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主文 1、申請人らが被申請人に対し、労働契約上の権利を有することを仮に定める。2、被申請人は、昭和四二年一〇月一日以降本案判決確定に至るまで、毎月二五日限り申請人Aに対し一ヶ月金三三、五〇〇円を、同Bに対し一ヶ月金二四、〇〇〇円をそれぞれ仮に支払え。3、訴訟費用は被申請人の負担とする。事実 第一、当事者の求める裁判一、申請人らの求める裁判主文第一、二項と同旨の裁判二、被申請人の求める裁判(一)、申請人らの申請をいずれも却下する。(二)、訴訟費用は申請人らの負担とする。第二、当事者の主張一、申請の理由(一)、当事者及び解雇被申請人(以下単に「会社」という。)は中国との貿易を主たる業務とする株式会社であり、申請人Aは昭和四〇年四月一九日、同Bは昭和四一年七月一一日それぞれ会社に入社し、その業務に従事してきたものであるところ、申請人らは昭和四二年九月二七日いずれも会社により解雇された。(二)、解雇無効しかしながら、右解雇は次の理由によつて無効である。1、申請人らは、昭和四一年一二月一七日貿易一般労働組合に加入し、申請人Bは書記長として、同Aは一般組合員として熱心に活動してきたが、会社は、右申請人らの活動を知り、これを理由として解雇したものであるから、不当労働行為として無効である。2、会社は、従業員に対し、昭和四二年二月二七日日本国際貿易促進協会等の代表と中国国際貿易促進委員会代表との間で調印された「日中両国人民の友好貿易促進に関する議定書(以下単に「議定書」という。)」と、同年三月一七日に調印された「共同声明」を支持するように強要してきた。右両文書は、中国の文化大革命を礼讃し、毛沢東思想を日中友好と貿易の指導理念とするというものであり、日中貿易にたずさわる者に、毛沢東路線に盲従することを強要 「共同声明」を支持するように強要してきた。右両文書は、中国の文化大革命を礼讃し、毛沢東思想を日中友好と貿易の指導理念とするというものであり、日中貿易にたずさわる者に、毛沢東路線に盲従することを強要するものである。 」を支持するように強要してきた。右両文書は、中国の文化大革命を礼讃し、毛沢東思想を日中友好と貿易の指導理念とするというものであり、日中貿易にたずさわる者に、毛沢東路線に盲従することを強要 「共同声明」を支持するように強要してきた。右両文書は、中国の文化大革命を礼讃し、毛沢東思想を日中友好と貿易の指導理念とするというものであり、日中貿易にたずさわる者に、毛沢東路線に盲従することを強要するものである。会社は、申請人らが積極的に右両文書を支持する旨を表明しなかったことをもって、陰然、公然と右両文書に反対したといって解雇したものであり、右各解雇は申請人らの思想、信条を理由とするものというべく、憲法一四条、労働基準法三条に違反して無効である。3、本件各解雇は、何らの正当な理由もなく、会社の恣意に基いてなされたものであって、解雇権の濫用として無効である。(三)、賃金本件解雇当時毎月二五日限り、申請人Aは一ケ月金三三、五〇〇円、同Bは一ケ月金二四、〇〇〇円の賃金を得ていたが、会社は、右解雇を理由に、解雇以後の賃金を支払わない。(四)、保全の必要性申請人らは、会社から支結される賃金を唯一の収入源として、その生活を支えていたものであり、右解雇によって唯一の収入の途を奪われ、その生活は窮迫状態に陥っており、本案判決の確定をまっていては、回復できない損害を蒙ることは明白であるので、とりあえず、従業員たる地位の保全と、昭和四二年一〇月一日以降の賃金の仮払いを求める。二、申請の理由に対する被申請人の答弁(一)、申請の理由に対する認否申請の理由(一)の事実を認める。同(二)のうち、1の事実中、会社が申請人らの組合活動を知り、これを理由として解雇したことを否認し、その余の事実は不知、法律上の主張を争う。2の事実中、議定書及び共同声明が申請人主張の日に調印されたことを認め、その余の事実を否認し、法律上の主張を争う。3の主張を争う。同(三)の事実を認める。同(四)の事実を否認する。(二)、解雇理由会社は、中国と 明が申請人主張の日に調印されたことを認め、その余の事実を否認し、法律上の主張を争う。3の主張を争う。同(三)の事実を認める。同(四)の事実を否認する。(二)、解雇理由会社は、中国との貿易を主たる業務とするいわゆる友好商社であり、政治三原則((イ)中国を敵視しないこと、(ロ)二つの中国を作り出すようなことをしないこと、(ハ)日中国交回復を妨げないこと)、貿易三原則((イ)政府間の協定、(ロ)民間の契約、(ハ)個別的な配慮取引)、政経不可分の原則(日中両国間の政治経済関係の発展は必ず結合させなければならず、切離すことはできない)に則り、前記議定書の精神に基き、共同声明の具体的実現を目標として、日中の友好と貿易を促進することを最高方針とするものであり、この点において、会社は他の企業とは根本的に異るのである。 いこと、(ハ)日中国交回復を妨げないこと)、貿易三原則((イ)政府間の協定、(ロ)民間の契約、(ハ)個別的な配慮取引)、政経不可分の原則(日中両国間の政治経済関係の発展は必ず結合させなければならず、切離すことはできない)に則り、前記議定書の精神に基き、共同声明の具体的実現を目標として、日中の友好と貿易を促進することを最高方針とするものであり、この点において、会社は他の企業とは根本的に異るのである。(本位的主張)1、次に掲げる申請人らの行為は、いずれも日中友好貿易の破壊を目的とする行為であって、右に述べた会社の特殊性をも考慮すれば、充分解雇に値するものである。(1)、申請人Aは、昭和四二年一月二八日の業務会議で同年四月一五日から五月一五日の間中国広州市で開催される春季交易会に備えて、業務を割当てられたにも拘らず、自己の担当業務を放棄し、同僚、上司の繁忙に無関心の態度を示したまま四六時中机上に英語学習の本をひろげ、これに専念する風を装って、右春季交易会開始までこの状態を持続した。会社は申請人に対し、再三注意したが同人が態度を改めなかったため、やむをえず他の者をして同人の業務を行なわせた。(2)、会社は、同年五月二二日申請人Aに対し輸出入関係の新たな任務を命じたところ、同人はこれを完遂する旨誓約したにも拘らず、またもや右任務の一部を遂行したに止まり、他の任務を放棄した。(3)、前記交易会において、申請人Aは、坂下化 Aに対し輸出入関係の新たな任務を命じたところ、同人はこれを完遂する旨誓約したにも拘らず、またもや右任務の一部を遂行したに止まり、他の任務を放棄した。(3)、前記交易会において、申請人Aは、坂下化学機器株式会社関係の業務を担当したが、メーカーとの見積打合せを怠り、このため梱包費一万九二〇円の損失を会社に与えた。右事実は昭和四二年八月発見されたがその際同人は、「梱包費はメーカー負担ということで話がついている。」と虚偽の事実を述べ、自己の非を隠そうとした。(4)、昭和四二年五月から九月の間、申請人らは、業務に精励する従業員Cに対し、「非労働者的だ。」と嘲笑する一方、同人を徹底的に疎外し、これがためCは常に不快の念にかられていた。申請人らの右行為により、単に人間関係だけでなく、業務面においても社内の融和は完全に崩壊した。(5)、同年二月二八日善隣学生会館に宿泊していた華僑学生等を日本共産党員等が襲撃し、多数の華僑学生や日本青年が瀕死の重傷を負った事件については、同年三月以降社長をはじめ他の従業員が全員防衛を兼ねて現地に赴き事実を把握したのに、申請人らは、社長の度重なる指示にもかかわらず、真実にふれることを拒否して一度も現場に行かなかったばかりか、逆に申請人Aは、右事件の加害者側である日中友好協会の事務所に出入し、相手方と気脈を通じた。 善隣学生会館に宿泊していた華僑学生等を日本共産党員等が襲撃し、多数の華僑学生や日本青年が瀕死の重傷を負った事件については、同年三月以降社長をはじめ他の従業員が全員防衛を兼ねて現地に赴き事実を把握したのに、申請人らは、社長の度重なる指示にもかかわらず、真実にふれることを拒否して一度も現場に行かなかったばかりか、逆に申請人Aは、右事件の加害者側である日中友好協会の事務所に出入し、相手方と気脈を通じた。(6)、日中貿易は昭和四二年に入り極めて困難な事態に立至ったので、会社はこれを打開するため左の如き多くの集会やデモを行なって政府及び日本共産党に抗議した。これには会社をあげて参加しているにも拘らず、申請人らは全くこれに参加せず(ただし八月二九日のバス行進には申請人Aが参加した。)、友好商社従業員としての任務を怠った。三月二五日日本青年会館における集会四月二九日共立講堂における集会五月二四日ダイヤモ に参加せず(ただし八月二九日のバス行進には申請人Aが参加した。)、友好商社従業員としての任務を怠った。三月二五日日本青年会館における集会四月二九日共立講堂における集会五月二四日ダイヤモンドホテルにおける集会六月二日農協ホールにおける集会六月七日九段会館における集会七月二一日東条会館における集会八月二九日バスによるデモ行進九月二日都市センターにおける集会九月七日羽田におけるデモ参加九月一六日都市センターにおける集会九月二七日日本青年会館における集会(7)、申請人らは、会社の事務所を旧日中貿易促進会労働組合、貿易一般労働組合又はその同調者との連絡場所として使用していた。そのことは、次の事実から明らかである。(イ)、申請人Aは、昭和四二年初頭から業務外の用件を中国語で右労働組合等と電話連絡することが著るしく多くなった。同年五月頃、社長が同人に注意したところ、同人はその時は自己の非を認めながら、その後も態度を改めなかった。(ロ)、申請人らは、昼食と称して、二、三時間も事務所を離れることが多く、昭和四二年七月から九月にかけては週二、三回の多きに達した。(ハ)、申請人らに対し一日五、六回外部から私用の電話がかかってきた。右電話に申請人ら以外の者が出ても相手方は絶対に名乗らず、申請人らの不在を確認するや、そのまま電話を切ってしまうのが常であった。(ニ)、申請人らは、執務時間中でもしばしば近くの公衆電話を利用してかなり長時間外部と連絡していた。 食と称して、二、三時間も事務所を離れることが多く、昭和四二年七月から九月にかけては週二、三回の多きに達した。(ハ)、申請人らに対し一日五、六回外部から私用の電話がかかってきた。右電話に申請人ら以外の者が出ても相手方は絶対に名乗らず、申請人らの不在を確認するや、そのまま電話を切ってしまうのが常であった。(ニ)、申請人らは、執務時間中でもしばしば近くの公衆電話を利用してかなり長時間外部と連絡していた。(予備的主張)2、仮りに右事由が解雇理由として充分なものではないとしても、申請人らは、会社に雇傭される以前から日本共産党員であったが、会社が前記のような商社であることを知悉し、積極的に右諸原則の実践を確約して、会社と雇傭契約を締結したものであるにも拘らず、昭和四一 も、申請人らは、会社に雇傭される以前から日本共産党員であったが、会社が前記のような商社であることを知悉し、積極的に右諸原則の実践を確約して、会社と雇傭契約を締結したものであるにも拘らず、昭和四一年四月日本共産党のD一派が中国より帰国して「自主独立路線」を発表し、反中国政策に転じ、日中友好貿易妨害の挙に出るや、申請入らは、会社の右方針と全く反する思想、信条を懐き、議定書、共同声明を否定する右日共一派の政策を肯定し、その旨公言した。すなわち日本共産党員としてD一派の指示、指導に盲従し、日中の友好と貿易の促進に敵対する行動をとるようになり、E社長の説得により、同年一一月、一旦は前非を悔いたが、その後、再び反中国に転じ、前記昭和四二年三月二五日から同年九月二七日に至る集会及びデモ(ただし八月二九日を除く。)に参加しなかった際には、その旨を公言したものである。ところで、政治、貿易三原則、政経不可分の原則、議定書、共同声明等は、前述のように、すべての友好商社にとって憲法ともいうべきものであり、これを否定する者を雇傭していることは、友好商社の存立に関する重大問題である。現に三原則等を否定する行為のあった商社として、友好貿易ができなくなったものは、二、三にとどまらない。また会社においても申請人Aは昭和四一年秋の広州交易会終了後北京へ行く予定であったところ、中国側から北京へ入ることを断わられ、会社のためにその任務を遂行することができず会社としてその業務を阻害されたものであり、このような事例は会社の初めて経験したことであり、かゝる結果になったのは申請人Aが前記のような反中国的信条を懐き、これを公言したからにほかならない。 ができなくなったものは、二、三にとどまらない。また会社においても申請人Aは昭和四一年秋の広州交易会終了後北京へ行く予定であったところ、中国側から北京へ入ることを断わられ、会社のためにその任務を遂行することができず会社としてその業務を阻害されたものであり、このような事例は会社の初めて経験したことであり、かゝる結果になったのは申請人Aが前記のような反中国的信条を懐き、これを公言したからにほかならない。従って本位的主張としてのべた申請人らの各非行が不充分であるとしても、申請人らが右信条を懐き、これを公言した一事を以て解雇の正当事由とす のような反中国的信条を懐き、これを公言したからにほかならない。従って本位的主張としてのべた申請人らの各非行が不充分であるとしても、申請人らが右信条を懐き、これを公言した一事を以て解雇の正当事由とすることができるものである。三、解雇理由に対する申請人らの答弁解雇理由冒頭の事実を認める。ただし、議定書、共同声明は政治、貿易三原則に矛盾し、従来の日中貿易の基調を大きく変換したものである。また、友好商社もその目的は営利の追求にあり、その営利追求の場を日中友好貿易に求めているにすぎないものであって、本質的には他の営利企業と何ら異るところはない。本位的主張のうち、冒頭の事実を否認する。(1)の事実中、申請人Aが被申請人主張の業務の割当を受けたことを認め、その余の事実を否認する。なお、申請人Aは、昭和四二年七月から会社で英語学習を行なったことがあるが、これは会社が申請人Aに仕事を与えなかったので、やむなく貿易業務を行なうに必要な英語の学習をしていたものである。(2)の事実中、申請人Aが被申請人主張の任務を命じられたことを認め、その余の事実を否認する。(3)の事実中、申請人Aが坂下化学機器株式会社関係を担当したこと及びその後梱包費のことで問題が生じたことを認め、その余の事実を否認する。申請人Aは、見積金額も大きいので、メーカーと打合わせ、メーカー側から梱包費込みの見積価格が提示されたので、それに従って中国と交渉して契約したが、メーカー側が船積の段階で梱包費は含まれていないと言い出したために問題が生じたのである。従って、非は申請人でなくメーカー側にある。(4)の事実を否認する。(5)の事実中、社長の指示にもかかわらず、申請人Aがこれに従わなかったことを認め、その余の事実を否認する。 請人Aは、見積金額も大きいので、メーカーと打合わせ、メーカー側から梱包費込みの見積価格が提示されたので、それに従って中国と交渉して契約したが、メーカー側が船積の段階で梱包費は含まれていないと言い出したために問題が生じたのである。従って、非は申請人でなくメーカー側にある。(4)の事実を否認する。(5)の事実中、社長の指示にもかかわらず、申請人Aがこれに従わなかったことを認め、その余の事実を否認する。この事件は、華僑学生が善隣学生会館にある日中友好協会 側にある。(4)の事実を否認する。(5)の事実中、社長の指示にもかかわらず、申請人Aがこれに従わなかったことを認め、その余の事実を否認する。この事件は、華僑学生が善隣学生会館にある日中友好協会事務所を襲撃したものであり、このような事件において襲撃者たる華僑学生を支援せよという会社の指示に従わなかったことは全く正当である。しかも申請人らは、事件の真相を明確にしてから態度を決めたいという回答をしていたのである。(6)の被申請人主張のデモや集会が行なわれたこと及び申請人らがこれに参加しなかったこと(ただし、申請人Aは七月二一日、八月二九日、同Bは六月二日の集会等に参加した。)を認める。しかし、このうち会社が業務命令で参加を命じたのは六月二日の集会だけで、しかも申請人Bに対してのみである。これらのデモや集会は必ず日本共産党を四つの敵の一つとしてこれを中傷、誹謗し、攻撃を加えていたのであり、このようなデモや集会に参加することを強要すること自体が思想の自由を否定する不当な行為である。(7)冒頭の事実を否認する。(イ)の事実を否認する。申請人Aは、一度だけ中国語で電話したことがあるが、これは弟に対してである。(ロ)の事実中、申請人らが昼食時に二、三時間も事務所を離れることが多かったことは認めるが、これは、申請人らが従前から、用務で外出したときに昼食をとっていたためで、外出時間が長くなるのは当然のことである。(ハ)及び(ニ)の事実は、全く解雇理由とはなりえない。予備的主張の事実中、申請人Aが広州交易会終了後北京へ行く予定であったが、中国側から断わられたことを認め、その余の事実を否認する。なお、申請人らが日本共産党員であるか否かは、本件において認否すべき問題ではないので認否しない。会社の主張する政治、貿易三原則、政経不可分の原則について申請 食をとっていたためで、外出時間が長くなるのは当然のことである。(ハ)及び(ニ)の事実は、全く解雇理由とはなりえない。予備的主張の事実中、申請人Aが広州交易会終了後北京へ行く予定であったが、中国側から断わられたことを認め、その余の事実を否認する。なお、申請人らが日本共産党員であるか否かは、本件において認否すべき問題ではないので認否しない。会社の主張する政治、貿易三原則、政経不可分の原則について申請 られたことを認め、その余の事実を否認する。なお、申請人らが日本共産党員であるか否かは、本件において認否すべき問題ではないので認否しない。会社の主張する政治、貿易三原則、政経不可分の原則について申請人らは、個人としては正しいとしてこれを支持する立場にあった。しかしこれも申請人らと会社との雇傭契約の内容にはなっていなかった。まして議定書共同声明は申請人らの入社後、昭和四二年になって日本の貿易商社の経営者の代表と中国側代表との間に、合意により成立したものであり、日本の貿易商社に勤務する労働者とは無関係であり、雇傭契約の内容とはなっておらず、申請人らを拘束するいかなる根拠もないのである。申請人らは、会社から議定書、共同声明について態度を明確にせよと強要されても、解雇されるまでは意見を述べることを留保し、「押しつけには反対です。」とだけ述べていたにすぎない。申請人Aが昭和四一年秋の交易会終了後北京に入れなかったのは、北京のホテルが紅衛兵で満員のためであり、全く中国側の都合によるものである。第三、疎明関係(省略) 理由 一、被申請人は、中国との貿易を主たる業務とする株式会社であり、申請人Aは昭和四〇年四月一九日、同Bは昭和四一年七月一一日それぞれ会社に入社し、その業務に従事してきたものであるところ、申請人らは昭和四二年九月二七日にいずれも会社により解雇された。右解雇当時毎月二五日限り、申請人Aは一ヶ月金三三、五〇〇円、同Bは一ヶ月金二四、〇〇〇円の賃金を得ていたが、会社は、右解雇を理由に解雇以後の賃金を支払わない。以上の事実は当事者間に争いがない。二、申請人は、右解雇は、不当労働行為、労働基準法三条違反あるいは解雇権の濫用として無効であると主張し、被申請人は、まず、(一)、会社の友好商社としての特殊性を主張し、これ は当事者間に争いがない。二、申請人は、右解雇は、不当労働行為、労働基準法三条違反あるいは解雇権の濫用として無効であると主張し、被申請人は、まず、(一)、会社の友好商社としての特殊性を主張し、これを前提として、(二)、本位的主張として、申請人らの日中友好貿易の破壊を目的とする非行を、(三)、予備的主張として、申請人らが懐く信条とそれを公言した事実を解雇の正当理由であると主張するので、以下右(一)、(二)、(三)、の順に判断する。 請人は、右解雇は、不当労働行為、労働基準法三条違反あるいは解雇権の濫用として無効であると主張し、被申請人は、まず、(一)、会社の友好商社としての特殊性を主張し、これを前提として、(二)、本位的主張として、申請人らの日中友好貿易の破壊を目的とする非行を、(三)、予備的主張として、申請人らが懐く信条とそれを公言した事実を解雇の正当理由であると主張するので、以下右(一)、(二)、(三)、の順に判断する。(一)、会社の企業としての特殊性について考える。被申請人代表者本人尋問の結果により真正に成立したものと認める疎乙第一号証、証人Fの証言及び被申請人代表者本人尋問の結果を総合すると、次の事実が認められ、右認定に反する疎明はない。昭和二五年日中友好協会が設立され、民間の力で日中貿易が再開されたが、昭和三三年長崎の中国展における中国国旗侮辱事件を機に日中貿易は途絶した。その後昭和三五年に再び日中貿易が開始されたが、これは政治三原則((イ)中国を敵視しないこと、(ロ)二つの中国を作り出すようなことをしないこと、(ハ)日中国交回復を妨げないこと)、貿易三原則((イ)政府間の協定、(ロ)民間の契約、(ハ)個別的な配慮取引)、政経不可分の原則(日中両国間の政治経済関係の発展は必ず結合させなければならず、切離すことはできない。)に基礎を置く、日中友好を願う民間企業の個別取引であり(日中貿易が政治、貿易三原則、政経不可分の原則に基礎を置くことは当事者間に争いがない。)、右取引に従事する商社は友好商社と呼ばれ、友好商社となるには、前記諸原則を遵守する決意を有し、日本の日中友好協会、国際貿易促進協会、日中貿易促進会、革新政党の推薦があり、且つ、中国国際貿易促進委員会の同意を得ることが必要であった。申請人らが会社に入社した後で 原則を遵守する決意を有し、日本の日中友好協会、国際貿易促進協会、日中貿易促進会、革新政党の推薦があり、且つ、中国国際貿易促進委員会の同意を得ることが必要であった。申請人らが会社に入社した後である昭和四二年二月二七日日本国際貿易促進協会等の代表と中国国際貿易促進委員会代表との間で「議定書」が調印され、続いて同年三月一七日には日本国際貿易促進協会訪中友好貿易代表団と中国国際貿易促進委員会との間で「共同声明」が調印されたため、以後日中貿易は、前記諸原則のほか、右議定書、共同声明の精神に則つて行われるべきこととなつた(このことは当事者間に争いがない。 必要であった。申請人らが会社に入社した後である昭和四二年二月二七日日本国際貿易促進協会等の代表と中国国際貿易促進委員会代表との間で「議定書」が調印され、続いて同年三月一七日には日本国際貿易促進協会訪中友好貿易代表団と中国国際貿易促進委員会との間で「共同声明」が調印されたため、以後日中貿易は、前記諸原則のほか、右議定書、共同声明の精神に則つて行われるべきこととなつた(このことは当事者間に争いがない。)。右両文書は、毛沢東思想及び中国における文化大革命を賞讃すると共にこれを日中貿易の指導理念とすべきこと、日中友好と貿易を発展させためには、アメリカ帝国主議、日本の反動派、ソ連現代修正主義指導グループ及び日共修正主義分子と徹底的に戦わなければならないことを定めている。(二)、次に被申請人が、日中友好貿易の破壊を目的とする行為であると主張する申請人らの行為について考える。1、申請人Aが、昭和四二年一月二八日の業務会議で、同年四月一五日から五月一五日の間中国広州市で開催される春季交易会に備えて、業務を割当てられたことは当事者間に争いがない。被申請人は、「申請人Aは、自己の担当業務を放棄して、四六時中机上に英話学習の本をひろげ、これに専念する風を装つて、右交易会開始までこの状態を続け、会社からの再三の注意にも拘らず、態度を改めなかつた。」と主張し、証人Fの証言及び被申請人代表者本人尋問の結果には右主張に副う部分があるが、右部分は申請人A本人尋問の結果に照らしてたやすく措信できず、他に右事実を認めるに足りる疎明はない。2、会社が、同年五月二二日申請人Aに対し輪出入関係の新たな任務を命じたこと に副う部分があるが、右部分は申請人A本人尋問の結果に照らしてたやすく措信できず、他に右事実を認めるに足りる疎明はない。2、会社が、同年五月二二日申請人Aに対し輪出入関係の新たな任務を命じたことは当事者間に争いがない。被申請人は、「申請人Aは、右任務を完遂する旨誓約したにも拘らず、またもや右任務の一部を遂行したに止まり、他の任務を放棄した。」と主張し、申請人代表者本人尋問の結果には、右主張に副う部分もあるが、右部分は、申請人A本人尋問の結果(第一回)に照らしてたやすく措信できず、他に右事実を認めるに足りる疎明はない。3、同年四月一五日から五月一五日の間中国広州市で開催された春季交易会において、申請人Aが坂下化学機器株式会社関係の業務を担当したこと及びその後梱包費のことで問題が生じたことは当事者間に争いがない。 り、他の任務を放棄した。」と主張し、申請人代表者本人尋問の結果には、右主張に副う部分もあるが、右部分は、申請人A本人尋問の結果(第一回)に照らしてたやすく措信できず、他に右事実を認めるに足りる疎明はない。3、同年四月一五日から五月一五日の間中国広州市で開催された春季交易会において、申請人Aが坂下化学機器株式会社関係の業務を担当したこと及びその後梱包費のことで問題が生じたことは当事者間に争いがない。被申請人は、「申請人Aがメーカーとの見積打合せを怠り、このため梱包費一万九二〇円の損失を会社に与えた。」と主張し、被申請人代表者本人尋問の結果によれば、坂下化学機器株式会社が梱包費の支払いをしないため、結局、会社が梱包費として一万九二〇円の支払いをしたことが認められるが、右疎明だけでは、これが申請人Aの責任によるものであるとまでいうことはできない。なお、疎乙第一二号証の一ないし三(申請人らは、この証拠は時機に遅れて提出されたものであるから却下されるべきであると主張するところ、右証拠はいずれも最終口頭弁論期日に提出され、右期日には申請人Aも出席していたことは記録上明らかである。しかして右証拠はいずれも書証であるから即時に取調べることが可能であり、且つ、本件は仮処分申請事件であつて、口頭弁論が開かれた場合でもその立証は疎明の程度で足りるのであり、右書証の成立について必ずしも申請人らの認否を要するものではないばかりか、本件訴訟 が可能であり、且つ、本件は仮処分申請事件であつて、口頭弁論が開かれた場合でもその立証は疎明の程度で足りるのであり、右書証の成立について必ずしも申請人らの認否を要するものではないばかりか、本件訴訟の経過に照らせば、右書証は申請人Aがその作成に関与したものとして提出されたことは明らかであるから、即時に認否することも可能であるというべく、また、当裁判所はその反証の必要性も認めなかつたのであるから、右書証の提出により、如何なる意味においても訴訟が遅延するとはいえないので、申請人らの主張は採用できない。)によれば、坂下化学機器株式会社関係の契約の際の見積書には梱包に関する記載は全くなく、注文書には、「包装」として「長い海上輸送に適し、湿気、衝撃、さび、手荒な扱いから内容物を保護する新しい頑丈な木製の航海に耐える容器」との記載があり、取引額は合計三六〇万五、八五〇円となつていること、しかるに注文書副本には、右記載のほかに、取引額に一万八〇〇円が加算されているが、そのほかに商品の単価が訂正されており、その増加分が一万八〇〇円となることが認められるので、右一万八〇〇円の加算の記載をもつて、梱包費に関するものということはできず、その余の記載をもつて梱包費に関するトラブルが申請人Aの責任によるものであることを認めるに足りないので、結局、右疎乙第一二号証の一ないし三をもつてしては被申請人の主張を認めるに由ないものというべきである。 に一万八〇〇円が加算されているが、そのほかに商品の単価が訂正されており、その増加分が一万八〇〇円となることが認められるので、右一万八〇〇円の加算の記載をもつて、梱包費に関するものということはできず、その余の記載をもつて梱包費に関するトラブルが申請人Aの責任によるものであることを認めるに足りないので、結局、右疎乙第一二号証の一ないし三をもつてしては被申請人の主張を認めるに由ないものというべきである。そして、他に右事実を認めるに足りる疎明はない。4、被申請人は、「昭和四二年五月から九月の間、申請人らは、業務に精励する従業員Cに対し、『非労働者的だ。』と嘲笑する一方、同人を徹底的に疎外し、これがためCは常に不快の念にかられていた。」と主張し、証人Fの証言及び被申請人代表者本人尋問の結果には右主張に副う部分もあるが、右部分は、申 『非労働者的だ。』と嘲笑する一方、同人を徹底的に疎外し、これがためCは常に不快の念にかられていた。」と主張し、証人Fの証言及び被申請人代表者本人尋問の結果には右主張に副う部分もあるが、右部分は、申請人A(第一回)、同B各本人尋問の結果に照らしてたやすく措信できず、他に右事実を認めるに足りる疎明はない。5、同年二月二八日善隣学生会館において、華僑学生等と日本共産党員等との間に暴力事件が発生したこと及び同年三月以降社長の度重なる指示にも拘らず、申請人らが華僑学生を防衛するため現場へ行かなかつたことは当事者間に争いがない。しかして、証人Fの証言、申請人A(第一回)、同B、被申請人代表者各本人尋問の結果によれば、申請人らは応援に行かない理由として「真相がよくわからないから。」と述べており、会社としても、応援に行くべきことを業務命令として指示していたのではないことが認められ、他に右認定を左右するに足りる疎明はない。被申請人は、「右事件は、日本共産党員等が華僑学生等を襲撃したものであり、申請人Aは加害者側である日中友好協会の事務所に出入し、相手方と気脈を通じた。」と主張し、疎乙第一〇号証、証人Fの証言及び被申請人代表者本人尋問の結果には、日本共産党員が華僑学生を襲つたものであるとの趣旨の部分があるが、疎甲第九号証の記載に照らすと、右乙号証と右人証のみでは加害者が日本共産党員であると認めることはできず、他に右事実を認めるに足りる疎明はなく、また、申請人Aが解雇前に日中友好協会事務所に出入して気脈を通じていたことを認めるに足りる疎明もない。 方と気脈を通じた。」と主張し、疎乙第一〇号証、証人Fの証言及び被申請人代表者本人尋問の結果には、日本共産党員が華僑学生を襲つたものであるとの趣旨の部分があるが、疎甲第九号証の記載に照らすと、右乙号証と右人証のみでは加害者が日本共産党員であると認めることはできず、他に右事実を認めるに足りる疎明はなく、また、申請人Aが解雇前に日中友好協会事務所に出入して気脈を通じていたことを認めるに足りる疎明もない。6、昭和四二年になつて、会社が被申請人主張のような集会やデモを行なつたこと、申請人Aは七月二一日、八月二九日を除き、同Bは六月二日を除き、その余の集会やデモに参加しなかつたこと及び八月二九日のバスによるデモ行 年になつて、会社が被申請人主張のような集会やデモを行なつたこと、申請人Aは七月二一日、八月二九日を除き、同Bは六月二日を除き、その余の集会やデモに参加しなかつたこと及び八月二九日のバスによるデモ行進には申請人Aが参加したことは当事者間に争いがない。申請人A(第一回)、同B各本人尋問の結果によれば、右のほか申請人Aは七月二一日の東条会館における集会に、同Bは六月二日の農協ホールにおける集会に参加したこと及び申請人らは業務命令として参加を指示されたときには参加したが、そうでないときには参加しなかつたことが認められ、右認定を覆えすに足りる疎明はない。7、申請人Aが中国語で電話したことがあること及び申請人らが昼食時に二、三時間も事務所を離れることが多かつたことは当時者間に争いがない。しかして、証人Fの証言、申請人A(第一回)、同B各本人尋問の結果によれば、申請人Aが中国語で電話したのは、同人は中国生まれで、中国の大学を中退して日本へ帰つてきたために弟と電話で話していたときに自然に中国語を使つてしまつたにすぎないこと、会社は小さい会社であり、就業時間が必ずしも決つておらず、仕事で出かけるついでに昼食をすませて来るということが多く、申請人らが昼食時に二、三時間も事務所を離れることが多かつたのもこのためであることが認められ、右認定に反する被申請人代表者本人尋問の結果はたやすく措信できず、他に右認定を覆えすに足りる疎明はない。証人Fの証言及び被申請人代表者本人尋問の結果によれば、申請人らに対し私用の電話がかかつて来た際、右電話に申請人ら以外の者が出ても相手方は名乗らず、申請人らが不在であることを確認するや、そのまま電話を切つてしまうことがしばしばであつたことが認められ、右認定を左右するに足りる疎明はない。 とが認められ、右認定に反する被申請人代表者本人尋問の結果はたやすく措信できず、他に右認定を覆えすに足りる疎明はない。証人Fの証言及び被申請人代表者本人尋問の結果によれば、申請人らに対し私用の電話がかかつて来た際、右電話に申請人ら以外の者が出ても相手方は名乗らず、申請人らが不在であることを確認するや、そのまま電話を切つてしまうことがしばしばであつたことが認められ、右認定を左右するに足りる疎明はない。被申請人は、「申請人らは、執務時間中で 手方は名乗らず、申請人らが不在であることを確認するや、そのまま電話を切つてしまうことがしばしばであつたことが認められ、右認定を左右するに足りる疎明はない。被申請人は、「申請人らは、執務時間中でもしばしば近くの公衆電話を利用してかなり長時間外部と連絡していた。」と主張するが、右事実を認めるに足りる疎明はない。被申請人は、(本位的主張)の(7)において(イ)ないし(ニ)の事実を主張して「申請人らは、会社の事務所を旧日中貿易促進会労働組合、貿易一般労働組合又はその同調者との連絡場所として使用していた。」と主張するが右(イ)ないし(ニ)の事実は以上認定したとおりであるから右認定事実からは、右主張事実を認定することはできず、また、他に右事実を認めるに足りる疎明もない。8、以上認定したところによれば、申請人らは、善隣学生会館事件が起つた際の会社の華僑学生の応援行動、会社が行なつた各種のデモや集会に、業務命令として参加することを命じられた時以外は参加しなかつたのであるから、会社のこれら行動に関する限り積極的に参加してこれに協力する態度をとつていなかつたということができる。しかしながら会社の前記認定の特殊性を考えても、会社の右行動が会社の業務執行行為の範囲に属する行為とはいえず、更らに後に(三)、において認定する申請人らの入社の際の約束を考慮しても会社の右行動に参加することが申請人らの労働契約の内容となつていたものと解することはできない。そうすると、申請人らが会社の右行動に非協力的であつたことをもつて、申請人らを解雇するための理由とはなし難いから被申請人の本位的主張は失当である。(三)、次に被申請人の予備的主張である「会社には前記のような特殊性があり、申請人らもこれを充分承知のうえで、積極的に前記諸原則を実践することを確約して入社したにも拘 請人の本位的主張は失当である。 人らの労働契約の内容となつていたものと解することはできない。そうすると、申請人らが会社の右行動に非協力的であつたことをもつて、申請人らを解雇するための理由とはなし難いから被申請人の本位的主張は失当である。(三)、次に被申請人の予備的主張である「会社には前記のような特殊性があり、申請人らもこれを充分承知のうえで、積極的に前記諸原則を実践することを確約して入社したにも拘 請人の本位的主張は失当である。(三)、次に被申請人の予備的主張である「会社には前記のような特殊性があり、申請人らもこれを充分承知のうえで、積極的に前記諸原則を実践することを確約して入社したにも拘らず、会社の方針と全く反する思想、信条を懐き、且つ、これを公言したものであるから、申請人らはこの一事を以て解雇の正当事由とすることができる。」との点について考える。1、申請人A(第一回)、同B、被申請人代表者各本人尋問の結果によれば、申請人Aは、会社に入社する前にも同じく日中友好貿易に従事する商社に勤めていた関係で、友好商社が前述ような特殊性を有することを知悉しており、会社に入社するに際して特に前記諸原則の説明を受けなかつたが、右諸原則についても充分知つており、且つ、これを遵守することを約して入社したものであり、同Bは、社長から会社の特殊性及び右諸原則についての説明を受け、これを遵守することを約して入社したものであることが認められ、右認定を左右するに足りる疎明はない。2、証人Fの証言、申請人A(第一、二回、ただし第二回は一部)、同B、被申請人代表者(一部)各本人尋問の結果によれば、次の事実が認められ、右認定に反する申請人A(第二回)、被申請人代表者各本人尋問の結果の一部はたやすく措信できず、他に右認定を覆えすに足りる疎明はない。申請人らは、昭和四一年八、九月ごろから中国に対して批判的となり、申請人らの入社後に調印された議定書及び共同声明に対しては、これらの文書は一方的に毛沢東思想を日本の貿易業界に押しつけるものであるとして、反対の考えをもつていたところ、会社では右両文書についての理解を深めるという趣旨から、共同声明の調印に参加したE社長が帰国してから、社内で学習討論会議等を行なつたので、そのような際に申請人らは、積極的には賛否の意見を表明 ところ、会社では右両文書についての理解を深めるという趣旨から、共同声明の調印に参加したE社長が帰国してから、社内で学習討論会議等を行なつたので、そのような際に申請人らは、積極的には賛否の意見を表明しなかつたが、「右両文書には特定の思想を礼讃する内容が含まれているのに、それを会社が一方的に労働者に押しつけるのは不当ではないか。 議等を行なつたので、そのような際に申請人らは、積極的には賛否の意見を表明 ところ、会社では右両文書についての理解を深めるという趣旨から、共同声明の調印に参加したE社長が帰国してから、社内で学習討論会議等を行なつたので、そのような際に申請人らは、積極的には賛否の意見を表明しなかつたが、「右両文書には特定の思想を礼讃する内容が含まれているのに、それを会社が一方的に労働者に押しつけるのは不当ではないか。」といつて、暗黙のうちに右両文書に反対する態度を示した。右認定事実に基いて被申請人の右主張の当否を判断するに、憲法一四条一項の定める法の前の平等、信条による差別待遇の禁止は、本来、国家権力が、個人の信条によつて労働関係(その他政治関係、社会関係)において国民を差別して取扱つてはならないことを定めたものであるから、私人相互間の法律関係に憲法一四条が直接的な効力を及ぼすものではない。ところが、労働基準法三条は、右憲法的公序に副つて使用者は、労働者の信条を理由に解雇その他の差別待遇をなしてはならない旨規定している。したがつて、労使たる私人相互間の法律関係においては、一応、使用者は、労働者をその信条を理由として解雇することはできず、かゝる解雇は無効となる。しかしながら、憲法一四条の直接効を受ける分野においても、例えば、国家公務員の身分関係の如き特別権力関係においては、国家公務員が全体の奉仕者であることから生じる中立性の保持或いは身分の保障のためという公務員制度上の要請と憲法の志向する民主主義国家における基本的人権不可侵の理念とが調和する合理的範囲内において、国家公務員の信条の自由の保障が制限される。これと同じような考え方から、労働基準法三条が適用される労使の関係においても、企業の存続、発展という要請と労働基準法が志向する個別的労働関係における労働者保護の理念とが調和する合理的範囲内で労働者の信条の自由の保障が制限される 労働基準法三条が適用される労使の関係においても、企業の存続、発展という要請と労働基準法が志向する個別的労働関係における労働者保護の理念とが調和する合理的範囲内で労働者の信条の自由の保障が制限される場合があることは肯定しなければならない。しからば、右にいう合理的範囲とは、何を基準として判断されるべきものであろうか。抽象的にいえば、右基準は、労働者の有する信条の表現ないしは信条に基く行為が企業の運営を著るしく阻害することであるとするのが相当である。 企業の存続、発展という要請と労働基準法が志向する個別的労働関係における労働者保護の理念とが調和する合理的範囲内で労働者の信条の自由の保障が制限される場合があることは肯定しなければならない。しからば、右にいう合理的範囲とは、何を基準として判断されるべきものであろうか。抽象的にいえば、右基準は、労働者の有する信条の表現ないしは信条に基く行為が企業の運営を著るしく阻害することであるとするのが相当である。そしてその具体的な適用に当つては、労働者の信条の内容、企業の目的が右信条と矛盾する特殊性、労働者の企業内における地位、信条の表現方法、表現時期、場所等諸般の事情を考量した上、労働者の信条の表現が企業の運営を著るしく阻害する場合に、企業としては当該労働者を排除する等差別的取扱をすることが合法化されると考えるべきである。したがつて、若し、労働者の信条の表現が企業の運営を阻害しているとの具体的事実がないならば、労働者の信条の表現が、単に抽象的に企業の特殊性と矛盾しているとか、企業の経営者の信条と異なるとか、両者の属する宗教団体、政党その他の政治団体或いは経済団体その他の団体が異るからというが如き事由では、それらの事柄が労働契約の内容となつている場合と然らざる場合とを問わず、使用者が労働者を解雇その他差別待遇をすることは違法であり、そのような行為は公序に反するものとして無効であるといわなければならない。そこで本件についてみるに、前記のとおり、会社は友好商社であり、その業務を遂行するためには、政治、貿易三原則、政経不可分の原則のほかに、議定書、共同声明の趣旨にも従うことが必要とされていたのであつて、この点において通常の企業には見られない特殊性を有する。しかしながら会社は、あくまで貿易を業務とする株式 、政経不可分の原則のほかに、議定書、共同声明の趣旨にも従うことが必要とされていたのであつて、この点において通常の企業には見られない特殊性を有する。しかしながら会社は、あくまで貿易を業務とする株式会社であつて、同一の信仰の対象と教義を持ちそれに基いて礼拝祈祷の儀式を行ない布教を行なつて共同の信仰生活をすることを目的とする純粋の宗教団体とは著るしくその存在目的、意義を異にしているといわざるを得ない。なんとなれば宗教団体においては異教者がその団体に存在すること自体が団体の存在目的・意義と直ちに矛盾し、それを許容することはその存在目的・意義を失わしめることになるものと考えられるところ、本件においては、会社内に議定書、共同声明に反対の態度を会社内で表明した従業員が居ることによつて直ちに、友好商社としての存在目的・意義そのものが失われるという事実について疎明はない(もつとも、被申請人代表者本人尋問の結果には右趣旨に副う部分もあるが、たやすく措信できない。 こと自体が団体の存在目的・意義と直ちに矛盾し、それを許容することはその存在目的・意義を失わしめることになるものと考えられるところ、本件においては、会社内に議定書、共同声明に反対の態度を会社内で表明した従業員が居ることによつて直ちに、友好商社としての存在目的・意義そのものが失われるという事実について疎明はない(もつとも、被申請人代表者本人尋問の結果には右趣旨に副う部分もあるが、たやすく措信できない。)から、会社は、宗教団体とその存在目的・意義を異にするといえるのである。そうすると、会社の右特殊性とは、あくまでも対中国との関係において意味を有するものであつて、その従業員が議定書、共同声明の趣旨に反対したため、会社が中国との友好貿易を遂行するうえで妨げとなるという事態が発生したときに、初めて、そのことを理由として当該従業員を解雇することができるかどうかが問題となるのであつて、そのような従業員が存在すること自体では未だ従業員の処遇を問題にすることはできないものというべきである。従つて、本件においては、会社内において議定書、共同声明に反対の態度をとる申請人らが会社の従業員として止まることが、会社の業務の遂行に如何なる影響を及ぼすかということが、検討されなければならない。しかして、申請人Aが昭和 内において議定書、共同声明に反対の態度をとる申請人らが会社の従業員として止まることが、会社の業務の遂行に如何なる影響を及ぼすかということが、検討されなければならない。しかして、申請人Aが昭和四一年秋の広州交易会終了後北京に行く予定であつたところ、中国側から北京に入ることを断わられたことは当事者間に争いがなく、申請人らが昭和四一年八、九月ごろから中国に対して批判的な態度をとるようになつたことは前認定のとおりである。被申請人は、申請人Aが北京へ入れなかつたのは、同人の反中国的態度の結果であると主張し、証人Fの証言、被申請人代表者本人尋問の結果には、右主張に副う部分もあるが、これらは単なる推測に基くものであり、且つ、申請人A本人尋問の結果(第二回)に照らしてたやすく措信できず、他に右事実を認めるに足りる疎明はない。また、証人Fの証言及び被申請人代表者本人尋問の結果によれば、友好商社のうちのある会社が反中国的な立場に立つたために中国との取引が停止されたことが認められるが、これは会社自体が反中国的立場に立つた場合であつて、本件の場合のように、会社代表でも幹部でもなく、入社後数年を経過したにすぎない若年未経験の申請人ら(以上の事実は申請人ら各本人尋問の結果によつて認める。 ず、他に右事実を認めるに足りる疎明はない。また、証人Fの証言及び被申請人代表者本人尋問の結果によれば、友好商社のうちのある会社が反中国的な立場に立つたために中国との取引が停止されたことが認められるが、これは会社自体が反中国的立場に立つた場合であつて、本件の場合のように、会社代表でも幹部でもなく、入社後数年を経過したにすぎない若年未経験の申請人ら(以上の事実は申請人ら各本人尋問の結果によつて認める。)が、社内において前記両文書に反対の態度を表明しているものとは事案を異にし、必ずしも被申請人らの右主張の裏付けとなる資料ではない。また被申請人代表者本人尋問の結果には、申請人らが会社の従業員として止まることは取引上不利であるとの部分があるが、右部分は具体性に乏しくたやすく措信できない。その他、申請人らが会社の従業員として止まることが、会社の業務を遂行するうえに妨げとなることをうかがわせる事実の疎明はない。してみると、本件において会社が、申請人らが議定書、共同声明に反 ない。その他、申請人らが会社の従業員として止まることが、会社の業務を遂行するうえに妨げとなることをうかがわせる事実の疎明はない。してみると、本件において会社が、申請人らが議定書、共同声明に反対の態度をとつたことを理由として申請人らを解雇したことは、何らの合理的な理由もなしに申請人らの思想、信条を理由として差別的取扱をしたことに帰し、憲法一四条、労働基準法三条に基づく公序に反して許されないというベきであるから、申請人らが右のような態度をとるに至つた原因その他について判断するまでもなく被申請人の予備的主張は失当であることは明らかである。(四)、以上のとおり、被申請人の主張する解雇理由はいずれも理由がなく、結局、本件各解雇はいずれも正当な理由なくしてなされたもので、解雇権の濫用として無効であるというベきである。三、しかして、申請人らは賃金を唯一の生活の資とする労働者であるから、他に特段の事情がない限り、保全の必要性もまた存するものというべきところ、本件においては、特段の事情についての疎明がない(かえつて、申請人A本人尋問の結果によれば、申請人Aは現在職に就かず、カンパによつて生活していることが認められる。)ので、結局、申請人らの本件各申請は、いずれも理由があるものというべきである。よつて、申請人らの申請をいずれも認容し、訴訟費用につき、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。 ない限り、保全の必要性もまた存するものというべきところ、本件においては、特段の事情についての疎明がない(かえつて、申請人A本人尋問の結果によれば、申請人Aは現在職に就かず、カンパによつて生活していることが認められる。)ので、結局、申請人らの本件各申請は、いずれも理由があるものというべきである。よつて、申請人らの申請をいずれも認容し、訴訟費用につき、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。(裁判官西山要島田礼介瀬戸正義)
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