主文 被告人A1を懲役一年八月に、被告人A2を懲役一年二月にそれぞれ処する。 被告人A2に対し、未決勾留日数中三三〇日をその刑に算入する。 訴訟費用は、その二分の一ずつを各被告人の負担とする。 理由 [罪となる事実]被告人A1は、東京都港区内に本店を置き、教育関係の映像出版、学習教材販売、英会話等の学院事業及び美術品販売等を営業目的とし、平成二年一一月二六日に社団法人日本証券業協会に備える登録原簿に株式を店頭売買有価証券として登録された株式会社B社の代表取締役社長としてその業務全般を統括していたものであり、被告人A2は同社の常務取締役として主として財務面を統括し社長を補佐していたものであるが、両名共謀の上、第一 B社の事業年度の決算を行うに当たり、一平成元年四月一日から平成二年三月三一日までの事業年度(第七期)においては、実際には繰越し損失を含めた未処理損失があって配当すべき利益は皆無であったにもかかわらず、B社の信用を保持し証券市場からの資金の円滑な導入を図るなどの意図の下に、法令に違反して株主に対して利益配当をしようと企て、架空売上げを計上して利益を水増しさせて、架空の繰越し利益及び当期利益を計上した損益計算書、貸借対照表、架空利益を基に一株につき二〇円(ただし、新株については一株につき〇・六六円)の割合で利益配当を行う旨の利益処分案を作成し、平成二年六月二六日、東京都千代田区所在のホテル・グランドパレスにおいて開催された第七回定時株主総会において、これを提出して承認・可決させ、そのころ、株主に対し、配当金合計七一四四万三一五三円の支払をし、二平成二年四月一日から平成三年三月三一日までの事業年度(第八期)においては、実際には繰越し損失を含めた未処理損失があって配当すべき利益は皆無であったにもかかわらず、前記一と同 三円の支払をし、二平成二年四月一日から平成三年三月三一日までの事業年度(第八期)においては、実際には繰越し損失を含めた未処理損失があって配当すべき利益は皆無であったにもかかわらず、前記一と同様の意図の下に、法令に違反して株主に対して利益配当をしようと企て、架空売上げを計上して利益を水増しさせて、架空の繰越し利益及び当期利益を計上した損益計算書、貸借対照表、架空利益を基に一株につき二〇円の割合で利益配当を行う旨の利益処分案を作成し、平成三年六月二七日、前記一のホテルにおいて開催された第八回定時株主総会において、これを提出して承認・可決させ、そのころ、株主に対し、配当金合計八二七〇万七六八〇円の支払をし、三平成三年四月一日から平成四年三月三一日までの事業年度(第九期)においては、実際には繰越し損失を含めた未処理損失があって配当すべき利益は皆無であったにもかかわらず、前記一と同様の意図の下に、法令に違反して株主に対して利益配当をしようと企て、架空売上げを計上して利益を水増しさせて、架空の繰越し利益及び当期利益を計上した損益計算書、貸借対照表、架空利益を基に一株につき二〇円の割合で利益配当を行う旨の利益処分案を作成し、平成四年六月二六日、千代田区所在のホテル・ニューオータニにおいて開催された第九回定時株主総会において、これを提出して承認・可決させ、そのころ、株主に対し、配当金合計一億〇七五一万九九八〇円の支払をし、もって、いずれも違法な配当をした。 第二 B社の業務に関し、千代田区所在の大手町合同庁舎第三号館内の大蔵省関東財務局において、同財務局長を経て大蔵大臣に対し、一平成三年六月二八日、第八期の決算の実際は当期未処理損失金が三一億六七八九万六〇〇〇円であったにもかかわらず、架空売上げを計上するなどの方法により、当期 、同財務局長を経て大蔵大臣に対し、一平成三年六月二八日、第八期の決算の実際は当期未処理損失金が三一億六七八九万六〇〇〇円であったにもかかわらず、架空売上げを計上するなどの方法により、当期未処分利益金が四億七四一〇万八〇〇〇円であった旨の虚偽記載の損益計算書、貸借対照表及び利益金処分計算書を掲載した右事業年度の有価証券報告書を提出し、二平成四年六月二九日、第九期の決算の実際は当期未処理損失金が三七億七三五一万六〇〇〇円であったにもかかわらず、架空売上げを計上するなどの方法により、当期未処分利益金が六億五五〇三万一〇〇〇円であった旨の虚偽記載の損益計算書、貸借対照表及び利益金処分計算書を掲載した右事業年度の有価証券報告書を提出し、もって、いずれも重要な事項につき虚偽の記載のある有価証券報告書を提出した。 [事実認定の補足説明]第一争点等一検察官の主張本件公訴事実は、被告人両名が共謀の上、B社の平成二年三月期(第七期)から平成四年三月期(第九期)の各事業年度における決算において、未処理損失(それ以前の事業年度からの累積された繰越し損失を含む。)があったにもかかわらず、架空売上げを計上する方法により利益を水増しして、利益処分案を株主総会で承認・可決させた上で、違法配当を行ったという商法違反の事案と、平成三年三月期(第八期)及び平成四年三月期(第九期)の各事業年度については、多額の未処分利益金があったように虚偽の記載をした貸借対照表等の有価証券報告書を大蔵大臣に提出したという証券取引法違反の事案から成る。 そして、検察官の冒頭陳述書等によると、架空売上げの内容は、例えば第七期以降のものを見ると、①第七期では、後記C分の九五六八万円と絵画分の四億〇八〇〇万円で、その金額合計は五億〇三六八万円で そして、検察官の冒頭陳述書等によると、架空売上げの内容は、例えば第七期以降のものを見ると、①第七期では、後記C分の九五六八万円と絵画分の四億〇八〇〇万円で、その金額合計は五億〇三六八万円であり、②第八期では、C及び後記D分の二億〇六二四万六九〇〇円と絵画分の一七億〇五〇八万二五二七円で、その金額合計は一九億一一三二万九四二七円であり、③第九期では、絵画分の一〇億九二七一万八四五二円と後記E分の三億三九二五万円で、その金額合計は一四億三一九六万八四五二円である。 二被告人・弁護人の主張被告人・弁護人の第一回公判における罪状認否の内容を見ると、被告人A1(以下「A1」という。)関係では、「検察官主張の架空売上げ(架空利益)の計上は、具体的でないので認否困難である。振り返ると、架空売上げと認めざるを得ないものがあったことは事実であるが、額は判然としない、したがって、違法配当額や虚偽記載額をそのまま認めるわけにはいかない。B社から第三者を経てF社への絵画等の売買は、目的物も移動し、代金も決済しているので違法ではない。被告人A2(以下「A2」という。)は、事務的な処理者であって、架空売上げの計上につき共謀に加わったということはない。」というものであり、A2関係では、「B社では、文書作成業務を行い、F社では金銭出納事務を担当していたにすぎず、架空売上げの計上につきA1と共謀したことはない。しかし、架空売上げがあったことは事実であり、認めます。もっとも、起訴されている第九期決算までは、常務取締役財務本部長のG1が決算業務を担当していたので、架空の額は判然としない。B社から第三者を経てF社への絵画等の売買は、目的物も移動したものもあり、代金も決済されていたので、そのすべてが違法取引であるとの認識はなかった。」というものであった たので、架空の額は判然としない。B社から第三者を経てF社への絵画等の売買は、目的物も移動したものもあり、代金も決済されていたので、そのすべてが違法取引であるとの認識はなかった。」というものであった。 ところが、証拠調べが進められていく過程での被告人質問の結果や、弁論要旨の内容等から推察すると、被告人・弁護人の主張は必ずしも明確ではないものの、商法違反、証券取引法違反の両事案とも、公訴事実中の客観的事実、すなわち各事業年度において利益処分案を株主総会で承認・可決の上、株主へ利益配当した事実や、大蔵大臣に提出した有価証券報告書の記載内容そのものについては争わず、配当の違法性、記載内容の虚偽性、これらについての認識(故意)について争う、というもののようである。 具体的には、被告人両名はいずれも、「B社では架空売上げを計上した事実はない。 仮に架空売上げが一部あったとしてもその事実を知らなかった。F社が受けた融資についてB社が保証し、あるいはその趣旨で約束手形を発行したことや、それらの事実を会計帳簿等に公表しなかった(いわゆる簿外債務の意)事実はあるが、B社とF社は別会社であり、B社の債務はあくまで保証債務ないしは手形保証債務であるにすぎない。」などと供述し、公訴事実対象の第七期ないし第九期より前の期におけるものも含めて、B社における多数に上る個々の取引の架空性をことごとく争った上で、架空取引・架空売上げがあったとしてもそれに関与したこと、それを認識していたことをいずれも否認しており、弁護人もこれに依拠して、被告人両名はいずれも無罪である旨主張している。 三そこで、第二以下において、関係各証拠に基づき、前判示の各事実を認定した理由について、補足して説明する。 第二証拠によって認定した事実及びその評価等一 B社の設立経緯及び被告人ら ている。 三そこで、第二以下において、関係各証拠に基づき、前判示の各事実を認定した理由について、補足して説明する。 第二証拠によって認定した事実及びその評価等一 B社の設立経緯及び被告人らとの関係等株式会社H1等の代表取締役であったA1は、同社等を退職し、H2やG2からも出資を得て、昭和五八年四月一一日に資本金一億円でB社を設立した。B社の主な事業内容は、学習書等の出版、教育映像ソフト等の販売、英会話等の学院経営、海外不動産の分譲販売、絵画の販売等であった。A1は、筆頭株主であるとともに代表取締役社長として、B社の業務全般を統括していた。 A2は、前記株式会社H1の常務取締役として稼働していたものであるが、A1の誘いもあって、昭和五八年六月ころB社の常務取締役に、同年八月ころ常務取締役・管理本部長に就任し、以後、総務や財務面等を統括する業務に従事していた。 二 B社の主な取扱い商品とその販売状況 1 教育映像ソフト等昭和五九年ころから、教育映像ソフト「I1」、英語学習教材「C」を販売していたが、遅くとも平成元年までには陳腐化し、売上げを期待できる商品ではなくなった。 次期主力商品として、昭和六〇年四月ころ、中学生向け英語、数学、国語の教材「D」をH2と共同開発して、そのころから同社を供給元として独占販売を開始した。しかし、Dは、一セットが数十万円という高額商品であったこと、操作が複雑であったこと、中学生向け教材でありながら学習指導要領の改訂に準拠していなかったこと等が要因となって、当初の期待を裏切り、売上げは不振であった。それでも、Dは、その開発に際し、B社が開発費約一〇億円も負担した主力商品であった上、H2との間で、売上げの有無にかかわらず、昭和六〇年四月から昭和六二年五月までの間に合計一万八〇〇〇セッ であった。それでも、Dは、その開発に際し、B社が開発費約一〇億円も負担した主力商品であった上、H2との間で、売上げの有無にかかわらず、昭和六〇年四月から昭和六二年五月までの間に合計一万八〇〇〇セットを継続的に仕入れる旨の契約がなされていたから、少なくともこの契約量のものを販売しない限り、在庫として残らざるを得ず、売上げ不振でもその取扱いを止めることはできなかった。その後もDの売上げは伸びず、結局、平成元年初頭には、事実上、売れ残ったDは、前記Cとともに、いわばデッドストックと化していた。 そこで、Dに代わる主力商品として、H3と共同で高校生向け教材「I2」を開発し、平成二年一一月から、B社の子会社である株式会社H4に取り扱わせるなどしてその販売を開始した。しかし、I2も多額の利益をもたらすほどの売上げを果たすことはできず、B社の業績に効果をもたらすまでには至らなかった。 2 学院事業学院事業として、I3(ただし、場所により名称が異なるものがある。)を経営し、英会話等を受講させるとともに、それに使用するプログラム関係の事業を行っていたが、そのほか、第四期及び第五期においては、「I4事業(以下「I4」と表記する。)」と称する商品による売上げを計上した。これにより、後記九のとおり、B社では、公表上、第四期では約五億〇一〇〇万円の売上げで約四億九五〇〇万円、第五期では約二億二七〇〇万円の売上げで約二億二五〇〇万円という極めて利幅の大きい、多額の利益を計上した。 しかし、I4の事業は、一般のI3プログラム事業と同内容の役務等を、ビジネスマン向けに提供する事業で、受講チケットなる物も発行するなどの内容の企画が目論まれたが、公表上の売上げにもかかわらず、ビジネスマンが実際に受講した実績は全くなく、B社では、一般のI3プログラム事業に ン向けに提供する事業で、受講チケットなる物も発行するなどの内容の企画が目論まれたが、公表上の売上げにもかかわらず、ビジネスマンが実際に受講した実績は全くなく、B社では、一般のI3プログラム事業に関して作成されるものに準じて、架空の入学申込書や受講状況報告書等の書面を作成していた。なお、第六期以降は売上げを一切計上しなかった。 3 絵画昭和六一年六月ころ、絵画売買の知識を有するG3がB社に入社したことから、いわゆるI5と称する部門を設けて、同人をその事業部長に就任させ、絵画の販売事業を開始したが、その事業本部には女子事務員一名がいたのみであった。そのため、G3は、I5発足当初から、営業関係一切を一人で行っていたのが実情であったが、相応の営業成果を上げたこともあって、昭和六三年二月ころから徐々に高額な絵画の売買を手掛けるようになっていったものの、第七期中の平成元年九月ころ、G3はB社を退社した。 その後、同事業部は、A1の直轄部門とされたが、絵画取引について知識のある適当な後任者がB社にはいなかったため、B社の嘱託社員Jが、絵画取引については素人同然ではあったものの、A1の依頼を受けて、同事業部の運営を事実上任されていた。それにもかかわらず、第八期は約六億円、第九期は約一一億八〇〇〇万円という巨額の売上げを予算として見込んだ上、実際には、それをも上回る売上げを計上し続けていた。しかし、第九期末の平成四年二月初旬ころ、B社の監査を担当する公認会計士であるG4は、A1に対し、絵画販売に関し、「売掛金の滞留が認められるのは問題である。絵画を販売するのなら現金取引とすべきである。」旨指摘した。その後、第一〇期当初から後記の倒産に至るまで、絵画の売上げ計上はされていない。 4 海外不動産(Eに限る。)の分譲販売平成二年九月ころ以 売するのなら現金取引とすべきである。」旨指摘した。その後、第一〇期当初から後記の倒産に至るまで、絵画の売上げ計上はされていない。 4 海外不動産(Eに限る。)の分譲販売平成二年九月ころ以降、取引先の株式会社H5社との共同事業として、カナダのブリティッシュコロンビア州ビクトリア市所在のコンドミニアム形式のマンション「E」合計一九〇戸室について、これを分譲販売する海外不動産事業を開始した。この事業については、H5社との間で、平成八年三月末日までに、B社が全室を責任もって販売することとし、仮に販売未了分があってもB社が買い取る旨の覚書を交わしていた。他方、購入者はH5社の審査を通れば、H5社が購入代金を融資し、購入者はH5社にローン返済金を支払うことになっていた。 このEに関する事業は、前記覚書によれば、販売できれば、B社は販売価格の五七・五パーセントを受け取ることができることになっていたが、その反面、販売できなければ、前記Dと同様に、B社が在庫として抱えることになってしまうものであった。 三 B社の関連会社等 1 F社(一) 設立経緯、役員、株式等A1が、海外不動産事業を行うことを目的として、資本金五〇〇万円を自ら全額出資して、第五期中の昭和六二年八月二六日に設立した。設立時の代表取締役はA1であり、J、G5が取締役、A2が監査役であった。F社は、設立後しばらくの間は、G5担当の下に海外不動産事業を手掛けたが、昭和六二年中にはその事業からは撤退し、その後、国内不動産事業を行うことも企図したが成功せず、昭和六三年以降は格別の事業活動を行っていなかった。従業員についても、不動産事業から撤退して以降、しばらくはJのみであり、その知人のG6がその後経理事務を担当するようになっただけであった。 A1は、昭和六三年五月に 事業活動を行っていなかった。従業員についても、不動産事業から撤退して以降、しばらくはJのみであり、その知人のG6がその後経理事務を担当するようになっただけであった。 A1は、昭和六三年五月に、F社の役員を辞任したが、後任には知人のG7から名義を借りて同人を名目上の代表取締役とした。その後、A1は、平成元年三月にはA2にも監査役を辞任させ、義母のG8を名目上の監査役とした末、平成二年二月には監査役をB社の社員であるG9に交代させた。 株式については、設立時には、A2、J、G6、K1らも株主となっていたが、A1は、設立早々に株式全部を自己名義に変更し、さらに昭和六三年六月一日付けでG8にこれをすべて譲渡したことにしたが、その後、平成二年六月一日付けでG7、J及びG6の三者にそれぞれ譲渡したとして、そのころ、A2をしてその旨の株式譲渡承認議決書を作成させている。 このような役員交代や株主変更の背景には、A1が後記四のとおりB社の店頭登録へ向けた作業を進めていた関係で、証券会社や監査法人の助言で、A1が代表取締役を兼務していたり、株式を保有していると、F社も店頭登録申請の際に審査対象となる結果を招くという事情があった。 (二) 資金決済等資金決済等を見ると、設立以来一貫して、A1が、A2に指示して、銀行口座の銀行印や預金通帳を保管させており、口座から預金を出金する必要がある場合には、Jがその都度支払依頼書を起案してA2に提出し、A2がこれに承認のサインをし、A2から提出を受けたA1からも承認サインを受けるというのを、ほぼ原則としていた。もっとも、一億円を超える高額支出など重要なものに関しては、A2が自ら支払依頼書を起案して、A1の承認サインを受けていた。 また、A2は、F社の「資金繰予定表」や「資金実績表」などのメモ いた。もっとも、一億円を超える高額支出など重要なものに関しては、A2が自ら支払依頼書を起案して、A1の承認サインを受けていた。 また、A2は、F社の「資金繰予定表」や「資金実績表」などのメモを作成しており、資金繰り状況につき、逐次A1に報告していた。そして、F社では、その預金からB社の取引先の名義等でB社に振込送金を行うことがあったが、この際、その事務については、B社の経理担当であるG1やK2においても行っていた。 2 有限会社L社等平成元年に、有限会社L社、株式会社H6社が設立されているが、その設立資金はF社から拠出されており、右各会社は、後記のB社の簿外債務の名義人や、架空取引における名義貸し人からの商品転売先等として利用された。 L社については、従業員はおらず、格別の事務所や資産も持たず、何らの事業活動をも行わないペーパーカンパニーであった。なお、L社名義の預金の管理については、F社と同様に、A2が行っていた。 3 B社販社等B社では、D販売開始以降、取締役副社長のK3をその営業担当責任者とし、H4を総販売元として、直販部門である教育事業本部や子会社である株式会社H7社にその販売を行わせたが、昭和六〇年五月ないし七月には、地元業者との共同出資により、北海道B社販売、宮城B社販売、中国B社販売、城南B社販売(以下、これらをまとめて「B社販社」という。)を次々と設立して、Dの販売代理店とし、全国的にDを販売しようと試みた。しかし、前記(二の1)のとおり、Dの販売は不振であり、株式会社H7社やB社販社は常に赤字の状態であった。 そこで、B社は、これらの会社に合計数億円にも上る多額の融資をするなどして支援したが、業績を好転させることはできず、宮城B社販売は昭和六一年三月ころ事業活動を停止するに至り、中国B であった。 そこで、B社は、これらの会社に合計数億円にも上る多額の融資をするなどして支援したが、業績を好転させることはできず、宮城B社販売は昭和六一年三月ころ事業活動を停止するに至り、中国B社販売、城南B社販売も昭和六二年秋ころには休眠状態となった。また、H4も昭和六二年二月ころには恒常的な赤字を抱えてB社からの援助によりかろうじて存続している状況となり、株式会社H7社についても債務超過の状態であった。昭和六三年三月ころには、北海道B社販売も、Dの販売を止めて、B社の傘下から離脱し、これにより、B社販社はすべて事実上消滅した。 なお、後記四の店頭登録の関係で、B社が支配する子会社や関連会社である、H4(持ち株八〇パーセント超)、B社販社(持ち株四〇ないし六〇パーセント)、H8株式会社(持ち株四〇パーセント)が赤字状態であることから、連結決算を行えば全体として赤字となってしまい、B社の店頭登録が不可能となるため、これらの会社とB社の資本関係を切り離す必要が生じた。そこで、A1らは、平成元年六月ころ、H4の株はF社に、同年八月から九月にB社販社の株はG6に、平成二年三月ころH8社株式会社の株は株式会社H9社及びK4にそれぞれ譲渡する措置を講じた。 しかし、これらの株式譲渡は仮装譲渡であって、B社が株式を保有している実態には変わりはなかった。すなわち、いずれも赤字会社の株式であるにもかかわらず、額面に株式数を乗じた金額を譲渡代金としたものである上、F社、G6、H9社ほか一名を購入名義人としたものの、その資金はいずれもB社が後記八の簿外借入れによって導入した資金が使われ、これをB社に入金した形をとったにすぎないからである。 四 B社の店頭登録A1は、B社設立後間もないころから、同社株式の店頭登録を企図し、証券会社の公開引 入れによって導入した資金が使われ、これをB社に入金した形をとったにすぎないからである。 四 B社の店頭登録A1は、B社設立後間もないころから、同社株式の店頭登録を企図し、証券会社の公開引受け担当者らと会合を重ねるようになり、店頭登録に備え、昭和五九年一月ころには監査法人M1事務所と監査委託契約を締結した。また、店頭登録のためには、業績が上昇傾向にあることをアピールする必要があったことから、売上げ及び利益が右肩上がりとなるよう、常に部下役員や社員を叱咤していた。そして、昭和六〇年ころには、A1を会長、A2を委員長とする株式公開委員会を社内に設け、昭和六三年一一月の店頭登録実現を目標として、A2が証券会社との窓口となり、M2ほか数社の株式公開事務担当者との折衝を重ねるようになった。しかし、証券会社側では、B社は設立間もない会社であって公開時期としては余りにも早かったし、その財務体質に未だ不安もあったこと等から、B社の次期主力商品のDの今後の売上げを参考にして店頭登録への取り組みを考えたいという趣旨の意向をB社側に提示しており、そのため、B社としては、店頭登録のためにも、Dが順調に売上げを上げていることを示す必要に迫られた。 また、社団法人日本証券業協会の店頭登録基準として、当時一株当たり一〇円以上の利益を出す必要があったが、B社における第三期以降の公表会計上の一株当たりの利益は、第三期が六円九八銭、第四期が三円七九銭、第五期が五円六九銭であって、基準を満たすには至っていなかった。このため、A1は、昭和六三年四月に株主の同意を得た上で、四株を一株に併合して株式数を減らし、従前に比べ、同じ利益でも一株当たりの利益が四倍となる措置を講じ、これにより第六期において一株当たりの利益は二一円七七銭となった。 このようにして、B社では 四株を一株に併合して株式数を減らし、従前に比べ、同じ利益でも一株当たりの利益が四倍となる措置を講じ、これにより第六期において一株当たりの利益は二一円七七銭となった。 このようにして、B社では、形式的には店頭登録の基準を満たすこととなり、第八期中に実現させるべく平成元年一一月ころからは店頭登録への取り組み作業は本格化することとなったが、現実に店頭登録を果たすためには、その後も業績が上昇傾向にあることを示さねばならず、証券会社の担当者から「証券業協会に提出した業績見通しを下回るのはまずい。」などとも言われていたこともあり、店頭登録の前後を通じ、多額の利益を計上し続ける必要があった。 その後、B社は、前記(三の3)のとおり、赤字の関連会社をB社の資本から切り離した上で、第八期中の平成二年六月、M2社ほか三社に店頭登録の幹事証券会社となるよう依頼するとともに、本社の赤字部門である出版部門も株式会社B社プレスを設立するなどしてB社から切り離し、同年八月に日本証券業協会に店頭登録を申請し、同年一一月二六日に店頭登録が認められて、いわゆる公開会社となった。これにより、以後の決算については、証券取引法の規定(同法二四条一項二号、同法施行令三条)に基づき、大蔵省関東財務局長を経由して大蔵大臣に有価証券報告書を提出する必要が生じた。 五 B社における各期の利益計上、株主への利益配当、有価証券報告書の提出B社は、設立から昭和五九年三月末までを第一期とし、以後順次、毎年四月一日から翌年の三月三一日までの一年間を事業年度としていたが、各期に計上した当期純利益(万円未満切捨て)を見ると、第一期(昭和五九年三月期) 一二六五万円第二期(昭和六〇年三月期) 六三八六万円第三期(昭和六一年三月期) 七二〇五万円第四期( 利益(万円未満切捨て)を見ると、第一期(昭和五九年三月期) 一二六五万円第二期(昭和六〇年三月期) 六三八六万円第三期(昭和六一年三月期) 七二〇五万円第四期(昭和六二年三月期) 四七八一万円第五期(昭和六三年三月期) 七一七二万円第六期(平成元年三月期) 七七〇七万円第七期(平成二年三月期) 二億〇五五六万円第八期(平成三年三月期) 二億五〇六一万円第九期(平成四年三月期) 二億八九一一万円である(なお、検察官の平成六年一一月二八日付け冒頭陳述書の別紙4の第七期の①公表の当期純利益「二億〇五六一万四一三七円」とあるのは、「二億〇五五六万一一二八円」の誤記と思われる。甲二〇四号の第七期の項参照)。 また、株主に対する利益配当状況を見ると、正式に実施したのは第三期からであり、一株当たり、第三期が三円五〇銭(ただし、期中新株は除く。以下同)、第四期が二円五〇銭、第五期が三円五〇銭、第六期が一四円、第七期ないし第九期が各二〇円であった。 なお、公訴事実の対象となっている第七期ないし第九期においては、当期未処分利益金につき、第七期が三億一九二八万七〇〇〇円、第八期が四億七四一〇万八〇〇〇円、第九期が六億五五〇三万一〇〇〇円をそれぞれ計上しており、株主に対する利益配当額は、第七期が七一四四万三一五三円、第八期が八二七〇万七六八〇円、第九期が一億〇七五一万九九八〇円となっている。 そして、店頭登録後の第八期及び第九期分については、前記の各未処分利益金があった旨を記載した有価証券報告書をそれぞれ大蔵大臣に提出している。 六 B社の業務実績に対する経理部門や監査法人からの指摘等監査法人M1事務所から、昭和六一年七月ころ、第三期の財務諸表につき、M た旨を記載した有価証券報告書をそれぞれ大蔵大臣に提出している。 六 B社の業務実績に対する経理部門や監査法人からの指摘等監査法人M1事務所から、昭和六一年七月ころ、第三期の財務諸表につき、M3社か数社とのD等の取引に関し、「売上げ計上後長期間商品が出荷されず、代金も売掛金のまま未入金である上、売上げ済みの商品中には在庫不足のものもあるから、売上げと認識するのは早い、この在庫不足を補うために仕入れの仮計上が行われており、健全な会計処理とは認め難いので、次期以降は十分な配慮を要する。」旨などの指摘がなされた。 また、第四期には、G1の発案によるものの、A1の指示で、社外向けと社内向けの二種類の決算書類を作成し、社外向けには、売上げや利益を水増しした事実に基づかない決算書類を作成し、社外取締役が出席する役員会にはこれを提出した。 そして、平成二年三月ころ(第七期末)、経理部で作成した第八期予算案には二億八八〇〇万円の経常損失が見込まれており、平成三年一月ころ(第八期)には、経理部門から平成二年一二月までの経常利益がマイナス一億八六一四万円余と算出されたという内容の損益計算書が役員に回付された。 七 B社に対する破産宣告B社は、店頭登録のわずか二年後である平成四年九月に、二度の手形不渡りを出して事実上倒産し、同年一〇月一五日午後四時に、東京地方裁判所民事第二〇部は、B社に対し、合計約一四六億六〇九七万円の債務を負担し、これが支払不能の財産状態にあると認定して、破産者とする旨決定した。 八 B社における簿外債務による資金導入 1 B社では、昭和六一年ころから、資金繰りのため、銀行以外の金融会社、資産家等から積極的に多額の借入れをするようになったが、店頭登録を目論んでいたこともあり、自社の信用を損なうこのような借入れは可能 B社では、昭和六一年ころから、資金繰りのため、銀行以外の金融会社、資産家等から積極的に多額の借入れをするようになったが、店頭登録を目論んでいたこともあり、自社の信用を損なうこのような借入れは可能な限り隠す必要があった。そのため、借入れについては、社債等で一部公表会計で受け入れた場合もあったが、大半は、F社や株式会社H6社等の支配会社や、A1、A2等の個人名義を使用するなど、簿外で行っていた。 また、B社でない他者の名義で借入れをするに際しては、B社が保証するか、その趣旨でB社が簿外で発行した約束手形を貸付け先又は借入れ名義人に差し入れて、返済には責任を持つ旨などを約した念書を差し入れ、時には借入れ後にB社が実質的な借主であることを確認する旨の念書まで差し入れていた(なお、他者名義による借入金を架空売上げの売買代金としてB社に入金した場合、仮に、B社が保証等をしておらず、B社自身が直接貸付け先に対して返済義務を負わないものであっても、B社にとっては借入れ名義人からの借入れとなるだけであって、B社の簿外債務であることに変わりはない。)。 このようにして簿外で借り入れた資金については、その大半は、後記九の架空取引の売買代金として、その取引先名義から直接又は取引先の口座を経由して、B社に入金され、あるいは、このような簿外債務の返済、利払い、架空取引の名義を借りた者への謝礼等として費消されているのであって、実質的にはB社自身の借入金であった(なお、冒頭陳述書による検察官の主張によれば、これらのB社の簿外債務のうち、架空売上げに関して実際にB社で入金処理されているもののみを借入金として扱うことを前提にしているものと思料され、この借入金は現実のものよりも相当少額となっているものの、検察官によるこの扱いは粉飾性の確実なものに限定したというにす 入金処理されているもののみを借入金として扱うことを前提にしているものと思料され、この借入金は現実のものよりも相当少額となっているものの、検察官によるこの扱いは粉飾性の確実なものに限定したというにすぎず、それ以外の簿外債務の存在を否定する趣旨とは解されない。)。 2 簿外債務の借入れ経緯や借入先等について見ると、B社では、昭和六一年七月ないし九月ころ、B社の企業としての優良性、店頭登録の可能性等を宣伝して、資産家のK5に四億円の社債を引き受けてもらい、また、そのころ、同様にして、同人の知人で資産家のK6からも七〇〇〇万円の社債をK5が代表取締役となっているペーパーカンパニーであるN社株式会社の名義で引き受けてもらうなどした。このようにして、B社では、K1・K6夫妻やその関係者(これらをまとめて「K1グループ」ともいう。)から多額の融資を受けるようになったが、昭和六二年以降になると、資金繰りの必要性も増大したことから、K1夫妻及びその関係者であるK7、M4株式会社等の資産家から、K5の名義を借りたり、A1やA2らの個人名義、F社等のB社が支配する会社名義を使用するなどして、B社が保証したり、借入金額又は元利金相当額の約束手形を簿外で発行し、あるいはA1が自己保有のB社株を担保に差し入れるなどした上で、数千万円から億単位の多額の借入れをするようになった。 また、A1が檀家総代をしていた宗教法人Oからも、その境内地を売却して得た金について貸付けを受けるようになり、昭和六二年五月、約八億円をK5名義で借り入れたり、その後も、B社が保証し、あるいは約束手形を簿外で発行するなどして多額の金銭を借り受けていた。さらには、ノンバンクなど金融会社等からの借入れも行い、M5株式会社、株式会社M6社、M7株式会社等からも、前同様に、B社が保証したり、約束手 手形を簿外で発行するなどして多額の金銭を借り受けていた。さらには、ノンバンクなど金融会社等からの借入れも行い、M5株式会社、株式会社M6社、M7株式会社等からも、前同様に、B社が保証したり、約束手形を簿外で発行したりするほか、B社の資産である絵画等を担保として提供し、あるいはA1が自己保有の株を担保とするなどして、頻繁に多額の金銭を借り入れていた。 このようにして、B社では、簿外で借入れをしては返済することを繰り返していたが、B社の業務成績が伸びないことから、利益を上げて借入金の返済をすることはできず、それどころか、むしろ利益が上がっていると仮装するために一層借入金を増やすことまでしたため、その借入金は雪だるま式に増大した。第八期ころになると、簿外債務の残高は巨額になり、その利払い負担さえも多額に上ったため、資金繰りにおける簿外借入れへの依存体質を一層強めていくという悪循環となっていった。 第八期以降について見ると、B社では、同社又は同社とA1個人が保証人となり、あるいは、B社名義の定期預金、B社発行の約束手形、A1保有のB社株等を担保とするなどして、F社名義で、M7社から平成二年八月に三億四〇〇〇万円、M8組合から九月に二億円、一一月から一二月にかけて一二億五〇〇〇万円、M9株式会社から一一月に三億六〇〇〇万円を借り入れるなどしたが、これらの借入金は、B社のため、後記九の架空取引の売上げ入金の原資としてB社に入金されて、B社の資金繰りに、残額はK1グループ等に対するそれ以前のB社の簿外債務の元利金返済資金、自社株の買い支え資金等に費消されていた。 第九期になると、平成四年一月ころから、P1株式会社からA1個人名義で合計で四億八〇〇〇万円の借入れを行うなどして同様にB社のために使用したが、このような借入金の増大により、平 されていた。 第九期になると、平成四年一月ころから、P1株式会社からA1個人名義で合計で四億八〇〇〇万円の借入れを行うなどして同様にB社のために使用したが、このような借入金の増大により、平成四年四月ころまでには、A1が融資元に担保提供したB社の株は、A1の保有株全体の八割強にも相当する五七万四〇〇〇株に達していた。 九 B社における各期の架空取引等 1 第三期(昭和六〇年四月から昭和六一年三月まで)(一) 第三期においては、B社の取締役・事業本部長のK8やA2らが取引先等に依頼して、売買代金と同額のB社発行の約束手形を差し入れるなどして名義を借り、少なくともP2株式会社とM3株式会社の二社に対し、第三期末の時点で未だ実現していない取引、又は全く架空の取引による売上げ及び利益を計上していることが明らかである。 (二) すなわち、P2株式会社に対し、Dを八〇〇七万円の売上げ(その原価二二七七万二〇〇〇円)で、五七二九万八〇〇〇円の利益を計上しているが、その支払については当期受取の約束手形で処理したものの、第四期で入金となり、第五期でキャンセルにより戻しの扱いとしている(なお、第三期中にB社が額面八〇〇万円の約束手形を簿外で発行し、P2社株式会社の経営者であるK9への報酬八〇〇万円をB社から支出している。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図五七、五八頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号六三、六四を参照)。 この取引につき、K9は、「A2からの売上げに協力してほしいとの依頼で購入したもので、自社が販売する意図で購入したものではなく、商品の納入もなく、取引前から後日買戻しをするとの約束があった。代金交渉もせず、B社側から提示された金額、数量をそのまま受け入れている。A1からも電話で売上げに協力してほしいのでお願いしたい旨頼まれてい の納入もなく、取引前から後日買戻しをするとの約束があった。代金交渉もせず、B社側から提示された金額、数量をそのまま受け入れている。A1からも電話で売上げに協力してほしいのでお願いしたい旨頼まれている。B社からは金利として八〇〇万円受け取った。」旨証言しており、K9はB社と格別利害関係のない第三者であり、むしろ自ら違法な行為に手を貸したとの不利益な内容の証言であること等に加え、B社が取引金額と同額の約束手形を簿外で発行していること、B社から販売促進費という名目で八〇〇万円を実際にK9に支払っていること、現に後にキャンセル処理されていること等の客観的事実に裏付けられているのであって、この証言の信用性に疑いを入れる余地はない。これが架空取引であることは明白である。 なお、第三期以降の名義貸しに関係した人物の証言(2名、人名省略)や供述(35名、人名省略)は、いずれも、前記K9と同様に、B社と格別利害関係のない第三者であり、むしろ自ら違法な行為に手を貸したとの不利益な内容を供述するなどしているという、その情況的な信用性を肯認できるだけでなく、銀行調査の結果やB社及び関係会社の帳簿類等から明らかな出入金の状況や約束手形の発行状況等の客観的に明らかな事実、約定書や念書等の物証に裏付けられており、大筋においてその供述の信用性は十分に認められる。そのため、以下では、右人物の証言や供述の信用性については別記しないこととする。 (三) 次に、M3株式会社に対しては、I6(写植に代わるコンピュータによる版下出力機)及びそのオプションを一億二八一〇万円の売上げ(その原価一億一〇七六万五〇〇〇円)で、一七三三万五〇〇〇円の利益を計上しているが、その支払は売掛金(仕入れは買掛金)で処理した後に、第四期にキャンセル扱いとしている。また、同社に対しては、Dを五六 の原価一億一〇七六万五〇〇〇円)で、一七三三万五〇〇〇円の利益を計上しているが、その支払は売掛金(仕入れは買掛金)で処理した後に、第四期にキャンセル扱いとしている。また、同社に対しては、Dを五六〇四万九〇〇〇円の売上げ(その原価は一五九四万〇四〇〇円)で、四〇一〇万八六〇〇円の利益を計上しているが、その支払は、同様に売掛金で処理した後に、第四期でキャンセル扱いとしている(ただし、第四期に同額の約束手形を簿外で発行。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図五九、六〇頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号六五、六六を参照)。 これらの取引につき、同社の経営者Q1は、「I6については、当初に発注する意向があったことは事実であるが、数字を先に上げさせてほしいとK8に頼まれ、発注したような形になった。その後、その商品に欠陥が見つかったなどの理由からいったんキャンセルした後、さらに購入を検討していたが、最終的には別のものを購入することにして取り止めた。最初のキャンセル後に再び発注した扱いがなされて、さらにキャンセルされているということであるが、それはどちらも聞いた覚えはない、K8が勝手にやったことだと思う。聞いたか聞かないかに関してははっきりしない面もある。Dの購入については、真実の発注ではない。K8から『決算前の売上げの数字が行かないので、まずサインしてほしい。それについては一切迷惑を掛けない。期末が過ぎたら必ずキャンセルしますから。』などと頼まれて、何か書面にサインしたものである。Dは自社の業務と一切関係のない商品で、その内容もカタログを見た程度で数量等は自社側で決めたものではない。その後、すべてキャンセル処理されているようであるが、B社が勝手にやったものと思う。はっきりした記憶はないが、以上の取引の関係で、K8からB社が同額の約束手形を発行し 等は自社側で決めたものではない。その後、すべてキャンセル処理されているようであるが、B社が勝手にやったものと思う。はっきりした記憶はないが、以上の取引の関係で、K8からB社が同額の約束手形を発行して保証するというような話があったが、自分は断った。このようなことに協力したのは、B社の通信販売のカタログ制作の仕事をさせてもらえるのが魅力だったからである。D、I6のいずれも商品の納入は一切ない。」などと証言し、K8も、M3社株式会社では購入意思がなかったことや名義を借りただけであることを認め、大筋においてQ1の証言に沿う証言をしているところである。 このうち、Dの取引が架空であることは疑いを入れる余地はなく、I6についても取引話があったことから、その意味では全くの架空取引とはいえないものの、仕入れすら買掛金で処理されていることからしても、少なくとも第三期末時点で取引が実現しているものとは到底いえないから、第三期の売上げとして計上し得るものでなかったことは明らかである。 (四) 以上の二社関係の利益計上だけでも、第三期における営業利益の約半額に及んでおり、B社においては、この粉飾により、本来支払う必要のない法人税等を支払った上で利益処分を行い、結局、少なくとも翌期に五〇〇〇万円を超える繰越し損失を残すこととなった(もっとも、これらの取引の架空利益自体は、翌期以降にキャンセル処理されている。)。 2 第四期(昭和六一年四月から昭和六二年三月まで)(一) 第四期において、B社では、その資金繰りのため、多額の借入れをしたが、その関係で多額の架空売上げによる利益計上をしている。 そのうち、Oからの約八億円(第二の八の2参照)について見ると、その事実の公表を避けるため、直接の借入れではなく、売買代金名下に資金を受け入れるのであり、K5がN社 による利益計上をしている。 そのうち、Oからの約八億円(第二の八の2参照)について見ると、その事実の公表を避けるため、直接の借入れではなく、売買代金名下に資金を受け入れるのであり、K5がN社及びそれまでに経由させる会社から、取引先としての名義を借りて、そこへの売買代金名目で資金を受け入れるという方法を採った(なお、この方法は、第五期以降にF社やL社を利用して行われたものと全く同じである。)。具体的には、N社に対し全額売上げとするのは不自然であることから、B社からの直接の取引先としては株式会社P3社ほか二社の名義を借りて、これらに対しDを販売したとしてその売上げを売掛金として計上し、それを同社等からN社に手数料一パーセント増し相当分の金額で売却したとして、N社名義を使ってB社が簿外で借り入れた借入金が入金となる段階で、株式会社P3社等の口座を通して売掛金の回収としてB社に入金するというものであった。もっとも、Oから融資を受けられるまでには期間があったことから、八億円のうち約三億円については、昭和六二年二月ころ、K5に依頼して担保を提供してもらうなどして、M4社から三億円を借り入れて、株式会社P4社へDを売買した代金としてB社に入金させた。そして、同年五月ころ、Oから約八億円をK5名義で借り入れることができたことから、そのうち約五億円を、残り二社分のD売買残代金としてB社に入金し、約三億円についてM4社への返済に充てた。 なお、このOからの約八億円の借入れがB社の簿外債務であることは、K5名義であったとはいえ、昭和六二年六月ころ、Oの代理人であったQ2に対し、これを含むOからの借入れにつき、A1が債務者であることを確認する覚書を差し入れていること、後記の債務の承継後、B社が債務者であることを確認する念書を差し入れていることからも明ら であったQ2に対し、これを含むOからの借入れにつき、A1が債務者であることを確認する覚書を差し入れていること、後記の債務の承継後、B社が債務者であることを確認する念書を差し入れていることからも明らかである。 (二) B社では、そのほか、昭和六二年三月ころ、K5の知人であるQ3からも二億円の融資を受けたが、Q3が直接B社の銀行口座に入金してきたため、公表上の負債を増やすことなく売買代金名目で入金するため、K5所有の社債の償還としてN社にいったん返却した上で、改めてN社にD一億八三八六万二〇〇〇円を売却したことにして、その金額分を売買代金名目でB社に入金した。 なお、その後、M5株式会社から借入れをする際、担保とすること自体は承諾を得ていたものの(後記(五)の(2)参照)、A1が勝手にK5所有のビルを譲渡担保として名義変更までしたことから、K5から不興を買い、K5及びQ3との関係は清算を余儀なくされた。そのため、B社では、Oから受けた融資約八億円について、N社が購入した形になっているDを株式会社P5社ほか二社が引き取り、代わりに、P5社ほか二社が、K5名義で同人が負っているOの債務を株式会社P3社等からのN社の名目購入代金相当額分(金額は、OからのK5名義の債務額と一致)で承継したことにし、これに関しては、A1がO側から承諾を得た。また、A1は、P5社ほか二社に対し、迷惑を掛けないなどとする念書を事前に差し入れ、各社の名目購入代金の一パーセントをコミッション名目で支払っていた。 さらに、P5社ほか二社が名目上承継したOに対する債務及び名目上買い受けたDについては、O側の了解の下に、株式会社P6社にすべて承継させて一本化し、最終的にはこのDをF社が購入した扱いで、F社から仕入代金名目でOへ返済していた。そして、P6社等がOに支払 目上買い受けたDについては、O側の了解の下に、株式会社P6社にすべて承継させて一本化し、最終的にはこのDをF社が購入した扱いで、F社から仕入代金名目でOへ返済していた。そして、P6社等がOに支払うべき債務の利息や、倉庫会社に支払うべきDの保管料は、当初B社が負担していたが、形式上はB社の在庫品ではなくなっており、支払名目が立たないことから、その後はF社が負担していた。 (三) 以上のほかにも、第四期から翌期にかけて、B社では、O、K1グループ等から多額の借入れをしているが、これらについても、K1グループの保有するペーパーカンパニーである株式会社P7社をN社と同様の方法で利用し、後記(六)のとおり架空商品であるI4に関して、第四期の売買代金名目でB社へ入金した。この方法による借入れについては、A1が直接交渉した株式会社P8社及びJが交渉した三社に対し、B社がP8社等に販売したとする商品は、その売買代金に一パーセント上乗せした金額でP7社が直ちに引き取ること、一切迷惑を掛けないことなどの念書を差し入れて、P8社等から名義借りの承諾を得た上、売上げ代金名目で、各社の口座を通すか又は各社名義で直接、B社に入金するというものであった。 (四) このように、第四期においては、第三期までに採られた翌期以降に実現する見込みのある売上げを先計上するという方法の売上げ計上とは異なり、銀行以外から巨額の借入れをするについて、それを隠蔽して売上げ名目で受け入れるための架空売上げを計上するという方法を採ったため、粉飾金額は飛躍的に増大することとなった。しかも、その中には、B社の架空商品であるI4の売上げという将来的にも全く実現見込みがないものも含まれていた。そこで、以下の(五)及び(六)で、第四期における架空取引について、具体的に検討を加える。 (五 には、B社の架空商品であるI4の売上げという将来的にも全く実現見込みがないものも含まれていた。そこで、以下の(五)及び(六)で、第四期における架空取引について、具体的に検討を加える。 (五) Dの架空取引(1) 株式会社P9社に対し、五四七九万〇二〇〇円の売上げ(その原価は一七五五万七〇二〇円)で、三七二三万三一八〇円の利益を計上しているが、その支払は売掛金で処理し、第五期に約束手形を受取後にキャンセル扱いとしている(第五期に同額の約束手形を簿外で発行。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図六一頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号六七を参照)。 この取引につき、同社代表取締役のQ4は、「昭和六一年二月か三月ころ、B社のQ5繁の依頼で大量のDを預かり、その後、同人から『B社の決算が近づいているが売上げが不足しているので形だけ買ったことにして約束手形を出してくれ、決算期が過ぎたら必ず約束手形は返す。』と頼まれ、A2からも『会社としてのお願いです。』と言われて、八六〇〇万円くらいの架空取引に協力した。万一のためにB社の同額の約束手形を要求した。さらに、昭和六二年二月ころ、Q5からもう一回同じことをしてほしいと頼まれて、同様に架空取引に協力して約束手形の交換をした。」などと供述しており、これが架空取引であることは明らかである(もっとも、この取引の架空利益自体は、第五期以降にキャンセル扱いで処理されている。)。 (2) 次に、N社を利用した架空取引を見ると、株式会社P3社に対し、一億八三七七万九二〇〇円の売上げ(その原価は六三四〇万四二〇〇円)で、一億二〇三七万五〇〇〇円の利益を計上しているが、その支払は売掛金で処理した後、第五期に現金が入金となっている(入金は、N社の口座から合計一億八五六四万円が送金された当日に、株式会社P3社 円)で、一億二〇三七万五〇〇〇円の利益を計上しているが、その支払は売掛金で処理した後、第五期に現金が入金となっている(入金は、N社の口座から合計一億八五六四万円が送金された当日に、株式会社P3社からB社に送金。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図六二、六五、六六頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号六八、七一、七二を参照)。 この取引について、株式会社P3社の総務部長であるQ6は、「昭和六二年三月ころ、Q7(K5の代理人的立場の人物)が来て、同人から『B社の三月の決算に備えて売上げを計上するために、P3社の名義を貸してくれ。P3社からの売上げ先も用意してありますし、その売上げ先から支払があった時点でB社に支払ってくれれば結構です。資金の心配は一切ありません。手数料も払いますし、そちらに迷惑になるようなことはありませんから。』などと言って名義貸しを頼まれた。リスクはないと判断してこれに応じ、Q7に言われるまま、N社から入金があった後、B社に送金して約一八六万円の利ざやをかせいだ。契約はすべて架空であり、納品もされていないし保管料も支払っていない。」などと供述しており、これが架空取引であることは明らかである。 有限会社R1店に対しては、三億〇二九八万七〇〇〇円の売上げ(その原価は一億〇五三八万円)で、一億九七六〇万七〇〇〇円の利益を計上しているが、その支払は、売掛金で処理した後、第五期に現金が入金となっている(入金は、N社の口座から合計三億〇六〇五万四〇〇〇円が送金された当日に、有限会社R1店からB社に送金。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図六二、六七、六八頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号六八、七三、七四を参照)。 この取引について、有限会社R1店の代表取締役であるQ8は、「昭和六二年四月中旬ころ、Q7から『社長のところの ム図六二、六七、六八頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号六八、七三、七四を参照)。 この取引について、有限会社R1店の代表取締役であるQ8は、「昭和六二年四月中旬ころ、Q7から『社長のところの口座を貸してもらいたい。私の知っている会社が資金を通せる会社を探している。私の方で三億円振り込むから、三〇〇万円差し引いた金額をすぐ私のお願いする口座に送金していただければ結構です。形だけのことで品物の移動なんかありませんから。ご迷惑は掛けませんから。』などと頼まれ、義兄が経営する株式会社P4社(以下「P4社」という。)でも同じことをやったということもあって、これに応じた。N社から入金があった後、B社に送金して利ざやとして約三〇六万円を得た。当社はパチンコ景品買取り業の会社であるから、Dなど全く取り扱う理由はないし、納品もされていなければ保管料を支払ったこともなく、すべて架空のものである。」などと供述しており、これが架空取引であることは明らかである。 P4社に対しては、二億九五六三万二〇〇〇円の売上げ(その原価は一億一一四七万六六〇〇円)で、一億八四一五万五四〇〇円の利益を計上しているが、その支払は現金で入金となっている(入金は、N社の口座から二億九八六二万五六〇〇円が振込送金された当日に、P4社からB社に二億九五六三万二〇〇〇円が振込送金。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図六二、六九、七〇頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号六八、七五、七六を参照)。 この取引について、P4社の代表取締役であるQ9は、「当社はパチンコ景品の納品会社である。経理を見てもらっていた税務事務所の担当者のQ7から、昭和六二年一月ころ、『三億円程度の金を口座に通してくれるトンネル会社を探している。その会社が金を振り込むから別会社の口座に振り込めばよい。資金の 経理を見てもらっていた税務事務所の担当者のQ7から、昭和六二年一月ころ、『三億円程度の金を口座に通してくれるトンネル会社を探している。その会社が金を振り込むから別会社の口座に振り込めばよい。資金の手当はできているので迷惑は掛けない。差額が利益で三〇〇万くらいにはなる。絶対に大丈夫。』などと言われて、Q7の依頼を承諾した。自分は、経理担当の者に任せており、契約書等を見たこともない。B社という名前も聞いたことはないし、Dなどという商品も全く知らない。N社に販売したとの帳簿処理もあるということであるが、経理担当者がやったことで分からない。N社も全く知らない会社である。」などと供述しており、これも架空取引であることは明らかである。 N社自体に対しては、一億八三八六万二〇〇〇円の売上げ(その原価は六二一八万六七〇〇円)で、一億二一六七万五三〇〇円の利益を計上しているが、その支払は現金で入金となっている(入金は、B社口座からN社へいったん送金した二億円のうちからN社がB社口座に送金しているが、B社口座からの送金原資はQ3からの二億円の借入れ分である。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図六二ないし六四頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号六八ないし七〇を参照)。 なお、この取引及びP4社等からのDの買入れについて、K5は、「A1に頼まれ、自分のビルを担保に金を借りて四億円をB社に融資していたが、その後の昭和六二年一月ころ、Q7と一緒にB社の社長室に行き、A1から『売上げが伸びなくて厳しい。最短距離で株公開に行きたいがこのままだと赤になる。公開にどうしても売上げの数字が必要なのでN社の名前を貸してくれ。N社がB社の商品購入名目で売上げを建ててくれ。公開できないとこれまでの協力が何にもならない。商品は必ずB社が引き取るので心配ない。一〇億円程度ほし 売上げの数字が必要なのでN社の名前を貸してくれ。N社がB社の商品購入名目で売上げを建ててくれ。公開できないとこれまでの協力が何にもならない。商品は必ずB社が引き取るので心配ない。一〇億円程度ほしい。』などと言われ、B社は順調な会社と思っていたのでびっくりした。さらに、A1は『Dはやり方次第で絶対に売れる。決算を乗り切らないと公開できない。公開できれば株価は上がるし、資金も入るので、N社の名前を売上げ先として貸してくれ。』と言い、悪いこととは分かったが、Q7に相談すると、四億円つぎ込んでいるので言うとおりにするしかないかも知れないなどと言われた。そこで、Q7にA1と相談してやってくれとお願いし、その後A1に承諾する旨伝えた。なお、N社は自分のビルの賃貸料を管理するだけで従業員もいない。その後の詰めはQ7とA1の方でやっており、P4社という聞いたこともない会社にお金を振り込んだが、Q7に言われるままやっただけである。同じころ、B社の社長室でA1とK6に会ったが、このとき、A1から『一時的に資金繰りが苦しいのでK1と自分に融通してほしい。』旨を頼まれた。K6が心当たりがあると言っていたが、その後、K6から、M4社が融資のためにK5のビルを担保に取りたいなどと言っていると、電話で聞かされた。自分は嫌だったが、昭和六二年二月ころになり、A1から呼ばれて社長室に行き、K6とJに会ったところ、A1からも担保提供を頼まれた上、『B社名義で借入れできないから名義人になってほしい、三億円でお願いしたい、株公開のためである。』と言われたため、やむなく承諾した。その後、M4社に融資を依頼し、その後A1から担保不足なので株式会社R2社の約束手形もほしいと言われ、その代表取締役のG2に頼んで三億円の約束手形も借りてやった。結局、昭和六二年二月二四日に融資が実行され M4社に融資を依頼し、その後A1から担保不足なので株式会社R2社の約束手形もほしいと言われ、その代表取締役のG2に頼んで三億円の約束手形も借りてやった。結局、昭和六二年二月二四日に融資が実行された。Q7から言われて、三億円はN社の口座に入金後、P4社に送金した。また、A1が、Q3がB社に融資したと聞いていた二億円について、B社に直接送金してきて困っているなどと言ったので、これについてもQ7に任せたところ、同人から『Q3の二億円がB社から振り込まれるので、それをN社から振り込むように』と言われて、そのとおり実行した。これについて、架空の代理店契約書やDの注文書等の書面も、言われるままに作成した。M4社から自分の名義で借りた三億円については心配だったが、その後金策がついたらしく、Oに赴いて、M4社に返済の手続きをした。その後、A1がM5社から借入れをする際に譲渡担保に提供した物の名義を勝手に換えられたことからA1と手を切ることにし、これまで名義貸しをしたり融資した借金の返済を要求し、手続きについてはQ7に任せたところ、平成元年四月までには返済が終わったのでB社との関係は完全に切れた。」旨供述している。 さらに、Q7も、これを裏付ける旨の供述をした上で、「A1から『N社だけで一〇億円もの売上げでは怪しまれるだろうから、間に入る会社を探してくれ。Dをしばらく預かってくれれば必ずB社の方で引き取る。資金はOが土地を売ってB社に融資してくれるという話がある。』などと聞かされ、P4社を間に入れることになった。また、Q3分の二億円について、G1から『Q3からの二億円でN社所有の社債を償還するという形をとるから、この二億円でDの架空売上げを建ててほしい。』などと言われて、そのようにしたが、これはすべて形だけのものにすぎない。N社はB社の社債を四億円 からの二億円でN社所有の社債を償還するという形をとるから、この二億円でDの架空売上げを建ててほしい。』などと言われて、そのようにしたが、これはすべて形だけのものにすぎない。N社はB社の社債を四億円引き受けるについて銀行から借入れを行っていたが、銀行の利息と社債の利息の差額分を上回る裏利息をB社から支払ってもらっていたし、Q3にもN社を通じてB社の資金で利息を支払っていたし、Dの保管料も一回分を除いてB社側で支払っていた。その後、株式会社P3社、有限会社R1店についても間に入ってもらう承諾を得て、要求された念書もG1かA1に頼んで差し入れさせた上、この二社から架空の契約書面に印をもらった。その後、G1からの連絡でOからの融資が入金になるとの連絡が入ったので、N社が借り入れたという形式を取った上で、その金をN社の口座にいったん全部入れた上で、二社の口座に送金し、二社からB社に送金してもらった。」などと供述している。 したがって、N社に対する前記一億八三八六万二〇〇〇円の売上げ分の取引が架空であることはもとより、P4社等三社からのN社のD買取りも架空売買であることは明らかである。 (3) そこで、右(2)の取引分の売買代金として入金したものの原資を見ると、株式会社P9社分については入金はなく、その他の取引分の送金原資はすべてN社から出ているが、N社の原資は、前記のとおり、M4社、O及びQ3からの借入金であって、いずれもB社の簿外借入金である。現実に、Q3への返済は、昭和六三年一一月に、B社口座からN社へ二億〇八〇〇万円余りを送金し、これをN社がそのままQ3へ返済している。また、N社の社債を償還名目で減少させた二億円分については、平成元年に、O取組の一億三〇〇〇万円の預手と、F社出金の一億五〇〇万円の現金で行っており、これらはいずれもB社 そのままQ3へ返済している。また、N社の社債を償還名目で減少させた二億円分については、平成元年に、O取組の一億三〇〇〇万円の預手と、F社出金の一億五〇〇万円の現金で行っており、これらはいずれもB社が約束手形を簿外で発行し、あるいは保証するなどして借り入れたものを原資とするものである。そして、M4社に対する返済はOからの約八億円の借入金により行っており、この借入金については、前記(一)のA1の覚書、その後の念書に加え、最終的にはP6社へ債務承継され、返済をF社が仕入れ名目で出金して行っていることから、これもB社の簿外債務であることは明らかである。 (六) I4の架空取引(1) 株式会社R3社に対し、一億〇六五九万円の売上げ(その原価は一一二万〇八六〇円)で、一億〇五四六万九一四〇円の利益を計上しているが、その支払は、売掛金で処理した後、第五期に現金が入金となっている(入金は、株式会社R4社出金の一億〇七六六万円を株式会社R3社名義の口座に入金後、B社へ送金となっている。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図七九ないし八一頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号八四ないし八六を参照)。 この取引及び第五期の同様の取引につき、株式会社R3社の代表取締役であるS1は、「昭和六二年四月中旬ころ、知人のS2から『B社の社長室長であるJが上場のために走り回っている。株公開のための三月の決算売上げが足りないのでビジネススクールの受講チケットを買ったことにしてもらって売上げを建てたいと言っている。資金はB社が用意し、口座通過だけでよい。必要な書類もJが用意し、迷惑は掛けない。一億円程度を頼みたい。 一パーセントの謝礼をするが、その半額を自分にもらいたい。』などと言われた。粉飾の手助けはまずいと思ったが、B社に貸しを作って不動産取引ができるかもしれないし 、迷惑は掛けない。一億円程度を頼みたい。 一パーセントの謝礼をするが、その半額を自分にもらいたい。』などと言われた。粉飾の手助けはまずいと思ったが、B社に貸しを作って不動産取引ができるかもしれないし、一〇〇万円は悪くないので承諾した。その後、S2から口座番号を聞かされ、注文書等を持ってきたので判だけ押した。Jがお金を振り込むから、それをB社に振り込んでほしいとの話もあったが、実際には昭和六二年五月にS2が謝礼分の百何万円かの現金を持ってきたので、五〇万円を同人に渡して残りを自分がもらった。この取引は帳簿には記帳していない。この取引で私の会社名義の口座を使っているということだが、それは別途勝手に作ったものだと思われ、自分は知らない。転売先も商品についても全く知らない。昭和六二年一〇月から一一月ころ、S2とJが私の会社にやってきて、二人から『この前と同様協力してもらいたい。八〇〇〇万円程度お願いしたい。謝礼は一パーセントで迷惑を掛けない。』などと言われて、これについても承諾した。この荷物を運搬するという会社は知らないし商品も見たことはない。実際の振込み額は三〇〇〇万円であるなどと聞いたが、それも知らなかった。報酬は預手で約八〇万円もらった。これについては、雑収入に計上し、S2に四〇万円やって雑費に計上した。仕入れ販売もJの意向に従って計上すべきだったが、嫌だったので利益のみ計上したものである。昭和六三年四月にも、Jがきて、『決算対策に協力してくれ。三億円程度、手数料は前回と同じである。』などと言われた。I4とDをB社の代理店となって売るというような内容だったが、それ以上はよくわからないまま書面に判だけ押した。謝礼を現金で一二〇万円もらった。帳簿処理は前と同じである。書面上は二億七〇〇〇万円くらいの取引で、謝礼が少なかったからJに問いただしたと 容だったが、それ以上はよくわからないまま書面に判だけ押した。謝礼を現金で一二〇万円もらった。帳簿処理は前と同じである。書面上は二億七〇〇〇万円くらいの取引で、謝礼が少なかったからJに問いただしたところ、後日残金を渡すと言われた。書面は日付けを遡らせたものに間違いない。この件について、平成元年一月から四月にかけて、私の会社発行の領収書とか振込金受取書等があるけれども、売買が全くの架空であったことは間違いない。」などと供述しており、S2もこれに沿う供述をしているのであって、第四期及び第五期の右供述内容に該当する取引が架空取引であることは明らかである。 (2) 次に、R5株式会社に対し、四八四五万円の売上げ(その原価は五一万三四五〇円)で、四七九三万六五五〇円の利益を計上しているが。その支払は、売掛金で処理した後、第五期に現金及び小切手で入金となっている(うち三〇〇〇万円は、Q2振出の額面一七〇〇万円の小切手の換金と同人出金の現金一三〇〇万円をR5社の口座に入金後、B社に小切手で入金、残額はF社出金の現金を直接B社に振込入金している。そして、R5社の代表取締役であるS3への報酬分の四八万円余はB社振出の小切手が使用されているが、B社では、現実には費用であるのに、これをA1に対する仮払金として計上している。 なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図七九、八二、八三頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号八四、八七、八八を参照)。 この取引につき、S3は、「昭和六二年四月に、友人のS4が来て、同人から『友達のJがB社の社長室長をやっているが、近いうちに店頭公開するが三月期決算の売上げが足りなくて困っている。架空でB社の商品を買ったことにしてくれる会社を探している。資金は全部向こうで用意し、R5社の口座を通せば一パーセントの手数料を出すし、一切迷惑は掛け するが三月期決算の売上げが足りなくて困っている。架空でB社の商品を買ったことにしてくれる会社を探している。資金は全部向こうで用意し、R5社の口座を通せば一パーセントの手数料を出すし、一切迷惑は掛けないと言っている。よい話ではないか。』と言われた。すでに期末が来ていることから粉飾であるのは分かったし、年商三〇〇〇万円程度の会社だから資金手当が不自然になるとも思ったし、万一、B社で資金手当がつかないと困ると思った。金額は一億円と言われ、一桁違うと思ったので、絶対に迷惑を掛けないという念書を要求した上で、五〇〇〇万円限度に引き受けると答えた。S4が二、三日後に契約書面等を持ってきて、B社はその条件でよいというので、言われるままに注文書を作って渡した。商品のI4のことは全く知らない。お金はB社が全部用意したもので、私の会社の口座を通過させたにすぎない。謝礼として額面四八万円余の小切手をもらったので、雑収入として計上した。昭和六二年五月下旬ころに、実際に金の通過手続をとったが、このときにJから一三〇〇万円の現金と額面一七〇〇万円の小切手を見せられ、私の会社の口座に入金し、代わりに三〇〇〇万円の自社小切手を渡した。その後、この小切手は決済された。残り二〇〇〇万円分についても決済が必要なはずであるが、その後Jからは何も言われなかったのでそのままになった。」などと供述し、S4もこれに沿う供述をしており、これが架空取引であることは明らかである。 (3) また、P8社に対し、二億〇〇六四万円の売上げ(その原価は一八〇万〇八六〇円)で、一億九八八三万九一四〇円の利益を計上しているが、その支払は、売掛金で処理した後、第五期に現金が入金となっている(入金は、P8社の口座へ売買代金の一パーセント増しの金を入金し、その当日代金額相当分がB社へ振込送金となっている 利益を計上しているが、その支払は、売掛金で処理した後、第五期に現金が入金となっている(入金は、P8社の口座へ売買代金の一パーセント増しの金を入金し、その当日代金額相当分がB社へ振込送金となっている。また、そのころのP7社の口座からの出金は一九〇〇万円にとどまっている。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図七九、八四、八五頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号八四、八九、九〇を参照)。 この取引につき、P8社の代表取締役であるS5は、「私のところは人材派遣の会社であって、I4は全くの架空取引である。昭和六二年五月に最初、A1から『売り先が決まっているから協力してくれ。』などと言われて、この架空取引の話が持ち込まれた。手続の詰めや報酬については、その後B社の人と話したように思う。最初からP7社への転売を含めて話は全部決まっていた。代金決済は、私の会社の近くの銀行にB社社員と思われる人がお金を持ってきて、それをP8社の口座を通してB社に入金する方法で行った。契約関係の書面については、ただ判を押しただけである。商品については、ビジネスマン用の英会話の受講券かクーポン券という以上に詳しい話を聞いた記憶はないし、実際に納入もなかった。転売差益分については支払手数料で処理した。」などと証言しており、これが架空取引であることは明らかである。 (4) 次に、株式会社R5社に対しては、一億四五三五万円の売上げ(その原価は一六六万三五二〇円)で、一億四三六八万六四八〇円の利益を計上しているが、その支払は、売掛金で処理した後、第五期に最終的に現金が入金となっている(入金は、O取組の預手を直接B社で取り立てて行っており、株式会社R5社やP7社の出金はなく、株式会社R5社の代表取締役であるS6への報酬分一四五万三五〇〇円のみはB社振出の小切手が使用されているが 入金は、O取組の預手を直接B社で取り立てて行っており、株式会社R5社やP7社の出金はなく、株式会社R5社の代表取締役であるS6への報酬分一四五万三五〇〇円のみはB社振出の小切手が使用されているが、B社では、現実には費用であるのに、これをA1に対する仮払金として計上している。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図七九、八六、八七頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号八四、九一、九二を参照、ただし、これら八六頁=通し番号九一の各一四五万三〇〇〇円は一四五万三五〇〇円の誤記と思われる。)。 この取引につき、S6は、「昭和六二年四月ころ、S4から『B社の社長室長のJが、B社が店頭登録のため三月決算の売上げが必要で名義を貸してくれる会社を探している。手数料を出すし、迷惑を掛けないというので、会ってくれ。』と言われて、Jに会うと、同人は『B社はこの秋に店頭公開することにしている。三月決算が大切で売上げの数字が足りない。売上げを建てるのに協力してほしい。商品を仕入れたことにしてもらって、そのまま私どもで用意しているP7社に引き取らせていただく。必要な資金はこちらで用意して迷惑を掛けない。 一億円くらいお願いしたい。一パーセントを手数料として差し上げる。』と言った。商品はビジネススクールの受講チケットであると聞いたが、それ以上の説明はなかった。まずいと思ったが、一〇〇万円が魅力で承諾した。ただリスクが怖いので、保証を要求した上、一億円は不自然なので口座は通さないように頼んだ。四月下旬に、Jがひな形を持ってきたのでそのとおり書面を作成した。B社の社長印のある念書も入れさせた。商品送付等も全くなく、完全な架空取引である。書面の日付けは三月決算に合うよう遡らせて作成している。四月末か五月初旬ころ、Jから私の会社の口座に振り込むからB社に至急振り込むように電話で 入れさせた。商品送付等も全くなく、完全な架空取引である。書面の日付けは三月決算に合うよう遡らせて作成している。四月末か五月初旬ころ、Jから私の会社の口座に振り込むからB社に至急振り込むように電話で言われたが、それは困ると断った。そうしたところ、五月中旬に、Jがやってきて、同人から仕入れ代金分の約束手形に裏書きするように求められ、念書があったことから言われたとおりにした。謝礼の一四五万三五〇〇円はいつ受け取ったか覚えていないが、小切手で入金して雑収入に計上した。平成二年にもS4を通して似たような話が持ち込まれたが、かかわりになるのが嫌で断った。」などと供述しており、これも架空取引であるのは明らかである。 (5) そこで、右(1)ないし(4)の取引分の売買代金として入金するなどした原資を見ると、F社、O又は株式会社R4社、P7社又はK1グループからの出金と認められ、F社出金分はM5社株式会社やK1グループのS7からの入金後に行っており、いずれも、前記第二の八のとおり、B社が保証したり、その趣旨で簿外で約束手形を発行したりする方法で行った借入れによるものである。 なお、その後、I4については、そのすべてをF社が仕入れたとの名目でF社がP7社あてに出金しており(しかし、P7社では売上げ計上されていない。)、実質的な返済はF社が行っているものと推認され、いずれにしても、B社の簿外借入金が原資となっているものと認められる。 (6) I4の商品としての実在性なお、I4に関し、G1は、「B社が経営していたI3の名前を借りて、構想が存在しただけの架空の商品にすぎず、昭和六二年二月ないし三月ころ、A1に対し、I4の売上げ計上について、『これは何なんですか。実在しない商品の売上げ計上をするのはおかしいんじゃないですか。』などとたしなめたこ の架空の商品にすぎず、昭和六二年二月ないし三月ころ、A1に対し、I4の売上げ計上について、『これは何なんですか。実在しない商品の売上げ計上をするのはおかしいんじゃないですか。』などとたしなめたことがあったが、A1は、『とにかく利益が足りないので、これで売上げを上げるしかない。受講したというリポートを作ればいいじゃないか。そんなもの何とでもなるだろう。』などと言って、聞き入れなかった。そして、架空売上げが外部に発覚するのを防ぐため、I3の例にならい、あたかも受講生がいるかのように入学申込書、受講状況報告書等をねつ造させるなどしていた。しかし、その後、監査法人からI4という商品に関して不審を抱かれたことから、この商品を用いた架空売上げは第四期と第五期に計上したにとどまった。」旨を証言している。 A1は、公判において、これを実在の商品であるなどと供述しているが、I4で計上した売上げは第五期分も含めすべてが架空であること、多額の売上げ及び利益を上げながら、第四期及び第五期しか計上されていないこと、この商品を取り扱った資料、すなわち受講実績や商品の納品を示す書類等が証拠として見当たらないこと等の事情に照らし、この点に関するA1供述は信用できない。 I4は、G1の証言どおり、実在しない商品であって、これに関して第四期に計上した売上げや利益は架空であることはもちろん、負債として計上したこの商品に関する未払費用、すなわち翌期以降における人件費及び教室使用料(いわゆるスクーリング費)も架空であって本来否認されるべきものである。したがって、第五期以降の未払費用の処理も否認されるべきものである。 (七) B社においては、第四期において、少なくとも前記(一)ないし(六)の売上げ及び利益を計上して、当期未処分利益金として一億〇九九六万九〇〇〇円(うち 払費用の処理も否認されるべきものである。 (七) B社においては、第四期において、少なくとも前記(一)ないし(六)の売上げ及び利益を計上して、当期未処分利益金として一億〇九九六万九〇〇〇円(うち当期純利益は四七八一万九〇〇〇円)を計上したが、架空取引による利益がなければ九億五六〇〇万円もの大幅な赤字であって、実質的には当期も多額の未処理損失を残すこととなった。 3 第五期(昭和六二年四月から昭和六三年三月まで)(一) 第五期において、資金繰りのために多額の借入れ並びにその関係での架空売上げ及び利益計上をしているところ、後記各社とは、A1又はA2が名義貸し人と直接接触し(後記(四))、あるいはJが接触して(後記(五))、それぞれ名義を借りることの承諾を得た上、B社では、各社に対する後記売上げを計上しているものの、いずれも書面上取引の体裁を整えたにすぎず、これらの売上げは架空のものであった。具体的には、公表上、いったん名義貸し人がB社から商品を購入した上で、それをF社又はL社(以下、この3項では「F社等」という。)に転売したことにして売上げを計上する方法を採るようになった。 (二) 架空売上げの方法を更に詳細に見ることとするが、名義貸し人以外の者が融資元である場合と、融資元を取引先とする場合とで差異があるので、二つに分けて検討する。 (1) 名義貸し人以外の者が融資元である場合B社が、あらかじめ名義貸し人の了解を得た上で対象商品の売買金額を設定して、いったんB社から名義貸し人への売上げを計上するが、その後、同量の商品を、B社からの購入金額の約一パーセント増しの金額で、F社等が名義貸し人から買い取る。そして、B社への売買代金の支払においては、F社等が名義人となって金主から融資を受け、これをF社等に入金した上、これを出金して名義貸 金額の約一パーセント増しの金額で、F社等が名義貸し人から買い取る。そして、B社への売買代金の支払においては、F社等が名義人となって金主から融資を受け、これをF社等に入金した上、これを出金して名義貸し人の名義で直接B社に支払うか、又はF社等から名義貸し人に転売差益相当分を加算して送金し、その直後に名義貸し人が当初の売買金額分をB社に送金する。名義貸し人においては、F社等からの送金額とB社への送金額の差額を利得するか、F社等から別途転売差益相当額を受け取って利得することになっていた。 (2) 融資元を取引先とする場合融資を受ける際、B社が、融資元に対する融資を受ける金額相当分の商品の売上げを計上し、その売買代金として融資金をB社に入金させ、F社等に転売したことにして、元利金相当額をそれに見合う商品の転売代金としてF社等から融資元に返済する、というものであった。 (三) B社では、前記(第二の四)のとおり第八期中に株式の店頭登録を実現したが、その前後とも、自社の信用を維持するために、銀行以外の個人や街金融等から融資を受けていることの公表を避ける必要があったことから、前記(二)のような方法による融資受入れは、その必要を満たすだけでなく、公表上の売上げ及び利益計上の増大をもたらすことになり、いわば一挙両得であった。しかし、このような取引は現実の利益を何らもたらすものではなく、簿外債務を発生させる上、金利や手数料の支払も必要となり、さらには、簿外であるため、それらの費用や返済を、公表会計から支出することもできなくなった。そのため、前記(二)のような方法で資金受入れや元利金の返済をなす窓口として、第四期に設立以降ほとんど休眠状態で使い道がなくなっていたF社が利用されることになったのであり、これは第四期にN社やP7社を利用した方法と同じもので な方法で資金受入れや元利金の返済をなす窓口として、第四期に設立以降ほとんど休眠状態で使い道がなくなっていたF社が利用されることになったのであり、これは第四期にN社やP7社を利用した方法と同じものであった。 このように、第四期以降、架空取引による売上げを売掛金として放置することなく、簿外の借入金を使用して実際にB社に入金する方法を採っていたため、監査法人においても、B社の架空取引をなかなか見抜くことが困難となったものである。 そこで、(四)以下で、第五期における架空取引について、A1又はA2が直接名義貸し人と接触したものと、Jが接触したものとに分けて、具体的に検討を加えることとする。 (四) A1又はA2が直接名義貸し人と接触した取引(1) R6株式会社に対して、絵画一点(題名「岩より湧き出ずる泉のほとり」)を一億六〇〇〇万円で売上げ(その原価は四一〇〇万円)で、一億一九〇〇万円の利益を計上しているが、その支払は、四〇〇〇万円が預手で入金、残金は受取約束手形で処理した後、第六期にこれを現金化している(なお、B社では、売上げ額に利息分を加えた約束手形を簿外で発行し、利息四二一万一五〇七円を仮払いした後にF社に対する債権と相殺している。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図二頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号八を参照)。 この取引につき、R6社の代表取締役であるS7は、「昭和六三年二月ころ、R2社開発株式会社の専務取締役であるS8から、B社から絵を買って買い戻したという形にして実質融資をしてほしいとの話があった。利息は損をさせないということだったので承諾し、一億六〇〇〇万円を融資することにした。そこで、融資と引き替えに、B社が支払期日を昭和六三年一一月三〇日とする額面一億六四二一万一五〇七円の約束手形を差し入れ、同期日 ないということだったので承諾し、一億六〇〇〇万円を融資することにした。そこで、融資と引き替えに、B社が支払期日を昭和六三年一一月三〇日とする額面一億六四二一万一五〇七円の約束手形を差し入れ、同期日に返済するということになった。同年二月二九日に、A2がこの約束手形と名目商品の絵画を持ってきたので、引き替えに、額面四〇〇〇万円の預金小切手一通と、R6社発行の額面四〇〇〇万円の約束手形三通をA2に渡した。絵については荷ほどきもしなかった。その後、B社は期限がきても返済せず、A2から待ってほしいと頼まれたので待っていたところ、A2からB社でなくF社に絵を戻すように言われ、F社に絵を売った扱いをすることになった。 そして、平成元年二月に日付けを遡らせて覚書を作成するなどした末、F社等の名義で全額返済を受けたので、B社発行名義の約束手形は返還した。私の会社の帳簿上は、現実の売買ではないから、売買代金名目の金は有価証券勘定で処理し、利息分の四二一万一五〇七円のみ利息勘定で処理した。」などと供述し、S8もこれを裏付ける供述をしているのであって、この取引が架空取引であり、現実にはR6社からB社への融資であったことは明らかである。 (2) 株式会社R7社(以下、その関係会社であるH9社、R8株式会社を含めて、「R7社」ともいう。)に対しては、I4を二七一四万五〇〇〇円の売上げ(その原価は一二万八六一〇円)で、二七〇一万六三九〇円の利益を計上し、その支払は売掛金で処理した後、第六期に現金が入金(なお、F社の口座からH9社名義で送金されている。)されており、また、絵画(題名「黒い帽子の少女二人」、「池のほとりの人と木」、「橋」の三点)では、合計一億三一五〇万円の売上げ(その原価は合計五〇二〇万円)で、八一三〇万円の利益を計上し、その支払は、いずれも、受取の約束 (題名「黒い帽子の少女二人」、「池のほとりの人と木」、「橋」の三点)では、合計一億三一五〇万円の売上げ(その原価は合計五〇二〇万円)で、八一三〇万円の利益を計上し、その支払は、いずれも、受取の約束手形で処理した後、第六期に現金が入金となっている(入金は、B社が売買価格に見合う金額の約束手形を簿外で発行し、F社の口座からR7社等の名義で送金となっている。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図九二、九三、五ないし一〇頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号九七、九八、一一ないし一六を参照)。 R7社に勤務しH9社の代表取締役であるS9は、R7社名義での絵画取引につき、「昭和六三年二月ころ、A1から絵画を買うように頼まれていったん断ったところ、その後再び、同人から『B社保有の絵画で売却先が決まっているものが相手の都合で六月に契約になるので、いったんR7社で買ったことにしてくれ。R7社で買った形にしてくれれば、価額の一パーセントを支払う。六月にはF社が買い取れるがそれまでR7社で約束手形を出してくれ。期日まで決済には回さないし期日前にF社から現金をR7社に振り込む。六月二五日に額面に一パーセントを上乗せした金をF社から送金する。』などと頼まれ、R7社の代表取締役であるT1の承諾を得て、B社から同額の支払期日が前の約束手形と、期日まで決済しない旨の念書を入れるように要求した。A1との間では、絵画の価値や内容等については一切話題に出ず、A2が、B社とR7社間の取引分及びR7社とF社間の取引分の両方の取引書面を作成していた。その後、A2に、B社発行名義の額面一九〇〇万円の約束手形と前記内容の念書と引き替えに、額面一九〇〇万円のR7社発行名義の約束手形を渡した。」などと供述し、また、R8社名義での絵画取引につき、「昭和六三年三月中に、A1から、絵画を追加 〇〇万円の約束手形と前記内容の念書と引き替えに、額面一九〇〇万円のR7社発行名義の約束手形を渡した。」などと供述し、また、R8社名義での絵画取引につき、「昭和六三年三月中に、A1から、絵画を追加購入したことにしてほしい旨頼まれた。名前を貸すだけで利益が残る話なので、当時設立したばかりで資金のなかったH9社の名前を使わせてほしいと申し入れたもの、当座預金がなかったので、もう一社を間に入れ、二社に各一パーセントの謝礼がほしい旨頼んだところ、A1も了承してくれた。そこで、R8社の代表取締役であるT2にこの話を持ち込み、了承を得た。A2が前と同様に取引書面を作成してきたので、自分でT2から印をもらうなどした上、同年四月ころ、B社発行名義の額面合計一億一二五〇万円の約束手形と引き替えに、R8社発行名義の同額の約束手形を渡した。」などと供述している。次に、H9社名義でのI4の取引についても、「昭和六三年四月中に、A1から『名前を貸してもらいますがいいですね。』という感じで言われて、結局、三つの架空取引の勧誘を受けた。その二つは架空の業務委託に関するコミッションの話であり、一つがI4についての取引だった。これをB社、H9社、F社へと順次販売し、F社へは一パーセント上乗せして販売するというものである。I4の内容については、何か英語教育の聴講券のようなものだと聞いたが、詳しくは知らない。そして、A1からは『B社では三月の売掛金として計上しておくので、H9社の方でも買掛金として建てておいてくれ。』などと頼まれた。」などと供述している。 そして、S9は、以上の取引の決済につき、「昭和六三年六月に、R7社の絵画取引につき、A1かA2が、F社の資金繰りを理由に決済の延期、約束手形の差し替え要請をしてきた。了承はしたものの、余りに虫のよい話なのでさらに一パーセ 引の決済につき、「昭和六三年六月に、R7社の絵画取引につき、A1かA2が、F社の資金繰りを理由に決済の延期、約束手形の差し替え要請をしてきた。了承はしたものの、余りに虫のよい話なのでさらに一パーセントの謝礼の上乗せ等を要求し、A2から現金で受け取った。当初は一応R7社の口座に金が入るものと思っていたが、その後七月になり、A2からの連絡では、直接F社からB社に金を移動させたとのことだったので、B社を訪れて、渡してあった約束手形を回収し、残り一パーセントの謝礼を現金で受け取った。これらは全くの架空取引である。」などと供述している。 さらに、S9は、第六期に行った同様の取引につき、「平成元年三月ころ、A1から『前年同様、絵画を買ったことにしてほしい。』と持ち掛けられ、B社からR7社が絵画を購入してL社に売ったとの扱いで、謝礼のみを受け取った。実際には売買意思がないから、絵画の内容も知らず、値段もB社側が決めている。B社とR7社間、R7社とL社間の取引書面は、いずれもA2が作成した。R7社発行名義の七〇〇〇万円の約束手形を渡し、引き替えに同額のB社発行名義の約束手形を受け取っている。平成元年六月末になり、L社から七一〇〇万円が振り込まれたので、七〇〇〇万円をB社に振り込み送金して決済を終えている。」などと供述している。 なお、T2もR8株式会社が名義人となっている取引につき、S9の供述等を裏付ける供述をしており、第五期及び第六期におけるR7社関係の取引がすべて架空取引であることは明らかである。 (五) Jが名義貸し人と接触した取引(1) 株式会社R3社に対し、I4を七九九四万二五〇〇円の売上げ(その原価は六二万八七三五円)で、七九三一万三七六五円の利益を計上しているが、その支払は現金が入金となっている(入金は、全額F社口座から株式 株式会社R3社に対し、I4を七九九四万二五〇〇円の売上げ(その原価は六二万八七三五円)で、七九三一万三七六五円の利益を計上しているが、その支払は現金が入金となっている(入金は、全額F社口座から株式会社R3社名義で送金。なお、B社の売上げ計上は昭和六三年一一月三〇日付けであるが、F社への転売はそれより先日付けとなっている。)。また、Dを一億四七三二万一〇〇〇円の売上げ(その原価は五八六三万五〇〇〇円)で、八八六八万六〇〇〇円の利益を、別口でI4を一億二〇四七万五〇〇〇円の売上げ(その原価は八五万六九七〇円)で、一億一九六一万八〇三〇円の利益をそれぞれ計上しているが、それらの支払は一括して売掛金で処理した後、第六期及び第七期に現金が入金となっている(入金のうち、一億二七〇〇万円分については株式会社R3社名義で現金が送金され、残額は現金入金又は振込み入金となっているところ、いずれについても入金と同一日に振込み等と同額の出金がF社口座にあり、F社からの送金であると認められる。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図八八ないし九一頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号九三ないし九六を参照)。 これらの取引が架空取引であることについては、前記S1の供述等により明白である。 (2) 株式会社R9社に対し、絵画一点(題名「ロシュロー街」)を九二〇〇万円の売上げ(その原価は三八〇〇万円)で、五四〇〇万円の利益を計上しているが、その支払は、売掛金で処理した後、第六期で現金が入金となっている(入金は、F社の口座からR9社名義で送金。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図三、四頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号九、一〇を参照)。 この取引並びに第六期及び第七期におけるR9社関係の同様の取引につき、同社の取締役であるT3は、「昭和六三年三月ころ、友人のJから 図三、四頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号九、一〇を参照)。 この取引並びに第六期及び第七期におけるR9社関係の同様の取引につき、同社の取締役であるT3は、「昭和六三年三月ころ、友人のJから『B社の決算のため関連会社のF社に絵画を売るが、その販売には監査等の関係で問題があるので、R9社が間に入ってもらいたい。絶対迷惑を掛けない。名前を貸してもらうだけである。代金を支払う必要はなく、帳簿上仕入れと売上げを建ててほしい。絵画代金の一パーセントを謝礼として支払う。』などと言って頼まれ、四月に取引の書面を作成をし、その後、現金で謝礼の九二万円を受け取った。その後も同様だが、絵画の受取も代金の支払もまったくしていない。平成元年にもJからB社からL社への売買に名目上間に入るよう言われて同様に引き受けた。L社の代表取締役はR9社で働いていたT4であり、本人からも名前だけの代表取締役と聞いていた。このときも、B社とR9社間、R9社とL社間の覚書を形式上作成しただけで、絵画三点分合計二〇〇万円の謝礼を現金でもらった。ただ、この取引に関しては、その後Jから監査の関係で三億円の約束手形がほしいと要求された。『絶対取り立てには回さない、B社からも同額の約束手形を渡す。』というので承諾した。この謝礼として額面の一パーセントとして現金で三〇〇万円もらい、B社発行名義の三億円の約束手形も受け取ったので、R9社発行名義の三億円の約束手形を渡した。その後の平成元年四月ころ、Jから『B社の売上げが足りないのでもう一点頼む。』などと言われ、同様に承諾した。このときは日付けを遡らせて覚書を作成し、現金で一一〇万円の謝礼金をもらった。また、B社発行名義の一億一〇〇〇万円の約束手形と引き替えにR9社から同額の約束手形を発行してJに渡した。その後、平成元年五月には三億円の約束 せて覚書を作成し、現金で一一〇万円の謝礼金をもらった。また、B社発行名義の一億一〇〇〇万円の約束手形と引き替えにR9社から同額の約束手形を発行してJに渡した。その後、平成元年五月には三億円の約束手形を二億二〇〇〇万円の約束手形に差し替えた。さらに、平成二年にもJから同様の依頼があって、一〇〇万円の謝礼を現金で受け取ったが、このときは約束手形のやり取りはなかった。R9社は絵画取引とは無縁の会社で年の売上げも一、二億程度である。これらすべての取引は、手数料の一パーセント欲しさに協力しただけの架空取引である。」などと供述している。 T3は、Jの友人であるが、現実の取引についてわざわざ架空であると供述しなければならない理由は何ら見出せない。その前記供述中、第六期の架空取引については、B社からの約束手形の受入れ自体については裏付けがないが、その他の約束手形の発行状況、資金の移動状況、R9社の会社規模等からしても、これらの取引が架空取引であるとの供述の大筋については信用性に疑いを入れる余地がない。 (六) 売買代金の入金原資を見ると、第五期における売買代金の入金は、R6社の場合を除き、すべてF社からの出金を名義貸し人の名義で送金等をしているが、F社からの送金等の原資は、K1グループのT5からの預手、有限会社U1社、M5社等からの借入金か、A1やF社に対する仮払金の戻し等であると認められ、これらの借入金について、B社が保証したり約束手形を簿外で発行するなどしていることは前記のとおりである。 なお、R6社については、融資の性格上、同社が現実に出金をしているが、この返済については、F社が絵画を購入したとの名目でF社の出金により行っており、その原資は、有限会社U1社やK7からの借入金と認められ、この借入金についても、B社が借入金と同額の約束手 しているが、この返済については、F社が絵画を購入したとの名目でF社の出金により行っており、その原資は、有限会社U1社やK7からの借入金と認められ、この借入金についても、B社が借入金と同額の約束手形を簿外で発行している。 したがって、いずれにしても、実質的にはB社の簿外での借入金がその原資となっていることは明らかである。 (七) 架空取引に使われた絵画について見ると、合計五点の絵画につき、当時I5を担当していたG3は、「昭和六三年二月ないし三月ころ、A1からの指示で、絵画五点の仕入れを行い、その後、K2から、売上げ先をR6社等とした売上げ伝票を起票するよう指示されて起票した。B社で自分が書面を作成した取引については、仕入れも販売も関与していないもの、仕入れのみ担当しているもの、仕入れも販売とも担当しているものの三形態があり、最後のものだけは現実取引に間違いないが、それ以外のものについては正規の取引かどうか分からない。」などと供述しているところ、第五期に使われた絵画は、A1の指示で期末時期になって仕入れが行われたことは明らかである。 (八) 第五期における以上の架空取引による架空利益により、B社においては、当期未処分利益金を一億四七〇四万円(うち当期純利益は七一七二万四〇〇〇円)を計上しているが、実際には、当期にも多額の未処理損失を残す結果となった。 4 第六期(昭和六三年四月から平成元年三月まで)(一) 第六期においては、A1が名義貸し人と直接接触し、又はJが接触して、それぞれ名義を借りることの承諾を得た上、B社では、後記絵画の売上げを計上しているものの、いずれも書面上取引の体裁を整えたにすぎず、これらの売上げは架空のものであった。具体的には、第五期と同様に、公表上、いったん名義貸し人がB社から絵画を購入した上で、それをL社に 計上しているものの、いずれも書面上取引の体裁を整えたにすぎず、これらの売上げは架空のものであった。具体的には、第五期と同様に、公表上、いったん名義貸し人がB社から絵画を購入した上で、それをL社に転売したことにして売上げを計上する方法である。次の(二)及び(三)で架空売上げの方法等を更に詳細に見ることとする。 (二) A1が名義貸し人と直接接触しての取引(1) U2社に対し、絵画四点(題名「海浜の月」、「琵琶湖舟遊図」、「春秋日月図」、「霊峰不二」)を合計三億九七五〇万円の売上げ(その原価は一億四七〇〇万円)で、二億五〇五〇万円の利益を計上し、その支払は、いずれも売掛金で処理した後、第七期に現金が入金となっている(入金は、L社の口座から六三五〇万円、T6の口座から三億三四〇〇万円がいずれもU2社名義で送金され、名義貸し人への報酬八〇〇万円のうち、六〇〇万円はT6口座からL社名義で送金、一〇〇万円はL社口座から送金、残り一〇〇万円はF社の口座から現金出金で支払っている。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図一四ないし一七頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号二〇ないし二三を参照)。 この取引につき、U2社の代表取締役であるT7は、「知人のT8から、B社が上場を控えて売上げ増を考えているとの話を聞いていたが、平成元年二月、A1と会い、その旨直接聞くとともに、同人から『帳簿上の売上げを伸ばしたいので、一億円から二億円の絵画を買ったことにしてほしい。最終的にはB社の関連会社がその絵画を購入したことにして処理する。絶対に迷惑は掛けない。謝礼として六〇〇万円差し上げる。』などと言われて、名義貸しを承諾した。三月二二日ころ、A2との間で取引書面を作成したが、A2から書面上の日付けは遡らせる旨聞いた。三月二七日ころ、A2からの依頼で絵画一点を追加する 万円差し上げる。』などと言われて、名義貸しを承諾した。三月二二日ころ、A2との間で取引書面を作成したが、A2から書面上の日付けは遡らせる旨聞いた。三月二七日ころ、A2からの依頼で絵画一点を追加することになり、その関係の取引書面も作成し、報酬も八〇〇万円になった。その後、四月四日ころ、同日付で当社がB社の関連会社であると聞いたL社に、B社からの名目売買代金に六〇〇万円を加えた金額で絵画を売却する旨の書面も作成し、当日、A2から報酬のうち一〇〇万円を現金でもらった。報酬残額七〇〇万円は六月までに振込み送金で受領した。A1からは、仕入れと売上げの両方を帳簿に記載するようにという依頼もあり、そのように税理士に依頼した。絵画については現物は見ていない。」などと供述しており、これが架空取引であることは明らかである。 (2) R7社に対しては、絵画一点(題名「橋」で、「メゾンブラン」と同一のもの)を七〇〇〇万円の売上げ(その原価は三〇〇〇万円)で、四〇〇〇万円の利益を計上し、その支払いは受取約束手形で処理した後、第七期に現金が入金となっている(なお、入金に関しては、B社から同額の約束手形を簿外で発行しており、L社の口座から七一〇〇万円がR7社に入金となった後に、R7社から合計七〇〇〇万円が入金となっている。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図一九頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号二五を参照)。 この取引が架空取引であることは、前記S9の供述[甲一二]により明らかである。 (三) Jが名義貸し人と接触した取引R9社に対しては、絵画四点(題名「巖上の鷹」、「馬」、「親子鶴之図」、「アブレの町」)を合計四億一〇〇〇万円の売上げ(その原価は一億一九〇〇万円)で、二億九一〇〇万円の利益を計上しているが、その支払は、受取約束手形で処理した後、第七期 の鷹」、「馬」、「親子鶴之図」、「アブレの町」)を合計四億一〇〇〇万円の売上げ(その原価は一億一九〇〇万円)で、二億九一〇〇万円の利益を計上しているが、その支払は、受取約束手形で処理した後、第七期に現金が入金となっている(うち八〇〇〇万円については現金入金で、残りの三億三〇〇〇万円についてはL社の口座からR9社名義で送金されている。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図一一ないし一三、一八頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号一七ないし一九、二四を参照)。 この取引が架空取引であることは、前記T3の供述[甲六]により明らかである。 (四) なお、これらの売買代金入金の原資を見ると、これら取引の入金は、L社及びT6の各口座から名義貸し人名義で送金されているが、L社の口座の原資はK7の口座からの八億七〇〇〇万円余の送金であり、それぞれの送金と同じ日付けで、T6に対し三億五〇〇〇万円の、K7に対し八億九〇〇〇万円の各約束手形がB社から簿外で発行されていることが認められ、いずれもB社の簿外借入金が原資となっていることは明らかである。 (五) 第六期における架空取引に使われた絵画に関し、G3は、「平成元年二月ないし三月ころ、A1の指示で、I5が現実に仕入れた商品ではない絵画九点について、売上げ伝票及び支払依頼書を起案し、第六期における絵画の売上げを計上したが、仕入れや売上げのいずれにも自分が関与していない取引であって、架空取引と思われる。」旨を供述している。これらの絵画は、いずれもU3社からF社を経て仕入れがなされたことになっているが、後記のように、Jが「バンヤ」と称する絵画ブローカーから紹介されたT8という人物から、絵画売却代金を受け取ったという内容虚偽の領収証を調達するなどして仕入れを装ったものにすぎず、カタログ写真のみで現物の存在しない絵 が「バンヤ」と称する絵画ブローカーから紹介されたT8という人物から、絵画売却代金を受け取ったという内容虚偽の領収証を調達するなどして仕入れを装ったものにすぎず、カタログ写真のみで現物の存在しない絵画であった。 (六) このようにして、B社では第六期においても当期未処分利益金を一億七五六〇万円(うち当期純利益は七七〇七万四〇〇〇円)を計上したが、実際には未処理損失額を残し、繰越し損失額は更に拡大していった。 5 第七期(平成元年四月から平成二年三月まで)B社では、第七期においても、後記各社から名義を借りて架空取引を行っているが、この期の架空取引については、いずれも名義貸し人と接触したのはJであって、また、同人はK1グループのペーパーカンパニーも利用している。次の(一)及び(二)で架空売上げの方法等を更に詳細に見ることとする。 (一) Cの架空取引株式会社U4社に対して、Cを九五六八万円の売上げ(その原価は二五一二万四三四四円)で、七〇五五万五六五六円の利益を計上しているところ、その支払は現金での入金となっている(L社の口座から出金した現金を翌日B社の口座に現金入金したものと強く推認される。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図七三、七四頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号七九、八〇を参照)。 この取引及び第八期における同様の取引につき、U4社の代表取締役であるT9は、「平成二年三月中旬ころ、S4から『B社が店頭登録することになっているが売上げの数字が足りない。今期の売上げの数字を増やすために、B社の商品売上げ先としてU4社の名義を貸してもらいたい。U4社の売上げ先もB社が用意するし、資金を負担してもらう必要はない。協力してもらえるならば大体一億円くらいの取引で名義借り料として一パーセントを支払う。』という依頼があり、さ を貸してもらいたい。U4社の売上げ先もB社が用意するし、資金を負担してもらう必要はない。協力してもらえるならば大体一億円くらいの取引で名義借り料として一パーセントを支払う。』という依頼があり、さらに数日後ころ、Jから『ご迷惑は掛けないのでよろしくお願いしたい。手数料は一五〇万円支払うので、そのうち八〇万円はS4にやってほしい。』などと言われ、名義貸しを承諾した。そして、三月下旬ころ、注文書のひな形がJからファックス送信されてきたので、そのとおり、日付けを二月末に遡らせてU4社がB社にCを注文した旨の注文書を作成してJに渡した、同人からはL社がU4社からCを一パーセント上乗せした金額で購入して受領した旨の物品受領書等を受け取った。これにより、三月二七日ころ、差額相当の報酬一五五万円をもらった。その後、平成二年五月ころと九月ころにも、Jから同様の話があり、架空取引の注文書をほしい旨依頼されたので、やはり日付けを遡らせて、五月ころには、U4社がB社にD及びCを同年四月二〇日付けで五一〇三万円余りを、五月三〇日付けで同金額のものをそれぞれ注文した旨の各書面、九月ころには、八月二四日付けで七二三九万円余りを、九月二六日付けで三七九六万円余りをそれぞれ注文した旨の各書面を作成し、L社がD及びCを右各金額の一パーセント増しの金額で購入する旨の注文書を受け取った。」などと供述し、S4もこれに沿う供述をしているのであり、これが架空取引であることは明らかである。 (二) 絵画の架空取引(1) R9社に対し、絵画二点(題名「山水畫」、「花鳥図」)を一億〇八〇〇万円の売上げ(その原価は四五〇〇万円)で、六三〇〇万円の利益を計上し、その支払は、うち五〇〇万円につき預手で入金となり、残額は売掛金で処理した後、第八期に現金が入金となっている(預手はF社振出のも 円の売上げ(その原価は四五〇〇万円)で、六三〇〇万円の利益を計上し、その支払は、うち五〇〇万円につき預手で入金となり、残額は売掛金で処理した後、第八期に現金が入金となっている(預手はF社振出のものであり、第八期の現金入金のうち、合計五〇〇〇万円はF社の口座からR9社名義でB社に送金で、その余の消費税を含む残額についてはL社の口座からR9社名義で送金となっている。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図二〇、二一頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号二六、二七を参照)。 この取引が架空取引であることについては、前記T3の供述[甲六]により明らかである。 (2) P7社に対し、絵画三点(題名「人物中堂」二点及び「蘭竹図六張」の合計三点を三億円の売上げ(その原価は一億五五〇〇万円)で、一億四五〇〇万円の利益を計上し、その支払は、うち一〇〇〇万円が現金で入金され、消費税三〇〇万円を含む残額は第八期に現金が入金となっている(第七期の一〇〇〇万円と第八期入金分のうちの二〇〇〇万円は、F社の口座から出金した現金を入金したものと強く推認され、第八期入金分の九〇〇万円はF社の口座からP7社名義で送金され、残額の二億七〇〇〇万円はL社の口座からP7社名義で送金となっている。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図二二ないし二四頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号二八ないし三〇を参照)。 P7社は、K1グループのペーパーカンパニーであり、同社が第四期以降に架空取引へ関与している状況、その入金状況、取引絵画の性質(後記(四))等に照らし、また、Jの証言等により、これが架空取引であることは明らかである。 (三) なお、これらの売買代金入金の原資を見ると、L社からの送金原資としては三億三四〇〇万円の現金入金があるところ、B社が同じ日にK1あてに四億四〇〇〇万円の が架空取引であることは明らかである。 (三) なお、これらの売買代金入金の原資を見ると、L社からの送金原資としては三億三四〇〇万円の現金入金があるところ、B社が同じ日にK1あてに四億四〇〇〇万円の約束手形を簿外で発行しており、また、F社からの送金原資としてはP7社振出の預手一億五〇〇〇万円の入金があるところ、これについても、B社がP7社あてに同額の約束手形を簿外で発行していることが認められ、いずれの送金原資もB社の簿外借入金と認められる。 (四) 第七期における架空取引に使われた絵画五点は、期末時期の平成二年三月下旬に、前記「バンヤ」を通じてJがT8という人物から実際に仕入れを行ったものであるが、V1の供述から明らかなように、T8から有限会社U5社、F社を順次経て、B社が最終的に仕入れるという架空の取引経過をたどって受け入れたものであった。 (五) このようにして、B社では第七期においても当期未処分利益金を三億一九二八万円(うち当期純利益は二億〇五六六万一〇〇〇円)を計上したが、実質の繰越し損失は二三億円以上に達していた。 6 第八期(平成二年四月から平成三年三月まで)B社では、第八期においても、後記各社等から名義を借りて架空取引を行っているが、この期の架空取引については、いずれも名義貸し人と接触したのはJであって、同人は自ら設立した会社やK1グループのペーパーカンパニーをも利用している。この期中にB社が店頭登録を果たしたこともあって、架空売上げの中心となっていた絵画取引については、それを見込んだ期首予算の売上げ額六億円を大幅に上回る合計一七億円もの架空売上げを計上しており、それによって、九億五七八八万円の利益を計上している。これは、反面、B社の業績不振が相当深刻であったことを物語るものである。次の(一)ないし(四)において、 計一七億円もの架空売上げを計上しており、それによって、九億五七八八万円の利益を計上している。これは、反面、B社の業績不振が相当深刻であったことを物語るものである。次の(一)ないし(四)において、架空売上げの方法等を詳細に見ることとする。 (一) D及びCの架空取引U4社に対し、C及びDを合計二億〇六二四万六九〇〇円の売上げ(その原価は七七〇一万三七四四円)で、一億二九二三万三一五六円の利益を計上しているが、その支払は全額現金入金となっている(L社の口座やF社の口座から出金後に、それぞれU4社名義で送金したと思われる。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図七五、七七頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号八一、八二を参照)。 この取引が架空取引であることについては、前記T9の供述[甲六七]により明らかである。 (二) 絵画の架空取引(1) S4に対し、絵画一点(題名「花畑と灯台」)を六九九〇万二九一三円の売上げ(その原価は三二〇三万八八三五円)で、三七八六万四〇七八円の利益を計上しているが、その支払は全額現金入金となっている(なお、F社及びL社の各口座から、いずれもS4の名義で送金。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図三〇頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号三六を参照)。 この取引につき、S4は、「Jとは大学時代の同級生であるが、自営のソフト開発業の資金繰りが苦しかったので、平成二年二月ころJに五〇万円借りたいと頼むと、同人はおれが何とかしてやるなどと言ってくれた、四月には、用立てたと言って五〇万円入りのB社の会社の封筒を渡された上で、『君が絵画を買ったことになっているから、これがその書類だ、お金は返す必要はない、書類は預かってくれ。』と言われた。もらった書類は紛失してしまったが、B社側に残っている書面を見せてもらったと た上で、『君が絵画を買ったことになっているから、これがその書類だ、お金は返す必要はない、書類は預かってくれ。』と言われた。もらった書類は紛失してしまったが、B社側に残っている書面を見せてもらったところ、平成二年五月の日付けになっているが、実際は四月のことであり、取引内容自体はまったく分からない。」などと供述しており、これが架空取引であることは明らかである。 (2) 株式会社U6画廊に対し、絵画四点(題名は「薔薇の絵(二五号)」、「ハルピンの風景」、「湖」、「パリ風景画」)を売上げ計上している。すなわち、「薔薇の絵(二五号)」につき八二〇〇万円(その原価は三六〇〇万円)の売上げで四六〇〇万円の利益を計上し、その支払は全額現金入金となっている(うち一一〇〇万円はF社の口座からU6画廊名義で送金され、残額はL社の口座からU6画廊名義で送金。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図三一頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号三七を参照)となっている。「ハルピンの風景」につき二七〇〇万円(その原価は一五〇〇万円)の売上げで一二〇〇万円の利益を計上し、その支払は全額現金入金となっている(うち二〇〇万円はL社の口座からU6画廊名義で、残額はF社の口座からU6画廊名義で送金。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図三四頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号四〇を参照)。 また、「湖」については、一億九四一七万四七五八円の売上げであるが、後記(3)のU7有限会社に対する題名「海の風景」という絵画についての二億九一二六万二一三六円の売上げと合わせて、これら二点の原価は合計一億九四一七万四七五八円であって、結局、これら二点で合計二億九一二六万二一三六円の利益を計上している。これらについての支払は、売掛金で処理した後、第九期に現金が入金となっている(ただし、入金関係は、 億九四一七万四七五八円であって、結局、これら二点で合計二億九一二六万二一三六円の利益を計上している。これらについての支払は、売掛金で処理した後、第九期に現金が入金となっている(ただし、入金関係は、U7社の件と合わせて処理されているところ、二億円分につき、入金後にF社への前渡金、H4への前払販売手数料として支払った旨の処理がなされている。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図四四頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号五〇を参照)。最後の「パリ風景画」については、消費税込みで六七九六万一一六六円の売上げ(その原価は三三九八万〇五八三円)で、三三九八万〇五八三円の利益を計上しているところ、その支払は売掛金で処理した後、第九期に現金が入金となっている(F社の口座からU6画廊名義で送金。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図四六頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号五二を参照)。 これらU6画廊との取引及び第九期における同様の取引につき、U6画廊の経営者V2は、「知人のG6から、平成二年に絵の鑑定依頼を受けた際、Jと知り合った。Jらからは、B社に美術部門があってその部長が辞めたが、今後U6画廊と取引したいと言われ、平成二年四月に一点、八月に二点、一〇月に二点の絵画をB社に対して実際に販売した。これとは別に、平成二年五月に、Jから、『売却先の決まった絵について間に入ってくれ。代金は買い手から直接B社に行くので、迷惑は掛けない。謝礼一パーセントをあげる。』などと言われたので、これを承諾したところ、Jが書面を持ってきたので印だけ押した。B社とU6画廊間、U6画廊と別の会社間の契約書であった。このほかに、B社側に残っている書類を見せてもらうと、平成二年の七月、平成三年の二月、三月、六月に取引があったことが分かるが、これらはすべてJに頼まれて書面だけ作成した と別の会社間の契約書であった。このほかに、B社側に残っている書類を見せてもらうと、平成二年の七月、平成三年の二月、三月、六月に取引があったことが分かるが、これらはすべてJに頼まれて書面だけ作成した架空取引であり、U6画廊では、いずれも取引金額の一パーセント程度の金として一〇〇万円以上の金を受け取った記憶がある。」などと供述している。この供述には、やや記憶があいまいな部分があるとはいえ、取引が架空取引であったという根幹部分については、信用性に疑いを入れる余地はなく、これらの取引及び第九期における同様の取引は、すべて架空取引であるということができる。 (3) U7社に対しては、まず、絵画二点(いずれも題名「風景」)を合計一億三二〇〇万円の売上げ(その原価は合計六四〇〇万円)で、合計六八〇〇万円の利益を計上しているが、その支払は全額現金入金となっている(うち一〇〇〇万円は、L社の口座からU7社名義で送金され、消費税込みの残額はF社の口座からU7社名義で送金。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図二九、三三頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号三五、三九を参照)。また、絵画一点(題名「海の風景」)については、二億九一二六万二一三六円の売上げであるが、前記(2)のとおり、U6画廊に対する題名「湖」という絵画についての一億九四一七万四七五八円と合わせて、これら二点の原価は合計一億九四一七万四七五八円であって、結局、これら二点で合計二億九一二六万二一三六円の利益を計上している。その支払は、売掛金として処理した後、三億円分につき、F社の口座からU7社名義で送金となっている(ただし、処理は、前記(2)のとおり、U6画廊の売掛金との合計額五億円と合わせて行われている。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図四五頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号五一を参照)。 っている(ただし、処理は、前記(2)のとおり、U6画廊の売掛金との合計額五億円と合わせて行われている。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図四五頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号五一を参照)。 これらの取引及び第九期におけるのと同様の取引につき、U7社の当時の経営者であるV3は、「昭和六三年にG3と知り合い、後に取引書面から買主はF社と知ったが、B社に絵を売るなどしたがトラブルがあり、G3が退職してしまったので、前に名刺をもらっていたJに相談して、その後同人と折衝するようになった。平成二年になり、Jから絵画買い付けの申入れがあったが、絵の種類等は特に指定はなく、こちらの紹介した絵を三点買ってもらった。平成二年夏、Jから『世話になったのでもうけさせてあげる。契約書に名前貸してくれ。B社からU7社が絵を買ったことにしてくれ。U7社は代金を支払う必要はない。L社に転売が決まっていて名前貸してくれるだけで謝礼を払う。』などと言われ、名義貸しを承諾したところ、Jが八月にB社とU7社間、U7社とL社間の契約書面を持ってきたので印を押した。約一億四〇〇〇万円の物件で差益が一四〇万円くらいあったと思う。Jから差益だけ現金で受け取ったが、U7社は売買代金を一切支払っていない。その後、平成三年二月から三月ころにも、三億円の物件で同じことをしたが、これもJから申入れがあって、同人が書面も作成済みのものを持ってきたので印だけ押した。謝礼三〇〇万円はL社から振り込みで受領した。さらに、平成三年一〇月にも同じことをした。以前の二点はともかく、この絵については、取引対象の作品を覚えているが、Jが作成してきた取引の約定書に記載された代金が相場とかけ離れていて印象に残っているからである。一億四〇〇〇万円を同様にU7社が間に入ってB社からL社に売るとの書面に印だけ押し の作品を覚えているが、Jが作成してきた取引の約定書に記載された代金が相場とかけ離れていて印象に残っているからである。一億四〇〇〇万円を同様にU7社が間に入ってB社からL社に売るとの書面に印だけ押し、Jから平成三年一二月に差益相当の一四〇万円を現金でもらった。」などと供述しているところ、この取引及び第九期における同様の取引が、いずれも架空取引であることは明らかである。 (4) U5社に対しては、二回にわたり、絵画五点(題名「薔薇の絵(一〇号)」、「咲く」、「舞妓」、「横たわる裸婦」、「薔薇」)の売上げを計上しているところ、まず「薔薇の絵(一〇号)」について六六〇一万九四一八円の売上げ(その原価は二六二一万三五九三円)で、三九八〇万五八二五円の利益を計上しているが、その支払については現金が全額入金となっている(F社の口座からU5社名義で送金。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図三二頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号三八を参照)。また、残りの絵画四点を合計一億六〇〇〇万円の売上げ(その原価は合計七〇〇〇万円)で、九〇〇〇万円の利益を計上しているところ、その支払については現金が全額入金となっている(うち五四八〇万円はL社から、うち三〇〇〇万円はF社からそれぞれU5社名義で送金となり、八〇〇〇万円は現金で入金となっているが、F社から八〇〇〇万円の現金出金があり、四八〇万円は消費税である。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図三六、三九ないし四一頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号四二、四五ないし四七を参照)。 これらの取引につき、U5社の実質的設立者であるV1は、「知人のJから、『B社の社長室のようなところに勤務し、その関連会社としてF社があり、その会社も任されている。』などと聞いていたが、その後、『ノンバンクから融資を受けてそれをF社に融資 であるV1は、「知人のJから、『B社の社長室のようなところに勤務し、その関連会社としてF社があり、その会社も任されている。』などと聞いていたが、その後、『ノンバンクから融資を受けてそれをF社に融資をしてくれれば割増しの利子を払う。』などと言われ、U8社というノンバンクをJに紹介した。七〇〇〇万円くらい借りてくれとの申出で、金額が大きいこと等から躊躇したところ、『B社から同額の約束手形を担保として入れる、店頭登録も控えているから間違いない。』などと言われ、この申入れを承諾した。平成元年二月ころ、実際には、最終的に六五〇〇万円を借り、四〇〇〇万円のみF社に融資して、四〇〇〇万円の約束手形をB社から受け取った。U8社への利息はF社側からもらう利息の中から自分が支払っていた。その後、Jの勧めで、U8社の金利が高いことからU9銀行に借り換えをすることにしたが、そのためには法人化が必要となり、平成二年二月にペーパーカンパニーであるU5社を設立した。設立手続はJに任せたが、定款の事業目的には美術工芸品の販売も入っているが、自分にはそのような意図はなかった。そのころ、Jから『絵画売買に名義を貸してくれ、一〇〇万円くらいの利益を上げる、売り手買い手とも自分の方で探し、絶対に迷惑を掛けない。』旨の話があり、これを承諾した。平成二年三月に、Jから頼まれてU5社の預金通帳を渡した。四月に通帳を返してもらい、売買契約書等も見せてもらったが、通帳には合計一億五一〇〇万円入金、一億五〇〇万円出金となっており、契約書等は、二月に日付けを遡らせて、U5社がF社に絵を売り、F社がB社に絵を売ったというような内容のものであった。契約書等に押されているU5社の印鑑が出来上がったのは三月中旬以降であるから、二月中に契約書等を作成できるはずはない。何もしないで一〇〇万円をもうけさ 社に絵を売ったというような内容のものであった。契約書等に押されているU5社の印鑑が出来上がったのは三月中旬以降であるから、二月中に契約書等を作成できるはずはない。何もしないで一〇〇万円をもうけさせてもらった。平成二年六月か七月ころ、Jから、手数料を支払うから絵の取引で名前を使いたいという、前と同様の申出があったが、通帳は特に要求されなかった。その後、契約書を作るので社印を捺印してもらいたいとの連絡があり、U5社の代表者となっている母親に伝えたことがある。見せてもらった約定書三通に押された印は、本物の社印と三文判のものとがあり、前者は依頼を了承したものであるが、後者はJが勝手に押したものと思う。平成三年二月になり、L社名義でU5社の口座に三〇〇万円の振り込みがあった。これは謝礼だと思う。なお、四〇〇〇万円の融資については、B社とF社の倒産により回収されていない。」旨を供述しており、当期及び翌期の該当する取引が架空取引であることは明らかである。 (5) 有限会社U3社(以下「U3社」という。)に対して、絵画三点(題名「風景」二点、「ヨットハーバー」)を、P7社に対して絵画一点(題名「花」)を、株式会社W1社に対しては絵画一点(題名「春の歌」)をそれぞれ売り上げ計上している。 U3社の初回の「風景」について一三五〇万円の売上げ(その原価は五〇〇万円)で、八五〇万円の利益を計上しているが、その支払については現金が入金となっている(F社からU3社名義で送金。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図三五頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号四一を参照)。二回目については合計一億九〇〇〇万円の売上げ(その原価は六五一五万五三四〇円)で、一億二四八四万四六六〇円の利益を計上しているところ、その支払は、うち四二七〇万円が入金、残額は受取の約束手形で処理し 回目については合計一億九〇〇〇万円の売上げ(その原価は六五一五万五三四〇円)で、一億二四八四万四六六〇円の利益を計上しているところ、その支払は、うち四二七〇万円が入金、残額は受取の約束手形で処理した後に第九期に現金入金となっている(入金は、四二七〇万円はL社からU3社名義で入金、第九期の入金のうち七三〇〇万円はP7社からU3社名義で送金となっており、八〇〇〇万円は現金入金となっている。なお、五七〇万円は消費税であり、U3社側ではこれを含む一億五〇〇〇万円をF社に対する長期貸付金で処理。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図三八、四二頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号四四、四八を参照。ただし、平成三年九月九日付けでB社の口座に入金となった八〇〇〇万円についてはスキーム図のヒモ付け自体は正確とはいい難い。)。 P7社関係は、一億二〇〇〇万円の売上げ(その原価は六〇〇〇万円)で、六〇〇〇万円の利益を計上しているところ、その支払は現金が入金となっている(うち七三六〇万円はL社からP7社名義で送金、残五〇〇〇万円についてはA1口座からの現金が入金。三六〇万円は消費税。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図三七頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号四三を参照)。 また、W1社関係は、二億九一二六万二一三六円売上げ(その原価は一億四五六三万一〇六八円)で一億四五六三万一〇六八円の利益を計上しているところ、その支払については、売掛金で処理した後、第九期に現金が入金となっている(二億二〇〇〇万円はF社から、一七〇〇万円はP7社からそれぞれW1社名義で送金、六三〇〇万円は現金の振込み入金。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図四三頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号四九を参照)。 以上の取引は、P7社及びU3社はいずれもK1グループのペーパーカン 六三〇〇万円は現金の振込み入金。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図四三頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号四九を参照)。 以上の取引は、P7社及びU3社はいずれもK1グループのペーパーカンパニーであり、W1社はJ設立のペーパーカンパニーであって、これが架空取引であることは第七期のP7社に関するもの(前記5の(二)の(2))と同様である。 (三) 売買代金の入金原資について見ると、(一)及び(二)の取引に関するF社からの送金原資は、第七期の箇所で述べてP7社からの一億五〇〇〇万円のほか、M9社株式会社、M8組合、M5社、K1グループ等から、B社が約束手形を簿外で発行したり保証するなどしてF社等の名義により借入れたものなどである。また、L社からの送金原資は、F社の口座からのT4やP7社名義での入金分等であり、その入金に関するF社の原資は、F社が保有するB社の株式をH5社へ売却した代金や、M7社等からの借入金等であり、すべてB社の簿外の借入金と認められる。 なお、売却したB社の株式はB社が保証をするなどしてF社名義でM8組合から借り入れた六億五〇〇〇万円のうち、三億円足らずをM9社株式会社へ送金してB社株二〇万株を購入したうちの一〇万株であり、実質的にはB社の簿外資産である。 (四) また、第八期で使用した絵画について見ると、G6個人所有の絵画を、帳簿上、T8という人物からU3社やF社を経由してB社が仕入れた形にしたもの、株式会社M6社、M5社等の金融会社へ担保として差し入れしていて事実上処分不可能なもの、第五期の架空取引に使用し、実質的にはB社の在庫の絵画(題名「橋」)につき改題してB社がF社から仕入れた形にしたもの(その上、この絵画は株式会社W2社に対する担保であった)、絵画の現物を保持せず、カタログ写真があるだけで、更にそ 的にはB社の在庫の絵画(題名「橋」)につき改題してB社がF社から仕入れた形にしたもの(その上、この絵画は株式会社W2社に対する担保であった)、絵画の現物を保持せず、カタログ写真があるだけで、更にそれを改題したフェイクすなわち偽絵画とかレプリカものが含まれていた。 (五) このようにして、B社では第八期においても当期未処分利益金を四億七四一〇万円(うち当期純利益二億五〇六一万四〇〇〇円)を計上したが、実質上の繰越し損失は更に拡大していった。 7 第九期(平成三年四月から平成四年三月まで)B社では、第九期においても、後記各社等から名義を借りるなどして、絵画の架空取引だけでなく、海外不動産についても架空取引を行っている。なお、A2は絵画に関してI5の予算を作成しているが、その金額は異常ともいうべき第八期のそれを大幅に下回る一一億八〇〇〇万円であった。次の(一)及び(二)において、架空売上げの方法等を詳細に見ることとする。 (一) 絵画の架空取引(1) U5社に対して、三回にわたり、絵画三点(題名「建物」、「薔薇の絵(二五号)」、「サーカスの女」)を売上げ計上しているところ、初回の「建物」について一億二六二一万三五九三円の売上げ(その原価は六三一〇万六七九七円)で、六三一〇万六七九六円の利益を計上しているが、その支払は現金が入金となっている(現金で直接入金又はF社の口座からU5社名義で送金。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図四七頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号五三を参照)。二回目の「薔薇の絵(二五号)」については、五八二五万二四二八円の売上げであるが、その原価は、後記(3)のU3社に対する題名「薔薇の絵(二〇号)」と合わせて三三九八万〇五八三円であり、利益もこれと合わせて、六三一〇万六七九七円を計上しているところ、その支払は 円の売上げであるが、その原価は、後記(3)のU3社に対する題名「薔薇の絵(二〇号)」と合わせて三三九八万〇五八三円であり、利益もこれと合わせて、六三一〇万六七九七円を計上しているところ、その支払は、消費税を含めた六〇〇〇万円がU5社名義で直接又はF社の口座から送金となっている(なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図四九頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号五五を参照)。また、三回目の「サーカスの女」については、一億一六五〇万四八五五円の売上げ(その原価は五三三九万八〇五九円)で、六三一〇万六七九六円の利益を計上しているが、その支払は、売掛金で処理した後、第一〇期に未回収の三四〇〇万円分を除いた八六〇〇万円が入金となっており、入金分はF社の口座からU5社名義で送金するか、又は同名義で現金を送金している。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図五五頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号六一を参照)。 これらの取引がいずれも架空取引であることについては前記V1の供述により明らかである。 (2) U6画廊に対し、絵画一点(題名「車海老」)を三八八三万四九五二円の売上げ(その原価は一四五六万三一〇七円)で、二四二七万一八四五円の利益を計上しているところ、その支払は消費税を含めた四〇〇〇万円が現金入金となっている(F社の口座からU6画廊名義で送金。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図四八頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号五四を参照)が、この取引が架空取引であることについては前記V2の供述[甲一九]により明らかである。 (3) U3社に対し、まず、絵画一点(題名「薔薇の絵(二〇号)」)を三八八三万四九五二円の売上げで、その原価は前記(2)のU5社に対する題名「薔薇の絵(二五号)」と合わせて三三九八万〇五八三円であって、利益もこれと合わせて、合計六三一〇万六七 薇の絵(二〇号)」)を三八八三万四九五二円の売上げで、その原価は前記(2)のU5社に対する題名「薔薇の絵(二五号)」と合わせて三三九八万〇五八三円であって、利益もこれと合わせて、合計六三一〇万六七九七円を計上しているところ、その支払は、消費税を含めた四〇〇〇万円がU3社名義でF社の口座から振込入金となっている。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図五〇頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号五六を参照)。 また、絵画一点(題名「女」)を一億六五〇四万八五四四円の売上げ(その原価は七七六六万九九〇三円)で、八七三七万八六四一円の利益を計上しているところ、その支払は現金が入金となっている(うち六五〇〇万円は現金入金、六四〇〇万円がF社の口座からU3社名義で送金、二〇〇〇万円がO取組預手で入金、二一〇〇万円K1取組預手で入金。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図五二頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号五八を参照)。 このようなK1グループのペーパーカンパニーを名義人とする取引が架空取引であることについては、前記(5の(二)の(2))と同様である。 (4) W3株式会社に対し、絵画二点(題名「パリの画家」、「聖書風景」)を合計四億一三一〇万六七九七円の売上げ(その原価は合計一億七九六一万一六五二円)で、二億三三四九万五一四五円の利益を計上しているところ、その支払は、九〇〇〇万円を除き現金が入金となり、この九〇〇〇万円は売掛金で処理した後に第一〇期に現金が入金となっている(当期入金の一億九五〇〇万円についてはF社口座からW3社名義で送金され、二億三〇五〇万円についてはW3社名義で現金送金。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図五一、五四頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号五七、六〇を参照)。 この取引につき、W3社の代表取締役であるV4は 〇五〇万円についてはW3社名義で現金送金。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図五一、五四頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号五七、六〇を参照)。 この取引につき、W3社の代表取締役であるV4は、「友人の知人であるJが、平成三年夏ころ、B社が二子玉川にギャラリーを出す企画を考えてほしいとの話を持ち込んできた。 その話はつぶれたものの、九月になって、Jから『絵画の仲介の仕事があるが、W3社で仲介したことにして手数料をかせがないか。』と電話で言われた。H6社の事務所では、Jから『B社で絵画事業をしているが、売買に関しW3社が間に入ったことにしてほしい。売り先はL社と決まっている。いったん買ったことにしてくれれば謝礼を払う。』などと言われた。リスクがあると困るので一度は断ったが、Jから『L社はB社の関連会社だから、絶対に迷惑を掛けない。間違いない。』などと言われ、税金対策か何かと思って、承諾した。Jは既に書面を用意していたので、印を押した。B社とW3社間、W3社とL社間の二枚の取引書面であった。代金額が三億二〇〇〇万円と高額だったことから、心配になって本当に大丈夫かと聞くと、Jは大丈夫と言っていた。平成三年一一月になって、Jから謝礼として三〇〇万円を現金でもらった。後日Jから同様の話があり、H6社事務所に行って、二枚の書類に印だけを押し、一二月に謝礼として一〇〇万円の現金を受け取った。絵画の授受も、代金授受も一切なかった。」などと供述しており、これが架空取引であることは明らかである。 (5) U7社に対し、絵画一点(題名「ギターを持つ女」)を一億三五九二万二三三一円の売上げ(その原価は五八二五万二四二八円)で、七七六六万九九〇三円の利益を計上しているところ、その支払は、三八〇〇万円が現金入金となり、残額は売掛金で処理した後、第一〇期に現金入金 二万二三三一円の売上げ(その原価は五八二五万二四二八円)で、七七六六万九九〇三円の利益を計上しているところ、その支払は、三八〇〇万円が現金入金となり、残額は売掛金で処理した後、第一〇期に現金入金となっている(三八〇〇万円についてはU7社名義で現金が振込送金され、残額についてはF社口座からU7社名義で送金。なお、その詳細は、甲一九九のスキーム図五三頁=冒頭陳述書(補充)の同通し番号五九を参照)。この取引が架空取引であることは、前記V3の供述[甲一八]から明らかである。 (6) 以上(1)ないし(5)の売買代金入金の原資を見ると、F社からの送金原資は、O、M9社株式会社、K1グループ、P1社等から、F社やA1等の名義を使用するなどしての借入金と認められるが、前記のとおり、B社ではこれら借入金の大部分につき、保証したり、その趣旨で約束手形を簿外で発行しており、実質的にB社の簿外の借入金である。 (7) 第九期に使用した絵画についても、B社では、これまでと同様に、現物の存在しない絵画や、株式会社M6社、M5社等への担保として差し入れているものなど、事実上処分できないものを取引対象としていた。 (二) 海外不動産(E)に関する架空取引Eに関し、B社は、W4株式会社ほか個人一五名に対し、合計二七戸室、価額合計五億九〇〇〇万円を販売し、うちB社取得分として三億三九二五万円の売上げで、一億七四四〇万七四一三円の利益を計上している。 しかし、これらの売上げにおけるW4社以外の購入名義人は、E購入の頭金及びローン代金を一切支払っておらず、H5社にローン代金を支払うための各人名義の預金通帳をB社側であらかじめ預かるなどして、B社の公表上の資金は使わないものの、B社側の責任において預金口座に各回のローン代金相当額を入金して、それぞれ名義人の名 ローン代金を支払うための各人名義の預金通帳をB社側であらかじめ預かるなどして、B社の公表上の資金は使わないものの、B社側の責任において預金口座に各回のローン代金相当額を入金して、それぞれ名義人の名前でH5社に対し各回の支払をしていた。 なお、V5を購入名義人とした分について、平成四年五月ないし六月ころ、B社がローン代金の支払を二回怠ったため、この遅滞分をV5自らが支払っているが、B社に抗議をしたことにより、その後、A2がローン代金一回分をB社からV5名義の口座に振り込み送金して返済し、また、同年夏ころ、同人方を訪問して謝罪した上、もう一回分として現金約二〇万円を直接返済している。 また、W4社は、E一〇戸室分の購入契約に基づく頭金及びローン代金を支払っていたが、これについては、自社の帳簿上はB社に対する貸付金として処理していた。A2は、W4社分に関する売上げ計上の際、W4社に対しB社が買い戻すことを約した不動産取引約定書を差し入れていた。その後、B社は、資金繰りが逼迫して、履行期である平成四年五月二〇日に買戻しができなかったため、W4社に延期を求め、同月二一日ころ、新たに同年八月二〇日を期限とする約定書を差し入れ、さらに、八月二七日ころ、同様の理由で再度の期日延期を求め、同年一一月二〇日を期限とする約定書を差し入れていた。 (三) そこで、次の(1)ないし(4)で、Eに関して名義借りを依頼した人物ごとに分けて、その依頼経緯等を見てみる。 (1) K3が名義借りを依頼したものW5社の代表取締役であるV6は、「平成三年八月ころないし九月上旬ころ、K3から『B社の決算対策で、ある程度数字を伸ばさなければならないので協力してほしい。カナダにあるEというコンドミニアム形式のマンションをB社で扱っているが、一〇戸室分を買ったこと し九月上旬ころ、K3から『B社の決算対策で、ある程度数字を伸ばさなければならないので協力してほしい。カナダにあるEというコンドミニアム形式のマンションをB社で扱っているが、一〇戸室分を買ったことにしてほしい。来年五月にはB社で買い戻したということで金銭的には迷惑を掛けない。利益を一〇〇〇万円くらいは付ける。名前だけでいい。迷惑を掛けない。』などと言われて、名義貸しを承諾した。一〇〇〇万円くらいのお礼がもらえるというので、当時あまり利益が上がっていない子会社のW4社にその名義貸しをやらせることにした。そのころ、A2から、礼を述べられた上、『今回の件については、来年五月に間違いなく処理する。』旨確約してもらい、この架空取引に伴って、来年四月までの頭金や一部ローン支払い等の立替金は、すべてB社が後日支払うという内容の不動産取引約定書も見せられ、安心していた。」旨を供述している。 また、W4社の代表取締役であるV7も、「V6社長から名義貸しの話を聞いた後、A2が訪ねてきて、『B社が扱っているカナダのE一〇戸室を代金合計二億二九四〇万円で購入したことにしてほしい。部屋は適当にこちらで見繕ってリストを作成してきた。B社が提携しているH5社のローンでは契約金額の九〇パーセントしか出ないので、一〇パーセントは頭金ということで、とりあえずW4社で立て替えていただきたい。平成四年四月分のローン代金までは、一応W4社で立て替えて支払っていただくということでお願いしたい。来年の五月には間違いなく買い戻しということで処理させていただくし、その際には立て替えていただいた頭金とローン支払金について、八パーセントの利息一五九万六六六〇円を付けて返済するし、謝礼として二〇〇万円を支払う。』などと説明をした。また、B社がEを他の会社に買い取らせること、W4社にその立 た頭金とローン支払金について、八パーセントの利息一五九万六六六〇円を付けて返済するし、謝礼として二〇〇万円を支払う。』などと説明をした。また、B社がEを他の会社に買い取らせること、W4社にその立替金の利息のほか謝礼を支払う旨の平成三年九月一〇日付け不動産取引約定書を受け取った。そして、A2に言われるまま印鑑を貸し、W4社がE一〇戸室を代金合計二億二九四〇万円で購入するとの書面の作成をした。」旨を供述している。これが名義貸しによる架空取引であることは明らかである。 (2) Jが名義借りを依頼したものU9銀行大阪駅前支店に勤務するV8は、「平成三年八月ころ、Jから『B社がH5社と共同事業でカナダのEというマンションを販売しているが、このマンションを買ったことにして協力してほしい。購入の際には本来頭金を一〇パーセント出していただくことになっているが、頭金やローンの支払いもB社が責任をもって行う。半年後には購入価格に一〇パーセント分のプレミアムを付けてB社の方で買い戻した形を採るので、迷惑を掛けない。』などと言われて、名義貸しを承諾した。Jに言われるままに書面を作成して、E一室を代金一三八〇万円で購入取引の名義貸しをした。」などと供述しており、架空取引であることは明白である。 (3) A1が名義借りを自ら依頼したもの株式会社W6社の取締役であるV9は、「平成三年暮れころ、代表取締役のX1から、『B社のA1社長から、同社が売り出しているカナダのEというマンションについて、売ったことにしたいから名前だけ貸してほしいと頼まれた。支払はすべてB社の方で行い半年で買い戻し、名義を貸してくれた人には迷惑を掛けないということだ。名義を貸してくれる人を何人か探してほしい。』などと言って人探しを依頼されて、承諾した。B社側からは、株式会社W6社 社の方で行い半年で買い戻し、名義を貸してくれた人には迷惑を掛けないということだ。名義を貸してくれる人を何人か探してほしい。』などと言って人探しを依頼されて、承諾した。B社側からは、株式会社W6社は既に名義貸しをしているので、会社の人の名前を使うのは好ましくないということであったので、知人に声を掛けることにした。そこで、平成四年一月ころ、知人のX2とその勤め先の社長V5に対し、『絶対に迷惑を掛けないので名義を貸してほしい。カナダのEというマンションを買ったことにしてほしい。半年間名義を貸すだけであり、後は転売の形で処理し、支払についてはB社がきちんと支払うので迷惑は掛けない。』などと言って、名義貸しを頼み、この二人から、各自E一戸室をそれぞれ代金二六七〇万円で購入することについての名義貸しを承諾してもらった。X1が念書を取っておいた方がいいということで、A1にその旨話した。A2から、名義貸しの二人にそれぞれ買い戻し保証の念書を入れてもらった。その後も、A1は度々株式会社W6社に訪ねてきて、『あと四、五件何とかならないだろうか。』と言っていたし、A2からも何回か会った際に同様の依頼を受けた。」旨を供述し、X2及びV5もこれに沿う供述をしているところであって、この取引も名義貸しによる架空取引であることは明らかである。 (4) Q5が名義借りを依頼したもの株式会社W7社の代表取締役であるX3は、「平成四年三月上旬から中旬にかけて、B社の総務部長であるQ5から、『何とか期末の三月末までにEの売上げを建てなければならないので、絶対に迷惑を掛けないから名前だけ貸してほしい。B社で責任をもって支払うし、名前を貸してくれれば一年後には一〇パーセント高い価格で転売した形にして利益を出して支払う。この事業は数年先まで続くが、来年は一〇パーセント高い価 ら名前だけ貸してほしい。B社で責任をもって支払うし、名前を貸してくれれば一年後には一〇パーセント高い価格で転売した形にして利益を出して支払う。この事業は数年先まで続くが、来年は一〇パーセント高い価格で売り出すのでその時に名義を借りた物件は転売という形で処分する。一年間名前を貸していただくだけで一〇パーセントの利益が出る。他にも知っている方がいれば何人でも紹介してほしい。 単に名前を借りるだけであり、代金はB社が責任をもって支払う。』などと言われて、名義貸しを承諾し、さらに、私の知人にも同じ話をして名義貸しの承諾を受けてあげた。なお、念のため、名義貸しであることを確認する書面の交付をQ5に求めたが、三月下旬ころ、同人から、名義貸しをした各人の名義をアイペックが借りるものであることを記した三月二六日付け申入書をもらっている。」などと供述し、11名の人物(名称略)も、X3の誘い又は同人の意を受けたX4の誘いを受け、同様に名義貸しを承諾した旨のX3の供述に沿う供述をしている。 これらの供述から、X3ほか一一名が、各自一ないし二戸室、一戸室あたり代金一三〇〇万円ないし二六七〇万円でEを購入したとの合計一四戸室でその代金合計二億九三四〇万円の取引すべてが、名義貸しによる架空取引であることは明らかである。 (四) このようにして、B社では第九期においても当期未処分利益金を六億五五〇三万円(うち当期純利益二億八九一一万円)を計上したが、実質の繰越し損失を含む当期未処理損失は、後記(一〇の4)のとおり更に拡大してしまった。 一〇 各期の公表売上げ、利益、架空取引等についてのまとめ前記九の1ないし7をふまえて、各期の公表上の売上げ及び営業利益、利益処分額のほか、架空取引の売上げ及び利益等、第七期ないし第九期における実際の未処理損失等を見ると、以下のとお ついてのまとめ前記九の1ないし7をふまえて、各期の公表上の売上げ及び営業利益、利益処分額のほか、架空取引の売上げ及び利益等、第七期ないし第九期における実際の未処理損失等を見ると、以下のとおりになる。 1 第三期以降における公表上の売上げと営業利益は、有価証券届出書及び有価証券報告書[甲一五三]によれば、次のとおりである。なお、各期とも、①は総売上げ(商品売上げ分と役務売上げ分の合算額)を、②はこれによる営業利益を、③は営業利益に営業外収益を加算したものから営業外費用や税金等を差し引いた当期純利益であり(前記第一の五参照)、④は利益処分額をそれぞれ示す(ただし、万円未満は切り捨てた数値を表記)。 第三期 ①五四億五一三四万円、②二億四五六六万円、③七二〇五万円、④五四四一万円第四期 ①五二億二九六九万円、②二億〇三一一万円、③四七八一万円、④三四六五万円第五期 ①五〇億〇〇八九万円、②二億一六一三万円、③七一七二万円、④四八五一万円第六期 ①六一億七〇九八万円、②二億四七六六万円、③七七〇七万円、④六一九八万円第七期 ①六八億六五四六万円、②六億三八一二万円、③二億〇五六六万円、④九五七九万円第八期 ①八〇億〇五一二万円、②九億〇九六三万円、③二億五〇六一万円、④一億〇八一八万円第九期 ①九二億九四四一万円、②九億六八八九万円、③二億八九一一万円、④一億一九九九万円なお、④の利益処分額(役員賞与、株主配当、利益準備金の合計)は、第三期以降は利益は発生していなかったのであるから、本来、これらは利益として処分し得なかったもので、その処分額は繰越し損失額を更に増大させるものとして 分額(役員賞与、株主配当、利益準備金の合計)は、第三期以降は利益は発生していなかったのであるから、本来、これらは利益として処分し得なかったもので、その処分額は繰越し損失額を更に増大させるものとして評価すべきである。 2 前記九において、第三期以降における架空取引、又は当該事業年度末までに実現していない取引であると認定したものにつき、計上した売上げ合計額及びそれによる利益合計額をまとめて列挙すると、次のとおりとなる。なお、各期とも、①が架空売上げ合計額を、②が粉飾利益合計額をそれぞれ示す(ただし、万円未満は切り捨てた数値を表記)。 第三期 ①二億六四二一万円、②一億一四七四万円第四期 ①一五億二二〇九万円、②一〇億〇四〇六万円第五期 ①七億五八三八万円、②五億三四四四万円第六期 ①八億七七五〇万円、②六億一〇四七万円第七期 ①五億〇三六八万円、②二億九一一五万円第八期 ①一九億一一三二万円、②一〇億八七一二万円第九期 ①一四億三一九六万円、②七億八六五四万円なお、前記九において認定した架空取引のうち、Jのみが名義貸し人と接触し同人が主として交渉した取引による利益を、各期ごとに見ると、第四期が二億九七〇九万円、第五期が二億六二三一万円、第六期が二億九一〇〇万円、第七期が二億七八五五万円、第八期が一〇億八七一二万円、第九期が六億一五八八万円である。これと前記1との比較から明らかなとおり、第四期以降は、Jの関与の取引による利益は、B社の公表上の当期利益はもちろん、当期営業利益の大半もしくはそれを大幅に超えるものであって、この点だけに着目してみても、B社の店頭登録や黒字計上は不可能ということになる。 3 また、前記1及び2の比較から明らかなように、B社においては、第四期以降は、架空取引によ 幅に超えるものであって、この点だけに着目してみても、B社の店頭登録や黒字計上は不可能ということになる。 3 また、前記1及び2の比較から明らかなように、B社においては、第四期以降は、架空取引による売上げ及びそれによる利益を計上しなければ、税引後の当期未処分利益金がまったく出ない赤字の状態であったのはもちろん、各期の営業利益すら大幅な赤字となる期が多数ある状態であって、店頭登録が不可能であったことはもちろんのこと、黒字を計上することもできなかったと断定できる。 4 そうすると、前掲の有価証券届出書及び有価証券報告書[甲一五三]によれば、第二期における繰越し利益は四四五〇万円(万円未満は切り捨て)であるから、これが一応正確な数値であることを前提として、第三期以降の各期における真実の未処分利益額を算出すると、次のとおりとなる。 その計算は、右四四五〇万円に当該期までの公表上の純利益の合計額(前記1の③)を加えた金額から、当該期までの粉飾利益合計額(前記2の②)とその前期までの利益処分合計額(前記1の④)を加えた金額を差し引いたものである。 これを、第七期について見ると、第七期までの公表上の純利益の合計額は、七二〇五万円(第三期)、四七八一万円(第四期)、七一七二万円(第五期)、七七〇七万円(第六期)、二億〇五六六万円(第七期)の合計額、すなわち四億七四三一万円となり、四四五〇万円(第二期における繰越利益)を加えると五億一八八一万円になる。また、第七期までの粉飾利益合計額は、一億一四七四万円(第三期)、一〇億〇四〇六万円(第四期)、五億三四四四万円(第五期)、六億一〇四七万円(第六期)、二億九一一五万円(第七期)を合計すると、その額は二五億五四八六万円であり、第六期までの公表上の利益処分合計額は、五四四一万円(第三期)、三 五億三四四四万円(第五期)、六億一〇四七万円(第六期)、二億九一一五万円(第七期)を合計すると、その額は二五億五四八六万円であり、第六期までの公表上の利益処分合計額は、五四四一万円(第三期)、三四六五万円(第四期)、四八五一万円(第五期)、六一九八万円(第六期)を合計すると、その額は一億九九五五万円であるから、その合算額は二七億五四四一万円となる。そして、五億一八八一万円から二七億五四四一万円を差し引くと、マイナス二二億三五六〇万円となり、これが第七期における実際の利益処分額であり、裏からいえば同額のプラス未処理損失額である。 同様の計算をすると、第八期の未処理損失額は三一億六七九〇万円、第九期のそれは三七億七三五一万円となる。 第三争点に対する判断一取引の架空性について 1 第二の九の1ないし7において検討したとおり、少なくとも、検討対象とした各取引については、架空取引又はその期に計上し得ない売上げ及び利益であったことは明らかである。 このことは、名義貸し人等の前記供述だけでも明らかであるが、これらの供述は、①キャンセル処理された分とE分を除いて、F社が仕入れ計上をしているものも含めれば、結局のところ、取引対象の商品のほとんどすべてがF社又はL社の在庫扱いとなっていること、②この両社は営業担当の従業員もいないペーパーカンパニーにすぎないこと、③商品の購入に使われた資金は、B社が保証するか又は保証の趣旨で約束手形を簿外で発行した借入れ、あるいはB社やA1個人の資産を担保に入れた上での借入れ等によってまかなわれていたこと等の客観的事実によっても、裏付けられている。 2 被告人両名は、公判において、これらをいずれも架空取引でないなどと供述しているが(A2については、同人自身が作成した弁一七ないし二五の陳述書も含む。)、こ 観的事実によっても、裏付けられている。 2 被告人両名は、公判において、これらをいずれも架空取引でないなどと供述しているが(A2については、同人自身が作成した弁一七ないし二五の陳述書も含む。)、これらの供述は、F社やL社がB社とは独立の存在であることを前提に、これらの会社が在庫を転売処分すれば架空取引ではないとか、B社の力を借りるなどして商品を将来売却するつもりで仕入れていたということを後ろ盾にしているにすぎない。 しかしながら、F社もL社も独力で商品を販売する能力を全く備えていないペーパーカンパニーである上、対象商品も、I4とか一部の絵画のように実在しないものや、D等のように、第四期の時点でB社の本社やB社販社ですら芳しい売上げを上げることができず、遅くとも第七期時点で既に陳腐化していたもので、処分不可能なものが大半を占めていた。そして、F社やL社がこれらを売却するために実際に仕入れた事実は全くないのである。実際に、D等は、B社及びF社(時期自体は証拠上明確ではないが、B社の倒産時とそれほどかけ離れていないと思われる。)の各倒産に至るまで、弁護人が弁論において指摘しているとおり(弁論要旨一七頁参照)、F社等の在庫扱いとなっていて第三者に対して売却等が行われた形跡はない。加えて、F社やL社の資金調達状況及び資金の利用状況のほか、F社やL社の預金の出金には被告人両名の承認が必要であり、Jが無断で資金を使用をすることはできず、B社においては街金融等からの借入れ事実を隠す必要上からF社をしばしば利用していたこと等にかんがみ、F社はB社の支配会社であり、実質的にはB社と同一体の存在であったというべきである。 3 なお、被告人両名は、F社はK1グループに支えられたJの会社であるかのように供述しているが、そのようには到底いえない。仮にそうだと あり、実質的にはB社と同一体の存在であったというべきである。 3 なお、被告人両名は、F社はK1グループに支えられたJの会社であるかのように供述しているが、そのようには到底いえない。仮にそうだとすれば、Jは、自己の会社で巨額の借入れをしては、営業担当の社員多数を擁するB社でさえ売却できない商品とか存在しない商品を購入し続けていたことになる。加えて、L社が転売を受けて購入したとする絵画の代金の原資は、F社の口座から直接又はF社の口座からL社の口座を経てB社へ入金されているケースが多数を占めているのであり、人的にも資金的にもF社とL社とが一体の存在であることは明らかであるが、前記九の4ないし7の架空取引において使用された絵画については、実に第六期の九点全部、第七期の五点全部、第八期の一八点中七点、第九期の九点全部が、B社がF社から仕入れたことになっている。そして、名義貸し人からL社への販売額は、B社から名義貸し人への販売額のおおむね一パーセント増しであるが、F社からB社への販売額とB社から名義貸し人への販売額とを比較すると、第六期から第八期でおよそ五割増しから二倍に及び、第九期に至るとすべて二倍以上で中には三倍にも達しているものがある。そうすると、Jは、自己の会社が保有する絵画をB社へ安価で販売した末に、わざわざ名義貸し人に一パーセントの謝礼を支払いつつ、およそ五割増しから三倍もの値段で再び自己の会社で買い戻していたということになってしまう。さらに、第八期以降についていえば、絵画販売を担当していたI5はA1の直轄部門とされたが、実働者としてはJのみが取り仕切っていたであって、この矛盾はさらに顕著となる。F社やL社が真にB社と独立した会社であるとするならば、自ら多大な損失を被りつつ一方的な利益をB社に与え続けていることになるが、到底考えられ が取り仕切っていたであって、この矛盾はさらに顕著となる。F社やL社が真にB社と独立した会社であるとするならば、自ら多大な損失を被りつつ一方的な利益をB社に与え続けていることになるが、到底考えられないことである。 前記のとおり、F社だけでなく、L社も含めて、これらがB社の支配会社であることは明らかである。 4 また、A2は、F社は法人格としては別人格であり、F社とB社の会計帳簿を連結することはできない以上、F社の在庫やF社名義の借入れをB社のものとして計上することもできないから、B社の在庫や簿外債務となり得ないなどとも供述しているが、単なる詭弁的な言い訳にすぎない。そもそも、B社の在庫や借入れについて、粉飾の手段として他者の名義を借りるなどしたこと自体を本来是正すべきであって、事後的に帳簿処理ができないからといって、それが真実となるはずはない。 なお、F社等の在庫の中に、未だ販売可能なものがあって、しかも販売意思があったとしても、F社等が現実に販売に成功するまでは、売上げとしては実現していないのであって、各期の売上げとして計上すべきではなく、計上すれば、それはやはり架空計上というべきである。 二利益配当の違法性、未処理損失(未処分利益)報告の虚偽性について 1 これまで検討した結果から明らかなとおり、架空取引による売上げや利益は、いずれも該当する期の売上げや利益とはならないものであり、B社においては、第四期から未処理損失が発生し、以後累積増加していたのであり、公訴事実が対象とする第七期ないし第九期においても存在していたこと、したがって、右各期に株主に対して行った利益配当が法令の規定に反して違法であること、また、店頭登録後の第八期及び第九期において、未処理損失が存在するのに、かえって未処分利益金が存在する旨の事実に反する虚偽 って、右各期に株主に対して行った利益配当が法令の規定に反して違法であること、また、店頭登録後の第八期及び第九期において、未処理損失が存在するのに、かえって未処分利益金が存在する旨の事実に反する虚偽の報告をしていたこともまた明白である。 2 ところが、弁護人は、弁論において、①架空取引として主張されているものの中には、取引が完了(完結)しているものもあるから、それについては粉飾部分から除外すべきであるとか、②架空取引に係る売上げの入金について、本件を摘発した側(捜査機関)はほとんど「短期借入金」と認定しているが、別途返済されているもの、B社の破産時に債権として届出がされていないもの、破産手続で債権として否認されたものがあり、これらについては「確定入金」であって、B社には返済義務がないのであるから、利益計上をしていても粉飾性を帯びるものではないなどと主張している。 しかしながら、①については、後日、キャンセル処理されたり、転売を成就させて実取引に移行したものがあるとしても、翌期以降に処理したのであれば、元々実態において架空取引であったものが事後的に処理されたというにすぎず、当該期における利益計上が架空であったことに何ら変わりはない。この①の主張は採用できない。のみならず、架空取引について見ると、第三期及び第四期分の中に翌期以降にキャンセル処理されたものが含まれているにすぎず、また、最終的にF社やL社等のB社の支配する関連会社に引き取らせているものがあるが、実質的にも転売が実現したとみなし得るものは見当たらない。なお、キャンセル処理されているものについては、その全部が第七期より前に公表処理されていたため、公訴事実が対象としている第七期以降の粉飾金額には影響しないことを付言する。 次に、②について検討すると、仮に返済が済んでいるものが のについては、その全部が第七期より前に公表処理されていたため、公訴事実が対象としている第七期以降の粉飾金額には影響しないことを付言する。 次に、②について検討すると、仮に返済が済んでいるものがあったとしても、B社自身が返済したものでない限り、結局は返済した者に対する債務に振り替わるにすぎないし、B社が簿外で資金を調達して簿外で返済すれば、同様に簿外債務が別の簿外債務に振り替わるだけであるから、架空の売上げ分の入金に直接使われた資金原資である債務が返済されさえすれば、「確定入金」として利益になるとの主張は失当であって、到底採用できない。なお、付言すると、本件における犯罪の成否は、粉飾の有無そのものではなく、違法な利益配当であるから、有価証券報告書記載の未処理損失金額が虚偽であるか否かによって決せられるものである。したがって、仮に、F社やL社へ仮装転売された物品をさらに第三者に転売するなどして生み出した簿外の利益によって返済されたのであれば、最終的に収支の帳尻を合わせられることになり、未処理損失の減少をもたらすことがあり得るが、実際には、架空取引の対象商品は実在しないかF社等の在庫として存在していたのであるから、簿外の利益を何ら発生させるものではない。架空売上げ分の入金に充当された簿外債務の返済は、新たに簿外債務を発生させて得た資金によってなされているにすぎないから、債務の返済が一部あっても、利益配当の違法性や未処理損失金額の計算に何ら影響を与えるものではないのである。 さらに、破産手続における債権届出の有無は、債権者と目される者の判断に委ねられる要素が強い。実質はB社の簿外借入金であったとしても、それについてB社が保証しているもの、B社の約束手形が簿外で発行されているもの、E関係のように、比較的資力のある借入れ名義人が別途存在す ねられる要素が強い。実質はB社の簿外借入金であったとしても、それについてB社が保証しているもの、B社の約束手形が簿外で発行されているもの、E関係のように、比較的資力のある借入れ名義人が別途存在するものなど様々であって、債権者と目される者が主張立証のより容易な保証債務や手形債務の履行を求めたり、資力があると思われる名義人自体に対し債務の履行を求めることは十分首肯できるところであって、B社が実質的に債務者本人であることを前提とした債権届出をしなかったとしても、そのことがB社の借入金であることと何ら矛盾するものではない。また、債権認定の有無も証拠関係を異にするその手続における民事上の判断にとどまるのであって、本件刑事事件に関する当裁判所の認定判断に何ら影響を及ぼすものではない。この点も前提から誤った主張で、採用の限りでない。 三被告人両名の架空取引等に対する認識、共謀等について 1 被告人両名は、第二の九で検討した取引等に関して、その架空性を認識していなかったと供述し、殊にJが直接交渉等をしている取引については、同人が自己の利益を図って仕組んで勝手にやったものであるなどと供述している。弁護人は、この供述に依拠して、違法配当及び虚偽報告についての被告人両名には故意がなかった旨を主張している(弁論要旨第二の二の(4)参照)。 2 しかしながら、前記(第二の九の3)のとおり、第五期を中心に(ただし、第七期及び第八期を除く)、被告人両名は名義貸し人と直接接触するなどして架空取引をしているところ、接触時における言動だけに照らしても、被告人両名がいずれも架空取引と十分認識して行動していたことは明白である。名義貸しを依頼した相手方であるP2社株式会社、N社(そのうちP4社の関係分)、R6社、R7社、R8社株式会社等に対して、架空売上げ計上額に見合うB 取引と十分認識して行動していたことは明白である。名義貸しを依頼した相手方であるP2社株式会社、N社(そのうちP4社の関係分)、R6社、R7社、R8社株式会社等に対して、架空売上げ計上額に見合うB社の簿外で発行した保証用約束手形や、迷惑を掛けないなどと約した念書等を交付し、あるいは謝礼や利息を支払ってもいるのである。被告人両名は、このような自らが名義貸し人と直接接触して行った取引ですら、その架空取引性を認めていないが、そのような弁解は到底受け入れられない。 3 そして、被告人両名が直接名義貸し人と接触していない取引についても、遅くとも第四期以降におけるほとんどの取引につき、その架空性を認識していたことは明らかである。以下、その理由について説明する。 (一) K8の証言等(1) まず、初期の架空取引について、B社の営業担当であった前記K8は、「A1は第一期中の昭和五八年一二月ころから上場に執念を燃やしていた。B社では、昭和五九年二月ころ、B社の役員であったG2が経営するR2社株式会社に対し、レーザーディスクの英語学習教材で五四〇〇万円余りの売上げを計上している。A1の指示でこれにかかわっているが、A2に相談したところ、すでにできあがった契約書を手渡してくれた。相手社の常務取締役である高橋幸雄と打ち合わせるようにも言われたので、そのとおりにして話を詰めた。それは、売上げを計上してもB社が商品を在庫として預かる、転売先をB社が見付けるという約束の下に販売したものである。このような約束内容と、販売量の多さから正規の販売かどうか疑問を持っていた。その後、同年中にW8株式会社についてもA1からの指示で同様の約束の下に二一〇〇万円余の売上げを計上した。結局、この二社が独自に販売先を開拓したことはなく、私が苦労して転売先を見付けて処理するか、キ その後、同年中にW8株式会社についてもA1からの指示で同様の約束の下に二一〇〇万円余の売上げを計上した。結局、この二社が独自に販売先を開拓したことはなく、私が苦労して転売先を見付けて処理するか、キャンセル処理してその分は別の販売先を見付けて消化した。それにもかかわらず、その後も、A1からは、空売りとか形だけという明確な指示こそなかったが、『消化できるところがほかにないか。どこかあるだろう。売上げを上げろ。』などと指示され、私は第四期にB社を退職しているが、第三期までの間に、W8株式会社、M3社等に対し、同様の約束の下にC等で多額の売上げを計上していた。」旨証言している。 (2) このK8証言は、同人が挙げる取引先会社の中には、教育映像用ソフト等の販売とはまったく無関係の会社が含まれていること、それにもかかわらず取引量は極めて多量であること、G2はB社の役員かつ株主であるところ、同人が代表を務める会社を相手に、K8が前記のような約束付きの取引を勝手に行うとは考えられないこと、第三期において、A1はP2社株式会社に関して、A2は株式会社P9社に関して、同様の取引をしていることなどに照らし、被告人両名の架空取引につき認識があった旨述べる部分は十分信用できるというべきで、このことは大筋でG1及びK2の各証言及び甲三三三等によっても裏付けられている。 (3) なお、K8証言中の取引先との約束内容を考えると、このような取引のすべてが架空取引と断定できるかはともかくも、B社が、商品販売後も転売の義務を負い、それができなければキャンセルとなる取引であるから、転売が成功した時点で初めて実現する取引と評価するのが相当である。そして、K8証言によれば、被告人両名が、K8が挙げる全取引について右のような約束が存在したと認識していたかどうかはともかくも、B社 、転売が成功した時点で初めて実現する取引と評価するのが相当である。そして、K8証言によれば、被告人両名が、K8が挙げる全取引について右のような約束が存在したと認識していたかどうかはともかくも、B社の売上げ中にはそのような約束が付着した取引が存在するという認識があったこと、その約束はA1からの意向に基づくものであったことは明らかである。 (二) Jの証言第四期以降の架空取引については、A1又はA2が直接関与しているものや、第九期におけるE分を除くと、Jが名義貸し人と交渉したか、K1グループ関連のペーパーカンパニー等を利用したものである。これらの取引に関して、Jは、名義貸し人との交渉経緯、内容等につき、第二の九の1ないし7にその要旨を掲記した名義貸し人の各供述におおむね沿った内容の証言をした上、K1グループのペーパーカンパニー等を利用するなどして架空取引を行ったこと等の自己責任を認めた上で、被告人両名がどのようなかかわり方をしたかなどについて、大要、次の(1)ないし(7)のとおりの証言をしている。 (1) A1の指示に従って、あるいはA1の指示の下にA2と相談して、私は架空取引を行っていた。F社名義等でK1グループ等から借り入れた金については、実質的にはB社が借主であり、簿外の借入金である。A1がK1夫妻等の融資元と借入れ交渉をして借りており、貸主には高額の裏利息を支払っていた。 (2) 第四期では、第五期に入った昭和六二年四月ころ、A1から「B社の売上げが足りなくて困っている、名義を貸してくれる会社を紹介してもらいたい。五億円の売上げを建てたいが、二億円はP8社に頼むので、残りの三億円分をJの知っている会社に名義を借りて売り上げてもらいたい。三社くらいに一億円ずつくらいを振り分けて見付けてもらいたい。総額五億円の引取り先は、 を建てたいが、二億円はP8社に頼むので、残りの三億円分をJの知っている会社に名義を借りて売り上げてもらいたい。三社くらいに一億円ずつくらいを振り分けて見付けてもらいたい。総額五億円の引取り先は、とりあえずP7社に頼んであるのでスルーするだけだ。」などと指示された。そこで、R5社ほか二社に依頼した。 (3) 第五期では、A1から「B社の売上げが足りないので売上げ先として名義を貸してくれる会社を探してくれ。名義貸し料として一パーセントの謝礼をする。F社が受け皿になるので、在庫となるようなリスクはなく、迷惑を掛けないから頼む。」などと指示された。そこで、絵画につきR9社に依頼した。昭和六二年の一〇月終わりころ、A1から「B社の売上げがちょっと足りないので、I4の売上げ先として名前を貸してくれる会社を紹介してもらいたい。金額は八〇〇〇万円くらいでいい。できれば四月に協力してもらったなんかがいいんじゃないか。」などと言われ、さらに、第五期末が過ぎた昭和六三年四月ころ、A1から「R3社にまたI4の売上げ先として名前を貸してもらいたい。決算対策で、売上げの全体的なバランスとして、絵画も売れてる、I4も売れてる、Dも売れてるというような形にしないといけないんだ。だから、今回は、金額的には三億円くらいでI4とD両方をR3社にお願いしたい。」などと言われたので、私はその都度R3社に依頼した。 (4) 第六期も、A1から「今年度末も売上げが多分足りないと思う。先行して、絵画で三億円くらいの売上げを建てておきたい。売上げ先として名義を貸してくれるところを探してくれ。手数料は売上げ金額の一パーセントを支払う。」などと指示され、R9社との取引を行った。期末にも、A1から「売上げが一億円くらい足りない。また大至急名義貸しをしてくれるところを探してくれ。」と言われ 。手数料は売上げ金額の一パーセントを支払う。」などと指示され、R9社との取引を行った。期末にも、A1から「売上げが一億円くらい足りない。また大至急名義貸しをしてくれるところを探してくれ。」と言われたので、R9社で一点追加した。ただ、この期に使用した絵画は前に使用したものを改題したもので存在しないと、その後分かった。そうすると、最終的にも実現する見込みがないので、A2に対し「聞いていることと違う。」と言ったが、A2が何も答えなかった。A1は、同様に尋ねると、「今は決算期でそんなことを言ってる場合じゃない。株式を公開するために売上げ目標を達成しなければならないんだ。細かいことをいちいち言わないでくれ。」などと一喝されてしまった。第七期に入った平成元年五、六月ころ、第六期に売上げを建てた絵画九点について、A1に対して「F社の仕入れ先にしたU3社についても仕入れ先がなければならない。」と言うと、「U3社は設立したばかりだから大丈夫だ。」などと言われた。裏会計を意味するB社勘屋で架空の領収書を買ってほしい旨頼んだが、A1から「自分で探しなさい。」などと言われてしまった。そこでG6の知人である「バンヤ」と称する絵画ブローカーから台湾在住のT8という人物を紹介されたところ、この人物には逮捕歴がなく絵画の仕入れ先としても怪しまれることはないと、A2が確認してくれた。そこで、A2が入手すべき領収書の金額を決めてくれたので、絵画九点を代金合計二億一八二〇万円で売却した旨の内容虚偽の領収証(U3社あてのものも含まれる)をT8から調達した。 (5) 第七期の平成二年二月ころ、A1から「今期も絵画を使って四億円くらいの売上げを建てる。去年使った七点の写真を使う。絵画があったらそれを使う。ないから前年度使ったものをまた利用するんだ。」などと言われた。ただ、A2から「 ころ、A1から「今期も絵画を使って四億円くらいの売上げを建てる。去年使った七点の写真を使う。絵画があったらそれを使う。ないから前年度使ったものをまた利用するんだ。」などと言われた。ただ、A2から「売上げを水増ししても、物もあって金も入金されていれば刑事責任は問われない。」という趣旨の話を以前聞いたことがあったので、安いものでいいから絵画を購入してほしいとA1に頼んだところ、「Jにまかせる。」と言われた。そこで、絵画ブローカー「バンヤ」を通じて台湾から中国絵画を仕入れることになり、私がその手はずをした。それで、F社とT8の間に一社かませろとのA1の指示があったので、V1の承諾を得て、B社がU5社及びF社を経由して仕入れた形とすることになった。 また、A2からは「四億円は二月と三月に分けて計上します。」などと聞いた。二月分の一社はR9社にしたが、一社だけだと不自然なので、三月分はK1夫婦に頼めば気軽に利用させてくれるのでP7社を利用した。 (6) 第七期中の平成二年二月ころ、I5の第八期の予算書を作るようにA1から指示され、A2からも見本を示されて一〇パーセントくらい上乗せして転記すればよいなどと言われたが、現実の絵画売買ができないので辞退したところ、従来どおり架空取引を立てて伝票を作ればよいということになった。それで、期末時期に一挙に架空取引を計上するのではなく、計画的に計上するため、A2から同人が作成した第八期の予算表をもらったので、第八期はそれを頭に置いて動いた。しかし、平成二年七月以降は、予算を大幅に上回る架空取引を行っている。毎月、翌月の架空取引金額についてA2から指示があったので、それに沿って行ったものであった。名義貸し人の承諾を得た段階で、A2にその旨報告していた。A1は、株式の公開後も「B社全体の売上げが下がることがあってはい 空取引金額についてA2から指示があったので、それに沿って行ったものであった。名義貸し人の承諾を得た段階で、A2にその旨報告していた。A1は、株式の公開後も「B社全体の売上げが下がることがあってはいけない。株価を維持するためにも一〇月分としてB社全体の売上げをまとめておかなければいけない。」などと言っていた。この期は、名義貸し人になってもらったU7社やU6画廊から現実に仕入れた絵画も使用している。このように現実に仕入れをしたのは金融資産として運用できるというメリットがあるからで、購入前に写真を金融会社に持ち込んでいくら融資を受けられるかを聞いた上で、A1にそれを報告して絵画の購入を決めてもらった。時間や資金がない場合は、現物がない絵画を使用した。例えば、W1社との取引に使用した絵画については、A1が絵画の写真を見て、「こういうミケランジェロ風の絵画は金額をいくらにしても分からないんだから、これを使えばいいんじゃないか。」などと言ったので、これを三億円の架空取引に利用した。 第八期末における架空取引の絵画は、平成三年三月ころ、A1から「二月分として五億円の絵画の売上げを計上してもらいたい。」などと指示され、適当な絵画がなかったことから、リスト中から選定した絵画二点のレプリカを使用した。C等についても、平成二年七月ころ、A1から、「絵画だけではなくてDも期末とかそういうことじゃなくて、通常の月にコンスタントに売上げを建てる必要がある、売上げ先として名前を貸してくれるところを探すように。」などと指示され、第七期にも頼んだU4社に依頼したものである。 (7) 第九期における絵画の架空取引は、第八期とまったく同様で、A2からの指示に従って行っていた。Eに関しては、平成三年九月に、A1から「九月の売上げのために、海外での不動産事業が非常に順調に推移して ) 第九期における絵画の架空取引は、第八期とまったく同様で、A2からの指示に従って行っていた。Eに関しては、平成三年九月に、A1から「九月の売上げのために、海外での不動産事業が非常に順調に推移しているということを証明するために、Eの二期目の分譲販売をやらなきゃいかん。名義を貸してくれる人を探してもらいたい。内々で三期目の分譲時には買い戻す。H5社に対するローンの名義を貸してもらいたい。できれば頭金を入れてもらえると、半年間で五〇パーセントの利益になるから。それ以降の月々の支払はまったくかからない。」などと指示された。 (8) 以上のとおりであって、これらの証言のとおりであれば、Jが関与した架空取引のすべてがA1の指示に基づくものであったことと、少なくとも第六期以降のほぼすべての架空取引につきA2が架空であることを認識していたことになる。 (9) そこで、J証言の信用性について見ると、JにとってはB社やF社が倒産してしまった後になって、現実の取引を架空であると供述すべき何らの理由も見当たらず、同人は、自らに不利益な内容のことも交えて自己の責任を認めている上、その証言内容は、具体的かつ詳細で、「T8」なる人物に関する部分のようにJが殊更に虚偽の事実を作出したり、捜査官が誘導することのおよそ困難なものが多数存在する。加えて、J証言は、前記の名義貸し人の各供述、G1やK2等B社関係者の証言や供述、M6社、M5社、P1社ら金主の供述によっても裏付けられているほか、銀行関係の調査結果、B社及び関連会社の帳簿類、A1及びA2の自筆サインがある架空取引に関するF社からの出金等についての支払依頼書、約定書、覚書、契約書等の多数の証拠によって裏付けられており、その信用性は極めて高いということができる。なお、当裁判所においても、証拠調べの最終段階において、J F社からの出金等についての支払依頼書、約定書、覚書、契約書等の多数の証拠によって裏付けられており、その信用性は極めて高いということができる。なお、当裁判所においても、証拠調べの最終段階において、Jに従前の証言内容の真偽を念のために直接確認したところであるが、その証言態度等に照らし、信用性の高さはいささかも揺るがないところである。 (三) その他の証拠次に、視点を変えて、J証言以外の証拠によって認め得る事実を中心に、Jが架空取引を勝手に行った可能性があるか、裏を返せばA1及びA2が架空取引を認識していなかった可能性があるか否かを検討する。 (1) まず、J証言以外の証拠によってすでに認定している事実又は認定し得る事実、並びにこれらの事実から推認し得る事実ないし事情を列挙してみると、①A1やA2は自ら、Jが行ったと同じ手口の名義貸し人に依頼するなどして架空取引を行っていた事実(第二の九の3の(四))、②殊にA1については、第四期において、少なくともN社分の総額約一〇億円の借入れについて、K5に対し自ら名義貸しの依頼を行っているところ(第二の九の2の(二)、(三))、これは、B社が簿外でOから受ける融資をN社をダミー会社として売上げ名目で入金するというもので、第五期以降のF社とかL社をダミー会社に仕立てた架空取引の手口とまったく同じであること(第二の九の3の(一))、③B社は、実際には、公表上の利益計上とは異なり、架空取引による利益計上がなければ、毎期赤字を計上せざるを得ず巨額の繰越し損失を抱える状態であった事実(第二の九の1の(四)、2の(七)、3の(八)、4の(六)、5の(五)、6の(五)、7の(四))、A1は、経理部門の責任者であるG1やK2から月次決算の報告等を受け、あるいは事業本部長等から逐次報告を受けるなどしていた 、2の(七)、3の(八)、4の(六)、5の(五)、6の(五)、7の(四))、A1は、経理部門の責任者であるG1やK2から月次決算の報告等を受け、あるいは事業本部長等から逐次報告を受けるなどしていたこと[G1及びK2の各証言]、そのため、A1が右の逼迫した経済状態について認識しており、B社支配の赤字を計上し続ける関連会社の決算内容に関しても当然報告を受けて認識していたと推認し得ること、また、代表取締役としてB社の店頭登録に最も執着していたのであり[K8の証言等]、A1にこそ架空取引による売上げや利益を計上すべき動機があったと推認し得ること、④Jが主になって取引先との交渉をした結果実現した架空取引による売上げは、極めて多額に及び、それがなければB社は第四期以降毎期赤字計上をせざるを得ない状態だったのであり(第二の九の2ないし7)、また、A2は常務取締役等としてB社とF社両社の資金繰りの予定を立てるなどしてA1に報告していたこと[甲二二七、二四六、二四七、二五三、二五九、二八七等]、そのため、被告人両名が右のような状態にあることに気付いていたと推認し得ること、⑤F社及びL社はB社の支配会社であり、架空取引はB社のみが一方的に巨額の利益を得て、反対にF社等は莫大な損失を被るのであるから、Jは、A1の意向を酌んだ上でF社等を使っての架空取引を行っていたと推認し得ること(第三の一の3)、⑥架空取引の名義貸し人は、融資元となったR6社等の一部例外を除くと、自らの支出によって売買代金の決済を一切行っておらず、F社等に入金されたB社の簿外の借入金によって決済されていたところ(第二の九の1ない7の各架空取引の代金支払)、F社の資金支出については、その通帳や銀行印をA2が管理していた上、A2及びA1からの承認サインを必要とし、実際に一部例外を除けばほぼ事前に ていたところ(第二の九の1ない7の各架空取引の代金支払)、F社の資金支出については、その通帳や銀行印をA2が管理していた上、A2及びA1からの承認サインを必要とし、実際に一部例外を除けばほぼ事前に承認を受けていたという事実[乙八、一〇、一一、甲二三〇、二五二、二五四、二五八、二五九等]、⑦Jは、自分が設立したW1社等の会社を利用した一部例外を除くと、名義貸し人に対しては、名義借り料や利息等の謝礼を支払っているところ、その支出に際しても、A2及びA1が、支払先、支払額、支払理由等を記載させた支払依頼書にサインし、承認を与えていた事実[⑥に関する証拠と同一]、⑧第七期末ころにA2が作成していたメモ[例えば、甲二三七の枝番号4、二五三、二五六等]には、いずれも、導入資金がいつから使えるか、どう使うか、どこに流すかなどとの記載があり、このメモと共に保管されていたK2作成でA2あての資金振り込み依頼メモには、どこへいくら振り込んでほしいとの内容の記載があるところ[例えば、甲二三七の枝番号5、二五六]、このメモは、その内容からして、B社が簿外借入れによって得た資金を、D等の売買代金の決済に見せかけて、B社に入金させるためのものと推認し得ること、⑨殊に簿外借入れが巨額に膨れあがってから以降は、B社とF社両社の資金需要は増大しており、架空取引において売上げ金額と仕入れ金額をどのように設定するかによって、両社へ簿外借入金がいくら配分されるかが決まるのであって、この設定は重要なことであり、両社の資金需要に従って計画的に行う必要があったことがうかがえるところ、資金繰予定表を作成するなどしてA1に報告していたA2の存在を抜きにして、架空取引を行うのは非常に困難であったと十分推認し得ること、⑩キャンセル分やEを除くと、B社の支配するF社及びL社が、最終的に架空取 定表を作成するなどしてA1に報告していたA2の存在を抜きにして、架空取引を行うのは非常に困難であったと十分推認し得ること、⑩キャンセル分やEを除くと、B社の支配するF社及びL社が、最終的に架空取引の対象商品を引き受けているのであって(第三の一の2)、このことが架空取引に起因することを、被告人両名が認識するのは余りにも容易であると十分推認し得ること、⑪I4はまったくの架空商品であり(第二の九の2の(六))、代表取締役であるA1はもちろん、常務取締役等として会社経営に深く参画していたA2が、このことを知っていたと十分推認し得ること、⑫Jが名義貸しを依頼した相手方であるR5社や株式会社R5社についても報酬を支払っているが、これについては帳簿上はA1に対する「仮払金」として処理されているところ[甲六一、一九九、二〇〇]、A1がこれを名義貸し人に対する報酬であると当然に認識していたはずであると十分推認し得ること、⑬架空取引で使用した絵画の中には、ノンバンクからの借入れの際に担保として使用したものが含まれていたが、株式会社M6社からの借入れはA1自身が保証人となってH6社名義で融資手続をしており[甲二二]、また、第九期末にA1が名義人となってP1社からの借入れ分についての返済猶予の担保として差し入れた絵画(題名「花鳥図」等五点)は、既に架空取引に使用していたもので、B社が保有し得ないものであること[甲一五]、⑭架空取引に使用した絵画の一部については、A2が保管していた「F社絵画販売実績表」と題する書面[乙一一の資料⑭]には、「フェイク」すなわち偽絵画であることを意味する記載があること、⑮U4社に対して売上げを計上した第七期及び第八期においては、C及びDは、すでに陳腐化したデッドストック商品となっていたところ(第二の二の1)、これらの大量売上げの計上 ことを意味する記載があること、⑮U4社に対して売上げを計上した第七期及び第八期においては、C及びDは、すでに陳腐化したデッドストック商品となっていたところ(第二の二の1)、これらの大量売上げの計上があること自体が不自然であり、A1ら会社経営者がこのことに気付かないはずはなく、他方JがB社以外には何のメリットもないこのような架空取引を行ったのはA1らの意向に沿ったものと推認できること、⑯Eに関しては、A1又はA2がいずれも相当部分の架空取引に関与している上、K3、Q5繁、Jらもこれに携わっているものであり、いわばB社の会社ぐるみで行われていたものであり、また、この購入に係る頭金やローンの支払に使われた金は、H4を通した上で支払われているところ[甲一〇一]、A1及びA2はこれらの事情を十分認識していたと推認し得ること、以上のとおりである。 (2) これらを総合すれば、被告人両名が、第二の九で検討した取引等に関して、Jが直接交渉等をしている取引も含めて、その架空性を認識していたと十分いい得る。 4 そこで、次に、被告人両名が、架空性の認識に関して、公判が始まる以前においてはどのような供述をしていたか、その信用性はどうかについて、念のために検討することとする。 (一) 本件発覚後間もなくの時期におけるA1供述A1は、平成四年八月中旬ころホテル・ニューオータニで開催されたB社の役員会において、役員及び監査法人の公認会計士らに対し、架空取引や簿外債務の存在について、おおむね認める発言をしていた。すなわち、この役員会に出席した公認会計士G4は、「A1は、『実は当社には簿外債務がある。前々から少しづつ簿外債務をやっていた。簿外の借入れはF社を通じて調達した。会社のためにしたことだ。借り入れたお金は、Dを会社等に売った際に、その売掛金として使 は、『実は当社には簿外債務がある。前々から少しづつ簿外債務をやっていた。簿外の借入れはF社を通じて調達した。会社のためにしたことだ。借り入れたお金は、Dを会社等に売った際に、その売掛金として使った。』旨説明し、また、その際、A2が『簿外債務額は三四億円くらいになる。』旨述べた。」などと供述をしている[甲一四三]。この供述は、K2作成のメモ[甲二八六]と符合し、A2作成の「B社簿外債務明細表」と題するメモ[甲二八八]によって裏付けられている。 また、A1は、N社を利用した架空取引について、証券取引等監視委員会からの事情聴取に対し、「昭和六二年に入り、当社の資金繰りがかなり苦しかったため、M4社から三億円の融資を受けることになったが、M4社から直接融資を受ければ、当時取引銀行から融資限度枠一杯に融資を受けていた関係で、取引銀行から融資をストップされるおそれがあったので、Dの売買代金として融資を受けることにした。まず、M4社からいったんN社に借りてもらうことにして、B社がM4社に保証として約束手形を簿外で差し入れたが、N社から直接借り入れる形にもできないので、N社に対するDの売上げ三億円分を計上し、その代金の決済としてB社に受け入れた。その具体的な手続は、元々M4社からお金を受け入れることから始まった話なので、経理責任者のG1に担当させた。第四期におけるN社及びP7社との間の取引は、Oの土地建物の売却資金を借りるために行った取引である。Oからの借入れにB社の名前を直接出せないことから、N社及びP7社の名前で借りることになったが、どうせなら売上げを多く計上できた方がいいので、形式上はN社及びP7社を商品の売り上げ先としてその売買代金を回収するという方法でその資金を導入した。売上げ金額は導入する資金の額に合わせて、私が決定していた。その後 げを多く計上できた方がいいので、形式上はN社及びP7社を商品の売り上げ先としてその売買代金を回収するという方法でその資金を導入した。売上げ金額は導入する資金の額に合わせて、私が決定していた。その後、K5とトラブルが起こり、同人名義で借入れを続けることができなくなったため、私がQ2に直接相談したか、J経由であったか明確ではないが、『どこか紹介してほしい。』と頼み、Q2の知り合いの会社である丸忠、ダック、P5社に名義を移すことになった。しかし、一年以内にDを売る約束になっていたのに売れなかったため、P6社の名義を借りて債務を更に移した旨の報告を受けた。」旨供述している[乙七一、七二]が、これは前記認定事実(第二の九の2の(五)の(2)ないし(5),同(六))と基本的に合致するもので、十分信用できる。 そうすると、第二の九で検討した取引についてその架空性を認識していなかった旨のA1の公判供述は、責任逃れのための虚偽の弁解であると断ずることができる。 (二) 捜査段階におけるA2の供述(1) A2は、捜査段階における逮捕、勾留中の検察官の取調べに対し、「B社ではF社を利用して架空売上げを計上し、粉飾決算を行っていた。F社はA1が実質的に支配する会社であり、私はA1からの指示でB社の資金繰りとF社の資金繰りを総合的に検討していた。 架空取引の金額を除けば、実際は、B社が赤字の状態であることもよく分かっていた。利益がないのに株主に配当したり、虚偽記載内容の有価証券報告書を関東財務局に提出したりしたのは、A1の指示に従ったものである。」旨述べて、B社における架空取引等の実態、これらに対する自己及びA1の関与について、詳細に供述していた(乙二ないし一八)。 (2) ところが、A2は、公判においては、この自白供述について、「身柄勾留中、検事から耐え ける架空取引等の実態、これらに対する自己及びA1の関与について、詳細に供述していた(乙二ないし一八)。 (2) ところが、A2は、公判においては、この自白供述について、「身柄勾留中、検事から耐え難い言動をされたため、不本意ながら調書にやむなく署名指印した。」などと述べて、自己の検察官に対する供述調書の内容は事実に反する旨供述したり、自らの反論内容の陳述書(弁一七ないし二五)を提出している。 そこで、以下、A2供述の信用性について検討してみる。 (3) まず、自白供述は、全体的に具体的かつ詳細であるところ、A2は自ら深く関与した取引等については詳細に述べる一方で、関与が薄かったり知らなかった取引等についてはよく分からない旨を区別して供述していること、供述内容は自然で格別無理が感じられないこと、名義貸し人ら関係者の供述内容、K8、J、G1、K2ら関係者の証言内容、A2自身が作成した資金繰予定表、メモ、支払依頼書等の書類、銀行調査の結果やB社及びその支配会社の帳簿類などの証拠によって裏付けられていること、これらの諸証拠によりすでに認定した各事実とほぼ合致すること等々の事情がある。 他方、A2の公判供述には、F社やL社等のB社の支配する関連会社がいかなる役割を果たしたか、B社の財務状態についてどのように理解していたかなどについて、常務取締役等の地位にありB社等の経営に深くかかわってきた者としてはおよそ信じられないほど不自然な内容や、経理関係の職務経験が長いことから数値の誤記や矛盾に拘泥した内容、物的な証拠に照らしてもまったく不合理極まりない内容が散見される。 (4) なお、A2は、B社の倒産から間もない時期に、在宅のまま警察官から受けた取調べにおいても、B社では粉飾決算を行っていた旨を自供していたことがうかがえるところ(乙六四参照) 容が散見される。 (4) なお、A2は、B社の倒産から間もない時期に、在宅のまま警察官から受けた取調べにおいても、B社では粉飾決算を行っていた旨を自供していたことがうかがえるところ(乙六四参照)、A2及び弁護人は調書の一部が差し替えられているのではないかなどと指摘している。しかし、供述調書自体の体裁や内容からして指摘のような形跡はまったく認められない上、捜査機関が未だ事案の全容も分からない初期の段階で、ごく一部の供述調書だけをねつ造すべき理由など考えられないのであって、警察官X5の証言どおり、A2が供述したとおりの内容が録取された供述調書といい得る。 (5) もっとも、A2は、逮捕勾留された初期段階の取調べにおいて「粉飾決算」について否認し、その後自白に転ずるという経緯をたどっている。そして、A2は、自白に転ずる前から選任していた弁護人から接見を受けていたのであって、自供調書に署名等をした経緯等につき、「私は、A1と話し合うなどしてそれに沿った主張を行ってきたが、元々経理マン出身で性格的にも手堅く慎重な性格だと思っており、そのような私の目から見れば、絵画の売上げはとてもまともなものといえないことはよく分かっていた。今回逮捕され、自分としてもこれ以上不合理な主張を続けたくないという気持ちが日増しに強くなってきたし、面会にきてくれた弁護士からも、『事実をきちんと話した方がいい。自分の立場をきちんと説明した方がいい。』などとアドバイスを受けた。自分から積極的に粉飾決算に加担した訳ではなく、A1の指示によりやむを得ず関与したにすぎないので、そのことを含めて、事実をありのままに話すことにした。」などを内容とする供述調書にも、署名指印している(乙六六参照)。A2は、この供述調書に署名等をした理由について、何ら合理的な説明をしていない。 以上の めて、事実をありのままに話すことにした。」などを内容とする供述調書にも、署名指印している(乙六六参照)。A2は、この供述調書に署名等をした理由について、何ら合理的な説明をしていない。 以上の検討結果によれば、A2の逮捕勾留中における自白供述は十分に信用できるというべきである。これによれば、B社では、設立初期から、未実現の取引による利益を先計上することが行われていたこと、第四期以降は巨額の簿外債務を発生させ、架空取引によりその導入を行っていたこと、A2は、これらの状況を十分認識しつつ、一部の架空取引についてはA1の指示により自ら関与し、殊に第七期以降については、B社を存続させるため、A1から逐次指示を受ける中で、Jと詳細に打ち合わせた上で、ほぼすべての架空取引につき関与していたこと等が明らかであり、すでに認定した事実とも符合している。したがって、これらを否認するA2の公判供述は、ためにする弁解で虚偽であるというべきである。 5 そうすると、被告人両名は、第二の九で検討した取引等に関して、その架空性を認識しており、加えて、本件の違法配当及び虚偽報告について故意があったことは明らかというべきであり、これまで検討した、被告人両名のB社における立場や各場面での被告人両名の言動に照らせば、本件犯行は被告人両名の共謀に基づくものと断ずることができる。 四未処理損失金額の不知等の主張 1 第一回公判における罪状認否の内容(第一の二参照)にかんがみ、また、被告人両名がB社の会社規模等からして取引のすべてを知悉していたとは考えられない旨の弁論の内容(弁論要旨第二の一の(1)参照)にかんがみ、次に、被告人両名が粉飾の実態をどの程度知っていたか、その程度はいかなる意味があるのかについて検討する。 2 すでに認定した事実も含め、関係証拠によれば、①B 論要旨第二の一の(1)参照)にかんがみ、次に、被告人両名が粉飾の実態をどの程度知っていたか、その程度はいかなる意味があるのかについて検討する。 2 すでに認定した事実も含め、関係証拠によれば、①B社では、第一期以降、未実現の取引による利益の先計上を繰り返していた上、第四期に巨額の架空取引による売上げを計上したのを始め、その後も多数、多額の架空取引による売上げを計上しており、これらはA1の意向に基づくものであって、被告人両名がすべての架空取引の詳細を知っていたかどうかはともかくも、これら多数、多額の架空取引による売上げの計上をしていたこと自体は十分に認識しており、少なくとも第七期以降の架空取引については、被告人両名及びJが打ち合わせた上で行っていた(E分を除く)こと、②その入金原資として、B社では、破産に至るまで、保証したり又はその趣旨で約束手形を簿外で発行するなどして融資を受けては、これを借入金としてではなく売上げとして入金、計上していたもので、債務を雪だるま式に増やして、毎期実質欠損を増大させていたこと、この欠損は、あくまで、これまでに検討したB社の架空取引による売上げ入金等を否認して求められる分にとどまり、実際にはそれをはるかに超える額の簿外借入金があり、それによって得た簿外資産は、架空取引の売上げとしてB社に入金されるほかにも、架空取引の名義貸し人に対する報酬(利子、手数料名目を含む)、簿外債務借入れに伴う手数料、その利息等により費消されていて、現実の損失は、公訴事実記載の未処理損失をはるかに超える膨大なものであったこと、③A1はもちろんのことであるが、B社の手形発行に関与し、B社及び債務を受け入れる会社のF社両社の資金繰り予定を立てて、F社にプールした借入金の支出につき承認して、A1に報告するなどしていたA2こそが、最もよく知り ことであるが、B社の手形発行に関与し、B社及び債務を受け入れる会社のF社両社の資金繰り予定を立てて、F社にプールした借入金の支出につき承認して、A1に報告するなどしていたA2こそが、最もよく知り得る立場にあったこと等が明らかである。 3 これらの事実からすれば、被告人両名とも、B社が巨額の簿外負債、未処理損失を抱えていた実態を、十分に認識していたのは明らかである。もっとも、本件各罪が成立するための主観的要件は、違法配当に関しては、真実はB社に配当すべき利益がないことを認識することであり、虚偽報告に関しても、記載内容が真実に反することを認識していることであって、個々の取引の粉飾性をすべて認識している必要や、未処理損失の正確な金額を知っている必要はないのである。これらの一部に認識を欠くものがあったとしても、それは単なる情状にすぎない。したがって、仮にも、被告人両名において、取引の存在やその架空性につき一部認識を欠くものがあったり、未処理損失の金額を正確に認識していなかったとしても、本件各罪の主観的要件として欠けたり、故意を欠くことにはならない。 五税金を控除すべきとの主張について弁護人は、架空利益の計上が真実であれば、その分の利益が存在しないことになるから、法人税等の公租公課は減額されることになるので、その減額分を未処理損失等の総額から差し引いて算定すべきである旨を主張している(弁論要旨第一の2の四参照)。 B社では、その破産管財人である弁護士X6ほか一名作成の報告書[甲三四八]によれば、当該期末後に既に法人税等が納付済みで、そのころ会社財産がその分減少していたことに変わりはないところ、B社の破産後に、破産管財人からの上申に端を発し国税通則法二五条に基づく税務署長による調査が実施され、その結果、第五期から第九期の五年 、そのころ会社財産がその分減少していたことに変わりはないところ、B社の破産後に、破産管財人からの上申に端を発し国税通則法二五条に基づく税務署長による調査が実施され、その結果、第五期から第九期の五年分について利益がなかったとして、職権による更正決定がされ、平成六年七月から平成七年一二月にかけて、国税につき六億〇七九六万円余りが、都道府県税につき三億九三六〇万円余りが、市町村民税につき二五五四万円余りが還付されており、その総額は一〇億二七一一万円余りである。 しかしながら、法人税の更正・還付の制度は、国税通則法二三条ないし三〇条、七〇条によると、過納付であることが明らかとなった場合でも、税額が減額となるのは、法定申告期限から一年以内に更正請求をして、税務署長等の更正決定を得ることを要し、その更正決定がない限り、法人税等の額が当然に減額されるものではない。法人に対する地方税については、地方税法五三条の二、五五条等によると、国の税務官署による更正を受けたことに伴い、その通知をした日から二箇月以内に限り、道府県知事に対して法令に定める更正請求をしたことが前提となる。本件では、右認定のとおり、更正請求の期間経過後に、破産管財人の上申をきっかけに、税務署長の調査が開始されて、職権により、法定の五年間に限って更正決定が行われたにすぎないのであるから、過納付による還付の事実は、本件犯行が既遂となった後の単なる一事情にすぎないというべきで、判示各罪の成否やその内容につき異なった判断をする必要はないのである。 第四結論以上のとおりであって、判示の違法配当、虚偽報告が、被告人両名の共謀により敢行された事実を、いずれも優に認定することができる。 [法令の適用]罰条等被告人両名の判示第一の各行為は、平成七年法律第九一号による改正前の 違法配当、虚偽報告が、被告人両名の共謀により敢行された事実を、いずれも優に認定することができる。 [法令の適用]罰条等被告人両名の判示第一の各行為は、平成七年法律第九一号による改正前の刑法(以下、刑法については同じ)六〇条、平成五年法律第六二号による改正前の商法四八九条三号(四八六条一項、二九〇条)に、判示第二の各行為は、刑法六〇条、平成四年法律第七三号による改正前の証券取引法一九七条一号の二、二〇七条一項にそれぞれ該当刑種の選択いずれも懲役刑を選択併合罪の処理被告人両名の判示第一及び第二の各罪は、刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により刑及び犯情の最も重い判示第一の三の罪の刑に法定加重未決勾留日数算入(被告人A2の関係で)刑法二一条訴訟費用の負担刑訴法一八一条一項本文[量刑の理由]一本件は、B社の代表取締役等であった被告人両名が、架空売上げで利益を計上した粉飾決算を行い、三事業年度にわたって、株主に対する違法な利益配当をした商法違反の事案と、店頭登録後の二事業年度について、虚偽記載の有価証券報告書を大蔵大臣へ提出した証券取引法違反の事案から成る。 二被告人らが本件を敢行するに至った経緯等については、事実認定の補足説明の項において、詳述したとおりであるが、量刑に関連する事情を抽出の上、量刑の理由を述べる。 1 すなわち、A1は、昭和五八年にB社を設立して間もないころから、株式の店頭登録に強い意欲を持ち、そのためには好業績を上げ続ける必要があったことから、経理面の経験が豊富で資金管理等をしていたA2と相談の上、転売先の確保を約束するなどして他社の名義を借りて、取引書面等の作成や会計処理をさせるなどして、売上げの水増しによる利益計上をしていた から、経理面の経験が豊富で資金管理等をしていたA2と相談の上、転売先の確保を約束するなどして他社の名義を借りて、取引書面等の作成や会計処理をさせるなどして、売上げの水増しによる利益計上をしていた。そして、A1らは、昭和六二年以降、主力商品の売上げの伸び悩み等により資金繰りに窮するようになり、会計監査においては多額の売掛金等の問題点を指摘されるようになっていたにもかかわらず、早期の店頭登録に執着して、売上げの水増し、資金繰り、監査対策のすべてを満たすために、金融会社等から高利の金をB社の関連支配会社等の名義で借り入れた上、これを、名義貸しを承諾した他社に対する売買代金名目でB社に入金するという複雑巧妙な手口を用いて、赤字会社という実態を隠蔽し続けたものである。 2 また、利益の水増し計上に使われた商品について見ると、当初こそ、販売拡大に期待を寄せていた商品であって、将来的には販売見込みもあり、その販売が実現すれば結果として粉飾を解消する可能性のあるものを利用していたが、その後は、I4や約三分の一の絵画のように存在しないもの、第七期以降ではほとんど陳腐化してしまったもの(D等)、金融会社に担保として提供済みで処分不可能なもの、現実に仕入れたとはいえ仕入値や市場価格に照らすと著しく高額に取引価額を仮装するなどしたもの等々であって、将来的にも販売実現によって粉飾が解消する可能性のない商品が大半を占めていた。 3 このため、B社では、処分の不可能ないしは困難である不存在又は不良の在庫商品を、関連支配会社等の名義で大量に抱える一方、高利の利息金、転売差益等の名目での名義貸し人に対する謝礼、赤字会社を隠蔽するために本来は納入不要の公租公課、法律上禁止された株主に対する利益配当等のために、資金需要を雪だるま式に増大させていくことととなった。A1は、そのよ 目での名義貸し人に対する謝礼、赤字会社を隠蔽するために本来は納入不要の公租公課、法律上禁止された株主に対する利益配当等のために、資金需要を雪だるま式に増大させていくことととなった。A1は、そのような状況に至っても、あくまで活路を店頭登録に求め、従前からの粉飾を改めることなく、高利の借入れを続けた上、ますます粉飾を拡大していった。このような状況下で、本件最初の第七期における違法な利益配当が敢行されたものであるが、その時点で簿外の借入れ額は既に約一〇〇億円に達していたのである。 4 そして、B社は、第八期中に念願であった店頭登録を果たしたものの、会社内部の実態は借金の元利金返済のために更なる借金をするという悪循環の繰り返しであって、会社の存続自体が危機的な状況にあったのである。それにもかかわらず、A1は、会社の信用や株価の維持のため、A2と共謀しその補佐の下に、第八期及び第九期における違法な利益配当、虚偽報告の犯行に及んだものである。 5 本件の粉飾による利益計上の金額は累積により極めて多額なものとなったが、実際には、関連の支配会社名等で受け入れた簿外の借入金による資金を使って、利息や謝礼を支払っていたから、実質の損失額は更に上回るものであった。そのため、現に、B社は、店頭登録からわずか二年後の第一〇期中には、一四〇億円を超える負債を抱えて倒産し、破産宣告を受けている。このことは、店頭登録に余りにも拘泥したA1の事業欲や本件粉飾行為等からして、当然の成り行きであったといい得る。その結果、B社の破産手続では、優先債権の労働債権を除いた一般債権者に対する配当は、件数は一五五件で、その配当金額は合計一一億一九二四万円余りであって、配当率は約八・三パーセントにとどまり、債権者に対し甚大な損害を与えたのである(弁三六参照)。 6 以上を総合すると、本 配当は、件数は一五五件で、その配当金額は合計一一億一九二四万円余りであって、配当率は約八・三パーセントにとどまり、債権者に対し甚大な損害を与えたのである(弁三六参照)。 6 以上を総合すると、本件犯行は、手口が複雑巧妙であって、その態様は悪質というほかなく、その結果も重大であり、社会的にも大きな影響を及ぼしたものと推察される。被告人両名の刑事責任は重いというべきである。 三次に、被告人両名の個別事情につき検討する。 1 B社は、A1が独裁的に経営するいわゆるワンマン会社であったといっても過言ではなく、自ら粉飾の手口を考えたり、他の役員等に強く指示していたのであって、A1のこの意向や指示がなければ、本件の発生はあり得なかったといえよう。他方で、簿外債務の相当部分や架空取引の名義貸し人の一部の者とは自ら交渉するなど、直接的に果たした役割も少なくない。そして、A1は、役員報酬や株式の利益配当等で相当多額の金銭を得ていたことがうかがわれるところ、その受領金銭もB社の資金繰り等に投入しているのではないかと思われるものの、それは自業自得というべきで、格別有利な事情として重視することはできない。 A1は、多数の従業員を抱え、多くの取引先を有する会社の経営者として、前記(二の4ないし6)のとおり店頭登録に執着したこと等から、常識的には信じ難いほど無責任な放漫経営を続け、結局は会社を破滅に導いたものである。このため、会社債権者等に与えた被害は多大に上るが、これに対し、A1は自ら破産したこともあり、格別の賠償措置が講じたとか、特段の贖罪行為等をしていないが、将来的にもその見込みはないということができる。 また、A1は、捜査中から公判に至るまで、不合理な弁解を臆面もなく並べ立てており、自己の責任を否定するか軽減することにのみ終始し、自己らに不利益な 、将来的にもその見込みはないということができる。 また、A1は、捜査中から公判に至るまで、不合理な弁解を臆面もなく並べ立てており、自己の責任を否定するか軽減することにのみ終始し、自己らに不利益な証言をしたJ等を悪し様に批判するなどしており、真しな反省の態度は感じられない。 以上のとおりであって、A1は、本件の主犯者として、厳正な責任を負うべきである。 2 A2は、P2株式会社に対する架空売上げ計上に関与していることからも明らかなように、B社が設立当初から売上げの水増しを行なっていることを知悉していた。その上で、第五期以降、F社等の関連支配会社を利用した粉飾行為を行うようになると、B社だけでなく、その関連支配会社の資金繰りや資金管理も担当していただけでなく、名義貸し人に対する念書等を作成するなど、重要な役割分担を担って現実にこれを果たし、まさにA1の右腕となっていたものである。本件粉飾の複雑巧妙な手口は、A2の存在なしには考え難いところである。 もっとも、A2は、A1の指示により本件各犯行に加担したものであり、その関係では従属的なものであった。しかし、その果たした役割は大きく、これに加え、常務取締役・管理本部長として、代表取締役のA1が暴走するようなことがあればこれを制止すべきであって、B社という会社自体に対してもそのような責務を負う身でありながら、A1からの指示に無批判に従っていたものである。 A2は、逮捕勾留中の捜査段階では、本件犯行を全面的に自供して自己の責任を認めていたが、公判では、自己の認識や関与を否認するにとどまらず、大半はJの独断行為であるなどと不自然あるいは非常識な弁解に終始し、架空取引の存在すら否認したり、自己の刑責を否定するに至っており、反省の情は認め難い。 A2もまた厳正な責任を負うべきである。 四そう の独断行為であるなどと不自然あるいは非常識な弁解に終始し、架空取引の存在すら否認したり、自己の刑責を否定するに至っており、反省の情は認め難い。 A2もまた厳正な責任を負うべきである。 四そうすると、被告人両名とも、B社の倒産に伴い自らの地位を失い、主な資産も失っているとうかがわれること、本件は非常に無責任な発想に基づくものとはいえ、一応会社の将来を慮っての犯行であり、私利私欲にとらわれた目的によるものとはいえないこと、被告人両名の年齢、良好とはいえない健康状態等の有利にしん酌すべき事情もない訳ではないものの、これらを最大限考慮しても、被告人両名に対してはいずれも実刑をもって臨まざるを得ず、刑期についても、被告人両名の責任の重さに思いをいたすと、主文掲記の各刑は免れないと判断した 。 [検察官門野坂修一、同野口敏郎、弁護人竹上英夫、同須田唯雄出席。求刑被告人A1に対し懲役二年、被告人A2に対し懲役一年六月]平成一三年一二月一〇日東京地方裁判所刑事第一三部裁判長裁判官長岡哲次裁判官高津守裁判官橋爪信
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