平成16(ワ)15288 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成19年4月25日 東京地方裁判所 その他
ファイル
hanrei-pdf-34641.txt

判決文本文121,177 文字)

- 1 -平成19年4月25日判決言渡平成16年(ワ)第15288号損害賠償請求事件(以下「甲事件」という)。 平成16年(ワ)第23351号独立当事者参加申立事件(以下「乙事件」という)。 平成18年(ワ)第11645号独立当事者参加申立反訴事件(以下「丙事件」という)。 口頭弁論終結日平成18年12月20日判決主文 原告らの被告及び参加人に対する請求をいずれも棄却する。 被告と参加人との間において,参加人の訴外aに対する診療行為に関して,参加人の被告に対する,不法行為または診療契約上の債務不履行に基づく損害賠償債務が存在しないことを確認する。 参加人の原告らに対する訴えをいずれも却下する。 損害賠償請求事件に関する訴訟費用,独立当事者参加申立事件及び独立当事者参加申立反訴事件に関する訴訟費用は,全て原告らの負担とする。 事実 及び理由第一請求一(甲事件・丙事件) 被告及び参加人は,原告bに対し,連帯して,金2872万8859円及びこれに対する平成12年2月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告及び参加人は,原告cに対し,連帯して,金1436万4430円及びこれに対する平成12年2月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 - 2 - 被告及び参加人は,原告dに対し,連帯して,金1436万4430円及びこれに対する平成12年2月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 訴訟費用は被告及び参加人の負担とする。 仮執行宣言二(乙事件) 原告らと参加人との間において,参加人の訴外aに対する診療行為に関して,参加人が原告らに対し,不法行為または診療契約上の債務不履行に基づく損害賠償債務が存在しないことを確認する。 被告と参 原告らと参加人との間において,参加人の訴外aに対する診療行為に関して,参加人が原告らに対し,不法行為または診療契約上の債務不履行に基づく損害賠償債務が存在しないことを確認する。 被告と参加人との間において,参加人の訴外aに対する診療行為に関して,参加人が被告に対し,不法行為または診療契約上の債務不履行に基づく損害賠償債務が存在しないことを確認する。 参加にかかる訴訟費用は,原告ら及び被告の負担とする。 第二事案の概要甲事件は,原告bの妻である訴外a(以下「a」という)が,型慢性肝。 C炎に罹患して被告が設置・運営するe病院においてインターフェロン注射による治療(以下「治療」という)を受けたところ,治療の副作用であIFNIFN。 るうつ病に陥り自殺したとして,原告らが被告に対して,不法行為または診療契約上の債務不履行に基づき,損害賠償及び亡aの死亡の日である平成12年2月20日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。丙事件は,亡aがe病院における治療終了後,参加人が経営IFNする精神病院で2回にわたり診療を受けたが自殺を防げなかったとして,原告らが参加人に対して,不法行為または診療契約上の債務不履行に基づき,損害賠償及び亡aの死亡の日である平成12年2月20日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。原告らは,被告及び参加人の行為は共同不法行為を構成するとして,被告及び参加人に対して連帯支払- 3 -を求めた。 乙事件は,訴訟告知を受けた参加人が独立当事者参加して,参加人の亡aに対する診療行為について,原告らに対しては不法行為または診療契約上の債務不履行に基づく損害賠償債務が存在しないことの確認を求め,被告に対しては共同不法行為に基づく求償債務が 参加して,参加人の亡aに対する診療行為について,原告らに対しては不法行為または診療契約上の債務不履行に基づく損害賠償債務が存在しないことの確認を求め,被告に対しては共同不法行為に基づく求償債務が存在しないことの確認を求めた事案である。 一前提となる事実(認定の根拠を()内に示す。証拠を掲げない事実は当事者間に争いがない)。 当事者(一)原告b(以下「b」という)は,亡aの夫,原告cは,bと亡a夫。 婦の長男,原告dは,bと亡a夫婦の二男である(甲)。 C1(二)亡aは,昭和23年7月6日生まれであり,平成12年2月20日死亡した(甲)。 C1。 。 (三)被告は,e病院(以下「被告病院」という)を設置・運営しているf医師(以下「f医師」という)は,平成10年に亡aが被告病院を受。 診した当時,被告病院に勤務する内科医であり,亡aの担当医であった。 (四)参加人は,g病院(以下「参加人病院」という)を経営している。 。 h医師(以下「h医師」という)は,平成11年12月と平成12年1。 月に亡aが参加人病院を受診した当時,参加人病院に勤務する精神科医であった。 診療経過の概略(一)亡aは,平成9年3月に子宮内膜症,子宮頸部前がん状態の診断で被告病院婦人科で手術を受けたが,その後同科で経過観察中にC型慢性肝炎に罹患し肝機能障害が存在することが判明し,平成10年5月27日,被告病院内科を紹介されてf医師を受診した(乙-,乙)。 A1P4A8(二)亡aは,被告病院内科を毎月1回定期的に受診し血液検査(肝機能検査)を受けていたが,治療の適否を決定するために,エコー下肝生検IFN- 4 -を目的として,平成10年11月10日から同月20日まで,被告病院内科に入院(以下「第1入院」という)した(乙 検査)を受けていたが,治療の適否を決定するために,エコー下肝生検IFN- 4 -を目的として,平成10年11月10日から同月20日まで,被告病院内科に入院(以下「第1入院」という)した(乙-,~)。 。 A1P4P8P11亡aは,平成10年11月11日肝生検を受け,病理学的検査の結果,グリソン鞘が軽度拡大し慢性炎症反応を中等度認め,繊維化は軽度で肝硬変像はなく,慢性肝炎と診断された(乙-)。 A1P3亡aは,肝生検に引き続き治療を受ける予定であったが,入院後IFN37度台の微熱やせきがあり,同月13日の血液検査の結果,白血球数が2200まで減少していたので治療の開始を延期し,抗生物質の投IFN与を受けた。亡aは,同月17日,いったん退院し,外来で白血球数の回復を待って再度入院して治療を試みるという方針が決まり,同月2IFN0日退院した(乙-,~)。 A2P7P9P16(三)亡aは,退院後も平成11年2月を除いて月1回定期的に被告病院内科外来を受診していたが,平成11年4月7日には,白血球数が3500を超えるまで回復すれば同年5月か6月に治療を受けるとの方針がIFN定まった。亡aは,同年5月12日被告病院内科外来を受診したが,前回受診した同年4月7日に受けた血算の検査結果が判明しており,同年4月7日には白血球数が4800と3500を超えるまで回復していたので投与を開始することとなり,同年6月1日から同月15日まで被告病IFN院内科に入院(以下「第2入院」という)し,同月1日から毎日,イン。 ターフェロンα製剤である(商品名)イントロン1000万単位の筋A肉注射を受けた(乙-,,乙-,,,乙-。 A1P11P12A3P1P8P10A4 ら毎日,イン。 ターフェロンα製剤である(商品名)イントロン1000万単位の筋A肉注射を受けた(乙-,,乙-,,,乙-。 A1P11P12A3P1P8P10A4,,乙)P3P36A8亡aは,同月15日被告病院内科を退院後も,週に3回インターフェロン(以下「」という)注射を受けるために,被告病院内科外来に通IFN。 院した。ところが,亡aは,食欲不振や下腹部痛を訴えるようになり,平成11年8月13日からイントロンは600万単位に減量された。しA- 5 -かし,亡aは,平成11年10月13日被告病院内科外来を受診して,心配事がわいてくるので治療の中止を希望し,同日を最後に治療IFNIFNは中止された。亡aは,治療中止後も,死亡するまで被告病院内科外IFN来を毎月1回受診した(乙-~)。 A4P5P17(四)亡aは,平成11年12月11日と平成12年1月15日の2回にわたって,参加人病院を受診し,h医師の診察を受けた(丙-~,。 A1P1P4丙)A2(五)亡aは,平成12年2月20日午前11時頃,自宅車庫で,車内で灯油をかぶり火をつけて自殺を図り,同日午前12時35分気道熱傷で死亡した(甲)。 A1二 争点 被告病院の医師の患者や家族に対する説明義務違反の有無 被告病院の医師がインターフェロンを適切に投与しなかった過失の有無 被告病院の医師の療養指導義務違反ないし転医勧奨義務違反の有無 被告病院の過失行為と亡aの死亡との間の因果関係の有無 参加人病院の医師の家族に対する説明義務違反及び療養指導義務違反の有無 参加人病院の過失行為と亡aの死亡との間の因果関係の有無(判断する必要がなかった争点) 被告・参加人の共同 係の有無 参加人病院の医師の家族に対する説明義務違反及び療養指導義務違反の有無 参加人病院の過失行為と亡aの死亡との間の因果関係の有無(判断する必要がなかった争点) 被告・参加人の共同不法行為の成否(判断する必要がなかった争点) 損害額(判断する必要がなかった争点) 亡a自身又は原告の過失の有無(判断する必要がなかった争点)消滅時効(不法行為)の成否(判断する必要がなかった争点) 三争点に関する当事者の主張争点に関する当事者の主張は別紙「主張要約書(この主張要約書は,平成」18年12月20日の本件第6回口頭弁論期日において,原告ら,被告及び参- 6 -加人が陳述したものである)記載のとおりであり,その骨子は以下のとおり。 である。 被告病院の医師の患者や家族に対する説明義務違反の有無(原告らの主張)(一)本件では,被告病院のf医師により,亡aに対して治療が行わIFNれたものであるところ,治療を行う際には,その治療以外の選択肢のIFN有無やその治療の至適時期等を説明する必要があり,また,治療の副IFN作用として,重篤なうつ状態,自殺企図をはじめとする精神神経症状が発現する可能性がある。このような副作用は重大であって,家族等周囲への影響が大きいことからすれば,被告病院には,患者のみならず,家族に対しても,その可能性のあることを理解させ,不眠,不安等の精神神経症状が現れた際には直ちに医師に連絡するよう説明する義務があった。 (二)ところが,f医師は,亡aに対し,治療以外の選択肢の有無やIFN治療の至適時期等についての説明はなかったし,副作用についても,IFNうつ症状の発症及び自殺企図の可能性がある点についての説明はなかった。 また,f医師をはじめとする被告病院の医療従事者は,原告ら家族に の至適時期等についての説明はなかったし,副作用についても,IFNうつ症状の発症及び自殺企図の可能性がある点についての説明はなかった。 また,f医師をはじめとする被告病院の医療従事者は,原告ら家族に対して,治療の副作用についての説明を何ら行わなかった。被告は,原IFN告らが治療に関するパンフレットに目を通したことにより,治療IFNIFNについて知悉する機会があったと主張するが,パンフレットの記載は簡単なもので,副作用の内容やその対処法についての記載は不十分であり,「自殺企図」が副作用であることは明記されていなかった。また「うつ,病」は副作用として明記されていたものの,原告らはうつ病がどのような病気であるのか知らず,医師からの説明を必要としていた。 (三)したがって,上記説明をしなかった被告病院には,亡aや家族に対する説明義務違反がある。 (被告の反論)- 7 -(一)被告病院は,亡aに対し,平成10年5月27日(被告病院内科初診日)以降,適時,適切に,治療の内容について説明を行った。副作用IFNについても,パンフレットの内容を示しながら「投与初期のものとして,発熱,全身倦怠感,頭痛,筋肉痛などのインフルエンザ症状や食欲不振,胃腸症状などが比較的多く認められる。投与中期以降に好発する副作用としては不眠,不安やうつ状態,脱毛,甲状腺機能異常,糖尿病,網膜症などがある。頻度はきわめてまれであるが,重大な副作用として,間質性肺炎,自殺企図並びに自殺の報告がある」と,具体的に説明したし,その対処法についても,何か変調を感じた時又は新たな副作用の発現を自覚した際には速やかに担当医又は看護師に報告すべきこと,定時の診察日以外でも要望に応じて随時面談や診察する用意があること,家族がこれらの異常に気がついた際には同様に医師ら 又は新たな副作用の発現を自覚した際には速やかに担当医又は看護師に報告すべきこと,定時の診察日以外でも要望に応じて随時面談や診察する用意があること,家族がこれらの異常に気がついた際には同様に医師らに対して報告すべきであると家族に伝えるべきことなどを述べているのであって,十分に説明義務を果たしている。 (二)原告ら家族に対しては,亡aに対し,C型慢性肺炎及び治療にIFN関する3種のパンフレットを手渡し,本人はもちろん,家族にも熟読してもらって理解してもらうよう指導し,家族が来院すれば治療についIFNて説明することも伝えた。そして,原告bは,少なくともC型肝炎に関するパンフレットを読んでおり,そこには精神症状があって命に関わるかもしれない副作用がある旨が記載されていたのであるから,同人は,治IFN療にうつ病発現の副作用があることを十分に認識した。そればかりか,平成11年10月22日,同年11月5日の診察日には,その次の受診時には家族を同伴してほしい旨,亡aに対して指示をしたにもかかわらず,家族は来院しなかった。 このように,被告病院は,原告ら家族に対する治療全般及びそのIFN副作用等の説明に関してその義務を十分に果たしたのであって,仮に原告ら家族がこれら治療全般及びその副作用等に関して十分な認識がなIFN- 8 -かったとすれば,それはまさに亡aと原告ら家族との間のコミュニケーション不足が原因である。 被告病院の医師がインターフェロンを適切に投与しなかった過失の有無(原告らの主張)(一)医師が治療を行う際には,その副作用として重篤なうつ状態,IFN自殺企図をはじめとする精神神経症状が発現する可能性があるから,その途中経過において,治療の効果があるか否かを検査し,副作用が発現IFNしていないか不断に経 副作用として重篤なうつ状態,IFN自殺企図をはじめとする精神神経症状が発現する可能性があるから,その途中経過において,治療の効果があるか否かを検査し,副作用が発現IFNしていないか不断に経過観察することにより,効果が認められない場合や。 異常が発生した場合には,直ちにを減量ないし中止する義務があるIFN(二)ところが,f医師は,亡aに対し,であるイントロンA1000IFN万単位を漫然と投与し続け,その効果について何ら検査を行わず,適切な時期に効果を判定しなかった。 また,亡aには,の副作用による精神神経症状が発現していたにもIFNかかわらず,を減量・中止する時期が遅れた。すなわち,亡aは,平IFN成11年8月ころには,治療開始前に比べて性格が豹変しており,自IFNら医師に対しての減量を要求したことでようやく減量してもらったIFNのであり,さらに,同減量後も精神神経症状がより強くなったため,同年10月13日に自ら投与中止を要求し,ようやく中止してもらったIFNIFNのであって,医師は,亡aが要求する前から症状が現れていたのに,の減量ないし中止の判断が遅れたというべきである。 (三)したがって,被告病院は,効果が認められない場合や異常が発生した場合に直ちにを減量ないし中止する義務に違反したものである。 IFN(被告の反論)(一)亡aのようなC型肝炎ウィルスグループ2型で低ウイルス量の患者だからといって,投与量を調整する必要はないから,高用量の治療IFNIFNを開始することは医学的に適切なことであって,を1回1000万単IFN- 9 -位で投与開始したことは適切である。そして,被告病院は,亡aに対するの治療効果について,肝障害の程度をもっともよく反映する値IFNGPTを定期 あって,を1回1000万単IFN- 9 -位で投与開始したことは適切である。そして,被告病院は,亡aに対するの治療効果について,肝障害の程度をもっともよく反映する値IFNGPTを定期的に測定し,投与により良好な治療効果が得られていたことをIFN確認していた。したがって,治療効果を測定しなかったという原告の主張は誤りである。 (二)また,被告病院は,亡aに対する治療において,適時適切な方IFN法での減量及び中止をした。すなわち,被告病院は,治療の副作IFNIFN用とも考えられる症状が亡aに現れてからは慎重に問診等を行い,亡aの同意の下,投与量を減少し,これにより亡aの症状は改善したものの,IFNその後不眠と不安感の訴えがあったため,投与を中止したものである。 IFNさらに,亡aに発現した症状に対しては適切な薬剤を処方し,家族同伴の受診,精神科受診の勧奨を行う等の対処もしており,被告病院の措置に不適切な点は何ら存しない。 被告病院の医師の療養指導義務違反ないし転医勧奨義務違反の有無(原告らの主張)(一)治療中に精神的症状を伴う副作用が発現した場合には,の投IFNIFN与を中止すべきであるだけでなく,投与中止後においても自殺企図等の可能性があるから,患者の精神状態に引き続き注意を払う必要がある。具体的には,入院させて経過を観察するか,通院治療を行わざるを得ない場合には,患者の家族に対して自殺企図の可能性等について事情を説明し,兆候が認められた場合には速やかに対処する体制を整える義務がある。そしIFNて,亡aには精神的症状を伴う副作用が発現し,これを機縁として投与が中止されたのであるから,被告病院としては,上記義務を履行しなければならなかった。 (二)ところが,f医師は,投与中止後,亡 Nて,亡aには精神的症状を伴う副作用が発現し,これを機縁として投与が中止されたのであるから,被告病院としては,上記義務を履行しなければならなかった。 (二)ところが,f医師は,投与中止後,亡aの精神状態に格別の注意IFNを払うことなく,亡aを被告病院に入院させることもなく,約2週間に1- 10 -度,後には約1か月に1度の通院を指示したにとどまった。被告は,亡aに対して精神科受診の勧奨をしたと主張するが,f医師からは何ら具体的理由も示されないまま突然精神科受診勧奨がされ,しかも原告ら家族に対して別途の説明がなかったことから,亡a及び原告らは,被告病院が責任を放棄していると感じたのであって,このような方法による勧奨が精神科受診の勧奨義務を尽くしたものとは到底いえない。 また,治療を中止した以後,原告ら家族に対しても直接電話等によIFNり連絡を取って,家族として注意すべきことについて指導をすべきであったのに,このこともされていない。 (被告の反論)(一)治療中に亡aに精神的症状を伴う副作用は認められたが,亡aにIFN希死念慮や自殺企図が認められなかったのであるから,亡aを被告病院に入院させる義務や被告病院への通院間隔を短くする義務は存在しない。 (二)患者に希死念慮や自殺企図以外の精神的症状が認められた場合は,医師としては,家族同伴受診を指示するとか,精神科の受診を勧めることで足りるものであるところ,f医師は,亡aに対し,家族同伴の受診の指示や精神科受診を勧奨したし,家族に対する説明に関しては亡aを通じて十分に行っており,被告病院は義務を果たした。 被告病院の過失行為と亡aの死亡との間の因果関係の有無(原告らの主張)(一)うつ病の回復期にも何かのきっかけで突然病状の悪化が認められることがあるし,投与中止後もう 病院は義務を果たした。 被告病院の過失行為と亡aの死亡との間の因果関係の有無(原告らの主張)(一)うつ病の回復期にも何かのきっかけで突然病状の悪化が認められることがあるし,投与中止後もうつ状態が遷延する例がみられるとか,衝IFN動的・突発的に自殺企図行動に出るもので,前兆が明確でなく危険であるとの指摘もあるところである。他方,の副作用による心理的ストレスIFNの増大により抑うつ性の増悪が引き起こされることもある。これらのことからすれば,亡aの自殺は,治療中止4か月後に発生したものであるIFN- 11 -が,治療を行ったことと相当因果関係にあるものというべきである。 IFN(二)そして,被告病院は,原告ら家族に対してうつ状態や自殺企図との副作用の説明を全く行っていなかったものであるところ,仮にこのような説明がされていれば,原告ら家族は亡aに対して適切な処置を執ることができ,亡aの自殺を防止できたから,被告の説明義務違反と亡aの自殺との間に因果関係があることは明らかである。 (三)被告は,亡aの正確な診断は統合失調症であって,うつ病は発症していなかったと主張するが,自殺の原因となる精神神経症状がうつ病に限られないことは明らかであるから,そもそも亡aの精神神経症状が統合失調症であるとの診断自体が疑わしいだけでなく,仮にうつ病とは診断されないものであったとしても,亡aの症状がの副作用であることを排斥IFNする理由はない。 また,被告は,亡aの自殺当日に原告らが同女の自殺を防止するために必要な措置を執らなかったことが同女の自殺の原因であると主張するが,被告病院からの説明がなければ,同女の自殺防止のための措置を執り得なかったのであるから,この主張は誤りである。 (被告の反論)(一)亡aの希死念慮の発現は投与開 の自殺の原因であると主張するが,被告病院からの説明がなければ,同女の自殺防止のための措置を執り得なかったのであるから,この主張は誤りである。 (被告の反論)(一)亡aの希死念慮の発現は投与開始約5か月目,自殺企図発現はIFN約8か月目(中止後4か月目,自殺は9か月目(同5か月目)であIFN)るところ,これは,投与開始,減量,中止後からかなりの期間が経過IFNしているし,統計上も,投与から自殺企図発現までの期間は,投与開IFN始後4か月未満が全体の87.5%であるのに対し,同4か月以上が12. 5%であること,自殺企図が投与期間中に発現した割合が71.9%であることからすれば,被告の行為と亡aの死亡との間に因果関係がないことは明らかである。 (二)また,亡aに疑われた疾患はうつ病ではなく統合失調症であって,- 12 -の副作用とは無関係であるし,亡aの死亡に至るまで,同女の状態がIFN悪化しているにもかかわらず,原告ら家族は何らの行動も起こさず,亡aの死亡当日も,原告bは亡aの様子が異常であると気がついていながら,原告cに対して「おかしいから看ていてくれ」と指示を出したのみで自身は外出してしまっていることからすれば,亡aの死亡原因は原告ら家族が何らの対処をとらなかったことにあるというべきであって,このことからしても被告の行為と亡aの死亡との間に因果関係は否定される。 参加人病院の医師の家族に対する説明義務違反及び療養指導義務違反の有無(原告らの主張)(一)による精神神経系の副作用は医学界に知られており,重篤なうつIFN状態及び自殺企図がしばしばみられると文献上も警告されているところであった。したがって,精神科及び神経科を有する参加人病院の医師としては,インターフェロンによるうつ病を発症していると認識 つIFN状態及び自殺企図がしばしばみられると文献上も警告されているところであった。したがって,精神科及び神経科を有する参加人病院の医師としては,インターフェロンによるうつ病を発症していると認識し,仮にそのように認識していなかったとしても,亡aの受診当時の精神症状から,抗うつ剤等の投与を行うことはもちろん,入院をさせるなどして経過観察する義務があった。仮に何らかの理由により入院等の措置ができなかった場合であっても,精神療法の検討をして実施するか,患者及びその家族に対して精神症状及び自殺企図の発現する危険性があることを説明し,注意深い観察と病院への連絡の必要性について説明する義務があった。 (二)ところが,参加人病院は,上記措置を執ることなく,抗うつ剤の投与も行わずに漫然と抗精神病薬及び抗不安薬を投与しただけで,次回通院日の指示もしなかった。 (参加人の反論)(一)患者に具体的な自殺の予見可能性があれば入院を勧奨すべきであるとの一般論については積極的に争わないが,その予見可能性とは,自殺念慮- 13 -ではなく自殺企図をいうのであって,参加人病院の診察中には亡aにそのような自殺企図はなかった。 (二)また,亡aの症状については,うつ病であると確定診断できず,むしろ統合失調症が疑われる状態であった。このような状況では,薬理効果の強い抗うつ剤を処方することについては,副作用やインフォームドコンセントの観点からすれば,より慎重になるべきであるから,抗うつ剤を投与する義務は存しない。 参加人病院の過失行為と亡aの死亡との間の因果関係の有無(原告らの主張)(一)亡aの自殺が,治療の副作用から生じた精神神経症状に基づいてIFNいることは,上記4(一)のとおり明らかである。 (二)そして,参加人病院は,亡aに対して入院を勧奨す (原告らの主張)(一)亡aの自殺が,治療の副作用から生じた精神神経症状に基づいてIFNいることは,上記4(一)のとおり明らかである。 (二)そして,参加人病院は,亡aに対して入院を勧奨する義務,原告ら家族に対してうつ状態や自殺企図との副作用の説明及び対処法の説明をする義務を怠ったものであるところ,仮にこのような義務が果たされていれば,入院によってaが監視下に置かれ,自殺に至ることはなかったし,原告ら家族は亡aに対して適切な処置を執ることができ,亡aの自殺を防止できたから,参加人の説明義務違反と亡aの自殺との間に因果関係があることは明らかである。 (参加人の反論)(一)原告bは,亡aにリストカット等の自殺企図行動が発現したにもかかわらず,亡aを被告病院等の総合病院や参加人病院等の精神科病院に連れて行き受診させる等,配偶者として当然すべき妻に対する療養看護に向けた行動にいっさい出ていない。 しかも,亡aの死亡当日も,原告bは様子が異常であると気がついていながら,原告cに対して「おかしいから看ていてくれ」と指示を出したのみで自らは外出しており,このときも妻に対する療養看護行動に出ていな- 14 -いのであって,本件当日に原告らが亡aを十分に観察等していれば亡aの自殺は防止でき,しかもこのような行動をとることは容易であったことからすれば,亡aの死亡原因は原告らの自殺防止措置の不作為にあるというべきであって,被告の行為と亡aの死亡との間に因果関係は否定される。 (二)しかも,亡aの症状は投与中止後一定期間経過後に発現したもIFNのであって,の半減期等の薬理動態を含めて,投与によるものでIFNIFNある蓋然性はないから,この点でも因果関係は否定される。 被告・参加人の共同不法行為の成否(原告らの主張)被告病院に であって,の半減期等の薬理動態を含めて,投与によるものでIFNIFNある蓋然性はないから,この点でも因果関係は否定される。 被告・参加人の共同不法行為の成否(原告らの主張)被告病院による治療による副作用が発生し,亡aが希死念慮を伴うIFNうつ状態になっていたにもかかわらず,被告病院において亡a及び原告ら家族に対して適切な指導が治療前後を通じて行われていれば,高度の蓋然性を以て亡aの自殺という結果を回避できたし,このことは参加人病院についても当てはまるから,被告病院の過失行為と参加人病院の過失行為とのいずれもが,亡aの死亡という不可分の結果を招来し,その結果について相当因果関係を有する関係にある。したがって,被告及び参加人の行為には客観的関連共同性が認められるから,両者の各過失行為は共同不法行為になる。 (被告の反論)そもそも,亡aに対する診療科,診療期間,診療内容も異なる被告病院と参加人病院との間で,亡aにによる副作用が発現した後においてすべIFNきことが共通であると即断はできず,義務が共通などと主張する前提としてはその義務を明確にする必要があるのに,原告は,被告病院と参加人病院がすべきことも明確に主張していないし,仮に両者の義務が共通であったとしても,それがいったいどのように客観的関連共同性に結びつくのか,原告は全く主張していない。 (参加人の反論)- 15 -被告病院と参加人病院とは,医療機関という点で共通するといっても,具体的な患者(亡a)との関わりについての事実経過は,治療等で長期間IFNにわたって関わった被告病院と2回の診察及び処方にとどまった参加人病院とで雲泥の差があるし,法的注意義務違反の前提となる予見可能性や結果回避可能性等においても,C型肝炎治療としての療法を前提とした規範IFNを た被告病院と2回の診察及び処方にとどまった参加人病院とで雲泥の差があるし,法的注意義務違反の前提となる予見可能性や結果回避可能性等においても,C型肝炎治療としての療法を前提とした規範IFNを参加人が被告とともに共同するという関係には立たないのであって,両者に客観的関連共同性はない。 損害額(原告らの主張)(一)逸失利益2823万4290円(二)死亡慰謝料2400万0000円(三)弁護士費用522万3429円(四)合計5745万7719円(被告の反論)争う。 (参加人の反論)争う。 亡a自身又は原告らの過失の有無(被告の主張)(一)亡aには,①原告ら家族に対して治療に関する説明を怠ったこIFNと,②原告ら家族同伴による被告病院の受診や,主治医による精神科受診勧奨を拒否したこと,③主治医が処方した向精神薬・抗不安薬を勝手に服用中止したこと,④主治医に対して参加人病院受診の事実を報告しなかったこと,⑤主治医に対して自殺未遂を繰り返した事実等を報告せず,即座に被告病院を受診しなかったこと,⑥参加人病院を定期的に受診せず,自殺未遂を繰り返した後も即座に受診せず,処方された薬剤を勝手に服用中- 16 -止したこと,の各過失が存する。 (二)また,原告ら家族にも,①亡aが被告病院から処方された薬剤を勝手に服用中止した事実を知りながらこれを看過し,被告病院の医師に対して報告しなかったこと,②亡aが自殺未遂を繰り返した事実等を被告病院の主治医に対していっさい報告しなかったこと,③亡aが参加人病院を受診しようとせず,自殺未遂を繰り返した後も即座に受診しなかったことを知りながらこれを看過し,亡aを被告病院及び参加人病院のいずれにも即座に受診させなかったこと,④平成12年2月20日(自殺当日)に亡aの自殺 せず,自殺未遂を繰り返した後も即座に受診しなかったことを知りながらこれを看過し,亡aを被告病院及び参加人病院のいずれにも即座に受診させなかったこと,④平成12年2月20日(自殺当日)に亡aの自殺の具体的危険性を十分認識していたのに何らの自殺防止措置を執らず,亡aの自殺を招来したこと,さらには⑤亡aの原告ら家族との間のコミュニケーション不足により亡aの死亡を招来したことの各過失が存する。 (三)以上(一)及び(二)の過失が存することからすれば,いわゆる被害者ないし被害者側の過失として,過失相殺(民法722条2項,418条)がされるべきである。 (参加人の主張)被告の上記主張を援用する。 (原告らの反論)上記の亡aの過失は,いずれも被告病院が家族に対する適切な説明を欠いた結果であるから,これを亡aの過失とするのは失当であり,このことは,上記の原告ら家族の過失についても同様である。亡aと原告ら家族との間にコミュニケーション不足があったという事実は存在しない。 消滅時効(不法行為)の成否(被告の主張)原告らは亡aの死亡に関する不法行為に基づく損害賠償を請求するところ,亡aの死亡(平成12年2月20日)から本件訴訟提起(平成16年3月9日)まで3年以上経過していることから,被告は,原告らの請求する不法行- 17 -為に基づく損害賠償請求権につき消滅時効(民法724条)を援用する。 (参加人の主張)被告の上記主張を援用する。 (原告らの反論)原告らは,亡aの死亡に関して,被告らから何らの誠意ある説明を受けていなかったため,亡aの死亡による損害を認識することができなかった。 原告らが同損害を認識するに至ったのは,平成13年12月26日に実施された,被告病院に対する証拠保全手続(伊那簡易裁判所平成13年(サ)第115号)が行われ,そこで 害を認識することができなかった。 原告らが同損害を認識するに至ったのは,平成13年12月26日に実施された,被告病院に対する証拠保全手続(伊那簡易裁判所平成13年(サ)第115号)が行われ,そこで取り寄せたカルテを検討した後であり,その後3年以内に本件訴訟を提起していることから,原告らの被告及び参加人に対する不法行為に基づく損害賠償請求権は時効消滅していない。 第三当裁判所の判断一医学的知見,甲第2号証のほか下記()内に記載した証拠及び弁論の全趣旨によればB次の内容の医学的知見を認めることができる。 イントロンについてA本件で亡aに使用されたインターフェロンα-2b(商品名イントロン)Aの添付文書には,以下の記載がある(甲-)。 B2P213(一)用法として,C型慢性活動性肝炎に対し,1日1回300万~1000万単位(I.U)を週6回または週3回筋注(二)注意事項として<警告>との表題の下に「投与により間質性肺炎,,自殺企図が現れることがあるので,使用上の注意に十分留意し,患者に対し,副作用発現の可能性について十分説明する」。 (三)注意事項として<一般的注意>との表題の下に「重篤なうつ状態,,自殺企図が現れることがあるので,患者の精神状態に十分注意し,不眠,不安,焦燥等が現れた場合には中止するなど,投与継続の可否について慎- 18 -重に検討する。また,投与にあたってはこれら精神神経症状発現の可能性について患者及びその家族に十分理解させ,不眠,不安等が現れた場合には直ちに連絡するよう注意を与える」。 型慢性肝炎の特徴C型慢性肝炎の特徴として,型慢性肝炎は,型肝炎ウイルスの持続感CCC染によって起きる疾患である。 型肝炎ウイルスが自然の経過で消失するこCとは極めてまれ 」。 型慢性肝炎の特徴C型慢性肝炎の特徴として,型慢性肝炎は,型肝炎ウイルスの持続感CCC染によって起きる疾患である。 型肝炎ウイルスが自然の経過で消失するこCとは極めてまれであり,型慢性肝炎が自然に終息・治癒することはないとCいえる。 型肝炎ウイルス感染が持続する限り肝病変は進展を続け,高率に肝硬変Cや肝細胞癌に至る。輸血急性肝炎から慢性化した例で型慢性肝炎の予後Cを示すと,13年間で約40%が肝硬変へと進展し,さらに20年を超えると25%に肝細胞癌の発現が認められる。進行例の多くは,慢性活動性肝炎を経て進展する。約20年経過後に慢性肝炎にとどまっている非活動性慢性肝炎の症例も,さらに時間が経過すると,慢性活動性肝炎を経て肝硬変や肝細胞癌に至るものと推定される。 このような型慢性肝炎の自然経過は,自然に軽快することが多い型CB慢性肝炎とは極端に異なり,現在の治療法にも差がある。上述の如く,型C慢性肝炎は,自然に治癒せず,たとえ非活動性であっても型肝炎ウイルCスの感染が持続する限り進展を続ける。そして時間の経過とともに活動性の時期を経て,確実に肝硬変や肝細胞癌に至る。短時間に肝硬変へ進展する可能性があるかという点から見ると,型慢性肝炎の中でも組織学的に活動性Cのものは,特に予後が楽観できない。しかし,非活動性の例も,型肝炎ウCイルス感染が持続する限り肝炎が治癒せず,活動性に移行しいつかは肝硬変や肝細胞癌に進展する。そのため,型慢性肝炎は,その進展度にかかわらCず本質的に抗ウイルス治療が必要な疾患である。(甲-~)B5P10071009 型慢性肝炎の治療法C- 19 -(一)型慢性肝炎の治療法としては,従来からのグリチルリチン製剤,漢C方薬などがあり,い が必要な疾患である。(甲-~)B5P10071009 型慢性肝炎の治療法C- 19 -(一)型慢性肝炎の治療法としては,従来からのグリチルリチン製剤,漢C方薬などがあり,いずれの薬剤もある程度の効果は期待できるが,完治に結びつくものではなかった。すなわち,強力ネオミノファーゲンC(グリチルリチン製剤)や漢方薬には,抗ウイルス効果(肝細胞の中でウイルスの増殖を抑える効果)はないものの,肝臓の炎症を抑える作用はあり,,が高値を示す場合は,これらの薬剤が効果的である。 GOTGPTこれに対し,肝炎ウイルスの増殖を抑制する薬剤であるの登場にIFNよって,原因療法(病気の根本原因の改善を目指す治療)が可能になり,大幅な改善が期待できるようになってきた(乙-,)。 A5P3P14(二)厚生省特定疾患「難治性の肝炎」調査研究班では,のC型慢性肝IFN炎の効果判定基準として「投与終了約6カ月以内に()が正,IFNALTGPT常化し,その後正常化が6カ月間以上持続したもの」を著効例としている。 血中型肝炎ウイルス()の測定が行われるようになると,著効例のCRNA80%以上は陰性化しているが,一方10%以上に陽性例がみられ,このような例では後日再燃例が多く認められている。 欧米では,投与終了時にが正常化しているものを短期間反応IFNALT(),投与終了後6か月目に正常化しているものを長期間反応STRIFN()とし,さらに例のなかで,型肝炎ウイルス()陰性化例LTRLTRCRNAを完全寛解()という効果判定基準が広くおこなわれている。我が国CRでも徐々にこの基準が使用され,我が国の検討でも例からの再燃例はCR1%以下であり,完全寛解とすることに異論は CRNAを完全寛解()という効果判定基準が広くおこなわれている。我が国CRでも徐々にこの基準が使用され,我が国の検討でも例からの再燃例はCR1%以下であり,完全寛解とすることに異論はない。 治療による完全寛解例は,30~40%にみられる。 治療例のIFNIFN約3分の1とはいえ,C型肝炎ウイルス持続感染が完全に消失したことを示唆する例がみられたことは特筆すべきことである。 例では肝炎CRCRの鎮静化は当然のことであり,肝硬変への進展さらに肝細胞がんの合併阻止が期待でき,また肝炎も完全に治癒すると考えられている。(甲-B7- 20 -,)。 P265P266(三)型慢性肝炎の治療の最終目標は,型肝炎ウイルスを完全に体内かCCら排除することであり,1992年から型慢性肝炎に対して,治療CIFNが広く行われている。ところが,高ウイルス量の症例では治療の有IFN効性が低率であり,治療には種々の副作用があることが広く取り上げIFNられたので,治療によりウイルスの排除が期待できない症例は治IFNIFN療の対象とならないという考えが広まった。しかし,ウイルスの排除を目指すことは確かに治療の最終目標であるが,臨床的な目標は,肝硬IFN変への進展,肝細胞癌の発生を阻止することで十分達成できると考えられる。 IFNCHCV-RNAALT治療の目標は,型肝炎ウイルス()の陰性化と()の持続正常化であるが,最近の予後調査の成績から,型肝炎ウGPTCイルス()が陰性化しなくとも長期の()の改善によりHCV-RNAALTGPT肝細胞癌の発生が抑制されることが明らかとなり,一度は治療を行IFNうことが望ましいと考えられている。 型慢性肝炎に対する治療は,約3 長期の()の改善によりHCV-RNAALTGPT肝細胞癌の発生が抑制されることが明らかとなり,一度は治療を行IFNうことが望ましいと考えられている。 型慢性肝炎に対する治療は,約3分の1の患者では型肝炎ウCIFNCイルスの完全排除をもたらし,約3分の2の患者では肝細胞癌の発生の危険を低減した画期的な治療法である。 型慢性肝炎に対する投与の肝機能検査による治療効果は,①CIFN()が投与中から正常化を認め,治療終了後も正常値を維持ALTGPTIFNする著効群,②治療中は()が正常化するものの,治療終了後6ALTGPTか月以内に再上昇する再燃群,③投与中・投与後のいずれも()ALTGPTの改善を認めず異常値が持続する無効群の3群に分類されることが多い。 の高用量,長期間投与が肝機能正常化,型肝炎ウイルス排除によりIFNC有効であることが明らかとなっている(乙-,,)。 B4P60P61P66,(四)C型慢性肝炎のによる治療効果を左右する因子は,患者の年齢IFN- 21 -肝組織の進展度,肝予備能,合併症の有無,病悩期間,ウイルスの遺伝子型,ウイルス量などである。とくにウイルスの遺伝子型,ウイルス量の影響が大きく,日本人に多いⅡ型(1b型)には効きにくく,少ないⅢ型(2a型)に有効率が高い。ウイルス量は,プローブ法で1以下,Meq/ml法で100以下の症例で高い効果が得られるといわれる。 PCRkcopy/ml患者の年齢は若い方が,肝臓の繊維化は軽度の方が,それぞれ治療IFNの効果が高い。(甲-,乙-)B5P983B4P62HCV-RNAMeq/mlプローブ法によるC型肝炎ウイルス量()が,0.5未満の場合,IFN治療によ それぞれ治療IFNの効果が高い。(甲-,乙-)B5P983B4P62HCV-RNAMeq/mlプローブ法によるC型肝炎ウイルス量()が,0.5未満の場合,IFN治療によるウイルス排除率は,Ⅱ(1b)型で63. 6%,Ⅲ(2a)型で90.0%,Ⅳ(2b)型で88.2%であり,ウイルス量が0.5~1.0/の場合,Ⅱ(1b)型で34.3%,MeqmlⅢ(2a)型で75.0%である(乙-)。 A6P24(五)治療の具体的投与方法は,2ないし4週間連日投与し,ウイルスIFNの増殖を一気に抑えてから,週3回の間欠投与に切り替える方法が効果的であるといわれている。 原則として治療初期の連日投与時は,入院が望まれる。インターフェロンαの場合は2週間,インターフェロンβの場合は6週間の入院が望まれる。副作用への早期対応ができ,インターフェロンへの慣れがこの期間にでき,その後の治療がスムーズに行える(乙-)。 A5P5,P14型慢性肝炎の治療について,投与量をどの程度の量から開始CIFNIFNするか等についてガイドラインは当時も現在も存在しない。インターフェロンα製剤とインターフェロンβ製剤の優劣についても,平成11年当時において,効果の面でも副作用の面でも明らかな優劣は判明していなかった(乙-~,f医師の証人調書,,)。 A8P8P9P5P26P27(六)平成10年当時,健康保険の適用のある治療の具体的投与方法IFNは,型慢性肝炎に対しては,投与期間は最長6か月間で,1回投与CIFN- 22 -量は製剤ごとに定められている。 -α製剤は6か月間までの投与で,IFN最初の2週間(ないし数週間)は週6~7日,その後は週3日,600~1000万単位/日 で,1回投与CIFN- 22 -量は製剤ごとに定められている。 -α製剤は6か月間までの投与で,IFN最初の2週間(ないし数週間)は週6~7日,その後は週3日,600~1000万単位/日の投与が推奨されている。 -β製剤は,6~8週IFN間,300~600万単位の連日投与が推奨されている。わが国では,保険診療では6か月を超えてを投与することは認められておらず,6IFNか月を超えると自費診療となる(甲5-,乙-)。 BP33B4P60,(七)1994年時点における市販各種による治療成績を比較するとIFN本件で亡aに使用された商品名イントロン(一般名-α2b)のAIFN治療成績は,を指標として第Ⅱ相試験における投与期間,投与量のGPT比較試験の結果によって評価すると,投与終了後ので見ると100GPT0万単位を投与した群が最もが低値であり,投与量としては100GPT0万単位が優れている。投与期間については,週6回投与を2週間行って,その後週3回投与を12週間続ける方法が,投与終了後のの正常化GPT率,総合的に見た著効率が最もよかった。(乙-~)B6P101P102 治療の副作用IFN(一)治療に伴う副作用としては,間質性肺炎,重篤なうつ状態・自殺IFN企図,自己免疫現象によると思われる症状・徴候(甲状腺機能異常,溶血性貧血,インスリン依存性糖尿病の増悪または発症,潰瘍性大腸炎の悪化,関節リュウマチの悪化,糖尿病の増悪または発症,ショック,重篤な肝)障害,急性腎不全,重篤な出血(脳出血,消化管出血,球後出血など)などがあり,数多くの副作用が知られていて厳重な注意が必要である。(甲-,)B5P1016P1017(二)による精神神経症状IFN 全,重篤な出血(脳出血,消化管出血,球後出血など)などがあり,数多くの副作用が知られていて厳重な注意が必要である。(甲-,)B5P1016P1017(二)による精神神経症状IFN( )頻度 の精神神経系の副作用は,厚生省研究班の調査結果によると,8IFN810例のうち113例()に精神神経系の副作用が見られ,副1.28%- 23 -作用のうち一番多かった。精神科の介入までは必要としない軽度の精神変調まで含めると20~30%にも及ぶといわれる(甲-)。 B8P1063わが国におけるによる精神症状の報告例をまとめた報告によるIFNと,発現した精神症状の内訳を,うつ状態6,不安焦燥状態2,幻覚妄想状態1の割合と推定している(甲-~)。 B11P518 ( )特色(甲-) B8P1063①抑うつ状態がほとんどで,次いでせん妄である。 ②抑うつ状態は,精神運動抑制か攻撃性を伴う不安・焦燥状態を示すことが多い。 ③抑うつ状態に不眠が先行することが多いが,急激に重症化し,自殺企図に至ることがある。 ④C型慢性肝炎患者の場合,軽度の抑うつ状態を含めると約30%に精神症状がみられ,の中止や向精神薬の投与が必要な例が約10IFN%にみられる。 ⑤精神症状は,投与中のいずれの時期にも生じる。 IFN⑥精神症状は,の中止によってほとんどが1か月以内に消退するIFNが,それ以上持続する場合もある。 ( )発症時期(甲-) B8P1064投与1週間以内に発熱,頭痛,食欲不振,全身倦怠感,不安,不IFN眠といったインフルエンザ様症状が出現する。身体的苦痛であると同時に,精神的にも不安が増大し,身体的・精神的対応が適切でないと,不眠,不安が持続し精神症状発現の 欲不振,全身倦怠感,不安,不IFN眠といったインフルエンザ様症状が出現する。身体的苦痛であると同時に,精神的にも不安が増大し,身体的・精神的対応が適切でないと,不眠,不安が持続し精神症状発現の素地となる。 投与中期(1~8週)には,不眠,不安,焦燥,うつ状態,躁状態,幻覚妄想状態,情緒不安定,意識障害を伴うせん妄・錯乱・昏睡なども出現する。 後期(8週以降)に出現するものとして,脱毛,間質性肺炎,糖尿病,- 24 -眼底出血,自己免疫疾患(慢性関節リウマチ,等)がある(甲SLE。 -)B11P518,( )によるうつ病の特徴的な症状は,抑うつ気分,焦燥,睡眠障害 IFN不安,希死念慮などである。しかしながら,明確な抑うつ気分を示す例は意外と少なく,精神運動制止,焦燥が前景である症例が多く存在する。 抑うつ気分は目立たないが,焦燥感が強くなり衝動的に自殺企図に至る症例もなかにはある(甲-)。 B11P520厚生省の自殺企図32例(既遂12例)のまとめによれば,約80%の患者では投与3か月以内に自殺がみられ,20%にはうつ病,IFN精神病の既往がみられた。しばしばみられるタイプとしては,不眠,不安,焦燥感が2週間以上持続し,物事が投げやりとなり,こらえ性がなくなり,どうなってもよいといった自暴自棄的な気持ちから,衝動的・突発的に自殺企図を行うもので,前兆が明確でなく危険である。 大坪を中心とした前方視的研究では,型肝炎患者85例のうち37. C3%に抑うつがみられ「神経症的性格傾向「療法前のうつ病の,」,IFN重症度が高い「療法前の不眠が強い,疾患に対する不安が強い」」,IFNなどの諸点が,抑うつ状態を予測し得る危険因子として抽出された。抑うつ状態にみられる症状として「易疲労感あるいは気 ,IFN重症度が高い「療法前の不眠が強い,疾患に対する不安が強い」」,IFNなどの諸点が,抑うつ状態を予測し得る危険因子として抽出された。抑うつ状態にみられる症状として「易疲労感あるいは気力減退「思考,」,・集中力の減退」が目立ち,ほとんどの症例で不眠が先行し,1ないし2日の間に急激に抑うつ状態が悪化した(甲-)。 B8P1064(三)薬剤投与との因果関係薬剤による精神障害(薬剤性精神障害)とは,投与された薬剤による精神障害であるから,厳密な意味では,薬剤投与に引き続いて発症し,しかも可逆性であるために原因薬剤の中止により精神症状が消退する。ところが,薬剤投与の原因となった身体疾患によっても精神障害をきたすことがあったり,既往歴として内因性精神障害がある場合など,診断の困難な例- 25 -が少なくないのが実情である。また,原因薬剤を中止しても精神症状が残存することもまれならずあるため,注意を要する(甲-)。 B11P517薬剤による精神症状は,投薬との時間的関係がまず重要である。投与直後の精神症状の出現,減量や中止による消退や軽快は因果関係が疑われる。 しかし,投薬後数か月を経て出現したり,中止後も症状が遷延することがある。投薬前の人格からの不連続性や精神症状の急激な動揺や変動は薬剤性を疑う(甲-)。 B8P1063(四)によるうつ病の診断・鑑別診断IFNIFNDSMによるうつ病の診断・鑑別診断については,うつ病の診断は,によるものであれ,慣用診断によるものであれ,内因性のうつ病と大差はない。問題は,によるうつ病かどうかであろう。 IFN第に,うつに先行して投与がなされていることが必須である。 IFN投与2ないし8週後のうつ病発症なら,惹起性うつ病とは異なるIFNI い。問題は,によるうつ病かどうかであろう。 IFN第に,うつに先行して投与がなされていることが必須である。 IFN投与2ないし8週後のうつ病発症なら,惹起性うつ病とは異なるIFNIFNと疑う余地は少ないであろう。 の減量あるいは中止による精神症状のIFN軽減も,うつが惹起性であることを疑わせる重要な所見である。 IFN一方で,反応性うつ病との鑑別も問題になるであろう。これに関しては,大別して,治療がうまくいっている(肝機能の改善が見られる)にもIFNかかわらずうつ病が発症すれば,そのものによるうつ病と考えるのがIFNよいであろう。 の減量や抗うつ薬投与に対する反応性を見ながら最終IFN的に診断することも必要であろう(甲-)。 B11P520(五)による精神症状の治療IFN( )による精神症状の治療としては,抑うつ状態の軽減には,第1 IFNにを中止あるいは減量することである。特に,希死念慮の強い症IFN例には,中止が望ましい。精神症状が重篤であったり危険性が高いIFN時は,入院させる。 軽症のうつでは,向精神薬投与によらず,の減量あるいは中止でIFN- 26 -うつ状態が軽快する。しかし,の中止後も,うつ状態が遷延する例IFNが少なからず見られるので注意を要する。向精神薬投与による精神障害の治療の必要な症例も少なからず存在するようである。うつ状態に対して,抗不安薬,睡眠薬によりコントロールされた症例も多い。不安,焦燥,情緒不安定,不眠などには,抗不安薬を投与する(甲-,。 B8P1065甲-)B11P520亡aに投与されたである商品名イントロンは,大部分の患者でIFNは中止すると2週間くらいで精神症状は落ち着き,1か月もしないうちに退院できるこ 。 B8P1065甲-)B11P520亡aに投与されたである商品名イントロンは,大部分の患者でIFNは中止すると2週間くらいで精神症状は落ち着き,1か月もしないうちに退院できることが多い。ただ,6か月間の治療終了後も精神症IFN状が続いて2,3年精神科に通院を続ける人もいる(iの証人調書。 ,)P25P26( )東京都港区に所在するj病院肝臓内科は,我が国で最も多くの型 C慢性肝炎患者の治療をしている施設で,我が国における型慢性IFNC,肝炎の治療を行っている中心的な施設の一つである。j病院ではIFN同じ病棟に治療を受けている肝臓内科の患者と精神科の患者が入IFN院していることもあり,治療中の患者がうつ病になった場合,比較IFN的容易に精神科の医師の診察を受けることが可能な状況にある。 虎の門病院では,治療中の患者がうつ症状が出現した場合,入院IFN中に食欲不振がひどくなったような場合は,その段階で肝臓内科医がとりあえずドグマチールあるいはレスリンという抗うつ剤を投与し,3日ないし7日間様子を見ても改善しない時は,担当医が精神科医に相談し,精神科医が患者を診察して,抗うつ薬の投与や治療を中止するかIFNどうか,入院の必要性や入院している患者であれば退院させるかどうかまで全て判断し,肝臓内科医は精神科医の判断に従うという扱いをしている(証人i)。 平成11年9月以降に亡aに投与された薬剤について- 27 -(一)レンドルミンは,ベンゾジアゼピン系睡眠薬(短時間型)で,その適応は不眠症であり,短時間型睡眠導入薬で,寝覚めが良好で高齢者への副作用が少ないとされている。(乙)B3(二)セルシンは,ベンゾジアゼピン系抗不安薬(長時間型)でマイナートランキライザ の適応は不眠症であり,短時間型睡眠導入薬で,寝覚めが良好で高齢者への副作用が少ないとされている。(乙)B3(二)セルシンは,ベンゾジアゼピン系抗不安薬(長時間型)でマイナートランキライザーと呼ばれ,その適応は,神経症における不安・緊張・抑うつ,うつ病における不安・緊張とされている。(乙,丙)B1B21(三)コントミンは,向精神薬クロルプロマジンでいわゆるメジャートランキライザーと呼ばれ,その適応は統合失調症(精神分裂病),躁病,神経症における不安・緊張・抑うつとされている。(丙)B21 うつ病の診断と治療(丙)B20(一)うつ病の入院治療と外来治療について(丙-~)B20P87P89うつ病治療の原則は,外来通院治療であるが,入院治療の方が望ましい場合もあり,症例の条件に合わせて入院治療を選択するか,外来治療を実施するかを判断しなければならない。外来治療により約90%の症例では良好な経過が見られるが,約10%の症例では外来治療の効果が乏しく,入院治療をせざるを得ない場合がある。 うつ病の入院治療が必要な条件を示すと,以下のとおりである。 ①外来通院治療で症状改善が得られない場合②反復性うつ病,難治性うつ病③薬物療法が十分に遂行できない症例④不安,焦燥,苦悩の強い症例⑤病識欠如の症例⑥老人の症例⑦身体的合併症のある症例⑧症候性うつ病⑨家族のうつ病への理解に乏しい時- 28 -⑩通院の距離的,時間的問題がある症例⑪自殺の危険の強い症例(二)薬物療法(丙-,,,)B20P96P97P196P197抗うつ薬は,化学構造式に三環構造を持った三環系抗うつ薬が一般的には広く用いられている。クロルプロマジンやハロペリドールなどの抗精神病薬は,不安焦燥 )B20P96P97P196P197抗うつ薬は,化学構造式に三環構造を持った三環系抗うつ薬が一般的には広く用いられている。クロルプロマジンやハロペリドールなどの抗精神病薬は,不安焦燥症状の強いうつ病や幻覚妄想症状を示すうつ病に有効である。抗不安薬(マイナートランキライザー)も,うつ病の不安症状の改善を目的に用いられる場合が多いが,その作用は弱く,抗不安薬単独投与によるうつ病治療は,特殊な症例を除いて治療効果が乏しい。 ベンゾジアゼピン系抗不安薬の一部には,抗うつ作用を有する薬剤があり,その作用は三環系抗うつ薬と異なるものの鎮静作用と気分高揚作用などの抗うつ作用を目的とし,うつ病治療に単独投与及び抗うつ薬と併用投与で用いられている。セルシン(ジアゼパム)は,抗うつ作用がありうつ病治療に使用可能と考えることができるが,その抗うつ作用は決して強いものではない。 (三)その他の抗うつ作用のある薬剤(丙-,)B20P207P208薬理学的作用はさておき,臨床的には,精神分裂病の精神症状の一部はうつ病の精神症状と共通していることにより,クロルプロマジンは,開発初期から精神分裂病抑うつ状態,内因性うつ病,抑うつ神経症,症候精神病抑うつ状態などに対する有用性が検討されてきた。 うつ病の大部分の症例には不安症状が見られ,神経症状態,恐怖状態,焦燥状態,興奮状態などの臨床症状となって現れる。軽症の不安症状や不眠症状の改善目的には抗不安薬や睡眠薬が用いられるが,重症のために抗不安薬の効果が期待できない場合には,クロルプロマジン,レボメプロマジン,チオリダジンなどのフェノチアジン系抗精神病薬が用いられる。クロルプロマジンは,アドレナリン遮断作用が強いために抗不安焦燥作用が- 29 -強いと考えられ,かつ副作用も比較的少ないために マジン,チオリダジンなどのフェノチアジン系抗精神病薬が用いられる。クロルプロマジンは,アドレナリン遮断作用が強いために抗不安焦燥作用が- 29 -強いと考えられ,かつ副作用も比較的少ないために,うつ病治療に繁用されている。 二事実認定()内に記載した証拠と証人f医師及び証人h医師の各証言並びに弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 1(一)亡aは,平成10年11月10日第1入院時の看護師による病歴聴取の際に「病気・手術・検査・治療についてどう聞いて,どう思っている,か」という質問に対し「C型肝炎聞きなれず,症状もわからない」と回,答し「心配なことはあるか」という質問に対し「治療」と回答し「自,,,分の性格についてどう思っているか」という質問に対し「短気(普,通」と回答した。他方,亡aは,平成11年6月1日第2入院時の看護)師による病歴聴取の際には「病気・手術・検査・治療についてどう聞い,て,どう思っているか」という質問に対しては回答がなく「心配なこと,はあるか」という質問に対し「副作用」と回答し「自分の性格について,どう思っているか」という質問に対し「クヨクヨしてしまう」と回答し,た(乙-,乙-)。 A2P6A3P6(二)亡aは,第1入院時に日記をつけていたが,当該日記には,入院初日の平成10年11月10日欄に,肝生検の目的が肝組織を針で採取し,慢性肝炎の進展度を評価する→治療の方針を決めることであること,具体的手順,合併症として①出血,②ショック(血圧下がる,③気胸,④感染)があることが記載されている(甲)。 A2(三)f医師は,平成10年6月11日に腹部エコー検査をした際に,亡aに対して,下記の型慢性肝炎の治療に関するパンフレットを3種CIFN類 )があることが記載されている(甲)。 A2(三)f医師は,平成10年6月11日に腹部エコー検査をした際に,亡aに対して,下記の型慢性肝炎の治療に関するパンフレットを3種CIFN類交付し,口頭でおおまかに治療の内容等について説明したうえ,IFN自宅で亡aだけでなく家族にもじっくりと読んでもらい,何かわからないところがあれば家族も亡aに同行して来院し同医師に対して質問するよう- 30 -に伝えた(乙-,乙-)。 A1P8A8P4原告bも,亡aから3冊のパンフレットを見せられた覚えがあり,そのうちの1冊は下記( )のパンフレットであった記憶があることは認めてい る(原告b本人調書,)。 P4P16( )平成9年12月に作成された「インターフェロン療法C型慢性肝 炎」というパンフレットには,C型慢性肝炎の定義,病因,肝炎の分類,上記一3(三)で記載した長期予後,診断,治療,治療を受ける際の注意,投与の方法とそれを守ることの意義等が記載されていて,副作用とその対策という項目では,症状により主治医に相談すべき症状,早めに主治医に報告すべき症状,すぐに受診すべき症状の3種類に各症状が分類されていて,中期症状(投与2週~3か月以内)として,早めに主治医に報告すべき症状として「抑うつ気分,眼底出血,不整脈」が記載され,すぐに受診すべき症状として「うつ病,自殺企図」が記載されていて,カラー図表入りで解説してある。そして,最後に形式で説明がなQ&Aされていて,そのうちので「最近の副作用で『うつ病』とかQ7IFN『間質性肺炎』という言葉を聞きますが,治療中どのような症状が出たら注意すればよいのでしょうか」という質問に対し「うつ病』の早,『期発見の徴候は,不眠,いらいらです。このような症 かQ7IFN『間質性肺炎』という言葉を聞きますが,治療中どのような症状が出たら注意すればよいのでしょうか」という質問に対し「うつ病』の早,『期発見の徴候は,不眠,いらいらです。このような症状があったら早めに主治医に相談しましょう」と回答がされている(乙)。 A5( )平成9年12月に作成された「C型肝炎のすべて」というパンフレ ットには,C型肝炎の症状,感染原因,感染者数,長期予後,治療法,治療の治療効果,治療の副作用,患者の日常生活などについてIFNIFN記載されている(乙)。 A6型肝炎の治療法の治療法の項目では,型肝炎の治療法として,①CC原因療法(C型肝炎ウイルスを排除する)として療法があり,②IFN対症療法(,を下げて肝臓の炎症を鎮める)として,,GOTGPTSNMC- 31 -療法,肝臓用剤・免疫調整剤の投与の方法がある旨が記載されていIFNCIFNる。また,治療法の選択について,典型的な型肝炎では,まず療法を考える旨や治癒が見込まれる患者にまず療法を行うことにIFNしている旨の医師の発言が記載されている(乙-~)。 A6P20 治療の副作用の項目では,対談形式で(飯野「新聞報道以来、IFN,)患者さんは始めから自分がそうなるのではないかと思っておられる方が非常に多い。使えばだれでもがうつ病になるというふうに思われているようですが……(清澤「多くの患者さんの治療をしていますが、実。」)際にうつ病になって困ったという方は経験していません「林先生が。」はじめての患者さんでも6ケ月間は何の治療もしないで様子をみるとおっしゃいました。これは大切なことで、メンタル面をこの間に観察することだと思います。それから、なにか問題がありそうだという 生が。」はじめての患者さんでも6ケ月間は何の治療もしないで様子をみるとおっしゃいました。これは大切なことで、メンタル面をこの間に観察することだと思います。それから、なにか問題がありそうだという人は、それなりに分かりますので、そういう場合は薬をちょっと中断するとか、あるいは減量するというようなことで対応しています「患者さんは。」そんなに心配される必要はないんじゃないかなと私は思いますけれど(林「私の患者さんで、うつ病でインターフェロンを中断した例。」)という人はほとんどありません「副作用で今一番頻度が多いなあと。」思っているのは、甲状腺の機能異常です(飯野「インターフェロン。」)は、本来、病気を原因から除くという薬ですから、どうしてもある程度の副作用は伴うものであるという認識が必要ということですね。原因療法は、例えばいろいろな手術でも、内科的には結核でも、避け得ないものとしていろいろの副作用、後遺症がある程度みられるものですし、進歩の経過では残念ながら、仕方のない部分もあると思います」と記載。 されている(乙-~)。 A6P27P28( )平成10年5月に作成された「型慢性肝炎インターフェロン治 C療を受けられる方へ」というパンフレットでは,肝臓の機能,型肝炎C- 32 -の病因,感染経路,自然経過(長期予後)といった点について説明があり,型慢性肝炎の治療という項目では,原因療法は,型肝炎ウイルCCスを排除することによって肝炎の完全治癒を目的とするもので,抗ウイルス効果を有するインターフェロンを用いて治療し,対症療法は,肝細胞の保護,活性化を図ることによって肝炎の鎮静化を目的とするもので,グリチルリチン製剤(強力ネオミノファーゲンCなど,ウルソデスオ)キシコール酸,肝臓 ターフェロンを用いて治療し,対症療法は,肝細胞の保護,活性化を図ることによって肝炎の鎮静化を目的とするもので,グリチルリチン製剤(強力ネオミノファーゲンCなど,ウルソデスオ)キシコール酸,肝臓抽出製剤など,抗ウイルス効果のない薬剤を用いることが記載されている。 の治療効果という項目では,型肝炎ウイルス()の量が少IFNCHCVIFNmlないほどが効きやすく,検査法(プローブ法)により,血液1中に型肝炎ウイルスが10(100万個)未満の場合,50~80C ,%が完全著効となる。日本にみられる型肝炎ウイルスの遺伝子型はC1b(Ⅱ)型が約70%,2a(Ⅲ)型が約20%,2b(Ⅳ)型が約,10%となっているが,このうち2a型と2b型はが効きやすくIFN1b型では,ウイルス量が低いものは効くがウイルス量が多いものは効きづらいと記載されている。 の副作用という項目では,注意すべき副作用として,うつ症状なIFNどの精神症状が第1に挙げられ,そのほかから咳・運動時の息切れを伴う間質性肺炎,さらに視力障害を伴う眼症状などがあるとされ,使用するの種類によっても副作用の出方が違うので,何かおかしいなとIFN思ったらすぐ主治医に相談するようにしましょうと,カラー印刷で写真を交えて記載されている(乙-,,)。 A7P12P14P16(四)長野県では,型慢性肝炎の治療費の一部を県が負担するウイルス肝C炎医療費給付制度があり,f医師は,ウイルス肝炎医療費受給者証の申請に必要な書類であるウイルス肝炎臨床個人票に記入して,平成10年10月7日,亡aが被告病院の外来を受診した際に亡aに対して交付し,亡a- 33 -は,k保健所に対して申請書を提出してウイルス肝炎医療費受給者証を取得した(乙-,乙 に記入して,平成10年10月7日,亡aが被告病院の外来を受診した際に亡aに対して交付し,亡a- 33 -は,k保健所に対して申請書を提出してウイルス肝炎医療費受給者証を取得した(乙-,乙-,乙の1ないし4)。 A1P5A8P5A9(五)f医師は,一般に,通常の外来診療では,多数の外来患者を診察するため患者一人当たり短時間しか診察時間が確保できず,腹部エコー検査の際には外来診療よりは長い診察時間を確保できるので,治療を予定しIFNている患者に対しては,同検査終了後前記パンフレットを交付したうえ,口頭で治療内容や副作用等について説明し,自宅でも患者本人が繰り返して読むだけでなく家族にも読んでもらうよう指示する扱いをしていた。 f医師は,平成11年4月7日,亡aが被告病院内科外来を受診したが,IFN同年3月3日の血液検査の結果では白血球数が3400まで回復し,治療が可能な状況に近づいてきたので,白血球数が3500を超えれば5月か6月に治療をすることを計画し,亡aに対して,次回診察日にIFN家族を同行するよう依頼した。しかし,亡aは,同年5月12日に被告病院内科を受診した際も一人でf医師を受診し,原告bが仕事やマラソンで忙しく心配させたくないという理由で原告bを同行することを拒み,家族も治療について了解しているとして,6月から治療を開始するIFNIFNことを求めた。 (乙-,,乙-,乙)A1P12P13A4P3,P36A8 亡aの型肝炎ウイルスは,ウイルス遺伝子型がセログループ2(2aCまたは2b)で,ウイルス量がプローブ法で0.5/未満であった。 Meqml(乙-,乙-)A1P37A4P2従って,亡aのウイルス遺伝子型及びウイルス量を上記一3(四 2aCまたは2b)で,ウイルス量がプローブ法で0.5/未満であった。 Meqml(乙-,乙-)A1P37A4P2従って,亡aのウイルス遺伝子型及びウイルス量を上記一3(四)で認定した治療成績に当てはめると,亡aのC型肝炎ウイルスは,治療を実施しIFNた場合,ウイルス排除に成功する可能性が90%または88.2%あることになる。f医師も,亡aに対し,ウイルス排除に成功する可能性が70%あると説明していた。 - 34 -3(一)亡aは,第2入院をした平成11年6月1日から,インターフェロンα製剤であるイントロン1000万単位の筋肉注射を毎日受けていたAが,治療に伴い,発熱,頭痛,頭重感,胃のむかつき,体のだるさとIFNいったの副作用が出現したものの,次第に発熱も治まり,同月15IFN日,被告病院内科を退院し,外来で月水金の週3回,投与を続けるこIFNとになった。(乙-~)A3P10P22第1入院及び第2入院を通じて,原告bが入院中の亡aを見舞ったことがカルテ上明らかとなっているのは,平成11年6月7日のみである。 (乙-)A3P14(二)亡aは,同月16日から週3回,投与のために被告病院内科に通IFN院し,月1回は採血して肝機能検査を受け,値によって肝炎の状況GPTを評価されるとともにf医師の診察を受けていた。亡aは,同月30日と同年7月28日にf医師の診察を受けたのに続き,同年8月3日には発熱と咽頭痛,咳,食欲不振を訴えてf医師の診察を受け,咽頭の発赤があり風邪の診断でかぜ薬を処方され,同月6日には食欲不振,下痢を訴えてf医師の診察を受け,整腸剤等の投薬を受けた。 亡aは,同月13日には食欲不振と2,3日前からの下腹部痛を訴えて,f医師の診察を受けた。f医師 断でかぜ薬を処方され,同月6日には食欲不振,下痢を訴えてf医師の診察を受け,整腸剤等の投薬を受けた。 亡aは,同月13日には食欲不振と2,3日前からの下腹部痛を訴えて,f医師の診察を受けた。f医師は,治療の中断も含めて亡aの意向をIFN確認したところ,亡aは治療の継続を望んだので,同月13日からIFN。 イントロンを600万単位に減量して,週3回の治療を継続したAIFN亡aは,同月25日f医師の診察を受けたが,インターフェロン減量後は上記症状が軽減していた。亡aは,同年9月22日,f医師の診察を受けたが,大腸の集団検診で異常を指摘されたためバリウム注腸検査を予約し,集団検診の結果に対してかなり神経質になっていた。亡aは,同月29日,バリウム注腸検査を受けたが,その際に,看護師に対してストレスによる不眠を訴え,看護師から連絡を受けたf医師は,当日は診察日ではなかっ- 35 -たが睡眠薬レンドルミンを処方した。注腸検査の結果は,大腸には異常はなかった。(乙-~,,乙)A4P5P14P18A8(三)亡aは,同年10月13日,f医師の診察を受け,心配事がわいてくると訴え,治療の中止を希望した。f医師は,亡aがかなり神経質にIFNなっている様子が見られたため,投与を継続するとうつ状態や精神症IFN状が出現すると考えて同日で投与を中止し,レンドルミンを処方しIFNた。亡aは,4か月以上の期間合計64回にわたって投与を受け,IFN総投与量は相当な量に達していたので,f医師は,亡aに対し,予定された6か月間の投与が完了できなくても,ウイルスの遺伝子型やウイルス量からすれば型肝炎ウイルスを排除できて治療の目的を達成できるCIFN可能性が十分あり,治療を中止したことを悲観する必要がないこ か月間の投与が完了できなくても,ウイルスの遺伝子型やウイルス量からすれば型肝炎ウイルスを排除できて治療の目的を達成できるCIFN可能性が十分あり,治療を中止したことを悲観する必要がないこと及IFNび今後も月1回はf医師を受診するように伝えた。 亡aは,同月22日にもf医師を受診し,イライラ感が強まっていることを訴えたので,f医師は,不安神経症やうつ病が発症することを懸念して抗不安薬であるセルシンとレンドルミンを投与し,専門の精神科医を受診することを勧め紹介状を書くことを伝えた。しかし,亡aは,精神科を受診することは抵抗があるので拒否した。原告bも精神科を受診することについては抵抗感があった。亡aは,同年11月5日,f医師を受診し,前回受診日と比べて表情や目つきはかなりよくなっていることが認められ,f医師は精神科受診を打診したが,亡aは調子が良くなってきたとして拒絶し,セルシンも服用していないと述べたため,f医師はレンドルミンのみ処方した。亡aは,同年12月17日,f医師を受診し,状態は前回受診日と変わらず,まずまず眠れることを伝え,f医師はレンドルミンとセルシンを処方した。 亡aは,平成12年1月28日,最後にf医師を受診したが,状態は前回受診日と変わらないと述べ,f医師は,レンドルミンとセルシンを処方- 36 -した。 亡aは,f医師に対して,全診療経過を通じて,参加人病院を受診したことを全く伝えず,同月下旬に手首を包丁で切るという自殺企図があったことはもちろん,死にたいといった希死念慮や自殺念慮についても話したことはない。 同年2月20日,伊那警察署から被告病院内科に連絡があり,亡aが自殺したことが伝えられた。(乙-~,乙)A4P15P17A8(四)被告病院には精神科は開設されておらず,精神科医も 同年2月20日,伊那警察署から被告病院内科に連絡があり,亡aが自殺したことが伝えられた。(乙-~,乙)A4P15P17A8(四)被告病院には精神科は開設されておらず,精神科医も勤務していない。 亡aは,平成10年7月22日f医師の外来を受診した際に,うつ病の既往歴はないと答えた(乙-,乙-,,乙-,,。 A1P1A2P2P3A3P2P3乙-)A8P54(一)亡aは,原告bとともに,平成11年12月11日,参加人病院を受診しh医師の診察を受けた。原告bは,h医師に対し,亡aは型慢性C肝炎であり,被告病院で平成11年6月から10月まで型慢性肝炎のC治療を受けたこと,最初の2週間は入院し,その後は1日おきに通院IFNしたことを話した。 亡aは,h医師に対し,隣家が家を建てたので自分にはお金がないと思い出しストレスであること,頭が締め付けられるようなこと,治療がIFN原因かどうかわからないが食欲不振であること,日常生活で不都合な点としては,あたったりわめいたりすること,ぼーっとすることなどを話した。 亡aは,h医師の質問に対し,あまり眠れないこと,心配事ばかりであることを答えたが,お金以外のことで具体的な心配事の内容は告げなかった。 」,亡aは,h医師が「生きていく自信はあるか」と尋ねると「自信はない「死にたいと思うことがあるか」と尋ねると「死にたい」と答えた。 原告bは,h医師に対し,亡aが2年前に子宮筋腫の手術を受け,更年期障害ということで婦人科からホルモン療法を受けていたこと,婦人科で- 37 -はもう必要ないといわれていたが,治療を受ける平成11年6月までIFNホルモン療法の薬を服用していたことを話し,h医師は,亡aの気分変調の原因がホルモン療法の薬をやめ と,婦人科で- 37 -はもう必要ないといわれていたが,治療を受ける平成11年6月までIFNホルモン療法の薬を服用していたことを話し,h医師は,亡aの気分変調の原因がホルモン療法の薬をやめたことにあるのではないかと原告bが考えているように受け取った。原告bは,h医師の質問に対して,自宅は20年前に建築して住宅ローンはないことを告げたので,h医師が亡aに対して,住宅ローンもなく自宅があるから心配する必要がないのではないかと質問すると,亡aは,原告bから受け取った生活費を全部使ってしまうのでお金がないのであると自責の言葉を述べた。これを聞いた原告bは,h医師に対し,亡aが言うことは事実と異なるとして,自身はあと3年で定年退職するが確かに蓄えはないこと,しかしその原因は,平成10年1月に当時の勤務先の会社が倒産したため同年4月から別の会社に勤めたが給料が前の会社の3分の2に減額になったためであり,亡aの責任ではないことを述べた。 亡aは,被告病院内科で処方されている薬を持参しており,h医師は,持参した薬を見て抗不安薬のセルシンと睡眠剤が処方されていることが分かった。亡aは,薬に頼りたくないので服用していない旨話したので,h医師は,亡aに対し,良い薬なので服用するよう説得したが,亡aは強く拒絶し,薬を服用するように説得するために相当の時間を費やした。h医師が,亡aに対し,薬をやめていて日常生活に支障が出ないか尋ねると,亡aは食事の支度もきちんとできると答え,h医師が仕事がきちんとできるか尋ねると,亡aはミスは少し多いかも知れないが仕事はしていること,同僚と話すのは億劫だが仕事は続けていること,仕事は十数年続けており,平成11年6月に2週間休んだだけであると回答した。 h医師は,亡aには混乱が少しあるので混乱をとる薬を処方すると説明 いること,同僚と話すのは億劫だが仕事は続けていること,仕事は十数年続けており,平成11年6月に2週間休んだだけであると回答した。 h医師は,亡aには混乱が少しあるので混乱をとる薬を処方すると説明して,前記向精神薬クロルプロマジンであるコントミン5mgとセルシン0.5mgを7日分投与し,被告病院内科で処方された薬を飲むのが嫌で- 38 -も,自分が処方した薬だけは量も少ないので飲むように指導した。(丙,A1丙)A5(二)亡aは,平成12年1月15日,参加人病院を受診してh医師の診察を受けた。亡aは,h医師に対し,不眠,頭の中でいつもぐるぐる回っている,一日中やる気がないと訴え,ばい菌があたって心配であると述べた。 亡aは,前回受診時と同じく薬を服用したくないと主張し,h医師が理由を尋ねると「友人から,睡眠薬を飲んでいると効かなくなること,友,人の母が睡眠薬を飲んで死んだことを聞いたので服用したくない」と答えた。h医師が仕事のことを尋ねると,亡aは「会社でのミスは他の人が,かばってくれる「どこかで自分のことを,医者に行った方がよいので」,はないかと言っているようだ」と回答した。さらに亡aは「昔は心配性,ではなかったが,最近は全てが心配である」と述べ,被告病院内科で処方された薬は余っていると答えた。 h医師は,亡aに対して,混乱状態に変化がないので薬を服用する必要があることを説明し,コントミンを20mgに,セルシンを1mgにそれぞれ増量したが,亡aが薬の服用に抵抗を示しているので,1包の2分の1か3分の1から服用を始めてかまわないことを告げた。h医師は,薬を7日分処方するつもりでカルテに7といったん記載したが,亡aが仕TD事が忙しく1週間後に来院することが難しいと述べたので,14日分処方することに決め,7と記 わないことを告げた。h医師は,薬を7日分処方するつもりでカルテに7といったん記載したが,亡aが仕TD事が忙しく1週間後に来院することが難しいと述べたので,14日分処方することに決め,7と記載したのを二重線で消して14と書き直TDTDした。 亡aは,この後,死亡するまで参加人病院を受診することはなかった。 (丙,丙)A1A5(三)亡aは,参加人病院を上記(一)及び(二)に記載したとおり2回受診したのみであり,第2回受診時には死にたいといった希死念慮や自殺念慮について話していない。 - 39 -h医師は,亡aを精神病性うつ病とカルテの病名欄に記載しているが,これは,うつ病に妄想を伴った状態を指していて,どちらかというと精神分裂病に近い病態を指していた。(丙)A3(四)亡aは,平成12年1月末頃,包丁で手首を軽く切って手首に絆創膏を貼っていたことがあった。亡aは,そのころ原告bに対して「死ぬこ,とは怖くないか」と質問したことがあり,原告bが「自分は怖い」と。 。 答えたのに対し,亡aは「自分は死はさほど怖くない。この前ブラウス,のベルトでちょっと首を絞めてみたこともあった」と原告bに語った。 。 亡aは,原告bに対し,死亡する1週間ほど前の平成12年2月13日前後頃に,モミジ湖に連れて行って上から落としてくれ,灯油をかけて火を付けてくれ,殺してくれ,原告bが殺しても誰も悪いと思わないからなどと話したことがある。 原告bは,亡aが手首を切った当日は,遅く帰宅して既に亡aは就寝していたが,寝室に血が付いたティッシュペーパーが散乱し,手首に血がにじんだ絆創膏が巻いてあり,室内に包丁が落ちていたので,亡aが包丁で手首を切って自殺を図ったことを理解した。しかし,原告bは,落ちていた包丁を隠しただけで,亡aに対して, パーが散乱し,手首に血がにじんだ絆創膏が巻いてあり,室内に包丁が落ちていたので,亡aが包丁で手首を切って自殺を図ったことを理解した。しかし,原告bは,落ちていた包丁を隠しただけで,亡aに対して,なぜそのようなことをしたのか理由を問いただしたり,二度としないよう求めたりしなかった。原告bは,亡aが死ぬことは怖くないと言ったり,ベルトで首を絞めてみたと言ったときも,亡aが自殺について検討しているとは思いもよらなかったし,モミジ湖へ連れて行って亡aを殺すよう求められたときも,亡aが本気で自殺を考えているとは受け取らず,いずれについてもなぜそのような言動をするのか理由を尋ねることもしなかった。(甲,原告b本人)A7原告bは,初めて参加人病院を受診した際に,h医師が参加人病院で処方した薬だけでなく被告病院から処方された薬もきちんと服用するよう相当の時間をかけて説得したにもかかわらず,その後亡aが処方された薬を- 40 -きちんと服用しているかどうか,参加人病院についても被告病院についても全く確認していない(原告b本人)。 (五)亡aは,平成12年2月20日,昨日までと様子が朝から異なり,いつもと違う形相で「マッチをくれ」と原告bに対して要求したので,原告bはマッチは日常生活では使う必要がないものであるからそんなものは渡せないと言って取っ組み合いになった。 原告bは,当日は松本市で自らが参加する予定の駅伝の合同練習があり,自分の自動車に他のメンバーを同乗させて会場まで同行することになっていたため,亡aを自宅に置いたまま午前7時か8時頃自宅を出た。ただ,原告bは,自宅を出る際に,長男や母に対して,亡aの様子がおかしいので見ているように伝えた。しかし,亡aは,その後長男からマッチを受け取り,車庫の自動車内で灯油をかぶって火を付けて死亡し た。ただ,原告bは,自宅を出る際に,長男や母に対して,亡aの様子がおかしいので見ているように伝えた。しかし,亡aは,その後長男からマッチを受け取り,車庫の自動車内で灯油をかぶって火を付けて死亡した(甲,原。 A1告b本人)(六)原告bは,50歳を超えていた平成11年にフルマラソンを2時間45分台で完走した長距離ランナーであり,市民ランナーとしては全国的に見ても成績上位グループに属し,毎年全国の多数のマラソンや駅伝大会に出場していて,勤務先では平均すると毎日2時間程度の残業があり,完全週休2日ではなく第1及び第3土曜日が休みであるという厳しい条件の下でも,走らないのは週1日か2日で毎週8時間くらいは常時練習時間を確保していた。 原告bは,亡aが参加人病院を2回目に受診した平成12年1月15日は,伊那市の壮年ロードレースにエントリーしていたがキャンセルして亡aに同行した旨陳述していたが,平成12年は伊那市の壮年ロードレースが同月9日に開催されたことが判明すると,レースに参加したことを認めた。原告bは,亡a死亡後もマラソンや駅伝大会に出場している。(甲,A7乙~乙,丙,原告b本人)A10A13A4- 41 -(七)原告bは,平成12年9月2日,参加人病院を訪れて,社会保険から亡aの葬儀費用を給付してもらうため,亡aが故意による行為で死亡したのではなく精神病で死亡したことを証明するように依頼した。 原告bは,平成16年2月3日,再度参加人病院を訪れて,参加人病院を訴えることは考えていないが,他の病院を訴えるために必要であるのでカルテの写しを交付するよう求めた。(丙,原告b本人)A1原告らは,当初,被告病院を経営する被告のみを相手方として損害賠償訴訟を提訴し,参加人が独立当事者参加した後の段階に至って,反訴と るのでカルテの写しを交付するよう求めた。(丙,原告b本人)A1原告らは,当初,被告病院を経営する被告のみを相手方として損害賠償訴訟を提訴し,参加人が独立当事者参加した後の段階に至って,反訴という形式で参加人を相手方として損害賠償請求の訴えを起こした。(顕著な事実)三争点に対する判断以上の認定した事実に基づいて,各争点について判断する。 争点1(被告病院の医師の患者や家族に対する説明義務違反の有無)について(一)この点に関する原告らの主張は,①治療に際して,同治療以外IFNの治療法,同治療を行う至適時期,副作用としてうつ症状や自殺企図が起こり得ることに関する説明を欠いていたこと,②上記副作用については,原告ら家族に対する説明をすべきなのにこれを欠いたことをもって説明義務に違反するというものである。これらの点について検討する。 (二)まず,原告らの主張する上記①の点について検討する。 前記二1(三)のとおり,f医師は,治療開始前である平成10年6IFN月11日に,亡aに対して,型慢性肝炎の治療に関するパンフレッCIFNトを3種類交付しているところ,同( )ないし( )のとおり,型慢性肝炎 Cに対する治療法には,いわゆる原因療法としての療法のほかに対症IFN療法があることや,その選択基準として,治癒が見込まれる患者に対して,はまず治療を行うことなどが記載されているし,副作用についてもIFN- 42 -うつ症状や自殺企図があることや医師を受診すべきことが記載されている。 そうすると,医師から患者に対して説明する方法としては,口頭の場合に限られるものではなく,適切な方法でされれば足りるものであることに照らすと,上記のように必要な情報を記載した書面を患者に対して交付することによっても,説明義 対して説明する方法としては,口頭の場合に限られるものではなく,適切な方法でされれば足りるものであることに照らすと,上記のように必要な情報を記載した書面を患者に対して交付することによっても,説明義務は果たされたというべきであるから,亡aに対しては,原告の主張する諸点についての説明はなされたものと認められる。 もっとも,医師の説明は,一度すれば事足りるものではなく,患者が理解していないと認めるべき事情があるようなときは,医師の説明義務の趣旨が患者の自己決定権に資することにあることからすれば,再度説明をする等の義務が生じるものと解される。しかしながら,前記二1(一)及び(二)で認定した事実によれば,亡aは,第1入院時には型慢性肝炎やC治療について十分な知識を有していたとは言い難いが,第2入院時にIFNは型慢性肝炎や治療について必要な一通りの知識を有していたとCIFN認められ,治療によって自身に副作用が生じることを心配していたもIFNCIFNのである。このような変化が生じるためには,亡aに型慢性肝炎や治療に関する知識を得る機会が存在する必要があるところ,亡aが第1入院と第2入院の間に外来通院していること,同女に対してパンフレットが交付されていることからすれば,亡aが上記知識を得る機会はこの2点に限られ,他に何らかの機会があったことを窺わせる証拠は見あたらない。 そうすると亡aは,第1入院時から第2入院時までの間に,f医師から交付された3種類のパンフレットを何度も読み返し,他方で第1入院時や退院後の外来通院時にf医師の口頭による説明を受けたと推認するのが相当である。 従って,f医師は,亡aに対して,原告らが主張する点について説明をし,亡aはこれを理解していたと認められるから,この点で原告らの主張には理由がない。 - 説明を受けたと推認するのが相当である。 従って,f医師は,亡aに対して,原告らが主張する点について説明をし,亡aはこれを理解していたと認められるから,この点で原告らの主張には理由がない。 - 43 -(三)次に,原告らの主張する上記②について検討する。 前記一1で認定した事実によれば,治療の際には,患者だけでなくIFN患者の家族に対しても精神神経症状発現の可能性について説明する義務が存在するところ,患者の家族に対して具体的にいかなる方法で説明するかについては,医師の裁量に委ねられている。 患者の家族にとっては,口頭による説明にとどまるよりは説明書面を受領した方が後で繰り返し読むことによって理解が深まり,わざわざ医師を訪ねて医師に質問しなくとも疑問点を解消しやすいという利点がある。そして,前記二1(三)で認定した事実によれば,亡aがf医師から交付された3種類のパンフレットは,図表入りでわかりやすく説明がなされており,抑うつ症状が出たときは早めに主治医に相談すべきこと,うつ病,自殺企図が出たときにはすぐに主治医を受診すべきことが明記されていること,うつ病の早期発見の徴候は不眠,イライラであり,このような症状があったときは早めに主治医に相談すべきであると明記されていること,副作用の出方は製剤の種類によっても違うので何かおかしいなと思ったらIFNすぐ主治医に相談すべきであることが明記されている。また,前記二4(六)で認定した事実によれば,原告bは仕事やマラソンの練習で毎日忙しく,f医師が第2入院前に家族を一度同行して受診するように求めたのに対し,亡aは原告bを同行して被告病院内科を受診することを拒絶したと認定できること,亡aの入院中も原告bが見舞いに来院はしているもののその頻度はさほど多くなく来院時刻も夜遅くではないかと推認され に対し,亡aは原告bを同行して被告病院内科を受診することを拒絶したと認定できること,亡aの入院中も原告bが見舞いに来院はしているもののその頻度はさほど多くなく来院時刻も夜遅くではないかと推認されること,外来診療では多数の患者を診察するため一人当たりの患者に割ける時間は数分に限られることに照らすと,f医師が,家族に対する精神症状発現の可能性の説明方法として,亡aに対して交付したパンフレットを家族にもよく読んでもらって何か疑問があれば来院して質問するように指導するという方法で十分その目的を達成することができると認められ,そのような- 44 -方法を採用しあえて入院中に説明のために亡aに対し家族を呼ぶように申し入れなかったことをもって,同医師に注意義務違反があったと認定することはできない。 原告bは,抑うつ症状がいかなる症状か,うつ病の症状とはどのようなものかが分からなかったので医師に相談しなかったと主張するが,前記二1(三)及び4(六)で認定した事実によれば,パンフレットには不眠やイライラが出たときは早めに主治医に相談するよう明記されており,この部分は原告bにも理解できないはずがなく,原告bが亡aに不眠やイライラが出現したと気づけばその時点で医師に連絡することも可能であったことになる。原告bの主張は,同人が亡aの話を聞き流したりパンフレットをきちんと読んでいなかったために抑うつ症状やうつ病の症状が理解できなかったにすぎないと認めるのが相当である。 (四)従って,原告らの主張する説明義務違反は認められない。 争点2(被告病院の医師がインターフェロンを適切に投与しなかった過失の有無)について(一)前記一2,3(一)ないし(四)及び二2で認定した事実によれば,亡aの型慢性肝炎は,ウイルス量や遺伝子型に照らすと治療の効果がC ーフェロンを適切に投与しなかった過失の有無)について(一)前記一2,3(一)ないし(四)及び二2で認定した事実によれば,亡aの型慢性肝炎は,ウイルス量や遺伝子型に照らすと治療の効果がCIFN高いタイプであり,治療によって型肝炎ウイルスを体内から完全にIFNC排除できる確率が9割近くあると認められる。そして,型肝炎ウイルスCを体内から排除できた場合には,型慢性肝炎を完治させることができ,C将来肝硬変や肝細胞癌を発症する恐れがなくなることを意味した。他方,何も治療せずに放置した場合は,近い将来,相当高い確率で肝硬変や肝細胞癌を発症し,死亡する危険性が非常に高かった。 そして,以外の従前から存在する強力ネオミノファーゲン等の薬IFNC剤による治療は,肝臓の炎症を抑える効果はあっても型肝炎ウイルスCを排除する効果はない治療法であること,治療が唯一の原因療法であIFN- 45 -,ることに照らすと,亡aにとっては治療が最も優れた治療法でありIFN治療を受けることが最も合理的な選択であるといえる。 IFNIFN(二)前記一3(三)(四)(六)及び(七)で認定した事実によれば,亡aが治療を受けた平成11年当時は,治療に対しては健康保険の適用が認IFNめられるもののその期間が6か月間に限られていたため,一度治療IFNIFNCを受けたにもかかわらず再燃した場合には,再度の治療によって型肝炎ウイルスを排除できる可能性があっても自費で再度治療を受IFNけるよりほかなく,高額な自己負担が生じること,再度の治療の際IFNはの総投与量を増やす方針がとられること,治療の効果は,患者IFNIFNの年齢が若いほど,肝臓の繊維化が進んでいないほど高い効果が得られることが判明していたこ こと,再度の治療の際IFNはの総投与量を増やす方針がとられること,治療の効果は,患者IFNIFNの年齢が若いほど,肝臓の繊維化が進んでいないほど高い効果が得られることが判明していたことが認められ,これらのことに照らすと,年齢が若い時点で総投与量を増やすという意味で最初から投与量の上限である1000万単位を投与する方が高い効果が期待できるうえ,患者が自費で再度の治療を受けざるを得なくなる可能性を減らすもので望ましいといIFNえる。 従って,亡aの場合,若い時期に最初から1000万単位を投与したことをもって過失があったということはできない。また,複数存在するインターフェロンα及びβ製剤の中でインターフェロンα2b製剤の方が治療A効果が高いという報告が存在していた以上,同製剤であるイントロン1000を選択したことが過失であるとはいえない。 インターフェロンβ製剤は,6週間にわたり連日静脈投与がなされるもので,毎日通院することは通常容易ではないことから6週間にわたって入院せざるを得なくなり,患者にとって投与方法の負担が大きく効果の面でインターフェロンα製剤を上回るとはいえないことから,会社勤めをしている亡aは,インターフェロンβ製剤を選択しなかったと認められる。 (三)前記二3で認定した事実によれば,f医師は,平成11年8月13日- 46 -には,亡aが食欲不振や持続する下腹部痛を訴えたので,投与の中止IFNを含めて亡aと相談した結果,亡aの要望を容れてを600万単位IFNに減量して治療を継続したもので,その後症状は改善している。fIFN医師は,同年10月13日には,心配事がわいてくるとの亡aの訴えを受け,同年9月22日から集団検診の結果を巡って亡aが神経質になっていたことも考慮して抑うつ状態やうつ病を発症 善している。fIFN医師は,同年10月13日には,心配事がわいてくるとの亡aの訴えを受け,同年9月22日から集団検診の結果を巡って亡aが神経質になっていたことも考慮して抑うつ状態やうつ病を発症することを心配して治IFN療を中止したものであり,治療の中止後も定期的に診察して,同年1IFN0月22日に亡aがイライラ感を訴えると,抗不安薬及び睡眠薬を処方するとともに精神科受診を勧めている。 従って,f医師は,亡aの訴えを受けて副作用を防止するために最も根本的な対策であるの減量,さらには中止をしたものであり,f医師IFNが実際に減量したよりも前の同年8月上旬の症状は風邪によるものであって,これよりも前の時期に亡aにの減量あるいは中止をするほどのIFN副作用の訴えは認められない。そして,同月13日に治療の中止でIFNはなく減量を選択したのは亡aの要望を受け入れたためであり,この時点では亡aは不安やイライラといったうつ病の症状を訴えていないから,同日治療を中止しなかったことをもって,f医師に注意義務違反があIFNったとは認められないし,の減量によって症状がいったん軽減していIFNた以上,同年10月13日よりも前の時期に治療を中止すべき理由IFNはない。 争点3(被告病院の医師の療養指導義務違反ないし転医勧奨義務違反の有無)及び同4(被告病院の過失行為と亡aの死亡との間の因果関係の有無)について(一)前記二3(二)及び(三)で認定した事実によれば,f医師は,亡aに出現した症状を聞いて,平成11年8月13日にはを600万単位にIFN減量し,さらに同年10月13日には治療を中止したものであり,IFN- 47 -治療中止後も定期的に亡aを受診させており,同月22日には,亡aIFNの訴えを聞いて,抗 600万単位にIFN減量し,さらに同年10月13日には治療を中止したものであり,IFN- 47 -治療中止後も定期的に亡aを受診させており,同月22日には,亡aIFNの訴えを聞いて,抗不安薬と睡眠剤を投与し,精神科受診を勧めていて,その後も定期的に受診させている。 前記一4(五),5(一)及び(二)で認定した事実によれば,かかるf医師の対応は,亡aの症状に応じて適切な対応をとったものと評価できる。すなわち,治療を受けた患者の精神症状がある程度重くなれば,内科でIFNは対応できず,精神科医の指示に従って向精神薬の投薬や入退院させるという治療をするより方法はないのであり(この点については,原告らが申請した証人i医師も同旨の陳述をしている,内科医師であるf医師と。)しては,抗不安薬の投与は本来であれば専門外であるにもかかわらず,亡aの症状と同女が精神科受診を拒否したことを踏まえてあえて投与に踏み切ったものと認められる。 従って,f医師は,投与の中止という自ら可能な措置をとり,抗不IFN安薬と睡眠剤も投与していて,精神科も受診するよう勧めるなどしている本件においては,自ら可能な措置は全て実施したものというほかない。 (二)前記二3(四)で認定した事実によれば,被告病院には精神科が存在せず精神科医もいないから,亡aの精神症状の治療のために被告病院内科に入院させても精神科医の診察も受けられず無意味である。 前記一6(一)で認定した事実によれば,うつ病の治療の9割は外来通院治療で可能であり,治療を中止した平成11年10月13日あるいはIFN同月22日の時点では,亡aに自殺企図は出現しておらず,うつ病の治療は未だ開始されていないから,①外来通院治療で症状改善が望めないという事由には該当せず,イライラ感が同月22日初めて出現 はIFN同月22日の時点では,亡aに自殺企図は出現しておらず,うつ病の治療は未だ開始されていないから,①外来通院治療で症状改善が望めないという事由には該当せず,イライラ感が同月22日初めて出現したことに照らすと,④不安,焦燥,苦悩が強い症例という事由にも該当しない。 従って,亡aは,平成11年10月13日あるいは同月22日の時点では,うつ病で入院させて治療する要件を欠いていたものであり,f医師に,- 48 -亡aを入院させる義務があったとはいえない。 (三)上記のとおり,この点についてはf医師に過失が認められないので,争点4について判断するまでもなく原告らの被告に対する請求は理由がないことに帰するが,念のため争点4(因果関係の有無)について付言する。 前記二3(二)及び(三)で認定した事実によれば,亡aの症状は,平成11年8月13日にが600万単位に減量された後,同月25日の時IFN点では症状が改善していること,同年10月13日に治療が中止さIFNれた後の同年11月5日には,表情や目つきがよくなっていること,前記二4(四)で認定した事実によれば,亡aの自殺企図が出現したのは平成12年1月末頃であることが認められる。 そして,平成11年10月22日の時点では,f医師の精神科受診の勧めを亡aは拒絶し原告bもこれに同調したにもかかわらず,同年12月11日になっていったん抵抗が強いとして拒否した精神科を二人そろって受診したことに照らすと,その間に亡aの精神症状が悪化し,原告bも亡aも困って抵抗があった精神科を受診することもやむなしという決断をしたものと推認するのが相当である。 従って,亡aの精神症状は,の減量及び中止によっていったんは改IFN善したものと認められ,亡aに自殺企図が生じたのは中止後3か月IFNも経過した後の 断をしたものと推認するのが相当である。 従って,亡aの精神症状は,の減量及び中止によっていったんは改IFN善したものと認められ,亡aに自殺企図が生じたのは中止後3か月IFNも経過した後のことであること,前記一4(四)及び(五)によれば,治IFN療中にとは無関係にうつ病が発症する例が存在し惹起性のうつIFNIFN病との鑑別が問題となること,中止後もによるうつ病からの回復IFNIFNが遅れる例が存在するものの,原因となった薬剤を中止したにもかかわらず何か月も経過した後になっていったん改善しかけた精神症状が悪化することは薬剤以外の別の要因がない限り通常は考えにくいことに照らすと,本件では,が中止され投与されなくなって相当長期間経過した後にうIFNつ病が急激に悪化をきたして自殺企図を生じていることから,亡aの自殺- 49 -企図と被告病院内科による治療との間に相当因果関係があったか否IFNかについても,疑問が残る。 争点5(参加人病院の医師の家族に対する説明義務違反及び療養指導義務違反の有無)について(一)前記二4(一)及び(二)で認定した事実によれば,h医師は,亡aが平成11年12月11日に初めて参加人病院を受診した際には,1週間分の薬を処方し,1週間後に再び来院するよう求めたと認められる。 なお,原告らは,平成12年1月15日の第2回受診時にも原告bが亡aに同行した旨主張し,同原告は本人尋問でその旨の陳述をしている。しかし,丙第1号証によれば,平成11年12月11日に亡aが受診しAた際には,原告bが発言した内容についてはカルテに(夫)と記載された部分が存在するが,平成12年1月15日の第2回受診時にはカルテに(夫)の記載がないこと,原告b本人尋問において,原告bは平成12年1月15日に参 が発言した内容についてはカルテに(夫)と記載された部分が存在するが,平成12年1月15日の第2回受診時にはカルテに(夫)の記載がないこと,原告b本人尋問において,原告bは平成12年1月15日に参加人病院で亡aやh医師が話した内容について記憶が乏しいことがそれぞれ認められるところ,これに加えて前記二4(六)で認定した事実によれば,原告bは,亡aが平成12年1月15日に参加人病院を2回目に受診した際は同行せず,同日は亡aが単独で参加人病院を受診したものと認められる。 (二)上記(一)における認定を前提として,まず,によるうつ病であるIFNとの診断義務があるか否かについて検討する。 前記二4で認定した事実によれば,参加人病院を初めて受診した平成11年12月11日時点で,亡aには貧困妄想が存在し薬の服用に対する抵抗が強い状態であり,死にたいという希死念慮も口にしたが具体的な自殺企図ではなかったばかりか,平成12年1月15日に2回目に受診した際は,亡aは,逆に死にたいということを否定する趣旨の発言をしたものである。そうすると,これらの症状は,希死念慮や自殺企図といった重大な- 50 -行動に発展する可能性を低減させる方向に解釈すべき事情であるとも考えられる。 さらに前記一4(三)(四)で認定した事実と前記二4で認定した事実を総合すると,による精神症状のうち妄想が出現するのは約11%と少数IFNであり,投与終了後1か月以上経過してから精神症状が悪化しているIFNことに照らすと,いずれもによる精神神経症状としては非典型的でIFNあり,投与と受診した時点の亡aの症状が関連しているとは疑いにくIFNい。また,うつ病が重症になれば,家事や仕事はほとんどできなくなるのが通常であるのに,亡aは,食事の支度等家事もこなしているし会社勤 投与と受診した時点の亡aの症状が関連しているとは疑いにくIFNい。また,うつ病が重症になれば,家事や仕事はほとんどできなくなるのが通常であるのに,亡aは,食事の支度等家事もこなしているし会社勤めも続けていることからすれば,この点においてもうつ病とは疑いにくい症状が出ており,診断は容易ではない。 そうすると,うつ病であると診断するためには,抗うつ剤を投与してみてどのような反応を示すか確認すること等追加的な検査等が必要となるところ,亡aは,処方された薬をきちんと服用しておらず,参加人病院を受診したのもわずか2回にとどまり,投与した薬の反応を観察するには受診回数が少なすぎるのであるから,参加人病院における診察時において,亡aが治療によるうつ病を発症していることを認識することはできなIFNいと言わざるを得ない。 のみならず,前記一5及び6(二),(三)で認定した事実によれば,h医師が投与したセルシンもコントミンも,いずれもうつ病の不安や焦燥に対して投与する適応がある薬剤であり,仮に亡aの精神症状がうつ病であるとしても,不適切な薬剤が投与されたわけではないから,この点においても,うつ病に対する治療義務に反するということはできない。 ところで,参加人病院のh医師は,亡aの診察当時の病状がうつ病ではなく精神分裂病(統合失調症)を疑うべきものである旨述べており(h医師の証人調書,仮にこの点において誤診が存在すると判断されれば,P3)- 51 -亡aに対する診療義務に違反するとの判断に達する余地がある。しかしながら,上記のとおり,セルシン及びコントミンがうつ病に対する適応があることからすれば,上記診断が仮に誤診であったとしても,結果的には適切な治療を行っていることから,診療義務違反がないことになり得るのであって,他に上記診断の誤り及び診 トミンがうつ病に対する適応があることからすれば,上記診断が仮に誤診であったとしても,結果的には適切な治療を行っていることから,診療義務違反がないことになり得るのであって,他に上記診断の誤り及び診療義務違反を基礎づける証拠はない。 (なお,この点に関し,原告らは,立証について鑑定の申請はしない旨明言している)。 (三)他方,亡aの精神症状から同女を入院させる義務があったか否かについて検討するに,前記一6(一)で認定した事実によれば,うつ病の入院治療が必要となるのは1割程度で少数であり,入院治療を要する事由のうち,亡aが薬の服用を拒み続ければ③薬物療法が十分に遂行できない症例に該当する可能性があるが,参加人病院をわずか2回受診しただけであるから,未だかかる事由に該当すると判断するには時期尚早であるし,参加人病院を2回目に受診した時点でも④不安,焦燥,苦悩の強い症例に該当するほどの不安,焦燥は出現しておらず,死にたいと一度言っただけで全ての患者が⑪自殺の危険の強い症例に該当するものでもない。 これに対して,前記二4(四)で認定した事実によれば,亡aは,参加人病院を最後に受診した平成12年1月15日の後の同月下旬になって,急に自殺企図が生じており,h医師も包丁で手首を切ったことを聞いていれば亡aを入院させたと述べるとおり,この段階に至れば,入院治療の必要性があるといえる。しかしながら,その後死亡するまでの間,亡aは参加人病院を受診していないので,h医師は,自殺企図という決定的な情報に接していない。 以上によれば,亡aは,平成12年1月下旬以降になって急激に焦燥が強まり自殺企図を生じたものと認められ,h医師は,自殺企図が生じて以降亡aを診察する機会がないから,具体的な自殺の予見可能性はなく,亡- 52 -aを入院させるべき注意義務違反は って急激に焦燥が強まり自殺企図を生じたものと認められ,h医師は,自殺企図が生じて以降亡aを診察する機会がないから,具体的な自殺の予見可能性はなく,亡- 52 -aを入院させるべき注意義務違反は認められない。 四乙事件のうち参加人の原告に対する債務不存在確認の訴えについては,丙事件で原告の参加人に対する訴訟物を同じくする損害賠償請求の反訴が提起されている。このように訴訟物を同じくする消極的確認請求の本訴と給付請求の反訴が提起された場合には,反訴について判断がなされる以上給付訴訟で終局的解決を図るべきであり,消極的確認請求の本訴については訴えの利益が存在しないので不適法として却下すべきである(最判平成16年3月25日民集58巻3号753頁。 )従って,乙事件のうち参加人の原告に対する債務不存在確認の訴えは,不適法として却下を免れない。 五以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,原告の被告及び参加人に対する損害賠償請求(甲事件・丙事件)には理由がないから棄却することとし,参加人の原告に対する債務不存在確認の訴え(乙事件)については訴えの利益が存在しないので却下することとし,参加人の被告に対する債務不存在確認の訴え(乙事件)については,その前提となる原告の被告に対する損害賠償請求(甲事件)が棄却されるので参加人が被告に対して何ら債務を負う根拠がなく,理由があるから認容することとして,乙事件の訴訟費用のうち被告に対する訴えにかかるものは相被告である原告が負担するのが相当であり,原告に対する訴えにかかるものも訴えの経緯からして原告が負担するのが相当であるから,訴訟費用の負担につき民事訴訟法65条1項本文,62条,61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第34部裁判官金光秀明- 53 -裁判官 負担するのが相当であるから,訴訟費用の負担につき民事訴訟法65条1項本文,62条,61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第34部裁判官金光秀明- 53 -裁判官萩原孝基裁判長裁判官藤山雅行は,転補のため署名押印することができない。 裁判官金光秀明- 54 -(別紙)主張要約書【目次】 第1[原告・被告] 被告病院の医師の説明義務違反の有無………………………………………………………………………59(原告らの主張) インターフェロンの副作用と,亡a及び家族に対する説明の必要性 被告医師の説明 まとめ…………………………………………………………………………62(被告の主張) 亡aに対してインターフェロン治療について十分に説明したこと 家族に対するインターフェロン治療等に関する説明について第2[原告・被告] 被告病院の医師がインターフェロンを適切に投与しなかった 過失の有無………………………………………………………………………76(原告らの主張) インターフェロンの副作用と,経過観察義務及び治療中止義務 被告医師の投与量(被告医師の経過観察義務及び治療中止義務違反) まとめ…………………………………………………………………………78(被告の主張) インターフェロン治療を適切に実施したこと インターフェロン治療を適切に減量,中止したこと インターフェロンの副作用に対して慎重に対処していたこと第3[原告・被告] 被告病院の医師の療養指導義務違反ないし転医勧奨義務違反- 55 - の有無………………………………………………………………………85(原告らの主張) ていたこと 第3 [原告・被告] 被告病院の医師の療養指導義務違反ないし転医勧奨義務違反の有無 ………………………………………………………………………85(原告らの主張) 精神科医(インターフェロン治療の主治医)のすべき療養指導義務ないし転医勧奨義務の程度 本件における義務履行の程度が不十分であったこと …………………………………………………………………………86(被告の主張) 精神科医の受診を勧めたが,亡aが精神科医の受診を拒否したこと 亡aには希死念慮や自殺企図は認められなかったこと 適時,適切な療養指導が行われたこと 第4 [原告・被告] 被告病院の過失行為と亡aの死亡との間の因果関係の有無 ………………………………………………………………………90(原告らの主張) うつ病と自殺時期の関係 統合失調症の疑いとの主張について 亡aの自殺当日の原告らの行動 …………………………………………………………………………92(被告の主張) 亡aの希死念慮及び自殺企図の発現時期とインターフェロン治療の時期との関係 参加人病院における亡aに対する診断 亡aの死亡原因 結論 第5 [原告・参加人] 参加人病院の医師の家族に対する説明義務違反及び療養指導義務違反の有無 ………………………………………………………………………95(原告らの主張) 精神科及び神経科を有する病院の医師の注意義務 参加人病院医師が,亡aの受けている治療内容を認識し,亡aに対してうつ病が疑われると診断したにもかかわらず,適切な処置をとらなかったこと 自殺念慮の判断 まとめ の受けている治療内容を認識し,亡aに対してうつ病- 56 - が疑われると診断したにもかかわらず,適切な処置をとらなかったこと 自殺念慮の判断 まとめ………………………………………………………………………101(参加人の主張) 精神科及び神経科を有する病院の医師の注意義務について 「参加人病院医師がうつ病と診断したのに適切な処置をとらなかった」との原 告主張について」 自殺念慮の判断について まとめについて その他参加人の主張 参加人の主張のまとめ第6[原告・参加人] 参加人病院の医師の過失行為と亡aの死亡との間の因果関 係の有無………………………………………………………………………114(原告らの主張)………………………………………………………………………116(参加人の主張) 第7[原告・被告・参加人] 被告・参加人の共同不法行為の成否………………………………………………………………………120(原告らの主張) ○本件における被告の行為と参加人の行為との関係(行為共同性の存在)…………………………………………………………………………121(被告の主張) 被告に不法行為がないこと 被告と参加人との間に客観的関連共同性(行為共同性)がないこと 共同不法行為の不成立………………………………………………………………………124(参加人の主張) 参加人に不法行為がないこと 被告と参加人との間に客観的関連共同性(行為共同性)がないこと 共同不法行為の不成立- 57 - 第8[原告・被告・参加人] 損害額………………………………………………… 被告と参加人との間に客観的関連共同性(行為共同性)がないこと 共同不法行為の不成立- 57 - 第8[原告・被告・参加人] 損害額………………………………………………………………………129(原告らの主張) 逸失利益2823万4290円 死亡慰謝料2400万0000円 弁護士費用522万3429円 合計5745万7719円…………………………………………………………………………129(被告の主張)………………………………………………………………………129(参加人の主張) 第9[原告・被告・参加人] 亡a自身又は原告らの過失の有無…………………………………………………………………………131(被告の主張) 亡a自身の過失 原告ら自身の過失 過失相殺の主張………………………………………………………………………140(参加人の主張)………………………………………………………………………141(原告らの主張) 亡a自身の過失について 原告ら自身の過失について 第10[原告・被告・参加人] 消滅時効(不法行為)の成否…………………………………………………………………………146(被告の主張)………………………………………………………………………146(参加人の主張)………………………………………………………………………146(原告らの主張)- 58 -第1[原告・被告] 被告病院の医師の説明義務違反の有無(原告らの主張) インターフェロンの副作用と,亡a及び家族に対する説明の必要性説明義務とは,患者が自らの身に行われようとする療法につき,その利害得失を理解した上で,当 医師の説明義務違反の有無(原告らの主張) インターフェロンの副作用と,亡a及び家族に対する説明の必要性説明義務とは,患者が自らの身に行われようとする療法につき,その利害得失を理解した上で,当該療法を受けるか否かについて熟慮し,決断することを助けるために行われるものである。 そして当該療法により,生命にかかわるような重篤な副作用の発現の可能性がある場合には,医師には,患者本人のみならず,その家族に対しても,副作用発現の可能性について十分な説明を行い,もって副作用が発現した場合に適切な処置を取ることができるようにする義務がある。 本件では,インターフェロンの副作用として,重篤なうつ状態,自殺企図を初め,精神神経症状が発現する可能性があるため,患者及び家族に対してその可能性を理解させ,不眠,不安等が現れた場合には直ちに医師に連絡するよう注意を与える義務があった。 被告医師の説明亡a本人に対する説明(説明が不十分であったこと)( )1被告病院のf医師は,亡aに対してインターフェロン治療全般及び副作用に関する説明を尽くしていなかった。 亡aの場合に,インターフェロン治療以外の選択肢がなかったのか,被告病院が選択したインターフェロン治療の方法以外の選択肢(注射の1回あたりの使用量や,そもそも点滴による方法を選択するなど)がなかったのか,また今がインターフェロン治療を行うこと適切な時期であるかどうか,被告病院から亡aに対する指導は全くなかった。また原告らは亡aから同人のウイルスがグループ2型でウイルス量が少ないとか,有利な条件であるとかの- 59 -説明を医師から受けた旨の報告を全く受けなかった。 さらにインターフェロンの副作用について,仮に被告病院が主張するような詳細な説明,特に副作用につき,単に発熱,食欲不振や脱毛等の副作用にとど 9 -説明を医師から受けた旨の報告を全く受けなかった。 さらにインターフェロンの副作用について,仮に被告病院が主張するような詳細な説明,特に副作用につき,単に発熱,食欲不振や脱毛等の副作用にとどまらず,うつ症状の発症及び自殺企図の可能性がある点を繰り返し行っていたならば,本人のみならず,両親,兄(牧師,姉ら家族も皆敬虔なク)リスチャンであった亡aとしては,自殺をすることが罪であり,天国に行けないことを意味することから,問題を重視して原告ら家族やキリスト教会の信者たちに当然報告や相談をしたと思われるが,そのような相談は一切なかった。 家族に関する説明(説明がなかったこと)( )2被告病院は原告ら家族に対して,インターフェロンの副作用についての説明を何ら行わなかった。 インターフェロン治療,特にその副作用については「自殺企図が現れる,ことがある」との警告がなされていること,それも含めた副作用の重大性が家族等周囲へ与える影響が大きいことから,被告病院が直接原告ら家族に対して説明をなすべき義務を負っている。 被告は,原告らがインターフェロンに関するパンフレットに目を通したことによって,インターフェロン治療について十分に知る機会はあったと主張するが,パンフレットの記載は簡単なものに過ぎず,特に副作用について,また副作用が出た場合の対処法について,家族としてどのように取り組むべきかについての記載は十分になされていなかった。それについては医師から家族に対する直接の説明がない限り,原告ら家族としてはその重大性を理解することができなかった。原告らとしては,f医師からの直接の説明がなかったために,副作用がそれほど重大なものであるとの認識を持つことができなかった。この点,パンフレットに副作用として「うつ病」の可能性があることが記載されており,原告 は,f医師からの直接の説明がなかったために,副作用がそれほど重大なものであるとの認識を持つことができなかった。この点,パンフレットに副作用として「うつ病」の可能性があることが記載されており,原告らがそれを一読していたとしても,原告らに副- 60 -作用としての「うつ病」の可能性があることを認識していたということはできない。まして原告らは「うつ病」というのがどのような症状の病気であるかも知らず「うつ病」に対する家族としての対処法については,医師から,直接説明を聞かない限りは理解することができなかった。さらに,原告bが読んだ記憶のあるパンフレットには,副作用としての「自殺企図」は明記されておらず,むしろ,何か問題がある場合には,医師が適切に対応するゆえ,患者の心配は無用である旨が記載されており,パンフレットを一読しただけでは,亡aに自殺企図の可能性があるという点を直ちに理解することはできなかった。 被告は,亡aに対して家族同伴で受診するように説明した,と主張する。 仮にf医師がそのような説明をしていたとしても,家族が同伴しなかった場合には,被告病院としては,直接家族に連絡をとるなどの方法で,必ず家族に対して副作用及び家族としての取り組み方に関して直接の説明を行い,家族の了解を得た上でインターフェロン治療に入る義務があった。 この点,被告は,医師と患者との間の信頼関係が重要であり,患者を飛び越えて家族に連絡することは,患者に猜疑心や不安を与えかねないと主張する。原告も,医師が患者との信頼関係を重視することを否定するものではないが,患者との信頼関係を構築していれば,患者に副作用が出た場合の対処方法について家族に説明する義務を怠って良いという理屈にはならない。本件においては,仮に亡a本人のインターフェロン治療に対する意思が強かったとしても 係を構築していれば,患者に副作用が出た場合の対処方法について家族に説明する義務を怠って良いという理屈にはならない。本件においては,仮に亡a本人のインターフェロン治療に対する意思が強かったとしても,家族に対する副作用やそれに対する対処方法の説明が何らかの方法でなされない限り,医師としてはインターフェロン治療を当面延期する等の措置を執ることもできたものであるから,家族に対する説明がきちんとなされたことを確認しないまま,インターフェロン治療に踏み切った被告の行為には過失があることは明らかである。 まとめ- 61 -以上から被告には,亡a本人に対しインターフェロンの副作用についての説明を十分に行わなかった点,及び家族に対してインターフェロンの副作用及びその対処法についての説明を一切行わないままインターフェロン治療に踏み切った点に過失がある。 (被告の主張) 亡aに対してインターフェロン治療について十分に説明したこと治療全般に関する説明( )1ア平成10年5月27日(被告病院内科初診)診療経過一覧表における平成10年5月27日の欄に記載の事実参照イ平成10年6月11日(腹部超音波検査)診療経過一覧表における平成10年6月11日の欄に記載の事実参照(インターフェロンの副作用について,亡aに対してパンフレットの内容,,を示しながら口頭で説明した。具体的には《投与初期のものとして発熱全身倦怠感,頭痛,筋肉痛などのインフルエンザ症状や食欲不振,胃腸症状などが比較的多く認められる。投与中期以降に好発する副作用として不眠,不安さらにうつ状態,脱毛,甲状腺機能異常,糖尿病,網膜症などが生じることがある。頻度はきわめてまれであるが重大な副作用として,間質性肺炎,自殺企図ならびに自殺の報告がある(》内を,以下「本件》《副作用説明」と 態,脱毛,甲状腺機能異常,糖尿病,網膜症などが生じることがある。頻度はきわめてまれであるが重大な副作用として,間質性肺炎,自殺企図ならびに自殺の報告がある(》内を,以下「本件》《副作用説明」という。 )ウ平成10年7月22日(内科外来受診)診療経過一覧表における平成10年7月22日の欄に記載の事実参照当日「ウイルス肝炎医療費受給者証」申請のために(内科においては),2回目のHCV抗体測定を提出した(書類作成のためには少なくとも1か月以上の間隔で2回のHCV抗体測定を行い,いずれも陽性であることを明記することが必要で,当時IFN治療を希望していない患者に対しては- 62 -「ウイルス肝炎医療費受給者証」の申請を原則として行っていなかったことからも,HCV抗体を短い間隔で再検査したこの7月22日の内科外来において亡a自身からIFN治療の希望が示されていたことは明らかである。 )エ平成10年8月26日(内科外来受診)診療経過一覧表における平成10年8月26日の欄に記載の事実参照オ平成10年9月16日(内科外来受診)診療経過一覧表における平成10年9月16日の欄に記載の事実参照カ平成10年10月7日(内科外来受診)診療経過一覧表における平成10年10月7日の欄に記載の事実参照キ平成10年10月16日(内科外来受診)診療経過一覧表における平成10年10月16日の欄に記載の事実参照ク平成10年11月10日~同年11月20日(第1回入院)診療経過一覧表における平成10年11月10日~同年11月20日の欄に記載の事実参照ケ平成11年4月7日(内科外来受診)診療経過一覧表における平成11年4月7日の欄に記載の事実参照コ平成11年5月12日(内科外来受診)診療経過一覧表における平成11年5月12日の欄に記載の事実参照 成11年4月7日(内科外来受診)診療経過一覧表における平成11年4月7日の欄に記載の事実参照コ平成11年5月12日(内科外来受診)診療経過一覧表における平成11年5月12日の欄に記載の事実参照サ平成11年6月1日~同年6月15日(第2回入院)診療経過一覧表における平成11年6月1日~同年6月15日の欄に記載の事実参照シ平成11年8月13日(内科外来受診:IFN減量)診療経過一覧表における平成11年8月13日の欄に記載の事実参照ス平成11年8月25日(内科外来受診:IFN投与開始3か月後)診療経過一覧表における平成11年8月25日の欄に記載の事実参照- 63 -セ平成11年9月22日(内科外来受診:IFN投与開始4か月後)診療経過一覧表における平成11年9月22日の欄に記載の事実参照ソ平成11年9月29日(大腸造影検査)診療経過一覧表における平成11年9月29日の欄に記載の事実参照タ平成11年10月13日(内科外来受診:IFN中止)診療経過一覧表における平成11年10月13日の欄に記載の事実参照チその他原告らは,亡aがIFN治療全般に関して原告ら又は友人等(キリスト教会の信者達)に詳細に話していなかったことをもって,被告病院が亡aに対してIFN治療全般に関する説明を怠っていたと主張する。 しかし,被告は,被告病院のf医師が,亡aに対するC型慢性肝炎治療を通して亡aを診察等した際に,正に実際に体験した事実(亡aに対してIFN治療全般に関する説明を行った)を診療経過として主張しているのであり,原告らの間接的,飛躍的な主張より遙かに信憑性が高いことは明らかである。 亡aと原告らとの間には大きなコミュニケーション不足があったことから,被告病院の亡aに対するIFN治療全般に関する説明の内容が,亡aから原告らに伝わらな より遙かに信憑性が高いことは明らかである。 亡aと原告らとの間には大きなコミュニケーション不足があったことから,被告病院の亡aに対するIFN治療全般に関する説明の内容が,亡aから原告らに伝わらなかったことは明らかである(後に,亡aが,野菜包丁で自らの手首を切る,ベルトで自らの首を絞めるという自殺未遂を行ったにも拘わらず,原告bは,これに関して亡a自身に何ら聞かず,その詳細を確認する等の行為を行わなかったことからも,原告らと亡aとの間にはコミュニケーションが隔絶していたのは明らかである。 )また,自己がC型慢性肝炎に罹患していたこと,これに対してIFN療法を希望し,これを受けていたこと等は,一般的に極めて個人的な事柄なのであって,これらの事柄に関して,亡aが友人ら(キリスト教会の信者達)に詳細に話す可能性は極めて低いものであって,これらの事柄を亡a- 64 -が友人ら(キリスト教会の信者達)に詳細に話していなかった事実をもって,被告病院が亡aに対してIFN治療全般に関する説明を怠っていた根拠とするのは,極めて不自然である。 したがって,被告病院が,亡aに対してIFN治療全般に関する説明を行っていたことは明らかであって,原告らの主張は単に被告を論難するものに過ぎない。 ツ 結論 以上のように,被告病院においては,亡aに対にする治療,処置等の経過に鑑み,また亡a自身の身体的,精神的状態に鑑み,適時,適切にインターフェロン治療全般に関する説明を行っており,本件においては,被告に亡aに対するインターフェロン治療全般に関する説明において過失はない。 副作用に関する説明( )2ア平成10年6月11日(腹部超音波検査)診療経過一覧表における平成10年6月11日の欄に記載の事実参照イ平成10年7月22日(内科外来受診)診療経過一覧表にお 副作用に関する説明( )2ア平成10年6月11日(腹部超音波検査)診療経過一覧表における平成10年6月11日の欄に記載の事実参照イ平成10年7月22日(内科外来受診)診療経過一覧表における平成10年7月22日の欄に記載の事実参照ウ平成10年8月26日(内科外来受診)診療経過一覧表における平成10年8月26日の欄に記載の事実参照エ平成10年10月16日(内科外来受診)診療経過一覧表における平成10年10月16日の欄に記載の事実参照オ平成11年4月7日(内科外来受診)診療経過一覧表における平成11年4月7日の欄に記載の事実参照カ平成11年5月12日(内科外来受診)診療経過一覧表における平成11年5月12日の欄に記載の事実参照亡aの罹患していたC型慢性肝炎は,緩徐ではあるものの常に進行性の- 65 -疾患であって,積極的な抗ウイルス療法を施さない限り,肝硬変への伸展や肝臓細胞癌の発生が危惧される予後不良な疾患である。一方,IFN投与による重大な副作用である自殺,脳出血,間質性肺炎などは,その発生頻度は一般には極めて低いものである。 被告病院のf医師の診療経験によれば,一般的にC型慢性肝炎の患者に対して自殺を含めた極めて希な副作用を説明しても,それらを主な理由としてIFN治療を事前に拒否するケースは希である。重大ではあるが希な副作用に遭遇するよりも,IFN治療を実施せずに経過することで肝硬変,肝細胞癌へ伸展して自己の生命が危機に瀕する確率の方がはるかに高いことを患者側も理解した上で治療を希望するからである。希な副作用を意識し過ぎるあまり,IFN治療を拒否することは,確率論的に明らかに患者の生命予後に不利な選択である。 亡aも自分がC型慢性肝炎患者であって,将来肝硬変,肝細胞癌へ伸展する可能性があることを認識した上で し過ぎるあまり,IFN治療を拒否することは,確率論的に明らかに患者の生命予後に不利な選択である。 亡aも自分がC型慢性肝炎患者であって,将来肝硬変,肝細胞癌へ伸展する可能性があることを認識した上で,その回避措置であるIFN治療をその副作用も十分認識した上で,自ら積極的に希望した(亡aのキリスト教会の友人である証人赤沼に対して,亡aは,C型肝炎から肝硬変,肝細胞癌に移行していくことが大変怖く,どうしても治したいために,治療を続ける旨述べていた。 )この点,原告らは,亡aのIFN治療に関してその副作用を知っていれば反対した可能性が極めて高かった旨主張するが,これは一般的,合理的な選択とは全く逆の結果であって,C型慢性肝炎が積極的な抗ウイルス療法を施さない限り肝硬変への伸展や肝臓細胞癌の発生が危惧される予後不良な疾患であることを軽視するものであり,単なる結果論に過ぎない主張であると言わざるを得ない。 キ平成11年6月1日~同年6月15日(第2回入院)診療経過一覧表における平成11年6月1日~同年6月15日の欄に記- 66 -載の事実参照ク平成11年6月30日(内科外来受診:IFN投与開始1か月後)診療経過一覧表における平成11年6月30日の欄に記載の事実参照ケ平成11年7月28日(内科外来受診:IFN投与開始2か月後)診療経過一覧表における平成11年7月28日の欄に記載の事実参照コ平成11年8月3日(内科外来受診)診療経過一覧表における平成11年8月3日の欄に記載の事実参照サ平成11年8月6日(内科外来受診)診療経過一覧表における平成11年8月6日の欄に記載の事実参照シ平成11年8月13日(内科外来受診:IFN減量)診療経過一覧表における平成11年8月13日の欄に記載の事実参照ス平成11年8月25日(内科外来受診: る平成11年8月6日の欄に記載の事実参照シ平成11年8月13日(内科外来受診:IFN減量)診療経過一覧表における平成11年8月13日の欄に記載の事実参照ス平成11年8月25日(内科外来受診:IFN投与開始3か月後)診療経過一覧表における平成11年8月25日の欄に記載の事実参照セ平成11年9月22日(内科外来受診:IFN投与開始4か月後)診療経過一覧表における平成11年9月22日の欄に記載の事実参照ソ平成11年9月29日(大腸造影検査)診療経過一覧表における平成11年9月29日の欄に記載の事実参照タ平成11年10月13日(内科外来受診:IFN中止)診療経過一覧表における平成11年10月13日の欄に記載の事実参照チ平成11年10月22日(内科外来受診)診療経過一覧表における平成11年10月22日の欄に記載の事実参照ツ平成11年11月5日(内科外来受診:IFN中止1か月後)診療経過一覧表における平成11年11月5日の欄に記載の事実参照テ平成11年12月17日(内科外来受診:IFN中止2か月後)診療経過一覧表における平成11年12月17日の欄に記載の事実参照ト平成12年1月28日(内科外来受診:IFN中止3か月後)- 67 -診療経過一覧表における平成12年1月28日の欄に記載の事実参照f医師は,診察毎に亡aに対して問診を行い,その身体状態だけでなく精神状態をも慎重に観察し,また亡a自身から相談を受けていたものの,亡aには希死念慮,自殺企図は認められなかった。 また,亡aに対しては再三に渡って心身の変調が生じた場合には,随時報告するよう指導していたが,この日も亡aから主治医や看護師に対して何かしらの対処が必要なほどの具体的かつ自発的な報告はなく(不眠,不),安,焦燥の訴えはなく,しかも精神科受診(参加人病院の受 報告するよう指導していたが,この日も亡aから主治医や看護師に対して何かしらの対処が必要なほどの具体的かつ自発的な報告はなく(不眠,不),安,焦燥の訴えはなく,しかも精神科受診(参加人病院の受診)の事実亡aの自殺未遂の事実さえ亡aから一切報告されなかった。 f医師は,亡aに対しては再三家族同伴での受診を薦めたが,亡a自身が原告ら家族に伝えなかったのか,伝えたものの原告らが同伴をしなかったのかは被告の知るところではないが,結局家族同伴での受診は一度も実現しなかった。また,f医師が直接に原告ら亡aの家族を被告病院に呼びださなければならないような重大な事象(希死念慮や自殺企図)などは認められなかった。 仮にこの時点で,f医師が亡aの希死念慮や自殺企図を認めた場合には,被告病院に精神科がない以上,他院の精神科へ紹介する等して亡aが精神科を受診するよう図り,その治療を専門家に委ねる事ができたが,現実には亡aには希死念慮や自殺企図が認められなかった以上,家族同伴での被告病院の受診や精神科受診の勧奨ができるのみであった。 ナその他原告らは,亡aがIFN治療の副作用に関して原告ら又は友人ら(キリスト教会の信者達)に詳細に話していなかったことをもって,被告病院が亡aに対してIFN治療の副作用に関する説明を怠っていたと主張する。 しかし,被告は,被告病院のf医師が,亡aに対するC型慢性肝炎治療を通して亡aを診察等した際に,正に実際に体験した事実(亡aに対して- 68 -IFN治療の副作用に関する説明を行った)を診療経過として主張しているのであり,原告らの間接的,飛躍的な主張より遙かに信憑性が高いことは明らかである。 亡aと原告らとの間には大きなコミュニケーション不足があったことから,被告病院の亡aに対するIFN治療の副作用に関する説明の内容が, 間接的,飛躍的な主張より遙かに信憑性が高いことは明らかである。 亡aと原告らとの間には大きなコミュニケーション不足があったことから,被告病院の亡aに対するIFN治療の副作用に関する説明の内容が,亡aから原告らに伝わらなかったことは明らかである(後に,亡aが,野菜包丁で自らの手首を切る,ベルトで自らの首を絞めるという自殺未遂を行ったにも拘わらず,原告bは,これに関して亡a自身に何ら聞かず,その詳細を確認する等の行為を行わなかったことからも,原告らと亡aとの間にはコミュニケーションが隔絶していたのは明らかである。 )また,自己がC型慢性肝炎に罹患していたこと,これに対してIFN療法を希望し,これを受けていたこと,この治療に伴う具体的な副作用等は,一般的に極めて個人的な事柄なのであって,これらの事柄に関して,亡aが友人ら(キリスト教会の信者達)に詳細に話す可能性は極めて低いものであって,これらの事柄を亡aが友人ら(キリスト教会の信者達)に詳細に話していなかった事実をもって,被告病院が亡aに対してIFN治療の副作用に関する説明を怠っていた根拠とするのは,極めて不自然である。 したがって,被告病院が,亡aに対してIFN治療の副作用に関する説明を行っていたことは明らかであって,原告らの主張は単に被告を論難するものに過ぎない。 ニ 結論 以上のように,被告病院は,亡aに対するインターフェロン治療の副作用に関する説明を尽くしており,現に亡aは,平成11年6月1日,インターフェロン治療のための第2回目の入院の際,看護データベースの作成時に「心配なことはありますか」と問いに対して「副作用」と答え,看護師の問いかけに対し「注射の副作用が心配です」と答えたこと,同入院。 - 69 -後,通院治療が始まってまもなくの平成11年7月から8月ころ,原告bに対 すか」と問いに対して「副作用」と答え,看護師の問いかけに対し「注射の副作用が心配です」と答えたこと,同入院。 - 69 -後,通院治療が始まってまもなくの平成11年7月から8月ころ,原告bに対し「うつ」のようなものになったら困るなぁと話していたことは,,亡aに対するIFN治療の副作用に関する説明が十分尽くされていたことの証左である。 以上に鑑みれば,被告病院においては,亡aに対する治療,処置等の経過に鑑み,また亡a自身の身体的,精神的状態に鑑み,適時,適切にインターフェロン治療の副作用に関する説明,すなわち副作用自体に関する説明,及びその副作用への対処に関する説明(例えば,何か変調を感じた時あるいは新たな副作用の発現を自覚した際には速やかに担当医または看護師に報告すべきこと,定時の診察日以外でも要望に応じ随時面談や診察する用意があること,家族がこれらの異常に気がついた際には同様に報告すべきである事を家族に伝えるべきこと等)を行っており,本件においては,被告に亡aに対するインターフェロン治療の副作用に関する説明において過失はない。 家族に対するインターフェロン治療等に関する説明について平成10年6月11日(内科外来受診)( )1診療経過一覧表における平成10年6月11日の欄に記載の事実参照超音波検査終了後,亡aに対してC型慢性肝炎およびIFN療法に関する3冊のパンフレットを手渡し,本人はもちろんのこと家族にも熟読し理解するように指導した。 そして,IFNの副作用についても,亡aに対してパンフレットの内容を示しながら口頭で説明した(本件副作用説明。 「」)亡aの家族と一緒に来院して貰えれば,以上のような(本件副作用説「明」等を含む)IFN治療に関する説明を行う旨も伝えた。 そして,原告bは,少なくともC型肝炎に関するパ 本件副作用説明。 「」)亡aの家族と一緒に来院して貰えれば,以上のような(本件副作用説「明」等を含む)IFN治療に関する説明を行う旨も伝えた。 そして,原告bは,少なくともC型肝炎に関するパンフレット(乙A6)を読んでおり,そこには「・・・精神症状・・・など,命にかかわってく,- 70 -るかもしれない・・・副作用「・・・うつ病・・・これは一番問題にな」,,る副作用・・・」という記載があって,原告bは,これらの副作用に関する記述も読んでおり,IFN治療においてうつ病という副作用があることを,当時から十分に認識していた。 平成10年8月26日(内科外来受診)( )2診療経過一覧表における平成10年8月26日の欄に記載の事実参照平成10年10月16日(内科外来受診)( )3診療経過一覧表における平成10年10月16日の欄に記載の事実参照平成11年4月7日(内科外来受診)( )4診療経過一覧表における平成11年4月7日の欄に記載の事実参照これまで,繰り返し亡aに対して「本件副作用説明」について言及し,「一度家族同伴で受診して頂き,一緒にIFN治療に関する説明を聞いて欲しい」と提案してきたが,亡aの家族は来院しなかった。 。 平成11年5月12日(内科外来受診)( )5診療経過一覧表における平成11年5月12日の欄に記載の事実参照平成11年6月1日~同年6月15日(第2回入院)( )6診療経過一覧表における平成11年6月1日~同年6月15日の欄に記載の事実参照亡aに対して,IFN投与開始後に何か体調や気分の異常あるいは副作用の発現を自覚した際は,速やかに担当医または看護師に報告するように説明した。これ以前にも,亡aに対しては,家族がこれらの異常に気がついた際には同様に報告すべきである事を家族に伝えるように説明し 作用の発現を自覚した際は,速やかに担当医または看護師に報告するように説明した。これ以前にも,亡aに対しては,家族がこれらの異常に気がついた際には同様に報告すべきである事を家族に伝えるように説明していた。 この点,原告らは,f医師は,亡aの家族である原告らに対して直接連絡を取るべきであったと主張する。 しかし,亡aの家族である原告らへの説明については,従前から何度も家族同伴の受診を薦め,既に手渡したパンフレットを原告らが熟読,理解する- 71 -ようにも亡aに対して指導していたこと(現に,原告bは,被告病院が亡aに対して渡したパンフレットを読み,IFN治療においてうつ病という副作用があることを当時から認識していた,亡a自身から,何度も「家族もイ)ンターフェロン治療について理解,同意している」旨の申し出があったこと,医師と患者は,その間の信頼関係が非常に重要であり,医師の独断で,患者自身を介さずにその家族を呼び出すことは,患者本人との信頼関係に関わること,そもそも,C型肝炎自体が,感染の危険のある疾患であって,患者の家族等,近しい関係の人にも秘密する患者も多い(極めて個人的な事柄である)ため,亡aがその家族である原告らを同伴しないのは何らかの理由があるのであろうこと,また「何かよくない診療情報があるのではないか?」,と亡aに猜疑心や不安を与えかねないものと判断し,f医師は,亡aを飛び越えて,原告らに対して直接連絡を取らなかったものである。 なお,本IFNの添付文書には「警告・・・自殺企図が現れることがあるので,使用上の注意に十分留意し,患者に対し副作用発現の可能性について十分説明する」との記載もある(甲B1。 。 )平成11年10月22日(内科外来受診)( )7診療経過一覧表における平成11年10月22日の欄に記載の事実参照 者に対し副作用発現の可能性について十分説明する」との記載もある(甲B1。 。 )平成11年10月22日(内科外来受診)( )7診療経過一覧表における平成11年10月22日の欄に記載の事実参照平成11年11月5日(内科外来受診:IFN中止1か月後)( )8診療経過一覧表における平成11年11月5日の欄に記載の事実参照平成11年12月17日(内科外来受診)( )9診療経過一覧表における平成11年12月17日の欄に記載の事実参照f医師は,これまで亡aに対しては自己の心身に何かしらの変調を感じた時,または新たな副作用の発現を自覚した時は,速やかに主治医または看護師に報告するように再三説明しており,さらに定時の診察日以外でも要望に応じて随時面談,診察をする用意があることを伝えていた。 この日,f医師が診察した際には,亡aは身体症状の変化や増悪を訴えず,- 72 -またその様子も窺えず,逆に「安定」しており「まあまあねむれる」旨話,していた。 この際,亡aに希死念慮など認められなかった。 平成12年1月28日(内科外来受診:IFN中止3か月後)( ) 診療経過一覧表における平成12年1月28日の欄に記載の事実参照f医師は,診察毎に亡aに対して問診を行い,その身体状態だけでなく精神状態をも慎重に観察し,また亡a自身から相談を受けていたものの,亡aには希死念慮,自殺企図は認められなかった。 また,亡aに対しては再三に渡って心身の変調が生じた場合には,随時報告するよう指導していたが,この日も亡aから主治医や看護師に対して何かしらの対処が必要なほどの具体的かつ自発的な報告はなく(不眠,不安,焦燥の訴えはなく,しかも精神科受診(参加人病院の受診)の事実,亡aの)自殺未遂の事実さえ亡aから一切報告されなかった。 f医師は,亡aに対しては再 ほどの具体的かつ自発的な報告はなく(不眠,不安,焦燥の訴えはなく,しかも精神科受診(参加人病院の受診)の事実,亡aの)自殺未遂の事実さえ亡aから一切報告されなかった。 f医師は,亡aに対しては再三家族同伴での受診を薦めたが,亡a自身が原告ら家族に伝えなかったのか,伝えたものの原告らが同伴をしなかったのかは被告の知るところではないが,結局家族同伴での受診は一度も実現しなかった。また,f医師が直接に原告ら亡aの家族を被告病院に呼びださなければならないような重大な事象(希死念慮や自殺企図)などは認められなかった。 仮にこの時点で,f医師が亡aの希死念慮や自殺企図を認めた場合には,被告病院に精神科がない以上,他院の精神科へ紹介する等して亡aが精神科を受診するよう図り,その治療を専門家に委ねることができたが,現実には亡aには希死念慮や自殺企図が認められなかった以上,家族同伴での被告病院の受診や精神科受診の勧奨ができるのみであった。 結論 ( ) 以上のように,被告病院は,亡aに対してIFN治療開始前に同治療に関- 73 -するパンフレットを手渡し,口頭にて何回にも渡ってIFN治療全般やその副作用(うつ,自殺企図等)に関して十分説明するとともに,その家族にもパンフレットを熟読の上,IFN治療全般及びその副作用を理解して貰えるように指示(現に,原告bは,被告病院が亡aに対して渡したパンフレットを読み,IFN治療においてうつ病という副作用があることを当時から認識していた,亡aの家族も一緒に来院して貰えれば,これらを説明する旨も)伝えたもので,これに対し亡aから家族も同意したのでIFN治療を開始して欲しい旨の回答を得,さらには平成11年10月22日,11月5日には次回受診時には家族を同伴して欲しい旨指示したにもかかわらず,家族は来院しなか に対し亡aから家族も同意したのでIFN治療を開始して欲しい旨の回答を得,さらには平成11年10月22日,11月5日には次回受診時には家族を同伴して欲しい旨指示したにもかかわらず,家族は来院しなかったのである。被告病院は亡aの家族に対するIFN治療全般及びその副作用等の説明に関して十分にその義務を果たしたもので(亡aの家族である原告らに直接連絡を取らなかったことに関しては,前述のとおり,問題はない,仮に亡aの家族がこれらIFN治療全般及びその副作用等に関)して十分な認識がなかったとすれば,それは正に亡aとその家族の間のコミュニケーション不足が原因なのである。 以上に鑑みれば,被告病院においては,亡aに対する治療,処置等の経過に鑑み,また亡a自身の身体的,精神的状態に鑑み,適時,適切に亡aの家族に対してIFN治療全般及びその副作用等に関する説明を行い,また行おうとしたのであって,本件においては,被告に亡aの家族に対するインターフェロン治療全般及びその副作用等に関する説明において過失はない。 - 74 -第2[原告・被告] 被告病院の医師がインターフェロンを適切に投与しなかった過失の有無(原告らの主張) インターフェロンの副作用と,経過観察義務及び治療中止義務医師がインターフェロン治療を行う際には,その副作用として,重篤なうつ状態,自殺企図をはじめ,精神神経症状が発現する可能性があるため,その途中経過においてインターフェロンの効果が上がっているかどうかを検査し,また副作用が発現していないか不断に経過観察することにより,効果が認められない場合あるいは異常が発生した場合には,直ちに減量・中止する注意義務がある。 被告医師の投与量(被告医師の経過観察義務及び治療中止義務違反)被告病院のf医師は,亡aに対し,漫然とイントロンA100 場合あるいは異常が発生した場合には,直ちに減量・中止する注意義務がある。 被告医師の投与量(被告医師の経過観察義務及び治療中止義務違反)被告病院のf医師は,亡aに対し,漫然とイントロンA1000万単位を投与し続け,その効果について何ら検査を行わず,適切な時期に効果を判定する機会を逸した。 また亡aにインターフェロンの副作用による精神神経症状の副作用が発生していたにもかかわらず,減量・中止のタイミングが遅れた。 平成11年8月ころ,亡aの性格はインターフェロン治療開始前とがらりと変わった(自宅のローンを完済したばかりにもかかわらず,突然家がみすぼらしいので新築すると言いだし,本を買い込んできた。また食欲不振,発熱,体のだるさを訴えるようになったり,人を避けるようになった。また「お金がない。私が全部使ってしまった。私が悪い」とbにこぼしていた等。 。 )そこで亡aは,原告bに対し「耐えられない」と言った上で,自分から医,師に対してインターフェロンの減量を要求し,ようやく減量してもらった。 亡aはインターフェロン減量後も,精神神経症状がより強くなり(家の中で- 75 -も始終暗い顔をするようになり,他人の言葉に耳を貸さなくなり,顔つきもきつくなった。何でも自分のことに置き換えてしまい堂々巡りをするばかりだった。9月下旬ころになると,仕事に対する不安を原告らにもらすようになり,「部下の指導ができない」等,何につけても否定的な考え方をして悩むよう。 になった。また自動車の運転を不安がるようになった等。そこで平成11年)10月13日に亡aの側からインターフェロンの中止を要求し,ようやく中止してもらった。この点,被告は,医師がインターフェロン投与を中止した方がよいと考える旨説明し,亡aがそれに同意した旨主張するが,カルテ上には医師がそのよ インターフェロンの中止を要求し,ようやく中止してもらった。この点,被告は,医師がインターフェロン投与を中止した方がよいと考える旨説明し,亡aがそれに同意した旨主張するが,カルテ上には医師がそのような説明をした記載はなく,かえって「中止希望」と記載されているのみであり,インターフェロン治療の副作用に耐えきれなくなった亡aから中止を申し出たことは明らかである。 このように,インターフェロンを減量ないし中止するほどの副作用が亡aに発現していたのであるから,その状況については以前よりもきめ細やかな対処をすることが医師に与えられた職責である。遅くとも中止の時点で,亡aの精神・神経症状はかなり悪化した状態であり,f医師がそれに気づかなかったはずはない。 なお,被告は,仮に亡aがインターフェロンの副作用によるうつ状態またはうつ病を発症していたとしても,精神科を専門とする参加人病院の専門医をもってしてもその診断が困難であったことに鑑みれば,精神科を専門としない被告病院のf医師が亡aの精神状態に関する診断が困難であったことは,医療水準の観点から極めて自然なことである,と主張する。 しかし,インターフェロンの副作用のうち,精神神経症状が抑うつ状態,うつ病に限られないことは後述の通りであり,被告の主張には理由がない。 まとめ以上から被告には,亡aに対するインターフェロン治療の途中経過においてインターフェロンの効果が上がっているかどうかを検査し,また副作用が発現- 76 -していないか不断に経過観察する注意義務及び,亡aにうつ状態等の精神神経症状の副作用が発生したにもかかわらず直ちに減量・中止する注意義務を怠ったという過失がある。 (被告の主張) インターフェロン治療を適切に実施したこと本件において,亡aが罹患していたC型慢性肝炎は,これに対する治 したにもかかわらず直ちに減量・中止する注意義務を怠ったという過失がある。 (被告の主張) インターフェロン治療を適切に実施したこと本件において,亡aが罹患していたC型慢性肝炎は,これに対する治療を( )1行わないまま自然経過にまかせていた場合には,自然軽快することは稀であり,高率(62.9%)で憎悪が認められ,肝硬変に進展し,最終的には肝癌の発生が危惧される疾患である。このようなC型慢性肝炎の治療においては,C型肝炎ウイルス(HCV)の排除を目的とした抗ウイルス療法(IFN・インターフェロン治療)が最も効果的であり,本件当時,他の代替療法(強力ミノファーゲン注射等)ではC型肝炎ウイルスの排除は困難でありC型慢性肝炎の進行を阻止することは極めて難しかった。 また,このIFN治療においては,患者の年齢が比較的若いうちに,しかも肝組織の線維化が伸展しないうちに実施した方がより効果が高いことが知られていた。 したがって,いたずらに長期間経過観察をしたり他の代替療法によるのではなく,患者本人の同意があり,その他に格別IFN治療を自粛しなければならない理由がない場合には,比較的早めにIFN治療を導入した方が長期的な予後は良好であり,患者の利益となるのである。 本件においても,亡aは自己に対するIFN治療に同意しており(前述のとおり,亡aは,C型肝炎から肝硬変,肝細胞癌に移行していくことが大変怖く,どうしても治したいために,治療を続ける旨,友人らに述べており,亡aがIFN治療に積極的に同意していたことは明らかである,その他I)FN治療を自粛すべき理由がなかったのであるから,被告病院が,亡aに対- 77 -して,その同意に基づきIFN治療を施行したことは,医学的に適切な治療(行為)であった。 そもそも,亡aが感染しているC型肝炎ウィルスがグ 由がなかったのであるから,被告病院が,亡aに対- 77 -して,その同意に基づきIFN治療を施行したことは,医学的に適切な治療(行為)であった。 そもそも,亡aが感染しているC型肝炎ウィルスがグループ2型で,その( )2ウイルス量(分岐DNAプローブ法で0.5Meq/ml以下)が比較的少なかったことから,亡aにIFN治療を施行した場合には,C型肝炎ウィルスを排除しうる可能性(完全著効率)は70%程度と推定された。 しかし,上記確率(70%程度)であっても必ずしも十分とは言えず,実際にはグループ2型で低ウイルス量の患者にIFNを十分量投与した場合であっても,ウィルスの完全排除に失敗することも,治療上経験するところである。また,IFN治療の成否は,IFNの総投与量に関連することが良く知られており,高用量で長期間投与することが著効率の向上に寄与していることからも,IFN治療初期に,十分量のIFN投与を行い,治療開始後なるべく早い段階(1~2週以内)で血中ウイルスを陰性化させることが肝要である。 したがって,グループ2型で低ウイルス量の患者に対しても,高用量でIFN投与が開始されることには,相当の合理性があり,IFN治療が高額かつ長期にわたる治療方法であり,総投与量の不足,治療開始初期の抗ウイルス作用の不足等から,効果不十分となって,IFNの再投与を余儀なくされることが患者にとっても極めて不利益である事に鑑みれば,グループ2型で低ウイルス量の患者に対しても,高用量でIFN投与を開始することは,医学的に適切な投与方法である。 なお,高用量でIFN治療を開始した場合であっても,患者の状態を適宜観察しつつ必要に応じてIFNの減量,中止を行えばよいのであって,特にこのような投与方法を避ける理由はない。現に,グループ2型で低ウイルス量の患者である 療を開始した場合であっても,患者の状態を適宜観察しつつ必要に応じてIFNの減量,中止を行えばよいのであって,特にこのような投与方法を避ける理由はない。現に,グループ2型で低ウイルス量の患者であることを理由に,IFN投与開始時から低用量での投与を義務付けるような基準,規制等はなく,このような内容のコンセンサス(共通概- 78 -念)も存在しない。亡aに対して投与されたIFN(イントロンA)の医薬品添付文書中にも,ウイルスのタイプ,量,患者の体重等によって投与開始時からのIFN投与量を低く抑えなければならない旨の記載はなく,1回の投与量は600万単位~1000万単位とされている。 したがって,IFN投与開始時に亡aに投与された1回1000万単位という用量(後に亡aの症状に対応して600万単位に減量)は,当該薬剤の添付文書に合致する,医学的な合理性を有する投与量であって,このような被告の行為は,医学的に適切な治療(行為)であった。 被告病院は,亡aに対するIFNの治療効果について,肝障害の程度を最( )3も良く反映するGPT(正常値5~40)を定期的に測定し,その治療効果を確認していたが,IFN治療開始前は殆どの検査において40以上であったものが,同治療開始後は40未満となり,特に治療開始1か月後(平成11年6月30日以降)は総ての時点において20以下となり,良好な治療効果が得られていた(このことは亡aに対しても診察時毎にその前回の検査値を口頭で説明し,IFNの治療効果が上がっており良好な経過であることを説明していた。 )以上の結果からも,本件における亡aに対するIFN治療は有効だったのであって,被告には亡aに対するインターフェロン治療の実施等に関する措置において過失はない。 インターフェロン治療を適切に減量,中止したこと被告病 件における亡aに対するIFN治療は有効だったのであって,被告には亡aに対するインターフェロン治療の実施等に関する措置において過失はない。 インターフェロン治療を適切に減量,中止したこと被告病院は,亡aに対するインターフェロン治療において,適時,適切な方法でインターフェロンの減量,中止を行っている。 平成11年8月13日,亡aの担当医であったf医師は,亡aの胃腸症状,食欲不振等の症状に鑑みて,IFN減量を提案し,亡aとの間で合意が形成されたため,亡aに対するIFN投与は継続するものの,初期投与量(1000万単位)から減量(600万単位)することとなった。これより前に,亡aか- 79 -らf医師に対してIFNの減量またはその投与中止が提案されたことはなく,実際その後も亡aは週3回通院し,自らの意思で能動的に通院しIFN治療を継続していたのであって,原告らの主張するとおりIFN治療が「耐えられない」とまで亡aが思っていたのであれば,このように自らの意思で能動的に通院しIFN治療を継続することなどあり得ないはずである(前述のとおり,亡aは,C型肝炎から肝硬変,肝細胞癌に移行していくことが大変怖く,どうしても治したいために,治療を続ける旨,友人らに述べており,亡aがIFN治療に積極的に同意していたことは明らかである。 )また,同年10月13日,IFN治療の中止は,亡aから「心配事が湧いてくる」との訴えがあり,神経質になっている様子がうかがえたため,f医師。 がその投与を中止した方が良いと考える旨説明し,亡aもそれに同意し「中止希望」だったため,両者でIFN投与の中止という合意が形成され中止された。 決して本人の一方的希望のみで中止としたわけではなく,今後投与を継続した場合には精神・神経症状が顕在化,若しくは悪化する可能性をも懸念したf医 両者でIFN投与の中止という合意が形成され中止された。 決して本人の一方的希望のみで中止としたわけではなく,今後投与を継続した場合には精神・神経症状が顕在化,若しくは悪化する可能性をも懸念したf医師の判断に基づいていた。 このように,f医師は,亡aに胃腸症状や食欲不振が見られ事からIFNの投与量を減量し(減量により症状は改善した),さらに不眠と不安感(心配ご「とがわいてくる)の訴えがあった事からその投与を中止(中止により症状は」改善した)しており,以上は亡aの同意の下で行われているのであって,これらの処置は適時,適切な方法になされたものである。 以上から,被告には,本件において亡aに対するインターフェロン治療の減量,中止に関する措置において過失はない。 インターフェロンの副作用に対して慎重に対処していたこと被告病院は,亡aに対するインターフェロン治療の副作用に対して,( )1慎重に対処していた。 被告病院の亡aに対するインターフェロン治療の副作用に関する説明は,( )2- 80 -上記争点第1の被告の主張欄の1のと同じである。 ( )2亡aに対するインターフェロン治療の副作用とも考えられる症状に関して,( )3被告病院は以下のとおり慎重に対処したものである。 ア平成11年6月30日(内科外来受診:IFN投与開始1か月後)診療経過一覧表における平成11年6月30日の欄に記載の事実参照イ平成11年7月28日(内科外来受診:IFN投与開始2か月後)診療経過一覧表における平成11年7月28日の欄に記載の事実参照ウ平成11年8月3日(内科外来受診)診療経過一覧表における平成11年8月3日の欄に記載の事実参照エ平成11年8月6日(内科外来受診)診療経過一覧表における平成11年8月6日の欄に記載の事実参照オ平成11年8月 (内科外来受診)診療経過一覧表における平成11年8月3日の欄に記載の事実参照エ平成11年8月6日(内科外来受診)診療経過一覧表における平成11年8月6日の欄に記載の事実参照オ平成11年8月13日(内科外来受診:IFN減量)診療経過一覧表における平成11年8月13日の欄に記載の事実参照カ平成11年8月25日(内科外来受診:IFN投与開始3か月後)診療経過一覧表における平成11年8月25日の欄に記載の事実参照キ平成11年9月22日(内科外来受診:IFN投与開始4か月後)診療経過一覧表における平成11年9月22日の欄に記載の事実参照ク平成11年9月29日(大腸造影検査)診療経過一覧表における平成11年9月29日の欄に記載の事実参照ケ平成11年10月13日(内科外来受診:IFN中止)診療経過一覧表における平成11年10月13日の欄に記載の事実参照コ平成11年10月22日(内科外来受診)診療経過一覧表における平成11年10月22日の欄に記載の事実参照サ平成11年11月5日(内科外来受診:IFN中止1か月後)診療経過一覧表における平成11年11月5日の欄に記載の事実参照シ平成11年12月17日(内科外来受診:IFN中止2か月後)- 81 -診療経過一覧表における平成11年12月17日の欄に記載の事実参照ス平成12年1月28日(内科外来受診:IFN中止3か月後)診療経過一覧表における平成12年1月28日の欄に記載の事実参照亡aからは不眠,不安,焦燥の訴えはなく,希死念慮も認められず,自殺未遂の事実,精神科受診の事実等に関する報告も一切なかった。 受診に際し家族の同伴もなく,被告病院の診療範囲においては,亡aの自殺を予見し得る情報はなかった。 平成11年12月11日及び平成12年1月15日の2度にわたる参加人病院の精神 報告も一切なかった。 受診に際し家族の同伴もなく,被告病院の診療範囲においては,亡aの自殺を予見し得る情報はなかった。 平成11年12月11日及び平成12年1月15日の2度にわたる参加人病院の精神科医師の診察をもってしても,亡aは「うつ状態,うつ病」という診断はなされておらず,参加人病院の精神科医師は「インターフェロンによる精神症状か否かは定かではない」としているのであって,亡aがIFNの副作用によるうつ状態又はうつ病を発症していたとの確定診断もないままに,被告病院が亡aのうつ状態又はうつ病を見逃したという原告らの主張は極めて不当である。仮に亡aがIFNの副作用によるうつ状態又はうつ病を発症していたとしても,精神科を専門とする参加人病院の専門医をもってしてもその診断が困難であったことに鑑みれば,精神科を専門としない被告病院のf医師が亡aの精神状態に関する診断が困難であったことは,医療水準の観点からも極めて自然なことである。 結論 ( )4以上のように,被告病院は,亡aに対してIFN治療の副作用,すなわち副作用自体に関する説明,及びその副作用への対処に関する説明(例えば,何か変調を感じた時あるいは新たな副作用の発現を自覚した際には速やかに担当医または看護師に報告すべきこと,定時の診察日以外でも要望に応じ随時面談や診察する用意があること,家族がこれらの異常に気がついた際には同様に報告すべきである事を家族に伝えべきこと等)を十分に行っており,また,IFN治療の副作用とも考えられる症状が亡aに現れて以降は,慎重- 82 -に問診等を行い,亡aの同意の下,インターフェロンの投与量を減量し(減量により症状は改善した),不眠と不安感(「心配ごとがわいてくる」)の訴えがあった事からその投与を中止(中止により症状は改善した)するとともに,症状に対 意の下,インターフェロンの投与量を減量し(減量により症状は改善した),不眠と不安感(「心配ごとがわいてくる」)の訴えがあった事からその投与を中止(中止により症状は改善した)するとともに,症状に対しては適切に薬剤(感冒薬,整腸剤,胃薬,睡眠導入剤,抗不安剤等)を処方し,さらに家族同伴の受診,精神科受診の勧奨を行う等,これらの被告病院の処置は適時,適切に行われたものである。 以上に鑑みれば,被告病院においては,亡aに対する治療,処置等の経過に鑑み,また亡a自身の身体的,精神的症状に鑑み,慎重かつ適時,適切にIFN治療の副作用に対する処置等を行っており,本件において,被告には,亡aに対するIFN治療の副作用に対する対処において過失はない。 - 83 -第3[原告・被告] 被告病院の医師の療養指導義務違反ないし転医勧奨義務違反の有無(原告らの主張) 精神科医(インターフェロン治療の主治医)のすべき療養指導義務ないし転医勧奨義務の程度インターフェロン投与中の患者に,精神的症状を伴う副作用(これは患者に希死念慮や自殺企図が認められた場合には限らない)が発現した場合には,インターフェロン治療の主治医としてはインターフェロン投与を中止することはもちろん,それにとどまらず,患者にそれ以後も自殺企図等の可能性があることから,患者の精神状態には引き続き注意を払う必要がある。具体的には,医師が所属する病院に入院させて医師の目の届く範囲内で経過を観察するか,万一入院が困難で通院治療を行わざるを得ない場合にも,患者の家族に対して上記可能性等についての事情を十分に説明し,異常が認められた場合には速やかに対処するような体制を整えておく必要がある。または当該医師ないし病院自身で適切な処置が困難な場合には,医師が適切な方法により積極的に精神・神経科等の適切な に説明し,異常が認められた場合には速やかに対処するような体制を整えておく必要がある。または当該医師ないし病院自身で適切な処置が困難な場合には,医師が適切な方法により積極的に精神・神経科等の適切な診断を受けられるよう手配する義務がある。 なお,インターフェロンの副作用としては,生理的(肉体的)なストレスによる全身倦怠感,食欲不振等と,心理的ストレスによる不安感,焦燥感ひいては抑うつ状態等に分けて考えられるところ,インターフェロンの場合にはまずそれ独特の激しい副作用により生理的ストレスが誘発され,これが長期間繰り返されることによる心理的ストレスの増大により抑うつ性の増悪を引き起こされると考えられる。従って,インターフェロン治療を中止した後とはいっても,医師としては特に後者の心理的ストレスによる副作用については,その影響が完全になくなったと判断されるまで患者の精神状態には十分な注意を払い,万- 84 -一の結果が生じないように務める注意義務がある。 本件における義務履行の程度が不十分であったことしかるにf医師は,亡aからの要求により最終的にインターフェロン投与を中止はしたが,それ以後亡aの精神状態に格別の注意を払うことなく,亡aをe病院に入院させることもなく,約2週間に1度(後には約1か月に1度)の通院をさせたにとどまった。 次に亡aに対しては,f医師から何の具体的理由も示されないままの突然精神科受診の提案がなされ,また原告ら家族に対しても別途何らの説明がなかったことから,亡a及び原告らは,被告病院が自らの責任を放棄していると感じた。精神・神経症状の少なくともおそれのある患者自身に対してストレートに精神科受診を勧め,家族に対して何らの説明も行わなかったf医師の行為をもって,精神科受診の勧奨を尽くしたとは到底言えない。 さらに,インター 経症状の少なくともおそれのある患者自身に対してストレートに精神科受診を勧め,家族に対して何らの説明も行わなかったf医師の行為をもって,精神科受診の勧奨を尽くしたとは到底言えない。 さらに,インターフェロン治療を中止した時点で,亡aには重大な副作用が生じていたのであるから(少なくともインターフェロン治療を中止するほどの判断をしたのであるから,f医師は,原告ら家族に対しても亡aを介してだ)けではなく直接電話等により連絡をとって,亡aの生活状況について事情聴取をした上で,今後家族として注意すべきことについての指導をなすべきであったが,そのようなことは一切なされなかった。 以上より,被告には,亡a及び原告ら家族に対する,療養指導義務及び転医勧奨義務を怠った過失がある。 (被告の主張) 精神科医の受診を勧めたが,亡aが精神科医の受診を拒否したこと平成11年10月22日(内科外来受診)( )1診療経過一覧表における平成11年10月22日の欄に記載の事実参照平成11年11月5日(内科外来受診:IFN中止1か月後)( )2- 85 -診療経過一覧表における平成11年11月5日の欄に記載の事実参照以上のように,被告病院が亡aに対して複数回にわたり適時,適切な方法( )3で精神科受診を勧めたにもかかわらず,亡a自身が精神科受診を拒否したものである。 IFN治療中に,患者に何らかの精神的症状を伴う副作用が認められた場合には,被告病院のように自ら精神科を持たない医療機関においては,最終的には専門家である精神科の受診を勧める等,専門家に治療等を委ねることが患者本人の利益となるのであるから,被告病院が亡aに対して精神科の受診を勧めたことは医学的に適切である。 亡aには希死念慮や自殺企図は認められなかったこと平成11年10月22日(内科外来受診) が患者本人の利益となるのであるから,被告病院が亡aに対して精神科の受診を勧めたことは医学的に適切である。 亡aには希死念慮や自殺企図は認められなかったこと平成11年10月22日(内科外来受診)( )1診療経過一覧表における平成11年10月22日の欄に記載の事実参照平成11年11月5日(内科外来受診:IFN中止1か月後)( )2診療経過一覧表における平成11年11月5日の欄に記載の事実参照平成11年12月17日(内科外来受診:IFN中止2か月後)( )3診療経過一覧表における平成11年12月17日の欄に記載の事実参照平成12年1月28日(内科外来受診:IFN中止3か月後)( )4診療経過一覧表における平成12年1月28日の欄に記載の事実参照以上のように,被告病院の受診時において,亡aには自殺企図や希死念慮( )5は認められず,亡aの自殺未遂の事実,精神科受診の事実等に関する報告も一切なかったことから,被告病院の診療範囲においては,亡aの自殺を予見し得る情報はなかったものである。 平成11年12月11日及び平成12年1月15日の2度にわたる参加人病院の精神科医師の診察をもってしても,亡aは「うつ状態,うつ病」という診断はなされておらず,参加人病院の精神科医師は「インターフェロンによる精神症状か否かは定かではない」としているのであって,亡aがIFN- 86 -の副作用によるうつ状態又はうつ病を発症していたとの確定診断もないままに,被告病院が亡aのうつ状態又はうつ病を見逃したという原告らの主張は極めて不当である。仮に亡aがIFNの副作用によるうつ状態又はうつ病を発症していたとしても,精神科を専門とする参加人病院の専門医をもってしてもその診断が困難であったことに鑑みれば,精神科を専門としない被告病院のf医師が亡aの精神状態に 作用によるうつ状態又はうつ病を発症していたとしても,精神科を専門とする参加人病院の専門医をもってしてもその診断が困難であったことに鑑みれば,精神科を専門としない被告病院のf医師が亡aの精神状態に関する診断が困難であったことは,医療水準の観点からも極めて自然なことである。 なお,以上のように,亡aに希死念慮や自殺企図が認められなかったことから,本件当時,亡aを被告病院へ入院させる,または,被告病院への通院間隔を短くする必要はなく,かかる措置をとらなかった被告病院に過失はない。 また,患者に,希死念慮,自殺企図以外の何らかの精神的症状を伴う副作用が認められた場合には,被告病院のように自ら精神科を持たない医療機関においては,最終的には専門家である精神科の受診を勧める等,専門家に治療等を委ねることが患者本人の利益となるのであるから,被告病院が亡aに対して精神科の受診を勧めることで足りるのであって,この点に関しても,被告病院に過失はない。 適時,適切な療養指導が行われたこと前述のとおり,被告病院は,従前から,亡aに対してIFN治療の副作用,すなわち副作用自体に関する説明,及びその副作用への対処に関する説明(例えば,何か変調を感じた時あるいは新たな副作用の発現を自覚した際には速やかに担当医または看護師に報告すべきこと,定時の診察日以外でも要望に応じ随時面談や診察する用意があること,家族がこれらの異常に気がついた際には同様に報告すべきである事を家族に伝えべきこと等)を十分に行っており,これに基づき,IFN治療の副作用とも考えられる症状が亡aに現れて以降は,慎重に問診等を行い,亡aの同意の下,インターフェロンの投与量を減量し- 87 -(減量により症状は改善した,不眠と不安感(心配ごとがわいてくる)の)「」訴えがあった事からその投与を 降は,慎重に問診等を行い,亡aの同意の下,インターフェロンの投与量を減量し- 87 -(減量により症状は改善した,不眠と不安感(心配ごとがわいてくる)の)「」訴えがあった事からその投与を中止(中止により症状は改善した)するとともに,症状に対しては適切に薬剤(感冒薬,整腸剤,胃薬,睡眠導入剤,抗不安剤等)を処方し,さらに家族同伴の受診,精神科受診の勧奨を行う等,これらの被告病院の処置は適時,適切に行われたものである。 以上に鑑みれば,被告病院においては,亡aに対する治療,処置等の経過に鑑み,また亡a自身の身体的,精神的症状に鑑み,慎重かつ適時,適切に亡aに対して療養指導を行っており,また,被告病院が直接亡aに対する処置等を行っており,本件において,被告には,亡aに対する療養指導等に関して過失はない。 - 88 -第4[原告・被告] 被告病院の過失行為と亡aの死亡との間の因果関係の有無(原告らの主張) うつ病と自殺時期の関係うつ病の回復期では,良くなりつつある時期に何かのきっかけで突然病状の悪化が認められること等が指摘されており,またインターフェロン中止後もうつ状態が遷延する例が少なからず見られるので注意を要するとか,衝動的・突発的に自殺企図を行うもので,前兆が明確でなく危険であることも指摘されている。またインターフェロンの副作用としては,生理的(肉体的)なストレスによる全身倦怠感,食欲不振等と,心理的ストレスによる不安感,焦燥感ひいては抑うつ状態等に分けて考えられるところ,インターフェロンの場合にはまずそれ独特の激しい副作用により生理的ストレスが誘発され,これが長期間繰り返されることによる心理的ストレスの増大により抑うつ性の増悪を引き起こされることがある。亡aの自殺は,インターフェロン治療中止4か月後に発生したもので より生理的ストレスが誘発され,これが長期間繰り返されることによる心理的ストレスの増大により抑うつ性の増悪を引き起こされることがある。亡aの自殺は,インターフェロン治療中止4か月後に発生したものであるが,これはインターフェロン治療を行ったことと相当因果関係の範囲内にあるものというべきである。 また医師の説明義務については「IFN-α製剤の投与前には患者及び家,族に対する説明・指導が不可欠であり,事前にうつ状態,自殺企図等の可能性について十分理解させ,不眠,不安等が現れた場合には直ちに連絡するように注意を与えておく必要がある」との指摘がある。被告病院が亡aのインター。 フェロン治療前及び治療中を通して,少なくとも原告ら家族に対してはうつ状態や自殺企図等の副作用の説明を全く行っていなかったことから,原告らはそもそも亡aがインターフェロン治療を行うかどうか検討する機会を有することができず,また亡aに副作用や自殺企図が発現した際にも,原告らとしてはそれがインターフェロンによる副作用かどうかさえ判然としなかったためにどう- 89 -して良いのかがわからず,亡aに対して適切な処置をとることができなかったため(ただし原告らは自分たちで精一杯考えてできるだけの対処はしたものである,結局は亡aの自殺という結果が導かれたものであり,被告の行為(不)作為)と亡aの死亡との間に因果関係が認められることは明らかである。 統合失調症の疑いとの主張について被告は,参加人病院における診察等の結果,その疑われる診断としては,うつ病ではなく,統合失調症であったので,亡aにはインターフェロン治療に基づくうつ病が発生していなかったと主張する。 しかし,インターフェロンの副作用のうち,精神神経症状としては,抑うつ状態のみならず,不安焦燥状態,せん妄,錯乱,幻覚妄想,興 にはインターフェロン治療に基づくうつ病が発生していなかったと主張する。 しかし,インターフェロンの副作用のうち,精神神経症状としては,抑うつ状態のみならず,不安焦燥状態,せん妄,錯乱,幻覚妄想,興奮,躁状態も見られることは医薬品情報のみならず,各論文等でも指摘があるところである。 そして自殺の原因となる精神神経症状がうつ病に限られないことは明らかである。被告は,亡aが統合失調症の疑いがある(しかもこの主張は医師らに対する証拠調べ直前に提出された参加人医師の陳述書内で初めてなされたものである,すなわち亡aにうつ病が発生していなかったことをもって,原告の主張)が成り立たない旨主張するものであるが,そもそも亡aに統合失調症の疑いがあったことに疑問があるのみならず,仮に亡aに見られた精神神経症状がうつ病とは判断されないものであったとしても,それがインターフェロンの副作用であることを排斥する理由はなく,また亡aの自殺の原因となったことを排斥する理由もない。被告の主張には理由がない。 亡aの自殺当日の原告らの行動被告は,亡aの自殺当日に,原告らが亡aの自殺を防止するために必要な措置を全く執らなかったことが,亡aの自殺の原因であると主張する。 しかし,そもそも原告らは,亡aの精神神経症状がインターフェロンの副作用によるものであることを,亡aの自殺時まで全く認識することができなかったが,これは被告及び参加人の説明義務違反に基づくものである。 - 90 -被告は,原告らが亡aを,速やかに被告病院あるいは参加人病院に受診させるべきであったと主張するものであるが,原告らは,被告病院及び参加人病院から,亡aの現状(インターフェロンの副作用による精神神経症状)及びその対処法について何らの説明も受けておらず,かえって被告病院からは精神科受診をストレートに勧 が,原告らは,被告病院及び参加人病院から,亡aの現状(インターフェロンの副作用による精神神経症状)及びその対処法について何らの説明も受けておらず,かえって被告病院からは精神科受診をストレートに勧められたり,参加人病院も原告らの話を聞き置くにとどまり,次回診察の指示さえも出していなかったことから,両病院に対する信頼関係を失っていたのであって,原告らが亡aを両病院に受診させなかったことは原告らの責に帰すべきことがらではない。亡aの自殺当日の様子を原告らが適切に判断し,適切な措置を執るべきであったという被告の主張は誤っている。 (被告の主張) 亡aの希死念慮及び自殺企図の発現時期とインターフェロン治療の時期との関係本件において,亡aの希死念慮の発現(被告病院での診察の際には認められなかったものだが)は,インターフェロン開始後約5か月目(中止後1か月目,自殺企図発現(これも被告病院の知るところではなかったが)は,開始)),後8か月目(中止後4か月目,自殺は9か月目(中止後5か月目)であってインターフェロン投与を開始,減量,中止した時からかなりの期間が経過した後のことであり,これらと亡aの死亡の間には因果関係がない。 インターフェロンと自殺企図発現までの期間は,投与開始後4か月未満が全体の87.5%であり,投与開始後4か月以上が12.5%であること(本件では亡aの自殺企図発現は投与開始後4か月の倍の期間である8か月目であった,自殺企図が投与期間中に発現したものは71.9%であること(本件で)は亡aの自殺企図発現はインターフェロン投与中止後,しかも投与中止から4か月目であった)に鑑みれば,被告の行為と亡aの死亡との間に因果関係がないことは明らかである。 - 91 - 参加人病院における亡aに対する診断参加人病院医師による亡aに対 しかも投与中止から4か月目であった)に鑑みれば,被告の行為と亡aの死亡との間に因果関係がないことは明らかである。 - 91 - 参加人病院における亡aに対する診断参加人病院医師による亡aに対する2回の診察等の結果,その疑われる診断としては,うつ病ではなく統合失調症であったのであって,亡aには,IFN投与に基づくうつ病が発症していなかった。 因果関係に関する参加人の主張を援用する。 亡aの死亡原因後述するが(争点第9の被告の主張の1~2,亡aの死亡には,本人及び)その家族の過失が大きく影響し,その因果を及ぼしていると言わざるを得ない。 例えば,IFN治療とは全く関係のない一般の夫人又は母親が,既に精神疾患が疑われ精神科を受診していたという経過の中で,亡aと同様の挙動や発言をしていた場合には,同居の家族としては繰り返された服薬不履行,自殺企図,自殺未遂を速やかに医師等に報告し,患者の受診に同伴することは至極自然で常識的な対応であるはずで,本件においても,原告らは,正にこのような対応をすべきであったにもかかわらず,このような対応を怠ったのであり,これを殊更無視して,被告の行為と亡aの死亡の間に因果関係ありとするのは,甚だ正義に反する主張である。IFN治療の副作用としてのうつ,自殺企図に関して説明を受けた場合には,上記のような自殺企図等に対して適切な対処が出来るが,上記説明を受けない場合には,上記のような家族の自殺企図等に直面した際には何らの対処ができないという原告らの主張は,およそ合理的な根拠が存在しないのであって,仮に原告等がIFN治療の副作用としてのうつ,自殺企図に関して直接説明を受けた場合であっても,上記のような家族の自殺企図等に直面した際に,結局は何らの対処もしないものと考える。 また,平成12年2月20日(亡aの自殺当日 の副作用としてのうつ,自殺企図に関して直接説明を受けた場合であっても,上記のような家族の自殺企図等に直面した際に,結局は何らの対処もしないものと考える。 また,平成12年2月20日(亡aの自殺当日,前述のような亡aの状態)を原告らは認識していたにもかかわらず(原告bは,これ以前に,亡aが野菜包丁で自らの手首を切るという自殺企図の後に家内の包丁を隠しており,亡aの自殺の危険性を十分に認識していた,亡aの自殺を防止するために必要な)- 92 -措置を全く取らず,亡aの自殺を許している。 詳述すれば,当日,原告bは,亡aの様子が,昨日までと違う感じで,いつもと違う形相をしており,原告bに対して「マッチをくれ」と言ったことか。 ら取っ組み合いになったにもかかわらず,そのような亡aを放置し,原告cに対して「母さんおかしいから見ていてくれ」と伝えたのみで,自分は駅伝練。 習会に行ったことから(原告cが重大な不注意で亡aにマッチを渡したた,め)灯油を被って焼身自殺を遂げたのであって,当日,原告らが,亡aを十分に観察,保護する,被告病院若しくは参加人病院を速やかに受診させる等,必要十分な措置をとっていれば,亡aの自殺は防止できたのであって,原告らの行為(自殺防止措置の不作為)自体が亡aの自殺を招いたのであり,その原因なのである。 前述のとおり,原告らは,亡aの自殺未遂という事実やその言動等から同人の自殺の可能性を十分に認識していたのであって,仮に被告病院が原告らに対してインターフェロン治療の副作用等に関して直接説明を行ったからといって亡aの自殺を防止できたわけではなく,しかも,原告らの行為(自殺防止措置の不作為)自体が亡aの自殺を招いたのであり,その原因なのであることからも,原告らの主張する過失は,いずれも本件結果との間に因果関係はない。 できたわけではなく,しかも,原告らの行為(自殺防止措置の不作為)自体が亡aの自殺を招いたのであり,その原因なのであることからも,原告らの主張する過失は,いずれも本件結果との間に因果関係はない。 結論 以上に鑑みれば,本件において,被告の行為と亡aの死亡との間には,因果関係はない。 - 93 -第5[原告・参加人] 参加人病院の医師の家族に対する説明義務違反及び療養指導義務違反の有無(原告らの主張) 精神科及び神経科を有する病院の医師の注意義務医師の注意義務は,入院勧試義務及び説明義務である。 インターフェロンによる精神神経系の副作用は当時つとに医学界には知られており,重篤なうつ状態及び自殺企図がしばしば見られることもまた文献上等で警告されているところであった。 うつによる自殺は必ずしもうつが重篤化したために起きるものとは限らず,病気の回復期に起きることもあり,また前兆のないまま衝動的・突発的に起きることもあり得るものである。 したがって,精神科及び神経科を有する参加人病院の医師としては,患者がインターフェロンによるうつ病を発症していることを認識した場合には,第1に,症状に応じて抗うつ剤等の投与を行うことはもちろんのこと,入院をさせるなどして医師の目の届く範囲内で経過を観察する義務がある。 この点,参加人は,入院勧告自体が患者本人の抑うつ状態を増悪する危険性もあり,軽々に入院の判断がなされるべきものではなく,本件でも,薬物処方による外来での経過観察という方法を飛び越えて,入院加療を直ちに選択検討するような状況にはなかったと主張し,その根拠として,文献(うつ病の診「断と治療」江原嵩・新興医学出版社・)を引用する。 1987しかし,同文献には,参加人引用部分に引き続き,次のような記載があることにも注意すべきである。 「外来治療 拠として,文献(うつ病の診「断と治療」江原嵩・新興医学出版社・)を引用する。 1987しかし,同文献には,参加人引用部分に引き続き,次のような記載があることにも注意すべきである。 「外来治療において抗うつ薬が充分な奏功を示さない理由には,抗うつ薬の1日投与量が少なすぎる場合や,抗うつ薬が病状と合致していない場合などの- 94 -医療者側の原因が見いだされる症例も多いが,うつ病者が種々の理由により,投与量の全てを内服していない場合もある。すなわち,抗うつ薬の副作用の不安,軽症副作用の発現,薬物の数量や種類が多いことへの不安や不満,病識の欠如などの理由をあげることができる。それゆえ,かかる症例での外来治療は不完全なものとなり,観察や指導監督が充分に遂行できる入院治療を勧めなければならない」。 「重症化したうつ病者においては,不安焦燥症状が強くなり,二次的に劣悪な身体状態となる場合が多く,入院治療が必要となる。重症うつ病や老年期うつ病においては,病識に欠け,妄想症状が強くなるために,自らの治療意識に欠ける症例や,薬物内服も含めた治療行為の全てを否定する場合がある。かかる拒絶症の強い症例での外来通院治療は不可能といえる」。 本件において参加人病院に通院した当時の亡aの精神神経症状は,希死念慮の発現を含めて重篤化していたものであり,また被告病院及び参加人病院からの説明が十分になされていなかったことから,薬物の定期的な服用に対する拒絶が強かったものである。従って,本件の亡aの場合には,むしろ外来通院治療を選択することは誤りであり,観察や指導監督が充分に遂行できる入院治療が選択されるべきであった。 この場合,確かに入院を勧めることによる患者本人への心的負担の増加の可能性がないではないが,その点は,医師から患者の家族に対して,患者の病状を が充分に遂行できる入院治療が選択されるべきであった。 この場合,確かに入院を勧めることによる患者本人への心的負担の増加の可能性がないではないが,その点は,医師から患者の家族に対して,患者の病状を説明するとともに,入院治療を選択することが適切である旨の説明を行うことによって解決できる問題であり,医師には家族に対する説明が義務づけられるというべきである。 また,患者に自殺の危険性がある場合や,自傷他害のおそれのある場合には,精神科医は,保護者である家族の同意があれば,精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に基づく医療保護入院をさせることができ,この場合には患者本人の同意は不要であるから,患者本人の心的負担のみを理由として,入院加療- 95 -を行うことを躊躇することは正しくない。 第2に,仮に何らかの理由により入院等の措置ができなかった場合であっても,精神療法の検討を行いこれを実施するか,少なくとも患者及びその家族に対して精神症状及び自殺企図の発現する危険性があることを説明し,注意深い観察と病院への連絡の必要性について説明する義務がある。 この点,患者本人に対して説明することで何らかの悪影響が予測される場合であっても,患者の家族に対して同様の説明を行う義務があることは,前述したところと同様である。しかるに,後述するように,参加人病院は,患者本人のみならず,家族に対する病状及び薬剤の説明や,家族のなすべき対処方法についての説明を何ら行わなかったのであり,この点過失があることは明らかである。 なお,参加人は,疑われる診断としては,うつ病ではなく,統合失調症が考えられる状況であったと主張する。 しかし,インターフェロンの副作用のうち,精神神経症状としては,抑うつ状態のみならず,不安焦燥状態,せん妄,錯乱,幻覚妄想,興奮,躁状態も見られることは 失調症が考えられる状況であったと主張する。 しかし,インターフェロンの副作用のうち,精神神経症状としては,抑うつ状態のみならず,不安焦燥状態,せん妄,錯乱,幻覚妄想,興奮,躁状態も見られることは医薬品情報のみならず,各論文等でも指摘があるところである。 そして自殺の原因となる精神神経症状がうつ病に限られないことは明らかである。参加人は,亡aが統合失調症の疑いがある(しかもこの主張は医師らに対する証拠調べ直前に提出された参加人医師の陳述書内で初めてなされたものである,すなわち亡aにうつ病が発生していなかったことをもって,原告の主)張が成り立たない旨主張するものであるが,そもそも亡aに統合失調症の疑いがあったことに疑問があるのみならず,仮に亡aに見られた精神神経症状がうつ病とは判断されないものであったとしても,それがインターフェロンの副作用であることを排斥する理由はなく,また亡aの自殺の原因となったことを排斥する理由もない。参加人の主張には理由がない。 参加人病院医師が,亡aの受けている治療内容を認識し,亡aに対してうつ- 96 -病が疑われると診断したにもかかわらず,適切な処置をとらなかったこと参加人病院における診療経過( )1ア初診時(平成11年12月11日)この日は,主に原告bにおいて状況の説明を行い,亡aからの発言,特に参加人が主張するような,h医師との一問一答のごときやりとりはほとんどなかった。h医師は,原告bの話をただ聞き置くという程度であった。 原告bは「本人はそう言っているけどそうではありません」という,。 説明をしたことはない。 また原告bの兄弟は兄ではなく,弟である。 h医師から,7日後にまた受診すること,それまででも何か変化があれば何時でも受診するよう話があったことはない。 イ2回目受診時(平成12年1 たことはない。 また原告bの兄弟は兄ではなく,弟である。 h医師から,7日後にまた受診すること,それまででも何か変化があれば何時でも受診するよう話があったことはない。 イ2回目受診時(平成12年1月15日)この日も原告bが同行した。初診時に,h医師から「ドライブに注意」との発言があったため,亡a1人で通院させることを心配した原告bが車で同行したものである。 薬については,前回と違う薬を処方しましょうか,という説明はあったが,その余の説明はなかった。 原告らの主張( )2参加人病院は,亡aが被告病院においてインターフェロン治療を行っていることを原告bらの説明によって認識していたものであり,平成11年12月11日の第1回診療における診察の結果,亡aが自殺企図を有し,精神病症状(妄想)を伴ううつ病が疑われると判断した。従って,亡aはその時点でうつ病であったというべきであるから,参加人病院としては,亡aに対して抗うつ剤の投与を行うとともに,その時点において入院をさせる等の措置を執って医師の目の届く範囲で経過観察を行うか,少なくとも亡a及び原告bに対し,本件がインターフェロンの副作用によるうつ病であること,自殺- 97 -企図の可能性があるため注意深い観察をするとともに,病院への連絡の必要性について説明する義務があった。 しかるに参加人病院は,これらの措置を一切執ることなく,抗うつ剤の投与を行わずに漫然と抗精神病薬及び抗不安薬を投与したのみであり,亡aを入院させる等して医師の目の届く範囲で経過観察をすることもなく,亡a及び原告bに対し,本件がインターフェロンの副作用によるうつ病であること,自殺企図の可能性があることによる家族からの観察方法や病院への連絡方法について何ら説明をすることもなく,単に薬を飲んで様子を見ましょう,と言うのみで,投 ターフェロンの副作用によるうつ病であること,自殺企図の可能性があることによる家族からの観察方法や病院への連絡方法について何ら説明をすることもなく,単に薬を飲んで様子を見ましょう,と言うのみで,投薬した薬剤の説明もせず,次回通院日の指示もせず,また亡aの病状や今後の治療方針,家族がどのようなことに気をつけて生活をすれば良いか等の指導を何ら行わなかった。その結果,原告らは亡aの状況を正確に把握することができず,亡aに対して適切な処置をとることができなかった。従って,参加人病院が,亡aに対する診断を誤り,適切な処置を執らなかったことによって,亡aの死亡という結果が招来されたものというべきである。 次に,仮に客観的には,亡aが参加人病院に通院した際に,うつ病ではなく,統合失調症が考えられる状況であったとしても,前述のように,インターフェロンの副作用としての精神症状は,うつ病にとどまるものではなかったから,やはり参加人病院としては,亡aの状況がインターフェロンの副作用であるか否かを明確に判断し,第1回目の受診の際に希死念慮があると判断された亡aに対して,前述したような適切な処置を執るべきであった。それにもかかわらず,参加人病院は,何らの合理的理由なく,亡aの状態をインターフェロンの副作用とは関連のない,単なる統合失調症が考えられる状況であったと漫然と判断し,前述したように漫然と抗精神病薬及び抗不安薬を投与したのみで,その余の何らの適切な処置をとらなかったために,原告らは亡aの状況を正確に把握することができなかった。このような参加人病- 98 -院の判断は,医師として十分な考察がなされたとは到底いえず,誤診であるというべきであり,このことによって亡aの死亡が招来されたものというべきである。 参加人病院は,亡aの第1回受診日において,少なくと の判断は,医師として十分な考察がなされたとは到底いえず,誤診であるというべきであり,このことによって亡aの死亡が招来されたものというべきである。 参加人病院は,亡aの第1回受診日において,少なくとも亡aに希死念慮が存在することを認めている。参加人病院は,精神・神経症状の専門医であるから,患者に自殺企図(自殺未遂行動)が発生しなければ自殺の具体的予見可能性が認められないとすることは正しくなく,患者に希死念慮を認めた時点で,将来的に自殺企図ないし自殺が起こることを具体的に予見しうると解すべきである。少なくとも,希死念慮を認めた段階で,患者自身のみならず,家族に対しても今後の対処法についての具体的な指示をすることが参加人病院には求められていたというべきである。 なお,参加人は,亡aに対して処方された薬剤につき,確定診断を下し得ない時期における判断としては適当である旨を主張する。 しかし,本件においては,前述のように,参加人病院を受診した当時,亡aはうつ病であったというべきであるから,参加人病院としては,亡aに対して抗うつ剤の投与を行うとともに,その時点において入院をさせる等の措置を執って医師の目の届く範囲で経過観察を行うか,少なくとも亡a及び原告bに対し,本件がインターフェロンの副作用によるうつ病であること,自殺企図の可能性があるため注意深い観察をするとともに,病院への連絡の必要性について説明する義務があったというべきであるから,参加人の主張は妥当ではない。 問題は,参加人病院が,亡aに対して入院措置を執らなかったにもかかわらず,亡a及びその家族に対して,処方された薬剤,及びその薬剤を処方する前提となる亡aの症状について,何らの説明を行わなかったことにある。 その結果,原告ら家族としても,亡aの状況を正確に把握することができず,ひいては亡a 対して,処方された薬剤,及びその薬剤を処方する前提となる亡aの症状について,何らの説明を行わなかったことにある。 その結果,原告ら家族としても,亡aの状況を正確に把握することができず,ひいては亡aの自殺という結果が導かれたものである。 - 99 - 自殺念慮の判断参加人は,亡a及び原告bから自殺念慮が積極的に語られたことがないこと,2回目の受診時の亡aの発言が死に対する拒絶であることから,亡aに自殺念慮が続いていたことが事実に反すると主張する。 しかし,自殺念慮は,参加人医師も認めるとおり,必ずしも患者が発する言葉だけではなく,そのときの顔の表情,目つき,雰囲気等から判断されるものであり,亡a及び原告bから自殺念慮が積極的に語られなかったからといって,亡aに自殺念慮が存在していなかったとはいえない。 また,2回目の受診時には,参加人医師は,亡aに対して自殺念慮に関する質問を一切していない。従って亡aから自殺念慮が積極的に語られなかったことは決して不自然ではない。参加人医師はこの点,亡aが混乱妄想を来しているので,死について触れるのは好ましくないと思った,と証言しているが,それは,参加人医師が,亡aに自殺念慮が存在すると認識していたからに他ならないというべきである。 まとめ以上より,参加人病院は,亡aの精神症状を,インターフェロンの影響下にあるうつ状態であると認識し,自殺企図の具体的可能性を予見することができたにもかかわらず,亡a及び原告ら家族に対する療養指導義務及び説明義務を怠った過失がある。 (参加人の主張) 精神科及び神経科を有する病院の医師の注意義務について精神科及び神経科を有する病院の医師の注意義務として原告が主張する一般論は争わないが,その余の参加人の注意義務違反について論ずる部分は争う。 参加人病院における診療経 する病院の医師の注意義務について精神科及び神経科を有する病院の医師の注意義務として原告が主張する一般論は争わないが,その余の参加人の注意義務違反について論ずる部分は争う。 参加人病院における診療経過( )1ア初診時(平成11年12月11日)- 100 -予約なしの受診で,亡aと原告bが来院した。 ( )ア原告bから,亡aのC型肝炎の治療歴について話があった。e病院でf医師の治療を受け,入院は6月1日から2週間,通院は1日おきで,平成11年6月から10月までインターフェロン療法を受けた等の話であった。 ところがここで亡aが突然「となりが家を建てたのを見て,自分に()イ,お金がないと思い出し,ストレスである「頭が締め付けられるよう。」である「インターフェロンが原因か分からないが,食欲不振であ。」る」等と話し始めた。 h医師が亡aに対し「日常生活で何か不都合な点はありますか?」,と尋ねたところ,亡aは「あたったり,わめいたりする「ぼーっと。」する」等と答えていた。さらにh医師が「それで生活できますか?」。 と尋ねると「どうにか生活はできます」という返事であった「眠れ,。 。 ますか?」という問いには「あまり眠れません」と返答し,h医師,。 から「何か心配事でもあるのですか?」と尋ねると「心配事ばかりで,す」と答えるものの,具体的には金銭のこと以外には言及されなかっ。 た。 h医師から「生きていく自信はありますか?」と尋ねると「自信は,ない」と返答し,さらにh医師か「死にたいと思うことはあります。 ,か?」と尋ねたところ,亡aは「死にたいです」と一言口にした。 。 ここで,原告bが話を始め,亡aは2年前に子宮筋腫の手術を受け,( )ウ更年期障害ということでホルモン療法を受けたこと,産婦人科ではもう と尋ねたところ,亡aは「死にたいです」と一言口にした。 。 ここで,原告bが話を始め,亡aは2年前に子宮筋腫の手術を受け,( )ウ更年期障害ということでホルモン療法を受けたこと,産婦人科ではもう良いと言われたが,ホルモン療法の薬を手術後平成11年6月まで服用していたこと等について説明し,亡aの気分変調の原因がそこにあるのではないかという口吻であった。 h医師は,亡aが隣に家を建てたことに拘っている様子であったため,- 101 -原告bに対し「持ち家はあるのですか?」と尋ねたところ,原告bか,ら「20年前に建てた家があります。ローンはありません。新築の予定はありません」との話があった。そこでh医師から亡aに対し「ロ。 ,ーンもないし,家もあるのですから心配ないのではないですか?」と話したところ,亡aは「いいえ,私が主人から貰った生活費を全部使ってしまうのでお金がないのです」と自責の念を述べた。 。 ここで原告bがあらためて発言し「本人はそう言っているけどそう()エ,ではありません。私はあと3年で会社を定年退職するのですが,確かに蓄えはありません。しかしこの原因は私にあります。平成10年1月に私の会社が倒産し,私は平成10年4月から別の会社に勤めるようになりましたが,給料が3分の2程度に下がってしまったのです。だから余裕がないので,本人のせいではありません」と述べた。 。 そこでh医師は「お子さんは扶養しているのですか?」と尋ねたと,,,ころ,原告bから「子供は2人いるがともに勤めている」と話があり原告bの兄という人も55歳で独身だが勤めているという話であった。 その後,e病院で処方されている薬の話になった。亡aが薬を取り出( )オし「e病院ではこの薬を貰っています」と示したが,h医師はすぐに,これら薬剤がセル で独身だが勤めているという話であった。 その後,e病院で処方されている薬の話になった。亡aが薬を取り出( )オし「e病院ではこの薬を貰っています」と示したが,h医師はすぐに,これら薬剤がセルシン(安定剤)とレンドルミン(眠剤)であることが分かった。亡aは「薬に頼りたくないので,飲むのをやめました」と。 話したので,h医師は亡aに対し,e病院の薬は良い薬なので飲むように説得したが,亡aは強く服薬を拒絶する態度で,薬に関する問答が比較的長く続いた。 h医師としては,服薬してもらうことが必要と考え,亡aに対し,「薬を止めていて,日常生活に支障はないですか?」と尋ねると「ち,ゃんと食事も作れます」と答え,また「仕事はきちんとできていま。 ,すか?」という質問に対しても「ミスは多いかも知れないが,仕事は,- 102 -している。同僚と話すのが億劫だが仕事を続けている「仕事は10。」。 ,数年続けており,平成11年6月に2週間休んだだけである」と答え薬を飲まなくても大丈夫という態度であった。 20分ぐらい薬についての問答があったが,最終的に,h医師から「混乱が少しありますので,混乱をとる薬を新たに出しますので,飲んでください」と説明してコントミン5を処方し,また,セルシン。 mgの粉薬0.5を処方し「e病院の薬を飲むのが嫌でも,これだけmg,は量も少ないので飲んでください」と説明し,亡aにいずれも7日分。 を渡した「この薬はすぐには効かない」などと説明した事実はない。 。 そして,h医師から,7日後にまた受診することと,それまででも何( )カか変化があれば何時でも受診するよう話をして,診察を終わった。 イ2回目受診時(平成12年1月15日)初診から1週間後の受診はせず,約1ヵ月後の再診であった。 ( )アこの ででも何( )カか変化があれば何時でも受診するよう話をして,診察を終わった。 イ2回目受診時(平成12年1月15日)初診から1週間後の受診はせず,約1ヵ月後の再診であった。 ( )アこのときは,亡aのみが来院したが,予約なしの受診であった。原告bは来院していない。 h医師から「その後受診されませんでしたが,調子はどうです()イ,か?」と尋ねると「眠れない「頭の中でいつもぐるぐる回ってい,。」る「一日中やる気がない」と不調を訴え,また「ばい菌があたっ。」。 ,て心配である」との発言もあった。 。 また,相変わらず薬を飲みたくないという話があり,その理由を尋ねると「友人から聞いたが,睡眠薬を飲んでいると効かなくなるという,ことだし,また,友人のお母さんが薬を飲んで死んでしまったと聞いたので,飲みたくない」との発言があったが,この発言は,前回受診時。 の「死にたい」という自殺念慮の発言とは逆に,死に対する明らかな拒絶の意思表明と考えられた。 仕事のことを尋ねると「会社でのミスは他の人がかばってくれる」( )ウ,。 - 103 -「どこかで,自分のことを,医者に行った方がいいのではないか,と言っているようだ」という発言があった。また「昔は心配性ではなか。 ,ったが,最近はすべてが心配である「e病院の薬は余っている」と。」。 いうことであったので,h医師から,あらためて服薬が必要であることを説明し,また,混乱状態に変化がないので前回処方より増量したが,本人が薬に抵抗感を示していたため,3分の1から2分の1包から飲み始めて構わないと説明し,薬を渡した。なお,当初1週間分の処方の予定であったが,亡aから仕事が忙しくて1週間後に来るのが大変なので2週間分欲しいと希望があったため,2週間分を処方している。カ ら飲み始めて構わないと説明し,薬を渡した。なお,当初1週間分の処方の予定であったが,亡aから仕事が忙しくて1週間後に来るのが大変なので2週間分欲しいと希望があったため,2週間分を処方している。カルテには「ドライブに注意」と記載しているが,これは安定剤を処方した,全ての患者に対しh医師が話している内容である。初診時にもこの注意は伝えている。 2回目の受診時にも,亡aから切迫した内容は一切語られず,診察全( )エ体を通じて,亡aの自殺を予見できるような症状・所見は全く認められなかった。加えて,死に対する拒絶の意思を明らかにしていることから,h医師が亡aの本件自殺を具体的に予見することは到底不可能であった。 ウその後の経過その後,亡aの受診・連絡,及び,家族の来院・連絡等は一切なかった。 具体的予見可能性の欠如( )2原告の主張は「インターフェロンによる精神神経系の副作用が当時医学,界に知られていたこと「重篤なうつ状態及び自殺企図がみられること(た」だし「しばしば」については争う)が文献上記載されていたこと(ただし「警告」されていたとの点は争う「うつによる自殺は必ずしもうつが重)」篤化したために起きるものとは限らず,病気の回復期に起きることもあり,また前兆のないまま衝動的・突発的に起きることもあり得る」との一般論は積極的にこれを否定するものではない。しかしながら,抽象的な可能性の程- 104 -度では,法的な注意義務違反の構成要素である「具体的予見可能性」に直結するものではなく,原告指摘の一般論から,本件における参加人の具体的注意義務へと短絡することは誤りである。 診断病名はうつ病ではなく統合失調症( )3まず参加人病院における亡aに対する「妄想を伴ううつ病の疑い」という診断は確定診断ではなく,しかも,インターフェ 注意義務へと短絡することは誤りである。 診断病名はうつ病ではなく統合失調症( )3まず参加人病院における亡aに対する「妄想を伴ううつ病の疑い」という診断は確定診断ではなく,しかも,インターフェロンによるうつ病と確定したものでもない。因みに,亡aは,参加人病院初診時(平成11年12月11日)において,既にインターフェロン療法中止から約2か月経過していたものである。 疑われる診断としては,うつ病ではなく統合失調症が考えられる症状であった。したがって,参加人病院医師による本件薬剤処方及び療養指導等は相当であり,過失・違法はない。 なお原告は,参加人病院医師が亡aに対する第1回診察時(平成11年12月11日)に「自殺企図を有していることを認識していた」と主張する,が明白な誤りである。第1回診察時に亡aに自殺企図はない。希死念慮が一度語られたという経過が正しい。 仮にうつ病とした場合の相当性( )4ア次に,仮にうつ病が疑われる場合であっても,個別の患者ごとに具体的症状の内容・程度は異なり,それに応じた精神科臨床における医療内容も異なるのであって,いかなる治療法を選択するかについては,精神科領域の専門的知見に基づく医師の裁量に基本的に委ねられるものである。この医師の裁量的判断において医療水準を外れる逸脱がない限り,過失・違法の評価は妥当しない。 イ入院加療の不適応本件における亡aの症状は,参加人病院医師の診察の結果から,入院加療を要する程度の症状には至っておらず,本件において入院加療による診- 105 -療の必要はない。因みに,精神科における医学的知見によれば「うつ病,治療の原則は外来通院治療である「外来治療による約90%の症例では」良好な経過が見られる」とされている。そして「患者は,入院をするこ,とに対し『自分が家族から ける医学的知見によれば「うつ病,治療の原則は外来通院治療である「外来治療による約90%の症例では」良好な経過が見られる」とされている。そして「患者は,入院をするこ,とに対し『自分が家族から離れると,主人や子供が日常生活の上で困惑し,迷惑をかける『会社を休むと退職しなければならなくなる『自分がも』』う少し頑張れば,我慢をすれば,なんとか生活を続けていける。我慢をする努力が足りないのだ『入院により,子供や家族が社会的に偏見視され』』,る『入院費用の捻出ができず,経済的破綻を来たす』などの罪責,微小抑うつ思考による判断をし,入院を拒否する場合や,入院をすることにより逆に心的負担が増加する場合もある」等といわれており(うつ病の。 「診断と治療」江原嵩・新興医学出版社・,入院勧告自体が患者本人の1987)抑うつ状態を増悪する危険性もあり,軽々に入院の判断がなされるべきものではない。本件では,診察時に亡aに経済的困窮,罪責感等の発言が認められており,薬物処方による外来での経過観察という方法を飛び越えて,入院加療を直ちに選択検討するような状況にはなかった。 ウ通院加療の相当性入院しない場合に関する原告の主張も正しくない。本件において,参加人病院は亡aに対し,受診時に精神通院療法を行っている。その他,経過観察については,薬剤処方を行って服薬指導をするともに,処方期間経過時点での状態如何により再受診することを勧めており,当時の亡aに対する医師の診療・説明・指導等の内容として裁量権逸脱の違法は何ら認められない。 自殺企図の危険性欠如( )5その他原告は「自殺企図の発現する危険性」について述べるが,本件に,おいて,参加人病院受診時において,亡aには自殺企図の発現する危険性はそもそも存在せず,法的な注意義務違反の要素としての ( )5その他原告は「自殺企図の発現する危険性」について述べるが,本件に,おいて,参加人病院受診時において,亡aには自殺企図の発現する危険性はそもそも存在せず,法的な注意義務違反の要素としての「自殺の具体的予見- 106 -可能性」は認められない。従って,自殺の可能性を前提とした原告の法的義務の主張は全て失当である。 「参加人病院医師がうつ病と診断したのに適切な処置をとらなかった」との原告主張について」原告の主張は「参加人病院が第1回受診時に亡aに対し精神症状(妄想),を伴ううつ病が疑われると判断した」という部分を除き,全て否認ないしは争う。原告の主張には,用語に混乱が見られる。なお,参加人病院における亡aに対する「妄想を伴ううつ病の疑い」という診断は確定診断ではなく,しかも,インターフェロンによるうつ病と確定したものでもないことが前述のとおりである。 本件において参加人病院医師は,平成11年12月11日の第1回受診時の際,亡aから平成11年6月から10月までインターフェロン療法を受け,その後は当該療法が中止されていることを伝えられそのように認識していたものであり,インターフェロン療法を「行っている」と認識していたものではない。 また原告は「患者に自殺企図(自殺未遂行動)が発生しなければ自殺の具,体的予見可能性が認められないとすることは正しくなく,患者に希死念慮を認めた時点で,将来的に自殺企図ないし自殺が起こることを具体的に予見しうると解すべきである」と主張するが誤りである「自殺企図」と「希死念慮」は。 精神医学上異なる概念であり,明確に区別して用いなければ混乱を生じることになる「希死念慮」とは,自殺を切望する観念ほど積極的ではないが,死を。 願う観念とされる。これに対し「自殺企図」とは一言で言えば自殺未遂行動のことで り,明確に区別して用いなければ混乱を生じることになる「希死念慮」とは,自殺を切望する観念ほど積極的ではないが,死を。 願う観念とされる。これに対し「自殺企図」とは一言で言えば自殺未遂行動のことである。単なる「観念」か具体的な「行動」かという大きな質的量的違いがあるのである。原告の主張はこの点が度外視されている。 また原告は,うつ病による自殺が病期の回復期に起きることもあるとの一般的な知見を「本件における亡aがインターフェロン中止後の回復期にあっ,た」との原告の主張と短絡して,殊更に亡aの自殺の危険性を強調しようとし- 107 -ているが,これも間違いである。インターフェロン中止後の回復期に自殺が多発するという実証的研究は存在せず,そのような医学的知見はない。そもそも,うつ病の回復期に自殺の危険があるという医学的知見は,抗うつ剤の副作用という文脈において主に論じられる事柄である。抗うつ剤の添付文書にはまず例外なく副作用欄に「自殺企図「自殺の危険性」についての記載があり,薬剤」投与による副作用として症状回復期に躁転するなどして突発的に自殺する危険性が指摘されているのである。本件とは前提が全く異なっている。 本件において,参加人病院受診時に,亡aの自殺に対する具体的予見可能性は認められなかったものであり,亡aの自殺という結果に対する参加人の法的責任を論ずることは誤りである。 因みに,亡aは,初診時に一度だけ自殺念慮を口にしたが,これは医師が「死にたいと思うことはありますか」と質問したのに対して本人が答えたものであり,本人から積極的に自殺念慮が語られた事実はない。また,原告である夫からも本人に自殺念慮があるなどということは一言もなかった。 2回目の受診時(平成12年1月15日)には,一切自殺念慮がなかったのみならず,当日亡aは,逆に「死に られた事実はない。また,原告である夫からも本人に自殺念慮があるなどということは一言もなかった。 2回目の受診時(平成12年1月15日)には,一切自殺念慮がなかったのみならず,当日亡aは,逆に「死にたくない」という意思を明らかにしていた。 当日,亡aは初診時と同様に,相変らず薬を飲みたくないという話を盛んにしていたが,薬を飲みたくない理由として「友人から,睡眠薬は飲んでいると,効かなくなると言われた「睡眠薬を飲んでお母さんが死んだと言っていた。」ので,薬を飲みたくない」と発言していたが,これは「死にたくないので,。 ,薬を飲みたくない」という内容であり,死に対する拒絶にほかならない。 。 したがって,亡aに自殺念慮が続いていたというのは,明らかに事実に反する。 原告は「うつ病」からの一般的な疾病経過としての「増悪しての自殺」の経過があったと主張するものであるが,仮に初診時に診断が確定されており,また決定的にその後の経過が固定するならば,原告らの主張は成り立ち得ないこ- 108 -とはない。しかしながら,特に本例は「うつ病」と確定診断できる症例ではなく,原告が,診断名にとらわれて経過・予後を推定して主張を重ねることには前提に誤りがあり,結論も誤っている。参加人が敢えて診断名における認識の齟齬を問題としたのは,まさにこの点を指摘するためであった。 自殺念慮の判断について原告の主張は全て否認ないしは争う。 亡aに自殺念慮が続いていたというのは,明らかに事実に反することは前項で述べたとおりである。ここで重要なことは,2回目の受診時に亡aから積極的な死に対する拒絶の言葉が語られたという事実である。これは単に希死念慮が語られなかったという消極的なレベルとは異なり,より積極的に自殺念慮の存在を否定すべき事実なのである。 まとめについて 的な死に対する拒絶の言葉が語られたという事実である。これは単に希死念慮が語られなかったという消極的なレベルとは異なり,より積極的に自殺念慮の存在を否定すべき事実なのである。 まとめについて原告の主張は争う。 その他参加人の主張インターフェロンと本件自殺との関連性欠如( )1本件では,インターフェロン後の精神症状の発現の機序は何ら解明されていない。インターフェロンとの関わりは,その時間的前後関係でのみ推測される非常に曖昧かつ不正確な判断であることが原告には認識されていない。 生理的ストレスの持続といった単純な理由で発生するという医師間の共通認識は存在しない。 甲B14号証の滝村医師の意見書にも,時間の前後関係から「インターフェロンと関連していそうだ」という曖昧な可能性を前提に,さらに「うつ,病に限らない症状がでる可能性がある」とされているとおり,うつ病と決めつける事の出来ない様々な精神症状の発生が言われており,機序が複雑であることは滝村意見からも明白である。 この点を敷衍すれば,本件のように,インターフェロンの投与が中止され- 109 -てから一定期間経過時点における亡aの症状が,インターフェロンの半減期等の薬理動態等をも含めて検討したときに,インターフェロン投与によるものであることを肯定し得る蓋然性に乏しく,インターフェロンの投与歴から直ちに,亡aの自殺についての具体的予見可能性や結果回避可能性を導くことはできないというべきである。 本件処方の相当性( )2また,一般論として,インターフェロンの副作用による精神症状がうつに限らない以上,単純かつ即座にうつ病としての治療を開始し抗うつ薬を投与することは,特に本件のように幻聴・妄想・被害念慮を含む状態像であれば誤診に基づく誤投薬となる危険性がある。 参加人病院医師による 限らない以上,単純かつ即座にうつ病としての治療を開始し抗うつ薬を投与することは,特に本件のように幻聴・妄想・被害念慮を含む状態像であれば誤診に基づく誤投薬となる危険性がある。 参加人病院医師による本件薬剤処方は,このような確定診断を下しえない時期における判断としては極めて適当である。コントミンの適応疾患・症状には「統合失調症」のほかに「不安・緊張・抑うつ」があげられ,セルシンの適応疾患・症状には「神経症における不安・緊張・抑うつ「うつ病にお」ける不安・緊張」があげられている。精神科における医学的知見としても,「クロルプロマジン(コントミン)やハロペリドールなどの抗精神病薬は,不安焦燥症状の強いうつ病や幻覚妄想症状を示すうつ病に有効である「抗」不安薬も,うつ病の不安症状の改善を目的に用いられる場合が多い「ベン」ゾジアゼピン誘導体の一部には,抗うつ作用を有する薬剤があり,……鎮静作用と気分高揚作用などの抗うつ作用を目的とし,うつ病治療に単独投与および抗うつ薬と併用で用いられている」等と言われているところである(うつ病の診断と治療」江原嵩・新興医学出版社・。 「)1987うつ病という確定診断がつかないのに,上記薬剤とは別に,いきなり薬理効果の強い抗うつ剤を処方することに対しては副作用,及びこれについてのインフォームドコンセントの点からより慎重になるべきである。甲B13号証でi医師は「とりあえず「抗うつ剤を1週間程度処方し」などと述べる」- 110 -が,抗うつ剤は「とりあえず」投与されるような類の薬剤ではない。また,i医師は「ドグマチールまたはレスリンと言う抗うつ剤を使用する」とも述べるが,両者は薬効,副作用等において異なる薬剤であり,ドグマチールは一般的には抗うつ剤ではなく抗精神病薬に分類されている。つまりこれら2剤は マチールまたはレスリンと言う抗うつ剤を使用する」とも述べるが,両者は薬効,副作用等において異なる薬剤であり,ドグマチールは一般的には抗うつ剤ではなく抗精神病薬に分類されている。つまりこれら2剤は二者択一で選択されるような薬剤ではない。ドグマチールはスペクトルは広く,適応疾患としてうつ病も挙げられるが,その他に,統合失調症,消化管潰瘍等も挙げられ,相対的には抗うつ作用は弱く,仮にうつ病を前提としても,本件における参加人病院における処方との間に決定的優劣はないと考えるのが妥当である。一方,レスリンは効果の強い抗うつ剤とされているが,重大な副作用に,より注意しなければならず,特に「慎重投与」の項に「躁うつ病の患者については自殺企図の危険性がある」旨明記されているところである。したがって,レスリンを処方する場合には,この副作用に十分注意しなければならないとともに,重大な副作用であることから患者に対するインフォームドコンセントを尽くして処方されるべきこととなる。i医師が証言するように,精神病であることを患者本人に隠して処方できる類の薬剤ではなく,本件における診察時の判断レベル,すなわちうつ病と確定診断できないレベルで,処方される薬剤ではない。なお,抗うつ剤の投与義務については,原告からは実は具体的薬剤名等は示されていない。 参加人の主張のまとめ参加人病院受診時,亡aには自殺企図の具体的予見可能性はなく,参加人病院医師が亡a及び原告ら家族に対する療養指導義務及び説明義務を怠った過失があるとの原告主張は成り立たない。 参加人病院医師は,亡a受診時において,できる限りの問診を行い,診察時における亡aの状態に即した的確な診断及び処方を行い,再受診についても指示しており,過誤はない。 - 111 -第6[原告・参加人] 参加人病院の医師の過失行 いて,できる限りの問診を行い,診察時における亡aの状態に即した的確な診断及び処方を行い,再受診についても指示しており,過誤はない。 - 111 -第6[原告・参加人] 参加人病院の医師の過失行為と亡aの死亡との間の因果関係の有無(原告らの主張)うつ病の回復期では,良くなりつつある時期に何かのきっかけで突然病状の悪化が認められること等が指摘されており,またインターフェロン中止後もうつ状態が遷延する例が少なからず見られるので注意を要するとか,衝動的・突発的に自殺企図を行うもので,前兆が明確でなく危険であることも指摘されている。またインターフェロンの副作用としては,生理的(肉体的)なストレスによる全身倦怠感,食欲不振等と,心理的ストレスによる不安感,焦燥感ひいては抑うつ状態等に分けて考えられるところ,インターフェロンの場合にはまずそれ独特の激しい副作用により生理的ストレスが誘発され,これが長期間繰り返されることによる心理的ストレスの増大により抑うつ性の増悪を引き起こされることがある。亡aの自殺は,インターフェロン治療中止4か月後に発生したものであるが,これはインターフェロン治療を行ったことと相当因果関係の範囲内にあるものというべきである。 また,参加人病院は,第5(参加人病院の医師の家族に対する説明義務違反及び療養指導義務違反の有無)に記載した義務に反して,亡aがその時点でうつ病であったにもかかわらず,亡aに対して抗うつ剤の投与を行ったり,その時点で入院をさせる等の措置を執って医師の目の届く範囲で経過観察を行うか,少なくとも亡a及び原告bに対し,本件がインターフェロンの副作用によるうつ病であること,自殺企図の可能性があるため注意深い観察をするとともに,病院への連絡の必要性について説明する義務があったにもかかわらず,その判断を誤り, 対し,本件がインターフェロンの副作用によるうつ病であること,自殺企図の可能性があるため注意深い観察をするとともに,病院への連絡の必要性について説明する義務があったにもかかわらず,その判断を誤り,抗うつ剤の投与を行わず,亡aを入院させることもなく,亡a及び原告bに対し,本件がインターフェロンの副作用によるうつ病であることや,- 112 -亡aが自殺に至らないために家族が注意すべき点について何らの指示説明を行わなかったことにより,原告らは,亡aがインターフェロンによるうつ病を発症していること,自殺企図を有している可能性があること,及び自殺企図に対してどのような対処を取って良いのかについて何ら知識を有することができなかった。その結果,亡aの自殺という結果が導かれたものであり,参加人の行為(不作為)と亡aの死亡との間に因果関係が認められることは明らかである。 また,仮に客観的には,亡aが参加人病院に通院した際に,うつ病ではなく統合失調症が考えられる状況であったとしても,前述のように,インターフェロンの副作用としての精神症状は,うつ病にとどまるものではなかったから,やはり参加人病院としては,亡aの状況がインターフェロンの副作用であるか否かを明確に判断し,第1回目の受診の際に希死念慮があると判断された亡aに対して,前述したような適切な処置を執るべきであった。それにもかかわらず,参加人病院は,何らの合理的理由なく,亡aの状態をインターフェロンの副作用とは関連のない,単なる統合失調症が考えられる状況であったと漫然と判断し,何らの適切な処置をとったり,亡a及び原告bに何らの指示説明を行わなかったために,原告らは亡aがインターフェロンによるうつ病を発症していること,自殺企図を有している可能性があること,及び自殺企図に対してどのような対処を取って良いの び原告bに何らの指示説明を行わなかったために,原告らは亡aがインターフェロンによるうつ病を発症していること,自殺企図を有している可能性があること,及び自殺企図に対してどのような対処を取って良いのかについて何ら知識を有することができなかった。 その結果,亡aの自殺という結果が導かれたものであり,参加人の行為(不作為)と亡aの死亡との間に因果関係が認められることは明らかである。 なお参加人は,亡aが平成12年1月中に自殺企図に及んだ際,また自殺当日に,原告らが亡aの自殺を防止するために必要な措置を全く執らなかったことが,亡aの自殺の原因であると主張する。 しかし,そもそも原告らは,亡aの精神神経症状がインターフェロンの副作用によるものであることを,亡aの自殺時まで全く認識することができなかったが,これは被告及び参加人の説明義務違反に基づくものである。 - 113 -参加人は,原告らが亡aを,速やかに被告病院あるいは参加人病院に受診させるべきであったと主張するものであるが,原告らは,被告病院及び参加人病院から,亡aの現状(インターフェロンの副作用による精神神経症状)及びその対処法について何らの説明も受けておらず,かえって被告病院からは精神科受診をストレートに勧められたり,参加人病院も原告らの話を聞き置くにとどまり,次回診察の指示さえも出していなかったことから,両病院に対する信頼関係を失っていたのであって,原告らが亡aを両病院に受診させなかったことは原告らの責に帰すべきことがらではない。亡aの自殺企図後あるいは自殺当日の様子を原告らが適切に判断し,適切な措置を執るべきであったという参加人の主張は誤っている。 なお参加人は,参加人病院受診後の,原告bの亡aに対する日常的接し方,特に原告bがマラソン選手として自宅を不在がちにした日々を送る中で,亡a な措置を執るべきであったという参加人の主張は誤っている。 なお参加人は,参加人病院受診後の,原告bの亡aに対する日常的接し方,特に原告bがマラソン選手として自宅を不在がちにした日々を送る中で,亡aが大きな喪失感を覚え本件自殺に及んだ可能性があることを指摘する。 しかし,原告bは,いわゆる市民ランナーであったにとどまり,練習も土日を含めてもそれほど家をあけて行っていたわけではなく,またレースについても毎週のように出ていたわけでもない「自宅を不在がち」にしていたという。 参加人の主張はその前提を誤っており,そこから亡aの自殺の可能性を論じることはできない。 (参加人の主張) 原告が主張する「参加人病院医師の家族に対する説明義務違反及び療養指導義務違反」と亡aの死亡との間には因果関係はない。 本件では,参加人病院を2回目に受診した日(平成12年1月15日)から何日か経過した当月中に,亡aに,自宅にて包丁で手首を切るとの自殺企図(リストカット,あるいは,ベルトで首を絞めるとの自殺企図が初めて現実)化した。原告bは,亡aがこのような自殺企図に及んだ際自宅に所在し,過去- 114 -にはなかったこれら亡aの異常行動を認めながら亡aを被告病院等の総合病院や参加人病院等の精神科病院に連れて行き受診させる等,原告bは配偶者として当然なされるべき妻に対する療養看護(民法752条,730条)に向けた行動に一切出ていない。仮に,このときに原告bが亡aを被告病院等の総合病院や参加人病院等の精神科病院に連れて行き受診させていれば,現実化した自殺企図を前提とした適確かつ迅速な医療が施されることによって,平成12年2月20日の亡aの自殺を防止することができた可能性が高かったと言うべきである。 さらに,亡aが本件自殺を遂げた平成12年2月20日当日は,原告b 適確かつ迅速な医療が施されることによって,平成12年2月20日の亡aの自殺を防止することができた可能性が高かったと言うべきである。 さらに,亡aが本件自殺を遂げた平成12年2月20日当日は,原告bは,亡aの様子が昨日までと異なり,いつもと違う形相をしていることを認識し,さらに,亡aが原告bに対して「マッチをくれ」と突然言い出したことをき。 っかけに,亡aと原告bとが取っ組み合いの状態になったにもかかわらず,このように従前見られなかった異常な精神状態を示した亡aを放置して,原告cに対して「母さんおかしいから見ていてくれ」と伝えたのみで,自らは自分。 の趣味を優先して駅伝練習会に赴いている。原告bは,このときも,亡aを被告病院等の総合病院や参加人病院等の精神科病院に連れて行き受診させる等,配偶者として当然なされるべき妻に対する療養看護(民法752条,730条)に向けた行動には一切出ていない。その結果,原告cが亡aにマッチを渡したため,亡aは灯油を被って焼身自殺を遂げたものである。本件当日,原告らが,亡aを十分に観察,保護し,亡aの傍らにいて会話を交わすなどし,さらに,被告病院等の総合病院若しくは参加人病院等の精神科病院を速やかに受診させる等,必要かつ十分な措置をとっていたならば,亡aの自殺はほぼ確実に防止できたものと言うべきである。しかも,原告らがこのような行動をとることは容易かつ可能であった。 本件は,原告らによる行為(自殺防止措置の不作為)自体が直接亡aの自殺を招いたのであり,亡aの自殺の原因である。原告の因果関係の主張には理由- 115 -がない。 本件では,インターフェロン後の精神症状の発現の機序は何ら解明されていない。インターフェロンとの関わりは,その時間的前後関係でのみ推測される非常に曖昧かつ不正確な判断であることが原 -がない。 本件では,インターフェロン後の精神症状の発現の機序は何ら解明されていない。インターフェロンとの関わりは,その時間的前後関係でのみ推測される非常に曖昧かつ不正確な判断であることが原告には認識されていない。生理的ストレスの持続と言った単純な理由で発生するという医師間の共通認識は存在しない。 甲B14号証の滝村医師の意見書には,時間の前後関係から「インターフェロンと関連していそうだ」という曖昧な可能性を前提に,さらに「うつ病に,限らない症状がでる可能性がある」とされているとおり,うつ病と決めつける事の出来ない様々な精神症状の発生が言われており,機序が複雑であることは滝村意見からも明白である。 この点を敷衍すれば,本件のように,インターフェロンの投与が中止されてから一定期間経過時点における亡aの症状が,インターフェロンの半減期等の薬理動態を含めて,インターフェロン投与によるものであることを肯定し得る蓋然性はない。したがって,インターフェロン投与の既往についての認識があったからと言って,直ちに,インターフェロンによるうつ病,あるいはインターフェロンによる統合失調症圏の精神症状を疑い,薬物治療,入院加療を開始すべきであるとの因果関係を肯定することはできない。そのような治療を開始すれば,亡aの自殺を防止できたとの高度の蓋然性を認めることはできない。 なお,インターフェロンの副作用により精神症状がうつに限らないことを前提とすれば,インターフェロンの投与歴があるからといって,単純に即座にうつ病としての治療を開始し抗うつ薬を投与することは,特に本例のように幻聴・妄想・被害念慮を含む状態像であれば誤診に基づく誤投薬となる危険性がある。 なお,現在の精神医学の一般的知見に従えば,自殺問題は,単にうつ病の早期発見と早期治療や,失業や死別 本例のように幻聴・妄想・被害念慮を含む状態像であれば誤診に基づく誤投薬となる危険性がある。 なお,現在の精神医学の一般的知見に従えば,自殺問題は,単にうつ病の早期発見と早期治療や,失業や死別など喪失の偶発的要因といった,ある特定の- 116 -状況にとどまるものではない。 アメリカの自殺学者マルツバーガー()は,①深い孤独感,②Maltberger,T.無価値感,③殺害に至るほどの怒り,は自殺につながる3つの耐え難い感情状態であり,それらは,ヒトが発達早期に遭遇する不安や恐怖の体験を親との関わりの中でどのように克服していくかを見ることによって説明できるとしたが,人生の早い重要な時期に,分離という発達上の課題を果たすことに失敗し,安定した自己統御の構造を発展できないまま成人になってしまった人は,この三つの感情状態に対して極めて脆いこととなると指摘している。その他,家族のありようから自殺の危険が高まることも少なくないとする考え方もある。親子の世代間の境界の喪失,深刻な葛藤に満ちた夫婦関係,子供に投影された親の感情,共生的な親子関係,柔軟性に欠ける家族システムなどをあげ,これらが相互に作用して子供の人格の発達と同一性に影響を与え,自殺の危機を生み出すという見解である。 本件においても,亡aの自殺により直接つながる要因について,原告bの亡aに対する家族としての関わりの態様を度外視して論じることはできない。参加人病院受診後の,原告bの亡aに対する日常的接し方,特に原告bがマラソン選手として自宅を不在がちにした日々を送る中で,亡aが大きな喪失感を覚え本件自殺に及んだ可能性を無視して,参加人病院における診療と本件自殺を短絡する原告の主張は誤りである。 - 117 -第7[原告・被告・参加人] 被告・参加人の共同不法行為の成否(原告ら を覚え本件自殺に及んだ可能性を無視して,参加人病院における診療と本件自殺を短絡する原告の主張は誤りである。 - 117 -第7[原告・被告・参加人] 被告・参加人の共同不法行為の成否(原告らの主張)○本件における被告の行為と参加人の行為との関係(行為共同性の存在)共同不法行為の成立要件である行為共同性の要件について,最高裁判決(平成13年3月13日・民集55巻2号328頁)は「原審の確定した事実関,係によれば,本件交通事故により,Aは放置すれば死亡するに至る傷害を負ったものの,事故後搬入されたY病院において,Aに対し通常期待されるべき適切な経過観察がされるなどして脳内出血が早期に発見され適切な治療が施されていれば,高度の蓋然性をもってAを救命できたということができるから,本件交通事故と本件医療事故とのいずれもが,Aの死亡という不可分の一個の結果を招来し,この結果について相当因果関係を有する関係にある。従って,本件交通事故における運転行為と本件医療事故における医療行為とは民法719条所定の共同不法行為に当たるから,各不法行為者は被害者の被った損害の全額について連帯して責任を負うべきものである。本件のようにそれぞれ独立して成立する複数の不法行為が順次競合した共同不法行為においても別異に解する理由はないから,被害者との関係においては,各不法行為者の結果発生に対する寄与の割合をもって被害者の被った損害の額を案分し,各不法行為者において責任を負うべき損害額を限定することは許されないと解するのが相当である」と判断する。 。 この判決は,被害者の権利侵害に対する救済という観点に重きを置いて,厳密な行為レベルではなく原因レベルで共同性が認められるにとどまるときにも,共同不法行為の成立を認めたものである。 本件においては,被告病院によるイン の権利侵害に対する救済という観点に重きを置いて,厳密な行為レベルではなく原因レベルで共同性が認められるにとどまるときにも,共同不法行為の成立を認めたものである。 本件においては,被告病院によるインターフェロン治療による副作用が発生し,亡aが希死念慮を伴ううつ状態になっていたにもかかわらず,被告病院に- 118 -おいて患者本人及び家族に対して適切な指導が,治療前のみならず,副作用発生後においても何らなされなかったため,放置しておけば亡aの自殺企図等の具体的危険性が発生している状況下において,参加人病院としてそのような状態を正しく理解し,適切な治療並びに患者本人及び家族への指導がなされていれば,高度の蓋然性をもって亡aの自殺という結果を回避することができたということができるから,被告病院の過失行為と,参加人病院の過失行為とのいずれもが,亡aの死亡という不可分の一個の結果を招来し,その結果について相当因果関係を有する関係にあるといえる。従って,被告及び参加人の行為は,共同不法行為になると解すべきである。 被告病院のみならず,参加人病院にしても,患者の傷病を所与のものとして,これを当時の医療水準に従って治療すべき義務があることはもちろんであり,これを怠って患者に死亡等の重大な結果を発生させた場合には,それによって生じた全損害を賠償すべきことは当然である。本件においても,参加人病院は精神科医として,インターフェロンによる副作用としてのうつ状態,及びそれに伴う自殺企図等の具体的予見可能性はあったといえるから,亡a及び家族に対して適切な治療及び指導を行っていれば,亡aが自殺に至らなかった蓋然性は高い。この際,被告病院からの紹介がなかったこと,被告病院からの診療情報の提供がなかったことは,参加人の行為を正当化し,共同不法行為の成立を否定する理由 っていれば,亡aが自殺に至らなかった蓋然性は高い。この際,被告病院からの紹介がなかったこと,被告病院からの診療情報の提供がなかったことは,参加人の行為を正当化し,共同不法行為の成立を否定する理由とはならない。 以上より,被告及び参加人は原告らに対し,共同不法行為者として,損害の全部について連帯して責めを負うべきである。 (被告の主張) 被告に不法行為がないこと過失(注意義務違反)の不存在( )1ア亡aに対するインターフェロン治療全般に関する説明- 119 -被告病院は,亡aに対してインターフェロン治療全般に関する説明を尽くしていた(争点第1の被告の主張の1のと同じである。 ( )1)イ亡aに対するインターフェロン治療の副作用に関する説明被告病院は,亡aに対するインターフェロン治療の副作用に関する説明を尽くしていた(争点第1の被告の主張の1のと同じである。 ( )2)ウ亡aの家族に対するインターフェロン治療等に関する説明被告病院は,亡aに対にする治療,処置等の経過に鑑み,また亡a自身の身体的,精神的状態に鑑み,適時,適切に亡aの家族に対してインターフェロン治療全般及びその副作用等に関する説明を行い,また行おうとした(争点第1の被告の主張の2と同じである。 )エ亡aに対するインターフェロン治療の実施及び中止等に関する措置被告病院は,亡aに対するインターフェロン治療において,適時,適切な方法でインターフェロンを投与し,その減量,中止の措置を行った(争点第2の被告の主張と同じである。 )オ亡aに対する家族同伴での受診,精神科受診の勧奨被告病院は,亡aに対する家族同伴での受診,精神科受診の勧奨を尽くしていた(争点第3の被告の主張と同じである。 )因果関係の不存在( )2本件において,被告の行為と亡aの死亡と 精神科受診の勧奨被告病院は,亡aに対する家族同伴での受診,精神科受診の勧奨を尽くしていた(争点第3の被告の主張と同じである。 )因果関係の不存在( )2本件において,被告の行為と亡aの死亡との間には因果関係はない(争点第4の被告の主張と同じである。 ) 被告と参加人との間に客観的関連共同性(行為共同性)がないこと客観的関連共同性(民法719条1項前段)( )1民法719条1項前段は「数人カ共同ノ不法行為ニ因リテ他人ニ損害ヲ,加ヘタルトキハ各自連帯ニテ其賠償ノ責ニ任ス」と規定し,この「共同ノ不法行為ニ因リテ」との文言に関して,判例は,本条は客観的に共同の不法行為によって損害を生ぜしめたことは要するが,共謀その他主観的共同の原因- 120 -によることを要しないものとして(大審院大正2年4月26日,最高裁昭和32年3月26日参照,本条の共同不法行為が成立するためには「客観),」。 的に共同の不法行為,すなわち客観的関連共同性が必要であるとしている以上から,本条(民法719条1項前段)における共同不法行為が成立するためには,不法行為者各人が民法709条規定の不法行為の成立要件を充足するのみならず,本条(719条1項前段)規定の客観的関連共同性という要件をも充足することが必要となる。 そして,民法が一般的不法行為(民法709条)のみならず,共同不法行為(民法719条)を規定し,その効果として共同不法行為者各人の個別責任ではなく,連帯責任という重い責任を認めた趣旨に鑑みれば,共同不法行為の要件である「客観的関連共同性」とは,ただ単に数人の不法行為が存在するだけでは足りず,その間に「客観的」な「共同」の「関連性」を必要とすべきものである。 客観的関連共同性の不存在( )2そもそも,亡aに対する診療科,診療期間,診療内容も に数人の不法行為が存在するだけでは足りず,その間に「客観的」な「共同」の「関連性」を必要とすべきものである。 客観的関連共同性の不存在( )2そもそも,亡aに対する診療科,診療期間,診療内容も異なる被告病院と参加人病院との間で,亡aにインターフェロンによる副作用が発現した後においてなすべき義務が共通であるなどと即断できるものではなく,義務が共通などと主張する前提としてはその義務を明確にする必要があるが,原告は被告病院及び参加人病院がなすべき義務,行為等も明確に主張してはいない。 また,仮に被告病院と参加人病院が行う義務が共通であったとしても,その点が一体どのように「客観的関連共同性」という共同不法行為の要件を充足するのか,原告は全く主張してはいない。 このように,原告の共同不法行為に関する主張は,亡aに対して被告病院及び参加人病院が関わったことの一事をもって共同不法行為が成立するとするもので,法的な根拠を欠くものである。 したがって,被告と参加人との間には客観的関連共同性(行為共同性)が- 121 -ない。 共同不法行為の不成立以上に鑑みれば,被告病院に共同不法行為が成立しないことは明らかである。 (参加人の主張) 参加人に不法行為がないこと本件において参加人病院は,亡a受診に際して,初診時には亡aと夫である原告bから十分な問診による情報を得て,精神科領域における専門的知見を踏まえ可能な限りの分析を加えて診断を行い,精神療法,薬物処方といった診断に基づく具体的治療行為を,必要な説明を付した上で誠実に施行している。また2回目の受診に際しても,亡aから問診による情報を得て,精神科領域における専門的知見を踏まえ可能な限りの分析を加えて診断を行い,精神療法,薬物処方といった診断に基づく具体的治療行為を,必要な説明を付した上で誠実 際しても,亡aから問診による情報を得て,精神科領域における専門的知見を踏まえ可能な限りの分析を加えて診断を行い,精神療法,薬物処方といった診断に基づく具体的治療行為を,必要な説明を付した上で誠実に施行しているのである。参加人病院の本件医療行為には過失・違法はない。 なお,原告は亡aが自殺したという結果から,本件診療行為における注意義務の内容として,自殺の予見義務と自殺の結果回避義務を想定しているが,参加人病院受診時に亡aには自殺の切迫性を示す徴候は全く認められず,自殺についての具体的予見可能性自体が存在しない。従って,原告らの注意義務違反の主張は失当である。 被告と参加人との間に客観的関連共同性(行為共同性)がないこと客観的関連共同性(民法719条1項前段)( )1共同不法行為(民法719条)とは,複数の者が不法行為をした場合に,各不法行為が「共同」になされたと評価されるときは,それら不法行為を共同不法行為と呼び,各行為者が連帯して全額賠償責任を負うというものである。 共同不法行為の立法趣旨は,被害者の救済を手続的に容易にし,実体的保- 122 -護も厚くしようというものであるが,他方で,近代私法秩序における大原則である私的自治の原則,およびその派生としての過失責任の原則によって保護しようとした市民活動の自由も重要である。従って,被害者救済のみに偏重して安易に共同不法行為を肯定し,医療行為に対する規範を不明確にすることは,医療の萎縮につながり国民全体の健康維持・推進という医療全体の目的を頓挫させることにもなりかねず相当ではない。そこで,共同不法行為の成立要件を検討し,本件において共同不法行為と評価し得るか否かを判断すべきである。 第1に,共同不法行為各自が不法行為の要件を充足する必要がある。すなわち「故意・過失」という主観的 ,共同不法行為の成立要件を検討し,本件において共同不法行為と評価し得るか否かを判断すべきである。 第1に,共同不法行為各自が不法行為の要件を充足する必要がある。すなわち「故意・過失」という主観的要件と「権利侵害(違法性」という客,,)観的要件を充足しなければならないことが大前提である。 第2に,共同不法行為は「共同の不法行為「共同行為者」という民法条」文の文言からも明らかなとおり「行為」を共同することが共同不法行為成,立の中心的要件となるとの法律要件に照らすならば,ただ単に数人の不法行為が存在するだけでは足りず,各不法行為間に共同の関連性がなければならないと言うべきである。この点について判例は,共謀等の主観的共同関係は必ずしも必要でないとするが「客観的な共同の不法行為(客観的関連共,」同性)が必要であるとする。 この客観的関連共同性の有無に判断において重要なことは,不法行為の成立要件である行為規範,すなわち法的注意義務違反,違法性に共同性が認められるか否かであり,それぞれの行為者に向けられた注意義務の内容および注意義務違反の内容,違法評価の内容を検討した上で,互いにその共同性が肯定されなければならないものと言うべきである。具体的には,行為類型,行為の目的,注意義務を導く準則,注意義務違反を判断する基準,客観的行為類型,違法行為による被侵害利益,違法評価の内容,違法評価を導く判断基準(社会的相当性,許された危険等)等において同一の基礎にあると判断- 123 -されることによって,初めて不法行為の共同という法的評価を可能にするのである。 客観的関連共同性の不存在( )2ア本件では,被告と参加人はともに医療機関である点では同一である。しかしながら,ともに漠然かつ抽象的に医療機関である点で共通するので亡aに対する行為も である。 客観的関連共同性の不存在( )2ア本件では,被告と参加人はともに医療機関である点では同一である。しかしながら,ともに漠然かつ抽象的に医療機関である点で共通するので亡aに対する行為も共同するものであるとの安易な判断は誤りである。 被告と参加人とは,医療機関という点で共通するといっても,具体的な患者(亡a)との関わりに関する事実経過には雲泥の差がある。被告病院においては,亡aに対し,C型肝炎治療に関する専門的判断がなされた上でインターフェロンという専門的治療が施行され,この治療経過について副作用等のマイナス面に注意しながら継続的治療が施されてきた長い治療履歴が存在する。このような被告病院における内科的専門判断,治療行為は精神科を標榜する参加人病院においては到底なし得ない専門行為である。 定期的な患者の状態に対する経過観察が極めて重要である。そして,インターフェロン治療における自殺の可能性も含めた副作用の発現の発見,対処等についても,治療経過中の状態変化を具に観察しつつ適時における迅速かつ的確な判断は,被告病院に求められる診療上の命題となる。 これに対し,参加人と亡aとの関わりは,被告病院における前記インターフェロン療法が中止されてから約2ヵ月後に,被告病院からの診療情報提供が全くないまま,亡aが夫とともに突然参加人病院を受診して参加人病院医師が外来診察,精神療法,薬物処方を行い,薬剤処方期間である1週間経過時点で再受診せず,約1ヵ月後に亡a単身で突然外来受診したのに対し,診察,精神療法,薬物処方を行い,薬剤処方期間である2週間経過時点で再受診しないまま,以上の2回の突然の外来受診で診療行為は終了しているのである。 イ次に,行為規範における共同の有無を考えれば,民事上の過失責任の内- 124 -容である法的注意義務違反すな 点で再受診しないまま,以上の2回の突然の外来受診で診療行為は終了しているのである。 イ次に,行為規範における共同の有無を考えれば,民事上の過失責任の内- 124 -容である法的注意義務違反すなわち結果予見義務および結果回避義務の前提となる,予見可能性および結果回避可能性,また違法性判断の前提となる違法性判断準則等のいずれにおいても,C型肝炎治療としてのインターフェロン療法を前提とした規範を参加人が被告とともに共同するという関係には立たないとするのが正しい。 前述のとおり,本件では,亡aが参加人病院を初診した際,参加人は被告から何らの診療情報の提供を受けていない。医療機関相互の関連共同性を論ずる上でこの点は極めて重要である。言うまでもないことであるが,各医療機関の医師には,秘密を漏らす罪という刑事犯罪まで予定された守秘義務が存在し,医師にとって患者情報の保護,プライバシーの保護は重大な法的義務として位置づけられている。すなわち,医療機関相互が立地やスタッフ間交流等によって従前より旧知の関係にあったとしても,特定の患者に関する診療関係においては,患者の明示の意思を度外視して,勝手に医療機関同士の判断のみによって当該患者の診療情報を共有し診療行為を共同に行うことは原則的に許されないのである。具体的に言えば,被告病院から参加人病院に対し,亡aが参加人病院を今後受診するかもしれないことを見越して,亡aの了解もないままに診療情報を参加人病院に提供することは許されないし,逆に,参加人病院としても亡a受診時にC型肝炎治療で被告病院受診中であることが判明したとしても,もともとの診療情報提供のない被告病院に対して勝手に診療情報を提供することも許されない。特に精神科の臨床においては,受診患者のプライバシーの保護には相当神経質に対応することが医師患者 したとしても,もともとの診療情報提供のない被告病院に対して勝手に診療情報を提供することも許されない。特に精神科の臨床においては,受診患者のプライバシーの保護には相当神経質に対応することが医師患者間の常識的な共通認識となっており,これに反すれば新たな法的紛争が起り得ることは容易に予測可能な事柄でもある。 つまり,医療機関相互および患者全てが共通の理解のもとで,診療情報を共有して共同して診療にあたるという事実がなければ,診療行為に際し- 125 -ての医療機関それぞれに妥当する行為規範の共同性はあり得ないのである。 本件は,そのような規範の共同性を想定する基礎が欠落している。 共同不法行為の不成立以上によれば,参加人病院に共同不法行為が成立しないことは明らかである。 - 126 -第8[原告・被告・参加人] 損害額(原告らの主張) 逸失利益2823万4290円賃金センサス平成12年女子学歴計50~54歳の平均賃料額である372万1600万円を基礎とし,生活費を30%(女子)控除し,就労可能年数を死亡時である51歳から67歳までの16年間として,中間利息5%の控除をライプニッツ方式で行うと,次の計算式のとおりとなる。 3,721,6001-0.310.83828,234,290〔計算式〕×()×= 死亡慰謝料2400万0000円亡aは,原告bの妻であり,また原告c及びdの母親であるところ,これらの家族とともに経験できる喜びを死亡により失ったのであるから,その精神的損害を慰謝するには,少なくとも金2400万円を必要とする。 弁護士費用522万3429円原告らは,本件訴訟の遂行を弁護士に委任し,その報酬として報酬会規による報酬額を支払うことを約した。本件のような医療事件にあっては,訴訟遂行の上で弁護士の存 る。 弁護士費用522万3429円原告らは,本件訴訟の遂行を弁護士に委任し,その報酬として報酬会規による報酬額を支払うことを約した。本件のような医療事件にあっては,訴訟遂行の上で弁護士の存在は不可欠であるから,本件に関しては,標準報酬額の内金522万3429円(上記1及び2の合計額5223万4290円の1割)を被告及び参加人に負担させることが相当である。 合計5745万7719円(被告の主張)争う。 (参加人の主張)- 127 -争う。 - 128 -第9[原告・被告・参加人] 亡a自身又は原告らの過失の有無(被告の主張) 亡a自身の過失原告らに対してインターフェロン治療に関する説明を怠ったこと( )1被告が準備書面,診療経過一覧表等で主張するとおり,亡aはf医師から再三インターフェロン治療の内容,その副作用,副作用への対処法(何か変調を感じた時または新たな副作用の発現を自覚した場合には,速やかに主治医または看護師に報告すること)等に関して十分な説明を受け,その内容を家族にも伝えるように指導されていたにも拘わらず,原告らに対して説明することを怠った。 亡aには原告らに対してインターフェロン治療に関する説明を怠ったことに過失がある。 家族同伴による被告病院の受診を拒否したこと( )2被告が準備書面,診療経過一覧表等で主張するとおり,亡aはf医師から再三家族同伴で被告病院を受診するように指導されたにも拘わらず,これを拒否し,その後一度も家族同伴で被告病院を受診することはなかった。 亡aには家族同伴で被告病院を受診することを拒否したことに過失がある。 主治医による精神科受診勧奨を拒否し,自ら精神科を受診しなかったこと( )3被告が準備書面,診療経過一覧表等で主張するとおり,亡aはf医師から再三他院の精神科を受 ことを拒否したことに過失がある。 主治医による精神科受診勧奨を拒否し,自ら精神科を受診しなかったこと( )3被告が準備書面,診療経過一覧表等で主張するとおり,亡aはf医師から再三他院の精神科を受診するように勧奨されたにも拘わらず,これを拒否し,自ら精神科を受診しなかった。 亡aには主治医による精神科受診勧奨を拒否し,自ら精神科を受診しなかったことに過失がある。 主治医が処方した向精神薬・抗不安薬を勝手に服用中止したこと( )4- 129 -被告が準備書面,診療経過一覧表等で主張するとおり,亡aはf医師から処方された薬剤(特にセルシン)を,自身の勝手な判断の下,服用を中止した。 亡aには主治医が処方した抗精神薬・抗不安薬を勝手に服用を中止したことに過失がある。 主治医に対して他院の精神科(参加人病院)受診の事実を報告しなかった( )5こと被告,原告が準備書面,診療経過一覧表等で主張するとおり,亡aは原告らに伴われて他院の精神科である参加人病院を受診したにもかかわらず,その事実をf医師に対して報告しなかった。 亡aには主治医に対して他院の精神科(参加人病院)を受診したことを報告しなかったことに過失がある。 主治医に対して自殺未遂を繰り返した事実等を報告せず,即座に被告病院( )6を受診しなかったこと被告が準備書面,診療経過一覧表等で主張するとおり,亡aはf医師から自己の心身に何かしらの変調を感じた時,または新たな副作用の発現を自覚した時は,速やかに主治医または看護師に報告すること,さらに定時の診察日以外でも要望に応じて随時面談,診察をする用意があることを伝えられていたにも拘わらず,自殺未遂後即座に被告病院を受診することもなく,その後になって漸く被告病院を受診した際にも主治医に対して自殺未遂を繰り返した事実等を伝えなかった。 亡 る用意があることを伝えられていたにも拘わらず,自殺未遂後即座に被告病院を受診することもなく,その後になって漸く被告病院を受診した際にも主治医に対して自殺未遂を繰り返した事実等を伝えなかった。 亡aには主治医に対して自殺未遂を繰り返した事実等を伝えず,即座に被告病院を受診しなかったことに過失がある。 参加人病院を定期的に受診せず,自殺未遂を繰り返した後も即座に受診せ( )7ず,処方された薬剤を勝手に服用中止したこと被告が準備書面,診療経過一覧表等で主張するとおり,亡aは参加人病院- 130 -を定期的に受診せず,自殺未遂を繰り返した後も即座に受診せず,処方された薬剤を勝手に服用中止した。 平成11年12月11日,参加人病院は亡aに対して7日分だけの処方投薬をしていることから,亡a及びその家族である原告らは,亡aの自宅等での身体及び精神状態が悪かったでのあれば,処方された薬剤が切れる同年12月18日には同院を再受診すべきであったが,亡aは平成12年1月15日まで同院を受診せず,28日間もの長期にわたり受診しなかった。同じく平成12年1月15日,参加人病院は亡aに対して14日分だけの処方投薬をしていることから,亡a及びその家族である原告らは,亡aの自宅等での身体及び精神状態が悪かったでのあれば,処方された薬剤が切れる同年1月29日には同院を再受診すべきであったが,亡aはついぞ同年2月20日自殺するに至るまで同院を受診せず,23日間もの長期にわたり受診しなかった。 その間,亡aは何度か自殺を図ることを繰り返したにもかかわらず(未遂,即座に参加人病院を受診することもなく,参加人病院から処方された)薬剤の服用を勝手に中止していた。 亡aには,参加人病院を定期的に受診せず,自殺未遂を繰り返した後も即座に受診せず,処方された薬剤を勝手に服用中 病院を受診することもなく,参加人病院から処方された)薬剤の服用を勝手に中止していた。 亡aには,参加人病院を定期的に受診せず,自殺未遂を繰り返した後も即座に受診せず,処方された薬剤を勝手に服用中止したことに過失がある。 原告ら自身の過失亡aが被告病院から処方された薬剤を勝手に服用中止した事実を知りなが( )1らこれを看過し,被告病院の主治医に対して報告しなかったこと原告,被告の書面,診療経過一覧表によれば,亡aの同居の家族である原告らは,亡aが被告病院から処方された薬剤を勝手に服用していなかった事実を知りながら看過し,被告病院の主治医に対して報告しなかった。当時,亡aの状態は「1月20日ころ,亡aは野菜包丁で左手首を切る,ベルトで首を絞めるなどの方法により,何度か自殺を図ったがそのときは未遂に終わ- 131 -った「2月に入り,亡aは,もみじ湖に連れて行け,上から落とせ,灯。」,油をかけ火をつけろ,殺してくれ,等と口にするようになった」というも。 のであり,同居人である原告らは,亡aのこれ程の切迫した状況を目の当たりにし,亡aが自殺を遂げる可能性が大きいこと事を十分認識し(原告bは,亡aが野菜包丁で自らの手首を切るという自殺企図の後に家内の包丁を隠しており,亡aの自殺の危険性を十分に認識していた,亡aが被告病院から)処方された薬剤を勝手に服用にしていなかった事実を知りながら看過し,被告病院の主治医に対して報告しなかったものであり,原告らは家族としての常識的な危機意識に希薄で亡aの安全確保につき家族としての常識的な注意義務を怠ったものである。 原告らは,亡aが被告病院から処方された薬剤を勝手に服用中止した事実を知りながら看過し,被告病院の主治医に対して報告しなかったことに過失がある。 亡aが自殺未遂を繰り返した事実等を ったものである。 原告らは,亡aが被告病院から処方された薬剤を勝手に服用中止した事実を知りながら看過し,被告病院の主治医に対して報告しなかったことに過失がある。 亡aが自殺未遂を繰り返した事実等を被告病院の主治医に対して一切報告( )2しなかったこと原告,被告,参加人の書面,診療経過一覧表によれば,亡aの同居の家族である原告らは,亡aが自殺未遂を繰り返した事実等を被告病院の主治医に対して一切報告しなかった。当時,亡aの状態は「1月20日ころ,亡aは野菜包丁で左手首を切る,ベルトで首を絞めるなどの方法により,何度か自殺を図ったがそのときは未遂に終わった「2月に入り,亡aは,もみじ。」,湖に連れて行け,上から落とせ,灯油をかけ火をつけろ,殺してくれ,等と口にするようになった」というものであり,同居人である原告らは,亡a。 のこれ程の切迫した状況を目の当たりにし,亡aが自殺を遂げる可能性が大きいこと事を十分認識しながら(原告bは,亡aが野菜包丁で自らの手首を切るという自殺企図の後に家内の包丁を隠しており,亡aの自殺の危険性を十分に認識していた,亡aが自殺未遂を繰り返した事実等を被告病院の主)- 132 -治医に対して一切報告しなかったものであり,原告らは家族としての常識的な危機意識に希薄で亡aの安全確保につき家族としての常識的な注意義務を怠ったものである。これは,単に「IFNの副作用を十分に認識していなかったから」という原告らの主張するような釈明で済むような問題ではないのであって,例えば,IFN治療とは全く関係のない一般の夫人又は母親が,既に精神疾患が疑われ精神科を受診していたという経過の中で,亡aと同様の挙動や発言をしていた場合には,同居の家族としてはこれら繰り返された服薬不履行,自殺企図,自殺未遂を速やかに医師に報告し,患 ,既に精神疾患が疑われ精神科を受診していたという経過の中で,亡aと同様の挙動や発言をしていた場合には,同居の家族としてはこれら繰り返された服薬不履行,自殺企図,自殺未遂を速やかに医師に報告し,患者の受診に同伴することは至極自然で常識的な対応であり,本件においても,原告らは,IFNの副作用等の認識の有無にかかわらず,正にこのような対応をすべきだったのである。 この点,IFN治療の副作用としてのうつ,自殺企図に関して説明を受けた場合には,上記のような自殺企図等に対して適切な対処が出来るが,上記説明を受けない場合には,上記のような家族の自殺企図等に直面した際には何らの対処ができないという原告らの主張は,およそ合理的な根拠が存在しない。 原告らは,亡aが自殺未遂を繰り返した事実等を被告病院の主治医に対して一切報告しなかったことに過失がある。 亡aが参加人病院を受診しようとせず,自殺未遂を繰り返した後も即座に( )3受診しなかったことを知りながらこれを看過し,亡aを被告病院及び参加人病院のいずれにも即座に受診させなかったこと原告,被告,参加人の書面,診療経過一覧表によれば,亡aの同居の家族である原告らは,亡aが参加人病院を受診しようとせず,自殺未遂を繰り返した後も即座に受診しなかったことを知りながら看過し,亡aを被告病院及び参加人病院のいずれにも即座に受診させなかった。当時,亡aの状態は「1月20日ころ,亡aは野菜包丁で左手首を切る,ベルトで首を絞めるな- 133 -どの方法により,何度か自殺を図ったがそのときは未遂に終わった「2。」,月に入り,亡aは,もみじ湖に連れて行け,上から落とせ,灯油をかけ火をつけろ,殺してくれ,等と口にするようになった」というものであり,同。 居人である原告らは,亡aのこれ程の切迫した状況を目の当たりにし 入り,亡aは,もみじ湖に連れて行け,上から落とせ,灯油をかけ火をつけろ,殺してくれ,等と口にするようになった」というものであり,同。 居人である原告らは,亡aのこれ程の切迫した状況を目の当たりにし,亡aが自殺を遂げる可能性が大きいこと事を十分認識しながら(原告bは,亡aが野菜包丁で自らの手首を切るという自殺企図の後に家内の包丁を隠しており,亡aの自殺の危険性を十分に認識していた,亡aが参加人病院を受診)しようとせず,自殺未遂を繰り返した後も即座に受診しなかったことを知りながら看過し,亡aを被告病院及び参加人病院のいずれにも即座に受診させなかったものであり,原告らは家族としての常識的な危機意識に希薄で亡aの安全確保につき家族としての常識的な注意義務を怠ったものである。これは,単に「IFNの副作用を十分に認識していなかったから」という原告らの主張するような釈明で済むような問題ではないのであって,例えば,IFN治療とは全く関係のない一般の夫人又は母親が,既に精神疾患が疑われ精神科を受診していたという経過の中で,亡aと同様の挙動や発言をしていた場合には,同居の家族としてはこれら繰り返された服薬不履行,自殺企図,自殺未遂を速やかに精神科医師等に報告し,患者の受診に同伴することは至極自然で常識的な対応であり,本件においても,原告らは,IFNの副作用等の認識の有無にかかわらず,正にこのような対応をすべきだったのである。 この点,IFN治療の副作用としてのうつ,自殺企図に関して説明を受けた場合には,上記のような自殺企図等に対して適切な対処が出来るが,上記説明を受けない場合には,上記のような家族の自殺企図等に直面した際には何らの対処ができないという原告らの主張は,およそ合理的な根拠が存在しない。 しかも,原告らは,パンフレットを読んでIFN治療には 説明を受けない場合には,上記のような家族の自殺企図等に直面した際には何らの対処ができないという原告らの主張は,およそ合理的な根拠が存在しない。 しかも,原告らは,パンフレットを読んでIFN治療にはうつ病又は精神症状の出現という生命に関わるかもしれない重大な副作用のあることを知り,- 134 -かつ,平成11年10月頃にはf医師から二度にわたり亡aが精神科受診を勧められたことも知っていたのである。 原告らは,亡aが参加人病院を受診しようとせず,自殺未遂を繰り返した後も即座に受診しなかったことを知りながら看過し,亡aを被告病院及び参加人病院のいずれにも即座に受診させなかったことに過失がある。 平成12年2月20日(自殺当日,亡aの自殺の具体的危険性を十分に( )4)認識できたにもかかわらず,何らの自殺防止に必要な措置とらず,亡aの自殺を招いたこと平成12年2月20日(亡aの自殺当日,前述のような亡aの状態を原)告らは認識していたにもかかわらず(原告bは,亡aが野菜包丁で自らの手首を切るという自殺企図の後に家内の包丁を隠しており,亡aの自殺の危険性を十分に認識していた,亡aの自殺を防止するために必要な措置を全く)取らず,亡aの自殺を許している。 前述のとおり,原告らは「1月20日ころ,亡aは野菜包丁で左手首を,切る,ベルトで首を絞めるなどの方法により,何度か自殺を図ったがそのときは未遂に終わった「2月に入り,亡aは,もみじ湖に連れて行け,上。」,から落とせ,灯油をかけ火をつけろ,殺してくれ,等と口にするようになった」という亡aの自殺企図,自殺の具体的可能性(切迫した自殺の可能。 性)を,同年2月20日(自殺当日)までに十分に認識していた。 にもかかわらず,同年2月20日,原告bは,亡aの様子が,昨日までと違う感じで,いつもと 企図,自殺の具体的可能性(切迫した自殺の可能。 性)を,同年2月20日(自殺当日)までに十分に認識していた。 にもかかわらず,同年2月20日,原告bは,亡aの様子が,昨日までと違う感じで,いつもと違う形相をしており「灯油をかけ火をつけろ」と自,殺の具体的方法まで口にしていた亡aから「マッチをくれ」と言われ取っ。 組み合いまでしたにもかかわらず,そのような亡aを放置し,原告cに対して「母さんおかしいから見ていてくれ」と伝えたのみで,自分は駅伝練習。 会に出かけている。原告cも,同年2月20日までの母・亡aの様子が昨日までと違う感じで,いつもと違う形相をしていたことを認識し,父・原告b- 135 -から「母さんおかしいから見ていてくれ」と亡aの観察,保護を託された。 にもかかわらず,重大な不注意で亡aにマッチを渡したため,亡aが灯油を被って焼身自殺を遂げるのを招いたのである。 原告らは,同年2月20日(自殺当日)まで,前述のような亡aの自殺企図,自殺の具体的可能性(切迫した自殺の可能性)を十分に認識し,当日の亡aの様子,やり取り等から,正に当日の亡aの具体的な自殺の可能性を十分に認識,予見できたにもかかわらず,亡aを十分に観察,保護する,被告病院若しくは参加人病院を速やかに受診させる等,亡aの自殺防止のために必要十分な措置をとらずに亡aを放置したことから,亡aの自殺を招いたのであり,かかる原告らの行為(自殺防止措置の不作為)こそが亡aの自殺を招いた原因なのであって,この点に原告らの大きな過失がある。 その他の過失( )5以上のような原告らの過失が生じた遠因には,亡aとその家族である原告らの間に大きなコミュニケーション不足がある。 例えば,平成10年5月27日,被告病院の主治医であるf医師は,亡aに対してC型慢性肝炎に罹患していること 過失が生じた遠因には,亡aとその家族である原告らの間に大きなコミュニケーション不足がある。 例えば,平成10年5月27日,被告病院の主治医であるf医師は,亡aに対してC型慢性肝炎に罹患していること,同疾患の長期予後が必ずしも良好でないこと等を十分説明していたにも関わらず,これらに関して原告らは「不知」と認否したことから,この頃亡aはこれら説明の事実,その内容等を原告らに話していなかったものと考えられる。また,ウイルス肝炎受給者証申請には,添付の住民票を役場で発行してもらったり,所轄保健所への書類の提出のため保健所へ出向いたり煩雑な作業を伴うが,亡aはそれらを実践していたのであるから,通常同居の家族である原告らは亡aから聞かずとも自ら気づくことも可能であるにもかかわらず,この点に関して「不知」と認否し(当初は「不知」と認否していたものの,被告から亡aとのコミュニケーション不足に関する主張が出た途端に,ウイルス肝炎受給者証の申請自体は認識していたと認否を変更した,これらの事実に自ら気づきもしなか)- 136 -ったし,亡aも原告ら家族に話もしなかったものと考えられる。更に,平成11年9月29日の大腸造影検査(注腸検査)は,前日には検査食を3食分自宅で食べなければならず,前日,前々日に下剤を飲まなければならない大変な検査であるため,通常同居の家族である原告らは,自分の妻又は母親が検査のため下剤を飲み,特別な検査食を3食も食べていれば,これら事実に気づき検査の内容等に話が及ぶはずである。また,実際の大腸造影検査(注腸検査)は患者の肛門からチューブを挿入しバリウムと空気を注入した上,レントゲン透視台上で体を二転三転させるというかなり大変な検査であるため,検査後には家族内で当然その検査内容について話が及ぶはずであるが,この点に関しても原告 ブを挿入しバリウムと空気を注入した上,レントゲン透視台上で体を二転三転させるというかなり大変な検査であるため,検査後には家族内で当然その検査内容について話が及ぶはずであるが,この点に関しても原告らは「不知」と認否し(当初は「不知」と認否していたものの,被告から亡aとのコミュニケーション不足に関する主張が出た途端に,大腸造影検査の施行自体は認識していたと認否を変更した,原告ら)はこれらの事実に気づきもせず,亡aも原告ら家族に話しもしなかったものと考えられる。 現に,亡aが,野菜包丁で自らの手首を切る,ベルトで自らの首を絞めるという自殺未遂を行ったにも拘わらず,原告bは,これに関して亡a自身に何ら聞かず,その詳細を確認する等の行為を行わなかったことからも,原告らと亡aとの間にはコミュニケーションが隔絶していたのは明らかである。 以上のような事も含めて,被告病院での亡aに対する処置,検査,説明等に関して,驚くほど亡aの同居の家族である原告らは知らず,また伝わっていなかったものであり(被告は,これら事実を亡aの死亡後に知るに至ったものであるが,このような事実は,亡aとその家族である原告らの間の大)きなコミュニケーション不足が存在していることを強く推認させ,それが本件亡a死亡の遠因,つまり上記亡a及びその家族である原告らの過失を生じさせ,それら過失と亡a死亡との因果関係を生じさせたものである。 なお,亡aの同居人である原告らは,上記亡aの切迫した状況(自殺未遂- 137 -の繰り返し等)を相当期間に渡り間近に見て認識し,亡aが自殺を遂げる可能性が大きいこと事(具体的な自殺の可能性)を十分認識でき,実際に認識していたにも拘わらず,これに対処することをせず,ただ亡a死亡は原告らがインターフェロンの副作用等に関して知らなかったことが原因であると 大きいこと事(具体的な自殺の可能性)を十分認識でき,実際に認識していたにも拘わらず,これに対処することをせず,ただ亡a死亡は原告らがインターフェロンの副作用等に関して知らなかったことが原因であると主張することは,あまりに無理があると言わざるを得ない。 過失相殺の主張民法722条2項は,不法行為による損害賠償額を定めるにつき被害者の過失を斟酌できる旨を定めたもので,この被害者の過失には被害者本人と身分上,生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失,いわゆる被害者側の過失をも包含するものと解されている(最高裁昭和51年3月25日判決参照。 )本件においては,被告には不法行為は成立せず,仮に不法行為が成立するとしても,上記2の亡a本人の過失は被害者(ここでは,便宜上一般的に用いられている「被害者」という言葉を用いるが)本人の過失として,その家族である原告らの過失は「被害者側の過失」として,過失相殺されるべきである。 また,以上は,債務不履行の場合も同様に当てはまることから,過失相殺されるべきである(民法418条。 )(参加人の主張)過失相殺について,被告の主張を援用する。 (原告らの主張) 亡a自身の過失について亡aから原告らに対するインターフェロン治療に関する説明( )1インターフェロン治療,特にその副作用については「自殺企図が現れる,ことがある」との警告がなされていること,それも含めた副作用の重大性が- 138 -家族等周囲へ与える影響が大きいことから,被告病院が直接原告ら家族に対して説明をなすべき義務を負っている。従って,亡aが原告らに対してインターフェロン治療に関する説明を仮に全くしていなかったとしても,それは亡aの過失とはならない。 家族同伴による受診( )2亡aが家族同伴による受診を「拒否」した 。従って,亡aが原告らに対してインターフェロン治療に関する説明を仮に全くしていなかったとしても,それは亡aの過失とはならない。 家族同伴による受診( )2亡aが家族同伴による受診を「拒否」したことは否認。そもそもf医師が亡aに対し再三家族同伴による受診を指導したことは不知。 被告病院としては,患者自身に対して家族同伴を伝達すれば足りるものではなく,家族に対するインターフェロン治療,特にその副作用についての説明を治療に先立って行う義務があり,そのためには医師自ら家族に連絡を取るなどして直接家族への説明機会を確保する必要があったのに,それを怠った。従って,この点も亡aの過失とはならない。 精神科受診( )3亡aに対しては,f医師から何の具体的理由も示されないままの突然精神科受診の提案がなされ,また原告ら家族に対しても別途何らの説明がなかったことから,亡a及び原告らは,被告病院が自らの責任を放棄していると感じた。精神・神経症状の少なくともおそれのある患者自身に対してストレートに精神科受診を勧め,家族に対して何らの説明も行わなかったf医師の行為をもって,精神科受診の勧奨を尽くしたとは到底言えない。従って,亡aが精神科を受診しなかったことが亡aの過失とはならない。 薬剤の服用( )4亡aが処方された薬剤を,自身の勝手な判断の下服用を中止したことは否認。 処方された薬剤のうち,レンドルミンについては,不眠時に服用すれば良い旨指示されていた。またセルシンについても,気分が悪くなったときに飲むようにと言われていた。 - 139 -仮に亡aが薬剤の服用を定期的に行っていなかったとしても,それは亡aがf医師からストレートに精神科受診を勧められ,原告ら家族とともに,被告病院が自らの責任を放棄したと感じていたからに他ならず,すでに被告病院に対する 用を定期的に行っていなかったとしても,それは亡aがf医師からストレートに精神科受診を勧められ,原告ら家族とともに,被告病院が自らの責任を放棄したと感じていたからに他ならず,すでに被告病院に対する信頼を失っていたこともその理由である。従ってこれを亡aの過失と評価することは妥当ではない。 他の精神科受診の報告( )5亡aが参加人病院に通院したこと,そのことをf医師に報告しなかったことは認めるが,それが亡aの過失になることは争う。 亡a及び原告らは,被告病院が亡aの精神・神経症状に対して薬剤を投与する以外,被告病院に入院させたり,適切な方法で専門医に紹介したり,家族にさえ何らの説明がなかったことから,被告病院に対する信頼を失い,やむなく参加人病院への通院を行ったものである。 被告は,自ら行うべき義務を行っていないにもかかわらず,亡aが参加人病院への通院を報告しなかった理由に思い至ることなく,それを亡aの過失と評価するが,妥当ではない。 自殺未遂の報告( )6亡aが自殺未遂の事実を被告病院に報告しなかったことは認めるが,それが亡aの過失になることは争う。 被告は,自殺未遂をする程度の精神・神経状態である亡a自身に報告義務があるかのごとき主張をするが,妥当でない。 参加人病院への受診( )7参加人病院への受診が,平成11年12月11日及び平成12年1月15日の2回であること,処方された薬剤がそれぞれ7日分及び14日分であることは認めるが,その余は否認し争う。 平成11年12月11日においては,参加人病院の医師は,この薬を飲めば良くなる,薬を飲んで様子を見ましょうと述べただけで,投薬した薬の説- 140 -明もせず,次回通院日の指示もせず,亡aの現状(病名)や治療方針,家族がどのようなことに気をつけて生活すれば良いか等の指導を何ら行わなか 様子を見ましょうと述べただけで,投薬した薬の説- 140 -明もせず,次回通院日の指示もせず,亡aの現状(病名)や治療方針,家族がどのようなことに気をつけて生活すれば良いか等の指導を何ら行わなかった。また平成12年1月15日においても,参加人病院の医師は,前回と違う薬を処方しましょうかと説明しただけで,どのような薬が出ているかの説明はなかった。また次回通院日や家族の留意点の指示説明もなかった。そこで亡a及び原告らとしては,それ以上にどのように対処して良いかが全く理解できなかったものである。従って,亡aの参加人病院への通院が2回にとどまったことが亡aの過失とはならない。 原告ら自身の過失について薬剤の服用( )1原告らが,亡aの薬剤服用状況について被告病院に伝えなかったことが原告らの過失となることは争う。 被告病院には,インターフェロン治療及びその副作用について,事前に,あるいは遅くともうつ状態の発生した時点で,原告ら家族に対してその説明を行うとともに,家族に取ることができる対処法を指導する義務があったのに,f医師はその義務を何ら果たさず,原告ら家族に対する説明は一切行わなかった。 そのため,原告らは亡aの精神・神経症状がなぜ悪化しているのか理解することができず,また被告病院に対する信頼をすでに失っていたことから,誰に相談して良いのかわからず,まして家族としてどのように対処して良いかがわからない状態だった。 被告は,原告らに「家族としての常識的な危機意識」等がなかったと原告らを非難するが,そのような「常識的な」危機意識等は,被告病院から原告ら家族に対してインターフェロンの副作用についての説明がきちんとなされることによって初めて形成されるものである(インターフェロンの副作用としてのうつ状態がどのようなものであるのか,一般人にと ら原告ら家族に対してインターフェロンの副作用についての説明がきちんとなされることによって初めて形成されるものである(インターフェロンの副作用としてのうつ状態がどのようなものであるのか,一般人にとっては決して「常- 141 -識的」とはいえない。 )自殺未遂( )2原告らが,亡aの自殺未遂の事実について被告病院に伝えなかったことが原告らの過失になることは争う。 理由は前項と同様である。 参加人病院及び被告病院への不受診( )3原告らが,亡aの自殺未遂の後に,参加人病院及び被告病院へ受診させなかったことが原告らの過失になることは争う。 これも理由は前述したところとほぼ同様である。原告らは,被告病院のみならず,参加人病院からも,亡aの症状の現状や,家族としてなすべきことについての指示を何ら与えられなかったことから,被告の言う「亡aの安全確保につき家族としての常識的な注意義務」を形成することができなかったものである。 亡aの自殺当日の原告らの行動( )4被告は,亡aの自殺当日に,原告らが亡aの自殺を防止するために必要な措置を全く執らなかったことが,亡aの自殺の原因であると主張する。 しかし,そもそも原告らは,亡aの精神神経症状がインターフェロンの副作用によるものであることを,亡aの自殺時まで全く認識することができなかったが,これは前述の通りもっぱら被告の説明義務違反に基づくものである。 被告は,原告らが亡aを,速やかに被告病院あるいは参加人病院に受診させるべきであったと主張するものであるが,原告らは,被告病院及び参加人病院から,亡aの現状(インターフェロンの副作用による精神神経症状)及びその対処法について何らの説明も受けておらず,かえって被告病院からは精神科受診をストレートに勧められたり,参加人病院も原告らの話を聞き置くにとどま (インターフェロンの副作用による精神神経症状)及びその対処法について何らの説明も受けておらず,かえって被告病院からは精神科受診をストレートに勧められたり,参加人病院も原告らの話を聞き置くにとどまり,次回診察の指示さえも出していなかったことから,両病院に- 142 -対する信頼関係を失っていたのであって,原告らが亡aを両病院に受診させなかったことは原告らの責に帰すべきことがらではない。亡aの自殺当日の様子を原告らが適切に判断し,適切な措置を執るべきであったという被告の主張は誤っている。 コミュニケーション不足( )5亡aと原告らとの間に大きなコミュニケーション不足があったことは否認。 インターフェロン治療及びその副作用については,被告病院が直接原告ら家族に対して説明する義務を負っており,この点家族の過失はない。 本件においても,f医師は,原告ら家族に対し,亡aのインターフェロン治療前及び副作用発生後を通じて,1度も直接の連絡を取らず,1度も説明を行わなかった。そのことを看過して,亡aと原告らのコミュニケーション不足を論じることは誤っている。 - 143 -第10[原告・被告・参加人] 消滅時効(不法行為)の成否(被告の主張)原告らは亡aの死亡に関する不法行為に基づく損害賠償を請求するところ,亡aの死亡(平成12年2月20日)から本件訴訟提起(平成16年3月9日)まで3年以上経過していることから,被告は,原告らの請求する不法行為に基づく損害賠償請求権につき消滅時効(民法724条)を援用する。 (参加人の主張)消滅時効について,被告の主張を援用する。 (原告らの主張)原告らは,亡aの死亡に関して,被告らから何らの誠意ある説明を受けていなかったため,亡aの死亡による損害を認識することができなかった。 原告らが同損害を認識するに至ったの 援用する。 (原告らの主張)原告らは,亡aの死亡に関して,被告らから何らの誠意ある説明を受けていなかったため,亡aの死亡による損害を認識することができなかった。 原告らが同損害を認識するに至ったのは,平成13年12月26日に実施された,被告病院に対する証拠保全手続(伊那簡易裁判所平成13年(サ)第115号)が行われ,そこで取り寄せたカルテを検討した後であり,その後3年以内に本件訴訟を提起していることから,原告らの被告及び参加人に対する不法行為に基づく損害賠償請求権は時効消滅していない。 以上

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る