令和7(わ)259 業務上過失致死被告事件

裁判年月日・裁判所
令和7年10月2日 福岡地方裁判所
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判決文本文2,103 文字)

令和7年10月2日宣告令和7年(わ)第259号業務上過失致死被告事件 主文 被告人を禁錮1年6月に処する。 この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、A美容専門学校の教員助手として稼働し、令和5年5月24日に福岡県柳川市(住所省略)の同校敷地内において開催された同校の学校行事であるバーベキュー大会において、バーベキューコンロの火起こし及び自己が担当するバーベキューコンロの安全管理等の業務に従事していたものであるが、同バーベキュー大会を行うに際し、アルコールは引火性及び揮発性が高く、火気のある場所で使用すれば、引火して火が周囲に広がり、周囲の者に火傷を負わせるなどの危険があったのであるから、周囲に人がいる火気のある場所での使用を厳に差し控えるべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、自己が担当するバーベキューコンロの炭火の火勢を強めるために、アルコールであるエタノール、メタノール及びイソプロピルアルコールを主成分とする洗浄用アルコールを水で希釈したアルコールを用いることとし、同日午後零時51分頃、前記敷地内において、同校の生徒及び教員が取り囲み、火のついた木炭が敷かれたバーベキューコンロ内に、同アルコールを漫然と注ぎ入れた過失により、木炭の火を同アルコールに引火させて燃え上がらせ、その火を同コンロ付近にいたB(当時18歳)の身体及び衣服に付着させて燃え移らせて、同人の体幹部及び四肢に高度熱傷の傷害を負わせ、よって、同年6月6日、同県久留米市(住所省略)のC病院において、同人を前記傷害による敗血症に基づく多臓器不全により死亡させた。 (証拠の標目)省略 (法令の適用)省略(量刑の理由)本件において、被告 (住所省略)のC病院において、同人を前記傷害による敗血症に基づく多臓器不全により死亡させた。 (証拠の標目)省略 (法令の適用)省略(量刑の理由)本件において、被告人は、既に火がついているバーベキューコンロの中に引火性及び揮発性の高いアルコールを注入するという極めて危険な行為に及んでいる。被告人は、本件美容専門学校の理事長によって着火後のコンロにアルコールが注がれ、火が高く燃え上がったことを視認していたから、かかる行為の具体的な危険性を十分に認識していた上、別の教員からアルコールの使用を止められたにもかかわらず、周囲への安全配慮をしないまま、自らの判断で本件コンロにアルコールを注入している。したがって、本件コンロの安全性などといった弁護人の主張する外的要因を踏まえても、被告人の過失の程度は大きく、厳しい非難を免れない。 そして、被害者は、全身を火に包まれ、身体の大部分に火傷を負い、約2週間にわたって甚大な苦しみを受け、ついには死亡するに至っている。被害者は、親元を離れ、美容師の夢をかなえるために通っていた本件専門学校での行事において、その将来を突如として絶たれた被害者の無念は察するに余りある。年若い被害者を亡くした遺族の悲しみが深いのは言うまでもなく、結果は重大である。 以上によれば、被告人の刑事責任は軽視できない。 他方で、被告人は、本件専門学校の通信制の学生でありながら教員助手として勤務もしていたが、理事長の指示や言動に疑問を差し挟めない環境に置かれていた上、本件バーベキューの数日前には、遅刻を原因として、理事長から退職届を書かされるなどの行き過ぎた指導を受けていた。このような状況下で、被告人が、担当するコンロの火勢が弱いために食事の終了が遅くなると、理事長から叱責されるのではないかと恐れたのも一 理事長から退職届を書かされるなどの行き過ぎた指導を受けていた。このような状況下で、被告人が、担当するコンロの火勢が弱いために食事の終了が遅くなると、理事長から叱責されるのではないかと恐れたのも一定程度理解し得る。なにより、本件バーベキューにおいては、火起こしの際に限定されていたとはいえ、理事長の発案及び指示のもと、火の着火前後で現にアルコールが使用され、周囲の人間は誰もこれを制止していなかった。 そうすると、被告人が、当時、冷静な判断をすることが難しい状況に陥っていたこ とは否めず、俯瞰的に本件行為に至った経緯を考えると、被告人のみに責任があったとはいえない。 加えて、被告人は事実を認めた上で反省の弁を述べ、また、被害者遺族への謝罪や墓参を繰り返すなど慰謝の措置も行っており、自身の行為について真摯に向き合っている。また、被告人の父が被告人の監督を誓約している。被告人に前科前歴はない。 以上の被告人のために酌むべき事情を併せ考慮すると、被告人に対しては、その責任の重さに照らし、主文の刑期の禁錮刑を科すことは免れないが、今回についてはその刑の執行を猶予し、社会内での更生の機会を与えるのが相当である。 (求刑-禁錮1年6月、弁護人の科刑意見-禁錮1年に執行猶予を付する判決)令和7年10月2日福岡地方裁判所第3刑事部 裁判長裁判官岡本康博 裁判官菅原光祥 裁判官髙橋宏一

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