。)については,全国に11の選挙区を設け,各選挙区において所定数の議員を選出するものとされている(同法13条1項,2項,別表第1,別表第2)。総選挙においては,小選挙区選挙と比例代表選挙とを同時に行い,投票は小選挙区選挙及び比例代表選挙ごとに1人1票とされている(同法31条,36条)。 (3) 上記の公職選挙法の一部を改正する法律と同時に成立した平成24年法律第95号による改正前の衆議院議員選挙区画定審議会設置法(以下,単に「区画審設置法」という。)によれば,衆議院議員選挙区画定審議会(以下「区画審」という。)は,衆議院小 同時に成立した平成24年法律第95号による改正前の衆議院議員選挙区画定審議会設置法(以下,単に「区画審設置法」という。)によれば,衆議院議員選挙区画定審議会(以下「区画審」という。)は,衆議院小選挙区選出議員の選挙区の改定に関し,調査審議し,必要があると認めるときは,その改定案を作成して内閣総理大臣に勧告するものとされている(同法2条)。上記の改定案を作成するに当たっては,各選挙区の人口の均衡を図り,各選挙区の人口のうち,その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上にならないようにするこ とを基本とし,行政区画,地勢,交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならないものとされ(同法3条1項),また,各都道府県の区域内の選挙区の数は,各都道府県にあらかじめ1を配当した上で(以下,このことを「1人別枠方式」という。),これに,小選挙区選出議員の定数に相当する数から都道府県の数を控除した数を人口に比例して各都道府県に配当した数を加えた数とするとされている(同条2項)。 なお,同法において1人別枠方式が採用された経緯についてみると,平成2年4月の第8次選挙制度審議会の答申においては,選挙区の設定に当たって,各都道府県の区域内の選挙区の数,すなわち議員の定数は,人口比例により各都道府県に配分するものとされていたが,その答申を受けて立案された法案においては,各都道府県への定数の配分はまず1人別枠方式により,次いで人口比例によるとされたものであり,同法案の国会での審議において,法案提出者である政府側から,各都道府県への定数の配分については,投票価値の平等の確保の必要性がある一方で,過疎地域に対する配慮,具体的には人口の少ない地方における定数の急激な減少への配慮等の視点も重要であることから,人口の少ない県に居住する国民の意 ついては,投票価値の平等の確保の必要性がある一方で,過疎地域に対する配慮,具体的には人口の少ない地方における定数の急激な減少への配慮等の視点も重要であることから,人口の少ない県に居住する国民の意思をも十分に国政に反映させるために,定数配分上配慮して,各都道府県にまず1人を配分した後に,残余の定数を人口比例で配分することとした旨の説明がされている。 選挙区の改定に関する上記の勧告は,統計法5条2項本文の規定により10年ごとに行われる国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に行うものとされ(区画審設置法4条1項),さらに,区画審は,各選挙区の人口の著しい不均衡その他特別の事情があると認めるときは,上記の勧告を行うことができるものとされている(同条2項)。 (4) 区画審は,統計法(平成19年法律第53号による改正前のもの)4条2項本文の規定により10年ごとに行われるものとして平成12年10月に実施された国勢調査(以下「平成12年国勢調査」という。)の結果に基づ き,衆議院小選挙区選出議員の選挙区に関し,区画審設置法3条2項に従って各都道府県の議員の定数につきいわゆる5増5減を行った上で,同条1項に従って各都道府県内における選挙区割りを策定した改定案を作成して内閣総理大臣に勧告し,これを受けて,その勧告どおり選挙区割りの改定を行うことなどを内容とする公職選挙法の一部を改正する法律(平成14年法律第95号)が成立した。前々回選挙,前回選挙及び本件選挙の小選挙区選挙は,同法律により改定された選挙区割り(以下「本件選挙区割り」という。)の下で施行されたものである(以下,前回選挙及び本件選挙に係る衆議院小選挙区選出議員の選挙区を定めた公職選挙法13条1項及び別表第1を併せて「本件区割規定」という。)。 (5) 平成1 という。)の下で施行されたものである(以下,前回選挙及び本件選挙に係る衆議院小選挙区選出議員の選挙区を定めた公職選挙法13条1項及び別表第1を併せて「本件区割規定」という。)。 (5) 平成12年国勢調査による人口を基に,本件区割規定の下における選挙区間の人口の較差を見ると,最大較差は人口が最も少ない高知県第1区と人口が最も多い兵庫県第6区との間で1対2.064であり,高知県第1区と比較して較差が2倍以上となっている選挙区は9選挙区であった。 (6)ア前々回選挙当日(平成17年9月11日)における選挙区間の選挙人数の最大較差は,選挙人数が最も少ない徳島県第1区と選挙人数が最も多い東京都第6区との間で1対2.171であった。 イ前々回選挙について,小選挙区選挙の選挙区割り等に関する公職選挙法等の規定は憲法に違反し無効であるから,これに基づいて施行された東京都第2区等における選挙も無効であると主張して提起された選挙無効訴訟において,最高裁判所平成19年6月13日大法廷判決・民集61巻4号1617頁(以下「平成19年判決」という。)は,本件選挙制度導入後の最初の総選挙が平成8年に実施されてから10年に満たず,未だ平成17年の国勢調査も行われていない同年9月11日に実施された総選挙に関するものであり,同日の時点においては,なお1人別枠方式を維持し続けることにある程度の合理性があったということができるので,これを憲法 の投票価値の平等の要求に反するに至っているということはできない旨の判断をした。 (7)ア前回選挙当日(平成21年8月30日)における選挙区間の選挙人数の最大較差は,選挙人数が最も少ない高知県第3区と選挙人数が最も多い千葉県第4区との間で1対2.304であり,高知県第3区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は4 日)における選挙区間の選挙人数の最大較差は,選挙人数が最も少ない高知県第3区と選挙人数が最も多い千葉県第4区との間で1対2.304であり,高知県第3区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は45選挙区であった。なお,各都道府県単位でみると,前回選挙当日における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は,議員1人当たりの選挙人数が最も少ない高知県と最も多い東京都との間で1対1.978であった。 イ前回選挙について,前記(6)イと同様の理由により,東京第2区等における選挙は無効であると主張して提起された選挙無効訴訟において,最高裁判所平成23年3月23日大法廷判決・民集61巻4号1617頁(以下「平成23年判決」という。)は,次のとおり判断した。 (ア) 代表民主制の下における選挙制度は,選挙された代表者を通じて,国民の利害や意見が公正かつ効果的に国政の運営に反映されることを目標とし,他方,国政における安定の要請をも考慮しながら,それぞれの国において,その国の事情に即して具体的に決定されるべきものであり,そこに論理的に要請される一定不変の形態が存在するわけではない。憲法は,上記の理由から,国会の両議院の議員の選挙について,およそ議員は全国民を代表するものでなければならないという基本的な要請(43条1項)の下で,議員の定数,選挙区,投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとし(同条2項,47条),両議院の議員の各選挙制度の仕組みについて国会に広範な裁量を認めている。したがって,国会が選挙制度の仕組みについて具体的に定めたところが,上記のような基本的な要請や法の下の平等などの憲法上の要請に反するため,上記のような裁量権を考慮してもなおその限界を超えてお り,これを是認することができない場合に,初めてこれが憲法に違反する ,上記のような基本的な要請や法の下の平等などの憲法上の要請に反するため,上記のような裁量権を考慮してもなおその限界を超えてお り,これを是認することができない場合に,初めてこれが憲法に違反することになるものと解すべきである。 (イ) 本件選挙制度の下における小選挙区の区割りの基準については,区画審設置法3条が定めているが(以下,この基準を「本件区割基準」といい,この規定を「本件区割基準規定」という。),同条1項は,選挙区の改定案の作成につき,選挙区間の人口の最大較差が2倍未満になるように区割りをすることを基本とすべきものとしており,これは,投票価値の平等に配慮した合理的な基準を定めたものということができる。 他方,同条2項においては,前記(3)のとおり,1人別枠方式が採用されており,この方式については,相対的に人口の少ない県に定数を多めに配分し,人口の少ない県に居住する国民の意思をも十分に国政に反映させることができるようにすることを目的とする旨の説明がされている。しかし,前記(ア)のとおり,選出される議員は,いずれの地域の選挙区から選出されたかを問わず,全国民を代表して国政に関与することが要請されているのであり,相対的に人口の少ない地域に対する配慮はそのような活動の中で全国的な視野から法律の制定等に当たって考慮されるべき事柄であって,地域性に係る問題のために,殊更にある地域(都道府県)の選挙人と他の地域(都道府県)の選挙人との間に投票価値の不平等を生じさせるだけの合理性があるとはいい難い。しかも,前回選挙時には,1人別枠方式の下でされた各都道府県への定数配分の段階で,既に各都道府県間の投票価値にほぼ2倍の最大較差が生ずるなど,1人別枠方式が前記アに述べたような選挙区間の投票価値の較差を生じさせる主要な要因となっていたことは明 た各都道府県への定数配分の段階で,既に各都道府県間の投票価値にほぼ2倍の最大較差が生ずるなど,1人別枠方式が前記アに述べたような選挙区間の投票価値の較差を生じさせる主要な要因となっていたことは明らかである。1人別枠方式の意義については,人口の少ない地方における定数の急激な減少への配慮という立法時の説明にも一部うかがわれるところであるが,既に述べたような我が国の選挙制度の歴史,とりわけ人口の変動に伴う定数の削 減が著しく困難であったという経緯に照らすと,新しい選挙制度を導入するに当たり,直ちに人口比例のみに基づいて各都道府県への定数の配分を行った場合には,人口の少ない県における定数が急激かつ大幅に削減されることになるため,国政における安定性,連続性の確保を図る必要があると考えられたこと,何よりもこの点への配慮なくしては選挙制度の改革の実現自体が困難であったと認められる状況の下で採られた方策であるということにあるものと解される。 そうであるとすれば,1人別枠方式は,おのずからその合理性に時間的な限界があるものというべきであり,新しい選挙制度が定着し,安定した運用がされるようになった段階においては,その合理性は失われるものというほかはないところ,前回選挙時においては,本件選挙制度導入後の最初の総選挙が平成8年に実施されてから既に10年以上を経過しており,その間に,区画審設置法所定の手続に従い,平成12年国勢調査の結果を踏まえて平成14年の選挙区の改定が行われ,更に平成17年の国勢調査の結果を踏まえて見直しの検討がされたが選挙区の改定を行わないこととされており,既に上記改定後の選挙区の下で2回の総選挙が実施されていたなどの事情があったものである。これらの事情に鑑みると,本件選挙制度は定着し,安定した運用がされるようになっていたと評 ないこととされており,既に上記改定後の選挙区の下で2回の総選挙が実施されていたなどの事情があったものである。これらの事情に鑑みると,本件選挙制度は定着し,安定した運用がされるようになっていたと評価することができるのであって,もはや1人別枠方式の上記のような合理性は失われていたものというべきである。加えて,本件選挙区割りの下で生じていた選挙区間の投票価値の較差は,前記アのとおり,前回選挙当日,最大で2.304倍に達し,較差2倍以上の選挙区の数も増加してきており,1人別枠方式がこのような選挙区間の投票価値の較差を生じさせる主要な要因となっていたのであって,その不合理性が投票価値の較差としても現れてきていたものということができる。 そうすると,本件区割基準のうち1人別枠方式に係る部分は,遅くとも 前回選挙時においては,その立法時の合理性が失われたにもかかわらず,投票価値の平等と相容れない作用を及ぼすものとして,それ自体,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたものといわなければならない。そして,本件選挙区割りについては,前回選挙時において上記の状態にあった1人別枠方式を含む本件区割基準に基づいて定められたものである以上,これもまた,前回選挙時において,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたものというべきである。 しかしながら,平成19年判決において,前々回選挙時点における1人別枠方式を含む本件区割基準及び本件選挙区割りについて,前記(6)イのように,いずれも憲法の投票価値の平等の要求に反するに至っていない旨の判断が示されていたことなどを考慮すると,前回選挙までの間に本件区割基準中の1人別枠方式の廃止及びこれを前提とする本件区割規定の是正がされなかったことをもって,憲法上要求される合理的期間内に是正がされなかっ れていたことなどを考慮すると,前回選挙までの間に本件区割基準中の1人別枠方式の廃止及びこれを前提とする本件区割規定の是正がされなかったことをもって,憲法上要求される合理的期間内に是正がされなかったものということはできない。 (ウ) 以上のとおりであって,前回選挙時において,本件区割基準規定の定める本件区割基準のうち1人別枠方式に係る部分は,憲法の投票価値の平等の要求に反するに至っており,本件区割基準に従って改定された本件区割規定の定める本件選挙区割りも,憲法の投票価値の平等の要求に反するに至っていたものではあるが,いずれも憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず,本件区割基準規定及び本件区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできない。 (エ) 国民の意思を適正に反映する選挙制度は,民主政治の基盤である。 変化の著しい社会の中で,投票価値の平等という憲法上の要請に応えつつ,これを実現していくことは容易なことではなく,そのために国会には幅広い裁量が認められている。しかし,1人別枠方式は,衆議院議員 の選挙制度に関して戦後初めての抜本的改正を行うという経緯の下に,一定の限られた時間の中でその合理性が認められるものであり,その経緯を離れてこれを見るときは,投票価値の平等という憲法の要求するところとは相容れないものといわざるを得ない。衆議院は,その権能,議員の任期及び解散制度の存在等に鑑み,常に的確に国民の意思を反映するものであることが求められており,選挙における投票価値の平等についてもより厳格な要請があるものといわなければならない。したがって,事柄の性質上必要とされる是正のための合理的期間内に,できるだけ速やかに本件区割基準中の1人別枠方式を廃止し,区画審設置法3条1項の趣旨に沿っ 格な要請があるものといわなければならない。したがって,事柄の性質上必要とされる是正のための合理的期間内に,できるだけ速やかに本件区割基準中の1人別枠方式を廃止し,区画審設置法3条1項の趣旨に沿って本件区割規定を改正するなど,投票価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずる必要があるところである。 (8)ア区画審は,平成23年3月28日,平成23年判決を踏まえ,小選挙区選挙の選挙区間における議員1人当たりの人口較差をできるだけ速やかに是正し,違憲状態を早期に解消するために,1人別枠方式の廃止やこれを含む本件区割基準に基づいて定められた本件選挙区割りの改定を行わなければならないことを確認した。(乙1の1・2,弁論の全趣旨)イまた,平成23年判決を踏まえて,まもなく,Eでは,1人別枠方式を廃止し,小選挙区選挙の選挙区の各都道府県の議員の定数について21増21減する提案がなされたり,Fでも,1人別枠方式を廃止し,上記定数について0増5減する提案(以下,この内容を単に「0増5減」などともいう。)がなされたりした。(公知の事実〔以下の公知の事実とするEにおける議論状況は,いずれもEのホームページによるものであり,また,上記のFにおける議論状況は,G議員のホームページによるものである。〕)(9)ア第177回国会の平成23年8月10日の衆議院決算行政監視委員会において,HのI衆議院議員(当時)が選挙制度の改正について質問した のに対し,菅直人内閣総理大臣(当時。以下「菅総理」という。)は,「定数の是正という問題と…選挙制度というものとの考え方とは,当然これは重なってくるわけであります。つまりは,今言われた1人別枠方式というものを廃止するということだけでいくのか,制度も含めて見直すのかということもあるわけであります。そういった意味で 方とは,当然これは重なってくるわけであります。つまりは,今言われた1人別枠方式というものを廃止するということだけでいくのか,制度も含めて見直すのかということもあるわけであります。そういった意味で,正に議会政治の根幹に関わる問題でありまして,…できるだけ早い時期にこうしたことについて各党間での合意を得ることが重要だとは思っております。」などと答弁した。(乙21)イ野田佳彦内閣総理大臣(当時。以下「野田総理」という。)は,①第178回国会の平成23年9月13日の衆議院本会議の所信表明演説において,「政治改革で最優先すべき課題は,憲法違反の状態となっている1票の較差の是正です。」と述べ,②同国会の同月26日の衆議院予算委員会において,「1票の較差の是正の問題,各県1議席別枠配分制度などについての指摘については,…喫緊の課題だというふうに思っております。」と答弁するなどした。(乙22,公知の事実〔以下の公知の事実とする国会の審議状況は,いずれもインターネットの国会会議録検索システムによるものである。〕)(10)ア国会には,EのJ衆議院議員(当時。以下「J議員」という。)を座長(以下,座長としてのJ議員を「J座長」という。)とする衆議院選挙制度に関する各党協議会(以下「各党協議会」という。)が設置され,平成23年10月19日の第1回会合において,J座長は,「衆院議員の任期が残り2年を切る状況の中では違憲状態の解消と違法状態の回避は党派を超えた国会としての喫緊の課題だ。…Eとしては違憲状態の解消と違法状態の回避のためには最低限必要な事項について,この臨時国会(=第179回国会)で結論を得て法改正が必要と思っている。…各党がテーブル について協議を始めることが事態打開の第1歩と考えているのでお願いしたい。」などと述べた。(乙2 ついて,この臨時国会(=第179回国会)で結論を得て法改正が必要と思っている。…各党がテーブル について協議を始めることが事態打開の第1歩と考えているのでお願いしたい。」などと述べた。(乙2の1)イ各党協議会の平成23年11月15日の第8回会合において,J座長は,まずは,1票の較差是正を行い,その後で,選挙制度の抜本的改革と定数削減を一体的に議論する旨の提案をした。(乙2の2,公知の事実〔Eのホームページ〕)ウ Eは,平成23年12月28日の党政治改革推進本部役員会において,マニフェストに「衆議院は比例定数80削減します。」と記載されていることを踏まえ,「議員定数削減なくして増税なし」との主張が提出されたことから,党として,そのことについて,前向きに議論することを確認した。(公知の事実)エ Eの政治改革推進本部総会・総務部門会議の平成24年1月18日の合同会議において,J議員が,前記ウを踏まえ,マニフェストに掲げている衆議院の比例定数80削減に向けた「公職選挙法の一部を改正する法律案」と0増5減案を採用した「衆議院小選挙区選出議員の選挙区間における人口較差を緊急に是正するための衆議院議員選挙区画定審議会設置法の一部を改正する法律案」について提案したところ,了承され,その後,上記各法律案は,Eの政調役員会,役員会,常任幹事会を経て,Eの意志として決定された。(公知の事実)オ野田総理は,第180回国会の平成24年1月24日の衆議院本会議の施政方針演説において,「1票の較差を是正するための措置に加えて,衆議院議員の定数を削減する法案を今国会に提出すべく,Eとして準備しているところです。…この国会で結論を得て実行できるよう,私もリーダーシップを発揮してまいります。」と述べた。(公知の事実)カ各党協議会の平成24 減する法案を今国会に提出すべく,Eとして準備しているところです。…この国会で結論を得て実行できるよう,私もリーダーシップを発揮してまいります。」と述べた。(公知の事実)カ各党協議会の平成24年1月25日の第9回会合において,J座長は,前記イの提案を撤回し,同年2月25日を目指して1票の較差是正と抜本 改革と定数削減の三つの同時決着を図りたいとして,1票の較差是正と衆議院比例定数80削減を提案し,各党は,同日までに議論の同時決着を図れるよう全力を挙げる考えで合意した。(乙2の2)キ各党協議会の平成24年2月8日の第11回会合においては,G議員が,較差是正に関しては各党とも方向感が見えているが,比例定数削減で難航しているとの認識の下,違憲状態解消を先行するため,昨年末にJ座長が提案した較差是正の緊急対応の法案を出すべきと発言したが,J座長が三つ同時決着を目指しているのであるから,その決着を見ないうちに較差是正先行はない,三つ同時決着でぎりぎりまで努力すべきという方向感が確認された。(乙2の4)ク各党協議会の平成24年2月15日の第12回会合においては,J座長が同月14日に各党に提示した私案(次期総選挙に限った緊急措置として,1票の較差是正〔1人別枠方式を廃止し,各都道府県の小選挙区数を0増5減する〕,定数削減〔衆議院の比例定数を80削減する〕,選挙制度〔比例定数の削減に伴い民意が過度に集約されることを補正するための措置を講ずる〕を列記し,本格的な選挙制度改革については,1年以内に結論を得るとしたもの)を基に,意見交換が行われた。(乙2の5,公知の事実)ケ各党協議会の平成24年2月16日の第13回会合においては,前記クの私案を基に意見交換が行われたが,各党間の意見の相違が大きく,区画審の勧告期限である同月25日 た。(乙2の5,公知の事実)ケ各党協議会の平成24年2月16日の第13回会合においては,前記クの私案を基に意見交換が行われたが,各党間の意見の相違が大きく,区画審の勧告期限である同月25日が迫っていることから,J座長が,上記私案に対する各党の意見を集約し,来週中に与野党幹事長・書記局長会談を開いてもらい,そこで報告をすることとした。(乙2の6)(11)ア政府は,平成24年2月17日,「衆議院議員定数を80削減する法案等を早期に国会に提出し,成立を図る。」と明記した「社会保障・税一体改革大綱」を閣議決定した。(公知の事実) イ平成24年2月22日の与野党幹事長・書記局長会談において,衆議院の比例定数80削減について,E以外の全ての政党から強硬な反対意見が出されたことから,Eは,各党協議会の再開に当たり,各党協議会で議論中であるのに,「衆議院議員定数を80削減する法案等を早期に国会に提出し,成立を図る。」と明記した「社会保障・税一体改革大綱」の閣議決定をしたことにつき,政府見解を示すことを約束した。なお,J議員は,その際,衆議院の比例定数80削減をEが取り下げるとか(削減幅を)減らすということではないなどと説明した。(公知の事実)ウ第180回国会の平成24年2月23日の衆議院予算委員会において,野田総理は,前記イの約束を受けて,「社会保障・税一体改革大綱の閣議決定において,法案提出など立法府の在り方に深く踏み込んだ表現があることで国会の御議論に御迷惑をお掛けしたことを遺憾に存じ,深くおわび申し上げます。政府としては,選挙制度に係る各党協議会における議論の重要性を十分認識し,今後の閣議決定においては,より慎重な態度で臨んでまいります。」と述べた。(公知の事実)エ第180回国会の平成24年2月29日の両議院国 挙制度に係る各党協議会における議論の重要性を十分認識し,今後の閣議決定においては,より慎重な態度で臨んでまいります。」と述べた。(公知の事実)エ第180回国会の平成24年2月29日の両議院国家基本政策委員会会同において,FのK衆議院議員が,「特に区割り委員会(=区画審)は2月25日までに勧告を出さなければいけない状況だったのに,それ動きが取れない状況になって,こちらの方も違法状態が続いている。何とかしてこれ解決して,最高裁の指摘にこたえなきゃならぬと思います。…優先順位を付けて解決していかなきゃならないんじゃないか」などと述べたのに対し,野田総理は,「優先順位をということでありますが,まずはやっぱり違憲状態を脱するということが最優先ではないかと思います。そのことについては,我が党(=E)の自説に固執するということはありません。」などと答弁した。(乙24)オ各党協議会の平成24年3月1日の第14回会合においては,1票の較 差の是正を先行すべきとの提案が,Fからあり,これに関連して,野田総理が同年2月29日に較差是正を優先すべきだとの認識を示した点(前記エ参照)について議論があり,較差是正を先行する2段階論でいくのか,これまで各党協議会で合意してきた1票の較差是正,定数削減,抜本改革の3点同時決着でいくのかについて整理が必要との認識で各党出席者の意見が一致し,Eが持ち帰って,野田総理の発言とこれまでの各党協議会の議論を整理することとなった。(乙2の7)カ各党協議会の平成24年4月25日の第16回会合において,J座長は,次回の衆議院議員選挙のための緊急措置として,1人別枠方式を廃止し,0増5減すること,これと併せて,比例代表選出議員の定数を75削減し,ブロック比例代表制を全国比例代表制に改め,比例代表選出議員の定数 の衆議院議員選挙のための緊急措置として,1人別枠方式を廃止し,0増5減すること,これと併せて,比例代表選出議員の定数を75削減し,ブロック比例代表制を全国比例代表制に改め,比例代表選出議員の定数100のうち3割を連用制(有権者が小選挙区と比例代表で計2票を投じ,小選挙区で獲得議席が少ない政党に優先的に比例代表の議席を割り振る制度のこと)とすることなどを内容とする「座長とりまとめ私案」を提案したが,1人別枠方式の廃止及び0増5減以外の提案について意見がまとまらず,採用されなかったことから,J座長は,できるだけ速やかに与野党幹事長・書記局長会談を開いてもらい,報告することとした。(乙3の1・2)(12)ア EのL幹事長(当時。以下「L議員」という。)は,平成24年5月23日の与野党幹事長・書記局長会談において,各党協議会の議論を踏まえて,衆議院議員制度について,同年6月21日の国会会期末までに結論を出すように求めた。なお,第180回国会の同日の衆議院「政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会」(以下「政治倫理委員会」という。)においては,MN大学大学院教授等が参考人となり,衆議院議員の選挙制度についての意見陳述と質疑が行われた。(乙32,公知の事実) イ L議員は,平成24年6月14日の与野党幹事長・書記局長会談において,衆議院議員制度について,小選挙区の定数を0増5減すること,比例定数を40削減すること,比例11ブロックを全国比例に変更すること,比例定数140のうち35を小選挙区・比例代表連用制とすることを盛り込んだ私案(以下「L私案」という。)を示した。(公知の事実)ウ平成24年6月18日の与野党幹事長・書記局長会談においては,小選挙区の定数を0増5減することについては,違憲状態の解消に必要との意見が大 案(以下「L私案」という。)を示した。(公知の事実)ウ平成24年6月18日の与野党幹事長・書記局長会談においては,小選挙区の定数を0増5減することについては,違憲状態の解消に必要との意見が大勢を占めたが,比例定数削減や連用制導入については意見が分かれ,L私案は,採用されなかった。(公知の事実)(13)ア E(J議員外9名)は,平成24年6月18日,前記(12)ウの結果を受け,L私案に基づき,第180回国会において,衆議院議員制度について,1人別枠方式を廃止すること,小選挙区の定数を0増5減すること,比例定数を40削減すること,比例11ブロックを全国比例に変更すること,比例定数140のうち35を小選挙区・比例代表連用制とすることなどを内容とする「公職選挙法及び衆議院議員選挙区画定審議会設置法の一部を改正する法律案」(以下「E法案」という。)を衆議院に提出し,E法案は,同月26日,衆議院政治倫理委員会に付託された。(乙4の1・2)イ F(G議員外2名)は,平成24年7月27日,「衆議院小選挙区選出議員の選挙区間における人口較差を緊急に是正するための公職選挙法及び衆議院議員選挙区画定審議会設置法の一部を改正する法律案」(以下「緊急是正法案」という。)を衆議院に提出した。(乙5の1・2)ウ第180回国会の平成24年8月10日の参議院社会保障と税の一体改革に関する特別委員会において,OのP参議院議員が,「1票の較差について今国会でできるのは区割審設置法(=区画審設置法)の改正までです。実際に違憲状態が解消されるまでには,区割審(=区画審)を動かし て勧告を受けて,更に公職選挙法を改正する。そうするのであれば少なくとも4か月程度は掛かる。下手をすると半年以上掛かる。私が聞いているのは,まさかそこまで待つことはないということ 審)を動かし て勧告を受けて,更に公職選挙法を改正する。そうするのであれば少なくとも4か月程度は掛かる。下手をすると半年以上掛かる。私が聞いているのは,まさかそこまで待つことはないということでよろしいですね。」,「一体的な改革ということを先ほど総理おっしゃられましたけれども,Fが0増5減法案(=緊急是正法案)を提出している中,野党の多くが,違憲状態解消のために,各党の主張は横に置いて合意をするともう意見表明をしています。しかしながら,Eが…独自の法案(=E法案)に固執しているのが今の姿なのではないでしょうか。」などと質問したのに対し,野田総理は,「固執しているとは思いません。1票の較差を是正しなければならないは,それぞれの問題意識はあると思います。共通していると思います。定数削減もしなければならないということは,それぞれ各党がこれまで国民の皆様にお約束してきたことじゃないでしょうか。その中で,どうしても選挙制度改革と関連をするところが出てまいります。…御理解をいただける努力をこれからもしていきたいと思います。」などと答弁した。(公知の事実)エ第180回国会の平成24年8月22日から同月24日まで及び同月27日の衆議院政治倫理委員会において,Q,R,H,S,T及びO所属委員の出席が得られないまま,E法案の趣旨説明,質疑応答が行われ,E法案は,賛成総員で,原案のとおり可決された。なお,上記質疑応答において,U衆議院議員(以下「U議員」という。)は,「平成23年3月23日の最高裁の大法廷の判決においては,事柄の性質上必要とされる是正のための合理的期間内に,できるだけ速やかに1人別枠方式を廃止し,区画審設置法3条1項の趣旨に沿って区割り規定を改正するなど,投票価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずる必要があるところであるとい ための合理的期間内に,できるだけ速やかに1人別枠方式を廃止し,区画審設置法3条1項の趣旨に沿って区割り規定を改正するなど,投票価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずる必要があるところであるという判決をいただいております。もう合理的期間は十分過ぎたというふうに言えると思います。」などと発言した。(乙4の1,34~37) オ他方緊急是正法案は,平成24年8月23日,衆議院政治倫理委員会に付託された。(乙5の1)カ第180回国会の平成24年8月28日の衆議院本会議において,E法案は,賛成多数で,原案のとおり可決され,同日,参議院に送付されたが,その後,参議院の委員会には付託されることのないまま,審議未了により廃案となった。(乙4の1,公知の事実)(14)ア緊急是正法案は,第180回国会の閉会に当たり,いわゆる継続審理案件とされていたところ,第181回国会において,野田総理とFのV総裁(衆議院議員)が,平成24年11月14日の両議院国家基本政策委員会合同審査会のいわゆる党首討論で,衆議院議員の定数削減を平成25年の通常国会中にやり遂げることを条件に,平成24年11月16日に衆議院を解散する約束をしたことから,緊急是正法案は,急遽,同月15日衆議院で可決され,また,同月16日参議院で可決され,同日衆議院小選挙区選出議員の選挙区間における人口較差を緊急に是正するための公職選挙法及び衆議院議員選挙区画定審議会設置法の一部を改正する法律(以下「緊急是正法」という。)として成立し,緊急是正法は,同月26日公布され,2条の規定を除いて施行された。(乙5の1・2,6,12~16)イ緊急是正法は,小選挙区選出議員の定数を5人削減して295人とし,併せて,公職選挙法13条1項,別表第1の改定を行う(2条),本件区割基準のうち 施行された。(乙5の1・2,6,12~16)イ緊急是正法は,小選挙区選出議員の定数を5人削減して295人とし,併せて,公職選挙法13条1項,別表第1の改定を行う(2条),本件区割基準のうち1人別枠方式に係る部分を廃止する(3条)とするものであるが,区画審が区割りの改定案を作成して勧告するまでには一定の期間を要するため,緊急是正法2条の規定については,同条の規定による改正後の公職選挙法13条1項に規定する法律の施行の日から施行することとされ(附則1条ただし書),また,区画審が平成22年実施の国勢調査の結果に基づいて小選挙区選挙の選挙区の改定案を作成するに当たっては,高 知県,徳島県,福井県,佐賀県及び山梨県の5県の区域内の選挙区の数を1ずつ削減してそれぞれ2とすることとされ(附則3条1項,附則別表),さらに,改定案作成の基準として,①選挙区間における較差の基準を2倍未満とすること(附則3条2項1号),②改定の対象とする小選挙区を,ア人口の最も少ない都道府県(鳥取県)の区域内の選挙区,イ小選挙区の数が減少することとなる都道府県の区域内の選挙区,ウ人口の最も少ない都道府県の区域内における人口の最も少ない選挙区の人口以上であって,かつ,当該人口の2倍未満であることという基準に適合しない選挙区,エ上記ウの選挙区をウの基準に適合させるために必要な範囲で行う改定に伴い改定すべきこととなる選挙区のみを行うこととされ(附則3条2項2号),加えて,この改定案に係る区画審の勧告は,緊急是正法の施行の日から6か月以内においてできるだけ速やかに行うものと(附則3条3項),また,政府は,上記勧告があったときは,速やかに,必要な法制上の措置を講ずるものとされている(附則4条)。 (15) 区画審は,平成24年11月26日,緊急是正法附則3条3項の区 (附則3条3項),また,政府は,上記勧告があったときは,速やかに,必要な法制上の措置を講ずるものとされている(附則4条)。 (15) 区画審は,平成24年11月26日,緊急是正法附則3条3項の区割りの改定案の勧告期限である平成25年5月26日までの今後の審議会の進め方を確認し,平成24年12月10日,緊急是正法に基づく区割りの改定案の作成方針(素案)を審議した。(乙8の1~3,9の1・2)(16) 本件選挙は,本件区割基準中の1人別枠方式は廃止されたけれども,本件区割規定の是正がされることのないままの状態で,平成24年12月16日に施行された。 本件選挙当日における選挙区間の選挙人数の最大較差は,選挙人数が最も少ない高知県第3区と選挙人数が最も多い千葉県第4区との間で1対2.425であり,高知県第3区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は72選挙区であった。なお,各都道府県単位でみると,本件選挙当日における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は,議員1人当たりの選挙人数が最も 少ない高知県と最も多い東京都との間で1対2.0402であった。(乙10)(17) 区画審は,平成24年12月27日,上記作成方針(素案)を決定するとともに,人口の最も少ない鳥取県の区割りについての審議を開始し,平成25年1月15日には,福井県,山梨県,徳島県,高知県及び佐賀県の区割りについての審議を開始し,同月21日には,鳥取県の区割りの改定原案を決定し,同月29日には,人口の最も少ない鳥取新2区の人口を下回る選挙区を含む青森県,岩手県,宮城県,茨城県,和歌山県及び愛媛県の状況についてのレビューを行い,同年2月5日には,鳥取新2区の人口を下回る選挙区を含む長崎県及び熊本県の状況並びに鳥取新2区の人口の2倍以上となる選挙区を含む千葉県,東京都及 ,和歌山県及び愛媛県の状況についてのレビューを行い,同年2月5日には,鳥取新2区の人口を下回る選挙区を含む長崎県及び熊本県の状況並びに鳥取新2区の人口の2倍以上となる選挙区を含む千葉県,東京都及び神奈川県の状況についてのレビューを行い,同月12日には,全ての関係都道府県知事からの意見の報告を行い,同日及び同月18日には,緊急是正法に基づく「区割りの改定案の作成方針」の審議を行った。(乙17の1~4,18の1~7,19の1~5,20の1~8,公知の事実〔同月5日以降の区画審の議論状況は,いずれも総務省のホームページによるものである。〕) 3 争点及び争点に関する当事者の主張(1) 本件選挙までの間に,本件区割基準中の1人別枠方式は廃止されたけれども,これを前提とする本件区割規定の是正がされなかったことをもって,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態について,憲法上要求される合理的期間内に是正がされなかったといえるか(争点1)(原告ら)①平成23年判決は,国会に対し,できるだけ速やかに本件区割基準中の1人別枠方式を廃止し,区画審設置法3条1項の趣旨に沿って本件区割規定を改正する立法的措置(以下,この立法的措置を「本件区割規定の改正等の立法的措置」という。)を講ずるように一義的に明確な要求をしているので あるから,まずもって本件区割規定の改正等の立法的措置を講ずることのないまま,定数削減,選挙制度改革等の立法的措置(以下,この立法的措置を「定数削減等の立法的措置」という。)を講じようとすることは,もはや国会の裁量の範囲内とはいえないと解されること,②区画審設置法4条1項は,区画審設置法2条の規定による区画審の衆議院小選挙区の改定案の勧告について,国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に行うものとす いと解されること,②区画審設置法4条1項は,区画審設置法2条の規定による区画審の衆議院小選挙区の改定案の勧告について,国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に行うものとすると規定しているところ,平成22年国勢調査による「人口速報集計結果」は,平成23年2月25日に公示されていたのであるから,国会は,平成24年2月25日までに区画審をして上記勧告をさせるべく,速やかに1人別枠方式を廃止する必要があったといえること,③国会は,上記勧告後6か月もあれば,本件区割規定を是正することができたといえることなどに照らすと,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態を生じさせていた本件区割基準中の1人別枠方式を廃止し,これを前提とする本件区割規定を是正するための憲法上要求される合理的期間は,同年8月25日をもって経過するといえる。 しかるに,本件選挙までの間に,本件区割基準中の1人別枠方式は廃止されたけれども,これを前提とする本件区割規定の是正はされなかったのであるから,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態については,憲法上要求される合理的期間内に是正がされなかったといえる。 (被告)①本件区割基準中の1人別枠方式を廃止し,これを前提とする本件区割規定を是正するための憲法上要求される合理的期間の起算日は,平成23年判決の言渡しの日である平成23年3月23日と解されること,②選挙制度の仕組みを全体としてどのように構築するかについては,国会の高度の政策的判断に委ねられる事柄であるから,平成23年判決後も,本件区割規定の改正等の立法的措置と併せて定数削減等の立法的措置を講じようとすること は,国会の裁量の範囲内と解されるところ,本件区割規定の改正等の立法的措置と併せて定数削減等の立法的措置を講ずることは,現行の選挙制度の 的措置と併せて定数削減等の立法的措置を講じようとすること は,国会の裁量の範囲内と解されるところ,本件区割規定の改正等の立法的措置と併せて定数削減等の立法的措置を講ずることは,現行の選挙制度の全体的,抜本的な作り替えに匹敵する検討と作業を要する複雑かつ困難な問題であるから,事柄の性質上,その審議等にかなりの期間を要することが明らかであるが,そのために必要な合理的期間というものを定量的に明らかにすることは困難であり,また,相当でもないこと,③国会は,平成23年判決後,投票価値の較差是正に関する議論を行い,緊急是正法の成立に至っていること,④本件選挙当日の選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は,1対2.425であり,前回選挙時の1対2.304から僅かに増大しているにすぎないことなどに照らすと,本件選挙までの間に,本件区割基準中の1人別枠方式は廃止されたけれども,これを前提とする本件区割規定の是正がされなかったことをもって,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態について,憲法上要求される合理的期間内に是正がされなかったということはできない。 (2) 仮に,本件選挙までの間に,本件区割基準中の1人別枠方式は廃止されたけれども,これを前提とする本件区割規定の是正がされなかったことをもって,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態について,憲法上要求される合理的期間内に是正がされなかったといえる場合,裁判所は,いかなる判決をすべきか(争点2)(原告ら)ア裁判所は,選挙を無効とする判決(以下「無効判決」という。)をすべきである。 イ仮に,裁判所が,無効判決をすることができないのであれば,行政事件訴訟法25条の基礎に含まれている一般的な法の基本原則に従い,無効判決について,確定後相当期間その効力を停止することを認める 。 イ仮に,裁判所が,無効判決をすることができないのであれば,行政事件訴訟法25条の基礎に含まれている一般的な法の基本原則に従い,無効判決について,確定後相当期間その効力を停止することを認める判決(以下,このように無効判決の効力を将来発生させる判決を「将来効判決」と いう。)をすべきである。 ウ仮に,裁判所が,将来効判決をすることができないのであれば,いわゆる事情判決をすべきである。 (被告)ア ①無効判決によって得られる結果は,当該選挙区の選出議員がいなくなるというだけであって,真に憲法に適合する選挙が実現するためには,公職選挙法自体の改正に待たなければならないことに変わりはないこと,②一部の選挙区の選挙のみが無効とされるにとどまった場合でも,もともと同じ憲法違反の瑕疵を有する選挙について,そのあるものは無効とされ,他のものはそのまま有効として残り,しかも,公職選挙法の改正を含むその後の衆議院の活動が,選挙を無効とされた選挙区からの選出議員を得ることができないままの異常な状態の下で,行われざるを得ないこととなるが,このような結果は,憲法上決して望ましい姿ではなく,また,その所期するところでもないことなどに照らすと,裁判所は,無効判決をすべきではなく,事情判決をすべきである。 イ原告らは,仮に,裁判所が,無効判決をすることができないのであれば,将来効判決をすべきであると主張しているが,①将来効判決は,その法的根拠が必ずしも明らかでないこと,②将来効判決は,事情判決的処理の繰り返しを回避するために提案された画期的な手法ではあるが,平成23年判決は,事情判決的処理を行ったものではないから,本件においては,将来効判決を行う前提を欠いているといえること,③裁判所が国会の権限に属する立法的措置を講ずるのにどの程度の期間を あるが,平成23年判決は,事情判決的処理を行ったものではないから,本件においては,将来効判決を行う前提を欠いているといえること,③裁判所が国会の権限に属する立法的措置を講ずるのにどの程度の期間を要するかを具体的に判断することは困難であって,裁判所があらかじめこれを見越して,将来効判決を行うことは,司法権に委ねられた範囲を超えるのではないかとの疑問があることなどに照らすと,裁判所は,将来効判決をすべきではない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件選挙までの間に,本件区割基準中の1人別枠方式は廃止されたけれども,これを前提とする本件区割規定の是正がされなかったことをもって,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態について,憲法上要求される合理的期間内に是正がされなかったといえるか)について(1) まず,本件選挙までの間に,本件区割基準中の1人別枠方式は廃止されたけれども,これを前提とする本件区割規定の是正がされなかったことをもって,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態について,憲法上要求される合理的期間内に是正がされなかったといえるかを判断するに当たっては,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態を生じさせていた本件区割基準中の1人別枠方式を廃止し,これを前提とする本件区割規定を是正するための憲法上要求される合理的期間の起算日をいつとするのかが問題になるところ,平成19年判決においては,前々回選挙の時点における1人別枠方式を含む本件区割基準及び本件選挙区割りについて,憲法の投票価値の平等の要求に反するに至っていない旨の判断が示されていたものであって,平成23年判決において,初めて,前回選挙の時点における本件区割基準中の1人別枠方式及びこれを前提とする本件選挙区割りについて,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至って れていたものであって,平成23年判決において,初めて,前回選挙の時点における本件区割基準中の1人別枠方式及びこれを前提とする本件選挙区割りについて,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていた旨の判断が示されたこと(前提事実(6)イ,(7)イ(ア)~(エ))に照らすと,上記起算日については,平成23年判決の言渡しの日である平成23年3月23日とするのが相当である。 (2)ア次に,平成23年判決の言渡しの日である平成23年3月23日から本件選挙の日である平成24年12月16日までの間に,本件区割基準中の1人別枠方式は廃止されたけれども,これを前提とする本件区割規定の是正がされなかったことをもって,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態について,憲法上要求される合理的期間内に是正がされなかったといえるかにつき検討するに,上記合理的期間の経過の有無については,事柄 の性質上,一義的に決定し得るものではなく,1人別枠方式の廃止及び本件区割規定の是正のために必要とされる立法等の内容及び過程に係る諸事情を総合的に勘案して,個別具体的に判断するほかはないものと解される。 この点,確かに,両議院の議員の各選挙制度の仕組みについては,国会に広範な裁量が認められているところ(前提事実(7)イ(ア)),これを具体的に是正することは,一般的に,複雑かつ困難な問題というべきであり,そのためには,国会における十分な検討が必要になるというべきであるから,事柄の性質上,相応の期間を要することは,否定することができないというべきであるし,また,平成23年3月11日以降,国会が正に国難というべき東日本大震災の対応に追われていたのは,公知の事実であるから,本件の場合においては,通常の場合と比較して,ある程度長い期間を要することになっていたとしても,やむ 11日以降,国会が正に国難というべき東日本大震災の対応に追われていたのは,公知の事実であるから,本件の場合においては,通常の場合と比較して,ある程度長い期間を要することになっていたとしても,やむを得ないというべきである。 しかし,平成23年判決が説示しているとおり,衆議院は,その権能,議員の任期及び解散制度の存在等に鑑み,常に的確に国民の意思を反映するものであることが求められており,選挙における投票価値の平等についてもより厳格な要請があるものといわなければならないところ(前提事実(7)イ(エ)),平成23年判決は,国会が広範な裁量権を有していることに十分考慮しつつも,本件区割基準中の1人別枠方式及びこれを前提とする本件選挙区割りについては,前回選挙時において,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていると断じた上で,事柄の性質上必要とされる是正のための合理的期間内に,できるだけ速やかに本件区割基準中の1人別枠方式を廃止し,区画審設置法3条1項の趣旨に沿って本件区割規定を改正するなどの投票価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずる必要があると具体的かつ明示的に説示しているのであるから(前提事実(7)イ(イ)~(エ)。この点で,参議院議員選挙の選挙無効訴訟において,最高 裁判所が,参議院の在り方をも踏まえた高度に政治的な判断が求められる,事柄の性質上課題も多いためその検討に相応の時間を要することは認めざるを得ないなどとした上で,単に一部の選挙区の定数を増減するにとどまらず,都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなど,現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置を講ずる必要があると幅を持った説示をしていること〔最高裁判所平成24年10月17日大法廷判決・裁判所時報1566号 かるべき形で改めるなど,現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置を講ずる必要があると幅を持った説示をしていること〔最高裁判所平成24年10月17日大法廷判決・裁判所時報1566号1頁〕とは,大きく異なっているのである。),憲法が,国民主権を宣明した上で,三権分立制度を採用し,最高裁判所に違憲審査権を付与していることに照らすと,国会の広範な裁量権は,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態を是正し,民主的政治過程のゆがみを是正するという極めて高度の必要性から,制約を受けるところとなったものというべきであり,国会においては,本件区割規定の改正等の立法的措置を講ずるという喫緊の課題に限って,まずもって優先的に実行する憲法上の義務を国民に対して負うことになったと解するのが相当である(この点で,本件区割規定の改正等の立法的措置と併せて定数削減等の立法的措置を講じようとすることが,国会の裁量の範囲内であることを前提とする被告の主張〔争点1の被告の主張②〕は,採用することができない。)。 そして,本件区割規定の改正等の立法的措置を講ずるという喫緊の課題に限って,まずもって優先的に実行するとすれば,国会における1人別枠方式の廃止の審議と議決,区画審における審議と本件区割規定の是正の勧告,国会における本件区割規定の審議と議決を経ることが必要になると解されるところ,既に,平成23年判決が言い渡され,国会が上記の憲法上の義務を国民に対して負っていることが明らかにされている以上,国会の審議又は議決において,なお紛糾が生ずるなどということは,憲法が三権分立制度を採用し,最高裁判所に違憲審査権を付与していることに照ら し,憲法上予定されていない事態というべきであるし,また,緊急是正法の施行を受けて,審議を再開した区画審に関しては,6か月以 権分立制度を採用し,最高裁判所に違憲審査権を付与していることに照ら し,憲法上予定されていない事態というべきであるし,また,緊急是正法の施行を受けて,審議を再開した区画審に関しては,6か月以内においてできるだけ速やかに勧告を行うものとされているのであるから(緊急是正法附則3条3項。なお,第180回国会の平成24年8月23日の衆議院政治倫理委員会において,W政府委員〔総務省自治行政局選挙部長〕は,区画審の作業期間について質問されたところ,区画審においては,6か月以内には作業を完了し得る旨の答弁をしている。〔公知の事実〕),通常の場合であれば,平成23年判決の言渡しの日である平成23年3月23日から1年が経過する平成24年3月23日までに,また,国会が正に国難というべき東日本大震災の対応に追われていたことを最大限考慮したとしても,平成23年判決の言渡しの日である平成23年3月23日から1年半が経過する平成24年9月23日までに,本件区割基準中の1人別枠方式及びこれを前提とする本件区割規定の是正がされなかったのであれば,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態については,憲法上要求される合理的期間内に是正されていなかったものといわざるを得ない(本件区割基準中の1人別枠方式の廃止及びこれを前提とする本件区割規定の是正等に関しては,第177回国会〔会期平成23年1月24日から同年8月31日まで〕においては,菅総理が,議会政治の根幹に関わる問題として,できるだけ早い時期の成案を目指すと表明し〔前提事実(9)ア〕,第178回国会〔会期同年9月13日から同月30日まで〕においては,野田総理が,政治改革で最優先すべき課題であり,喫緊の課題であると表明し〔前提事実(9)イ〕,第179回国会〔会期同年10月20日から同年12月9日まで〕においては から同月30日まで〕においては,野田総理が,政治改革で最優先すべき課題であり,喫緊の課題であると表明し〔前提事実(9)イ〕,第179回国会〔会期同年10月20日から同年12月9日まで〕においては,喫緊の課題として,同国会中に立法的措置を講ずることが目指され〔前提事実(10)ア〕,第180回国会〔会期平成24年1月24日から同年9月8日まで〕においても,区画審が,勧告期限である同年2月25日までに,勧告を提出することができるように,立 法的措置を講ずることが目指されていたもので〔前提事実(10)オ~ケ〕,U議員は,同年8月24日の時点で,「もう合理的期間は十分過ぎた」と述べているのである〔前提事実(13)エ〕。なお,緊急是正法は,実質的に,僅か3日間の審議で成立しているのであるが〔前提事実(14)ア〕,平成23年判決から本件選挙までの国会の会期の総日数は,479日に及んでおり〔法律時報85巻2号3頁〕,この間には,極めて多くの政治的課題を抱えていた消費税増税を柱とするいわゆる社会保障・税一体改革関連法も成立しているのである。おって,当裁判所は,平成25年2月6日の期日外釈明3項をもって,被告に対し,上記合理的期間をどのように考えるかをただしたけれども,被告は,本件区割規定の改正等の立法的措置のみを講ずることを個別に取り上げて,上記合理的期間を論ずるのは相当ではないと述べるにとどまっている。)。 しかるに,平成23年判決の言渡しの日である平成23年3月23日から本件選挙の日である平成24年12月16日までの間に,本件区割基準中の1人別枠方式は廃止されたけれども,これを前提とする本件区割規定は是正されなかったのであるから,憲法上要求される合理的期間内に,本件区割基準中の1人別枠方式及びこれを前提とする本件区割規定の是正はされなか 方式は廃止されたけれども,これを前提とする本件区割規定は是正されなかったのであるから,憲法上要求される合理的期間内に,本件区割基準中の1人別枠方式及びこれを前提とする本件区割規定の是正はされなかったものといわざるを得ない。 そうすると,本件区割規定は,本件選挙当時において,憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものと断ぜざるを得ない(前提事実(7)イ(ウ)参照)。 イ以上に対し,まず,被告は,①選挙制度の仕組みを全体としてどのように構築するかについては,国会の高度の政策的判断に委ねられる事柄であるから,平成23年判決後も,本件区割規定の改正等の立法的措置と併せて定数削減等の立法的措置を講じようとすることは,国会の裁量の範囲内と解されるところ,本件区割規定の改正等の立法的措置と併せて定数削減 等の立法的措置を講ずることは,現行の選挙制度の全体的,抜本的な作り替えに匹敵する検討と作業を要する複雑かつ困難な問題であるから,事柄の性質上,その審議等にかなりの期間を要することが明らかであるが,そのために必要な合理的期間というものを定量的に明らかにすることは困難であり,また,相当でもないこと(争点1の被告の主張②),②国会は,平成23年判決後,投票価値の較差是正に関する議論を行い,緊急是正法の成立に至っていること(争点1の被告の主張③),③本件選挙当日の選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は,1対2.425であり,前回選挙時の1対2.304から僅かに増大しているにすぎないこと(争点1の被告の主張④)などに照らすと,本件選挙までの間に,本件区割基準中の1人別枠方式は廃止されたけれども,これを前提とする本件区割規定の是正がされなかったことをもって,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態について,憲法上要求される合理的期間内 間に,本件区割基準中の1人別枠方式は廃止されたけれども,これを前提とする本件区割規定の是正がされなかったことをもって,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態について,憲法上要求される合理的期間内に是正がされなかったということはできないなどと反論している。 しかし,①上記①の反論が前提を誤るものであり,採用することができないことは,前記ア第3段落に説示したとおりであること,②確かに,国会は,平成23年判決後,各党協議会を設置し(前提事実(10)ア),投票価値の較差是正等に関する議論を行い(前提事実(8)イ,(9)ア・イ,(10)ア~ケ,(11)イ~カ,(12)ア~ウ,(13)ア~カ),緊急是正法の成立に至ってはいるけれども(前提事実(14)ア),本件区割規定の改正等の立法的措置を講ずるという喫緊の課題に限定すれば,国会内に特に反対する意見は存在していなかったのに(前提事実(10)キ,(11)エ,カ,(12)ウ,(13)ウ),それと併せて各政党間で意見の対立が激しかった定数削減等の立法的措置を講ずることまでを議論してしまったがために(前提事実(9)ア,(10)ウ~ケ,(11)ア~カ,(12)ア~ウ),国会での議論が進まなくなるなどして(前提事実(13)エ),本件選挙までの間に,本件区割基準中の1人 別枠方式は廃止されたけれども,これを前提とする本件区割規定は是正されず,結局,本件区割規定の改正等の立法的措置を完遂することができなかったことは明らかであるところ,そのような紛糾が生ずるなどということは,前記ア第4段落に説示したとおり,憲法上予定されていない事態というべきであること,③選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差が,前回選挙当日において1対2.304であったのに,本件選挙当日においては1対2.425に拡大している 定されていない事態というべきであること,③選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差が,前回選挙当日において1対2.304であったのに,本件選挙当日においては1対2.425に拡大していることは,投票価値の平等が憲法上の要求であることに照らすと,むしろ重大な事態というべきであるし,また,選挙人数の較差が2倍以上になっている選挙区も,前回選挙当日において45選挙区であったのに,本件選挙当日においては72選挙区に激増しているのであって(前提事実(16)),憲法の投票価値の平等の要求に反する状態は,悪化の一途をたどっていると評価せざるを得ないことなどに照らすと,上記の被告の反論は,いずれも採用することができない。 2 争点2(仮に,本件選挙までの間に,本件区割基準中の1人別枠方式は廃止されたけれども,これを前提とする本件区割規定の是正がされなかったことをもって,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態について,憲法上要求される合理的期間内に是正がされなかったといえる場合,裁判所は,いかなる判決をすべきか)について(1) 前記1(2)アのとおり,本件区割規定は,本件選挙当時において,憲法14条1項等の憲法の規定に反するものであるが,本件区割規定に基づいて施行された本件選挙の効力については,更に考慮が必要となる。なぜなら,本件区割規定が,憲法14条1項等の憲法の規定に反する場合であっても,それによって選挙人の基本的権利である選挙権が制約されているという不利益など当該選挙の効力を否定しないことによる弊害,本件選挙を無効とする判決の結果,本件区割規定の改正が当該選挙区から選出された議員が存在しな い状態で行われざるを得ないなど一時的にせよ憲法の予定しない事態が現出することによってもたらされる不都合,その他諸般の事情を総合勘案し,い 区割規定の改正が当該選挙区から選出された議員が存在しな い状態で行われざるを得ないなど一時的にせよ憲法の予定しない事態が現出することによってもたらされる不都合,その他諸般の事情を総合勘案し,いわゆる事情判決の制度(行政事件訴訟法31条1項)の基礎に存するものと解すべき一般的な法の基本原則を適用し,選挙を無効とする結果余儀なくされる不都合を回避して,事情判決をすることもあり得るとするのが判例(昭和51年判決,昭和60年判決)だからである。 そこで検討するに,本件選挙は,憲法上要求される合理的期間内に本件区割規定の是正がされず,かえって,平成23年判決以降,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態が悪化の一途をたどっていると評価せざるを得ない状況下で(前記1(2)イ第2段落③),施行されたものなのであるから,選挙人の基本的権利である選挙権の制約及びそれに伴って生じている民主的政治過程のゆがみの程度は重大といわざるを得ず,また,最高裁判所の違憲審査権も軽視されているといわざるを得ないのであって,もはや憲法上許されるべきではない事態に至っていると認めるのが相当であることに照らすと,上記不都合,その他諸般の事情(なお,当裁判所は,平成25年2月6日の期日外釈明6項をもって,被告に対し,上記事情に関する事実関係とその評価をただしたけれども,被告は,昭和51年判決及び昭和60年判決を引用するにとどまり,具体的な事実関係等の主張をしていない。)を総合勘案しても,上記の一般的な法の基本原則を適用し,事情判決をするのは相当ではない。 そうすると,本件選挙については,憲法の規定に反する本件区割規定に基づいて施行されたものであるところ,事情判決をするのも相当ではないのであるから,無効と断ぜざるを得ない。 以上と異なる被告の主張(争点2の被告の主張ア については,憲法の規定に反する本件区割規定に基づいて施行されたものであるところ,事情判決をするのも相当ではないのであるから,無効と断ぜざるを得ない。 以上と異なる被告の主張(争点2の被告の主張ア)は,上記のとおり憲法上許されるべきではない事態に至っていることを正視せず,抽象的に上記不都合等を主張するものにすぎず,採用することができない。 (2)ア(ア) もっとも,本件選挙を直ちに無効とすると,本件区割規定の是正が当該選挙区から選出された議員が存在しない状態で行われざるを得ないなど,一時的にせよ憲法の予定しない事態が現出することになるから,本件選挙を直ちに無効とすることは必ずしも相当ではない。 そこで検討するに,憲法の投票価値の平等の要求に反していることを理由とする選挙無効訴訟(以下「定数訴訟」という。)は,公職選挙法204条所定の選挙無効訴訟の形式を借りて提起することを認めることとされているにすぎないものであって(昭和51年判決),これと全く性質を同じくするものではなく,その判決についてもこれと別個に解すべき面があるのであり,定数訴訟の判決の内容は,憲法によって司法権に委ねられた範囲内において,定数訴訟を認めた目的と必要に即して,裁判所がこれを定めることができると考えられるのであるから,本件選挙について,無効と断ぜざるを得ない場合には,裁判所は,本件選挙を無効とするが,その効果は一定期間経過後に始めて発生するという内容の将来効判決をすべきであると解される(昭和60年判決の裁判官寺田治郎,同木下忠良,同伊藤正己,同矢口洪一の補足意見参照)。 なお,当裁判所が,平成25年2月6日の期日外釈明7項をもって,被告に対し,将来効判決であっても回避し得ない不都合が存在するかをただしたのに対し,被告は,将来効判決主文に示された期間内に 参照)。 なお,当裁判所が,平成25年2月6日の期日外釈明7項をもって,被告に対し,将来効判決であっても回避し得ない不都合が存在するかをただしたのに対し,被告は,将来効判決主文に示された期間内に本件区割規定の改正が行われなかった場合,選挙無効の効果が生ずることに変わりはなく,その場合は無効判決がされたのと同様の支障が生ずるなどと主張しているけれども,この期に及んで,なお紛糾が生じて本件区割規定の改正が遅れるなどということは,憲法上予定されていない事態というべきであるから(前記1(2)ア第4段落参照),上記場合が生ずることを前提とする上記の被告の主張は,採用することができない。 おって,念のため付言するに,昭和51年判決及び昭和60年判決 は,前記(1)第1段落のとおり,諸般の事情を総合考察し,一般的な法の基本原則を適用し,選挙を無効とする結果余儀なくされる不都合を回避して,事情判決をすることもあり得るとしているにすぎないのであって,昭和60年判決の法廷意見が,定数訴訟において,将来効判決をすることができることを前提としているであろうことは,上記補足意見が,裁判長裁判官寺田治郎の組するものとして,敢えて付されていることなどから,十分に推測し得るところである。 (イ) 以上に対し,被告は,①将来効判決は,その法的根拠が必ずしも明らかでないこと,②将来効判決は,事情判決的処理の繰り返しを回避するために提案された画期的な手法であるが,平成23年判決は,事情判決的処理を行ったものではないから,本件においては,将来効判決を行う前提を欠いているといえること,③裁判所が国会の権限に属する立法的措置を講ずるのにどの程度の期間を要するかを具体的に判断することは困難であって,裁判所があらかじめこれを見越して,将来効判決を行うことは,司法権に委 といえること,③裁判所が国会の権限に属する立法的措置を講ずるのにどの程度の期間を要するかを具体的に判断することは困難であって,裁判所があらかじめこれを見越して,将来効判決を行うことは,司法権に委ねられた範囲を超えるのではないかとの疑問があることなどに照らすと,裁判所は,将来効判決をすべきではないなどと反論している。 しかし,①将来効判決は,前記(ア)のとおり,憲法の投票価値の平等の要求に反している状態の是正を,憲法の予定しない事態を現出させることなく行うための司法権の行使にほかならないのであるから,憲法81条にその根拠を見いだすことができるといえること,②被告の反論②は,最高裁判所判例解説民事篇昭和60年度295~296頁に基づく指摘であるが,前記(ア)の補足意見が,選挙の効力を否定せざるを得ない場合一般を想定したものであり,事情判決的処理の繰り返しを回避する必要がある場合のみを想定したものでないことは,上記補足意見の文理に照らし,明らかというべきであるし,また,平成23年判決は,前 記1(2)ア第3段落のとおり,本件区割基準中の1人別枠方式及びこれを前提とする本件選挙区割りについて,前回選挙時において,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていると断じた上で,事柄の性質上必要とされる是正のための合理的期間内に,できるだけ速やかに本件区割基準中の1人別枠方式を廃止し,区画審設置法3条1項の趣旨に沿って本件区割規定を改正するなどの投票価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずる必要があると具体的かつ明示的に説示しているのであって,事情判決そのものではないけれども,事情判決的処理というに十分に値する内容というべきであるから,被告の反論②は,到底的を射たものであるとはいえないこと,③前記1(2)ア第3段落のとおり,国会の広 ,事情判決そのものではないけれども,事情判決的処理というに十分に値する内容というべきであるから,被告の反論②は,到底的を射たものであるとはいえないこと,③前記1(2)ア第3段落のとおり,国会の広範な裁量権は,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態を是正し,民主的政治過程のゆがみを是正するという極めて高度の必要性から,制約を受けるところとなったものというべきであり,国会においては,本件区割規定の改正等の立法的措置を講ずるという喫緊の課題に限って,まずもって優先的に実行する憲法上の義務を国民に対して負うことになったと解するのが相当であるから,上記のように限定された課題についてであるならば,裁判所であっても,立法的措置を講ずるのにどの程度の期間を要するかを具体的に判断することは可能というべきであること(もっとも,国会において,検討及び審議を経ること自体は,必要であるし,また,避けることもできないのであるから,上記期間を厳密な正確性をもって判断するのは,容易なことではなく,ある程度の余裕を見て長めに判断するのが相当である。)に照らすと,上記の被告の反論は,いずれも採用することができない。 イこれを本件について見るに,①区画審は,緊急是正法において,1人別枠方式が廃止されたことを受けて,平成24年11月26日以降,緊急是正法に基づく区割りの改定作業を開始しており,平成25年5月26日ま でに改定案を勧告する予定となっていること(前提事実(15),(17)),②当該勧告を受けて,国会においては,本件区割規定を改正する立法的措置を講ずる必要があるけれども,その作業自体に長期間を要するとまでは考え難いこと(前提事実(13)ウ参照),③緊急是正法では,平成23年判決の要請に十分応えたものとなっていないとの指摘は,現時点でも存在しているけれ るけれども,その作業自体に長期間を要するとまでは考え難いこと(前提事実(13)ウ参照),③緊急是正法では,平成23年判決の要請に十分応えたものとなっていないとの指摘は,現時点でも存在しているけれども(高見勝俊「平成23年3月23日大法廷判決雑感」法曹時報60巻1号1頁,同「『違憲の府』と最高裁」別冊世界平成25年3月号156頁等),本件区割規定の改正が最終的にどのような内容で行われるのかは明らかではなく,上記改正について,現時点で,立法的措置を完遂していないのに,当然に投票価値の平等の要請にかなうものではないなどと即断することはできず,上記改正によって,投票価値の平等の要請にかなうものとなることを,なお期待することができないではないこと,④本件選挙の無効を1年以上の長期にわたって放置することは政治的混乱を招くものであり適切でないことなど,諸般の事情を総合すると,本件選挙の無効の効果については,同年11月26日の経過後に始めて発生することとするのが相当である。 3 結論以上によれば,原告らの請求は,いずれも理由があるが,その効果は,平成25年11月26日の経過をもって発生するものとするのが相当である。 広島高等裁判所第3部 裁判長裁判官筏津順子 裁判官井上秀雄 裁判官絹川泰毅

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