平成12(ワ)472 賃料減額確認請求

裁判年月日・裁判所
平成16年4月27日 甲府地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-6470.txt

判決文本文19,112 文字)

平成16年4月27日判決言渡同日原本領収裁判所書記官磯野正義平成12年(ワ)第472号賃料減額確認請求事件口頭弁論終結日平成15年9月19日判決当事者の表示 (省略) 主文 1 原告と被告との間の別紙物件目録記載第2の建物の賃貸借契約にかかる賃料は,平成11年8月1日以降月額2890万8000円(消費税別)であることを確認する。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを4分し,その3を原告の,その余を被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求原告と被告との間の別紙物件目録記載第2の建物の賃貸借契約にかかる賃料は,平成11年8月1日以降月額1707万1050円(消費税別)であることを確認する。 第2 事案の概要 1 本件は,被告から,別紙物件目録記載第2の建物のうち,1万5537.33平方メートル(壁芯計算による)を賃借している原告が,現行の賃料が不相当に高額になっていると主張して,借地借家法32条に基づき,賃料減額を請求する旨の意思表示をし,減額請求後の賃料の確認を求めている事案である。 2 争いのない事実等(末尾に証拠等を掲げた事実以外は当事者間に争いがない。)・原告は,主として食料品及び衣料品,日用雑貨品等の販売等を行ういわゆるショッピングセンター等を経営している会社であり,被告は,別紙物件目録記載第2の建物を所有する会社である(弁論の全趣旨)。 ・被告は,原告に対し,昭和62年11月21日,別紙物件目録記載第1の建物(以下「本件建物」という。)のうち,1万5010.00 件目録記載第2の建物を所有する会社である(弁論の全趣旨)。 ・被告は,原告に対し,昭和62年11月21日,別紙物件目録記載第1の建物(以下「本件建物」という。)のうち,1万5010.00平方メートル(壁芯計算による)を以下の約定で賃貸し(以下,「本件賃貸借契約」という。),引き渡した。 期間昭和62年11月21日から昭和82年(平成19年)11月20日使用目的ショッピングセンターとして,店舗,事務所及びこれに付帯する施設として使用賃料 1月当たり2935万1000円・被告は,原告に対し,本件賃貸借契約の賃料に関し,賃料増額請求訴訟(当庁平成3年(ワ)第21号事件)を提起し,平成4年6月10日,要旨下記ア及びイのとおり,訴訟上の和解が成立した。 ア被告と原告は,相互に本件賃貸借契約の賃料が平成2年11月21日以降平成7年6月30日まで,1か月3228万6100円(消費税別・96万8583円)であることを確認する。 イアの賃料は,公租公課の増額,経済情勢の変動,近隣賃料との比較を勘案し,原・被告協議の上,平成7年7月1日以降将来に向かって改定できるものとし,以後3年毎に賃料額の改定を行うものとする。 ・被告は,平成8年7月,本件建物の所在する被告所有の土地の隣に,株式会社Aの経営するショッピングセンターBを本件建物における原告の店舗面積の約2倍の規模の店舗面積で誘致することを決定した。 ・原告は,被告との間で,平成10年9月14日,本件建物を増築した別紙物件目録記載第2の建物(以下「本件増築後建物」という。)のうち,床面積を1万7112.45平方メートル(既存部分は1万6914.08平方メートル,増築部分は1 年9月14日,本件建物を増築した別紙物件目録記載第2の建物(以下「本件増築後建物」という。)のうち,床面積を1万7112.45平方メートル(既存部分は1万6914.08平方メートル,増築部分は198.37平方メートル),ただし,賃料算定面積を1万5537.33平方メートル(壁芯計算による。既存賃借部分は1万5010.00平方メートル,増築部分を含めた追加賃借部分は527.33平方メートル)とし,賃料を1か月3321万4100円(消費税別・166万0705円)に変更する旨合意した(以下「本件賃貸借変更契約」という。甲4)。 ・ Bは,平成10年10月に開店した。 ・原告は,被告に対し,平成11年7月5日,本件増築後建物の賃料を,同年8月1日以降,現行賃料の50パーセントに当たる1か月1660万7050円(消費税別)に減額する旨の意思表示をした。 ・原告は,平成11年12月24日,甲府簡易裁判所に対し,被告を相手方として,賃料減額請求調停を申し立てた(同裁判所平成11年(ユ)第47号事件)が,平成12年7月13日,不成立により終了した。 3 争点・平成10年9月14日の本件賃貸借変更契約において,原告と被告の間で既存賃借部分の賃料改定に関する合意がなされたか。 (原告の主張)原告と被告は,本件賃貸借変更契約において,追加賃借部分の賃料を1か月92万8000円とする(既存建物のうちの追加部分328.96平方メートルについては,既存賃借部分に関する賃料算出基準に従い,1平方メートル当たり2152円,増築部分198.37平方メートルについては,1平方メートル当たり1109円を基に,1000円未満を切り上げて算出。)旨合意したが,既存賃借部分についての賃料改定合意はしなかった。 152円,増築部分198.37平方メートルについては,1平方メートル当たり1109円を基に,1000円未満を切り上げて算出。)旨合意したが,既存賃借部分についての賃料改定合意はしなかった。 上記金額を,既存賃借部分についての平成4年6月10日成立の訴訟上の和解による賃料額(1か月3228万6100円・消費税別)に加えると,本件賃貸借変更契約における1か月当たりの賃料額3321万4100円(消費税別・166万0705円)となるのはそのためである。 (被告の主張)既存賃借部分の賃料についても協議を行い,平成4年6月の合意のとおりとする旨改めて合意した。 ・平成11年8月1日の時点における本件賃貸借変更契約の対象物件の適正な継続月額賃料はいくらか。 (原告の主張)ア賃料額不相当の評価根拠事実・いわゆるバブル崩壊を契機とした土地価格の大幅下落,近年の建築不況を反映しての建物再調達価格の大幅下落及び投資利回りの下落といった経済事情に照らし,果実である家賃についても大きく減額すべきである。 ・山梨県内の賃貸物件,特に貸店舗,事務所の家賃水準は大幅に下落している。 ・財務省関東財務局甲府財務事務所による県内の「大型小売店舗(スーパー)売上高調」によると,郊外型小売店舗の立地激化の結果,売場面積及び年間売上高は増加しているが,売場面積の急減な増加を反映し,売場面積当たりの売上高は平成4年度を100とした場合,平成10年度は62.3と,約38パーセント落ち込んでいる。原告の店舗も同様に採算性が非常に低くなっている。 ・被告は,原告との本件賃貸借契約に先立ち,原告に対し,本件建物の隣地一帯にレクリエーション施設等を開発す ーセント落ち込んでいる。原告の店舗も同様に採算性が非常に低くなっている。 ・被告は,原告との本件賃貸借契約に先立ち,原告に対し,本件建物の隣地一帯にレクリエーション施設等を開発することにより,総合的な集客力を発揮させる旨の計画を示していたにもかかわらず,平成8年7月,原告に対する事前連絡や協議なしに,本件建物の隣地に原告の店舗面積の約2倍の店舗面積を有する大型小売店舗であるBを誘致した。その結果,原告の本件建物における売場面積当たりの売上高及び粗利益高は大幅に落ち込んだ。これは原告との間の本件賃貸借契約上の信義則に違反し,商業道徳上の信義にも反する行為である。 イ以上のとおり,既存賃借部分(1万5010.00平方メートル)については現行賃料が不相当になっているから,既存賃借部分の現行賃料を50パーセント減額して,1か月1614万3050円とするのが相当である。これに,追加賃借部分の賃料(1か月92万8000円)を合計すると,1か月1707万1050円(消費税別)となる。 (被告の主張)原告の本件建物の店舗では,Bが出店したことにより,相乗効果がもたらされ,集客力が大幅に向上しているし,原告の提出した甲7(「RC店増床前後の売上高・荒利益高」)によっても,売上高が伸びていることは明らかである。 また,原告の店舗における売上の増減や小売店舗相互間の競争激化といった事情は,原告の経営そのものの問題であり,単純に賃料の減額に結びつくものではない。 なお,本件賃貸借契約締結の当時,被告が,本件建物の隣地一帯にレクリエーション施設等を開発する計画を有していたことは事実であるが,上記契約に当たり,原告との間で,隣地の使用形態についての条件を定めていないし, 賃貸借契約締結の当時,被告が,本件建物の隣地一帯にレクリエーション施設等を開発する計画を有していたことは事実であるが,上記契約に当たり,原告との間で,隣地の使用形態についての条件を定めていないし,その後の経済情勢の変化により,開発計画が変更となったに過ぎない。さらに,被告は,Bの出店についてユニーに対する守秘義務を負っていたのであって,原告に対し,商業道徳上,Bの出店について事前に告知すべきであったとは言えない。 第3 争点に対する判断 1 本件賃貸借変更契約において,原告と被告の間で既存賃借部分の賃料改定に関する合意がなされたか(争点・)。 ・賃料改定についての交渉経過証拠(甲4,5の1・2,7,12の1・2,13,14の1・2,15,19,25,乙9,証人C,証人D。ただし,乙9と証人Dについては,以下の認定に反する部分を除く。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア本件建物における原告の店舗は,平成10年ころまで原告の主力店であった。 イ原告の交渉担当者であったC(原告の取締役)は,被告の交渉担当者であったD(被告の取締役,不動産事業本部本部長)に対して電話をし,平成7年5月31日,本件建物の賃料改定についての話合いを行いたい旨申し入れた。 ウ C,原告マネージャーのE及びFは,平成7年8月18日,Dと面会し,同人に対し,本件建物の賃料の減額について配慮をしてもらいたい旨の文書(甲14の1)を交付し,平成4年6月の和解前の金額に戻してもらいたい旨申し入れた。 エ Dは,同年9月22日,C及びFと面会し,賃料の増減額についての被告側の検討結果を伝え,双方ともさらに検討することとなった。 オ原告は,被告に対し,同年10月27日,「 エ Dは,同年9月22日,C及びFと面会し,賃料の増減額についての被告側の検討結果を伝え,双方ともさらに検討することとなった。 オ原告は,被告に対し,同年10月27日,「賃料改定(減額)についてのお願い・」と題する文書(甲14の2)を送付した。 カ C及びFは,平成8年2月27日にも,Dと面会し,賃料の減額を申し入れた。 キ Dは,上記ウないしカの原告側との交渉の際,Cらに対し,被告側としては固定資産の増額などから賃料の増額を希望したいところであるが,賃料据え置きとしたい旨伝えていた。 ク原告は,平成8年7月ころ,本件建物の所在する被告所有の土地の隣に,平成10年10月にユニーの経営するBが開店することを知った。 原告は,Bの出店を差し止めるため,法的手段をとって阻止することなども検討しつつ,被告との間で,出店の白紙撤回を含めた話合いを行ってきたが,平成9年3月ころ,Bとの競合に備え,本件建物における店舗面積の増床を行う方針を決め,被告と交渉を行い,本件建物の増築を行った上で借り増しをすることとなった。 ケ原告は,Bの開店に先立って,平成10年9月に再開店するため,同年7月28日に閉店し,同年8月中に工事を行った。 コ原告と被告は,本件賃貸借変更契約に当たり,追加賃借部分の賃料につき,既存建物のうちの追加部分(328.96平方メートル)については,既存賃借部分に関する賃料算出基準に従い,1平方メートル当たり2152円,増築部分については,1平方メートル当たり1109円を基に,1000円未満を切り上げて算出し,合計1か月92万8000円とする旨合意した。 サ原告と被告は,平成10年9月14日付けで本件賃貸借変更契約を取り 平方メートル当たり1109円を基に,1000円未満を切り上げて算出し,合計1か月92万8000円とする旨合意した。 サ原告と被告は,平成10年9月14日付けで本件賃貸借変更契約を取り交わしたが,同日の前後に押印した書面を互いに送付しあって作成したものである。 シ原告は,同月18日,本件増築後建物における店舗での営業を開始した。 ス本件賃貸借変更契約書(甲4)において,本件増築後建物の賃料に関し,本件賃貸借契約における賃料が1か月当たり3228万6100円(消費税・地方消費税別・161万4305円)であったものを,1か月当たり3321万4100円(消費税・地方消費税別・166万0705円)と変更し,賃料の変更は平成10年9月18日から実施する旨の記載がある。 なお,上記契約書は,被告において賃貸借変更契約書として,契約金額や賃貸面積を変更する際に使用している定型の書式を使用したものである。 セ Cは,平成11年5月17日,Dを訪ね,同日付け「賃料改定(値下げ)のお願い」と題する書面(甲5の1)を交付し,具体的な金額は示さずに,本件増築後建物の賃料の大幅な減額について被告側で検討を行ってもらいたい旨申し入れた。 ソ Cは,同年7月5日,Dを訪ね,同日付け「賃料改定(値下げ)のお願い」と題する書面(甲5の2)を交付し,賃料を現行の50パーセントに減額してもらいたい旨申し入れ,書面での回答を求めた。 タ Cは,同月30日,Dを訪ね,賃料改定についての検討結果を尋ねたところ,同人から現行賃料の半額という減額には応じられないとの回答を得た。その後,平成11年8月7日,被告から被告代表者名義で,原告に対し,「貴社のご提示している賃料は,到底応ずることが出来ぬも たところ,同人から現行賃料の半額という減額には応じられないとの回答を得た。その後,平成11年8月7日,被告から被告代表者名義で,原告に対し,「貴社のご提示している賃料は,到底応ずることが出来ぬものでありますので,ご了承賜り度くお願い申し上げます。」との同月5日付け回答書(甲15)が送付された。 ・上記認定事実をもとに,検討する。 本件賃貸借変更契約書(甲4)において,本件増築後建物の既存賃借部分の賃料額と追加賃借部分の賃料額は区別して記載されず,変更後の賃料額のみが記載されているところ,証拠(証人C,D)によっても,平成8年7月以降の本件賃貸借変更契約締結に至る交渉経過において,既存部分の賃料の増減額の問題を正面から取り上げて話合いを行った形跡は認められず,また,原告は,平成8年7月ころ,Bの開店を知り,それ以降,原告の主力店といえる本件建物における営業を維持するため,対抗措置として増床を行うことや,その前提として,増床工事のため閉店し,再開店に備えることに全社をあげて取り組んでいたことが認められ,被告としても,原告のそのような状況にかんがみて,既存部分の賃料の増減額の問題は棚上げとしていた結果,本件賃貸借変更契約を締結するに当たっても,既存部分の賃料について触れることはせず,被告が賃貸借変更契約に用いている定型書式をそのまま使用し,変更契約書(甲4)上,既存賃借部分と追加賃借部分についての賃料額について区別して記載しなかったものと認められる。 さらに,仮に,被告が,本件賃貸借変更契約において,既存賃借部分に関する賃料額を確認したとの認識を有していたならば,賃料減額を拒否した平成11年8月5日付け回答書(甲15)において,平成10年9月の本件賃貸借変更契約の際,既存賃借部分に関する賃料額について改 に関する賃料額を確認したとの認識を有していたならば,賃料減額を拒否した平成11年8月5日付け回答書(甲15)において,平成10年9月の本件賃貸借変更契約の際,既存賃借部分に関する賃料額について改めて合意したので,それから1年もたたないうちに賃料改定を行う合理的理由がない旨回答するはずであるところ,単に,原告の主張する減額には応じられない旨記載したのみであることにかんがみると,被告の認識としても,原告との間で,本件賃貸借変更契約により既存賃借部分に関する賃料額を確認する意思であったとは認め難い。 ・以上によれば,平成10年9月14日の時点で,原・被告間において,既存賃借部分についての賃料改定に関する合意が行われたと認めることはできず,既存賃借部分について現行賃料の合意がされた時点は,平成4年6月10日であると認められる。 2 本件増築後建物の適正な月額賃料について(争点・)。 ・本件増築後建物について,原告が賃料の減額請求をしている平成11年8月1日の時点(以下「価格時点」という。)における適正賃料額を算定するに当たっては,不動産鑑定評価基準により承認されている差額配分法,利回り法,スライド法及び賃貸事例比較法の各手法を用いて試算賃料を算定し,本件賃貸借変更契約における具体的事実関係に即してこれらの各手法に基づく試算賃料を総合的に判断し,合理的な額を算定するのが相当である。 また,上記1のとおり,本件増築後建物の既存賃借部分についての賃料の前回合意時点は,平成4年6月10日となるから,以下においては,同日を前回合意時点として価格時点の適正賃料額を判断する。 本件においては,原告の依頼に基づく株式会社G不動産鑑定士事務所(不動産鑑定士Gが代表者を務めている。)作成の鑑定評価書(甲20。以下, 合意時点として価格時点の適正賃料額を判断する。 本件においては,原告の依頼に基づく株式会社G不動産鑑定士事務所(不動産鑑定士Gが代表者を務めている。)作成の鑑定評価書(甲20。以下,同鑑定評価書による鑑定評価を「G鑑定」という。),不動産鑑定士である鑑定人Hによる鑑定(以下「H鑑定」という。)が実施されている。 ア H鑑定の概要H鑑定人は,平成4年6月10日時点の賃料を従前賃料とした本件賃貸借契約における既存賃借部分(1万5010.00平方メートル)に関する価格時点の適正賃料額を評価した。 ・まず,対象となる土地の価格について,取引事例比較法により近隣地域及び同一需給圏内の類似地域における6事例を選択し,その取引価格について必要に応じて事情補正・時点修正を行い,事例地の個別的要因の標準化補正を行った上,地域要因の比較を行って,標準画地の比準価格を10万9000円/平方メートルと査定した。そして,標準価格(公示価格)との比準の結果,I(県)5-1より10万1000円/平方メートル,J(県)5-1より10万1000円/平方メートルと査定した。以上の結果を総合し,価格時点における1平方メートル当たりの標準画地の更地価格を10万9000円と査定し,対象地の個別的要因の格差率を70パーセント,敷地面積を公簿に基づき1万2770.26平方メートルとして,価格時点における対象地の更地価格を9億7440万0000円と査定した。 他方,対象となる建物の価格については,再調達原価を1平方メートル当たり13万5000円と査定し,延床面積については公簿面積等を基に1万6943.02平方メートルと算定してこれを乗じ,総額22億8730万7700円と査定した。そして,耐用年数に基 1平方メートル当たり13万5000円と査定し,延床面積については公簿面積等を基に1万6943.02平方メートルと算定してこれを乗じ,総額22億8730万7700円と査定した。そして,耐用年数に基づく方法(定額法)及び観察減価法を併用して,建物主体部分と設備部分についてそれぞれ減価修正を行い,減価修正後の価格時点における価格を13億8580万0000円と査定した。 さらに,対象不動産の一部が第三者に対して賃貸されていることから,総面積(1万6914.08平方メートル)中の原告の既存賃借面積(1万5010.00平方メートル)の割合を0.8874と求めて,価格時点における基礎価格を20億9440万0000円と査定した。 ・差額配分法による賃料について対象不動産の総合期待回りを,土地の期待利回り(5パーセント)と建物の期待利回り(8パーセント)を土地と建物の価格で加重平均して6.8パーセントと算出した。そして,対象不動産周辺の用途を共同住宅とする収益用不動産3例の取引事例の取引利回りについての平均値が10.5パーセントであることから,総合期待利回りを6.8パーセントとすることに合理性があるとした。 さらに,対象不動産全体の必要諸経費等については,年1億5798万7107円と査定し,本件賃貸借契約における賃借部分(1万5010.00平方メートル)に関する必要諸経費は,賃借割合0.8874に応じて,1億4019万7759円と査定した。 そして,基礎価格に総合期待利回りを乗じた額に,必要諸経費等を加算して,積算賃料を年2億8260万0000円と査定し,これを正常実質賃料とした。 他方,実際支払賃料(年3億8743万3200円) 総合期待利回りを乗じた額に,必要諸経費等を加算して,積算賃料を年2億8260万0000円と査定し,これを正常実質賃料とした。 他方,実際支払賃料(年3億8743万3200円)と,敷金(1億7610万6000円)の運用益(敷金額に3パーセントを乗じたもの)を合算して,3億9271万3200円と求めた。 以上を前提に,正常実質賃料と実際支払賃料との差額賃料(年額でマイナス1億1011万3200円)について2分の1法を適用して配分し,これを実際実質賃料に加算して,年3億3770万0000円(月額2814万0000円)と査定した。 ・利回り法による賃料について上記・のとおり,価格時点における対象地の更地価格を9億7440万0000円と査定したが,平成4年6月時点の対象地の基礎価格を求める前提として,同地の基礎価格を査定する際に比準に用いたI(県)5-1の標準価格の価格の変動率(0.753(平成11年8月時点の11万3000円と,平成4年6月時点の15万円から算出。))を求め,価格時点における更地価格を0.753で除して,平成4年6月時点の対象地の基礎価格を12億9400万0000円と査定した。 他方,建物については,平成4年6月時点の再調達原価を1平方メートル当たり16万5000円と査定し,延床面積については上記・と同様,1万6943.02平方メートルと算定してこれを乗じ,総額27億9559万8300円と査定した。そして,耐用年数に基づく方法(定額法)及び観察減価法を併用して,建物主体部分と設備部分についてそれぞれ減価修正を行い,減価修正後の価格を23億3410万0000円と査定した。 上記の土地価格と建物価格の合計 法)及び観察減価法を併用して,建物主体部分と設備部分についてそれぞれ減価修正を行い,減価修正後の価格を23億3410万0000円と査定した。 上記の土地価格と建物価格の合計は36億2810万0000円であるところ,対象不動産の一部が第三者に対して賃貸されていることから,上記・で求めた総面積中の原告の既存賃借面積の割合(0.8874)を上記合計価格に乗じて,平成4年6月時点の基礎価格を32億1960万0000円と査定した。 以上を前提として,平成4年6月時点の必要諸経費等を1億7358万1782円と求め,これを上記・で求めた実際実質賃料に敷金運用益を合算した額3億9271万3200円から減じて,同月当時の純賃料を2億1910万0000円と査定した。 これによると,平成4年6月時点の基礎価格に対する純賃料の割合,すなわち利回りは6.8パーセントとなるが,その後,価格時点までに約7年が経過し,その間に基礎価格が大幅に下落していること,賃料については保守性・遅行性という特徴があることを総合考慮し,価格時点における継続賃料利回りを9パーセントと査定した。 そして,価格時点における基礎価格(・のとおり,20億9440万0000円)に上記継続賃料利回りを乗じ,これに価格時点における必要諸経費等(・のとおり,1億4019万7759円)を加算して,利回り法による賃料を年3億2870万0000円(月額2739万0000円)と査定した。 ・スライド法による賃料について平成4年6月当時の純賃料(上記・のとおり,年2億1910万0000円)に,消費者物価指数,国内卸売物価指数,賃金指数,地価変動率(上記・のとおり,平成4年6月時点の対象 いて平成4年6月当時の純賃料(上記・のとおり,年2億1910万0000円)に,消費者物価指数,国内卸売物価指数,賃金指数,地価変動率(上記・のとおり,平成4年6月時点の対象地の基礎価格を求める前提として,同地の基礎価格を査定する際に比準に用いたI(県)5-1の標準価格の変動率),建設工事費デフレーター,GDP,企業向けサービス価格指数を基に,建設工事費デフレーターを3,地価変動率を2,企業向けサービス価格指数及び国内卸売物価指数を1.5,賃金指数及びGDPを1,消費者物価指数を0として算出した変動率(マイナス5パーセント)を乗じたものに,価格時点における必要諸経費等を1億4019万7759円を加算して,年3億4830万0000円(月額2900万0000円)と査定した。 ・賃料の決定対象不動産の実質賃料について,スライド法による賃料を重視し,その他の方法による賃料を比較考量して,月額2850万0000円と査定し,ここから敷金運用益(月額44万0000円)を控除して,月額2810万0000円と決定した。 イ G鑑定の概要・まず,対象となる土地の価格時点での価格について,取引事例比較法により近隣地域における4事例を選択し,その取引価格について必要に応じて事情補正・時点修正を行い,事例地の個別的要因の標準化補正を行った上,地域要因の比較を行って,標準画地の比準価格を10万1000円から11万8000円/平方メートルの間と査定し,標準価格(公示価格)との比準として,I(県)5-1より9万9100円/平方メートルと査定して,これらを比較検討し,標準価格を11万0000円/平方メートルと査定した。そして,対象地の個別的要因の格差率を100パーセント,敷地 して,I(県)5-1より9万9100円/平方メートルと査定して,これらを比較検討し,標準価格を11万0000円/平方メートルと査定した。そして,対象地の個別的要因の格差率を100パーセント,敷地面積を公簿に基づき1万2770.26平方メートルとして,価格時点における対象地の更地価格を14億0472万9000円と査定した。 他方,対象となる建物の価格については,再調達原価を1平方メートル当たり11万0684円と査定し,延床面積については1万6958.16平方メートルと算定してこれを乗じ,総額18億7700万0000円と査定した。そして,耐用年数に基づく方法(定額法)及び観察減価法を併用して,現価率を45パーセントと査定し,減価修正後の価格を8億4465万0000円と査定した。 上記土地価格と建物価格の合計は22億4937万9000円であるところ,対象不動産の一部が第三者に対して賃貸されていることから,総面積中の原告の既存賃借面積の割合を0.887と求め,上記合計価格に同割合を乗じて,基礎価格を19億9519万9000円と査定した。 ・差額配分法による賃料について対象不動産の総合期待回りを,土地の期待利回り(4パーセント)と建物の期待利回り(8パーセント)を本件土地と建物の価格で加重平均して5.5パーセントと算出した。 さらに,対象不動産全体の必要諸経費等については,年1億3772万0318円と査定し,本件賃貸借契約における賃借部分に関する必要諸経費は賃借割合に応じて,1億2215万8000円と査定した。 そして,基礎価格に総合期待利回りを乗じた額に,必要諸経費等を加算して,積算賃料を年2億3189万3945円(月額 経費は賃借割合に応じて,1億2215万8000円と査定した。 そして,基礎価格に総合期待利回りを乗じた額に,必要諸経費等を加算して,積算賃料を年2億3189万3945円(月額1932万4495円)と査定し,これを正常実質賃料とした。 他方,実際支払賃料(年額3億8743万3200円)と,敷金(1億7610万6000円)の運用益(敷金額に5パーセントを乗じた880万5300円)を合算すると,年3億9623万8500円となるところ,これと実際支払賃料との差額賃料(年額でマイナス1億6434万4560円)について2分の1法を適用して配分し,この差額を実際実質賃料に加算して,年3億0526万0920円(月2543万8000円)円と査定した。 ・利回り法による賃料についてまず,対象となる土地の平成4年6月時点での価格について,取引事例比較法により近隣地域における4事例を選択し,その取引価格について必要に応じて事情補正・時点修正を行い,事例地の個別的要因の標準化補正を行った上,地域要因の比較を行って,標準画地の比準価格を19万7000円から22万0000円/平方メートルの間と査定し,標準価格(公示価格)との比準として,I(県)5-1より18万5000円/平方メートルと査定して,これらを比較検討し,標準価格を20万0000円/平方メートルと査定した。そして,上記・のとおり,対象地の個別的要因の格差率を100パーセント,敷地面積を1万2770.26平方メートルとして,平成4年6月時点における対象地の更地価格を25億5405万2000円と査定した。 他方,対象となる建物の価格については,再調達原価を1平方メートル当たり16万9535円と査定し,延床 月時点における対象地の更地価格を25億5405万2000円と査定した。 他方,対象となる建物の価格については,再調達原価を1平方メートル当たり16万9535円と査定し,延床面積については・のとおり,1万6958.16平方メートルと算定してこれを乗じ,総額28億7500万0000円と査定した。そして,耐用年数に基づく方法(定額法)及び観察減価法を併用して,現価率を70パーセントと査定し,減価修正後の価格を20億1250万0000円と査定した。 上記土地価格と建物価格の合計は45億6655万2000円であるところ,上記・の事情から,総面積中の原告の既存賃借面積の割合を0.887と求め,上記合計価格に同割合を乗じて,基礎価格を40億5053万2000円と査定した。 以上を前提として,平成4年6月時点の必要諸経費等を1億2581万8000円と求め,これを上記・で求めた実際実質賃料に敷金運用益を合算した額(年3億9623万8500円)から減じて,同月当時の純賃料を2億7042万0500円と査定した。 これによると,平成4年6月時点の基礎価格に対する純賃料の割合,すなわち利回りは6.7パーセントとなる。 そして,価格時点における基礎価格(・のとおり,19億9519万9000円)に上記継続賃料利回りを乗じ,これに価格時点における必要諸経費等(・のとおり,1億2215万8000円)を加算した上,敷金運用益を減じて,利回り法による賃料を年2億4703万2000円(月額2058万6000円)と査定した。 ・スライド法による賃料について平成4年6月当時の純賃料(上記・のとおり,年2億7042万0500円)に 000円(月額2058万6000円)と査定した。 ・スライド法による賃料について平成4年6月当時の純賃料(上記・のとおり,年2億7042万0500円)に,消費者物価指数,国内卸売物価指数,財務省関東財務局甲府財務事務所調査による「大型小売店舗(スーパー)売上高調」による売場面積当たりの売上高推移を基に,消費者物価指数及び卸売物価指数を各15パーセント,売場面積当たり売上高調べの変動率(平成10年度と平成4年度を比較したもの)を70パーセントとして算出した変動率(マイナス27.1パーセント)を乗じたものから,敷金運用益(880万5300円)を減じ,価格時点における必要諸経費等1億2215万8000円を加算して,年3億1048万8000円(月額2587万4000円)と査定した。 ・賃貸事例比較法による賃料について取引事例比較法により周辺地域における対象不動産と類似の賃貸事例3事例(いずれも借主は本件原告である。)を選択し,その取引価格について事情補正・時点修正を行い,個別的要因の標準化補正を行って試算比準賃料を1平方メートル当たり1451円から1519円と査定し,そのうち,対象不動産と規模を同じくするショッピングセンターの賃貸事例に準じて,賃貸事例比較法による賃料を1平方メートル当たり1453円とし,本件賃貸借契約における賃借面積(1万5010.00平方メートル)を乗じて月額2181万0000円と査定した。 ・賃料の決定スライド法及び賃貸事例比較法を重視し,その他の方法については参考にとどめて,前2者の試算賃料のほぼ中庸値である月額2380万0000円と決定した。 ウそこで,H鑑定及びG鑑定の当否について ド法及び賃貸事例比較法を重視し,その他の方法については参考にとどめて,前2者の試算賃料のほぼ中庸値である月額2380万0000円と決定した。 ウそこで,H鑑定及びG鑑定の当否について検討する。 ・差額配分法による賃料について原告は,H鑑定が対象不動産の総合期待利回りを加重平均して求めたことについて,周辺の新規賃料事例をも考慮すべきであるのにしていないから,適正賃料の算出過程に疑問がある旨主張するが,H鑑定においては,対象不動産周辺に対象不動産と類似の収益用不動産の取引事例が皆無であったことから,用途を共同住宅とする収益用不動産3例の取引事例についての取引利回りを参考に,上記手法によって求めた総合利回りの合理性を検討しているのであるから,原告の疑問は当たらない。 また,原告は,H鑑定及びG鑑定が差額配分法における配分率について2分の1法を採用したことについて,そのような配分率とした理論的根拠が希薄である旨主張する。 しかしながら,差額配分法は,対象不動産の経済価値に即応した適正な実質賃料又は支払賃料と,実際実質賃料又は実際支払賃料との間に発生している差額について,契約の内容,契約締結の経緯等を総合的に勘案して,当該差額のうち貸主に帰属する部分を適切に判定して得た額を実際実質賃料又は実際支払賃料に加減して試算賃料を求める手法であり,不動産鑑定評価基準においては,貸主に帰属する部分につき,一般的要因の分析及び地域要因の分析により差額発生の要因を広域的に分析し,さらに対象不動産について,契約上の経過期間と残存期間,契約締結及び現在に至るまでの経緯,貸主又は借主の近隣地域の発展に対する寄与度等に関する分析を行うことにより判断するものとされているところ 析し,さらに対象不動産について,契約上の経過期間と残存期間,契約締結及び現在に至るまでの経緯,貸主又は借主の近隣地域の発展に対する寄与度等に関する分析を行うことにより判断するものとされているところ,貸主に帰属する部分は,衡平の観点に照らして判定すべきであるから,特段の事情が認められない限り,2分の1法を採用するのが相当である。 この点,本件において,上記第2の2の本件賃貸借契約及び本件賃貸借変更契約の経過に照らしても,貸主に帰属する部分を特に加重又は減軽すべき特段の事情は認められないから,2分の1法を採用することに問題はないというべきである。 ・利回り法による賃料について・原告は,H鑑定が平成4年6月時点の対象地の基礎価格を求める前提として,同地の基礎価格を査定する際に比準に用いたI(県)5-1の標準価格の価格の変動率を求め,価格時点における更地価格を上記変動率で除して,平成4年6月時点の対象地の基礎価格を12億9400万0000円と査定したことについて,そのような査定方法の妥当性に疑問があり,また,基準地とされた土地が地積約740平方メートルの近隣型小売店舗地であることを理由に,本件のような画地規模の大きいショッピングセンター用地の土地価格と同様の地価変動の推移をたどるとは思われない旨主張するので判断する。 この点,G鑑定について見るに,平成4年6月時点の基礎価格を求めるに当たり,取引事例比較法により近隣地域における4事例を選択した上で,比準価格を求めていることは上記イ・のとおりであるが,同鑑定においては,対象とされた標準化補正及び地域格差の修正率の根拠の詳細は明らかでなく,個別的要因の比較についての検証が困難であって,比準価格の妥当性の裏付けが いることは上記イ・のとおりであるが,同鑑定においては,対象とされた標準化補正及び地域格差の修正率の根拠の詳細は明らかでなく,個別的要因の比較についての検証が困難であって,比準価格の妥当性の裏付けが不十分であると言わざるを得ない。 対象地の基礎価格を定めるに当たって,取引事例比較法の前提となる過去の一定時点における対象地に類する規模の大規模商業地に関する取引事例の収集が容易でないことは,G鑑定において採用された取引事例が地積約392平方メートルから約1692平方メートルという規模にとどまる路線商業地域内の事例であることに照らしても明らかである。 他方,H鑑定が平成4年6月時点の対象地の基礎価格を求める前提として,その価格変動率を参考としたI(県)5-1の基準地は,証拠(甲22の2,甲23の3)によれば,本件対象地の近隣地域内にある地積744平方メートルの土地であり,公法上の規制について,近隣商業地域,建ぺい率80パーセントではあるが,実効容積率が200パーセントである点及び土地の標準的使用及び最有効利用が商業地である点で本件対象地と共通しており,同地が近隣型小売店舗地であるとしても,その価格変動率を参考としたことに合理性がないとは言えない。 ・これに対し,原告は,I(県)7-1を基準地とすべきであり,その価格変動率に準じて,40パーセントの下落が相当である旨主張する。 証拠(甲24の1・2)及び弁論の全趣旨によれば,同地は準工業地域であり,実際には,山梨県内でも最大規模の各種卸売業等が集合する流通業務団地内に存在する事務用品卸売業の事務所所在地であることが認められる。 しかしながら,証拠(甲20,H鑑定)によれば,本件対 梨県内でも最大規模の各種卸売業等が集合する流通業務団地内に存在する事務用品卸売業の事務所所在地であることが認められる。 しかしながら,証拠(甲20,H鑑定)によれば,本件対象地の前面道路が主要幹線道路に接続しており,その主要幹線道路沿いにファミリーレストラン等の飲食店や小売店舗が建ち並び,交通量も多く,自動車利用客の誘引を期待できる地域であって,周辺町村を商業背後地とする県内有数の商業ゾーンを形成していること,県内随一の大規模分譲住宅団地であるK内に位置するという利便性を有することが認められるのであって,これらの事実にかんがみると,本件対象地のような大規模商業施設として利用されている土地が,上記I(県)7-1と同様の価格変動をたどるとは解しがたく,むしろ,本件対象地の価格の変動は近隣型小売店舗地に準じて考えるのが相当である。 ・また,原告は,H鑑定が継続賃料利回りについて,価格時点までに基礎価格が大幅に下落しているものの,賃料については保守性・遅行性という特徴があるとして,6.8パーセントから9パーセントへと補正したことが不当であるとする。しかしながら,もともと賃料の利回りは地価の動向と同一の方向にあるものではないし,賃料についての合意時点がバブル期である場合には,基礎価格が高いことから,継続賃料利回りが低く求められており,必ずしも適正な利回りであるということはできない上,地価公示価格で土地の収益価格を求める還元利回りについて見ても,地価が下がるにつれて上昇する傾向があるから,H鑑定における上記補正が合理性を欠くとは言えない。 ・スライド法による賃料について原告は,本件対象不動産のような大型小売店舗については,その特殊性にかんがみ,大型小売店舗の収益 正が合理性を欠くとは言えない。 ・スライド法による賃料について原告は,本件対象不動産のような大型小売店舗については,その特殊性にかんがみ,大型小売店舗の収益性を考慮した評価手法を採用すべきであるとして,G鑑定における財務省関東財務局甲府財務事務所調査による「大型小売店舗(スーパー)売上高調」の推移を採用することが相当である旨主張する。 しかしながら,スライド法とは,現行賃料を定めた時点における純賃料に変動率を乗じて得た額に,価格時点における必要諸経費等を加算して試算賃料を求める手法であるところ,その変動率は,現行賃料を定めた時点から価格時点までの間における経済情勢等の変化に即応する変動率を表すものであり,不動産鑑定評価基準においては,土地及び建物価格の変動,物価変動,所得水準の変動等を示す各種指数を総合的に勘案して求めるものとされており,家賃指数,市街地価格指数,消費者物価指数,卸売物価指数,賃金指数,GNP等を基に判断すべきものとされている。 これらの指数は,対象不動産の所在地や利用状況等の個別的な事情によって左右されるものではなく,社会一般の経済状況に対応して変動するものであるのに対し,G鑑定が採用した上記「大型小売店舗(スーパー)売上高調」の推移は,対象不動産の個別的な事情のみならず,個別の小売店舗の営業努力に起因する要素も少なくないものであることを考慮すると,これをスライド法における変動率査定の主要な要素とすることには問題があると言わざるを得ない。 ・賃貸事例比較法の不採用について原告は,H鑑定が対象不動産と類似の大規模店舗の一括賃貸事例を収集することができなかったとして,賃貸事例比較法を不採用としたことは合 ・賃貸事例比較法の不採用について原告は,H鑑定が対象不動産と類似の大規模店舗の一括賃貸事例を収集することができなかったとして,賃貸事例比較法を不採用としたことは合理性がない旨主張する。 しかしながら,G鑑定が,取引事例比較法により周辺地域における対象不動産と類似の賃貸事例として採用した3事例はいずれも借主が本件原告であるため,これらの事例について規範性を認めることは相当でない。そして,上記3事例以外に本件対象不動産と類似の賃貸事例を認めることはできないことはG鑑定に照らしても明らかであって,本件において,賃貸事例比較法を採用すべきである旨の原告の主張は失当である。 ・以上によれば,H鑑定における鑑定手法については不動産鑑定評価基準に照らし,その算定の過程について合理性を認めることができるのに対し,G鑑定については上記・ないし・において指摘したとおり,その鑑定手法に疑問の余地があるため,同鑑定の結果を採用することはできない。 エ以上を前提に,本件賃貸借契約における賃借部分(1万5010.00平方メートル)に関する価格時点の適正賃料額について判断する。 H鑑定においては,ア・のとおり,スライド法における賃料を重視し,その他の方法による賃料を比較考量して,月額2850万0000円と査定し,ここから敷金運用益を控除して,月額2810万0000円と決定している。H鑑定は,対象不動産と類似した新規賃貸事例との比較を行わず,積算賃料のみで正常実質賃料を決定したことを理由に,差額配分法はやや規範性に欠け,継続賃料利回りの把握には限界があるとして,利回り法についてもやや規範性に欠けるとし,スライド法における賃料にもっとも合理性があるとし,各比重を明らか したことを理由に,差額配分法はやや規範性に欠け,継続賃料利回りの把握には限界があるとして,利回り法についてもやや規範性に欠けるとし,スライド法における賃料にもっとも合理性があるとし,各比重を明らかにしないまま,上記結論を導いた。 そこで,各方法による試算賃料についての比重について検討するに,差額配分法における積算賃料については,ア・のとおり,対象不動産周辺の用途を共同住宅とする収益用不動産の取引事例についての取引利回りを算出し,総合期待利回りについて合理性があることを検証しているのであるから,差額配分法における賃料については比重を3とするのが相当である。また,利回り法における継続利回り賃料については,H鑑定も指摘するとおり,現行賃料を定めたのがバブル崩壊後の地価下落期に当たる平成4年6月であることに照らすと,当時の純賃料利回りが必ずしも適正な利回りであるということはできないことに照らすと,その比重を2とするのが相当である。これに対し,スライド法における賃料については,上記のような問題は認められないので,その比重を5とするのが相当である。 以上によれば,実質賃料を月額2842万0000円と認め,ここから敷金運用益(月額44万円)を控除して,適正賃料額を2798万0000円とするのが相当である。 これに,追加賃借部分の賃料(月額92万8000円)を合計すると,本件賃貸借変更契約における適正賃料額は2890万8000円となる。 第4 結論よって,原告の請求は,原告と被告との間の本件増築後建物の賃貸借契約にかかる賃料は,平成11年8月1日以降月額2890万8000円(消費税別)であるとの確認を求める限度で理由があるが,その余については理由がないので,棄却することとし,訴訟費用の負担につ 賃貸借契約にかかる賃料は,平成11年8月1日以降月額2890万8000円(消費税別)であるとの確認を求める限度で理由があるが,その余については理由がないので,棄却することとし,訴訟費用の負担について,民事訴訟法64条本文を適用して,主文のとおり判決する。 甲府地方裁判所民事部 裁判長裁判官新堀亮一 裁判官倉地康弘 裁判官川畑薫別紙物件目録 (省略)

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る