昭和33(う)311 関税法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和34年7月14日 名古屋高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件各控訴を棄却する。      当審における訴訟費用は被告人の負担とする。          理    由  本件各控訴の趣意は、検察官菊池健一郎及び弁護人中沢守正同フランク

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判決文本文2,888 文字)

主文本件各控訴を棄却する。 当審における訴訟費用は被告人の負担とする。 理由本件各控訴の趣意は、検察官菊池健一郎及び弁護人中沢守正同フランクリン、ウオーレンの各控訴趣意書に夫々記載するとおりであるから、ここにこれを引用するが、これに対し当裁判所は次ぎのように判断する。 中沢、ウオーレン両弁護人の法令違背の各論旨について。 所論はまず第一に本件公訴のうち幇助については訴因の将定を欠き不適法であるというのであるが、本件起訴状における被告人の関税法違反の幇助の事実に関しては、一個の幇助行為を形成している個々の行為のうちの主要な行為につき、日時、場所を特定し具体的に記載されているから、起訴状における訴因の記載としてはこの程度で何等欠くところなきものというべく、またもとより所論の如く犯罪の実体のないものでないことは言を俟たない。論旨はとうてい採用できない。 所論は第二に原判決の第一事実については訴因の追加ないし変更の手続をへないで、本件公訴の訴因と異る事実を認定したというのであつて、なるほど原判決には起訴状に記載のない所論のような判示事実の記載があることは明であるが、原判決は本件公訴の訴因の同一性を失わない範囲内において、起訴状に比してやや詳細な事実を認定しているに過ぎないから、所論の如く訴因の追加、変更の手続を経る必要のないことは疑をいれない。論旨も採用できない。 所論の第三は要するに、原判決はAとB両名の大蔵事務官及び検察官に対する各供述調書を証拠として引用しているが、駐留軍の協力によつて証人として出廷せしめることが可能なる以上、右両名が国外にいるというだけでは右調書は証拠能力をもちえないと<要旨>いうのである。記録によれば原審検察官は右各供述調書を原審第二回の公判において取調の請 人として出廷せしめることが可能なる以上、右両名が国外にいるというだけでは右調書は証拠能力をもちえないと<要旨>いうのである。記録によれば原審検察官は右各供述調書を原審第二回の公判において取調の請求をしたが、被</要旨>告人はこれに同意しなかつたため、原審は第三回公判において検察官の右申請を却下したところ、検察官は直ちに右AとBの両名を証人として申請したので原審はこれを採用し、右両名の所属部隊たる名古屋基地第六一〇一空軍連隊法務課を通し、駐留軍に証人の喚問を要請した。しかるに、原審は駐留軍から、右証人は両名ともすでに米国に帰還し所定の公判期日に出頭させることは不可能である旨の回答に接したので、第九回公判で右の証拠決定を取消した。そこで原審検察官はさきの右両名の供述調書について刑事訴訟法第三百二十一条第一項第二号、第三号にいわゆる供述者が国外にいるため、公判期日において供述することができないものとして再度これが取調の請求をなし、原審はその申請を容れたものであることが明である。 したがつて石各供述調書は前記第三百二十一条第一項第二、第三号の他の要件と相まつて証拠能力を有するものといえる。いかにも日米安全保障条約第三条に基く行政協定第十七条第九項の(c)によると被告人は自己に不利益な証人と対決する権利を有し、同じくその(d)によれば証人を強制手続によつて求める権利を有していることは所論のとおりであるが、右の条項はわが憲法第三十七条第二項と同趣旨の規定と解すべきであつて、憲法の右条項が被告人に証人尋問の機会を求めうる国家に対する受益権を認めたものであつて、刑事訴訟手続において証人尋問に直接審理主義を採用すべきことを規定したものでないことは疑がないから、原審が前叙の如く、外国に帰還した証人の採用決定を取消し、その者の前記検察官などに対する供述 つて、刑事訴訟手続において証人尋問に直接審理主義を採用すべきことを規定したものでないことは疑がないから、原審が前叙の如く、外国に帰還した証人の採用決定を取消し、その者の前記検察官などに対する供述調書に証拠能力を認めても日米行政協定の右条項の趣旨に違背するものではないといわねばならぬ。 弁護人両名の控訴趣意中事実誤認の論旨について本件記録を精査し、原判決挙示の各証拠及び原裁判所が取調べたすべての証拠を仔細に検討し、当審における事実取調の結果を総合すると、被告人の原判示各犯罪事実は原判決挙示の各証拠によつて優にこれを認めることができ、その認定に誤認ありとは認め難い。もつとも被告人は原判示第一の事実については原判示自動車Cの所有権を名実ともに取得したのであつて仮装したものではないと主張しているけれども、そもそもこの取引は当初D、Eの両名がBの操縦していたフォードの買受方を同人に申入れたことに端を発しており、右D、E等は昭和三十一年四月十六日手付金二十九万円を、さらに翌十七日残金百万円を売主たるBに支払い、同人等は即日、右自動車の引渡を了していることが明である。したがつて被告人が右自動車につきBーとの間に取交した売買契約書も虚偽仮装のものであつて、すなわちBは同年九月頃帰国することになつており、それまでには所定の年限が来ないので合法的に名義を移すことができないため、被告人に情をあかし右のように、被告人に売つたことにしてその名義を変更し、その手数料として金百ドルを被告人に支払つていることが認められる。さらに被告人は原判示第二の事実につき、この取引に全く関与していないと弁明しているが、被告人はAの依頼の下に、自ら電話でD、E等を守山基地に呼びよせ、Aの原判示Fを示して三千五百ドルで買わないかと同人等にすすめ、なおその際、Aには内密で二百ドル 全く関与していないと弁明しているが、被告人はAの依頼の下に、自ら電話でD、E等を守山基地に呼びよせ、Aの原判示Fを示して三千五百ドルで買わないかと同人等にすすめ、なおその際、Aには内密で二百ドルの世話料を貰い度いと申入れていることが明であつて、被告人の本件犯行におけるこのような積極的な行動などからいつて、被告人は売主たるAと共同正犯の関係にあるものというべく、これと同趣旨にいでた原認定は相当である。 論旨は要するに、証拠の価値判断について独自の見解にたち、原審の適法になした事実認定を論難するものであつて採用しがたい。 検察官の量刑不当の論旨について。 記録を精査し原判決挙示の証拠その他原裁判所が取調べたすべての証拠の内容を具さに検討し、当審における事実取調の結果を加味参酌すると、本件犯行の動機、態様、被告人の経歴素行、その他諸般の情状に鑑みれば所論の各事情を参酌しても被告人に対する原審の量刑が不当であつて、いまただちにこれを変更しなければならぬとするほどの事由を認め得ないから論旨は採用しがたい。 よつて本件各控訴はいずれもその理由がないので刑事訴訟法第三百九十六条に則り之を棄却すべく、当審における訴訟費用は同法第百八十一条第一項本文を適用して被告人に之を負担させることとし主文の通り判決する。 (裁判長判事小林登一判事中浜辰男判事成田薫)

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