令和5年8月28日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和2年(ワ)第9135号商標移転登録抹消登録等請求事件口頭弁論終結日令和5年6月5日判決 原告千鳥屋総本家株式会社 訴訟代理人弁護士柴野高之同高橋誉幸 被告P1 訴訟代理人弁護士鈴木信作 被告P2 訴訟代理人弁護士高田明同平野豪介同永田光 同木村貴司補佐人弁理士廣田恵梨奈 被告株式会社千鳥饅頭総本舗 (以下「被告総本舗」という。) 訴訟代理人弁護士田中雅敏同堀田明希同山腰健一 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する(主位的請求・予備的請求)。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告P2及び被告総本舗に対する請求 被告P2及び被告総本舗は、原告に対し、別紙商標権目録記載の商標権(以下「本件商標権」という。)に関する、特許庁平成29年4月19日受付第006151号の一部移転登録(以下「本件移転登録」という。)の抹消登録手続をせよ。 2 被告P1に対する請求 (1) 主位的請求被告P1は、原告に対し、 9年4月19日受付第006151号の一部移転登録(以下「本件移転登録」という。)の抹消登録手続をせよ。 2 被告P1に対する請求 (1) 主位的請求被告P1は、原告に対し、本件商標権に関する専用使用権の設定登録手続をせよ。 (2) 予備的請求被告P1は、原告に対し、7000万円及びこれに対する令和3年1月29 日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は、原告が、被告らに対し、次の請求をする事案である。 (1) 被告P2及び被告総本舗に対する請求原告の被告P1に対する本件商標権の専用使用権設定登録手続請求(後記(2) ア)を被保全債権とする、被告P1の被告P2及び被告総本舗に対する本件移 転登録の抹消登録手続請求(2) 被告P1に対する請求ア主位的請求原告と被告P1間の本件商標権の専用使用権許諾契約に基づく本件商標権の専用使用権設定登録手続請求 イ予備的請求前記アの専用使用権許諾契約に係る専用使用権設定登録義務の債務不履行に基づく損害賠償金7000万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで平成29年法律第45号による改正前の商法所定の商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払請求 2 前提事実(争いのない事実又は証拠(枝番号があるものは各枝番号を含む)により容易に認定できる事実)(1) 当事者等ア千鳥屋について千鳥屋は、寛永7年(1630年)に創業され、昭和初期以降、P3及び 妻のP4が洋和菓子の製造販売事業を拡大した。その後、両名の長男P5(被告P1はその孫である。)は、当初個人経営で、後に東京都豊島区を本店所在地としていた千鳥屋総本家株式会社(以 、P3及び 妻のP4が洋和菓子の製造販売事業を拡大した。その後、両名の長男P5(被告P1はその孫である。)は、当初個人経営で、後に東京都豊島区を本店所在地としていた千鳥屋総本家株式会社(以下「旧総本家」という。)の商号で、東京都を中心に洋和菓子の製造、小売り等の事業(以下、旧総本家の当該事業を「本件事業」という。)を行っていた。なお、P3とP4の次男は被告総 本舗の商号で福岡県を中心に、三男は株式会社千鳥屋宗家(以下「宗家」という。)の商号で兵庫県及び大阪府を中心に、五男(被告P2はその子で、株式会社千鳥屋本家の現代表取締役である。)は株式会社千鳥屋本家その他の商号で福岡県飯塚市や福岡市周辺を中心にそれぞれ洋和菓子の製造販売事業を行っていた。 イ原告について 旧総本家は、東京地方裁判所に対し、民事再生を申し立て、平成28年5月19日、再生手続開始決定を受けた(東京地方裁判所平成28年(再)第18号)。 原告は、旧総本家の本件事業の譲渡先として平成28年6月17日に設立された洋和菓子の製造、卸、小売業等を目的とする株式会社であり、上記民 事再生手続においてスポンサーとなった株式会社クインオート、原告及び旧総本家は、同日、原告が旧総本家から本件事業を6億7000万円で譲り受ける旨の合意をした(効力発生日は同年7月15日)。(以上につき、甲1、5、乙8) (2) 本件商標権についてP5は、平成28年6月17日当時、本件商標権を含む複数の本件事業に関する商標権を有していたところ、原告は、同日、P5から、本件商標権を含む合計50件の商標権を1円で譲り受け、同年7月15日、その移転登録手続を行った(甲2、5)。 原告は、平成28年7月15日、被告P1に対 ところ、原告は、同日、P5から、本件商標権を含む合計50件の商標権を1円で譲り受け、同年7月15日、その移転登録手続を行った(甲2、5)。 原告は、平成28年7月15日、被告P1に対し、本件商標権を含む合計5件の商標権を1円で譲渡するとともに、被告P1は、同日、原告に対し、前記5件を含む合計11件の商標権について、無償での専用使用を許諾した(以下「専用使用権許諾契約」という。)。専用使用権許諾契約には、被告P1は、原告の事前の承諾なく、前記11件の商標権を第三者に譲渡し、又は、原告の使 用権の範囲外で第三者に使用許諾してはならない旨の特約(以下「本件譲渡禁止特約」という。)が付されていた。(以上につき、甲3、4)(3) 本件商標権に関する登録本件商標権については、平成29年1月4日付けで原告から被告P1への移転登録がされ、同年4月19日付けで被告P1から被告P2及び被告総本舗に 対する一部移転登録(本件移転登録)がされているが、被告P1から原告に対 する専用使用権許諾契約に係る登録はされていない(甲5)。 (4) 宗家への事業譲渡原告は、平成30年12月23日、宗家に対し、1億8000万円で、本件商標権を含む本件事業を譲渡する旨を合意した(甲7。以下「甲7事業譲渡」という。)。 3 争点(1) 本件移転登録は、被告P1と被告P2及び被告総本舗の合意に基づくものか(争点1。被告P2及び被告総本舗の抗弁、主位的請求に対する被告P1の抗弁)(2) 甲7事業譲渡により、原告は専用使用権設定登録手続を求める地位を喪失し たか(争点2。被告P2及び被告総本舗の抗弁、主位的請求に対する被告P1の抗弁)(3) 損害の発生及びその額(争点3。予備的請求に係る争点)第3 争点に関 登録手続を求める地位を喪失し たか(争点2。被告P2及び被告総本舗の抗弁、主位的請求に対する被告P1の抗弁)(3) 損害の発生及びその額(争点3。予備的請求に係る争点)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(本件移転登録は、被告P1と被告P2及び被告総本舗の合意に基づく ものか)について【被告P2の主張】被告P2は、平成29年4月頃、被告P1側から、本件商標権その他の商標権について、被告P1側、被告総本舗及び被告P2側の3者で共有化を図るため、被告P1の持分を被告P2側に一部譲渡したいとの申入れを受け、被告P2及び 被告総本舗は、同月10日、被告P1から、本件商標権その他の商標権の一部譲渡を受け、これに基づき、本件移転登録をした。 したがって、本件移転登録は、被告P1と被告P2の合意に基づくものである。 【被告総本舗の主張】被告らにおいて本件商標権を共有化する計画に基づき、被告総本舗は、被告P 1から、その持分の一部譲渡を受け、これに基づき、本件移転登録をした。 したがって、本件移転登録は、被告P1と被告総本舗の合意に基づくものである。 【被告P1の主張】本件商標権その他の商標権の商標権者であったP5は、本件商標権等がP6家以外の第三者に渡ることを避けること、及びP5の破産手続等において否認され るリスクを軽減することを目的として、本件商標権等をいったん原告に譲渡した上で、被告P1に譲渡し、その後P6家の共有とする計画を立てた。本件移転登録は、同計画を実行したものであるから、被告P1と被告P2及び被告総本舗の合意に基づくものであることは当然である。 【原告の主張】 原告は、本件移転登録に先立って、被告P1から、被告P2及び被告総本舗に対し、本 のであるから、被告P1と被告P2及び被告総本舗の合意に基づくものであることは当然である。 【原告の主張】 原告は、本件移転登録に先立って、被告P1から、被告P2及び被告総本舗に対し、本件商標権を一部譲渡することを一切聞かされていなかったし、原告と被告P1間の専用使用権許諾契約では本件譲渡禁止特約が合意されていたことから、被告P1がこれに反して本件商標権を譲渡することなどありえない。 したがって、本件移転登録は、被告P1の関与なく行われたものであり、被告 P1と被告P2及び被告総本舗の合意に基づくものではない。 2 争点2(甲7事業譲渡により、原告は専用使用権設定登録手続を求める地位を喪失したか)について【被告らの主張】原告は、平成30年12月23日、宗家に対し、甲7事業譲渡によって本件事 業を譲渡したことにより、被告P1に対する本件商標権の専用使用権設定登録手続を求める地位を喪失した。 【原告の主張】甲7事業譲渡においては、本件商標権の専用使用権に含まれる副次的な権利のうち、被告らに対して本件商標権の専用使用権設定登録手続を求める権利が依然 として原告に留保されている。 仮に、このような解釈がとれないとしても、専用使用権許諾契約に基づく債権的請求として、原告が被告らに対して本件商標権の専用使用権の設定登録を求めることができると考えられる。 したがって、原告は、被告らに対して、本件商標権の専用使用権設定登録手続を求める地位を有している。 3 争点3(損害の発生及びその額)について【原告の主張】専用使用権許諾契約が締結されたが同契約に基づく登録がされていない場合であっても、商標権者と使用許諾を受けている者との間には独占的通常使用権が存在 生及びその額)について【原告の主張】専用使用権許諾契約が締結されたが同契約に基づく登録がされていない場合であっても、商標権者と使用許諾を受けている者との間には独占的通常使用権が存在しているものと解される。それゆえ、原告は、少なくとも平成28年7月15 日以降、本件商標権に関する独占的通常使用権を有しており、原告と被告P1以外の第三者は本件商標権を使用することができなかった。したがって、原告は、本来であれば、本件商標権を障害無く使用して本件事業を行うことが可能であったのであり、これを踏まえた原告の本件事業の価値は、少なく見積もっても2億5000万円であった。 しかし、被告P1が被告P2及び被告総本舗に対し本件商標権を一部譲渡して本件移転登録をしたことにより、原告は、被告P1との間の専用使用権を被告P2及び被告総本舗に対抗することができなくなり、被告P2及び被告総本舗から本件商標権の使用差止め請求を受けた場合、これを甘受せざるを得ない状況に陥った。その結果、原告は、宗家に対して甲7事業譲渡を行ったものの、このような 状況を踏まえ、本来の本件事業の価値より低い1億8000万円で売却せざるを得なかった。 以上から、原告は、被告P1の債務不履行により前記の差額である7000万円の損害を被った。 【被告P1の主張】 (1) 本件移転登録が債務不履行に当たるとの原告の主張は争う。本件移転登録は、 原告の承諾のもとに行われたから、被告P1の債務不履行にはならない。 (2) 原告の損害の主張について原告の本来の本件事業の価値が2億5000万円であることを裏付ける根拠はないし、被告らは、本件商標権についての先使用権を有しているから、そもそも、原告が本件商標権を独占的に使用することが いて原告の本来の本件事業の価値が2億5000万円であることを裏付ける根拠はないし、被告らは、本件商標権についての先使用権を有しているから、そもそも、原告が本件商標権を独占的に使用することができる状況にはなかった。 また、被告P2及び被告総本舗は、被告P1が原告に対して本件商標権その他の商標に関する通常使用権を許諾することに同意しているから、原告は、被告P2及び被告総本舗に対して本件商標権の通常使用権を対抗することができる。 仮に、本件移転登録により、原告が本件商標権を適法に使用できない恐れが生じたとしても、これによって当然に本件事業の継続が困難となり、甲7事業 譲渡を余儀なくされることにはならないから、甲7事業譲渡は「特別の事情」(民法416条2項)に当たるところ、被告P1にとって、原告が第三者に対して本件事業を譲渡することは、何ら予見できることではなかった。 以上から、原告が主張する7000万円の損害と被告P1の債務不履行との間には、相当因果関係がない。また、被告P1はこのような損害の発生につき 予見もできなかった。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(本件移転登録は、被告P1と被告P2及び被告総本舗の合意に基づくものか)について(1) 証拠(甲5、乙13~15、丙1、証人P7)及び弁論の全趣旨によれば、 被告P1は、平成29年4月10日、被告P2及び被告総本舗に対し、本件商標権等の持分3分の1をそれぞれ無償で譲渡する旨の合意を書面をもって行い(丙1)、被告P2及び被告総本舗は、同合意に基づき、同月19日、本件移転登録を行ったものと認められる。 この点に関する被告らの主張は、理由がある。 (2) 原告は、仮に、本件移転登録が被告P1の意思に基づくものであったとして 、同月19日、本件移転登録を行ったものと認められる。 この点に関する被告らの主張は、理由がある。 (2) 原告は、仮に、本件移転登録が被告P1の意思に基づくものであったとして も、本件移転登録は、物権的な効力を有する本件譲渡禁止特約に反するものであって絶対的に無効である旨を主張する。しかし、商標権の設定登録は商標権の発生要件であり(商標法18条1項)、専用使用権の登録もまた効力発生要件であること(同30条4項、特許法98条1項2号)からすると、登録を伴わない契約当事者間の単なる合意が本件移転登録の効力に優越するとは考え難い。 原告の前記主張は採用できない。 (3) 以上から、本件移転登録は、被告P1と被告P2及び被告総本舗の合意に基づくものと認められる。したがって、被告P1が被告P2及び被告総本舗に対して本件移転登録の抹消を求める法的根拠はなく、原告の被告P2及び被告総本舗に対する請求は、いずれも理由がない。 また、本件移転登録により本件商標権は被告らにおいて共有される状態となったところ、被告P2及び被告総本舗が、本件商標権につき原告に専用使用権を設定することについて承諾する見込みはない(弁論の全趣旨)から、専用使用権許諾契約に基づく、被告P1の原告に対する専用使用権設定登録手続債務は社会通念上履行不能となったというべきである。 したがって、原告の被告P1に対する主位的請求もまた理由がない。 2 争点3(損害の発生及びその額)について(1) 前記1によれば、被告P1の原告に対する専用使用権設定登録手続債務は、履行不能となったものと認められ、被告P1に帰責事由がない場合は格別、原告は被告P1に対し損害賠償請求ができるから、これによる原告の損害につい て検討する。 専用使用権設定登録手続債務は、履行不能となったものと認められ、被告P1に帰責事由がない場合は格別、原告は被告P1に対し損害賠償請求ができるから、これによる原告の損害につい て検討する。 (2) 原告は、専用使用権許諾契約により第三者が本件商標権を使用することができない状況にあったことを踏まえた原告の本件事業の価値が2億5000万円を下らなかったことを前提として、被告P1の債務不履行により、原告が被告P1との間の専用使用権を被告P2及び被告総本舗に対抗することができなく なった結果、原告の本件事業の価値が1億8000万円に下落し、その差額7 000万円の損害が発生した旨を主張し、原告の本件事業の本来の価値が2億5000万円であったことを裏付ける証拠として「千鳥屋総本家の事業価値に関する報告書」(甲6)を提出する。 しかし、前提事実(1)ア並びに証拠(乙3)及び弁論の全趣旨によれば、P4及びP5ら兄弟は、昭和25年頃から、本件商標権と指定商品や標章を共通に する「千鳥屋」等の商標権を共有し、同人らや被告総本舗を含む各関連法人等において、継続的に洋和菓子の製造、小売り等の事業に使用していたことが認められる。これに加え、原告は、被告らが本件商標権に係る先使用権を有していることを積極的に争っていないことに照らすと、仮に、原告が専用使用権許諾契約に基づく登録をしたとしても、少なくとも、被告P2及び被告総本舗は 本件商標権を使用することができたと考えられるのであって、原告が本件商標権を独占的に使用できることはなかったと認められる。一方、証拠(丙1)及び弁論の全趣旨によれば、被告P2及び被告総本舗は、被告P1との本件商標権等の譲渡契約において、被告P1が原告に対し本件商標権等の通常使用を許諾することに同意 ったと認められる。一方、証拠(丙1)及び弁論の全趣旨によれば、被告P2及び被告総本舗は、被告P1との本件商標権等の譲渡契約において、被告P1が原告に対し本件商標権等の通常使用を許諾することに同意していることが認められ、本件移転登録後においても、原告 は、本件商標権の通常使用を許諾され得たことが推認され、これを覆す事情はない。そうすると、本件移転登録の前後を通して、原告の本件商標権の使用権に関する具体的な利益状況について変化があったとは認められず、その他、これを認めるに足りる具体的な事情はない。 そうすると、本件移転登録によって、原告が何らかの損害を被ったとはいい 難いというべきである。 なお、前記報告書(甲6)は、原告代表者が作成したものであり、原告代表者自身が税理士資格を有することを考慮にいれても、その中立性に疑義がある上に、推論の客観的根拠や証拠は何ら示されておらずその合理性を検討することはおよそ不可能な資料であることに加え、そもそも原告が本件商標権を独占 的に使用できることを考慮して作成されたものではないことは当事者間に争い がないから、第三者が本件商標権を使用することができない状況にあったことを踏まえた原告の本件事業の価値が2億5000万円であったことを裏付ける証拠にはなりようがない。この点を措くとしても、原告は、本件移転登録前後における、原告の本件事業全体の価値を比較して損害の発生等の主張をするにとどまり、原告が本件商標権を独占的に使用できる場合とできない場合につい ての具体的な利益状況の変化に関して何ら主張をしないから、原告の主張を前提としても、本件移転登録(原告の主張する被告P1の債務不履行)と相当因果関係のある損害が発生したこと自体が不明といわざるを得ない。 以 況の変化に関して何ら主張をしないから、原告の主張を前提としても、本件移転登録(原告の主張する被告P1の債務不履行)と相当因果関係のある損害が発生したこと自体が不明といわざるを得ない。 以上から、被告P1の債務不履行によって、原告に損害が発生したとは認めるに足りず、原告の被告P1に対する予備的請求は理由がない。 3 原告による錯誤無効の主張について原告は、被告P1が原告に対して本件商標権その他の商標権を使用許諾する意思がなかったにもかかわらず、その意思があるものと誤信して、被告P1に対し本件商標権その他の商標権を譲渡したことから、同譲渡契約は錯誤により無効であり、本件移転登録も無効である旨を主張する。しかし、当裁判所は、当該主張 は、時機に後れた攻撃方法として却下することとする(民訴法157条1項)。 すなわち、本件の審理経過によると、当裁判所は、令和4年4月14日の書面による準備手続中の協議において、原告に対し、甲7事業譲渡を前提とした場合、被告P2及び被告総本舗に対する本件移転登録の抹消登録手続請求、及び被告P1に対する本件商標権の専用使用権設定登録手続請求の当否の検討を求め、また、 同年5月12日には原告主張の損害の根拠等についての検討を求めたところ、原告は、これらに応答することなく、同年7月15日の協議において、和解案を提示する旨の回答をした。当裁判所は、原告が和解協議と並行して主張立証を進めない場合、原告の将来の主張立証を時機に後れたものとして扱う可能性がある旨を告知したが、原告は、この間主張立証を進めることをしなかった。その後、原 告において和解案が提示されるなどして和解協議が行われたが和解に至らなかっ たため審理が再開され、令和5年5月16日の協議において、裁判所及 主張立証を進めることをしなかった。その後、原 告において和解案が提示されるなどして和解協議が行われたが和解に至らなかっ たため審理が再開され、令和5年5月16日の協議において、裁判所及び当事者双方は、争点整理手続の結果を踏まえた立証計画を策定し、尋問期日が指定された。上記錯誤無効の主張は、尋問期日の5日前である同月31日付けの原告準備書面(8)においてされたものである(以上につき、当裁判所に顕著な事実)。 当該錯誤無効の主張は、原告において、被告P1が令和3年5月12日付けの 準備書面(2)において実質的な反論を行った当初から主張することが可能であったにもかかわらず、争点整理手続終了後の尋問期日直前になって初めてされたものであって、前記和解協議に至る経緯等も併せて考慮すると、訴訟上の信義則に反し、また提出遅延につき原告に重過失があることは明らかである。また、仮に当該錯誤無効の主張を許した場合、新たに原告の誤信の有無、内容等についての 審理を行う必要があり、そのために相当な期間を要することは明らかであって、訴訟の完結を遅滞させることもまた明白である。 4 なお、一件記録によると、甲7事業譲渡により、本件商標権に係る権利(本件の訴訟物である専用使用権設定登録手続請求)自体も宗家に帰属するものと認められる(甲7事業譲渡の契約書11条参照)。このような状況で原告が本件の訴訟 追行を担うことは、訴訟信託(信託法10条)に当たる疑いがあるが、訴訟の経緯及び被告らの本案判決を受ける利益も考慮し、問題の指摘にとどめることとする。 第5 結論よって、その余の争点について判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由 がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 第5 結論 よって、その余の争点について判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官 松阿彌隆 裁判官 阿波野右起 裁判官 峯健一郎 (別紙)商標権目録 登録番号商標登録第5820605号登録日平成28年1月22日 商品及び役務の区分第35類指定役務飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供商標 以上
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