平成31(行コ)96 消費税更正処分等取消請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和元年9月26日 東京高等裁判所
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判決文本文7,581 文字)

令和元年9月26日判決言渡平成31年(行コ)第96号消費税更正処分等取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成29年(行ウ)第144号) 主文 1 本件控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 (「超える部分」の表現ぶりの趣旨については原判決と同じ。) A税務署長が平成27年5月26日付けで控訴人に対してした平成25年4月24日から同月30日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)分の消費税及び地方消費税の更正処分(ただし,平成29年6月27日付けの更正処分による変更後のもの)のうち還付金の額に相当する消費税の額2415万5116円を超える部分及び還付金の額に相当する地方消費税の額60 3万8779円を超える部分並びに平成27年7月28日付けで控訴人に対してした過少申告加算税の賦課決定処分(ただし,平成29年6月27日付けの変更決定による変更後のもの)をいずれも取り消す。 第2 事案の概要(以下において略称を用いるときは,別途定めるほか,原判決に同じ。) 1 本件事案の概要は,原判決の「事実及び理由」中「第2 事案の概要」の柱書に記載のとおりであるから,これを引用する。 ただし,3頁17行目末尾に行を改めて以下のとおり加える。 「 原審が控訴人の請求をいずれも棄却する判決をしたところ,控訴人がこれを不服として控訴した。」 2 「関係法令等の定め」,「前提となる事実関係」,「本件更正処分等の根拠及び 適法性」,「争点」及び「争点に対する当事者の主張の要点」は,原判決「事実及び理由」第2の1ないし5に記載 2 「関係法令等の定め」,「前提となる事実関係」,「本件更正処分等の根拠及び 適法性」,「争点」及び「争点に対する当事者の主張の要点」は,原判決「事実及び理由」第2の1ないし5に記載のとおりであるから,これを引用する。 3 当審における控訴人の補足的主張等⑴ 争点⑴(本件建物の取得に係る「課税仕入れを行った日」(消費税法30条1項1号)が本件課税期間に属する日であるか否か)について 消費税法30条1項1号は,「課税仕入れを行った日」の属する課税期間からの仕入税額控除を認めているのみであって,具体的な基準は法令上示されていないところ,取引のうちどの時点をもって「課税仕入れを行った日」とすべきかについて,権利確定主義は一義的な基準とはなり得ない。 結局,取引の経済的実態からみて合理的な基準が何であるかを個別具体的 な取引を一定程度類型化して定めるほかなく,それゆえ法人税法,所得税法及び消費税法の「法令解釈」として,取引類型に応じて実際の取引の経済的実態に応じた通達の定めが設けられ,当該通達を一般的な法解釈として課税実務が運営されている。そして,建物の譲渡においては,建物に特定性及び個別性が著しく高い,流動性が高くない,引渡しが外観上判別しにくいとい う特徴があることから,取引の経済的実態からみて合理的な基準として,「課税仕入れを行った日」の判断は,①その引渡しがあった日(本件通達本文)又は②事業者が当該固定資産の譲渡に関する契約の効力発生の日を資産の譲渡(課税仕入れ)の時期としているときは,これを認める(本件通達ただし書)とする解釈が課税実務上採用され,これは安定した法解釈として,一 般的なものとして用いられている。したがって,消費税法30条1項1号の解釈として,建物の譲渡における「 める(本件通達ただし書)とする解釈が課税実務上採用され,これは安定した法解釈として,一 般的なものとして用いられている。したがって,消費税法30条1項1号の解釈として,建物の譲渡における「課税仕入れを行った日」とは,権利確定主義を前提として,①引渡しのあった日及び②当該建物の譲渡に関する契約の効力発生の日を指すものである。 本件において,本件建物は,平成25年4月25日に売買契約が締結され, 停止条件や停止期限は付されておらず,契約の効力発生の日を基準とすれば, 同日が「課税仕入れを行った日」であるから,控訴人の消費税法の申告に違法な点はない。 ⑵ 争点⑵((本件司法書士報酬に係る「課税仕入れを行った日」(消費税法30条1項1号)が本件課税期間に属する日であるか否か)について控訴人は,遅くとも平成25年4月25日時点で本件司法書士に対して支 払うべき報酬及び各費用の金額を経理処理しており,本件売買契約に先立って報酬や費用が明らかになっていたことからすると,控訴人と本件司法書士との契約は同日には締結され,報酬の支払が確定していたことが明らかであり,役務の提供に係る権利又は義務が確定している。 ⑶ 争点⑶(本件更正処分等が信義則に反して違法であるか否か)について 控訴人は,事実認定を誤っていないし,消費税法30条1項1号の解釈を誤ってもいない。控訴人の申告は,税務官庁が示した法令解釈である本件通達ただし書の文言に従ったものであるが,通達は公的見解であり,これを信頼して従った控訴人は不利益を被っている。しかも,他の同種事案でも本件更正処分等と同様の処分が必ずしも行われているわけではないから,公平性 を有しない。したがって,本件更正処分等は,信義則に反して違法なものである。 を被っている。しかも,他の同種事案でも本件更正処分等と同様の処分が必ずしも行われているわけではないから,公平性 を有しない。したがって,本件更正処分等は,信義則に反して違法なものである。 ⑷ 争点⑷(本件更正処分(ただし,平成29年6月27日付け更正の処分による一部取消し前のもの)についての理由の提示に不備があるか否か)について 本件司法書士に対する報酬以外の部分に関する理由については,本件更正処分に付された理由には,消費税法30条1項1号の解釈すなわち本件通達本文及び本件通達ただし書の2つの解釈基準についての言及がない。これらについて,納税者に不利益な処分を行うに当たっては,なぜその解釈が採られるべきかに関する理由附記が必要であるのに,これがないことは行政手続 法14条1項が処分に理由の提示を求める趣旨を没却するものであるから, 本件更正処分は違法である。 本件司法書士に対する報酬に関する理由の提示については,示された理由では,いかなる事実関係(取引)にいかなる法令を適用して処分を行ったのかが分からず,課税庁の恣意的な処分が可能になり,同時に理由が分からないため納税者の不服申立てにも資さないから,理由の提示を求めている行政 手続法14条1項の趣旨を没却する。 したがって,本件更正処分は違法である。 ⑸ 争点⑸(控訴人に「正当な理由」(国税通則法65条4項)があるか否か)について本件通達は,消費税法30条1項1号に関する唯一の公的な解釈を示した ものであり,控訴人がこの公的見解に従って申告した以上,その逐条解説上も適用除外の留保等も一切存在しないことから,納税者の責めに帰することのできない客観的な事由があり,控訴人には国税通則法65条4項の「正当な理由」が この公的見解に従って申告した以上,その逐条解説上も適用除外の留保等も一切存在しないことから,納税者の責めに帰することのできない客観的な事由があり,控訴人には国税通則法65条4項の「正当な理由」がある。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の各請求をいずれも棄却すべきものと判断する。その理由は,以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」中第3の1ないし6に記載のとおりであるから,これを引用する。 ⑴ 36頁7行目冒頭から11行目末尾までを削る。 37頁11行目の「そして」から12行目末尾までを「したがって,本件 通達も上記の趣旨を前提にして解釈することが相当である。」と改め,同26行目の「自認するところであるから」から38頁7行目末尾までを以下のとおり改める。 「自認するところである。そうすると,本件通達は,固定資産の譲渡の時期は,原則としてその引渡しがあった日とするが,建物等については,引渡 しの日ではなくとも,前記エ記載の取引に関する諸事情を考慮して,当該 建物等の現実の支配が移転し,当該譲渡に係る権利又は債務が確定するに至った状態が生じていれば,その日を契約の効力発生の日として資産の譲渡の時期と認めることを意味するものと解するのが文理にも法の趣旨にも適うものといえる。このように解すると,上記諸事情を考慮して,当該譲渡に係る権利又は債務が確定するに至った状態が生じているといえれ ば,契約の締結の日であっても,契約の効力発生の日として資産の譲渡の時期と認められることになろうが,このような状態を欠くにもかかわらず,納税者に自由な選択権を与え,契約の締結の日を資産の譲渡の時期とすることを認めることは,納税者の恣意を許さず,課税の公平を期すという観点からみても許容し得ないとい のような状態を欠くにもかかわらず,納税者に自由な選択権を与え,契約の締結の日を資産の譲渡の時期とすることを認めることは,納税者の恣意を許さず,課税の公平を期すという観点からみても許容し得ないというべきである。」 38頁8行目の「仮に,原告の主張するところを前提としたとしても,」を削る。 41頁26行目及び42頁10行目から11行目の各「早くとも」をいずれも「平成25年5月30日と認めるのが相当であり,どんなに早く見ても」と,41頁26行目から42頁1行目の「5月27日であると認めるのが相 当である」を「5月27日より前の時点であると認めることはできない」とそれぞれ改める。 47頁18行目の「本件通達」から19行目末尾までを「結局,控訴人は,本件通達の解釈や消費税法の解釈を自ら誤ったものというほかない。」と改める。 2 控訴人の当審における各主張にかんがみ,補足する。 ⑴ 争点⑴(本件建物の取得に係る「課税仕入れを行った日」(消費税法30条1項1号)が本件課税期間に属する日であるか否か)について控訴人は,前記第2の3のとおり主張し,「課税仕入れを行った日」の判断は,①その引渡しがあった日(本件通達本文)又は②事業者が当該固定資 産の譲渡に関する契約の効力発生の日を資産の譲渡(課税仕入れ)の時期と しているときは,これを認める(本件通達ただし書)とされており,本件建物に係る課税仕入れの時期は,契約の効力発生の日(契約の締結の日)である平成25年4月25日であるとする。 しかしながら,本件通達の解釈につき,控訴人の上記主張が認められないことは,引用に係る原判決「事実及び理由」第3の1(補正後のもの)に おいて説示するとおりである。控訴人は,権利確定主義は一義的な基準とはな 件通達の解釈につき,控訴人の上記主張が認められないことは,引用に係る原判決「事実及び理由」第3の1(補正後のもの)に おいて説示するとおりである。控訴人は,権利確定主義は一義的な基準とはなり得ず,結局,取引の経済的実態からみて合理的な基準が何であるかを個別具体的な取引を一定程度類型化して定めるほかない旨主張するところ,確かに,「課税仕入れを行った日」あるいは「資産の譲渡の時期」について,一義的な基準を設けることは困難であり,法令や制度の趣旨を踏まえて合理的 な解釈が必要となる場面も想定され得ることは事実であるが,本件においては,事実関係を具体的かつ詳細に検討しても,契約の締結の日に本件建物の現実の支配が移転し,当該譲渡に係る権利又は債務が確定するに至った状態が生じたと認めることは到底できないから,いずれにしても,本件における契約の締結の日を契約の効力発生の日として資産の譲渡の時期と認めるこ とは相当でない。 また,控訴人は,本件通達につき上記判示のような解釈を採ると,本件通達が本文とただし書に区別されていることを否定するものとなり,ただし書の存在意義を失わせる旨主張する。しかしながら,例えば,契約の締結の日であっても,契約条項や両当事者の意思等に照らし,その実体において,そ の時点で当該譲渡に係る権利又は債務が確定するに至ったと認められる事案であれば,引渡しが事後に行われる事案であったとしても,ただし書に基づいて,契約の締結の日が資産の譲渡の時期と認められることになるのであり,上記判示は,本件のように,実体が伴わない状況下で,資産の譲渡の時期につき当事者の自由な選択権を認める(このような選択権を認めると,殊 に,契約の効力発生の日を契約の締結の日と解した場合には,当事者が事後 的にこの日に合 い状況下で,資産の譲渡の時期につき当事者の自由な選択権を認める(このような選択権を認めると,殊 に,契約の効力発生の日を契約の締結の日と解した場合には,当事者が事後 的にこの日に合意が成立したと称すれば,いかようにでも契約効力発生の日を操作することが可能になる。)ことは相当でないことを明らかにするのにすぎないから,上記主張は失当というほかない。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 ⑵ 争点⑵(本件司法書士報酬に係る「課税仕入れを行つた日」(消費税法30 条1項1号)が本件課税期間に属する日であるか否か)について控訴人は,前記第2の3のとおり,遅くとも平成25年4月25日時点で本件司法書士に対して支払うべき報酬及び各費用の金額を経理処理しており,本件売買契約に先立って報酬や費用が明らかになっていたことからすると,同日に契約が締結され,役務の提供に係る権利又は義務が確定してい たことが明らかであり,同日を「課税仕入れ」の時期と認めるべきである旨主張している。 しかしながら,引用に係る原判決「事実及び理由」第3の1イ(補正後のもの)における説示によれば,「課税仕入れを行った」といえるためには,経済的な利益を収受すべき状態が実現することが必要であるから,本件にお いても,控訴人が本件司法書士から当該役務の提供を現実に受けたことが必要であるというべきである。そうすると,本件において,本件司法書士が登記手続等を行ったのは,平成25年5月30日であることから,同日が「課税仕入れ」の日となると認められることになる。控訴人は,平成25年4月25日時点で本件司法書士に対して支払うべき報酬及び各費用の金額を経 理処理している旨主張するが,いずれにしても控訴人内部における経理処理の時期を重 られることになる。控訴人は,平成25年4月25日時点で本件司法書士に対して支払うべき報酬及び各費用の金額を経 理処理している旨主張するが,いずれにしても控訴人内部における経理処理の時期を重視することは相当とはいえないし,そもそも一たび経理処理がされたからといって経済的な利益を収受すべき状態が実現したと認めることはできない。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 ⑶ 争点⑶(本件更正処分等が信義則に反して違法であるか否か)について 控訴人は,前記第2の3のとおり,通達は公的見解であり,これを信頼して従ったのにもかかわらず不利益を被っており,また,処分が公平性も有しないことから,本件更正処分等は,信義則に反して違法なものである旨主張する。 しかしながら,本件通達については,引用に係る原判決「事実及び理由」 第3の1(補正後のもの)における説示のとおり解釈すべきものであるから,控訴人が主張するような見解を本件通達によって明らかにしていたと認めることはできない。確かに,本件通達の表現ぶりや被控訴人によるその説明ぶりについては,必ずしも明解なものとはいい難く,今後の改善が期待されるところではあるが,消費税法や制度の趣旨を総合的に考慮すれば,本件 において「課税仕入れを行った日」につき控訴人が主張するような解釈が採り得ないことは明らかというべきであるから,同第3の3における説示のとおり,控訴人に生じた不利益は,結局,本件通達の解釈や消費税法の解釈を自ら誤ったことに基づく事実認定の誤りに起因するものであるというほかない。また,本件更正処分等が公平性を有しないとする点については,こ れを認めるに足りる具体的な根拠が示されていないし,いずれにしても,個別事案の特性に応じて,異なる対 るものであるというほかない。また,本件更正処分等が公平性を有しないとする点については,こ れを認めるに足りる具体的な根拠が示されていないし,いずれにしても,個別事案の特性に応じて,異なる対応や判断がされることは否定し得ないし,そのこと自体が不当ともいえない。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 ⑷ 争点⑷(本件更正処分(ただし,平成29年6月27日付け更正の処分に よる一部取消し前のもの)についての理由の提示に不備があるか否か)について控訴人は,前記第2の3のとおり主張するが,この点に関する当裁判所の判断は,引用に係る原判決「事実及び理由」第3の4における説示のとおりであり,控訴人の上記主張は採用することができない。 ⑸ 争点⑸(控訴人に「正当な理由」(国税通則法65条4項)があるか否か) について控訴人は,前記第2の3のとおり主張するが,前記において判示したとおり,控訴人が課税仕入れの時期を違えて消費税に係る申告をしたのは,結局,本件通達の解釈や消費税法の解釈を自ら誤ったことに基づく事実認定の誤りに起因するものであり,納税者の責めに帰することのできない客観的 な事由があるとはいえないから,控訴人には国税通則法65条4項の「正当な理由」を認めることはできない。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 3 以上によれば,控訴人の本件請求はいずれも理由がないからこれを棄却すべきであり,これと同旨の原判決は相当である。 よって,本件控訴はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第4民事部 裁判長裁判官菅野雅之 裁判官 件控訴はいずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。 主文 東京高等裁判所第4民事部 裁判長裁判官 菅野雅之 裁判官 甲良充一郎 裁判官 橋爪信

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