- 1 -平成18年(ネ)第10033号商標権移転登録抹消登録請求控訴事件平成18年8月9日判決言渡,平成18年6月21日口頭弁論終結(原審・東京地方裁判所平成16年(ワ)第24617号,平成18年3月17日判決)判決控訴人(被告)X訴訟代理人弁護士山田有宏,丸山俊子,松本修,中島真紀子,戸谷勝壽,菊地真治,中村一樹被控訴人(原告)Y訴訟代理人弁護士三山裕三,堀之内幸雄,大内倫彦,小山哲主文本件控訴を棄却する。 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1控訴人の求めた裁判 原判決を取り消す。 被控訴人の請求を棄却する。 第2事案の概要,,, 本件は被控訴人が控訴人に対し無断で商標権移転登録が行われたとして当該商標権に基づき,移転登録抹消登録手続を求めた事案である。原判決は,被控訴人の請求を認容したために,控訴人が控訴をした。 当事者の主張は次のとおり付加するほかは原判決の事実及び理由中の第2,,「」「事案の概要」のとおりであるから,これを引用する。 - 2 - 当審における控訴人の主張の要点(控訴理由の要点)(1)原審は,控訴人が,本件商標権の移転登録手続の時点で,既に,本件商標権の譲渡代金が振り込まれた被控訴人の銀行預金口座番号を知っていた可能性があると判示するが,控訴人が当該口座番号を知っていたとの事実を裏付ける証拠はない。控訴人と被控訴人とが母子の間柄にあるから,口座番号を知っていた可能性があるとの判示は,経験則にも反する。むしろ,被控訴人の郵便貯金口座番号を書き留めたレシート(乙8)の存在は,控訴人が被控訴人名義の口座番号を知らなかったことを裏付けるものである。控訴人は,被控訴人名義の郵便貯金口座には振り込むことができなかったために(乙10,被控訴人から,さがみ信 ート(乙8)の存在は,控訴人が被控訴人名義の口座番号を知らなかったことを裏付けるものである。控訴人は,被控訴人名義の郵便貯金口座には振り込むことができなかったために(乙10,被控訴人から,さがみ信用金庫の口座番)号を教えてもらって,そこに振り込みをしたのである(乙11。仮に,控訴人が)被控訴人名義のさがみ信用金庫の口座番号を予め知っていたとすると,控訴人は,被控訴人が何らかの方法でレシートを入手し,これに予め知っていた被控訴人の郵便局口座を裏書きし,かつ,この郵便口座には振り込みができないということを知りながら,振り込みの手続を行ったということになるが,そのようなことは,あまりに手の込んだ仕業であって,不自然である。 (2)原判決は,被控訴人名義の銀行預金口座に振り込みがなされたことは,書面によらざる贈与の取消しを避けるためにあえて対価支払いの外形を作出した疑いがあるなどと判示する。しかし,控訴人と被控訴人との間において,譲渡契約が存,,在しないにもかかわらず控訴人があえて対価支払いの外形を作出したのであればその後,被控訴人から控訴人に対し,かかる振り込みについて,なぜこのようなこ,,とをするのかと問い合わせたり直ちに金員の返還を申し出るのが通常であるのにそのような形跡は全く認められない。 (3)原判決は,宗家の後継者を控訴人とするか長男のA1にするかの対立があり,本件商標権は日本躰道協会の活動のため不可欠なものであるから,このような状況下で,控訴人への本件商標権の譲渡に被控訴人が軽々に同意したとは考え難いなどと判示する。しかしながら,控訴人は,当初は,故A2(以下「故A2」とい- 3 -う)の血筋ではない被控訴人が宗家を名乗るのには不満であったが,本件商標権。 の譲渡がなされた平成16年6月当時は,A家の中で,宗家の ながら,控訴人は,当初は,故A2(以下「故A2」とい- 3 -う)の血筋ではない被控訴人が宗家を名乗るのには不満であったが,本件商標権。 の譲渡がなされた平成16年6月当時は,A家の中で,宗家の地位が以前と変わらず保たれて行くのであれば,被控訴人が宗家を名乗ってもよいと考えており,宗家の後継者を誰にするかについての対立はなかった。控訴人は,被控訴人に対して,宗家が危機的状況にあることを説明し,被控訴人がこれを理解したからこそ,本件商標権の譲渡を承諾したのである(乙17。なお,被控訴人は,控訴人の説得に)より宗家の危機的状況を理解し,躰道本院から要求された確認書(乙6)に押印していない。 (4)控訴人の陳述書(乙17)及び法廷における供述は,具体的かつ詳細で,不自然なところは全くなく,信用性が高い。これに対し,被控訴人作成名義の陳述書等(甲4,5,7)は,いずれも,真実被控訴人の意思に基づいて作成されたものとは考えられず,その内容自体,信用性が低い。 (5)以上によれば,控訴人と被控訴人との間には本件商標権の譲渡契約が成立していたものであり,その移転登録手続が有効であることは明らかである。 当審における被控訴人の主張の要点人は,控訴人が銀行預金等の口座番号を知らなかったこと及びレシー(1)控訴トの裏書が重要な間接事実であるかのように主張するが,銀行預金等の口座番号を知らなかったこと及び裏書のあるレシートの存在は,商標権を移転することに被控訴人が同意したことには直接には結びつかない。 控訴人は,平成15年2月から毎月26日に,被控訴人から4,5万円の(2)現金を受け取っていたことを自認しているが(乙17,この金銭の授受は,振込)み等の方法ではなく,現金を直接手渡しする方法によって行われていた。控訴人と被控訴人との間では, から4,5万円の(2)現金を受け取っていたことを自認しているが(乙17,この金銭の授受は,振込)み等の方法ではなく,現金を直接手渡しする方法によって行われていた。控訴人と被控訴人との間では,金銭のやり取りについては,現金を直接授受するのが常態であったと推測され,いずれにせよ銀行送金は異例なものであったと推測される。物理的に離れた場所にいる親子であればともかく,会おうと思えばいつでも容易に会える場所に住み,現に会っているのにもかかわらず,本件商標権の移転に限って,- 4 -振込手数料を負担してまで,控訴人と被控訴人間で定期的に授受されている金額と変わらない少額の金銭を銀行送金したのは不自然というほかない。 (3)控訴人も認めているとおり,控訴人と控訴人の兄妹との間は必ずしも円満な関係ではなかった。そして,原判決が指摘するとおり,3名の母親である被控訴人は,控訴人とその兄妹との関係が円満ではないことを十分に認識していたから,控訴人のみへの商標権の譲渡という,あえて兄弟姉妹間の対立を激化させるようなことをする理由は全く見当たらない。 (4)被控訴人は,躰道の第二代宗家として,原審において,一貫して控訴人に対する商標権の移転を承諾したことはない旨を陳述してきており,その陳述内容は当時の状況に照らしても,自然かつ合理的である。 控訴人の主張はいずれも理由がなく,控訴人の控訴は速やかに棄却される(5)べきである。 第3当裁判所の判断当裁判所も,被控訴人の請求には理由があると判断するが,その理由は,以下のとおりである。 証拠(甲1~4,乙11,12の1及び2,13,17,控訴人本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる(当事者間に争いのない事実も含む。 。)(1)被控訴人は,沖縄に古くから伝わる躰道という武 1,12の1及び2,13,17,控訴人本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる(当事者間に争いのない事実も含む。 。)(1)被控訴人は,沖縄に古くから伝わる躰道という武道の普及と体系化に努めた故A2の妻であり,平成13年11月にA2が死亡した後,躰道の宗家を承継した。他方,控訴人は故A2の長女である。本件商標権の移転登録手続がなされた当時,被控訴人はB市に,控訴人はC町に居住し,故A2の月命日の日などに顔を合わせていた。 (2)本件商標(登録第4775564号)は「日本躰道協会」との文字を上段,に配しNIHONTAIDOKYOKAIとの文字を下段に配したものであり平成15年3,「」,- 5 -月19日に指定商品を第25類及び第41類として出願され(商願2003-021910,平成16年6月4日に被控訴人を商標権者として登)録された。 (3)平成16年6月13日,躰道本院最高会議が開催された際,控訴人は,被控訴人が,躰道本院の下部組織である日本躰道協会に本件商標権を譲渡する意思を有していることを知り,本件商標権が同協会に譲渡されてしまうと,宗家の影響力が失われるのではないかと危機感を募らせ,本件商標権は宗家のためにも控訴人名義とすることが望ましいと考えた。そこで,控訴人は,商標権移転登録手続について特許庁に照会の上,平成16年6月17日,自らが保有する「A」名義の印鑑を用いて,本件商標権を譲渡した旨の譲渡証書及び商標権移転登録申請書を作成し,特許庁に提出した。同移転登録申請は,同月18日に受け付けられ,同年7月2日に移転登録がなされた。 (4)控訴人は,平成16年6月21日,伊豆信用金庫八幡野支店の被控訴人名義の普通預金口座に6万6000円を振り込んだ。これに対し,被控訴人は,本件 付けられ,同年7月2日に移転登録がなされた。 (4)控訴人は,平成16年6月21日,伊豆信用金庫八幡野支店の被控訴人名義の普通預金口座に6万6000円を振り込んだ。これに対し,被控訴人は,本件商標権を控訴人に譲渡する意思がないことを記載した同年7月12日付けの内容証明郵便を,控訴人に対し送付した。 上記認定事実,とりわけ,①本件商標権の移転登録手続に必要な譲渡証書や商標権移転登録申請書の作成・送付はすべて控訴人が行い,これらの書類における被控訴人名下の押印も控訴人の保有する印鑑によるものであること,②本件商標権の移転登録手続が行われた時点では被控訴人は本件商標権を日本躰道協会に譲渡することを承諾しており控訴人はそのことを知って危機感を募らせていたこと③6,,万6000円を被控訴人名義の銀行口座に振り込んだ点についても,日常的に行き来のある母と娘の間の行為としては不自然であることなどによれば,本件商標権の譲渡について,被控訴人が承諾していたと認めることはできない。 これに対し,被控訴人は,上記第2の2のとおり主張するので,この点について判断する。 - 6 -(1)控訴人は,乙7,8,10などに基づき,控訴人は,平成16年6月16日に被控訴人と会った際,被控訴人から振込先を教えてもらって初めて本件商標権の譲渡代金の振込みが可能になったものであり,これは,被控訴人が本件商標権の譲渡を承諾していたことを示す事実であると主張する。 しかしながら,控訴人が被控訴人から郵便貯金口座番号を聞いて書き留めたとい(),,,うレシートの裏の記載乙8が平成16年6月16日に被控訴人宅において被控訴人が同席する場でされたものであると認めるに足る証拠はなく,控訴人が,被控訴人から本件商標権の譲渡代金の振込先として,さがみ信用金庫の 記載乙8が平成16年6月16日に被控訴人宅において被控訴人が同席する場でされたものであると認めるに足る証拠はなく,控訴人が,被控訴人から本件商標権の譲渡代金の振込先として,さがみ信用金庫の口座番号を教えてもらったと認めるに足る証拠もない。控訴人が被控訴人の長女であり,しかも被控訴人が高齢で,控訴人の近隣に居住していたことを考慮すると,本件商標権の移転登録手続がなされた当時,控訴人が被控訴人の銀行預金口座の番号を知っていたとしても何ら不思議はなく,いずれにしても,控訴人が被控訴人の銀行預金口座の番号を知っていたことをもって被控訴人が本件商標権の譲渡を承諾していたと推認することはできない。 (2)控訴人は,被控訴人から控訴人に対し,かかる振り込みについて,なぜこのようなことをするのかと問い合わせたり,直ちに金員の返還を申し出なかったのは不自然であると主張する。 しかしながら被控訴人は本件商標権の移転登録が行われてからほどない同年7,,月12日付けの内容証明郵便をもって,控訴人に対して本件商標権を譲渡する意思がないことを明らかにしているのであって,本件商標の移転登録手続の完了から上記7月12日までの間に被控訴人から上記問い合わせ等がなかったとしても,被控訴人が本件商標権の譲渡を承諾していたことを示すものとはいえない。 (3)控訴人は,本件商標権の譲渡がなされた平成16年6月当時,被控訴人が宗家を名乗ることを容認しており,宗家の後継者を誰にするかについての対立はなく,被控訴人は,控訴人から宗家が危機的状況にある旨の説明を受けて納得したからこそ,本件商標権の譲渡を承諾したのであると主張する。 - 7 -しかしながら,本件商標権の移転登録手続の行われた当時,被控訴人は本件商標権を日本躰道協会に譲渡する意思を有しており,控訴人はそのこ らこそ,本件商標権の譲渡を承諾したのであると主張する。 - 7 -しかしながら,本件商標権の移転登録手続の行われた当時,被控訴人は本件商標権を日本躰道協会に譲渡する意思を有しており,控訴人はそのことを知って危機感を募らせ,本件商標権の移転登録手続を行ったとの事実は認められるものの,本件商標権の移転登録手続を行う前に,控訴人が被控訴人に対して宗家の危機的状況に,。 ついて説明をし本件商標権の譲渡について承諾を得たと認めるに足る証拠はない(4)したがって,控訴人の主張はいずれも採用することができない。 結論 以上によれば,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないので,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部裁判長裁判官塚原朋一裁判官高野輝久裁判官佐藤達文
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