平成14(ワ)28262 出荷停止差止等請求

裁判年月日・裁判所
平成16年4月15日 東京地方裁判所
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判決文本文65,317 文字)

H16.4.15東京地方裁判所判決平成14年(ワ)第28262号出荷停止差止等請求事件 主文 1 原告有限会社足高薬品,原告有限会社イシイ薬品ハイチネット,原告A,原告B,原告C,原告D,原告E及び原告池田薬品株式会社が,別紙契約目録3記載の契約に基づく買主の地位を有することを確認する。 2 原告らの私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律24条に基づき別紙商品目録記載の商品の引渡しを求める請求及び一般民事上の請求のうち別紙商品目録記載の商品の注文の承諾及び別紙商品目録記載の商品の引渡しを求める請求に係る各訴えをいずれも却下する。 3 原告らのその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は,これを50分し,その14を被告の,その24を原告有限会社足高本店の,その2を原告Fの,その余を原告らの各負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨 1 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)24条に基づく差止請求関係(1) 被告は,原告らに対し,原告らの注文に係る別紙商品目録記載の商品につき,出荷停止をしてはならない。 (2) 被告は,原告らに対し,別紙契約目録1記載の条件により,別紙商品目録記載の商品を別紙数量目録記載の数量だけそれぞれ引き渡せ。 2 一般民事上の請求関係(1) 原告らが被告に対し,別紙契約目録1記載の契約に基づき,原告らの注文に係る別紙商品目録記載の商品を注文後1週間以内に引渡しを受けるべき地位にあることを確認する。 (2) 被告は,原告らから別紙商品目録記載の商品の注文を受けたときは,在庫がないなどの正当な理由がない限り,別紙契約目録1記載の条件により,これを承諾せよ。 (3) 被告は,原告らに対 。 (2) 被告は,原告らから別紙商品目録記載の商品の注文を受けたときは,在庫がないなどの正当な理由がない限り,別紙契約目録1記載の条件により,これを承諾せよ。 (3) 被告は,原告らに対し,別紙契約目録1記載の条件により,別紙商品目録記載の商品を別紙数量目録記載の数量だけそれぞれ引き渡せ。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 4 上記1(2),2(2)及び(3)について仮執行宣言第2 事案の概要本件は,被告において,被告から家庭用配置薬の仕入をしている配置販売業者である原告らに対し,既存の商品供給契約に代えて,その顧客台帳(いわゆる懸場帳)上の情報を提供すること,原告らの営業活動範囲についての地域指定をして制限すること及び得意先の譲渡を制限することを内容とする商品供給契約の締結を求めたところ,原告Fを除く原告らがこれに応じなかったため,既存の商品供給契約を解約したことから,また,原告Fについては,既存の商品供給契約に代えていったんは新規の商品供給契約を締結した後にこれを解約したことから,原告らが被告に対し,既存の商品供給契約の有効な存在を前提として,①前記解約について,独占禁止法2条9項に基づく昭和57年6月18日公正取引委員会告示15号「不公正な取引方法」(以下「不公正な取引方法(一般指定)」という。)2項にいう単独の取引拒絶にあたるとして,前記解約に伴う商品の出荷停止の禁止及び必要数量の商品の引渡しを独占禁止法24条の差止請求として求めるとともに,②前記解約の効力を争い,原告らの既存の商品供給契約上の地位を確認のうえ,原告らの注文に応じた売買契約の承諾意思表示をなすこと及び必要数量の商品の引渡しを求めた事案である。これに対し,被告は,原告らとの間の既存の商品供給契約については,原告らが被告の申し入れた新規の商品供 らの注文に応じた売買契約の承諾意思表示をなすこと及び必要数量の商品の引渡しを求めた事案である。これに対し,被告は,原告らとの間の既存の商品供給契約については,原告らが被告の申し入れた新規の商品供給契約の締結に応じなかったため,相当期間を定めて解約の申入れをしたもので,解約により終了しているし,また,この解約の申入れは,新規の商品供給契約の内容に照らしても,何ら独占禁止法に違反するものではないとして争っている。 1 前提となる事実(証拠等により認めた事実については,文末の括弧書で証拠等を付記する。)(1) 当事者ア被告被告は,医薬品及び医薬部外品の製造販売を目的として,昭和22年に設立された株式会社で,現在の従業員は22名,役員は代表取締役Gのほかは,その妻と長男,監査役もGの義理の弟といういわゆる同族会社である。(甲8の2,乙5,被告代表者)被告は,別紙商品目録記載の和漢胃腸薬「三光丸」の製造及び販売を行っている。 イ原告ら原告らは,被告から仕入れた三光丸等の家庭用配置薬(以下「配置薬」という。)を一般家庭に配置し,後日配置先の家庭(以下「得意先」という。)から使用された配置薬分の代金を徴収するなどして配置販売業を営む者(以下「配置業者」という。)である。(弁論の全趣旨)(2) 当事者間における契約関係ア三光丸に関する継続的商品供給契約(ア) 三光丸の由来,効能三光丸は,鎌倉時代後期から700年の歴史を有する和漢胃腸薬(健胃薬)であり,その命名は後醍醐天皇によるものと言われている。成分は,センブリ(千振),カンゾウ(甘草),オウバク(黄檗),ケイヒ(桂皮)及び薬用炭からなる。年間生産量は,1400万包から1500万 薬)であり,その命名は後醍醐天皇によるものと言われている。成分は,センブリ(千振),カンゾウ(甘草),オウバク(黄檗),ケイヒ(桂皮)及び薬用炭からなる。年間生産量は,1400万包から1500万包であり,被告のホームページによれば「全国約80万世帯に普及し,600種類ある胃腸薬のうちで5指に入る」と説明されている。(甲6,甲8の1,甲53,被告代表者,弁論の全趣旨)(イ) 原告らとの継続的な三光丸の供給契約被告の代表者であるGの一族は,被告が設立される以前から代々三光丸の製造販売に携わっている(被告の前身は三光丸本店)。一方,原告らについてもその先代ないし個人商店の時代を通じて,原告有限会社足高本店(以下「原告足高本店」という。),原告有限会社足高薬品(以下「原告足高薬品」という。),原告有限会社イシイ薬品ハイチネット(以下「原告イシイ薬品」という。),原告A及び原告Dは100年以上前から,原告Bは40年以上前から,原告C及び原告Fは35年以上前から,原告池田薬品株式会社(以下「原告池田薬品」という。)は25年以上前から,原告Eは15年以上前から,それぞれ被告あるいはその前身の三光丸本店から三光丸を仕入れて販売している。被告の年商は5億円程度で,関連する株式会社三光丸配置研修部(以下「配置研修部」という。)等の関連業者のものも含めると9億円程度である。原告らそれぞれの三光丸の年間仕入高は,最大でも別紙数量目録記載の程度である。(甲5の1,甲6,甲8の2,甲18の1ないし10,甲62,甲63,乙5,被告代表者,弁論の全趣旨)原告らと被告の間での従前の三光丸の取引の形態は,原告らからの注文に応じて被告が販売用として三光丸を継続的に供給するというものであった(以下「本件既存契約」という。) 者,弁論の全趣旨)原告らと被告の間での従前の三光丸の取引の形態は,原告らからの注文に応じて被告が販売用として三光丸を継続的に供給するというものであった(以下「本件既存契約」という。)。明治時代に作成された「三光丸取引規定」と名付けられた簡単な取引規定(甲5の1。その内容は別紙契約目録2記載のとおり。以下「旧取引規定」という。)は存在したが,原告らとの間では個別の契約書は作成されていなかった。(甲5の1,被告代表者,弁論の全趣旨。なお,本件既存契約の詳細については,第3の2参照)原告らを含めた三光丸の配置業者は,三光丸以外の医薬品も他の製薬業者から仕入れて配置販売しているが,被告は,古くから得意先住居に配置する薬袋や薬箱として三光丸の商標の入ったものを使用するよう配置業者に求め,配置業者もまた営業活動を行ううえで三光丸を自己の商標として積極的に使用する例が多く,その結果,原告らを含めた配置業者の多くは,「三光丸」印の配置箱を用いて配置薬の配置を行い,あるいは「三光丸」の名を用いて広告を行うなど,その営業を三光丸の商標に少なからず依存している状況にあった。一方,被告においても,現在では,三光丸を配置業者を通じてのみ販売しており,三光丸の流通は配置業者に依存している状況にある。(甲5の1,甲11,甲20の1ないし10,甲31,甲33,甲39,甲55ないし58,甲61,甲81の1,4,原告足高本店代表者,原告F,被告代表者,弁論の全趣旨)イ被告による本件既存契約の解約(ア) 被告による配置先の新規開拓と配置研修部の設立被告は,三光丸の流通を専ら被告から三光丸を仕入れる配置業者に依存してきたものであり,その配置業者は約250業者に上るが,これらの配置業者による新規の得意先の 置研修部の設立被告は,三光丸の流通を専ら被告から三光丸を仕入れる配置業者に依存してきたものであり,その配置業者は約250業者に上るが,これらの配置業者による新規の得意先の開拓は必ずしも活発ではなかった。そこで,被告は,配置薬の既存の得意先の減少による売上の先細りを防ぐために,新規の得意先の開拓を行うべく,昭和60年8月には,配置研修部を被告の関連会社として設立し,配置業者の販売員の養成研修や新規得意先の開拓支援の活動を行わせることにした。配置研修部の本店所在地は被告と同じであり,平成12年においても,その役員は被告の役員と重複している。そして,以後,配置研修部は,新規得意先開拓を研修会として配置業者とともに実施し,獲得した得意先を配置業者の得意先に帰属させるなどしてきたが,平成10年ころからは配置業者側の研修会開催の要請が減ってきたこともあって,他の配置業者の活動していない地域を中心に,自ら新規の得意先の開拓も行うようになった。その結果,配置研修部は平成15年には全国8か所の営業所と90名を超す従業員を擁するだけでなく,平成12年上半期の三光丸取扱量が配置業者間で首位になるなどし,被告から配置研修部への年間販売量は,最近では三光丸全体の2割にも達している。なお,被告は,原告らとの取引の終了に備え,本件訴訟の係属中である平成15年中に有限会社三光丸奈良などの新たな販売会社を全国的に9社設立した。(甲14,甲64,甲77の1ないし9,甲78の1ないし4,原告足高本店代表者,被告代表者,弁論の全趣旨)(イ) 三光丸同盟会と新しい「三光丸取引規定」の作成三光丸の配置業者は,100年以上も前から三光丸同盟会(以下「同盟会」という。)を組織しており,原告らもその会員であり,あるいは会員であった。 光丸同盟会と新しい「三光丸取引規定」の作成三光丸の配置業者は,100年以上も前から三光丸同盟会(以下「同盟会」という。)を組織しており,原告らもその会員であり,あるいは会員であった。 配置業者の販売地域の指定は,第2次世界大戦前は被告が行い,戦後は同盟会が地域指定の制度を含む自主的な取引ルールを定めて行っていた。しかしながら,同盟会による自主的な規制は,独占禁止法の禁止するカルテルに該当するおそれがあるのではないかとの指摘が一部の配置業者から上がったこと,また,前記(2)ア(イ)でも述べたように,被告と三光丸の配置業者との間の本件既存契約の規律は,約100年前の明治時代に定められた僅か4箇条の明文規定からなる旧取引規定に基づくものであり,個別の配置業者との間で契約書は交わされていなかったことから,被告は,従前の同盟会との取決め及び被告と配置業者との間の取決めをまとめながら成文化し,新たな取引規定を作成し,これに基づく契約の締結をすることを企図した。(甲37,乙5,乙22,乙49)そこで,被告は,平成11年秋,同盟会の幹事会に意見も聴きながら新たな取引規定の原案を作成し,平成13年1月ころ,これを配置業者に示し,配置業者から寄せられた意見を踏まえてさらに同盟会幹事等の意見を聞くなどして新たに「三光丸取引規定」(甲1の1。以下「新取引規定」という。)を定め,同年9月1日からの新取引規定の施行をすべく,同年8月21日付けで,同年8月末日までに新取引規定に基づく取引基本契約の締結を求める文書を配置業者に対し発送し,同時に,同年11月末日までに,新取引規定11条1項(後記(4)イ参照)に基づき,得意先の住所,氏名及び電話番号の報告を行うように求めた。(甲54,乙22,乙49)その結果,被告から三光丸の供給 年11月末日までに,新取引規定11条1項(後記(4)イ参照)に基づき,得意先の住所,氏名及び電話番号の報告を行うように求めた。(甲54,乙22,乙49)その結果,被告から三光丸の供給を受け配置販売業を営む配置業者約250業者のうち原告らを除く9割以上の大多数の者は,新取引規定に基づく取引基本契約を締結し,この新たな関係の下で三光丸の配置業者としての活動を行っている。(乙22,弁論の全趣旨)(ウ) 被告の原告Fを除く原告らに対する本件既存契約の解約被告は,前記(2)イ(イ)のとおり,平成13年8月,原告らに対しても,後記(4)記載の条項を含む新取引規定を提示のうえ,同規定に基づく取引基本契約(以下「本件新規契約」という。)の締結を求めた。しかしながら,原告Fを除く原告らは,この被告の要求に応じなかった。(乙49,弁論の全趣旨)そこで,被告は,原告Fを除く原告らに対し,平成13年12月10日付け「回答書」により,本件既存契約について平成14年11月30日をもって取引を停止する旨の通知を発送し,本件既存契約を解約する旨の意思表示をした(以下「本件解約」という。)。同意思表示はそのころ原告Fを除く原告ら各自に到達した。(甲2,弁論の全趣旨)なお,被告は,原告池田薬品に対し,本件解約とは別に,さらに平成14年4月23日付け通知により,所定期間内に納品した三光丸の代金支払がない場合には本件既存契約を解約する旨の意思表示をしている。(甲44の1)(エ) 原告Fの本件新規契約の締結とその取消しa 原告Fは,平成13年11月2日,本件既存契約に代えて,新取引規定に基づく本件新規契約を締結した(以下「F新契約」という。)。(乙75の1,2,原告F)b しかしながら しa 原告Fは,平成13年11月2日,本件既存契約に代えて,新取引規定に基づく本件新規契約を締結した(以下「F新契約」という。)。(乙75の1,2,原告F)b しかしながら,原告Fは,平成15年4月11日付け通知により,被告に対し,F新契約を取り消す旨の意思表示をし,同月14日,同通知は被告に到達した。(甲41の1ないし3,乙51)ウ和解による暫定的な三光丸の供給被告は,平成14年12月26日成立の仮処分事件(東京高等裁判所平成14年(ラ)第2161号〔原審・東京地方裁判所平成13年(ヨ)第20122号,平成14年(ヨ)第20041号〕。以下「本件仮処分事件」という。)に係る和解(以下「本件和解」という。)により,原告らに対し,三光丸の供給を行った。このことは,実質的に本件既存契約の解約時期を1年間延長したのと同様の効果を有するものであった。(甲19,弁論の全趣旨)(3) 本件既存契約の解約等による爾後の取引拒絶及び当事者間の紛争被告は,原告Fを除く原告らについては本件既存契約につき本件解約をしたとして,また,原告Fについては同原告が本件既存契約を改訂したF新契約を一方的に取り消しその履行に応じないとして,今後は,原告らが被告との間で本件新規契約の締結をしない限り,原告らに対する三光丸の継続的供給を打ち切ったとしている(以下「本件出荷停止」という。)。 すなわち,被告は,原告らが主張する内容により,原告らが本件既存契約に基づいて三光丸の継続的供給を受けることのできる地位が存在することを争っている。 (4) 新取引規定の条項新取引規定には,次のような条項が含まれている。(甲1の1)ア販売地域制限条項(以下,次の条項を「地域制限条項」という。) とを争っている。 (4) 新取引規定の条項新取引規定には,次のような条項が含まれている。(甲1の1)ア販売地域制限条項(以下,次の条項を「地域制限条項」という。)第7条(販売地域の指定)1.本店(被告)は,配置業者に対し,三光丸等の配置販売を認める地域(以下,「販売地域」という。)を指定します。 2.配置業者は,本店に指定された販売地域内でのみ三光丸等の配置を行うものとします。 3.本店は,同一地域を重複して複数の配置業者の配置地域に指定することがあります。 第9条(販売地域の追加及び取消)1.配置業者は,指定された販売地域外で配置を行う事を希望する場合には,予め本店に対し申請し,新たな販売地域として指定を受けなければなりません。 2.本店は,申請を不適当とみなす場合には,申請対象の全部又は一部の地域についての指定を拒否し,又は指定に当たって適当な条件を付することができるものとします。 第10条(新規配置)1.配置業者が新たに三光丸等を配置しようとする場合には,予め配置予定地域及び目標獲得得意先戸数,期間等を本店に届け出て,その確認を受けるものとします。 第11条(得意先の報告と登録)3.得意先の転居先が配置業者の販売地域外であった場合,配置業者は,当該転居先を含む地域について新たに本店に申請して販売地域として指定を受けるか,又は当該得意先をその転居先を販売地域とする他の配置業者に譲渡するものとします。 イ顧客情報報告条項(以下,次の条項を「顧客情報報告条項」という。)第11条(得意先の報告と登録)1.配置業者は,本店に対し,3年に1回,三光丸等を配置している ます。 イ顧客情報報告条項(以下,次の条項を「顧客情報報告条項」という。)第11条(得意先の報告と登録)1.配置業者は,本店に対し,3年に1回,三光丸等を配置しているすべての得意先について,本店所定の事項を報告し,登録を受けるものとします。 2.配置業者は,登録を受けた得意先の転居に伴う住所変更等,登録事項に変更があった場合には,速やかにその旨本店に届け出て登録事項の変更を受けるものとします。 第10条(新規配置)3.配置業者は,新規配置を行った結果,新たに獲得した三光丸等の得意先について,速やかに本店所定の事項を報告し,登録を受けるものとします。 ウ譲渡先制限条項(以下,次の条項を「譲渡先制限条項」という。)第12条(得意先の譲渡)1.配置業者は,本店と取引規定に基づき取引がある他の配置業者に限り,得意先を譲り渡すことができます。 2.得意先の譲渡を希望する場合には,本店に対し,事前に本店所定の事項を届け出て承諾を得るものとします。 3.本店が,届出られた譲渡先に代えて届出られた譲渡金額と同額ないしはそれ以上の価格での譲受けを行う他の配置業者を譲渡先に指定した場合には,配置業者は本店の指定する配置業者に得意先を譲渡するものとします。 4.配置業者は,得意先を譲渡した場合には,本店所定の方式により本店に届け出,登録の変更を受けるものとします。 2 争点のまとめ(1) 原告らの訴えの適法性(本案前の主張)ア独占禁止法24条に基づく請求の適法性(ア) 差止請求(請求の趣旨1(1))の適法性(イ) 引渡請求(請求の趣旨1(2))の適法性イ一般民事上の請求の適法性 ア独占禁止法24条に基づく請求の適法性(ア) 差止請求(請求の趣旨1(1))の適法性(イ) 引渡請求(請求の趣旨1(2))の適法性イ一般民事上の請求の適法性(ア) 承諾請求(請求の趣旨2(2))の適法性(イ) 引渡請求(請求の趣旨2(3))の適法性(2) 独占禁止法24条に基づく請求(請求の趣旨1(1)(2))についてア本件既存契約の内容イ本件出荷停止について独占禁止法上違法とされる「単独の取引拒絶」への該当性の有無(ア) 取引拒絶(行為要件)の有無(イ) 公正競争阻害性(侵害要件)の有無a 新取引規定中の地域制限条項について独占禁止法上違法とされる厳格な地域制限(拘束条件付取引)への該当性の有無(a) 被告の市場における有力な事業者への該当性の有無(b) 事業活動の不当な制限の有無(c) 価格維持効果の有無b 新取引規定中の地域制限条項について独占禁止法上違法とされる地域外顧客への販売制限(拘束条件付取引)への該当性の有無c 新取引規定中の顧客情報報告条項について独占禁止法上違法とされる優越的地位の濫用への該当性の有無(a) 原告らの被告に対する取引依存度の程度及び三光丸の非代替性の有無(優越性の有無)(b) 本件顧客情報の価値の有無(原告らの不利益の有無1)(c) 個人情報保護法の観点からみた得意先のプライバシーの保護の必要性の有無(原告らの不利益の有無2)(d) 配置研修部との関係における不利益の有無(原告らの不利益の有無3)(e) その他の本件顧客情報の提供に伴う原告らの不利益の有無(原告らの不利益の有無4) 益の有無2)(d) 配置研修部との関係における不利益の有無(原告らの不利益の有無3)(e) その他の本件顧客情報の提供に伴う原告らの不利益の有無(原告らの不利益の有無4)d 新取引規定中の譲渡先制限条項について独占禁止法上違法とされる優越的地位の濫用への該当性の有無ウ独占禁止法24条に規定されている「著しい損害の有無」及び差止めの必要性の有無(3) 一般民事上の請求(請求の趣旨2(1)ないし(3))についてア本件既存契約の存否及び内容(被告に三光丸の出荷を義務付けるものと言えるか。)イ本件解約の有効性の有無(本件解約により既存契約が終了したと言えるか。)(ア) 本件出荷停止と本件既存契約との関係a 原告Fについてb 原告F以外の原告らについて(イ) 本件既存契約につき債務不履行を理由としない解約の可否(ウ) 本件既存契約の解約についての合理的な理由の要否及びその存否(本件新規契約の締結を求めることについての合理性の有無〔新取引規定の相当性〕)a 販売促進目的の相当性の有無b 重ね置き対策目的の相当性の有無c ユーザークレーム対策目的の相当性の有無d 市販後の安全管理対策目的の相当性の有無(エ) 本件解約の手続の妥当性の有無(本件解約における1年間の猶予期間の定めは相当と言えるか。)ウ本件解約における個別的な正当事由の有無 3 争点に関する当事者の主張(1) 原告らの訴えの適法性(本案前の主張)ア独占禁止法24条に基づく請求の適法性(ア) 差止請求(請求の趣旨1(1))の適法性(被告の主張)原告らの差止 (1) 原告らの訴えの適法性(本案前の主張)ア独占禁止法24条に基づく請求の適法性(ア) 差止請求(請求の趣旨1(1))の適法性(被告の主張)原告らの差止請求は,本件既存契約に基づき,被告が原告らの注文に応じて三光丸を出荷する義務を負うことが前提となっている。しかしながら,被告は原告らとの間でそのような義務を伴うことを内容とする契約を締結したことはない。被告は,原告らとの間で,継続的に三光丸の売買を行なってきたことは認めるが,これらは,個別売買の積み重ねにすぎず,原告らから発注があれば被告においてその発注内容どおりに応じることを保証していたものではない。このことは,三光丸の本件新規契約への切り替えが開始される以前の旧取引規定上も,取引当事者が発注義務又は受注義務を負うことを内容とする規定は一切存在せず,同規定は原告らと被告との間で個別売買が成立した場合に遵守されるべき条件が示されているにすぎないことや,原告らが一定数量の三光丸の購入義務を負わされていなかったことからしても明らかである。したがって,もともと出荷義務が存在しない以上,被告は,本件出荷停止により義務の不履行となるべき「出荷停止」をしているわけではないから,原告らの差止請求は,差止めの対象を欠くものである。 (原告らの主張)本件既存契約の内容は,原告らが被告から継続的に三光丸の提供を受けることを内容とするものであった。したがって,このような契約の内容を前提としない被告の主張は理由がない。 (イ) 引渡請求(請求の趣旨1(2))の適法性(被告の主張)独占禁止法上,「侵害の防止又は予防」そのものを命じる規定はあるが,「侵害の停止又は予防に必要な行為」の請求は認められていないから,三光 の趣旨1(2))の適法性(被告の主張)独占禁止法上,「侵害の防止又は予防」そのものを命じる規定はあるが,「侵害の停止又は予防に必要な行為」の請求は認められていないから,三光丸の引渡しを義務付ける根拠規定は存在しない。原告らの主張は,実体法の問題とその執行の問題とを混同し,同法の認めていない義務付けを被告に求めるものである。 (原告らの主張)独占禁止法に基づく差止請求においては,「侵害の停止又は予防」が認められるところ,侵害をしないという不作為を実現するうえで,事案によっては作為を命ずる必要がある。そもそも,独占禁止法24条の差止請求は,同法違反行為により被害を受けた被害者の救済を図ることを目的とした制度であり,特に本件のように単独の取引拒絶となるような態様により商品の供給を拒絶された被害者の救済を図るためには,同条に基づいて引渡命令が認められるべきである。また,不作為を命じることと作為を命じることとは表裏の関係にあるのであり,このことも,同条に基づく差止請求によって作為命令が発令されることの合理性を裏付ける。すなわち,特に本件のような単独の取引拒絶がされている場合には,不作為を命じるための具体的な手段が,原告らとの間で取引を行なえとの作為を命じることになると解すべきである。そして,本件においては,「解約された本件既存契約上の契約条件に基づく給付をせよ」との作為の内容も特定しているから,同条に基づいて,被告に対し引渡しを命じるべきである。 イ一般民事上の請求の適法性(ア) 承諾請求(請求の趣旨2(2))の適法性(被告の主張)本件既存契約の内容は,原告らが主張するものとは異なるが,仮にそのとおりであるとしても,その内容は原告からの代金の支払と引き換え 求(請求の趣旨2(2))の適法性(被告の主張)本件既存契約の内容は,原告らが主張するものとは異なるが,仮にそのとおりであるとしても,その内容は原告からの代金の支払と引き換えに被告が商品である三光丸の供給を行なうというものであって,被告において意思表示を行うことを内容とするものではない。また,仮に将来されるであろう原告らの注文に対し被告が承諾することが義務付けられるとしても,それだけで直ちに被告による三光丸供給の履行が確保されるわけでもない。そうすると,当該請求が認容されることによる効果は,請求の趣旨2(1)の地位確認の請求によって達成される効果と異ならず,地位確認の請求に重ねてあえてこのような請求を行なう必要性は認められない。さらに,具体的な三光丸の給付請求と重複する部分については,直接給付を求めれば足りる。したがって,このような請求には訴えの利益が認められない。 (原告らの主張)被告は,当初,新取引規定を原告らに一方的に提示して本件新規契約の締結を迫ったうえ,これに応じなければ,平成13年11月末日に同契約を解約するとの姿勢を示していた。また,被告は,本件に先立つ仮処分事件では,被告は原告らとの間で,従前の本件既存契約を1年間延長するとの本件和解を成立させたにもかかわらず,本件既存契約の内容である古薬の引き取りを拒絶するなど,本件和解の趣旨に反する行為に出た。このような被告の対応にかんがみれば,原告らが,本件において商品である三光丸の引渡しを受ける地位だけが認められたとしても,それのみでは原告らの権利の実現には不十分であると考えられる。そこで,原告らは,被告に対し,原告らによる三光丸の注文に対して承諾の意思表示をすること及び三光丸の引渡しを求める。 (イ) 引渡請求(請求の趣 らの権利の実現には不十分であると考えられる。そこで,原告らは,被告に対し,原告らによる三光丸の注文に対して承諾の意思表示をすること及び三光丸の引渡しを求める。 (イ) 引渡請求(請求の趣旨2(3))について(被告の主張)原告らの主張する引渡請求は,前提となる本件既存契約の内容が原告らの主張するものと異なる以上,何ら根拠のない請求である。仮に本件既存契約の内容が原告らの主張のとおりであるとしても,いまだ具体的な注文もない段階で具体的な商品の引渡義務が生じることはありえないから,いずれにせよ失当である。なお,このような給付請求が認められるのであれば,確認請求を認める必要はないのであって,請求の趣旨2(1)の請求について「確認の利益」が存在するという原告らの主張とも矛盾している。 (原告らの主張)被告の原告らに対する従前の対応をみると,原告らの契約上の地位を確認するだけでは原告らの救済には不十分であり,別紙数量目録記載に係る従前の1年分の仕入量に相当する三光丸の引渡しが認められる必要がある。 (2) 独占禁止法24条に基づく請求(請求の趣旨1(1)(2))についてア本件既存契約の内容について(原告らの主張)原告らは,被告との間で,数十年から百年以上にわたり,別紙契約目録1記載の内容の本件既存契約に基づく取引を継続してきた。そして,原告らは,同契約に基づき,被告から,年間あたり別紙数量目録記載の数量の三光丸の供給を受けていた。 (被告の主張)本件既存契約の内容が別紙契約目録1記載のとおりであり,被告が原告らに対して年間あたり別紙数量目録記載の数量の三光丸を提供していたとの主張は否認する。 被告は,原告らと間で,原告らの注文に応 件既存契約の内容が別紙契約目録1記載のとおりであり,被告が原告らに対して年間あたり別紙数量目録記載の数量の三光丸を提供していたとの主張は否認する。 被告は,原告らと間で,原告らの注文に応じて被告が出荷義務を負うことを内容とする契約を締結したことはない。被告は,原告らとの間で,継続的に三光丸の売買を行なってきたことは認めるが,この取引は,個別売買の積み重ねにすぎず,原告らから発注があれば,被告においてその発注内容どおりに必ず応じることを保証していたものではない。 イ本件出荷停止について独占禁止法上違法とされる「単独の取引拒絶」への該当性の有無(ア) 取引拒絶(行為要件)の有無(原告らの主張)被告は,平成13年8月,原告らに対し,従来の本件既存契約には存在しなかった被告による販売地域の指定(前提となる事実1(4)アの地域制限条項),原告らの被告に対する顧客情報の報告義務(同イの顧客情報報告条項)及び被告による原告らの得意先の譲渡制限(同ウの譲渡先制限条項)等を内容とする新取引規定に基づく本件新規契約の締結を迫った。原告Fを除く原告らがこれに応じなかったところ,被告は,本件出荷停止の措置をとって同原告らとの取引を拒絶した。 また,原告Fは,平成13年12月ころ,被告従業員から複数回にわたり,多くの配置業者との間で新取引規定に基づく本件新規契約が締結されているにもかかわらず,同規定に基づく契約を締結しないのであれば取引停止になるなどと強迫を受けた。そのため,原告Fは,同月中旬ころ,新取引規定に同意しF新契約を締結したが,その後,強迫を理由として同契約の締結に係る意思表示を取り消した。このことよって,原告Fは,本件既存契約上の当事者の地位を回復したにもかかわらず,被告は,本件出荷停 定に同意しF新契約を締結したが,その後,強迫を理由として同契約の締結に係る意思表示を取り消した。このことよって,原告Fは,本件既存契約上の当事者の地位を回復したにもかかわらず,被告は,本件出荷停止の措置をとって原告Fとの取引を拒絶した。 (被告の主張)被告は,現在原告らに対して,本件出荷停止を行なっているが,それは,原告らが主張するような内容を有する継続的な商品の供給契約がこれまで存在し,これを被告が解約したことによるのではなく,原告らと被告との間で三光丸の出荷に必要な新たな売買契約が締結されていないためである。したがって,原告らの主張するような取引拒絶の前提となる取引は存在しないのであり,被告が取引拒絶をしているとの主張は失当である。 また,原告Fは,いったん新取引規定に基づくF新契約を締結したが,その後,原告Fにおいて同契約を解約したため,被告は本件出荷停止をした。同契約の取消しが直ちに本件既存契約の復活をもたらすものではない。 (イ) 単独の取引拒絶の要件である公正競争阻害性(侵害要件)の有無(原告らの主張)被告は,新取引規定に基づく本件新規契約の締結を求め,これに従わない原告に対し取引の打ち切りを告知している。そして,新取引規定には,以下のaないしdの原告らの主張に記載したとおり,拘束条件付取引及び優越的地位の濫用に該当する目的を実現するための内容が含まれているから,被告の原告らに対する本件新規契約の締結拒否を理由とする取引の打ち切りは,不公正な取引方法(一般指定)2項に規定されている「不当に,ある事業者に対し取引を拒絶し若しくは取引に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限し,又は他の事業者をしてこれらに該当する行為をさせること」に当てはまるのであり,公 に規定されている「不当に,ある事業者に対し取引を拒絶し若しくは取引に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限し,又は他の事業者をしてこれらに該当する行為をさせること」に当てはまるのであり,公正競争阻害性を備えた単独の取引拒絶に該当する。 (被告の主張)新取引規定には,何ら独占禁止法に違反する条項は存在しない。以下のaないしdの被告の主張に記載したとおり,単独の取引拒絶の要件である公正競争阻害性は存在しない。 a 新取引規定中の地域制限条項について独占禁止法上違法とされる厳格な地域制限(拘束条件付取引)への該当性の有無(原告らの主張)不公正な取引方法(一般指定)13項は,「相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて,当該相手方と取引すること」を禁止している。そして,その内容の1つとして,メーカーが流通業者に対して,一定の地域を割り当て,地域外での販売を制限すること(厳格な地域制限)が拘束条件付取引として不公正な取引方法に該当するものとされている。この厳格な地域制限とは,「市場における有力なメーカー」が流通業者に対し厳格な地域制限を行ない,これによって当該商品の価格が維持されうるおそれがある場合には違法となるとするものである。 そして,後記(a)ないし(c)の原告らの主張に記載したとおり,新取引規定中の地域制限条項は,違法な厳格な地域制限に該当する。 (被告の主張)後記(a)ないし(c)の被告の主張に記載したとおり,新取引規定は,何ら違法な厳格な地域制限に該当しない。 (a) 被告の市場における有力な事業者への該当性の有無(原告らの主張)「市場における 載したとおり,新取引規定は,何ら違法な厳格な地域制限に該当しない。 (a) 被告の市場における有力な事業者への該当性の有無(原告らの主張)「市場における有力なメーカー」とは,「当該市場におけるシェアが10パーセント以上,又はその順位が上位3位以内であることが目安」とされる。ところで,三光丸は,配置薬のうち,消化器官用薬中の健胃消化剤と捉えることができる。そして,配置薬中の健胃消化剤の年間生産金額総額は約14億3323万7000円であるところ,三光丸の年間生産金額総額は,約4億5900万円であり,三光丸は,配置薬中の健胃消化剤「市場」において,約34.5パーセントのシェアを占めている。よって,被告は,「市場における有力なメーカー」であるということができる。なお,医薬品のうち,一般医薬品と配置薬の市場は全く異なるものであり,三光丸の「市場」を考察する際には,両者を分けて検討すべきである。 (被告の主張)被告は,「市場における有力なメーカー」には該当せず,この点からしても独占禁止法上の違法の問題は生じない。医師によって処方される医療用を除く一般用胃腸薬は,誰でも自由に入手することができるものであり,胃腸に不快感を感じた需要家がいずれの商品でも自由に選択できる状態にあり,相互に競争関係が生じることは一般常識に照らしても明らかである。独占禁止法の観点からいかなる市場が存在しているのかについての判断を行なう際には,消費者の動向を中心に据えるべきであり,販売の形態や各メーカーの主観的な届出内容に左右される役所の分類などは市場判断にあたっては関係がないというべきである。このような観点からすれば,本件における市場は医療用を除く一般用胃腸薬の市場と捉えるべきであり,そうすると 観的な届出内容に左右される役所の分類などは市場判断にあたっては関係がないというべきである。このような観点からすれば,本件における市場は医療用を除く一般用胃腸薬の市場と捉えるべきであり,そうすると,被告は,胃腸薬のメーカーとして市場におけるシェアが10パーセント以上,又は上位3社というような「市場における有力なメーカー」には該当しない。なお,原告らが存在すると主張するような配置薬を主に利用し,薬局で薬を購入することがほとんどないというような消費者は,存在しているとしても,全国的にみれば極めて少数にとどまることは,経験則上明白であるし,そのような消費者が,いつまでも同様の消費行動を維持するのかについては一切保証がない。 (b) 事業活動の不当な制限の有無(原告らの主張)新取引規定中の地域制限条項では,被告が原告ら配置業者に対して販売地域を指定し,また,販売地域外での販売について,被告から新たな販売地域として指定を受けるべきことが規定されているのであり,実際にも,被告は,これまで指定された販売地域外での三光丸の販売をしないように指導している。このような単なる地域指定を超えた他地域への積極的な販売制限は,厳格な地域制限に該当する。 (被告の主張)新取引規定における販売地域の指定は,極めて緩やかなものであり,原告らが主張するような厳格な地域制限に該当するものではない。新取引規定における地域指定は,配置業者ごとにある程度得意先のある地域を集中させることによって広告宣伝や廻商のコストを下げ,効率的な廻商を可能とするとともに,各配置業者に自分の地域という意識を持ってもらうことにより,顧客サービスを充実させ,拡販につなげていく趣旨で設けられているものである。また,現在指定を ストを下げ,効率的な廻商を可能とするとともに,各配置業者に自分の地域という意識を持ってもらうことにより,顧客サービスを充実させ,拡販につなげていく趣旨で設けられているものである。また,現在指定を受けていない地域について新たに販売地域としての指定を受けることも,都道府県知事の許可その他廻商にあたって必要な許認可を取得していること,当該地域を廻商できる人的物的体制にあること及び現実に廻商することを具体的計画とともに示して申請すれば簡単に受けることができる。 (c) 価格維持効果の有無(原告らの主張)三光丸は,全国すべての地域で一律に1包120円で売却されており,被告は,三光丸の配置業者が120円より安く売却することにつき,定価を遵守するように指導している。このように被告が三光丸の販売地域での価格維持を指示しているところに,厳格な地域制限が行なわれ,そのために指定された地域においては原則として競合する配置業者が存在しないことを併せ考えれば,厳格な地域制限によって三光丸について全国的な統一的な価格の維持が助けられているということができる。したがって,市場における有力なメーカーである被告が,価格維持効果を有する厳格な地域制限を行なう目的で規定した新取引規定中の地域制限条項は,独占禁止法2条9項に基づく不公正な取引方法(一般指定)13項の不当な拘束条件付取引に該当し,独占禁止法19条に違反する。 (被告の主張)被告及び三光丸の配置業者の間で価格維持行為は一切行われていない。現実にも,原告足高本店代表者自身が,定価であるとする120円の2割引で現金販売及び通信販売を行なっているのであって,価格維持行為が存在しないことは明らかである。 b 新取引規定中の地域制 現実にも,原告足高本店代表者自身が,定価であるとする120円の2割引で現金販売及び通信販売を行なっているのであって,価格維持行為が存在しないことは明らかである。 b 新取引規定中の地域制限条項について独占禁止法上違法とされる地域外顧客への販売制限(拘束条件付取引)への該当性の有無(原告らの主張)不公正な取引方法(一般指定)13項は,メーカーが流通業者に対して,一定の地域を割り当て,地域外の顧客からの求めに応じた販売を制限すること(地域外顧客への販売制限)を拘束条件付取引として不公正な取引方法に該当するとしている。これは,このような制限が相手方事業者の事業活動に対する「拘束」に該当すると解されることによるものであり,このような「消極的販売制限」は,市場における有力なメーカーが行なうか否かにかかわらず,価格維持のおそれがある場合には,同項の不当な拘束条件付取引に該当することになる。 そして,被告は,新取引規定11条3項において,地域外顧客に対する販売について,地域指定を受けるべく被告に対して申請手続をとるか,得意先を譲渡することを義務付けている。このような同項に基づく契約による義務付けも,これによって,三光丸の販売価格が全国的に1包120円に維持されていることからすれば,地域外顧客への販売制限として,不公正な取引方法(一般指定)13項の不当な拘束条件付取引に該当する。 (被告の主張)原告らの主張する新取引規定11条3項については,前記a(c)において述べたと同様に,全国一律の1包120円という価格維持の効果がないのであるから,不当な拘束条件付取引に該当しない。 c 新取引規定中の顧客情報報告条項について独占禁止法上違法とされる優越的地位の濫用への該当性 一律の1包120円という価格維持の効果がないのであるから,不当な拘束条件付取引に該当しない。 c 新取引規定中の顧客情報報告条項について独占禁止法上違法とされる優越的地位の濫用への該当性の有無(原告らの主張)被告の原告らに対する得意先に係る顧客名簿の提出の強要は,不公正な取引方法(一般指定)14項4号が定める「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して,正常な商慣習に照らして不当に,取引の条件又は実施について相手方に不利益を与える行為」に該当する。すなわち,被告のようなメーカーが,その優越的地位に基づいて,原告らのような流通業者に対して流通業者の販売状況(販売先など)に関する帳簿類の書類の提出を義務付けることによって,顧客情報が有する経済的価値を取得することは,流通業者に不当に不利益を与えることになる。 そして,ここにいう「優越的地位」とは「一方が相手方に対して相対的に優越している」ことで足りると解されるから,後記(a)で述べるように,取引の相手方に対する取引上の依存度が高く,取引先を当該相手方から変更したときに,従来と同じような事業活動を継続することができない場合には,当該相手方には優越的地位が認められる。なお,被告は,市場支配的な地位にあることを優越的地位が認められる前提要件であると捉えているようであるが,三光丸は,年間生産数が1500万包,全国約80万世帯に普及し,600種類の胃腸薬のうち5指に入る製品であり,三光丸及びその商標は,100年以上の歴史を有しており,被告自身,約700年の歴史を有すると主張する和漢胃腸薬におけるトップブランドであるから,被告が原告らに対し市場支配的な地位に基づいて優越的な地位にあることも明らかである。 (被告の主張) 約700年の歴史を有すると主張する和漢胃腸薬におけるトップブランドであるから,被告が原告らに対し市場支配的な地位に基づいて優越的な地位にあることも明らかである。 (被告の主張)「優越的地位」とは,市場支配的な地位であるとか,それに準ずるような有力な地位(いわば絶対的優越)に基づき,相手方に対して相対的に優越していることと解すべきである。原告らが主張するような,単なる相対的な優越が「優越的地位」を意味するものと理解すれば,ほとんどすべての取引において優越的地位に該当する者が存在する結果となってしまい不合理である。そして,大手製薬メーカーの薬と異なり,三光丸の知名度は遥かに低く,地元ないし業界の者でもなければ知らない者が多いのが実情であり,被告が入手した資料に基づいても,三光丸よりも販売数量が多い胃腸薬は,22種類以上存在すること,全国に存在する一般用医薬品としての胃腸薬は2000種類以上に及んでおり,代替商品には事欠かない状況であることからすれば,客観的にみて被告が「市場支配的な地位」にも「優越的地位」にもないことが明らかである。 (a) 原告らの被告に対する取引依存度の程度及び三光丸の非代替性の有無(優越性の有無)(原告らの主張)原告らの三光丸に対する取引依存度は,その取扱いに係る全配置薬のうち三光丸の取扱量が下限で12パーセントから上限で84パーセントまで,平均で約42パーセントという具合に極めて高い数値を示している。このように,原告らは,三光丸という特定の配置薬を中核とし,これに付随する形で他の配置薬を配置販売していたのであるから,三光丸なしには配置販売が成り立たない。 しかも,原告らは,得意先に「三光丸」印の配置箱を置き,得意先から「三光 核とし,これに付随する形で他の配置薬を配置販売していたのであるから,三光丸なしには配置販売が成り立たない。 しかも,原告らは,得意先に「三光丸」印の配置箱を置き,得意先から「三光丸さん」との名称で呼ばれ,例えば原告らの中には顧客向けのフリーダイヤルにも「0120-142-350(胃腸に三光丸)」という番号を使っている者もいるなど,原告らは三光丸の商標や名前を用いた広告を出すなどして,「三光丸」の配置販売をしている。すなわち,従前から「三光丸さん」として,「三光丸」という商品を少なくとも数十年にわたって売り続けてきており,原告らは,三光丸ブランドを土台にして得意先との間の信頼関係を醸成しており,原告らの被告に対する有形・無形の取引依存度は極めて強い状態にある。したがって,原告らは,「三光丸」という商品及び名称なしに営業活動を続けることは不可能である。実際,薬に対する消費者の購買・消費行動に照らしてみても,たとえ三光丸と効能を同じくするような胃腸薬があるとしても,原告らが,直ちに,三光丸からそのような他の商品へと取り扱う販売商品を変更することは不可能である。 (被告の主張)原告らが主張する被告に対する「取引依存度」については,その算定根拠が不明確であり否認する。また,三光丸の売上について,仕入数に120円を乗じて算出する方法自体にも合理性はない。 また,原告らは,そもそも胃腸薬のみの配置販売をしているのではないし,胃腸薬としての三光丸が取り扱えなくても,それに代わる他の胃腸薬を取り扱うことが十分可能である。原告らは,得意先との信頼関係を醸成してきているのであれば,原告らが得意先に対し他の胃腸薬を勧めれば,得意先が応じることも十分考えられる。実際に,原告らは,三光丸との比較 扱うことが十分可能である。原告らは,得意先との信頼関係を醸成してきているのであれば,原告らが得意先に対し他の胃腸薬を勧めれば,得意先が応じることも十分考えられる。実際に,原告らは,三光丸との比較広告をするなどして,膽肚羅丸の置き換えを開始しており,原告らの三光丸に代替性がないとの主張には理由がない。 (b) 顧客情報の価値の有無(原告らの不利益の有無1)(原告らの主張)配置薬の配置先である得意先に関する顧客情報については,これまでの裁判例等において,顧客情報が記載された懸場帳が売買の目的とされ,その経済的価値の高さが確認されている。そして,新取引規定中の顧客情報報告条項により被告が原告らに対し報告を求めている情報(以下「本件顧客情報」という。)は,得意先の住所,氏名及び電話番号であるが,この本件顧客情報の内容は,配置業者にとって,まさに懸場帳といわれる顧客台帳そのものと解すべきものである。したがって,原告らが被告に対し,被告から報告を求めらるままに本件顧客情報を提供することは,配置業者としての営業財産や営業権を,すべて無償で提供することにほかならない。本件顧客情報の提供の強要は,原告らにとって極めて不利益な取引条件に該当する。 (被告の主張)新取引規定中の顧客情報報告条項が提供を求めている本件顧客情報は得意先に関する情報の一部にすぎないところ,実際の得意先譲渡にあたって対価が支払われるのは,得意先に配置されている薬の種類,数量,消費歴及び売上等の情報が提供され,かつ,取引先自体が引き継がれる場合である。判例上,価値が認められている懸場帳の売買は,このような情報が得意先とともに引き継がれる場合のものである。したがって,得意先の単なる氏名,住所及び電話番号だけの 取引先自体が引き継がれる場合である。判例上,価値が認められている懸場帳の売買は,このような情報が得意先とともに引き継がれる場合のものである。したがって,得意先の単なる氏名,住所及び電話番号だけの本件顧客情報には対価の支払を要するような価値は認められない。したがって,被告らが,本件顧客情報の報告を求めても,配置業者に対して何ら不利益を課すものではない。 (c) 個人情報保護法の観点からみた得意先のプライバシーの保護の必要性の有無(原告らの不利益の有無2)(原告らの主張)個人の権利・利益保護の見地からは,得意先と直接取引をした原告らの配置業者が,得意先による事前の同意なくして当該得意先に係る氏名,住所及び電話番号を当該得意先と何らの関係のない第三者である被告に対して報告することは,原告らをしてプライバシーの侵害をさせるだけでなく,個人情報保護法に違反する行為をすることを強いるものである。そして,現在の消費者の個人情報に対する関心の高さからすれば,後記(e)で再述するように,原告らは,このような違法行為を強いられた結果,消費者である得意先から取引関係を停止されてしまうおそれが非常に強い。したがって,このような本件顧客情報の提供を強要することは,原告らにとって極めて不利益な取引条件に該当する。 (被告の主張)原告らが主張するような個人情報保護法の問題は,独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に該当するか否かを判断する際の考慮要素とはならない。そもそも,本件顧客情報の報告には,個人情報保護法の適用がない。 (d) 配置研修部との関係における不利益の有無(原告らの不利益の有無3)(原告らの主張)配置研修部は,「三光丸」全体の年間 個人情報保護法の適用がない。 (d) 配置研修部との関係における不利益の有無(原告らの不利益の有無3)(原告らの主張)配置研修部は,「三光丸」全体の年間売上高の2割以上に及ぶ売上高を誇っており,全国で,被告と一体になって営業を行なっている。そして,配置研修部は,被告と本店所在地,取締役等事務責任者らが全く同一であり,被告と実質的に同一の会社であると評価することができる。さらに,被告は,本件訴訟の係属中,有限会社三光丸奈良などの新たな販売会社を多数設立した。配置研修部や新たに設立された販売会社は,原告らの競争者であることが明らかである。それにもかかわらず,これら競争者と実質的に同一の存在である被告に対して本件顧客情報を提出することは,競争相手そのものに対して本件顧客情報の提供をすることでもあり,これを強要されることは,原告らにとって大きな不利益となることはいうまでもない。 (被告の主張)被告や配置研修部には,重ね置きの意図等はない。また,被告にすれば,原告らから本件顧客情報の提供を受けなくても,一定地域を網羅的に廻商すれば,原告らの得意先に対して三光丸の売却を行なうことは簡単に実現できることである。すなわち,原告らから本件顧客情報の提供を受けることは,原告らの競争を阻害することにはならないのであって,原告らの主張する不利益等は具体的には存在しないことが明らかである。なお,原告足高本店代表者は,本件顧客情報が被告に提供されることになれば,被告ないし原告らが被告と実質的に同一であると主張する配置研修部のような販売業者が,原告らの得意先に出向いて勝手に配置薬を入れ替え,集金することができる旨を主張する。 しかしながら,得意先に配置している配置薬は,配置業者の所有物で 同一であると主張する配置研修部のような販売業者が,原告らの得意先に出向いて勝手に配置薬を入れ替え,集金することができる旨を主張する。 しかしながら,得意先に配置している配置薬は,配置業者の所有物であり,配置薬が消費された場合の売掛代金債権は配置薬を配置した配置業者に帰属するのであるから,それを第三者が当該配置業者に成り済まして勝手に回収することは,まさに犯罪行為に該当する。被告が,このような犯罪行為を行なうことなどはありえない。原告らの主張は,一見してありえないおそれを理由としているにすぎないのであって,このことからも,原告らの主張するような「不利益」が存在しないことは明らかである。 (e) その他の本件顧客情報の提供に伴う原告らの不利益の有無(原告らの不利益の有無4)(原告らの主張)原告らの被告に対する本件顧客情報の影響に伴う不利益は,単に本件顧客情報が構成する顧客名簿という経済的価値の高いものを提供するということや,原告らの競争業者である被告ないし配置研修部に対して本件顧客情報を提供することを意味するにとどまらない。すなわち,メーカーである被告が顧客情報を一括管理し,得意先の譲渡を管理することは,顧客名簿の価値を被告の一存で左右することを許容することを意味し,原告らに対し,三光丸の懸場帳全体の価値の減少という不利益を課すことになる。さらに,被告において,原告らに顧客情報の提供を強要することは,得意先の個人情報を第三者に流出させることで得意先の配置業者に対する不快感,不信感を生じさせ,原告らに対し,得意先から配置販売契約の解除を受けるに至るおそれを生じさせるといった不利益を課すことにもなる。 (被告の主張)被告が,原告らから本件顧客情報の報告を受けたとし 対し,得意先から配置販売契約の解除を受けるに至るおそれを生じさせるといった不利益を課すことにもなる。 (被告の主張)被告が,原告らから本件顧客情報の報告を受けたとしても,得意台帳(懸場帳)自体は原告らの手元に残ったままであり,得意先と原告らとの関係も従前のとおりなのであって,このような状況においては,得意台帳の価値が低下することなどありえない。原告らの主張は,合理的な理由のない全く主観的なものにすぎない。そもそも三光丸の得意先の価値については,被告と配置業者で構成される同盟会の間で20年以上の検討を重ねて作られた合理的内容を有する評価基準によって算出することが可能であり,しかも,新取引規定によれば,被告は,販売先の先指定権を有しているが,価格には干渉しないことも同時に明記されているのであるから,原告らの営業の価値が損なわれることはない。 d 新取引規定中の譲渡先制限条項について独占禁止法上違法とされる優越的地位の濫用への該当性の有無(原告らの主張)新取引規定12条の譲渡先制限条項は,被告と同規定を締結している配置業者に限り得意先を譲渡することができ,しかも,それには被告の承諾が必要であって,被告に指定された場合にはその販売業者に譲渡しなくてはならないと規定されている。これは,不公正な取引方法(一般指定)14項4号にいう「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して,正常な商慣習に照らして不当に,取引の条件又は実施について相手方の不利益を与えること」に該当する。 すなわち,顧客情報及び取引先が,販売業者にとって経済的価値を有するものであることは前記3(2)イ(イ)c(b)で記載したとおりであり,その譲渡も本来販売業者の自由であ 」に該当する。 すなわち,顧客情報及び取引先が,販売業者にとって経済的価値を有するものであることは前記3(2)イ(イ)c(b)で記載したとおりであり,その譲渡も本来販売業者の自由であるべきところ,新取引規定12条は,このような販売業者の自由を著しく制限している。よって,同条は,被告が,原告らに対して優越的な地位を有していることを利用して,正常な商慣習に照らして不当に取引の条件又は実施について相手方に不利益を与えるものであり,不公正な取引方法(一般指定)14項4号に該当し,独占禁止法19条に違反する。 (被告の主張)被告が「優越的地位」にないことは,前記3(2)イ(イ)c(a)で記載したとおりである。また,得意先の譲渡に際しては,その対価の額自体は保証されており,原告らに何ら経済的損失が発生することはありえないから,「濫用」にも該当しないことは明らかである。 ウ独占禁止法24条に規定されている「著しい損害の有無」及び差止めの必要性の有無(原告らの主張)原告らは,前記のとおり,被告に極めて依存した形でこれまで営業を展開してきており,被告との取引停止によって,三光丸以外の他の配置薬の販売にも重大な影響を受けるのであり,三光丸から他の配置薬への代替可能性がないことも相俟って,原告らが行なっている配置販売業自体の存続が不可能となるおそれが非常に高く,原告らに著しい損害が生じることは明らかである。また,これまでの被告の対応をみると,原告らが被告に対し三光丸の出荷停止をしないことを求めるのみでは,原告らの権利の救済には不十分であり,従前の三光丸の1年分の取引量に相当する数量の引渡しが認められる必要がある。 (被告の主張)原告らの取引依存度についての主張及び原告 のみでは,原告らの権利の救済には不十分であり,従前の三光丸の1年分の取引量に相当する数量の引渡しが認められる必要がある。 (被告の主張)原告らの取引依存度についての主張及び原告らの三光丸について代替性がないとの主張は,いずれも前記3(2)イ(イ)c(a)のとおり全く理由がないのであって,原告らには,独占禁止法24条にいう「著しい損害」など発生しないし,差止めの必要性も存在しない。 (3) 一般民事上の請求(請求の趣旨2(1)ないし(3))についてア本件既存契約の存否及び内容(被告に三光丸の出荷を義務付けるものと言えるか。)(原告らの主張)原告らは,被告との間で,数十年から百年以上にわたり,別紙契約目録1記載の本件既存契約に基づく取引を継続してきた。そして,原告らは,同契約に基づき,被告から,年間あたり,別紙数量目録記載の数量の三光丸の供給を受けていたものであり,被告は同数量の出荷義務を負う。 (被告の主張)本件既存契約の内容は,原告らの主張するように,被告が出荷義務を負担するものではなかったから,被告において原告らの発注に応じなかったとしても,何ら債務不履行とならない。 原告らの主張する別紙契約目録1記載の本件既存契約の内容は,被告に対し,無制限の期間にわたって,注文後1週間以内に,原告らの発注する数量無制限の三光丸を,信用取引(代金後払)で,原告らの指定する場所に納品することを内容とする売買契約の締結を義務付けるものである。しかしながら,このような売買契約の内容は,従前,原被告間において三光丸の売買が成立した場合における取引条件とは全く異なっており,かつ,客観的にみても,原告らに一方的に有利なものである。そもそも,民法における私的自治の原則を前提とすれ は,従前,原被告間において三光丸の売買が成立した場合における取引条件とは全く異なっており,かつ,客観的にみても,原告らに一方的に有利なものである。そもそも,民法における私的自治の原則を前提とすれば,被告においてこのような内容の取引を受け容れる必要はないし,被告に対するこのような義務付けを根拠付ける規定も存在しない。 イ本件解約の有効性の有無(本件解約により本件既存契約が終了したと言えるか。)(ア) 本件出荷停止と本件既存契約との関係a 原告Fについて(原告らの主張)前記3(2)イ(ア)第2段落の原告らの主張に記載したとおり,原告Fは,被告から強迫を受けたため,F新契約を締結したが,その後,強迫を理由として同契約の締結に係る意思表示を取り消した。このことによって,原告Fは,本件既存契約上の当事者の地位を回復したにもかかわらず,被告は,本件出荷停止の措置をとって原告Fとの間の取引を拒絶した。 (被告の主張)原告Fは,被告との間で,新取引規定に基づくF新契約を締結した。しかしながら,その後原告Fが同契約を一方的に強迫を理由として取り消すことで解約したため,被告は本件出荷停止をしたものである。また,F新契約の取消しが直ちに本件既存契約の復活をもたらすものではない。そうすると,本件出荷停止には,何ら本件既存契約の違反が存在しない。 b 原告F以外の原告らについて(原告らの主張)被告は,平成13年8月,原告らに対し,従来の本件既存契約には存在しなかった被告による販売地域の指定,原告らの被告に対する顧客情報の報告義務及び被告による原告らの得意先の譲渡制限等を内容とする新取引規定に基づく本件新規契約の締結を迫った。原告らがこれに応じ 存在しなかった被告による販売地域の指定,原告らの被告に対する顧客情報の報告義務及び被告による原告らの得意先の譲渡制限等を内容とする新取引規定に基づく本件新規契約の締結を迫った。原告らがこれに応じなかったところ,被告は,本件出荷停止を行って原告らとの取引を拒絶した。 (被告の主張)本件既存契約の内容は,原告らが主張するような被告が出荷義務を負うものではなかったから,本件出荷停止は,何ら債務不履行となるものではない。仮に被告が本件既存契約上,出荷義務を負っていたとしても,本件出荷停止は,有効にされた本件解約に基づくものである。本件既存契約は本件解約によって終了している。 (イ) 本件既存契約の解約の可否(被告の主張)被告が配置業者に被告の商標を使用して被告の製造販売する商品を販売することを許諾する際に,被告の販売方針に従ってもらうことは当然であり,それに反した場合に配置業者に対する商品供給に係る契約を解約することができることも又当然である。被告においては,旧来から,配置業者に対し,配置により販売すること,得意先に配置する際の販売方法(商標,容器等),販売地域等を指定してこれに従ってもらっており,また接客態度等により得意先とトラブルを起こす業者や勝手に同業者の得意先を廻商するような業者に対しては,被告との取引を中止する措置もとってきている。被告は,取引開始にあたって,相手方から,被告の販売方針に従う気がなく,自由に販売させてほしいなどという申入れを受けても,そのような申入れを受け容れて取引開始に応じることはないのであって,そのことは明らかである。そうすると,本件既存契約には不文の解約条項が合意されているといえるのであり,本件解約は,当該合意に基づくものとして有効である。 取引開始に応じることはないのであって,そのことは明らかである。そうすると,本件既存契約には不文の解約条項が合意されているといえるのであり,本件解約は,当該合意に基づくものとして有効である。 仮に本件既存契約が継続的商品供給契約であると位置付けられたうえ,不文の解約条項の存在が認められないとしても,継続的商品供給契約の当事者は,相当期間を定めて解約を行うことができるのであって,その際に原告らが主張するように解約をするについての合理的な理由が存在する必要はないと解すべきである。また,解約するについての正当事由があれば即時の解約も可能なはずである。 (原告らの主張)本件既存契約中には,被告の販売方針に従わない場合に同契約を解除する旨の不文の合意など存在していない。また,継続的商品供給契約である本件既存契約を解約するについては,後記(ウ)及び(エ)に述べるように解約するについて合理的な理由がある場合には相当期間を定めることによって,後記(オ)に述べるように解約について正当事由があれば相当期間を定めることなく直ちに解約を行うことができるのであるが,本件解約は,いずれの要件も欠いた効力のないものである。 (ウ) 本件既存契約の解約についての合理的な理由の要否及びその存否(本件新規契約の締結を求めることについての合理性の有無〔新取引規定の相当性〕)(被告の主張)継続的商品供給契約については,何ら理由がなくとも,相当期間を定めた解約が可能であると解すべきであるが,仮に解約に合理的な理由が必要であると解するとしても,本件既存契約に代えて本件新規契約の締結を求めることに合理性が認められれば,原告らがこれを拒否することが本件解約についての合理的な理由となる。そして,新取引規定に基づく本件新 あると解するとしても,本件既存契約に代えて本件新規契約の締結を求めることに合理性が認められれば,原告らがこれを拒否することが本件解約についての合理的な理由となる。そして,新取引規定に基づく本件新規契約の締結は,後記aないしdの被告の主張のとおり,得意先密度の正確な把握により新規開拓が効率化することによる配置業者全体の拡販活性化(後記a),重ね置き対策(後記b),ユーザークレーム対策(後記c)及び市販後の安全管理対策(後記d)のために必要である。また,原告らを除く他の配置業者が新取引規定に基づく本件新規契約の締結に応じていることは新取引規定の内容に合理性があることの証左であり,このような事実も新取引規定の内容の合理性を基礎付けるものである。そして,そのような状況の下で,原告らに対してのみ別の条件で取引を継続することはできない。 (原告らの主張)本件既存契約を相当期間を定めるだけで解約するについては,合理的な理由が必要であると解すべきところ,本件新規契約の締結を求めること自体,既に述べたように独占禁止法違反の契約の締結を要求することにほかならず合理性は存在しない。また,具体的な合理性の内容について,被告は本件顧客情報の提供は,顧客密度の測定及び三光丸の拡販,ユーザークレーム処理の必要並びに重ね置き防止を目的とするものであって合理的な理由が見出されると主張するが,後記aないしdの原告らの主張のとおり,いずれも合理的な理由とはならない。 a 販売促進目的の相当性の有無(被告の主張)三光丸の売上は,一部の拡販に積極的な業者を除き長期低落傾向にあり,被告が営利企業として存続していくためには拡販体制の充実が不可欠であること,導入後平均10年になる製造機械のGMP対応機械への更新には莫 の売上は,一部の拡販に積極的な業者を除き長期低落傾向にあり,被告が営利企業として存続していくためには拡販体制の充実が不可欠であること,導入後平均10年になる製造機械のGMP対応機械への更新には莫大な費用がかかること等からして,得意先密度の正確な把握により得意先の新規開拓を効率化させることによって,配置業者全体の拡販体制を活性化させ,収益を上げる必要性が存在する。 (原告らの主張)被告は,販売促進につながる原告らの新規開拓について,届出制を拒否し,承認制の採用を固執していることからすれば,被告が販売促進のために本件顧客情報を要求しているものではないことが明らかである。 b 重ね置き対策目的の相当性の有無(被告の主張)被告が本件顧客情報を事前に把握し,重ね置きが発生した場合の処理のための客観的な資料とすることは合理的なものである。被告や配置研修部が,配置業者の得意先に対して重ね置きを行なわないことなどは当然であり,同盟会に対する確約書も差し入れている。また,被告においては,部外に対する情報の漏洩についても具体的な対策を準備し,損害賠償の定めも設けている。 (原告らの主張)被告は,本来,重ね置き問題の解消などといった目的のために本件顧客情報を入手することを企図しているものではない。重ね置き問題は,配置研修部の活動によって生じている場合が大部分であり,被告側の対応によって解消することができるものである。重ね置きを排除するということは,重ね置きが競争の結果として生じる事柄であることから,独占禁止法上違法であると解される厳格な地域制限を許容することを意味する。 また,そもそもどの配置業者から配置薬を購入するのかについては,エンドユーザーが自ら決定すべきこと 生じる事柄であることから,独占禁止法上違法であると解される厳格な地域制限を許容することを意味する。 また,そもそもどの配置業者から配置薬を購入するのかについては,エンドユーザーが自ら決定すべきことであって,メーカーである被告が介入すべき問題ではない。 c ユーザークレーム対策目的の相当性の有無(被告の主張)三光丸の配置販売は,被告の商標である三光丸の商標を利用して行なわれていることから,本来,配置業者が解決すべき当該配置業者と得意先の間のトラブル(不当な料金請求,押し置き等の苦情)が被告に直接寄せられることもあり,このような場合に適切な対応を迅速にとるために各配置業者の得意先を把握する必要がある。仮にも適切な対応を迅速にとることができないといった事態になれば,三光丸及び被告自体のイメージを損なうことになる。したがって,ユーザークレーム対策の目的で,本件顧客情報を把握しておくことには合理的な理由がある。 (原告らの主張)そもそも,被告がユーザークレームと主張する大部分が,被告側の事情に起因するものであり,被告が配置業者の管理を目的として,得意先の住所,氏名及び電話番号を取得する必要はない。そして,被告が本件顧客情報を入手することに関する得意先側の不信感を前提とすれば,被告の主張する目的達成の手段として,本件顧客情報の提供を求めることの合理性はない。 d 市販後の安全管理対策目的の相当性の有無(被告の主張)市販後の安全管理対策の観点からは,メーカーである被告が本件顧客情報を把握していた方がより迅速かつ適切な対応を可能とすることは,客観的にみて疑いの余地がない。そして,このような安全管理対策は,「三光丸」のブランド価値の維持向上を図ること ーである被告が本件顧客情報を把握していた方がより迅速かつ適切な対応を可能とすることは,客観的にみて疑いの余地がない。そして,このような安全管理対策は,「三光丸」のブランド価値の維持向上を図ることにもつながる。そこで,被告は,将来における規制強化の方向性もにらんで安全管理対策の制度の理念により近づけるべく積極的な対応体制を整備しようとしている。 (原告らの主張)薬事法上,配置業者に医薬品の管理義務が課されているのであるから,メーカーである被告にはユーザークレーム対策のために,本件顧客情報の提供を受けるべき必要性がない。 (エ) 本件解約の手続の妥当性の有無(本件解約における1年間の猶予期間の定めは相当と言えるか。)(被告の主張)本件解約は,1年間という猶予期間を設けており,相当期間を定めた解約であって有効である。また,本件和解により実質的に猶予期間が伸長されたことも考慮すべきである。 (原告らの主張)被告は,平成13年12月10日付け回答書において,1年間の猶予期間を設けて本件既存契約を解約したのであって,本件解約は有効であると主張する。しかしながら,相当期間の定めがあれば,継続的商品供給契約の解約が認められるという考え方は,確立したものではなく,被告の独自の見解にすぎない。また,原告らと被告との間の取引期間は,数十年から百年以上にも及んでおり,このような場合にも,単に相当期間の定めを置くのみで継続的商品供給契約の解約をすることが許されるとは解されない。仮に相当期間を設けるだけで解約が可能であると解するとしても,そもそも本件解約は,前記3(3)イ(ウ)のとおり,独占禁止法に違反する新取引規定に基づく本件新規契約を締結しないことを理由としているのであって, 期間を設けるだけで解約が可能であると解するとしても,そもそも本件解約は,前記3(3)イ(ウ)のとおり,独占禁止法に違反する新取引規定に基づく本件新規契約を締結しないことを理由としているのであって,本件解約は,解約権の濫用となるものである。 ウ本件解約における個別的な正当事由の有無(被告の主張)原告足高本店においては,かねてから同盟会幹事会その他の場において身勝手な行動をとり,配置業者らの団結・統一を乱し,「三光丸」の拡販を妨害してきたし,他の原告らにおいても,このような原告足高本店に同調することによって,同原告と同一の見解を有し,これを支持して被告に対する対応をしていくことを表明している。また,原告らは,膽肚羅丸の販売にあたって,三光丸を引き合いに出し,三光丸に他の成分を加えたものでより優れているなどと宣伝することによって,三光丸の対外的信用を著しく傷つける行為に出ている。 以上のとおり,原告らには,被告との間で本件既存契約を維持するについての信頼関係を破壊する行為が存在しているのであり,これらの事情は,本件既存契約を直ちに解約するについての正当事由となる。 また,原告池田薬品については,平成13年3月19日仕入分の三光丸代金の支払が,1年以上経った平成14年4月25日になって行われたという履行遅滞の事実がある。 (原告らの主張)原告足高本店が,身勝手な行動をとってきたとの主張は否認する。また,原告らの一部が,平成14年12月から三光丸に加えて膽肚羅丸の配置を開始したのは,三光丸が体質に合わない得意先に対する新商財として試みたにすぎず,一般的に三光丸に代替する商品として販売を行なったものではない。被告による本件解約は,原告らに何らの義務違反や契約違反がないにもかかわらず が体質に合わない得意先に対する新商財として試みたにすぎず,一般的に三光丸に代替する商品として販売を行なったものではない。被告による本件解約は,原告らに何らの義務違反や契約違反がないにもかかわらず,一方的に本件顧客情報の提供を強要することなどを内容とする新取引規定に基づく契約を締結しないことを理由にするものであり,本件解約には何ら正当な事由がない。 原告池田薬品は,被告からの請求書が来なかったために支払ができなかったにすぎず,実際,平成14年4月23日付け内容証明郵便による請求を受けた時点で,その同請求に指定された同月26日までという所定期間内に遅延損害金も含めた支払をしているのであり,本件既存契約の解約について正当な事由は存在しない。 第3 当裁判所の判断 1 本件各訴え(請求の趣旨1(1)(2),2(2)(3))の適法性について(1) 独占禁止法24条に基づく差止請求(請求の趣旨1(1))の適法性被告は,原告らとの間で,原告らの注文に応じて被告が出荷義務を負うような契約を締結したことはなく,出荷義務が存在しない以上,義務の履行を停止して本件出荷停止を行なっているわけではないから,原告らの請求は差止めの対象を欠くと主張する。 しかしながら,前記第2の1の前提となる事実から明らかなとおり,本件では,原告らと被告との間では,本件既存契約に基づき,長期間にわたり三光丸の継続的な売買が行われていたところ,原告Fを除く原告らについては,被告からの本件新規契約締結の申入れに応じなかったため,被告において本件既存契約を解約したことから,また,原告Fについては,いったん締結したF新契約を一方的に強迫を理由に取り消したことから,被告が本件出荷停止をし,これに対し,原告らが被告による解約の無効,ひいては出荷義務の存在を主張 たことから,また,原告Fについては,いったん締結したF新契約を一方的に強迫を理由に取り消したことから,被告が本件出荷停止をし,これに対し,原告らが被告による解約の無効,ひいては出荷義務の存在を主張して(その理由として独占禁止法違反の主張もされている。),本件出荷停止の差止めを求めたものである。そうであるとすれば,その請求自体の当否は,独占禁止法違反の主張も含め,最終的には本件既存契約の内容如何と本件解約の効力の有無に帰着するというべきであり,差止請求の主張自体が不適法とまでは言えないというべきである。 (2) 独占禁止法24条に基づく引渡請求(請求の趣旨1(2))の適法性独占禁止法24条は,「侵害の停止又は予防を請求することができる」と規定しているものであり,この文理からすれば,独占禁止法24条に基づく差止請求は,相手方に直接的な作為義務を課すことは予定していないというべきである。また,仮に直接的な作為義務を認めたとしても,強制執行は不可能であり,この点からも,直接的な作為義務を課すことは,法制度上,想定されていないと解すべきである。 よって,原告らの独占禁止法24条に基づく引渡請求は不適法というべきである。 なお,独占禁止法24条に基づく差止請求には,作為命令も含まれるとする見解も存在する。確かに,公正取引委員会及び被審人の間の関係のような,独占禁止法における規定の中でのみ実体法上の主張がされ,手続が進められる場合には,排除措置命令の内容を充実させたものとするために,一定の作為を求めることは当然に認められ,法文上もそのことが予定されている(独占禁止法7条等)。しかしながら,独占禁止法24条に基づく差止請求権は,公法上の請求権ではなく民事法上の請求権であるから,民事訴訟手続における私訴として位置付けられる差 そのことが予定されている(独占禁止法7条等)。しかしながら,独占禁止法24条に基づく差止請求権は,公法上の請求権ではなく民事法上の請求権であるから,民事訴訟手続における私訴として位置付けられる差止請求においては,差止請求の当事者間に,契約関係等その他の民事上の権利関係も存在しているのが通常であって,これらの権利関係に基づく民事上の請求をすること自体何ら排除されていないから,当該民事上の請求の中で,原告が被告に対してこれらの権利関係上の履行行為としての一定の作為を求めることが可能である。そうであれば,ことさらに,独占禁止法24条に基づく差止請求の内容に作為命令を取り込む必要はなく,原告らの同条に基づく引渡請求は認められないというべきである。 (3) 一般民事上の承諾請求(請求の趣旨2(2))の適法性原告らは,これまでの被告の対応からして,売買契約上の地位が確認されただけでは商品である三光丸の入手が不確実であってその権利の実現ができない旨を主張して,原告らからの注文を受けた場合には,正当な理由がない限り承諾の意思表示をすることを義務付ける請求をしている。 しかしながら,原告らの三光丸を入手する権利の実現を確実なものとするのであれば,端的に被告に対する三光丸の直接の給付請求を認めることで足りるのであり,意思表示の強制までも認める必要はない。しかも,実際の三光丸の引渡しこそが重要なのであって,承諾が義務付けられたとしても,そのことだけで原告らの求める権利の実現がされるわけでもない。 したがって,原告らの被告に対する承諾請求は,その必要性が認められないから,不適法というべきである。 (4) 一般民事上の引渡請求(請求の趣旨2(3))の適法性原告らは,これまでの被告の対応からして,将来給付請求として商品の引渡 ,その必要性が認められないから,不適法というべきである。 (4) 一般民事上の引渡請求(請求の趣旨2(3))の適法性原告らは,これまでの被告の対応からして,将来給付請求として商品の引渡しが認められるべきであると主張する。 しかしながら,被告は,本件既存契約の解約の有効性を主張して本件出荷停止を行っているものであるところ,本件では,まさにその有効性自体が争われているものであり,被告の本件和解に従っている態度等に照らしても,原告らの主張する将来の引渡請求をあらかじめ行う必要性は認められないといわざるをえない。したがって,原告らの被告に対する将来の給付の訴えとしての一般民事上の引渡請求は,その必要性が認められないから,不適法というべきである。 なお,仮に,将来の給付の訴えの必要性を認める余地があるとしても,原告らと被告との間の既存契約の内容は後記2で認定したとおりであり,その内容は,原告らの注文に応じて,被告が三光丸を継続的に供給するというもので,代金の支払と引き換えに三光丸を供給することを原則とし,支払について不安のない場合には60日の支払猶予期間をおくものであったというのであるから,本件既存契約を根拠として,代金の支払の担保もないまま,原告らそれぞれの1年分以上の取引量に相当する別紙数量目録記載の数量の三光丸の引渡しを被告に対して求めることはできないというべきである。そうであるとすれば,原告らの主張は,そのような請求をする実体法上の根拠も欠くものであって,原告らの主張は理由がないことが明らかである。 2 本件既存契約の内容前提となる事実1(2)ア(イ)並びに証拠(甲5の1ないし3,甲6,甲67,乙17の1ないし15,原告足高本店代表者,原告F,被告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,①原告らは,被 の内容前提となる事実1(2)ア(イ)並びに証拠(甲5の1ないし3,甲6,甲67,乙17の1ないし15,原告足高本店代表者,原告F,被告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,①原告らは,被告あるいはその前身である三光丸本店から,15年ないしは100年以上の期間にわたって継続的に三光丸を仕入れ,これをそれぞれの得意先である一般家庭に配置していること,②原告らの配置業者は,一定の配置薬を一般家庭である得意先に配置し,定期的に得意先を廻商し,配置薬の補充と使用された配置薬の代金を徴収することを繰り返すという営業形態をとっており,その廻商活動における配置薬の仕入及び販売の両面においてその活動は性質上当然に継続的なものになること,③そのような仕入及び販売の両面における継続的な営業形態の故に,原告らも三光丸を得意先に配置するにあたっては,配置する薬袋や薬箱として三光丸の商標の入ったものを使用してきたこと,④原告らと被告との間の従来の三光丸の取引については,明治時代に作成された簡単な旧取引規定が存在し,その内容は別紙契約目録2記載のとおりであったが,原告らとの間では個別の契約書は作成されていなかったこと,⑤被告による三光丸の配置業者への販売は,代金と引き換えに三光丸を店頭で渡すことを原則とするが,実際には,被告が電話あるいはファックスにより注文を受けると,半製品状態で置いてある三光丸を注文日の翌々日までに完成品にしたうえ,取引の実績に照らしての取扱いではあるが,三光丸を1週間程度の内には到着するように注文者宛に宅急便等で納品書等を添付して発送して納品し,その代金については1包○○円で発送日から60日程度の猶予期間をおいて支払を受けていること,⑥原告らと被告との間の取引の態様も,ほぼ同様であり,三光丸1包の代金が○○円であることを前提に,原告 品し,その代金については1包○○円で発送日から60日程度の猶予期間をおいて支払を受けていること,⑥原告らと被告との間の取引の態様も,ほぼ同様であり,三光丸1包の代金が○○円であることを前提に,原告らは電話あるいはファックスにより注文をし,これに対し,被告において注文日の翌々日までに三光丸を完成品にしたうえ,原告Fについては,被告の近隣であった関係もあって直接店頭で代金と引き換えに引き渡され,又はその他の原告らについては,過去の取引実績にかんがみ,信用関係が形成されていない新入業者や紛争関係にある業者とは異なり,同原告らからの求めがあればこれに応じて,三光丸を1週間程度の内には到着するように同原告ら宛に宅急便等で納品書等を添付して発送して納品し(ただし,原告池田薬品及び原告Aについては発送前に代金支払日の確認をしていた。),その代金については発送日から60日程度の猶予期間をおいて支払が行われていたことがそれぞれ認められる。 以上の事実によれば,原告らと被告との間の三光丸の供給を内容とする本件既存契約は,継続的商品供給契約であることが明らかであり,別紙契約目録3記載のとおり,代金額は1包○○円,商品の納品は原告らからの注文によるものとし,その納品形態は沿革的にも店頭渡しが原則であったが,被告は原告らから求められれば配送に応じており,また,代金の支払については,現金支払を原則とするが,従来の取引実績を踏まえ,原告らについては,代金支払につき特段の不安が窺われない限りは,納品後60日の猶予が認められているなどといった内容を有しているというべきである。 3 独占禁止法24条に基づく請求(請求の趣旨1(1))について(1) 本件出荷停止について独占禁止法上違法とされる「単独の取引拒絶」への該当性の有無原告らの指摘する ある。 3 独占禁止法24条に基づく請求(請求の趣旨1(1))について(1) 本件出荷停止について独占禁止法上違法とされる「単独の取引拒絶」への該当性の有無原告らの指摘する不公正な取引方法(一般指定)2項にいう「単独の取引拒絶」とは,「不当にある事業者に対し,取引を拒絶し若しくは取引に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限し,又は他の事業者にこれらに該当する行為をさせること」をいい,このような単独の取引拒絶は,共同の取引拒絶(不公正な取引方法〔一般指定〕1項)とは異なって,拒絶された相手方が通常は自由に他の取引先を見出すことができるので,原則として契約の相手方選択の自由の行使として認められる。しかしながら,このような取引拒絶が,不当に行われる場合,例えば競争者の事業活動が困難になる場合及び独占禁止法上不当な目的を達成するための手段として用いられる場合には,公正競争阻害性が認められる。以下,本件において取引の拒絶そのものの存否及び公正競争阻害性の有無に分けて検討する。 ア取引拒絶(行為要件)の有無本件訴訟において,原告らは被告に対し三光丸の供給を求めているところ,前提となる事実1(2)ア(イ)によれば,被告は本件既存契約に基づき原告らの注文に応じて三光丸を供給してきたこと,本件既存契約の内容は前記2で認定したとおりであり,被告が原告らに対し三光丸を継続的に供給することを内容とする継続的商品供給契約であることが認められる。そして,被告は,原告Fについては本件既存契約に替えてF新契約を締結したにもかかわらずこれを一方的に取り消したとして,その余の原告らについては本件解約により本件既存契約が終了したとして,原告らに対し,今後は,原告らが被告との間で新取引規定を締結しない以上原告らに対する三光丸 わらずこれを一方的に取り消したとして,その余の原告らについては本件解約により本件既存契約が終了したとして,原告らに対し,今後は,原告らが被告との間で新取引規定を締結しない以上原告らに対する三光丸の供給には応じないとする本件出荷停止の措置をとっていることは明らかである。そうであるとすれば,被告が原告らに対し,独占禁止法の適用にあたっての行為要件としての取引拒絶を行っていること自体は認められるというべきである。 なお,原告Fは,F新契約を強迫を理由として取り消したことにより,本件既存契約が復活したにもかかわらず被告が出荷停止の措置をとっていることから取引拒絶が認められるかのごとき主張をするが,ここでいう取引拒絶は独占禁止法上の概念であり,その存否の判断にあたっては,あらかじめ実体法上の権利関係の存否の判断をする必要があるとは解されないから,前記認定のとおりの原告らと被告との間における従前の三光丸の継続的な供給取引の存在と出荷停止の事実が認められる以上,行為要件としての取引拒絶の事実は認められると解すべきである。そして,独占禁止法違反の契約あるいは契約の解約の私法上の効力という観点から本件をみると,独占禁止法違反の事実が認められた場合において,違反行為の目的,その態様,違法性の強弱,その計画性の程度等に照らし,当該行為を有効として独占禁止法の規定する措置に委ねたのでは,その目的が十分達せられないとの判断に至った場合に,F新契約あるいは本件既存契約の解約が民法90条違反により無効になるものと解すれば足りるというべきである。 そこで,以下,被告の本件出荷停止の措置の正当性について公正競争阻害性の有無の観点から判断する。 イ単独の取引拒絶の要件である公正競争阻害性の有無(ア) 新取引規定中の地域制限条項につい で,以下,被告の本件出荷停止の措置の正当性について公正競争阻害性の有無の観点から判断する。 イ単独の取引拒絶の要件である公正競争阻害性の有無(ア) 新取引規定中の地域制限条項について独占禁止法上違法とされる厳格な地域制限(拘束条件付取引)への該当性の有無a 厳格な地域制限(拘束条件付取引)を認定するための要件不公正な取引方法(一般指定)13項は,「相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて,当該相手方と取り引きすること」を規制の対象とし,その1つの内容として,メーカーが流通業者に対して,一定の地域を割り当て,地域外での販売を制限すること(厳格な地域制限)を違法な行為とする。そして,原告らは,新取引規定中の地域制限条項がこれにあたる旨を指摘する。 以下,禁止される厳格な地域制限に該当するのかを検討する前提として,その要件を検討すると,そもそも不公正な取引方法とは,市場における①自由な競争の確保,②競争手段の公正さの確保及び③自由競争基盤の確保によりもたらされる公正な競争を可能とする状態を阻害するおそれのあるものである必要がある。そうすると,厳格な地域制限に該当するというためには,当該行為の主体が当該行為により市場における自由競争基盤との関係で市場に悪影響を与えることが可能な地位にあることが必要と考えられ,また,自由な競争の確保の観点から当該行為について価格が維持されるおそれが認められるものでなければならない。すなわち,厳格な地域制限を認定するための要件として,①違法行為の主体たりうるメーカーは市場における有力な事業者である必要があり,②その者の行う規制が事業活動の不当な制限となること,③その制限を通じて価格維持の効果が生ずること するための要件として,①違法行為の主体たりうるメーカーは市場における有力な事業者である必要があり,②その者の行う規制が事業活動の不当な制限となること,③その制限を通じて価格維持の効果が生ずることが必要であると解される。そこで,以下,新取引規定中の地域制限条項は,これらの要件を満たしていると言えるかについて検討する。 b 被告の市場における有力な事業者への該当性の有無原告らは,三光丸の市場を,一般医薬品と配置薬に区別したうえで,配置薬の中の健胃消化剤の市場と捉えることを前提に,被告は市場において約34.5パーセントのシェアを占める有力な事業者に該当すると主張する。 そこで検討すると,三光丸の属する健胃消化剤中の配置用家庭薬の生産金額は,厚生省の薬事工業生産動態統計年報(甲24)によると平成11年当時で年間14億3000万円余りとされており,この統計数字が家庭用配置薬全体の生産額にあたるとすれば,三光丸の年間生産量は1400万包余り,単価○○円というのであるから,三光丸が家庭用配置薬に占める割合は大雑把にみても3割以上に達すると言えるし,被告が,三光丸が600種類ある胃腸薬の中で5指に入ると宣伝していることも考慮すると,市場を家庭用配置薬市場に限ってみることができるのであれば,被告を市場における有力な事業者と認める余地はあると言える。 しかしながら,独占禁止法が市場における競争秩序の維持を目的にするものであることからすると,市場とは,公正取引委員会の公表した独占禁止法ガイドラインによれば,「行為の対象となる商品と機能効用が同様であり,地理的条件,取引先関係等から相互に競争関係にある商品の市場」とされており,商品又は役務の供給と需給をめぐって事業者間で競争が行われる場を意味することにな 為の対象となる商品と機能効用が同様であり,地理的条件,取引先関係等から相互に競争関係にある商品の市場」とされており,商品又は役務の供給と需給をめぐって事業者間で競争が行われる場を意味することになる。そして,その競争の有無ないし範囲の判断にあたっては,薬の販売形態も一考慮要素になる余地はあるとはいえ,基本的には消費者の動向を中心に据えるべきものである。 そのような観点からみると,証拠(乙1ないし4,乙56,乙57,乙59ないし乙65,乙77の1ないし8)及び弁論の全趣旨によれば,そもそも健胃消化剤とそれ以外の胃腸薬の区別が厳格な意味でされているかについては疑問の余地もあること,医師により処方される医療用を除く胃腸薬は誰にでも自由に入手でき,しかも薬局やドラッグストアで入手可能なものであること,さらには,配置薬業界においてもドラッグストアやコンビニエンスストアでの医療品販売が脅威となり対策が叫ばれていることといった事実が認められ,これらの事実に照らす限り,三光丸の市場を家庭用配置薬市場に限定して狭くみるとの解釈については多分に疑問が残ると言わざるをえない。そして,本件においては,三光丸の得意先の地域ごとの状況(近所に薬局やドラッグストアがどの程度あるか等)についての立証がなされていないことからしても,直ちにそのような解釈をとることは困難である。 そうであるとすれば,本件に顕れた証拠をもってしては,被告を市場における有力な事業者とまで認定することはできないと言わざるをえない。 c 事業活動の不当な制限の有無原告は,新取引規定中の地域制限条項が事業活動の不当な制限となると主張するので検討する。 確かに,前提となる事実1(4)アで認定したとおり,被告は,新取引規定7条,同9条,10条及び11 告は,新取引規定中の地域制限条項が事業活動の不当な制限となると主張するので検討する。 確かに,前提となる事実1(4)アで認定したとおり,被告は,新取引規定7条,同9条,10条及び11条3項において,配置業者に対し販売地域を指定し,配置業者に対し指定された販売地域内でのみ三光丸の配置を行うものとするとともに,配置業者が指定された販売地域外で配置を行う場合には,被告に対し申請し,新たな販売地域として指定を受けなければならないことを要求し,この申請については,被告の判断で不適当と認めたときには指定を拒否することできるとしていることが認められる。また,被告が配置業者から顧客情報を受けこれに基づいて地域指定作業を行っていること(甲22),さらには被告が配置研修部の得意先を塗り分けた地図を作成していること(被告代表者)も認められる。そして,原告らはこれらの事実をとらえて厳格な地域制限が行われていることは明らかであるとして,その不当性を主張するものである。 しかしながら,被告代表者は,このような地域指定を行った理由としては,得意先の把握が容易になること,迴商効率や売上げの向上につながること,さらには拡販意欲も沸くことといった配置薬業独特の事情があると述べており,被告が三光丸の販売を原告らを含めた配置業者に依存していることからすると,被告が地域指定を行ったこと自体は必ずしも不合理とは言えないと考える。そして,これらの規定から,被告が配置業者の指定地域外での販売活動を一切禁止していると解することはできないし,被告が原告らに対し指定地域外での販売を禁止する行動をとったことを認めるに足りる証拠もない。かえって,被告代表者尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば,実際にも一つの地域に複数の配置業者が得意先を有しており,これらの業者間 地域外での販売を禁止する行動をとったことを認めるに足りる証拠もない。かえって,被告代表者尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば,実際にも一つの地域に複数の配置業者が得意先を有しており,これらの業者間の販売を制限している事実はなく,現在指定を受けていない地域においても必要な行政上の許認可を得ており,人的体制及び具体的計画を有するのであれば,新たな指定が行われることが予定されており,また,地域外顧客からの注文に応じることも否定されているわけではないことが認められる。 そうであるとすれば,新取引規定中の地域制限条項は,事業活動の不当な制限には該当しないというべきである。 d 価格維持効果の有無また,原告らは,被告が三光丸を一律120円で売却するように指導していると主張し,甲第50及び51号証の通知を提出している。 しかしながら,甲第50及び51号証の趣旨は,その文面からすると三光丸の価格を120円に維持することにあるのではなく,営業店や取次店の店舗における販売を中止するように求めているというべきであり,原告らの主張を裏付ける証拠とするには足りない。また,確かに,三光丸の包袋(甲53)には120円との印刷がされていることが認められ,定価として120円と記載した文書(甲59)も存在するが,被告代表者は,これらはいわばメーカー希望小売価格というべきものであると供述しており(被告代表者の本人調書3頁),これらのことから,被告が三光丸の価格を120円に維持するように配置業者に強制しているとまで認めることはできない。 かえって,証拠(甲81の4,乙76,原告足高本店代表者)及び弁論の全趣旨によれば,原告足高本店及び同原告と代表者を共通にする足高薬品株式会社(原告足高薬品とは異なる。以下「訴外足高薬品」とい い。 かえって,証拠(甲81の4,乙76,原告足高本店代表者)及び弁論の全趣旨によれば,原告足高本店及び同原告と代表者を共通にする足高薬品株式会社(原告足高薬品とは異なる。以下「訴外足高薬品」という。)の三光丸取引は,薬局業務を行う原告足高本店が一手に三光丸の仕入を行い,これを配置販売業を行う訴外足高薬品に卸して配置販売を行うという形態がとられており,両会社は実質的に一体とみるべきものであるところ,平成9年ころ,訴外足高薬品において青梅市,奥多摩地区の廻商ができなくなった際に,原告足高本店において三光丸について2割の値引き販売を現金販売及び通信販売の形態で行っていたことが認められる。 そうであるとすれば,新取引規定中の地域制限条項には,価格維持の効果等は存在しないというべきである。 e まとめ以上aないしdで検討したとおりであり,新取引規定中の地域制限条項は,前記aで示した3要件を満たしていると認めることができないから,これが独占禁止法で違法とされる厳格な地域制限(拘束条件付取引)に該当するとは言えない。 (イ) 新取引規定中の地域制限条項について独占禁止法上違法とされる地域外顧客への販売制限(拘束条件付取引)への該当性の有無原告らは,新取引規定中の地域制限条項が独占禁止法上禁止される地域外顧客への販売制限に該当すると主張するので検討する。この点については,同規定11条3項に同規定9条1項及び2項の定める申請の許否制度の存在を併せ考えると,被告において原告らによる地域外顧客への販売制限が可能になるようにも読める。しかしながら,地域外顧客への販売制限も厳格な地域制限と同様に違法な販売地域制限の1類型であることからすると,前記(ア)で検討したように,これを違法な販売地域制限の行 限が可能になるようにも読める。しかしながら,地域外顧客への販売制限も厳格な地域制限と同様に違法な販売地域制限の1類型であることからすると,前記(ア)で検討したように,これを違法な販売地域制限の行為と評価するには,少なくともその行為によって価格維持がされるおそれが認められなければならないというべきである。 しかしながら,前記(ア)dで認定したように,新取引規定中の地域制限条項には価格維持効果を認めることができない。そうすると,新取引規定11条3項等の地域制限条項の定めは,独占禁止法上違法とされる地域外顧客への販売制限(拘束条件付取引)に該当しない。 (ウ) 新取引規定中の顧客情報報告条項について独占禁止法上違法とされる優越的地位の濫用への該当性の有無a 被告の原告らに対する優越的地位の有無不公正な取引方法(一般指定)14項4号は「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して,正常な商慣習に照らして不当に,取引の条件又は実施について相手方に不利益を与える行為」を対象とするところ,ここで規定されている「優越的地位」とは,一方が相手方に対して相対的に優越的地位にあれば足りるものと解するのが相当である。 この点,被告は,「優越的地位」の意義は,単なる相対的な優越ではなく,市場支配的な地位又はそれに準ずるような絶対的な優越であると解すべきであると主張する。しかしながら,相対的に優越した地位にある事業者であるとすれば,市場における競争を阻害することは十分に可能である。そうであれば,市場支配的な地位又はそれに準ずるような絶対的な優越がなければ,不公正な取引方法(一般指定)14項の適用がないと解することは,独占禁止法の趣旨を極めて限定してしまうことになって妥当ではない あれば,市場支配的な地位又はそれに準ずるような絶対的な優越がなければ,不公正な取引方法(一般指定)14項の適用がないと解することは,独占禁止法の趣旨を極めて限定してしまうことになって妥当ではない。したがって,この点に関する被告の主張を採用することはできない。 そして,前記認定のとおり,被告と原告らとの間の三光丸の取引は,15年ないし100年以上の長期に及んでいるところ,証拠(甲11,甲20の1,甲35,甲36,甲47甲55ないし甲57,原告足高本店代表者)によれば,原告らは,得意先に「三光丸」印の配置箱を置き,得意先から三光丸さんとの名称で呼ばれ,自らの営業拠点等に三光丸の広告を出すなど,三光丸の配置販売にあたっては,専ら三光丸のブランドイメージに依存していることが認められる。また,証拠(甲17の1ないし10,甲66の1ないし10,原告足高本店代表者,原告F)及び弁論の全趣旨によれば,原告らにとって,三光丸は廻商活動を行ううえでの中核商品であり,取扱商品に占める割合も相当程度高いことが認められる。これらの事実に照らすと,原告らが,三光丸を商品から失うとともに,永年利用してきた三光丸ブランドの使用を止め,自己の商標等の新しいブランドにより他の商品により廻商を行うことについては多大の困難が伴うことが予想されるというべきである。 そうであるとすれば,原告らの営業における三光丸取引への依存度は相当程度高いものであると認めざるをえず,本件三光丸取引に関しては,被告は原告らに対する関係では,取引依存性に基づく優越性があるというべきであり,その余の点につき判断するまでもなく,被告は原告らに対して,優越的地位にあるものと認めるのが相当である。 そこで,進んで,優越的地位の濫用を基礎付ける要件である原告らの不 うべきであり,その余の点につき判断するまでもなく,被告は原告らに対して,優越的地位にあるものと認めるのが相当である。 そこで,進んで,優越的地位の濫用を基礎付ける要件である原告らの不利益性の有無について後記bないしeにおいて検討する。 b 本件顧客情報の価値の有無(原告らの不利益の有無1)原告らは,得意先の住所,氏名及び電話番号からなる本件顧客情報には営業と同視することのできる財産的価値が認められ,これを被告に無償で提供することは極めて不利益な取引条件であると主張する。 確かに,証拠(甲5の1ないし3,甲7,甲21,甲23,証人,原告足高本店代表者)によれば,懸場帳(得意先の氏名,住所,電話番号と連絡方法,顧客の薬の使用履歴,病歴,生年月日等を記載した帳簿)については,これを有償で売買することが行われており,懸場帳それ自体に財産的価値があることが認められる。しかしながら,本件で問題とされている得意先の住所,氏名及び電話番号という顧客情報については,証人及び原告足高本店代表者の供述中には,それ自体が財産的価値があるとする部分があるとはいえ,そのような顧客情報は懸場帳の一部にしかすぎず,実際にこれのみが取引の対象とされたことを窺わせる証拠はない。 そうであるとすれば,そのような顧客情報自体に懸場帳と同様の意味での財産的価値があるとまで認定することには無理があると言うべきである。 もっとも,昨今の情報化社会においては,そのような個人情報自体が取引の対象とされていることは公知の事実であり,その意味では,顧客情報自体に財産的価値を認める余地はあると言えるが,仮に,これらの情報に財産的価値を認めることができるとしても,後記cで認定したとおり,被告は本件顧客情報を一定の目的以外に使用 ,その意味では,顧客情報自体に財産的価値を認める余地はあると言えるが,仮に,これらの情報に財産的価値を認めることができるとしても,後記cで認定したとおり,被告は本件顧客情報を一定の目的以外に使用しないことを確約しているのであって,それ以外の目的に使用するというのは,原告らの憶測にすぎないというべきであるから,これをもって不利益な取引条件ということはできない。 c 個人情報保護法の観点からみた得意先のプライバシーの保護の必要性の有無(原告らの不利益の有無2)原告らは,得意先の住所,氏名及び電話番号を被告に提供することは,得意先のプライバシー侵害となり得意先が原告らとの取引を解消する可能性が高く,個人情報保護法にも違反する以上,得意先の住所,氏名及び電話番号の被告に対する提供は,原告らにとって不利益な取引条件に該当すると主張し,原告らの得意先に対するアンケートの結果を証拠(甲26の1ないし72,甲35,甲36)として提出する。 しかしながら,原告らの提出するアンケートの結果は,その質問の方法によって結果が左右されうるものであることからすれば,その記載内容は,必ずしも三光丸利用者全体の意識を反映しているとみることには無理がある。そして,新取引規定11条8項には本件顧客情報の保護について規定されているし(甲1の1),被告は,本件顧客情報の取扱い等について,守秘義務を徹底し,配置研修部の社員については,他の三光丸の配置業者の得意先のない地域であることを確認するため,地域と戸数以外には具体的な住所,氏名,電話番号を知らせることはしない旨をすべての取引先の配置業者で構成される同盟会に対して書面をもって確約しており(乙11),さらには得意先との顧客情報の提出に関する対応も配置業者がそれぞれ個別に対応し顧客の を知らせることはしない旨をすべての取引先の配置業者で構成される同盟会に対して書面をもって確約しており(乙11),さらには得意先との顧客情報の提出に関する対応も配置業者がそれぞれ個別に対応し顧客の理解を得ることが可能な問題とみることもできる。また,個人情報保護法は,私企業に対しては現在施行されておらず,現段階で,原告らの不利益を検討する要素とはならないというべきである。 よって,得意先のプライバシーの問題を前提とする原告らの不利益は認められないというべきである。 d 配置研修部との関係における不利益の有無(原告らの不利益の有無3)前提となる事実1(2)イ(ア)によれば,配置研修部は,被告と本店所在地や取締役等の事務責任者が同一であることが認められ,証拠(甲77の1ないし9,甲78の1ないし4)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,本件訴訟の係属中である平成15年中に有限会社三光丸奈良など9社に及ぶ新たな販売会社を全国各地に設立したことが認められる。 しかしながら,被告が本件訴訟の係属中に新たな販売会社を多数設立したことについては,被告が原告らとの間の取引終了が訴訟によって認められた場合に備えてあらかじめ企業防衛のためにとった措置とみることができるし,前記cで認定したとおり,被告が新取引規定及び同盟会に対する確約によって顧客情報の取扱いにつき守秘義務を徹底するとともにその使用目的を限定しているといった事実に照らすと,被告が配置業者から入手した得意先の住所,氏名及び電話番号に関する情報を,配置研修部その他の販売会社の営業に利用し,あるいは利用する意図があるといった事実を認めることはできない。この点,原告足高本店代表者は,被告ないし配置研修部その他の販売会社が原告らから提供された顧客情報をも その他の販売会社の営業に利用し,あるいは利用する意図があるといった事実を認めることはできない。この点,原告足高本店代表者は,被告ないし配置研修部その他の販売会社が原告らから提供された顧客情報をもとに,原告らの得意先に配置された配置薬を入れ替えあるいは集金するおそれがあるなどと指摘する。しかしながら,このような行為は,まさに犯罪行為にほかならないのであって,通常はおよそ生じえない事態である。そうであるとすれば,原告らの主張する不利益の実態は,何ら具体的な証拠に基づくものではなく,憶測にすぎないというべきである。また,原告らと配置研修部との間の競争それ自体を原告らの不利益というのであれば,そのような主張を採用できないことはいうまでもない。 よって,配置研修部の活動による原告らの不利益を認めることはできない。 e その他の本件顧客情報の提供に伴う原告らの不利益の有無(原告らの不利益の有無4)原告らの主張する得意先の不快感や不信感に基づく主張が,原告らの不利益とならないことは,前記dで説示したとおりであるところ,証拠(乙13ないし15,乙20ないし22,乙24,乙27ないし47,被告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,これまで原告らその他の配置業者において,被告に対し,約2万件の得意先の住所,氏名及び電話番号を報告しているだけでなく,新取引規定は,原告足高本店及び原告イシイ薬品の各代表者が参加する同盟会幹事会において承認されたこと,配置業者からも,得意先の住所,氏名及び電話番号の提供についてこれを支持する旨の意見も表明されていることが認められる。そのような状況に照らすと,被告が本件顧客情報を一括して管理すること等により,原告らの配置販売業の営業価値が被告の一存で決定されてしまうとの主張については,原告ら も表明されていることが認められる。そのような状況に照らすと,被告が本件顧客情報を一括して管理すること等により,原告らの配置販売業の営業価値が被告の一存で決定されてしまうとの主張については,原告らの思い込みにすぎないものといわざるをえない。 以上のとおりであって,被告が本件顧客情報を管理することによる原告らの不利益を認めることはできない。 f まとめ以上のとおりであり,前記aで検討したとおり,被告は原告らに対して,優越的地位にあるものと認めることはできるが,前記bないしeで検討したところによれば,優越的地位の濫用を基礎付ける要件である原告らの不利益性を認めることはできず,結局,新取引規定中の顧客情報報告条項の締結を求めることが独占禁止法上違法とされる優越的地位の濫用には該当しないというべきである。 (エ) 新取引規定中の譲渡先制限条項について独占禁止法上違法とされる優越的地位の濫用への該当性の有無原告らは,新取引規定中の得意先の譲渡制限に関する規定について,不公正な取引方法(一般規定)14項4号の定める優越的地位の濫用行為にあたる旨を指摘する。しかしながら,この優越的地位の濫用行為を認めるについては,前記(ウ)に説示したとおり,相手方である原告らに不利益を与えるものであることが要件となるところ,新取引規定12条3項によれば,被告は,配置業者による得意先の譲渡に関しその価格に干渉することはできず,配置業者が定めた対価自体が保証されていることが明らかであって,新取引規定中の譲渡先制限条項は,何ら原告らに不利益を及ぼすものではないというべきである。 よって,新取引規定中の譲渡先制限条項は,独占禁止法上違法とされる優越的地位の濫用に該当しない。 (2) 独占禁止法24条 ,何ら原告らに不利益を及ぼすものではないというべきである。 よって,新取引規定中の譲渡先制限条項は,独占禁止法上違法とされる優越的地位の濫用に該当しない。 (2) 独占禁止法24条に基づく請求についての結論以上(1)で認定したとおりであって,本件出荷停止については,これが独占禁止法の適用にあたっての行為要件としての取引拒絶にあたるとは認められるが,当該取引拒絶についての公正競争阻害性の存在を認めることはできないから,独占禁止法24条に規定されている著しい損害の有無及び差止めの必要性の有無について判断するまでもなく,原告らの独占禁止法に基づく差止請求(請求の趣旨1(1))は理由がないというべきである。 4 一般民事上の請求(請求の趣旨2(1))について(1) 本件既存契約の存否及び内容本件既存契約の内容は前記2で認定したとおりであり,原告らが主張するような,別紙契約目録1記載の内容により,別紙商品目録記載の商品を別紙数量目録記載の数量だけ,原告らの注文後1週間以内に引渡しをしなければならないことを内容とするような契約が成立していたことを認めるに足りる証拠はない。したがって,その余の点を判断するまでもなく,別紙商品目録,別紙数量目録及び別紙契約目録1記載の内容を前提とする原告らの請求には理由がない。 もっとも,原告らと被告との間に,原告らの注文に応じて被告が商品引渡義務を負うとの内容を含む本件既存契約が存在していたこと,そして,その具体的な内容が別紙契約目録3記載のとおりであることは,前記2で認定したとおりである。 そうすると,別紙契約目録3記載の限度においては,原告らの請求が認容される余地があるので,以下検討する。 (2) 原告FについてF新契約の取消しの成否前提となる事実1(2) おりである。 そうすると,別紙契約目録3記載の限度においては,原告らの請求が認容される余地があるので,以下検討する。 (2) 原告FについてF新契約の取消しの成否前提となる事実1(2)イ(エ)によれば,原告Fが本件既存契約に代えてF新契約を締結し,その後,自らの意思により新取引規定に基づくF新契約を解除したことは明らかである。そして,原告Fは,被告の強迫に基づいて新取引規定に基づくF新契約を締結したものであって,これを取り消した以上,本件既存契約上の地位を回復したと主張する。 そこで検討すると,原告Fが強迫であると主張する事実は,原告Fの陳述書(甲48)によれば,平成13年11月30日を過ぎて新取引規定による基本契約を返送しない場合には取引を打ち切ると文書で通知があり,その後は,被告の担当者から電話で「新取引規定に応じなければ取引ができない」「取引が停止になる」旨を言われて脅されたというものである。これに対し,原告Fは,当法廷で供述した際には,取引を打ち切ると文書で通知されたとの点については一切触れていないし,そのような書面自体証拠として提出もされていない。また,強迫の具体的な内容についても,原告Fの供述(原告Fの本人調書8頁)によれば,被告の担当者(被告代表者の妹)から電話で新取引規定に判をつくようにと再三にわたって要請があったため,原告Fが判をついた文書を出さないとどうなるのかと問い合わせた際に,被告の担当者から「取引停止になりますよという感じで言われた」ため,原告Fにおいて,三光丸はもう出荷しないという趣旨にとり,それではまずいと感じてやむなく新取引規定に署名捺印したというものである。確かに,原告Fの供述によれば,被告と三光丸の取引は原告Fの年商の16パーセント以上に上っているのであり,被告の担当者による取引 ではまずいと感じてやむなく新取引規定に署名捺印したというものである。確かに,原告Fの供述によれば,被告と三光丸の取引は原告Fの年商の16パーセント以上に上っているのであり,被告の担当者による取引を停止するとの発言がされたとすれば,原告Fの内心において,これを重く受け止めた可能性自体は否定できない。しかしながら,仮に被告の担当者の要請が執拗であり,取引停止になるとの発言があったとしても,前記原告Fの供述する程度のものであれば,電話における交渉の過程での発言としては,これを強迫であるとまで認めることには無理があるといわざるをえない。そして,他に原告F主張の強迫の事実を認めるに足る証拠はない。 よって,原告Fについては,本件既存契約自体が既に終了していることが明らかであるから,原告Fの請求の趣旨2(1)に係る請求は理由がない。 (3) 原告Fを除くその余の原告らに対する本件既存契約の解約(本件解約)の可否前提となる事実1(2)イ(ウ)によれば,被告が原告Fを除く原告らに対し,平成13年12月10日付け「回答書」により,本件既存契約について平成14年11月30日をもって解約する旨の意思表示をしたこと(本件解約)は明らかである。 そして,前提となる事実1(2)ウによれば,その後被告は原告らとの間で本件和解をしていることが認められるが,本件和解は,本件仮処分事件でのいわば暫定的な和解であり,本案である本件訴訟での解決を和解後1年内に解決することを前提とするものである。そうであるとすれば,本件和解は本件訴訟でその効力が争われている本件解約申入れの効力を何ら左右するものではないから(もっとも,前提となる事実で認定したとおり,実質的に本件解約において平成14年11月30日とされた解約の時期を平成15年11月30日まで1年間延長 本件解約申入れの効力を何ら左右するものではないから(もっとも,前提となる事実で認定したとおり,実質的に本件解約において平成14年11月30日とされた解約の時期を平成15年11月30日まで1年間延長したと同様の効力は有する。),以下進んで,本件解約の効力について判断する。 ア不文の解約条項に基づく本件既存契約の解約の可否被告らは,本件既存契約については不文の解約条項が合意されており,原告らが被告の販売方針等に従わない場合には,被告は,解約申入れについての合理的な理由の有無を問わず,解約を行うことができると主張し,原告らはそもそもそのような不文の解約条項の存在は認められないと主張して争っているので検討する。 前記認定のとおり本件既存契約については原告らとの間での個別の契約書等が存在しないことは明らかであるところ,被告は従前被告の販売方針に従わなかった者に対し,取引中止の措置をとってきたことをもって不文の解約条項の存在が認められるとの主張をしているが,過去に取引中止の措置をとりこれに相手方が応じたとの事実があったとしてもそのことから直ちに被告の主張するような不文の解除条項の存在を認定することはできないし,他にこれを認めるに足る証拠はない。 よって,不文の解約条項の存在を理由として本件解約申入れが有効であると認めることはできない。 イ本件既存契約の解約を認めるための要件つぎに,被告は,不文の解約条項が認められず,しかも本件既存契約が継続的商品供給契約であるとしても,相当期間を定めさえすれば,解約申入れについての合理的な理由の有無を問わず解約の申入れが認められるべきであると主張し,原告らは,解約申入れについては,相当期間の定めに加えて合理的な理由の存在が必要であると主張しているので,本件既 入れについての合理的な理由の有無を問わず解約の申入れが認められるべきであると主張し,原告らは,解約申入れについては,相当期間の定めに加えて合理的な理由の存在が必要であると主張しているので,本件既存契約の解約を認めるための要件について検討する。 思うに,本件既存契約が継続的商品供給契約であることは前記認定のとおり明らかであり,継続的商品供給契約においては,長期間にわたって取引関係が反復される結果,当事者間では将来にわたっても取引関係が維持されるであろうとする期待が生じることは容易に推測できるし,このような期待自体は,契約関係を規律する大原則である信義則に照らしても法的な保護に値するものというべきである。また,前記認定のとおり,原告らの配置販売の営業にあたっては,三光丸のブランドイメージに依存しているところが大きく,原告らにとって,三光丸は廻商活動を行ううえでの中核商品であり,取扱商品に占める割合も相当程度高く被告に対する取引上の依存性も認められるといったことからも明らかなとおり,原告らとしては,将来にわたって三光丸の取引が維持されるであろう期待を前提として相当程度の資本投下をしており,しかも原告らの取扱商品に占める三光丸の割合の程度からすると,特段の事情が認められれば格別であるが,一般的には,取引の停止自体が文字通り原告らにとっての死活問題となる可能性は否定できない。 そうであるとすれば,本件既存契約のような継続的商品供給契約を解約するについては,契約関係にある相手方当事者の期待権や取引上の利益を考慮することなく一方的な解約をすることは許されるべきでない。解約するについては,解約申入れ自体に信義則に反しない程度の相当ないし合理的な理由が存在することと,相手方の取引上の利益に配慮した相当期間の猶予が要求されると解す 約をすることは許されるべきでない。解約するについては,解約申入れ自体に信義則に反しない程度の相当ないし合理的な理由が存在することと,相手方の取引上の利益に配慮した相当期間の猶予が要求されると解すべきである。したがって,本件既存契約のように,製薬メーカーである被告と配置業者である原告らとの間で長期間にわたって継続して三光丸の販売が行われているような場合において,例えば,製薬メーカーである被告が配置業者である原告らに対し,商品の販売促進と商標及び商品のブランドイメージを維持する観点から一定の合理性のある販売方針に従うことを求めたにもかかわらず,原告らがこれに応じなかったようなときには,被告において自ら示した一定の販売方針に相当性ないし合理性が存在することを明らかにすることによって,相当期間を定めて契約を解約することが許されるというべきである。(勿論,本件新規契約自体に一応の合理性が認められる場合には,原告らにおいて,相当期間内に被告の方針に従い本件新規契約を締結することは可能である。)また,本件既存契約のような継続的商品供給契約を解約するについて定められる相当期間については,契約関係の下にあって従前相手方が行った出捐についてこれを回収させ,又は相手方の事業の継続に支障を来さないように他の新たな第三者と新たな契約を締結するのに必要な機会を提供するものとして合理的な期間である必要があると解すべきである。ここで,合理的な期間の長短ないし機会の内容は,契約を打ち切るについての合理性の強弱や前提となっている経済的利益の具体的な内容によって変化するものであるというべきである。 以上述べたとおりであって,当事者間の相互の契約継続への期待が契約の根底をなす継続的商品供給契約のような契約にあっては,被告が主張するように、単に合理的 するものであるというべきである。 以上述べたとおりであって,当事者間の相互の契約継続への期待が契約の根底をなす継続的商品供給契約のような契約にあっては,被告が主張するように、単に合理的な期間ないし機会を提供しさえすれば,解約申入れについての合理的な理由の存否にかかわらず契約関係を解消することができるとする考えは採用できない。 また,継続的商品供給契約は,当事者双方の信頼関係に基づいてこれが維持,継続されているものであることからすれば,当該信頼関係が破壊されるような状況にあった場合には,解約するについての正当事由があるとして,継続的商品供給関係を直ちに解消することも許されるというべきである。 そこで,以下,後記ウ及びエにおいて本件解約につき以上述べたような要件が満たされていたといえるかについて,後記オにおいて相当期間を定めない即時解約を行うことについての正当事由の有無について,それぞれ検討する。 ウ本件解約の前提となった新規契約締結申入れについての合理性の存否まず本件新規契約の内容の相当性ないし合理性について検討すると,原告らは,既に独占禁止法違反に関する争点で述べたとおり,本件新規契約については,①営業地域の制限をすることは,原告らの営業を不当に拘束し不利益を与える,②原告らに対し得意先の住所,氏名,電話番号の被告への提供を求めること自体その必要性に疑問があり,原告らに不利益を課すものである,③得意先の譲渡について,譲渡先を被告と取引のある他の配置業者に限定し,被告の承諾を理由とすることは,得意先名簿に財産価値があることからすると原告らの財産権を侵害するものであると主張している。 これに対し,被告は,①の点については,<ア>配置業者ごとにある程度得意先のある地域を集中させることに 名簿に財産価値があることからすると原告らの財産権を侵害するものであると主張している。 これに対し,被告は,①の点については,<ア>配置業者ごとにある程度得意先のある地域を集中させることによって,広告宣伝や廻商のコストを下げ,効率的な廻商を可能とするとともに,各配置業者に自分の地域という意識を持ってもらうことで顧客サービスを充実させ,拡販につなげることができること,また,<イ>新たな新規配置を行うにあたっては,あらかじめ予定する廻商予定地に宣伝広告等のための多額の費用を投下することを要するため,何らの出捐もしていない配置業者が他の配置業者の投資を利用して新規得意先を獲得することを防止する必要があることを,②の点については,<ア>原告らに被告に対する本件顧客情報の提供を求めたのは,原告らの得意先を奪うことなどを考えたものではなく,被告の三光丸の販売促進のためには得意先密度の把握が必要であるためであり,従来自己申告によっていたところ,水増し申告が発覚したことから,より正確な情報を得る必要があると思料されたためであること,また,<イ>本件顧客情報を正確に把握することによって得意先からのクレーム対策も可能となるし,<ウ>配置薬の重ね置き対策としても有効であることを,③の点については,<ア>被告にとって信頼するに足りる配置業者を確保する必要性がある反面,<イ>得意先を譲渡しようとする配置業者にとっては経済的損失がないような仕組みになっていることを説明し反論している。 そこで検討すると,①の地域制限については,前記3(1)イ(ア)cで認定したとおり,一応の合理性があるものと認められ,原告らの事業活動の不当な制限とは言えないから,このような目的の下に地域制限条項を設けることには一応の合理性があるものと考えることができる。また,②の したとおり,一応の合理性があるものと認められ,原告らの事業活動の不当な制限とは言えないから,このような目的の下に地域制限条項を設けることには一応の合理性があるものと考えることができる。また,②の顧客情報の報告については,証拠(乙5,乙18,乙19,乙21,被告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,<ア>の顧客密度の把握の必要性の点では,三光丸の販売促進のためには被告による顧客密度の把握が必要であること,そのために従来自己申告によっていたところ,水増し申告が発覚したことから,より正確な情報を得る必要があると思料されるに至ったことが,<イ>の重ね置き対策の点では,重ね置きの事態が生じた場合には,慣行上,先に配置した配置業者の薬箱を維持し,後に配置した配置業者が薬箱を引き上げるという処理がされるところ,配置業者間でその先後が争われると,双方の言い分を聞き,場合によっては得意先からも事情を聞くといった事態にならざるをえず,解決までに時間がかかるだけでなく,紛争に嫌気をさした得意先の喪失にもつながりかねなかったことが,<ウ>のユーザークレーム対策の点では,三光丸の包みには被告の住所が表記されており,ユーザークレームが被告の下に直接もたらされることも十分に予想できることがそれぞれ認められるのであり,これらの認定事実を踏まえて考えれば,新取引規定中の顧客情報報告条項に従って本件顧客情報を収集することで<ア>ないし<イ>の問題解決に資するという被告の主張する目的の合理性の内容は一応了解可能であり,このような目的の下に顧客情報の提出を求める条項を設けることについては,前記3(1)イ(ウ)で認定したとおり,配置研修部との関係での原告らの不利益も認められないことからすると,そのような目的を達成する手段として,顧客情報の提出が唯一の方法とまでは言えないにし いては,前記3(1)イ(ウ)で認定したとおり,配置研修部との関係での原告らの不利益も認められないことからすると,そのような目的を達成する手段として,顧客情報の提出が唯一の方法とまでは言えないにしても,一応の合理性があるものと考えることができる。さらに,③の得意先の譲渡制限についても,被告の主張する<ア>の信頼できる配置業者の確保の点はその合理性を理解することができるし,<イ>の経済的不利益がない点は,前記3(1)イ(エ)で認定したとおりであるから,<ア>の目的の下に譲渡先制限条項を設けることには一応の合理性があるものと考えることができる。 もっとも,原告らが,被告からの本件新規契約締結の申入れに応じなかった理由としては,被告が原告らの持っている本件顧客情報(得意先の名前,住所,電話番号)の提供を求めている点につき,被告の関連会社で原告らと同じ配置業を営む配置研修部が存在していることから,原告らの得意先を奪われるのではないかとの不信感を抱いていたことが窺われ,そのような不信感を抱くこと自体については,前記認定のとおり被告が原告らに対して取引依存性に基づく優越性を有している状況のもと,今回の新取引規定では大幅な改定がなされ,しかもその理由として原告ら配置業者の行う報告に対する不信感があることからすると,一概にこれを理解できないものとすることは酷というべきである(その意味では,原告らが本件新取引規定の締結に応じなかったことの一事をもって,被告との間の信頼関係を破壊するに足る行為と評することはできない。)が,前記認定のとおり,そのような不信感を裏付けるに足る具体的な証拠の存しない本件においては,被告による本件解約申入れの一応の合理性を否定するものとは言えないと考える。 以上のとおりであって,本件新規契約中の原告らが問題と 信感を裏付けるに足る具体的な証拠の存しない本件においては,被告による本件解約申入れの一応の合理性を否定するものとは言えないと考える。 以上のとおりであって,本件新規契約中の原告らが問題とする条項のいずれについても,一応の合理性が認められるのであるから,これらの規定が整備されていなかった本件既存契約から本件新規契約への切り替えを求めること,ひいては切り替えに応じない原告らとの間の本件既存契約の解約の申入れをすることには,一応の合理性が認められるというべきである。 なお,この相当性ないし合理性について,原告らは,原告らの実施したアンケート(甲29の1ないし21,甲30の1ないし38)の結果,被告に対する本件顧客情報の提出等を納得していない配置業者が少なからずいることを指摘している。しかしながら,アンケートの結果は,その質問の方法によって結果が左右されうるものであり,前提となる事実1(2)イ(イ)並びに証拠(乙21,乙22,乙24,乙27ないし47,乙53の1ないし14)及び弁論の全趣旨によれば,現に同一の配置業者でありながら,その後に逆の意見ないし意思を表明している者も少なくなく,また,現に被告とトラブルなく新取引規定による取引に移行し被告との取引を継続している配置業者が9割以上の大多数であることが認められるのであり,そうであるとすれば,被告と三光丸の取引をする配置業者の一般的な意識としても,被告代表者がいう新取引規定に基づく新しい契約の合理性ないし必要性について納得又は承認しているものというべきである。 以上によれば,本件解約の申入れには,一応の合理的な理由があるものというべきであり,これにより原告らの有する取引継続への期待が裏切られる結果になったとしても,そのことが直ちに信義則に反するとは言えない 上によれば,本件解約の申入れには,一応の合理的な理由があるものというべきであり,これにより原告らの有する取引継続への期待が裏切られる結果になったとしても,そのことが直ちに信義則に反するとは言えないと考える。 エ原告らの取引上の利益に配慮した相当な期間の有無次に,前記イで述べたとおり,本件既存契約のように長期間にわたる継続的商品供給契約を解約するためには,相手方がその出捐した経済的利益を回収することができるだけの期間ないし機会の提供が必要であると解すべきところ,本件においては,原告らと被告間の契約関係は数十年から百年近くにわたって継続してきたものであり,その間に,配置業者である原告らは,三光丸ブランドを用いた廻商を行い,同ブランドによる自己の信用付けを行う反面,その廻商活動により被告の信用及び販売の維持拡大を相互補完的に行ってきたことから,前記イで認定したとおり,もはや原告らにおいては,他に特段の事情が認められない限り,短期間にその営業に過大な支障を及ぼさないように商品の変更を行うことができない状態になっていることが認められる。このような事実からすると,被告らの提示した1年間の猶予期間は,本件和解による三光丸の供給期間1年を加えて考慮しても,原告らが三光丸から他の胃腸薬に取扱商品を変更する期間として,いまだ必ずしも十分なものであったとは言えないというべきである。そうであるとすれば,被告の主張する相当期間を定めた告知解約としての本件解約は,本件においてはなお前記説示に係る被告らが投下資本の回収をし,あるいは取扱商品を他の商品に変更するについて十分な期間であったと言いがたいため,現時点ではその効力を生じないものと言わざるをえない(もっとも,今後,被告による本件解約申入れが維持された場合,本件既存契約による三光丸の供 品に変更するについて十分な期間であったと言いがたいため,現時点ではその効力を生じないものと言わざるをえない(もっとも,今後,被告による本件解約申入れが維持された場合,本件既存契約による三光丸の供給がなされることが前提となるが,そのうえで相当な期間の経過があれば,本件解約は効力を生ずる余地があると解すべきである。そして,相当期間の判断にあたっては,原告らと被告の取引の期間,取引の額,原告らの取引依存の程度,原告らの営業の規模といった点を総合的に判断する必要があると思われるが,例えば原告Dのように被告との取引期間が100年以上にのぼり,取引依存度も極めて高く,営業の規模も小さいといった例を念頭におくと少なくとも解約申入れ後10年程度の期間は必要と解すべきものと考える。)。 オ正当事由に基づく解約の成否つぎに,被告の本件解約申入れについて,原告らにおいて被告との信頼関係を破壊するような正当事由が存したと言えるかについて判断する(前記認定のとおり,被告が本件既存契約の解約については,本件和解により平成15年11月30日まで期間の猶予を認めていることは明らかであるから,正当事由が認められた場合には,同日の経過をもって解約が認められることになる。)。 (ア) 原告足高本店についてa 原告足高本店による「膽肚羅丸」の購入,販売証拠(甲81の4,乙5,乙21ないし乙23,乙52の1ないし4,証人,原告足高本店代表者,被告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,原告足高本店による「膽肚羅丸」の販売に関しては次の事実が認められる。①原告足高本店及び同原告と代表者を共通にする訴外足高薬品は,原告足高本店において三光丸等の商品の仕入れ業務を行い,これを訴外足高薬品を通じて販売する営業形態をとっており,三光丸の取 が認められる。①原告足高本店及び同原告と代表者を共通にする訴外足高薬品は,原告足高本店において三光丸等の商品の仕入れ業務を行い,これを訴外足高薬品を通じて販売する営業形態をとっており,三光丸の取引に関しては,両者は実質的に同一とみることができること,②原告足高本店は,平成14年12月以降,医薬品の卸販売をしている株式会社奥田商店から,自ら注文して「膽肚羅丸」仕入れ,訴外足高薬品を通じてこれを顧客に販売するに至ったこと,③「膽肚羅丸」は和漢胃腸薬であり,その成分は,三光丸の成分である,センブリ,オウバク,ケイヒ,カンゾウに紅参,熊胆,牛胆痰を加えたものであること,④「膽肚羅丸」の広告用紙によれば,「膽肚羅丸」は三光丸をバージョンアップした商品であるとされており,訴外足高薬品はそのような広告を用いて「膽肚羅丸」を自らの顧客に販売していたこと,⑤訴外足高薬品が作成した顧客に対する請求書(乙52の4)によれば,「膽肚羅丸」は三光丸と並ぶ同社の主要取扱商品として記載され,しかもその値段も三光丸は120円とされているのに対し,「膽肚羅丸」は100円とされていること,⑤「膽肚羅丸」の包装は2連になっており,その形状は三光丸の包装と類似していること,⑥原告足高本店及び訴外足高薬品の共通の代表者は原告イシイ薬品の代表者とともに三光丸の有力配置業者として同盟会の幹事を勤めていたこと,⑦平成13年8月の同盟会の幹事,ブロック世話人会の会合で,新取引規定の承認の件が議論された際には,原告足高本店代表者は積極的に反対の意思を表明したとは認められないこと,⑧原告足高本店は,平成13年12月本件仮処分の申立てをし,以後被告との間で本件解約の効力を巡って争っていること,以上の事実がそれぞれ認められる。 b 原告足高本店の企業形態及び企業規模 高本店は,平成13年12月本件仮処分の申立てをし,以後被告との間で本件解約の効力を巡って争っていること,以上の事実がそれぞれ認められる。 b 原告足高本店の企業形態及び企業規模また,証拠(甲17の1,甲64,甲66の1,乙5,原告足高本店代表者,被告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,原告足高本店及び同原告と一体をなす訴外足高薬品の企業形態及び企業規模に関して,次の事実が認められる。①原告足高本店は薬局業務と仕入れの統括を行う会社で代表者とその妻及び薬剤師1人の3人でその営業を行い,一方販売業務を行う訴外足高薬品には20名余りの社員がいること,②原告足高本店は,被告から三光丸を年間で単価○○円で100万包以上仕入れており,これを訴外足高薬品において単価120円で販売することにより,訴外足高薬品の年間の三光丸の売上げは1億2,3000万円に達していること,③訴外足高薬品の年間の総売上げは,消費税申告書によっても平成13年当時で3億2000万円余りであったこと,④平成12年度上半期には,原告足高本店の三光丸の仕入高は,59万包余りで配置研修部に次ぎ三光丸の配置業者中第2位の取扱高となっていたこと,以上の事実が認められる。 c 原告足高本店に対する解約の正当事由以上aで認定した事実によれば,原告足高本店及び同原告と一体をなす訴外足高薬品については,一方で三光丸の有力な取引業者として同盟会幹事の地位にありながら,本件紛争が起こった後は,自己の商号を全面に押し出して迴商活動を行い,三光丸に代わる商材として「膽肚羅丸」への切り替えを図る措置をとったものと認めざるをえない。この点については,本件仮処分事件及び本件訴訟の経緯に照らすと,原告足高本店及び同原告と一体をなす訴外足高薬品にとっては本件出 して「膽肚羅丸」への切り替えを図る措置をとったものと認めざるをえない。この点については,本件仮処分事件及び本件訴訟の経緯に照らすと,原告足高本店及び同原告と一体をなす訴外足高薬品にとっては本件出荷停止を受けての企業防衛的な措置とみる余地もある。しかしながら,本件和解により原告足高本店に対しては平成15年11月分までの三光丸は供給されていたものであり,それにもかかわらず,一方でそのような措置をとったことからすると,これをもって,原告足高本店及び同原告と一体をなす訴外足高薬品による被告に対する背信行為と認める余地もないではない。 また,前記bで認定した事実によれば,原告足高本店及び同原告と一体をなす訴外足高薬品の企業規模は,三光丸の配置販売を行う業者の間では実質的に最大規模ということができ,三光丸の売上げを除いても年間2億円以上の売上げがあると認められるところ,そのような業者が前記「膽肚羅丸」への切り替えを図る措置をとったことは,原告足高本店及び同原告と一体をなす訴外足高薬品が自ら三光丸から他の胃腸薬への変更の措置をとることが可能であることを示すものとみることができると考える。 そうであるとすれば,原告足高本店については,仮に背信行為を理由とする解約の正当事由は認めることが困難であったとしても,その企業規模に照らし,平成15年11月30日までの2年間の猶予期間により,三光丸から他の胃腸薬に変更するに十分な期間が経過したものと認め,この猶予期間の経過をもって本件解約申入れに基づく本件既存契約の終了の効果が生じたものと認めることができるというべきである。 よって,その余の点について判断するまでもなく,原告足高本店の一般民事上の地位の確認を求める請求には理由がない。 (イ) 原告イシイ薬品につ 認めることができるというべきである。 よって,その余の点について判断するまでもなく,原告足高本店の一般民事上の地位の確認を求める請求には理由がない。 (イ) 原告イシイ薬品について原告イシイ薬品については,証人の証言によれば,本件紛争が生じた後,原告足高本店(及び訴外足高薬品)と同様に,膽肚羅丸の取扱いを開始していることが窺われるが,さらに進んで,その販売態様を確定するに足りる証拠はないから,本件既存契約を解約するについての正当事由を認めることができない。 (ウ) 原告池田薬品について原告池田薬品については,証拠(甲44の1ないし3)及び弁論の全趣旨によれば,同原告が被告からの請求書が来なかったために支払をすることができなかった可能性を否定することができず,実際,平成14年4月23日付けの内容証明付郵便による停止条件付解約の意思表示を付した請求を受けたことから,その同請求に指定された支払期限である同月26日までに遅延損害金も含めた支払をしたことが認められる。そうすると,原告池田薬品については,いまだ被告との間の信頼関係が失われたとまでは認められないから,同原告については,解約の正当事由は存在しないといえる。 (エ) その余の原告らについてその余の原告らについては,前記認定のとおり,原告らが本件新規契約の締結に応じなかったことをもって背信行為と認めることはできないというべきであり,他に本件既存契約の解約における正当事由を認めるに足る事実はない。 第4 結論 1 本件事案の概要以上の認定説示から明らかなとおり,本件訴訟は,配置薬である三光丸の製造及び卸売業者である被告と,被告から三光丸の供給を受け,各顧客(得意先)に対しこれを配置販売する配置業者である原告 の概要以上の認定説示から明らかなとおり,本件訴訟は,配置薬である三光丸の製造及び卸売業者である被告と,被告から三光丸の供給を受け,各顧客(得意先)に対しこれを配置販売する配置業者である原告らとの間において,被告が原告らに本件新規契約の締結を提案したにもかかわらず原告らがこれを拒絶したことから(なお,原告Fについては,いったんはF新契約の締結に応じたが,その後これを強迫を理由として取り消したことから),被告が原告らに対し,本件解約の申入れをし,本件出荷停止の措置をとったため,その是非をめぐって,独占禁止法違反,民法上の本件解約の効力等が争われた事案である。 2 当事者双方の主張と争点の概要そして,原告らは,①本件出荷停止の措置は,被告が原告らが新取引規定の締結に応じないことを理由として行ったものであるところ,本件出荷停止は,独占禁止法上違法とされる単独の取引拒絶に該当すると主張し,その理由として次のように述べている。すなわち,(ア)新取引規定中の地域制限条項は,被告が市場における有力な事業者であり,原告らに対する事業活動の制限が認められ,価額維持効果も存することからすると厳格な地域制限に該当する,(イ)新取引規定中の地域制限条項は,独占禁止法上違法とされる地域外顧客への販売制限(拘束条件付取引)に該当する,(ウ)被告は三光丸の取引に関し原告らに対し優越的な地位にあるところ,本件顧客情報の提供は,配置業者としての財産を無償で提供することにほかならず,得意先のプライバーを侵害する点で,また,原告らの競争相手である配置研修部に本件顧客情報を提供することにもなることから,原告らに不利益を与えるものであり,被告の行為は優越的な地位の濫用にあたるなどと主張するものである。これに対し,被告は,原告らの主張を全面的に争い,本件出荷停止は 情報を提供することにもなることから,原告らに不利益を与えるものであり,被告の行為は優越的な地位の濫用にあたるなどと主張するものである。これに対し,被告は,原告らの主張を全面的に争い,本件出荷停止は,独占禁止法上違法とされる単独の取引拒絶に該当しないと主張している。 また,原告らは,②本件解約の民法上の効力につき,被告の本件解約申入れの前提となった本件新規契約の締結の申入れはその内容に照らして不合理であり,本件解約は効力を生じない(なお,原告FについてはF新契約の締結は強迫によるものでありこれを取り消す)と主張する。これに対し,被告は,本件解約の前提となった本件新規契約はその内容につき合理性を有するし,そもそも本件解約申入れについては合理性は不要であり,現時点では本件解約により,原告らと被告との間の従前の契約関係は終了している(なお,被告Fについては強迫の事実はなくF新契約の締結の取消しは認められない)と主張している。 さらに,被告は,③原告らについては,原告足高本店において膽肚羅丸への切り替えの措置をとるなどの行為があることからすると,本件既存契約を解約することについては正当の事由があり,本件既存契約は終了していると主張し,原告らはこれを争っている。 3 当裁判所の判断の概要前記2で述べたような争点について,当裁判所は,①の独占禁止法違反の点については,新取引規定中の地域制限条項は,厳格な地域制限や地域外顧客への販売制限(拘束条件付取引)に該当しないし,被告が原告らとの関係で優越的な地位にあることは認められるが,本件新規契約の締結の申入れにつき原告らの主張するような不利益は認められないとしていずれも理由がないものと判断した。また,②の民法上の本件解約の効力に関しては,本件既存契約のような継続的商品供給契約を解約する の締結の申入れにつき原告らの主張するような不利益は認められないとしていずれも理由がないものと判断した。また,②の民法上の本件解約の効力に関しては,本件既存契約のような継続的商品供給契約を解約するについては,解約申入れ自体に信義則に反しない程度の相当ないし合理的な理由が存在することと相手方の取引上の利益に配慮した相当期間の猶予が必要であると解したうえで,本件解約申入れについては,一応の合理性が認められるが,原告足高本店を除く原告らについては,相手方の取引上の利益に配慮した相当期間が経過していないとして,本件解約は効力を生じないものと判断した。なお,原告Fについては強迫によるF新契約の取消しは認められないと判断した。したがって,原告Fについては,現時点では,F新契約により取引関係が規制されることとなる。 さらに,③の正当事由による解約の点については,原告足高本店については,膽肚羅丸への切り替えの措置をとったことが認められるところ,これが直ちに解約を認めるに足る背信的な行為とまで言えるか否かはともかくとしても,既に三光丸から膽肚羅丸への切り替えの措置をとるなどしていることやその企業規模に照らすと,原告足高本店については取引上の利益に配慮した相当期間が経過しているものと認められるとして,本件解約による本件既存契約の終了を認めたものである。 なお,以上のような判断に至ったことについては,本件紛争の背景にあると認められる当事者双方の相手方に対する不信感をどう評価するかの問題があった。本件訴訟において最大の争点となったのは,弁論の全趣旨及び本件訴訟の和解の経緯に照らしても明らかなとおり,新取引規定における本件顧客情報の提供の相当性,合理性の判断である。この点に関しては,被告の主張は前記のとおりであり,三光丸の販売促進のためには顧客密度の 訟の和解の経緯に照らしても明らかなとおり,新取引規定における本件顧客情報の提供の相当性,合理性の判断である。この点に関しては,被告の主張は前記のとおりであり,三光丸の販売促進のためには顧客密度の把握が必要であり,また得意先からのクレーム対策,重ね置き対策のためにもできるだけ正確な情報が必要であるところ,従前行っていた配置業者の自己申告では正確性の担保ができず,本件顧客情報の提供を求めることには合理性があるというものである。これに対し,原告らは,本件顧客情報の重要性,財産的価値を主張し,被告にこれを提供した場合には,競争相手の業者である配置研修部にこれが提供され,不当に使用されるおそれもあるし,一方で,被告の主張するような目的であれば他に代替手段もありうるもので,合理性がないとして争った。この点に関する判断は,結局は,お互いの相手方に対する不信感をどう評価するかに帰着するものである。当裁判所としては,既に認定したとおり,被告の目的自体には一応の合理性を認めたうえで,そのための手段としての顧客情報の提供については,過去に配置業者側で不正確な情報の提供があったことや,他の同盟会での検討を経て多くの配置業者の了解が得られているといった事実を併せ考慮して,それ自体が唯一の方法であるかはともかくとしても,一応の合理性はあると判断したものである。一方で,原告らの主張については,原告らの多くが被告から供給される三光丸に依存していることや,被告において本件顧客情報の提供を求める理由のひとつとして原告ら配置業者による得意先の報告に対する不信感が上げられていることからすると,原告らにしても被告の要求についてそのような不信感を抱くことも理解できないわけではないが,一方でそのような不信感を裏付ける確たる証拠は存しないばかりか,前記認定のとおり被告が顧客情報 とからすると,原告らにしても被告の要求についてそのような不信感を抱くことも理解できないわけではないが,一方でそのような不信感を裏付ける確たる証拠は存しないばかりか,前記認定のとおり被告が顧客情報の管理につき万全の配慮をする旨確約していることからすると,被告が原告らに対し本件顧客情報の提供を求めることについての一応の合理性を否定するものとまでは認められないと判断したものである。 以上の判断を踏まえ,本判決では,原告足高本店及び原告Fを除くその余の原告らについては,本件既存契約(ただし,その内容については原告らの主張のとおりではなく別紙契約目録3記載のとおり。)に基づく契約上の地位があることを確認したものである。 なお,請求の趣旨との関係では,①独占禁止法24条に基づき三光丸の引渡しを求める部分については,独占禁止法24条は直接的な作為義務を課すことまでまでは認めていないと解してこれを不適法と判断した。また,②一般民事上の請求のうち三光丸の注文についての承諾を求める部分及び三光丸の引渡請求を求める部分については,いずれもその必要性が認められないから不適法と判断した。 4 まとめ以上のとおりであるから,原告らの請求のうち,原告足高本店及び原告F以外の原告らが,別紙契約目録1記載の契約に基づく買主の地位を有することの確認を求める請求(請求の趣旨1(1))については,別紙契約目録3記載の契約に基づく買主の地位の確認を求める限度で理由があるからこれをその範囲内において認容し,原告らの独占禁止法24条に基づく引渡請求(請求の趣旨1(2))並びに一般民事上の承諾請求(請求の趣旨2(2))及び引渡請求(同(3))に基づく各訴えは不適法であるからこれをいずれも却下し,その余の請求(請求の趣旨1(1)及び同2(1)の上記認容部分を除く部 並びに一般民事上の承諾請求(請求の趣旨2(2))及び引渡請求(同(3))に基づく各訴えは不適法であるからこれをいずれも却下し,その余の請求(請求の趣旨1(1)及び同2(1)の上記認容部分を除く部分)は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について民訴法61条,64条,65条1項を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第8部裁判長裁判官西岡清一郎裁判官佐 々 木宗啓裁判官新田和憲は,転官のため署名押印することができない。 裁判長裁判官西岡清一郎別紙契約目録 1 契約の種類商品の継続的供給(売買)契約 2 売主被告 3 買主原告ら 4 目的物被告が製造・販売する和漢胃腸薬「三光丸」 5 買主における販売方法配置薬として消費者に販売 6 売買代金1包○○円 7 注文方法電話又はFAXによる申込み 8 商品の納入原告らの注文後,遅くとも1週間以内に原告らの指定場所へ納品 9 支払日・支払方法商品の出品後60日以内に現金又は銀行振込等にて支払契約書の有無なし 11 契約期間期間の定めなし別紙契約目録第1条(1) 「三光丸」の配置販売は必ず日月星三光丸印の商標である事を第一の条件とする。 (2) 三光丸印以外の大袋又は容器に三光丸の差入配置は出来なく,若し之に反し差入配置してある時は三光丸印で配置される向がある場合は,前者に対し「三光丸」の引上げを要求することが出来る。 (3) この要求を受けたる時は直ちに引上の責を負うものとする。 第2条本店との取引は原則と てある時は三光丸印で配置される向がある場合は,前者に対し「三光丸」の引上げを要求することが出来る。 (3) この要求を受けたる時は直ちに引上の責を負うものとする。 第2条本店との取引は原則として現金取引とする。 (1) 従来の取引実績により出品の日から六十日間は支払猶予期間とする。 (2) 六十日の起算日は発送の日又は引渡の日とする。 (3) 猶予期間経過後は日歩4銭の割合を以って会社へ利息を支払う。 (4) 支払猶予期間中に支払う場合は六十日に満たない日数に対し日歩4銭の割合で戻し利息を受ける。 第3条新規配置の場合は本店より応分の補助される。但し補助は1回の新付五百戸以上の場合とし,補助の方法は本店と協議の上決める。 第4条交換薬は古薬と新薬の交換はせず買入として入金の形式をとる。 別紙契約目録 1 被告は,買主から別紙商品目録記載の商品(以下「本件商品」という。)の注文を受けた場合,在庫切れ等の正当な理由がない限り,注文日の翌々日において,注文をした買主に対し,店頭において注文に係る数量の本件商品を引き渡すか,同日中に注文をした買主に対し,宅急便等で納品書等を添えて発送・出品する。 2 買主の被告に対する本件商品の代金支払は,現金取引によるものとするが,従来の取引実績により出品の日から60日間は支払猶予期間とし,この60日間の起算日は発送の日又は引渡しの日とする。 3 上記2条項は,買主の取引実績ないし信用状況に応じて見直され,買主は注文に係る本件商品の引渡しを現金支払と引き換えに店頭で受けることになることがある。 別紙商品目録 1 商品名三光丸 2 商品の種類健胃消化剤 3 製造元被告 4 1包の価格(1) 仕入価格 別紙商品目録 1 商品名 三光丸 2 商品の種類 健胃消化剤 3 製造元 被告 4 1包の価格 (1) 仕入価格 ○○円 (2) 販売価格(メーカー希望小売価格) 120円 別紙数量目録 1 原告 有限会社足高本店 120万0000包 2 原告 有限会社足高薬品 13万0000包 3 原告 有限会社イシイ薬品ハイチネット 30万0000包 4 原告 A 5万0000包 5 原告 B 4万5000包 6 原告 C 1万0000包 7 原告 D 3万0000包 8 原告 E 2万5000包 9 原告 池田薬品株式会社 1万5000包 原告 F 9万0000包

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