- 1 -判決 主文 被告人を懲役8年及び罰金200万円に処する。 未決勾留日数中320日をその懲役刑に算入する。 その罰金を完納することができないときは,金1万円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 名古屋地方検察庁で保管中の別表記載の覚せい剤を没収する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,分離前相被告人A,同B及び氏名不詳者らと共謀の上,営利の目的で,みだりに,平成30年10月4日,名古屋市a 区bc 丁目d 番地所在の倉庫内において,覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン塩酸塩を含有する結晶約306. 0511キログラム及び覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパンを含有する結晶約33.5376キログラム(別表記載の覚せい剤はその鑑定残量)を所持したものである。 (事実認定の補足説明) 1 争点弁護人は,指示を受けて倉庫内の作業に従事したにすぎない被告人が覚せい剤を所持したとはいえず,営利目的もないから,被告人は無罪である旨主張する。 当裁判所は,被告人は,営利目的で,覚せい剤を共同所持したものであって,覚せい剤営利目的所持罪が成立すると判断したので,その理由について説明する。 2 前提事実次の事実は,証拠によって優に認められる。 ⑴ 被告人は,台湾において,インターネット上のチャットサイトで知り合った素性不明の者から,長くても1週間程度の間,名古屋にある倉庫で作業する仕事を紹介され,渡航費及び滞在費とは別に報酬として20万台湾元を支払う旨の説明- 2 -を受け,日本に携帯電話機を持って行かないこと,もし捕まったとしても余計なことを話さないこと等を指示された。被告人は,当時の月収の4ないし8か月分に相当する高 0万台湾元を支払う旨の説明- 2 -を受け,日本に携帯電話機を持って行かないこと,もし捕まったとしても余計なことを話さないこと等を指示された。被告人は,当時の月収の4ないし8か月分に相当する高額な報酬の提示を含む上記説明等からすれば,まっとうな仕事ではなく,法律に違反する仕事かもしれないと考えたものの,その仕事を引き受けることにした。 ⑵ 被告人は,平成30年9月26日,面識のないA,B,C及びDと空港で合流し,日本に入国した。 ⑶ 被告人は,判示倉庫(以下「本件倉庫」という。)において,同年10月3日午前中から夕方までC及びBと,同月4日朝方から再び両名と共に以下の作業に従事し,同日午後からAが同作業に加わったが,Cはいつの間にか姿を消した。 作業の内容は,倉庫内の段ボール箱を開封し,中に入っているタイヤホイールのネジを外して外輪と内輪に分解し,内輪に巻き付けられているアルミ箔で包まれた細長い棒状の物体(中には,ビニール袋に入った重さ900グラム前後の覚せい剤が入れられていた。以下「本件包み」という。)を取り外し,本件包みは,そのアルミ箔に記載された数字と同じ数字が記載されている段ボール箱に入れ,分解したタイヤホイールの外輪及び内輪にはスプレーをかけて印をつけるというものである。 ⑷ 被告人は,主に段ボール箱の開封,タイヤホイールの分解,本件包みをタイヤホイールから取り外し,段ボール箱に入れる等の作業をした。被告人は,本件包みを手に持った感触が硬く,粉状のものであること,本件包みの隠匿状況や来日前に提示された高額の報酬等から,本件包みには違法薬物が入っているのではないかと考えた。 ⑸ Cは,所持していた鍵で本件倉庫の出入口扉を開錠し,本件倉庫内で被告人らが作業をしている間は内側から施錠し,本件倉庫からホテルへ戻る際 本件包みには違法薬物が入っているのではないかと考えた。 ⑸ Cは,所持していた鍵で本件倉庫の出入口扉を開錠し,本件倉庫内で被告人らが作業をしている間は内側から施錠し,本件倉庫からホテルへ戻る際も施錠をしており,Aが本件倉庫から出る際は鍵を持って出て外から施錠するよう指示していた。 - 3 - 3 覚せい剤の共同所持及び故意について覚せい剤の保管場所とされた本件倉庫は,Cが所持する鍵で施錠,管理されており,被告人は,本件倉庫を管理するCを含む共犯者らと共に,本件倉庫においてタイヤホイール内に隠匿された覚せい剤を取り出す作業に従事していたのであるから,被告人及び共犯者らが当該覚せい剤を物理的に管理支配していたこと,すなわち共同所持していたことは明らかである。そして,被告人に上記事実関係の認識に欠けるところはないから,覚せい剤所持の故意も認められる。 弁護人は,本件ではAやCが本件倉庫の管理を通じて覚せい剤を管理支配しており,被告人については,覚せい剤の自由な持ち出しが可能であるか,あるいは実力によって第三者の干渉を排除できる状況でなければ,実力支配が確立しているとはいえないから,被告人に所持は認められない旨主張するが,所持に関するそのような解釈は採用できない。 4 営利目的について本件倉庫内の覚せい剤の量やその隠匿態様からすれば,覚せい剤取引によって利益を得ようとする犯罪組織の関与が明らかであって,被告人が20万台湾元という高額の報酬の提示を受けて,本件倉庫内での覚せい剤の取り出し作業に従事していたことからすれば,被告人が,自己の財産上の利益を得る目的で,ひいては,上記報酬等の出所である犯罪組織に利益を得させる目的で本件犯行に及んだことは明らかである。したがって,被告人に,営利目的が認められる。 弁護人は,被告人には犯罪組 産上の利益を得る目的で,ひいては,上記報酬等の出所である犯罪組織に利益を得させる目的で本件犯行に及んだことは明らかである。したがって,被告人に,営利目的が認められる。 弁護人は,被告人には犯罪組織に利益を得させる他利目的はなく,報酬を得る自利目的で本件に加わった点については,単なる報酬目当てにとどまらず,覚せい剤の流通や譲渡を類型的に積極化,反復継続せしめるような実質を有していなければ営利の目的に該当しない旨主張する。しかし,自利目的の解釈については,独自の見解であって採用できず,他利目的については前記認定のとおりである。 5 以上から,共同所持の事実,故意及び営利目的が認められ,覚せい剤営利目的所持罪が成立する。 - 4 -(量刑の理由)本件は,被告人が,共犯者と共に倉庫内において約339.5キログラムの覚せい剤を営利目的で所持したという事案である。本件は,巨額の費用と作業労力をかけて計画された,利欲性の高い大掛かりな組織的犯行である。その所持量は莫大であり,国内に拡散した場合の害悪は計り知れない。覚せい剤は,タイヤホイールの内側に納められ,タイヤホイールのネジを工具等で外さなければ取り出せないようになっており,その隠匿態様は極めて巧妙で,悪質である。本件は同種事案の中でも特に重い部類に属するというべきである。 そして,被告人は,違法薬物に関する仕事であるかもしれないと認識しながら,多額の報酬欲しさに本件倉庫内での覚せい剤の取り出し作業を継続し,本件犯行における重要な役割を果たした。 以上によれば,末端作業員という従属的立場であったこと,日本における前科がないことなどを考慮しても,被告人の刑責は相当に重く,主文の刑を科すのが相当であると判断した。 (求刑懲役10年及び罰金300万円,主文掲記の没収)令和2年 であったこと,日本における前科がないことなどを考慮しても,被告人の刑責は相当に重く,主文の刑を科すのが相当であると判断した。 (求刑懲役10年及び罰金300万円,主文掲記の没収)令和2年1月20日名古屋地方裁判所刑事第2部 裁判長裁判官齋藤千恵 裁判官近藤和久 裁判官鈴木真理子 - 5 -別表覚せい剤381点名古屋地方検察庁平成31年領第512号符号1ないし43の各枝番145ないし88の各枝番190ないし133の各枝番1135ないし160の各枝番1162ないし207の各枝番1209ないし226の各枝番1228ないし265の各枝番1267-1268-1270ないし279の各枝番1281ないし284の各枝番1285ないし337の各枝番2及び4
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