平成19(行コ)369 行政情報非公開決定取消請求控訴事件(原審・長野地方裁判所平成19年(行ウ)第14号)

裁判年月日・裁判所
平成20年3月18日 東京高等裁判所 情報公開
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判決文本文10,958 文字)

- 1 -主文 原判決中,長野市長が控訴人に対し平成19年4月27日付け××庶第××号により通知した行政情報非公開決定のうち,「新旧対照表」のうち新住所表示欄及び旧住所表示欄を公開しないこととした部分の取消請求を棄却した部分を取り消す。 上記長野市長がした行政情報非公開決定のうち,「新旧対照表」のうち新住所表示欄及び旧住所表示欄を公開しないこととした部分を取り消す。 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1当事者の求めた裁判 控訴の趣旨主文と同旨 控訴の趣旨に対する答弁(1)本件控訴を棄却する。 (2)控訴費用は控訴人の負担とする。 第2事案の概要 本件は,長野市情報公開条例(以下「本件条例」という。)6条1項に基づき,「住居表示実施地区全ての新旧対照表・案内図」の公開を請求した控訴人が,上記情報のうち「住居表示実施地区全ての新旧対照表」(以下「新旧対照表」という。)について,世帯主名及び旧住所地番は本件条例7条2号本文の定める個人識別情報に該当し,これらを除いた部分は有意の情報が記載されていないとの理由により,新旧対照表を公開しないと決定(以下「本件処分」ともいう。)した長野市長に対し,本件処分のうち,個人の氏名が記録されている部分を除いた部分を非公開とする部分の取消を求めた事案である。 原判決は,新旧対照表のうち旧住所は,本籍や不動産の表示に結びつくため新住所表示と一体としてみると,特定の個人の本籍や不動産の権利関係等に関- 2 -連する情報となり得るから,本件条例7条2号本文に該当し,新旧対照表のうち新住所は,住居表示に関する法律(以下「住居表示法」という。)3条3項等の規定により公にされている情報に当たるものの,この部分の情報のみでは有意な情報とはいえず, 2号本文に該当し,新旧対照表のうち新住所は,住居表示に関する法律(以下「住居表示法」という。)3条3項等の規定により公にされている情報に当たるものの,この部分の情報のみでは有意な情報とはいえず,本件条例8条1項但書に該当するとして,新旧対照表を非公開としたことは適法であるとして,控訴人の請求を棄却した。 控訴人は,これに不服があるとして,本件控訴を申し立てたが,控訴人は,本件処分のうち取消を求める部分を「新旧対照表」のうち新住所表示欄及び旧住所表示欄の記載(以下「本件情報」という。)を公開しないこととした部分に限定した。 前提事実(争いがない事実及び掲記の証拠により容易に認定できる事実)(1)本件条例の定めは,以下のとおりである(抜粋)。 1条(目的)この条例は,地方自治の本旨にのっとり,市民の知る権利を尊重し,行政情報の公開を請求する権利を明らかにすること等情報公開の総合的な推進に関し定めることにより,市民の市政参加を一層促進するとともに,市の諸活動を市民に説明する責務を果たし,市政運営における透明性の向上を図り,市政に対する市民の理解と信頼を深め,もって公正で開かれた市政の発展に寄与することを目的とする。 3条(実施機関の責務)実施機関は,この条例の解釈及び運用に当たっては,行政情報の公開を請求する権利を十分尊重するとともに,個人の秘密その他の通常他人に知られたくない個人に関する情報がみだりに公開されることがないよう最大限の配慮をしなければならない。 5条(公開請求権)何人も,この条例の定めるところにより,実施機関に対し,当該実施機関が管理する行政情報の公開を請求することができる。 7条(行政情報の公開義務)実施機関は,公開請求があったときは,公開請求に係る行政情報に次の各号に掲げる情報(以下「非公開情報」という。)の 施機関が管理する行政情報の公開を請求することができる。 7条(行政情報の公開義務)実施機関は,公開請求があったときは,公開請求に係る行政情報に次の各号に掲げる情報(以下「非公開情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き,公開請求者に対し,当- 3 -該行政情報を公開しなければならない。 (1)法令又は条例(以下「法令等」という。)の規定により,公開することができない情報(2)個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが,公開することにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし,次に掲げる情報を除く。 ア法令等の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報イ人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公開することが必要であると認められる情報ウ及びエ略(3)ないし(6)略8条(部分公開) 実施機関は,公開請求に係る行政情報の一部に非公開情報が記録されている場合において,非公開情報が記録されている部分を容易に区分して除くことができるときは,公開請求者に対し,当該部分を除いた部分につき公開しなければならない。ただし,当該部分を除いた部分に有意の情報が記録されていないと認められるときは,この限りでない。 公開請求に係る行政情報に前条第2号の情報(特定の個人を識別することができるものに限る。)が記録されている場合において,当該情報のうち,氏名,生年月日その他の特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除くことに 第2号の情報(特定の個人を識別することができるものに限る。)が記録されている場合において,当該情報のうち,氏名,生年月日その他の特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除くことにより,公開しても,個人の権利利益- 4 -が害されるおそれがないと認められるときは,当該部分を除いた部分は,同号の情報に含まないものとみなして,前項の規定を適用する。 (2)控訴人は,長野市長に対し,平成19年3月27日付けで,本件条例6条1項に基づき,「住居表示実施地区すべての新旧対照表(1棟ごとに地番・住居番号の明記されている資料)・案内図」の公開を請求(以下「本件公開請求」という。)した。 (3)長野市長は,本件公開請求を平成19年3月29日付けで受理し,公開決定等の期間の延長を経たうえで,「住居表示地区全ての案内図」(以下「案内図」という。)は一部公開の決定をし,「住居表示地区全ての新旧対照表(一棟ごとに地番・住居番号の明記されている資料)」(新旧対照表)は公開しない旨の本件処分をし,同年4月27日××庶第××号により控訴人に通知した。 (4)長野市長は,新旧対照表を公開しない理由として,本件条例第7条2号に該当すること,新住所表示欄の記載は公にされている情報に当たるが,同部分のみでは有意の情報に当たらないと認められること(甲3の3の(1))を挙げている。なお,案内図については,世帯主氏名,旧住所地番を公開しないとし,その理由を本件条例7条2号に該当するとした(甲3の2の(1)~(3))。 争点とこれについての当事者の主張(1)本件情報が本件条例7条2号本文の個人識別情報に当たるか否かア被控訴人新旧対照表の世帯主名,新住所(町名・番・号)(以下「新住所表示」という。)欄及び旧住所(町名,番地)(以下「旧住所表示」とい 本件情報が本件条例7条2号本文の個人識別情報に当たるか否かア被控訴人新旧対照表の世帯主名,新住所(町名・番・号)(以下「新住所表示」という。)欄及び旧住所(町名,番地)(以下「旧住所表示」という。)欄の記載を一体の情報としてみた場合,全体として特定の個人の情報といえるのであるから,それらの記載が本件条例7条2号本文に該当することは明らかである。 - 5 -また,新旧対照表のうち,世帯主名及び備考欄(集合住宅の名称及び部屋番号が記載されている。)を除いた部分,すなわち,基本的に新住所表示及び旧住所表示のみでは,それ自体から直ちに特定の個人を識別し得るものではないものの,不動産登記簿及び公図等の誰でも閲覧できる情報と結合することにより,特定個人を識別できる情報となる。 ただし,本件情報のうちの新住所表示欄の記載のみについては,住居表示法3条3項により,市町村は,街区符号及び住居番号の告示を義務づけられており,上記告示により公にされる街区符号及び住居番号は,本件情報のうちの新住所表示欄の情報と同一内容の情報であるため,実質的に本件情報のうち新住所表示の記載に相当する情報が公にされているので,新住所表示欄の記載を公開しても個人の権利利益が害されるおそれはなく,部分公開が可能な情報といえる(本件条例8条2項)。しかし,新住所表示欄の記載のみでは,新住所表示が羅列されているにすぎず,それ自体有意な情報とはいえないため,長野市長は,新住所表示欄の記載は公開が可能な情報といえるものの,「有意な情報が記録されていないと認められる」(本件条例8条1項但書)ものと判断し,結局,新旧対照表について非公開とする本件処分をした。 イ控訴人(ア)本件条例7条2号本文の個人識別情報に該当するためには,当該情報と他の情報とを組み合わせることによって個人に )ものと判断し,結局,新旧対照表について非公開とする本件処分をした。 イ控訴人(ア)本件条例7条2号本文の個人識別情報に該当するためには,当該情報と他の情報とを組み合わせることによって個人に関わりのある形で観念されるというだけでは不十分で,当該情報自体から(個人の識別性とは別に)個人の関わりを観念できることが必要と解すべきである。なぜなら,他の情報と組み合わせることによって,個人に関わりのある形で観念され得る情報までも,個人識別情報に該当するものとすると,社会的に有意なあらゆる情報が「個人に関する情報」に該当してしまい,本件条例が非公開情報につき個人識別情報の限定を付した意味が失われる- 6 -ばかりか,非公開とされる情報の範囲が不当に拡がることになって,本件条例の趣旨目的(1条)を没却することにつながるからである。 これを本件についてみると,本件情報の新住所表示欄と旧住所表示欄には,住居表示実施前後の新旧両住所の対応関係が示されているが,このような情報からは,当該新旧両住所が示す建物の入居者や所有者が誰であるかはもとより,当該建物の入居者や所有者が個人であるかどうかすらも窺い知ることができない。したがって,本件情報は,個人識別情報には当たらない。 (イ)本件条例の趣旨・目的(1条,3条)に照らすと,長野市の空間領域に関する情報のように,公共性の高い情報であって,個人との関わりとは無関係に決まっていて,かつ,公知又はそれに近い情報や社会に広く共有されることが当然に予定されている情報など,個人の権利利益を保護する観点からの秘匿の必要性が認められないような情報は,個人を離れて「みんなに関する情報」を構成しているものとして個人識別情報には該当しないものと解すべきである。 これを本件についてみると,本件情報は,長野市の自治権が及ぶ 性が認められないような情報は,個人を離れて「みんなに関する情報」を構成しているものとして個人識別情報には該当しないものと解すべきである。 これを本件についてみると,本件情報は,長野市の自治権が及ぶ空間領域において実施されている住居表示に関する情報であって,なかでも,現に設定されている街区符号及び住居番号の組み合わせと,それに対応する旧住所地番に関する情報であるから,極めて公共性の高い情報といえる。また,本件情報の新住所表示欄と旧住所表示欄に記録されている情報は,新旧住所のつながりを示すものにすぎないから,個人が関わるかどうかとは無関係に客観的に決まっているものである。加えて,新住所については,住居表示法3条3項による告示,同法8条による街区住居番号の表示板の設置等によって一般的に知り得る性質のものであり,制度的にも社会に広く共有されることが予定されている情報である(同法6条)。他方,旧住所に相当する地番の情報は,一筆の土地の区域の- 7 -表示にかかる基礎的な情報として社会で共有されることが想定され,公図や地籍図,いわゆる14条地図等が流通し,参照されることによって,不特定多数が共通に認識することが予定されているものといえる。とすれば,どの建物にどういった住所が設定されていて,その敷地の地名地番がどういったものであるかについても,社会に広く共有されることが予定された情報であって,一般的に知り得る性質のものというべきである。そして,新旧住所の対応関係については,住居表示法5条の2第1項の公示,同第4項の公表,同第6項の公聴会における意見聴取,地方自治法260条2項の告示等により既に公知となっており,それを基に現在の地名を旧地名に置き換えることにより,地名地番から容易に旧住所を割り出すことができるのであるから,旧住所も一般的に知り 取,地方自治法260条2項の告示等により既に公知となっており,それを基に現在の地名を旧地名に置き換えることにより,地名地番から容易に旧住所を割り出すことができるのであるから,旧住所も一般的に知り得る性質のものといえる。したがって,新旧住所の対照である本件情報は,公共性の高い客観的情報であって,個人の権利利益を保護することとの関係で秘匿の必要性が認められないものであるから,個人識別情報には当たらない。 (2)本件情報が本件条例7条2号アの公開情報に該当するか否かア控訴人新旧住所の対応関係を直接公にすることを定めた法令等の規定は存在しない。しかし,建築物の住居表示とその敷地の地名地番は,建築計画概要書の第2面に併記されることになっているところ,建築基準法93条の2及び同法施行規則11条の4第2項によると,特定行政庁は,建築計画概要書について,建築物が滅失し,又は除却されるまで,閲覧に供されなければならないとされているから,建築物の住居表示とその敷地の地名地番は,上記閲覧制度によって法令上公にされるものといえる。 また,どこの建物にどういった街区符号及び住居番号が設定されているかは,住居表示法3条3項の市町村による告示,同法8条1項の市町村に- 8 -よる街区表示板の設置,同条2項の建物所有者等による住居番号等表示によって公にされているし,当該建物の敷地の地名地番については,不動産登記法44条1項1号の表示の登記,同法14条1項の建物所在図等によって示されており,登記事項証明書の交付について定めた同法119条や,建物所在図を含む地図等の交付について定めた同法120条によって公にされているから,建築物の住居表示とその敷地の地名地番は,これらの規定によっても,法令上公にされている。 そして,住居表示法5条の2第1項の公示,同第4項の 交付について定めた同法120条によって公にされているから,建築物の住居表示とその敷地の地名地番は,これらの規定によっても,法令上公にされている。 そして,住居表示法5条の2第1項の公示,同第4項の公表,同第6項の公聴会,地方自治法260条2項の告示等によって公にされている旧町(字)名をもとに,当該建築物の敷地の地名地番の地名部分を旧町(字)名に置き換えれば旧住所が容易に導き出せるから,当該建築物の旧住所も,法令等の規定により公にされているに等しいといえる。 以上のとおり,本件情報は,法令等の規定により公にされているに等しいから,本件条例7条2号但書ア所定の「法令等の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」又はそれに準じた情報に該当する。 イ被控訴人本件情報は,本件条例7条2号アの公開情報に該当するとはいえない。 すなわち,個人識別情報は,通常,個人を識別させる部分(例えば,氏名)とその他の部分から成り立っており,その全体が一つの不開示情報を構成するものである。個人識別情報に関する不開示情報の単位としては,他の不開示情報と異なり,個人識別情報とその他の部分は一体のものである。したがって,「特定の個人を識別することができるもの」(本件条例7条2号本文)の範囲は,当該情報に係る個人が誰であるかを識別させることとなる氏名その他の記述の部分のみならず,氏名その他の記述等により識別される特定の個人情報の全体である。 - 9 -新旧対照表は,少なくとも世帯主名を含む以上,全体として個人識別情報に該当し,「法令等の規定により又は慣行として公にされている情報」,すなわち,法令等の規定により又は慣行として何人も知り得る状態に置かれている情報ではなく,本件条例7条2号アに該当しない。 控訴人は,建築基準法93条の2及び同 り又は慣行として公にされている情報」,すなわち,法令等の規定により又は慣行として何人も知り得る状態に置かれている情報ではなく,本件条例7条2号アに該当しない。 控訴人は,建築基準法93条の2及び同法施行規則11条の4第2項の規定により建築計画概要書を閲覧し得ることなどを挙げて,本件情報が本件条例7条2号アの公開情報に当たる旨主張するが,これらの規定により容易に取得し得る個々的な資料と本件情報の公開が重なると,むしろ特定個人の識別が可能となり,個人の正当な権利が侵害される蓋然性があるというべきである。 (3)本件情報が本件条例7条2号イの公開必要情報に該当するか否かア控訴人建築物の新旧住所が公になることによって,土地や建物の位置関係を正確かつ容易に把握できるようになる。これにより,救急や消防,警察等の車両が素早く現場に駆け付けることができたり,宅配業者が小包を迅速に届けることができたり,あるいは不動産物件を効率的に見つけることができたりするなど,土地や建物の位置関係が不明であったことによる様々な不便や無駄が解消されることになり,公共の福祉(住居表示法1条)が増大することにつながる。 したがって,本件情報は,本件条例7条2号但書イ所定の「人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公開することが必要であると認められる情報」に該当する。 イ被控訴人控訴人が本件情報が公開されることによって保護される利益として主張する「土地や建物の位置関係を正確かつ容易に把握できること」「救急や消防,警察等の車両が素早く現場に駆け付けることができること」「宅配- 10 -業者が小包を迅速に届けることができること」及び「不動産物件を効率的に見つけることができること」は,そもそも本件情報が公開されることによって実現されるものかどうか疑わしいうえ,仮に 配- 10 -業者が小包を迅速に届けることができること」及び「不動産物件を効率的に見つけることができること」は,そもそも本件情報が公開されることによって実現されるものかどうか疑わしいうえ,仮にそれらが実現されるとしても,控訴人も認めるとおり,それらの利益の内実は,市民の日常生活における不便や無駄の解消程度であるにすぎず,本件情報の公開により,人の生命,健康,生活又は財産の権利利益が具体的に保護されるとは到底考えられない。ましてや,個人識別情報として非公開によって保護されることとなるプライバシーを中心とする個人の正当な権利利益保護に優越するなどということはあり得ない。 したがって,本件情報は,本件条例7条2号イの公開必要情報には当たらない。 第3当裁判所の判断 争点(1)(本件条例7条2号本文の個人識別情報に該当するか否か)について新旧対照表は,新住所表示(町名,番,号),これに対応する旧住所表示(町名,番地),世帯主(事業所)名及び備考の各欄の記載から成るものであるが(乙1),これから個人氏名が記録されている部分を除いた部分すなわち本件情報は,それ自体から特定の個人を識別することができないものであることは明らかである。 しかし,本件条例7条2号本文は,特定の個人を識別することができるものには,他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することができることとなるものを含むと定めているところ,不動産登記法119条ないし121条等によると,何人も,不動産登記記録の登記事項証明書及び地図等の写しの交付を受けることができるのであり,これにより,旧住所である土地の地番,同土地上の建物の所在の有無,土地及び建物の所有者等を知ることができるから,この情報と本件情報とを照合することにより,土地上の建物の所有者を識別することが可能であると より,旧住所である土地の地番,同土地上の建物の所在の有無,土地及び建物の所有者等を知ることができるから,この情報と本件情報とを照合することにより,土地上の建物の所有者を識別することが可能であるといえる。したがって,本件情報は,他の情報と照合- 11 -することにより特定の個人を識別することができるものであり,本件条例7条2号本文の個人識別情報に当たると解するのが相当である。 争点(2)(本件条例7条2号アの公開情報に該当するか否か)について(1)まず,住居表示法3条3項によると,「市町村は,前項(同条2項)の規定により街区符号及び住居番号又は道路の名称及び住居番号をつけたときは,住居表示を実施すべき区域及び期日並びに当該区域における住居表示の方法,街区符号又は道路の名称及び住居番号を告示するとともに,これらの事項を関係人及び関係行政機関の長に通知し,かつ,都道府県知事に報告しなければならない。」と定められ,また,同法8条1項によると,「市町村は,3条3項の告示に係る区域の見やすい場所に,当該区域内の町若しくは字の名称及び街区符号又は道路の名称を記載した表示板を設けなければならない。」と定められているから,本件情報のうち新住所表示欄の記載は,法令等の規定により公にされているものというべきである。 次に,本件情報のうち旧住所表示欄の記載についてみると,前記のとおり,不動産登記法119条ないし121条等に基づき不動産登記記録の登記事項証明書及び地図等の写しの交付を受けることにより,旧住所である土地の地番,同土地上の建物の所在の有無,土地及び建物の所有者等を知ることができるから,旧住所表示欄の記載は,これらの規定によって公にされているものといって妨げないものというべきである。新住所と旧住所との対照についても,前記新住所についての表示 建物の所有者等を知ることができるから,旧住所表示欄の記載は,これらの規定によって公にされているものといって妨げないものというべきである。新住所と旧住所との対照についても,前記新住所についての表示板の表示と不動産登記法上の地図等との比較によって可能である。 加えて,建築確認を受ける際に提出される建築計画概要書の第2面には,建築物の住居表示(新住所に相当)とその敷地の地名地番(旧住所に相当)が記載されているところ,建築基準法93条の2及び同法施行規則11条の4第2項によると,建築計画概要書は,建築物が滅失し,又は除却されるまで,閲覧に供さなければならないと定められている。この閲覧制度は,善意- 12 -の買主が無確認建築物(違反建物)を購入することにより不測の損害を被ることを防止するとともに,建物を建てる際に起こり得る周辺とのトラブル防止や違反建築物を抑制するために設けられたものと解されている。これによると,新たに建築される建物については,法令等の規定により新旧住所表示欄の記載がともに公にされることが予定されているものである。 以上によると,本件情報のうち新住所表示欄及び旧住所表示欄の記載は,法令等の規定により公にされ,又は公にすることが予定されているものであり,本件条例7条2号アの公開情報に該当する。 (2)被控訴人は,個人識別情報が否かは新旧対照表を単位として判断されるべきであり,したがって,本件条例7条2号アに該当するか否かも,全体の情報として考慮されるべきところ,新旧対照表としては法令等の規定により公にされているものとはいえない旨主張する。 たしかに新旧対照表が一体として公にされることを定めた法令等の規定は見当たらないけれども,本件条例8条1項は,部分的に非公開情報があって,それを容易に除外できる場合には,これを除外した部分の する。 たしかに新旧対照表が一体として公にされることを定めた法令等の規定は見当たらないけれども,本件条例8条1項は,部分的に非公開情報があって,それを容易に除外できる場合には,これを除外した部分の公開をしなければならないと定めているのであり,このような部分公開の制度を設けた趣旨に照らすと,新旧対照表のうち世帯主欄及び備考欄とその余の住居表示部分がおよそ性質上不可分であるとは認められず,また,容易に区分して除去できると認められるから,世帯主欄及び備考欄を除いた部分に限定して本件条例7条2号アの公開情報に該当するか否かを判断するのが相当であり,被控訴人の主張は採用することができない。 (3)なお,証拠(甲5,6の1ないし273,7の1ないし273)及び弁論の全趣旨によると,控訴人は,全国の多くの地方自治体に対し,本件公開請求と同様に,新旧住所対照表等の情報公開の請求をし,ほとんどの自治体から世帯主名等の個人識別情報を除いた部分の情報公開を受けていることが認められるところ(松山市においては,住居表示法3条3項の告示の際に,新- 13 -旧住所の対照簿を公にしていることが認められる(甲23号証)。),そのことによって個人情報保護の観点から問題が生じ又はそのおそれがあることを窺わせる証拠はない。 以上によると,新旧対照表のうち新住所表示欄及び旧住所表示欄の記載は,本件条例7条2号本文の個人識別情報に該当するものの,同号アの公開情報に当たるというべきであるから,本件処分のうち新住所表示欄及び旧住所表示欄を非公開としたことは違法であって取消を免れず,控訴人の請求は理由がある。 よって,これと異なる原判決中の上記部分を取り消し,控訴人の請求を認容するととし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第16民事部裁判長裁判官宗宮英俊裁判官 ,控訴人の請求は理由がある。 よって,これと異なる原判決中の上記部分を取り消し,控訴人の請求を認容するととし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第16民事部裁判長裁判官宗宮英俊裁判官坂井満裁判官大竹昭彦

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