令和5(ネ)10090 職務発明対価相当請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和6年3月25日 知的財産高等裁判所 2部 判決 原判決変更 大阪地方裁判所 令和2(ワ)12107
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判決文本文18,627 文字)

令和6年3月25日判決言渡 令和5年(ネ)第10090号職務発明対価相当請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所令和2年(ワ)第12107号) 口頭弁論終結日令和6年1月10日判決 控訴人兼被控訴人 X(以下「原告」という。) 同訴訟代理人弁護士 藤掛伸之 浦本真希 上田貴 藤掛昂平 被控訴人兼控訴人 全星薬品工業株式会社(以下「被告」という。) 同訴訟代理人弁護士 井上卓哉 麻生川典晃 村西大作 同補佐人弁理士 佐々木修 主文 1 被告の控訴に基づき、原判決中、被告敗訴部分を取り消す。 2 上記の部分につき、原告の請求を棄却する。 3 原告の控訴を棄却する。 4 訴訟費用は第1、2審とも原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原告 (1) 原判決中、原告敗訴部分を取り消す。 (2) 被告は、原告に対し、6 担とする。 事実 及び理由- 2 -第1 控訴の趣旨 1 原告(1) 原判決中、原告敗訴部分を取り消す。 (2) 被告は、原告に対し、6000万円及びこれに対する令和2年3月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 被告は、原告に対し、5611万2000円及びこれに対する令和2年3月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (4) 訴訟費用は第1、2審とも被告の負担とする。 2 被告主文(第3項を除く。)同旨 第2 事案の概要 1 被告は、医薬品の製造販売等を目的とする株式会社であり、原告は、被告の元従業者である。 本件は、原告が、原告は被告の従業者として職務発明(原判決別紙特許目録記載1の特許(以下「本件特許1」という。)に係る各発明(以下「本件発明1」とい う。)及び同目録記載2の特許(以下「本件特許2」といい、本件特許1と併せて「本件各特許」という。)に係る各発明(以下「本件発明2」といい、本件発明1と併せて「本件各発明」という。))をし、本件各発明に係る特許を受ける権利を被告に承継させたと主張し、被告に対して、①本件発明1につき、平成20年法律第16号による改正前の特許法(以下「平成16年特許法」という。)35条3項 に基づいて、未払の相当の対価5億7500万円の内金6000万円及びこれに対する履行の請求の日の翌日である令和2年3月3日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め、②本件発明2につき、平成27年法律第55号による改正前の特許法(以下「平成20年特許法」という。)35条3項に基づい 改正前民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め、②本件発明2につき、平成27年法律第55号による改正前の特許法(以下「平成20年特許法」という。)35条3項に基づい て、相当の対価1億5552万円の内金6000万円及びこれに対する履行の請求- 3 -の日の翌日である令和2年3月3日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原判決は、本件発明1に係る原告の請求を全部棄却し、本件発明2に係る原告の請求を388万8000円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余を棄却したところ、原告及び被告は、いずれも自己の敗訴部分を不服と して、それぞれ控訴を提起した。 2 前提事実、争点及び当事者の主張(原判決の引用)前提事実、争点及び当事者の主張は、後記(原判決の補正)のとおり原判決を補正するほかは、原判決の「事実及び理由」の第2の2及び3並びに第3(2頁19 行目から20頁10行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 (原判決の補正)(1) 3頁4行目の「(甲2)」を削る。 (2) 3頁17行目末尾に「(乙4)」を加える。 (3) 3頁25行目の「経緯」を「行為」と改める。 (4) 4頁26行目及び5頁12行目の各「三和化学株式会社」をいずれも「株式会社三和化学研究所」と改める。 (5) 5頁5行目の「甲1、」を削る。 (6) 6頁8・9行目の「本件各発明の対価額」を「本件各発明に係る特許を受ける権利の承継の対価の額」と改める。 (7) 6頁15行目の「意思表示をした」の次に「(当裁判所に顕著な事実)」を加える。 (8) 9頁20行目の「係る」の次に「未払の」を加える。 ける権利の承継の対価の額」と改める。 (7) 6頁15行目の「意思表示をした」の次に「(当裁判所に顕著な事実)」を加える。 (8) 9頁20行目の「係る」の次に「未払の」を加える。 (9) 9頁21行目の「5億7600万円」の次に「から既払金(本件100万円)を控除した残金5億7500万円」を加える。 (10) 11頁19行目の「本件発明1に対する」を「本件発明1に係る特許を受- 4 -ける権利の承継の」と改める。 (11) 11頁23行目の「当該特許」の次に「に係る発明」を加える。 (12) 12頁4行目の「本件発明1の」、10行目の「本件発明1の職務発明に対する」及び20行目の「職務発明の」をいずれも「本件発明1に係る特許を受ける権利の承継の」と改める。 (13) 17頁23行目の「100%」の次に「×100%」を加える。 (14) 54頁3・4行目の「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」を「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」と改める。 (15) 54頁7・8行目の「エチルセルロース」を「エチルセルロース」と改める。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は、原判決と同様に消滅時効の抗弁を容れ、本件発明1に係る原告の請求は全部理由がないものと判断するが、原判決と異なり、原告が本件発明2の発明者又は共同発明者であると認めず、本件発明2に係る原告の請求も全部理由がないものと判断する。その理由は、次のとおりである。 2 本件発明1に係る請求について(原判決の引用)本件発明1に係る請求についての当裁判所の判断は、後記(原判決の補正)のとおり原判決を補正し、原告の当審における補充主張に鑑み後記4を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」の第4の1(原判決 本件発明1に係る請求についての当裁判所の判断は、後記(原判決の補正)のとおり原判決を補正し、原告の当審における補充主張に鑑み後記4を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」の第4の1(原判決20頁12行目から23頁21行目 まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 (原判決の補正)(1) 21頁3行目の「、褒賞制度審査会において」を削る。 (2) 21頁13行目の「被告担当者」を「被告の当時の会長ら」と改める。 (3) 21頁14行目の「受け取りました」を「お受け取りいたしました」と改 める。 - 5 -(4) 21頁15行目の「上記文書」を「上記のメール及び添付文書」と改める。 (5) 21頁18行目の「本件100万円」から「理由」までを「原告には本件100万円が支払われたのに、自分には何も支払われなかった理由」と改める。 (6) 21頁19行目の「多大な」を「多大なる」と改める。 (7) 21頁21行目の「ある」を「あります」と改める。 (8) 23頁2行目の「一貫して」を削る。 (9) 23頁16行目の「本件発明2」を「本件発明1」と改める。 (10) 23頁18行目の「、後記2(4)と同様の理由から」を削る。 3 本件発明2に係る請求について(1) 認定事実 (原判決の引用)認定事実は、後記(原判決の補正)のとおり原判決を補正するほかは、原判決の「事実及び理由」の第4の2(1)(23頁23行目から42頁8行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 (原判決の補正) ア 25頁13行目の「剤を」を「を」と改める。 イ 25頁19行目の「…に」を「…」と改める。 ウ 26頁12・13行目の「課題とする。」の次及び2 用する。 (原判決の補正) ア 25頁13行目の「剤を」を「を」と改める。 イ 25頁19行目の「…に」を「…」と改める。 ウ 26頁12・13行目の「課題とする。」の次及び27頁12行目の「見いだした。」の次にいずれも「」」を加える。 エ 28頁5行目の「甲」から6行目の「掲載した」までを「平成26年の医薬 品の専門雑誌に、本件特許2の特許公報に発明者として記載された原告、甲、乙及び丙を含む7名の者を筆者とする本件製品2の製剤設計に関する説明記事が掲載された」と改める。 オ 28頁9行目の「先発品」を「去痰剤」と改める。 カ 29頁7行目の「平成15年」を「平成17年」と改める。 キ 29頁8行目末尾に改行して次のとおり加える。 - 6 -「c 平成19年当時、OD錠(抗潰瘍薬)に配合される微粒子(腸溶性細粒)の粒子径を300μmとすることにより、服用時の口腔内でのザラツキ感を抑えられることが知られていた。(乙159)d 平成19年当時、徐放性のLカプセルにつき、これが2種類の顆粒(アンブロキソール塩酸塩を含有する速放性顆粒及び徐放性顆粒)から構成されていること が知られていた。(甲19)」ク 29頁10行目の「市場調査」の次に「(剤形追加の際の販売量の変化及び剤形別の売上数量の比較に係る市場調査であり、本件発明2の製剤技術等に関する調査ではない。)」を加える。 ケ 29頁16行目の「同年8月」から20行目の「開催された」までを「同年 8月1日に開催された開発本部連絡会において、新しい製剤を出す仕組みを作るため、上記の4名でアイデア出しを行って検討会を開くことなどが協議された。上記の4名は、その頃、当時国内で販売されていた口腔内速崩壊錠のリストアップを開始し 会において、新しい製剤を出す仕組みを作るため、上記の4名でアイデア出しを行って検討会を開くことなどが協議された。上記の4名は、その頃、当時国内で販売されていた口腔内速崩壊錠のリストアップを開始した。同月8日には、上記の4名が出席して第1回製剤開発PJ会議が開催された」と改める。 コ 29頁23行目の「提案した。」の次に「また、原告は、「OD錠は時代のすう勢であり、OD錠を手掛けることは医薬品市場における当社の地位の確保に必要不可欠といえる」などと発言した。」を加える。 サ 29頁25行目の「平成19年10月9日」から26行目の「議論がされ」までを「平成19年9月下旬頃から同年10月上旬までに開催された第3回製剤開 発PJ会議において、剤型開発品の選定に関する議論がされ」と改める。 シ 30頁3行目の「同月の」を「同月9日に開催された」と改める。 ス 30頁4行目の「同月29日頃」を「同月24日」と改める。 セ 30頁6行目の「新規製剤の選定の決定」を「次期開発品の最終決定」と改める。 ソ 30頁6行目末尾に改行して以下のとおり加える。 - 7 -「f 原告は、平成19年10月31日付けで、塩酸アンブロキソール口腔内崩壊錠の開発を推進すべしとする文書(甲17)を作成し、これを被告に交付した。 同文書には、「業界において…OD錠化研究が急展開されており、これらの中には高付加価値商品につながるものが多い」、「これから先、OD錠が広い領域で要望されている社会状況から、今後これらに類する新剤形が先発メーカーを中心にして 考えられ、開発テーブルに載せられてくることは容易に予想できる」、「現在上市されている塩酸アンブロキソール徐放製剤はすべてハードカプセル剤である。タケプロンやハルナールがハードカプセ 心にして 考えられ、開発テーブルに載せられてくることは容易に予想できる」、「現在上市されている塩酸アンブロキソール徐放製剤はすべてハードカプセル剤である。タケプロンやハルナールがハードカプセル剤を販売中止してOD錠化しているが、本品はその流れに載せうる製剤である」、「現在のカプセルに充填している粒子を、タケプロンやハルナールなどのように小さく製造すればよい」、「早晩、どこかが同 じアイデアで商品化してくると思え、早く手をつけるべきと考える」などの記載がある。」タ 30頁7行目の「f」を削る。 チ 30頁10行目及び11行目を削る。 ツ 30頁13行目の「開始され」から15行目末尾までを「開始された。具体 的には、パウレック社において、粒子径200μm以下の徐放顆粒の調製を試み、数種類の膜厚の異なる顆粒につき溶出実験を行ったところ、既存のカプセル剤の溶出に近い徐放顆粒が得られた。同月25日に開催された第8回製剤開発PJ会議においても、製剤技術部から同瀬踏み実験の結果が報告され、「今後、徐放顆粒に他の原料を混合して打錠し、錠剤化した場合に溶出に変化が生じるかを検討する」、 「徐放顆粒の試製をパウレック社で行ったが、マルチプレックスを用いなくとも、既存のフローコーターでも調製可能と考えられる。ハルナールはフローコーターで生産している」などの発言がされた。(甲61の1、乙31)」と改める。 テ 30頁26行目の「●●●●●」を「●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●」と改める。 ト 32頁1行目の「等が説明された」を「、剤形違いのため溶出試験を新たに- 8 -設定する必要があることなどが製剤概要として説明された」と改める。 ナ 32頁24行目の「乙45」を「●●●●●●乙45 1行目の「等が説明された」を「、剤形違いのため溶出試験を新たに- 8 -設定する必要があることなどが製剤概要として説明された」と改める。 ナ 32頁24行目の「乙45」を「●●●●●●乙45」と改める。 ニ 32頁25行目の「標準製剤」の次に「●●●●●●●」を加える。 ヌ 33頁17・18行目の「ヒドロキシプロプルセルロース」を「ヒドロキシプロピルセルロース」と改める。 ネ 33頁22行目の「●●●●●●●」を「●●●●●●●●」と改める。 ノ 34頁6行目の「●●」を「●●」と改める。 ハ 34頁15行目から18行目までを以下のとおり改める。 「(g) 平成20年10月30日(乙50、58)●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●」ヒ 34頁22行目の「●●●●●●●●●●●●●●●」の次に「●●●●●●●●●●●●●」を加える。 フ 35頁10行目の「●●●●●●●」を「●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●」と改める。 ヘ 35頁22行目の「●●●●」を「●●●●」と改める。 ホ 36頁22行目の「●●●●●」を「●●●●●」と改める。 マ 37頁21行目を次のとおり改める。 「(d) 平成22年3月2日中間報告(乙77)」 ミ 37頁23行目、24行目及び25行目の各「ステップ3会議」の次にいずれも「(1回目)」を加える。 ム 38頁18行目の「●●●●●●●●●●」を「●●●●」と改める。 メ 39頁11行目の「約25」を「約25処方」と改める。 モ 39頁13行目の「●●」の次に「●●●●●●●●●● 。 ム 38頁18行目の「●●●●●●●●●●」を「●●●●」と改める。 メ 39頁11行目の「約25」を「約25処方」と改める。 モ 39頁13行目の「●●」の次に「●●●●●●●●●●」を加える。 ヤ 39頁21行目の「甲61の2、61の3」を「甲61の3」と改める。 - 9 -ユ 39頁24行目の「●●」から26行目の「●●●●」までを「●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●」と改める。 ヨ 40頁10行目の「●●●●●●●●●●●」の次に「●●●●●●●●●」 を加える。 ラ 40頁20行目の「●●●●●●●」の次に「●●●●●●●●●●」を加える。 リ 41頁7行目の「水系レイヤリング」を「水系レイヤリング法」と改める。 ル 41頁13行目の「スケジュール検討」を「スケールアップ検討」と改める。 レ 42頁4行目の「(エ) 」の次に「平成24年11月22日、本件発明2に係る特許出願がされた。その後、」を加える。 ロ 42頁8行目の「原告が」を「原告は、平成24年10月頃」と改める。 (2) 争点2-1(原告が発明者であるか)についてア判断枠組み 特許法2条1項は、「この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」と定め、「発明」は技術的思想、すなわち、技術に関する思想でなければならないとしているが、特許制度の趣旨に照らして考えれば、その技術内容は、当該技術が属する技術分野における当業者が反復実施して目的とする技術効果を挙げることができる程度にまで 術に関する思想でなければならないとしているが、特許制度の趣旨に照らして考えれば、その技術内容は、当該技術が属する技術分野における当業者が反復実施して目的とする技術効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして 構成されていなければならないものと解するのが相当であるから(最高裁昭和52年10月13日第一小法廷判決(昭和49年(行ツ)第107号)民集31巻6号805頁)、発明者とは、自然法則を利用した高度な技術的思想の創作に関与した者、すなわち、当業者が当該技術的思想を実施することができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成するための創作に関与した者を指すというべきである。 そして、ある者が発明者であるというためには、必ずしも発明に至る全ての過程に- 10 -一人で関与することを要するものではなく、当該過程に共同で関与することでも足りるというべきであるが、当該者が共同発明者であるというためには、課題を解決するための着想及びその具体化の過程において、発明の特徴的部分の完成に創作的に寄与したことを要するものと解される。この場合において、発明の特徴的部分とは、特許請求の範囲に記載された発明の構成のうち従来技術にはみられない部分、 すなわち、当該発明に特有の課題解決手段を基礎付ける部分を指すものと解するのが相当である。 以上を踏まえ、以下、本件について検討する。 イ本件発明2の特徴的部分(ア) 補正して引用した原判決(以下、単に「原判決」という。)別紙特許目録 記載2の特許請求の範囲の記載及び認定事実2(原判決第4の2(1)。以下同じ。)アの本件発明2の特許明細書の記載によると、以下のとおり認めることができる。 すなわち、本件発明2は、塩酸アンブロキソールの長時間持続型(1日1回投与型等 実2(原判決第4の2(1)。以下同じ。)アの本件発明2の特許明細書の記載によると、以下のとおり認めることができる。 すなわち、本件発明2は、塩酸アンブロキソールの長時間持続型(1日1回投与型等)の口腔内崩壊錠(OD錠)の技術分野に属する。従来から、塩酸アンブロキソールは、急性気管支炎等における去痰に使用されてきたところ、それまで市販さ れてきた塩酸アンブロキソールの剤形は、錠剤、細粒、ドライシロップ剤等(1日3回投与型)及びカプセル剤(1日1回投与型)であった。患者の服用コンプライアンスの観点からは1日1回投与型が望ましいが、市販されていたカプセル剤は、高齢者や小児のような嚥下力の弱い患者には不向きであった。しかしながら、水なしで容易に服用することができる1日1回型の徐放性の塩酸アンブロキソールのO D錠は、それまで知られていなかった。そのような状況を踏まえ、薬物含有粒子の平均粒子径が比較的小さく、1回の投与で長時間にわたってシグモイド型の薬物放出を続けるという従来の塩酸アンブロキソールの徐放性カプセル剤の溶出規格に合致する溶出特性を示す塩酸アンブロキソールのOD錠を開発することが課題とされた。そして、当該課題を解決するためには、次の①から③までの構成をとることが 重要であるとされた。 - 11 -①塩酸アンブロキソールを含む制御放出微粒子及び速放性微粒子(以下、この2種類の微粒子を併せて「制御放出微粒子等」という。)の混合物を配合すること(以下「構成①」という。)、②口腔内におけるザラツキ感を少なくし、水なしで嚥下することができるようにするため、制御放出微粒子等の平均粒子径を300μm以下とすること(以下「構成 ②」という。)、③OD錠が従来のカプセル剤の溶出規格に合致する溶出特性(シグモイド型溶 下することができるようにするため、制御放出微粒子等の平均粒子径を300μm以下とすること(以下「構成 ②」という。)、③OD錠が従来のカプセル剤の溶出規格に合致する溶出特性(シグモイド型溶出)を示すように、制御放出微粒子等及びこれらを配合したOD錠の各成分や構造を設定すること(以下「構成③」という。)(イ) 認定事実2ウ(ア)c及びdのとおり、平成19年当時、徐放性のLカプセル につき、これが2種類の顆粒(アンブロキソール塩酸塩を含有する速放性顆粒及び徐放性顆粒)から構成されていることや、OD錠に配合される微粒子の粒子径を300μmとすることにより、服用時の口腔内でのザラツキ感を抑えられることは、従来技術として知られていた。したがって、同年当時、構成①及び②は、いずれも当業者に知られていたものと認められる。 以上に加え、原告において、④錠剤を製造する過程の加圧圧縮操作に対し割れにくいプロテクト層を形成したこと(以下「構成④」という。)も本件発明2の特徴的部分であると主張し、被告において、これを特には争っていないことも併せ考慮すると、本件発明2の特徴的部分(本件発明2に特有の課題解決手段を基礎付ける部分(従来技術にはみられない部分))は、構成①及び②を満たした上で、構成③ 及び構成④を実現したこと(以下、構成③と構成④を併せて「本件各部分」という。)であると認めるのが相当である。 (ウ) 原告は、構成①及び構成②も、本件発明2の特徴的部分であると主張するが、前記(イ)のとおり、これらの構成は、従来技術にみられた構成であるから、本件発明2に特有の課題解決手段であるということはできず、本件発明2の特徴的部 分ではない。原告の主張を採用することはできない(なお、構成①に関して原告が- 12 - れた構成であるから、本件発明2に特有の課題解決手段であるということはできず、本件発明2の特徴的部 分ではない。原告の主張を採用することはできない(なお、構成①に関して原告が- 12 -主張する「高含量の塩酸アンブロキソールを含む」との点は、原判決別紙特許目録記載2のとおり、本件発明2に係る特許請求の範囲に記載されたものではない。)。 ウ本件各部分に対する原告の関与(ア) 原告が本件発明2に係る発明者(又は共同発明者)であるというためには、前記アのとおり、課題を解決するための着想及びその具体化の過程において、本件 各部分の完成に創作的に寄与することを要するところ、当該着想は、具体的な発明の完成に向けられたものである以上、単に課題を抽象的に想起するだけでは足りず、課題及びその解決のための手段又は方法を具体的に認識することを要するものと解するのが相当である。 (イ) 本件発明2の完成時期 認定事実2によると、本件発明2は、遅くとも平成23年11月までに完成したものと認められる。 (ウ) 原告の具体的な行為認定事実2のとおり、原告は、本件発明2が完成した遅くとも平成23年11月までに、本件発明2に関連して、概要、次の行為をしたものである。 a 原告は、平成18年頃、徐放性製剤の市場調査を行い、アンブロキソール塩酸塩の徐放カプセル剤をOD錠とすれば医療現場から歓迎されると考えた。もっとも、当該市場調査は、文字どおり市場調査(剤形追加の際の販売量の変化及び剤形別の売上数量の比較に関するもの)であり、本件発明2の製剤技術等に関する調査ではなかった。 b 原告は、平成19年7月25日、新製品創出の専属メンバーとなり、さらに、同年8月以降は、製剤開発PJ会議の構成員として、当時国内で販 本件発明2の製剤技術等に関する調査ではなかった。 b 原告は、平成19年7月25日、新製品創出の専属メンバーとなり、さらに、同年8月以降は、製剤開発PJ会議の構成員として、当時国内で販売されていたOD錠のリストアップを行い、アンブロキソール塩酸塩の徐放カプセル剤のOD錠化(以下「本件OD錠化」という。)を提案するなどした。 c 原告は、平成19年10月31日付けで文書を作成し、被告に対して、塩酸 アンブロキソールのOD錠の開発を推進すべきであると進言した。 - 13 -d 原告は、平成19年12月から、本件OD錠化に関し、瀬踏み実験を行った。 当該瀬踏み実験は、徐放顆粒の粒子径を200μm以下として溶出実験を行ったところ、既存のカプセル剤の溶出に近い徐放顆粒が得られたというものであった。原告は、同月25日に開催された製剤開発PJ会議において、当該瀬踏み実験の結果について報告するとともに、「今後、徐放顆粒に他の原料を混合して打錠し、錠剤 化した場合に溶出に変化が生じるかを検討する」などと発言した。 e 原告は、平成20年2月29日、被告の社長等も出席して開催された次期開発品目選定会議において、アンブロキソール塩酸塩につき、販売売上げ見込み等に基づく「普通錠から徐放錠への移行」と題する説明をした。 f 原告は、平成20年4月3日、ステップ1会議において、本件発明2に係る 特許出願をすることを考えている旨の発言をした。 (エ) 検討a 前記(ウ)のうち、市場調査等に基づいて本件OD錠化を提案するなどした原告の行為は、その内容に照らし、新製剤の企画や方向性に関する提案であり、経営判断に資するものではあっても、課題及びその解決のための手段又は方法に関する 具体的提案ではないから、構成③(塩酸 原告の行為は、その内容に照らし、新製剤の企画や方向性に関する提案であり、経営判断に資するものではあっても、課題及びその解決のための手段又は方法に関する 具体的提案ではないから、構成③(塩酸アンブロキソールを含む制御放出微粒子等の混合物を配合し、かつ、制御放出微粒子等の平均粒子径を300μm以下とするとの構成を満たした上で、OD錠が従来のカプセル剤の溶出規格に合致する溶出特性(シグモイド型溶出)を示すように、制御放出微粒子等及びこれらを配合したOD錠の各成分や構造を設定したこと)又は構成④(同様の構成を満たした上で、錠 剤を製造する過程の加圧圧縮操作に対し割れにくいプロテクト層を形成したこと)のいずれに対する関与であるとも認めることはできない(なお、認定事実2によると、本件OD錠化は、塩酸アンブロキソールに係る医薬品の開発に関し、平成19年当時に知られていた手法の一つであり、特段新規の開発方針ではなかったというべきである。)。 b また、前記(ウ)のうち、本件OD錠化に関して瀬踏み実験を行った原告の行- 14 -為についてみるに、当該瀬踏み実験は、「徐放顆粒の粒子径を200μm以下として溶出実験を行ったところ、既存のカプセル剤の溶出に近い徐放顆粒が得られた」というものにすぎず、原告において、制御放出微粒子等及びこれらを配合したOD錠の各成分や構造を設定するための具体的な方法を認識するなどしたとはいえないから、当該瀬踏み実験の実施をもって、原告が構成③に係る着想及びその具体化の 過程において創作的な寄与をしたものと認めることはできない。その他、当該瀬踏み実験の内容に照らし、当該瀬踏み実験を行った原告の行為が本件各部分に対する関与であると認めることはできない。 c さらに、前記(ウ)のうち、「今後、徐放顆 認めることはできない。その他、当該瀬踏み実験の内容に照らし、当該瀬踏み実験を行った原告の行為が本件各部分に対する関与であると認めることはできない。 c さらに、前記(ウ)のうち、「今後、徐放顆粒に他の原料を混合して打錠し、錠剤化した場合に溶出に変化が生じるかを検討する」などと発言した原告の行為も、 その発言の内容に照らし、原告において、制御放出微粒子等及びこれらを配合したOD錠の各成分や構造を設定するための具体的な方法を認識するなどしたとはいえないから、当該発言をもって、原告が構成③に係る着想及びその具体化の過程において創作的な寄与をしたものと認めることはできない。その他、当該発言の内容に照らし、当該発言を行った原告の行為が本件各部分に対する関与であると認めるこ とはできない。 d なお、本件発明2に係る特許出願をすることを考えている旨の発言をした原告の行為(前記(ウ)f)及び当該特許出願をするよう提案した原告の行為(認定事実2エ(オ))が本件各部分に対する原告の関与であると認められないことは明らかであるし、当該特許出願に係る明細書の案を作成した原告の行為(認定事実2エ(オ)) についても、当該行為のみをもって直ちに、本件各部分に対する原告の関与があったものと認めることはできない。 e その他、原告が本件チームの行う試験・実験に関与していたことを認めるに足りる主張立証はなく、原告が本件各部分に対して関与をしたものと認めるに足りる的確な証拠はない。 (オ) 本件各部分に対する原告の関与に係る原告の主張(当審における補充主張- 15 -を含む。)について(原判決の引用)本件各部分に対する原告の関与に係る原告の主張に対する判断は、次のとおり原判決を補正し、当審における原告の補充主張に対す における補充主張- 15 -を含む。)について(原判決の引用)本件各部分に対する原告の関与に係る原告の主張に対する判断は、次のとおり原判決を補正し、当審における原告の補充主張に対する判断を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」の第4の2(3)オ(ウ)aからgまで(47頁3行目から50頁 17行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 (原判決の補正)a 48頁14行目の「本件チーム」から20行目末尾までを「仮に、薬物レイヤリングに用いる結合剤に関し、原告主張の事実(知見)があり、かつ、本件製品2の開発当時、原告が当該事実を知っていたとしても、前記認定(認定事実2ウ (エ)及び(カ))のとおり、本件チームにおいても、当該結合剤の選定につき、試行錯誤しながら検討を進め、PVPの選定に至っていることに照らすと、原告主張の事実があり、かつ、原告がこれを知っていたことをもって、原告が本件チームに対し上記のような指示をしたことを推認することはできないというべきである。」と改める。 b 49頁19行目の「再検討されたこと」から50頁1行目末尾までを「再検討され、平成23年4月には、可塑剤としてPEG6000(マクロゴール)が選定されたものと認められるところ、原告が本件チームに対しプロテクト層の処方について提案したことを示す客観的な証拠はないし、また、原告が行ったと主張する指示は、その内容や経緯が不明確であって、具体的な指示がされたと認めることは できない。」と改める。 (当審における補充主張について)a 核粒子に用いられる添加剤(セルフィアCP-102)の選定について(a) 原告は、甲108(旭化成株式会社の従業員が作成した令和4年5月26日付け及び同年6月7日付け各メール について)a 核粒子に用いられる添加剤(セルフィアCP-102)の選定について(a) 原告は、甲108(旭化成株式会社の従業員が作成した令和4年5月26日付け及び同年6月7日付け各メール)においてセルフィアCP-102に原薬の 吸着性があるとの情報が記載されていないとして、セルフィアCP-102が溶出- 16 -性に影響する可能性はなかったと主張する。 確かに、甲108には、セルフィアCP-102には薬物を吸着する性質がある旨の情報を発信したことはない旨の記載がある一方、同時に、「随分前の情報ですと判断しかねます」との記載もされているから、結局、明確な結論は記載されていない。セルフィアCP-102の製造業者であると認められる旭化成株式会社の従 業員が13年以上後に作成したこのような曖昧なメールの記載により、前記事実認定●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●が左右されるものではない。 (b) 原告は、セルフィアCP-102の選定に数か月を要するものではないと 主張するが、証拠(乙51、54、152)及び弁論の全趣旨によると、本件チームは、現に、平成20年11月当時、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●と認められるのであるから、本件チームにおいて、当該添加剤の選定に少なくとも3か月程度を要したことは事実として認定することができる。薬 剤の開発に当たり、核粒子として用いることが可能な他の添加材の有無について検証することは何ら不自然ではないことを考慮すると、原告の主張を採用することはできない。 (c) 原告 できる。薬 剤の開発に当たり、核粒子として用いることが可能な他の添加材の有無について検証することは何ら不自然ではないことを考慮すると、原告の主張を採用することはできない。 (c) 原告は、本件製品2の開発の当時、核粒子に用いられる添加剤としてはセルフィアCP-102しか存在せず、その他の添加剤を用いてされた本件チームの 実験はいずれも無駄なものであったとして、原告は本件チームに対し当該添加剤としてセルフィアCP-102を使用するよう指示したと主張するが、そもそも、本件製品2の開発当時、セルフィアCP-102以外の添加剤が存在しないことが確実であるとまではいえなかったのであれば、実験でこれを確認したことは無駄なことではなく、無駄であったというのは後智恵である。仮に、本件製品2の開発当時、 当該添加剤としてセルフィアCP-102しか存在しなかったとの客観的状況があ- 17 -り、原告において、そのことを確信していたのであれば、原告は、本件チームにその旨の指示をし、添加剤の選定に時間をかけさせることはなかったはずである。しかるに、前記説示(原判決第4の2(3)オ(ウ)a)のとおり、本件チームが当該添加剤の選定に数か月を要していることに照らすと、当該客観的状況をもって、原告が主張するような具体的な指示があったことを推認することはできないというべきで ある。 b 薬物レイヤリングに係る崩壊剤(クロスポビドン)の添加について(a) 原告は、本件チームが自ら薬物レイヤリングに係る崩壊剤としてクロスポビドンを選定することはできなかったと主張するが、本件全証拠によっても、本件チームが自ら当該崩壊剤としてクロスポビドンを選定する能力を有していなかった ものと認めるに足りない。 (b) 原告は、粉末で配合した はできなかったと主張するが、本件全証拠によっても、本件チームが自ら当該崩壊剤としてクロスポビドンを選定する能力を有していなかった ものと認めるに足りない。 (b) 原告は、粉末で配合したアンブロキソール塩酸塩を完全に溶出させるためには崩壊剤の添加が必須であること及び崩壊剤としてクロスポビドン又は低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが第一選択であることにつき原告が知見を有していたため、原告は本件チームに対しアンブロキソール塩酸塩が完全に溶出しないとき はクロスポビドン等を使用するよう指示したと主張する。しかしながら、仮に、本件製品2の開発当時、原告が上記のような知見を有していたとしても、前記説示(原判決第4の2(3)オ(ウ)b)のとおり、本件チームにおいて、徐放性微粒子の溶出性の改善のため、様々な工夫をしていることに照らすと、原告が上記のような知見を有していたことをもって、原告が本件チームに対し上記のような具体的指示を したことを推認することはできないというべきである。 c 徐放性被膜の被覆の変更について原告は、本件チームが徐放性被膜の被覆につきAQCを主成分とするものからECを主成分とするものに変更したことに関し、当該変更を指示することができたのは指導者である原告しかいなかったとして、原告は本件チームに対し当該変更の指 示をしたと主張する。原告の主張は、本件チームが自ら徐放性被膜の被覆の主成分- 18 -を変更する能力を有していなかったことを前提とするものであるが、本件全証拠によっても、本件チームが自ら当該変更を行う能力を有していなかったものと認めるに足りないから、原告の主張は、その前提を欠くものとして失当である。 d プロテクト層に用いられる可塑剤(PEG6000)の選定について原告は、 該変更を行う能力を有していなかったものと認めるに足りないから、原告の主張は、その前提を欠くものとして失当である。 d プロテクト層に用いられる可塑剤(PEG6000)の選定について原告は、本件チームに対しては原告からプロテクト層に用いられる可塑剤として PEG6000等を選択せよとの指示がされたものであるが、当該指示は甲23がなければ思い付かなかったものであり、原告でなければできない発想であったと主張する。 しかしながら、仮に、当業者において、甲23に接しなければ本件製品2のプロテクト層に係る可塑剤としてPEG6000を用いることに想到し得ないとしても、 甲23は、平成5年に公開された公開特許公報にすぎず、甲を始めとする本件チームのメンバーにおいても容易に調査をすることができる文献であるから、原告でなければ当該可塑剤としてのPEG6000の選定をすることができないものとは認められない。なお、本件全証拠によっても、本件チームが自ら当該可塑剤としてPEG6000を選定する能力を有していなかったものと認めるに足りない。 したがって、原告の主張を採用することはできない。 e 崩壊促進層の被覆について原告は、徐放性被膜に類似する被膜を薄く被覆すると溶出に影響せずに微粒子の粘着性を防止することができるとの知見を原告が有していたため、原告は本件チームに対し当該知見に沿った指示をしたと主張する。しかしながら、証拠(乙62、 83、152)及び弁論の全趣旨によると、本件チームは、オーバーコート層第2層に用いる各物質及びそれらの配合割合を変えて試験を行い、比較検討した結果、当該層に苦みマスキング層と同一の処方で薄い被膜を施すこととしたものであると認められる。これによると、仮に、本件製品2の開発当時、原告が上記の びそれらの配合割合を変えて試験を行い、比較検討した結果、当該層に苦みマスキング層と同一の処方で薄い被膜を施すこととしたものであると認められる。これによると、仮に、本件製品2の開発当時、原告が上記のような知見を有していたとしても、そのことをもって、原告が本件チームに対し上記のよう な指示をしたことを推認することはできないというべきである。 - 19 -(カ) 小括以上のとおりであるから、原告が本件各部分に対して関与をしたということはできず、その他、原告が本件各部分に対して関与をしたものと認めるに足りる証拠はない。 エ争点2-1についての結論 以上によると、原告が本件発明2に係る発明者又は共同発明者であると認めることはできない。 したがって、その余の争点について判断するまでもなく、本件発明2に係る原告の請求は理由がない。 4 原告の当審における補充主張(本件発明1に係るもの)について (1) 原告は、①被告が原告に支給する金員は原告の功績のいかんにより増減してきた、②本件技術指導料(月額40万円)の支払が開始された平成16年7月は本件製品1が上市された時期であり、本件技術指導料が減額され月額32万円となった平成24年11月は吉富特許に係る特許権の存続期間が満了した時期であるとして、本件技術指導料のうち月額8万円は吉富特許に係る発明を利用した本件発明 1に係る相当の対価として支払われたものであると主張する。 しかしながら、上記①の事情を認めるに足りる的確な証拠はない。 上記②については、確かに、原判決第2の2(5)ア(4頁16行目から5頁5行目まで)のとおり、本件製品1は、吉富特許に係る発明を利用したものであり、本件製品1(ニフェジピンCR錠10mgを除く。)は、平成16年7月に販 かに、原判決第2の2(5)ア(4頁16行目から5頁5行目まで)のとおり、本件製品1は、吉富特許に係る発明を利用したものであり、本件製品1(ニフェジピンCR錠10mgを除く。)は、平成16年7月に販売が開 始されたものである。また、証拠(乙4)及び弁論の全趣旨によると、吉富特許に係る特許権の存続期間は、平成24年10月に満了したものと認められる。しかしながら、本件技術指導料について直接的に定める本件覚書には、本件技術指導料の一部が吉富特許に係る発明の利用の対価である旨の記載は全くみられない。また、仮に、被告が原告に対し吉富特許に係る発明の利用に関する金員を支払ったとして も、そのことをもって、被告が原告に対し本件発明1に係る相当の対価として当該- 20 -金員を支払ったといえるだけの事情を認めるに足りる証拠はない。 以上のとおりであるから、本件技術指導料が本件発明1に係る相当の対価として支払われた旨の原告の主張を採用することはできない。 (2) 原告は、①原告は被告において多くの新規の製剤化技術の開発及び商品開発に貢献したが、その中でも本件製品1に係る貢献は最大のものである、②被告の 当時の会長も丙に宛てたメール(甲31の2)において本件製品1に言及しているとして、本件100万円は本件発明1に係る相当の対価として支払われたものであると主張する。 しかしながら、上記①の事実(原告の被告における貢献の中で本件製品1に係るものが最大のものであること)を認めるに足りる的確な証拠はない。そして、原告 自身、被告において長年にわたり多くの商品開発等に係る卓越した貢献をしてきた旨自認していること、本件製品1(ニフェジピンCR錠10mgを除く。)が上市されたのが平成16年7月であるのに対し、本件100万円が支払われたの 年にわたり多くの商品開発等に係る卓越した貢献をしてきた旨自認していること、本件製品1(ニフェジピンCR錠10mgを除く。)が上市されたのが平成16年7月であるのに対し、本件100万円が支払われたのがその14年半以上後の平成31年3月であること、本件100万円は、原告の退職に際して支払われていること、その他、原判決第4の1(1)イ(イ)(22頁22行目から 23頁14行目まで)において説示した事情に照らすと、上記②の事情(令和2年2月19日付けの当時の被告の会長から丙に対するメールの中で、同会長が、「長きに亘って固型剤の技術開発に多大なる功績を残されました」、「特筆すべきことは、弊社にとって事業拡大の源である「ニフェジピンCR錠」の開発であります。 ここまで成長して来られたことに対する、会社としてのささやかな気持ちとして、 昨年、直接お礼を申し上げ、特別贈呈いたしました。」と述べたこと(甲31の2))を考慮しても、本件100万円は、原告の被告における長年の功労に報いるために支払われた退職金の趣旨の金員であるといわざるを得ず、これが本件発明1に係る相当の対価として支払われたものと認めるに足りる証拠はない。 以上のとおりであるから、本件100万円が本件発明1に係る相当の対価として 支払われた旨の原告の主張を採用することはできない。 - 21 - 5 結論よって、当裁判所の判断と異なる原判決は一部不当であるから、被告の控訴に基づき、原判決中、被告敗訴部分を取り消した上、当該部分に係る原告の請求を棄却し、原告の控訴は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官 主文 いからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 理由 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官 清水響 裁判官 浅井憲 裁判官 勝又来未子

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