平成21(ワ)868 未払退職金請求事件(通称 大分県商工会連合会退職金規程変更)

裁判年月日・裁判所
平成23年4月8日 大分地方裁判所
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判決文本文31,478 文字)

- 1 -平成23年4月8日判決言渡平成21年(ワ)第868号未払退職金請求事件 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 請求の趣旨(1) 被告は,原告に対し,金237万4130円及びこれに対する平成21年6月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 訴訟費用は被告の負担とする。 (3) 仮執行宣言第2 事案の概要本件は,昭和44年10月16日からA商工会に勤務し,平成16年4月1日からは雇用確保のため各単位商工会に勤務する職員を被告が一元雇用することとなって被告に勤務し,平成21年3月31日に定年退職した原告が,①平成18年10月1日付けで被告により改正された退職給与規程は不合理な不利益変更であり無効である,②平成18年10月1日付けで被告により改正された職員給与規程も不合理な不利益変更であり無効である,③仮に前記職員給与規程の改正が有効であるとしても,被告による原告の職階認定は人事権の逸脱・濫用であり無効である,等と主張して,改正前の退職給与規程・職員給与規程に基づく算定額と実際の支給額の差である237万4130円が未払であるとして,その差額とこれに対する退職給与金差額分を請求した平成21年6月- 2 -4日付けの書面が被告に到達した日の16日後である平成21年6月21日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。 1 前提となる事実に関する当事者の主張(1) 請求原因ア原告は,昭和44年10月16日からA商工会に勤務していたが,大分 分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。 1 前提となる事実に関する当事者の主張(1) 請求原因ア原告は,昭和44年10月16日からA商工会に勤務していたが,大分県内の単位商工会をとりまとめる公益法人である被告と,平成16年4月1日に雇用契約を締結した。 イ原告は,平成21年3月31日,被告を定年退職した。勤続年数は39年である(平成21年4月24日付け「商工会等職員退職給与金送金通知書」,甲9)。 ウ被告には,退職給与金(以下「退職金」という場合がある。)支給につき,「大分県商工会等職員退職給与拠出金集中管理運営規約」(以下「退職給与規程」という。)が存するところ,平成18年10月1日の改正前の退職給与規程(乙20。以下「改正前退職給与規程」という。)における退職給与金額の計算方法は,以下のとおりである(第17条)。 (職員退職時の最終基本給)×(勤続年数に見合う支給率)=退職給与金額エ平成17年10月1日以降の原告の給与の号級は,補助員等給料表の39号であり(甲8〔辞令,平成17年10月1日付け〕),平成18年9月における経営支援員給料表39号給の給料月額は28万6100円である(甲7〔給与規程,平成18年4月1日改正後,同年10月1日改正前のもの。以下「改正前職員給与規程」という。〕,別表第2)。 これに,同じく改正前職員給与規程を適用すれば,毎年10月1日に行われる原告の定期昇給額は,年3000円とすべきであるが,一方で改正前- 3 -職員給与規程においては,58歳以上の職員は昇給がなく(第15条5項,甲7),原告が58歳となる平成19年3月31日以降は昇給がないことを踏まえ,原告の退職時の最終基本給は,上記に3000円を加算した28万9100円である(改正 上の職員は昇給がなく(第15条5項,甲7),原告が58歳となる平成19年3月31日以降は昇給がないことを踏まえ,原告の退職時の最終基本給は,上記に3000円を加算した28万9100円である(改正前職員給与規程別表第2,経営支援員給料表40号給相当)。 オ改正前退職給与規程によれば,退職金支給率は,52.3である(第17条2項,別表1)。 カよって,原告は,被告に対し,雇用契約に基づく退職金1511万9930円(28万9100円×52.3)のうち,下記被告弁済の主張記載の既払額1274万5800円を控除した237万4130円及びこれに対する原告が退職金請求の意思表示をした平成21年6月4日付けの「通知書」と題する書面(甲12)が被告に到達した日である同月5日から16日後(原告は被告に退職金請求書を提出していないが,被告は退職者が退職金請求書を提出した日から15日以内に退職金を支払うとされていることによる。改正前退職給与規程第12条。)の日である同月21日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (2) 請求原因に対する認否請求原因ア,イは認める。 同ウのうち,改正前退職給与規程の内容については認めるが,退職給与規程は平成18年10月1日付けで改正されている(争点(1))。 同エのうち,原告の平成17年10月1日時点での原告の給与号級及び給与額,平成18年9月の原告給料の月額は28万6100円であることは認めるが,その余は否認する。給与規程についても平成18年10月1日付けで改正されている(争点(2))。 改正前退職給与規程についての同オについては認めるが,退職給与規程は- 4 -上記のとおり変更されている。 同カのうち平成21年6月4日付け原告の退職金請求の意思表 (争点(2))。 改正前退職給与規程についての同オについては認めるが,退職給与規程は- 4 -上記のとおり変更されている。 同カのうち平成21年6月4日付け原告の退職金請求の意思表示をした旨の書面が同月5日に被告に到達したこと,被告による退職金支払の事実については認め,その余は争う。 (3) 抗弁(退職給与規程,職員給与規程の各改正と弁済)ア被告においては,平成18年10月1日,退職給与規程を改正し,退職給与金額の計算方法は変更された(改正後の退職給与規程〔大分県商工会等職員退職給与拠出金集中管理運営規約〕につき,乙20。以下これを「改正後退職給与規程」といい,その改正を「本件退職給与規程改正」という。)。 イまた,平成18年10月1日に,給与規程も改正された(平成18年10月1日改正後の職員給与規程を「改正後職員給与規程」といい,その改正を「本件職員給与規程改正」という。甲6。)。 ウ被告は,平成21年4月24日,改正後職員給与規程・改正後退職給与規程に基づき原告の退職金として計算した額である,1274万5800円を支払った。計算方法は以下のとおりである(甲9)。 26万9500円(原告の退職時の本棒)×44.4(勤続年数に見合う支給率)+78万円(退職給与金調整額)=1274万5800円なお,上記退職給与金調整額は,原告が経営支援員の係長級主査であったことから,退職給与規程別表2の区分5に該当し,1万3000円×60か月=78万円と算出されるものである。 これにより原告に対する退職金は支払済みである。 (4) 抗弁に対する原告の認否被告が各規程変更後の計算方法に基づき上記退職金の支払をしたことについての抗弁事実は認める。 (5) 再抗弁(各規程変更が不 に対する退職金は支払済みである。 (4) 抗弁に対する原告の認否被告が各規程変更後の計算方法に基づき上記退職金の支払をしたことについての抗弁事実は認める。 (5) 再抗弁(各規程変更が不利益であること)- 5 -ア平成18年10月1日付けでされた本件退職給与規程改正により,退職金の計算方法は以下のとおり変更されたが,これは原告に不利益である。 計算方法(職員退職時の最終基本給)×(退職理由別・勤続年数別支給率)+退職給与金調整額=退職給与金額イ原告の退職理由別・勤続年数別支給率は,44.4であり,改正前退職給与規程による支給率(52.3)よりも不利益に変更されている。 ウ退職給与金調整額の支給は,改正前退職給与規程には存在しなかったが,原告は,上記のとおり経営支援員の係長級主査であるとして本件退職給与規程改正後の退職給与規程別表2の区分5により1万3000円×60か月=78万円とされている。これは改正前退職給与規程により算出される額との差額分を埋めるに足りない。 エ平成18年10月1日付けでされた本件職員給与規程改正によれば,基本給自体が減額となっている。改正後の原告の最終基本給は,26万9500円であるが,これも原告に不利益であり,本件職員給与規程改正も不利益変更である。 (6) 再抗弁に対する認否原告主張の再抗弁の各内容につき認めるが,本件職員給与規程改正については,減額分相当額を現給保障として支給していることから,不利益はないといえる。 2 争点(1) 本件退職給与規程改正は合理性等を有し有効か(再々抗弁以下)(2) 本件職員給与規程改正は合理性等を有し有効か(再々抗弁以下)(3) 仮に職員給与規程改正が不合理な不利益変更と認められず無効でないとしても,原告の職 合理性等を有し有効か(再々抗弁以下)(2) 本件職員給与規程改正は合理性等を有し有効か(再々抗弁以下)(3) 仮に職員給与規程改正が不合理な不利益変更と認められず無効でないとしても,原告の職階認定は被告による人事権の逸脱,濫用であり無効か(争- 6 -点(2)についての予備的主張) 3 争点に関する当事者の主張(1) 本件退職給与規程改正は合理性等を有し有効か(被告の主張)以下のとおり,本件退職給与規程改正は,合理性を有する。 ア不利益の程度改正前退職給与規程により退職給与額を算出すると,26万9500円(原告の退職時の本棒)×52.3=1409万4850円であって,改正後退職給与規程に基づき算出した退職給与額1274万5800円との差は,134万9050円である。 イ改正の必要性(ア) 退職給与規程を改正した理由は,退職給与拠出金集中管理会計の健全化を図る,退職金制度を給与制度と同様に国・大分県(以下,単に「県」という場合は大分県をいうものとする。)に準じた制度とする,在職期間中の貢献度を反映できる制度改正を行う,こと等を目的としていた。 (イ) 被告の退職金基金の充足率は,平成7年度は71.1%,平成11年度は61.2%,平成16年度は57.1%と年々減少しており,改正前退職給与規程による支給を続けていくと,平成26年度には36.4%になることが見込まれ,そのまま放置すれば,退職金制度が崩壊することが想定されたことから,早急に規程を改正する高度の必要性があったものである。 ウ改正後退職給与規程の内容の相当性(ア) 退職給与の支給率を引き下げる一方,在職期間中の貢献度を勘案する部分として,上記のとおり退職給与金調整額を新設した。 (イ) また,被告は,以下の代償措置を講じ, 与規程の内容の相当性(ア) 退職給与の支給率を引き下げる一方,在職期間中の貢献度を勘案する部分として,上記のとおり退職給与金調整額を新設した。 (イ) また,被告は,以下の代償措置を講じ,労働条件の改善をした。 - 7 -a 平成18年4月1日,定年退職者の再雇用制度を導入した。これは,同年3月30日,被告と職員協議会代表との労使協定により,就業規則(「職員の再雇用に関する規程」第5条,乙1。)において基準を定めている。これについては同就業規則及び労使協定に従った運用がなされている。 b 平成18年4月1日,経営指導員等から事務局長に登用する事務局長登用制度を導入し,この制度により3名が登用された。 c 58歳に達した日以降の3月31日を超えて在職する場合の昇給停止制度を廃止した結果,58歳以上の職員の昇給が認められるようになった。 d 人事評価制度の導入によって,昇給だけでなく,昇給幅の拡大や退職金額算定時の調整加算事由となる職位の昇格があり得るようになった。 e 職階制の導入によって,勤務状況や勤務評定に応じた昇給幅の拡大が実現された。 エ職員団体等との交渉の状況被告は,本件退職給与規程の改正にあたって,職員に対し,十分な情報提供及び協議を行った。 すなわち,平成18年1月19日,人事管理委員会において,改正案が議題として提案された後,同年2月1日から6日にかけて,被告は,職員と意見交換会を行った。実質的に労働組合の役割をしている職員協議会は,同年3月29日から7月7日にかけて,改正案を検討するために組織した退職金制度プロジェクトチームによる委員会を5回開催し,同年8月17日,人事管理委員会宛てに,要望書を提出した。 これに対し,人事管理委員会は,同年9月14日に回答し,そ 検討するために組織した退職金制度プロジェクトチームによる委員会を5回開催し,同年8月17日,人事管理委員会宛てに,要望書を提出した。 これに対し,人事管理委員会は,同年9月14日に回答し,その結果につき職員に周知するため,これらを電子掲示板に掲載した。同月20日,- 8 -人事管理委員会が規程の内容を決定,勧告し,被告は,同月29日,臨時総会を開催し,本件退職給与規程改正につき承認を受けた。さらに,同月30日,人事管理委員会は,職員協議会と共催で,改正後退職給与規程についての説明会を開催した。 上記退職金制度プロジェクト委員会は,職員協議会が全会員を対象に委員を募集して組織したものであり,委員会の議事録も,職員協議会の電子掲示板に掲載され,職員全員が閲覧可能であった。 (原告の主張)ア被告の退職金基金の充足率が減少傾向にあり,退職金規程について,一定程度の変更の必要性が認められることは原告も否定しない。しかし,その根拠は,変更前の制度の運用を継続した場合,平成26年度には充足率が36.4%になることから早急な見直しが必要であるとし,10年後に充足率100%を目標とするものである。 しかし,被告の職員が全員同時に退職するという特殊な状況に陥らない限り,充足率100%を達成する必要性は認められないし,被告においては充足率80%等の場合を検討しないなど,安定的な運用をするために真に必要な充足率について検討した形跡が窺われない。そうすると,被告主張の変更の必要性はあくまで抽象的なものにすぎず,変更の高度の必要性は認められない。 イ代償措置として被告が主張するものはいずれも機能していない。 (ア) 再雇用制度は,被告においては再雇用を希望した者全員が再雇用されるものではない。そうすると,本人が希望しても再雇用さ い。 イ代償措置として被告が主張するものはいずれも機能していない。 (ア) 再雇用制度は,被告においては再雇用を希望した者全員が再雇用されるものではない。そうすると,本人が希望しても再雇用されない場合があるのであるから実質的には不利益な措置を採っているともいえる。 また,被告の「職員の再雇用に関する規程」(乙1)の第5条1項ただし書では,被告は設置定数を超える員数の解消のためには,再雇用職員- 9 -を採用しないことができるとされており,実際被告には設置定数以上の職員が在職しているのであるから,被告においてはいつでも再雇用を拒否できることになる。そうすると,再雇用制度が代償措置としての機能を果たしているとはいえない。 (イ) 原告が把握している限り経営指導員等から事務局長になったのは事務局長登用制度が導入されてから3名に過ぎず,事務局長登用制度も実質的に機能していない。 (ウ) 昇給停止の廃止については,そもそも大分県の給与規程の変更によって昇給停止が廃止されたため被告も廃止したものに過ぎず,代償措置として定められたものではない。 (エ) 人事評価制度は,職員の勤務状況等を適切に評価して支給される給与に反映させるものであるから,代償措置とは関連性がない。 (オ) 職階制の導入は,人事評価制度と同様,職員の働きに応じた役職を定めることを意図したものであるから,代償措置とは関連性がないし,職員は,何故その等級に該当することとなったかの説明を受けていないから,被告の恣意的な運用による人事評価が可能になっただけで代償措置としては機能していない。 ウ上記アのとおり10年後の充足率100%の目標というのは合理的な根拠に基づいておらず,平成18年から10年間の期間に退職する職員に対し,その期間の退職者が多いという理由のみに 機能していない。 ウ上記アのとおり10年後の充足率100%の目標というのは合理的な根拠に基づいておらず,平成18年から10年間の期間に退職する職員に対し,その期間の退職者が多いという理由のみによって著しく不合理な負担を強いており,合理的とはいえない。 エ交渉の経緯についても相当とはいえない。 被告は職員協議会が労働組合と同様の機能を果たすかのように主張をするが,被告には労働組合は存せず,また職員協議会は職員相互の交流を目的としたいわば親睦団体として発足した。その後においても,職員協議会- 10 -が被告に対し交渉をしたり意見具申をしたことがないことからも労働組合と同様の機能を果たしていたとは到底いえないというべきである。 そうすると,被告は退職金規程を変更するに際し,労働者の過半数の代表者と交渉する必要があるところ,労使協定(乙7)に労働者の過半数の代表者として押印したBは職員の議決によって代表者として選出されたのではなく,職員協議会の正副会長4名の協議によって選任されたに過ぎないから,Bは労働者の過半数の代表者とはいえない。 さらに,平成18年8月11日付け退職金制度プロジェクトチームが確定した要望案は要望書(乙3)として提出されたが,結局職員協議会の全体に諮ることもなく,平成18年9月20日の人事管理委員会において本件退職給与規程の改正案が決定された。このように本件退職給与規程の改正については職員間での十分な議論が尽くされているとはいえない。 (2) 本件職員給与規程改正は合理性等を有し有効か(被告の主張)ア本件職員給与規程の改正後も減額分については等しく現給保障がなされており,実質的な不利益を与えない内容となっている。これは代償措置として機能していることが明らかである。さらに,上記本件退職給与 ア本件職員給与規程の改正後も減額分については等しく現給保障がなされており,実質的な不利益を与えない内容となっている。これは代償措置として機能していることが明らかである。さらに,上記本件退職給与規程改正における代償措置も本件職員給与規程改正の代償措置として機能している。 イまた,職員給与規程の改正は,以下のとおり合理性を有する。 (ア) 本件退職給与規程の改正も同様であるが,被告は営利法人ではなく,商工会法に根拠を有する特別認可法人であり,その存立基盤や事業運営方針,財政基盤等について,国や都道府県の指導・監督に服するという特殊性から,従前から国の人事院勧告や大分県の人事委員会勧告が発せられる度にこれらに準じて給与規程の改正を行ってきた。本件職員給与- 11 -規程の改正も,平成18年4月1日,上記各勧告に従って国及び県が実施した抜本的俸給表改正に準じて行われたものである。 平成18年度以降,商工会連合会等に対する補助金交付は,各都道府県のみが行う事務となり,これにより被告を含む商工会連合会等は税源移譲によって都道府県の裁量により実施される補助金交付にその財政的基盤の大部分を依存せざるを得なくなった。 そして,国及び大分県は,平成18年4月1日,年功的な給与上昇の抑制と職務・職責に応じた俸給制度へ転換する方針の下,抜本的な俸給表改正を行っていることから,それに準ずる形で,被告においても職員給与規程を改正しなければならない高度の必要性があったものである。 (イ) 給与規程の変更内容も相当である。被告は,人事院及び大分県人事委員会が発した勧告(乙15,16)に準じた内容で本件職員給与規程の改正をなした。 上記人事院勧告等の趣旨は,長引く不況等により,従前は民間の方が勝っていた給与状況に逆転 院及び大分県人事委員会が発した勧告(乙15,16)に準じた内容で本件職員給与規程の改正をなした。 上記人事院勧告等の趣旨は,長引く不況等により,従前は民間の方が勝っていた給与状況に逆転現象が生じ,むしろ公務員の給与が高額となっているという時代背景をもとに,民間に比較して高額となった公務員給与を引き下げることによって不平等を是正しようとするものであった。人事院勧告等自体にそもそも合理性があるのであるから,それに準ずる内容に変更をした被告の本件改正後の職員給与規程にも合理性が認められる。 (ウ) 従業員代表等との交渉も適切に行われた。 被告は,国及び県が示した抜本的な俸給表改正方針を受け,人事管理委員会に対し,職員給与規程の改正に関する諮問をした。 人事管理委員会は,上記のとおり出された人事院勧告や大分県人事委員会勧告の内容を踏まえ,商工会職員に適用される給与規程の改正案を- 12 -検討し,その結果,平成18年9月20日,国及び県の方針に従い,年功的な給料昇給の要因を見直した新給料表を制定し,職務・職責に応じた職務給を導入すること等を内容とする新給与規程を作成した。 その上で,人事管理委員会は,平成18年9月25日,被告に対して同年10月1日から改正後職員給与規程を実施することを勧告した(乙2の1)。 被告は,平成18年9月30日,改正後職員給与規程及び改正後退職給与規程の内容等について職員協議会と共催して,全職員を対象とした説明会を開催した。 (原告の主張)ア本件職員給与規程改正の代償措置として被告が挙げる職階制の導入,人事評価制度等はいずれも代償措置として機能しないことは退職給与規程に関する主張と同様である。 現給保障については,切替日の前日までの給与の減額分 正の代償措置として被告が挙げる職階制の導入,人事評価制度等はいずれも代償措置として機能しないことは退職給与規程に関する主張と同様である。 現給保障については,切替日の前日までの給与の減額分の支給はあるものの,切替日以前の昇給によって得べかりし給与額からすれば,低い金額の給付しか得られないのであるから,代償措置としての機能は著しく低い。 イ本件職員給与規程の改正により基本給は減額となり賞与やその他手当が増額することはなかった。また変更は若手職員については引き下げを行わず,中高年層について引き下げを行うこととなっており,相当性を欠く。 ウ交渉の経緯についても,平成18年9月20日の人事管理委員会において決定し,同月29日の臨時総会で承認されたものであるが,この間,被告は給与規程の改正案について,職員の意見を聴いたりする機会を全くもっていない。 そうであれば,本件職員給与規程の改正については,労働者の過半数を代表する者の意見を聴くことなく一方的に決定されたものであり,労働者- 13 -の意見聴取義務に反する。 (3) 仮に職員給与規程の改正が不合理な不利益変更と認められず無効でないとしても,原告の職階認定は被告による人事権の逸脱,濫用であり無効か(争点(2)についての予備的主張)(原告の主張)仮に本件職員給与規程の改正が有効であるとしても,原告を係長級とした職階認定(2級52号)は人事権の逸脱・濫用として無効であり,以下の事情に照らせば,原告は課長補佐級(3級)と認定すべきである。原告は職員給与規程改正前においては経営支援員給与表40号であったところ,被告からは職員給与規程改正後の経営支援員等給与表2級47号と認定された際の基準を知らされておらず,対応関係は不明であるが,いずれにしろこれによれば,原 いては経営支援員給与表40号であったところ,被告からは職員給与規程改正後の経営支援員等給与表2級47号と認定された際の基準を知らされておらず,対応関係は不明であるが,いずれにしろこれによれば,原告の最終基本給は被告主張の26万9500円よりも高額になるはずである。 経営支援員等で3級の主幹に任命されるのは5名以内であり,3級の職務内容は,「極めて高度の知識及び経験を有する職務」と「課長補佐級としての職務」である(乙11)。 原告の補助員としての勤務歴は,本件職員給与規程の改正によって職階制度が導入された平成18年当時において,約35年と非常に長いものである。 そして,原告は共済の関係において非常に優秀な成果を上げてきた(「感謝状」ないし「表彰状」,甲14の1~7)。 それにもかかわらず,原告よりも職歴が7~10年くらい短い職員が原告よりも職階が上位に認定されている。 原告は,共済の分野に関して,大分県下で1~2名程度しか受けたことがない感謝状や表彰状を受けている(甲14の1,3,6,7)。原告は退職後も商工会の会員から相談をされるなど,会員からの信頼が厚かったことか- 14 -らも,原告が補助員業務をしっかりこなしていたことが窺える。 そうすると,原告は課長補佐級(3級)に任命される資格も能力も有していたのであって,それがされていないのは被告による恣意的な認定がされているからであって,人事権の濫用であり職階認定は無効である。 (被告の反論)人事評価が使用者の経営に重大な影響を及ぼすものであることに鑑みれば,人事評価の方法等が就業規則により定められ,これに基づき人事評価が行われている以上,個々の労働者の業績,能力等に関し,いかなる評価をするかは,基本的には使用者の人事権の裁量の範囲内の問題にすぎない。 人事評価の方法等が就業規則により定められ,これに基づき人事評価が行われている以上,個々の労働者の業績,能力等に関し,いかなる評価をするかは,基本的には使用者の人事権の裁量の範囲内の問題にすぎない。 したがって,職階制の下,被告において,原告に対する職階認定にあたっては人事権の裁量が広く認められる。 被告は,平成18年10月1日以降,「人事評価制度について運用マニュアル」(乙15)に従って人事評価を行っている。これは,客観的事実に基づき,複数人からの評価を通した上で評価結果が出るシステムとなっており,被告にはこの恣意的運用が出来ないのであるから,当該人事評価制度が客観的に合理的な制度であることは明らかである。すなわち,個人目標に対する達成度についての「実績評価(定量・定性)」と職務遂行能力を評価する「能力評価」を行う仕組みを採用して,透明性,公平性,納得性を確保し,また評価基準を公開し,複数の評価者による評価をし,評価者の研修も行うなどしている。評価の方法としては,評価期間終了後,まず本人が自己評定をし,次に第一次評価者として指導課長(不在の商工会では事務局長)が,第二次評価者として事務局長(不在の商工会では副会長)が,最終評価者として商工会長がそれぞれ評価を行った後,その結果に基づき,評価基準の公平さの確認と採点ミスのチェックのために,人事管理委員会が精査した上で,評価を決定するものとしている。このうち「実績評価(定量・定性)」につ- 15 -いては,「定性評価における標準評価「3」(やって当たり前)と判断される事例」(「人事評価制度について運用マニュアル」乙15)にあるとおり,原告主張の共済業務に関しては,「各種共済推進,加入,解約の迅速処理」が「出来ている」ことが標準評価とされており,殊更に人事評価において高評 評価制度について運用マニュアル」乙15)にあるとおり,原告主張の共済業務に関しては,「各種共済推進,加入,解約の迅速処理」が「出来ている」ことが標準評価とされており,殊更に人事評価において高評価を受け得るものとはされていない。 平成18年1月1日から同年10月1日までの人事評価制度についても,基本的にはそれ以後の制度と同様である(「人事評価制度の基本(要約版)」,乙26)。 平成17年12月31日以前においては,人事評価制度に関し上記のような規程は整備されていない。これは原則としていわゆる年功序列的な昇給が実施されてきたからであるが,各単位商工会では,単位商工会ごとに定められていた年度目標(「事業評価システム」)を基にした管理が実施されてきたことは当然であり,平成18年1月1日以前に策定された人事評価の試行制度は,まさにそれまで単位商工会等の管理職的な立場にあるものが,職員の勤務態度や能力を評価する際に考慮してきた点を具体化したものである。 上記のような人事評価制度のもとで,原告の勤務態度等を評価してきたものであるから,恣意性は何らなく,人事権の濫用と評価すべき事情は微塵もない。 第3 当裁判所の判断 1 本件の争点は,①平成18年10月1日付けでされた本件退職給与規程改正は不合理な不利益変更であり無効であるか,②平成18年10月1日付けでされた本件職員給与規程改正も不合理な不利益変更であり無効であるか,③仮に本件職員給与規程改正が有効であるとしても,被告による原告の職階認定は被告による人事権の逸脱・濫用であり無効であるか,である。 使用者が,あらたな就業規則の作成又は変更によって,労働者の既得の権利- 16 -を奪い,労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは,原則として,許されないが,当該規則条項 か,である。 使用者が,あらたな就業規則の作成又は変更によって,労働者の既得の権利- 16 -を奪い,労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは,原則として,許されないが,当該規則条項が合理的なものであるかぎり,個々の労働者において,これに同意しないことを理由として,その適用を拒むことは許されないと解すべきところ(最高裁昭和43年12月25日大法廷判決・民集22巻13号3459頁),そこでいう当該規則条項が合理的なものであるとは,当該就業規則の作成又は変更が,その必要性及び内容の両面からみて,それによって労働者が被ることになる不利益の程度を考慮しても,なお当該労使関係における当該条項の法的規範性を是認できるだけの合理性を有するものであることをいい,また特に賃金,退職金など労働者にとって重要な権利,労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の作成又は変更については,当該条項が,そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容できるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合においてその効力を生ずるものというべきである(最高裁昭和63年2月16日第三小法廷判決・民集42巻2号60頁)。 以上を前提に,本件を検討する。 2 証拠(甲1~16,乙1~28,証人C,同D,同B,原告本人)及び弁論の全趣旨から認定し得る本件の基礎的事実関係は以下のとおりである。 (1)ア原告は,昭和44年10月16日からA商工会に勤務し,昭和47年4月1日に補助指導員に任命された。その後,雇用確保のため各単位商工会に勤務する職員を被告が一元雇用することとされ,平成16年4月1日からは被告に勤務することとなった。原告は,平成18年10月1日に補助員の名称が経営支援員に変更になったことで経営支援員に任命され,平成21年3月3 被告が一元雇用することとされ,平成16年4月1日からは被告に勤務することとなった。原告は,平成18年10月1日に補助員の名称が経営支援員に変更になったことで経営支援員に任命され,平成21年3月31日に被告を定年退職した。勤続年数は39年である。 イ補助員ないし経営支援員の仕事内容は,経営指導員の補助的な仕事である。 - 17 -ウ被告は,昭和36年10月9日,大分県下の商工会の健全な発達を図り,商工業の振興に寄与するため設立された団体である。 被告においては,職員全員が加入し(ただし,パート職員は任意加入),職員の処遇改善や身分保障に関する調査,研究,提言等を行うことを目的とする大分県商工会職員協議会(以下「職員協議会」という。)がおかれている(大分県商工会職員協議会規約〔乙14〕)。 また,大分県商工会等人事管理委員会(以下「人事管理委員会」という。)は,職員の採用等人事に関する基本方針の決定や職員の給与の決定,昇格,昇給等にかかる基本方針及びその基準に関する事項,職員の人事評価等を審議する機関であり,県の商工会連合会である被告を指導する立場にあるとして大分県から1名,被告傘下の商工会長の中から3名(ただし合併による経過措置により5名の場合がある),職員の利益代表として,事務局長,経営指導員,補助員(経営支援員),記帳専任職員の各職種毎に設定されている委員会から選任される代表者が3名,被告専務理事によって構成されている(「大分県商工会等人事管理委員会規程」,乙23,24)。 (2)ア平成17年3月当時,被告の退職給与拠出金基金の充足率は,他の九州各県と比して最も低い水準にとどまっており,これが平成26年度には,36.4%に減少すると予想された。すなわち,被告の退職給与拠出基金制度の充足率は,平成 告の退職給与拠出金基金の充足率は,他の九州各県と比して最も低い水準にとどまっており,これが平成26年度には,36.4%に減少すると予想された。すなわち,被告の退職給与拠出基金制度の充足率は,平成7年度は71.1%,平成11年度は61.2%,平成16年度は57.1%と年々減少しており,平成26年度は36.4%になることが見込まれた。また,九州各県において,平成17年3月当時の充足率を比較すると,最も高い宮崎県が80%,長崎県が78.8%,佐賀県,熊本県,鹿児島県,沖縄県が60%台であるのに比較して,大分県のみが50%台であった(福岡県は不明)。 全国的にみると,既に退職給与規程の見直しを行っている商工会もあり,- 18 -例えば岡山県商工会では,平成14年7月25日に県理事会の承認を受けた改正規程では,勤続年数7年以上の職員の退職については退職金支給率(退職理由別・勤続年数別支給率)をすべて引き下げ,原告の相当する勤続39年の定年退職の場合についてみると,変更前の56.0から42. 9に引き下げられている(甲2の3)。 そこで,被告は,平成17年7月から平成18年1月にかけて対応策の検討を行うこととなった。 具体的には,当時職員代表委員5人が参加する人事管理委員会において,平成18年1月19日に,退職給与規程の改正に関する提案として,「職員退職給与拠出金集中管理の見直しについて(提案書)」(以下「提案書」という。甲2の3)が提出された。同日の人事管理委員会においては,未だ職員側との協議が行われていなかったことから,職員協議会としての意見を集約する必要があるとされた。 そこで同月26日に開催された職員協議会役員会において,被告に対し退職給与規程の改正案に関する説明を求めるとともに,職員に対しこの内 職員協議会としての意見を集約する必要があるとされた。 そこで同月26日に開催された職員協議会役員会において,被告に対し退職給与規程の改正案に関する説明を求めるとともに,職員に対しこの内容を周知することが必要であるとした。そこで,職員協議会は,同月27日付け職員協議会会長B作成の職員協議会会員各位宛て文書として,「商工会等職員退職金制度の見直しについて」(甲2の1)を職員に配布した。 同文書には,低金利情勢等により退職給与拠出基金充足率が低下し退職金支給が不可能な状態となって破綻の可能性があること,そのため職員協議会の役員会で検討した結果,上記提案書(甲2の3)を職員に配布して内容を周知し,意見を聴取した上で職員協議会としての意見を集約する必要があること,今後の職員の意見聴取のための具体的スケジュール及び支部ごとの説明会,意見聴取までに全職員が各自意向を考えておくようにとの記載がされている。同文書とともに,職員に対しては,上記提案書(甲2- 19 -の3)が配布された。提案書には,「現状のままでは破綻する職員退職金会計の改善案」との見出し下の副題のもと,以下の提案の記載があり,各提案について,詳細な説明がされている。 「提案1.運用の改善と,給付基準の引下げ。 提案2.現行の制度を廃止し,新しい退職金制度への移行。」イ被告は,平成18年2月1日から同月6日にかけて,職員協議会との共催の形で,大分県内の6地区の職員に対し,地区別の説明会(意見交換会)を開催した。同月2日に開催された退職給与制度の変更に関する説明会には,被告事務局長のE,Fが出席し,原告も参加した。その際,上記提案書(甲2の3)も出席者に対し配布され,これに基づき説明がなされた。 また,同月1日ないし9日の間に,職員協議会に 説明会には,被告事務局長のE,Fが出席し,原告も参加した。その際,上記提案書(甲2の3)も出席者に対し配布され,これに基づき説明がなされた。 また,同月1日ないし9日の間に,職員協議会における退職金問題アンケート調査も被告の全職員に対し実施された(乙18の5,第1号議案の2頁〔通算5丁目〕,証人C)。 同アンケートは,職種,勤続年数,性別について回答をした後,設問3において,「見直し(案)について」として,上記提案1,2についてそれでよいか,改善を加えるべきか,提案1,2以外の提案をするかについて選択することが求められ,【改善策】として,「提案1(運用の改善と給付基準の引下げ」「提案2 現行制度を廃止し,新しい退職金制度への移行」「提案3 提案1,2以外」として,運用面,給付基準につき自由記載ができる体裁となっている(甲3,2頁)。 一方,職員協議会においても,職員協議会で退職給与規程改正の議論をすべく,職員協議会内に退職給与規程の改正を検討するプロジェクトチームの発足を提案することとし,具体的には,平成18年2月16日の職員協議会の役員会において,次回開催される同年3月6日の人事管理委員会にプロジェクトチームの設置等を提案することとされた。そして,同日の- 20 -人事管理委員会でその旨説明された。 平成18年2月28日,職員協議会から人事管理委員会に対し,①退職給与規程改正の実施時期を平成18年10月1日を目途とすること,②職員で構成するプロジェクトチームにおいて検討を行うので,支援してほしい旨の申出があり,人事管理委員会もこれを了承した(乙5,23頁)。 平成18年3月7日,Bは,大分県商工会職員協議会会長名で,職員協議会会員に対し,「人事管理委員会へ退職金制度の報告書の提出とプ 申出があり,人事管理委員会もこれを了承した(乙5,23頁)。 平成18年3月7日,Bは,大分県商工会職員協議会会長名で,職員協議会会員に対し,「人事管理委員会へ退職金制度の報告書の提出とプロジェクトチームの委員募集について」と題する書面を提出し,プロジェクトチームの委員を募集した(乙13)。これにより,年代,地域,職種を考慮してプロジェクトチームのメンバーが選ばれた。原告は,上記書面を見たものの,プロジェクトチームには参加しなかった。 同プロジェクトチームによる委員会は,平成18年3月29日に第1回,同年4月14日に第2回,同月28日に第3回,同年6月22日に第4回の委員会が開かれた(乙18の6,5丁)。同日の第4回プロジェクトチームの委員会には,委員長のG,副委員長であり前の職員協議会会長のH,B,I,J,K,L,M,Nの各委員が参加した。同日の委員会にO株式会社の職員2名も参加し,確定拠出年金制度の説明もされた(乙12)。 また,プロジェクトチームにおいては,新しい退職給与規程が適用された場合の退職金額や,それを前提とした基金拠出金,充足率等の推移に関するシミュレーション結果(乙9)の提出を被告から受けた上で議論がされた。また,プロジェクトチームでは,退職金の個別管理方式を採用することの提案についての検討がされたりもした(乙10)。 その後,プロジェクトチームは,同年7月7日に第5回,同年8月11日に第6回の委員会を開いたが,結局具体的な改正案の立案には至らなかった(乙5)。 - 21 -同年8月17日,Bは,職員協議会の会長として,退職金問題プロジェクトチームの委員長であるGと連名で,人事管理委員会委員長のP宛てに「要望書」(乙3)を提出した。同要望書には,「1.充足率について」として,1 日,Bは,職員協議会の会長として,退職金問題プロジェクトチームの委員長であるGと連名で,人事管理委員会委員長のP宛てに「要望書」(乙3)を提出した。同要望書には,「1.充足率について」として,10年で100%が理想であるが,急激な改正は職員の勤労意欲等に多大な影響,不利益等ももたらすので,ソフトランディングによる見直しを願いたい,その他として,退職金制度の見直しを3年毎に行い,決算を職員協議会に開示してほしい,今後策定される新制度の案については職員協議会に提示してほしい旨が記載されている。 この要望書に対し,人事管理委員会委員長Pは,同年9月14日,「要望書(職員退職金制度の見直しについて)の回答について」(乙4)と題する書面により,10年をかけて基金充足率100%を目指すものでありソフトランディングによる見直しを行うものであること,今後も3年毎に退職金制度を見直し,今後策定される案についても人事管理委員会に提示すること,等を回答した。 これらプロジェクトチームでの協議結果や,要望書,回答等については,被告の電子掲示板に掲載され,職員であれば誰でもパソコンを通して閲覧可能な状態にあった。原告も,上記要望書及びこれに対する回答がなされたことはその当時知っていた。 ウ(ア) 一方,給与規程に関しては,平成17年秋ころに国及び県が,年功的な給与上昇の抑制と,職務・職責に応じた俸給制度へ転換するとの方針を示していた。 まず国(人事院)は,平成17年8月15日,平成17年4月の官民の給与較差に基づき給与等を引き下げ,昇給制度等についての見直しも行い,これらを平成18年4月1日から行うことを勧告した(乙16)。 さらに大分県人事委員会は,平成17年10月5日,「職員の給与等- 22 -に関する報告 昇給制度等についての見直しも行い,これらを平成18年4月1日から行うことを勧告した(乙16)。 さらに大分県人事委員会は,平成17年10月5日,「職員の給与等- 22 -に関する報告及び勧告の概要」(乙17)とする書面を発したが,そこにおける「本年の給与勧告のポイント」として,①公民給与の逆較差を解消するため,2年振りに月例給の引下げ改定を行い(0.37%減),給料月額の引下げ,配偶者に係る扶養手当の引下げを行うこと,②期末・勤勉手当の引上げ(0.05月分)を行うこと,③給料制度,諸手当制度全般にわたる抜本的な見直しを実施し,給料水準を引き下げ,給与カーブのフラット化をはかり,勤務実績の給与への反映等を行い,結果として平均年間給与は減額となること(行政職で平均4000円,0. 1%減),給与構造の抜本的な見直しを国家公務員に準じて実施すること,等が示された。そして,上記国家公務員の給与構造の改革に準じた給与改定の具体的内容として,昇給の区分を設けることにより,職員の勤務成績が適切に反映される昇給制度を導入することが示され,その実施時期を平成18年4月1日とし,さらに,公務運営の改善に関する課題として,能力・実績に基づく新たな人事管理制度への対応が掲げられている(乙17)。 (イ) 被告においては,それまでは職員の人事評価制度に関する規定として整備されたものは存在しなかったため,上記を踏まえて新たな人事評価制度を導入することとし,これを平成18年1月1日から試行して,同年4月1日から実施することとした。その内容は「人事評価制度の基本(要約版)」(乙26)としてまとめられている。また,平成18年10月1日以降は,これをより詳細にした「人事評価制度について運用マニュアル」(乙15)に沿って人事評価が行われている。 制度の基本(要約版)」(乙26)としてまとめられている。また,平成18年10月1日以降は,これをより詳細にした「人事評価制度について運用マニュアル」(乙15)に沿って人事評価が行われている。 上記人事評価制度が試行される平成18年1月1日以前においては,上記のとおり被告において特段の人事評価制度に関する規定は置かれていなかったが,就業規則で定められた懲戒規定によって処分等がなされ- 23 -ない限りは,いわゆる年功序列的な昇給が実施されてきた。 (ウ) 国及び県は,上記に沿った抜本的な俸給表の改正を,平成18年4月1日に行った。被告はそれまでも人事院勧告や県の人事委員会勧告に準じて給与等の改正を行ってきており,国及び県が給与等の改正を行った場合には被告においてもその改正日に合わせて同旨の改正を行ってきた。しかし,上記平成17年秋における国及び県の方針は,抜本的な改正であったことから,被告の職員にも十分な資料を開示し,慎重な検討をするための期間を設けることとした。 (エ) その一方で,被告は平成18年3月までは国及び県から,同年4月1日以降は,国の小規模事業経営支援事業費補助金が地方に税源移譲されることとなって県からの補助金を受けることが事業運営に必要不可欠であり,しかも被告における収入の大半をこれら補助金が占めていた。 そうしたところ,県の「小規模事業経営支援事業費補助金交付要綱」(乙6)には,「補助金の経費の運用に関する事項」として,「補助対象職員の俸給の支給に当たっては,商工会等及び県連合会の支給規程に基づき,又は県職員の支給規程に準じて行うものとする。」(乙6,85頁下14行~下13行)とされており,被告の職員給与等に関しても国や県の方針には従わざるを得ない状況にあった(証人D,乙25)。 き,又は県職員の支給規程に準じて行うものとする。」(乙6,85頁下14行~下13行)とされており,被告の職員給与等に関しても国や県の方針には従わざるを得ない状況にあった(証人D,乙25)。 被告においては,以下のとおり,退職給与規程の改正と併せ,人事管理委員会において,国及び県に準じた職務給等を導入し,給与規程を改正することについて検討を行った。 エ人事管理委員会は,平成18年9月20日に審議を行って,以下のとおり決定をした。そして,この内容に従い諸規定等を改定して実施することを被告に対し同月25日に勧告した(乙2の2)。人事管理委員会の決定の概要は,①商工会職員の職員給与規程の制定,として,改正前職員給与- 24 -規程〔給与規程〕を平成18年9月30日付けで廃止し,同年10月1日から本件改正後職員給与規程を制定実施すること,②新給料表の切替えは,人事管理委員会で定めた基準に従い決定するものとすること,③職員の昇給制度につき,4月及び10月昇給を廃止し,1月1日に統一して同日前1年間における勤務成績等に応じて行うものとすること,等である。 上記平成18年9月20日の審議においては,職員協議会の意見も示されたが,結局同年1月19日の提案書から比べると,①退職金支給率を提案書の案から引き上げる(具体的には,提案書〔甲2の3〕においては,勤続33年の支給率52.3を36.61に引き下げる案が示されていた。 これは,本件改正後退職給与規程では43.6となっている。),②退職金支給額への貢献度加算を認める,③定年と自己都合の退職事由による支給率の区別,等の内容が加えられたことから,上記決定に至ったものである。 また,上記平成18年9月25日に行われた人事管理委員会において,本件職員給与規程の改正に伴う職 の退職事由による支給率の区別,等の内容が加えられたことから,上記決定に至ったものである。 また,上記平成18年9月25日に行われた人事管理委員会において,本件職員給与規程の改正に伴う職員の昇給の号給数については,毎年1月1日に統一して同日前1年間の全部を良好な成績で勤務した職員の号級数を3号級または4号級とすることを標準として人事管理委員会で定める基準に従い決定するものとするが,昇給抑制職員に該当する職員を昇給させる場合の号給数は,上記期間の全部を良好な成績で勤務した職員の号給数を2号級とすることを標準として人事管理委員会で定めた基準に従い決定するものとすることを勧告した(乙2の1)。その内容については職員の電子掲示板に掲示された(乙2の2)。 平成18年9月29日,被告の臨時総会において,本件退職給与規程・本件職員給与規程の各改正が承認され,原告もこれを知った。 被告は,平成18年9月30日,新給与規程及び退職給与規程の内容等- 25 -について,職員協議会と共催して,全職員を対象とした説明会を開催し,97名が出席した(乙18の6,内容部分4頁)。原告はこれに参加しなかった。 (3) 本件退職給与規程改正・本件職員給与規程改正に伴い,被告においては,代償措置として以下のとおりの措置がとられた。 ア再雇用制度被告は,「労働者の過半数を代表する者」とする職員協議会会長Bとの間で,「継続雇用制度の対象とする高年齢者の基準に関する労使協定」(以下「継続雇用協定」という。乙7)を締結した。継続雇用協定は,「高年齢者雇用安定法第9条第2項に基づき,継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準について以下のとおり協定する。」として,再雇用による継続雇用制度の導入,選考基準として,「働く意思・意 協定は,「高年齢者雇用安定法第9条第2項に基づき,継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準について以下のとおり協定する。」として,再雇用による継続雇用制度の導入,選考基準として,「働く意思・意欲」に関する基準・「勤務態度」に関する基準,「健康」に関する基準,「能力・経験」に関する基準により選考された者を継続雇用すること等を内容として,平成18年3月30日に協定が成立した。 そして,平成18年4月1日に実施された「職員の再雇用に関する規程」(乙1)には,第5条1項として,再雇用職員の採用は,被告と職員の過半数を代表する者との間で締結された上記継続雇用協定により,本人が希望する場合で定年退職前の勤務実績及び人事評価等に基づいて,県連会長と商工会長が協議の上,継続雇用対象者選考評価表による選考を行うこととされている。なお,同条ただし書で,大分県小規模事業経営支援事業費補助金交付要綱に定める職員設置定数の変更による予算の減少若しくは設置定数を超える員数の解消又は組織上特に必要とする理由により,採用しないことができる,と定められている。 平成18年4月1日に再雇用制度が実施されて以降の定年退職者6名の- 26 -うち原告を除く5名の再雇用については,①経営指導員であった者で,退職後経営指導員ないし商工会事務局長として再雇用された者が3名,②経営支援員であったが再雇用の希望をしなかった者1名,③経営指導員であり再雇用を希望したが,継続選考評価において継続雇用不可とされたことから再雇用されなかった者1名となっている。 イ事務局長登用制度平成18年4月以前の各単位商工会でのものも含め,昭和44年以降,被告において経営指導員等から事務局長に登用された者は合計15名であり,平成18年4月1日に事務局長登用制 務局長登用制度平成18年4月以前の各単位商工会でのものも含め,昭和44年以降,被告において経営指導員等から事務局長に登用された者は合計15名であり,平成18年4月1日に事務局長登用制度が実施された後に事務局長に登用された者は,3名である。 ウ昇給停止の廃止措置改正前職員給与規程の第15条5項は,「前1項(判決注;昇給規程)の規定にかかわらず,職員が58歳に達した日以降の3月31日を越えて在職する場合は,当該3月31日の翌日以降昇給しない。」と定められていたところ,本件職員給与規定改正により,これが廃止された。 エ人事評価制度被告は,上記のとおり,人事評価制度に関して「人事評価制度の基本(要約版)」(乙26)に則した評価を行うこととして,平成18年1月1日から同内容を試行し,同年4月1日から実施した。そして,平成18年10月1日からは,これをより詳細にした「人事評価制度について運用マニュアル」(乙15)に沿って評価を行うこととしている。これらによる人事評価制度は,基本構成を実績評価と能力評価に分け,実績評価としては,「職員が組織目標等を明確に意識し主体的に業務遂行に当たることを促すために,目標管理の仕組みを導入し,個人目標に対する達成度を含め評価期間の成果や取組内容を評価するもの。」とし,また能力評価として- 27 -は「職員の主体的な能力発揮・能力開発を促すために,職員の職務遂行能力を評価するもの。」として,これら評価結果を人事配置や昇格,勤勉手当や昇給等の給与面に反映させるとしている。また,評価の方法としても,評価の公平性を確保するため,複数の評価者による評価を経るものとされている。 オ職階制の導入本件職員給与規程改正により,上記人事評価制度に則して勤務状 。また,評価の方法としても,評価の公平性を確保するため,複数の評価者による評価を経るものとされている。 オ職階制の導入本件職員給与規程改正により,上記人事評価制度に則して勤務状況や勤務評定に則した給与規定が定められた。経営支援員に関しては,本件改正前職員給与規程においては,その最高額は29万2100円(41号,甲7)であったところ,35万7200円に引き上げられた(3級113号,甲6)。 (4) 本件退職給与規程改正による変更内容は,退職給与の支給率を引き下げる一方で,貢献度を勘案するための方策として,退職給与調整額を導入した。 まず退職給与の支給率の引下げについては,勤続年数5年未満の定年退職者以外についてはすべて引下げの対象とし,定年退職に比して自己都合退職についての引下げ率を大きくしている。勤続年数5年以上の職員について定年退職時の支給率は,11.3%ないし29.7%の引下げとなっており,最も引下げ率が大きいのは勤続10年の場合であり,引下げ率が20%を超えているのは,勤続8年ないし10年,31年となっており,19%台が勤続7年,15年の場合となっている(いずれも定年退職)。定年退職の場合,勤続5年以上の場合いずれも11%以上の引下げ率となっている。自己都合退職の場合の引下げ率は20.3%(勤続40年)ないし58.6%(同10年)となっている。 原告の場合(勤続39年の定年退職)の支給率は,52.3から44.4へと引き下げられ,率にすると15.1%の引下げ率となっている。 - 28 -一方,新たに導入された退職給与金調整額は,改正後退職給与規定の別表2における区分に従い,「…別表2に定める区分に属していた期間に応じて定める額のうち,当該職員が属していた区分のその額が多いものから60 ,新たに導入された退職給与金調整額は,改正後退職給与規定の別表2における区分に従い,「…別表2に定める区分に属していた期間に応じて定める額のうち,当該職員が属していた区分のその額が多いものから60月分の調整月額を合計した額を支給するものとする。」(改正後退職給与規定第17条4項)とされている。 別表2は,区分1ないし6として,区分1は給料表6級に該当する職員につき調整月額3万2500円,区分2は給料表5級に該当する職員につき調整月額2万6000円等とし,区分5は給料表2級に該当する職員につき月額1万3000円,区分6はその他職員として,調整月額はゼロとなっている。また,5号区分の調整月額は勤続25年以上の退職者に限るとされている。原告の場合,5号区分に該当するものとして,1万3000円の60か月分が支給されている。 (5) また,上記のとおり,本件職員給与規程改正による変更内容は,給料表のすべての給料月額について引き下げるが,若手の係員層については引下げを行わないで中高齢層について平均を上回る引下げを行うことにより給与カーブをフラット化するとともに,引下げ分については現給保障することとした。 モデル給与例によれば,25歳の独身係員で年間給与の減額は1000円,30歳の配偶者有りの係員で年間給与の減額が6000円,40歳の係長(配偶者,扶養に係る子2人あり)で年減額8000円,50歳の課長補佐(配偶者,扶養に係る子2人あり)で年減額6000円,55歳の課長(配偶者,扶養に係る子1人あり)で年減額1万円,60歳の部長(配偶者あり)で年減額9000円,となっている。 本件職員給与規程改正により,原告の基本給自体が引き下げられ,退職金算定の基礎となる最終基本給は26万9500円である。 しかし,本件職員給与規 )で年減額9000円,となっている。 本件職員給与規程改正により,原告の基本給自体が引き下げられ,退職金算定の基礎となる最終基本給は26万9500円である。 しかし,本件職員給与規程改正に伴う減額分については,原告を含むいず- 29 -れの職員についても現給保障として減額分が支給されており,給与額自体に関しては不利益な点はない。 なお,平成18年10月1日以降,原告の基本給は以下のとおり昇給している。 平成18年10月1日ないし同年12月31日 26万2900円(2級47号,現給保障のための加算額2万3200円)平成19年1月1日ないし同年12月31日 26万4300円(2級48号,現給保障のための加算額2万1800円)平成20年1月1日ないし同年12月31日 26万6900円(2級50号,現給保障のための加算額1万9200円)平成21年1月1日ないし同年3月31日(退職) 26万9500円(2級52号,現給保障のための加算額1万6600円)(6) 原告は,定年退職後もそのままA商工会で再雇用されることを希望したが,Q地区の商工会での再雇用を打診され,これを断ったことなどから,被告は,平成21年2月27日付けで,原告に対し,定年退職後の再雇用を行わないことを決定した旨を通知した(甲11)。原告は,平成21年3月31日,被告を定年退職した。 被告は,平成21年4月24日,原告に対し,退職金として1274万5800円を支払った。これに対し原告は,平成21年6月4日付け通知書で,平成18年10月1日付けの退職給与規程の変更は無効であるとして,平成21年4月24日に支払われた上記金額との差額268万7930円の支払を請求し,この通知書は,同年6月5日,被 4日付け通知書で,平成18年10月1日付けの退職給与規程の変更は無効であるとして,平成21年4月24日に支払われた上記金額との差額268万7930円の支払を請求し,この通知書は,同年6月5日,被告に到達した。 3 上記で認定した事実を基に,本件退職給与規程改正,本件職員給与規程改正につき,それら変更の合理性等の有無につき検討する。 (1) まず,本件退職給与規程改正・本件職員給与規程改正により,原告が被る- 30 -不利益の程度について検討する。 アまず本件改正後退職給与規程の退職給与額の算定基準となる「最終基本給」の額について,本件改正後職員給与規程による額(26万9500円)を基準としても,本件改正前退職給与規程の計算式によって計算すると,26万9500円×52.3=1409万4850円であり,被告が原告に対して本件改正後退職給与規程に基づき支払った退職金給与額は1274万5800円であるから,その差額は134万9050円である。これは,本件退職給与規程改正によって,計算の基礎となる勤続年数に見合う支給率が52.3から44.4に引き下げられ,新たに本件退職給与規程改正により設けられた退職給与調整額の支給(78万円)によってもこれを埋めるに足りず,退職金給与額が減少しているものであるから,本件退職給与規程改正は,原告にとり不利益なものである。 イ次に本件改正後職員給与規程によれば,給与としての支給額については現給保障がされていることから,本件改正の前後を通じて不利益は存しないといえるが,退職金の算定に当たって用いられる本棒については,原告の退職時の本棒が26万9500円であり,平成18年9月における原告のそれは28万6100円であるから,本件職員給与規程改正は不利益なものであるといえる。 ウ次に,本件 本棒については,原告の退職時の本棒が26万9500円であり,平成18年9月における原告のそれは28万6100円であるから,本件職員給与規程改正は不利益なものであるといえる。 ウ次に,本件退職給与規程改正・本件職員給与規程改正の必要性及び内容の相当性について検討する。 (ア) 本件退職給与規程の改正は,上記認定のとおり,退職給与拠出金集中管理会計の健全化を図り,具体的には充足率が平成16年度で57. 1%であり,このまま制度改正を行わなければ近い将来に破綻を来たし退職金支給が困難となる高度の蓋然性が認められたこと,退職金制度を給与制度と同様に国・県に準じた制度とすること,在職期間中の貢献度- 31 -を反映できる制度改正を行うこと等を目的としたものである。 そして,本件改正前の退職給与規程のままであれば,被告の退職給与拠出基金の充足率は年々減少することが見込まれ,そのまま放置すれば,退職金制度が崩壊することが想定されたことから,早急にこれを改正する高度の必要性があるといえる。 また,本件職員給与規程改正は,国及び県において,官民の給与較差の是正という目的のもと,給与等を引き下げて昇給制度等についての見直しを行うこととし,給料水準を引き下げて給与カーブのフラット化をはかり,勤務実績の給与への反映等も行うこととされたことから,県からの補助金を受ける被告としては,それにならう必要があるとして改正が行われたものであるから,改正を行う高度の必要性について肯定することができる。 以上の検討によれば,いずれの改正についても,その改正を行う高度の必要性があったものと認められる。 (イ) 次に各改正の内容の相当性についてみると,まず本件退職給与規程改正については,勤続年数5年未満の定年退職者以外 の改正についても,その改正を行う高度の必要性があったものと認められる。 (イ) 次に各改正の内容の相当性についてみると,まず本件退職給与規程改正については,勤続年数5年未満の定年退職者以外については支給率をすべて引下げの対象とし,勤続年数5年以上の職員についての定年退職時の支給率は,11.3%ないし29.7%の引下げとなり,引下げ率が20%を超えているのは,勤続8年ないし10年,31年,19%台が勤続7年,15年の場合となっており,定年退職の場合,勤続5年以上の場合はいずれも11%以上の引下げ率となっている。自己都合退職の場合の引下げ率も20.3%(勤続40年)ないし58.6%(同10年)となっている。 また,支給率の引下げに伴い退職給与金調整額を導入することとし,改正後退職給与規定の別表2における区分に従い,その区分に属してい- 32 -た期間に応じて定める額のうち,当該職員が属していた区分のその額が多いものから60月分の調整月額を合計した額を支給するとされている。 以上のとおり,勤続年数5年以上の者に対する定年退職の場合の支給率の引下げ率は,概ね11%から29%の間であり,特定の層にのみ大幅な不利益を生じさせるようなものとはいえない。また,退職給与金調整額の導入に伴い,区分と期間に応じた調整額の支給を受けうることともなった。 また,本件職員給与規程の改正は,55歳の課長級,60歳の部長級において下げ幅が大きくなっているが,給料表のすべての給料月額について引き下げを行い,中高齢層について平均を上回る引下げを行うことにより給与カーブをフラット化しているものであって,特定の年齢層のみに負担を強いるものではなく,また改正に伴う減額分については,いずれの職員についても現給保障として減額分が支 上回る引下げを行うことにより給与カーブをフラット化しているものであって,特定の年齢層のみに負担を強いるものではなく,また改正に伴う減額分については,いずれの職員についても現給保障として減額分が支給されているものである。 そして,これら改正に伴って,上記認定のとおり,再雇用制度,事務局長登用制度,昇給停止の廃止措置,人事評価制度,職階制度が代償措置として導入され,これらは相応に機能しているものと評価できる。 以上によれば,本件各改正の内容は合理的な内容であるということができる。 エさらに,上記各改正についての職員団体等との交渉の過程・職員らに対する周知の点についてみると,本件退職給与規程改正は,平成18年1月19日に,人事管理委員会において,提案書により退職金改正が議題として提案されたものである。そして,職員協議会は,その役員会において,改正案についての被告の説明を求めるとともに職員に対する周知が必要で- 33 -あると判断して,職員に提案書を配布し,また各地区職員に対し説明会も行った。また,改正案の検討のため,退職金制度プロジェクトチームを結成することとし,全職員に対してその委員を募集し,地域や職種にも配慮してその委員が選任され,プロジェクトチームの委員会も6回にわたり行われた。 プロジェクトチームは,平成18年8月17日,その結果を同年8月11日付けの要望書(乙3)として人事管理委員会に提出し,人事管理委員会から,同年9月14日付けの「要望書(職員退職金制度の見直しについて)の回答について」(乙4)を得て,これを電子掲示板に掲載し,全職員に周知した。さらに,これらの結果を踏まえたうえで,同月20日,人事管理委員会は,退職給与規程の勧告内容を決定し,同月25日,被告に勧告した。それを受け 4)を得て,これを電子掲示板に掲載し,全職員に周知した。さらに,これらの結果を踏まえたうえで,同月20日,人事管理委員会は,退職給与規程の勧告内容を決定し,同月25日,被告に勧告した。それを受けて,被告は,同月29日,臨時総会を開催し,本件変更後の退職給与規程について承認を受けた。さらに,被告及び職員協議会は,同月30日,全職員を対象とした説明会を開催し,改正内容を詳しく説明した。 このように,本件退職給与規程改正の内容の決定にあたっては,職員側の代表者も関与し,その意見も反映させ得る状況にあったことが認められ,実際,支給率については当初提案よりも職員側に有利なものともなっている。また,電子掲示板での掲載や説明会の開催により,全職員に対して改正の経過や改正後の各規程の内容についても周知が図られていたことも認められる。 また,本件職員給与規程改正についても,人事管理委員会において検討が行われ,平成18年9月29日の被告の臨時総会において改正が承認されたものである。 以上によれば,本件退職給与規程改正・本件職員給与規程改正は職員等- 34 -の意見を聴き,それを反映させて行ってきたものであり,手続的にも正当なものと認められる。 オ以上の事由を総合すると,本件退職金規程改正・本件職員給与規程改正は,いずれも高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであるということができ,それら改正はいずれも有効であると解すべきである。 (2) そこで,次に原告が争点(2)の予備的主張であるとする争点(3)(本件職員給与規程改正が仮に有効であったとしても,原告の職階認定が人事権の逸脱・濫用に当たるか)につき判断する。 被告における人事評価等に関しては,上記のとおり人事管理委員会において審議し,その結果を連合会 改正が仮に有効であったとしても,原告の職階認定が人事権の逸脱・濫用に当たるか)につき判断する。 被告における人事評価等に関しては,上記のとおり人事管理委員会において審議し,その結果を連合会長に報告するものとされているほか(「大分県商工会等人事管理委員会規程」第3条,乙23,24),平成18年1月1日からは複数の評価者による評価を経ることを要求する「人事評価制度の基本(要約版)」(乙26)が試行され,平成18年4月から実施,同年10月1日からは,「人事評価制度について運用マニュアル」(乙15)に沿った運用がされている。      また,原告が担当してきた共済業務に関して,上記「人事評価制度について運用マニュアル」において,「各種共済加入推進」を内容とし,達成状況等を「共済内容が説明できた」とする業務については,「全て標準評価以上の評価はあり得ない。」とされている(乙15,内容部分21頁)。 原告は,職務を通して労働保険事務組合制度や共済事業,青色申告制度等の発展に寄与し,これにつき数々の表彰を受け(甲14の1~7),その中には極めて少数の者しか授与されないものも含まれること,原告が経営指導員が担当するような仕事もしており,A商工会で長年にわたる相談業務等にも尽くしてきたことが認められるものの,上記認定事実に照らせば,被告による原告の職階認定が人事権の濫用であるとは認めることができない。原告- 35 -の予備的主張は採用することができない。 4(1) 原告は,職員協議会は親睦団体に過ぎず,労働組合の役割を果たしていないと主張するが,プロジェクトチームの委員募集に関する職員協議会の文書(乙13)には,「2.継続雇用制度に係る労使協定について」として「人事管理委員会において原案どおり承認されました。なお,前回 ないと主張するが,プロジェクトチームの委員募集に関する職員協議会の文書(乙13)には,「2.継続雇用制度に係る労使協定について」として「人事管理委員会において原案どおり承認されました。なお,前回役員会で継続雇用制度の規約の中にある一部適用除外の項目をわかりやすく示してほしいという意見がありましたが,再任用職員の給与の扶養,住居手当の支給をしないことです。」(下線省略)と記載され,労使の交渉過程等において職員協議会が一定の役割を果たしていることが認められる。 また,職員協議会の規約(乙14)には,以下のとおり規定されている。 「(目的)第1条本会は大分県内の商工会及び大分県商工会連合会(以下「商工会等」という。)に勤務する職員の資質の向上と身分の安定,福利厚生の充実など指導環境の整備とともに事務局体制の充実を図り,もって商工会組織並びに商工業の健全な発展に寄与することを目的とする。 …(事業)第3条本会は,第1条の目的を達成するため,次に掲げる事業を行う。 (1) 職員の指導環境の整備推進に資するための調査研究に関すること。 (2) 職員の資質向上に関すること。 (3) 商工会等運営に関する情報交換,意見の具申並びに建議。 (4) 職員の福利厚生等に関すること。 - 36 -(5) 前各号に掲げるもののほか,本会の目的を達成するために必要な事業を行うこと。 …」さらにその設立趣意書(乙18の1)には,「経営指導協議会が設立されて40年,事務局長協議会が20年,補助員協議会が33年,記帳専任職員等協議会が設立されて10年が経過しました。その間各協議会は,補助対象職員の資質の向上 18の1)には,「経営指導協議会が設立されて40年,事務局長協議会が20年,補助員協議会が33年,記帳専任職員等協議会が設立されて10年が経過しました。その間各協議会は,補助対象職員の資質の向上や待遇改善など,設立目的達成のため様々な活動を行ってきました。…市町村合併の促進に伴う商工会の合併・広域連携等も緊急の課題であり,職員の配置見直し等も,大きな課題となっております。このような急速に変化する環境や時代の趨勢に対処していくために,職種制からの立場を脱却し,全職員が一丸となって商工会事業の効率化や職員の資質向上を図り,地域商工業の活性化や商工会会員,職員の将来を考えていく必要があります。以上のことから,全国経営指導員協議会と全国事務局長協議会は平成13年8月8日両協議会を発展的に解散し,商工会職員の統一組織として「全国商工会職員協議会」を設立しました。本県においても,こうした全国的な動きを受け,平成12年度から各協議会合同により協議がなされ,平成13年度に入り設立準備委員会により検討,それぞれの協議会を統合し,平成14年4月1日付で新しく「大分県商工会職員協議会」を設立するものであります。」とあり,設立準備委員は,各商工会から,事務局長6名,経営指導員6名,補助員5名,記帳専任職員6名,事務局2名が就任している。 そして,職員協議会の通常総代会等の記録(乙18の2~7)によれば,各年度の事業計画の中には,「指導環境整備のための活動」として,「ア処遇改善と身分保障に関する調査,研究,提言を行う。」「イ人事管理及び人事交流に関する調査研究,提言を行う。」「ウ協議会の位置づけについて研究,提言を行う。」「エ商工会職員身分安定のため,商工会収益事業- 37 -の推進を行う。」等が盛り込まれている。特に平成20年事業計画にお 査研究,提言を行う。」「ウ協議会の位置づけについて研究,提言を行う。」「エ商工会職員身分安定のため,商工会収益事業- 37 -の推進を行う。」等が盛り込まれている。特に平成20年事業計画においては,より具体的に,「ア処遇改善と身分保障に関する調査,研究,提言を行う。 (給与面の改善・退職金問題等についての改善要望の徹底)イ人事管理並びに人事異動に関する調査研究,提言を行う。 (職員の調書の尊重,公正なる人事評価の確立要望)ウ協議会の運営について研究,提言を行う。 (会費の見直し,協議会としての位置づけの向上)エ商工会収益事業の研究,提言を行う。 (会員福祉共済,商工会カード等)」とされている。 上記認定のとおりの設立の経緯・目的やこれまでの事業の内容,任意加入のパート職員を除き職員全員が加入していること等の事実に照らせば,職員協議会は,企業における労働組合の役割を担う者に当たると評価できる。 (2) また原告は,被告においては,10年後の退職給与拠出基金の充足率を100%とすることを目標とするあまり原告をはじめとする特定の時期の退職者に過度な不利益を押しつける不公平な改正を行った旨主張する。 しかし,10年後に充足率を100%とするのを目標とすること自体について特段不合理と解する根拠はなく,また上記認定のとおり,3年毎に退職金制度を見直し,今後策定される案についても職員協議会等に提示することとされていること,本件退職給与規程改正の内容において,特段特定の層にのみ不利益を課す内容とはなっていないことからすると,原告の上記主張は採用することができないというべきである。 (3) さらに原告は,本件退職給与規程改正・ 規程改正の内容において,特段特定の層にのみ不利益を課す内容とはなっていないことからすると,原告の上記主張は採用することができないというべきである。 (3) さらに原告は,本件退職給与規程改正・本件職員給与規程改正に伴う代償措置とされる再雇用制度,事務局長登用制度,昇給停止の廃止措置,人事評価制度,職階制の導入については,いずれも代償措置として機能していない- 38 -と主張する。 しかし,上記認定のとおり,これら代償措置は,相応に機能しているものと評価できるから,原告の主張は採用することができない。 5 結論以上の検討によれば,被告の本件退職給与規程改正・本件職員給与規程改正については,いずれも合理性等を有し,効力を有すると解すべきであり,また人事権の濫用等の事実についてもこれを認めることができない。そして,被告が原告に対し退職金として支給した1274万5800円につき,退職時の原告の地位及び本件改正後の退職給与規程・職員給与規程に基づき算定された金額としては正しいものであることについては当事者間に争いがない。 そうすると,原告の請求は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 大分地方裁判所民事第2部裁判官今井弘晃

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