平成26(ワ)2018 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成28年3月30日 大阪地方裁判所
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判決文本文19,904 文字)

主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求被告らは,原告に対し,連帯して,1100万円及びこれに対する平成23年10月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,大阪府知事を務めていた原告が,被告株式会社Aの発行する月刊誌に,被告Bの執筆した,原告の実父である訴外C及び叔父である訴外Dが暴力団組員であったことを記載した記事(以下「本件記事」という。)が掲載されたことにより,原告の名誉が毀損され,また,プライバシーも侵害された旨主張して,被告らに対し,民法719条に基づき,慰謝料等1100万円及びこれに対する本件雑誌の発売日である平成23年10月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 1 前提となる事実(当事者間に争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者等ア原告は,平成23年10月18日当時,大阪府知事を務めていた者であり,次期大阪市長選挙に立候補する意向を表明していた。 イ被告株式会社Aは,雑誌等の発行及び販売を目的とする株式会社であり,月刊誌「●」を発行,販売している。 ウ被告Bは,ノンフィクション作家であり,本件記事の執筆者である。 エ証人Eは,「●」の編集者兼記者であり,本件記事の編集および取材を担当していた者である。 (2) 平成23年10月18日,被告株式会社Aは,被告Bが執筆した本件 記事を掲載した「●」の同年11月号(以下「本件雑誌」という。)を発売した(発行部数3万1500部)。 (3) 本件記事の内容ア本件雑誌の32頁から41頁には,「特集『最も危険な政治家』 記事を掲載した「●」の同年11月号(以下「本件雑誌」という。)を発売した(発行部数3万1500部)。 (3) 本件記事の内容ア本件雑誌の32頁から41頁には,「特集『最も危険な政治家』原告研究孤独なポピュリストの原点」と題し,原告についての特集記事(本件記事)が掲載されている。(甲1,2)イ本件記事には,上記アの表題に加え,そのすぐ横に「死亡した実父は暴力団組員だった―。これまで一度も書かれなかった『原告の真実』。」との副題が付されており,本文には,小見出しのない冒頭部分の記載に加え,①「甲地区の原告家」,②「父親の稼業」,③「乙地区の府営住宅で」,④「過去との決別」,⑤「政治家と弁護士の『資質』」,⑥「大博打」と題する小見出しと,各小見出しに対応する記載が存在し,以下のとおり,C及びDに関する記載がある。(甲2)(ア) Cに関する記載(以下,上記副題中の「死亡した実父は暴力団組員だった」という記載と併せて「本件実父部分」という。)a 上記②の「父親の稼業」と題する小見出しに対応する本文中に,Cのことを知る地元建設会社役員の話として,「あいつは丙組のヤクザで,地元でも知られた男や。モンモン(刺青)も入れてた。見かけはごっつい感じで,知事とは全然似てへん。同じムラ(路地)に住むT子と所帯もってたけど,このT子も女だてらに刺青入れた極道やった」と記載されている。 b 上記小見出しに対応する本文中に,Dの話として,「アニキが入ってたんは丙組やない,丁組や。わしも入っとったけど,今はもう解散してない」と記載されている。 c 上記小見出しに対応する本文中に,被告Bによる説明として,「丁組は博徒系のヤクザだ。」と記載されている。 (イ) Dに関する記載(以下「本件叔父部分」という。) c 上記小見出しに対応する本文中に,被告Bによる説明として,「丁組は博徒系のヤクザだ。」と記載されている。 (イ) Dに関する記載(以下「本件叔父部分」という。)a 上記②の「父親の稼業」と題する小見出しに対応する本文中に,Dの話として,「アニキが入ってたんは丙組やない,丁組や。わしも入っとったけど,今はもう解散してない」と記載されている。 b 上記⑤の「政治家と弁護士の『資質』」と題する小見出しに対応する本文中に,Dが,弁護士となった原告に対し,「なんかあったらワシの名刺みせい」と言ったとの記載がある。 2 争点及び当事者の主張本件の争点は,①本件実父部分による名誉棄損に係る被告らの共同不法行為責任の成否(具体的には,本件実父部分が原告の名誉を棄損するか,違法性が阻却されるか等。争点1),②本件叔父部分による名誉棄損に係る被告らの共同不法行為責任の成否(具体的には,本件叔父部分が原告の名誉を棄損するか,違法性が阻却されるか等。争点2),③本件実父部分によるプライバシー侵害に係る被告らの共同不法行為責任の成否(具体的には,本件実父部分が原告のプライバシーを侵害するか,違法性が阻却されるか。争点3),④本件叔父部分によるプライバシー侵害に係る被告らの共同不法行為責任の成否(具体的には,本件叔父部分が原告のプライバシーを侵害するか,違法性が阻却されるか。争点4),⑤上記①~④の名誉毀損・プライバシー侵害により原告が被った損害の有無及びその額(争点5)であり,これらについての当事者の主張は以下のとおりである。 (1) 争点1(本件実父部分による名誉棄損に係る共同不法行為責任の成否)について(原告の主張)ア摘示事実が原告の名誉を棄損するものであること暴力団の撲滅が おりである。 (1) 争点1(本件実父部分による名誉棄損に係る共同不法行為責任の成否)について(原告の主張)ア摘示事実が原告の名誉を棄損するものであること暴力団の撲滅が推進されている我が国においては,暴力団と関係があるという疑念が生じれば,その者の社会的評価は大きく損なわれるところ, 本件実父部分は,Cが暴力団組員であったという事実を摘示し,一般の読者に対し,原告が暴力団と関係を有しているという印象や,原告がその血筋から反社会的・反道徳的な性格を受け継いでいるという印象を与えて原告の社会的評価を大きく損なうものであるから,原告の名誉を棄損するものである。 なお,暴力団との関係を断つことは非常に難しいものであると一般に理解されているから,本件記事に原告が母子家庭で育ったこと等が記載されていても,本件記事を読んだ一般の読者は,原告が現在も暴力団と関係を有していると理解することは明らかである。 イ違法性が阻却されないこと等(ア) 摘示事実が公共の利害に関する事実に当たらないこと原告は,幼い頃にCと生き別れており,Cから何らの影響も受けずに育っており,Cのことをほとんど記憶していないから,Cが暴力団組員であったという事実は,単に生物学上の父親が反社会勢力の一員であったという以上の意味はなく,原告の政治家としての能力・資質とは何ら関連性がないものであるから,公共の利害に関する事実に当たらない(暴力団組員であった者と血縁関係があることは,上記のとおり政治家の能力等と何ら関連性がないから,これを有権者に提供されるべき事実であるとする被告らの主張は失当である。)。 そもそも,原告の人物像を理解するという目的は,原告とCとの関係性を摘示する理由にはなり得ても,Cが暴力団組員であったという事実を摘 提供されるべき事実であるとする被告らの主張は失当である。)。 そもそも,原告の人物像を理解するという目的は,原告とCとの関係性を摘示する理由にはなり得ても,Cが暴力団組員であったという事実を摘示する理由にはなり得ないものである。 (イ) 公益目的でされたものではないこと被告らは,原告とCとの関係が上記(ア)のとおり希薄であることを把握していたにもかかわらず,Cが暴力団組員であったという事実を摘示している。また,本件記事には原告に対して批判的・攻撃的な意見を 有する者の供述のみが記載されており,原告に対する肯定的な意見は,取材過程で得られたものであっても省略されているし,Cについて最もよく知る立場にある,Cの元妻(原告の母)証人Fが,Cが暴力団組員であったことを否定していることは一切記載されていない。 これらのことからすると,Cが暴力団組員であったという事実の摘示は,原告の社会的評価を失墜させる目的で行われたものであるというほかなく,専ら公益を図る目的でされたものであるということはできない。 (ウ) 摘示事実の真実性が認められないこと等Cが暴力団組員であったことは否認する。 また,本件記事については,本件雑誌の発売に間に合わせるため,ずさんな取材しか行われていない(Cが暴力団組員であった旨供述したDに対する取材は,1回,それもわずか30分足らずの時間しか行われておらず,Dの語る事実が真実か否かを確認するための質問もされていない。また,Dが所属していたとされる暴力団の関係者に対する取材も行われていないし,Cをよく知る立場にあるFや,Cの実妹に対する取材も行われていない。)から,Cが暴力団組員であったという事実を真実であると信じたことについて相当な理由があったということはできない。 (エ) 以上によれ 立場にあるFや,Cの実妹に対する取材も行われていない。)から,Cが暴力団組員であったという事実を真実であると信じたことについて相当な理由があったということはできない。 (エ) 以上によれば,本件実父部分による名誉棄損については,違法性は阻却されないし,被告らに故意・過失がないということもできない。 ウよって,本件実父部分の執筆及びこれを掲載した本件雑誌の販売行為について,名誉毀損に係る被告らの共同不法行為責任が成立する。 (被告らの主張)ア摘示事実が原告の名誉を棄損するものではないこと本件記事には,原告が母子家庭で育ったこと,Cが既に死亡していること及びCが所属していた暴力団が既に解散していることが記載されているから,Cが暴力団組員であったという事実の摘示は,一般の読者に対し, 原告が暴力団と関係を有しているという印象を与えるものではない。むしろ,原告が弁護士や政治家として成功を収めたこと等が本件記事に記載されていることに照らせば,上記事実の摘示は,恵まれた環境にはなかった原告が努力して現在の地位を築いたという肯定的な評価につながり得るものである。 したがって,本件実父部分は,原告の名誉を棄損するものではない。 イ違法性が阻却されること等(ア) 摘示事実が公共の利害に関する事実に当たることa 原告の人格形成に影響を与えた事実を明らかにすべきこと政治家の生立ちや家族の経歴等,その人格形成に影響を与えた事実は,政治家の人物像を読み解き,政治家が国民の代表として行う政策や政治的判断を予想するための資料となるものであるから,広く国民に提供されるべきものであり,公共の利害に関する事実に当たるというべきである(このことは,著名な政治家の人物像に迫ろうとする多くの人物ルポにおいて,当該 するための資料となるものであるから,広く国民に提供されるべきものであり,公共の利害に関する事実に当たるというべきである(このことは,著名な政治家の人物像に迫ろうとする多くの人物ルポにおいて,当該政治家の家族の経歴等について触れられていることからも明らかである。)。 そうであるところ,原告が6歳頃までCと共に生活していたことに照らせば,Cが暴力団組員であったという事実が政治家である原告の人格形成に影響を与えていることは明らかであるから,上記事実は公共の利害に関する事実に当たる。 b 親族が暴力団組員であったことを明らかにすべきこと地方自治体の首長は,当該自治体の対外的な印象を左右する存在であるから,有権者の中には,親族が暴力団組員であった者は首長としてふさわしくないと考える者も存在する。したがって,大阪府知事であり,次期大阪市長選挙に立候補する意向を表明していた原告の実父が暴力団組員であったという事実は,Cが原告の人格形成に影響を与 えているか否かに関わらず,選挙の際に有権者の判断材料となる事実であるから,公共の利害に関する事実に当たる。 (イ) 公益目的でされたものであることCが暴力団組員であったという事実の摘示は,国民的関心が寄せられていた原告の人物像を理解するために不可欠な要素を読者に提供するという意図・目的でされたものであり,弟としてCをよく知るDや,Cの地元の住民等に対する綿密な取材・事実調査に基づくものであるから,専ら公益を図る目的でされたものである。 原告は,上記事実の摘示は原告の社会的信用を失墜させる目的でされたものである旨主張するが,被告らは,原告の人物像に迫り,その情報を読者に提供する目的で,上記のとおり十分な取材に基づき上記事実を摘示したものであり,その目的の正当性は,本件記事が させる目的でされたものである旨主張するが,被告らは,原告の人物像に迫り,その情報を読者に提供する目的で,上記のとおり十分な取材に基づき上記事実を摘示したものであり,その目的の正当性は,本件記事が,複数の出版社及び新聞社の雑誌編集者らがその年に最も質が高く,社会に大きな影響を与えた記事に贈る雑誌ジャーナリズム大賞を受賞していることに端的に表れている。 (ウ) 摘示事実が真実であること等Dは,被告B及びEに対してCが暴力団に所属していた旨供述しているところ,DがCの弟であってCをよく知る人物であること,Dが原告に敵対的な立場にはなく虚偽の証言をするとは考え難いこと,Cの地元の関係者やFと婚姻する前のCの元妻の弟からもCが暴力団組員であった旨の供述が得られていること,本件記事掲載後,Dから事実と異なる記事が掲載されたという抗議等はなく,原告も本件記事の内容をほぼ事実である旨発言していること等に照らせば,上記Dの供述は信用することができるものであり,Cが暴力団組員であったことは真実である。 また,被告B及びEがDや,Cの地元の住民等に直接取材を行い,Cが暴力団組員であったという供述を得ていること,原告やFに対しても 取材を行うために手を尽くしていたことに照らせば,仮にCが暴力団組員ではなかったとしても,被告らが,Cが暴力団組員であったと信じたことには相当な理由があるというべきである。 (エ) 以上によれば,本件実父部分が仮に原告の名誉を棄損するものであるとしても,違法性が阻却されるか,被告らには故意・過失がないというべきである。 ウよって,本件実父部分の執筆及びこれを掲載した本件雑誌の販売行為については,名誉棄損に係る被告らの共同不法行為責任は成立しない。 (2) 争点2(本件叔父部分による名誉 いうべきである。 ウよって,本件実父部分の執筆及びこれを掲載した本件雑誌の販売行為については,名誉棄損に係る被告らの共同不法行為責任は成立しない。 (2) 争点2(本件叔父部分による名誉棄損に係る共同不法行為責任の成否)について(原告の主張)ア摘示事実が原告の名誉を棄損するものであること本件叔父部分は,Dが暴力団組員であったという事実を摘示するものであり,Dが原告に対して「なんかあったらワシの名刺みせい」と言ったという記載を併せ読めば,原告が暴力団と関係を有し,その力を利用できる立場にあるという印象を与えて原告の社会的評価を大きく損なうものであるから,原告の名誉を棄損するものである。 イ違法性が阻却されないこと等(ア) 摘示事実が公共の利害に関する事実に当たらないこと原告は,Dと小学校高学年以後数度しか会っておらず,Dから何らの影響も受けずに育ったものであるから,Dが暴力団組員であったという事実は,原告の政治家としての能力・資質とは何ら関連性がない事実であり,公共の利害に関する事実に当たらない。 (イ) 公益目的でされたものではないこと被告らは,原告とDとの関係が上記(ア)のとおり希薄であることを把握していたにもかかわらず,Dが暴力団組員であったという事実をあ えて摘示している。また,本件記事は原告に対して批判的・攻撃的な意見を有する者の供述のみが集められている。 これらのことからすると,Dが暴力団組員であったという事実の摘示は,原告の社会的評価を失墜させる目的で行われたものであるというほかなく,専ら公益を図る目的でされたものであるということはできない。 (ウ) 摘示事実の真実性が認められないこと等Dが暴力団組員であったことは否認する。 また,前記(1)(原告の主張)イ(ウ ほかなく,専ら公益を図る目的でされたものであるということはできない。 (ウ) 摘示事実の真実性が認められないこと等Dが暴力団組員であったことは否認する。 また,前記(1)(原告の主張)イ(ウ)記載のとおり,本件記事に関しては,本件雑誌の発売に間に合わせるため,ずさんな取材しか行われていないから,Dが暴力団組員であったことが真実であると信じるについて相当な理由があったということもできない。 (エ) 以上によれば,本件叔父部分による名誉棄損については,違法性は阻却されないし,被告らに故意・過失がないということもできない。 ウよって,本件叔父部分の執筆及びこれを掲載した本件雑誌の販売行為について,名誉毀損に係る被告らの共同不法行為責任が成立する。 (被告らの主張)ア摘示事実が原告の名誉を棄損するものではないこと本件記事には,Dが所属していた暴力団が既に解散していることが記載されているから,Dが暴力団組員であったという事実の摘示は,一般の読者に対して原告が暴力団組員と関係を有しているという印象を与えるものではないし,本件記事の他の記載を併せ読めば,上記摘示事実は,恵まれた環境にはなかった原告が努力して現在の地位を築いたという肯定的な評価につながり得るものである。 したがって,本件叔父部分は,原告の社会的評価を低下させるものではなく,原告の名誉を棄損するものではない。 原告は,Dが「なんかあったらワシの名刺みせい」と言ったという記載 をもって,原告が暴力団と関係を有し,暴力団の力を利用できる立場にあるという印象を与える旨主張するが,当該記載の直後には,「原告は自力で次々と示談を成立,年間五〇〇件ちかい案件をこなし,独立から二年後に現在の事務所に移っている。」と記載されており,原告が,Dの力を借 という印象を与える旨主張するが,当該記載の直後には,「原告は自力で次々と示談を成立,年間五〇〇件ちかい案件をこなし,独立から二年後に現在の事務所に移っている。」と記載されており,原告が,Dの力を借りずに独力で弁護士としての成功を収めたことが明記されているから,原告の上記主張は失当である。 イ違法性が阻却されること等(ア) 摘示事実が公共の利害に関する事実に当たることa 原告は,Cの死後,Fが再婚するまでの間は,Dと交流があった。 また,弁護士になった後も,何か困ったことがあれば見せるようにとDから名刺を渡されているし,大阪府知事に就任した際には政治資金パーティーのパーティー券を購入してもらっている。さらに,原告自身が,大阪府議会において,Dに父親代わりに世話をしてもらった旨述べていた。このように原告とDが密接な関係にあったことに照らせば,Dが暴力団組員であったという事実が原告の人格形成に影響を与えていることは明らかである。 また,Dは,Dが関係する企業の公共事業の受注金額に関して,大阪府議会において,原告との関係が取り上げられた人物であるから,その人物が暴力団組員であったという事実は,有権者に対して明らかにされるべきものである。 したがって,Dが暴力団組員であったという事実は,公共の利害に関する事実に当たる。 b また,前記(1)(被告らの主張)イ(ア)b記載のとおり,地方自治体の首長の親族に暴力団組員であった者がいることは,その者が当該政治家の人格形成に影響を与えているか否かに関わらず,選挙の際に有権者の判断材料となる事実であるから,仮にDが原告の人格形成 に影響を与えていないとしても,Dが暴力団組員であったという事実は,公共の利害に関する事実に当たる。 (イ) 公益目的でされたものであること であるから,仮にDが原告の人格形成 に影響を与えていないとしても,Dが暴力団組員であったという事実は,公共の利害に関する事実に当たる。 (イ) 公益目的でされたものであることDが暴力団組員であったという事実の摘示も,Cに係る事実の摘示と同様,国民的関心が寄せられていた原告の人物像を理解するために不可欠な要素を読者に提供するという意図・目的でされたものであるし,D本人や地元の住民等に対する十分な取材に基づくものであるから,専ら公益を図る目的でされたものである。 (ウ) 摘示事実が真実であること等Dが暴力団組員であったという事実は,D本人が認めている上,地元の住民等からも同様の証言が得られており,真実であることは明らかである。 また,被告B及びEがDやDの関係者に取材を行い,Dが暴力団組員であったという供述を得ていたことに照らせば,被告らが,Dが暴力団組員であったと信じたことには相当な理由があるというべきである。 (エ) 以上によれば,本件叔父部分が仮に原告の名誉を棄損するものであるとしても,違法性が阻却されるか,被告らには故意・過失が認められないというべきである。 ウよって,本件叔父部分の執筆及びこれを掲載した本件雑誌の販売行為については,名誉棄損に係る被告らの共同不法行為責任は成立しない。 (3) 争点3(本件実父部分によるプライバシー侵害に係る共同不法行為責任の成否)について(原告の主張)実父であるCが暴力団組員であったという事実は,一般に知られていない原告の私生活上の事実であり,一般人の感受性を基準として原告の立場に立った場合,公表を欲しない事実である。 そして,前記(1)(原告の主張)イ(ア)記載のとおり,Cが暴力団組員であったという事実が,原告の政 あり,一般人の感受性を基準として原告の立場に立った場合,公表を欲しない事実である。 そして,前記(1)(原告の主張)イ(ア)記載のとおり,Cが暴力団組員であったという事実が,原告の政治家としての能力・資質と何ら関連性を有しないことからすると,Cが暴力団組員であったという事実を公表されない原告の利益は,これを公表する理由に優越するものである。 したがって,本件実父部分の執筆及びこれを掲載した本件雑誌の販売行為について,プライバシー侵害に係る被告らの共同不法行為責任が成立する。 (被告らの主張)社会一般の関心を集める有力な政治家の人物像を理解する資料となる事実を公表することには公共的価値があるというべきところ,Cが暴力団組員であったという事実は,前記(1)(被告らの主張)イ(ア)a記載のとおり,国民的関心が寄せられていた原告の人物像を理解する資料となるものである。 また,同b記載のとおり,親族に暴力団組員であった者がいるということ自体が有権者の判断材料となるものである。したがって,Cが暴力団組員であったという事実を公表する理由は極めて大きいものであった。 これに対し,原告が,大阪府知事選の際に戊地区で育ったことを街頭演説で言及して自らの出自を政治的に利用していたことや,本件記事について笑い飛ばす余裕を見せたと報じられていることからすれば,上記事実を公表されない原告の利益は小さいものである。 よって,Cが暴力団組員であったという事実を公表する理由は,これを公表されない原告の利益に優越するものであるから,本件実父部分の執筆及びこれを掲載した本件雑誌の販売行為について,プライバシー侵害に係る被告らの共同不法行為責任は成立しない。 (4) 争点4(本件叔父部分によるプライバシー侵害に係る共同不法行為責任の成否)について( を掲載した本件雑誌の販売行為について,プライバシー侵害に係る被告らの共同不法行為責任は成立しない。 (4) 争点4(本件叔父部分によるプライバシー侵害に係る共同不法行為責任の成否)について(原告の主張)叔父であるDが暴力団組員であったという事実は,一般に知られていない 原告の私生活上の事実であり,一般人の感受性を基準として原告の立場に立った場合,公表を欲しない事実である。 そして,前記(2)(原告の主張)イ(ア)記載のとおり,Dが暴力団組員であったという事実が,原告の政治家としての能力・資質と何ら関連性を有しないことからすると,Dが暴力団組員であったという事実を公表されない原告の利益は,これを公表する理由に優越するものである。 したがって,本件叔父部分の執筆及びこれを掲載した本件雑誌の販売行為について,プライバシー侵害に係る被告らの共同不法行為責任が成立する。 (被告らの主張)原告の人格形成に影響を与えたDが暴力団組員であったという事実は,原告の人物像を理解する資料となるものであるし,親族に暴力団組員であった者がいるということ自体が有権者の判断材料となるものである。また,Dは,原告が弁護士であったときには原告と交流があり,原告が大阪府知事に就任した後も,原告の政治資金パーティーのパーティー券を購入したり,原告が代表を務める政党Gに対して自身の関与する選挙への応援を依頼していた人物であった。したがって,Dが暴力団組員であったことを公表する理由は極めて大きいものであった。 これに対し,原告が,自らの出自を政治的に利用していたことや,本件記事について笑い飛ばす余裕を見せたと報じられていることからすれば,Dが暴力団組員であったことを公表されない原告の利益は小さいものである。 よって,Dが暴力団組員であったという事実 いたことや,本件記事について笑い飛ばす余裕を見せたと報じられていることからすれば,Dが暴力団組員であったことを公表されない原告の利益は小さいものである。 よって,Dが暴力団組員であったという事実を公表する理由は,これを公表されない原告の利益に優越するものであるから,本件叔父部分の執筆及びこれを掲載した本件雑誌の販売行為について,プライバシー侵害に係る被告らの共同不法行為責任は成立しない。 (5) 争点5(損害の有無及びその額)について(原告の主張) 原告は,本件実父部分及び本件叔父部分の執筆及びこれを掲載した本件雑誌の販売により名誉を棄損され,また,プライバシーを侵害され,それにより重大な精神的苦痛を受けたものであり,これに対する慰謝料額は1000万円を下らない。また,弁護士費用として100万円の損害が生じている。 (被告らの主張)上記(原告の主張)は争う。 第3 当裁判所の判断 1 後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) Cと原告との関係等(甲2,3,乙1,証人F)ア Cは,大阪府八尾市甲地区(以下「甲地区」という。)で育ち,Fと婚姻して原告とその妹をもうけたが,原告が6歳頃,Fと別居し,以後,原告は,Fに養育された。 イ Cは,原告が小学校2年生の頃に死亡した。 ウ Fは,原告が中学校2年生の頃に再婚(事実婚)し,その後,原告は,Fとその再婚相手に養育された。 (2) Dと原告との関係等ア Cの実弟であるDは,平成20年5月28日,同年大阪府知事に就任した原告の政治資金パーティーのパーティー券を100万円分購入した。 (乙2,3の1・2)イ平成21年12月及び平成22年3月の大阪府議会において,同議会議 28日,同年大阪府知事に就任した原告の政治資金パーティーのパーティー券を100万円分購入した。 (乙2,3の1・2)イ平成21年12月及び平成22年3月の大阪府議会において,同議会議員から原告に対し,Dが営業活動を行っている建設会社のグループ企業による大阪府の公共事業の受注金額が原告の大阪府知事就任以後大幅に増加したこと等について,Dが原告の叔父であり,上記アのパーティー券を購入している人物であることとの関連性等を追及する質問がされた。(乙3の1・2)ウ Dは,原告が大阪府知事に就任した後,大阪府内の複数の自治体の首長 選挙に関与し,その際,原告や原告が当時代表を務めていた政党Gに対して応援を依頼したが,原告や政党Gはこれに応じなかった。(乙1)(3) 本件記事に係る取材の状況等ア Eは,平成23年8月半ば頃,本件雑誌で原告についての特集を行うことを決め,同月16日,被告Bに対して,原告の人物像,人間性を掘り下げたルポルタージュの執筆を依頼した。(乙20,21,証人E,被告B)イ Eは,上記アの執筆依頼との関係で,同月24日,原告に対し,インタビューか,インタビューができない場合には同行取材をさせてほしい旨申し込んだが,原告はこれに応じなかった。(乙19~21,証人E,被告B)ウ被告B及びEは,同年9月21日,D本人に対してインタビューを行い,同じ頃,分担して,建物が10棟ほどある甲地区の団地を一戸ずつ当たって同団地の住民に取材を行ったほか,Dが出入りしていたとの情報を得た甲地区の建設会社の関係者やDが過去に経営していた会社の関係者等に対しても取材を行った。(乙5,6,7,8の各1・2,20,21,証人E,被告B)エ被告B及びEは,Fに対して取材を行うため,Fの 区の建設会社の関係者やDが過去に経営していた会社の関係者等に対しても取材を行った。(乙5,6,7,8の各1・2,20,21,証人E,被告B)エ被告B及びEは,Fに対して取材を行うため,Fの居住するマンションを訪ねたが,部屋番号や連絡先が分からなかったために上記取材を断念した。(証人E,被告B) 2 争点1(本件実父部分による名誉棄損に係る共同不法行為責任の成否)について(1) 名誉棄損該当性名誉を毀損するとは,摘示された事実が人の社会的評価を低下させることであり,記事の内容が名誉毀損に当たるかどうかは,一般読者の普通の注意と読み方を基準として解釈した意味内容に従う場合,その記事が人の社会的評価を低下させるものと認められるかどうかによって判断されるべきであ る(最高裁昭和31年7月20日第二小法廷判決・民集10巻8号1059頁参照)。 まず,一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば,本件実父部分は,Cが暴力団組員であったという事実を摘示したものであると認められる。 そして,一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば,家族の一員であった者が暴力団組員であったという事実は,当該家族の他の構成員の社会的評価をも低下させるものというべきであるから,Cが暴力団組員であったという事実は,原告の社会的評価を低下させ,原告の名誉を棄損するものであると認められる。 被告らは,本件記事には,原告が母子家庭で育ったことや原告が政治家として成功を収めていること等が記載されているから,Cが暴力団組員であったという事実は,原告の社会的評価を低下させるものではない旨主張する。 しかし,被告らが主張する事情を考慮しても,原告の実父であるCが暴力団組員であったという事実が原告の社会的評価を低下させることは避け という事実は,原告の社会的評価を低下させるものではない旨主張する。 しかし,被告らが主張する事情を考慮しても,原告の実父であるCが暴力団組員であったという事実が原告の社会的評価を低下させることは避けることはできないというべきであるから,被告らの上記主張は採用することができない。 (2) 違法性阻却等事実を摘示することにより行われた名誉毀損については,①その行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,②その目的が専ら公益を図ることにあった場合に,③摘示された事実がその重要な部分について真実であることの証明があったときには,上記行為には違法性がなく,仮に上記証明がないときにも,行為者において上記事実の重要な部分を真実と信ずるについて相当の理由があれば,その故意・過失は否定され,いずれにせよ民事上の不法行為は成立しないと解される(最高裁昭和41年6月23日第一小法廷判決・民集20巻5号1118頁参照)。以下,上記①~③の違法性阻却事由の存否 等について,検討する。 ア公共の利害に関する事実(ア) 公務員である政治家は全体の奉仕者であり,これを選定・罷免することは国民固有の権利である(憲法15条)から,当該政治家の適性・能力・資質を判断することに資する事実は,公共の利害に関する事実に当たるというべきである。そして,政治家の適性等はその人物像を含む幅広い事情から判断されるべきものであるから,当該政治家の人格形成に影響を及ぼし得る事実は,当該政治家の人物像を明らかにするための事実として,公共の利害に関する事実に当たると解すべきである。 そうであるところ,Cが,原告が6歳頃までは原告と同居し,日常的に原告の世話をしており(証人F),箸を投げた原告を殴打したこともある(甲2,乙1,18)など,父親として原告の養育に関与していた 。 そうであるところ,Cが,原告が6歳頃までは原告と同居し,日常的に原告の世話をしており(証人F),箸を投げた原告を殴打したこともある(甲2,乙1,18)など,父親として原告の養育に関与していたことからすれば,その後,Cは,原告と別居し,原告が小学校2年生の頃に死亡していることを考慮しても,Cが暴力団組員であったという事実は,原告の人格形成に影響を及ぼし得る事実であるといわざるを得ない。 また,証拠(乙1,証人F)によれば,原告は,Cの死後もFが再婚するまで(原告が中学2年生の頃まで)はCの命日等にCの実家を訪れており,そのような折に,周囲の人間から,Cが暴力団関係者であったことを聞いていたことが認められ,生育過程で実父が暴力団関係者であったことを認識していたことも,その人格形成に影響を及ぼし得るものと考えられ,Cが暴力団組員であったという事実が原告の人格形成に影響を及ぼし得る事実であることは否定し難い。 したがって,Cが暴力団組員であったという事実は,原告の人物像を明らかにし,原告の政治家としての適性等を判断することに資する事実というべきであり,公共の利害に関する事実に当たるものと認められる。 (イ) 原告の主張について a 原告は,原告がCから何らの影響も受けずに育っており,Cのことをほとんど記憶していないから,Cが暴力団組員であったという事実は,原告の政治家としての適性等とは何ら関係がない旨主張する。しかし,上記(ア)のとおり,Cが原告の養育に関与していたことや,原告がその生育過程でCが暴力団関係者であったことを認識していたことからすれば,原告がCから何らの影響も受けずに育ったということはできないし,記憶の有無と人格形成への影響の有無は直ちには関連しないものであるから,Cについての記憶がないことをも とを認識していたことからすれば,原告がCから何らの影響も受けずに育ったということはできないし,記憶の有無と人格形成への影響の有無は直ちには関連しないものであるから,Cについての記憶がないことをもって,Cが暴力団組員であったという事実が原告の人格形成に影響を及ぼし得る事実ではないということはできない。原告の上記主張は採用することができない。 b また,原告は,原告の人物像を理解するという目的は,原告とCとの関係性を摘示する理由にはなり得ても,Cが暴力団組員であったという事実を摘示する理由にはなり得ない旨主張する。しかし,Cが暴力団組員であったという事実が,生育過程でこれを認識していた原告の人格形成に影響を及ぼし得る事実であることは上記(ア)のとおりであるし,原告の養育に関与していたCについて,暴力団組員であったことを含むその人物像を摘示することは,Cが原告の人格形成に与えた影響の内容や程度を明らかにする上で相応の意義を有するものというべきであるから,原告の上記主張は採用することができない。 イ公益目的前記ア(ア)のとおり,政治家の適性等を判断することに資する事実は,公共の利害に関する事実に当たると認められるから,そのような事実を提供する目的でされた事実の摘示については公益目的が認められるというべきである。 そうであるところ,証拠(乙19~21,証人E,被告B)によれば, 被告らは,原告の人物像,人間性に影響を与えた事実を明らかにすることで,原告の政治家としての適性等を判断することに資する資料を読者に提供しようという意図・目的で本件記事の執筆等を行い,Cが暴力団組員であったという事実を摘示したものであると認められ,本件記事(甲2)の内容自体からもそのような意図・目的を読み取ることができるから,上記 しようという意図・目的で本件記事の執筆等を行い,Cが暴力団組員であったという事実を摘示したものであると認められ,本件記事(甲2)の内容自体からもそのような意図・目的を読み取ることができるから,上記事実の摘示は,専ら公益を図る目的でされたものであると認められる(本件記事が原告の社会的評価を失墜させる目的でされたものであるという原告の主張は採用することができない。)。 なお,原告は,被告らがずさんな取材しか行わずに上記事実を摘示しており,上記事実の摘示は専ら公益を図るためにされたものであるということはできない旨主張するが,前記認定のとおり,被告B及びEが,Dや甲地区の団地の住民等に取材を行い,原告やFに対しても取材を行おうと試みていたことに照らせば,被告らの取材がずさんなものであったということはできない。原告の上記主張は採用することができない。 ウ真実性等(ア) Cの弟であるDが,DとCが丁組に所属していた旨供述しており(甲2,乙5,6,20,21,証人E,被告B),Dにおいてあえて虚偽の事実を述べる動機,事情もうかがえず,丁組が暴力団であること(甲2,乙16,被告B)に照らせば,Cが暴力団組員であったという事実は真実であると認められる。 原告は,Dは原告が選挙への協力依頼に応じなかったことについて恨みを抱いており,Dには原告に不利な虚偽の供述をする動機があるから,Dの上記供述は信用することができない旨主張する。しかし,Dが,仮に原告に対して何らかの不満を抱いていたとしても,自身も暴力団組員であったという自らの社会的地位に重大な悪影響を及ぼし得る事実に言及してまで虚偽の供述をするとは考え難いから,原告の上記主張は採用 することができない。 Fは,Cが暴力団組員ではなかった旨,ま の社会的地位に重大な悪影響を及ぼし得る事実に言及してまで虚偽の供述をするとは考え難いから,原告の上記主張は採用 することができない。 Fは,Cが暴力団組員ではなかった旨,また,Dの妹から,同人がDに確認したところでは,Dは,被告B及びEによる取材の際,自身やCが暴力団組員であったとは話していないと答えたと聞いている旨証言し,Fの陳述書(甲3)にも同旨の記載がある。しかし,原告とFが親子関係にあることや元夫であるCの行状はF自身の評価の低下にもつながり得るものであることに照らせば,その証言内容の中立性には疑問も残るところであるし,Dの妹の話も伝聞にとどまることからすると,Fの上記証言等は直ちに採用することができない。 (イ) なお,仮にCが暴力団組員ではなかったとしても,被告B及びEが,DからCが暴力団組員であった旨の供述を得ていること,団体Hの甲支部に所属する人物,Dが出入りしていた地元の建設会社の関係者,甲地区の住民等からも同様の供述を得ていること(甲2,乙7,8の各1・2,20,21,証人E,被告B)及び前記認定のとおり,被告B及びEは甲地区の団地を一戸ずつ当たるなどして取材を行っているが,その過程でCが暴力団組員であったことを否定する供述は得られなかったこと(被告B)からすれば,丁組の関係者に対する取材が行われていないこと(被告B)を考慮しても,被告らがCが暴力団組員であったと信じるにつき相当な理由があったというべきである。 (3) 以上によれば,Cが暴力団組員であったという事実の摘示は,原告の名誉を棄損するものではあるが,違法性が阻却されるか,被告らには上記事実の摘示について故意・過失がないというべきであるから,本件実父部分の執筆及びこれを掲載した本件雑誌の販売については,名誉棄損に係る被 を棄損するものではあるが,違法性が阻却されるか,被告らには上記事実の摘示について故意・過失がないというべきであるから,本件実父部分の執筆及びこれを掲載した本件雑誌の販売については,名誉棄損に係る被告らの共同不法行為責任は成立しないというべきである。 3 争点2(本件叔父部分による名誉棄損に係る共同不法行為責任の成否)について (1) 名誉棄損該当性一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば,本件叔父部分は,Dが暴力団組員であったという事実を摘示したものであると認められる。 そして,一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すれば,原告の叔父であるDが暴力団組員であったという事実は,原告の叔父が存命中であり,弁護士になった原告に対して「なんかあったらワシの名刺みせい」と言ったことがある旨の記載をも併せ考慮すれば,原告がDや同人を通じるなどして過去に暴力団と何らかの関係を有したり,本件記事掲載当時も何らかの関係を有しているという印象を読者に与えるものであり,原告の社会的評価を低下させ,原告の名誉を棄損するものであると認められる。 (2) 違法性阻却等ア公共の利害に関する事実前記2(2)ア(ア)のとおり,政治家の適性等を判断することに資する事実は,公共の利害に関する事実に当たるというべきである。 そうであるところ,Dが,大阪府知事に就任した原告に,パーティー券の購入という形で100万円の政治資金を提供していること,大阪府議会において,Dが関係する企業による大阪府の公共事業の受注に関し,原告とDとの関係が取り上げられていること及びDが大阪府内の自治体の複数の首長選挙に関与し,原告が代表を務める政党Gに協力を依頼したことがあることに照らせば,Dは政治家としての原告と一定の関係を有する人物 Dとの関係が取り上げられていること及びDが大阪府内の自治体の複数の首長選挙に関与し,原告が代表を務める政党Gに協力を依頼したことがあることに照らせば,Dは政治家としての原告と一定の関係を有する人物であるというべきであり,そのような人物が暴力団組員であったという事実は,原告の政治家としての適性等を判断することに資する事実であると評価することができる。 したがって,Dが暴力団組員であったという事実は,公共の利害に関する事実に当たると認められる。 イ公益目的 前記2(2)イのとおり,政治家の適性等を判断することに資する事実を提供する目的でされた事実の摘示については公益目的が認められるというべきところ,被告らは,原告の人物像,人間性に影響を与えた事実を明らかにすることで,原告の政治家としての適性等を判断することに資する資料を読者に提供しようという意図・目的で本件記事の執筆等を行い,Dが暴力団組員であったという事実を摘示したものであり(乙19~21,証人E,被告B),本件記事(甲2)の内容自体からもそのような意図・目的を読み取ることができるから,上記事実の摘示は,専ら公益を図る目的でされたものであると認められる。 なお,原告は,被告らがずさんな取材しか行わずに上記事実を摘示しており,上記事実の摘示は専ら公益を図るためにされたものであるということはできない旨主張するが,前記2(2)イのとおり,原告の上記主張は採用することができない。 ウ真実性前記2(2)ウ(ア)のとおり,Dが,自身も丁組に所属していた旨供述しており,Dにおいてあえて虚偽の事実を述べる動機,事情もうかがえず,丁組が暴力団であることに照らせば,Dが暴力団組員であったという事実は真実であると認められる(なお,Dは 丁組に所属していた旨供述しており,Dにおいてあえて虚偽の事実を述べる動機,事情もうかがえず,丁組が暴力団であることに照らせば,Dが暴力団組員であったという事実は真実であると認められる(なお,Dは,Dが弁護士になった原告に対し,「なんかあったらワシの名刺みせい」と言ったと供述しており〔甲2,乙5,6,証人E,被告B〕,その供述に係る本件記事中の摘示事実〔Dが弁護士になった原告に対し,「なんかあったらワシの名刺みせい」と言ったこと〕も,Dがあえて虚偽の事実を述べる理由はうかがわれず,その摘示事実は真実であると認められる。)。 なお,Dの妹からの伝聞内容(同人が,Dから,被告B及びEによる取材の際,自らやCが暴力団組員であったと話してはいないと聞いたこと)に係るFの証言を採用できないことは,前記2(2)ウ(ア)のとおりで ある。 (3) 以上によれば,Dが暴力団組員であったという事実の摘示は,原告の名誉を棄損するものではあるが,違法性が阻却されるというべきであるから,本件叔父部分の執筆及びこれを掲載した本件雑誌の販売については,名誉棄損に係る被告らの共同不法行為責任は成立しないというべきである。 4 争点3(本件実父部分によるプライバシー侵害に係る共同不法行為責任の成否)について実父であるCが暴力団組員であったという事実は,原告の私生活上の事実であって,一般に知られていない事実であり,一般人の感受性を基準として原告の立場に立った場合に公表を欲しない事実であると認められる。 しかし,前記2(2)ア(ア)のとおり,Cが暴力団組員であったという事実は,原告の人物像を明らかにし,原告の政治家としての適性等を判断することに資する事実というべきものであるところ,本件記事掲載当時,原告は大阪府知事を務め,次期大阪市長 が暴力団組員であったという事実は,原告の人物像を明らかにし,原告の政治家としての適性等を判断することに資する事実というべきものであるところ,本件記事掲載当時,原告は大阪府知事を務め,次期大阪市長選挙に立候補する意思を表明しており,国民の高い関心を集める政治家であったこと(乙13,14,20,21,証人E,被告B)を考慮すれば,上記事実を公表する理由は,上記事実を公表されない原告の利益に優越するものというべきである。 そうすると,本件実父部分の執筆及びこれを掲載した本件雑誌の販売は,原告のプライバシーを違法に侵害するものであるということはできないから,これについてプライバシー侵害に係る被告らの共同不法行為責任が成立するということはできない。 5 争点4(本件叔父部分によるプライバシー侵害に係る共同不法行為責任の成否)について叔父であるDが暴力団組員であったという事実も,原告の私生活上の事実であって,一般に知られていない事実であり,一般人の感受性を基準として原告の立場に立った場合に公表を欲しない事実であると認められる。 しかし,前記3(2)アのとおり,Dは政治家としての原告と一定の関係を有する人物であり,そのような人物が暴力団組員であったという事実は,原告の政治家としての適性等を判断することに資する事実というべきものであるところ,前記4のとおり,本件記事掲載当時,原告が国民の高い関心を集める政治家であったことを考慮すれば,上記事実を公表する理由は,上記事実を公表されない原告の利益に優越するものというべきである。 そうすると,本件叔父部分の執筆及びこれを掲載した本件雑誌の販売は,原告のプライバシーを違法に侵害するものであるということはできないから,これについてもプライバシー侵害に係る被告らの共同不法行為責任が成立する 本件叔父部分の執筆及びこれを掲載した本件雑誌の販売は,原告のプライバシーを違法に侵害するものであるということはできないから,これについてもプライバシー侵害に係る被告らの共同不法行為責任が成立するということはできない。 結論以上によれば,原告の被告らに対する請求は,いずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官西田隆裕 裁判官斗谷匡志 裁判官狭間巨勝

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