平成29(ワ)34730 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和2年7月16日 東京地方裁判所
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判決文本文29,400 文字)

- 1 - 令和2年7月16日判決言渡し同日原本領収裁判所書記官平成29年(ワ)第34730号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和2年2月3日判決 主文 1 被告SIP及び被告日本エアロテックは,原告に対し,連帯して,7549万3197円及びこれに対する平成27年7月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告の被告SIP及び被告日本エアロテックに対するその余の請求並びに被告東京都に対する請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,原告に生じた費用の5分の1,被告SIPに生じた費用の5分の1,被告日本エアロテックに生じた費用の5分の1及び被告東京都に生じた費用を原告の負担とし,原告に生じた費用の5分の2及び被告SIPに生じた費用の5分の4を被告SIPの負担とし,原告に生じた費用の5分の2及び被告日本エアロテックに生じた費用の5分の4を被告日本エアロテックの負担と する。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告らは,原告に対し,連帯して,9516万7997円及びこれに対する 平成27年7月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,亡A(被告SIPの元代表取締役)が操縦する小型飛行機が,東京都調布飛行場から離陸した直後,失速して原告の自宅上に墜落したという平成27年7月26日発生の飛行機墜落事故について,原告が,①上記事故は,操 縦士である上記Aが最大離陸重量を守らず適切な操縦をしなかったことによっ- 2 - て発生したものであり,②被告日本エアロテックは上記Aの使用者であり,また,自らも航空運送事業者として上記飛行 縦士である上記Aが最大離陸重量を守らず適切な操縦をしなかったことによっ- 2 - て発生したものであり,②被告日本エアロテックは上記Aの使用者であり,また,自らも航空運送事業者として上記飛行機の離陸重量を確認する義務があるのにこれを怠った,③被告東京都は上記事故に係る飛行について東京都調布飛行場の使用を認めないようにする義務があったのにこれを怠ったなどと主張して,被告SIPに対しては会社法350条に基づき,被告日本エアロテックに 対しては民法709条又は同法715条に基づき,被告東京都に対しては国家賠償法1条1項に基づき,連帯して,損害賠償金合計9516万7997円及びこれに対する不法行為日である平成27年7月26日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(証拠(枝番があるものは特に断らない限り枝番を含む。以下同じ。)等を掲記した事実以外は,当事者間に争いがない。)⑴ 飛行機墜落事故の発生亡A(以下「本件機長」という。)は,B及びその知人3名の合計4名(以下「本件各搭乗者」という。)を搭乗させたパイパー式PA-46-350 P型JA4060(以下「本件飛行機」という。)を操縦して,平成27年7月26日(日曜日)午前10時58分頃,東京都調布飛行場(以下「調布飛行場」という。)を離陸した(以下,同離陸に始まる飛行を「本件飛行」という。)。本件飛行機は,離陸した直後に,当時原告の自宅であった東京都調布市a町b丁目c番地所在の建物(種類:居宅,構造:木造,屋根:瓦・ スレート,階層:2階,床面積:142.61㎡。以下「本件建物」という。)の上に墜落した(以下「本件事故」という。)。(甲3,6) 町b丁目c番地所在の建物(種類:居宅,構造:木造,屋根:瓦・ スレート,階層:2階,床面積:142.61㎡。以下「本件建物」という。)の上に墜落した(以下「本件事故」という。)。(甲3,6)本件事故によって本件建物は全焼し,当時本件建物内にいたC(昭和56年▲月▲日生まれの女性。)が死亡し,原告も軽傷を負った。 また,本件事故によって,本件機長及び本件飛行機に同乗していた4名の うち1名が死亡し,外3名が重傷を負った。 - 3 - ⑵ 当事者等ア原告(昭和30年▲月▲日生まれの女性)は,Cの母親であり,相続人である。 また,原告は,本件事故当時,本件建物を所有しており,本件建物の敷地内に自動車(以下「本件自動車」という。)及びバイク(以下「本件バ イク」という。)を置いていたところ,本件事故によって本件建物が全焼したため,本件建物内にあった家財及び本件自動車が焼失し,本件バイクは熱で一部が破損した。(甲2,3,6,30)イ被告日本エアロテックは,航空機の整備,修理及び改造業等を目的とする株式会社であり,本件事故当時,本件飛行機の管理整備を行っていた。 株式会社ベルハンドクラブ(以下「ベルハンドクラブ」という。)は,本件飛行機の所有者である。 ウ被告SIPは,航空運送事業等を目的とする株式会社であり,本件事故当時,本件機長がその代表取締役を務めていた。 エ被告東京都は,地方公共団体であり,調布飛行場の設置管理者である。 ⑶ 調布飛行場調布飛行場は,昭和16年に陸軍の飛行場として開設され,米軍による接収・返還後,国(運輸省)が航空法に基づく正式の飛行場ではない場外離着陸場として管理していた。被告東京都 ⑶ 調布飛行場調布飛行場は,昭和16年に陸軍の飛行場として開設され,米軍による接収・返還後,国(運輸省)が航空法に基づく正式の飛行場ではない場外離着陸場として管理していた。被告東京都は,平成4年7月1日,国からその管理を引き継いだ。(弁論の全趣旨) 調布飛行場は,平成10年12月25日,航空法38条1項に基づき,運輸大臣(当時)の許可を受けて航空法に基づく飛行場となり,平成13年3月31日から公共用飛行場として供用開始された。(弁論の全趣旨)⑷ 東京都営空港条例,調布飛行場に関する被告東京都と市との間の覚書及び協定等 ア被告東京都は,調布飛行場を含む東京都営空港(以下「空港」という。)- 4 - の設置,管理について,東京都営空港条例(昭和37年条例53号。以下「本件条例」という。)を制定している。(乙3)本件条例には,調布飛行場の運用時間を午前8時30分から午後6時までの間において,東京都規則で定める時間とすること(本件条例3条1項),航空機の離着陸又は停留のため,空港を使用しようとする者は,あらかじ め,東京都規則で定めるところにより,知事に届け出なければならないこと,ただし,空港の運用時間外に航空機の離発着のため空港を使用する場合は,知事の許可を受けなければならないこと(本件条例4条1項,2項),知事は,本件条例若しくは本件条例に基づく規則又はこれらに基づく処分に違反した者に対し,空港の使用の停止その他必要な措置を命ずることが できること(本件条例11条),本件条例の施行について必要な事項及び空港の管理運営について必要な事項は,知事が定めること(本件条例21条(平成27年改正前は16条))が定められている。 イ被告東京都は,本件条例21 ),本件条例の施行について必要な事項及び空港の管理運営について必要な事項は,知事が定めること(本件条例21条(平成27年改正前は16条))が定められている。 イ被告東京都は,本件条例21条を受けて東京都営空港条例施行規則(昭和37年規則76号。以下「本件規則」という。)を制定しており,本件 規則には,調布飛行場の運用時間を日曜日については午前10時から午後5時まで(日没が早い場合は日没まで)とすること(本件規則1条4項),本件条例4条1項の規定により空港を使用しようとする者は,あらかじめ,使用しようとする空港名及び日時,使用の目的等の事項を記載した届出書を知事に提出しなければならないこと(本件規則1条の2)が定められて いる。(乙4)ウ被告東京都は,調布飛行場を航空法40条に規定する公共用飛行場にすることを前提として,平成9年4月1日,三鷹市,府中市及び調布市との間で,飛行場を適切に整備管理運営することによって地域の安全の確保,騒音の防止等,地域の生活環境の保全を図ることを目的とした「東京都調 布離着陸場の整備及び管理運営に関する協定書」(調布市につき,甲8。 - 5 - 以下「本件協定」という。)に係る協定を結んだ上,本件協定に基づく運用の制限等について,「東京都調布離着陸場の整備及び管理運営に関する覚書」(調布市につき,甲9。以下「本件覚書」という。)に係る合意をした。 本件覚書には,東京都港湾局長が,調布飛行場の運用に当たっての運用 事項として,日祭日の利用は原則として午前10時以降とするなどの運用時間の制限や,自家用機の離陸及び着陸について1機につき1日1回以内とする旨の運用回数の制限等のほか,「遊覧飛行及び調布管制圏内における訓練飛行のための使用は認めないこと」について,誠意をも の運用時間の制限や,自家用機の離陸及び着陸について1機につき1日1回以内とする旨の運用回数の制限等のほか,「遊覧飛行及び調布管制圏内における訓練飛行のための使用は認めないこと」について,誠意をもって履行することが記載されている。(甲8,9) エ被告東京都は,本件協定及び本件覚書を受けて,調布飛行場について「東京都調布飛行場運営要綱」(以下「本件要綱」という。)を定め,年間総離着陸回数の制限(上限2万3000回程度。本件要綱3条1項),自家用機等の離着陸回数の制限(1機1日離着陸各1回以内等。本件要綱3条2項),遊覧飛行,体験飛行,飛行場周辺空域における訓練飛行,編隊飛 行及びジェット機の離着陸のための調布飛行場の使用を認めないこと(本件要綱3条3項⑵)とし,さらに,東京都調布飛行場常駐機取扱基準をもうけて,調布飛行場に航空機の常駐を行おうとする者に対し,調布飛行場常駐申請書兼使用航空機届出書の注意事項(遊覧飛行など本件協定及び本件覚書に抵触する恐れ又は疑義を生じさせる飛行をしないこととの記載 がある。)を遵守することを承諾した上で届出をするとの取扱いをしている。(乙5,6)⑸ 本件飛行に係る空港使用届出本件機長は,本件飛行に先立ち,被告東京都に対して,ベルハンドクラブを作成名義とし,本件飛行の具体的な飛行目的を慣熟飛行と記載した平成2 7年7月26日付け空港使用届出書(以下「本件届出書」という。)を提出- 6 - した。(乙1,弁論の全趣旨)⑹ 本件事故後の原告の入通院原告は,平成28年1月12日,医療法人社団青山会青木病院を受診し,外傷後ストレス障害(PTSD),鬱病,(DSM-5)持続性複雑死別障害の診断を受け,同日以降,同病院に入通院して(以下「本 原告は,平成28年1月12日,医療法人社団青山会青木病院を受診し,外傷後ストレス障害(PTSD),鬱病,(DSM-5)持続性複雑死別障害の診断を受け,同日以降,同病院に入通院して(以下「本件入通院」とい う。)治療を受けた。(甲26)⑺ 本件事故についての事故調査報告書運輸安全委員会は,平成27年7月26日に本件事故の調査を担当する主管調査官ほか2名の航空事故調査官を指名(平成28年9月26日に6名の航空事故調査官を追加指名)して本件事故の調査を実施した。運輸安全委員 会は,平成29年7月7日,同調査の結果作成された航空事故調査報告書(以下「本件事故調査報告書」という。)を議決し,同月18日に本件事故調査報告書の内容を公表(同月19日に修正の上公表)した。(甲6)本件事故調査報告書は,本件事故の態様について,本件飛行機が離陸上昇中,速度が低下したため,失速して飛行場周辺の住宅地に墜落したものと考 えられるとし,本件事故の原因としては,本件飛行機が最大離陸重量1950kgを約58kg超過した状態で飛行したこと,低速で離陸したこと及び過度な機首上げ姿勢を継続したことによるものと推定されるとの内容でまとめられたものであった。 2 争点及び争点に関する当事者の主張 ⑴ 本件事故に係る被告SIPの損害賠償責任の有無(争点1)(原告の主張)本件事故の原因は,本件事故調査報告書が結論付けたとおり,本件機長が,本件飛行機を操縦するに当たり,本件飛行機の最大離陸重量を超過した状態で飛行したこと,低速で離陸したこと及び離陸後に過度な機首上げ姿勢を継 続したことにあり,そのために,本件飛行機が離陸上昇中に失速し,原告の- 7 - 自宅上に墜落したものである た状態で飛行したこと,低速で離陸したこと及び離陸後に過度な機首上げ姿勢を継 続したことにあり,そのために,本件飛行機が離陸上昇中に失速し,原告の- 7 - 自宅上に墜落したものである。したがって,本件機長には,本件飛行機の最大離陸重量を守らず,適切な操縦をしなかったという注意義務違反があり,そのことについて故意又は過失がある。 そして,被告SIPの代表取締役である本件機長が,被告SIPの職務を行う際に本件事故を発生させたことから,被告SIPは,会社法350条に 基づき,本件事故に起因する原告の損害を賠償する責任を負う。 (被告SIPの主張)本件飛行機の離陸重量は,実際には約1921kgを上回っておらず,本件飛行機の最大離陸重量である1950kgを超過していなかった。本件事故調査報告書による本件飛行機の離陸重量の推計には,搭乗者の合計体重や 燃料量の算出過程において誤りがある。仮に,本件飛行機の離陸重量が最大離陸重量を約58kg超過していたとしても,上記程度の重量超過が直ちに本件飛行機の墜落に結びつくものとは考えられない。 また,一般に,飛行機のエンジン出力が低下する要因としては,機長の操縦操作によるもの以外にも,外気温などの環境による影響,エンジン不具合 が考えられる。 したがって,本件機長の注意義務違反によって,本件飛行機の離陸上昇中速度が低下して失速し,墜落したと認めるのは不合理である。 ⑵ 本件事故に係る被告日本エアロテックの損害賠償責任の有無(争点2)(原告の主張) ア被告日本エアロテックは,本件各搭乗者との間で運送契約を締結し,被告SIPと共同して本件飛行を運行していた。被告日本エアロテックは,本件飛行を運行するために本 (原告の主張) ア被告日本エアロテックは,本件各搭乗者との間で運送契約を締結し,被告SIPと共同して本件飛行を運行していた。被告日本エアロテックは,本件飛行を運行するために本件機長を労働者として使用したから,被告日本エアロテックと本件機長との間には,実質的な指揮監督の関係がある。 よって,被告日本エアロテックは,民法715条に基づき本件事故に起 因する原告の損害を賠償する責任を負う。 - 8 - イ上記⑴の原告の主張のとおり,本件飛行機が最大離陸重量を超過して飛行したことが本件事故の原因の一つである。 被告日本エアロテックは,航空運送事業を営むものとして,本件飛行機の離陸重量を確認する運航管理担当者を設置すべきであったのに,設置をしていなかったため,本件機長以外の第三者において離陸重量の確認がさ れず,本件飛行機が最大離陸重量を超過して離陸・飛行し,本件事故が発生した。したがって,被告日本エアロテックは,民法709条に基づき,本件事故に起因する原告の損害を賠償する責任がある。 (被告日本エアロテックの主張)ア被告日本エアロテックと本件機長との間に雇用契約は締結されておらず, その他旅客運送を依頼する内容の契約も締結されていないのであって,両者間に実質的な指揮監督関係は存在しない。 被告日本エアロテックは,本件各搭乗者との間で運送契約ではなく小型飛行機のレンタル契約を締結したものであり,本件飛行機を操縦する者として,本件機長を本件各搭乗者に事実上引き合わせたにすぎない。被告日 本エアロテックは,具体的な飛行プランの決定には何ら関与していないのであるから,本件機長に指示や命令をすることもない。 したがって,被告日本エアロ 上引き合わせたにすぎない。被告日 本エアロテックは,具体的な飛行プランの決定には何ら関与していないのであるから,本件機長に指示や命令をすることもない。 したがって,被告日本エアロテックと本件機長との間に指揮監督関係はなく,被告日本エアロテックが使用者責任を負うことはない。 イまた,本件機長の実際の体重は約55kgであり,本件各搭乗者の実際 の体重は約51kg,約65kg,約75kg,約55kg(本件機長との合計約301kg)であった。離陸した際の本件飛行機の燃料量は最大で317リットル(228kg)であるから,機体自重等と合計した本件飛行の際の本件飛行機の離陸重量は約1921kgを上回っておらず,最大離陸重量を超過していない。 さらに,最大離陸重量に関する安全率は+5%の一般的公差が認められ- 9 - ているから,1950kgの5%に相当する97.5kgまでであれば,最大離陸重量を超過しても飛行の安全に対して支障はないはずである。 そもそも運航管理担当者は,各種情報を収集し,操縦士の飛行計画立案や飛行を援助することを職務としており,運行管理者と異なり航空機の出発や飛行計画の承諾・決定権限を有しない。本件飛行においては,本件機 長が航空機の出発前の確認義務を負うとともに出発決定権限を有していたのであり,運行管理担当者を設置したとしても,本件事故の発生を防げたとは限らない。 したがって,被告日本エアロテックが民法709条の責任を負うことはない。 ⑶ 本件事故に係る被告東京都の損害賠償責任の有無(争点3)(原告の主張)調布飛行場においては,空港使用の許可申請書に慣熟飛行と記載した場合には,具体的な調査まではされることなく使用 本件事故に係る被告東京都の損害賠償責任の有無(争点3)(原告の主張)調布飛行場においては,空港使用の許可申請書に慣熟飛行と記載した場合には,具体的な調査まではされることなく使用が許可されていたが,実態は遊覧飛行のための使用も多かった。本件飛行についても,慣熟飛行として空 港使用の許可申請書が提出されているが,その実態は遊覧飛行であった。 しかし,本件覚書によれば,調布飛行場において遊覧飛行のための使用を認めないこととされているのであるから,被告東京都は,本件飛行について許可するべきではなかった。また,調布飛行場の利用が届出制であり,東京都知事の許可にかからしめるものではなかったとしても,本件飛行について, 調布飛行場の使用を止めさせるべきであった。そうであるにもかかわらず,被告東京都は,本件飛行について調布飛行場の使用を認めたものであるから,被告東京都の上記行為については,国家賠償法1条1項の適用上違法性が認められるというべきであり,少なくとも過失が認められる。 また,本件事故は,本来使用が許されるはずのない遊覧飛行の結果,発生 しており,被告東京都が本件飛行に係る調布飛行場の使用を認めたことと損- 10 - 害との間に因果関係がある。 したがって,被告東京都は,国家賠償法1条1項に基づき本件事故に起因する原告の損害を賠償する責任がある。 (被告東京都の主張)ア調布飛行場を運用時間内に使用する場合,その旨の届出書を提出すれば 足り,許可制ではないから,被告東京都に本件飛行に係る使用を不許可とすべき注意義務があるとはいえない。 また,被告東京都は,調布市等の地元の市との間で本件協定,本件覚書に係る合意をし,調布市等との関係において協定 被告東京都に本件飛行に係る使用を不許可とすべき注意義務があるとはいえない。 また,被告東京都は,調布市等の地元の市との間で本件協定,本件覚書に係る合意をし,調布市等との関係において協定等を遵守する責務を負っているものの,本件協定や本件覚書の内容は,これをもって直ちに被告東 京都が個人に対して具体的な注意義務を負うことを定めたものではないから,本件協定や本件覚書を理由に国家賠償法上の違法性を基礎付けることはできない。 そもそも,本件届出書には,慣熟飛行を具体的な飛行目的とする旨の記載があり,慣熟飛行とは,操縦者の技量維持を目的とした飛行であって同 乗者がいても慣熟飛行に当たらないとはいえない。本件飛行は,遊覧飛行ではなく,仮にそうでないとしても,被告東京都が本件飛行の目的について遊覧飛行であると認識しながら本件届出書を受け取ったことはない。 イ本件事故の原因は,本件飛行機が最大離陸重量を超過した状態で飛行したこと,低速で離陸したこと及び離陸後に過度な機首上げ姿勢を継続した ことによって本件飛行機が離陸上昇中,速度が低下したことである。本件飛行の目的は,本件事故の発生に直接関係しておらず,被告東京都が調布飛行場の使用を認めたことと本件事故及び原告の損害との間に相当因果関係は認められない。 ⑷ 原告の損害の発生及び数額(争点4) (原告の主張)- 11 - ア Cの死亡慰謝料及び逸失利益の相続 3587万5673円 Cの死亡慰謝料 3000万円 Cの逸失利益 4175万1346円(計算式)372万7100円×(1-0.3)×16.003=4175万1346円 原告は,Cの死亡慰謝料及び死亡逸失 Cの逸失利益 4175万1346円(計算式)372万7100円×(1-0.3)×16.003=4175万1346円 原告は,Cの死亡慰謝料及び死亡逸失利益の合計7175万1346円の2分の1(法定相続分)である3587万5673円を相続した。 イ Cの治療関係費 8万7320円原告は,Cの治療関係費8万7320円を負担した。 ウ葬儀費用 379万5069円 原告は,Cの葬儀費用として,379万5069円を支払った。 本件事故は社会的に大きな関心を集めており,参列者数の予想などが難しく,手厚く葬儀を営む必要があったから,全額について被告らの不法行為との間に相当因果関係がある。 エ本件建物の焼失 234万6500円 本件建物の固定資産税評価額は,234万6500円であるから,本件建物の焼失によって原告に同額の損害が生じた。 オ動産(家財)の焼失 1670万0000円本件事故によって,本件建物内の動産が全て焼失した。 本件建物内には,原告の亡両親,原告,C,原告の二男及び三男の合計 6名の動産が置かれていたところ,その動産の時価は1670万円であったと推定される。 (計算式)1150万円+130万円×4=1670万円カ入通院慰謝料 240万0000円原告は,本件事故によって外傷後ストレス障害,鬱病,持続性複雑死別 障害を発症し,本件入通院(入院期間56日,通院期間753日)をして- 12 - 240万0000円原告は,本件事故によって外傷後ストレス障害,鬱病,持続性複雑死別 障害を発症し,本件入通院(入院期間56日,通院期間753日)をして- 12 - 治療を受けたから,入通院慰謝料は240万円を下らない。 キ休業損害 270万9388円原告は,外傷後ストレス障害等によって,本件事故日である平成27年7月26日から症状固定日である平成29年10月11日までの間(809日),就労不能であった。本件事故の前年度の収入が222万8140 円であったから,就労できていれば493万8534円(222万8140円÷365×809日=493万8534円)の収入を得られたといえる。 同期間について,勤務先から給与として68万9532円,傷病手当金として153万9614円の合計222万9146円を受領したので,同 額を控除した270万9388円が休業損害である。 ク治療関係費 34万5840円原告は,入通院の治療関係費として34万5840円を支出した。 ケ後遺障害慰謝料 690万0000円原告は,症状固定日において,精神に障害を残し,服することができる 労務が相当な程度に制限される状態にあるため,その後遺障害慰謝料は690万円が相当である。 コ逸失利益 602万1993円原告は,症状固定日において61歳であり,就労可能年数が10年,労働能力喪失率が35%であるから,逸失利益は,次の計算式のとおり,6 02万1993円である。 (計算式)222万8140円×0 状固定日において61歳であり,就労可能年数が10年,労働能力喪失率が35%であるから,逸失利益は,次の計算式のとおり,6 02万1993円である。 (計算式)222万8140円×0.35×7.722=602万1993円サ本件自動車の焼失 30万6000円本件自動車は初度登録年月から約27年経過しており,その価値は多く ないと思われるが,本件事故から車検期限の平成27年12月25日まで- 13 - の153日について,1日2000円の割合による使用価値が認められるから使用価値相当額30万6000円が損害である。 シ本件バイクの修理費用 9万7443円原告は,本件バイクの修理費用として9万7443円を支払った。 スペット喪失による損害 166万1131円 原告は,10匹の犬(E,F,G,H,I,J,K,L,M,N)と一匹の亀(以下「本件各ペット」という。)を飼っており,本件事故の結果,本件各ペットが全て亡くなり,以下の損害を被っている。 Gの治療費 15万4602円Gは,奇跡的に命を取り留め,治療をしたが,残念ながら亡くなった。 原告は,その治療費として15万4602円を支払った。 葬儀費用 32万6000円原告は,本件各ペットの葬儀費用として,合計32万6000円を支払っており,全額が損害である。 財産的損害 68万0529円 Nは,本件事故の直前に購入しており,その購入代金18万0529円全額が損害となる。本件各ペットのうちN以外のものについては,血統書などが全て焼失して 的損害 68万0529円 Nは,本件事故の直前に購入しており,その購入代金18万0529円全額が損害となる。本件各ペットのうちN以外のものについては,血統書などが全て焼失しており,具体的な財産的損害を算定することができないが,1匹少なくとも5万円の価値を有しており,少なくとも50万円は下らない。したがって,68万0529円が財産的損害となる。 精神的損害 50万円原告は,本件事故によって,愛するペット11匹を同時に失っており,計り知れない精神的苦痛を負っていて,慰謝料は50万円を下らない。 セ本件建物の撤去費用 724万2480円被告東京都は,事務管理として724万2480円をかけて本件建物を 撤去しており,原告は,東京都に対して,同金額を支払う必要があり,同- 14 - 金額が損害である。 ソ金庫の開錠費用 2万9160円原告は,本件事故によって,金庫の鍵を紛失したため,金庫の開錠費用として2万9160円を支払ったから同額が損害である。 タ弁護士費用 865万0000円 アからソまでの損害額の合計8651万7997円の約10%である865万円が弁護士費用として相当な損害額である。 チ合計 9516万7997円(被告SIPの主張)知らない。 (被告日本エアロテックの主張)ア Cの死亡慰謝料及び逸失利益の相続Cの死亡慰謝料,逸失利益算定の基礎収入,就労可能年数,生活費控除率及び原告が相続したことは争わない。 イ 告日本エアロテックの主張)ア Cの死亡慰謝料及び逸失利益の相続Cの死亡慰謝料,逸失利益算定の基礎収入,就労可能年数,生活費控除率及び原告が相続したことは争わない。 イ Cの治療関係費 認める。 ウ葬儀費用原告がCの葬儀費用として379万5069円を負担したことは認め,150万円の範囲で相当因果関係を認める。 エ本件建物の焼失 本件建物の時価額が損害となることは認め,損害額は争う。建物購入時の売買代金額から年月の経過や使用による消耗分を減額した額を損害として認める。 オ動産(家財)の焼失争う。焼失した家財の具体的な品名及びその購入価格等の主張立証はな く,家財の損害を認めることはできない。 - 15 - カ入通院慰謝料争う。実通院日数は32日であるから,通院期間を96日として慰謝料を算定すべきである。 キ休業損害平成27年7月26日から平成29年10月11日までの間の土日祝日 262日を除いた547日を休業日数として,休業損害の日額を3873円として,休業損害211万8531円の発生は認める。 原告が傷病手当153万9614円,勤務先から給与として68万9532円を受領しているから,休業損害は填補済みである。 ク治療関係費 認める。 ケ後遺障害慰謝料争う。 コ逸失利益争う。 サ本件自動車の焼失争う。車両の全損による損害(時価額)は,原則として市場価格で算定すべきである。また,新車価格の一定割合を損害として算定するとしても,仕様等不明なため10万 サ本件自動車の焼失争う。車両の全損による損害(時価額)は,原則として市場価格で算定すべきである。また,新車価格の一定割合を損害として算定するとしても,仕様等不明なため10万円程度である。 シ本件バイクの修理費用 知らない。 スペット喪失による損害Gの治療費及び財産的損害のうちNに係る損害が18万0529円であることは認め,葬儀費用,財産的損害のうちNに係る損害以外及び精神的損害は争う。 セ本件建物の撤去費用- 16 - 知らない。 ソ金庫の開錠費用認める。 タ弁護士費用争う。 チ合計争う。 (被告東京都の主張)知らない。 第3 争点に対する判断 1 認定事実前記前提事実に加え,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ⑴ 被告日本エアロテックは,平成13年頃,小型飛行機の愛好家のためのマリブクラブという名称の団体を設立し,入会や退会の手続,会員名簿の管理 等の運営をしていた。(丙9,被告日本エアロテック代表者)マリブクラブの会員(以下,単に「会員」という。)は,飛行機の機体を所有しておらず,被告日本エアロテックが管理する小型飛行機を使用し,被告日本エアロテックからパイロットの派遣を受けるなどして,小型飛行機に搭乗していた。(甲41,被告日本エアロテック代表者) ⑵ 本件機長が被告日本エアロテックに入社した平成22年10月以降,本件機長は,被告日本エアロテックの唯一のパイロットとして,被告日本エアロテックが会員に対して行う運航業務において,会員と一緒に飛行機に搭乗 機長が被告日本エアロテックに入社した平成22年10月以降,本件機長は,被告日本エアロテックの唯一のパイロットとして,被告日本エアロテックが会員に対して行う運航業務において,会員と一緒に飛行機に搭乗して会員の操縦練習を監督したり,目的地まで操縦して送り届けたりするなどの運航業務を担当した。その際,飛行機を利用しようとする会員は,本件機 長との間でフライト予約に関するやりとりをし,本件機長は被告日本エアロ- 17 - テック代表者であるDに会員との間で調整して決めたフライト予約を報告していた。(甲41)そして,本件機長は,フライトを終えた後,飛行時間と1時間ごとの単価を掛け合わせるなどして代金を算出し,会員から金銭を受け取っていた。(甲41,被告日本エアロテック代表者) ⑶ 本件機長は,平成25年6月,被告日本エアロテックを退社して被告SIPを設立した。本件機長は,被告SIPを設立した後も被告日本エアロテックの社屋内に被告SIPの事務所を置いており,会員から被告日本エアロテックに対するフライト予約の対応をして,自らの予定や本件飛行機の空き具合に応じて日程を決めたり,フライト終了後の代金計算をし,被告日本エア ロテック名義の請求書を作成して会員から金銭を受け取ったりするなどの作業を行っていた。そして,被告日本エアロテックは,本件機長(被告SIP)に対し,運航支援の外注費として,飛行1時間当たり1万2000円を支払っていた。(甲41,丙9,被告日本エアロテック代表者)⑷ 被告東京都は,平成21年3月,被告日本エアロテックに対し,被告日本 エアロテックによる飛行機の受託運航業務及びマリブクラブへの航空機賃貸業務が航空運送事業や航空機使用事業に該当しないかについて照会をしたところ,被告日本エ 告日本エアロテックに対し,被告日本 エアロテックによる飛行機の受託運航業務及びマリブクラブへの航空機賃貸業務が航空運送事業や航空機使用事業に該当しないかについて照会をしたところ,被告日本エアロテックは,同月,被告日本エアロテックの業務実態は飛行機のレンタルとパイロットの派遣にすぎず,航空機の運航を主催していないから航空運送事業ではなく,何ら役務を提供していないから航空機 使用事業にも当たらず,航空法等の関連法令に抵触する点はないことなどを回答した。(乙8)⑸ 会員の1人であったBは,平成27年7月上旬,Dに対し,大島へフライトをしたいとの問い合わせをしたところ,Dは,Bに対して本件機長に聞いて欲しいと答えた。Bと本件機長は,具体的な飛行プランの打合せをし,飛 行日程(平成27年7月26日午前10時に調布飛行場を離陸し,大島へ向- 18 - かい,同日午後4時30分頃に調布飛行場に戻ってくる。),搭乗人数を取り決め,本件機長は被告日本エアロテックにそのことを報告した。(丙9)本件機長は,平成27年7月26日,ベルハンドクラブ名義で本件届出書を作成して,被告東京都に提出した。本件機長は,本件届出書に,滑走路等の空港施設使用の目的を「その他」(航空運送事業,航空機使用事業以外の こと)と,使用予定航空機を本件飛行機と,操縦者及び搭乗者を本件機長外4名の計5名と,具体的な飛行目的を「慣熟飛行」と記載した。(甲40,乙1)⑹ 本件飛行機については,平成27年4月8日から同月17日までの間に耐空証明検査受験準備作業が実施され,同年5月1日に耐空証明検査に合格し た。本件機長は,同月22日に本件飛行機について満タン給油をした上で,同日,本件飛行機を操縦して約30分間の飛行をした。(甲6) 検査受験準備作業が実施され,同年5月1日に耐空証明検査に合格し た。本件機長は,同月22日に本件飛行機について満タン給油をした上で,同日,本件飛行機を操縦して約30分間の飛行をした。(甲6)そして,本件機長は,本件事故当日である同月26日,本件飛行前に本件各搭乗者から体重を聴取せず,重量及び重心位置に係る計算書を作成しないまま,本件飛行機に本件各搭乗者を搭乗させ,最大離陸重量を超過した状態 で,大島空港に向けて,本件飛行を開始した。本件飛行前の点検等から本件事故までの概略は次のとおりである。(甲6,弁論の全趣旨)10時50分頃スポット20N番で飛行前点検を実施10時54分頃離陸に向けて地上走行を開始10時57分12秒頃滑走路17進入端付近から離陸滑走を開始 10時57分35秒滑走路17進入端から400m地点の滑走路中央を速度約59ktで通過。この付近において,ピッチ姿勢角の上下変化が見られた。 10時57分38秒滑走路17進入端から500m地点において,速度約65ktで前輪が浮揚する動きがみられた。 10時57分41秒滑走路17進入端から約630mの地点で速度約7- 19 - 3ktで離陸した。離陸前後から緩やかな左偏向を継続した。 10時57分52秒対地高度約70~80ftで脚上げをした。姿勢は機首上げで,上昇角は約4°であった。 10時57分55秒速度約67ktで高度約90ftに到達し,上昇か ら緩やかな降下に移行した。この時の姿勢は機首上げを継続していた。 10時57分55秒~10時58分00秒緩やかに降下しながら機首上げ下げを3回程度繰り返す ら緩やかな降下に移行した。この時の姿勢は機首上げを継続していた。 10時57分55秒~10時58分00秒緩やかに降下しながら機首上げ下げを3回程度繰り返すとともに速度も増減しながら約62ktまで減少 した。 10時58分00秒高度約84ftにおいて,左バンクとなり左下に滑るように降下を開始した。この時の速度は約62kt,姿勢は機首上げのままであった。 10時58分07秒本件事故現場に墜落した。 ⑺ 本件事故の際,原告は本件建物の1階,Cは本件建物の2階にいたところ,本件飛行機が本件建物に墜落して火災が発生し,Cは火災に巻き込まれ死亡した。(甲6,26)本件建物は,同火災によって全焼して焼失したため,本件建物内にあった家財が全て焼失し,本件建物において原告が飼育していた本件各ペットが死 亡した(犬のGにおいては,治療を受けたがその後に死亡した。)。また,本件建物の敷地内に置いていた原告所有の本件自動車が焼失し,本件バイクの一部が破損した。(甲6,29,30,53,54,原告本人)本件建物は,原告が,平成25年に死亡した父から相続したものであり,平成27年7月7日にC,原告の二男及び三男と4人で本件建物に引っ越し, 生活していた。本件事故当時,原告は介護職として勤務し,Cは無職であっ- 20 - たが同年8月から勤務する予定であり,家事を主に担当していた。(甲11の1,11の2,53,原告本人)⑻ 原告は,本件事故による身体的受傷は比較的軽微であったものの,本件事故後,睡眠障害,集中困難,強い悲嘆と抑うつ気分,Cを助けることができなかった自責感,事故場面の侵入的想起等から介護職への仕事復帰ができず, 平成 る身体的受傷は比較的軽微であったものの,本件事故後,睡眠障害,集中困難,強い悲嘆と抑うつ気分,Cを助けることができなかった自責感,事故場面の侵入的想起等から介護職への仕事復帰ができず, 平成28年1月12日,医療法人社団青山会青木病院を受診し,外傷後ストレス障害(PTSD),鬱病,(DSM-5)持続性複雑死別障害との診断を受けた。原告は,本件入通院をして治療を受け(実通院日数32日,入院日数56日間),平成29年10月11日に症状が固定した。(甲26,原告本人) ⑼ 被告日本エアロテック及びDは,平成29年12月,本件機長と共謀の上,国土交通大臣の許可を受けないで,平成25年1月1日から平成27年7月26日までの間,4回にわたり,旅客の需要に応じて,運賃を受け取り又はその支払を受け取る約束をして,本件機長が操縦する飛行機に旅客を乗せ,調布飛行場から八尾空港等まで飛行して運送したことにつき,無許可で航空 運送事業を経営したとして起訴され,有罪判決を受けた。(丙1,被告日本エアロテック代表者) 2 争点1(本件事故に係る被告SIPの損害賠償責任の有無)について⑴ まず,本件事故の態様及び原因について検討する。 ア本件事故調査報告書(甲6)は,本件事故の態様及び原因について,概 要以下のとおり分析を行っている。 本件飛行機の離陸重量については,機体自重(直近の対空証明検査の記録),搭乗者5名の体重,搭乗者の着衣等,搭乗者所持品,搭載物(車輪止め,予備オイル,消火器,救命胴衣,無線機等),推定燃料量,地上試運転及び地上走行で消費した燃料量から推計することが可能であ る。 - 21 - 本件飛行機の最大離陸重量は1950kgであるところ,本件事故当日における本件飛行機の離陸重量は 地上試運転及び地上走行で消費した燃料量から推計することが可能であ る。 - 21 - 本件飛行機の最大離陸重量は1950kgであるところ,本件事故当日における本件飛行機の離陸重量は,本件機長の体重を約58.5kg,本件各搭乗者の体重を合計280kgとし,かつ,平成27年7月22日に満タン給油された上で同日に約30分間の飛行をしたことを前提に,推定燃料量を約286kg,地上試運転及び地上走行で消費した燃料を 約8.2kg(約3gal)と算出した上で,機体自重1358kgその他の搭載物の重量を加えると,合計約2008kgであったと推計される。 本件飛行機は,多様な積載方法が可能となってはいるが,大人満席,燃料満タン及び最大荷物で飛行することはできないものであり,パイロ ットは,航空機が許容される重量及び重心位置にあるかを離陸前に確認しなければならず,誤った積載は重大な結果を及ぼすこととなる。重量超過の飛行機は,正しい重量の航空機と同様には離陸,上昇及び巡行ができず,重心位置も飛行特性を決定する要因である。 本件事故当時の本件飛行機の重心位置については,搭載位置が特定で きない搭載物もあったものの,概ね,許容範囲の後方限界近くであったと考えられ,この場合には,機首上げが発生しやすい状態において,離陸時に過度な機首上げ姿勢となる,上昇中も機首上げ傾向となる,低速飛行時の操縦性,安定性又は飛行性能が低下して不意に失速に入りやすくなるという影響が生じる。 本件事故においては,機体重量の超過が本件飛行機の離陸及び上昇性能を低下させており,加えて,重心位置が後方限界近くであったことにより機首上げが発生しやすい状態において,離陸上昇時の過度な機首上げ,低速飛行時の操縦性,安定性及び 超過が本件飛行機の離陸及び上昇性能を低下させており,加えて,重心位置が後方限界近くであったことにより機首上げが発生しやすい状態において,離陸上昇時の過度な機首上げ,低速飛行時の操縦性,安定性及び飛行性能の低下並びに失速に入りやすい状況を生じさせ,これらが本件飛行機の低速での離陸,過度な機 首上げ姿勢及び失速に陥った要因となったものと推定される。 - 22 - 最大離陸重量を約58kg超過した状態で飛行したことについて,本件機長が,本件事故時の飛行前に同重量の超過を認識していたかどうかは本件機長が死亡しているため明らかにすることはできなかった。しかし,そのような状態で飛行することの危険性について本件機長の認識が不足していたとともに,法令や規定を遵守することについての安全意識 が十分でなかった可能性がある。 低速で離陸したことについては,本件機長が,そのような速度で離陸する手順を行った又は機体の位置が滑走路末端に近づいたため本件機長が反応して離陸したことによる可能性がある。 過度な機首上げ姿勢を継続したことについては,重心位置が後方限界 近くにあったことにより機首上げが発生しやすい状態において,本件機長が速度よりも上昇を優先させて機首上げ姿勢を維持したことによる可能性が考えられる。 速度が低下した原因については,これらの要因に加えて,数学モデルを使用した分析の結果から,本件飛行機のエンジン出力が低下していた ことによる可能性も考えられるが,これを明らかにすることはできなかった。 イ本件事故調査報告書は,本件事故の態様及び原因について,本件事故の調査を担当する主管ほか8名の航空事故調査官に加え,航空飛行解析に関する専門委員1名の調査組織によって,本件事故当日で 。 イ本件事故調査報告書は,本件事故の態様及び原因について,本件事故の調査を担当する主管ほか8名の航空事故調査官に加え,航空飛行解析に関する専門委員1名の調査組織によって,本件事故当日である平成27年7 月26日以降,平成28年12月14日までの間に行われた現場調査及び機体調査,生存する搭乗者からの事情聴取の結果を踏まえ,本件飛行機の飛行解析,同型式機を使用した飛行試験等の作業を経て作成されたものであるところ(甲6及び弁論の全趣旨),その調査や作業の過程に不自然な点は見当たらず,それらを踏まえた分析結果についても特に不合理な点は 見当たらない。 - 23 - ウこれに対して,被告SIP及び被告日本エアロテックは,本件飛行機の離陸重量が最大離陸重量を超過していなかった旨の主張をし,被告日本エアロテック代表者であるDは,搭乗者の体重について本件機長が55kg,本件各搭乗者が75kg,55kg,51kg,65kgであったこと,燃料量について満タン時435リットル,平成27年7月22日のフライ トで約70から80リットル,地上試運転で約15リットル,同月25日の地上試運転で約12リットル,同月26日の地上試運転で約15リットルを消費したと推定できることを供述(陳述録取書(丙16)の記載を含む。)する。 そして,証拠(丙15)によれば,本件機長は,平成27年4月27日 の耐空証明検査のために重量及び重心位置に係る計算書(以下「本件計算書」という。)を作成し(なお,本件計算書のデータは被告SIPのパソコン内に保存されていたことがうかがわれるが,本件飛行に関する同様の計算書のデータが保存されていたとの主張立証はない。),本件計算書において自身の体重を55kgと記載していたことが認められ, のパソコン内に保存されていたことがうかがわれるが,本件飛行に関する同様の計算書のデータが保存されていたとの主張立証はない。),本件計算書において自身の体重を55kgと記載していたことが認められ,本件機長の 体重に関するDの供述には一応の裏付けがある。しかし,その他の部分は何ら客観的,具体的な裏付けはない。本件事故調査報告書は,上記のとおり,生存する搭乗者からの事情聴取等を踏まえて作成されたものであり,本件各搭乗者の合計体重を約280kgと推定したことについては,1人当たりの体重として70kgを想定したものであることに照らし,合理的 な推計であるということができる。 また,燃料量について,証拠(丙15)によれば,本件機長は,本件計算書に,満タン(FULL)として燃料を120gal(454.2リットル),地上試運転に使用する燃料を3gal(11.355リットル)と記載していることが認められ,被告日本エアロテック代表者の供述は, 同記載とは異なるものである一方で,本件事故調査報告書は同記載に沿っ- 24 - たものといえる。そうすると,本件事故調査報告書記載の本件飛行機の離陸重量は合理的な推計値として採用するのが相当であり,仮に,上記の本件機長の体重の差3.5kg,満タン時の燃料量の差2gal(7.75リットル,5.44kg)の合計約8.99kgを考慮しても,本件飛行機の離陸重量は約1999kg(2008kg-8.99kg)であり, 最大離陸重量を約49kg超過している。 したがって,本件飛行機は,最大離陸重量を超過して離陸したと認めるのが相当であり,被告SIP及び被告日本エアロテックの最大離陸重量を超過していなかった旨の主張は採用することができない。 エ以上によると,本件事故 は,最大離陸重量を超過して離陸したと認めるのが相当であり,被告SIP及び被告日本エアロテックの最大離陸重量を超過していなかった旨の主張は採用することができない。 エ以上によると,本件事故は,本件飛行機が離陸上昇中,速度が低下した ため失速して墜落したものであって,速度が低下した原因は,最大離陸重量を超過した状態で飛行したこと,低速で離陸したこと及び過度な機首上げ姿勢を継続したことによるものであると認めるのが相当である。 被告SIPは,仮に本件飛行機が最大離陸重量を超過していても,事故調査報告書に記載されている程度の重量超過であれば離陸に問題はなか った,また,エンジン出力が低下する要因には操縦操作以外にも外気温などの環境による影響,エンジン不具合が考えられる旨の主張をする。 しかし,最大離陸重量を超過した状態で離陸することが可能であるとしても,最大離陸重量を超過して飛行した場合には,離陸及び上昇性能が低下する危険性があるのであって(甲6),最大離陸重量を超過したことが 離陸上昇中の失速の原因の一つであることを否定することにはならないし,本件飛行の際に,他の環境による失速への影響があったことをうかがわせる事情は見当たらない。また,本件飛行機は,平成27年5月1日に耐空証明検査に合格していることに照らすと,エンジンの不具合があったと認めることはできないから,被告SIPの主張は採用することができな い。 - 25 - ⑵ 本件機長は,飛行機の機長として離陸前に離陸重量,重心位置等を確認し(航空法73条の2,航空法施行規則164条の15),また,離陸するのに適した速度や離陸姿勢を保つという飛行機を操縦する上での義務があったのにこれを怠り,離陸前に本件各搭乗者の体重を確認するなどの離陸重 空法73条の2,航空法施行規則164条の15),また,離陸するのに適した速度や離陸姿勢を保つという飛行機を操縦する上での義務があったのにこれを怠り,離陸前に本件各搭乗者の体重を確認するなどの離陸重量の確認をせず,低速で離陸し,過度な機首上げ姿勢を継続したことによって 本件事故が発生したのであるから,本件機長には本件事故の発生について過失があるといえる。 ⑶ そして,本件機長は,被告SIPの代表取締役であり,上記過失による不法行為は,被告SIPの職務を行うについてされたものであるから,被告SIPは会社法350条に基づいて,本件事故によって原告に生じた損害を賠 償する責任を負うというべきである。 3 争点2(本件事故に係る被告日本エアロテックの損害賠償責任の有無)について⑴ 上記認定事実によれば,被告日本エアロテックは,本件機長が被告日本エアロテックの従業員であった間,本件機長に被告日本エアロテックが会員に 対して行う運航業務において,会員と一緒に飛行機に搭乗して,会員の操縦練習を監督したり,目的地まで操縦して送り届けたりするなどの運航業務を担当させ,会員から金銭を受領することによって航空運送事業を営んでいたといえる。 また,本件機長が被告日本エアロテックを退社して,被告SIPを設立し た後も,会員が被告日本エアロテックの管理する本件飛行機を利用するときには,本件機長が本件飛行機を操縦して目的地まで送り届けて,被告日本エアロテックにおいても会員から一定の金銭を受領していたのであるから(上,被告日本エアロテックと本件機長との間に指揮監督関係がなかったとしても,被告日本エアロテックは,本件機長に委託することによ って,航空運送事業を営んでいたと認めるのが相当である。 - 26 - エアロテックと本件機長との間に指揮監督関係がなかったとしても,被告日本エアロテックは,本件機長に委託することによ って,航空運送事業を営んでいたと認めるのが相当である。 - 26 - 被告日本エアロテックは,会員との契約は小型飛行機のレンタル契約であって,被告日本エアロテックにも会員にも運送契約であるとの認識はない旨の主張をするが,実態は,上記のとおり,金銭を受領して,会員を調布飛行場から他の飛行場に運送していたのであるから,航空運送事業を営んでいたと認定するのが相当であり,被告日本エアロテックの上記主張は採用するこ とができない。 ⑵ 航空運送事業者は,運航管理担当者を設置し,飛行前に使用航空機に関する情報の収集を行い,航空機の安全な運航に必要な情報を機長に提供することとされている(航空法104条1項,同法施行規則214条,運航規程審査要領,運航規程審査要領細則第3章2-2,2-3)。 したがって,被告日本エアロテックは,運航管理担当者を設置して,本件飛行前に本件飛行機に関する情報の収集をして,本件機長に安全な運航に必要な情報を提供すべきであったといえる。 しかし,被告日本エアロテックは,運航管理担当者を設置しておらず,本件飛行機に関する情報の収集や,本件機長に安全な運航に必要な情報を提供 しなかったのであり(争いがない),本件飛行前に本件飛行機に関する情報収集をしていれば本件機長に最大離陸重量を超過しているとの情報を提供することができ,本件機長において,最大離陸重量の超過を除去するか,最大離陸重量を超過していることを前提として,慎重な操作をすることができたというべきである。 したがって,被告日本エアロテックが,運航管理担当者を設置せず,本件飛行前に本 するか,最大離陸重量を超過していることを前提として,慎重な操作をすることができたというべきである。 したがって,被告日本エアロテックが,運航管理担当者を設置せず,本件飛行前に本件飛行機が最大離陸重量を超過しているとの情報を収集して,本件機長に情報を提供しなかったことは,本件事故の発生との関係で不法行為を構成すると評価するのが相当である。 ⑶ 被告日本エアロテックは,仮に最大離陸重量を超過していても本件事故の 原因とはならない旨主張するが,上記2⑴のとおり,同主張は採用すること- 27 - ができない。 また,被告日本エアロテックは,運航管理担当者を設置しても,本件機長による飛行を止めることはできないから被告日本エアロテックに不法行為責任はない旨の主張をするが,本件機長は本件飛行前に本件飛行機の離陸重量に関する情報等を把握していなかったと考えられるのであり(上記認定事実 ⑹),上記⑵のとおり,安全な運航に必要な情報提供がされれば,同情報に基づいて本件機長において適切な操作をすることができたというべきであるから,同主張は採用することができない。 ⑷ よって,被告日本エアロテックは,民法709条に基づいて本件事故によって原告に生じた損害を賠償する責任を負う(以下,被告SIP及び被告日 本エアロテックの本件事故に係る不法行為を「本件各不法行為」という。)。 4 争点3(本件事故に係る被告東京都の損害賠償責任の有無)について⑴ 原告は,本件覚書によれば,調布飛行場において遊覧飛行のための使用を認めないこととされているから,被告東京都は,本件飛行について許可するべきではなく,又は,これを止めさせるべきであったのに,そのような措置 をとらなかったことにつき,国家賠償法上の違 の使用を認めないこととされているから,被告東京都は,本件飛行について許可するべきではなく,又は,これを止めさせるべきであったのに,そのような措置 をとらなかったことにつき,国家賠償法上の違法性が認められる旨主張する。 しかし,そもそも調布飛行場を使用するに当たり,運用時間内であれば届出をするだけで許可を得る必要がなく(前提事実⑷),本件飛行は調布飛行場の運用時間内であったことから届出をすることで足りるものであって,被告東京都が本件飛行について調布飛行場の使用を認める積極的な行為をした とはいえないから,本件飛行を許可したことの違法をいう原告の主張には理由がないといわざるを得ない。 また,国家賠償法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個々の国民に対して負担する職務上の法的義務に違反して当該国民に損害を加えたときに,国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規 定するものである(最高裁昭和60年11月21日第一小法廷判決・民集3- 28 - 9巻7号1512頁,最高裁平成27年12月16日大法廷判決・民集69巻8号2427頁)。本件協定及び本件覚書は,被告東京都と調布市等との間の合意であり,これを遵守することが地域住民の生活環境の保護に資するものであるということはできるが,本件協定及び本件覚書の内容から直ちに,個々の住民との関係において,被告東京都が特定の飛行につき調布飛行場の 使用を認めないようにする職務上の法的義務を負っていると認めることはできない。 ⑵ もっとも,本件条例11条は,知事は,本件条例若しくは本件条例に基づく規則又はこれらに基づく処分に違反した者に対し,空港の使用の停止その他必要な措置を命ずることができると規定していることから,東京都知事に お 11条は,知事は,本件条例若しくは本件条例に基づく規則又はこれらに基づく処分に違反した者に対し,空港の使用の停止その他必要な措置を命ずることができると規定していることから,東京都知事に おいて,本件飛行に係る調布飛行場の使用の停止等の措置を命ずることも可能であったと解する余地があり,そのような措置をとらなかったことの違法性の有無について検討する。 国又は公共団体の公務員による規制権限の不行使は,その権限を定めた法令の趣旨,目的や,その権限の性質等に照らし,具体的事情の下において, その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは,その不行使により被害を受けた者との関係において,国家賠償法1条1項の適用上違法となるものと解するのが相当である(最高裁平成元年11月24日第二小法廷判決・民集43巻10号1169頁,最高裁平成7年6月23日第二小法廷判決・民集49巻6号1600頁等参照)。 前提事実⑷ウのとおり,本件協定及び本件覚書は,地域の安全の確保,騒音の防止等,地域の生活環境の保全を図ることを目的としたものであるところ,被告東京都は,本件協定及び本件覚書の趣旨を踏まえて,本件要綱を定めた上,調布飛行場に航空機の常駐を行おうとする者に遊覧飛行など本件協定及び本件覚書に抵触する恐れ又は疑義を生じさせる飛行をしないとの注意 事項を遵守することを承諾した上での届出をさせており,被告東京都におい- 29 - ても調布飛行場において遊覧飛行をしないことの周知を図っていたということができる。 本件覚書及び本件要綱における遊覧飛行の定義は必ずしも明らかではないが(遊覧の一般的な字句の定義は,見物してまわることなどである。),仮に,本件飛行が遊覧飛行に該当するとしても, できる。 本件覚書及び本件要綱における遊覧飛行の定義は必ずしも明らかではないが(遊覧の一般的な字句の定義は,見物してまわることなどである。),仮に,本件飛行が遊覧飛行に該当するとしても,被告東京都が本件飛行につい て遊覧飛行に該当すると認識していた事実を認めるに足りる証拠はない。また,本件条例では,飛行の安全の確保のために運用時間や重量(本件条例5条)などにつき具体的な制限規定をもうけており,飛行の目的と飛行機の墜落事故との関係性が強いとまではいえないこと,さらに,本件機長,ベルハンドクラブ及び被告日本エアロテックが過去に本件条例若しくは本件条例に 基づく規則又はこれらに基づく処分に違反したことを認めるに足りる証拠がないことに照らすと,被告東京都(東京都知事)が本件飛行のための調布飛行場の使用の停止その他必要な措置を命じなかったことが著しく不合理であると認めることはできないというべきである。 ⑶ したがって,被告東京都が国家賠償法1条1項に基づいて責任を負う旨の 主張は採用することができない。 5 争点4(原告の損害の発生及び数額)について⑴ Cの死亡慰謝料及び逸失利益の相続 3587万5021円ア Cの死亡慰謝料 3000万円Cの年齢,安全である自宅内に突然本件飛行機が墜落し,火災が発生し て死亡するに至った経緯に加え,被告日本エアロテックが争っていないことに照らすと,Cの死亡慰謝料として3000万円を認めるのが相当である。 イ Cの逸失利益 4175万0042円Cが原告及び二人の弟と同居して家事を主に担当していたこと等の事実 関係に加え,被告日本エアロテックが争っていないことに照らし,逸失利- 30 - 益算定の基礎収入を 42円Cが原告及び二人の弟と同居して家事を主に担当していたこと等の事実 関係に加え,被告日本エアロテックが争っていないことに照らし,逸失利- 30 - 益算定の基礎収入を372万7100円(平成27年女子の全年齢平均賃金),生活費控除率30%とするのが相当であり,就労可能年数33年(死亡時34歳。ライプニッツ係数は16.0025を用いる。)であることから,次の計算式のとおり,逸失利益は4175万0042円である。 (計算式)372万7100円×(1-0.3)×16.0025=41 75万0042円ウ Cの死亡慰謝料及び死亡逸失利益の合計は7175万0042円であり,原告(法定相続分2分の1)が3587万5021円を相続した。 ⑵ Cの治療費 8万7320円証拠(甲12)によれば,原告はCの治療費8万7320円を負担したこ とが認められ,原告に同額の損害が生じたと認められる。 ⑶ 葬儀費用 150万0000円証拠(甲13~22,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告はCの葬儀関連費用として379万5069円を負担したことが認められるところ,150万円の範囲で本件各不法行為との間で相当因果関係を認めるのが相当 であり,原告が主張する種々の事情は,上記金額を超える額について相当因果関係を認めるに足りる事情とはいえない。 ⑷ 本件建物の焼失 234万6500円本件建物は本件事故によって全焼して焼失したところ,証拠(甲3)によれば,本件建物の平成27年度の固定資産税評価額は234万6500円で あることが認められる。本件建物について建 円本件建物は本件事故によって全焼して焼失したところ,証拠(甲3)によれば,本件建物の平成27年度の固定資産税評価額は234万6500円で あることが認められる。本件建物について建築後相当期間が経過していることがうかがわれる(原告の主張によれば昭和52年頃に建築,平成8年頃に増築)ものの,全焼していてその状態を認めるに足りる証拠はなく,固定資産税評価額の他に相当な取引価格の立証がないことに照らすと,固定資産税評価額をもって,本件建物の取引価格と認め,原告に同額の損害が生じたと 認めるのが相当である。 - 31 - ⑸ 動産(家財)の焼失 350万0000円証拠(甲43,原告本人)によれば,原告は,平成27年10月19日付けで,本件事故によって失った動産について動産り災申告書(以下「本件り災申告書」という。)を作成し,記載された物件の購入時価格の合計は約1190万円であることが認められる。 本件り災申告書の記載を裏付ける的確な証拠はないものの,本件建物が本件事故によって全焼していること,本件建物の床面積,原告が本件建物に3週間前に転居していて家財を確認する契機があったこと,本件り災申告書の作成時期に照らすと,本件り災申告書記載の物件が本件事故時に本件建物内に存在したと認めるのが相当である。 原告は,その他にも本件建物内に家財が存在した旨の主張をし,同主張に沿った供述をするところ,具体的な家財の内容を認めるに足りる証拠はないといわざるを得ない。 本件り災申告書記載の購入価額を裏付ける証拠はなく,また,本件り災申告書記載の物件は購入時から相当期間経過したものも含まれていることに照 らし,家財に係る損害として350万円を認める 本件り災申告書記載の購入価額を裏付ける証拠はなく,また,本件り災申告書記載の物件は購入時から相当期間経過したものも含まれていることに照 らし,家財に係る損害として350万円を認めるのが相当である。 原告は,家財に係る損害が1670万円と推定されると主張するが,具体的な裏付けを欠き,採用することはできない。その他に,家財に係る損害が上記認定額を超えることを認めるに足りる証拠はない。 ⑹ 入通院慰謝料 230万0000円 原告が平成28年1月12日から平成29年10月11日(症状固定日)までの約21か月間(実通院日数32日)に,56日間の入院をしていることに照らすと,入通院慰謝料として230万円を認めるのが相当である。 ⑺ 休業損害 122万7828円証拠(甲27,52,53,原告本人)によれば,原告は,本件事故の前 年に222万8140円の収入を得ていたが,本件事故日である平成27年- 32 - 7月26日から症状固定日である平成29年10月11日までの間(809日),就労不能又は制約を受けていたことが認められ,後記のとおり,原告に残存した後遺障害の内容に照らすと,全期間を通じて,70%の制限を受けていたものとして休業損害を算出するのが相当であり,345万6974円(222万8140円÷365×809日×0.7=345万6974円) の収入を得ることができなかったといえる。 他方で,証拠(甲47,51)によれば,原告は,同期間について,勤務先から給与として68万9532円,傷病手当金として153万9614円の合計222万9146円を受領したことが認められるので,同額を控除した122万7 ,51)によれば,原告は,同期間について,勤務先から給与として68万9532円,傷病手当金として153万9614円の合計222万9146円を受領したことが認められるので,同額を控除した122万7828円を損害と認めるのが相当である。 ⑻ 治療関係費 34万2340円証拠(甲28(枝番を含む。))によれば,原告が治療関係費として34万2340円を支出したことが認められ,原告に同額の損害が生じたと認められる(なお,平成28年12月14日の予防接種料3500円(甲28の34)については本件事故との間に相当因果関係を認めるには足りない。)。 ⑼ 後遺障害慰謝料 690万0000円証拠(甲26,原告本人)によれば,原告は,症状固定日において,症状にあっては事故場面の反復する侵入的想起,情緒不安定,強い悲嘆,抑うつ症状が遷延し,意欲低下があり,能力にあっては仕事・生活に関心を持つこと,仕事・家庭において作業を持続することができること,仕事・家庭にお ける対人関係・協調性,仕事・生活・家庭における困難・失敗への対応についてひんぱんに助言・援助が必要な程度に能力が低下していて,介護職への復帰は困難であると診断されていることが認められ,本件事故の態様,治療経過,症状に照らすと,同診断のとおりの症状が残存したと認めるのが相当である。そして,同症状は,服することができる労務が相当な程度に制限さ れるもの(後遺障害等級表9級に相当するもの)と認めるのが相当である。 - 33 - したがって,後遺障害慰謝料は690万円と認めるのが相当である。 ⑽ 逸失利益 602万1760円 めるのが相当である。 - 33 - したがって,後遺障害慰謝料は690万円と認めるのが相当である。 ⑽ 逸失利益 602万1760円原告の後遺障害に照らして労働能力喪失率を35%とするのが相当であり,原告が症状固定日において61歳で就労可能年数が10年(ライプニッツ係数7.7217)であるから,逸失利益は,次の計算式のとおり,60 2万1760円である。 (計算式)222万8140円×0.35×7.7217=602万1760円⑾ 本件自動車の焼失 21万8214円証拠(甲29,44)によれば,本件自動車と同種の型式E-YR21G トヨタタウンエース(平成6年12月)販売モデルの新車平均価格が202万0500円であると認められること,初度登録からの経過年数に照らし,同新車平均価格の10%である20万2050円に買替諸費用として消費税8%相当額である1万6164円を足した21万8214円を損害と認める。 原告は,使用価値相当額30万6000円が車両損害であると主張するが,上記の再取得に要する費用によって損害は填補されているというべきであるから採用することができない。 ⑿ 本件バイクの修理費用 9万7443円証拠(甲31,45)によれば,原告は,本件バイクの修理費として9万 7443円を支払ったことが認められ,原告に同額の損害が生じたと認められる。 ⒀ ペット喪失による損害 94万5131円ア犬のGの治療費 15万4602円証拠(甲32)によれば,原告は,犬のGの治療に係る治療費として1 ⒀ ペット喪失による損害 94万5131円ア犬のGの治療費 15万4602円証拠(甲32)によれば,原告は,犬のGの治療に係る治療費として1 5万4602円を支払ったことが認められ,原告に同額の損害が生じたと- 34 - 認めるのが相当である。 イ葬儀費用 11万円証拠(甲33,原告本人)によれば,原告は,本件各ペットの葬儀費用として合計32万6000円を支払ったことが認められるところ,ペットが死亡した際に埋葬することについては社会一般において実施されてい るといえるものの,葬儀の実施の有無,方法については社会一般において定まったものがあるといい難いことに照らし,本件各不法行為と相当因果関係のある損害として合計11万円を認めるのが相当である。 ウ財産的損害 18万0529円証拠(甲34,原告本人)によれば,原告は,本件事故の直前に犬(N) を18万0529円で購入したことが認められ,原告に同額の損害が生じたと認められる。 本件各ペットのうちN以外については,その購入時期・購入額を認めるに足りる証拠はないこと照らすと,次の慰謝料において考慮することとする。 エ精神的損害 50万円証拠(甲53,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,犬及び亀を家族同様にかわいがっていたことが認められ,これらを火災により失ったことによって精神的苦痛を受けたと認めるのが相当であり,また,犬のN以外についての財産的損害についても考慮すると,慰謝料として50 万円を認めるのが相当である。 ⒁ 本件建物の撤去費用 724万2480円証拠(甲35,46,原告 の財産的損害についても考慮すると,慰謝料として50 万円を認めるのが相当である。 ⒁ 本件建物の撤去費用 724万2480円証拠(甲35,46,原告本人)によれば,被告東京都は,事務管理として,724万2480円をかけて本件建物を撤去していることが認められ,原告は,東京都に対し,同額を支払う必要があり,原告に同額の損害が生じ ていると認められる。 - 35 - ⒂ 金庫の開錠費用 2万9160円証拠(甲36)によれば,原告は,本件事故によって,金庫の鍵を紛失したため,金庫の開錠費用として,2万9160円を支出したことが認められ,原告に同額の損害が発生していると認められる。 ⒃ 弁護士費用 686万0000円 弁護士費用のうち,前記⑴から⒂までの損害額の合計6863万3197円の約10%である686万円を本件各不法行為と相当因果関係のある弁護士費用と認める。 ⒄ 合計 7549万3197円第4 結論 以上によれば,原告の被告SIP及び被告日本エアロテックに対する請求は主文の限度で理由があるからその限度で認容し,被告SIP及び被告日本エアロテックに対するその余の請求並びに被告東京都に対する請求は理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第37部 裁判長裁判官加本牧子 裁判官波多野紀夫 裁判官矢達彦 裁判長 裁判官加本牧子 裁判官波多野紀夫 裁判官矢達彦

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