平成25年7月11日判決言渡同日判決原本交付裁判所書記官平成22年(ワ)第18041号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成25年4月12日判決 原告株式会社タクミナ 同訴訟代理人弁護士林一弘 同大谷俊彦 同野間督司 同近藤正昭 同伊藤芳晃 同新藤勇介 同訴訟代理人弁理士薬丸誠一 同補佐人弁理士藤本昇 同鶴亀史泰 被告日機装エイコー株式会社 同訴訟代理人弁護士水谷直樹 同曽我部高志 同訴訟代理人弁理士吉田研二 同長嶋孝幸 同橋本信吾 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告(1)被告は,別紙物件目録記載の旧イ号製品,新イ号製品及びロ号製品を製造,販売してはならない。 (2)被告は,その占有に係る前項記載の製品及びその半製品(旧イ号製品,新イ号製品及びロ号製品について,別紙各製品説明書(原告提出)記載の構造を具備しているが,各製品として完 販売してはならない。 (2)被告は,その占有に係る前項記載の製品及びその半製品(旧イ号製品,新イ号製品及びロ号製品について,別紙各製品説明書(原告提出)記載の構造を具備しているが,各製品として完成するに至らないもの)を廃棄せよ。 (3)被告は,原告に対し,6567万円及びこれに対する平成23年1月22日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 (4)訴訟費用は被告の負担とする。 (5)上記(3)につき仮執行宣言 2 被告主文同旨第2 事案の概要 1 前提事実(証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがない。)(1)当事者原告は,スムーズフローポンプ,精密供給ポンプ等の製造及び販売を目的とする株式会社である。 被告は,工業用ポンプ等の製造及び販売を目的とする株式会社である。 (2)原告の特許権ア本件特許権1(ア)原告は,次の特許(以下「本件特許1」といい,本件特許の請求項- 3 -1に係る発明を「本件特許発明1」という。また,本件特許1に係る明細書及び図面をあわせて「本件明細書1」という。)に係る特許権(以下「本件特許権1」という。)を有している。 特許番号第4312941号発明の名称ソレノイド駆動ポンプの制御回路出願日平成12年10月12日(原出願日平成10年9月22日)(優先日平成9年10月17日)登録日平成21年5月22日【請求項1】ソレノイド駆動ポンプのソレノイド8に駆動電圧を供給して該ソレノイド8を駆動する駆動回路7と,90~264Vの間で電圧が異なる交流電圧の電源1から整流されて駆動回路7に提供される直流電圧を分圧して検出する検出手段5と,該検出手段5で検出した直流電圧を一種の制御回路に対 駆動する駆動回路7と,90~264Vの間で電圧が異なる交流電圧の電源1から整流されて駆動回路7に提供される直流電圧を分圧して検出する検出手段5と,該検出手段5で検出した直流電圧を一種の制御回路に対応した所望の直流電圧と比較し,且つ駆動回路7に提供された直流電圧を所望の直流電圧に変換すべく該駆動回路7に制御信号を供給する演算処理部6とを具備し,電源1の電圧に関わりなく前記所望の直流電圧を駆動電圧としてソレノイド8に供給するソレノイド駆動ポンプの制御回路であって,前記制御信号は,駆動回路7に提供される直流電圧をスイッチングし,オン・オフのデューティを制御する信号であることを特徴とするソレノイド駆動ポンプの制御回路。 (イ)本件特許発明1は,次の構成要件に分説することができる。 A1 ソレノイド駆動ポンプのソレノイド8に駆動電圧を供給して該ソレノイド8を駆動する駆動回路7と,B1 90~264Vの間で電圧が異なる交流電圧の電源1から整流されて駆動回路7に提供される直流電圧を分圧して検出する検出手段5と,C1 該検出手段5で検出した直流電圧を一種の制御回路に対応した所望の直- 4 -流電圧と比較し,且つ駆動回路7に提供された直流電圧を所望の直流電圧に変換すべく該駆動回路7に制御信号を供給する演算処理部6とを具備し,D1 電源1の電圧に関わりなく前記所望の直流電圧を駆動電圧としてソレノイド8に供給するソレノイド駆動ポンプの制御回路であって,E1 前記制御信号は,駆動回路7に提供される直流電圧をスイッチングし,オン・オフのデューティを制御する信号であるF1 ことを特徴とするソレノイド駆動ポンプの制御回路。 イ本件特許権2(ア)原告は,次の特許(以下「本件特許2」といい,本件特許の請求項1に係る発明を「本件特許発明2」という る信号であるF1 ことを特徴とするソレノイド駆動ポンプの制御回路。 イ本件特許権2(ア)原告は,次の特許(以下「本件特許2」といい,本件特許の請求項1に係る発明を「本件特許発明2」という。また,本件特許2に係る明細書及び図面をあわせて「本件明細書2」という。)に係る特許権(以下「本件特許権2」という。)を有している。 特許番号第4716522号発明の名称ソレノイド駆動ポンプの制御回路出願日平成19年7月10日(本件特許1〔特願2000-312221〕に係る出願の分割)(原出願日平成10年9月22日)(優先日平成9年10月17日)公開日平成19年11月15日登録日平成23年4月8日【請求項1】ソレノイド駆動ポンプのソレノイド8に駆動電圧を供給して該ソレノイド8を駆動する駆動回路7と,電圧が異なる交流電圧の電源1から整流されて駆動回路7に提供される直流電圧を検出する検出手段5と,該検出手段5で検出した直流電圧に基づいて,駆動回路7に提供された直流電圧を,電源1の電圧に関わりなく一定の電気エネルギをソレノイド8に供給するための所望の直流電圧に変換す- 5 -べく,該駆動回路7に制御信号を供給する演算処理部6とを具備するソレノイド駆動ポンプの制御回路であって,前記制御信号は,駆動回路7に提供される直流電圧をスイッチングし,オン・オフのデューティを制御する信号であることを特徴とするソレノイド駆動ポンプの制御回路。 (イ)本件特許発明2の構成要件を分説すると,以下のとおりである。 A2 ソレノイド駆動ポンプのソレノイド8に駆動電圧を供給して該ソレノイド8を駆動する駆動回路7と,B2 電圧が異なる交流電圧の電源1から整流されて駆動回路7に提供される直流電圧を検出す る。 A2 ソレノイド駆動ポンプのソレノイド8に駆動電圧を供給して該ソレノイド8を駆動する駆動回路7と,B2 電圧が異なる交流電圧の電源1から整流されて駆動回路7に提供される直流電圧を検出する検出手段5と,C2 該検出手段5で検出した直流電圧に基づいて,駆動回路7に提供された直流電圧を,電源1の電圧に関わりなく一定の電気エネルギをソレノイド8に供給するための所望の直流電圧に変換すべく,該駆動回路7に制御信号を供給する演算処理部6とを具備するD2 ソレノイド駆動ポンプの制御回路であって,E2 前記制御信号は,駆動回路7に提供される直流電圧をスイッチングし,オン・オフのデューティを制御する信号であるF2 ことを特徴とするソレノイド駆動ポンプの制御回路。 (3)被告の行為被告は,別紙物件目録記載1の旧イ号製品を製造し,型式①については平成19年8月29日から,型式②については平成20年6月1日から,販売したが,いずれも平成22年3月15日に販売を終了した。被告は,別紙物件目録記載2の新イ号製品を製造し,同月16日から販売している。 また,被告は,別紙物件目録記載3のロ号製品を製造し,型式①については平成19年8月29日から,型式②については平成20年6月1日から,販売したが,いずれも,遅くとも平成23年3月15日以降,販売を行っていない(甲19,弁論の全趣旨)。 - 6 - 2 原告の請求原告は,旧イ号製品及びロ号製品については本件特許権1に基づき,新イ号製品については本件特許権1及び本件特許権2に基づき,それら製品の製造,販売の差止め並びにそれら製品及び半製品の廃棄を求めると共に,特許権侵害の不法行為に基づき,6567万円及びこれに対する平成23年1月22日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年 製造,販売の差止め並びにそれら製品及び半製品の廃棄を求めると共に,特許権侵害の不法行為に基づき,6567万円及びこれに対する平成23年1月22日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求めている。 3 争点(1)技術的範囲の属否ア本件特許発明1(ア)旧イ号製品は本件特許発明1の構成要件を文言上充足するか(争点1-1)(イ)旧イ号製品は本件特許発明1と均等なものとしてその技術的範囲に属するか (争点1-2)(ウ)新イ号製品は本件特許発明1の構成要件を文言上充足するか(争点1-3)(エ)新イ号製品は本件特許発明1と均等なものとしてその技術的範囲に属するか (争点1-4)(オ)ロ号製品は本件特許発明1の構成要件を文言上充足するか(争点1-5)(カ)ロ号製品は本件特許発明1と均等なものとしてその技術的範囲に属するか (争点1-6)イ本件特許発明2(ア)新イ号製品は本件特許発明2の構成要件を文言上充足するか(争点2-1)(イ)新イ号製品は本件特許発明2と均等なものとしてその技術的範囲に- 7 -属するか (争点2-2)(2)無効理由の存否ア本件特許1(ア)本件特許発明1に係る進歩性欠如(乙27文献) (争点3-1)(イ) -属するか (争点2-2)(2)無効理由の存否ア本件特許1(ア)本件特許発明1に係る進歩性欠如(乙27文献) (争点3-1)(イ)本件特許発明1に係る進歩性欠如(乙29文献) (争点3-2)(ウ)本件特許発明1に係る進歩性欠如(乙28文献) (争点3-3)(エ)本件特許発明1に係る進歩性欠如(乙43文献) (争点3-4)(オ)本件特許発明1に係る明確性要件違反(特許法36条6項2号)及び実施可能要件違反(特許法36条4項1号) (争点3-5)イ本件特許2(ア)本件特許発明2に係る進歩性欠如(乙27文献) (争点4-1)(イ)本件特許発明2に係る進歩性欠如(乙29文献) (争点4-2)(ウ)本件特許発明2に係る進歩性欠如(乙28文献) (争点4-3)(エ)本件特許発明2に係る進歩性欠如(乙43文献) (争点4-4)(オ)本件特許発明2に係る明確性要件違反(特許法36条6項2号)及び実施可能要件違反(特許法36条4項1号) (争点4-5)(カ)分割不適法(特許法39条1項) (争点4-6)(3)原告の損害 (争点5)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1-1(旧イ号製品は本件特許発明1の構成要件を文言上充足するか)について【原告の主張】別紙旧イ号製品説明書(原告提出)記載のとおりに特定される旧イ号製品は,本件特許発明1の各構成要件を充足し,その技術的範囲に属する。 (1)構成要件A1旧イ号製品の「ダイヤフラムポンプ」,「ソレノイド13」,「FET11及びト- 8 -ランジスタ12」は,それぞれ本件特許発明1の「ソレノイド駆動ポンプ」,「ソレノイ 。 (1)構成要件A1旧イ号製品の「ダイヤフラムポンプ」,「ソレノイド13」,「FET11及びト- 8 -ランジスタ12」は,それぞれ本件特許発明1の「ソレノイド駆動ポンプ」,「ソレノイド8」,「駆動回路7」に当たるため,旧イ号製品は,本件特許発明1の構成要件A1を充足する。 この点,被告は,本件特許発明1における「駆動電圧」は,固定の電圧値を意味する「所望の直流電圧」でなければならないと主張する。しかし,後記のとおり,「所望の直流電圧」は,「ソレノイドを駆動するために適している電圧」であり,固定の電圧値である必然性はなく,ある程度の幅を許容する概念である。そのため,旧イ号製品においてソレノイドに供給される電圧が固定値でないことを根拠に,「駆動電圧」であることを否定する被告の主張は,前提に誤りがある。 (2)構成要件B1旧イ号製品は本件特許発明の構成要件B1を充足する(争いがない。)。 (3)構成要件C1ア 「所望の直流電圧」とは,本件明細書1の「検出した電圧を演算処理部において所望の電圧と比較し,ソレノイドの駆動回路が所望の電圧をソレノイドに供給すべく駆動回路に制御信号を供給するので,電源がソレノイドを駆動するために適していない電圧である場合においても,一種の制御回路で駆動回路に供給される電圧を所望の電圧に変換してソレノイドに供給することができ,」(段落【0032】)などの記載からも明らかなとおり,「ソレノイドを駆動するために適している電圧」のことである。固定の電圧値である必然性は全くなく,「ソレノイドを駆動するために適していない電圧」を除き,電圧値にある程度の幅を許容する概念である。 被告の主張(後記【被告の主張】(2) )は,実施例に関する些末な記載を参酌したもので,本件特許発明1の本質を無視した不当に 適していない電圧」を除き,電圧値にある程度の幅を許容する概念である。 被告の主張(後記【被告の主張】(2) )は,実施例に関する些末な記載を参酌したもので,本件特許発明1の本質を無視した不当に限定的な解釈である。 イ旧イ号製品の「FET11及びトランジスタ12」,「分圧回路14,第2のCPU8及び第1のCPU2」は,それぞれ本件特許発明1の「駆動回路7」,「検出手段5」に当たる。 - 9 -そして,旧イ号製品は,電源電圧によって,ソレノイドに供給される電圧に違いはあるものの,「特性テーブル」によって,電源の各種電圧を90V近辺の値に変換しているのであり,かかる90V近辺の値こそ,旧イ号製品にとって,ソレノイドの規格に適した「所望の直流電圧」である。そして,旧イ号製品の「第2のCPU8」は,電源電圧を「ソレノイドを駆動するために適している電圧に変換」すべく,特性テーブルを用いて所定の電圧と比較し,当該所定電圧に変換するための制御信号を送っているのであるから,「所望の直流電圧と比較」し,「所望の直流電圧に変換」しており,本件特許発明1の「演算処理部6」そのものといえる。 したがって,旧イ号製品は,本件特許発明1の構成要件C1を充足する。 (4)構成要件D1前記(2)記載のとおり,「所望の直流電圧」は,「ソレノイドを駆動するために適している電圧」のことであり,ある程度の幅を許容するものである。そのため,旧イ号製品の「制御部1」は,「電源1の電圧に関わりなく前記所望の直流電圧を駆動電圧としてソレノイド8に供給する」ものといえ,本件特許発明の「制御回路」に当たる。 したがって,旧イ号製品は,本件特許発明1の構成要件D1を充足する。 (5)構成要件E1ア 「デューティ」とは,「周期的な現象において,ある期間に占めるそ 特許発明の「制御回路」に当たる。 したがって,旧イ号製品は,本件特許発明1の構成要件D1を充足する。 (5)構成要件E1ア 「デューティ」とは,「周期的な現象において,ある期間に占めるその期間で現象が継続される期間」のことであり,一般的に知られた用語である。 そのため,「オン・オフのデューティ」とは,「周期的なオン・オフの繰り返しにおいて,オンが継続される期間及びオフが継続される期間」ということであり,「オン・オフのデューティを制御する信号」とは,「周期的なオン・オフの繰り返しにおいて,オンが継続される期間及びオフが継続される期間を制御する信号」ということである。 なお,原告が,本件特許1の出願経過で述べた意見は,「アーマチュア押し出- 10 -し信号出力時間」と次の「アーマチュア押し出し信号出力時間」との相対関係についての事象,つまり,ポンプストローク運動におけるマクロ的な事象に関するものであるのに対し,構成要件E1の「オン・オフのデューティ」は,ポンプストローク運動における一つの「アーマチュア押し出し信号出力時間」に着目した場合の,当該「アーマチュア押し出し信号出力時間」内の事象,つまり,ポンプストローク運動におけるミクロ的な事象であり,両者は概念が全く異なる。そのため,上記意見を理由に,「オン・オフのデューティ」の意味を限定的に解する被告の主張は,失当というほかない。 イ旧イ号製品は,本件特許発明1の「演算処理部6」に当たる「第2のCPU8」から,「駆動回路7」に当たる「FET11及びトランジスタ12」に制御信号を供給し,アーマチュア押し出し信号出力時間における周期的なオン・オフの時間を電源電圧によって変化させ,「FET11及びトランジスタ12」に供給された直流電圧を「所望の直流電圧」に変換させている。このような ,アーマチュア押し出し信号出力時間における周期的なオン・オフの時間を電源電圧によって変化させ,「FET11及びトランジスタ12」に供給された直流電圧を「所望の直流電圧」に変換させている。このような制御信号は,上記アの意味に解される「オン・オフのデューティを制御する信号」に当たるといえる。 したがって,旧イ号製品は,本件特許発明1の構成要件E1を充足する。 (6)構成要件F1旧イ号製品は,本件特許発明の構成要件A1からE1までを充足するソレノイド駆動ポンプであるため,本件特許発明1の構成要件F1を充足する。 【被告の主張】原告による旧イ号製品の特定は,自己に都合の悪い箇所を記載しておらず,相当でない。特に,アーマチュア押し出し信号出力時間の前半と後半とで制御が異なることは,旧イ号製品による制御の根幹をなす部分であり,その点を省略すべきではない。また,旧イ号製品の正確なブロック図及び特性テーブルは,別紙旧イ号製品説明書(被告提出)記載1及び2のとおりで,電源電圧とアーマチュア押し出し信号出力時間の前半及び後半における各平均電圧との対応関係は,別紙- 11 -旧イ号製品説明書(被告提出)記載3のとおりである。 そして,以下のとおり,このような旧イ号製品は,本件特許発明1の構成要件を充足せず,その技術的範囲に属するものではない。 (1)構成要件A1本件特許発明1は,後記(2)のとおり,電源電圧に関わりなく,駆動回路に提供される直流電圧を,「所望の直流電圧」,すなわち,予め設定された一定の値(設定値)に変換した上,これを「駆動電圧」としてソレノイドに供給する制御回路である。そのため,構成要件A1の「駆動電圧」は,当該設定値に変換された後の直流電圧であり,電源電圧の大小にかかわらず,一定の電圧値でなければならない。 圧」としてソレノイドに供給する制御回路である。そのため,構成要件A1の「駆動電圧」は,当該設定値に変換された後の直流電圧であり,電源電圧の大小にかかわらず,一定の電圧値でなければならない。 しかし,旧イ号製品は,後記(2)のとおり,ソレノイドに供給される電圧は,電源電圧により異なっている上,同一の電源電圧の場合においてさえも,一定ではない。そのため,構成要件A1に規定する「駆動電圧」を充足しているとはいえない。 (2)構成要件C1ア構成要件C1は,検出手段5で検出した直流電圧を,「一種の制御回路に対応した所望の直流電圧」と「比較」し,かつ,駆動回路7に提供された直流電圧を,上記「所望の直流電圧」に「変換」すべく,駆動回路7に制御信号を供給する演算処理部6について規定している。 そして,本件明細書1における「演算処理部6は,ポンプの運転を制御可能な制御部9に電気的に接続されていると共に,駆動電圧等の予め記憶されている設定値を供給可能な, 等のデータ供給部11に接続されている。」(段落【0013】),「更に,演算処理部6には, 等のデータ供給部11から,予め設定された駆動電圧(以下,設定値という)が入力される。」(段落【0018】),「前記演算処理部6においては,/ 変換部5からの入力値が調整され,ソレノイド8を駆動する駆動電圧を前記設定値とすべく,オン・オフのデューティを- 12 -調整する制御信号が制御部9に送られる。」(段落【0021】)などの記載によれば,「所望の直流電圧」とは,具体的には 等に予め格納されている一定の値(設定値)の電圧,すなわち一定の電圧値の直流電圧を意味するものと解される。 イしかし,旧イ号製品においては,ソレノイド5に印加される電圧は,電源電圧によって大きく異なって 納されている一定の値(設定値)の電圧,すなわち一定の電圧値の直流電圧を意味するものと解される。 イしかし,旧イ号製品においては,ソレノイド5に印加される電圧は,電源電圧によって大きく異なっており,一定というわけではない上,同一の電源電圧の場合においてさえも,アーマチュア押し出し信号出力時間(t1)の前半と後半とで大きく異なっている。そのため,旧イ号製品は,「所望の直流電圧」,すなわち, 等に予め格納されている一定の電圧値と「比較」することも,かかる電圧に「変換」することも行っておらず,構成要件C1を充足しない。(3)構成要件D1構成要件D1は,「電源1の電圧に関わりなく前記所望の直流電圧を駆動電圧としてソレノイド8に供給する」と規定するが,「所望の直流電圧」は,上記(2)のとおりに解釈される。そのため,旧イ号製品は,構成要件D1も充足しない。 (4)構成要件E1ア構成要件E1が規定する「オン・オフのデューティを制御する信号」は,その文言のみから意義を理解することは困難である上,本件明細書1においても,特許請求の範囲と同一又はこれに準じる文言の同語反復がされているだけで,それ以上に具体的内容の開示はなく,当該制御にかかる信号波形の図示すらない。そのため,「オン・オフのデューティを制御する信号」の技術的意義を,本件明細書1から導くことは,極めて困難というほかない。 その内容を確定できない以上,旧イ号製品が同要件を充足しているといえないことは明らかである。 イまた,原告は,本件特許1の出願経過において,直流電圧のパルスが- 13 -オンされてから,次のパルスがオンされるまでの時間が電圧によって変化するような場合は,「オン・オフのデューティ制御」には当たらない旨の意見を述べている。そのため,少なくとも のパルスが- 13 -オンされてから,次のパルスがオンされるまでの時間が電圧によって変化するような場合は,「オン・オフのデューティ制御」には当たらない旨の意見を述べている。そのため,少なくともそのような制御信号は,「オン・オフのデューティを制御する信号」中には含まれないと解される。 この点,旧イ号製品は,アーマチュア押し出し信号出力時間(t1)が前半と後半とに分かれ,ソレノイド5に対する電圧の通電,遮断の時間は,前半と後半とで異なり,電源電圧によっても大きく変化する。そのため,旧イ号製品は,直流電圧のパルスがオンされてから,次のパルスがオンされるまでの時間が電圧によって変化することのない制御を採っておらず,「オン・オフのデューティを制御する信号」には当たらない。 ウしかも,「オン・オフのデューティを制御する信号」は,「駆動回路7に提供された直流電圧を所望の直流電圧に変換すべく該駆動回路7」(構成要件C1)に供給される信号である。しかし,旧イ号製品は,上記(2)記載のとおり,「駆動回路7に提供された直流電圧を所望の直流電圧に変換」を充足していない。 そのため,「オン・オフのデューティを制御する信号」の内容がいかなるものであれ,当該信号を供給することにより実現すると規定されている「所望の直流電圧に変換」が実現されていないのであるから,この観点からも,構成要件E1を充足しない。 (5)構成要件F1構成要件F1は,「(構成要件A1からE1を充足する)ことを特徴とするソレノイド駆動ポンプの制御回路。」であり,構成要件A1からE1までの各構成を具備するソレノイド駆動ポンプの制御回路を規定しているといえる。 しかし,旧イ号製品は,構成要件A1,C1,D1及びE1を,いずれも充足していないのであるから,構成要件F1も充足しないといえ 成を具備するソレノイド駆動ポンプの制御回路を規定しているといえる。 しかし,旧イ号製品は,構成要件A1,C1,D1及びE1を,いずれも充足していないのであるから,構成要件F1も充足しないといえる。 2 争点1-2(旧イ号製品は本件特許発明1と均等なものとしてその技術的範囲に属するか)について- 14 -【原告の主張】本件特許発明1における「所望の直流電圧」(構成要件C1)の文言が,固定の電圧値に限られると解されるとしても,旧イ号製品における「ある程度の幅を持つ電圧値」は,「所望の直流電圧」の均等の範囲内にあり,旧イ号製品は,本件特許発明1の技術的範囲に属する。 (1)非本質的部分(第1要件)本件特許発明1の「所望の直流電圧」(構成要件C1)は,「電源の電圧が高いほど,ソレノイドに供給される電気エネルギが大きくなるので,電源の電圧が高いほど,ソレノイドに供給される電気エネルギを抑制するようにする。これにより,ソレノイドに供給する電気エネルギを一定化する。」ことが本質的部分である。そのため,「ソレノイドに供給する電気エネルギを一定化する」につき,「固定の電圧値」とするか,旧イ号製品のように,「ある程度の幅を持つ電圧値」とするかは,本質的部分ではない。 (2)置換可能性(第2要件)本件特許発明1は,「検出手段5により駆動回路7に電圧を供給する電源1の電圧を検出し,該検出した電圧を演算処理部6において所望の電圧と比較し,ソレノイドの駆動回路7が所望の電圧をソレノイド8に供給すべく駆動回路7に制御信号を供給するので,電源1がソレノイド8を駆動するために適していない電圧である場合においても,駆動回路7に供給される電圧を所望の電圧に変換してソレノイド8に供給することができ」(本件明細書1の段落【0009】),「ユーザー ソレノイド8を駆動するために適していない電圧である場合においても,駆動回路7に供給される電圧を所望の電圧に変換してソレノイド8に供給することができ」(本件明細書1の段落【0009】),「ユーザーが電源電圧を一定にする等の選択を行う必要がない。」(同段落【0032】)という作用効果を有する。 このような作用効果は,ソレノイドに供給する電圧を「固定の電圧値」としても,旧イ号製品のように「ある程度の幅を持つ電圧値」としても共通しており,両者の間には置換可能性がある。 (3)置換容易性(第3要件)- 15 -一般に,定まった一点を指すか,ある程度の幅を持たせるかは,誰しもが経験的に獲得している基本的な選択概念である。「固定の電圧値」を旧イ号製品の「ある程度の幅を持つ電圧値」に置き換えることは,この基本的選択概念に基づく程度のことであり,旧イ号製品製造の時点において,当業者が容易に想到することができたものである。 そのため,両者の間には置換容易性がある。 【被告の主張】旧イ号製品につき,均等論の適用は認められない。 (1)非本質的部分(第1要件)構成要件C1においては,「該検出手段5で検出した直流電圧を一種の制御回路に対応した所望の直流電圧と比較し」た上で,「駆動回路7に提供された直流電圧」を,「所望の直流電圧」,すなわち「一定の電圧値の直流電圧」に変換することこそが,その構成上の本質的部分である。本件明細書1の記載からも,構成要件C1の規定するこのような構成が,構成要件E1と共に,本件特許発明1における解決原理を示していることは明らかである。 したがって,当該部分が本質的部分ではないとする原告の主張は,およそ失当である。 (2)置換可能性(第2要件)構成要件C1の構成のうち,「所望の直流電圧」,すなわち「 ことは明らかである。 したがって,当該部分が本質的部分ではないとする原告の主張は,およそ失当である。 (2)置換可能性(第2要件)構成要件C1の構成のうち,「所望の直流電圧」,すなわち「一定の電圧値の直流電圧」を,「ある程度の幅を持つ電圧値」との構成に置き換えた場合,交流電源の電源電圧が異なれば,変換された後のソレノイドに供給される直流電圧も,一定ではなくなることから,ソレノイドに供給される電気エネルギも一定とはいえないことになる。そのため,上記構成を置換した後の作用効果が,本件特許発明1とおよそ異なるものであることは明らかである。 加えて,旧イ号製品が採用している制御方式は,「駆動回路に供給される直流電圧」を,「ある程度の幅を持つ電圧値」に変換するというような漠然としたも- 16 -のではなく,ソレノイドの発熱を抑制しつつ,ポンプの吐出流量の安定を図るという明確な目的のもとで,具体的に制御を実行しているものである。原告の主張は,旧イ号製品を不正確かつ漠然ととらえている点においても失当というほかない。 よって,旧イ号製品は,いかなる点から考えても,構成要件C1につき,置換可能性の要件を充たしていない。 (3)置換容易性(第3要件)上記(2)のとおり,「所望の直流電圧」について置換可能性の要件は充たされず,そもそも「ある程度の幅を持つ電圧値」との表現は,旧イ号製品の構成を正確に特定しているものでもない。 したがって,置換容易性に関する原告の主張は,その前提を欠いており,およそ失当である。 3 争点1-3(新イ号製品は本件特許発明1の構成要件を文言上充足するか)について【原告の主張】別紙新イ号製品説明書(原告提出)記載のとおりに特定される新イ号製品は,本件特許発明1の各構成要件を充足し,その技術的範 は本件特許発明1の構成要件を文言上充足するか)について【原告の主張】別紙新イ号製品説明書(原告提出)記載のとおりに特定される新イ号製品は,本件特許発明1の各構成要件を充足し,その技術的範囲に属する。 なお,新イ号製品は,旧イ号製品と構成①~④,⑥~⑨で一致し,構成⑤において,分圧回路14を整流器9及びFET11(駆動回路10)間に接続させるのではなく,整流器15を介してトランス6に接続しているという違いがあるに過ぎない。そのため,構成要件A1,C1,D1及びE1の充足性の判断において,旧イ号製品に係る判断と異なるところはない。 (1)構成要件B1本件明細書1の記載から,構成要件B1の「検出手段」は,「電源の電圧を検出する構成」であることは明らかである。 ここで,構成要件B1の「90~264Vの間で電圧が異なる交流電圧の電源- 17 -1から整流されて駆動回路7に提供される直流電圧」は,90~264Vの間で電圧が異なる交流電圧の電源1から,その交流電圧が整流されるまでのステップ①と,交流電圧が整流されてから直流電圧となって駆動回路7に提供されるまでのステップ②という2つの連続する段階を有するが,いずれの段階であっても,電源からの同電位ラインにあるため,電圧を分圧して検出することは可能である。 そのため,構成要件B1は,ステップ①で電圧を分圧して電源電圧を検出する場合と,ステップ②で電圧を分圧して電源電圧を検出する場合の両方を含むと解すべきである。 新イ号製品は,ステップ②の段階で電圧を分圧して電源電圧を検出する旧イ号製品と異なり,ステップ①の段階で電圧を分圧して電源電圧を検出するものであるが,上記のとおり解される構成要件B1を充足することに違いはない。 (2) 新イ号製品は,前記1【原告の主張】の記載と同一の理 品と異なり,ステップ①の段階で電圧を分圧して電源電圧を検出するものであるが,上記のとおり解される構成要件B1を充足することに違いはない。 (2) 新イ号製品は,前記1【原告の主張】の記載と同一の理由(ただし,「第2のCPU8」は「CPU8」と置き換える。)により,構成要件A1,C1,D1及びE1を充足する。 (3)このように新イ号製品は,構成要件A1からE1までをいずれも充足するから,構成要件F1も充足する。 【被告の主張】原告による新イ号製品の特定は相当でない。特に,アーマチュア押し出し信号出力時間の前半と後半とで制御が異なることは,新イ号製品による制御の根幹をなす部分であり,その点を省略すべきではない。また,新イ号製品の正確なブロック図及び特性テーブルは,別紙新イ号製品説明書(被告提出)記載1及び2のとおりで,電源電圧とアーマチュア押し出し信号出力時間の前半及び後半における各平均電圧との対応関係は,別紙新イ号製品説明書(被告提出)記載3のとおりである。 そして,以下のとおり,このような新イ号製品は本件特許発明1の構成要件を充足せず,その技術的範囲に属するものではない。 - 18 -(1)構成要件B1構成要件B1は,その文言に加え,本件明細書1における「・・・この検出手段5は,整流回路4からの電圧を分圧し,例えば0~5V程度に変換し,その変換した電圧を検出する役割を果たす検出部と,該検出された電圧をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換部とから構成されている。」(段落【0012】)などの記載によれば,交流電源の電圧のうちで,整流回路4側に分岐し,駆動回路7に提供される直流電圧を分圧した上で,これを検出する検出手段5について規定している。 これに対し,新イ号製品では,分圧回路18及びCPU8にて電圧検出を のうちで,整流回路4側に分岐し,駆動回路7に提供される直流電圧を分圧した上で,これを検出する検出手段5について規定している。 これに対し,新イ号製品では,分圧回路18及びCPU8にて電圧検出を行っているものの,交流電源1がトランス6及び整流器2の双方に分岐した後に,一方の分岐先であるトランス6によって降圧され,整流器17で整流された後の電圧を検出している。つまり,整流器2側に分岐して,ソレノイド5を駆動するためにFET4bに提供される直流電圧を検出しているわけではない。 したがって,新イ号製品は,駆動回路に提供される直流電圧を検出しているとはいえず,構成要件B1が規定する「検出手段」を充足するとはいえない。 (2)新イ号製品は,前記1【被告の主張】の記載と同一の理由により,構成要件A1,C1,D1及びE1を充足しない。 (3)このように旧イ号製品は,構成要件A1からE1までをいずれも充足していないから,これらの充足を前提とする構成要件F1も充足しない。 4 争点1-4(新イ号製品は本件特許発明1と均等なものとしてその技術的範囲に属するか)について【原告の主張】新イ号製品が構成要件B1及びC1を文言上充足しないとしても,本件特許発明1と均等といえるため,その技術的範囲に属する。 (1)構成要件B1構成要件B1の文言が,ステップ①で電圧を分圧して電源電圧を検出する場合- 19 -を含まず,ステップ②で電圧を分圧して電源電圧を検出する場合に限ると解されるとしても,ステップ①で電圧を分圧して電源電圧を検出する新イ号製品は,構成要件B1の均等の範囲内にある。 ア非本質的部分(第1要件)本件特許発明1は,「検出手段5により駆動回路7に電圧を供給する電源1の電圧を検出し,該検出した電圧を演算処理部6において所望の電 成要件B1の均等の範囲内にある。 ア非本質的部分(第1要件)本件特許発明1は,「検出手段5により駆動回路7に電圧を供給する電源1の電圧を検出し,該検出した電圧を演算処理部6において所望の電圧と比較し,ソレノイドの駆動回路7が所望の電圧をソレノイド8に供給すべく駆動回路7に制御信号を供給するので,電源1がソレノイド8を駆動するために適していない電圧である場合においても,駆動回路7に供給される電圧を所望の電圧に変換してソレノイド8に供給することができ」(本件明細書1の段落【0009】),「ユーザーが電源電圧を一定にする等の選択を行う必要がない。」(同段落【0032】)という作用効果を有するものである。 そのため,構成要件B1においては,「電源電圧を検出する」ことが本質的部分であり,電圧の分圧をステップ①とステップ②のいずれで行うかは本質的部分ではない。 イ置換可能性(第2要件)ステップ②で電圧を分圧して電源電圧を検出しても,新イ号製品のようにステップ①で電圧を分圧して電源電圧を検出しても,「電源電圧を検出する」という目的は一致しており,上記ア記載の作用効果も共通する。 したがって,両者の間には,置換可能性がある。 ウ置換容易性(第3要件)本件特許発明1と新イ号製品とでは,電圧を分圧する箇所こそ異なるものの,電源電圧を検出するまでのルートは実質的に同一である。そのため,前者のルートを後者のルートに置換することは,新イ号製品の製造時点で,当業者にとって容易であったといえる。 エ意識的な除外(第5要件)- 20 -原告は,本件特許1の出願経過において,構成要件B1に係る補正,説明を行ったが,新規性,進歩性の拒絶理由を解消するためではなく,記載不備の拒絶理由を解消するための補正に過ぎず,ステップ①で電圧を 原告は,本件特許1の出願経過において,構成要件B1に係る補正,説明を行ったが,新規性,進歩性の拒絶理由を解消するためではなく,記載不備の拒絶理由を解消するための補正に過ぎず,ステップ①で電圧を分圧して電源電圧を検出する構成を意識的に除外したことを明示又は示唆する記載も一切ない。 したがって,かかる構成を特許請求の範囲から意識的に除外した等の特別の事情はないというべきである。 (2)構成要件C1前記2【原告の主張】欄記載と同じ理由により,本件特許発明1における「所望の直流電圧」(構成要件C1)の文言が,固定の電圧値に限られると解されるとしても,新イ号製品における「ある程度の幅を持つ電圧値」は,「所望の直流電圧」の均等の範囲内にある。 【被告の主張】新イ号製品につき,均等論の適用は認められない。 (1)構成要件B1ア置換可能性(第2要件)新イ号製品の構成は,構成要件B1が規定する構成と比べ,分圧回路に印加される電圧を極めて小さくすることが可能になり(ソレノイドに印加される電圧と比べると約20分の1),これに伴い,分圧回路の抵抗が発熱することを抑制することができるという顕著な作用効果が奏される。そのため,両者には作用効果上の明白な相違点が存在しており,置換可能性はない。イ置換容易性(第3要件)置換可能性がないことに伴う当然の帰結として,置換容易性も認められない。 ウ意識的な除外(第5要件)原告は,本件特許1の出願当初,構成要件B1に当たる部分を「駆動回路7に電圧を提供する電源1の電圧を検出する検出手段5」としていたが,特許法36- 21 -条4項及び6項2号に規定する要件を充たしていないとして拒絶理由通知(乙2)を受けた後,「交流電圧の電源1から整流されて駆動回路7に提供される直流電 出手段5」としていたが,特許法36- 21 -条4項及び6項2号に規定する要件を充たしていないとして拒絶理由通知(乙2)を受けた後,「交流電圧の電源1から整流されて駆動回路7に提供される直流電圧を検出する検出手段5」と補正した。すなわち,検出手段5の検出対象は,当初「電源1の電圧」であったが,手続補正により,「駆動回路7に提供される直流電圧」に限定されたことが明らかである。 そのため,原告は,本件特許1の出願手続において,新イ号製品の構成,すなわち,交流電圧の電源について,トランスを経て降圧,整流された後の電圧を検出するという構成を含め,上記のとおり限定された以外の構成を,意識的に除外しており,特別な事情が存在するといえる。 (2)構成要件C1前記2【被告の主張】欄記載と同じ。 5 争点1-5(ロ号製品は本件特許発明1の構成要件を文言上充足するか)について【原告の主張】別紙ロ号製品説明書(原告提出)記載のとおりに特定されるロ号製品は,新イ号製品と構成①~⑦で一致し,構成⑧,⑨において,「通電時間」及び「遮断時間」のそれぞれに,新イ号製品のような「前半」及び「後半」という概念を有しない点で相違するのみである。そして,かかる相違点は,本件特許発明1の各構成要件の充足性を左右するものではない。 したがって,前記3【原告の主張】欄記載と同じ理由(ただし,(2)で引用する前記1【原告の主張】(3)の「90V近辺の値」は「88~100Vの範囲の値」に置き換える。)により,ロ号製品は,本件特許発明1の各構成要件を充足し,その技術的範囲に属する。 【被告の主張】原告によるロ号製品の特定は相当でない。特に,アーマチュア押し出し信号出力時間中の詳細な制御態様は,ロ号製品による制御の根幹をなす部分であり,そ- 22 -の 範囲に属する。 【被告の主張】原告によるロ号製品の特定は相当でない。特に,アーマチュア押し出し信号出力時間中の詳細な制御態様は,ロ号製品による制御の根幹をなす部分であり,そ- 22 -の点を省略すべきではない。また,ロ号製品の正確なブロック図及び制御データは,別紙ロ号製品説明書(被告提出)記載1及び2のとおりであり,さらに実際の通電時間及び遮断時間は,別紙ロ号製品説明書(被告提出)記載3のとおりで,電源電圧とアーマチュア押し出し信号出力時間の平均電圧との対応関係は,別紙ロ号製品説明書(被告提出)記載4のとおりである。 そして,以下のとおり,このようなロ号製品は本件特許発明1の構成要件を充足せず,その技術的範囲に属するものではない。 (1)構成要件A1「駆動電圧」の文言解釈は,前記1【被告の主張】欄(1)に記載のとおりである。 しかし,後記(3)のとおり,ロ号製品でソレノイドに供給される電圧は,電源電圧により異なっている。そのため,構成要件A1に規定する「駆動電圧」を充足しているとはいえない。 (2)構成要件B1前記3【被告の主張】欄(1)に記載と同一の理由により,ロ号製品は,構成要件B1を充足しない。 (3)構成要件C1構成要件C1の文言解釈は,前記1【被告の主張】欄(2)に記載のとおりである。 しかし,ロ号製品においては,ソレノイド5に印加される電圧は,電源電圧によって大きく異なっており,一定というわけではない。 そのため,ロ号製品は,「所望の直流電圧」,すなわち, 等に予め格納されている一定の電圧値と「比較」することも,かかる電圧に「変換」することも行われておらず,構成要件C1を充足しない。 (4)構成要件D1構成要件D1は,「電源1の電圧に関わりなく前記所望の直流電圧を駆動電 の電圧値と「比較」することも,かかる電圧に「変換」することも行われておらず,構成要件C1を充足しない。 (4)構成要件D1構成要件D1は,「電源1の電圧に関わりなく前記所望の直流電圧を駆動電圧- 23 -としてソレノイド8に供給する」と規定するが,「所望の直流電圧」は,上記(3)と同様,前記1【被告の主張】欄(2)のとおり,「 等に予め格納されている一定の値(設定値)の電圧」すなわち「一定の電圧値の直流電圧」と解釈される。そのため,ロ号製品は,構成要件D1も充足しない。 (5)構成要件E1ア前記1【被告の主張】欄(4)に記載のとおり,「オン・オフのデューティを制御する信号」の技術的意義を,本件明細書1から導くことは,極めて困難というほかない。 その内容を確定できない以上,ロ号製品が同要件を充足しているといえないことは明らかである。 イしかも,「オン・オフのデューティを制御する信号」は,「駆動回路7に提供された直流電圧を所望の直流電圧に変換すべく駆動回路7」(構成要件C1)に供給される信号である。しかし,ロ号製品は,上記(3)記載のとおり,「駆動回路7に提供された直流電圧を所望の直流電圧に変換」を充足していない。 そのため,「オン・オフのデューティを制御する信号」の内容がいかなるものであれ,当該信号を供給することにより実現すると規定されている「所望の直流電圧に変換」が実現されていないのであるから,この観点からも,構成要件E1を充足しない。 (6)構成要件F1構成要件F1は,「ことを特徴とするソレノイド駆動ポンプの制御回路。」であり,構成要件A1からE1までの各構成を具備するソレノイド駆動ポンプの制御回路を規定しているといえる。 しかし,ロ号製品は,構成要件A1,B1,C1,D1及びE1を,いずれも充 制御回路。」であり,構成要件A1からE1までの各構成を具備するソレノイド駆動ポンプの制御回路を規定しているといえる。 しかし,ロ号製品は,構成要件A1,B1,C1,D1及びE1を,いずれも充足していないのであるから,構成要件F1も充足しないといえる。 6 争点1-6(ロ号製品は本件特許発明1と均等なものとしてその技術的範囲に属するか)について- 24 -【原告の主張】ロ号製品が構成要件B1及びC1を文言上充足しないとしても,前記4【原告の主張】欄記載と同じ理由により,本件特許発明1と均等といえるため,その技術的範囲に属する。 【被告の主張】前記4【被告の主張】欄記載と同じ理由により,ロ号製品につき,均等論の適用は認められない。 7 争点2-1(新イ号製品は本件特許発明2の構成要件を文言上充足するか)について【原告の主張】別紙新イ号製品説明書(原告提出)記載のとおりに特定される新イ号製品は,本件特許発明2の各構成要件を充足し,その技術的範囲に属する。 (1)構成要件A2及びE2構成要件A2及びE2は,本件特許発明1の構成要件A1及びE1とそれぞれ同じである。 そのため,新イ号製品は,前記3【原告の主張】欄の記載と同一の理由により,構成要件A2及びE2を充足する。 (2)構成要件B2構成要件B2の「電圧が異なる交流電圧の電源1から整流されて駆動回路7に提供される直流電圧を検出する検出手段5」は,電圧が異なる交流電圧の電源1から,その交流電圧が整流されるまでのステップ①と,交流電圧が整流されてから直流電圧となって駆動回路7に提供されるまでのステップ②という2つの連続する段階を有するが,いずれの段階であっても,電源からの同電位ラインにあるため,電圧を分圧して検出することは可能である。そのため, 流電圧となって駆動回路7に提供されるまでのステップ②という2つの連続する段階を有するが,いずれの段階であっても,電源からの同電位ラインにあるため,電圧を分圧して検出することは可能である。そのため,構成要件B2は,ステップ①で電圧を分圧して電源電圧を検出する場合と,ステップ②で電圧を分圧して電源電圧を検出する場合の両方を含むと解すべきである。 - 25 -新イ号製品は,ステップ②の段階で電圧を分圧して電源電圧を検出する旧イ号製品と異なり,ステップ①の段階で電圧を分圧して電源電圧を検出するものであるが,上記のとおり解される構成要件B2を充足するといえる。 (3)構成要件C2ア 「所望の直流電圧」とは,本件明細書2の「検出した電圧に基づいて,駆動回路7に提供された直流電圧を所望の電圧に変換するように,演算処理部6において,ソレノイドの駆動回路7が所望の電圧をソレノイド8に供給すべく駆動回路7に制御信号を供給するので,電源1がソレノイド8を駆動するために適していない電圧である場合においても,駆動回路7に供給される電圧を所望の電圧に変換してソレノイド8に供給することができる。」(段落【0018】)などの記載からも明らかなとおり,「ソレノイドを駆動するために適している電圧」のことである。固定の電圧値である必然性は全くなく,「ソレノイドを駆動するために適していない電圧」を除き,電圧値にある程度の幅を許容する概念である。 被告の主張(後記【被告の主張】(3))は,実施例に関する些末な記載を参酌したもので,本件特許発明2の本質を無視した不当に限定的な解釈である。 また,「所望の直流電圧」には,「一定の電気エネルギをソレノイド8に供給するための」という修飾句が付いているが,「一定」との文言は,ある傾向・状態に落ち着くとの意味でも用いられるのであ である。 また,「所望の直流電圧」には,「一定の電気エネルギをソレノイド8に供給するための」という修飾句が付いているが,「一定」との文言は,ある傾向・状態に落ち着くとの意味でも用いられるのであるから,この修飾句を考慮しても,「所望の直流電圧」がある程度の幅を許容するとの解釈が妨げられるものではない。 イ新イ号製品の「FET11及びトランジスタ12」,「分圧回路14及びCPU8」は,それぞれ本件特許発明2の「駆動回路7」,「検出手段5」である。 そして,新イ号製品は,電源電圧によって,ソレノイドに供給される電圧に違いはあるものの,「特性テーブル」によって,電源の各種電圧を90V近辺の値に変換しているのであり,かかる90V近辺の値こそ,新イ号製品にとって,ソ- 26 -レノイドの規格に適した「所望の直流電圧」である。すなわち,新イ号製品の「CPU8」は,「検出手段5」に当たる「分圧回路14及びCPU8」で検出した直流電圧に基づき,「駆動回路7」に当たる「FET11」に提供された直流電圧を,特性テーブルを通じて上記「所望の直流電圧」に変換すべく「駆動回路7」に当たる「FET11及びトランジスタ12」に制御信号を送っているのであるから,本件特許発明2の「演算処理部6」そのものといえる。 したがって,新イ号製品は,本件特許発明2の構成要件C2を充足する。 (4)構成要件D2新イ号製品の「制御部1」は,各種の回路要素(整流器9,FET11,トランジスタ12,分圧回路14,CPU8など)で構成されており,本件特許発明2の「制御回路」に当たる。そして,新イ号製品は,構成要件D2が前提とする構成要件A2からC2までを各充足する。 したがって,新イ号製品は,「ソレノイド駆動ポンプの制御回路であって,」(構成要件D2)を充足すると 当たる。そして,新イ号製品は,構成要件D2が前提とする構成要件A2からC2までを各充足する。 したがって,新イ号製品は,「ソレノイド駆動ポンプの制御回路であって,」(構成要件D2)を充足するといえる。 (5)構成要件F2このように新イ号製品は,構成要件A2からE2までをいずれも充足するから,構成要件F2も充足する。 【被告の主張】以下のとおり,別紙新イ号製品説明書(被告提出)記載のとおりに特定される新イ号製品は,本件特許発明2の構成要件を充足せず,その技術的範囲に属するものではない。 (1)構成要件A2及びE2構成要件A2及びE2は,本件特許発明1の構成要件A1及びE1とそれぞれ同一である。 そのため,新イ号製品は,前記3【被告の主張】欄の記載と同一の理由により,構成要件A2及びE2を充足しない。 - 27 -(2)構成要件B2構成要件B2は,その文言に加え,本件明細書2における「・・・この検出手段5は,整流回路4からの電圧を分圧し,例えば0~5V程度に変換し,その変換した電圧を検出する役割を果たす検出部と,該検出された電圧をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換部とから構成されている。」(段落【0023】)などの記載によれば,交流電源の電圧のうちで,整流回路4側に分岐し,駆動回路7に提供される直流電圧を検出する検出手段5について規定している。 これに対し,新イ号製品では,分圧回路18及びCPU8にて電圧検出を行っているものの,交流電源1がトランス6及び整流器2の双方に分岐した後に,一方の分岐先であるトランス6によって降圧され,整流器17で整流された後の電圧を検出している。つまり,整流器2側に分岐して,ソレノイド5を駆動するためにFET4bに提供される直流電圧を検出しているわけではない。 るトランス6によって降圧され,整流器17で整流された後の電圧を検出している。つまり,整流器2側に分岐して,ソレノイド5を駆動するためにFET4bに提供される直流電圧を検出しているわけではない。 したがって,新イ号製品は,駆動回路に提供される直流電圧を検出しているとはいえず,構成要件B2が規定する「検出手段」を充足するとはいえない。 (3)構成要件C2ア構成要件C2は,検出手段5で検出した直流電圧に基づいて,駆動回路7に提供された直流電圧を,一定のエネルギをソレノイド8に供給するための「所望の直流電圧」に「変換」すべく,駆動回路7に制御信号を供給する演算処理部6について規定している。ここで「所望の直流電圧」について,原告の主張するように幅のある数値が許容されるとすれば,なぜソレノイドに対して「一定の電気エネルギが供給」されることになるのか説明がつかない。 そして,本件明細書2における「演算処理部6は,ポンプの運転を制御可能な制御部9に電気的に接続されていると共に,駆動電圧等の予め記憶されている設定値を供給可能な, 等のデータ供給部11に接続されている。」(段落【0024】),「更に,演算処理部6には, 等のデータ供給部11から,予め設定された駆動電圧(以下,設定値という)が入力される。」(段落【0029】),- 28 -「前記演算処理部6においては,/ 変換部5からの入力値が調整され,ソレノイド8を駆動する駆動電圧を前記設定値とすべく,オン・オフのデューティを調整する制御信号が制御部9に送られる。」(【0032】)などの記載も考慮すれば,「所望の直流電圧」とは,具体的には 等に予め格納されている一定の値(設定値)の電圧,すなわち一定の電圧値の直流電圧を意味するものと解される。 イしかし,新イ号製品 どの記載も考慮すれば,「所望の直流電圧」とは,具体的には 等に予め格納されている一定の値(設定値)の電圧,すなわち一定の電圧値の直流電圧を意味するものと解される。 イしかし,新イ号製品においては,新イ号製品説明書(被告提出)で詳細に記載,特にその図7及び図8で示されているとおり,駆動部のソレノイド5に印加される電圧は,電源電圧によって大きく異なっており,一定というわけではない上,同一の電源電圧の場合においてさえも,アーマチュア押し出し信号出力時間(t1)の前半と後半とで大きく異なっている。そのため,新イ号製品は,「所望の直流電圧」,すなわち, 等に予め格納されている一定の電圧値に「変換」することを行っておらず,構成要件C2を充足しない。(4)構成要件D2構成要件D2は,構成要件A2からC2までの各構成を備える「ソレノイド駆動ポンプの制御回路」を規定するものである。 しかし,新イ号製品は,構成要件A2からC2までを充足しないから,構成要件D2も充足しない。 (5)構成要件F2以上のように新イ号製品は,構成要件A2からE2までをいずれも充足しないから,これらの充足を前提とする構成要件F2も充足しない。 8 争点2-2(新イ号製品は本件特許発明2と均等なものとしてその技術的範囲に属するか)について【原告の主張】新イ号製品が構成要件B2及び構成要件C2を文言上充足しないとしても,本- 29 -件特許発明2と均等といえるため,その技術的範囲に属する。 (1)構成要件B2構成要件B2の文言が,ステップ①で電圧を検出する場合を含まず,ステップ②で電圧を検出する場合に限ると解されるとしても,ステップ①で電圧を検出する新イ号製品は,構成要件B2の均等の範囲内にある。 ア非本質的部分(第1要件 ップ①で電圧を検出する場合を含まず,ステップ②で電圧を検出する場合に限ると解されるとしても,ステップ①で電圧を検出する新イ号製品は,構成要件B2の均等の範囲内にある。 ア非本質的部分(第1要件)前記4【原告の主張】欄の記載と同一の理由により,「電源電圧を検出する」ことが本質的部分であり,電圧の分圧をステップ①とステップ②のいずれで行うかは本質的部分ではない。 イ置換可能性(第2要件)ステップ②で電圧を検出しても,新イ号製品のようにステップ①で電圧を検出しても,「電源電圧を検出する」という目的は一致しており,前記4【原告の主張】欄に記載の作用効果も共通する。 したがって,両者の間には,置換可能性がある。 ウ置換容易性(第3要件)本件特許発明2と新イ号製品とでは,電圧を分圧する箇所こそ異なるものの,電源電圧を検出するまでのルートは実質的に同一である。そのため,前者のルートを後者のルートに置換することは,新イ号製品の製造時点で,当業者にとって容易であったといえる。 エ意識的な除外(第5要件)原告は,本件特許2の出願経過において,構成要件B2に係る補正,説明を行ったが,新規性,進歩性の拒絶理由を解消するためではなく,記載不備の拒絶理由を解消するための補正に過ぎず,ステップ①で電圧を分圧して電源電圧を検出する構成を意識的に除外したことを明示又は示唆する記載も一切ない。 したがって,かかる構成を特許請求の範囲から意識的に除外した等の特別の事情はないというべきである。 - 30 -(2)構成要件C2本件特許発明2における「所望の直流電圧」(構成要件C2)の文言が,固定の電圧値に限られると解されるとしても,新イ号製品における「ある程度の幅を持つ電圧値」は,「所望の直流電圧」の均等の範囲内にある。 ア 明2における「所望の直流電圧」(構成要件C2)の文言が,固定の電圧値に限られると解されるとしても,新イ号製品における「ある程度の幅を持つ電圧値」は,「所望の直流電圧」の均等の範囲内にある。 ア非本質的部分(第1要件)本件特許発明2の「所望の直流電圧」(構成要件C2)は,「電源の電圧が高いほど,ソレノイドに供給される電気エネルギが大きくなるので,電源の電圧が高いほど,ソレノイドに供給される電気エネルギを抑制するようにする。これにより,ソレノイドに供給する電気エネルギを一定化する。」ことが本質的部分である。そのため,「ソレノイドに供給する電気エネルギを一定化する」ことにつき,「固定の電圧値」とするか,旧イ号製品のように,「ある程度の幅を持つ電圧値」とするかは,本質的部分ではない。 イ置換可能性(第2要件)「固定の電圧値」とすることと,新イ号製品のように「ある程度の幅を持った電圧値」とすることは,いずれも,「ソレノイドに供給する電気エネルギを一定化する」という目的が一致しており,また,本件特許発明2の作用効果としても共通している。 したがって,両者の間には置換可能性がある。 ウ置換容易性(第3要件)一般に,定まった一点を指すか,ある程度の幅を持たせるかは,誰しもが経験的に獲得している基本的な選択概念である。「固定の電圧値」を新イ号製品の「ある程度の幅を持つ電圧値」に置き換えることは,この基本的選択概念に基づく程度のことであり,新イ号製品製造の時点において,当業者が容易に想到することができたものである。 そのため,両者の間には置換容易性がある。 【被告の主張】- 31 -新イ号製品につき,均等論の適用は認められない。 (1)構成要件B2ア置換可能性(第2要件)新イ号製品の構成は,構成要件B2 の間には置換容易性がある。 【被告の主張】- 31 -新イ号製品につき,均等論の適用は認められない。 (1)構成要件B2ア置換可能性(第2要件)新イ号製品の構成は,構成要件B2が規定する構成と比べ,分圧回路に印加される電圧を極めて小さくすることが可能になり(ソレノイドに印加される電圧と比べると約20分の1),これに伴い,分圧回路の抵抗が発熱することを抑制することができるという顕著な作用効果が奏される。そのため,両者には作用効果上の明白な相違点が存在しており,置換可能性はない。イ置換容易性(第3要件)置換可能性がないことに伴う当然の帰結として,置換容易性も認められない。 ウ意識的な除外(第5要件)原告は,本件特許2の出願当初,構成要件B2に当たる部分を「駆動回路7に電圧を提供する電源1の電圧を検出する検出手段5」としていたが,特許法29条2項に該当するとして拒絶理由通知(乙22)を受けた後,「交流電圧の電源1から整流されて駆動回路7に提供される直流電圧を検出する検出手段5」と補正した。すなわち,検出手段5の検出対象は,当初「電源1の電圧」であったが,手続補正により,「駆動回路7に提供される直流電圧」に限定されたことが明らかである。 そのため,原告は,本件特許2の出願手続において,新イ号製品の構成,すなわち,交流電圧の電源について,トランスを経て降圧,整流された後の電圧を検出するという構成を含め,上記のとおり限定された以外の構成を,意識的に除外した特別な事情が存在するといえる。 (2)構成要件C2ア非本質的部分(第1要件)構成要件C2においては,「該検出手段5で検出した直流電圧」に基づいて,- 32 -「駆動回路7に提供された直流電圧」を,「電源1の電圧に関わりなく一定の電気エ ア非本質的部分(第1要件)構成要件C2においては,「該検出手段5で検出した直流電圧」に基づいて,- 32 -「駆動回路7に提供された直流電圧」を,「電源1の電圧に関わりなく一定の電気エネルギをソレノイド8に供給するための所望の直流電圧」,すなわち「一定の電圧値の直流電圧」に変換することこそが,その構成上の本質的部分である。 本件明細書2の記載からも,構成要件C2の規定するこのような構成が,構成要件E2と共に,本件特許発明2における解決原理を示していることは明らかである。 したがって,当該部分が本質的部分ではないとする原告の主張は,およそ失当である。 イ置換可能性(第2要件)構成要件C2の構成のうち,「所望の直流電圧」,すなわち「一定の電圧値の直流電圧」を,「ある程度の幅を持つ電圧値」との構成に置き換えた場合,交流電源の電源電圧が異なれば,変換された後のソレノイドに供給される直流電圧も,一定ではなくなることになるから,ソレノイドに供給される電気エネルギも一定とはいえないことになる。そのため,上記構成を置換した後の作用効果が,本件特許発明2とおよそ異なるものであることは明らかである。 加えて,新イ号製品が採用している制御方式は,「駆動回路に供給される直流電圧」を,「ある程度の幅を持つ電圧値」に変換するというような漠然としたものではなく,ソレノイドの発熱を抑制しつつ,ポンプの吐出流量の安定を図るという明確な目的のもとで,具体的に制御を実行しているものである。原告の主張は,新イ号製品を不正確かつ漠然ととらえている点においても失当というほかない。 よって,新イ号製品は,いかなる点から考えても,構成要件C2につき,置換可能性の要件を充たしていない。 ウ置換容易性(第3要件)上記イのとおり,「所望の直流電圧」に 当というほかない。 よって,新イ号製品は,いかなる点から考えても,構成要件C2につき,置換可能性の要件を充たしていない。 ウ置換容易性(第3要件)上記イのとおり,「所望の直流電圧」について置換可能性の要件は充たされず,そもそも「ある程度の幅を持つ電圧値」との表現は,新イ号製品の構成を正確に- 33 -特定しているものでもない。 したがって,置換容易性に関する原告の主張は,その前提を欠いており,およそ失当である。 9 争点3-1(本件特許発明1に係る進歩性欠如(乙27文献))について【被告の主張】(1)乙27発明本件特許1の優先日前に公開された実開平4-62368号のマイクロフィルム(乙27。以下「乙27文献」という。)には,燃料ポンプにおいて,加えられる電源電圧が変動した場合に伴う,プランジャの往復動の範囲の変動を解消しようとするものであり,その目的のため,電磁コイルへ印加するパルス電流のパルス幅を,供給電力が常に一定になるよう電源電圧に応じて変化させる発明(以下「乙27発明」という。)が開示されている。 より具体的には,乙27発明の燃料ポンプは,本件特許発明1の場合と同じく,ソレノイド(電磁コイル)に電流を印加することで発生する電磁力を利用した上で,ソレノイド(電磁コイル)に電流を断続的に印加することにより,鉄心を往復動させる方式の電磁駆動ポンプである。そして,その燃料ポンプにおける制御は,燃料ポンプの電磁コイル10に印加するパルス電流のパルス幅を,印加される電源電圧が高い場合には短くし,電源電圧が低い場合にはパルス幅を長くするようにして,パルス電流を制御するというものである。 (2)本件特許発明1と乙27発明との対比本件特許発明1と乙27発明を対比すると,一致点及び相違点は,以下のとおりで にはパルス幅を長くするようにして,パルス電流を制御するというものである。 (2)本件特許発明1と乙27発明との対比本件特許発明1と乙27発明を対比すると,一致点及び相違点は,以下のとおりである。 ア構成要件A1乙27発明の構成と一致する。 イ構成要件B1構成要件B1につき,本件特許発明1と乙27発明とは,駆動回路に提供され- 34 -る直流電圧を検出する検出手段を備えている点で一致し,以下の点では形式的に相違する。 相違点① 本件特許発明1では,駆動回路に提供される直流電圧が,交流電源から整流されたものであるのに対し,乙27発明においては,駆動回路に提供される直流電圧が,直流電源の電圧である点。 相違点② 本件特許発明1では,90~264Vの間で異なる電圧の電源に対応しているのに対し,乙27発明においては,同一電源における電圧変動に対応することを前提としている点。 相違点③ 本件特許発明1では,駆動回路に提供される直流電圧を「分圧して」検出するのに対し,乙27発明においては,駆動回路に提供される直流電圧の検出方法について限定がない点。 ウ構成要件C1乙27発明の構成と一致する。 「制御信号」の一致については,後記オ記載のとおりである。 エ構成要件D1乙27発明の構成と一致する。 オ構成要件E1本件特許発明1の「オン・オフのデューティを制御する信号」の技術的意義は明確でないが,本件特許1の当初明細書にパルス幅制御方式が例示されていたことからすれば,パルス幅制御方式による制御信号が含まれるものと解される。 一方,乙27発明は,電源電圧の値に応じてパルス幅を変化させるというパルス幅制御方式を備えている。 したがって,構成要件E1も,乙27発明の構成と一致するといえる。 が含まれるものと解される。 一方,乙27発明は,電源電圧の値に応じてパルス幅を変化させるというパルス幅制御方式を備えている。 したがって,構成要件E1も,乙27発明の構成と一致するといえる。 カ構成要件F1乙27発明の構成と一致する。 (3)容易想到性- 35 -ア相違点①交流電圧を整流し,直流電圧に変換して利用することは,広く一般的に行われていることであり,そのための整流回路も周知である(甲22)。 したがって,相違点①は,乙27発明の実施に当たって,当業者が任意に変更し得る程度のものに過ぎないし,また,乙27文献には,実質的には駆動回路に提供される直流電圧を交流電源から整流されたものとする場合が記載されているともいえ,実質的な相違点とはいえない。 イ相違点②本件特許1の優先日前に公開された特開平5-170038号公報(乙28。 以下「乙28文献」という。)には,自動車用エンジン制御装置につき,バッテリ電圧が上昇するにつれ,燃料ポンプ制御信号22Aのオン時間の比率を下げることで,バッテリの電圧が上昇しても,燃料ポンプに供給される電力が一定に保たれるという発明(以下「乙28発明」という。)が開示されている。そして,乙28文献には,乙28発明により,電源電圧が異なる場合でも制御装置を変更することなく対応できることが明記されており,その範囲としても12~48Vが例示され,下限の電源電圧の4倍もの電源電圧にまで対応可能なことが示されている。 これに対し,本件特許発明1は,世界各国で一般に用いられている商用電源の電圧,すなわち90~264V(乙30)の間で異なる電圧の電源に対応するということであるから,これは下限の電源電圧の約3倍弱の電源電圧までに対応するということになる。 そして,乙27発明の制 の電圧,すなわち90~264V(乙30)の間で異なる電圧の電源に対応するということであるから,これは下限の電源電圧の約3倍弱の電源電圧までに対応するということになる。 そして,乙27発明の制御対象が燃料ポンプであるのに対し,乙28発明も制御対象に燃料ポンプを含めているため,両者には技術分野の共通性があり,組み合わせの動機付けが存在している。加えて,両者ともに,ポンプに供給される電源電圧が高くなるにつれ,ポンプをオンにする時間の比率を下げるという制御を行っている点で,基本的な制御方法が同一であり,技術の親和性は高い。一方で,- 36 -これらの組み合わせを阻害する要因はない。 したがって,乙27発明に,乙28発明の異なる電源電圧に対応させる構成を適用した上で,対応する電源電圧の範囲を,世界各国で一般に用いられている商用電源の電圧値である90V~264Vとすることは,当業者であれば容易に想到可能なものといえる。 ウ相違点③「分圧」とは,電気回路において,2つ以上の抵抗器を直列に接続した時に,各抵抗器にかかる電圧が,抵抗器の各抵抗値に比例するという性質を利用して,抵抗値の比で電圧を下げ,必要な電圧を取り出すことをいう。 電圧を測定する際に,分圧により,入力電圧を測定可能な範囲に下げることは,一般に採用されている周知・慣用技術であるし(乙31),また,分圧により電圧計への入力電圧を下げて,電圧計の測定範囲を拡大することも広く行われている(乙32)。 よって,乙27文献においても,駆動回路に提供される直流電圧を検出する際に,これを分圧して検出することは,実質的に記載されているといえ,相違点③は実質的な相違点とはいえない。 (4)小括したがって,本件特許発明1は,乙27発明に乙28発明の構成を組み合わせることで容 れを分圧して検出することは,実質的に記載されているといえ,相違点③は実質的な相違点とはいえない。 (4)小括したがって,本件特許発明1は,乙27発明に乙28発明の構成を組み合わせることで容易に想到できたといえる。 【原告の主張】(1)本件特許発明1と乙27発明との相違点本件特許発明1と乙27発明とには,少なくとも以下の相違点がある。 ア相違点1本件特許発明1は,駆動回路に提供される直流電圧が,交流電源から整流されたものであり,しかも,90~264Vの間で異なる電圧の交流電源に対応しているのに対し,乙27発明は,駆動回路に提供される直流電圧が,直流電源の電- 37 -圧であり,しかも,同一電源における電圧変動に対応している構成である点で相違している。 イ相違点2本件特許発明1は,「駆動回路に供給する制御信号が,駆動回路に提供される直流電圧をスイッチングし,オン・オフのデューティを制御する信号」を備えるのに対し,乙27発明では,「駆動回路に供給する制御信号が,電磁コイルに印加する電流のパルス幅を制御する信号」,すなわち,「パルス幅制御信号」である点で相違する。 この点,本件特許1の当初明細書に,「オン・オフのデューティを制御する信号」としてパルス幅制御方式が挙げられていたことは確かであるが,その記載は出願経過において,あえて削除されているのであるから,文言解釈において参酌すべきではない。 (2)容易想到性ア相違点1相違点1の容易想到性に関する被告の論理構成は,乙27発明に,乙28発明の構成を適用するという第1の創出過程を経た上で,さらに,カタログ(乙30)に記載の構成を適用するという第2の創出過程を経るという,二つの創出過程を備えている。 このような論理は,① カタログ(乙30)の記 するという第1の創出過程を経た上で,さらに,カタログ(乙30)に記載の構成を適用するという第2の創出過程を経るという,二つの創出過程を備えている。 このような論理は,① カタログ(乙30)の記載は,入力電圧として「85~264V」というものであるから,これのみを用いて,「世界各国で一般に用いられている商用電源の電圧が90V~264Vである」とするのは誤りであるという第1の要因と,② 乙27発明に係る電源が,車両の直流電源であるため,乙27発明に,交流電源を適用することが技術的かつ思想的にありえないという第2の要因と,③ 第1の創出過程を経た上で,第2の創出過程を経るという二つの連続した創出過程を経る必要があるという第3の要因とにより,当業者が容易に想到できる範囲を明らかに超えている。 - 38 -イ相違点2相違点2に係る本件特許発明1の構成は,乙27文献だけでなく,乙28文献や他の証拠(乙30~32)にも全く開示されていないのであるから,当業者にとって容易に想到することはできない。 (3)小括したがって,本件特許発明1は,乙27発明に乙28発明の構成を組み合わせることで容易に想到できたものとはいえない。 争点3-2(本件特許発明1に係る進歩性欠如(乙29文献))について【被告の主張】(1)乙29発明本件特許1の優先日前に公開された特開平5-272391号公報(乙29。 以下「乙29文献」という。)には,燃料噴射量を電磁弁の開閉制御により調節するようにした燃料噴射装置に関するものであり,電磁弁に供給される電圧が変化した場合にも,電磁弁を駆動する駆動パルスを補正して,電磁弁の応答性を確保する発明(以下「乙29発明」という。)が開示されている。 (2)本件特許発明1と乙29発明との対比本件特許発明 が変化した場合にも,電磁弁を駆動する駆動パルスを補正して,電磁弁の応答性を確保する発明(以下「乙29発明」という。)が開示されている。 (2)本件特許発明1と乙29発明との対比本件特許発明1と乙29発明を対比すると,一致点及び相違点は,以下のとおりである。 ア構成要件A1本件特許発明1は,ソレノイド駆動ポンプ,すなわち,ソレノイドに電流を印加することで発生する電磁力を利用して,アーマチュアを往復動させる方式の電磁駆動ポンプの制御に関するものである。一方,乙29発明は,ソレノイド32に電流を印加することで発生する電磁力を利用して,アーマチュア31に連結された弁体23を往復動させる電磁弁20を用いた燃料噴射装置の制御に関するものである。そのため,形式的には,前者がソレノイド駆動ポンプ,後者が電磁弁を用いた燃料噴射装置であるという点で異なるが,実質的には,両者とも,ソレ- 39 -ノイド(電磁コイル)に電流を印加することで発生する電磁力を利用してアーマチュアを往復動させる制御に関するものであり,この点において同一の技術といえる。両者の違いは,単にアーマチュアの先端部にダイヤフラムが付いているか,又は弁体が付いているかというものにすぎず,本質的な差異はない。よって,ソレノイドを使用した電磁弁の制御が記載されている乙29文献には,技術的に見た場合には,ソレノイド駆動ポンプの制御が記載されているに等しいといえる。 また,乙29発明の「コントロールユニット40及びバッテリー電圧検出部45」が,本件特許発明1の「制御回路」に当たること,「FET250」が,「駆動回路7」に当たることも,明らかである。 したがって,本件特許発明1の構成要件A1は,乙29発明の構成と一致するといえる。 イ構成要件B1構成要件B1につき,本 FET250」が,「駆動回路7」に当たることも,明らかである。 したがって,本件特許発明1の構成要件A1は,乙29発明の構成と一致するといえる。 イ構成要件B1構成要件B1につき,本件特許発明1と乙29発明とは,駆動回路に提供される直流電圧を検出する検出手段を備えている点で一致し,以下の点で相違する。 相違点① 本件特許発明1では,駆動回路に提供される直流電圧が,交流電源から整流されたものであるのに対し,乙29発明においては,駆動回路に提供される直流電圧が,直流電源の電圧である点。 相違点② 本件特許発明1では,90~264Vの間で異なる電圧の電源に対応しているのに対し,乙29発明においては,同一電源における電圧変動に対応することを前提としている点。 相違点③ 本件特許発明1では,駆動回路に提供される直流電圧を「分圧して」検出するのに対し,乙29発明においては,駆動回路に提供される直流電圧の検出方法について限定がない点。 ウ構成要件C1乙29発明の構成と一致する。 「制御信号」の一致については,後記オ記載のとおりである。 - 40 -エ構成要件D1乙29発明の構成と一致する。 オ構成要件E1原告は,「オン・オフのデューティを制御する信号」について,「駆動電圧の各パルス内において,ソレノイドの動作に影響を与えない程度の微小単位時間でオンとオフとを周期的に切り替え,オン時間とオフ時間との比率を変える」制御のための信号を意味する旨主張する。そのような記載や示唆は,本件明細書1にはなく,根拠を欠いた解釈であるが,仮に原告の主張する解釈を前提にしても,乙29文献には,駆動パルス内において,微小単位時間でオンとオフとを周期的に切り替える制御信号につき,電源電圧の値に応じて,オン時間とオフ時 欠いた解釈であるが,仮に原告の主張する解釈を前提にしても,乙29文献には,駆動パルス内において,微小単位時間でオンとオフとを周期的に切り替える制御信号につき,電源電圧の値に応じて,オン時間とオフ時間との比率を変えることが記載されている。 したがって,構成要件E1も,乙29発明の構成と一致するといえる。 カ構成要件F1乙29発明の構成と一致する。 (3)容易想到性ア相違点①交流電圧を整流し,直流電圧に変換して利用することは,広く一般的に行われていることであり,そのための整流回路も周知である(甲22)。 したがって,相違点①は,乙29発明の実施に当たって,当業者が任意に変更し得る程度のものに過ぎないし,また,乙29文献には,実質的には駆動回路に提供される直流電圧を交流電源から整流されたものとする場合が記載されているともいえ,実質的な相違点とはいえない。 イ相違点②乙28文献には,自動車用エンジン制御装置につき,バッテリ電圧が上昇するにつれ,燃料ポンプ制御信号22Aのオン時間の比率を下げることで,バッテリの電圧が上昇しても,燃料ポンプに供給される電力が一定に保たれるという発明- 41 -(乙28発明)が開示されている。そして,乙28文献には,電源電圧が異なる場合でも,制御装置を変更することなく対応できることが明記されており,その範囲としても12~48Vが例示され,下限の電源電圧の4倍もの電源電圧にまで対応可能なことが示されている。 これに対し,本件特許発明1は,世界各国で一般に用いられている商用電源の電圧,すなわち90~264V(乙30)の間で異なる電圧の電源に対応するということであるから,これは下限の電源電圧の約3倍弱の電源電圧までに対応するということになる。 そして,乙29発明の制御対象がソレ なわち90~264V(乙30)の間で異なる電圧の電源に対応するということであるから,これは下限の電源電圧の約3倍弱の電源電圧までに対応するということになる。 そして,乙29発明の制御対象がソレノイドを用いた電磁弁であるのに対し,乙28発明も制御対象に燃料ポンプを含めているため,両者には技術分野の共通性があり,組み合わせの動機付けが存在している。加えて,両者ともに,ポンプに供給される電源電圧が高くなるにつれ,ソレノイドを駆動するパルス信号のデューティ比を下げるという制御を行っている点で,基本的な制御方法が同一であり,技術の親和性は高い。一方で,これらの組み合わせを阻害する要因はない。 したがって,乙29発明に,乙28発明の異なる電源電圧に対応させる構成を適用した上で,対応する電源電圧の範囲を,世界各国で一般に用いられている商用電源の電圧値である90V~264Vとすることは,当業者であれば容易に想到可能なものといえる。 ウ相違点③「分圧」とは,電気回路において,2つ以上の抵抗器を直列に接続した時に,各抵抗器にかかる電圧が,抵抗器の各抵抗値に比例するという性質を利用して,抵抗値の比で電圧を下げ,必要な電圧を取り出すことをいう。 電圧を測定する際に,分圧により,入力電圧を測定可能な範囲に下げることは,一般に採用されている周知・慣用技術であるし(乙31),また,分圧により電圧計への入力電圧を下げて,電圧計の測定範囲を拡大することも広く行われている(乙32)。 - 42 -よって,乙29文献においても,駆動回路に提供される直流電圧を検出する際に,これを分圧して検出することは,実質的に記載されているといえ,相違点③は実質的な相違点とはいえない。 (4)小括したがって,本件特許発明1は,乙29発明に乙28発明の構成を組み 検出する際に,これを分圧して検出することは,実質的に記載されているといえ,相違点③は実質的な相違点とはいえない。 (4)小括したがって,本件特許発明1は,乙29発明に乙28発明の構成を組み合わせることで容易に想到できたといえる。 【原告の主張】(1)本件特許発明1と乙29発明の相違点本件特許発明1と乙29発明とには,少なくとも以下の相違点がある。 ア相違点1本件特許発明1は,ソレノイド駆動ポンプのソレノイドに駆動電圧を供給する構成であるのに対し,乙29発明は,燃料噴射装置の電磁弁のソレノイドに駆動電圧を供給する構成である点で相違する。 イ相違点2本件特許発明1は,駆動回路に提供される直流電圧が,交流電源から整流されたものであり,しかも,90~264Vの間で異なる電圧の交流電源に対応しているのに対し,乙29発明は,駆動回路に提供される直流電圧が,直流電源の電圧であり,しかも,同一電源における電圧変動に対応している構成である点で相違している。 ウ相違点3本件特許発明1は,駆動回路に供給する制御信号が,駆動回路に提供される直流電圧をスイッチングし,オン・オフのデューティを制御する信号を備えるのに対し,乙29発明は,FETに供給する制御信号が,駆動回路に提供される直流電圧をスイッチングし,目標となる燃料噴射量に基づいて,駆動パルス幅を連続的に制御する信号を備える点で相違する。 すなわち,乙29発明は,目標となる燃料噴射量に基づいて,「駆動パルス- 43 -幅」を連続的に制御し,しかも,バッテリ電圧に基づいて,各「駆動パルス幅」における「強制期間」と「制限期間」との幅を制御すると共に,「制限期間」におけるオン・オフのデューティを制御するもので,これにより,目標となる量の燃料を噴射する上で,電磁弁 いて,各「駆動パルス幅」における「強制期間」と「制限期間」との幅を制御すると共に,「制限期間」におけるオン・オフのデューティを制御するもので,これにより,目標となる量の燃料を噴射する上で,電磁弁の着座時期が変化することを防止するものである。 そのため,乙29発明は,ソレノイドに供給する電力を一定化するものではなく,電気エネルギを一定化させる本件特許発明1の「制御する信号」とは異なるといえる。 (2)容易想到性ア相違点1本件特許発明1と乙29発明とは,相違点1に係る構成を異にするだけでなく,前者が,ソレノイドの発熱量が大きくなることを防止するという目的を達成するために,電源の電圧に関わらず,ソレノイドに供給する駆動電圧の各パルスにおける電気エネルギを一定化するものであるのに対し,後者が,必要な量の燃料を噴射するという目的を達するため,必要な燃料の量に応じ,ソレノイドの発熱量を考慮することなく,ソレノイドに供給する駆動電圧の各パルスにおける電気エネルギを制御(変化)するもの,即ち,電気エネルギを一定化しないものであり,目的や制御方式まで異なっている。そのため,乙29発明に,乙28発明の構成や他の証拠(乙30~32)に記載の技術的事項を適用したとしても,当業者が本件特許発明1を容易に想到することはあり得ない。 イ相違点2相違点2の容易想到性に関する被告の論理構成は,乙29発明に,乙28発明の構成を適用するという第1の創出過程を経た上で,さらに,カタログ(乙30)に記載の構成を適用するという第2の創出過程を経るという,二つの創出過程を備えている。 このような論理は,① カタログ(乙30)の記載は,入力電圧として「85~264V」というものであるから,これのみを用いて,「世界各国で一般に- 44 -用いられている商用 程を備えている。 このような論理は,① カタログ(乙30)の記載は,入力電圧として「85~264V」というものであるから,これのみを用いて,「世界各国で一般に- 44 -用いられている商用電源の電圧が90V~264Vである」とするのは誤りであるという第1の要因と,② 乙27発明に係る電源が,車両の直流電源であるバッテリなため,乙27発明に,交流電源を適用することが技術的かつ思想的にありえないという第2の要因と,③ 第1の創出過程を経た上で,第2の創出過程を経るという二つの連続した創出過程を経る必要があるという第3の要因とにより,当業者が容易に想到できる範囲を明らかに超えている。 ウ相違点3乙29発明は,電気エネルギを一定化しない制御方式であり,本件特許発明1の構成,すなわち,直流電圧をスイッチングし,オン・オフのデューティを制御することで,ソレノイドに供給する電気エネルギを一定化する構成とは全く異なること,本件特許発明1の上記構成は,乙29文献だけでなく,乙28文献や他の証拠(乙30~32)にも全く開示されていないことからすれば,相違点3に係る構成は,当業者にとって容易に想到することができないものといえる。 (3)小括したがって,本件特許発明1は,乙29発明に乙28発明の構成を組み合わせることで容易に想到できたものとはいえない。 11 争点3-3(本件特許発明1に係る進歩性欠如(乙28文献))について【被告の主張】(1)乙28発明乙28文献に開示されている乙28発明は,自動車用エンジン制御装置につき,バッテリ電圧が上昇するにつれ,燃料ポンプ制御信号22Aのオン時間の比率を下げることで,バッテリの電圧が上昇しても,燃料ポンプに供給される電力が一定に保たれるという発明である。そして,乙28文献には,乙28 電圧が上昇するにつれ,燃料ポンプ制御信号22Aのオン時間の比率を下げることで,バッテリの電圧が上昇しても,燃料ポンプに供給される電力が一定に保たれるという発明である。そして,乙28文献には,乙28発明により,電源電圧が異なる場合でも制御装置を変更することなく対応できることが明記されており,その範囲としても12~48Vが例示され,下限の電源電圧の4倍もの電源電圧にまで対応可能なことが示されている。 - 45 -(2)本件特許発明1と乙28発明との対比本件特許発明1と乙28発明を対比すると,一致点及び相違点は以下のとおりである。 ア構成要件A1乙28発明が制御対象とする自動車用の「燃料ポンプ」としては,原告が本件特許発明1に係る「ソレノイド駆動ポンプ」に当たると自認している方式のポンプ(甲41~44)が広く使用されており,「燃料噴射装置」や「燃料噴射ポンプ」(甲45~51)と呼ばれるものに限定されるものでないことは技術常識である。そのため,乙28発明の「燃料ポンプ221」は,本件特許発明1の「ソレノイド駆動ポンプのソレノイド8」に当たる。 そして,乙28発明の「燃料ポンプ回路220」は,バッテリ電圧VBをオン・オフして,「ソレノイド駆動ポンプのソレノイド8」に当たる「燃料ポンプ221」を駆動するものであるから,構成要件A1の「駆動回路7」に当たる。 したがって,構成要件A1は,乙28発明の構成と一致する。 イ構成要件B1構成要件B1につき,本件特許発明1と乙28発明とは,駆動回路に提供される直流電圧を検出する検出手段を備えている点で一致し,以下の点では形式的に相違する。 相違点① 本件特許発明1では,駆動回路に提供される直流電圧が,90~264Vの間で電圧が異なる交流電源から整流されたものであるのに対し を備えている点で一致し,以下の点では形式的に相違する。 相違点① 本件特許発明1では,駆動回路に提供される直流電圧が,90~264Vの間で電圧が異なる交流電源から整流されたものであるのに対し,乙28発明においては,駆動回路に提供される直流電圧が,12~48Vの直流電源の電圧である点。 相違点② 本件特許発明1では,駆動回路に提供される直流電圧を「分圧して」検出するのに対し,乙28発明においては,駆動回路に提供される直流電圧の検出方法について限定がない点。 ウ構成要件C1- 46 -乙28発明の構成と一致する。 「制御信号」の一致については,後記オ記載のとおりである。 エ構成要件D1乙28発明の構成と一致する。 オ構成要件E1原告は,本件特許発明1の「駆動回路7に提供される直流電圧をスイッチングし,オン・オフのデューティを制御する信号」である「制御信号」について,駆動電圧の各パルス内において,ソレノイドの動作に影響を与えない程度の微小単位時間でオンとオフとを周期的に切り替え,オン時間とオフ時間との比率を変える制御のための信号を意味する旨主張する。そのような記載や示唆は,本件明細書1にはなく,根拠を欠いた解釈であるが,仮に原告の主張する解釈を前提にしても,乙28発明は,そのような「制御信号」を備えているといえる。 すなわち,乙28発明は,検出した電源電圧値を定格電圧と比較した上で,電源電圧が定格電圧よりも高い場合には,矩形波信号18Aのデューティ(パルス幅Aとその周期Bとの比)を100%から所定の値にまで低下させ,燃料ポンプに供給される電流及び電力の実効値を同じ値に保つものであるが,その「制御信号22a」は,燃料ポンプ制御信号22Aがオンの間に,矩形波信号18Aのオン時間とオフ時間の比率(デュ で低下させ,燃料ポンプに供給される電流及び電力の実効値を同じ値に保つものであるが,その「制御信号22a」は,燃料ポンプ制御信号22Aがオンの間に,矩形波信号18Aのオン時間とオフ時間の比率(デューティ)を変化させるものであるから,上記「制御信号」にほかならない。 したがって,構成要件E1も,乙28発明の構成と一致するといえる。 カ構成要件F1乙28発明の構成と一致する。 (3)容易想到性ア相違点①交流電圧を整流し,直流電圧に変換して利用することは,広く一般的に行われていることであり,そのための整流回路も周知である(甲22)。そのため,こ- 47 -の点は,実質的な相違点とはいえない。 次に乙28発明では,12Vのバッテリのみならず,将来的に採用されるであろう24Vや48Vという異なる電源電圧に対し,制御装置を変更することなく対応可能なことが記載されており,その範囲は,下限の電源電圧の4倍にまで及ぶ。一方,本件特許発明1では,世界各国で一般に用いられている商用電源の電圧,すなわち90~264V(乙30)の間で異なる電圧の電源に対応するというのであるから,下限の電源電圧の約3倍弱の電源電圧までに対応しているに過ぎない。 したがって,この点も,技術的に格別の相違ではなく,乙28発明を実施するに当たって,当業者が任意に変更し得る程度のものに過ぎず,実質的な相違点とはいえない。 イ相違点②「分圧」とは,電気回路において,2つ以上の抵抗器を直列に接続した時に,各抵抗器にかかる電圧が,抵抗器の各抵抗値に比例するという性質を利用して,抵抗値の比で電圧を下げ,必要な電圧を取り出すことをいう。 電圧を測定する際に,分圧により,入力電圧を測定可能な範囲に下げることは,一般に採用されている周知・慣用技術であるし( う性質を利用して,抵抗値の比で電圧を下げ,必要な電圧を取り出すことをいう。 電圧を測定する際に,分圧により,入力電圧を測定可能な範囲に下げることは,一般に採用されている周知・慣用技術であるし(乙31),また,分圧により電圧計への入力電圧を下げて,電圧計の測定範囲を拡大することも広く行われている(乙32)。 よって,乙28文献においても,駆動回路に提供される直流電圧を検出する際に,これを分圧して検出することは,実質的に記載されているといえ,相違点②は実質的な相違点とはいえない。 (4)小括したがって,本件特許発明1は,乙28発明に基づき容易に想到できたものといえ,また,後記12記載の乙43発明を組み合わせることでも容易に想到できたといえる。 - 48 -【原告の主張】(1)本件特許発明1と乙28発明の相違点乙28発明は,「自動車用燃料ポンプの制御回路」であって,「燃料ポンプ回路」に提供される直流電圧をスイッチングし,オン・オフのデューティを制御する構成である。一方,本件特許発明1は,「ソレノイド駆動ポンプの制御回路」であって,駆動回路に提供される直流電圧をスイッチングし,駆動パルス内におけるオン・オフのデューティを制御する構成である。 そして,乙28発明における「燃料ポンプ221」は,自動車用の燃料ポンプであるため,乙28文献の図1にコイルが図示されていることからも分かるとおり,ソレノイドではなく,電動機(モータ)を駆動源としている上,その往復駆動を,ポンプ動作体にではなく,バルブの開閉動作に用いるものである。このようなポンプは,一般に「ソレノイド駆動ポンプ」とは呼ばず,「電磁弁の開閉で燃料の供給を制御するポンプ」や「電子制御の燃料ポンプ」などと呼ばれる。 したがって,本件特許発明1と乙28発明は,対象と うなポンプは,一般に「ソレノイド駆動ポンプ」とは呼ばず,「電磁弁の開閉で燃料の供給を制御するポンプ」や「電子制御の燃料ポンプ」などと呼ばれる。 したがって,本件特許発明1と乙28発明は,対象とするポンプが相違しており,技術分野としても全くかけ離れているといえる。 (2)容易想到性アバルブを動作するためにソレノイドを用いるポンプ(乙45~51)の構成は,連続的に変化する燃料噴射量に基づいてソレノイドに駆動電圧を供給するもの,すなわち,時間が連続的に変化する駆動パルスに応じて駆動電圧をソレノイドに供給する構成である。そのため,かかる構成を乙28発明に適用すると,時間が連続的に変化する駆動パルスに応じて,一定化された電圧をソレノイドに供給する構成になるため,各駆動パルスに応じてソレノイドに供給する電気エネルギが一定化されないものとなり,本件特許発明1に到達しないことは明らかである。 このように,乙28発明を主引例として,本件特許発明1の容易想到性を試みる被告の主張そのものが誤りであり,本件特許発明1と乙28発明とを詳細に対- 49 -比するまでもなく,本件特許発明1の進歩性は当然に認められるべきである。 イ後記12記載の乙43発明には,「特定の期間におけるオン・オフのデューティを制御する」という技術思想がなく,また,技術上そのようにすることの必然性がない。そのため,乙28発明と乙43発明の間には適用阻害要因が存在している。 また,仮に乙28発明に乙43発明を組み合わせることができたとしても,乙28発明と乙43発明は,いずれも本件特許発明1とは全くかけ離れた技術分野のものであり,本件特許発明1に想到するものではない。 このように,乙28発明と乙43発明の双方を踏まえても,本件特許発明1の進歩性は認められるべきである。 件特許発明1とは全くかけ離れた技術分野のものであり,本件特許発明1に想到するものではない。 このように,乙28発明と乙43発明の双方を踏まえても,本件特許発明1の進歩性は認められるべきである。 12 争点3-4(本件特許発明1に係る進歩性欠如(乙43文献))について【被告の主張】(1)乙43発明本件特許1の優先日前に公開された特開平7-46838号公報(乙43。以下「乙43文献」という。)には,電子機器本体内に,電池パックを交換可能に設けた電子機器において,DC/DCコンバータ(様々な電圧値の直流電圧を,一定の電圧値の直流電圧に変換する機器)を上記電池パックと交換可能に設ける構造にしたことを特徴とする電子機器の発明(乙43)が開示されているが,この電子機器は,DC/DCコンバータにより,複数の異なる直流電圧をいずれも一定の値の直流電圧に変換し,様々な電圧の電源に対応可能となることが記載されている。 (2)本件特許発明1と乙43発明の対比本件特許発明1と乙43発明を対比すると,一致点及び相違点は以下のとおりである。 ア構成要件A1乙43発明の制御対象は,「トランスの1次側コイル」であるが,本件特許発- 50 -明1の「ソレノイド駆動ポンプのソレノイド」と同様の電磁気的機能を有するものであるから,乙43発明の「1次側コイル」は本件特許発明1の「ソレノイド駆動ポンプのソレノイド」に当たる。 また,乙43発明の「動作モード切換回路67,パルス巾変調回路66,ドライバ65及びスイッチング回路64」が,本件特許発明1の「制御回路」に当たり,「スイッチング回路64」が,「駆動回路7」に当たるといえる。 したがって,本件特許発明1の構成要件A1は,乙43発明の構成と一致するといえる。 イ構成要件B1構 「制御回路」に当たり,「スイッチング回路64」が,「駆動回路7」に当たるといえる。 したがって,本件特許発明1の構成要件A1は,乙43発明の構成と一致するといえる。 イ構成要件B1構成要件B1につき,本件特許発明1と乙43発明とは,電圧が異なる交流電圧の電源から整流されて駆動回路に提供される直流電圧を検出する検出手段を備えている点で一致し,以下の点で形式的に相違する。 相違点① 本件特許発明1では,電源電圧が90~264Vであるのに対し,乙43発明においては12~140Vである点。 相違点② 本件特許発明1では,駆動回路に提供される直流電圧を「分圧して」検出するのに対し,乙43発明においては,駆動回路に提供される直流電圧の検出方法について限定がない点。 ウ構成要件C1乙43発明の構成と一致する。 「制御信号」の一致については,後記オ記載のとおりである。 エ構成要件D1乙43発明の構成と一致する。 オ構成要件E1本件特許発明1の「駆動回路7に提供される直流電圧をスイッチングし,オン・オフのデューティを制御する信号」である「制御信号」の意義は不明であるが,出願経過における原告の意見を参酌すれば,PWM制御を含むものといえる。 - 51 -そして,乙43発明は,動作モード切換え回路67において入力電圧を検出し,該検出電圧値に応じて,スイッチング回路64のスイッチング・タイミングを制御し,これによって出力電極63に出力される電圧が一定になるように制御するものであるが,これがPWM制御であることは,乙43文献にも明示されている。 そのため,動作モード切換え回路67,パルス巾変調回路66は,本件特許発明1の「駆動回路7」に当たるスイッチング回路64に,「制御信号」に当たるPWM制御信号を供 乙43文献にも明示されている。 そのため,動作モード切換え回路67,パルス巾変調回路66は,本件特許発明1の「駆動回路7」に当たるスイッチング回路64に,「制御信号」に当たるPWM制御信号を供給しているといえ,構成要件E1も,乙43発明の構成と一致するといえる。 カ構成要件F1乙43発明の構成と一致する。 (3)容易想到性ア構成要件A1に係る相違点について仮に,本件特許発明1の「ソレノイド駆動ポンプのソレノイド」と,乙43発明の「トランスの1次側コイル」を相違点であると見ても,両者は電磁気的機能を有するコイルである点で共通している。そのため,乙43発明の制御対象をソレノイド駆動ポンプのソレノイド(コイル)として,本件特許発明1と形式的にも同一の構成とすることは,当業者であれば容易に想到し得ることである。 また,この点は,乙43発明に乙28発明を組み合わせることでも容易に想到し得るといえる。すなわち,本件特許発明1と乙43発明において,その課題は,入力電圧が異なっても,同一の機器を使用できるようにするということで共通しているが,これは交流電源を用いる電気機器に共通の課題である(世界各国の商用交流電源電圧が異なっていることは周知であり,実際にも,ドライヤー等の家電製品やパソコンは,国内の100V系電圧のみならず,海外の200V系やその他の電源電圧にも対応しているものが多いことも周知である。)。 一方,仮に本件特許発明1の課題解決手段たる制御方法が,原告が主張するところのオン時間とオフ時間の比率を変えてソレノイド(コイル)に印加する電圧- 52 -を一定に保つものであるとすれば,この課題解決手段も周知のものであり,乙43発明及び乙28発明における制御方法と共通のものである。 そうすると,上記周知の課題の下, )に印加する電圧- 52 -を一定に保つものであるとすれば,この課題解決手段も周知のものであり,乙43発明及び乙28発明における制御方法と共通のものである。 そうすると,上記周知の課題の下,オン時間とオフ時間の比率を変えてソレノイド(コイル)に印加する電圧を一定に保つという共通の周知手段を採用している乙43発明と乙28発明とを組み合わせ,乙43発明の制御対象を,乙28発明に記載されている燃料ポンプ(ソレノイド駆動ポンプ)のソレノイドとすることは,当業者が容易に想到し得ることといえる。 イ構成要件B1に係る相違点について(ア) 相違点①乙43発明では,異なる電源電圧に対応可能なことが記載されており,例示されているだけでも12~140V,つまり,下限の電源電圧値(12V)の12倍もの電源電圧にまで対応可能となっている。これに対し,本件特許発明1では,世界各国で一般に用いられている商用電源の電圧,すなわち90~264V(乙30)の間で異なる電圧の電源に対応するというのであるから,下限の電源電圧の約3倍弱の電源電圧までに対応しているに過ぎない。したがって,この点は,技術的に格別の相違ではなく,乙43発明を実施するに当たって,当業者が任意に変更し得る程度のものに過ぎず,実質的な相違点とはいえない。 (イ) 相違点②「分圧」とは,電気回路において,2つ以上の抵抗器を直列に接続した時に,各抵抗器にかかる電圧が,抵抗器の各抵抗値に比例するという性質を利用して,抵抗値の比で電圧を下げ,必要な電圧を取り出すことをいう。電圧を測定する際に,分圧により,入力電圧を測定可能な範囲に下げることは,一般に採用されている周知・慣用技術であるし(乙31),また,分圧により電圧計への入力電圧を下げて,電圧計の測定範囲を拡大することも広く する際に,分圧により,入力電圧を測定可能な範囲に下げることは,一般に採用されている周知・慣用技術であるし(乙31),また,分圧により電圧計への入力電圧を下げて,電圧計の測定範囲を拡大することも広く行われている(乙32)。- 53 -よって,乙43文献においても,駆動回路に提供される直流電圧を検出する際に,これを分圧して検出することは,実質的に記載されているといえ,相違点②は実質的な相違点とはいえない。 (4)小括したがって,本件特許発明は,乙43発明に基づき容易に想到できたものといえ,また,乙28発明を組み合わせることでも容易に想到できたといえる。 【原告の主張】(1)本件特許発明1と乙43発明の相違点乙43発明は,「電子機器の電源供給の制御回路」であって,電源が供給されている間は連続的に発生するオン・オフのデューティを制御(PWM制御)することで,出力する電圧を一定にする構成である。一方,本件特許発明1は,「ソレノイド駆動ポンプの制御回路」であるが,「ソレノイド駆動ポンプ」は,ソレノイド(電磁石)に駆動電圧を供給することで,アーマチュア(鉄心)が押し出されてストッパに当たるまで往動し,駆動電圧の供給を遮断することで,アーマチュアが復動する,アーマチュアの往復運動をポンプストロークに利用したポンプである。言い換えれば,駆動電圧の供給と供給遮断とを交互に繰り返さないと,ソレノイド駆動ポンプは駆動しない。駆動電圧の供給遮断を行う期間,すなわち,駆動パルスが発生していない期間は,文字通り駆動電圧が供給されていない状態なので,「オン・オフのデューティを制御する」ということはあり得ない。そのため,本件特許発明1において,「オン・オフのデューティを制御する」とは,駆動パルス内におけるオン・オフのデューティを制御するというこ 「オン・オフのデューティを制御する」ということはあり得ない。そのため,本件特許発明1において,「オン・オフのデューティを制御する」とは,駆動パルス内におけるオン・オフのデューティを制御するということにほかならない。したがって,乙43発明は,電源が供給されていれば,その間はずっとオン・オフのデューティを制御しているのに対し,本件特許発明1は,周期的(断続的)に発生する駆動パルス内におけるオン・オフのデューティを制御する構成である点で,両者は相違する。 「ソレノイド駆動ポンプの制御回路」である本件特許発明1と「電子機器の電- 54 -源供給の制御回路」である乙43発明とが全くかけ離れた技術分野であることも踏まえると,かかる相違は,本件特許発明1と乙43発明との関係において決定的である。 このように,乙43発明を主引例として,本件特許発明1の容易想到性を試みた被告の主張そのものが誤りであり,本件特許発明1と乙43発明とを詳細に対比するまでもなく,本件特許発明1の進歩性は当然に認められるべきである。 (2)容易想到性被告は,乙43発明に乙28発明を組み合わせることで本件特許発明1は容易に想到できる旨主張する。 しかし,乙43発明は,「電子機器の電源供給の制御回路」であり,電子機器の使用時に電源をオンにし,その後電子機器を使用している(駆動している)間は電源が常時オンで,最終的に電子機器の使用を止める際に電源をオフにすることが技術常識である。つまり,乙43発明には,駆動パルスの概念が存在しない。 そのため,乙28発明のようなソレノイド駆動ポンプの制御回路が周知のものであったとしても,そのような技術的事項を乙43発明に適用し,本件特許発明1に到達するためにしたはずであるという示唆は当然存在せず,そのような試みをしたであろうと ド駆動ポンプの制御回路が周知のものであったとしても,そのような技術的事項を乙43発明に適用し,本件特許発明1に到達するためにしたはずであるという示唆は当然存在せず,そのような試みをしたであろうという推測さえも成り立たない。 さらに,駆動パルスの概念が存在しない乙43発明に上記技術的事項を適用することは,乙43発明の「制御回路」が全ての制御回路を含むかのように上位概念化した上での判断である。そのような判断は,乙43発明の開示する技術的意義を離れ,抽象的な意義に基づき本件特許発明1と対比することで,排除されるべき後知恵を混入したものであり,到底許されない。 13 争点3-5(本件特許発明1に係る明確性要件違反(特許法36条6項2号)及び実施可能要件違反(特許法36条4項1号))について【被告の主張】構成要件E1が規定する「オン・オフのデューティを制御する信号」は,その- 55 -文言から意義を理解することが困難である。また,本件明細書1での関連する開示内容も,単に「オン・オフのデューティ制御」という文言が同語反復がなされているだけで,当該制御に係る信号の波形の図示すらなされていない。そのため,「オン・オフのデューティを制御する信号」の技術的意義を,本件明細書1の開示から導くことは,極めて困難というほかない。 したがって,本件特許発明1は不明確である(特許法36条6項2号)と共に,実施不可能といえ(特許法36条4項1号),本件特許1は無効を免れない。 【原告の主張】「デューティ」とは,「周期的な現象において,ある期間に占めるその期間で現象が継続される期間」のことであり,一般的に知られた用語である。 そして,かかる用語の定義により,「オン・オフのデューティ」とは,「周期的なオン・オフの繰り返しにおいて,オンが継続され の期間で現象が継続される期間」のことであり,一般的に知られた用語である。 そして,かかる用語の定義により,「オン・オフのデューティ」とは,「周期的なオン・オフの繰り返しにおいて,オンが継続される期間及びオフが継続される期間」ということであり,「オン・オフのデューティを制御する」とは,「周期的なオン・オフの繰り返しにおいて,オンが継続される期間及びオフが継続される期間を制御する」ということであり,「オン・オフのデューティを制御する信号」とは,「周期的なオン・オフの繰り返しにおいて,オンが継続される期間及びオフが継続される期間を制御する信号」ということである。 したがって,本件特許発明1の「オン・オフのデューティを制御する信号」の意義は明確であり,明確性要件(特許法36条6項2号)及び実施可能要件(特許法36条4項1号)に欠けるところはない。 14 争点4-1(本件特許発明2に係る進歩性欠如(乙27文献))について【被告の主張】(1)本件特許発明2と乙27発明との対比本件特許2の優先日前に公開された乙27文献には,乙27発明が開示されているが,本件特許発明2と乙27発明を対比すると,一致点及び相違点は以下のとおりである。 - 56 -ア構成要件A2乙27発明の構成と一致する。 イ構成要件B2構成要件B2につき,本件特許発明2と乙27発明とは,駆動回路に提供される直流電圧を検出する検出手段を備えている点で一致し,以下の点では形式的に相違する。 相違点① 本件特許発明2では,駆動回路に提供される直流電圧が,交流電源から整流されたものであるのに対し,乙27発明においては,駆動回路に提供される直流電圧が,直流電源の電圧である点。 相違点② 本件特許発明2では,異なる電圧の電源に対応しているのに対し, 流電源から整流されたものであるのに対し,乙27発明においては,駆動回路に提供される直流電圧が,直流電源の電圧である点。 相違点② 本件特許発明2では,異なる電圧の電源に対応しているのに対し,乙27発明においては,同一電源における電圧変動に対応することを前提としている点。 ウ構成要件C2乙27発明の構成と一致する。 「制御信号」の一致については,後記オ記載のとおりである。 エ構成要件D2乙27発明の構成と一致する。 オ構成要件E2本件特許発明2の「オン・オフのデューティを制御する信号」の技術的意義は明確でないが,本件特許2の当初明細書にパルス幅制御方式が例示されていたことからすれば,パルス幅制御方式による制御信号が含まれるものと解される。 一方,乙27発明は,電源電圧の値に応じてパルス幅を変化させるというパルス幅制御方式を備えている。 したがって,構成要件E2も,乙27発明の構成と一致するといえる。 カ構成要件F2乙27発明の構成と一致する。 - 57 -(2)容易想到性ア相違点①交流電圧を整流し,直流電圧に変換して利用することは,広く一般的に行われていることであり,そのための整流回路も周知である(甲22)。 したがって,相違点①は,乙27発明の実施に当たって,当業者が任意に変更し得る程度のものに過ぎないし,また,乙27文献には,実質的には駆動回路に提供される直流電圧を交流電源から整流されたものとする場合が記載されているともいえ,実質的な相違点とはいえない。 イ相違点②本件特許2の優先日前に公開された乙28文献には,自動車用エンジン制御装置につき,バッテリ電圧が上昇するにつれ,燃料ポンプ制御信号22Aのオン時間の比率を下げることで,バッテリの電圧が上昇しても,燃料 件特許2の優先日前に公開された乙28文献には,自動車用エンジン制御装置につき,バッテリ電圧が上昇するにつれ,燃料ポンプ制御信号22Aのオン時間の比率を下げることで,バッテリの電圧が上昇しても,燃料ポンプに供給される電力が一定に保たれるという発明(乙28発明)が開示されている。そして,乙28文献には,乙28発明により,電源電圧が異なる場合でも制御装置を変更することなく対応できることが明記されており,その範囲としても12~48Vが例示され,下限の電源電圧の4倍もの電源電圧にまで対応可能なことが示されている。 これに対し,本件特許発明2は,対応可能な電源電圧の範囲を規定していないが,世界各国で一般に用いられている商用電源の電圧,すなわち90~264V(乙30)の間で異なる電圧の電源に対応していることが本件明細書2で開示されていることからすると,これは下限の電源電圧の約3倍弱の電源電圧までに対応するということになる。 そして,乙27発明の制御対象が燃料ポンプであるのに対し,乙28発明も制御対象に燃料ポンプを含めているため,両者には技術分野の共通性があり,組み合わせの動機付けが存在している。加えて,両者ともに,ポンプに供給される電源電圧が高くなるにつれ,ポンプをオンにする時間の比率を下げるという制御を- 58 -行っている点で,基本的な制御方法が同一であり,技術の親和性は高い。一方で,これらの組み合わせを阻害する要因はない。 したがって,乙27発明に,乙28発明の異なる電源電圧に対応させる構成を適用することは,当業者であれば容易に想到可能なものといえる。 (3)小括したがって,本件特許発明2は,乙27発明に乙28発明の構成を組み合わせることで容易に想到できたといえる。 【原告の主張】(1)本件特許発明2と乙27発明との相 ものといえる。 (3)小括したがって,本件特許発明2は,乙27発明に乙28発明の構成を組み合わせることで容易に想到できたといえる。 【原告の主張】(1)本件特許発明2と乙27発明との相違点本件特許発明2と乙27発明とには,少なくとも以下の相違点がある。 すなわち,本件特許発明2は,「駆動回路に供給する制御信号が,駆動回路に提供される直流電圧をスイッチングし,オン・オフのデューティを制御する信号」を備えるのに対し,乙27発明では,「駆動回路に供給する制御信号が,電磁コイルに印加する電流のパルス幅を制御する信号」,すなわち,「パルス幅制御信号」である点で相違する。 この点,本件特許2の当初明細書に,「オン・オフのデューティを制御する信号」としてパルス幅制御方式が挙げられていたことは確かであるが,その記載は出願経過において,あえて削除されているのであるから,文言解釈において参酌すべきではない。 (2)容易想到性相違点に係る本件特許発明2の構成は,乙27文献だけでなく,乙28文献や他の証拠(乙30~32)にも全く開示されていないのであるから,当業者にとって容易に想到することはできない。 (3)小括したがって,本件特許発明2は,乙27発明に乙28発明の構成を組み合わせることで容易に想到できたものとはいえない。 - 59 -争点4-2(本件特許発明2に係る進歩性欠如(乙29文献))について【被告の主張】(1)本件特許発明2と乙29発明の対比本件特許2の優先日前に公開された乙29文献には,乙29発明が開示されているが,本件特許発明2と乙29発明を対比すると,一致点及び相違点は以下のとおりである。 ア構成要件A2本件特許発明2は,ソレノイド駆動ポンプ,すなわち,ソレノイドに電流を印加す 示されているが,本件特許発明2と乙29発明を対比すると,一致点及び相違点は以下のとおりである。 ア構成要件A2本件特許発明2は,ソレノイド駆動ポンプ,すなわち,ソレノイドに電流を印加することで発生する電磁力を利用して,アーマチュアを往復動させる方式の電磁駆動ポンプの制御に関するものである。一方,乙29発明は,ソレノイド32に電流を印加することで発生する電磁力を利用して,アーマチュア31に連結された弁体23を往復動させる電磁弁20を用いた燃料噴射装置の制御に関するものである。そのため,形式的には,前者がソレノイド駆動ポンプ,後者が電磁弁を用いた燃料噴射装置であるという点で異なるが,実質的には,両者とも,ソレノイド(電磁コイル)に電流を印加することで発生する電磁力を利用してアーマチュアを往復動させる制御に関するものであり,この点において同一の技術といえる。両者の違いは,単にアーマチュアの先端部にダイヤフラムが付いているか,又は弁体が付いているかというものにすぎず,本質的な差異はない。よって,ソレノイドを使用した電磁弁の制御が記載されている乙29文献には,技術的に見た場合には,ソレノイド駆動ポンプの制御が記載されているに等しいといえる。 また,乙29発明の「コントロールユニット40」及び「バッテリー電圧検出部45」が,本件特許発明2の「制御回路」に当たること,「FET250」が,「駆動回路7」に当たることも,明らかである。 したがって,本件特許発明2の構成要件A2は,乙29発明の構成と一致するといえる。 イ構成要件B2- 60 -構成要件B2につき,本件特許発明2と乙29発明とは,駆動回路に提供される直流電圧を検出する検出手段を備えている点で一致し,以下の点で相違する。 相違点① 本件特許発明2では,駆動回路 0 -構成要件B2につき,本件特許発明2と乙29発明とは,駆動回路に提供される直流電圧を検出する検出手段を備えている点で一致し,以下の点で相違する。 相違点① 本件特許発明2では,駆動回路に提供される直流電圧が,交流電源から整流されたものであるのに対し,乙29発明においては,駆動回路に提供される直流電圧が,直流電源の電圧である点。 相違点② 本件特許発明2では,異なる電圧の電源に対応しているのに対し,乙29発明においては,同一電源における電圧変動に対応することを前提としている点。 ウ構成要件C2乙29発明の構成と一致する。 「制御信号」の一致については,後記オ記載のとおりである。 エ構成要件D2乙29発明の構成と一致する。 オ構成要件E2原告は,「オン・オフのデューティを制御する信号」について,「駆動電圧の各パルス内において,ソレノイドの動作に影響を与えない程度の微小単位時間でオンとオフとを周期的に切り替え,オン時間とオフ時間との比率を変える」制御のための信号を意味する旨主張する。そのような記載や示唆は,本件明細書2にはなく,根拠を欠いた解釈であるが,仮に原告の主張する解釈を前提にしても,乙29文献には,駆動パルス内において,微小単位時間でオンとオフとを周期的に切り替える制御信号につき,電源電圧の値に応じて,オン時間とオフ時間との比率を変えることが記載されている。 したがって,構成要件E2も,乙29発明の構成と一致するといえる。 (2)容易想到性ア相違点①交流電圧を整流し,直流電圧に変換して利用することは,広く一般的に行われ- 61 -ていることであり,そのための整流回路も周知である(甲22)。 したがって,相違点①は,乙29発明の実施に当たって,当業者が任意に変更し得る程 して利用することは,広く一般的に行われ- 61 -ていることであり,そのための整流回路も周知である(甲22)。 したがって,相違点①は,乙29発明の実施に当たって,当業者が任意に変更し得る程度のものに過ぎないし,また,乙29文献には,実質的には駆動回路に提供される直流電圧を交流電源から整流されたものとする場合が記載されているともいえ,実質的な相違点とはいえない。 イ相違点②乙28文献には,自動車用エンジン制御装置につき,バッテリ電圧が上昇するにつれ,燃料ポンプ制御信号22Aのオン時間の比率を下げることで,バッテリの電圧が上昇しても,燃料ポンプに供給される電力が一定に保たれるという発明(乙28発明)が開示されている。そして,乙28文献には,電源電圧が異なる場合でも,制御装置を変更することなく対応できることが明記されており,その範囲としても12~48Vが例示され,下限の電源電圧の4倍もの電源電圧にまで対応可能なことが示されている。 これに対し,本件特許発明2は,対応可能な電源電圧の範囲を規定していないが,世界各国で一般に用いられている商用電源の電圧,すなわち90~264V(乙30)の間で異なる電圧の電源に対応していることが本件明細書2に開示されていることからすると,これは下限の電源電圧の約3倍弱の電源電圧までに対応するということになる。 そして,乙29発明の制御対象がソレノイドを用いた電磁弁であるのに対し,乙28発明も制御対象に燃料ポンプを含めているため,両者には技術分野の共通性があり,組み合わせの動機付けが存在している。加えて,両者ともに,ポンプに供給される電源電圧が高くなるにつれ,ソレノイドを駆動するパルス信号のデューティ比を下げるという制御を行っている点で,基本的な制御方法が同一であり,技術の親和性は高い。一方 て,両者ともに,ポンプに供給される電源電圧が高くなるにつれ,ソレノイドを駆動するパルス信号のデューティ比を下げるという制御を行っている点で,基本的な制御方法が同一であり,技術の親和性は高い。一方で,これらの組み合わせを阻害する要因はない。 したがって,乙29発明に,乙28発明の異なる電源電圧に対応させる構成を適用することは,当業者であれば容易に想到可能なものといえる。 - 62 -(3)小括したがって,本件特許発明2は,乙29発明に乙28発明の構成を組み合わせることで容易に想到できたといえる。 【原告の主張】(1)本件特許発明2と乙29発明の相違点本件特許発明2と乙29発明とには,少なくとも以下の相違点がある。 ア相違点1本件特許発明2は,ソレノイド駆動ポンプのソレノイドに駆動電圧を供給する構成であるのに対し,乙29発明は,燃料噴射装置の電磁弁のソレノイドに駆動電圧を供給する構成である点で相違する。 イ相違点2本件特許発明2は,駆動回路に供給する制御信号が,駆動回路に提供される直流電圧をスイッチングし,オン・オフのデューティを制御する信号を備えるのに対し,乙29発明は,FETに供給する制御信号が,駆動回路に提供される直流電圧をスイッチングし,目標となる燃料噴射量に基づいて,駆動パルス幅を連続的に制御する信号を備える点で相違する。 すなわち,乙29発明は,目標となる燃料噴射量に基づいて,「駆動パルス幅」を連続的に制御し,しかも,バッテリ電圧に基づいて,各「駆動パルス幅」における「強制期間」と「制限期間」との幅を制御すると共に,「制限期間」におけるオン・オフのデューティを制御するもので,これにより,目標となる量の燃料を噴射する上で,電磁弁の着座時期が変化することを防止するものである。 そのため,乙29 幅を制御すると共に,「制限期間」におけるオン・オフのデューティを制御するもので,これにより,目標となる量の燃料を噴射する上で,電磁弁の着座時期が変化することを防止するものである。 そのため,乙29発明は,ソレノイドに供給する電力を一定化するものではなく,電気エネルギを一定化させる本件特許発明2の「制御する信号」とは異なるといえる。 (2)容易想到性ア相違点1- 63 -本件特許発明2と乙29発明とは,相違点1に係る構成を異にするだけでなく,前者が,ソレノイドの発熱量が大きくなることを防止するという目的を達成するために,電源の電圧に関わらず,ソレノイドに供給する駆動電圧の各パルスにおける電気エネルギを一定化するものであるのに対し,後者が,必要な量の燃料を噴射するという目的を達するため,必要な燃料の量に応じ,ソレノイドの発熱量を考慮することなく,ソレノイドに供給する駆動電圧の各パルスにおける電気エネルギを制御(変化)するもの,即ち,電気エネルギを一定化しないものであり,目的や制御方式まで異なっている。そのため,乙29発明に,乙28発明の構成や他の証拠(乙30~32)に記載の技術的事項を適用したとしても,当業者が本件特許発明2を容易に想到することはあり得ない。 イ相違点2乙29発明は,電気エネルギを一定化しない制御方式であり,本件特許発明2の構成,すなわち,直流電圧をスイッチングし,オン・オフのデューティを制御することで,ソレノイドに供給する電気エネルギを一定化する構成とは全く異なること,本件特許発明2の上記構成は,乙29文献だけでなく,乙28文献や他の証拠(乙30~32)にも全く開示されていないことからすれば,相違点2に係る構成は,当業者にとって容易に想到することができないものといえる。 (3)小括したがって だけでなく,乙28文献や他の証拠(乙30~32)にも全く開示されていないことからすれば,相違点2に係る構成は,当業者にとって容易に想到することができないものといえる。 (3)小括したがって,本件特許発明2は,乙29発明に乙28発明の構成を組み合わせることで容易に想到できたものとはいえない。 16 争点4-3(本件特許発明2に係る進歩性欠如(乙28文献))について【被告の主張】(1)本件特許発明2と乙28発明の対比本件特許2の優先日前に公開された乙28文献には,乙28発明が開示されているが,本件特許発明2と乙28発明を対比すると,一致点及び相違点は以下のとおりである。 - 64 -ア構成要件A2乙28発明が制御対象とする自動車用の「燃料ポンプ」としては,原告が本件特許発明2に係る「ソレノイド駆動ポンプ」に当たると自認している方式のポンプ(甲41~44)が広く使用されており,「燃料噴射装置」や「燃料噴射ポンプ」(甲45~51)と呼ばれるものに限定されるものでないことは技術常識である。そのため,乙28発明の「燃料ポンプ221」は,本件特許発明2の「ソレノイド駆動ポンプのソレノイド8」に当たる。 そして,乙28発明の「燃料ポンプ回路220」は,バッテリ電圧VBをオン・オフして,「ソレノイド駆動ポンプのソレノイド8」に当たる「燃料ポンプ221」を駆動するものであるから,構成要件A2の「駆動回路7」に当たる。 したがって,構成要件A2は,乙28発明の構成と一致する。 イ構成要件B2構成要件B2につき,本件特許発明2と乙28発明とは,駆動回路に提供される直流電圧を検出する検出手段を備えている点で一致し,以下の点では形式的に相違する。 相違点本件特許発明2では,駆動回路に提供される直流電圧が,電圧が 明2と乙28発明とは,駆動回路に提供される直流電圧を検出する検出手段を備えている点で一致し,以下の点では形式的に相違する。 相違点本件特許発明2では,駆動回路に提供される直流電圧が,電圧が異なる交流電源から整流されたものであるのに対し,乙28発明においては,駆動回路に提供される直流電圧が,12~48Vの直流電源の電圧である点。 ウ構成要件C2乙28発明の構成と一致する。 「制御信号」の一致については,後記オ記載のとおりである。 エ構成要件D2乙28発明の構成と一致する。 オ構成要件E2原告は,本件特許発明2の「駆動回路7に提供される直流電圧をスイッチングし,オン・オフのデューティを制御する信号」である「制御信号」について,駆- 65 -動電圧の各パルス内において,ソレノイドの動作に影響を与えない程度の微小単位時間でオンとオフとを周期的に切り替え,オン時間とオフ時間との比率を変える制御のための信号を意味する旨主張する。そのような記載や示唆は,本件明細書2にはなく,根拠を欠いた解釈であるが,仮に原告の主張する解釈を前提にしても,乙28発明は,そのような「制御信号」を備えているといえる。 すなわち,乙28発明は,検出した電源電圧値を定格電圧と比較した上で,電源電圧が定格電圧よりも高い場合には,矩形波信号18Aのデューティ(パルス幅Aとその周期Bとの比)を100%から所定の値にまで低下させ,燃料ポンプに供給される電流及び電力の実効値を同じ値に保つものであるが,その「制御信号22a」は,燃料ポンプ制御信号22Aがオンの間に,矩形波信号18Aのオン時間とオフ時間の比率(デューティ)を変化させるものであるから,上記「制御信号」にほかならない。 したがって,構成要件E2も,乙28発明の構成と一致するといえる オンの間に,矩形波信号18Aのオン時間とオフ時間の比率(デューティ)を変化させるものであるから,上記「制御信号」にほかならない。 したがって,構成要件E2も,乙28発明の構成と一致するといえる。 カ構成要件F2乙28発明の構成と一致する。 (2)容易想到性交流電圧を整流し,直流電圧に変換して利用することは,広く一般的に行われていることであり,そのための整流回路も周知である(甲22)。そのため,構成要件B2に係る相違点は,実質的な相違点とはいえない。 (3)小括したがって,本件特許発明2は,乙28発明に基づき容易に想到できたものといえ,また,乙43発明を組み合わせることでも容易に想到できたといえる。 【原告の主張】(1)本件特許発明2と乙28発明の相違点乙28発明は,「自動車用燃料ポンプの制御回路」であって,「燃料ポンプ回路」に提供される直流電圧をスイッチングし,オン・オフのデューティを制御す- 66 -る構成である。一方,本件特許発明2は,「ソレノイド駆動ポンプの制御回路」であって,駆動回路に提供される直流電圧をスイッチングし,駆動パルス内におけるオン・オフのデューティを制御する構成である。 そして,乙28発明における「燃料ポンプ221」は,自動車用の燃料ポンプであるため,乙28文献の図1にコイルが図示されていることからも分かるとおり,ソレノイドではなく,電動機(モータ)を駆動源としている上,その往復駆動を,ポンプ動作体にではなく,バルブの開閉動作に用いるものである。このようなポンプは,一般に「ソレノイド駆動ポンプ」とは呼ばず,「電磁弁の開閉で燃料の供給を制御するポンプ」や「電子制御の燃料ポンプ」などと呼ばれる。 したがって,本件特許発明2と乙28発明は,対象とするポンプが相違しており,技術分 駆動ポンプ」とは呼ばず,「電磁弁の開閉で燃料の供給を制御するポンプ」や「電子制御の燃料ポンプ」などと呼ばれる。 したがって,本件特許発明2と乙28発明は,対象とするポンプが相違しており,技術分野としても全くかけ離れているといえる。 (2)容易想到性アバルブを動作するためにソレノイドを用いるポンプ(乙45~51)の構成は,連続的に変化する燃料噴射量に基づいてソレノイドに駆動電圧を供給するもの,すなわち,時間が連続的に変化する駆動パルスに応じて駆動電圧をソレノイドに供給する構成である。そのため,かかる構成を乙28発明に適用すると,時間が連続的に変化する駆動パルスに応じて,一定化された電圧をソレノイドに供給する構成になるため,各駆動パルスに応じてソレノイドに供給する電気エネルギが一定化されないものとなり,本件特許発明2に到達しないことは明らかである。 このように,乙28発明を主引例として,本件特許発明2の容易想到性を試みる被告の主張そのものが誤りであり,本件特許発明2と乙28発明とを詳細に対比するまでもなく,本件特許発明2の進歩性は当然に認められるべきである。 イ乙43発明には,「特定の期間におけるオン・オフのデューティを制御する」という技術思想がなく,また,技術上そのようにすることの必然性がない。そのため,乙28発明と乙43発明の間には適用阻害要因が存在している。 - 67 -また,仮に乙28発明に乙43発明を組み合わせることができたとしても,乙28発明と乙43発明は,いずれも本件特許発明2とは全くかけ離れた技術分野のものであり,本件特許発明2に想到するものではない。 このように,乙28発明と乙43発明の双方を踏まえても,本件特許発明2の進歩性は認められるべきである。 17 争点4-4(本件特許発明2に係る進歩性欠 り,本件特許発明2に想到するものではない。 このように,乙28発明と乙43発明の双方を踏まえても,本件特許発明2の進歩性は認められるべきである。 17 争点4-4(本件特許発明2に係る進歩性欠如(乙43文献))について【被告の主張】(1)本件特許発明2と乙43発明の対比本件特許2の優先日前に公開された乙43文献には,乙43発明が開示されているが,本件特許発明2と乙43発明を対比すると,一致点及び相違点は以下のとおりである。 ア構成要件A2乙43発明の制御対象は,「トランスの1次側コイル」であるが,本件特許発明2の「ソレノイド駆動ポンプのソレノイド」と同様の電磁気的機能を有するものであるから,乙43発明の「1次側コイル」は本件特許発明2の「ソレノイド駆動ポンプのソレノイド」に当たる。 また,乙43発明の「動作モード切換回路67,パルス巾変調回路66,ドライバ65及びスイッチング回路64」が,本件特許発明2の「制御回路」に当たり,「スイッチング回路64」が,「駆動回路7」に当たるといえる。 したがって,本件特許発明2の構成要件A2は,乙43発明の構成と一致するといえる。 イ構成要件B2本件特許発明2と乙43発明は,いずれも電圧が異なる交流電圧の電源から整流されて駆動回路に提供される直流電圧を検出する検出手段を備えるものであり,構成要件B2において一致する。 ウ構成要件C2- 68 -乙43発明の構成と一致する。 「制御信号」の一致については,後記オ記載のとおりである。 エ構成要件D2乙43発明の構成と一致する。 オ構成要件E2本件特許発明2の「駆動回路7に提供される直流電圧をスイッチングし,オン・オフのデューティを制御する信号」である「制御信号」の意義は不明であるが,出 3発明の構成と一致する。 オ構成要件E2本件特許発明2の「駆動回路7に提供される直流電圧をスイッチングし,オン・オフのデューティを制御する信号」である「制御信号」の意義は不明であるが,出願経過における原告の意見を参酌すれば,PWM制御を含むものといえる。 そして,乙43発明は,動作モード切換え回路67において入力電圧を検出し,該検出電圧値に応じて,スイッチング回路64のスイッチング・タイミングを制御し,これによって出力電極63に出力される電圧が一定になるように制御するものであるが,これがPWM制御であることは,乙43文献にも明示されている。 そのため,動作モード切換え回路67,パルス巾変調回路66は,本件特許発明2の「駆動回路7」に当たるスイッチング回路64に,「制御信号」に当たるPWM制御信号を供給しているといえ,構成要件E2も,乙43発明の構成と一致するといえる。 カ構成要件F2乙43発明の構成と一致する。 (2)容易想到性仮に,本件特許発明2の「ソレノイド駆動ポンプのソレノイド」と,乙43発明の「トランスの1次側コイル」を相違点であると見ても,両者は電磁気的機能を有するコイルである点で共通している。そのため,乙43発明の制御対象をソレノイド駆動ポンプのソレノイド(コイル)として,本件特許発明2と形式的にも同一の構成とすることは,当業者であれば容易に想到し得ることである。 また,この点は,乙43発明に乙28発明を組み合わせることでも容易に想到し得るといえる。すなわち,本件特許発明2と乙43発明において,その課題は,- 69 -入力電圧が異なっても,同一の機器を使用できるようにするということで共通しているが,これは交流電源を用いる電気機器に共通の課題である(世界各国の商用交流電源電圧が異なっていること は,- 69 -入力電圧が異なっても,同一の機器を使用できるようにするということで共通しているが,これは交流電源を用いる電気機器に共通の課題である(世界各国の商用交流電源電圧が異なっていることは周知であり,実際にも,ドライヤー等の家電製品やパソコンは,国内の100V系電圧のみならず,海外の200V系やその他の電源電圧にも対応しているものが多いことも周知である。)。 一方,仮に本件特許発明2の課題解決手段たる制御方法が,原告が主張するところのオン時間とオフ時間の比率を変えてソレノイド(コイル)に印加する電圧を一定に保つものであるとすれば,この課題解決手段も周知のものであり,乙43発明及び乙28発明における制御方法と共通のものである。 そうすると,上記周知の課題の下,オン時間とオフ時間の比率を変えてソレノイド(コイル)に印加する電圧を一定に保つという共通の周知手段を採用している乙43発明と乙28発明とを組み合わせ,乙43発明の制御対象を,乙28発明に記載されている燃料ポンプ(ソレノイド駆動ポンプ)のソレノイドとすることは,当業者が容易に想到し得ることといえる。 (3)小括したがって,本件特許発明は,乙43発明に基づき容易に想到できたものといえ,また,乙28発明を組み合わせることでも容易に想到できたといえる。 【原告の主張】(1)本件特許発明2と乙43発明の相違点乙43発明は,「電子機器の電源供給の制御回路」であって,電源が供給されている間は連続的に発生するオン・オフのデューティを制御(PWM制御)することで,出力する電圧を一定にする構成である。一方,本件特許発明2は,「ソレノイド駆動ポンプの制御回路」であるが,「ソレノイド駆動ポンプ」は,ソレノイド(電磁石)に駆動電圧を供給することで,アーマチュア(鉄心)が押し出 一定にする構成である。一方,本件特許発明2は,「ソレノイド駆動ポンプの制御回路」であるが,「ソレノイド駆動ポンプ」は,ソレノイド(電磁石)に駆動電圧を供給することで,アーマチュア(鉄心)が押し出されてストッパに当たるまで往動し,駆動電圧の供給を遮断することで,アーマチュアが復動する,アーマチュアの往復運動をポンプストロークに利用したポン- 70 -プである。言い換えれば,駆動電圧の供給と供給遮断とを交互に繰り返さないと,ソレノイド駆動ポンプは駆動しない。駆動電圧の供給遮断を行う期間,すなわち,駆動パルスが発生していない期間は,文字通り駆動電圧が供給されていない状態なので,「オン・オフのデューティを制御する」ということはあり得ない。そのため,本件特許発明2において,「オン・オフのデューティを制御する」とは,駆動パルス内におけるオン・オフのデューティを制御するということにほかならない。したがって,乙43発明は,電源が供給されていれば,その間はずっとオン・オフのデューティを制御しているのに対し,本件特許発明2は,周期的(断続的)に発生する駆動パルス内におけるオン・オフのデューティを制御する構成である点で,両者は相違する。 「ソレノイド駆動ポンプの制御回路」である本件特許発明2と「電子機器の電源供給の制御回路」である乙43発明とが全くかけ離れた技術分野であることも踏まえると,かかる相違は,本件特許発明2と乙43発明との関係において決定的である。 このように,乙43発明を主引例として,本件特許発明2の容易想到性を試みた被告の主張そのものが誤りであり,本件特許発明2と乙43発明とを詳細に対比するまでもなく,本件特許発明2の進歩性は当然に認められるべきである。 (2)容易想到性被告は,乙43発明に乙28発明を組み合わせることで本件特 であり,本件特許発明2と乙43発明とを詳細に対比するまでもなく,本件特許発明2の進歩性は当然に認められるべきである。 (2)容易想到性被告は,乙43発明に乙28発明を組み合わせることで本件特許発明2は容易に想到できる旨主張する。 しかし,乙43発明は,「電子機器の電源供給の制御回路」であり,電子機器の使用時に電源をオンにし,その後電子機器を使用している(駆動している)間は電源が常時オンで,最終的に電子機器の使用を止める際に電源をオフにすることが技術常識である。つまり,乙43発明には,駆動パルスの概念が存在しない。 そのため,乙28発明のようなソレノイド駆動ポンプの制御回路が周知のものであったとしても,そのような技術的事項を乙43発明に適用し,本件特許発明- 71 -2に到達するためにしたはずであるという示唆は当然存在せず,そのような試みをしたであろうという推測さえも成り立たない。 さらに,駆動パルスの概念が存在しない乙43発明に上記技術的事項を適用することは,乙43発明の「制御回路」が全ての制御回路を含むかのように上位概念化した上での判断である。そのような判断は,乙43発明の開示する技術的意義を離れ,抽象的な意義に基づき本件特許発明2と対比することで,排除されるべき後知恵を混入したものであり,到底許されない。 18 争点4-5(本件特許発明2に係る明確性要件違反(特許法36条6項2号)及び実施可能要件違反(特許法36条4項1号))について【被告の主張】構成要件E2が規定する「オン・オフのデューティを制御する信号」は,その文言から意義を理解することが困難である。また,本件明細書2での関連する開示内容も,単に「オン・オフのデューティ制御」という文言が同語反復がなされているだけで,当該制御に係る信号の波形の図示す その文言から意義を理解することが困難である。また,本件明細書2での関連する開示内容も,単に「オン・オフのデューティ制御」という文言が同語反復がなされているだけで,当該制御に係る信号の波形の図示すらなされていない。そのため,「オン・オフのデューティを制御する信号」の技術的意義を,本件明細書2の開示から導くことは,極めて困難というほかない。 したがって,本件特許発明2は不明確である(特許法36条6項2号)と共に,実施不可能といえ(特許法36条4項1号),本件特許2は無効を免れない。 【原告の主張】「デューティ」とは,「周期的な現象において,ある期間に占めるその期間で現象が継続される期間」のことであり,一般的に知られた用語である。 そして,かかる用語の定義により,「オン・オフのデューティ」とは,「周期的なオン・オフの繰り返しにおいて,オンが継続される期間及びオフが継続される期間」ということであり,「オン・オフのデューティを制御する」とは,「周期的なオン・オフの繰り返しにおいて,オンが継続される期間及びオフが継続される期間を制御する」ということであり,「オン・オフのデューティを制御する信- 72 -号」とは,「周期的なオン・オフの繰り返しにおいて,オンが継続される期間及びオフが継続される期間を制御する信号」ということである。 したがって,本件特許発明2の「オン・オフのデューティを制御する信号」の意義は明確であり,明確性要件(特許法36条6項2号)及び実施可能要件(特許法36条4項1号)に欠けるところはない。 19 争点4-6(分割不適法)について【被告の主張】(1)本件特許発明1と本件特許発明2の対比本件特許発明2を,本件特許発明1と対比すると,本件特許発明2のA2,E2及びF2が,それぞれ本件特許発明1のA1, 適法)について【被告の主張】(1)本件特許発明1と本件特許発明2の対比本件特許発明2を,本件特許発明1と対比すると,本件特許発明2のA2,E2及びF2が,それぞれ本件特許発明1のA1,E1及びF1と,使用されている文言も含めて完全に一致している。その他の構成要件につき,両者の文言上の形式的な相違点は,以下のとおりである。 相違点① 本件特許発明1の構成要件B1においては,交流電源の電圧範囲が90~264Vと明示されているのに対し,本件特許発明2の構成要件B2では,電圧範囲の明示がない点。 相違点② 本件特許発明1の構成要件B1においては,駆動回路に提供される直流電圧を「分圧して」検出するのに対し,本件特許発明2の構成要件B2では,駆動回路に提供される直流電圧の検出方法について限定がない点。 相違点③ 本件特許発明1の構成要件C1においては,駆動回路に提供された直流電圧を所望の直流電圧に変換するにあたって,検出した直流電圧を所望の直流電圧と「比較」するとされているのに対し,本件特許発明2の構成要件C2では,検出した直流電圧に「基づいて」,駆動回路に提供された直流電圧を所望の直流電圧に変換するとされている点。 相違点④ 本件特許発明1の構成要件C1及びD1においては,電源電圧に関わりなく,一種の制御回路に対応した所望の直流電圧をソレノイドに供給するとされているのに対し,本件特許発明2の構成要件C2及びD2では,電源電圧- 73 -に関わりなく,「一定の電気エネルギ」をソレノイドに供給するための所望の直流電圧をソレノイドに供給するとされている点。 (2)相違点①について本件特許発明1の構成要件B1において,交流電源の電圧範囲を90~264Vとしているのは,世界各国で一般的に用いられている商用電源の範囲 ノイドに供給するとされている点。 (2)相違点①について本件特許発明1の構成要件B1において,交流電源の電圧範囲を90~264Vとしているのは,世界各国で一般的に用いられている商用電源の範囲を単に明示しているにすぎず,「電圧が異なる交流電圧の電源」(構成要件B1,B2)という共通の記載からすれば,一般的に理解される電圧範囲と格別の差異はない。 したがって,この相違点は,実質的な相違点とはいえない。 (3)相違点②について電圧を測定する際に,分圧により,入力電圧を測定可能な範囲にまで下げることは,一般に採用されている周知・慣用技術である。そのため,本件特許発明2においても,直流電圧を検出する際に,これを分圧して検出するか否かは,単なる設計事項であるに過ぎない。 よって,この相違点は,実質的な相違点とはいえない。 (4)相違点③について本件明細書2の記載によれば,本件特許発明2においても,本件特許発明1と同様,駆動回路に提供された直流電圧を所望の直流電圧に変換するに当たって,検出した直流電圧を所望の直流電圧と「比較」している。つまり,本件特許発明2における検出した直流電圧に「基づいて」とは,本件特許発明1における検出した直流電圧を所望の直流電圧と「比較」することと同義である。 したがって,この相違点も,実質的な相違点とはいえない。 (5)相違点④についてア構成要件C1の「一種の制御回路に対応した」は,「所望の直流電圧」を限定する文言であるが,本件明細書1に,「即ち,電源1が異なる場合にも,駆動回路7を含む制御回路10を異ならしめることなく,一種の制御回路で電圧の異なる電源に対応することができる。」(段落【0026】)と記載されて- 74 -いるとおり,「一種の制御回路に対応した」とは,電源電圧が異なってい 0を異ならしめることなく,一種の制御回路で電圧の異なる電源に対応することができる。」(段落【0026】)と記載されて- 74 -いるとおり,「一種の制御回路に対応した」とは,電源電圧が異なっている場合にも,一種類の制御回路により,これに対応可能であることを内容としている。これに対し,本件明細書2においても,「一種の制御回路で電圧の異なる電源に対応することができるので,制御回路の種類が低減され,管理が非常に容易となる。」(段落【0020】)と記載されているとおり,電源電圧が異なっている場合にも,「所望の直流電圧」に変換することにより,一種類の制御回路により,これに対応可能であることを内容としていることが明らかである。したがって,本件特許発明2の構成要件C2においても,所望の直流電圧が,「一種の制御回路に対応した」ものであることが,当然の前提とされている。イまた,同様に,構成要件C2の「電源1の電圧に関わりなく一定の電気エネルギをソレノイド8に供給するための」とは,「所望の直流電圧」を限定する文言であるが,この点に関しては,本件明細書1においても,「本発明は,ソレノイド駆動ポンプの制御回路に関する。さらに詳しくは,ソレノイドに供給する電気エネルギを一定化することが可能なソレノイド駆動ポンプの制御回路に関する。」(段落【0001】)と記載されている。そのため,本件特許発明1においても,電源電圧の値の大小にかかわりなく,「所望の直流電圧」に変換して,これをソレノイドに供給するということは,「ソレノイドに供給する電気エネルギを一定化すること」であることが明らかであり,本件特許発明1の構成要件C1においても,所望の直流電圧が,「電源1の電圧に関わりなく一定の電気エネルギをソレノイド8に供給するための」ものであることが,当然の すること」であることが明らかであり,本件特許発明1の構成要件C1においても,所望の直流電圧が,「電源1の電圧に関わりなく一定の電気エネルギをソレノイド8に供給するための」ものであることが,当然の前提とされている。 ウしたがって,この相違点も,実質的な相違点とはいえない。(6)まとめこのように本件特許発明2は,本件特許発明1と請求項の文言上において形式的な相違点はあるものの,実質的な相違点は何ら存在しておらず,両者は同一発明であるから,本件特許1出願の分割による本件特許2出願は,分割出願として- 75 -は不適法であり,本件特許2出願の出願日は,本件特許1の出願時まで遡及しない。したがって,本件特許2は,同一の発明について先願があるため,無効であることを免れない(特許法39条1項)。【原告の主張】本件特許発明1と本件特許発明2とには,少なくとも以下の相違点がある。 相違点1 本件特許発明1は,交流電源の電圧範囲が90~264Vと特定されている構成であるのに対し,本件特許発明2は,交流電源の電圧範囲が特定されていない構成である点。 相違点2 本件特許発明1は,駆動回路に提供される直流電圧を分圧して検出すると特定されている構成であるのに対し,本件特許発明2は,駆動回路に提供される直流電圧を検出する方法が特定されていない構成である点。 以上によると,本件特許発明2と本件特許発明1とは実質的に異なる発明である。そのため,本件特許2に係る分割出願は適法であり,本件特許2の出願日は,本件特許1の出願時まで遡及する。 したがって,本件特許2は,特許法第39条1項によって無効にされるべきものとはいえない。 争点5(原告の損害)について【原告の主張】被告の特許権侵害によって原告が被った損害の額は,以 したがって,本件特許2は,特許法第39条1項によって無効にされるべきものとはいえない。 争点5(原告の損害)について【原告の主張】被告の特許権侵害によって原告が被った損害の額は,以下の合計6567万円である。 (1)本件特許1の登録日である平成21年5月22日以降,被告による旧イ号製品,新イ号製品及びロ号製品の販売台数は少なくとも年間3980台であり,1台当たりの利益は1万5000円を下らない。 そのため,被告は,平成21年5月22日からの1年間で少なくとも1万5000円×3980台=5970万円- 76 -の利益を得ており,特許法102条2項により,原告が被った損害額も同額と推定される。 (2)原告の弁護士費用のうち,被告が原告に対して負担すべき金額は,上記(1)の損害額の1割に相当する597万円を下ることはない。 【被告の主張】争う。 第4 当裁判所の判断当裁判所は,旧イ号製品,新イ号製品,ロ号製品は,いずれも本件特許発明1の技術的範囲に属するが(新イ号製品とロ号製品は,均等なものとして),本件特許発明1には進歩性欠如の無効理由があり,本件特許発明2についても同様の無効理由があるので,原告の請求はいずれも棄却されるべきであると判断する。 その理由は次のとおりである。 1 争点1-1(旧イ号製品は本件特許発明1の構成要件を文言上充足するか)について次のとおり,旧イ号製品は本件特許発明1の構成要件を全て充足し,その技術的範囲に属する。 (1)旧イ号製品の構成弁論の全趣旨によると,旧イ号製品のブロック図は,別紙旧イ号製品説明書(被告提出)記載1のとおりであり,旧イ号製品は次の構成を備えていると認められる。 a1 ソレノイド駆動ポンプのソレノイド5に電圧を供給してソレ と,旧イ号製品のブロック図は,別紙旧イ号製品説明書(被告提出)記載1のとおりであり,旧イ号製品は次の構成を備えていると認められる。 a1 ソレノイド駆動ポンプのソレノイド5に電圧を供給してソレノイド5を駆動するFET4bと,b1 100~240V±10%の間で電圧が異なる交流電源1から整流器2で整流されてFET4bに提供される全波整流電圧(直流電圧)を分圧する分圧回路3と,当該分圧した電圧をA/D変換して検出するCPU8と,c1 ソレノイド内のアーマチュア(鉄心)を押し出して往動させるための信- 77 -号が出力されている時間(アーマチュア押し出し信号出力時間)の前半及び後半における各通電時間及び遮断時間を,CPU8で検出した電圧値に応じて別紙旧イ号製品説明書(被告提出)記載2の特性テーブルから読み出すCPU12と,CPU12から受信した上記通電時間及び遮断時間に従ってFET4bに提供された全波整流電圧の通電及び遮断をすべくFET4bにポンプ制御信号を供給するCPU8とを具備し,d1 上記通電及び遮断をされた全波整流電圧をソレノイド5に供給するソレノイド駆動ポンプの制御回路であって,e1 上記ポンプ制御信号は,FET4bに提供される全波整流電圧のアーマチュア押し出し信号時間内の通電時間及び遮断時間を制御する信号であるf1 ことを特徴とするソレノイド駆動ポンプの制御回路。 (2)構成要件C1及びD1の充足性原告は,構成要件C1及びD1の「所望の直流電圧」について,ある程度の幅を許容する電圧値であると主張するのに対し,被告は,1つに定まった電圧値であり,一切の幅を許容しない旨主張するので,この点の解釈を示した上で,旧イ号製品の充足性を判断する。 ア特許請求の範囲の記載本件特許発明1における「制 に対し,被告は,1つに定まった電圧値であり,一切の幅を許容しない旨主張するので,この点の解釈を示した上で,旧イ号製品の充足性を判断する。 ア特許請求の範囲の記載本件特許発明1における「制御回路」は,「該検出手段5で検出した直流電圧を一種の制御回路に対応した所望の直流電圧と比較し,且つ駆動回路7に提供された直流電圧を所望の直流電圧に変換すべく該駆動回路7に制御信号を供給する演算処理部6とを具備し」(構成要件C1),「電源1の電圧に関わりなく前記所望の直流電圧を駆動電圧としてソレノイド8に供給するソレノイド駆動ポンプの制御回路で」(構成要件D1)ある。すなわち,本件特許発明1における「制御回路」は,「90~264Vの間」にある「交流電圧の電源1」から整流された直流電圧を,制御信号によって,「所望の直流電圧」に変換するものであり,「電源1の電圧」の値に関わりなく,ソレノイド8へ供給される直流電圧を「所望の- 78 -直流電圧」とすることができる点に技術的意義があると解される。 このような本件特許発明1の技術的意義やその文言からすれば,「所望の直流電圧」とは,当該ソレノイド駆動ポンプの備える「一種の制御回路」で対応可能な直流電圧値を意味すると解される一方,その直流電圧値が,1つに定まった電圧値を意味し,一切の幅を許容しないと解すべき文言上の根拠はない。 イ本件明細書1の記載本件明細書1の記載(甲2)によれば,従来技術であるソレノイド駆動ポンプでは,電源電圧の値によって,それに対応する制御回路を備えた駆動回路及びソレノイドを必要としていたが,本件特許発明1では,電源電圧の値の大小に関わらず,駆動回路に提供された直流電圧を「所望の直流電圧」に変換することで,1種類の制御回路及びソレノイドで対応可能となる点に発明の技術的意義が していたが,本件特許発明1では,電源電圧の値の大小に関わらず,駆動回路に提供された直流電圧を「所望の直流電圧」に変換することで,1種類の制御回路及びソレノイドで対応可能となる点に発明の技術的意義があるものと解される。 一方,従来技術に関する「ソレノイド8の一端側の端子8aに接続する直流電源と,パルス発生回路11の適用される電圧の範囲がスイッチ12によって決定されている。」(段落【0003】)との記載で,「電圧の範囲」との表現がされていることからも理解できるとおり,ソレノイド駆動ポンプでは,駆動電圧の値に違いがあっても,それがある程度の範囲内にあるのであれば,「動作不良」や「焼損」(段落【0004】)といった問題が生じるわけではなく,同一の制御回路及びソレノイドで対応させることができるものといえる。 そうすると,本件特許発明1においても,「所望の直流電圧」につき,1つに定まった電圧値を意味し,一切の幅を許容しないと解すべき技術的な必然性はなく,むしろ,動作不良や焼損といった問題を生じさせない限りでの幅を許容する趣旨と解するのが合理的かつ自然である。 ウ 「所望の直流電圧」の解釈以上より,「所望の直流電圧」とは,当該ソレノイド駆動ポンプの備える「一種の制御回路」で対応可能な直流電圧値を意味しており,動作不良や焼損といっ- 79 -た問題を生じさせない限りの範囲において,直流電圧値が増減することも許容するものと解するのが相当である。 エ旧イ号製品の構成と充足性の判断そこで,構成要件C1及びD1の充足性を検討するに,旧イ号製品は,本件特許発明1の「電源1」に当たる「交流電源1」,「検出手段5」に当たる「分圧回路3及びCPU8」,「演算処理部6」に当たる「CPU8及びCPU12」,「駆動回路7」に当たる「FET4b」 品は,本件特許発明1の「電源1」に当たる「交流電源1」,「検出手段5」に当たる「分圧回路3及びCPU8」,「演算処理部6」に当たる「CPU8及びCPU12」,「駆動回路7」に当たる「FET4b」,「ソレノイド8」に当たる「ソレノイド5」を備え,「CPU8」から「FET4b」に供給される「ポンプ制御信号」により,「FET4b」に提供された直流電圧を「所望の直流電圧」に変換するものと認める(前記(1),弁論の全趣旨)。 すなわち,旧イ号製品においては,「FET4b」に提供された直流電圧を,「CPU12」の内蔵する特性テーブルに従って制御しているが,特性テーブルは,アーマチュア押し出し信号出力時間を前半と後半に分け,電源電圧の値に対応した通電時間及び遮断時間を,別紙旧イ号製品説明書(被告提出)記載2のとおり,前半及び後半のそれぞれに設定している。電源電圧と前半及び後半のそれぞれにおける平均電圧との対応関係をグラフで表すと別紙旧イ号製品説明書(被告提出)記載3のとおりであるが,前半及び後半をあわせた平均電圧(=電源電圧×(前半通電時間+後半通電時間)÷(前半通電時間+前半遮断時間+後半通電時間+後半遮断時間)は,以下のとおり算定される。 電源電圧平均電圧(小数点以下第2位を四捨五入)~ 90V ~ 78.0V 90 ~ 95V 78.0 ~ 82.4V 95 ~ 105V 79.5 ~ 87.8V 105 ~ 117V 87.2 ~ 97.1V 117 ~ 125V 90.9 ~ 97.1V 125 ~ 135V 94.4 ~102.0V- 80 - 87.2 ~ 97.1V 117 ~ 125V 90.9 ~ 97.1V 125 ~ 135V 94.4 ~102.0V- 80 - 135 ~ 150V 95.1 ~105.7V 150 ~ 180V 90.9 ~109.1V 180 ~ 190V 79.9 ~ 84.3V 190 ~ 210V 84.3 ~ 93.2V 210 ~ 225V 84.9 ~ 90.9V 225 ~ 235V 86.1 ~ 89.9V 235 ~ 245V 87.3 ~ 91.0V 245 ~ 255V 86.8 ~ 90.3V 255 ~ 265V 88.2 ~ 91.7Vこのように旧イ号製品は,電源電圧の値が「90~264V」(構成要件B1)という大きな範囲で異なる場合でも,「FET4b」に提供された直流電圧の平均値を80V弱から110V弱という狭い範囲内に変換しており,「所望の直流電圧」,すなわち,旧イ号製品の備える「一種の制御回路」が,動作不良や焼損を生じることなく対応可能な電圧値に変換しているといえる(変換後の直流電圧が,動作不良や焼損を起こすものでないことは被告も争うものではない。)。 したがって,旧イ号製品は,構成要件C1及びD1を充足する(旧イ号製品の「ポンプ制御信号」が,本件特許発明1の「制御信号」に当たることについては,構成要件E1の充足性に関する後記(4)のとおりである。)。 (3)構成要件A1の充足性構成要件A1は,「ソレノイド駆動ポンプのソレノイド8に駆動電圧を供給して該ソレノイド ることについては,構成要件E1の充足性に関する後記(4)のとおりである。)。 (3)構成要件A1の充足性構成要件A1は,「ソレノイド駆動ポンプのソレノイド8に駆動電圧を供給して該ソレノイド8を駆動する駆動回路7」というものであるところ,被告は,「駆動回路7」に供給される「駆動電圧」は,「所望の直流電圧」,すなわち,1つに定められた電圧値で,一切の幅を許容していない旨主張し,その充足性を否定する。 しかし,「所望の直流電圧」の意味は,前記(2)で論じたとおりであり,旧イ号製品は,交流電源の電圧値が90~264Vのいずれであっても,「駆動回路- 81 -7」に提供された直流電圧を「所望の直流電圧」に変換しているといえるのであるから,「駆動電圧」の充足性を否定する被告の主張は,その前提を欠いている。 そのため,本件特許発明1の「駆動回路7」に当たる旧イ号製品の「FET4b」は,本件特許発明1の「ソレノイド8」に当たる旧イ号製品の「ソレノイド5」に,「駆動電圧」を供給し,これを駆動するものであるから,旧イ号製品は,構成要件A1を充足するといえる。 (4)構成要件E1の充足性構成要件E1は,「前記制御信号は,駆動回路7に提供される直流電圧をスイッチングし,オン・オフのデューティを制御する信号である」というものであるが,被告は,「オン・オフのデューティを制御する信号」の意義が明確でないなどの理由で充足性を否定するため,この点を中心に充足性の判断を示す。 ア 「オン・オフのデューティを制御する信号」の意義証拠(甲25~27)によれば,電気工学の分野において,入力される電圧の変動に対応するため,1周期内でスイッチをオンにする時間とオフにする時間を制御することで出力電圧を変換する技術が知られており,1周期の間で,スイッチをオ ば,電気工学の分野において,入力される電圧の変動に対応するため,1周期内でスイッチをオンにする時間とオフにする時間を制御することで出力電圧を変換する技術が知られており,1周期の間で,スイッチをオンにしている時間をデューティ,その時間の割合をデューティ比ということが認められる。 このような知見に加え,「ソレノイド駆動ポンプ」は,ソレノイドによってポンプ動作体を往復運動させるものであるため,この1往復をもって1周期と解するのが相当であること,「制御信号」が「駆動回路7に提供された直流電圧を所望の直流電圧に変換す」るものであること(構成要件C1)を考え合わせれば,「駆動回路7に提供される直流電圧をスイッチングし,オン・オフのデューティを制御する信号(制御信号)」とは,「駆動回路7に提供される直流電圧」につき,ポンプ駆動体の1往復内でスイッチをオンにする時間,つまり,通電する時間と,スイッチをオフにする時間,つまり,電流を遮断する時間を制御し,これによって「ソレノイド8」へ供給される電圧を「所望の直流電圧」に変換する信号を意- 82 -味すると解される。 イ出願経過の参酌について被告は,原告が,本件特許1の出願経過において,パルスがオンされてから次のパルスがオンされるまでの時間が電圧によって変化するような場合は,「オン・オフのデューティを制御する」とはいえない旨述べていたが,旧イ号製品の通電及び遮断の時間が前半と後半とで異なり,電源電圧によっても大きく変化するのであるから,原告が除外した構成に当たる旨主張する。 しかし,証拠(乙14,16,26)によれば,原告が本件特許1の出願経過で述べていたのは,電圧によって,周波数が変化するような制御方式,つまり,ソレノイド駆動ポンプでいえば,ポンプ動作体の運動周期が変化するような制御 ,16,26)によれば,原告が本件特許1の出願経過で述べていたのは,電圧によって,周波数が変化するような制御方式,つまり,ソレノイド駆動ポンプでいえば,ポンプ動作体の運動周期が変化するような制御方式を「オン・オフのデューティを制御する」に当たらないと述べていたに過ぎず,旧イ号製品のように,ポンプ動作体の1往復内において,通電時間のサイクルが変化する構成を除外する趣旨とは解されない。 したがって,被告の上記主張は採用できない。 ウ充足性の判断旧イ号製品で,「CPU8」から「FET4b」に供給される「ポンプ制御信号」は,「FET4b」に提供された直流電圧を「所望の直流電圧」に変換するものである(前記(1),弁論の全趣旨)が,その変換方法は,「直流電圧をスイッチングし,オン・オフのデューティを制御する」ものといえる。 すなわち,旧イ号製品では,「FET4b」に提供された直流電圧を,「CPU12」の内蔵する特性テーブルに従って制御しているが,特性テーブルは,アーマチュア押し出し信号出力時間を前半と後半に分け,電源電圧の値に対応した通電時間及び遮断時間を,前半及び後半のそれぞれに設定している。つまり,ポンプ駆動体の1往復内にあるアーマチュア押し出し信号出力時間の中で,スイッチをオンにする時間(通電時間)と,スイッチをオフにする時間(遮断時間)を制御し,このことによって「FET4b」に提供された直流電圧を「所望の直流電- 83 -圧」へと変換しているのであり,まさに「直流電圧をスイッチングし,オン・オフのデューティを制御する」ものといえる。前半と後半とで通電時間及び遮断時間に差が設けられていることが,この該当性を左右する理由にはならない。 したがって,旧イ号製品の「ポンプ制御信号」は,「駆動回路7に提供される直流電圧をスイッチ 。前半と後半とで通電時間及び遮断時間に差が設けられていることが,この該当性を左右する理由にはならない。 したがって,旧イ号製品の「ポンプ制御信号」は,「駆動回路7に提供される直流電圧をスイッチングし,オン・オフのデューティを制御する信号」であり,本件特許発明1の「制御信号」に当たるといえ,旧イ号製品は,構成要件E1を充足する。 (5)小括構成要件B1の充足性は争いがない。また,旧イ号製品は,構成要件A1からE1までの要件を充足する以上,「ソレノイド駆動ポンプの制御回路」(構成要件F1)を充足することも明らかである。 したがって,旧イ号製品は,本件特許発明1の構成要件を全て充足し,その技術的範囲に属する。 2 争点1-3(新イ号製品は本件特許発明1の構成要件を文言上充足するか)について(1)新イ号製品の構成証拠(甲40,乙42)及び弁論の全趣旨によると,新イ号製品のブロック図は,別紙新イ号製品説明書(被告提出)記載1のとおりであり,新イ号製品は次の構成を備えていると認められる。 a2 ソレノイド駆動ポンプのソレノイド5に電圧を供給してソレノイド5を駆動するFET4bと,b2 100~240V±10%の間で電圧が異なる交流電源1から提供され,トランス6で降圧され,整流器17で整流された直流電圧を分圧する分圧回路18と,当該分圧した電圧をA/D変換して検出するCPU8と,c2 ソレノイド内のアーマチュア(鉄心)を押し出して往動させるための信号が出力されている時間(アーマチュア押し出し信号出力時間)の前半及び後半- 84 -における各通電時間及び遮断時間を,CPU8で検出した電圧値に応じて別紙新イ号製品説明書(被告提出)記載2の特性テーブルから読み出し,かつ,その通電時間及び遮断時間に従ってFET4bに - 84 -における各通電時間及び遮断時間を,CPU8で検出した電圧値に応じて別紙新イ号製品説明書(被告提出)記載2の特性テーブルから読み出し,かつ,その通電時間及び遮断時間に従ってFET4bに提供された全波整流電圧の通電及び遮断をすべくFET4bにポンプ制御信号を供給するCPU8とを具備し,d2 上記通電及び遮断をされた全波整流電圧をソレノイド5に供給するソレノイド駆動ポンプの制御回路であって,e2 上記ポンプ制御信号は,FET4bに提供される全波整流電圧のアーマチュア押し出し信号時間内の通電時間及び遮断時間を制御する信号であるf2 ことを特徴とするソレノイド駆動ポンプの制御回路。 すなわち,本件特許発明1の構成要件の充足性との関係において,新イ号製品と旧イ号製品との構成上の差異は,旧イ号製品では,「整流器2」と「FET4b」の間に「分圧回路3」及び「CPU12」が接続されているのに対し,新イ号製品では,「整流器2」とは別の分岐先に「整流器17」を経て「分圧回路18」及び「CPU8」が接続されている点のみである(ただし,本件特許発明1の「演算処理部6」に当たるのは,旧イ号製品では「CPU8及びCPU12」であるが,新イ号製品では「CPU8」である。)。 そのため,新イ号製品は,旧イ号製品と同様の理由により,構成要件A1,C1,D1及びE1を充足するといえるものの,「交流電圧の電源1から整流されて駆動回路7に提供される直流電圧を分圧して検出する検出手段5」(構成要件B1)を備えているといえるかが問題となる。 (2)構成要件B1の文言解釈本件特許発明1は,「検出手段5」で検出した直流電圧と「所望の直流電圧」とを比較し,これに応じた「制御信号」を生成するものであるが,その「検出手段5」の検出方法は,「交流電圧の 件B1の文言解釈本件特許発明1は,「検出手段5」で検出した直流電圧と「所望の直流電圧」とを比較し,これに応じた「制御信号」を生成するものであるが,その「検出手段5」の検出方法は,「交流電圧の電源1から整流されて駆動回路7に提供される直流電圧を分圧して検出する」(構成要件B1)と特定されている。つまり,「検出手段5」は,その文言上,「所望の直流電圧」の比較対象たる「90~2- 85 -64Vの間で電圧が異なる電源電圧」の値の測定において,交流電圧を整流してから「駆動回路7」に提供されるまでの間で,その直流電圧を分圧して検出する構成に限定しており,交流電圧を整流してから「駆動回路7」に提供されるまでの間とは別の箇所(例えば,交流電圧の電源1から整流される前に分岐された先の箇所)で,整流された直流電圧を分圧して検出する構成を含むものではないと解される。 (3)充足性の判断新イ号製品は,「交流電源1」から提供された交流電圧を,本件特許発明1の「駆動回路7」に当たる「FET4b」へ提供する「整流器2」とは別の分岐先において,「トランス6」により降圧し,「整流器17」で整流した後の直流電圧を「分圧回路18」及び「CPU8」により分圧して検出するとの構成をとっており,交流電圧を整流してから「駆動回路7」に当たる「FET4b」に提供されるまでの間で,その直流電圧を分圧して検出する構成ではない。 したがって,「交流電圧の電源1から整流されて駆動回路7に提供される直流電圧を分圧して検出する検出手段5」を備えているとはいえず,構成要件B1を文言上充足するとは認められない。 (4)小括したがって,新イ号製品は,本件特許発明1を文言上充足するとはいえない。 3 争点1-4(新イ号製品は本件特許発明1と均等なものとしてその技術的範囲に属 充足するとは認められない。 (4)小括したがって,新イ号製品は,本件特許発明1を文言上充足するとはいえない。 3 争点1-4(新イ号製品は本件特許発明1と均等なものとしてその技術的範囲に属するか)について特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存在する場合であっても,① その部分が特許発明の本質的部分ではなく,② その部分を対象製品等におけるものと置き換えても,特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって,③ そのように置き換えることに,当業者が,対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり,④対象製品等が,特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれ- 86 -からその出願時に容易に推考できたものではなく,かつ,⑤ 対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは,当該対象製品は,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属すると解される。 前記2記載のとおり,新イ号製品は,本件特許発明1の構成要件B1を文言上充足するとは認められないが,以下のとおり,上記①から⑤までの要件を満たしており,本件特許発明1と均等なものとしてその技術的範囲に属するといえる。 (1)第2要件本件特許発明1が「交流電圧の電源1から整流されて駆動回路7に提供される直流電圧を分圧して検出する検出手段5」(構成要件B1)を備えているのに対し,新イ号製品は,交流電源1から提供された交流電圧を,本件特許発明1の「駆動回路7」に当たる「FET4b」へ直流電圧を提供する整流器とは別の「整流器17」に分岐し,整流した後,「分圧回路18」及び「CPU8」で直流電圧を分圧して 供された交流電圧を,本件特許発明1の「駆動回路7」に当たる「FET4b」へ直流電圧を提供する整流器とは別の「整流器17」に分岐し,整流した後,「分圧回路18」及び「CPU8」で直流電圧を分圧して検出するものであり,この点で両者は相違する。 しかし,本件特許発明1と新イ号製品のいずれも,「所望の直流電圧」と比較すべき電源電圧の値を測定する手段を備える点では同じであり(弁論の全趣旨),ただ,その検出手段の接続部位を異にするにとどまる。そのため,本件特許発明1の構成要件B1を新イ号製品における構成に置き換えたとしても,交流電源の電圧値が90~264Vのいずれかにかかわらず,「駆動回路7」に提供された直流電圧を「所望の直流電圧」に変換するという本件特許発明1の目的は達することができ,同一の作用効果を奏するものといえる。 (2)第3要件上記(1)記載のとおり,本件特許発明1と新イ号製品とは,「所望の直流電圧」と比較すべき電源電圧の値を測定する手段を備える点では共通していながら,その検出手段の接続部位を異にしている。 しかし,電源電圧値の測定については,「交流電圧の電源1から整流されて駆- 87 -動回路7に提供される直流電圧」を分圧して検出するという方法に限定されるものでなく,新イ号製品のように,別の分岐先で整流された直流電圧を分圧して検出することでも同様に可能なことは,技術常識上明らかである。 そのため,本件特許発明1の構成要件B1を新イ号製品における構成に置き換えることは,当業者が,新イ号製品の製造時点において容易に想到することができたものといえる。 (3)第1要件本件特許発明1は,ソレノイド駆動ポンプの制御回路に係る物の発明であり,交流電源の電圧値が90~264Vのいずれかにかかわらず,「駆動回路7」に提供された きたものといえる。 (3)第1要件本件特許発明1は,ソレノイド駆動ポンプの制御回路に係る物の発明であり,交流電源の電圧値が90~264Vのいずれかにかかわらず,「駆動回路7」に提供された直流電圧を「所望の直流電圧」に変換する点に特徴がある。そのため,「所望の直流電圧」と比較されるべき電源電圧値を測定する構成を備えることは必須といえるが,電圧の具体的な検出手段に,従来技術にはない本件特許発明1の課題解決手段を基礎づける特徴があるわけではなく,その点を本質的部分とする発明ではない。 したがって,電圧の検出手段の接続部位は,本件特許発明1の本質的部分ではないといえる。 (4)第4要件本要件について,被告からの主張立証はない。 (5)第5要件原告は,本件特許1の出願当初,構成要件B1に相当する部分を「駆動回路7に電圧を提供する電源1の電圧を検出する検出手段5」としていたが,平成19年5月2日付け拒絶理由通知を受けた後,「交流電圧の電源1から整流されて駆動回路7に提供される直流電圧を検出する検出手段5」と補正した(乙1~3)。 しかし,平成19年5月2日付け拒絶理由通知は,特許法36条4項(実施可能要件)及び同条6項2号(明確性要件)の要件を満たしていないとするもので,新規性及び進歩性に係る拒絶理由通知ではなかったし,電圧の検出手段に係る記- 88 -載の不備を指摘するものでもなかった(乙2)。原告が手続補正書とあわせて提出した意見書においても,電圧の検出手段に関して特段の説明をしているわけではない。 このような経過からすれば,原告の上記補正について,新規性や進歩性の欠如を回避するなどのため,電圧の検出手段に関して特定の構成を意識的に除外したものとは言い難い。 また,他に均等の成立を否定すべき特段の事情も認 らすれば,原告の上記補正について,新規性や進歩性の欠如を回避するなどのため,電圧の検出手段に関して特定の構成を意識的に除外したものとは言い難い。 また,他に均等の成立を否定すべき特段の事情も認められない。 (6)小括以上より,新イ号製品は,本件特許発明1と均等なものとしてその技術的範囲に属するといえる。 4 争点1-5(ロ号製品は本件特許発明1の構成要件を文言上充足するか)について(1)ロ号製品の構成弁論の全趣旨によると,ロ号製品のブロック図は,別紙ロ号製品説明書(被告提出)記載1のとおりであり,ロ号製品は次の構成を備えていると認められる。 a3 ソレノイド駆動ポンプのソレノイド5に電圧を供給してソレノイド5を駆動するFET4bと,b3 100~240V±10%の間で電圧が異なる交流電源1から,トランス6で降圧され,整流器11で整流された直流電圧を分圧する分圧回路18と,当該分圧した電圧をA/D変換して検出するCPU8と,c3 ソレノイド内のアーマチュア(鉄心)を押し出して往動させるための信号が出力されている時間(アーマチュア押し出し信号出力時間)の通電時間及び遮断時間を,CPU8で検出した電圧値に応じて別紙ロ号製品説明書(被告提出)記載2の制御データから読み出し,かつ,その通電時間及び遮断時間に従ってFET4bに提供された全波整流電圧の通電及び遮断をすべくFET4bにポンプ制御信号を供給するCPU8とを具備し,- 89 -d3 上記通電及び遮断をされた全波整流電圧をソレノイド5に供給するソレノイド駆動ポンプの制御回路であって,e3 上記ポンプ制御信号は,FET4bに提供される全波整流電圧のアーマチュア押し出し信号時間内の通電時間及び遮断時間を制御する信号であるf3 ことを特徴とするソ ポンプの制御回路であって,e3 上記ポンプ制御信号は,FET4bに提供される全波整流電圧のアーマチュア押し出し信号時間内の通電時間及び遮断時間を制御する信号であるf3 ことを特徴とするソレノイド駆動ポンプの制御回路。 (2)構成要件A1,C1,D1及びE1の充足性についてロ号製品では,「FET4b」に提供された直流電圧を,「CPU8」の内蔵する制御データに従って制御しているが,制御データは,アーマチュア押し出し信号出力時間において,電源電圧の値に対応した通電時間及び遮断時間を,別紙ロ号製品説明書(被告提出)記載2のとおり設定している。この点,被告の主張によると,通電時間及び遮断時間の設定値と,実際の通電時間及び遮断時間は一致せず,別紙ロ号製品説明書(被告提出)記載3のとおり,実際の通電時間の方が設定された通電時間よりも長くなっているが,被告のかかる主張を前提としても,電源電圧と実際の通電時間及び遮断時間に基づいた平均電圧(=電源電圧×実通電時間÷(実通電時間+実遮断時間))との関係は,別紙ロ号製品説明書(被告提出)記載4のグラフのとおりである。 つまり,ロ号製品は,電源電圧の値が「90~264V」(構成要件B1)という大きな範囲で異なる場合でも,「FET4b」に提供された直流電圧の平均値をおおよそ90~125V(125Vとなるのは電源電圧が250.5Vのとき)という狭い範囲内に変換しており,「所望の直流電圧」,すなわち,ロ号製品の備える「一種の制御回路」が,動作不良や焼損を生じることなく対応可能な電圧値に変換しているといえる(変換後の直流電圧が,動作不良や焼損を起こすものでないことは被告も争うものではない。)。 このようにロ号製品は,旧イ号製品と比較すると,アーマチュア押し出し信号出力時間を前半及び後半に分けてい (変換後の直流電圧が,動作不良や焼損を起こすものでないことは被告も争うものではない。)。 このようにロ号製品は,旧イ号製品と比較すると,アーマチュア押し出し信号出力時間を前半及び後半に分けていないという違いこそあるものの,アーマチュア押し出し信号出力時間を1周期とし,その中でスイッチをオンにする時間(通- 90 -電時間)と,スイッチをオフにする時間(遮断時間)を制御し,このことによって「FET4b」に提供された直流電圧を「所望の直流電圧」へと変換している点で違いはない。 他にも旧イ号製品とロ号製品との間には,構成要件A1,C1,D1及びE1の充足性を左右するような構成上の差異はなく(ただし,本件特許発明1の「演算処理部6」に当たるのは,旧イ号製品では「CPU8及びCPU12」であるが,ロ号製品では「CPU8」である。),よって,旧イ号製品において論じた理由により,これら構成要件を充足するといえる。 (3)構成要件B1についてしかし,ロ号製品も,新イ号製品と同様,「交流電源1」から提供された交流電圧を,本件特許発明1の「駆動回路7」に当たる「FET4b」へ提供する「整流器2」とは別の分岐先において,「トランス6」により降圧し,「整流器11」で整流した後の直流電圧を「分圧回路18」及び「CPU8」により分圧して検出するとの構成をとっており,交流電圧を整流してから「駆動回路7」に当たる「FET4b」に提供されるまでの間に,その直流電圧を分圧して検出する構成ではない。 したがって,新イ号製品と同様,「交流電圧の電源1から整流されて駆動回路7に提供される直流電圧を分圧して検出する検出手段5」を備えているとはいえず,構成要件B1を文言上充足しない。 5 争点1-6(ロ号製品は本件特許発明1と均等なものとしてその技術的範囲に 駆動回路7に提供される直流電圧を分圧して検出する検出手段5」を備えているとはいえず,構成要件B1を文言上充足しない。 5 争点1-6(ロ号製品は本件特許発明1と均等なものとしてその技術的範囲に属するか)について前記4のとおり,ロ号製品は,本件特許発明1の構成要件A1,C1,D1,E1を充足するが,構成要件B1を文言上充足するとは認められない。 しかし,構成要件B1を文言上充足しない理由については,ロ号製品が,駆動回路と別の分岐先において交流電圧を整流し,その後に直流電圧を分圧して検出するという点において異なるというものであるが,上記構成は,新イ号製品と同- 91 -じである(前記4(3))。このため,ロ号製品は,前記3で述べた新イ号製品と同様の理由により,本件特許発明1と均等なものとしてその技術的範囲に属するといえる。 6 争点3-3(本件特許発明1に係る進歩性欠如(乙28文献))について前記1から5までのとおり,旧イ号物件,新イ号物件及びロ号物件は,いずれも本件特許発明1の技術的範囲に属する(ただし,新イ号物件及びロ号物件については,均等なものとして技術的範囲に属する)ことが認められるところ,新イ号物件が本件特許発明2の技術的範囲に属するか否か(争点2-1・2)を判断する前に,被告の抗弁である,本件特許発明1に係る無効事由の存否について判断することとする。 (1)乙28発明の内容ア本件特許1の優先日(平成9年10月17日)前の平成5年7月9日に公開されたと認められる特開平5-170038号公報(乙28文献)には,以下の記載がある。 「【0001】【産業上の利用分野】本発明は,エンジンで駆動される発電機と,この発電機により充電されるバッテリとを備えた自動車のエンジンに係り,特に,バッテリの定格電圧と自動 下の記載がある。 「【0001】【産業上の利用分野】本発明は,エンジンで駆動される発電機と,この発電機により充電されるバッテリとを備えた自動車のエンジンに係り,特に,バッテリの定格電圧と自動車電装品の定格電圧が異なった場合でも柔軟に対応が可能な自動車用エンジン制御装置に関する。」「【0003】【発明が解決しようとする課題】自動車用のエンジンでは,例えば燃料ポンプやアイドル回転速度制御用の電磁ソレノイドなどの電気的アクチュエータ等,その運転や制御に種々の電気的な装置(補機)が使用され,更に自動車用として,ヘッドライトなど各種の照明器具や空調装置,音響機器など各種の電装品が数多く使用されているが,これらの補機を含む電装品は,例えば,12[V]などの所定の定格電圧をもっており,当然のこととして,この定格電圧のもとで動作させた- 92 -ときに,初めて所期の性能が発揮されるようになっており,従って,バッテリから供給されている電圧が,この定格電圧よりも高くなると,動作に異常が現われ,故障や火災にいたる虞れが生じる。」「【0006】本発明は,バッテリの電圧が定格電圧から上昇しても,常に安定した電装品の動作が可能で,平常と変らぬエンジン性能のもとで安全に自動車の運行を継続させることができる自動車用エンジン制御装置の提供を目的とする。 【0007】【問題を解決するための手段】上記目的は,バッテリ電圧が定格電圧から上昇するにつれ,デューティ比が100%を含むその近傍から低下して行く矩形波信号を発生する演算手段を設け,この矩形波信号により,自動車用電装品に対する電力の供給を制御するようにして達成される。 【0008】【作用】演算手段から発生される矩形波信号のデューティ比により,電装品に供給される電流の実効値が制御されるから,バッ 動車用電装品に対する電力の供給を制御するようにして達成される。 【0008】【作用】演算手段から発生される矩形波信号のデューティ比により,電装品に供給される電流の実効値が制御されるから,バッテリ電圧が定格値から上昇しても,電装品に流れる電流の実効値を定格電圧のときと同じに保つことができ,従って,バッテリの電圧が異常に上昇しても,電装品は平常通りに動作し,自動車を安全に運行させることができる。 【0009】【実施例】以下,本発明による自動車用エンジン制御装置について,図示の実施例により詳細に説明する。図1は本発明の一実施例で,この図において,12はマイコンのCPUで,エンジンの回転制御に必要な各種データのデジタル処理を行なう。・・・」「【0010】・・・。20~22はそれぞれアンド(論理積)ゲート回路で,まずアンドゲート回路20はエアコン制御回路200に制御信号20aを供給して電磁クラッチ201を動作させ,アンドゲート回路21はアイドル制御回路210に制御信号21aを供給してスロットルバルブの復帰開度を制御する電磁ソレノイ- 93 -ド211を動作させ,アンドゲート回路22は燃料ポンプ回路220に制御信号22aを供給して燃料ポンプ221を動作させる。」「【0011】・・・。また,この実施例では,図示してないが,このエンジン制御システム10の制御対象となる自動車用エンジンと,これにより駆動されている,定格電圧が12[V]よりも所定値だけ高い発電機と,この発電機の出力により充電される,定格電圧が12[V]のバッテリとを備え,このバッテリから12[V]の電源電圧VB が供給され,これにより全ての電装品が動作されるようになっている。ここで,10はエンジン制御システムの全体を表わす。」「【0012】次に,この実施例の動作につ ッテリから12[V]の電源電圧VB が供給され,これにより全ての電装品が動作されるようになっている。ここで,10はエンジン制御システムの全体を表わす。」「【0012】次に,この実施例の動作について説明する。CPU12は入出力インターフェイス回路18を介して,自動車用エンジンに設けられている各種のセンサ(この実施例ではエアフローセンサ60,クランク角センサ70,水温センサ80,イグニッシヨンスイッチ90,バッテリ電圧100,車室温センサ110を用いている)からの信号を取り込み,これらの信号を基にして,ROM14に記憶されているエアコン制御用のプログラムと,アイドル制御用のプログラム,それに燃料ポンプ制御用のプログラムを実行し,これにより電磁クラッチ201を駆動するためのクラッチ制御信号20Aと,アイドル制御信号21A,それに燃料ポンプ制御信号22Aを,それぞれ出力する。 【0013】一方,これと並行して,CPU12は,同じくROM14に記憶されているデューティ算定プログラムを実行し,バッテリ電圧100を取り込み,これに応じて図2に示すような,所定のDUTY(デューティ比)[%]を有する矩形波を作成し,これを矩形波信号18AとしてI/O18から出力させ,ゲート回路18を介してアンドゲート回路20~22のそれぞれに入力するように動作する。 【0014】ここで,この矩形波信号18AのDUTYとは,図2の右側に示してあるように,矩形波信号18Aのパルス幅Aと,その周期(=1/周波数)Bの比であり,この実施例では,図3に示すように,この矩形波信号18AのDUT- 94 -Yは,バッテリ電圧VB が12[V]のときに100%で,これからバッテリ電圧VB が上昇するにつれてDUTYが低下してゆくように,CPU12による演算が行なわれるように 8AのDUT- 94 -Yは,バッテリ電圧VB が12[V]のときに100%で,これからバッテリ電圧VB が上昇するにつれてDUTYが低下してゆくように,CPU12による演算が行なわれるようになっている。なお,この実施例では,矩形波信号18Aの周期B,つまり周波数を一定にしたままで,パルス幅Aを変化させて,図3の特性が得られるようにしている。 【0015】従って,この実施例では,エアコン制御回路200の制御信号20aは,クラッチ制御信号20Aと矩形波信号18Aの論理積を取ったものとなり,以下,同様に,アイドル制御回路210の制御信号21aは,アイドル制御信号21Aと矩形波信号18Aの論理積を取ったものに,そして燃料ポンプ回路220の制御信号22aは,燃料ポンプ制御信号22Aと矩形波信号18Aの論理積を取ったものに,それぞれなる。 【0016】この結果,この実施例によれば,何らかの理由,例えばバッテリのジャンプスタートなどにより,バッテリ電圧VB が24[V]になったとしても,このときには,矩形波信号18AのDUTYが,図3に示すように100[%]から所定の値に低下されるため,各電装品,つまり,図1では電磁クラッチ201と電磁ソレノイド211,それに燃料ポンプ221に供給される電流は,この所定値のDUTYを有する矩形波信号18Aによりチョッパ制御されて,その実効値はバッテリ電圧VB が12[V]のときと同じにされるので,これら電装品が消費する電力は,バッテリ電圧VB が12[V]のときと同じに保たれ,従って,この実施例によれば,常に平常と変らぬ運転状態を保つことが出来る。 【0017】このことについて,更に詳しく説明すると,一般に負荷(電気装置)で消費される電力Pは,この負荷に流れる電流Iの実効値と,この負荷の端子電圧Vの積で表 変らぬ運転状態を保つことが出来る。 【0017】このことについて,更に詳しく説明すると,一般に負荷(電気装置)で消費される電力Pは,この負荷に流れる電流Iの実効値と,この負荷の端子電圧Vの積で表わされ,他方,矩形波信号によりチョッパ制御されたときに装置に流れる電流Iの実効値は,この矩形波動信号のDUTYに比例することが知られている。このため,電圧が変動したときでも,負荷で消費される電力を一定値に保つためには,電圧変動分の2乗に反比例したDUTYの矩形波信号で負荷を- 95 -チョッパ制御しなければならない。 【0018】そこで,この実施例では,図3に示すように,定格バッテリ電圧値VB =12[V]のときに矩形波信号18AのDUTYを100%とし,バッテリ電圧VB が12[V]以上の電圧VB’のときのDUTYをDUTY(VB’)で表わし,これが,DUTY(VB’)=1/(VB’/VB)2[%]で表わされるDUTYの矩形波信号18Aを出力するようになっており,この結果,負荷で消費される電力は,バッテリ電圧が定格電圧以上に変動した場合でも常に定格バッテリ電圧時と同じ値となり,負荷の最適動作状態を維持すること(が)でき,バッテリ電圧の上昇による負荷の過電圧破壊,異常動作が防止できるのである。」「【0028】【発明の効果】本発明によれば,バッテリ電圧の異常な上昇による自動車用電装品の過電圧破壊や移動動作を防止する効果がある。また,自動車の高性能化に対する要求が高まるにつれ,将来は,現在の12[V]に変えて,例えば24[V]や,更には48[V]など電圧の高いバッテリを使用するシステムへの移行が必至であるが,このとき,本発明によれば,従来の電装品の定格を変更することなく,そのまま対応が可能であるという効果がある。」 【図1】 V]など電圧の高いバッテリを使用するシステムへの移行が必至であるが,このとき,本発明によれば,従来の電装品の定格を変更することなく,そのまま対応が可能であるという効果がある。」 【図1】 - 96 - イ上記アの記載によれば,本件特許1の優先日前に公開された刊行物(乙28文献)に,次の発明(乙28発明)が記載されているものと認められる。 - 97 -「燃料ポンプ221を動作させる燃料ポンプ回路220と,12~48Vの間の定格電圧のバッテリから燃料ポンプ回路220に提供される直流電圧を検出するセンサ(バッテリ電圧100)と,該センサ(バッテリ電圧100)で検出した直流電圧を,燃料ポンプ221の定格電圧12Vと比較し,かつ,燃料ポンプ回路220に提供された直流電圧の実効値を,バッテリから提供された電圧が12Vのときと同じ値になるように,該燃料ポンプ回路220に制御信号22aを出力するCPU12とを具備し,バッテリの電圧に関わりなく,負荷で消費される電力が,バッテリから提供される電圧が12Vのときと同じ値になるように制御された直流電圧を燃料ポンプ221に供給する燃料ポンプ221の制御回路であって,前記制御信号22aは,前記燃料ポンプ回路220に提供される直流電圧をスイッチングし,通電時間の割合であるDUTY(デューティ比)を,バッテリの電圧値に応じて制御する信号であることを特徴とする燃料ポンプ221の制御回路。」(2)本件特許発明1と乙28発明との対比ア 「ソレノイド駆動ポンプ」被告は,乙28発明の「燃料ポンプ221」は,本件特許発明1の「ソレノイド駆動ポンプのソレノイド8」に当たると主張する。 これに対し,原告は,本件特許発明1の「ソレノイド駆動ポンプ」は,ポンプ動作体 は,乙28発明の「燃料ポンプ221」は,本件特許発明1の「ソレノイド駆動ポンプのソレノイド8」に当たると主張する。 これに対し,原告は,本件特許発明1の「ソレノイド駆動ポンプ」は,ポンプ動作体の往復駆動にソレノイドを用いるポンプ(甲41~44)を意味するが,乙28発明の「燃料ポンプ221」は,自動車用の燃料ポンプであり,駆動源がそもそもソレノイドではなく,電動機(モータ)である上,これをポンプ動作体の往復駆動ではなく,バルブの開閉に用いている点で「ソレノイド駆動ポンプ」と相違する旨主張する。 この点,証拠(乙27,52~55)によれば,自動車用の燃料ポンプには,その駆動方式として電磁式,つまり,ソレノイドによる往復駆動を利用し,ポン- 98 -プ部の構造を膜式又はピストン式とするダイヤフラムポンプやプランジャポンプが一般に用いられていることが認められる。また,乙28文献の記載からしても,「燃料ポンプ221」につき,駆動方式を電動機式に限定し,電磁式を除外していると解すべき根拠はない(原告は,「燃料ポンプ221」がコイルで表示されていることを根拠に,駆動源はソレノイドではなく,電動機である旨主張するが,他文献において,ソレノイドもコイルで表示されており〔甲2,44,48〕,失当である。)し,同様に,ダイヤフラムポンプやプランジャポンプが除外されているとすべき理由もない。そのため,被告の上記主張をそのまま採用することはできない。 しかし,自動車用の燃料ポンプである「燃料ポンプ221」は,電気式ポンプであり,ソレノイド駆動方式のダイヤフラムポンプやプランジャポンプといったポンプ動作体の往復駆動にソレノイドを用いるポンプを除外していないとはいえ,これに限定しているわけでもない。そのため,電気式ポンプの一種である本件特許発明1の「 ラムポンプやプランジャポンプといったポンプ動作体の往復駆動にソレノイドを用いるポンプを除外していないとはいえ,これに限定しているわけでもない。そのため,電気式ポンプの一種である本件特許発明1の「ソレノイド駆動ポンプ」と,乙28発明の「燃料ポンプ221」は,電気式ポンプである点では一致するものの,本件特許発明1では「ソレノイド駆動ポンプ」に限定されているのに対し,乙28発明においてそのような限定はない点で相違する(後記相違点①)。 イ 「直流電圧をスイッチングし,オン・オフのデューティを制御する信号」本件特許発明1の「駆動回路7に提供される直流電圧をスイッチングし,オン・オフのデューティを制御する信号(制御信号)」は,前記1(4)で論じたとおり,「駆動回路7に提供される直流電圧」につき,1周期内でスイッチをオンにする時間,つまり,通電する時間と,スイッチをオフにする時間,つまり,電流を遮断する時間を制御し,これによって「駆動回路7に提供された直流電圧」を「所望の直流電圧」に変換する信号を意味すると解される。 一方,乙28発明における制御信号22aは,燃料ポンプ回路220に提供さ- 99 -れる直流電圧をスイッチングし,通電時間の割合であるDUTY(デューティ比)を,バッテリから提供される電圧値に応じて制御する信号である。つまり,乙28発明における「制御信号22a」は,本件特許発明1の「駆動回路7」に当たる「燃料回路220」に提供される直流電圧について,その通電時間の割合であるDUTY(デューティ比)を制御し,バッテリの定格電圧が「所望の直流電圧」である「燃料ポンプ221の定格電圧12V」のときと同じ消費電力になるよう変換するものであるから,上記のとおり解される本件特許発明1の「制御信号」に当たるというべきである。 この 望の直流電圧」である「燃料ポンプ221の定格電圧12V」のときと同じ消費電力になるよう変換するものであるから,上記のとおり解される本件特許発明1の「制御信号」に当たるというべきである。 この点,原告は,本件特許発明1における「オン・オフのデューティを制御」について,パルス幅制御信号を含んでいないなど,上記解釈よりも限定された制御方式であることを前提に,乙28発明ほか,被告の引用するいずれの文献に記載されている制御方式とも相違する旨主張するが,上記「オン・オフのデューティを制御」について,そのような限定をすべき文言上の根拠はない上,本件明細書1を見ても,原告の主張するような限定解釈の根拠になるべき説明や図の記載は一切なく,その主張は採用できない。 ウその他の一致点以上のほか,本件特許発明1と乙28発明とを対比すると,乙28発明における「CPU12」,「燃料ポンプ221の定格電圧12V」は,本件特許発明1における「演算処理部6」,「一種の制御回路に対応した所望の直流電圧」にそれぞれ当たる。また,本件特許発明1の「90~264Vの間で電圧が異なる交流電圧の電源1から整流されて駆動回路7に提供される直流電圧を分圧して検出する検出手段5」と乙28発明の「12~48Vの間の定格電圧のバッテリから燃料ポンプ回路220に提供される直流電圧を検出するセンサ(バッテリ電圧100)」は,「電圧が異なる電源から駆動回路に提供される直流電圧を検出する」点で一致する。 エその他の相違点- 100 -被告自身,本件特許発明1と乙28発明は,次のとおり相違していることを認めている。すなわち,本件特許発明1の電源電圧が「90~264Vの間」の「交流電圧」であり,これを「整流」した上で「分圧」して検出するのに対し,乙28発明の電源電圧が「12~ り相違していることを認めている。すなわち,本件特許発明1の電源電圧が「90~264Vの間」の「交流電圧」であり,これを「整流」した上で「分圧」して検出するのに対し,乙28発明の電源電圧が「12~48Vの間」の「直流電圧」で,必然的に「整流」はなく,検出前に「分圧」しているか明らかでない点で相違する(後記相違点②,③)。 オ小括(一致点と相違点のまとめ)したがって,両者は,「電気式ポンプに駆動電圧を供給して駆動する駆動回路と,電圧が異なる電源から駆動回路に提供される直流電圧を検出する検出手段と,該検出手段で検出した直流電圧を一種の制御回路に対応した所望の直流電圧と比較し,且つ駆動回路に提供された直流電圧を所望の直流電圧に変換すべく該駆動回路に制御信号を供給する演算処理部とを具備し,電源の電圧に関わりなく前記所望の直流電圧を駆動電圧として供給する電気式ポンプの制御回路であって,前記制御信号は,駆動回路に提供される直流電圧をスイッチングし,オン・オフのデューティを制御する信号であることを特徴とする電気式ポンプの制御回路。」である点で一致する。 その一方,本件特許発明1と乙28発明は,次の点で相違する。 (ア)相違点①本件特許発明1は,電気式ポンプの制御回路ではあるが,その種類をソレノイド駆動ポンプの制御回路に限定しているのに対して,乙28発明は,電気式ポンプの制御回路であり,これをソレノイド駆動ポンプの制御回路に限定していない点(イ)相違点②駆動回路に提供される直流電圧が,本件特許発明では,90~264Vの間で電圧が異なる交流電圧の電源から整流された直流電圧であるのに対して,乙28発明では,12~48Vの間の定格電圧のバッテリから燃料ポンプ回路220に- 101 -提供される直流電圧である点(ウ) 圧が異なる交流電圧の電源から整流された直流電圧であるのに対して,乙28発明では,12~48Vの間の定格電圧のバッテリから燃料ポンプ回路220に- 101 -提供される直流電圧である点(ウ)相違点③駆動回路に提供される直流電圧を検出する検出手段に関して,本件特許発明1では,分圧して検出しているのに対して,乙28発明では,どのように検出しているのか不明な点(3)相違点に関する判断ア相違点①前記(2)アのとおり,自動車用の燃料ポンプに,ソレノイド駆動方式のダイヤフラムポンプやプランジャポンプを用いることは,一般に行われている周知慣用技術であり,乙28発明の「燃料ポンプ221」がこれを除外していると解すべき理由はない。また,乙28発明の制御回路は,CPU12がROM14に記憶されている燃料ポンプ制御用のプログラムを実行して,燃料ポンプ制御信号22Aを出力するものである(【0012】~【0016】)ため,同プログラムの設定により,制御対象となるポンプを任意に選択,変更することが可能である。 一方,乙28発明は,バッテリの電圧にかかわりなく,消費電力を同一値とするものであるが,その技術内容からしても,燃料ポンプとしてソレノイド駆動ポンプを用いることを阻害する要因はなく,また,ソレノイド駆動ポンプとすることで顕著な作用効果が得られるわけでもない。 したがって,乙28発明の制御回路の制御対象である「燃料ポンプ221」を,自動車用の燃料ポンプとして周知であるソレノイド駆動ポンプとすることは,当業者が実施に当たり適宜選択し得る設計事項であり,容易に想到しうることである。 イ相違点②まず本件特許発明1の電源電圧が交流電圧であり,これを整流して駆動回路に供給するものであるのに対し,乙28発明の電源電圧がそもそも直 計事項であり,容易に想到しうることである。 イ相違点②まず本件特許発明1の電源電圧が交流電圧であり,これを整流して駆動回路に供給するものであるのに対し,乙28発明の電源電圧がそもそも直流電圧であるとの相違点を考えるに,証拠(乙38)及び弁論の全趣旨によれば,交流電圧を- 102 -直流電圧へと変換する整流の技術は,本件特許発明1の出願前において周知慣用技術であったと認められる。 そして,乙28発明は,電源の電圧が12Vよりも大きい場合でも,燃料ポンプ回路220に供給する電圧の実効値を,所望の直流電圧である12Vへと変換できる点に技術的意義があるが,上記周知慣用技術を用いれば,交流電源にも適用できる発明であることは自明である。また,世界各国において商用電源(交流)の電圧値が大きく異なることは,乙28発明と同一の技術分野における技術常識(乙30)であるところ,交流電圧を駆動電源とする機器においても,異なる電源電圧に同一の制御回路で対応させるという課題が存在することは,乙28発明に接した当業者にとって自明といえる(乙43発明は,かかる課題を掲げた発明の例である。)。一方で,乙28発明の制御回路につき,交流電圧を駆動電源とする機器に転用することを阻害する事由はない。 したがって,乙28発明の制御回路を,周知慣用技術である整流を用いることで,同一の技術分野に属する交流電圧の電源で駆動される電気式ポンプに転用することは,当業者であれば容易に想到できたものといえる。 また,本件特許発明1は,電源電圧の値を90~264Vの場合に限定しており,この点で12~48Vの電源電圧を対象とする乙28発明と相違する。しかし,90~264Vという電圧値は,世界各国における商用電源(交流)の電圧値に係る技術常識(乙30)を踏まえ,交流電圧を駆 おり,この点で12~48Vの電源電圧を対象とする乙28発明と相違する。しかし,90~264Vという電圧値は,世界各国における商用電源(交流)の電圧値に係る技術常識(乙30)を踏まえ,交流電圧を駆動電源とする制御回路として実務上想定すべき電源電圧値を掲げているに過ぎず,本件明細書1の記載に照らしても,本件特許発明1にとって技術的意義のある数値限定とは認められない。 そして,乙28発明の技術内容は,電源電圧の範囲を異にしても適用できることが明らかで,これを90~264Vといった電圧値へ適用することを阻害する事由もない。したがって,この点が本件特許発明1にとって,進歩性の根拠になることはない。 ウ相違点③- 103 -本件特許発明1では直流電圧を「分圧」して検出するのに対し,乙28発明では直流電圧の検出前に「分圧」しているか明らかでない点でも相違している。 しかし,証拠(乙31,32)及び弁論の全趣旨によれば,分圧とは,2つの抵抗を直列に接続することで,元の電圧に比例した低い電圧を取り出すことであり,電圧の検出に際してこれを用いることは,本件特許1の出願前において周知慣用技術であったと認められる。 したがって,乙28発明における直流電圧の検出において,分圧を経させる構成を適用することは,当業者であれば容易に想到できたものといえる。 エ以上より,本件特許発明1の乙28発明と対比したときの相違点は,当業者にとって,周知慣用技術及び技術常識を適用することで容易に想到できる構成といえる。 よって,本件特許発明1は進歩性を欠如しており,本件特許1は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから,原告は,本件特許権1に基づく権利を行使することはできない。 したがって,本件特許権1に基づく請求は,その余の争点について判断 本件特許1は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから,原告は,本件特許権1に基づく権利を行使することはできない。 したがって,本件特許権1に基づく請求は,その余の争点について判断するまでもなく理由がない。 (4)訂正請求についてなお,原告は,本件特許1の無効審判において,平成24年7月20日,無効理由通知が発送され(甲33),原告は,訂正請求を行ったが(甲34の1・2),一旦,期間経過による請求であるとして却下された(乙56)ので,平成25年1月25日の審決の予告(乙58)の後,改めて,同様の訂正請求を行った(甲55)。 これによると,本件特許発明1の請求の範囲の記載を次のとおり訂正するものである(下線部は訂正箇所)。 「ソレノイド駆動ポンプのポンプを駆動するソレノイド8に,時間が一定で且つ周期的に発生される駆動パルスに応じて駆動電圧を周期的に供給して,該ソレノ- 104 -イド8を駆動する駆動回路7と,90~264Vの間で電圧が異なる複数の交流電圧の電源1のうちの任意の交流電圧の電源1から整流されて駆動回路7に提供される直流電圧を分圧して検出する検出手段5と,該検出手段5で検出した直流電圧を一種の制御回路に対応した所望の直流電圧と比較し,且つ駆動回路7に提供された直流電圧を所望の直流電圧に変換すべく該駆動回路7に制御信号を供給する演算処理部6とを具備し,電源1の電圧に関わりなく前記所望の直流電圧を駆動電圧としてソレノイド8に供給するソレノイド駆動ポンプの制御回路であって,前記制御信号は,駆動回路7に提供される直流電圧をスイッチングし,前記駆動パルス内におけるオン・オフのデューティを制御する信号であることを特徴とするソレノイド駆動ポンプの制御回路。」しかし,上記訂正請求が認められたとしても,乙28 直流電圧をスイッチングし,前記駆動パルス内におけるオン・オフのデューティを制御する信号であることを特徴とするソレノイド駆動ポンプの制御回路。」しかし,上記訂正請求が認められたとしても,乙28発明との前記相違点認定に実質的な違いが生じるわけではなく,容易想到性の判断に変わりはない(上記訂正により,無効理由を回避できる旨の主張もない。)。 7 争点4-3(本件特許発明2に係る進歩性欠如(乙28文献))について原告は,新イ号製品についてのみ,本件特許権1のみでなく,本件特許権2に基づいても,製造・販売の差止め及び廃棄並びに損害賠償を請求しているが,新イ号製品が本件特許発明2の技術的範囲に属するか否かの判断は,本件特許発明2の「所望の直流電圧」に「電源1の電圧に関わりなく一定の電気エネルギをソレノイド8に供給するための」との限定が付されている点を除き,本件特許発明1に係る議論とおおむね異なるところはない。 しかし,新イ号製品が本件特許発明2の技術的範囲に属するか否かに関わらず,以下のとおり,本件特許発明2も進歩性を欠如しており,本件特許2は特許無効審判により無効にされるべきものと認められ,本件特許権2に基づく権利を行使することはできないと判断する。 (1)本件特許発明2と乙28発明との対比前記6での判断を踏まえて本件特許発明と乙28発明を対比すると,乙28発- 105 -明における「CPU12」,「制御信号22a」,「燃料ポンプ221の定格電圧12V」は,本件特許発明2における「演算処理部6」,「駆動回路7に提供される直流電圧をスイッチングし,オン・オフのデューティを制御する信号(制御信号)」,「電源1の電圧に関わりなく一定の電気エネルギをソレノイド8に供給するための所望の直流電圧」にそれぞれ当たる。また,本件特許発明2 スイッチングし,オン・オフのデューティを制御する信号(制御信号)」,「電源1の電圧に関わりなく一定の電気エネルギをソレノイド8に供給するための所望の直流電圧」にそれぞれ当たる。また,本件特許発明2の「電圧が異なる交流電圧の電源1から整流されて駆動回路7に提供される直流電圧を分圧して検出する検出手段5」と乙28発明の「12~48Vの間の定格電圧のバッテリから燃料ポンプ回路220に提供される直流電圧を検出するセンサ(バッテリ電圧100)」は,「電圧が異なる電源から駆動回路に提供される直流電圧を検出する」点で一致し,「ソレノイド駆動ポンプ」と「燃料ポンプ221」は,いずれも電気式ポンプである点において一致する。 したがって,両者は,「電気式ポンプに駆動電圧を供給して駆動する駆動回路と,電圧が異なる電源から駆動回路に提供される直流電圧を検出する検出手段と,該検出手段で検出した直流電圧に基づいて,電源の電圧に関わりなく一定の電気エネルギを供給するための所望の直流電圧に変換すべく,該駆動回路に制御信号を供給する演算処理部とを具備する電気式ポンプの制御回路であって,前記制御信号は,駆動回路に提供される直流電圧をスイッチングし,オン・オフのデューティを制御する信号であることを特徴とする電気式ポンプの制御回路。」である点で一致する。 その一方,本件特許発明2と乙28発明は,次の点で相違する。 ア相違点①本件特許発明2では,電気式ポンプの制御回路ではあるが,その種類をソレノイド駆動ポンプの制御回路に限定しているのに対して,乙28発明では,電気式ポンプの制御回路であり,これをソレノイド駆動ポンプの制御回路に限定していない点イ相違点②- 106 -本件特許発明2の電源電圧が「交流電圧」であり,これを「整流」した上で検出するのに対 ンプの制御回路であり,これをソレノイド駆動ポンプの制御回路に限定していない点イ相違点②- 106 -本件特許発明2の電源電圧が「交流電圧」であり,これを「整流」した上で検出するのに対し,乙28発明の電源電圧が「直流電圧」で,必然的に「整流」はない点(2)相違点に関する判断上記相違点については,前記6(3)ア,イで判断したところにより,当業者であれば容易に想到できたものといえる。 よって,本件特許発明2は進歩性を欠如しており,本件特許2は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから,原告は,本件特許権2に基づく権利を行使することはできない。 したがって,本件特許権2に基づく請求は,その余の争点について判断するまでもなく理由がない。 (3)訂正請求についてなお,原告は,本件特許2の無効審判において,平成24年7月24日,無効理由通知が発送され(甲36),原告は,訂正請求を行った(甲37の1~3)。 これによると,本件特許発明2の請求の範囲の記載を次のとおり訂正するものである(下線部は訂正箇所)。 「ソレノイド駆動ポンプのポンプを駆動するソレノイド8に,時間が一定で且つ周期的に発生される駆動パルスに応じて駆動電圧を周期的に供給して,該ソレノイド8を駆動する駆動回路7と,電圧が異なる複数の交流電圧の電源1のうち任意の交流電圧の電源1から整流されて駆動回路7に提供される直流電圧を検出する検出手段5と,該検出手段5で検出した直流電圧に基づいて,駆動回路7に提供された直流電圧を,電源1の電圧に関わりなく一定の平均電圧をソレノイド8に供給するための所望の直流電圧に変換すべく,該駆動回路7に制御信号を供給する演算処理部6とを具備するソレノイド駆動ポンプの制御回路であって,前記制御信号は,駆動回路7に提供 平均電圧をソレノイド8に供給するための所望の直流電圧に変換すべく,該駆動回路7に制御信号を供給する演算処理部6とを具備するソレノイド駆動ポンプの制御回路であって,前記制御信号は,駆動回路7に提供される直流電圧をスイッチングし,前記駆動パルス内におけるオン・オフのデューティを制御する信号であることを特徴とするソ- 107 -レノイド駆動ポンプの制御回路。」しかし,前記6(4)と同様,上記訂正請求が認められたとしても,前述した相違点,容易想到性の判断には変わりない(上記訂正により,無効理由を回避できる旨の主張もない。)。 第5 結論以上の次第で,原告の請求は,その余の争点について判断するまでもなくいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部裁判長裁判官山田陽三 裁判官松川充康 裁判官西田昌吾
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