平成14合(わ)651 出入国管理及び難民認定法違反,職業安定法被告

裁判年月日・裁判所
平成15年3月28日 東京地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-5684.txt

判決文本文4,456 文字)

件名平成15年3月28日宣告,平成14年合(わ)第651号,出入国管理及び難民認定法違反,職業安定法違反被告事件 主文 被告人を懲役1年10月に処する。 未決勾留日数中30日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,業として,平成14年11月1日ころ,山梨県東八代郡a町b番地所在のストリップ劇場「A劇場」において,同劇場従業員のBに対し,在留期間を経過して不法に本邦に残留しているコロンビア共和国国籍のC(当時23歳)及びD(当時16歳)が報酬を受ける活動に従事するものであることを知りながら,同女らをいわゆるストリッパーとして紹介して雇用させ,もって,業として,外国人に不法就労活動をさせる行為に関しあっせんするとともに,公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で,職業紹介を行った。 (量刑の理由)本件は,被告人が,業として,不法残留中で就労資格のないコロンビア人女性2名をストリッパーとしてストリップ劇場に紹介して雇用させた出入国管理及び難民認定法違反(不法就労助長罪)及び職業安定法違反(有害職業紹介罪)の事案である。 関係証拠によれば,被告人は大学卒業後旅行会社に就職したが,スペイン語が堪能なこともあって日本国内にいるコロンビア人女性と接触する機会を有するうち,会社を辞めてコロンビア人女性の便利屋的な業務をするようになり,平成10年春ころからは,就労資格のないコロンビア人女性をストリップ劇場にストリッパーとして紹介雇用させる等していたEの手伝いをするようになっていたところ,平成10年12月に,Eと共謀の上,業としてストリップ劇場に2名のコロンビア人女性を踊り子として紹介雇用させた件で,不法就労助長罪で逮捕勾留され,平成11年3月に罰金刑に処せられたこと,ところが,被告人は,この刑を受けて約一,二か月後には,上記紹介業か に2名のコロンビア人女性を踊り子として紹介雇用させた件で,不法就労助長罪で逮捕勾留され,平成11年3月に罰金刑に処せられたこと,ところが,被告人は,この刑を受けて約一,二か月後には,上記紹介業から手を引いたEの跡を引き継ぎ,今度は自らが上記紹介業を営むようになり,当初は20名前後であった扱うコロンビア人女性の数を本件当時には七,八十名程度にまで増加させるとともに,紹介先も増やして本件犯行前後には40件前後としており,判示の女性が判示の劇場で検挙されたことを知った後も営業を続け,平成14年12月に本件で逮捕されたこと,被告人が自営するようになってからの上記紹介業の内容は,やはり就労資格のないコロンビア人女性に職業を紹介して雇用させ不法就労を助長させるもので,かつ,紹介先としては,スナック等もあるものの,その大多数はストリップ劇場で,そこにストリッパーとして紹介するものであったこと,この被告人が紹介する職業であるストリッパーというのは,ストリップ劇場で,観客の前で裸になり性器を露出したり,観客に身体を触らせたりし,更に客の求めに応じて売春行為等にも及ぶというもので,現に判示の2人のコロンビア人女性も判示のとおり紹介を受けて雇用された劇場でそれらの行為を行っていたが,被告人は自らが紹介する職業の内容がこのようなものであることを十分承知しており,トラブルを防ぐため事前にコロンビア人女性に売春行為に及ぶ意思があることを確認した上で紹介していたこと,被告人の紹介の態様は,10日単位で自らあるいは配下の者を通じるなどしてコロンビア人女性に次の劇場の場所と名前等を伝え,そこに赴かせて稼働させるもので,判示の2名の女性も,来日後間もなくから検挙されるまでの間,各劇場を転々としながら同種の行為を繰り返した末に判示のA劇場に至ったものであること,被告 と名前等を伝え,そこに赴かせて稼働させるもので,判示の2名の女性も,来日後間もなくから検挙されるまでの間,各劇場を転々としながら同種の行為を繰り返した末に判示のA劇場に至ったものであること,被告人は,このような職業紹介により,コロンビア人女性から紹介手数料として10日間の仕事を1回紹介する度に1万円を受領するとともに,本件犯行のころには,ストリップ劇場側からも紹介手数料を受領するようになっていたこと(その額は劇場により異なるが,判示の劇場の場合には,本件当時1人2万円であった。),更にこの職業紹介に密接に関連して,紹介を受けるコロンビア人女性の相当数は日本に入国するに際して数百万円程度の借金を作っていたが,被告人は,その借金の取立ても請け負っており,10日間の仕事をすると10万円を支払わせ,その中から集金手数料を取得していたこと,被告人の紹介で10日間ストリッパーをした場合に劇場からコロンビア人女性に支払われるのは,売春の対価分を除き13ないし15万円程度であり,上記の借金を有する女性はその殆どを被告人に支払わなければならず,借金を早く返済するためにも同様の仕事を続けざるを得ない状況に陥っており,被告人もコロンビア人女性のこのような収支状況や心情を良く承知していたこと,被告人は,上記の職業紹介手数料及びこの職業紹介によって得た報酬の中から借金返済分を集金する手数料として,本件犯行のあった平成14年11月ころには月に四,五百万円程度の金員(その約4分の3程度が職業紹介手数料であり,残余が集金手数料である。)を得るに至っており,経費を除いた残りは,派手な生活を続ける中で飲食費等に費やしていたこと等が認められる。 そこで,以上を前提として検討するに,まず,本件犯行のうち,不法就労を助長した点については,上記認定のような一連の経緯の中で りは,派手な生活を続ける中で飲食費等に費やしていたこと等が認められる。 そこで,以上を前提として検討するに,まず,本件犯行のうち,不法就労を助長した点については,上記認定のような一連の経緯の中で,被告人が同種行為で罰金刑に処せられて反省の機会を与えられたのにもかかわらず,そのわずか一,二か月の後には,むしろこの種の事犯への関与の度合いを格段に深め,自らの職業として,不法就労を助長する就労資格のない外国人への職業紹介業を自営し,多数の外国人を多数のストリップ劇場等へ紹介雇用させることを日常的に頻繁に繰り返していた一環として業として敢行されたものである。被告人のような受け皿となる業者が日本国内に存在することによって,不法就労を希望する外国人が来日しやすくなることは明白であって,本件犯行は,本邦における人の出入国の公正な管理を図るという法律の目的に照らし,その要請を極めて大きく侵害しており,また被告人にはこの種事犯に対する規範意識が欠落していることが明白で,その犯情は極めて悪質である。被告人は,コロンビア人女性が自分の下を離れるのは自由であると述べており,他方,日本国内に被告人と同様の行為に及ぶ他の業者が存在することも窺われるが,そのような業者は摘発によって撲滅を目指すべきであるから,そうであるからと言って,被告人の責任が軽減される謂われは全くない。 次に,有害職業紹介の点については,紹介した職業であるストリッパーの具体的内容は上記のとおりであり,その公衆道徳上の有害性の程度が著しいことは多言を要しないところ,上記認定のとおり,被告人は,同種犯行を常習的に反復累行した末に判示各犯行に及んだものであるから,その犯情も甚だ悪い。また,判示のコロンビア人女性のうちの1名は,最初に被告人の下を訪れた際には15歳であったところ,当時被告人がそれ 行を常習的に反復累行した末に判示各犯行に及んだものであるから,その犯情も甚だ悪い。また,判示のコロンビア人女性のうちの1名は,最初に被告人の下を訪れた際には15歳であったところ,当時被告人がそれを認識していたかどうかについては当該女性と被告人の供述に食い違いがあるが,被告人の供述によっても17歳と認識していたというのであり,そのような年齢の者を上記のような職業に平然と紹介していたこと一つを取って見ても,この種事犯に対する規範意識の欠如もまた明らかである。 また,本件各犯行の動機は被告人自身当公判廷で自らの生計のためであると述べており,上記のとおり,日常的に犯罪行為によって極めて多額の利益を得て派手な生活を送っていた被告人が,それまでと同様に利益を得るために敢行したものであるから全く酌むべき点はない。被告人は目の前にいるコロンビア人女性の報酬を得る権利を守るために本件紹介業を始めたというが,そもそも正当化の理由にはなり得ないことに加え,仮に百歩譲って当初はそのような気持ちがあったとしても,本件犯行当時,多数のコロンビア人女性を各地のストリップ劇場を転々とさせて膨大な利益を得て浪費を続けていた姿からは,既に強い利得目的以外の動機は微塵も窺うことができないものと言わなければならない。 被告人に,前記のもの以外に罰金前科2犯があること,当公判廷で被告人が述べる言葉の端々に,少なくとも本件犯行当時には,コロンビア人女性をあたかも物のように考え扱っていたのではないかと窺わせるものが現れること,上記のとおり,判示女性らが検挙されてからも営業を続けていたという犯行後の情状の悪さ等の事情も存する。 諸般の事情を総合すると,被告人の本件各犯行に対しては,強い非難が避けられず,その刑事責任は相当に重大である。 もっとも,他方において,被告人には自由刑 いう犯行後の情状の悪さ等の事情も存する。 諸般の事情を総合すると,被告人の本件各犯行に対しては,強い非難が避けられず,その刑事責任は相当に重大である。 もっとも,他方において,被告人には自由刑の前科がないこと,本件事実自体は当初から認め,公判でもう2度とこのようなことはしない旨それなりに反省の弁を述べていること,会社を経営する父親が公判に出廷し監督を誓っていること等は被告人のために有利に考慮することができる。また,本件は,不法就労助長と有害職業紹介が犯罪事実となるものであり,犯罪の構成要件それ自体が働く側の者が最終的には自らの意思で働くことを前提とするものであることに留意する必要があるし,証拠上も,本件被告人がコロンビア人女性に対して暴行・脅迫を加えてストリッパーとして働くことを強要したり,あるいは監禁状態に置いていたといった事実は認め難い。 しかし,諸般の事情を総合考慮すると,既に述べた被告人の刑事責任の重さに照らし,被告人に対して刑の執行を猶予することは相当ではない。そこで,本件については,被告人を主文記載のとおりの刑に処することとした。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑懲役3年及び罰金30万円)平成15年3月28日東京地方裁判所刑事第11部裁判長裁判官合田悦三裁判官幅田勝行裁判官鈴木涼子

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る