主文 一被告が、原告の平成七年四月一日から平成八年三月三一日までの事業年度の法人税につき、平成一〇年三月三一日付けでした再更正処分のうち、欠損金額一一八億七三九〇万○八三八円を超える部分を取り消す。 二被告が原告に対して平成八年八月二三日付けでした過少申告加算税賦課決定処分並びに平成一〇年三月三一日付けでした過少申告加算税賦課決定処分及び重加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。 三訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第一請求主文と同旨第二事案の概要本件は、日本ハウジングローン株式会社(以下「JHL社」という。)に対する残高三七六〇億五五〇〇万円の貸付債権(以下「本件債権」という。)を有していた原告が、平成八年三月二九日付けでJHL社との間で債権放棄約定書を締結して本件債権を放棄し、本件債権相当額を平成七年度の事業年度(平成七年四月一日から平成八年三月三一日までの事業年度。以下「本件事業年度」という。)の損金の額に算入して青色確定申告をしたところ、被告が、本件債権相当額は本件事業年度の損金の額に算入することができないとして、平成八年八月二三日に更正処分及びこれに係る過少申告加算税賦課決定処分を行い、さらに、平成一〇年三月三一日には、再更正処分並びにこれに係る過少申告加算税賦課決定処分及び重加算税賦課決定処分を行ったことから、原告が、被告に対し、右再更正処分並びに過少申告加算税賦課決定処分及び重加算税賦課決定処分の取消しを求めるものである。 なお、原告は、更正処分の段階で、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分取消の訴えを提起し、その後、再更正処分がされたことにより、同処分によって新たに更正の理由とされた点については争わないものの、そのことを前提としても同年度については納付すべき法人税はないと 決定処分取消の訴えを提起し、その後、再更正処分がされたことにより、同処分によって新たに更正の理由とされた点については争わないものの、そのことを前提としても同年度については納付すべき法人税はないとして、再更正処分並びに過少申告加算税賦課決定処分及び重加算税賦課決定処分の取消しに訴えを交換的に変更したものである。 一前提となる事実(当事者間に争いのない事実及び弁論の全趣旨により認められる事実である。) 1 原告及びJHL社について(一) 原告は、長期信用銀行法四条一項に基づく大蔵大臣の免許を受けた長期信用銀行である。 (二) JHL社は、いわゆる住宅金融専門会社(以下「住専」という。)として設立され、活動していたものであるが、平成八年六月二六日に開催された株主総会における特別決議を経て、同年九月一日に解散した。 原告は、JHL社の設立発起会社五社のうちの一社であり、JHL社に対して一定の資金援助等を行ってきたJHL社のいわゆる母体行であった。なお、原告以外のJHL社の設立発起会社は、株式会社日本債券信用銀行(平成八年三月当時。現在の商号は株式会社あおぞら銀行であり、JHL社設立当時の商号は株式会社日本不動産銀行であった。以下「日債銀」といい、原告と併せて「本件母体二行」という。)、大和証券株式会社(以下「大和証券」という。)、日興證券株式会社(以下「日興證券」という。)、山一證券株式曾社(以下「山一證券」といい、大和証券、日興證券と併せて「本件証券母体三社」という。)であった(以下、右の五社を併せて、「本件母体五社」という。)。 2 原告の債権放棄原告は、JHL社に対して有していた三七六〇億五五〇〇万円の本件債権について、平成八年三月二九日付けで、JHL社との間で、債権放棄約定書(以下「本件約定書」という。)により、本件債権を債 債権放棄原告は、JHL社に対して有していた三七六〇億五五〇〇万円の本件債権について、平成八年三月二九日付けで、JHL社との間で、債権放棄約定書(以下「本件約定書」という。)により、本件債権を債権放棄(以下「本件債権放棄」という。)する旨の契約を締結した。 3 更正処分等の経緯(一) 原告は、平成八年七月一日、本件事業年度の法人税について、本件債権放棄をしたことを理由として、本件債権相当額を損金の額に算入した上で、欠損金額を一三二億七九八八万七六二九円とする青色確定申告(以下「本件確定申告」という。)をした。 これに対し、被告は、同年八月二三日、所得金額を三六二七億七五一一万二三七一円及び納付すべき税額を一二八五億一二一〇万六六〇〇円とする更正処分(以下「本件更正処分」という。)並びにこれに係る過少申告加算税を一九一億九二六三万三五〇〇円とする過少申告加算税賦課決定処分(以下「本件第一過少申告加算税賦課決定処分」といい、本件更正処分と合わせて「本件更正処分等」という。)を行い、同日、その旨を原告に対して、「法人税額等の更正通知書及び加算税の賦課決定通知書」(以下「本件通知書」という。)により通知した。 (二) 原告は、本件更正処分等を不服として、平成八年八月三〇日、国税不服審判所長に対し審査請求をしたが、平成九年一〇月二七日、右審査請求は棄却された。 (三) そこで、原告は、平成九年一〇月三〇日、本件更正処分等の取消しを求める訴えを提起した(以下「本件訴え」という。 )。 (四) その後、被告は、平成一〇年三月三一日、原告の本件事業年度の法人税について、所得金額を三六四一億八一〇九万九一六二円及び納付すべき税額を一三〇六億九一二七万二六〇〇円とする再更正処分(以下「本件再更正処分」という。)並びにこれに係る過少申告加算税を三億一九一 税について、所得金額を三六四一億八一〇九万九一六二円及び納付すべき税額を一三〇六億九一二七万二六〇〇円とする再更正処分(以下「本件再更正処分」という。)並びにこれに係る過少申告加算税を三億一九一九万七〇〇〇円とする過少申告加算税賦課決定処分(以下「本件第二過少申告加算税賦課決定処分」という。)及び重加算税を三一一万八五〇〇円とする重加算税賦課決定処分(以下「本件重加算税賦課決定処分」といい、本件再更正処分、本件第一過少申告加算税賦課決定処分及び本件第二過少申告加算税賦課決定処分と併せて「本件再更正処分等」という。)を行い、同年四月一日、その旨を「法人税額等の更正通知書及び加算税の賦課決定通知書」(以下「本件再更正通知書」という。)によって原告に通知した。 (五) 原告は、本件再更正処分等が行われたことを受けて、本件訴えを本件再更正処分等の取消しを求める旨に交換的に変更した。 4 住専七社をめぐる問題の処理に関する経緯の概略(一) 平成七年一二月一九日付けで、損失の処理、関係金融機関に対する要請、公的関与及び債権回収の促進について所要の法的措置を講ずるなどにより、住専の処理を着実に進めることを内容とする「住専問題の具体的な処理策について」と題する閣議決定(以下「本件閣議決定」という。)が行われた。 (二) 平成八年一月二二日、住専問題の処理のための資金支出等が織り込まれた平成八年度予算案につき、衆参両院本会議で趣旨説明が行われ、衆議院予算委員会に付託された。 (三) 平成八年一月三〇日付けで、本件閣議決定にのっとり、さらにその処理方策を具体化する旨の「住専処理方策の具体化について」と題する閣議了解(以下「本件閣議了解」という。)が行われた。 (四) 平成八年二月一五日、原告のP1頭取は、衆議院予算委員会において、住専問題参考人として、政府 旨の「住専処理方策の具体化について」と題する閣議了解(以下「本件閣議了解」という。)が行われた。 (四) 平成八年二月一五日、原告のP1頭取は、衆議院予算委員会において、住専問題参考人として、政府処理案の趣旨にのっとり、最善の方策を見出すべく努力する所存であり、閣議決定における関係金融機関に対する要請を受諾する旨の意見を述べた。 (五) 平成八年三月四日、当時最大野党であった新進党が平成八年度予算案の審議に応じないとの方針を決定し、同党議員が予算委員会の会場の第一委員室に座り込みを開始した。 (六) JHL社の母体五社の幹事である原告は、JHL社に対して融資を行っている金融機関に対し、平成八年三月二一日付け「日本ハウジングローン株式会社の損失処理に関するご連絡」と題する書面(以下「本件損失に関する連絡」という。)を送付した。その書面の内容は、①JHL社が新事業計画に沿って事業を継続していくことが、極めて困難な状況となっていること、②政府は、本件閣議決定及び本件閣議了解を行ったこと、③関係金融機関は政府案に沿って処理を進めるとの方向であること、④JHL社の母体五社も、政府案に沿った具体的処理策を検討中であること、⑤平成八年三月期末を迎えるに際し、現時点での関係金融機関の債権額及び政府処理案に基づく債権放棄予定額を計算したので、別添計算書のとおり案内するものであること、⑥最終債権放棄額については最終資産譲渡等により確定するので変動することがあること、⑦平成八年三月末決算において損失処理を検討する場合には、別添記載の債権放棄予定額の九割を目処とすること、⑧この連絡に意見等がある場合には、三月二五日までに連絡頂きたい、というものであった。 (七) 平成八年三月二六日、JHL社は同社の母体行に債権放棄を要請した。 (八) 平成八年度暫定予算案(期 こと、⑧この連絡に意見等がある場合には、三月二五日までに連絡頂きたい、というものであった。 (七) 平成八年三月二六日、JHL社は同社の母体行に債権放棄を要請した。 (八) 平成八年度暫定予算案(期間五〇日)が、平成八年三月二六日、衆議院予算委員会に付託され、同月二七日衆議院本会議において可決された。また、同案は、同日参議院予算委員会に付託され、同月二九日参議院本会議において可決された。 (九) 平成八年三月二八日、JHL社は一般行に債権放棄を要請した。 (一〇) 平成八年三月二九日、JHL社の母体各社は、債権放棄に関する協定を締結した。 (一一) 平成八年三月二九日、原告は、JHL社と本件約定書により本件債権放棄をする旨の契約を締結した。 (一二) 平成八年四月一一日、平成八年度予算が衆議院本会議で可決され、同日参議院予算委員会に付託された。 (一三) 平成八年五月一〇日、平成八年度予算が参議院本会議において可決された。 (一四) 平成八年五月二一日、「特定住宅金融専門会社の債権債務の処理の促進等に関する特別措置法(案)」につき、衆議院本会議において趣旨説明が行われ、同日委員会に付託された。 (一五) 平成八年六月一八日、右(一四)の法律案が可決されて成立(以下「住専処理法」という。)した。 なお、住専処理法においては、日本住宅金融株式会社(以下「日住金」という。)、株式会社住宅ローンサービス(以下「住宅ローンサービス」という。)、株式会社住総(以下「住総」という。)、地銀生保住宅ローンサービス(以下「地銀生保ローン」という。)、総合住金株式会社(以下「総合住金」という。)、第一住宅金融株式会社(以下「第一金融」という。)及びJHL社が対象とされていた(以下、右の七社を併せて「住専七社」といい、住専処理法において処理の対象とされなかった (以下「総合住金」という。)、第一住宅金融株式会社(以下「第一金融」という。)及びJHL社が対象とされていた(以下、右の七社を併せて「住専七社」といい、住専処理法において処理の対象とされなかった協同住宅ローン株式会社(以下「協同住宅ローン」という。)と併せて「住専八社」という。)。 (一六) 平成八年六月二一日、住専処理法が施行された。 (一七) 平成八年六月二六日、JHL社は、株主総会における特別決議により、同社の定款に「当会社の存立時期は、営業全部を譲渡する旨の営業譲渡契約が締結された日又は平成八年一二月三一日のいずれか早い日までとする」との存立時期の定めを新設する解散及び営業譲渡に関する定款一部変更の決議をした。 (一八) 平成八年八月三一日、株式会社住宅金融債権管理機構(以下「住宅金融債権管理機構」という。)とJHL社との間で、平成八年一〇月一日に営業譲渡をする旨の財産譲渡契約を締結した。 (一九) 平成八年九月一日、JHL社が解散した。 (二〇) 平成八年一〇月一日、JHL社は、住宅金融債権管理機構に対して営業譲渡を行った。 二争点原告の本件確定申告、被告の本件更正処分等、本件再更正処分等及びその後の不服申立ての経緯並びにその税額等は別表記載のとおりであるところ、本件更正処分等及び本件再更正処分等における加算及び減算の内訳は次の表のとおりである(なお、「▲」は欠損金額を示す。)。 (本件更正処分等)項目 No. 金額所得金額(差引所得額) (1) 三六二七億七五一一万二三七一円(②+③)申告所得金額 (2) ▲一三二億七九八八万七六二九円本件事業年度の損加算金と認められな (3) 三七六〇億五五〇〇万〇〇〇〇円債権放棄額い本件事業年度の土地譲渡 申告所得金額 (2) ▲一三二億七九八八万七六二九円本件事業年度の損加算金と認められな (3) 三七六〇億五五〇〇万〇〇〇〇円債権放棄額い本件事業年度の土地譲渡 (4) 三三三億五九八四万四〇〇〇円利益金額納付すべき法人税額 (5) 一二八五億一二一〇万六六〇〇円((6)+(7)‐(8)‐(9)‐(10))所得金額に対する税額 (6) 一三六〇億四〇六六万七〇〇〇円課税土地譲渡利益金額 (7) 一六億八三六三万一八五〇円に対する税額外国税額控除額(8) 五〇億二六八一万五三五六円所得税額控除額 (9) 七五億六〇二七万一二三〇円既に納付の確定した本 (10) ▲三三億七四八九万四四五三円税額過少申告加算税額 (11) 一九一億九二六三万三五〇〇円(本件再更正処分等)項目 No. 金額所得金額(差引所得額) (12) 三六四一億八一〇九万九一六二円((13)+(22)-(26))本件更正処分による所 (13) 三六二七億七五一一万二三七一円得金額((1))スワップ支払利 (14) 九九九七万三二五三円息過大額有価証券利息配 (15) 二億九五四二万二一七一円当金計上漏れ雑受入手数料計 (16) 八億一五一四万九三五三円上漏れ加算貸出金利息計上 (17) 九一七万七三八〇円漏れ期限前弁済手数 (18) 二三七七万二九四五円料計上漏れ人件費の過大額 (19) 一億一八七一万〇六五四円損金に算入した (20) 一億一二七〇万七五〇〇円事業 ) 二三七七万二九四五円料計上漏れ人件費の過大額 (19) 一億一八七一万〇六五四円損金に算入した (20) 一億一二七〇万七五〇〇円事業税の加算漏れ交際費等の損金 (24) 二一円不算入加算金額合計 (22) 一四億七四九一万三二七七円((14)+(15)+(16)+(17)+(18)+(19)+(20)+(21))貸倒引当金繰入限度超過額の (23) 六八九二万五九四四円損金算入減算雑損の損金算入 (24) 五二四円額繰延消費税額の損金算入限度超 (25) 一八円過額過大減算金合計 (26) 六八九二万六四八六円((23)+(24)+(25))納付すべき法人税額 (27) 三億七九一六万六〇〇〇円((28)+(29)‐(30)‐(31)‐(32))所得金額に対する税額 (28) 一三六五億六七九一万二一二五円課税土地譲渡利益金額 (29) 一六億八三六三万一八五〇円に対する税額外国税額控除額 (30) 三三億七四八九万四四五三円所得税額控除額 (31) 七五億六〇二七万一二三〇円既に納付の確定した本 (32) 一二五一億三七二一万二二〇〇円税額過少申告加算税額 (33) 三億一九一九万七〇〇〇円重加算税額 (34) 三一一万八五〇〇円本件更正処分等において、右のうち、(2)、(4)、(7)及び(10)の各項目及び金額については争いがなく、原告の所得金額が(3)のとおり加算され、 (34) 三一一万八五〇〇円本件更正処分等において、右のうち、(2)、(4)、(7)及び(10)の各項目及び金額については争いがなく、原告の所得金額が(3)のとおり加算され、(1)のとおりと認められる場合に、法人税額等が(5)ないし(11)の数額になることは計数上明らかである。また、本件再更正処分等において、右のうち、(14)ないし(26)及び(29)の各項目及び金額については争いがなく、本件更正処分に係る所得金額と右争いのない各項目を前提とすると法人税額等が(27)ないし(34)の数額になることは計数上明らかである。 被告は、原告が本件債権放棄を理由として本件債権相当額を損金に算入したことに対して、(1)本件債権は平成八年三月末時点においてその全額が回収不能とは認められないこと、(2)本件債権放棄は、JHL社の営業譲渡の実行及び解散の登記が平成八年一二月末日に行われないことを解除条件としているが本件事業年度に本件債権放棄が確定しているとは認められないから本件債権放棄に係る放棄額は本件事業年度の損金の額に算入することができないことから、本件債権について「損失」(法人税法二二条三項三号)が生じたということはできないとして本件更正処分をしている。また、被告は、原告の平成八年の事業年度において本件債権の債権放棄が確定し、法人税基本通達(以下「法基通」という。)九-四-一に照らし、本件債権相当額を損金に算入することができるとして更正処分を行っているが、本件事業年度においては、同通達に照らしても本件債権相当額を損金に算入することはできないと主張する。 これに対し原告は、(1)本件債権は平成八年三月末時点においてその全額が回収不能であって、本件債権について「損失」が生じたというべきであること、(2)本件債権放棄は平成八年三 できないと主張する。 これに対し原告は、(1)本件債権は平成八年三月末時点においてその全額が回収不能であって、本件債権について「損失」が生じたというべきであること、(2)本件債権放棄は平成八年三月末時点でその効力が発生しており、法基通九-六-一(3)、同(4)及び九-四-一に照らして、本件債権について「損失」が生じたというべきであることから、本件再更正処分等は違法であると主張する(なお、本件債権相当額が損金に算入されることとなると、本件再更正処分による原告の所得の加算及び減算(当事者間に争いのない右(14)ないし(26)の各金額)を勘案しても、本件事業年度の原告の所得金額はマイナスとなり、本件再更正処分等はすべて違法となる。)。また、予備的に、本件債権相当額を損金に算入して本件確定申告をしたことには国税通則法六五条四項の「正当な理由」が認められ、本件第一過少申告加算税賦課決定処分及び本件第二過少申告加算税賦課決定処分は違法であると主張する。 したがって、本件の争点は、以下のとおりである。 1 原告の本件事業年度の法人税の計算上、本件債権につき、本件事業年度において原告に法人税法二二条三項三号の「損失」が生じたとして、本件債権を損金に算入することができるか否かすなわち、第一に、本件債権が平成八年三月末時点においてその全額が回収不能であったか否か(争点1)第二に、本件債権放棄によって本件債権相当額につき、原告に法人税法上の損金と評価し得る損失が発生したと認められるか否か(争点2) 2 原告が本件債権相当額を損金に算入して本件確定申告をしたことにつき「正当な理由」(国税通則法六五条四項)が認められるか否か(争点3)三争点に関する当事者の主張 1 争点1及び2について(被告の主張)(一) 事実関係とその評価及び法人税法の基本的枠 ことにつき「正当な理由」(国税通則法六五条四項)が認められるか否か(争点3)三争点に関する当事者の主張 1 争点1及び2について(被告の主張)(一) 事実関係とその評価及び法人税法の基本的枠組みについて(1) 総論原告は、本件債権の弁済順序がJHL社において平成五年五月に策定された新事業計画(以下「本件新事業計画」という。)の策定や実行、政府の住専処理策の策定とこれに対する合意などの事実経過によって「最劣後」となったと評価し、しかも平成八年三月三一日当時、政府の住専処理策が実現することは確実であったと評価する結果、本件解除条件付債権放棄は経済的に無価値な債権を法律的にも消滅させたという意味において、経済的効果を有しないものと評価している。 しかしながら、本件債権とJHL社に対するその他の債権との法的整理手続における法的な優先劣後関係は、本件新事業計画や政府の住専処理策によっては全く影響を受けておらず、平成八年三月末当時、原告は、政府の住専処理策が実現しJHL社が同処理策に従って整理されるならば原告は本件債権を全額放棄することが予定されてはいたものの、同処理策が実現するか否かについては全く予断を許さない状況にあり、仮に同処理策が実現せずJHL社の法的整理手続に移行した場合には、債権者平等の原則による配当の可能性が残されていたことも事実である。原告は、右のような状況において本件解除条件付債権放棄をしたのであるが、これはその実質において法的整理手続における回収の途を確保するという地位を放棄したものではなく、本件解除条件付債権放棄の前後において、政府の住専処理策が実現せずJHL社の法的整理手続に移行した場合に債権者平等の原則による配当の可能性があるという状況に全く変化は生じていない。要するに、原告は、本件解除条件付債権放棄をしよう おいて、政府の住専処理策が実現せずJHL社の法的整理手続に移行した場合に債権者平等の原則による配当の可能性があるという状況に全く変化は生じていない。要するに、原告は、本件解除条件付債権放棄をしようがするまいが、政府の住専処理策が実現すれば本件債権を回収することができない一方で、同処理策が実現せずJHL社の法的整理手続に移行した場合には債権者平等の原則による配当を受けることができたのであり、本件解除条件付債権放棄の前後で、原告が本件債権を回収できる場合、時期及び方法には全く変化が生じていないのである。したがって、本件債権放棄は、本件債権について原告が把握していた経済的価値を全く変動させていないという意味において、原告に何らの経済的効果をも生じさせていないものと評価すべきものである。 原告は、(1)本件新事業計画、(2)政府の住専処理策、(3)平成八年三月末におけるその実現の確実性、(4)本件解除条件付債権放棄の意義、目的に関する事実関係の評価を誤り、これに基づいて、(5)本件解除条件付債権放棄の経済的効果についての評価を誤っているというべきである。 (2) 本件新事業計画の性質についてそもそも再建計画とは企業の存続を前提として行われるものであるのに対し、整理計画とは企業の消滅を前提として行われるものであり、個々の計画の内容もその前提に沿って検討・計画されることを考えると、原告が主張するように一つの計画の中に相矛盾する前提を含む再建と整理とを併せ考えたとすることはできない。また、次のアないしオに述べる本件新事業計画の策定に至る経緯とその目的、実現可能性及び内容並びに母体ニューマネー回収の事情等を総合すると、原告が主張するように本件新事業計画の策定やこれに従った母体ニューマネーの回収により、JHL社債権者の損失負担割合が、将来の整理の場 現可能性及び内容並びに母体ニューマネー回収の事情等を総合すると、原告が主張するように本件新事業計画の策定やこれに従った母体ニューマネーの回収により、JHL社債権者の損失負担割合が、将来の整理の場面も含めて母体行債権(母体行がその母体となっている住専に対して有する債権を指す。以下同じ。)の全額放棄の限度で決定したということはできない。 なお、原告は、本件債権は歴史的経過の中で劣後化してきたと主張して、原告がJHL社の「幹事母体行」「責任母体行」としての地位にあったことをはじめとし、平成五年策定の本件新事業計画以前の事情までも本件債権の劣後化をもたらした「歴史的経過」として主張しているが、このような事情は、平成八年三月における劣後化の有無を検討するに当たり、事情としての意味も有しないというべきである。 ア策定に至る経緯について本件新事業計画は、平成五年における住専七社の第二次再建計画の一つとして策定されたものであるところ、右再建計画の策定に先立ち、P2大蔵省銀行局長(なお、以下、役職名等は当時のものを指す。)とP3農林水産省経済局長の間では、平成五年二月三日、「覚書」(以下「大蔵・農水覚書」という。)が締結されていた。 しかし、この大蔵・農水覚書はあくまで住専七社の再建を前提とするものであって、第二次再建計画が大蔵・農水覚書を踏まえていることを理由として本件新事業計画が整理計画としての側面を有すると評価することはできない。 イ目的について住専七社の第二次再建計画が再建を図ることを目的としたものであって、原告も、本件新事業計画を再建のための支援措置と位置付け、JHL社の再建を図ることを目的としてこれを策定したものであることは明らかであり、そこにおける弁済順序の合意もあくまで再建計画における弁済順序であり、整理段階における弁済順 ための支援措置と位置付け、JHL社の再建を図ることを目的としてこれを策定したものであることは明らかであり、そこにおける弁済順序の合意もあくまで再建計画における弁済順序であり、整理段階における弁済順序を示すものでないことは明らかである。 ウ実現可能性について第二次再建計画は、長期間はかかるであろうが、当時の状況認識の下での実現可能な文字通りの再建計画として策定されたものであり、ただ、その後の地価の急激な下落と長期間にわたる低迷までを予測できなかったために、結果的に実現できなかったにすぎないものというべきである。したがって、本件新事業計画の実現が当初から不可能であったなどとして整理計画としての性格を肯定することはできない。 エ内容について本件新事業計画における弁済の順序の合意は、あくまで右新事業計画を進めJHL社に「余裕資金」が生じた場合の弁済順序にすぎないものであって、整理段階における弁済の順序を定めるものではないし、また、母体行債権が弁済順序において最劣後することを定めているとも認められないから、整理段階における母体行債権の最劣後性を示すものではないことは明らかである。 オ新事業計画の続行(母体ニューマネーの回収)について 本件閣議決定は、「母体ニューマネー」を対象とするものではないから、これについては、本件新事業計画どおりの返済を行うことは十分あり得ることであり、このことは大蔵大臣等の国会答弁からも明らかである。 したがって、本件閣議決定が示され、住専を整理する方針が示された後に、本件新事業計画どおり母体ニューマネーの返済が行われたからといって、その後の整理の場面において、当然に母体行の他の債権の返済が受けられなくなるというものではない。 (3) 政府の住専処理策の性質について一般にある処理策が決定するまでには、基 われたからといって、その後の整理の場面において、当然に母体行の他の債権の返済が受けられなくなるというものではない。 (3) 政府の住専処理策の性質について一般にある処理策が決定するまでには、基本的事項から周辺事項へというように各部分ごとに順次定まっていき、周辺事項は基本的事項を前提として決定されていくのが通常であるが、それが不可分一体の案である以上、全体が決定され実施されて初めてその実効性を有するのであって、それが実施に移されるまでは、基本的事項、周辺事項を含めて「案」の一部にすぎず、仮に実施に至らなければ、それまでに定まった部分を含めて白紙に帰することになるのであって、その一部に合意したからといって当該一部に従わなければならないわけでもないし、その一部のみが実施されるわけでもない。そして、政府の住専処理策も不可分一体のものであって、原告が主張するようにこれを「基層」部分と他の部分などと恣意的に分離し、「基層」部分に合意したからといって、全体が実現しない場合にも「基層」部分に拘束されるといえないことは当然のことである。 本件の具体的事実関係に照らしても、次のアないしカに述べる政府の住専処理策の目的、内容、その策定に至る経緯、政府側及び原告の認識、関係者の合意の状況に照らせば、同処理策で提示された損失負担割合はあくまで同処理策の実現を前提とするものであって、同処理策が実現せず法的整理手続に移行した場合には白紙に戻り、債権者平等の原則による配当の可能性が残されていたのであり、仮に平等の割合を超える損失負担があり得るとしても、それは裁判所の関与の下における、その時点における社会的・経済的状況を踏まえた各金融機関の自由な経営判断にゆだねられることが予定されていたというべきである。 ア目的について政府の住専処理策は、住専をめぐる問題が金 下における、その時点における社会的・経済的状況を踏まえた各金融機関の自由な経営判断にゆだねられることが予定されていたというべきである。 ア目的について政府の住専処理策は、住専をめぐる問題が金融機関の不良債権問題における象徴的かつ喫緊の問題であるとの認識の下、我が国の国際金融システムの安定性とそれに対する内外からの信頼を確保し、預金者保護に資すると同時に我が国経済を本格的な回復軌道に乗せるため、その早期解決を図る具体的な方策として講じられたものである。すなわち、政府の住専処理策は法的整理手続による場合に生ずる社会的・経済的危機を回避するという政治的目的の下に策定されたものであり、右の危機によって個々の金融機関が被るであろう損失も計り知れないものであったから、これを避けるために個々の金融機関が平等の割合を超える損失負担に合意したことには経営判断としての合理性が認められる。 これに対し、法的整理手続自体は裁判所が債権者平等の原則に従って財産を分配することを目的とする制度であって、政府の住専処理策のように政治的目的を実現するための手段ではない。また、これに参加する個々の金融機関は自己の社会的・経済的目的を実現するために平等の割合を超えて損失を負担することができるであろうが、平成八年の段階では、法的整理手続に移行したときには既に右の危機は現実化し、次第に重篤化することが予測されていたのであるから、平成七年一二月や平成八年一月段階で平等の割合を超えて損失負担をしたとしても、政府の住専処理策と同様の見返りがあるとはいえず、そのような状況の悪化を予測できたにもかかわらず、平成七年一二月の段階で法的整理手続までを含めて損失負担割合を定めることは到底合理的な経営判断とはいえない。 したがって、政府の住専処理策で提示された損失負担割合に同意した母体 きたにもかかわらず、平成七年一二月の段階で法的整理手続までを含めて損失負担割合を定めることは到底合理的な経営判断とはいえない。 したがって、政府の住専処理策で提示された損失負担割合に同意した母体行は、あくまで同処理策の実現を前提として、これに同意したものと解するのが合理的であり、同処理策が実現せず法的整理手続に移行した場合において仮に平等の割合を超える損失負担があり得るとしても、それはその時点における社会的・経済的状況を踏まえた各金融機関の自由な経営判断に基づく合意にゆだねられることが予定されていたと解するのが合理的である。 イ内容について政府の住専処理策は、住専七社の一括整理及びその際に生じる七兆六一〇〇億円の損失の一括処理を前提に、その基本的な枠組みとして、母体行の債権全額放棄、一般行の債権一部放棄、農協系統金融機関(農林中央金庫(以下「農中」という。)、都道府県単位で組織されている信用農業協同組合連合会(以下「信連」という。)並びに都道府県単位で組織されている共済農業協同組合連合会(以下「共済連」という。)及び全国共済農業協同組合連合会(以下「全共連」といい、共済連と併せて「全共連等」という。)の総称である。以下「系統」という。)による贈与及び公的資金を引当とする一次ロス(住専各社の有する第Ⅳ分類債権相当額の六兆二七〇〇億円ないしこれに欠損金一四〇〇億円を加えた六兆四一〇〇億円の損失。以下同じ。)の処理とその他の住専資産の住専処理機構への引継並びに住専処理機構におけるその後の二次ロス(住専処理機構に引き継いだ住専各社の資産から生ずる損失。以下同じ。)の処理が不可分一体となった策であり、公的資金の投入や住専処理機構の設立をその不可欠の要素とするものである。 これに対し、法的整理手続に移行した場合、そこで処理される損失は、住専 ずる損失。以下同じ。)の処理が不可分一体となった策であり、公的資金の投入や住専処理機構の設立をその不可欠の要素とするものである。 これに対し、法的整理手続に移行した場合、そこで処理される損失は、住専処理機構で生じるはずの二次ロスとの区別のない全損失であって、その金額も増大している可能性が高く、それを公的資金の投入なくして処理しなければならない。そして、そこにおける損失負担割合は債権者平等の原則を前提とするのであり、仮に諸般の事情からこれを超える負担を求められることがあるとしても、そこで考慮される事情は、裁判所が関与する手続であることから、政府の住専処理策が考慮していた事情とは異なることが予想され、さらに個別の住専ごとに行われる手続であるため個別の事情も考慮され得ることになる。 このように、法的整理手続と政府の住専処理策とは、内容的にも、処理される損失額及び損失負担者が大きく異なることが予想される上、その損失負担割合を決定するに当たり考慮される原則及び個別事情も異なるのであって、しかもその時における社会的・経済的状況が異なることも予想される以上、法的整理手続において仮に原告が平等の割合を超える損失負担を相当と認めることがあるとしても、当該損失負担割合が政府の住専処理策と同一になるとはいえないことは明らかである。 ウ策定に至る経緯について政府の住専処理策に対する母体行の合意は追加負担がないことを、系統の合意は公的資金の投入を、それぞれ不可欠の前提条件としていた。すなわち、同処理策において提示された損失負担割合について関係者間におおむねの合意が得られたのは、政府の住専処理策に公的資金の投入や住専処理機構の設立と営業譲渡が盛り込まれたからであって、これらが合意の不可欠の前提条件となっているのである。 これに対し、政府の住専処理策が実現され られたのは、政府の住専処理策に公的資金の投入や住専処理機構の設立と営業譲渡が盛り込まれたからであって、これらが合意の不可欠の前提条件となっているのである。 これに対し、政府の住専処理策が実現されず法的整理手続に移行した場合には、公的資金の投入や住専処理機構への営業譲渡はないのであって、母体行が追加負担をせずに系統の損失負担を五三〇〇億に留めることは不可能であり、政府の住専処理策における損失負担割合と同一の合意はやはり成立し得ないことになる。そして、法的整理手続において特別な合意が成立しない場合には、債権者平等の原則に従って配当を行うより他はない。 エ政府側の認識について住専処理策を策定した政府側の認識は、住専処理法の成立が遅れ、右処理策が実現しない場合には法的な整理手続によらざるを得ないが、その場合は破産手続になる可能性が高く、破産手続となると各金融機関が平等の割合による負担をすることになり、系統の負担が増加し、その反面で母体行にも配当がされるという見方をしていたのであり、最大野党の認識も政府の住専処理策が実現されない場合には、右処理策が白紙に戻され、法的整理手続で債権者平等の原則に基づく整理手続が行われるべきものと考えていたことがうかがえる。 このように、平成八年当時は、政府の認識としても、最大野党の認識としても、政府の住専処理策が実現されない場合には、同処理策で合意された事項はいったんは白紙に戻されて法的整理手続に移行し、当該法的整理手続は債権者平等の原則に従って行われることになると考えられていたのである。 オ原告の認識について原告は、政府の住専処理策に沿って平等の割合を超える損失負担をすることは商法上善管注意義務違反の問題を生じないが、同処理策が実現する以前に平等の割合を超える損失負担をすることは商法上善管注意義務 原告は、政府の住専処理策に沿って平等の割合を超える損失負担をすることは商法上善管注意義務違反の問題を生じないが、同処理策が実現する以前に平等の割合を超える損失負担をすることは商法上善管注意義務に反するとして取締役の責任を追及する株主代表訴訟が提起されるおそれがあると判断していたのであるから、その前提として、仮に将来法的整理手続に移行すれば本件債権も配当を受けられるものであるという認識を有していたことは明らかである。原告が、一般行や系統も法的整理手続においては負担が重くなることを自覚しているというのも原告への配当を前提とするものである。 このような原告の認識・判断をもってしては、いまだ平成八年三月の段階で、母体行の債権放棄の限度で損失負担割合が確定していたなどと評価することはできない。 カ 「関係者の合意」の状況について政府の住専処理策は、平成八年度予算や住専処理法が成立するのみで実現できるものではなく、それらの成立後に個別の住専ごとに関係者の合意により同処理策に沿う処理計画が策定されて初めて実現できるものであるところ、平成八年三月末の段階では、各住専の中心的な母体行等を通じて基本的枠組みに対するおおむねの合意がされていたにすぎず、個別の住専ごとに関係者の合意により処理計画が策定される段階には至ってはいなかった。JHL社についても、他の住専と同様、原告を通じて基本的枠組みに対するおおむねの合意が得られていたにすぎず、具体的な処理計画が策定され、関係者の合意が成立していたわけではなかった。このような関係者の合意の状況に照らしても、平成八年三月末の段階で、政府の住専処理策に従った損失負担割合が決定されたなどと評価することは到底できない。 (4) 平成八年三月末における政府の住専処理策の実現の確実性について次のアないしエに述べる国 年三月末の段階で、政府の住専処理策に従った損失負担割合が決定されたなどと評価することは到底できない。 (4) 平成八年三月末における政府の住専処理策の実現の確実性について次のアないしエに述べる国会審議の状況、世論の状況とこれに対する政府の配慮、個別の住専における「関係者の合意」の状況及び原告の認識等の事情に照らせば、平成八年三月当時において政府の住専処理策の実現が確実であったなどと評価することは到底できない。 ア国会審議の状況について本件閣議決定において決定された住専問題の処理のための資金支出等が織り込まれた平成八年度予算案は、平成八年一月二二日に衆議院予算委員会に付託されたが、当時最大の野党であった新進党の反対等により審議が紛糾し、前記一4のとおり、平成八年度予算は同年五月一〇日、その後に付託された住専処理法は同年六月一八日に至ってようやく成立した。 このような国会審議の状況及び当時の新聞報道においても国会審議の難航・先行不透明感が報じられていたことからすると、平成八年三月末の段階などという早期の段階では、いまだ同年度予算や住専処理法が可決されるかどうかは不透明であり、政府の住専処理策が実現するか否かについては全く予断を許さない状況にあったことは明らかである。 イ世論の状況とこれに対する政府の配慮について国会では内外の要因から予算案や法案が不成立ないし修正される場合がまれではなく、いかなる場合も予算や法案の成立以前に「成立することが既定事実」などという評価をすることはできないところ、特に政府の住専処理策の場合には、本件閣議決定から住専処理法成立までの間を通じて、公的資金投入に対する世論の反対は極めて強く、平成八年度予算の審議再開の原因となった参議院岐阜補欠選挙の結果についても、政府の住専処理策に対する信任を意味するもの ら住専処理法成立までの間を通じて、公的資金投入に対する世論の反対は極めて強く、平成八年度予算の審議再開の原因となった参議院岐阜補欠選挙の結果についても、政府の住専処理策に対する信任を意味するものではないと解するのが世論・政府の共通の認識であり、政府側も世論の反対の強さに配慮して十分に国会審議を尽くそうとしていたのであって、このような段階で平成八年度予算の成立や住専処理法の成立が確実であったなどというのは、あまりにも世論を無視した暴論であるというよりほかはない。 ウ個別の住専における「関係者の合意」の状況について住専七社のうちの日住金については、平成八年三月二八日の段階で右の営業譲渡等に必要な株主総会決議ができない可能性が指摘されており、和議申請を含めた検討に入った旨の報道がされていた。その後、平成八年度予算及び住専処理法が成立し、住専処理の方針が確定したことを受けて、預金保険機構から平成八年八月二九日付けで母体行、一般行及び系統を含む関係者に対し、住専処理に係る基本協定(以下「本件基本協定」という。)が示され、それに対し、合意書が同機構に提出されたが、右基本協定の案が示された段階でも第二地銀等の反対している金融機関もあった。 政府の住専処理策は住専七社を一括して整理する内容であるから、このような個別の住専における関係者の合意の状況に照らすと、平成八年三月末の段階で、政府の住専処理策の実現が確実であったなどと評価することは到底できない。 エ原告の認識について本件解除条件付債権放棄を承認した原告の取締役会において、「政府案の成立可能性に対する見通し」として「現時点で政府案の成立が危ぶまれるというだけの材料はない状況」としながらも、「仮に政府案が不成立となって法的整理となったとしても」として政府の住専処理策が実現しない場合を具体的 対する見通し」として「現時点で政府案の成立が危ぶまれるというだけの材料はない状況」としながらも、「仮に政府案が不成立となって法的整理となったとしても」として政府の住専処理策が実現しない場合を具体的に想定した検討が行われていた。そして、原告は、仮に将来法的整理手続に移行すれば、債権者平等の原則に従った配当を受けられるという認識を有していた。 右の事実によれば、平成八年三月末の時点においては、原告自身も政府の住専処理策が実現することが確実であるとは考えていなかったことが明白であり、だからこそ、原告は本件解除条件付債権放棄をした後も、JHL社において現実に営業譲渡等に関する株主総会決議がされ、JHL社が政府の住専処理策にしたがって整理されることが確定するまで関係書類の返還を見合わせていたと考えるのが合理的である。 (5) 本件解除条件付債権放棄の意義・目的について次のアないしウに述べる平成八年三月当時のJHL社の資産価値や本件解除条件付債権放棄に至る経緯、放棄された担保権の性質及びその放棄の方法に照らし、本件解除条件付債権放棄が将来の法的整理手続における回収の途を確保する目的で行われたことは明らかである。 ア平成八年三月当時のJHL社の資産価値について本件通知によれば、JHL社は、債権者に対する返済に充てることのできる資産として、計算上一兆一二〇三億円の資産を有していた。また、JHL社の有価証券報告書によると、貸借対照表の資産の合計額(貸倒引当金一兆三三八一億○八○○万円を控除した後の金額)は、一兆〇八一七億三五〇〇万円であるところ、JHL社は、右有価証券報告書において今後は政府案に沿って会社を整理・清算の方向で準備を進めていくとする方針に則って処理するとした上で、有価証券及び販売用不動産については時価評価するとともに、営業貸付金に 社は、右有価証券報告書において今後は政府案に沿って会社を整理・清算の方向で準備を進めていくとする方針に則って処理するとした上で、有価証券及び販売用不動産については時価評価するとともに、営業貸付金については担保評価額を算出し、回収不能見込額を貸倒引当金として計上した後の回収可能額を基礎とした金額であることを明らかにしている。 右の事実に照らすと、右の一兆〇八一七億三五〇〇万円は、回収不能見込額を貸倒引当金として計上した後の回収可能額を示すものであって、JHL社の資産価値を示すものであり、これに反する河本一郎作成の鑑定書(甲六〇五)は証拠価値が低いものである。 したがって、JHL社について法的整理手続が開始され、債権者平等の原則に従って配当がされた場合には、原告にも相当額の配当がされる可能性があったことも明らかである。 イ本件解除条件付債権放棄に至る経緯について原告が、他のほとんどすべての銀行が債権放棄を見合わせたことを知りながら、かつ、代表訴訟のおそれがあるにもかかわらず、本件事業年度において本件解除条件を付して本件債権を放棄することとしたのは、それが株主代表訴訟を牽制しつつ、他方で本件債権額を税務上も本件事業年度の損金に算入する最後の方法であったことによると推認することができ、本件解除条件付債権放棄は、課税負担を免れるとともに将来の法的整理手続における回収の途を確保するという意味を有していたといえる。 なお、原告は解除条件を付したのは追加負担要求に対する交渉又は牽制の手段とするためであると主張するが、そのような手段として用いるためには本件債権の経済的価値を残しておく方が有効なのであるから、右主張は不自然かつ不合理であり信用できない。 ウ担保権の放棄について本件約定書第三条自体には解除条件は付されておらず、原告は、このこ 本件債権の経済的価値を残しておく方が有効なのであるから、右主張は不自然かつ不合理であり信用できない。 ウ担保権の放棄について本件約定書第三条自体には解除条件は付されておらず、原告は、このことを理由として、無条件で本件担保を放棄したと主張する。しかし、「前条の債権放棄に伴い」放棄されたものであるから、本件解除条件付債権放棄の効力に付従するというべきである。 また、仮に右放棄の効力が本件解除条件付債権放棄の効力に付従しないとしても、以下に述べるとおり、そのことから本件債権の回収可能性が失われたということはできない。 すなわち、本件担保は、債権者が譲受債権について対抗要件を具備した時に初めてJHL社の自由処分を禁じ、債権者に処分をゆだねる趣旨のものと解される。また、本件担保は、債権者において実行の必要を認めたときに、債権者間の協議によって個々の被担保債権に譲渡債権を割り付け、その割付けに従って対抗要件を具備することにより、初めて行使されることを予定するものと解されるところ、平成八年三月末の段階では、いまだ割付けも対抗要件具備も行われておらず、実行不能のものであった。このような実行できない本件担保を放棄することにより原告が何らかの経済的不利益を受けることがあり得るとすれば、それは本件担保が将来実行される可能性がある場合であろうが、対抗要件具備のための手続は原告自身が幹事として行うこととされており、原告は本件解除条件付債権放棄の後も幹事の地位を保っていたのであるから、原告は他の債権者に対する割付けや対抗要件具備の手続を経ずに法的整理手続に移行させることができるのであり、対抗要件を経ずに法的整理手続に移行すればその実行は不可能になる。そうだとすれば、仮に本件担保が原告主張のように無条件で放棄されたものであるとしても、そのことを理由に、 行させることができるのであり、対抗要件を経ずに法的整理手続に移行すればその実行は不可能になる。そうだとすれば、仮に本件担保が原告主張のように無条件で放棄されたものであるとしても、そのことを理由に、本件解除条件付債権放棄によって本件債権の経済的価値が失われたということはできない。そもそも、原告は、株主代表訴訟への牽制手段として本件解除条件を付与したものと解されるところ、そのような牽制手段とするには、経済的価値を復活するという説明ができることが必要であり、真実、実効性のある担保権を無条件で放棄したとすれば、株主代表訴訟に対応することはできず、本件解除条件付債権放棄の真実の目的に反することになってしまうのである。そうであるにもかかわらず、本件解除条件付債権放棄と併せて本件担保を放棄している以上、それが経済的に意味がないと説明するか、解除条件成就に伴い担保権が復活すると説明するよりほかはないのである。 (6) 金銭債権の資産損失の計上についての法人税法の基本的枠組み法人税法二二条三項は「内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。」と規定し、その三号において「当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの」と規定する。法人が有する金銭債権という資産について、その資産価値が失われた場合には、いわゆる資産損失として、その失われた事業年度において右に掲げた法人税法二二条三項三号の「当該事業年度の損失」に該当するのが原則である。 ところで、右に述べた金銭債権の資産価値が失われる場合には、会社更生法等の法的負債整理等による債権の切捨てや債権放棄等により、債権そのものが法律上、客観的に消滅し、その資産価値が消滅する場合のほか、法律上債権が存続しているが、そ 産価値が失われる場合には、会社更生法等の法的負債整理等による債権の切捨てや債権放棄等により、債権そのものが法律上、客観的に消滅し、その資産価値が消滅する場合のほか、法律上債権が存続しているが、その回収が事実上不能となり、資産価値が事実上消滅するという場合がある。 各場合における法人税法上の損失計上についての考え方は、次のとおりである。 まず、事実上の資産価値の消滅の場合は、これによる損失は、法人税の計算上、その全額の回収が事実上不能であることが客観的に確定した事業年度の損金に算入することができる。 他方、債権の切捨てや債権放棄等による法律上の資産価値の消滅の場合にも、当該切捨てや債権放棄等による損失は確定している必要がある。法人税法二二条三項三号の「損失」が法律行為という外部取引によって生じる場合には、同項二号の債務の確定と同様に「確定」を要するからである。したがって、債権の切捨てや債権放棄がされても、これによる損失がいまだ確定していない場合には、法人税の計算上当該債権放棄による損失を損金に算入することはできない。 次に、当該切捨てや債権放棄等は、原則として回収不能な債権について行われる必要がある。法人税法三七条二項は、同法二二条三項の「別段の定め」として、「内国法人が各事業年度において支出した寄附金の額・・・の合計額のうち、その内国法人の資本等の金額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額・・・を超える部分の金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。」と規定しており、回収不能とはいえない債権の切捨てや債権放棄は、原則として同条六項の「経済的な利益・・・の供与」に当たり寄附金に該当するからである。 もっとも、当該切捨てや債権放棄等が回収不能部分のみについて行われ 不能とはいえない債権の切捨てや債権放棄は、原則として同条六項の「経済的な利益・・・の供与」に当たり寄附金に該当するからである。 もっとも、当該切捨てや債権放棄等が回収不能部分のみについて行われた場合は経済的利益の供与があったとはいえないから、寄附金には該当せず、その額を損金に算入することができる。 また、当該切捨てや債権放棄等が回収不能とはいえない債権について行われた場合にも、当該経済的な利益の供与につき経済取引として十分に首肯し得る合理的理由があるときは任意の利益処分とはいえないから、利益処分性に着目した寄附金制度の趣旨に照らし寄附金には該当せず、その額を損金に算入することができる。 以上で述べた基本的枠組みを前提にして、金銭債権の資産損失を損金に算入し得る基準を明らかにしたのが、法基通九ー六ー二、九ー六ー一、九ー四ー一であるところ、本件債権放棄とこれらの通達との関係は、次の(二)ないし(五)で述べるとおりである。 (二) 回収不能の貸金等の貸倒れについて(法基通九ー六ー二関係)(1) 事実上の回収不能によって税務上貸倒損失が認められるためには、債務者の資産状況、支払能力、債権者の回収努力の有無、担保の設定状況等、諸般の事情を総合的に勘案し、その全額が回収できないことが客観的に確定した場合でなければならず、法基通九ー六ー二が「法人の有する貸金等につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができる。」と定めているのも、このことを明らかにしたものである。そして、債務者の資産状況、支払能力等から当該債権の回収が事実上不可能であることが客観的に明らかになる場合としては、強制執行、破産手続、会社更生、整理といった回収不 このことを明らかにしたものである。そして、債務者の資産状況、支払能力等から当該債権の回収が事実上不可能であることが客観的に明らかになる場合としては、強制執行、破産手続、会社更生、整理といった回収不能を推定し得る法律的措置が採られた場合及びこれに準じるような場合、すなわち債務者の死亡や所在不明又は事業閉鎖というような回収不能の事実が不可逆的で、一義的に明白な場合に限られると解すべきである。 そして、一般に更正処分取消訴訟における課税要件事実の存否等については、課税庁側が主張・立証責任を負うべきところ、貸倒損失については、これを基礎付ける具体的事実関係を原告において主張・立証しない限り、その不存在が事実上推定されると解すべきである。 (2) 本件事業年度において本件債権の回収が不能であることが客観的に確定したとはいえないことについて本件事業年度終了時である平成八年三月三一日において、JHL社の借入金等の返済のための資産が約一兆円残されていた。この金額は借入金総額の約四〇パーセントにも上るのであり、このようなJHL社の財務状況では、本件債権が事実上の貸倒れであったということは到底認められない。また、同月二九日の本件解除条件付債権放棄は、政府の住専処理策が実現しなければ放棄されないことになるところ、同処理策が実現するか否かについては全く予断を許さない状況にあり、同処理策が実現せず、法的整理手続に移行した場合には、債権者平等の原則による配当を受ける可能性が残されていたのであって、結局、本件債権は、本件事業年度においてその全額の回収が不能であることが客観的に確定したとは到底いえず、本件事業年度において原告に本件債権に係る事実上の回収不能による損失が生じたとはいえない。 (3) 原告の主張に対する反論本訴における貸倒損失を基礎付ける具体的事 客観的に確定したとは到底いえず、本件事業年度において原告に本件債権に係る事実上の回収不能による損失が生じたとはいえない。 (3) 原告の主張に対する反論本訴における貸倒損失を基礎付ける具体的事実関係の主張・立証責任は原告にあるというべきところ、原告が各時点において、本件債権が事実上の回収不能の状態に陥っていたことを基礎付ける事情としてると主張するところはいずれも回収不能を基礎付けるものとはいえず、本件債権が平成八年三月末において事実上回収不能とはいえないという被告の主張が正当であることは明らかである。 原告の主張は、まず事実上回収不能であったという結論を出発点として主張を構成しているといわざるを得ず、それだからこそ、原告は本件新事業計画には、再建的側面と整理的側面を併せ有していたものであるという根拠のない主張をしたり、本件スキームの「層状構造」、「基層」部分の固定といった独自の概念を持ち出さざるを得なかったのであり、このような、無理な理屈を幾重にも構築しなければならないこと自体、本件債権が事実上回収不能ではないことの証左といえる。 仮に一歩譲って、本件債権を取り巻く事実関係についての原告の認識が原告の主張どおりであるとしても、やはり本件債権が客観的に事実上回収不能であったと認めることはできないのである。 なぜならば、そもそも事実上の貸倒れが客観的に認められるということは、誰の目から見ても事実上の貸倒れであることが明白でなければならず、そうすると、政府の住専処理策という一個の事象に対して、その事実認識及び事実評価が人によって異なるということ自体が、「誰の目から見ても」事実上の貸倒れであることが明白であるとはいえないからである。そして、「誰の目から見ても」事実上の貸倒れであることが明白であるかどうかの判断、特に本件について言えば、 と自体が、「誰の目から見ても」事実上の貸倒れであることが明白であるとはいえないからである。そして、「誰の目から見ても」事実上の貸倒れであることが明白であるかどうかの判断、特に本件について言えば、住専処理策の実現が確実だと原告が信じていたことをもって本件債権を取り巻く政府の住専処理策をめぐる事実関係が判断されるのではないことは当然であり、あくまで、同処理策をめぐる事実関係の評価は、当時の社会的・政治的情勢に照らして客観的に判断されるべきものだからである。 (三) 債権放棄等による貸倒れについて(法基通九ー六ー一(4)関係)(1) 本件解除条件付債権放棄の解釈法基通九ー六ー一(4)は、経済的に無価値となった債権を法律的にも消滅させる場合であるから、債権放棄による損失を損金に算入するためには当該債権放棄が私法上の効果を生じていることが必要である。 ところが、本件約定書が作成された平成八年三月二九日においては、政府の住専処理策が実現するか否かについては全く予断を許さない状況にあり、その確定を見ることなく、債権放棄のみについて法的な効果を先に生じさせる合理的な理由はない。したがって、本件解除条件付債権放棄を行った原告の真の意思は政府の住専処理策の実現に必要な予算や法律の成立を見るまでは債権放棄の効果を生じさせないというものであったと解するのが相当であって、本件解除条件付債権放棄は、本件事業年度において債権放棄としての私法上の効果を生じておらず、したがって本件債権が本件事業年度において法律上消滅したことにより原告に損失が生じたとはいえない。 また、解除条件という附款が停止条件という附款と異なる本質は、後に行為の法律効果が失われるとしても、行為時において一応法律効果を生じさせる点にあるのであり、かつ、その法律効果は当事者が欲した経済的効果の実 解除条件という附款が停止条件という附款と異なる本質は、後に行為の法律効果が失われるとしても、行為時において一応法律効果を生じさせる点にあるのであり、かつ、その法律効果は当事者が欲した経済的効果の実現に法が助力するためのものである。債権放棄の場合における右の経済的効果とは当該債権の回収可能性の喪失にほかならない。ところが、前記(一)(6)のとおり、本件解除条件付債権放棄の前後で原告が本件債権を回収できる場合、時期及び方法には全く変化が生じておらず、本件解除条件付債権放棄は原告に何らの経済的効果も生じさせていない。このことは、当事者である原告及びJHL社が行為時において本件債権の回収可能性の喪失という債権放棄本来の経済的効果の実現を欲していないことにほかならず、本件解除条件を文字通り解除条件と解することは極めて不合理といわざるを得ない。原告が、右のとおり回収可能性の喪失という債権放棄本来の経済的効果を欲していないにもかかわらず、本件解除条件付債権放棄をしたのは、ひとえに本件債権の償却に備えて計上した多額の株式売却益に対する課税負担を回避するためであったと推認できるものである。この課税負担の軽減を図るという目的は、真実は契約書に記載された法律効果を生じさせる意思がないことを推認させるものである。 さらに、本件解除条件を文字通り解除条件と解することは極めて不自然でもある。すなわち、原告は、平成八年三月末当時、政府の住専処理策の帰すうが明らかになるまでは本件債権を現実に行使することができず、これが実現しないで法的整理手続に移行したときには本件債権を回収することができ、これが実現した場合は本件債権を放棄すべきことが予定されていたのである。その原告が、同じ政府の住専処理策が実現しないという反対事実を解除条件として本件債権を放棄することは、もとも 収することができ、これが実現した場合は本件債権を放棄すべきことが予定されていたのである。その原告が、同じ政府の住専処理策が実現しないという反対事実を解除条件として本件債権を放棄することは、もともと一定の事実が生じたときに限り行使できる債権について、当該一定の事実が生じるか否か未定の間に、当該事実が生じないことを解除条件として放棄する場合(例えば、停止条件付権利を当該停止条件の成就を解除条件として放棄する場合や、弁済期到来前の解除条件付権利を当該解除条件の不成就を解除条件として放棄する場合)と同じように、極めて技巧的かつ無意味な行為であって、せいぜい当該債権の性質を確認する意味しか有していない。にもかかわらず、これを真正な解除条件のごとく解するのは極めて不自然というべきである。 そのほか、原告は、本件約定書の五条によりJHL社に返還することとされている貸付契約証書や約束手形等の関係書類を、平成八年度予算(同年五月一〇日)及び住専処理法(同年六月一八日)が成立し、同法が公布・施行(同年六月二一日)された後で、JHL社の株主総会において営業譲渡等の決議がされた平成八年六月二六日に至って初めて返還したのであり、JHL社は本件債権放棄後も原告を債権者として取り扱っているのであって(甲四四四の1、五八八)、これらのことからも、原告及びJHL社に本件債権放棄時において確定的な法的効果を発生させる意思がなかったことが裏付けられる。 以上のとおり、本件解除条件をその文言どおり解除条件と解することは極めて不自然・不合理である上、課税負担を免れるという真の目的に照らしても相当でなく、本件解除条件付債権放棄後の原告及びJHL社の行動からは、むしろ原告がいまだ債権者として認識されていたというべきであるから、本件解除条件については文言と異なる解釈が許される に照らしても相当でなく、本件解除条件付債権放棄後の原告及びJHL社の行動からは、むしろ原告がいまだ債権者として認識されていたというべきであるから、本件解除条件については文言と異なる解釈が許される。すなわち、本件解除条件付債権放棄を行った原告の真の意思は、政府の住専処理策の実現に必要な予算や法律の成立を見るまでは債権放棄の効果を生じさせないというものであったと解するのが相当であり、本件解除条件付債権放棄は、本件事業年度において私法上の効果を生じておらず、本件債権が本件事業年度において法律上消滅したことにより原告に損失が生じたとはいえない。 (2) 計上基準についてア 「損失」に確定を要することについて法人税法二二条三項三号の「損失」が債務免除のような法律行為によって発生する場合には、同項二号の債務の確定の場合と同様に「確定」を要すると解すべきこと、したがって、法基通九ー六ー一(4)の債権放棄についても、これによる損失は確定していることを要する。 すなわち、同項二号が括弧書きにおいて「償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。」と規定し、いわゆる「債務確定主義」を採用した趣旨は、企業会計においては、企業経営の健全性ないし安全性の観点から積極的に費用の見越計上や引当金を設定する姿勢になりがちなのに対し、法人税法においては、課税の公平の観点から、可能な限り客観的に覚知し得る事実関係に基づいて計算すべきであるとの立場に基づいて、企業の恣意性が入り込みやすい費用の見越計上や引当金の設定に制限を設けたものであるところ、同項三号の「損失」が債権・債務を介する外部取引によって生じる場合には、恣意的な見越計上や引当金の設定を認めてもよいという理由は全くない。確かに、同号には「確定」を要する旨の明文規定はないが、それは「 三号の「損失」が債権・債務を介する外部取引によって生じる場合には、恣意的な見越計上や引当金の設定を認めてもよいという理由は全くない。確かに、同号には「確定」を要する旨の明文規定はないが、それは「損失」の発生原因が多様であって、大部分が事実の発生によって生じ、債権・債務を介する外部取引によって生じることが稀であるという事情によるにすぎず、外部取引によって生じる「損失」の認定の場合に企業の恣意性を排除すべきという法人税法の要請を否定する趣旨と解することはできない。右の見地から、第三者に与えた損害の賠償金のような場合は外部取引として債務の確定を要するとの理解がされており、債権・債務を介する外部取引による「損失」については「債務の確定」はすでに要件となって成立している、換言すれば、「損失」という概念はそれ自体に「債務の確定」という意味を含んでいると解されるのである。 したがって、結局、本件では、解除条件付債権放棄の場合について右の確定をどの時点で認めるのかが法律上の問題点となり得るにすぎない。 イ解除条件付債権放棄と確定について債務確定主義における「確定」が、民法上の債務の成立を前提としつつ、具体的な給付原因となる事実が発生し、金額の合理的算定が可能であることを要すると解されていること(法基通二ー二ー一二参照)、権利確定主義における「確定」についても、権利の発生と同義ではなく、権利発生後一定の事情が加わって権利実現の可能性が増大したことを客観的に認識することができるようになったときと解されており、具体的には各種の取引ごとに経済的実質等の特質を検討して判断されていること、例えば、形成権である賃料増額請求権が行使され、増額賃料債権が発生しても、それが係争中である場合には、原則として、その存在を認める裁判が確定した時にその権利が確定すると解 討して判断されていること、例えば、形成権である賃料増額請求権が行使され、増額賃料債権が発生しても、それが係争中である場合には、原則として、その存在を認める裁判が確定した時にその権利が確定すると解されていることなどを参考にすれば、解除条件付法律行為による損失の場合において、解除条件成就の可能性が相当程度あるときは、いまだ「確定」が生じていないと解すべきである。 ふえんすると、債務確定主義や権利確定主義において損益の計上時期が私法上の権利義務の発生・消滅時期のみによって決定されていないのは、課税が私法上の法律行為の法的効果自体ではなく、これによってもたらされる経済的効果に着目して行われるものであり、かつ、前記アのとおり、右の経済的効果である損益は、恣意的な見越計上等を排除して課税の公平を図るため、可能な限り客観的に確実な事実関係に基づいて計上すべきであるというのが、法人税法の基本的要請であるからである。 ところが、解除条件付法律行為には、解除条件の内容と成就の可能性の程度等の特質から、その経済的実質において、行為時に法律行為が行われたと評価し得るほど客観的に確実な経済的効果を生じさせないものがあり、中には、行為時に全く経済的効果を生じさせないものもある。 このような解除条件付法律行為による損益は、当該解除条件が不成就となって初めて客観的に確実になるのであるから、恣意的な損益の見越計上等を排除して課税の公平を図るため、可能な限り客観的に確実な事実関係に基づいて損益を計算すべきであるとする法人税法の基本的要請にかんがみ、当該解除条件の不成就が確定した時点において、確定した損益として損益に計上することができると解すべきである。 したがって、解除条件付債権放棄が行われた場合において、当該解除条件成就の可能性が相当程度あるため、これによる債 定した時点において、確定した損益として損益に計上することができると解すべきである。 したがって、解除条件付債権放棄が行われた場合において、当該解除条件成就の可能性が相当程度あるため、これによる債権の資産価値の消滅という経済的効果が、行為時に債権放棄が行われたと評価し得るほど客観的に確実とはいえないときは、その経済的実質にかんがみ、当該解除条件の不成就が確定した時点において初めて確定が認められ、損失に計上することができるというべきである。 ウ一般に公正妥当と認められる会計処理の基準(以下「公正処理基準」という。)について原告は、企業会計上は損失発生の原因となる法律行為に解除条件が付されていても、当該法律行為に基づく損失は当該法律行為の時点において直ちに認識・測定され、その属する事業年度の損失となり、その後解除条件が成就すれば、その時点で当該成就に基づく益金を別途認識・測定することになるとした上で、法人税法二二条四項が「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準によって算定するものとする。」と定めているのは、法人税法における損益計算が同法に「別段の定め」がない限り企業会計に依存することを明らかにしたものであるから、同法に「別段の定め」がない限り、企業会計上正当と認められる会計処理を税法固有の考慮によって否認することは許されず、貸倒損失の計上時期について「別段の定め」がない以上、前記の企業会計上の処理を税法上否認することは許されないと主張する。 しかしながら、公正処理基準に関する原告の主張は、公正処理基準が企業会計上の処理に絶対的に依存するとする前提において最高裁判所平成五年一一月二五日第一小法廷判決(民集四七巻九号五二七頁)及び同裁判所平成六年九月一六日第三小法廷決定(刑集四八巻六号三五七頁)と異なる立場に立つものである上、解除条件 る前提において最高裁判所平成五年一一月二五日第一小法廷判決(民集四七巻九号五二七頁)及び同裁判所平成六年九月一六日第三小法廷決定(刑集四八巻六号三五七頁)と異なる立場に立つものである上、解除条件付債権放棄のときに常に損失を計上し、解除条件が成就したときには収益を計上するという原告主張の会計処理は、損失計上時期を任意に操作し、あるいは損失そのものを人為的に生み出すことによる利益操作を可能とするものであるため、事実上の回収不能による貸倒損失及び貸倒引当金(本件当時は債権償却特別勘定)の計上に関する基準に照らしても、それ自体、法人税法二二条四項の公正処理基準に適合するものではない点でも理由がない。 債権・債務を介する外部取引による損失の場合、法人税法二二条三項三号にいう「当該事業年度の損失」とは、経済的実質において当該事業年度において確定しているものをいうと解すべきである。 (3) 本件解除条件付債権放棄による損失の確定について本件解除条件付債権放棄が、その経済的実質において、本件債権について原告が把握していた経済的価値を全く変動させておらず、全く原告に経済的効果を生じさせていないことは前記(一)(6)のとおりである。すなわち、仮に本件解除条件が文字通り解除条件と解されたとしても、それは経済的には債権を保有していると同様の状態を維持しつつ、単に法形式上、債権を消滅させたというにすぎない。したがって、本件解除条件付債権放棄による本件債権の資産価値の消滅という経済的効果は、本件解除条件が成就する可能性が相当程度ある限り、行為時に債権放棄が行われたと評価できるほど客観的に確実とはいえない。そして、平成八年三月三一日当時、政府の住専処理策が実現するか否かについては全く予断を許さない状況にあったのであるから、本件解除条件が成就する可能性が相当程 と評価できるほど客観的に確実とはいえない。そして、平成八年三月三一日当時、政府の住専処理策が実現するか否かについては全く予断を許さない状況にあったのであるから、本件解除条件が成就する可能性が相当程度あったことも明らかである。 したがって、仮に本件解除条件付債権放棄によって本件債権が法律上は解除条件付で消滅したとしても、いまだこれによる損失が確定したとはいえず、法人税法二二条三項三号にいう「当該事業年度の損失」が生じたとはいえない。 仮に本件解除条件付債権放棄による損失を本件事業年度に計上することを認めるときには、例えば、弁済期の到来しない解除条件付債権について、当該解除条件の不成就を解除条件として放棄した場合にも、これによる損失を当該債権放棄時の属する事業年度の損失に計上することを認めざるを得ないことになろうが、そのような結果が不合理かつ不公平であることはあまりにも明らかなのである。 (4) 本件解除条件付債権放棄が回収不能部分について行われていないことについて法基通九ー六ー一(4)は経済的に無価値となった債権を法律的にも消滅させる場合であるから、債権放棄による損失をこれにより損金に算入するためには、それが回収不能部分のみについて行われる必要がある。ところが、本件債権が回収不能とはいえないことについては、前記(二)で述べたとおりであるから、本件解除条件付債権放棄による損失は、その意味でも本件事業年度の損失に計上できない。 (5) 債権放棄等による貸倒れについての結論以上のとおり、本件解除条件付債権放棄による損失は、私法上の意思解釈、税法上の損金計上時期、対象となった債権の回収可能性のいずれの面から見ても、法基通九ー六ー一(4)には当たらず、これを本件事業年度の損金に計上することはできない。 (四) 関係者の協議決定による貸倒れ 上の損金計上時期、対象となった債権の回収可能性のいずれの面から見ても、法基通九ー六ー一(4)には当たらず、これを本件事業年度の損金に計上することはできない。 (四) 関係者の協議決定による貸倒れについて(法基通九ー六ー一(3)関係)(1) 計上基準について法基通九ー六ー一(3)は、経済的に無価値となった債権を法律的にも消滅させる場合であり、通達の文言上、「・・・により切り捨てられることとなった部分の金額」というのも、法律的に債権が消滅し、貸倒損失が発生する場合を意味する。 このことは同通達(1)及び(2)と対比してみても明らかである。 そうすると、法基通九ー六ー一(3)における関係者の協議決定についても、抽象的な方向性を確認したということでは足りず、右協議決定までに法律上、債権の消滅の効果が生じたことを要するというべきである。そして、協議の結果が抽象的な方向性を確認したにとどまるのであれば、その後にさらに関係者の法律行為が予定されていることになるから、そのような場合は、同通達(3)にいう協議決定が成立しているとは認められない。そして、法基通九ー六ー一(1)及び(2)との対比からすれば、協議決定それ自体が、法律上、債権消滅の効果が発生する内容のものであるか、あるいは、そうでなくとも、右協議決定の結果、従前に行われた債権消滅の効果が確認されるものであることが必要であって、右協議決定後に、さらに債権消滅について法律行為を要する場合には、同通達(3)の協議決定に該当しないものというべきである。 したがって、また、法律上、債権が消滅していることを要するのであるから、当然のことながら、その消滅する金額が確定する必要がある。 また、「合理的な基準」(法基通九ー六ー一(3)イ)とは、同通達(1)及び(2)と並んで規定されていることから明らかなと するのであるから、当然のことながら、その消滅する金額が確定する必要がある。 また、「合理的な基準」(法基通九ー六ー一(3)イ)とは、同通達(1)及び(2)と並んで規定されていることから明らかなとおり、同通達(1)及び(2)と同視できる内容であり、原則として、法的に平等な関係にある債権者においては切り捨てられる債権の割合も基本的には平等の割合となることが必要である。 (2) 本件における「協議決定」の不存在法基通九ー六ー一(3)の「協議決定」が成立したといえるためには、特定の債務者について、各債権者の切捨額についての各債権者による合意が成立したことが必要であることは右(1)のとおりである。 ところが、政府の住専処理策においては、個別の住専ごとに関係者の合意により処理計画が策定されることが予定されていたところ、原告が主張する平成八年一月二五日までに成立した政府の住専処理策に対する「合意」は「基本的な枠組み」に対する「おおむね」の合意にすぎないもので、各住専ごとの整理計画に係る「合意」と同視できるものではなく、各住専ごとに処理計画を作る将来の段階において改めて「合意」をすることが予定されており、平成八年六月七日の段階でも、政府の住専処理策に沿った処理がさ,れるよう努力がされているという状況であった。 右のような「基本的枠組み」についての「おおむねの合意」では、右要件を満たすものではないことが明らかである。 仮に、政府の住専処理策を「協議決定」と同視する場合、その決定ないし合意は本件基本協定に基づく合意しかあり得ない。現に、本件債権放棄についても、本件基本協定において、「3.(1)①に基づく債権放棄として実行済みとみなされる」との記載があることはこの点を裏付けるものである。 (3) 基準の合理性について本件通知によれば、母体行・一般行 、本件基本協定において、「3.(1)①に基づく債権放棄として実行済みとみなされる」との記載があることはこの点を裏付けるものである。 (3) 基準の合理性について本件通知によれば、母体行・一般行及び系統の債権の合計額二兆四五六七億円のうち約四〇パーセントを占める系統の債権について全額返済が予定されていた。このことに照らすと、本件通知における債権放棄見込額は、その内容が「おおむね同一の条件で切捨額が定められている場合」に該当しないことは明らかであるし、「少額債権者」や「下請業者その他の少額債権者」について優先的に弁済するという内容でもない。系統の債権の平均は一〇三億円であって、「少額債権者」と言い難いことは明らかであるし、原告の主張と同様の方法によって一般行の債権額の平均を計算すると一○八億円であって系統と大差がなく、政府の住専処理策が、「少額債権者」を保護するために弁済額の割合に差を設けたとすると、一般行と系統との間に差を設けた理由を説明することができないのであり、「少額債権者」の保護を理由に法基通九ー六ー一(3)の「合理的」に該当するということはできない。 (4) 以上のとおり、原告の法基通九ー六ー一(3)についての主張は、同通達にいう合理的な基準に当たらない政府の住専処理策について、その基本的な枠組みに対する関係金融機関のおおむねの合意にすぎないものを、法基通九ー六ー一(3)にいう関係者の協議決定と恣意的に同視して主張しているものであり、失当であることは明らかである。 (五) 子会社等を整理する場合の損失負担について(法基通九ー四ー一関係)(1) 本件事業年度における「経済的利益の供与」の不存在について法基通九ー四ー一が「寄附金の額に該当しない」と規定していることからも明らかなように、同通達に該当する「経済的利益の供与」は、法人 (1) 本件事業年度における「経済的利益の供与」の不存在について法基通九ー四ー一が「寄附金の額に該当しない」と規定していることからも明らかなように、同通達に該当する「経済的利益の供与」は、法人税法二二条三項三号の「損失」として損金に算入されることになるのである。ところが、前記(三)(1)ないし(3)で述べたとおり、解除条件付債権放棄による損失が、同号の「当該事業年度の損失」に該当するためには、その私法上の効果が発生し、かつ、これによる損失が「確定」していることを要するところ、本件事業年度においては、本件解除条件付債権放棄の私法上の効果が発生しておらず、また、これによる損失が確定したとも認められない。したがって、本件解除条件付債権放棄は、本件事業年度における「経済的利益の供与」とも認められないことになって、同通達該当性を論ずる前提を欠いている。 また、念のため、寄附金について付言すると、法人税法三七条一項は「各事業年度において寄附金を支出した場合」と規定しており、現金主義に依拠しているところ、「支出」した場合であっても、それが条件付きであるような場合は、現金主義の下でも寄附金には該当しないと解されるのであり、いわんや本件解除条件付債権放棄のように何ら経済的効果を及ぼさないものについては、利益操作を排除するなどの目的で現金主義を採用した法人税法の趣旨に照らし、「支出」したと認める余地さえないというべきである。 したがって、結局、法人税法の解釈上、本件解除条件付債権放棄を本件事業年度におけるJHL社に対する「経済的利益の供与」と認める余地はない。 (2) 寄附金該当性の主張立証責任について課税要件事実の存否等については、課税庁である被告が主張立証責任を負うべきものと解されている以上、原告の「寄附金該当性の主張立証責任は被告にある」旨 い。 (2) 寄附金該当性の主張立証責任について課税要件事実の存否等については、課税庁である被告が主張立証責任を負うべきものと解されている以上、原告の「寄附金該当性の主張立証責任は被告にある」旨の主張は、一般的・抽象的には誤りではない。しかし、被告が法人税法二二条にいう別段の規定である寄附金該当性を主張立証する必要があるのは、当該損失が公正処理基準の下で「損失」と認められる場合であるところ、原告が主張する解除条件付債権放棄に係る会計処理が公正処理基準に該当しないものであることは、前記(三)(2)ウのとおりであるから、本件の具体的事実関係の下では、被告は寄附金該当性について主張立証する必要はない。 また、原告の「寄附金に該当するのは『経済的利益・・の供与の時における価額』であるから、被告において主張立証し得た放棄時の経済的価値であり、その余の金額は当然に損金になる」旨の主張については、債権放棄が行われた場合、原告において、放棄した債権が全額回収不能であることが客観的に確定していることを基礎付ける具体的事実関係を主張立証しないときは、債権放棄額の全額が寄附金の額となるのであって、被告が放棄時の経済的価値を主張立証する必要はないから誤りである。 そして、本件債権が平成八年三月当時、全額回収不能といえないことについては前記(二)(2)のとおりであって、原告は右立証をしていない。 (3) 本件事業年度における「相当な理由」の不存在についてア政府の住専処理策を前提とする「相当な理由」について本件解除条件付債権放棄は、「JHL社の営業譲渡及び解散の登記」が平成八年一二月末までに行われないことを「解除条件」として行われていること自体から明らかなとおり、政府の住専処理策が実現されることを前提として行われたものであり、同処理策が実現せず法的整 の登記」が平成八年一二月末までに行われないことを「解除条件」として行われていること自体から明らかなとおり、政府の住専処理策が実現されることを前提として行われたものであり、同処理策が実現せず法的整理手続に移行した場合は維持されないものであった。そして、政府の住専処理策は、前記(一)(3)アのとおり、法的整理手続による場合に生ずる社会的・経済的危機を回避するという政治的目的の下に策定されたものであり、右の危機によって個々の金融機関が被るであろう損失も計り知れないものであったから、同処理策が実行に移された段階で、それに基づいた債権放棄を行ったのであれば、右のような損失を避けるため「相当な理由」が認められると解される。 しかしながら、政府の住専処理策は、前記(一)(3)イないしカ及び(一)(4)ウのとおり、住専七社の全債権者である関係金融機関及び政府がそろって一定の債権放棄や贈与及び国庫からの支出を行うことによって住専の処理を行うことを内容とする不可分一体の処理案であり、その性質上、平成八年度予算や住専処理法が成立し、その後に個別の住専において整理計画が策定され「関係者の合意」が成立しない限り、実現することはあり得ず、前記のような損失を回避し得るともいえないのである。そして、右関係者の合意が成立した時期は、平成八年八月二九日付けで母体行、一般行及び系統に対して本件基本協定が示され、それに対する合意書の提出が完了した時点であり、平成八年三月三一日当時は、政府の住専処理策が実現するか否かについては全く予断を許さない状況にあったのであるから(前記(一)(4)参照)、その段階において法基通九ー四ー一に定める「相当な理由」を認める余地はない。 イ個別事情による「相当な理由」についてもっとも、仮に本件解除条件付債権放棄が、住専処理策を前提とせずに (4)参照)、その段階において法基通九ー四ー一に定める「相当な理由」を認める余地はない。 イ個別事情による「相当な理由」についてもっとも、仮に本件解除条件付債権放棄が、住専処理策を前提とせずに、原告の個別事情に基づいて行われたものと解することができるならば、右個別事情による「より大きな損失」や「相当な理由」を検討し、なお法基通九ー四ー一該当性を判断することも可能となり得るが、本件解除条件の内容に照らし、本件解除条件付債権放棄については、そのように解する余地はない。 (4) 以上のとおり、本件解除条件付債権放棄が法基通九ー四ー一に該当すると認められるのは、政府の住専処理策についての関係者の合意が成立し、本件解除条件付債権放棄に付された解除条件の不成就が確定した結果、本件解除条件付債権放棄が「確定」し、損金と認められるに至るとともに「相当な理由」を具備した平成九年三月期と解するほかない。 (原告の主張)(一) 原告が本件債権の全額を貸出金償却するに至った事実関係について(1) 住専の経営状況の悪化と第一次再建計画の策定ア JHL社は、昭和五一年にいわゆる住専の一社として、原告、日債銀及び本件証券母体三社を設立母体として設立されたものである。JHL社をはじめとした住専は、住宅ローンの供給という国策に基づき設立され、ノンバンクとしては異例の大蔵省直轄の準金融機関とされる等、設立当初から大蔵省の強い関与の下にあった。 イ原告は、JHL社の設立母体ということのみならず、資本、資金及び人的関係のあらゆる観点において極めて密接な関係にあり、その経営に深く関与してきた。 そのため、JHL社設立の翌年から開始された系統によるJHL社向けの融資に当たっては、原告がこれを保証することとなった。そして、かかる保証はその後大蔵省と農林水産省の行政指導によっ く関与してきた。 そのため、JHL社設立の翌年から開始された系統によるJHL社向けの融資に当たっては、原告がこれを保証することとなった。そして、かかる保証はその後大蔵省と農林水産省の行政指導によって集合債権譲渡担保方式に切り替えられ、原告はその協定幹事行として、自己及び系統をはじめとした他の債権者のために担保の管理をなすべき立場に就いた。こうした経緯からも、系統はJHL社への与信は原告の信用に支えられたものだとして、住専向け貸付をインターバンク取引と位置付けて、その取引を拡大していった。 ウしかし、昭和五〇年代後半に至り、都市銀行(以下「都銀」という。)等の住宅ローン分野の蚕食が始まり、さらに平成三年から四年にかけて、いわゆるバブル経済の崩壊による事業者向けローンの不良化等により住専の財務・経営状態が急激に悪化した。これをうけ、住専を直轄する大蔵省は各住専の財務状況の実態を把握するべく第一次立入調査を行うとともに、各住専の母体行に対して住専の再建計画の策定を要請するに至った。かかる大蔵省の要請をうけて、JHL社の責任母体行である原告は、平成四年五月、JHL社の事業計画(以下「第一次再建計画」という。)を立案し、系統らに対して「融資残高の維持」を要請した。これに対して、系統は自らの債権保全を確実にするべく、融資残高の維持に応じる条件として、①原告が母体支援を文書により表明すること、及び②系統債権の優先弁済性を確保するために系統債権を全額有担保化することを要求してきた。 エ当時、系統はJHL社の最大の貸し手であり、系統が残高維持に応じない場合にはJHL社の事業はたちまち行き詰まってしまうことから、原告は、かかる系統の要請に応じて、①母体が責任を以て支援していく旨を直接口頭で表明した上で、JHL社名義でその旨を明らかにした農中宛の「書簡」 はJHL社の事業はたちまち行き詰まってしまうことから、原告は、かかる系統の要請に応じて、①母体が責任を以て支援していく旨を直接口頭で表明した上で、JHL社名義でその旨を明らかにした農中宛の「書簡」等を差し入れるとともに、②原告のJHL社に対する有担保の長期証書貸付を無担保の短期手形貸付(約一五六〇億円)に振り替えることで、系統のJHL社に対する無担保貸付を有担保貸付に振り替えることとした。 その結果、平成五年四月末までに系統のJHL社に対する債権は全額有担保化され、少なくとも約一五六〇億円の原告の無担保手形貸付に対して、回収において法的に優先することとなった。 (2) 新事業計画の策定と関係者による母体行債権の最劣後化に関する合意の成立ア前述のように、原告がJHL社の第一次再建計画を策定し、その際に母体として支援することを明確に表明し、系統債権の全額を有担保化したことによって系統の融資残高は維持されたものの、地価の下落がなおも続いたため、担保不動産の価値の目減りによる住専の財務状況の悪化は一層顕著となった。そこで、大蔵省は、自らが「直轄」する住専から金融不安を招く訳にはいかないという「政策的判断」から、各住専及びその母体行に対して、関係金融機関による金利減免を軸とする第二次再建計画を立案するように要請した。この要請に対して、当初原告は金利減免だけでは問題の先送りにしかならず、抜本的解決策を採るべきであると提言した。 しかし、大蔵省銀行局のP4審議官は「再建の作文を作って勧進帳的に関所を越えたい」とまで述べ、大蔵省自らが問題の先送りでしかないことを認めつつ、敢えて「政策的判断」として再建策の体裁を整えることを求めてきたことから、原告は最終的にはかかる再建策の実現可能性が極めて乏しいことを認識しつつも、大蔵省からの要請に従い、JH ないことを認めつつ、敢えて「政策的判断」として再建策の体裁を整えることを求めてきたことから、原告は最終的にはかかる再建策の実現可能性が極めて乏しいことを認識しつつも、大蔵省からの要請に従い、JHL社の新事業計画を策定することになった。 イこのとき、大蔵省が、系統が金利軽減を受け入れる「条件」として提示してきたのが、①整理の段階における系統への優先弁済の確保と②母体責任を明確にした文書の提出であった。原告は、①系統への優先弁済を認めることは、既に第一次再建計画の策定に当たってJHL社を支援していくことを系統に対して明確に表明した上で残高維持を求めた経緯があったことから、やむを得ないものとして同意した。そして、かかる弁済順序は、大蔵省の指導に従い、最終的に新事業計画において「高利優先弁済」という形で「金利の差」を以て明確に具体化されることとなった。つまり、JHL社の事業資金の貸し手の中では、四・五%と最も高利の債権とされた「系統債権」が「最優先」であり、金利〇%とされた「母体行債権」が「最劣後」となることが、定められるに至ったのである。また、②母体責任を明確にした文書の差入れについても、大蔵省が極めて強い調子で、正式の社印でなくても構わないとまで述べてきたことから、結局、原告はこれに応じることとし、母体五社間で確認の上、大蔵省に「JHL社の再建に責任を持つ」旨の念書を差し入れることとなった。 このように、大蔵省が系統債権の優先弁済と母体責任を明確にした文書の差入れにこだわったのは、大蔵省と原告との面談の前日である平成五年二月三日に大蔵省と農林水産省との間で締結された「大蔵・農水覚書」において、これらが新事業計画による金利軽減に系統が応じるための条件とされていたからである。 ウこのような経緯を経て、JHL社の「新事業計画」は、平成五年 水産省との間で締結された「大蔵・農水覚書」において、これらが新事業計画による金利軽減に系統が応じるための条件とされていたからである。 ウこのような経緯を経て、JHL社の「新事業計画」は、平成五年五月に作成され、原告及びJHL社の担当者が関係者に持参の上説明し、平成五年一二月二七日を以て関係者の全てが書面を以て新事業計画に「同意」することとなった。また、これによって、担保協定に基づく集合債権譲渡担保の行使順序においても母体行債権が最劣後に置かれることになった。 (3) 大蔵省の第二次立入調査による住専の破綻の顕在化と本件閣議決定における母体行債権全額放棄についての「合意」の成立ア大蔵省の第二次立入調査による住専の破綻の顕在化前述のように、新事業計画について関係者の合意が成立し、新事業計画に基づくJHL社に対する支援が開始されたものの、その後も経済環境は悪化の一途をたどり、平成七年八月に実施された住専各社に対する大蔵省の第二次立入調査によって、住専の破綻が完全に明らかとなり、弁済順序において最劣後に置かれる本件債権がもはや回収不能であることが誰の目にも明らかとなった。この結果をうけて、与党金融・証券プロジェクトチーム(以下「与党PT」という。)が「住専問題についての勧告」を発表し、住専問題の早期解決を求めたのに応じて、原告も平成七年九月二二日にはJHL社の母体各社を招集して同社を整理する方針を確認し、大蔵省に報告した。 さらに、与党PTは、各住専の処理状況を確認するために各住専の母体に対するヒアリングを開始したが、特に、住専の中でも最大手であるJHL社の責任母体行であった原告に対しては、与党PTの越智通雄座長から直接に、原告が先頭を切って模範を示すようにとの発言がなされるなど、住専問題解決において主導的な役割を果たすことが強く期 であるJHL社の責任母体行であった原告に対しては、与党PTの越智通雄座長から直接に、原告が先頭を切って模範を示すようにとの発言がなされるなど、住専問題解決において主導的な役割を果たすことが強く期待されていた。 他方、平成七年九月以降、与党PTの勧告に従って、母体行と系統による系統協議が始まったが、その際、当事者間では、JHL社を整理する段階でも母体行債権が最劣後に置かれ、系統債権が最優先とされることについては何らの齟齬もなかった。しかしながら、第二次立入調査によって、新事業計画における「合意」に従って母体行債権(三兆五〇〇〇億円)のみならず一般行債権(三兆八〇〇〇億円)の全額(合計七兆三〇〇〇億円)を劣後させてもなお、系統債権に全住専合計で約二〇〇〇億円もの元本ロスが生じることが確認されたため、系統協議では、新事業計画時には意識もされず従って「合意」されていなかった系統債権に生じる元本ロスを、誰がどのように負担するかという点を巡って協議が進められることとなった。 イ大蔵省及び農林水産省によるあっせん・仲介と一次ロスについての損失負担に関する「合意」の成立及び右合意に基づく本件閣議決定の成立このように、系統協議の眼目はこれまでの合意においては定められなかった系統の元本ロス負担の問題であったが、これについて母体行と系統との議論は平行線をたどった。しかしながら、住専問題は、その損失額の大きさ及び大蔵省直轄の準金融機関の処理として、内外から注目を集めており、金融システムの秩序維持のためには年内に処理方針を固めることが必須であった。そこで、平成七年一一月二九日に、大蔵省は母体行の役員を招集して、大蔵省と農林水産省が住専処理案の取りまとめのあっせん.仲介を行うことを伝えた。このあっせんの一環として大蔵省は母体行に対するヒアリングを行った。 年一一月二九日に、大蔵省は母体行の役員を招集して、大蔵省と農林水産省が住専処理案の取りまとめのあっせん.仲介を行うことを伝えた。このあっせんの一環として大蔵省は母体行に対するヒアリングを行った。原告のP5副頭取は、その際、新事業計画に基づく母体行債権全額までの負担はやむを得ないが、かかる負担が株式会社として負担し得る限界であることを明確に伝え、大蔵省もかかる原告の意向等を受けて農林水産省との協議に入った。 大蔵省と農林水産省は、母体行の負担を債権全額までに留める一方、系統の元本ロス負担を最小化するべく、住専に生じる約七兆五〇〇〇億円の損失のうち第Ⅳ分類に該当する約六兆三〇〇〇億円の損失を「一次ロス」として切り分け、かかる「一次ロス」の大部分を母体行債権全額の放棄によって処理する大蔵省案を、予算内示も押し迫った同年一二月一七日に原告に提示してきた。かかる「一次ロス」の処理に関する大蔵省案は、新事業計画に基づいた負担割合の範囲内で母体行債権全額までの負担を行うという原告の従前からの主張に沿ったものであったことから、原告は、JHL社の他の母体の意思をも確認した上で、翌一八日に、大蔵省案に示された母体行債権の全額放棄について同意することを大蔵省に伝えた。 この大蔵省案は他の住専の母体行にも提示され、他の住専の母体行も同案に「合意」した。いうまでもなく、原告も含めて各住専の母体行は他の住専との関係では一般行の大多数でもあり、右合意は一般行としても大蔵省案に合意することを意味するものであった。また、かかる大蔵省案は系統を代表する農林水産省との協議の上で提示されたもので、その内容も系統債権については全額の弁済を受けた上で、その一部を贈与するというものであり、理事の責任問題が生じない形となっていたことから、系統もこれに「合意」し、ここにおいてより で提示されたもので、その内容も系統債権については全額の弁済を受けた上で、その一部を贈与するというものであり、理事の責任問題が生じない形となっていたことから、系統もこれに「合意」し、ここにおいてより明確な形で「母体行債権の最劣後性」を前提とした母体行債権の全額放棄を基底とする「一次ロス」負担についての全ての「関係者間の合意」が成立したのである。 そして、それを受けて平成七年一二月一九日深夜に、本件閣議決定がなされ、かかる合意が公的にも確認されることとなった。 ウ大蔵省及び農林水産省によるあっせん・仲介による「二次ロス」の処理についての全ての関係者の「合意」と、右合意を前提とする本件閣議了解の成立このように、本件閣議決定により「一次ロス」の処理が固まったことから、大蔵省は、残る第Ⅲ分類債権から生ずる損失見込額一兆二〇〇〇億円の「二次ロス」の処理について、農林水産省とも連絡をとりながら原告を含めた各金融機関とさらに協議を重ねた。そして、予算委員会開催(平成八年一月二六日)を目前に控えた平成八年一月二四日には、大蔵省及び農水省を通じて関係者に対して「二次ロス」処理の最終案が提示された。 かかる処理案における議論のポイントは、本件閣議決定で確認された「一次ロス」処理を当然の前提として、「二次ロス」をいかに処理するかという点であった。当然のことであるが、平成八年一月以降の協議においてはもはや「一次ロス」をどのように処理すべきかについては全く議論の対象となっていなかった。このことからもまた、既に平成八年一月の段階においては、母体行債権の最劣後性を前提とした母体行債権の全額放棄が「合意」されており、もはや動かしようのないものとなっていたことが明らかである。 そして、最終的には、当該「二次ロス」については、系統も含めたオール・ジャパンの金融機関 とした母体行債権の全額放棄が「合意」されており、もはや動かしようのないものとなっていたことが明らかである。 そして、最終的には、当該「二次ロス」については、系統も含めたオール・ジャパンの金融機関が拠出した基金の運用益等によって処理されることとなり、原告をはじめとした金融機関は系統も含めこれに同意し、右合意に基づき本件閣議了解がなされるに至った。 ここにおいて二次ロス部分まで含めた住専処理スキームが「関係者の合意」の上で完全に固まった。 (4) 本件債権放棄に当たってのJHL社の関係者間での母体行債権の最劣後化の確認と本件債権放棄の実行ア原告は平成八年三月二一日にJHL社の一般行全てに対して母体行債権の全額放棄を基底とする本件閣議決定を前提とした負担見込額を書面により通知し、異議のある場合は原告に申し出るよう明確に求めたが、これに対して異議申出期限である同月二五日までに何らの異議も出されなかった。ここにおいて、JHL社の具体的な損失負担割合についても、全一般行から「同意」が得られ、原告のJHL社に対する本件債権の全額が回収不可能であることもまた最終的に確認され「合意」されたのである。 そして右合意に基づき債務者であるJHL社から債権放棄の要請がなされ、同月二九日に母体行債権の全額放棄について出資母体間協定を締結した上で、原告は、取締役会の審議・決定を経て、JHL社と債権放棄約定書を締結して、本件債権及び全ての担保権の放棄を実行するに至った。ここにおいて、既に関係者の合意により最劣後に置かれ経済的価値を喪失していた本件債権は、JHL社の全ての「関係者間の合意」に基づき、法的にも完全に消滅することとなったのである。 イ以上の事実からすれば、本件債権放棄が、母体行債権の最劣後性を前提とした本件閣議決定における全関係者の「合意」に基づ ての「関係者間の合意」に基づき、法的にも完全に消滅することとなったのである。 イ以上の事実からすれば、本件債権放棄が、母体行債権の最劣後性を前提とした本件閣議決定における全関係者の「合意」に基づいて実行され、その要請に従って早期の住専処理を実現するために行われたものであり、決して税務上の考慮によるものではないことは明らかである。 ウまた、原告は、本件債権放棄の時点で平成八年度予算及び住専処理法の成立は確実な状況にあり、原告はJHL社の営業譲渡及び解散が行われることについて確信を持っていたのである。 (二) 企業会計上適正に計上された本件の損失は、法人税法二二条に照らして損金算入されることについてそもそも平成八年三月期に原告が本件貸出金償却を行い、本件債権の全額を「損失」として計上したことは、商法上、「企業会計の専門家の通説を含む企業関係者の社会通念」に照らして本件債権の取立不能を合理的に判断したものであり、また、企業会計上も適正なものである。 そして、法人税法二二条は、「別段の定め」がない限り、損失の額を公正処理基準に従って計算すべきものとしているところ、被告は、同条にいう具体的な「別段の定め」を何ら主張し得なかったのであるから、公正処理基準に基づいて計上された本件債権に係る損失の全額が「損金」として取り扱われるべきことは同条に照らして明らかと言わざるを得ない。 (三) 法基通九ー六ー二に照らして本件債権の全額が貸倒れであることについて本件債権は平成八年三月末の段階において回収不能な債権となっていたのであって、法基通九ー六ー二に照らしても、全額について「貸倒れ」が認められるべきである。より具体的には、本件債権は平成八年三月期において、①合意により又は②社会通念上、弁済順序において「最劣後」のものとなっていたのであって、当時の しても、全額について「貸倒れ」が認められるべきである。より具体的には、本件債権は平成八年三月期において、①合意により又は②社会通念上、弁済順序において「最劣後」のものとなっていたのであって、当時のJHL社の資産価値をどのように高く見積もるとしても、本件債権の全額が回収不能の状態にあったのである。 (1) 本件債権の最劣後化についての合意が存在していたこと平成五年に策定され合意されたJHL社の新事業計画においては、本件債権をはじめとする母体行債権が弁済順序において最劣後に置かれることが計画上明らかにされ、これに対して関係金融機関の全てが書面を以て明確に同意し、ここにおいて本件債権が弁済順序において最劣後に置かれることについて「関係者の合意」が成立していた。 そして、かかる本件債権の最劣後性についての「関係者の合意」を前提として、平成七年一二月には母体行債権の全額放棄を基底とする「一次ロス」処理案について「関係者の合意」が成立し、さらには本件閣議決定においてかかる「合意」は公式に確認され、異例なことではあるが文書にて公表されるに至った。その後、かかる本件債権の最劣後性及び本件債権の全額放棄についての関係者の合意を前提とする「二次ロス」処理についても平成八年一月二五日には「関係者の合意」が成立し、同月三〇日の本件閣議了解によって公式に確認され、右と同様に文書にて公表された。さらに、最終的には、原告から本件閣議決定に沿ったJHL社における具体的な損失負担の見込額が書面によって一般行に通知され、これに対して異議申出期限である平成八年三月二五日までに全く異議は出されなかったことによって、母体行債権が弁済順序において最劣後化し弁済を受けないものであることがJHL社の関係者全員により「合意」され、確認されたのである。 (2) 社会通念に基づく本件 全く異議は出されなかったことによって、母体行債権が弁済順序において最劣後化し弁済を受けないものであることがJHL社の関係者全員により「合意」され、確認されたのである。 (2) 社会通念に基づく本件債権の最劣後化による「貸倒れ」についてまた、右のような「合意」による劣後化の成否にかかわらず、過少資本等の一定の事由がある場合には社会通念上劣後化が認められ、倒産手続上も最劣後に扱われる債権については、経済的利益を回収することは期待できないのであるから、税法上当然に貸倒れが認められる。 そして、①JHL社が一パーセントを下回る過少資本の状態で推移し、原告の債務保証や不足資金の供与に支えられていたこと、②原告がJHL社の二度にわたる再建計画の過程で、母体行責任を明確に表明してきたこと、及び③住専処理に当たって、住専最大の母体行であった原告が世論から厳しい追及を受け、母体行債権を超える負担を求められ、系統協議から閣議了解に至った経緯にかんがみれば、本件債権が社会通念上も最劣後に位置し、回収を図り得なかったこともまた明らかである。 (四) 法基通九ー六ー一(3)に照らして本件債権の全額が貸倒れであることについて本件閣議決定によって定められた損失負担の割合は、大蔵省及び農林水産省という行政機関たる「第三者」のあっせん・仲介によって合意され成立したものであるから、法基通九ー六ー一(3)にいう「協議決定」に当たり、その内容はプロラタ(比例按分)負担ではないが、住専設立以来の経緯を反映している点で同通達にいう「合理的な基準」に該当するから、同通達によって本件債権の全額について「貸倒れ」が認められるべきである。なお、平成八年三月期に本件債権放棄の効力が私法上及び税法上「発生」していることについては、後記(五)(1)のとおりである。 (五) 法基通九ー 債権の全額について「貸倒れ」が認められるべきである。なお、平成八年三月期に本件債権放棄の効力が私法上及び税法上「発生」していることについては、後記(五)(1)のとおりである。 (五) 法基通九ー六ー一(4)に照らして本件債権の全額が貸倒れであることについてJHL社が平成五年三月期以降平成八年三月期に至るまで相当の期間大幅な債務超過状態を継続し遂に事業を閉鎖したことにかんがみれば、本件債権の全額について「書面による債務免除」が行われている以上、法基通九ー六ー一(4)に照らしても、本件債権の全額について「貸倒れ」が認められるべきである。 この点について、被告は①本件債権放棄の効力が私法上あるいは税法上平成八年三月期には発生していないとか、②同通達に基づく「貸倒れ」が認められるためには債権放棄の対象となった債権について、法基通九ー六ー二と同一の意味において回収不能でなければならないなどと主張しているが、以下のとおり、貸倒れが認められるべきである。 (1) 解除条件付債権放棄(債務免除)は、私法上も、税法上も平成八年三月期にその効力が発生していることア私法上、解除条件付債権放棄の効力が意思表示の時点で生じることは疑う余地がない。 イ被告は、税法上債権放棄の効力が生じるためには、「確定」が必要であるなどとも主張しているが、法人税法二二条三項三号の「損失」には、同項二号に定める「債務確定」とは異なり、「確定」は不要である。そもそも債権放棄の効力は解除条件の有無にかかわらず生じ、意思表示の時点で債権は消滅するのであるから、改めて「確定」を要する理由が見当たらない。その上、既に平成八年三月末までには政府の住専処理案の成立・実行は既定の方針となっており、解除条件の不成就は確実であったのだから、いずれにせよ平成八年三月期に本件債権放棄の効力は 理由が見当たらない。その上、既に平成八年三月末までには政府の住専処理案の成立・実行は既定の方針となっており、解除条件の不成就は確実であったのだから、いずれにせよ平成八年三月期に本件債権放棄の効力は私法上も税法上も完全に生じていたことは明らかである。 ウ確定申告期限までに平成八年度予算と住専処理法が成立し、JHL社の営業譲渡及び解散が決議されていたという「客観的事実」にかんがみれば、あえて理論的見地から検討してみても、債権放棄の効力には疑念を挟む余地はないところである。 (2) 法基通九ー六ー一(4)の適用に当たっては、放棄された債権が「弁済を受けることが困難」であれば足り、法基通九ー六ー二と同様の意味での「回収不能」までは必要ないこと法基通九ー六ー二とは別途に、法基通九ー六ー一(4)を設けた趣旨は、「一定の客観的事実の存在」と「書面による債務免除の意思表示」を以て、当該債権の経済的価値の精査をすることなく「貸倒れ」を認める点にあり、法基通九ー六ー一(4)の適用に当たって法基通九ー六ー二と同様に「回収不能」な債権であることが必要などという被告の解釈は、かかる通達の存在意義を自ら否定するものであっておよそ採り得ないこともまた明らかである。 (六) 法基通九ー四ー一に照らしても本件債権放棄による損失の全額が損金算入されるべきことについて平成八年三月期において本件債権の全額が「貸倒れ」に至っていたかどうかにかかわらず、法基通九ー四ー一に照らすと、本件債権放棄による損失は寄附金に該当せず損金に算入されるべきである。 (1) 本件債権放棄は法基通九ー四ー一の要件をすべて満たしていることJHL社は原告との関係で「子会社等」に該当し、本件債権放棄はかかる子会社等の解散・整理に際してなされたものである。そして、平成八年三月当時、原告をはじめと ー四ー一の要件をすべて満たしていることJHL社は原告との関係で「子会社等」に該当し、本件債権放棄はかかる子会社等の解散・整理に際してなされたものである。そして、平成八年三月当時、原告をはじめとした母体行が、①住専処理が円滑にいかなかった場合に生じる金融システムの混乱ないし崩壊による莫大な損失及び②世論からの完全母体行責任に基づく母体行の債権全額を超える追加負担要求によりさらなる損失を被るおそれにさらされていた。 本件債権放棄は、原告の取締役会が事実関係に関する十分な情報を収集した上で、①本件閣議決定に従った母体行債権の全額放棄を粛々と進めることによってJHL社の処理を円滑に進め金融システムの混乱ないし崩壊を回避するとともに、②母体行としての責任を果たすことによって、母体行に対する世論からの非難が沸騰してさらなる追加負担を強いられることを避けるべく実行されたものであって、まさに法基通九ー四ー一において「相当な理由」がある場合として例示されている「より大きな損失を避けるためにやむを得ず」行ったものに他ならないのである。 加えて、本件債権放棄は、原告にとって「事実上高度の強制的効果」を有する本件閣議決定(しかも本件閣議決定は「文書」によってなされた異例のものである。)及びそれに基づく大蔵省からの免許事業に対する監督権を背景とした強い指導が介在した上で行われたものであり、まさに原告にとっては「やむを得ざるもの」だったのであって、この点からしても法基通九ー四ー一の「相当な理由」が認められることは明らかである。 (2) 被告も平成九年三月期には「相当な理由」があることを認めていること以上述べたところから、本件債権放棄による損失について法基通九ー四ー一が適用されるべきことは明らかであり、被告も翌期の平成九年三月期には法基通九ー四ー一の「相当 な理由」があることを認めていること以上述べたところから、本件債権放棄による損失について法基通九ー四ー一が適用されるべきことは明らかであり、被告も翌期の平成九年三月期には法基通九ー四ー一の「相当な理由」があることを認めているところであって、平成九年三月期においては「相当な理由」が認められるとしながら、平成八年三月期にはそれを認めないという被告の主張には何ら合理的な理由は見い出せないのであるから、本件事実関係の下で、平成八年三月期において法基通九ー四ー一による損金算入を否認することは許されない。 (七) 本件処分の不当性について以下に述べる点からしても、そもそも本件更正処分は国税通則法一条の「納税義務の円滑な履行に資する」との趣旨を没却するものであって、およそ許されるべきものでないことは明らかである。 (1) 課税の公平性(他の事案との均衡)からいっても、本件債権放棄による損失の全額が損金算入されるべきこと被告は、原告と同様に平成八年三月期において住専向け債権を放棄した和歌山銀行については、法基通九ー四ー一が適用されることを否定せず、また、日貿信の事案において、解除条件付きで債権放棄をなした事業年度において損金算入を認めている。これらの事案との均衡からしても、少なくとも本件債権放棄による損失について、解除条件が付されているからといって損金算入を認めないなどという理由はどこにも見い出せない。 このように合理的な理由がないにもかかわらず、特定の納税者についてのみ不利な取扱いをすることは、課税の公平性の原則からいって到底許されるものではない。 (2) 一連の課税庁の処分の不当性からいって、本件更正処分は違法な行政処分として取り消されるべきであること本件更正処分は、原告の本件確定申告における本件債権に係る損失の損金算入を認めるべき 。 (2) 一連の課税庁の処分の不当性からいって、本件更正処分は違法な行政処分として取り消されるべきであること本件更正処分は、原告の本件確定申告における本件債権に係る損失の損金算入を認めるべきではないという被告の偏った価値判断に基づいてなされた、まさに先に結論ありきのものであった。このような予断と偏見があったからこそ、約三七六〇億円という巨額の債権放棄に係る税務問題であるにもかかわらず、本件債権の回収可能性の有無を考える上で最も重要なJHL社の資産価値や担保権放棄の事実について十分な調査を経ることもなく、また原告が提出した意見書等を「全て誤っている」として、調査結果について討論の機会を与えることもないままに調査は終了したのである。そして被告は調査終了の翌日には本件更正処分を行ったのである。 このように本件更正処分は、確固とした根拠に基づくことなく形式的な調査により行われたものであり、この点は、本件更正処分の理由、国税不服審判所による裁決の理由及び本訴訟における被告の主張が、その都度変遷しており一貫していないことが如実に物語っている。 このような処分が国税通則法一条の趣旨を没却する不当なものであり、およそ課税庁として許されるべきことではないことは論をまたないところであって、本件更正処分は違法不当なものとして当然に取り消されるべきものである。 2 争点3について(原告の主張)以下のとおり、過少申告加算税の賦課決定処分の当否に限ったとしても、原告が本件債権の全額を損金として本件確定申告を行ったことについて国税通則法六五条四項にいう「正当な理由」が認められることは明らかである。したがって、被告による本件の過少申告加算税の賦課決定処分は取り消されるべきである。 (一) 国税庁からの「債権放棄による無税償却」の指導税務当局から示された見 由」が認められることは明らかである。したがって、被告による本件の過少申告加算税の賦課決定処分は取り消されるべきである。 (一) 国税庁からの「債権放棄による無税償却」の指導税務当局から示された見解に従って納税者が確定申告を行った場合は、「正当な理由」が認められる典型的な場合の一つであるが、原告による平成八年三月期に係る本件確定申告は、以下に述べるとおり、税務当局である国税庁の指導に従ってなされたものであり、原告が本件債権に係る損失を損金として申告したことには「正当な理由」が認められる。 すなわち、原告が、平成八年一月一〇日、一二日及び一八日の三回にわたって、国税庁課税審理課のP6企画専門官を訪ねた際、P6専門官は、P7税理士や原告の幹部職員らに対して、本件債権の全額を損金算入するためには、「債権放棄をした上で、寄附金非該当で処理するのがベストだと考えている。」、あるいは「債権放棄をするのが万全」などと述べて、原告に対して、本件債権の全額を債権放棄すればその全額の損金算入が認められる旨の見解を示して、「債権放棄による無税償却の方法」を強く指導したのである。 P6専門官は、国税当局における住専向け債権の税務処理の担当官であり、このような課税の責任ある立場にある者による指導に従った場合は、「正当な理由」が認められるべき場合の典型である。 また、三回目に行われた同月一八日の面談において、P6専門官は、原告が当時懸念していたさまざまなリスクに対しては、「債権放棄に条件を付けて工夫することもあるんではないか。」と述べて、債権放棄に解除条件を付することを助言し、さらに同年三月一五日に、原告がP6専門官に解除条件付債権放棄の税務上の処理について照会した際にも、同専門官から「そのような条件が付いていても、税務上は有効である。損金算入には差し支え とを助言し、さらに同年三月一五日に、原告がP6専門官に解除条件付債権放棄の税務上の処理について照会した際にも、同専門官から「そのような条件が付いていても、税務上は有効である。損金算入には差し支えがない」と回答されたのである。 したがって、原告としては、よもや後日「解除条件を付したこと」を理由に、本件債権に係る損失の損金算入を否認されるとは全く予想だにし得なかったのである。 加えて、同年二月二八日には、国税庁のP8課税部法人税課長及びP9国税審議官という国税庁の幹部から、原告のP10経理部長に対して、いわゆる無税三要件が示され、その中で、「債権者が機関決定をなし、母体行債権の全額放棄を行うこと」が無税償却の「要件」であると伝えられ、改めて「債権放棄による無税償却の方法」の採用を求められたのである。しかも、同年三月一二日と一五日の二度にもわたって、原告のP11経理部税務室長は、P8課長より、かかる見解に変更がない旨の確認を得ている。 その後、平成八年三月末までに、国税庁が原告に対して「債権放棄による無税償却」の方針が変更されたことを伝達した事実は一切存在しない。 以上の点からすれば、原告が本件債権額を損金として申告したことに「無理からぬ事情」が認められることは明らかである。 (二) 本件債権放棄が「国策」に基づくものであったこと原告による本件債権放棄は、平成七年一二月一九日の本件閣議決定に明文化された「母体行の債権全額放棄」という政府の方針に沿ったものである。このような私企業に対して向けられた特定の具体的行為を実行すべき旨の明示的な政府の方針は、当時の社会情勢からみて、母体行にとっては極めて強い重みをもって受けとめざるを得ないものであり、金融の非常事態における一種の「国策」であり、銀行としてはこれを真摯に受けとめざるを得ないもの 方針は、当時の社会情勢からみて、母体行にとっては極めて強い重みをもって受けとめざるを得ないものであり、金融の非常事態における一種の「国策」であり、銀行としてはこれを真摯に受けとめざるを得ないものであった。 行政権行使に際しての内閣と行政各部の一体性確保の原則に基づいて、税務当局は本件閣議決定において示された方針に適合するように通達を解釈運用することが求められているのである。したがって、原告が本件債権に係る損失について、税務当局も損金算入を当然認めるであろうことを確信したことは、ごくごく自然なことであり、「無理からぬ事情」が明らかに認められるのである。 のみならず、原告は、大蔵省から、平成八年二月からの母体行代表者会議の場や、大蔵省担当官と原告幹部職員との面談等の場において、本件閣議決定に沿った債権放棄を率先して行うよう、直接に指導を受けていた。例えば、第三回母体行代表者会議では、大蔵省から「各金融機関が平成八年三月中に法的・実体的な準備のうえ機関決定を行い、債権放棄を実行する」よう強く指導され、また、同年三月一二日には、大蔵省から原告に呼出しがあり、債権放棄を改めて強く慫慂されたのである。 本件閣議決定に基づく「国策」の遂行に当たって、銀行を監督する金融行政当局は、税務当局との連帯の上で、いわば「政府が一丸となって動いている」ものと、ごく自然に受けとめられていたのであり、内閣の統轄下にありかつ大蔵大臣の指揮下にある国税庁(国家行政組織法一条及び一〇条)が、閣議決定や大蔵省の要請を無視して、本件債権放棄に係る損失の損金算入を否認するとは全く予期し得なかったのである。 (三) 国税庁の対応が不当であったことについて被告は、原告と「通常の意味における『折衝』を行ったことはない」などとして、あたかも「債権放棄による無税償却」を指導した 予期し得なかったのである。 (三) 国税庁の対応が不当であったことについて被告は、原告と「通常の意味における『折衝』を行ったことはない」などとして、あたかも「債権放棄による無税償却」を指導した事実などないかのように主張している。 しかし、一私企業が巨額の債権放棄を行おうとするときに、念のために税務当局の見解を確かめておきたいと考えるのは当然のことであり、現に原告は数度にわたって国税庁にその見解を問うたのである。それにもかかわらず、そのような原告からの真摯な照会に対して、税務当局が明確な回答を留保して「あいまいな姿勢」に終始しておきながら、後になって、その「あいまいな姿勢」によるつけを、加算税という形で納税者の負担に帰すことは断じて許されない。前述のように、政府の方針に従って債権放棄の手続を採ろうとしている原告に対して、「不安と考えるならば取り敢えず損金に算入しないで申告せよ」というような、リスクを専ら納税者に負わせる態度を税務当局がとることは、税務当局が「税務行政の公正な運営を図り、もって国民の納税義務の適正かつ円滑な履行に資する」旨の責務を負っている(国税通則法一条)ことからしても、納税者の真摯な態度を考えた場合に、到底許されることではない。 このような場合には、比較衡量の観点よりして、まさに、加算税を課すことが「不当又は酷」と見られる場合に該当するというべきであり、「正当な理由」が認められることは明らかである。 (被告の主張)本件確定申告に「正当な理由」(国税通則法六五条四項)があるとの主張は、その基礎とするP6専門官やP8課長との面接の状況等の事実関係を自己の意見と整合するように歪曲し、あるいは誤解ないし曲解したところに基づくものであり、真実の事実関係を前提とすると、本件確定申告について「正当な理由」があるということ との面接の状況等の事実関係を自己の意見と整合するように歪曲し、あるいは誤解ないし曲解したところに基づくものであり、真実の事実関係を前提とすると、本件確定申告について「正当な理由」があるということはできない。 (一) 原告が本件解除条件付債権放棄に基づき本件確定申告に至った事情原告が解除条件を付して本件債権放棄をし、本件確定申告に至った経緯は次のとおりであった。 (1) 原告は、平成七年九月、住専処理の機運が高まる中、平成八年三月期決算からは本件債権を含む対住専金利減免債権についても不良債権として開示することを求められるに至ったが、原告の対住専債権は巨額であり、右開示をすると、従前の決算において計上してきた貸倒引当金の額が商法に違反しており、引当不足であるとの指摘を受ける可能性があったことから、同事業年度の決算において、本件債権を損金に計上して償却し、決算において開示する不良債権の額を減少させようと考えた。 (2) そこで、原告は、平成八年一月、債権放棄を行うことなく本件債権の全額を平成八年三月期の決算において貸倒損失として計上し、平成八年三月期の確定申告においても損金に算入することを意図して処理案を作成し、右処理案について国税庁審理室の理解を得ようと考え、P6専門官に面接して文書等により説明したが、平成八年一月の三回にもわたるP6専門官との面接によっても、P6専門官からは「本件債権は貸倒れに当たらないし、その損金算入が認められる場合としては、債権放棄をした上で法基通九ー四ー一が適用されることしかあり得ない」旨の説明しか得られなかった。 (3) このため、原告は、国税庁審理室の理解を得ることを諦め、二月末、直接の担当ではないことを知りながら、P8課長に接触し、なおも、本件債権が貸倒れに当たる旨を説明し、理解を求めようとしたが、P8課長 ) このため、原告は、国税庁審理室の理解を得ることを諦め、二月末、直接の担当ではないことを知りながら、P8課長に接触し、なおも、本件債権が貸倒れに当たる旨を説明し、理解を求めようとしたが、P8課長からは、法基通九ー四ー一の適用要件についての説明を受け、かつ、債権償却特別勘定の設定についても通常の手続(金融証券検査官の償却証明に係る手続)を必要とするであろうことを説明されるに止まった。 (4) 右(2)及び(3)の面接等の結果を踏まえ、原告は、債権放棄をせずに平成八年三月期の決算において本件債権を損金に算入しても、それを基礎として確定申告をすれば、税務上は国税当局から損金算入を否認される可能性が高いとの認識に至ったが、当時、原告は、平成八年三月期の決算における本件債権の損金算入を予定して、既に株式のクロス売買により多額の「益出し」を行っており、同事業年度の確定申告において本件債権を損金に算入できないときには、多額の課税負担が生じることが予想される状況にあった。 (5) 原告は、本件債権を税務上損金に算入するために債権放棄をすることもやむを得ないと考えるに至ったが、平成八年三月の段階では、未だ政府の住専処理案は実行に移されるに至っておらず、これが実行に移される前に先行して債権放棄を行うことは、「法的整理の場合のプロラタ負担との比較において会社に損害を与えた」等の株主代表訴訟を招く恐れも懸念された。原告が当初考案した債務免除の予約も、そのための方策であったが、この方策についてはP6専門官から平成八年三月期での損金算入を明確に否定されていた。 そこで、原告は、代表訴訟を牽制しつつ、本件債権を平成八年三月期の損金に算入する最後の方法として、解除条件を付して本件債権を放棄することにより、万が一、政府の住専処理案が実現せず法的整理に移行する場合には 、原告は、代表訴訟を牽制しつつ、本件債権を平成八年三月期の損金に算入する最後の方法として、解除条件を付して本件債権を放棄することにより、万が一、政府の住専処理案が実現せず法的整理に移行する場合には、プロラタ負担となり得る形で、本件債権額を税務上損金に算入する途を拓こうと考えた。 (6) しかし、原告は、解除条件付債権放棄という処理策を、国税当局関係者に説明したり、意見を求めることはしなかった。これは、原告としては、本件債権額を税務上平成八年三月期の損金に算入することが認められない可能性もあると判断していたが、仮に解除条件付債権放棄による処理が国税当局に否認されたとしても、これを実行しないわけにいかなかったことから、意見を求める必要はなく、却って予め否定的見解を伝えられる可能性もあったことから、むしろ意見を求めない方が相当であると判断したことによるものと思われる。 (7) そして、原告は、国税当局から税務上の損金算入を否認される可能性もあることを予測しつつ、平成八年三月二九日、本件解除条件付債権放棄を敢行し、これを不良債権の額に算入しない平成八年三月期決算を行い、同年四月一九日にはP7税理士を通じてP6専門官から疑問を呈され、これが否認される可能性を具体的に認識しつつ、あえて本件債権額を損金に算入し、本件確定申告を行ったのである。 (二) 国税庁からの「債権放棄による無税償却」の指導を根拠とする主張について原告が主張するP6専門官の助言及び確認の事実はなく、原告が解除条件を付して本件債権を放棄し、平成八年三月期の決算において本件債権を損金に算入し、これに基づいて本件確定申告をしたのは、代表訴訟を牽制しつつ税務上も平成八年三月期にこれを損金に算入するという原告自身の都合によるものにすぎず、しかも、原告は、右損金算入が国税当局によって否認 し、これに基づいて本件確定申告をしたのは、代表訴訟を牽制しつつ税務上も平成八年三月期にこれを損金に算入するという原告自身の都合によるものにすぎず、しかも、原告は、右損金算入が国税当局によって否認される可能性を予測していたが、それが原告にとって最後の方法であったため、あえて国税当局に説明せず、意見も求めないままに、本件解除条件付債権放棄を行い、平成八年四月一九日にはP7税理士を通じてP6専門官から疑問を呈されたことにより、否認される可能性を具体的に認識しつつ、本件確定申告をしたものである。 右のような事情によれば、本件債権額の損金算入が否定されたとしても、原告が本件債権額を損金として申告したことに「無理からぬ事情」があるなどとは到底いえないことが明らかであるから、国税庁の指導を理由として「正当な理由」があるとの原告の主張は、失当である。 (三) 「国策」に従ったとの主張について原告が本件解除条件付債権放棄をするに至った事情は、右(一)記載のとおりと考えられるのであって、原告は、代表訴訟を牽制しつつ平成八年三月期に本件債権を損金に算入するという自己の都合によって、本件解除条件付債権放棄を行ったにすぎず、本件債権放棄が「国策」に合致するからこれを行ったものではない。 また、政府の住専処理案が「国策」であったというのは、日本の金融システムに対する内外からの信用を維持するということであって、それは同時に原告の利益に他ならない。にもかかわらず、あたかも自己の利益とは離れて、ただ「国策」に合致するためにやむなく本件債権放棄を行ったかのような主張は失当であるし、一歩譲って、原告が、自己の利益と離れて、ただひたすら「国策」に合致するからこそ、やむなく本件解除条件付債権放棄を行ったという場合であっても、それが「国策」に従ったとの理由のみで、「正当 であるし、一歩譲って、原告が、自己の利益と離れて、ただひたすら「国策」に合致するからこそ、やむなく本件解除条件付債権放棄を行ったという場合であっても、それが「国策」に従ったとの理由のみで、「正当な理由」が認められることにはならない。 (四) 国税当局の対応が不十分であったとの主張について原告は、国税当局の対応が不十分であったことから、正当な理由があるかのように主張するが、当時住専問題に係る税務処理の相談窓口であった国税庁審理室は、P6専門官をして、原告からの相談に対応し、貸倒れとして処理するという原告の処理案を否定するとともに、本件債権の損金算入が認められる場合としては、「債権放棄の上、法基通九ー四ー一を適用する」旨の基本的考え方を明確に、かつ、三回にもわたって繰り返し丁寧に説明し、また、政府案に係る予算案等の成立前に行われる債権放棄が政府案に沿った処理であるというためには、関係者の合意が必要であり、母体行の債権放棄の時期がバラバラであるような場合、政府案に沿った処理とはいえなくなる可能性もあって、その場合の税務上の取扱いについては、個別に判断することとなること等を説明し、さらに、同専門官の個人的な意見としてではあるが、「万一、政府案が実行され得ないという状況に立ち至った場合において、仮に原告が単独で債権放棄を行おうとする場合に、法基通九ー四ー一を適用するためには、JHL社の処理について当該債権放棄を含む独自の処理スキームを用意するという覚悟が必要になるであろうということ」及び「その場合には、当該独自の処理スキームによる債権放棄自体について法基通九ー四ー一の『相当な理由』の存否について個別判断されることになるが、これを『政府案に沿ったものでないから』ということのみで、寄附金課税することは困難であろう」ということまでをも述べているの 法基通九ー四ー一の『相当な理由』の存否について個別判断されることになるが、これを『政府案に沿ったものでないから』ということのみで、寄附金課税することは困難であろう」ということまでをも述べているのである。 ところが、原告は、P6専門官が右のように真摯に原告側の説明に対応していたにもかかわらず、解除条件付与に関して説明することも意見を求めることもなく、本件解除条件付債権放棄をしたもので、国税庁審理室は、平成八年三月二九日に原告から追加的に提出された債権放棄約定書(案)の写しによって初めて原告の債権放棄に「解除条件」が付されていることを知ったのであるから、本件確定申告が、国税当局のあいまいな対応によってなされたということは到底できない。 したがって、国税当局の対応が不十分であったために申告の適法性を事前に確認できなかったかのような原告の主張は当を得ない。 第三当裁判所の判断一事実関係前記第二の一の前提となる事実に証拠(甲二四九、四二六、四三四、六〇四のほか文中に掲記した書証、証人P10、証人P12)及び弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実が認められる。 1 JHL社の設立の経緯及び原告との関係(一) JHL社の設立の経緯JHL社は、本件母体五社(原告、日債銀、大和証券、日興誰券及び山一誰券)、大蔵省出身のP13、原告出身のP14及び日債銀出身のP15の合計八名が発起人となり、不動産、不動産に関する権利又は有価証券を担保とする住宅資金貸付等を事業目的として、昭和五一年六月二三日に成立した株式会社であり、設立に際して発行された株式総数一六〇万株(額面金額五〇〇円)のうち八○万株を発起人が引き受け、その余の八〇万株は発起人以外の関係先金融機関等四三社がそれぞれ引き受けた(甲一三、一四の1、一五、一九)。発起人が引き受けた八〇万株の 〇万株(額面金額五〇〇円)のうち八○万株を発起人が引き受け、その余の八〇万株は発起人以外の関係先金融機関等四三社がそれぞれ引き受けた(甲一三、一四の1、一五、一九)。発起人が引き受けた八〇万株の内訳は、本件母体五社がそれぞれ一五万九〇〇〇株(引受価額各七九五〇万円)、P13が三〇〇〇株(引受価額一五〇万円)、P14及びP15がそれぞれ一〇〇〇株(引受価額各五〇万円)である(甲一五)。 JHL社は、右のとおり住専の一社として設立されたものであり、広義での貸金業を営むことを目的とするものであるが、その設立当時には貸金業の規制等に関する法律は制定されておらず、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律(昭和五八年法律第三二号による改正前のもの)七条及び八条により大蔵大臣の監督を受けており、貸金業の規制等に関する法律制定後も同法の規制の対象とはならず(同法二条一項五号、同法施行令一条四号)、同法附則九条により、従来どおり大蔵大臣の監督を受けることとされ、一般の貸金業者とは異なった取扱いを受けている。 (二) 原告とJHL社との関係(1) 原告の出資比率本件母体五社のJHL社に対する出資比率は、JHL社設立時においては、右(一)記載の株式の引受数から明らかなとおり、それぞれ九・九四パーセントであったが、株式譲渡により、一律に、昭和五一年九月には六・五六パーセント、同年一二月には五・八八パーセント、昭和六二年一〇月には五・〇〇パーセントになり、その後は、JHL社において三度にわたって増資が行われたものの(甲一四の1)、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律一一条(昭和五二年法律第六三号による改正後のもの。以下「独占禁止法」という。)により、金融業を営む会社は、他の国内の会社の株式をその発行済の株式総数の一〇〇分の五を超えて所 取引の確保に関する法律一一条(昭和五二年法律第六三号による改正後のもの。以下「独占禁止法」という。)により、金融業を営む会社は、他の国内の会社の株式をその発行済の株式総数の一〇〇分の五を超えて所有することはできないとされていることから、変動していない(甲一八)。 ただし、本件母体五社と関係の深い会社を含めた原告グループ(原告、興和不動産株式会社、興銀リース株式会社、新日本証券株式会社、和光証券株式会社、岡三証券株式会社、水戸証券株式会社、丸和証券株式会社及び日本協栄証券株式会社)、日債銀グループ(日債銀、日本地所株式会社、クラウンリーシング株式会社及び福山証券株式会社)、大和証券グループ(大和証券、大和ビルヂング株式会社、大興電子通信株式会社及びユニバーサル証券株式会社)、日興證券グループ(日興證券、日興ビルデイング株式会社、東洋証券株式会社、偕成証券株式会社及び東京証券株式会社)及び山一證券グループ(山一證券、山一土地建物株式会社、太平洋証券株式会社及び中央証券株式会社)のJHL社に対する出資比率(百分率)は、以下のとおりであった(甲一八)。 原告日債銀大和証券グループグループグループ昭和五一年六月一八・四四% 九・九四% 九・九四%昭和五一年九月一三・三七% 六・五六% 六・五六%昭和五一年一二月一二・六九% 五・八八% 五・八八%昭和五四年三月一二・〇七% 五・八八% 五・八八%昭和五五年三月一一・四四% 五・八八% 五・八八%昭和六二年一〇月一〇・五〇% 五・〇〇% 五・〇〇%平成元年三月一二・〇〇% 五・八〇% 五・四〇%平成五年一〇月一七・六五% 一五・七七% 一五・七一% 昭和六二年一〇月一〇・五〇% 五・〇〇% 五・〇〇%平成元年三月一二・〇〇% 五・八〇% 五・四〇%平成五年一〇月一七・六五% 一五・七七% 一五・七一%日興證券山一證券グループグループ昭和五一年六月一〇・四四% 一〇・四四%昭和五一年九月七・〇六% 七・〇六%昭和五一年一二月六・三八% 六・三八%昭和五四年三月六・三八% 六・三八%昭和五五年三月六・三八% 六・三八%昭和六二年一〇月五・五〇% 五・五〇%平成元年三月六・〇〇% 五・八〇%平成五年一〇月一五・八八% 一五・八二%(2) 原告のJHL社に対する役員及び従業員の派遣状況JHL社に対しては、本件母体五社がそれぞれ役員及び従業員を派遣していた(甲一六、二一、二二)。 JHL社においては、設立から昭和五六年六月まで大蔵省出身のP13が、同月から平成四年六月まで原告出身のP14が、同月からJHL社が解散する平成八年九月一日まで原告出身のP16がそれぞれ代表取締役社長を務めていた(甲一四の1ないし21、一六)。その他、本件母体五社は、JHL社の副社長、専務、常務、取締役、監査役等の役員を派遣しており、JHL社の役員はほとんどが本件母体五社の出身者で占められ、JHL社の従業員から役員になった者は、昭和六二年六月二三日から平成二年六月二五日まで取締役の地位にあり、同日からは常務取締役の地位にあったP32、平成五年六月二三日から取締役の地位にあったP17及び平成七年六月二八日から取締役の地位にあったP18の三人にすぎなかった(甲六の40、41、一四の1ないし21、一六)。また、原告は、常時、JHL社に、常務取締役、取締役などの役員を送っていた(甲 び平成七年六月二八日から取締役の地位にあったP18の三人にすぎなかった(甲六の40、41、一四の1ないし21、一六)。また、原告は、常時、JHL社に、常務取締役、取締役などの役員を送っていた(甲六の40、41、一四の1ないし21、一六)。 JHL社の従業員数は、男子が一六名ないし二四九名(平均約一七四・四名)、女子が一一名ないし二三六名(平均約一六二・七名)、総従業員数が二七名ないし四六五名(平均約三三七・一名)であったところ、本件母体五社は、JHL社に対し、設立時から解散に至るまで、一五名ないし五二名の男子従業員を出向させており、その内訳は、原告が、四名ないし三〇名(平均約一三・二名)、日債銀が五名ないし一三名(平均約九名)、大和証券が二名ないし六名(平均約四・六名)、日興證券は一名ないし五名(ただし、平成七年九月以降はなし。平均約三・六名)、山一證券が一名ないし六名(平均約四・一名)となっていた(甲二一)。 (3) 原告のJHL社に対する資金貸付JHL社は、銀行等の金融機関から融資を受け、それを貸し付けるという営業形態をとっていたところ、昭和五二年三月期ないし平成七年三月期までの各期末における総借入残高及び原告からの借入残高は次のとおり推移した(甲二三の1ないし3)。 原告からの借入残高総借入残高昭和五二年三月期末七三億円一八三億円昭和五三年三月期末四〇九億円一二三三億円昭和五四年三月期末六九六億円二一二九億円昭和五五年三月期末八八六億円二八一八億円昭和五六年三月期末一一四一億円三七六三億円昭和五七年三月期末一三四三億円四七八三億円昭和五八年三月期末一四五六億円五六四〇億円昭和五九年三月期末一五六一億円六 五六年三月期末一一四一億円三七六三億円昭和五七年三月期末一三四三億円四七八三億円昭和五八年三月期末一四五六億円五六四〇億円昭和五九年三月期末一五六一億円六四九二億円昭和六〇年三月期末一六五三億円七五二七億円昭和六一年三月期末一八〇〇億円八一九六億円昭和六二年三月期末一九六〇億円一兆〇三七七億円昭和六三年三月期末二二七三億円一兆二五九二億円平成元年三月期末二九一五億円一兆四八八五億円平成二年三月期末三五四二億円二兆一二九〇億円平成三年三月期末三七〇七億円二兆五三八〇億円平成四年三月期末三七九一億円二兆六五七一億円平成五年三月期末三七九一億円二兆五四四五億円平成六年三月期末四〇一一億円二兆五三一三億円平成七年三月期末四〇六一億円二兆五一八三億円原告のJHL社に対する貸付高は、昭和五二年三月期末ないし昭和五四年三月期末においては原告とともにJHL社の母体行であった日債銀と同額であったが、それ以降は、JHL社に対して融資をしている金融機関のうちで原告の貸付高が最も多額であり(甲二三の1ないし3)、その額は、後にJHL社とともに破綻処理がされた住専六社に対するその母体行の貸付額と比較しても最も多額であったし、原告のJHL社を含む住専七社に対する貸付高もまた、単独の金融機関としては最も多額であった(甲四六〇)。 2 JHL社の債務に対する原告の保証と集合債権譲渡担保への切替え(一) 非母体金融機関(当該住専の母体となっている金融機関以外の金融機関を指す。以下同じ。)のJHL社に対する融資についての原告の保証JHL社は、設立初年度である昭和五二年三月末現在において、生命保険会社一五社(合計約二五億円)、損害保 ている金融機関以外の金融機関を指す。以下同じ。)のJHL社に対する融資についての原告の保証JHL社は、設立初年度である昭和五二年三月末現在において、生命保険会社一五社(合計約二五億円)、損害保険会社一九社(合計約一〇億円)及び信託銀行二行(合計約三億円)から、総額約三八億円の融資を受け、その後も母体行以外の金融機関からの借入れを拡大していった(甲二三の1ないし3)。 右のような非母体金融機関からのJHL社への融資については、融資開始当初から、融資が系統によるものであるか系統以外の非母体金融機関(以下、当該住専との関係で「一般行」という。)であるかを問わず、JHL社の母体行である原告及び日債銀が原則として各五〇パーセントの分担率により、一律にその返済を保証していた(甲二三の4、三五、三六)。 なお、昭和五七年法律第七七号による改正前の農業協同組合法一〇条八項及び九項(現行の一〇条一九項及び二二項)は、農業協同組合及び農業協同組合連合会に対して、原則として組合員以外に対する資金の貸付を組合員に対する貸付の五分の一以内に限定しつつ、「銀行その他の金融機関に対する資金の貸付」等については例外的に組合員のためにする事業の遂行を妨げない限度において右の規制を適用しないこととしていたが、住専は、昭和五五年に右にいう「その他の金融機関」に指定され、これにより、信連等による住専に対する貸付が右の規制の適用を受けず原則として自由に行えることとなった(昭和五五年一〇月一六日大蔵省銀行局長通達(蔵銀第二五三三号)、同日農林水産省経済局長通達(農経A第一四三五号))。 また、平成四年法律第八七号による改正前の農業協同組合法一〇条の五(現行の一一条の七)及び「農業協同組合及び農業協同組合連合会の共済事業に係る財産の運用方法を定める省令」三条は、全共連及び共 ))。 また、平成四年法律第八七号による改正前の農業協同組合法一〇条の五(現行の一一条の七)及び「農業協同組合及び農業協同組合連合会の共済事業に係る財産の運用方法を定める省令」三条は、全共連及び共済連の財産の運用方法を原則として金融機関に対する貸付等に限定しつつ、金融機関等以外の法人に対する貸付については農林水産大臣が指定する債権を担保とするものや金融機関によって保証されることとなっているもの等に限り例外的に認めることとしていたが、昭和五六年に、右の規制の例外として認められる農林水産大臣が指定する債権を担保とする金融機関等以外の法人に対する貸付として、貸付対象法人が締結した金銭消費貸借契約に基づく住宅ローン債権を担保とする住専に対する貸付が指定され、これにより、住専に対する貸付については、その住宅ローン債権を担保とする限り、金融機関による保証なしでも自由に行えることとなった(昭和五六年一二月二八日農林水産省事務次官依命通達(農経A第一五〇八号)、同日同省経済局長通達(農経A第一五一一号))。このような規制の緩和に伴い、系統のJHL社に対する融資も順調に拡大していくこととなった(甲二三の1ないし3)。 (二) 原告の保証から集合債権譲渡への切替え大蔵省銀行局長は、大光相互銀行の七四〇億円にのぼる債務保証の未計上が明らかになったことを受けて、昭和五四年五月二一日、「金融機関の債務保証のあり方について」と題する通達を発した(蔵銀第一一五二号)。右通達は、「金融機関の債務保証のあり方については、従来より、その適正を期するよう指導してきたところであるが、最近、一部の金融機関において、安易な債務保証を行った結果、経営の健全性を著しく損ねた事例が見受けられた。」「ついては、このような事例にもかえりみ、この際、債務保証のあり方について、下記の点に るが、最近、一部の金融機関において、安易な債務保証を行った結果、経営の健全性を著しく損ねた事例が見受けられた。」「ついては、このような事例にもかえりみ、この際、債務保証のあり方について、下記の点に一段と配慮され万全を期されたい。」とした上で、「1 債務保証を行うに際しては、債務者に対する事前審査を十分に行い、いやしくも債務保証が安易に流れることのないよう配慮すること。」、「2 債務保証については、その量が過大になることのないように配慮し、例えば、預金・貸出金等との適正な均衡を保持するよう努めること。」、「3他の金融機関の保証を得て貸出金を実行する場合にも、通常の貸出金を実行する場合に準じた審査、管理体制を保持するよう配意すること。」とした(甲三七)。 右の通達を契機として、住専各社は、前記(一)の保証方式から、住専が保有する貸付債権に関する債権譲渡担保を準共有する方式に順次切り替え、JHL社も、信用力の向上及びJHL社の旺盛な資金需要に対する母体行の保証枠の限界等を理由として、当時まだ住宅ローン債権担保による住専への貸付が認められていなかった全共連及び共済連を除き、JHL社に対する非母体金融機関からの貸付の担保方法に関し、従来の母体行による保証方式から集合債権譲渡担保の準共有持分権保有方式への切替えが行われることとなった。集合債権譲渡担保の準共有持分権保有方式の契約は、昭和五五年二月二九日、まず、母体行である原告及び日債銀を含むJHL社に対して融資をしている金融機関(ただし、全共連及び共済連を除く。)六八社(以下「原協定参加者」という。)とJHL社との間で、JHL社が原協定参加者に対して現在並びに将来負担する一切の債務の担保として、JHL社が現に有し並びに将来取得する住宅ローン債権並びにこれに付帯する一切の債権を原協定参加者に対し JHL社との間で、JHL社が原協定参加者に対して現在並びに将来負担する一切の債務の担保として、JHL社が現に有し並びに将来取得する住宅ローン債権並びにこれに付帯する一切の債権を原協定参加者に対して譲渡し、原協定参加者が右の集合債権譲渡担保を準共有によって取得するとの契約(以下「第一次債権譲渡担保契約」という。)を原告が原協定参加者を代理する形で締結し(甲三九)、次に、原告を除く原協定参加者の代理人である日債銀、協定幹事である原告及びJHL社の三者間で、第一次債権譲渡担保契約により取得した集合債権譲渡担保を原協定参加者の間で準共有する旨を定める「担保に関する協定書」をそれぞれ締結すること(甲二五)によって実現された(以下、この「担保に関する協定書」を「第一次担保協定」といい、第一次債権譲渡担保契約及び第一次担保協定により形成された集合債権譲渡担保の準共有持分権を取得するというスキームを「第一次担保協定スキーム」という。)。これ以降の原協定参加者からのJHL社に対する融資に関しては、集合債権譲渡担保の準共有持分権保有方式が適用されることとなり、それ以前の母体行の保証の下で行われた個別の貸出については、そのそれぞれの満期到来とともに順次いったん弁済がされた結果、母体行による保証は順次解消され、昭和六二年三月ころまでには、原協定参加者のJHL社に対する融資に係る母体行による保証は集合債権譲渡担保の準共有持分権保有方式へと切り替わり、消滅した(甲二三の4)。なお、第一次担保協定スキームが成立した後、前記(一)のとおり、昭和五六年に全共連及び共済連についても住専に対して住宅ローン債権を担保として行う貸付が認められたことから、全共連及び各共済連が順次これに加入したほか、いくつかの金融機関が第一次担保協定スキームに加わった(甲二六)。 その後、 いても住専に対して住宅ローン債権を担保として行う貸付が認められたことから、全共連及び各共済連が順次これに加入したほか、いくつかの金融機関が第一次担保協定スキームに加わった(甲二六)。 その後、第一次担保協定スキームへの追加的参加者が増加したことから、平成二年一一月三〇日に、母体行である原告及び日債銀を含むJHL社に対して融資をしている金融機関一六八社(以下「第二次協定参加者」という。)とJHL社との間で、原告が第二次協定参加者を代理する形で、第一次債権譲渡担保契約とほぼ同内容の契約(以下「第二次債権譲渡担保契約」という。)が締結され(甲四〇)、さらに、同日、原告を除く第二次協定参加者の代理人である日債銀、協定幹事である原告及びJHL社の三者間において、第一次担保協定とほぼ同内容の「担保に関する協定書」が締結された(甲二七。以下、この「担保に関する協定書」を「第二次担保協定」といい、第二次債権譲渡担保契約と第二次担保協定により形成された集合債権譲渡担保の準共有持分権を取得するというスキームを「第二次担保協定スキーム」という。)。さらにその後、平成三年三月一八日、JHL社に対して新たに融資をすることとなった非母体金融機関二八社が第二次担保協定スキームに追加的に加入した。 3 JHL社を含む住専の経営状態の悪化と大蔵省による第一次立入り調査(一) 住専各社の経営状態の悪化昭和五〇年代後半から、都銀等が個人向け住宅ローンに力を入れるようになり、個人住宅ローン市場における金融機関相互の競争が激化するとともに、顧客の金利先行が一層強まるようになった。その結果、貸付資金の調達を銀行等の民間金融機関からの借入れに依存するとともに営業店舗数も限られていた住専各社は、金利及び営業力の両面において競争力を欠くに至り、優良顧客を借入金利がより低い住宅 。その結果、貸付資金の調達を銀行等の民間金融機関からの借入れに依存するとともに営業店舗数も限られていた住専各社は、金利及び営業力の両面において競争力を欠くに至り、優良顧客を借入金利がより低い住宅金融公庫や都銀等に奪われた(甲二九、四二、四六九)。その結果、住専八社の個人向住宅信用供与残高(住専各社の合計額)は、昭和六〇年度まで拡大を続け三兆五〇七三億円(銀行等を含めた全体に占める割合五・二パーセント)にまで達していたが、昭和六一年度から平成六年度にかけて、三兆〇五七七億円(同四・二パーセント)、二兆七〇二六億円(同三・四パーセント)、二兆五〇四二億円(同二・八パーセント)、二兆六四三三億円(同二・七パーセント)、二兆八四二九億円(同二・六パーセント)、二兆八四四〇億円(同二・四パーセント)、二兆六九九〇億円(同二・二パーセント)、二兆五五五一億円(同一・九パーセント)、二兆四〇二五億円(同一・七パーセント)へと、低下に転じた(甲六の5、19)。 このような状況から、住専各社は、不動産会社等の事業者向け融資を拡大し始め(甲二九、四二)、昭和五〇年度には二九億円、昭和五五年度には一八○四億円であった住専八社の事業向け融資残高は、昭和六〇年度には一兆八六六二億円、昭和六一年度には二兆九五四九億円、昭和六二年度には四兆二三五八億円、昭和六三年度には五兆三六一九億円、平成元年度には八兆一一八三億円、平成二年度には一〇兆二三三六億円、平成三年度には一〇兆一四五六億円へと増加した(甲六の5、19)。このように、平成二年度末には、事業者向け融資の残高が前年度末に比べて二兆円余りも増加しているが、このころは地価が全国的にみてピークに達しようとしている時期に当たる。大蔵省銀行局においては、それ以前にも金融機関に対して投機的土地取引等に係る融資を厳に排除 度末に比べて二兆円余りも増加しているが、このころは地価が全国的にみてピークに達しようとしている時期に当たる。大蔵省銀行局においては、それ以前にも金融機関に対して投機的土地取引等に係る融資を厳に排除するよう求めていたが、同年三月二七日付けで各金融機関代表者に宛てて「土地関連融資の抑制について」と題する局長通達(蔵銀第五五五号)を発し、当面、不動産業向け貸出については、その増勢を総貸出の増勢以下に抑制することを目途とすること、及び不動産業、建設業及びノンバンクの三業種に対する融資の実行状況を報告することを傘下の金融機関に周知徹底するように求めた(甲六の9)。このいわゆる総量規制によって、一般金融機関については不動産業向け融資の増加が抑制されたが、右通達の対象外であった住専は引き続き事業者向け融資を拡大していたのである。また、系統の住専向け融資額は、平成二年三月末に二兆九〇二五億円であったものが、平成三年三月末には四兆八五九七億円と大幅に増加しており、これらは住専の事業者向け融資の原資に充てられたこととなる(甲六の17、二九)。 また、都銀その他の金融機関は、住専各社に対して、融資先を紹介するいわゆる紹介融資を行い、これに基づく融資額は多額に上り、住専各社の母体行による当該住専に対する紹介融資は、平成七年六月末において一兆七二八六億円に達していたが、その多くは事業者向け融資であった。住専七社の母体行による紹介融資残高は、住専各社の報告によると、債権べース(個々の融資の際に紹介を受けて融資を実行した債権のみを対象として算出したもの)で八九二一億円にのぼり、このうち五一パーセントが回収不能部分と見込まれ、債務者べース(最初の貸付の際に紹介があった債務者への追加融資もすべて紹介融資とみなして算出したもの)では一兆七二八六億円にのぼり、このうち五 ぼり、このうち五一パーセントが回収不能部分と見込まれ、債務者べース(最初の貸付の際に紹介があった債務者への追加融資もすべて紹介融資とみなして算出したもの)では一兆七二八六億円にのぼり、このうち五三・二パーセントが回収不能部分と見込まれていた(甲四五、四六)。 その後、いわゆるバブル経済が崩壊し、株価が下落するとともに地価が下落し、地価は平成三年を頂点に大幅に下落(例えば、平成四年ないし六年の地価下落率は、東京都区部の住宅地においてそれぞれ一三・三パーセント、二二・二パーセント、一四・六パーセントであり、東京都区部の商業地においてそれぞれ八・七パーセント、二二・五パーセント、二三・七パーセントであった。)した(甲二九、四九、五〇)。 右のバブル経済崩壊による地価の下落は、不動産担保融資を主体としていた住専各社の経営に深刻な影響を与え、特に急激に拡大していた事業者向け融資債権の不良債権化をもたらし、平成三年度以降、住専各社の財務状況は急激に悪化することとなった(甲六の32)。 大蔵省は、平成三年八月から平成四年八月にかけて住専各社に対する立入調査(以下「第一次立入調査」という。)を行い、その結果、住専七仕の不良債権総額は合計四兆六四七九億円、不良債権率は約三七・八パーセントであることが判明した(甲二九)。 (二) JHL社の経営の悪化JHL社においても、他の住専各社と同様、都銀等が個人向けローンに力を入れるようになり、優良顧客を住宅金融公庫や都銀等に奪われたため、不動産会社等の事業者向け融資を拡大し始めた。具体的には、JHL社の個人住宅向け融資残高は、昭和五五年度末に三四五〇億円、昭和六〇年度末に五六五八億円、昭和六一年度末に四九九二億円、昭和六二年度末に四四〇〇億円、昭和六三年度末に四五六九億円、平成元年度末に五四〇二億円、平 け融資残高は、昭和五五年度末に三四五〇億円、昭和六〇年度末に五六五八億円、昭和六一年度末に四九九二億円、昭和六二年度末に四四〇〇億円、昭和六三年度末に四五六九億円、平成元年度末に五四〇二億円、平成二年度末に六四四四億円、平成三年度末に七一五〇億円、平成四年度末に七三二五億円、平成五年度末に七〇九五億円、平成六年度末に六六二四億円であって(甲六の19)、民間金融機関全体及び公的機関の合計残高が昭和五五年度に四五兆一五一二億円から一貫して増加し、平成六年度には一四一兆八二四五億円に達していること(甲六の5)と比較して伸び悩んでいた。また、JHL社は、昭和六二年一〇月八日に貸出業務に関する専決権限規定を改定し、住宅ローン以外の事業ローンについて、それまで一年超の中長期ローンの与信残高基準を営業所長一五〇〇万円以下、部店長及び特定営業所長二〇〇〇万円以下、業務部担当役員三〇〇〇万円以下、常務会三〇〇〇万円超とし、一年以内の短期ローンの与信残高基準を部店長及び特定営業所長五〇〇〇万円以下、業務部担当役員一億円以下、常務会一億円超・新規取引先としていたものを、中長期・短期の区分を撤廃し、不動産会社に対するローンの与信残高基準は部店長一億円以下、部店担当役員二億円以下、常務会二億円超・新規取引先とし、不動産会社以外に対するローンの与信残高基準は部店長五〇〇〇万円以下、部店担当役員一億円以下、常務会一億円超・新規取引先とした(甲四七)。さらに、平成元年一一月一日にも同様の改定を行い、法人貸出については、一般事業法人と不動産会社を分け、一般事業法人に対する融資の与信残高基準を部店長一億円以下、部店担当役員二億円以下、,常務会二億円超とし、不動産会社については、さらに拠点会社、戦略会社、育成会社、その他の不動産会社に分類した上で、貸出残高が一〇〇億円 資の与信残高基準を部店長一億円以下、部店担当役員二億円以下、,常務会二億円超とし、不動産会社については、さらに拠点会社、戦略会社、育成会社、その他の不動産会社に分類した上で、貸出残高が一〇〇億円を超えることなどから取引防衛上特別対策が必要な取引先である拠点会社(平成元年一二月二二日に二一社が認定され、平成二年五月一日に更新されて二二社となった。)及び貸出残高が五〇億円を超えることなどから残高の維持拡大を図るべき取引先である拠点会社(平成元年一二月二二日に五二社が認定され、平成二年五月一日に更新されて四三社となった。)については、それぞれ承諾額基準を一般事業法人よりも大幅に緩和した(甲四七、四八)。その結果、JHL社の事業向け融資残高は、昭和五五年度末に四億円であったものが昭和六〇年度末に一二八八億円、昭和六一年度末に三五五五億円、昭和六二年度末に六三一三億円、昭和六三年度末に八六四〇億円、平成元年度末に一兆三二八五億円、平成二年度末に一兆六五三三億円へと増加した(甲六の19)。 その後のいわゆるバブル経済の崩壊により、JHL社の平成三年一一月末の時点での要管理債権は総額一兆二四八二億円であり、総貸出債権二兆四〇二八億円の約五二・〇パーセントを占めることとなった(甲五三)。また、平成四年八月三一日現在をもって調査した大蔵省銀行局の第一次立入調査の結果、総貸付金残高二兆三六三八億円のうち分類額(不良債権額)は一兆二六九四億円で分類率五三・七パーセントであることが明らかとなった(甲五四、七五)。なお、大蔵省銀行局長からJHL社に対して発せられた第一次立入調査の調査報告書によると、貸付金の分類率(不良債権率)が高率となったのは、JHL社が業務の多角化を図るため、地場不動産業者等と合弁会社(五社)を設立するなど、不動産業者に積極的に資金を融 一次立入調査の調査報告書によると、貸付金の分類率(不良債権率)が高率となったのは、JHL社が業務の多角化を図るため、地場不動産業者等と合弁会社(五社)を設立するなど、不動産業者に積極的に資金を融資したが、バブル崩壊により購入物件が販売不振に陥ったこと及び借入過多により債務者の資金繰りがつかなくなったこと等が原因と考えられるとされている(甲五四)。平成二年度には三五億六八〇〇万円あったJHL社の税引前当期利益が平成三年度には五億二四〇〇万円へと減少し、さらに、平成四年度、平成五年度には、それぞれ一五〇億二七〇〇万円、七一億三〇〇〇万円の税引前当期損失を計上するに至った(甲六の39)。 4 第一次再建計画をめぐる交渉経緯等(一) 住専各社の再建計画(第一次)の策定住専各社は、経営状況が悪化したことから、平成三年一〇月から平成四年六月にかけて、それぞれ経費の節減などの自助努力と、母体行による融資の金利の減免及び非母体金融機関による融資の残高維持などを内容とする再建計画を策定した(甲六の23、ないし31、甲六二ないし六九)。 (二) JHL社における第一次再建計画の策定JHL社は、平成四年一月末に、大蔵省から経営再建計画の作成を求められ(甲六〇)、同年二月には平成四年度ないし平成八年度に係る事業計画書の原案を作成し、同年五月には、次のような内容の事業計画書(第一次再建計画)を策定した(甲六の31、六二)。なお、大蔵省から経営再建計画の作成を求められた際、大蔵省側は、住専再建は、母体中心の支援で行うのが原則であるとの発言をした(甲六〇)。 (1) 主要勘定残高を次のとおり推移させ、資産の圧縮を行う。 計画前年度末計画終了年度末(平成四年三月末) (平成九年三月末)貸付金二兆三九〇五億円一兆六五〇二億円 主要勘定残高を次のとおり推移させ、資産の圧縮を行う。 計画前年度末計画終了年度末(平成四年三月末) (平成九年三月末)貸付金二兆三九〇五億円一兆六五〇二億円不動産一八六億円一八億円有価証券九五一億円一五一億円総資産二兆六九九五億円一兆七七四八億円(借入金二兆六五七二億円一兆七三二二億円)(2) 本件母体五社及び非母体金融機関に次のとおり支援を要請する。 ア本件母体五社に、第一次再建計画の計画期間中(平成四年度ないし平成八年度)金利減免を受け、必要資金の追加融資を要請し、また、人員派遣、各種ノウハウの提供、不動産の売却あっせんを要請する。 イ非母体金融機関に、第一次再建計画の計画期間中の融資残高維持及び担保条件の現状維持を要請する。 (3) JHL社は、次のとおりの自助努力を行うとともに、貸出決裁基準を見直すなど信用リスク管理体制を強化する。 ア管理回収業務及び不動産売却あっせん業務の強化並びに取引先不動産会社への対応策検討のための組織強化を行う。 イ人件費、物件費等の経費を極力削減する。 ウ店舗等の見直しを行う。 エ資産の売却を行う。 (三) JHL社に対する融資の回収の動き等第一次再建計画を策定する前後から、住専問題の深刻度が徐々に認識され、一般行及び系統からのJHL社に対する融資の回収ないし保全に向けた動きがみられた(甲七三)。 系統は、福井県信連が平成四年五月一九日にJHL社に対する融資の五月分の借替えについて難色を示し(甲八二)、千葉県信連は同日にJHL社の支援の主体は原告になることを前提として原告が支援する旨の文書を要求し(甲八五)、東京都信連は同月二〇日に融資残高の維持については承諾できるとしたものの残り四〇億円ある第 葉県信連は同日にJHL社の支援の主体は原告になることを前提として原告が支援する旨の文書を要求し(甲八五)、東京都信連は同月二〇日に融資残高の維持については承諾できるとしたものの残り四〇億円ある第二次担保協定スキームに係る譲渡担保の対象外とされている短期貸付金を期限時に同譲渡担保の対象となる中期貸付金に転換してほしい旨要請し(甲八四)、全共連は同月二五日に①第一次再建計画の期間中母体による支援のみで金利減免等はそれ以外の金融機関に及ぼさないこと、②計画通り行った場合の借入金圧縮方法は母体以外を圧縮対象として、例えばシェア割等で行うこと、③第二次担保協定スキームに係る譲渡担保について担保割れが生じた場合は母体行が一部を放棄して担保割れとならないようにすることを確認するように要請する(甲八三)などJHL社に対する融資について回収ないし保全措置を求める姿勢をとつた。 農中も、同年六月には、従来の条件での借替えを拒否し、拘束預金の積み増しを要求した(甲七三)。また、原告に対し、母体がJHL社を支援することを文書で確認したいとの要請を行い、これに対しては、原告側が、文書に代えて母体により口頭で右の旨を表明することを打診し(甲八六)、平成四年七月二九日に、原告のP19常務が農中を訪問し、原告としては、JHL社に対して基本的には母体方式で支援してゆくこと、母体がより重い負担を担うこともあり得ることを説明し、今後も母体としてがんばってゆくので、JHL社が要請している残高維持及び預金開放を依頼した(甲八○、四三四)。このとき、農中側は、面談内容を書面にするように求めたが、原告側がこれを拒否し、農中側が、代替案として、JHL社との間で書面にすると提案したところ、原告側はJHL社と農中の関係で行うことであればJHL社のP16社長と相談されたいと答えたため( に求めたが、原告側がこれを拒否し、農中側が、代替案として、JHL社との間で書面にすると提案したところ、原告側はJHL社と農中の関係で行うことであればJHL社のP16社長と相談されたいと答えたため(甲八○、四三四)、JHL社は、農中に対し、同年八月五日付けで、「今般、貴金庫から改めて、弊社に対する母体支援についてお問い合わせをいただきましたが、先に弊社母体日本興業銀行が母体として弊社を支援する立場を改めて表明しましたように、弊社は、日本興業銀行をはじめ母体各社から母体としての責任あるご支援についてご同意をいただいており、現に実施もされております。今後諸般の事情により母体以外の金融機関のご支援をいただかなければならないような事態に至った場合でも、お取り引き金融機関それぞれの立場を良く認識し、誠意を持ってご相談しながら対応する所存でございますので何卒よろしくお願い申し上げます。」などとする書簡を差し出した(甲八七)。 (四) JHL社の第一次再建計画に対する本件母体二行の対応JHL社は、第一次再建計画において、右(二)(2)のとおり本件母体五社に対する支援を要請することとしていた。そこで、原告は、JHL社の第一次再建計画の推進を支援するたかに、独自に①緊急融資枠一〇〇〇億円の設定、②住宅抵当証券取得限度枠四〇〇億円の設定、③公定歩合(三・二五パーセント)までの金利の減免からなる対応策を策定した上(甲七三)、さらに内部において支援策を作成してJHL社に示し、JHL社は、これに基づいて、同年八月、原告とともにJHL社の母体銀行であった日債銀との間で、①本件母体五社がJHL社の第一次再建計画の円滑な遂行を図るため人的支援、担保物件流動化のための協力を行い、また、非母体金融機関からの借入金の残高を維持するために必要な協力を行うことを主な内容とす ①本件母体五社がJHL社の第一次再建計画の円滑な遂行を図るため人的支援、担保物件流動化のための協力を行い、また、非母体金融機関からの借入金の残高を維持するために必要な協力を行うことを主な内容とする覚書を調印すること、②平成四年上期の金利について公定歩合(年三・二五パーセント)まで減免し、同期中に実質二六億円の支援を行うこと、③つなぎ資金として七〇〇億円を限度に融資を行うこと、④債権譲渡担保の対象となっているJHL社に対する長期貸付の一部を債権譲渡担保の対象とならない短期貸付に振り替えることの四点について交渉を行った(甲七〇の1、2)。これに対して、日債銀は、当時、自社の直系ノンバンク三社に対する支援に精力を傾注している最中であり、JHL社の内容は直系ノンバンクよりも悪いと見受けられるのに母体行であるとして無制限の支援を求められると日債銀自体がもたないとして、支援の内容について何らかの歯止めが必要であるとの考えを示し、右②について平成四年上期についてのみ公定歩合までの金利軽減を実施する、右③について平成四年下期で一〇〇億円を限度に協力をする、右④の短期貸付への振替えには長期貸付のうち弁済期を迎えたものについて応ずるとしたものの、右①の覚書の締結については、自社関連ノンバンク三社について他の金融機関に対して金利減免を要請していることと矛盾するおそれがあるとして、覚書の締結を拒絶した(甲七〇の1、2、七一、七二、七四)。 さらに、本件母体二行は、平成四年三月から平成五年四月にかけて、系統がJHL社に対して有する貸付期間一年以内の短期貸付金(第二次担保協定スキームに係る譲渡担保の対象外とされているもの)を同一年超の中長期債権(第二次担保協定スキームに係る譲渡担保の対象とされているもの)に振り替えると同時に、それと入れ替える形で、本件母体二 担保協定スキームに係る譲渡担保の対象外とされているもの)を同一年超の中長期債権(第二次担保協定スキームに係る譲渡担保の対象とされているもの)に振り替えると同時に、それと入れ替える形で、本件母体二行が有する中長期債権を短期債権に振り替えることを行い、平成四年三月末に系統が有していた七〇七億八一〇〇万円の短期債権は、平成五年四月末までにすべて中長期債権に振り替えられた(甲八八)。 5 第二次再建計画と本件新事業計画をめぐる交渉経緯等第一次再建計画の策定以後、不動産市況が一向に回復しなかったことなどから、住専各社の経営環境はより一層悪化し、すでに平成四年六月には日住金が新たな再建計画を母体行に示すなど(甲九五)、住専各社は、新たな再建計画の策定を模索し始め、(一)のとおり、日住金がまず第二次再建計画を策定し、これをモデルとして他の住専各社においても同様の第二次再建計画(JHL社における本件新事業計画)が策定されるに至った(甲六の24ないし31)。 なお、住専各社の第二次再建計画の策定が模索され始めたころである平成四年八月三〇日に、当時の宮沢総理大臣は、自由民主党のセミナーで講演し、金融機関が中心となって設立する担保不動産の買い上げ会社構想について、必要であれば公的援助をすることにやぶさかでないと発言し、これが報道されたところ、当時のP20経団連会長から、「銀行がやったことのつけを公的資金で助けるのですか。これについては銀行以外の製造業などの産業界に強い不満があります。」との発言があるなど産業界等から強い反発があり、このときの公的資金導入の議論は立ち消えに終わった(甲九五、九九、一〇〇)。 (一) 日住金モデルの策定(1) 日住金の平成四年度の最終赤字はこれまでの見込みの二〇〇億円から三五〇億円程度に拡大する見通しであるとの報道が平成四年 ち消えに終わった(甲九五、九九、一〇〇)。 (一) 日住金モデルの策定(1) 日住金の平成四年度の最終赤字はこれまでの見込みの二〇〇億円から三五〇億円程度に拡大する見通しであるとの報道が平成四年一〇月一四日にされたが(甲一〇一)、住専各社においては非母体金融機関、とりわけ系統からの借入の割合が大きいことから(甲二三の1ないし3)、従前の再建計画のような母体行のみの金利減免によっては負担軽減の程度が低く、もはや経営の再建ができなくなるとして、大蔵省は、平成四年一二月七日に、JHL社を含む住専七社の代表者を呼び、日住金を先頭バッターにして各住専で新たな再建計画を立案しなければならない旨指導をした(甲四三四、六〇四)。しかし、非母体金融機関にも負担を求める案を母体行のみで取りまとめるのは難しいことから、結局、大蔵省が再建計画の骨格を示し関係金融機関の協力を得ることとなり、系統との関係ではその監督官庁である農林水産省を通じ、各金融機関の金利を母体行は〇パーセント、一般行は二・五パーセント、系統は四・五パーセントに減免するとの案を提示するなどして折衝した(甲九五、一〇二)。 この案は、金利減免によって住専七社に年間約四二一〇億円の支援を行おうとするものであって、母体行のみならず、一般行及び系統(系統の金利減免額は年間約八四〇億円に達する。甲二九)にも住専救済のための負担の分担を求めるものであるが、少なくとも当時まで金融業界においては、ノンバンクの破綻処理に当たっては設立母体となった金融機関が体力の許す限り支援し、他の債権者には極力負担を求めないというのが常識とされていたことに加え(甲五六、九六、三七二の1、2、三八九、三九〇、三九一の1、2、三九二ないし三九六、四九八、五五〇)、系統としては、第一次再建計画に応じて残高を維持する際に、母体 いうのが常識とされていたことに加え(甲五六、九六、三七二の1、2、三八九、三九〇、三九一の1、2、三九二ないし三九六、四九八、五五〇)、系統としては、第一次再建計画に応じて残高を維持する際に、母体行が責任を持って再建を行い、系統にはそれ以上の負担を求めないことが約されたものと理解していたことから(甲一一)、農林水産省とともに厳しく反発した。このように交渉は難航したが、系統も、最終的には母体行が責任を持って再建計画に対応することが明確になり、債権の元本が回収できるならば、金融システム安定の観点から再建計画に協力し、金利減免に応ずるとの態度をとった(甲一一、一一〇)。その結果、大蔵省と農林水産省は、P2銀行局長とP3経済局長との間で、平成五年二月三日、住専各社の再建支援について以下のアないしウのとおりそれぞれ誠意を持って当事者間の協議が円滑に行われるよう対処していくものとする覚書(大蔵・農水覚書)を締結した(甲六の11)。このうち、ア①かっこ書の趣旨は、系統の債権の元本を保証しようというものであることについては、両省共通の認識であった(甲一〇三、四一四)。 ア母体金融機関に次の点を文書により確約させること。 ① (住専各社)の再建については、再建計画に沿って母体金融機関が責任を持って対応していく(大蔵省は、系統に今回の措置を超える負担をかけないよう責任を持って指導していくものとする。)。 ② (住専各社)の資金の返済に当たっては、高金利の調達先から優先的に実施するものとする。 イ系統の(住専各社)に対する貸付金の金利減免の水準については、次の点を踏まえ、また、母体金融機関〇パーセント、一般金融機関二・五パーセントを前提とした上で四・五パーセントとすること。 ① 金利水準は固定金利とするが、今後の金融情勢の変化により、系統の経営に大きな を踏まえ、また、母体金融機関〇パーセント、一般金融機関二・五パーセントを前提とした上で四・五パーセントとすること。 ① 金利水準は固定金利とするが、今後の金融情勢の変化により、系統の経営に大きな問題が生じた場合は、大蔵・農林水産両省において協議し、責任を持って対応する。 ② 農中の金利水準については、今回の金利減免によって生ずる信連及び共済連の経営を一部カバーする観点から、信連と同水準とするものである。農中は信連、共済連双方を平等の扱いで支援する。 ウ住専に対する系統の金利減免が、その体力からみて非常に厳しいものであることを踏まえ、日本銀行において農中に対して必要な資金の融通が行われるよう調整するものとすること(この融通は通常の日銀貸出であり、事前に固定して行われるものではない。また、本項については対外的に明らかにしないものとする。)。 (2) 日住金の第二次再建計画は、大蔵省案に従って、平成五年二月二四日及び同月二六日に開催された同社の母体行会議において、母体行間の合意が成立したが(甲一〇二、一〇四、〇五)、その概要は以下のとおりである(甲六の24、25、一〇六の1、2)。 ア基本方針① 住宅ローン及び小口の賃貸住宅ローンを中心に新規実行を行い、収益源としての正常債権を確保し増加させる。 ② 不稼働資産の圧縮、特に延滞債権の回収に努め、総資産のスリム化を図る。 イ期間平成五年二月から平成一五年三月までの一〇年二か月ウ母体行による支援内容① 平成五年二月一日より金利を〇パーセントとする。 ② 貸付金残高を維持する。 ③ 協調して不足運転資金六〇二億円を追加融資する(母体ニューマネー)。 エ一般行による支援内容① 平成五年二月一日より金利を二・五パーセントとする。 ② 貸付金残高を維持する。 オ系統による支援内容① 平成五年二 資金六〇二億円を追加融資する(母体ニューマネー)。 エ一般行による支援内容① 平成五年二月一日より金利を二・五パーセントとする。 ② 貸付金残高を維持する。 オ系統による支援内容① 平成五年二月一日より金利を四・五パーセントとする。 ② 貸付金残高を維持する。 カ借入金返済順序は、以下の順序とする。 ① 抵当証券② 住宅ローン債権信託③ 母体ニューマネー④ 借入有価証券⑤ 系統からの借入金(3) 原告は、平成五年六月三〇日、日住金の一般行として、日住金の第二次再建計画の一般行に係る支援内容に対して同意し(甲一〇八)、そのころ、日住金は、ほぼすべての金融機関からの同意を取り付けて、日住金の第二次再建計画が実施されるに至った。 (二) 本件新事業計画の策定に至る経緯等大蔵省は、平成四年一〇月にJHL社に対し第一次立入調査を行ったが、原告も、JHL社作成の平成四年一一月一二日付けの「当社の現状と今後の課題(ディスカッション・ぺーパー)」と題する報告書の提出を受け、JHL社の財務内容の解明を開始した(甲一〇九)。右報告書は、平成四年九月末現在で、総与信残高二兆五七七六億円の約六五パーセントに及ぶ一兆六八五四億円が要管理債権であり、約五二パーセントに及ぶ一兆三五六〇億円が問題債権であるとし、また、同年七月末において資産合計二兆五三一八億円のうち評価損が六六四一億円発生しているとし、今後の課題として、落とし所を踏まえた母体での対応方針を策定する時期にあり、マル秘計画策定に着手の要があるとしている(甲一〇九)。 前記(一)(1)のとおり、大蔵省は、平成四年一二月七日に、住専各社の代表者を呼び、日住金を先頭バッターにして各住専で新たな再建計画を立案しなければならないと指導したが(甲四九六)、その翌日である同月八日には、原告に対しても、 省は、平成四年一二月七日に、住専各社の代表者を呼び、日住金を先頭バッターにして各住専で新たな再建計画を立案しなければならないと指導したが(甲四九六)、その翌日である同月八日には、原告に対しても、JHL社の第二次再建計画を立案するように求めた(甲六〇四)。原告は、右のような報告書や前記3(一)、(二)記載の第一次立入調査の結果を踏まえ、JHL社の再建計画の策定を模索した。 原告のP19常務及び当時原告の住専問題を担当していたP12常務は、大蔵省銀行局のP4審議官からの呼び出しを受けて、平成五年二月四日にP4審議官を訪ねたが、その際、P4審議官は、金利減免によるJHL社の支援について系統を交渉のテーブルにつけるためには、①母体行の責任を明確にした文書を作成すること、②系統への優先弁済を認めることの二点が条件になっていると述べ、さらに、大蔵省としては、金利減免の内容を母体行〇パーセント、一般行二・五パーセント、系統四・五パーセントで一〇年間の固定金利としたいと述べた(甲一一〇、四九六)。これに対し、原告は、母体行の責任を明確にした文書を作成することについては、原告が有する貸出残高の範囲を超えて系統の債権の肩代りまで必要となる完全母体行責任につながりかねないとの懸念があったことから難色を示したが、大蔵省は、系統に右の金利減免による住専の支援策を飲ませるための政治的配慮として理解してほしいと説明した(甲一一〇、四三二)。 原告は、母体行として金利を〇パーセントに減免すること及び系統に対して優先的に弁済を行うことについては承諾することとしたが、母体行の責任を明確にする文書の作成については、完全母体行責任につながる懸念が消えなかったことから、大蔵省とさらに協議を進めたものの、大蔵省の担当官から、「債権に対する母体行の系統への誠意という意味では の責任を明確にする文書の作成については、完全母体行責任につながる懸念が消えなかったことから、大蔵省とさらに協議を進めたものの、大蔵省の担当官から、「債権に対する母体行の系統への誠意という意味では、母体行の支援内容確認文書を出すことが必要になる。正式に署名したものではなく、ゴム印を押したものでも構わない。」と言われ、最終的に、本件母体五社の母体会議による承認を経て日住金の第二次再建計画とほぼ同内容の本件新事業計画(JHL社に係る第二次再建計画)の内容を固めた後の同年五月二五日に、本件母体五社間で母体支援に関する「日本ハウジングローン株式会社支援について(確認)」と題する確認書を取り交わした上で(甲一一三)、同日付けで大蔵省銀行局に対し、「日本ハウジングローン株式会社の再建計画について」と題する日債銀と連名の念書を差し入れ(甲一二八)、本件証券母体三社も同日付けで同旨の念書を同省証券局に対し差し入れた(甲一二九)。本件母体五社間で取り交わされた右の確認書は、①本件母体二行は、JHL社の本件新事業計画に沿って、平成五年四月一日に遡ってJHL社に対する貸出金の金利を一〇年間免除すること、JHL社が計画する第三者割当増資に応じ、それぞれ三〇億円を上限として増資の払込みに応ずること、本件新事業計画遂行上必要な資金について、本件母体二行合計六〇〇億円を上限として新規貸出を行う(母体ニューマネー)こと、②本件証券母体三社は、JHL社の本件新事業計画に沿って、JHL社が計画する第三者割当増資に応じ、それぞれ三〇億円を上限として増資の払込みに応ずること、JHL社が同社の営業貸付金の担保として徴求している不動産を本件証券母体三社若しくは本件証券母体三社のグループ関連会社を通じ、厳正かつ中立的な評価に基づく価格で、それぞれ七〇億円買い受けること、この場合、 社が同社の営業貸付金の担保として徴求している不動産を本件証券母体三社若しくは本件証券母体三社のグループ関連会社を通じ、厳正かつ中立的な評価に基づく価格で、それぞれ七〇億円買い受けること、この場合、本件証券母体三社若しくは本件証券母体三社のグループ関連会社は、不動産買受資金をJHL社より長期貸出最優遇金利にて借り受けるものとすること、本件新事業計画遂行上必要な資金について本件証券母体三社若しくは本件証券母体三社のグループ関連会社は合計二〇〇億円を限度として新規貸出を行うこと、右の新規貸出のおのおのの負担割合は、各母体グループがそれぞれ均等に負担するものとすることについて、本件母体五社間で合意に達したことを書面で確認するものである(甲一一三。なお、その後、平成五年八月一八日に、本件母体五社とJHL社とにおいて、金利を免除する貸付金の範囲を特定するなど、支援内容をより明確化した「協調融資に関する協定書」、「支援に関する協定書」及び「支援に関する協定書に関する特約」が締結された(甲一二〇、一二六、一二七)。)。また、本件母体五社が大蔵省に差し入れた右念書は、JHL社の「再建については、ご当局のご指導のもと、全関係金融機関一致しての支援を踏まえた上で、金融システム安定化の観点から、再建計画に沿って責任を持って対処して参る所存でありますので、ご当局においても、よろしくご理解、ご助力のほど、お願い申し上げます。」と記載されたものである(甲一二八、一二九)。 右のように本件母体五社の合意ができたことから、平成五年五月二五日以降、JHL社は、非母体金融機関から新事業計画への合意を取り付けるために、各金融機関に対し、本件新事業計画の内容を説明し、あわせて融資残高の維持、二・五パーセント(一般行)ないし四・五パーセント(系統)への金利の軽減及び担保条件の ら新事業計画への合意を取り付けるために、各金融機関に対し、本件新事業計画の内容を説明し、あわせて融資残高の維持、二・五パーセント(一般行)ないし四・五パーセント(系統)への金利の軽減及び担保条件の現状維持を依頼する「新事業計画についてのお願いと題する書面を送付した(甲一三〇)。そして、最終的には、同年一二月二七日に東京銀行からの同意書が提出されたことで、JHL社のすべての関係金融機関の同意が得られた(甲一二二の2)。 (三) 本件新事業計画の内容本件新事業計画は、計画期間を平成五年四月から平成一五年三月までの一〇年間とし、その間本件母体五社及び非母体金融機関の支援を受けて経営の再建に取り組むというものである。本件新事業計画の概要、本件母体五社の支援内容及び非母体金融機関への依頼事項は以下のとおりである(甲六の31、一三〇)。 (1) 本件新事業計画の概要ア延滞債権の回収・解消に向けた努力を行う。 イ総資産・借入金規模の圧縮を行い、計画期間中に総資産を約一兆円圧縮する。 具体的には、貸付金を約八九〇〇億円、有価証券を約八〇〇億円、不動産を約二〇〇億円それぞれ削減し、また、借入金も約一兆円削減する。 なお、余裕資金による返済順序は、①住宅ローン債権信託、②母体からの新規融資金(母体ニューマネー)、③借入有価証券、④系統(本件新事業計画中にあっては信連、共済連、全共連)の順とする。 ウ組織運営の強化、経費・人員の削減及び店舗等の見直しを通じて経営の合理化を図る。 (2) 本件新事業計画における本件母体五社の支援内容ア支援期間一〇年間イ支援内容本件母体二行は、既融資金について、平成五年四月一日以降計画期間中金利を免除する。また、JHL社の自己資本強化のため、本件母体二行及びその関連会社グループによってJHL社の第三者割当増 支援内容本件母体二行は、既融資金について、平成五年四月一日以降計画期間中金利を免除する。また、JHL社の自己資本強化のため、本件母体二行及びその関連会社グループによってJHL社の第三者割当増資六〇億円を引き受ける。さらに、計画期間中、必要資金につき四五〇億円の新規融資(母体ニューマネー)を実施する。 本件証券母体三社は、JHL社の自己資本強化のため、本件証券母体三社及びその関連会社グループによってJHL社の第三者割当増資九〇億円を引き受ける。また、二一〇億円分の担保不動産等物件の買取を実施する。さらに、計画期間中、必要資金につき一五〇億円の新規融資(母体ニューマネー)を実施する。 (3) 非母体金融機関への依頼事項ア現状の融資金残高を維持する。 イ融資金利を一般行については年二・五パーセント、系統については年四・五パーセントの固定金利とする(ただし、住宅ローン債権信託及び借入有価証券は金利軽減の対象外とする。)。 ウ利息の支払方法は、毎年、三月、六月、九月、一二月の各末日に前三か月分を後払いとする。 エ右イの金利減免期間は平成五年七月一日から平成一五年三月末日までの九年九か月間とする。 オ担保条件は現行のままとする。 なお、本件新事業計画によると、平成五年三月末ないし平成一五年三月末の資産合計、負債合計、資本合計(資本金及び法定準備金)の推移は次のとおりである(甲一三〇)。なお、▲は、欠損金、資本欠損を示す。 年(三月末) 資産合計負債合計資本合計資本金及び法廷準備金剰余金等平成五年二兆五六七一億円二兆五六一〇億円六一億円九四億円▲ 三三億円平成六年二兆五六五八億円二兆五四八三億円一七五億円二四四億円▲ 六九億円平成七年二兆五四八三億円二兆 一億円二兆五六一〇億円六一億円九四億円▲ 三三億円平成六年二兆五六五八億円二兆五四八三億円一七五億円二四四億円▲ 六九億円平成七年二兆五四八三億円二兆五三五二億円一三一億円二四四億円▲ 一一三億円平成八年二兆四六六七億円二兆四六〇六億円六一億円二四四億円▲ 一八三億円平成九年二兆三七〇七億円二兆三七〇三億円四億円二四四億円▲ 二四〇億円平成一〇年二兆二七四六億円二兆二八〇三億円 ▲ 五七億円二四四億円▲ 三〇一億円平成一一年二兆一二五四億円二兆一四五三億円 ▲ 二〇〇億円二四四億円▲ 四四四億円平成一二年一兆九六七一億円一兆九九五三億円 ▲ 二八二億円二四四億円▲ 五二六億円平成一三年一兆八一〇七億円一兆八四〇三億円 ▲ 二九六億円二四四億円▲ 五四〇億円平成一四年一兆六六三九億円一兆六八五三億円 ▲ 二一五億円二四四億円▲ 四五九億円平成一五年一兆五三一二億円一兆五二九三億円一九億円二四四億円▲ 二二五億円(四) 本件新事業計画についての系統等の理解と原告の対応本件新事業計画については、原告やJHL社はもとより、系統及び一般行の間では、系統及び一般行が金利減免に応ずる代わりに、母体行は、事実上、自己の債権の最劣後化を認め、かつ系統の債権の元本金額の返済を保証したものと理解されていたが(甲四三二、四三五、四三九、四四一)、系統及び一般行は、この点をより明確なものにするため、本件新事業計画策定の前後において、次のような動きに出た。 まず、系統を構成する農中、全共連、静岡県信連などは、原告に対して、原告が責任を持ってJHL社の再建を支援することを明確にする にするため、本件新事業計画策定の前後において、次のような動きに出た。 まず、系統を構成する農中、全共連、静岡県信連などは、原告に対して、原告が責任を持ってJHL社の再建を支援することを明確にする書面の提出を求め、原告は、これに応じて、農中及び静岡県信連については平成五年六月一日付けで、また、全共連については同月七日付けで、原告が本件母体五社とともに本件新事業計画に沿った支援を行うことを伝え、新事業計画に対する協力を要請する書面を提出した(甲一一二、一一四、一一五、四三五)。また、JHL社は、農中からの要請に従って、同月二九日、JHL社の本件新事業計画については、本件母体五社の了承を得ていること、本件母体五社は当局に対して「全関係金融機関一致しての支援を踏まえた上で、金融システム安定化の観点から再建計画に沿って責任を持って対処して参る所存」である旨の文書を提出していることなどを確認する文書を提出した(甲一三一)。 他方、一般行としての立場にある損害保険会社協調融資団の幹事である安田火災海上保険会社は、同年一一月一二日に、JHL社に対して文書を提出し、金融機関の一員として、金融システムの維持の観点から本件新事業計画に協力することとしたこと、新事業計画は、同じ非母体金融機関としての立場にある系統との関係から公平を欠く内容であることを指摘した上で、本件新事業計画の内容は、損害保険業界としては受入れ可能な最大限の支援であって、JHL社及び母体においては、最大限の努力により経営再建を行い、本件新事業計画以上の支援負担を要請することのないようにお願いしたいとした(甲一二三、四三九)。また、同様に、一般行としての立場にある東京銀行は、同年一二月二七日に本件新事業計画に係る同意書を提出する際に、JHL社の再建については、本来母体各社が責任を持って たいとした(甲一二三、四三九)。また、同様に、一般行としての立場にある東京銀行は、同年一二月二七日に本件新事業計画に係る同意書を提出する際に、JHL社の再建については、本来母体各社が責任を持って対処すべきものであり、JHL社の経営に関与していない東京銀行としては、新事業計画に係る同意の要請を受ける立場にはないが、金融システムの維持という社会的な要請から、すべての取引金融機関の同意を前提に協力することとしたこと、本件新事業計画は母体各社の責任の下で遂行されるべきものであるから、将来にわたり東京銀行は、元本の償却をはじめ追加的な負担には応じられないことを書面をもって通知した(甲一二二の1)。 6 本件新事業計画の破綻(一) JHL社の財務状況本件新事業計画は、JHL社が新規に獲得できる正常債権の金利水準が本件新事業計画策定当時の水準である六・五〇パーセント(長期プライムレートの五・二パーセントとスプレッド一・三パーセントの合計)であること及び不動産市況が、本件新事業計画策定当時が底値で、当初三年間は回復せず、四年目から緩やかな回復基調にある(四年目以降年三パーセントの上昇を想定)ことを前提としていた(甲一一七)。しかし、平成五年版土地白書(平成五年六月一五日発行。甲一一九)は地価はなお高い水準にあるとし、政府自体が地価をさらに引き下げる必要があるとの認識を示していたし、現実にも、例えば、東京圏の住宅地、商業地の地価の推移は、平成五年にマイナス一四・六パーセント(住宅地)、マイナス一九・〇パーセント(商業地)、平成六年に七・八パーセント(住宅地)、マイナス一八・三パーセント(商業地)、平成七年にマイナス二・九パーセント(住宅地)、マイナス一五・四パーセント(商業地)とそれぞれ下落しているように、不動産市況は依然として大幅な下落を続けて )、マイナス一八・三パーセント(商業地)、平成七年にマイナス二・九パーセント(住宅地)、マイナス一五・四パーセント(商業地)とそれぞれ下落しているように、不動産市況は依然として大幅な下落を続けていることに加え(甲四九、二九四ないし二九八)、金利水準も低利で推移し、本件新事業計画の前提は客観的な情勢に合致しなかった。 貸借対照表の欠損金は、平成五年三月末において三三億○八〇〇万円であったものが、平成六年三月末には一〇四億六〇〇〇万円、平成七年三月末には一八七億〇一〇〇万円へと増加し、平成五年度に本件新事業計画に従って増資をしたにもかかわらず、資本合計は平成六年三月末に一三九億三六〇〇万円、平成七年三月末に五六億九五〇〇万円であり、平成六年三月末、平成七年三月末の当期損失がそれぞれ七一億五一〇〇万円、八二億四〇〇〇万円であることから、資本欠損に陥るおそれがあった(甲六の39)。 平成六年度末に東京共和信用組合と安全信用組合が破綻し、平成七年夏には木津信用金庫や兵庫銀行の破綻が表面化し、内外から日本の金融システムに対する不安が非常に高まった(甲六〇四)。 (二) 大蔵省の第二次立入調査平成七年八月には、住専各社に対して大蔵省の立入調査(以下「第二次立入調査」という。)が行われ、その結果、平成七年六月三〇日を調査基準時とするJHL社の資産残高は二兆五一五一億円で、分類額(不良債権額)は一兆八五三二億円、分類率は七三・七パーセントに達し、そのうち第Ⅱ分類は二九九一億円、第Ⅲ分類は一九五三億円、第Ⅳ分類(含み損益を含む)は一兆三五八八億円であることが明らかとなった(甲一四四)。 第二次立入調査は、住専各社に対して行われたが、その結果、住専七社の総資産に占める不良債権の割合が七割を超え、第Ⅲ分類及び第Ⅳ分類の債権の合計額は全体で七兆五〇〇 が明らかとなった(甲一四四)。 第二次立入調査は、住専各社に対して行われたが、その結果、住専七社の総資産に占める不良債権の割合が七割を超え、第Ⅲ分類及び第Ⅳ分類の債権の合計額は全体で七兆五〇〇〇億円になることが判明した。当時、住専七社に対する貸出金残高は、母体行が三兆五〇〇〇億円、一般行が三兆八〇〇〇億円であったことから、仮に母体行及び一般行が住専に対して有している債権の全額を放棄したとしても、二〇〇〇億円分が系統の債権にロスが生ずることが明らかとなった(甲一八四、P12証言九一~九五項)。 (三) 本件新事業計画の破綻与党三党は、平成七年六月二五日に与党PT(金融・証券プロジェクトチーム)を発足させ、関係金融機関からのヒアリングを行うなどしていたが、与党PTは、その結果に基づき同年九月一四日付けで、住専関係各金融機関並びに住専各社は直ちに住専問題解決のための話合いを行い、早急に解決策を取りまとめること及び大蔵省と農林水産省は、右の解決策のとりまとめのために責任ある行動を取ること、との勧告を出した(甲一四七)。また、金融制度調査会金融システム安定化委員会は、同月二七日付けの審議経過報告で、住専問題に触れ、住専の問題は、その抱える不良債権が極めて多額であり、また関係する金融機関が多数に上ることから、金融システム全体の安定性に与える影響も大きく、現在の不良債権問題の中で、象徴的かつ緊要な問題となっているとした上で、住専自身及び母体行が主体的役割を果たし、今後の基本的な方針や債権の処理の社方等につき合意形成を行うことが必要であること、行政当局は当事者間における議論を踏まえつつ、個別住専を超えた全体的枠組みの整備についての検討を並行して進め、適時に当事者間の合意形成を促進する必要があること、住専問題の早急な解決は、国内外から要請されて は当事者間における議論を踏まえつつ、個別住専を超えた全体的枠組みの整備についての検討を並行して進め、適時に当事者間の合意形成を促進する必要があること、住専問題の早急な解決は、国内外から要請されているところであり、本年末までに処理策が策定されるよう、すべての関係者が強い決意をもって取り組むことが必要であることを報告している(甲一四五)。さらに、大蔵省も、同日、「金融機関の不良債権の早期処理について」を公表し、住専について、当事者による真剣な取り組みをしょうようするとともに、不良債権等の受け皿となる機関等について検討を行い、年内に処理方策を固めるとした(甲一四六)。 右のような状況を受けて、本件母体五社は、平成七年九月二二日、母体会議を開催し、本件新事業計画と対比する形でJHL社の実態の報告、第二次立入調査の報告がされた後、原告のP21融資第二部長から、JHL社の進む方向は基本的には整理の方向であるとの認識を示し、意見を求めたところ、日債銀及び本件証券母体三社からは異論がなく、本件母体五社間でJHL社を整理する方針が確認された(甲一四八)。 同年一〇月二日には、住専七社及びその母体行は、与党PTに対して、住専の再建を断念し、整理・清算する方針を伝えた(甲四四六ないし四四八)。 7 JHL社処理に関する本件母体五社と系統との折衝の経緯(甲四二六、四三五)(一) 第一回協議本件母体五社で確認された整理の方針に従って、平成七年九月二七日以降同年一一月にかけて、JHL社の整理に向けての系統との協議が五回にわたって開催された。同年九月二七日の第一回目の協議は、大蔵省銀行局中小金融課金融会社室(以下「金融会社室」という。)からの要請に基づいて開催されたもので、系統との協議については、全般的に金融会社室との事前・事後のすりあわせの下に行われた 目の協議は、大蔵省銀行局中小金融課金融会社室(以下「金融会社室」という。)からの要請に基づいて開催されたもので、系統との協議については、全般的に金融会社室との事前・事後のすりあわせの下に行われた。 第一回の協議は、同月二五日及び同月二六日の金融会社室との事前折衝を経て行われた。第一回の協議には、原告、日債銀及びJHL社が参加し、系統側は、農中、全国共済農業協同組合連合会及び静岡県・北海道・東京都・兵庫県の各信連が参加した。第一回の協議においては、JHL社のP16社長がJHL社の現状等を説明し、系統の債権の担保となっているJHL社の営業貸付金の状態が極めて悪化しており、系統の債権全額の弁済さえ危ぶまれる状況にあることを説明し、原告のP12取締役が、JHL社は整理するとの結論になる旨を伝えた。これに対して、系統側は、すぐには了承せず、JHL社の実態に関する個別質疑や責任分担に踏み込んだ議論は次回以降に持ち越しとなった。 (二) 第二回ないし第四回協議平成七年一〇月一三日、同月三一日及び同年一一月一六日に、第二回ないし第四回の協議が行われ、第一回と同様、JHL社、本件母体二行及び農中・静岡県信連をはじめとする中核的な系統関係者が参加し、第二回及び第三回協議には全国信連協会、第四回には愛知県信連も参加した。 第二回の協議において、全国信連協会のP22専務理事と静岡県信連のP23専務理事から、新事業計画成立時に、原告とJHL社との関係は単なる株主と子会社ではないことを原告自身も認め、母体責任を確認したので系統側はJHL社の再建に協力したという経緯があるのだから、母体行としての認識をきちんともってもらいたい旨の発言がなされ、第三回の協議において、右のP23専務理事が、同年九月末に原告が母体ニューマネーを回収したこと(甲一六七ないし一七三)に があるのだから、母体行としての認識をきちんともってもらいたい旨の発言がなされ、第三回の協議において、右のP23専務理事が、同年九月末に原告が母体ニューマネーを回収したこと(甲一六七ないし一七三)に関連して、JHL社を整理することになった場合でも、従前の系統への優先弁済は存続しているはずである旨の発言がなされ、また、第四回の協議においても、農中のP24副理事長が、住専の経営悪化の原因について考えると責任は住専と母体に極めて重いものがあると発言するなど、系統との協議においては、原告の母体行としての責任を追及する発言がみられた。なお、原告側は、右の第二回の協議のP22専務理事とP23専務理事の発言に対しては、原告はJHL社設立当時の発起人にも入っており、単なる一株主というつもりは全くなく、原告の責任が重いことはそのとおりである旨回答し、また、右の第三回の協議のP23専務理事の発言に対しては、JHL社の新事業計画成立時からの経緯等を十分に踏まえて対処したい旨回答するなど、原告がJHL社の整理に係る損失の負担についてプロラタ負担によるべきであると主張することはなかった。 (三) 第五回協議同年一一月二二日には第五回の協議が行われたが、それに先立つ同月二〇日に金融会社室と原告との事前相談において、金融会社室側から、これからの整理に伴う負担議論等に進んでほしい旨の要請がされ、併せて、プロラタ負担としたいなどと持出すことは避けるようにとの要請がされた。 第五回の協議において、原告のP12取締役は、大蔵省から早く整理の方法の協議を進めるように促されていると前置きした上で、整理に伴う損失分担については、商法の枠組みの中で、関係者間の議論を踏まえた合理的な方法をとりたい旨を述べた。これに対し、系統側は、JHL社の設立や本件新事業計画の成立の経緯、また 前置きした上で、整理に伴う損失分担については、商法の枠組みの中で、関係者間の議論を踏まえた合理的な方法をとりたい旨を述べた。これに対し、系統側は、JHL社の設立や本件新事業計画の成立の経緯、また、前記5(二)の原告らが大蔵・農水覚書に従って大蔵省に念書を差し出した事実などを持ち出して、系統の債権から生ずる元本ロス部分について、母体側が責任を持つ完全母体行責任による処理を強く主張した。しかし、原告は、株式会社としてできる限界があり、貸出金の全額を棒引きすることまでは認めるが、そこまでが限界であって、それ以上の負担をすることは商法上許される範囲を超えるとして、系統の右の要求を拒否した。 右のとおり、完全母体行責任を前提とした系統の債権の全額弁済を主張する系統とあくまでも商法の枠内での損失分担であり、貸出金の全額の放棄が限度であると主張する原告との間の溝は埋まらず、系統との協議は物別れに終わった。 (四) 大蔵省の仲介このように、原告らと系統との交渉は平行線をたどったところ、平成七年一一月二九日に、大蔵省のP25銀行局長が各住専の母体行の役員を集め、「本件は当事者の持っている道具だけでは解決できない問題だと考えており、明日以降、みなさんの意向をお聞きして、大蔵省としての案をまとめたい。」として、大蔵省として、住専処理について関係当事者の仲介を行い、公的資金の導入を含む抜本的な住専処理のスキームを策定する意思があることを示唆するとともに、政府予算案の内示がある同年一二月二〇日を住専処理案のとりまとめのリミットとして提示した。 同年一二月一日には、与党PTを引き継いだ与党政策調整会議によって、①処理案の対象はできる限り住専七社一括とすること、②処理すべきロスについては、この際、果断に対処することとし、残余の資産等については受け皿となる機構 、与党PTを引き継いだ与党政策調整会議によって、①処理案の対象はできる限り住専七社一括とすること、②処理すべきロスについては、この際、果断に対処することとし、残余の資産等については受け皿となる機構を設立し対処すること、③日銀融資、政府保証等を活用すること、ただし、これらは直接的にも間接的にも国民の負担となるものであって、まず国民の理解が前提で、当事者間で最大の努力が払われた後の手段であり、したがって、真にやむを得ないものに限られるべきであって、透明性の確保、種々の責任の明確化が必要であること、④ロスの負担割合を決める場合は、日本の金融が国際的に位置付けられていることに配慮したものであること、住専設立から今日の破綻に至った経緯を充分踏まえたものであること、それぞれの当事者が有する経営状況、対応力等を考慮したものであることの三点が考慮されなければならないことをガイドラインとし、大蔵省及び農林水産省が直ちに処理案の作成に取りかかることを要請するとする内容の「住専問題の処理について」と題するガイドラインが提示された(甲一五三)。 これを受けて、大蔵省は、住専の母体に対するヒアリングを行ったが、原告は、P5副頭取において、貸出残高までの負担が商法上許される限界であることを伝えた(甲一二四)。同月四日に各住専の母体が集まってP25銀行局長との面談に関する情報交換が行われたが、原告以外の各住専の母体も、貸出残高全額までの負担が限界であるとの認識を有していることが確認された。 8 住専処理方策の策定(一) 一次ロスの処理についての住専各社の母体行と大蔵省との交渉住専の母体である関係金融機関の右のような意向を受けて、大蔵省は、農林水産省との間で、住専処理案の取りまとめに入り、まず、住専各社の有する第Ⅳ分類債権相当額の六兆二七〇〇億円ないしこれに欠損 交渉住専の母体である関係金融機関の右のような意向を受けて、大蔵省は、農林水産省との間で、住専処理案の取りまとめに入り、まず、住専各社の有する第Ⅳ分類債権相当額の六兆二七〇〇億円ないしこれに欠損金一四〇〇億円を加えた六兆四一〇〇億円を一次ロスとした上で、母体行が有する債権の全額三兆五〇〇〇億円を放棄して、残額の二兆八〇〇〇億円を一般行と系統がプロラタで負担する方式を検討したが、これによると、系統の負担は約一兆円以上となり、五〇〇〇億円が系統の負担の限界であるとする農林水産省との間で議論が平行線をたどった(甲一五〇、一八四)。平成七年一二月八日には、当時の武村正義大蔵大臣と野呂田芳成農林水産大臣との間の協議が行われたが(甲一五二)、系統の負担する金額について打開策を見いだすことはできなかった。また、同月一二日及び一三日には、大蔵省から原告に対して、大蔵省と農林水産省との折衝の進捗状況にかんがみて、母体行が貸出債権の全額を放棄する修正母体責任に加えて、何らかの責任を負うべきであるとする国会議員からの要求が強いので、原告から国会議員に対して母体行の考えを直接伝えるように指示がされ、原告は、P5副頭取を中心にこれに対応した。 その後、同月一六、一七日にP25銀行局長は各住専の母体の経営者を召集し、原告については同月一七日の夕方にP25銀行局長と原告のP1頭取とのトップ会談が設定された。原告は、右のトップ会談に先立ち、既に一六日に会談を済ませた銀行等から情報を得て、大蔵省から提示される処理案に対して事前に内部で対応を検討した結果、貸出残高全額までの負担であれば受諾するもののそれ以上の負担については受諾できないことを再度確認した。また、原告が各住専の他の母体行の動向を調査したところ、母体行債権の全額放棄が法的にも負担の限界であるとのスタンス 負担であれば受諾するもののそれ以上の負担については受諾できないことを再度確認した。また、原告が各住専の他の母体行の動向を調査したところ、母体行債権の全額放棄が法的にも負担の限界であるとのスタンスで一致していた。同月一七日のP25銀行局長とP1頭取との会談では、P25銀行局長が、系統は本件新事業計画等の各住専の第二次再建計画の合意等の従前の経緯を根拠に責任は母体にあると強く主張しているため住専処理策のとりまとめが難航していると述べた上で、損失負担について、①一次ロス(第Ⅳ分類資産六兆三〇〇〇億円)については、母体行債権三兆五〇〇〇億円の金額放棄、一般行による一兆七〇〇〇億円の債権放棄に加えて、残りの一兆一〇〇〇億円を系統の負担とする(ただし、系統についてはどうなるか流動的である。)、②第Ⅲ分類資産に係る損失一兆二四〇〇億円(二次ロス)については、母体が中心となって管理・運営する受け皿会社で処理するとの大蔵省案を提示した(甲一八四)。これに対し、原告側は、右②の一兆二四〇〇億円については実質的に母体の負担となるものであって承諾できないと伝えたところ、P25銀行局長は、一次ロスの六兆三〇〇〇億円を出発点にした母体行三兆五〇〇〇億円、一般行一兆七〇〇〇億円の負担については、翌日の同月一八日までに判断してほしい旨、二次ロスの一兆二四〇〇億円についてはその後でもよい旨述べた。原告は、同月一八日に、右①の一次ロスの処理については大蔵省案に同意するが、これによってプロラタでの負担二兆一〇〇〇億円より一兆四〇〇〇億円も多く負担して母体責任を果たしているので、それを超える提案は同意できないとの回答をした(甲一五一)。住専各社の母体行も、おおむね、右の一次ロスの処理について大蔵省案を受け入れるとの姿勢を示した(甲一八五)。 (二) 与党三党及び政府首脳の それを超える提案は同意できないとの回答をした(甲一五一)。住専各社の母体行も、おおむね、右の一次ロスの処理について大蔵省案を受け入れるとの姿勢を示した(甲一八五)。 (二) 与党三党及び政府首脳の確認与党三党と政府の首脳(自由民主党総裁、同党幹事長、同党政務調査会長、社会党委員長、同党書記長、同党政策審議会長、新党さきがけ代表兼大蔵大臣同党代表幹事、同党政策調査会長、内閣官房長官、農林水産大臣)は、平成七年一二月一九日、住専の具体的な処理方策について、①住専処理機構は、住専の資産等を引き継ぐこととし、回収不能な不良債権に係る損失見込額(七社合計で約六兆二七〇〇億円)、欠損見込額(約一四〇〇億円)について処理すること、②関係金融機関に対し、次のとおり対応することを要請すること、すなわち、母体行は債権の全額(三兆五〇〇〇億円)を放棄し、また、住専処理機構への出資及び低利融資を行うこと、一般行は債権のうち一兆七〇〇〇億円を放棄し、また、住専処理機構への低利融資を行うこと、系統は貸付債権の全額返済を前提として、住専処理機構に対する約五三〇〇億円の贈与及び住専処理機構への低利融資の協力を行うこと、③政府は、預金保険機構に住専勘定を設け、平成八年度当初予算において、同勘定に対して六八〇〇億円を支出し、同勘定は、住専処理機構に対し、同年度以降回収可能性の精査、整理状況を踏まえて支出を行うこと、④預金保険機構住専勘定は、住専処理機構において住専から引き継いだ資産に係る損失が生じた場合、その一部を補てんし、政府は同勘定に損失が生じた場合に適切な財政措置を講ずること、⑤政府は、平成八年度当初予算において、預金保険機構に対し、同機構の運営を強化するために五〇億円の出資を行うこと、⑥日本銀行に対し、預金保険機構への出資及び同機構住専勘定への資金供与を行う ること、⑤政府は、平成八年度当初予算において、預金保険機構に対し、同機構の運営を強化するために五〇億円の出資を行うこと、⑥日本銀行に対し、預金保険機構への出資及び同機構住専勘定への資金供与を行うよう要請すること、⑦以上について、所要の法的措置を講ずるとともに、関係機関による調整が行われ、適切な整理計画が策定された住専から速やかに住専処理機構に対し資産等の譲渡を行い、その処理を着実に進めていくこととすることなどについて、政府・与党が一体となって取り組むことを確認した(甲六の12、一五四、一八九)。 右の確認において、住専処理の全体のスキーム、損失負担等を決定するに当たっては、次の点が守られなければならないとして、透明性の確保、大蔵省・日本銀行の金融政策上の責任の明確化、住専各社の責任の明確化、銀行等の責任の明確化、系統の今後などについて言及され、銀行等の責任の明確化については、住専の母体行はその債権を放棄するとはいえ、その設立、経営の責任は引き続き将来にわたって大きいものがあること、迂回融資、紹介融資のうち銀行が不正に関与したものなど金融機関の本来の責任を回避したケース等あらゆる経営責任の追及を行うこととされている(甲六の12、一五四、一八九)。 (三) 本件閣議決定内閣は、平成七年一二月一九日、住専をめぐる問題は、金融機関の不良債権問題における象徴的かつ喫緊の課題であり、我が国金融システムの安定性とそれに対する内外からの信頼を確保し、預金者保護に資するとともに我が国経済を本格的な回復軌道に乗せるためにも、その早期解決が是非とも必要であるとし、そのため、住専問題に係る透明性の確保、種々の責任の明確化等を図りつつ、次のとおり、具体的な方策を講ずるものとするとの閣議決定(本件閣議決定)を行い(甲六の13)、翌日に予定されていた翌年度予 し、そのため、住専問題に係る透明性の確保、種々の責任の明確化等を図りつつ、次のとおり、具体的な方策を講ずるものとするとの閣議決定(本件閣議決定)を行い(甲六の13)、翌日に予定されていた翌年度予算の大蔵原案の内示前にこの問題に一応の決着をつけた。 (1) 処理の損失住専処理機構を設立し、住専の資産等を引き継ぐこととし、回収不能な不良債権に係る損失見込額(七社計で約六兆二七〇〇億円)及び欠損見込額(約一四〇〇億円)について処理する。 (2) 関係金融機関に対する要請関係金融機関に対し、次により対応することを要請する。 ア母体行は、住専に対する債権約三兆五〇〇〇億円の全額を放棄する。また、住専処理機構への出資及び低利融資を行う。 イ一般行は、住専に対する債権のうち約一兆七〇〇〇億円を放棄する。また、住専処理機構への低利融資を行う。 ウ系統は、貸付債権の全額返済を前提として、住専処理機構に対する約五三〇〇億円の贈与及び住専処理機構への低利融資の協力を行う。 (3) 公的関与ア政府は、預金保険機構に住専勘定を設け、平成八年度当初予算において、同勘定に対して六八〇〇億円を支出する。同勘定は、住専処理機構に対し、同年度以降、同機構の保有する債権の回収可能性の精査及び整理状況を踏まえて支出を行う。 イ預金保険機構住専勘定は、住専処理機構において住専から引き継いだ資産に係る損失が生じた場合、その一部を補てんする。 また、政府は、同勘定に損失が生じた場合に、適切な財政措置を講ずる。 ウ政府は、平成八年度当初予算において、預金保険機構に対し、同機構の運営を強化するために、五〇億円の追加出資を行う。 エ日本銀行に対し、預金保険機構への出資及び同機構住専勘定への資金供与を行うよう要請する。 (4) 債権回収の促進住専処理機構は、預金保険 構の運営を強化するために、五〇億円の追加出資を行う。 エ日本銀行に対し、預金保険機構への出資及び同機構住専勘定への資金供与を行うよう要請する。 (4) 債権回収の促進住専処理機構は、預金保険機構の指揮の下、法律家、不動産取引の専門家等の参加、協力を得て、法的手段等を活用しつつ、債権の回収を強力に行う。両機構は、法務・検察当局及び警察当局と緊密な連携を図る。 (5) 以上について、所要の法的措置を講ずるとともに、関係機関による調整が行われ、適切な,処理計画が策定された住専から、速やかに住専処理機構に対し資産等の譲渡を行い、その処理を着実に進めていくこととする。 なお、金融制度調査会は、平成七年一二月二二日に、金融システム安定化のための諸施策と題する答申を行い、住専問題について、「公的資金の導入も含めた臨時異例の措置が政府において決断されたこともやむを得ないと考えるが、これらの措置の具体的運営に当たっては、公的資金が導入されていることを十分踏まえて、最大限の透明性が確保され、できる限りの早期の回収が図られるべきである。」とした上で、国民の理解を得るためには、種々の責任の明確化について厳正な取組みを行うことが不可欠であるとして、住専の母体行の責任については、「住専の設立やその経営に関与してきており、これまでの経営の過程での責任について明確化する必要がある。」とし、さらに、「今般の処理方策が今後適正に実行されることにつき、注視することとしたい。」としている(甲六の15、一五五)。 本件閣議決定がされた平成七年一二月一九日時点では、本件新事業計画に従って原告からJHL社に貸し付けられた母体ニューマネーのうち五〇億円が回収されていなかったが、原告は、これを同月二九日に全額回収した(甲一六六、乙一)。 (四) 二次ロス処理に関する大蔵省の第一次 従って原告からJHL社に貸し付けられた母体ニューマネーのうち五〇億円が回収されていなかったが、原告は、これを同月二九日に全額回収した(甲一六六、乙一)。 (四) 二次ロス処理に関する大蔵省の第一次案右(三)のとおり、一次ロスの処理については処理方策がまとまり、本件閣議決定に至ったが、二次ロス一兆二四〇〇億円の負担については、依然として処理方策がまとまっていなかった。二次ロスについて、原告らは、住専処理のために貸出残高を超える負担をすることは株主に対する説明ができず、到底承諾できないと大蔵省に対して伝えていたところ、大蔵省は、平成七年一二月末ころ、受け皿会社で生ずる二次ロスについて、直接母体が負担するのではなく、関連金融機関のすべてが協調して出資する基金を設立してその運用資金で賄う案を立案し、各住専の母体行との協議を開始した。原告については、平成八年一月一一日にP12取締役らが大蔵省を訪問して、同省のP26審議官及びP27参事官から、二次ロスの処理スキームについての説明を受けた(甲一九〇、二四三)。大蔵省側は、金融機関拠出基金について、同基金を預金保険機構の中に設置すること、その目的は、住専にかかわる債権の回収を円滑に進め、金融システムの安定に資することとし、法律に明記すること、その法的な性格は任意拠出とするが、これは法律によって基金への拠出を義務付けることは難しいからであること、基金の総額は一兆円を限度とすること、基金の拠出者は住専に対して出資していた預金金融機関等とし、生命保険会社や証券会社も含まれるが今のところ系統は入らないとしていること、基金から住専処理機構へ一〇〇〇億円を出資し、残りは基金に留め置き、その運用益を処理機構に繰入れることなどを説明した(甲一九〇)。また、住専処理機構について、その法的性格は、債権回収のフレキシ と、基金から住専処理機構へ一〇〇〇億円を出資し、残りは基金に留め置き、その運用益を処理機構に繰入れることなどを説明した(甲一九〇)。また、住専処理機構について、その法的性格は、債権回収のフレキシビリティを考えて株式会社とすること、資本金は二〇〇〇億円とし、預金保険機構一〇〇パーセント出資の子会社とすること、住専処理機構の資金計画などについて説明した(甲一九〇)。 同月一六日には、大蔵省のP25銀行局長が原告を訪問し、P5副頭取に対し、同月二〇日に大蔵大臣がG7へ出席するが、外国の住専問題に対する関心は高く、外国に対して住専処理策が実現することをきちんと説明するためにも、大蔵大臣の出発する前に住専問題についての見通しをもっていたいと述べて、同月一九日までに二次ロス処理案への了解がほしいと要請した。 (五) 二次ロス処理に関する大蔵省の第一次案に対する本件母体五社の対応原告は、JHL社の母体行会議を召集し、大蔵省から提示された二次ロス処理案への対応策を協議し、さらに他の住専の母体行とも情報を交換しながら、最終的な回答案を詰めた。その結果、同月一八日付けで、①金融機関拠出基金について、預金保険法において同基金設置の趣旨(金融システムの維持)を明記し、法律により拠出を義務付けること、拠出は母体に限定せず幅広く民間金融機関の参加とすること、及び相当額の系統金融機関の拠出を加えること、②住専処理機構への母体低利貸付について、母体は債権を全額放棄することを理由に、住専処理機構への貸付は系統と一般行が残高に応じて行うべきものであり、仮に系統が三分の一(約二兆二〇〇〇億円)を超える貸付を行えず、民間金融機関が不足分を貸し付ける場合は、同貸付が系統の不足分である旨を明らかにすること、不足額の貸出については、コマーシャルベースのバンキングの視点から安全 二兆二〇〇〇億円)を超える貸付を行えず、民間金融機関が不足分を貸し付ける場合は、同貸付が系統の不足分である旨を明らかにすること、不足額の貸出については、コマーシャルベースのバンキングの視点から安全性・収益性に問題がないことが必要であり、その証左なき場合は政府保証等の措置を講ずること、金利・返済等の貸付条件は民間系統とも同一とすることなどの条件が満たされることが二次ロス処理案を前進させるための前提条件であって、これは法的な問題であるので厳格に受け止めてもらいたい旨の回答案を作成し、同日、P26審議官に対して説明をした(甲一九二)。また、住専の主要母体行は、同月一七日、大蔵省が提示した二次ロス処理策を受け入れるためには、①二次損失は系統が負担すべきであるが、系統の救済のために設立母体が支援するということを政府が公式に認めること、②今後設立する住専処理機構が住専の資産を買取るのに必要な資金六兆五〇〇〇億円のうち、系統以外の金融機関に求められた低利融資約四兆四〇〇〇億円は、元利の全額返済を政府が保証すること、③預金保険機構内に新設する住専勘定に設立母体が出資を要請された最大一兆円については、法的に義務付けることとの三点を条件とすることを固めた(甲一九一)。 (六) 二次ロス処理に関する大蔵省の修正案大蔵省は、平成八年一月二四日、原告に対し、「(案)」と題する文書によって、大蔵省の二次ロス処理の修正案を提示した(甲一九三)。その内容は、以下のとおりである(甲一九三)。すなわち、まず、基金への拠出の明確化として、①住専処理に関する法律により、預金保険機構の中に「金融安定化拠出基金」(仮称)を設立すること、②基金の目的(住専の債権債務の処理を促進し、金融システムの安定化に資する)を法律で明記すること、③基金の拠出対象者は住専に出融資している金融 構の中に「金融安定化拠出基金」(仮称)を設立すること、②基金の目的(住専の債権債務の処理を促進し、金融システムの安定化に資する)を法律で明記すること、③基金の拠出対象者は住専に出融資している金融機関等(生命保険会社及び証券会社を含む。)とすること、④拠出方法については、預金保険機構の運営委員会において決定すること、⑤大蔵臣による拠出の要請をすることとされていた。また、住専処理機構の将来発生し得る損失に関する措置として、①住専処理機構が住専により引き継いだ資産については、今後の経済や地価の動向によっては、将来損失が生ずる可能性が残されているところ、この損失懸念に対しては、まずもって、法律上認められているあらゆる回収手段等を迅速かつ的確に用いることにより債権回収等に全力を挙げること、②そのような回収努力にもかかわらず、万一将来損失が生じた場合、国はその損失の二分の一を補てんすること、③他方、残る二分の一については、まず、民間金融機関の拠出による金融安定化拠出基金の運用益及び稼働資産からの収益等によって賄い、さらに損失が生じても民間金融機関の住専処理機構に対する融資が毀損しないよう、必要に応じて預金保険機構の一般勘定からの支援の下で同機構による保証を行うことを検討することとされていた。さらに、系統との融資条件の同一化として、農中の融資に関しては、金利・返済条件につき母体行及び一般行と同一化が図られるように要請するとされ、また、融資額の配分についても、各住専口勘定ごとに母体・系統・一般金融機関からおおむね三分の一ずつ融資するとの原則が示された。 原告は、右の修正案を検討した結果、平成八年一月二五日に、右修正案に同意することを伝えた。また、そのころ、原告以外の関係金融機関も右の修正案の基本的な枠組みについて同意した(甲一九四、一九五、二四八) 告は、右の修正案を検討した結果、平成八年一月二五日に、右修正案に同意することを伝えた。また、そのころ、原告以外の関係金融機関も右の修正案の基本的な枠組みについて同意した(甲一九四、一九五、二四八)。 (七) 本件閣議了解政府・与党は、右の修正案を二次ロスの処理策として採用することを最終的に決定し(甲一九七、一九八、二五〇)、同月三〇日に、住専問題の処理については、平成七年一二月一九日の閣議決定に則り、さらにその処理方策を具体化するものとするとの閣議了解(本件閣議了解)がされた(甲一九九、二五一)。 本件閣議了解で了解された方針は以下のとおりである(甲一九九)。 (1) 現下の喫緊の課題である住専問題の早期解決を図るため、住専七社は整理されることとなり、さらに、新たに設立される住専処理機構が住専七社から債権等を買取り、強力に回収を行いながら処分していくこととされている。 (2) その際、住専処理機構は、住専七社の債権等を買取るための資金を調達することが必要となる。このため、母体行、一般行、系統が同機構に対し所要資金を融資することが求められている。 (3) 本問題の処理に当たっては、債権回収と責任追求に最大限の努力を払う必要がある。まず、預金保険機構と住専処理機構が一体となって強力な体制をもったものにすべきである。政府と両機構は、法律上認められるあらゆる回収手段を迅速かつ的確に展開して、住専から引き継いだ資産にかかわる損失を生じさせないよう全力を挙げる。 ア回収が順調に進み益金が生じた場合は、その成果を還元する。 イ万一、損失が生じた場合には、本件閣議決定の趣旨に従って、政府・民間の共同の責任で処理することとし、政府の負担は二分の一とする。 ウ民間金融機関の負担については、預金保険機構内に新たに設置される基金(約一兆円を目途)の運用益 本件閣議決定の趣旨に従って、政府・民間の共同の責任で処理することとし、政府の負担は二分の一とする。 ウ民間金融機関の負担については、預金保険機構内に新たに設置される基金(約一兆円を目途)の運用益の活用、同機構による保証等により対応する。 (4) 本件閣議決定及び本件閣議了解によって、金融秩序維持安定のための住専処理方策が具体化されることになる。今後、国民の最大の関心事である種々の責任を明確にするため、全力を挙げて取り組むこととする。 政府は、平成八年二月九日に、本件閣議決定及び本件閣議了解の内容を実現すべく、住専の整理に伴う住専処理法案を国会に提出した(甲二〇一の1ないし6、二五二)。 9 住専処理をめぐる国会等の動向(一) 住専処理方策に関する新進党の考え方について既に述べた政府の住専処理方策とは別に、当時最大野党であった新進党は、平成七年一〇月一七日に、住専問題の解決に向けてとする住専処理に関する新進党案を発表した(甲一八○)。右の新進党案は、住専問題解決の前提として、住専問題の本質と責任の所在を明確化しなければならないとして、①住専設立と住宅金融政策上の位置付け、②住専の設立に関する母体行、金融当局の関与及びその後の母体行の関わり、③住専がなぜ巨額の不良債権をかかえるに至ったのか、その経緯と母体行の関与と住専の経営実態、④住専再建計画の経緯と責任の所在の四点を明らかにすべきであるとした上で、以下の五つの観点から、問題解決の処方箋を作成することを提起するとしている(甲一八〇)。すなわち、第一の観点は、経営悪化の主因は、何ら業務調整もしないまま住専の本来業務である個人住宅ローンに親会社である母体行が本格進出し、市場のパイを圧迫したことにあるという点、また、住専の債権には母体行の紹介や移し替えなどがあったとの事実も指摘されており、 ないまま住専の本来業務である個人住宅ローンに親会社である母体行が本格進出し、市場のパイを圧迫したことにあるという点、また、住専の債権には母体行の紹介や移し替えなどがあったとの事実も指摘されており、発生面において不透明であり、これらの点から母体行の責任を見逃すことはできないという点である。第二の観点は、母体行と住専は出資の関係においてのみ論じられるのではなく、母体行業務の附随・関連業務を行う、実質的な子会社であり、単に形式的比率のみで責任分担を論じられるものではないという点、また、設立の経緯(出資など)のみならず、経営面においても役員・主要幹部職員などの派遣などを含めて深く関与してきており、親子会社の関係は明白であって、出資者たる母体行が親会社として子会社の経営を支配してきており、出資者は負担能力の限界まで責任を負うべきであるとの点である。第三の観点は、住専は預金の取扱いをする金融機関ではないが、短資会社と同様、大蔵省直轄の金融機関として位置付けられ、系統の融資の取扱いも通達上金融機関として位置付けられていることから、住専との取引はいわば金融機関の信用力を担保とするインターバンク取引であって、一般の事業会社に対する貸付と同列に論ずるわけにはいかないという点である。第四の観点は、住専の再建計画において、母体行は責任を負うことを明確にしており、再建計画時に約されたことが、整理時に反故にされることは信義誠実原則に反し、我が国の金融システムの根幹をなしている「信用取引」を崩壊させることになりかねないものであって、住専が再建であれ、整理であれ、母体行責任が減じるものではないとの点である。そして、第五の観点は、住専問題は、その対応・処理の方法などを含めて、我が国金融システムの安定化に向けて、内外の注目を浴びているところ、このような中で、住専の許認 任が減じるものではないとの点である。そして、第五の観点は、住専問題は、その対応・処理の方法などを含めて、我が国金融システムの安定化に向けて、内外の注目を浴びているところ、このような中で、住専の許認可、指導、さらに再建計画を含めて行政は深く関与してきており、我が国の金融システムの安定化に向けて、行政はその責任を痛感しなければならず、その観点から最大限の努力を行うことは当然であるとの点である。右のような各観点を踏まえて、新進党案は、解決に向けての望ましいスキームとして、母体行が全責任を負う「完全母体行主義」か、若しくは母体行が債権を全額放棄し、不良債権を圧縮、残った資産を受け皿会社に移行し、同会社に母体行が出資・贈与・低利融資、非母体行は元本が保証されることを前提として贈与と低利融資で協力を行う方式を採用することが至当であるとしている(甲一八〇)。また、新進党案は、公的資金の導入問題については、金融システム安定化委員会において大方がその必要性を認めているようであるが、国民的理解を得るためには、公開性と透明性を担保する観点から、住専の実態解明とこの問題の経緯並びに責任のあり方についての筋の通った説明が行われる必要があること、また、導入の検討に際しては、預金者保護や納税者の利益保護など公益的な判断に基づかなければならないことを指摘している(甲八〇)。 その後、新進党は、本件閣議決定及び本件閣議了解がされた後である平成八年二月二七日に、「住専問題に関する基本方針」と題する住専処理に関する対案を発表したが、その内容は、①平成八年度予算案に計上している六八五〇億円の住専関係予算を削除する、②住専問題の解決については、市場原理に基づく自己責任の大原則により国民に開かれた状況の中で行う、③国家行政組織法三条による行政委員会として不良債権処理公社(日 八五〇億円の住専関係予算を削除する、②住専問題の解決については、市場原理に基づく自己責任の大原則により国民に開かれた状況の中で行う、③国家行政組織法三条による行政委員会として不良債権処理公社(日本版RTC)を設立して、金融機関等の破産・更生手続の申立権を付与するとともに、管財人の機能並びに刑事訴追権を付与し、刑事・民事上の責任追及及び債権回収に全力を挙げる環境を整備する、④母体行は住専の経営破綻に至った経緯にかんがみ、最大限の責任を果たすべきである、⑤系統の再建・改革については、国が別途全面的に支援する、⑥国民の預貯金については、国がすべてを保証するというものであった(甲二一九)。 新進党は、同年三月四日、住専関係予算六八五〇億円が計上されている平成八年度予算案の審議に応じないという方針を決定し、同党議員が予算委員会の会場の第一委員室に座り込みを開始した(甲二五三)。 また、新進党は、同月一三日には、右の「住専問題に関する基本方針」を具体的に展開する「住専問題に関する具体的方針」を発表した。その内容は、①住専は民間会社であり、かつ預貯金を受け入れている金融機関でもないから、その経営破綻の処理について税金を投入すべきではない、②密室の合意を前提に住専処理機構に税金を投入して住専の損失を補てんするという政府の処理策は合理性を欠くから、予算案に計上している六八五〇億円の住専関連予算は削除する、③住専各社の経営破綻の処理は、法的処理により、公正・透明なルールの下に行うこととする、④法的処理の方法としては、会社更生法の適用によることとし、管財人の強力な権限の下に、住専各社の経営破綻に母体行が重大な責任を負っている経緯を十分に踏まえた実質的公平の実現を図る、⑤巨額な不良債権を抱える住専等の管財人の業務を集中的かつ効率的に遂行するため、特殊法人 な権限の下に、住専各社の経営破綻に母体行が重大な責任を負っている経緯を十分に踏まえた実質的公平の実現を図る、⑤巨額な不良債権を抱える住専等の管財人の業務を集中的かつ効率的に遂行するため、特殊法人として更生申立権を有する「不良債権処理公社(日本版RTC=整理信託公社)」(仮称)を設立し、不良債権の回収と責任の追及を徹底的に実施する、また、その過程で明らかになった犯罪行為は告発することを義務付ける、⑥金融システムの安定性を保ちつつ、不良債権の法的処理を行うため、当面、預金保険機構・貯金保険機構による預貯金の完全な支払保証を実施するとともに、そのための必要資金は政府保証を付して日銀から融資する、⑦協同組合であるために内部留保の乏しい系統及びその傘下の系統組織の経営に配慮し、当面、農中に対して政府保証を付した日銀融資を行うとともに、系統のあり方の見直しや系統組織の抜本的改革を進めるというものであった(甲二二一。なお、この点について、被告は、最大野党の認識も政府の住専処理策が実現されない場合には、処理策が白紙に戻され、法的整理手続で債権者平等の原則に基づく整理手続が行われるべきものと考えていたことがうかがわれると主張し、甲第二二一号証を引用する。しかしながら、甲第二二一号証によると、新進党が発表した「住専問題に関する具体的方針」では、「法的処理の方法としては、会社更生法の適用によることとし、管財人の強力な権限の下に、住専各社の経営破綻に母体行が重大な責任を負っている経緯を十分に踏まえた実質的公平の実現を図る。」とされ、新進党の江田五月議員が記者会見で「会社更生法に基づき、設立母体や経営者責任が問われたケースは存在するし、実質的平等の原則に照らせば、母体行に重い責任をとってもらえる」と説明したことが認められ、新進党は、会社更生法などの法的処理 で「会社更生法に基づき、設立母体や経営者責任が問われたケースは存在するし、実質的平等の原則に照らせば、母体行に重い責任をとってもらえる」と説明したことが認められ、新進党は、会社更生法などの法的処理によって住専処理を行うとしながらも、法的処理において母体行の責任を追及する姿勢を明確にしていたのであって、被告が主張するように、法的整理手続で母体も含め債権者平等の原則に基づく整理手続が行われると考えていたなどとは到底いうことができない。)。また、当時、新進党政権準備委員会の中野寛成副委員長(明日の内閣副総理)は、雑誌のインタビユーに対し、「母体行は文字どおり母体です。しかも、融資先の紹介などをやって、そういう先に限って質が悪い。その責任を考えれば、三兆五〇〇〇億円の債権放棄だけでは済まされません。」と述べている(甲二二〇)。 その後、同月二五日に、当時の土井たか子衆議院議長の下で、与党三党、新進党及び日本共産党(以下「共産党」という。)による五党党首会談が開催され、翌二六日から国会を正常化することで合意し、新進党は、同月二五日の夜に、同月四日から続けてきた座り込みを解除した。 (二) 住専処理方策に関する共産党の考え方について共産党の不破委員長(当時)は、平成七年一〇月二五日ないし同月二七日にわたって開催された、同党の第四回中央委員会総会の幹部会報告として、「今問題となっている住宅金融専門会社(いわゆる住専)にしても、そのほとんどは大銀行が設立し、資金も人事も経営も銀行がにぎり、銀行の別働隊として、自分では規制があるためにやるわけにゆかない不動産融資を、銀行にかわってやらせたものであります。しかもその大銀行自身は、バブルの時期に大もうけをかさねたうえ、バブル崩壊後もばく大な利益をあげつづけているのです。こういう乱脈経営の結末は、母体 動産融資を、銀行にかわってやらせたものであります。しかもその大銀行自身は、バブルの時期に大もうけをかさねたうえ、バブル崩壊後もばく大な利益をあげつづけているのです。こういう乱脈経営の結末は、母体である大銀行自身の手で解決するというのが当然のことであって、しかも銀行はそれだけの能力を持っています。」と報告した(甲二二二)。 また、共産党の志位書記局長(当時)は、平成八年一月三一日の衆議院予算委員会で、住専各社の母体行が第一次再建計画から約一兆円の融資を引き上げているとした上で、「あなた方は母体行は責任は果たしたと言われるけれども、三兆五〇〇〇億円の債権放棄では済まない。私は、少なくとも四兆五〇〇〇億円まで払ったっていいじゃないか、足らない分があったら国民の血税に頼るのではなくて銀行に払わせたらいい。これが国民の声ですよ。これは政策判断の問題です。どうですか。」と述べている(甲二二三)。同書記局長は、雑誌のインタビユーに対しても、「住専を設立したのも、暴走させたのも、破綻させたのも銀行です。足りない分は母体行が責任を持って負担するべきです。三兆五〇〇〇億円の債権放棄で、責任を果たしたとは思いません。母体行は住専と一緒になって乱脈融資をした当事者です。債権者のような顔をしていますが、本当は住専と一緒に債務者の側にあるべきなんですよ。」と述べている(甲二二〇)。 さらに、共産党国会議員団は、平成八年二月二七日に、「住専不良債権処理への血税導入の撤回と、国民本位の財政再建に向けた抜本的な予算組み替えを要求する」と題する書面をもって与党三党に申し入れた(甲二二四)。その内容は多岐にわたるが、住専処理関係については、「住専問題で最大の責任を負うべきは、住専を作り、別働隊として活用して大もうけしたうえ、リスクの高い融資先を「紹介融資」として住専に (甲二二四)。その内容は多岐にわたるが、住専処理関係については、「住専問題で最大の責任を負うべきは、住専を作り、別働隊として活用して大もうけしたうえ、リスクの高い融資先を「紹介融資」として住専に押しつけ、あげくのはてには住専を農林系金融機関に押しつけてみずからは撤退をはかった母体行であることは、衆目の一致するところである。母体行が現存の債権額三兆五〇〇〇億円を放棄するだけで責任を逃れようとするのは、断じて許されるものではない。」としている(甲二二四)。 (三) 国会における動き等(1) 国会においても、右(二)記載の共産党の志位書記局長の発言にあるほか、平成八年二月一四日及び同月二六日に開催された衆議院予算委員会において、いずれも、橋本総理大臣が、法律上問題のあるような紹介融資については、住専処理機構から損害賠償請求を行うことも考えるべきである旨の答弁をするなど(甲四七二、四七三)、住専の母体行の責任を追及する動きがあった。 (2) 平成八年二月一五日に開催された衆議院予算委員会には、農中のP28理事長、全国銀行協会連合会会長であった富士銀行のP29頭取、住宅ローンサービスのP30代表取締役、原告のP1頭取などが参考人として招致された。P28理事長は、冒頭の意見陳述において、住専問題の本質は住専の経営問題であって、住専の経営に責任のある住専経営者及びその経営に深く携わってきた母体行が最大限の責任と負担をもって処理すべきであるとし、とりわけ母体行は、住専を自己の子会社として設立し、その経営に人員を派遣するなど深く住専の経営に参画してきたので、日本の金融の慣行、商慣行等からみても住専に対する親会社としての母体行の責任は厳然として存在すると述べ、母体行の責任に言及するとともに、系統が母体である協同住宅ローンについては系統の責任において対処し 本の金融の慣行、商慣行等からみても住専に対する親会社としての母体行の責任は厳然として存在すると述べ、母体行の責任に言及するとともに、系統が母体である協同住宅ローンについては系統の責任において対処していることを指摘した(乙五)。また、質問に答える中で、P28理事長は、母体行の方から法的整理ということであれば、当然私たちもこれに応訴していくとし、右のような母体行と住専の関係に加えて、母体行が住専の事業を浸食したことや紹介融資を行ったことからすると、母体行の責任は単に貸出債権を放棄しているということでは済まない、債権者平等の原則というのは実質的な債権者平等の原則であり、出資者や経営者の債権は一般債権者に比して劣後するから、母体行の三兆五〇〇〇億円の債権は劣後債権であって、破産あるいは清算の場合は回収不能のものであるとの意見を述べた(甲一九六、乙五。なお、同理事長は、平成八年四月二二日の参議院予算委員会においても、母体行の住専に対する経営責任からすると平等弁済は社会正義に反するとの発言をしている(甲四一〇)。)。 (3) その他、P33委員からP29頭取に対して、公的資金に相当する六八五〇億円を銀行協会から政府に対し提供するような考えがないかとの質問がされ(乙五)、P31委員からP29頭取に対して、紹介融資問題が母体行の大変な責任であって、それが回り回って国民の税金としてとられるところに国民の怒りがあるとの指摘がされるなど(甲四三二)、P29頭取、P1頭取に対する質問において、母体行が、貸出債権の全額放棄以上の責任を負うべきであるとの追及が厳しく行われた。P1頭取は、質問に答えて、「母体行としては、三兆五〇〇〇億円という母体行全額の放棄をいたします。それからその上に、一般行としてもまた債権放棄いたしまして、その上に、住専の処理機構に低利融資を れた。P1頭取は、質問に答えて、「母体行としては、三兆五〇〇〇億円という母体行全額の放棄をいたします。それからその上に、一般行としてもまた債権放棄いたしまして、その上に、住専の処理機構に低利融資をいたします。」と述べ、また、商法上の株式会社として許される範囲のぎりぎりまでの負担をしていると説明した(甲一九六)。 (四) マスコミや世論の動き日本工業新聞が、平成七年一一月一日に、修正母体行責任を妥当としつつ、住専処理に関する損失負担は、過去の再建計画時の経緯や紹介融資の実態などを踏まえ、母体行への傾斜負担は避けられないとする社説を掲載し、朝日新聞が、平成八年二月二日に、母体行が債権の全額を放棄し、残りの損失はほかの貸し手がそれぞれの融資比率に応じて負担するという修正母体行主義を基本にしつつ、紹介融資に伴う損失は、右の債権放棄とは別に母体行の責任で処理するという試案を示す社説を掲載し、また、経済雑誌であるエコノミスト(平成八年三月一二日号)に、母体行は、母体行としての債権三兆五〇〇〇億円の全額の放棄に加えて、紹介融資によって不良債権化したものの負担も負うべきであるとする論文を掲載するなど、平成七年末から平成八年初頭にかけて、マスコミは、住専問題について、母体行の責任を厳しく追及していた(甲二三一、二三二、二三四、二三六)。 また、住専問題に関する処理に税金を投入することに反対し、その負担は母体行の責任で行うことを求めるなどの請願が多数存在し、日本証券研究所主任研究員のエコノミストが、母体行には道義的責任があり、債権全額放棄以上の負担を強いられ、株主代表訴訟を起こされても仕方がないと述べるなど、国民の世論にも、住専問題の解決について、債権放棄以上に母体行の責任を求める意見が多く存在した(甲二三五、二三七)。 (五) 与党による母体行へ 、株主代表訴訟を起こされても仕方がないと述べるなど、国民の世論にも、住専問題の解決について、債権放棄以上に母体行の責任を求める意見が多く存在した(甲二三五、二三七)。 (五) 与党による母体行へのさらなる負担を求める動き右のような状況を受けて、与党も、母体行の責任を追及する姿勢を示し、平成八年三月四日には、住専処理追加措置の第一段(原案)を決め、母体行について、さらなる寄与を求めるとした(甲二二六ないし甲二二八)。 10 本許債権放棄及びJHL社の整理に至る経緯(一) 本件事業年度におけるJHL社の財務状況(1) 本件事業年度幸期(平成七年四月一日から平成七年九月三〇日まで)の財務状況(甲一四九の1)JHL社は、本件事業年度上半期において、本件新事業計画の三年目を迎え、引き続き本件新事業計画に従って、住宅ローン営業基盤の維持・不良債権の回収・経費の圧縮等の努力を行ったが、本件新事業計画策定時の予想を超える不動産不況の長期化、金利低下による利息収入の減少等により厳しい経営が続いだ。この結果、平成七年九月末の貸付金残高は、前期末比〇・七パーセント減の二兆二三八七億円となり、総資産は前期末比二一・一パーセント減の一兆九九七七億円となった。また、損益面については、金利低下等による貸付金利息の減少から、営業収益は四七二億円と前年同期比一・八パーセントの減収となる一方、営業費用は本件新事業計画に従って借入金利息を減免されているが、三三四億円の貸倒引当金の組入れを行ったことから七九六億円となり、これにより経常損失は三二三億円となった。さらに、特別損失として四五二一億円の貸倒引当金の積み増しを行った結果、中間純損失は四八四四億円の計上を余儀なくされ、債務超過に転じた。 JHL社の平成七年九月末現在の貸借対照表は次のとおりであり、四七八八億〇 失として四五二一億円の貸倒引当金の積み増しを行った結果、中間純損失は四八四四億円の計上を余儀なくされ、債務超過に転じた。 JHL社の平成七年九月末現在の貸借対照表は次のとおりであり、四七八八億〇三〇〇万円の資本欠損が生じている(なお、▲は資本欠損を示す。)。 資産合計一兆九九七七億五〇〇〇万円流動資産一兆九八六〇億七三〇〇万円現金及び預金四一〇億〇七〇〇万円営業貸付金二兆二三八七億一五〇〇万円その他貸付金三二〇億円有価証券一七二億二七〇〇万円金銭の信託五一一億〇一〇〇万円販売用不動産二五三億七四〇〇万円未収収益九五二億一八〇〇万円その他七一億円貸倒引当金五二一六億七一〇〇万円固定資産一一六億七六〇〇万円有形固定資産三九億六八〇〇万円無形固定資産三二〇〇万円投資その他の資産七六億七五〇〇万円負債合計二兆四七六五億五四〇〇万円流動負債二兆四七五九億〇一〇〇万円借入金二兆四六六五億八五〇〇万円賞与引当金一億一四〇〇万円その他九二億〇一〇〇万円固定負債六億五二〇〇万円退職給与引当金二億三九〇〇万円預り保証金四億一三〇〇万円資本合計 ▲四七八八億 六億五二〇〇万円退職給与引当金二億三九〇〇万円預り保証金四億一三〇〇万円資本合計 ▲四七八八億〇三〇〇万円資本金一二七億三七〇〇万円資本準備金一一五億三三〇〇万円利益準備金一億二六〇〇万円欠損金五〇三二億円任意積立金一一四億二五〇〇万円中間(当期)未処理損失五一四六億二五〇〇万円(2) 本件事業年度の財務状況(甲三五九)JHL社は、平成八年三月二六日開催の取締役会で、再建を断念せざるを得ないとの結論に至り、今後は政府の住専処理案に沿って整理・清算する方向で所定の準備を進めていく方針を決定した。これに伴って、本件事業年度の期末貸付金残高は二兆一六六九億円となり、期末総資産は前期比一兆四四九二億円減の一兆○八一七億円となった。損益面については、延滞債権の増加及び金利低下等による貸付金利息の減少から、営業収益は、八〇七億円と前期比一四・一パーセントの減収となり、一方、営業費用は、本件事業計画に従って借入金利を減免されたが、有価証券関係費用二九七億円及び債権償却費三〇四億円を計上した結果一四四七億円となり、経常損失は六三八億円となった。そして、政府の住専処理案に沿った借入債務の免除益等の特別利益三七六二億円及び貸倒引当金繰入額等の特別損失一兆三二四一億円を計上した結果、当期純損失は一兆〇一一七億円となった。 JHL社の平成八年三月末現在の貸借対照表は次のとおりであり、一兆〇〇六〇億九二〇〇万円の資本欠損が生じている(なお、▲は資本欠損を示す。)。 資産合計一兆〇八 円となった。 JHL社の平成八年三月末現在の貸借対照表は次のとおりであり、一兆〇〇六〇億九二〇〇万円の資本欠損が生じている(なお、▲は資本欠損を示す。)。 資産合計一兆〇八一七億三五〇〇万円流動資産一兆〇七四九億二四〇〇万円現金及び預金一三八億一六〇〇万円営業貸付金二兆一六六九億〇三〇〇万円その他貸付金一四七〇億円有価証券六億三五〇〇万円販売用不動産九九億五六〇〇万円前払費用七〇〇〇万円未収収益七二〇億六三〇〇万円その他二五億八五〇〇万円貸倒引当金一兆三三八一億〇八〇〇万円固定資産六八億一一〇〇万円有形固定資産三八億九二〇〇万円無形固定資産三三〇〇万円投資その他の資産二八億八五〇〇万円負債合計二兆○八七八億二八〇〇万円流動負債二兆〇八六七億五六〇〇万円借入金二兆〇六四〇億四〇〇〇万円未払法人税等二三〇〇万円未払事業税等七〇〇万円未払費用一六九億一二〇〇万円預り金四三億三八〇〇万円前受収益五億一五〇〇万円賞与引当金一億円その他八億一八○○万円固定負 四三億三八〇〇万円前受収益五億一五〇〇万円賞与引当金一億円その他八億一八○○万円固定負債一〇億七一〇〇万円退職給与引当金七億六〇〇〇万円預り保証金三億一〇〇〇万円資本合計 ▲一兆〇〇六〇億九二〇〇万円資本金一二七億三七〇〇万円資本準備金一一五億三三〇〇万円利益準備金一億二六〇〇万円欠損金一兆〇三四億八九〇〇万円任意積立金一一四億二五〇〇万円当期未処理損失一兆〇四一九億一四〇〇万円なお、本件事業年度において、本件債権放棄がされたことから、JHL社は、本件事業年度において、三七六〇億五五〇〇万円の債務免除益を計上している。 (二) 原告における債権処理に関する意思決定原告の内部では、早い段階から本件新事業計画は単なる時間稼ぎにすぎず、JHL社はやがて資金繰りが行き詰まって破綻に至るものとの見通しが支配的であって、そのような事態への対応が検討されており、平成六年一一月二一日には総合企画部において「住専問題の現状と今後の対応について」と題する書面(甲一四一)を作成し、JHL社は整理せざるを得ないとの見方も示されていた。さらに、前記6(二)のとおり、大蔵省による第二次立入調査の結果から本件新事業計画の破綻が外部的にも明らかになり、平成七年九月には、前記6(三)のとおり、政府・与党からも早期に住専処理策を策定するように求められた上、前記(一)(1)のとおり、JHL社の平成七年度 本件新事業計画の破綻が外部的にも明らかになり、平成七年九月には、前記6(三)のとおり、政府・与党からも早期に住専処理策を策定するように求められた上、前記(一)(1)のとおり、JHL社の平成七年度上半期の財務状況が非常に厳しいものであった。 このような事態にかんがみ、原告においては、JHL社に対する債権を平成八年三月期決算において全額貸倒れ処理するほかないと決断し、同年一一月二七日、自社の中間決算報告の記者会見においてこの方針を公表するとともに(甲二四九)、赤字の額をできるだけ圧縮するため、同月以降含み益を実現する目的での株式売却を行い、その利益の額は平成八年三月までの間に合計四六〇三億円に達した(乙二二)。 (三) 本件債権放棄平成八年二月以降、大蔵省の主催で住専処理案の実行に伴う事務的・細目的事項の詰めを行う母体行代表者会議が行われ(甲二〇〇の1、2、二〇一の1ないし6、二〇二の1、2、四五五)、同年三月二一日には、JHL社の母体である本件母体五社が本件閣議決定及び本件閣議了解で示された政府処理案に沿ったJHL社の具体的処理案を検討し、平成八年三月期末を迎えるに当たって、同期末時点での関係金融機関の債権額及び政府処理案に基づく債権放棄予定額を計算し、これを案内する内容の「日本ハウジングローン株式会社の損失処理に関するご連絡」と題する書面(本件損失に関する連絡)をJHL社のすべての一般行に送付した(乙一)。本件損失に関する連絡には、これに意見等がある場合には、同月二五日までに連絡してほしい旨の記載がされていたが(乙一)、一般行から特段の意見は表明されなかった。 JHL社は、同月二六日、臨時取締役会を開催し、会社再建を断念し政府案に沿った諸手続を進めること、本件母体二行及び一般行に対して債権放棄の要請を行うことを決定した(甲三一 意見は表明されなかった。 JHL社は、同月二六日、臨時取締役会を開催し、会社再建を断念し政府案に沿った諸手続を進めること、本件母体二行及び一般行に対して債権放棄の要請を行うことを決定した(甲三一八)。そして、同日、原告に対し、「お願い書」と題する書面を発し、JHL社の同日開催の取締役会において再建を断念せざるを得ないという結論に達したこと、今後本件閣議決定及び本件閣議了解により決定された住専処理策に従ってJHL社を整理・解散する方向で準備を進めていくことを説明した上で、原告に対し、政府処理案に従ったJHL社債務の全額を免除することを要請した(甲三、三三一)。また、一般行に対しても、JHL社債務の一部を免除することを要請した(甲三二〇)。 本件母体五社は、同月二九日、①母体各社は、本件閣議決定及び本件閣議了解で示された政府案に基づき、JHL社の営業譲渡及び解散を行うために必要な手続を進めるものとし、その実施細目については、JHL社及び母体各社で誠意を持って協議するものとすること、②母体各社は、右の手続の一環として、JHL社の取引金融機関の債権放棄額を確認し、原告及び日債銀は、JHL社の営業譲渡の日までに債権放棄額に対応する貸出債権を全額放棄するものとすることを確認し、同日付けの書面を作成した(甲二一七)。 原告は、同日、取締役会を開催し、JHL社向けの母体行債権の全額を債権放棄することを決議し(甲二一〇)、同日付けで、JHL社との間で、債権放棄約定書(甲四)を締結し、本件債権放棄をした(甲三三四)。右の債権放棄約定書は、同約定書添付の別表記載の貸付債権(元本合計金三七六〇億五五〇〇万円)及びこれに付帯する利息債権を含む一切の権利を対象債権として、原告が、右対象債権を、同日付けでJHL社の「営業譲渡の実行及び解散の登記」が平成八年一二 載の貸付債権(元本合計金三七六〇億五五〇〇万円)及びこれに付帯する利息債権を含む一切の権利を対象債権として、原告が、右対象債権を、同日付けでJHL社の「営業譲渡の実行及び解散の登記」が平成八年一二月末日までに行われないことを解除条件として、放棄することとし、JHL社はこれを承諾すること(第二条)、原告は、右の債権放棄に伴い、対象債権に付帯する一切の担保権及び保証債権が消滅することを確認すること(第三条第一項)、第三条第一項の他、原告がJHL社に対して根抵当権、根質権、包括的な譲渡担保権、根保証債権等、対象債権を担保する包括的な物的・人的担保権を有する場合、原告は、このすべてを同日放棄することとし、JHL社はこれを承諾すること(第三条第二項)、原告とJHL社は、第二条の解除条件が成就した場合、その解除の効果は平成八年一二月末日の経過をもって発生することを確認すること(第四条)等を内容とするものである。なお、この会議の際に配付された資料中には、本件事業年度末に債権放棄をする合理性について、「仮に政府案の不成立により法的整理となっても、平等弁済の主張は社会的責任不履行による信用失墜を招きかねず、何れにしても債権放棄は不可避」と記載され、また、第四条の解除条件について、「実際上想定し難い破産の場合(プロラタ配当)との比較において、本行に損害を与えたとの代表訴訟上の主張誘発を防止する効果」があるとの説明がされていた(乙四四)。 また、原告とJHL社は、同日、右の債権放棄約定書第二条について、①営業譲渡の実行とは、営業譲渡契約において定められる営業譲渡日に行われる資産譲渡等を意味する、②平成八年一二月末日までにJHL社の営業譲渡の実行又は解散の登記のいずれか一方しか行われない場合には、解除条件は成就したものとするとの覚書を締結した(甲五)。 日に行われる資産譲渡等を意味する、②平成八年一二月末日までにJHL社の営業譲渡の実行又は解散の登記のいずれか一方しか行われない場合には、解除条件は成就したものとするとの覚書を締結した(甲五)。 (四) JHL社の処理スキーム原告が本件母体五社の幹事としてJHL社の一般行に送付した本件損失に関する連絡によると、JHL社の処理スキームは以下のとおりであった(乙一)。 すなわち、JHL社は、正常資産と不良資産のうち回収が見込まれる資産を住専処理機構に譲渡し、損失及び欠損が生ずる見込みである不良資産は、母体行、一般行及び系統の負担によって処理するとされている。具体的には、不良資産のうちの損失見込額一兆三五八八億円及び欠損見込額一八七億円の合計一兆三七七五億円について、本件母体二行がJHL社に対する債権を全額放棄することによって五三七〇億円を負担し、一般行はJHL社に対して有している債権の合計九二六四億円のうち四九九九億円を債権放棄することによって同額を負担し、系統が三四〇七億円を贈与することによって同額を負担することとされている。一般行がJHL社に対して有している債権の合計九二六四億円のうち、債権放棄する四九九九億円を除いた四二六五億円及び系統がJHL社に対して有している九九三三億円は返済されることとされている。不良資産からの回収見込額は四九四四億円とされていたが、不良資産は将来的にさらに劣化する懸念があることから(甲二九九)、住専処理機構に対する最終資産譲渡額には不確定要素があり、一般行の債権放棄額は、本件損失に関する連絡が送付された平成八年三月二一日時点では変動する可能性があった。 右の処理スキームによると、正常資産及び不良資産のうち回収が見込まれるものの合計額は、一兆二一〇三億円であり、実質的に一般行及び系統に返済される合計額( 月二一日時点では変動する可能性があった。 右の処理スキームによると、正常資産及び不良資産のうち回収が見込まれるものの合計額は、一兆二一〇三億円であり、実質的に一般行及び系統に返済される合計額(一般行及び系統がJHL社に対して有する債権から、一般行の債権放棄額及び系統の贈与額を除いたもの)は、一兆〇七九一億円ということになる。 (五) JHL社の整理の経緯前記第二の一4記載のとおり、住専処理に係る公的資金六八五〇億円を盛り込んだ平成八年度予算案が、平成八年四月一一日に衆議院本会議で、同年五月一〇日に参議院本会議でそれぞれ可決され、また、同年六月一八日には、住専処理法が成立し、同月二一日施行された。これを受けて、JHL社は、同月二六日、株主総会における特別決議により、解散及び営業譲渡に関する定款一部変更の決議をし、同年八月三一日に、住宅金融債権管理機構との間で営業譲渡契約を締結した上で、同年九月一日解散した。 二本件債権を全額回収不能と評価することの可否(争点1) 1 本件においては、原告が、本件債権相当額を本件事業年度において損金の額に算入して本件確定申告をしたのに対し、被告は、第一に、本件債権は平成八年三月末時点においてその全額が回収不能とは認められないこと、第二に、本件債権放棄に解除条件が付されているから本件事業年度に本件債権放棄が確定しているとは認められないことを理由として本件債権相当額を本件事業年度の損金の額に算入することはできないとしている。 この二つの理由は、双方ともに正当なものと認められてはじめて被告の本件再更正処分が維持できるという関係にある。すなわち、本件債権相当額を本件事業年度において損金の額に算入することができるかどうかは、まず第一に、本件債権が、本件事業年度の終了する平成八年三月末時点までにその全額が回収不 きるという関係にある。すなわち、本件債権相当額を本件事業年度において損金の額に算入することができるかどうかは、まず第一に、本件債権が、本件事業年度の終了する平成八年三月末時点までにその全額が回収不能となっていたかどうかに係るのであって、この点が肯定できれば、本件債権放棄の有無及びその効力を問わず、本件債権相当額を損金に算入することができるというべきであるから、第一の理由が否定されれば、第二の理由の成否にかかわらず、本件再更正処分は違法なものというほかないのである。 したがって、本件においては、まず、本件債権が平成八年三月末時点までにその全額が回収不能と認められるかどうかを検討し、これが認められない場合にのみ、本件債権放棄の効力との関係で、本件債権相当額が損金に算入されるかどうかを検討すれば足りることとなる。そこで、以下、本件債権が全額回収不能となっていたか否かを検討する。 2 法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とするものとされ(法人税法二二条一項)、損金に該当するものは、①当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額、②右①に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用の額、③当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るものであり(同条三項)、その額は一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものと規定されている(同条四項)。したがって、法人の有する金銭債権が回収不能になったことによる損失の額は、各事業年度の所得の計算上損金の額に算入されることとなる(法人税法二二条三項三号)が、法人税法三三条二項が、金銭債権について評価損の計上を禁止していることにかんがみると、金銭債権が回収不能になったことによって損金の 計算上損金の額に算入されることとなる(法人税法二二条三項三号)が、法人税法三三条二項が、金銭債権について評価損の計上を禁止していることにかんがみると、金銭債権が回収不能になったことによって損金の額に算入することができるのは、金銭債権の全額が回収不能である場合に限られるものと解される。法基通九ー六ー二もこのことを明らかにしているものと解される。 ここでいう債権の全額が回収不能か否かについては、法人税法が法人の合理的な経済活動によってもたらされる利益に着目して法人税を課していることからすると(法人税法四条)、合理的な経済活動に関する社会通念に照らして判断するのが相当である。被告は、回収不能というためには、債務者の資産状況、支払能力等から当該債権の回収が事実上不可能であることが客観的に明らかでなければならないとし、具体的には、強制執行、破産手続、会社更生、整理といった回収不能を推定し得る法律的措置が採られた場合及びこれに準じるような場合、すなわち債務者の死亡や所在不明又は事業閉鎖というような回収不能の事実が不可逆的で、一義的に明白な場合に限られると主張する。確かに、被告主張のような場合が回収不能に当たることは明らかであるが、このような場合に該当しない限り、必ず強制執行等の法的措置を講じて回収不能か否かを明らかにすることを要求することは、納税者に対して無益な費用と時間を費やさせるものであって経済的にみて非合理的な活動を強いるものと評価せざるを得ない場合もあると考えられる。すなわち、法的措置を講ずれば、ある程度の回収を図れる可能性がないとはいえない場合においても、債務者の負債及び資産状況、事業の性質、債権者と債務者との関係、債権者が置かれている経済的状況、強制執行が可能な債務名義が既に取得されているか否か、これを取得していない場合には、債務 合においても、債務者の負債及び資産状況、事業の性質、債権者と債務者との関係、債権者が置かれている経済的状況、強制執行が可能な債務名義が既に取得されているか否か、これを取得していない場合には、債務者が債権の存在を認めているか否かなど債務名義取得の可能性の程度やその取得に要する費用と時間、強制執行が奏功する可能性とその程度、法的措置をとることに対する債務者等の利害関係人からの対抗手段等の発生が予想されるリスクとの対比等諸般の事情を総合的に考慮し、法的措置を講ずることが、有害又は無益であって経済的にみて非合理的で行うに値しない行為であると評価できる場合には、もはや当該債権は経済的に無価値となり、社会通念上当該債権の回収が不能であると評価すべきである。 3 これを本件についてみるに、以下のとおり、本件債権は、平成八年三月末までには社会通念上回収不能の状態にあったものというべきである。 (一) 前記一10(四)のとおり、平成八年三月二一日に発送された本件損失に関する連絡記載のJHL社の処理スキームにおいて、正常資産及び不良資産のうち回収が見込まれるものの合計額は一兆二一〇三億円とされ、一般行及び系統がJHL社に対して有している債権の九二六四億円及び九九三三億円の合計一兆九一九七億円をはるかに下回っており、当時の不動産市況及び一般に破綻した会社の資産は破綻時の評価額からさらに劣化しがちであることからすると、平成八年三月末時点はもとより、将来的にも、本件母体二行がJHL社に対する債権を全額放棄したとしても、一般行及び系統の債権の全額を返済することは不可能であったことも明らかである。 (二) 住専問題の処理に当たっては、前記一6(三)、7のとおり、平成七年一〇月二日ころまでには、住専七社のいずれについても整理・清算する方針がまとまったものの、住専処理 ったことも明らかである。 (二) 住専問題の処理に当たっては、前記一6(三)、7のとおり、平成七年一〇月二日ころまでには、住専七社のいずれについても整理・清算する方針がまとまったものの、住専処理によって生ずる損失を住専の債権者である母体行、一般行及び系統でどのように負担するかをめぐってそれぞれの意見が対立し、特に、系統は、母体行が住専処理の損失をすべて負担するという完全母体行責任を主張し、母体行が住専に対して融資している債権の放棄を行うことを限度とする修正母体行責任を主張する母体行との間で激しく意見が対立していた。 本件新事業計画は、被告の主張するとおり、あくまでも再建に関するものであって整理に関するものではないが、原告は、再建計画に責任をもって対処するとの意思を表明したことによって、系統等との関係で、JHL社を計画どおりに再建させることができず、系統の債権の元本を同計画に従って返済させることができなかった場合には、そのことに関し信義則上の責任を追及されかねない立場におかれ、系統もこの点を考慮して住専七社全体に対して年間八四〇億円にものぼる金利減免という多額の負担に応じたとみるのが相当であるから、本件新事業計画が失敗に終わった以上、系統が右のように主張することは無理からぬ面があるというべきである。原告も、このような面を考慮し、プロラタ負担によるべきであると主張したり、自己の責任を全く否定するということはせず、株式会社としてできる限界があるとして、完全母体行責任を追及する系統に対し、本件債権の全額放棄以上の責任をくい止めようとしていたにすぎない。すなわち、原告がJHL社に対して有する債権の全額を放棄せざるを得ないことは、原告はもとより関係者の共通の認識であり、同社の処理を考えるに当たっての当然の前提として、それ以上の負担をいかにく ない。すなわち、原告がJHL社に対して有する債権の全額を放棄せざるを得ないことは、原告はもとより関係者の共通の認識であり、同社の処理を考えるに当たっての当然の前提として、それ以上の負担をいかにくい止めるかということを問題としていたというべきである。 (三) また、当時はバブル崩壊後の不良債権の処理が国内外で重要な課題になっていたところ、とりわけ、住専処理の問題は、その損失が巨額に上る上、経営基盤が必ずしも盤石でない系統が住専七社に対して巨額の貸付をし、その処理策いかんによっては日本の金融システムに多大な影響を及ぼすおそれがあったことから、日本経済の行方にとって重大な懸案事項となっており、しかも、前記一8(一)、(二)のとおり、本件閣議決定及び本件閣議了解において多額の公的資金導入の方針が打ち出されたことから、政治問題化し、公的資金導入の可否をめぐって与野党間に鋭い対立があった。 しかし、前記一9のとおり、少なくとも、母体行が住専各社に対して有する債権の全額を放棄すべきことについては、与野党の考え方は一致しており、マスコミの報道及び一般世論もこの点について異論はなかったし、平成八年二月一五日に衆議院予算委員会に参考人として招致された原告のP1頭取が、母体行としては三兆五〇〇〇億円という母体行債権の全額を放棄すると述べたことからすると、原告がJHL社に対する債権を放棄しないことは、社会全体を敵に回すに等しく、社会的存在としての銀行としては自己にとってこの上なく有害な行為というほかない上、代表者の言を翻すことによる社会的信用の失墜という面からも、もはや社会通念上許されない状態になっていたものというべきである。 (四) 以上のとおり、本件新事業計画の破綻の後、JHL社の資産は、一般行及び系統の債権についてさえその全額を弁済するには不足していた はや社会通念上許されない状態になっていたものというべきである。 (四) 以上のとおり、本件新事業計画の破綻の後、JHL社の資産は、一般行及び系統の債権についてさえその全額を弁済するには不足していた上、住専処理問題は政治問題化し世間の注目を集めていたところ、原告は、系統から信義則上の責任を追及されかねない立場に陥っており、これを避けるには本件債権を放棄するほかないと認識し、これを公にしていたし、このことは、関係者間の共通の認識であったばかりか、政府与党はもとより、この問題に対して厳しい姿勢で臨んでいた野党やマスコミ及び一般世論においても異論がなかったことからすると、少なくとも、平成八年三月末までの間に、原告は、本件債権を回収することが事実上不可能になっていたものというべきであり、本件債権は、本件事業年度において、社会通念上回収不能の状態にあったものというべきである。 また、仮に政府の住専処理策が成立せずJHL社を破産手続によって処理せざるを得ない事態が予想されたとしても、後記4(三)のとおり、原告が債権届出をしてその手続に参加することは、法的にみても不可能に近く、法的には可能であったとしても、原告にとって有害かつ無益であって経済的にみて非合理的で行うに値しない行為というほかないから右の判断を左右するものではない。 4 被告は、平成八年三月末の時点においては、政府の住専処理案の成否が未定であり、法的な処理によることになれば原告が本件債権を回収する道も残されていたと主張するが、以下のとおり、被告の主張は採用することができない。 (一) 被告は、政府の住専処理案の成否は、平成八年三月末には未だ流動的であったと主張し、一般に、ある処理策が決定するまでには、基本的事項から周辺事項へというように各部分ごとに順次定まっていき、周辺事項は基本的事項を前提 住専処理案の成否は、平成八年三月末には未だ流動的であったと主張し、一般に、ある処理策が決定するまでには、基本的事項から周辺事項へというように各部分ごとに順次定まっていき、周辺事項は基本的事項を前提として決定されていくのが通常であるものの、それが不可分一体の案である以上、全体が決定され実施に移されるまでは基本的事項、周辺事項を含めて案の一部にすぎず、実施に至らなければそれまでに定まった部分を含めて白紙に帰することになるとした上で、政府の住専処理案で提示された損失負担割合はあくまで同処理案の実現を前提とするものであって、同処理案が実現せず法的整理手続に移行した場合には白紙に戻り、債権者平等の原則による配当の可能性が残されていたと主張する。また、政府の住専処理策に係る国会審議において、野党側議員は一貫して公的資金投入についての疑問や強力な批判を繰り返し、平成八年度予算も、問題を住専処理法案の審議に先送りすることにより平成八年五月一〇日にようやく成立をみたものであること、公的資金投入に対する世論の反対は極めて強かったこと、関係金融機関が政府の住専処理案に必ずしも合意していなかったことなどによると、平成八年三月末において、政府の住専処理策が実現するか否かについては予断を許さない状況にあったと主張し、原告ら母体行が、本件債権のような母体行債権を全額放棄することになるかどうかは流動的であったと主張するようである。 確かに、政府の住専処理案が母体行債権の全額放棄、一般行債権の一部放棄、系統債権の全額弁済と系統による贈与、住専処理に伴う損失の公的資金による補てんなどの要素から構成される一つの処理案であって、その一部分でも成立しなければ、処理案が全体として成立しないことは明らかである。しかしながら、母体行債権の全額放棄という点については、前記のとおり、 んなどの要素から構成される一つの処理案であって、その一部分でも成立しなければ、処理案が全体として成立しないことは明らかである。しかしながら、母体行債権の全額放棄という点については、前記のとおり、本件新事業計画が失敗に終わった以上、信義則上、いかなる処理がされるとしても当然の前提とされるべきことであったということができるから、同処理案として成立しないからといって、この点までが全くの白紙に戻るということはできない。また、本件においては、右3(三)記載のとおり、住専処理問題は政治問題化しており、新進党及び共産党は、政府の処理案について、公的資金を導入する点については反対していたものの、住専処理に当たって、母体行の責任を追及しようという点では一致しており、むしろ、政府の住専処理案以上に母体行の責任を強調していたのであるし、マスコミや世論の動向もこれとほとんど同様であり、政府の住専処理案に関する議論の対立点は、公的資金を導入することの是非をめぐるもので、それに関連して、母体行に政府の住専処理案以上の責任を負担させるかどうかにあり、母体行がその債権を全額放棄すべきことには争いがなかった。これに加え、衆議院予算委員会に参考人として招致された原告のP1頭取が、母体行債権の全額を放棄すると述べたことをも併せて考えると、仮に政府の住専処理案が全体として成立しないとしても、新たな処理案において、母体行債権の全額放棄を盛り込む形で住専処理策が策定されることは確実であったというべきであって、平成八年三月の段階で政府の住専処理案が採用されるかどうかが流動的であったからといって原告が本件債権を回収することが社会通念上不可能であったとの結論に影響があるものとはいえない。 (二) 被告は、新進党が、住専処理法案の審議に当たり、公的資金の導入に反対し、会社更生法の適 らといって原告が本件債権を回収することが社会通念上不可能であったとの結論に影響があるものとはいえない。 (二) 被告は、新進党が、住専処理法案の審議に当たり、公的資金の導入に反対し、会社更生法の適用による法的整理を独自の対案として提言していたこと、久保亘大蔵大臣(以下「久保大蔵大臣」という。)が、平成八年六月一三日の衆議院金融問題等に関する特別委員会において、政府の住専処理案が白紙に戻ると法的処理によらざるを得ないが、法的処理を行うとすると債権者が損失を平等に分担することになる旨述べていることから、住専処理法が成立せず、政府の住専処理案が実現されない場合には、破産手続等の法的処理による可能性が高く、そうなると住専に対して融資をしている各金融機関がその債権額に応じて平等の割合で損失の負担をすることとなる可能性が高い旨主張する。 しかしながら、前記一9(一)のとおり、新進党は、平成八年三月一三日に示した「住専問題に関する具体的方針」において、住専各社の経営破綻の処理は会社更生法の適用による法的処理によることを提案しているものの、同時に、法的処理において住専各社の経営破綻に母体行が重大な責任を負っている経緯を十分に踏まえた実質的公平の実現を図ることを挙げ、また、右に先立ち平成七年一〇月一七日に発表した新進党案では、母体行が全責任を負う「完全母体行責任」又は母体行が債権を全額放棄し、不良債権を圧縮し、残った資産を受け皿会社に移行する方式を採用すべきであるとし、平成八年二月二七日に発表した「住専問題に関する基本方針」では、母体行は住専の経営破綻に至った経緯にかんがみ、最大限の責任を果たすべきであるとするなど、一貫して母体行の責任を追及する姿勢を見せており、新進党の案に従って住専処理を法的処理で行うとしても相応の母体行責任を追及することとなり、 経緯にかんがみ、最大限の責任を果たすべきであるとするなど、一貫して母体行の責任を追及する姿勢を見せており、新進党の案に従って住専処理を法的処理で行うとしても相応の母体行責任を追及することとなり、母体行は、少なくとも、住専に対する母体行債権の全額の放棄を迫られることは必至であったというべきである。また、住専問題に対する国会等の対立点は、六八五〇億円もの公的資金の導入と関連して、修正母体行責任に限定した上で公的資金を導入すべきか、それとも、母体行により多くの責任を負担させるべきかという点にあったというべきであり、右の被告が指摘する久保大蔵大臣の答弁は、政府の住専処理案が成立せず破産処理になると、母体行により多くの責任を負担させることはおろか修正母体行責任すら追及できなくなるとして、政府の住専処理案に反対する野党を牽制するためにされたものにすぎないというべきである。系統の責任を追及するマスコミの論調も存在したが(甲一八九)、これも、公的資金の導入との関係で主張されていたものにすぎず、母体行の負担を軽減すべきであるという議論が存在したとの証拠は見当たらない。これらのことからすると、仮に住専処理法案が成立しないにしても、母体行がその債権の回収を図ることを是認するような解決策が策定される可能性は全くなかったというほかない。 (三) なお、住専処理法案が成立せず、何らの処理方策も定められなかった場合には、住専各社は破産法に基づいて処理せざるを得ない状態であったが、この処理手続において債権者が自己の債権を回収するには債権届出をしなければならないところ、一般に、破産裁判所においては、破産会社の経営者等破産に至ったことに責任を有する債権者については、債権届出の取下げを求め、又は異議を述べるよう破産管財人に指導しており、破産管財人がこれに応じた行動を取る に、破産裁判所においては、破産会社の経営者等破産に至ったことに責任を有する債権者については、債権届出の取下げを求め、又は異議を述べるよう破産管財人に指導しており、破産管財人がこれに応じた行動を取ることにより、右のような債権者の多くが実際上債権届出を取り下げざるを得ない事態に至ることは、当裁判所に顕著な事実であり、あくまで債権届出を取り下げなかったとしても、このような債権者については債権確定訴訟において信義則違反を理由に債権届出自体が認められなかった裁判例も存在するところである。そして、原告については、前記一1のとおり、JHL社の設立に関与した経緯、独占禁止法で許容される上限までJHL社の株式を保有していたこと、JHL社に対して役員及び職員を派遣し、また、多額の融資をすることによって、JHL社の経営に深く関与していたこと、前記一2のとおり、JHL社の設立当初JHL社が金融機関から融資を受ける際には原告が保証を行っていたこと、原告がJHL社の債務を保証する方式から集合債権譲渡担保を準共有する方式に変更になった後についても、原告が担保協定スキームの幹事となっていたこと、第一次再建計画、本件新事業計画の策定に前後して、原告が、系統等に対して、JHL社に対する融資残高を維侍するように働きかけ、その過程で原告がJHL社の再建を支援していくとの表明をしたことなどの事実関係からすると、原告は、本件新事業計画を達成できなかったことにつき、系統等から信義則上の責任を追及されかねない立場にあったというべきであるから、JHL社の破産手続において、原告が債権届出をしてその債権を回収することは、法的にみても不可能に近く、かつ、仮にそれが法的には可能であったとしても、回収に要する時間及び費用は多大なものとなることが予想されるし、その挙に出たことに対する社会全体の てその債権を回収することは、法的にみても不可能に近く、かつ、仮にそれが法的には可能であったとしても、回収に要する時間及び費用は多大なものとなることが予想されるし、その挙に出たことに対する社会全体の批判ばかりか、これによって債権回収額の減少する一般行や系統からの対抗手段としての損害賠償請求訴訟の提起も予想されることからすると、有害かつ無益であって経済的にみて非合理的で行うに値しない行為というほかないから、本件債権はこのような手続を経るまでもなく経済的に無価値になったものというべきである。 三本件債権放棄と損金算入の当否(争点2)本件債権については、前記二で説示したとおり、平成八年三月末の時点で既に全額回収不能の状態にあり経済的な価値はなくなっていたと評価すべきであって、債権放棄の有無にかかわらず、その全額を損金に算入できるものというべきであるから、争点2についてはもはや判断を示す必要はないというべきであるが、被告は、全額回収不能と評価し得る場合を厳格に限定する見解を前提として、本件債権が右時点で全額回収不能の状態にあったことを争っているので、念のため、仮に被告の右見解を前提として、本件債権放棄による損金算入が認められるか否かについても判断を示すこととする。 1 債権放棄による損金算入と法人税法の定め法人税法三七条は、法人がした無償による経済的利益の供与は、同条六項かっこ書に記載するもののほか、名目のいかんにかかわらず寄付金とし、同条二項にいう損金算入限度額を超える金額は損金に算入しない、としている。そして、債権放棄は、その理由のいかんを問わず、同条六項かっこ書に記載された費目のいずれかに該当するということは困難であるから、これを債務者に対して無償で経済的利益を与えるものと評価すると、法人税法上、その債権相当額を損金算入限度額を超 わず、同条六項かっこ書に記載された費目のいずれかに該当するということは困難であるから、これを債務者に対して無償で経済的利益を与えるものと評価すると、法人税法上、その債権相当額を損金算入限度額を超えて損金に算入することはできないというほかない。 しかし、債権放棄は様々な理由によってされるものであって、その中には債務者に経済的利益を与えること自体よりも、それによって自社の利益を図ることを主たる理由としてされる場合もあると考えられる。このことからすると、債権放棄のすべてについて無償のものと評価するのは妥当性を欠くというほかないのであり、債権放棄の理由が、単なる任意の利益処分にとどまらず、経済的にみて合理的であり、税法上これを損金と評価しないことが納税者に対して経済的にみて無益又は有害な行動を強いることとなるなど不合理な結果を招くと認められる場合には、その無償性を否定し、寄付金に該当しないとし得るものというべきである。この点については、被告も前記第二の三1(被告の主張)(一)(6)において任意の利益処分といえない場合には損金に算入することができるとしており、課税庁においては、従来から経済的合理性の認められる一定の場合には債権放棄の寄付金該当性を否定するとの取扱いを行っている(法基通九ー四ー一)が、この取扱いは、このような解釈を前提としてはじめて法人税法に適合する適法な運用ということができるのである。 このように債権放棄による損金算入の可否は、それが法人税法三七条にいう無償による経済的利益の供与に該当するか否かという法解釈によるべき問題であり、課税庁の定める通達はこの解釈に適合する限度でのみ適法と評価されるのであるから、法基通所定の事由に該当しないことのみをもってその損金該当性を否定することは許されないのであって、前記のように、債権放棄の理 庁の定める通達はこの解釈に適合する限度でのみ適法と評価されるのであるから、法基通所定の事由に該当しないことのみをもってその損金該当性を否定することは許されないのであって、前記のように、債権放棄の理由が経済的にみて合理的であって、これを損金と評価しないことが納税者に対して経済的にみて無益又は有害な行動を強いることとなるなど不合理な結果を招くと認められる場合には、これを損金に算入するというのが法人税法の定めに合致した正しい法解釈というべきである。 2 本件債権放棄の理由原告が本件債権放棄をするに至った理由は、前記認定の事実関係、特に、第一次再建計画及び本件新事業計画をめぐって系統に融資残高の維持を要請し、また、大蔵省に対して念書を差し入れた経緯(前記一4(三)、5(二)、(四))、JHL社処理に関する系統との協議において、系統側から完全母体行責任による処理を求められ、母体行の責任を追及する動きが非常に厳しかったこと(前記一7(一)ないし(三)、政府の住専処理方策が策定された経緯(前記一8)、国会等において母体行の責任が追及され、P1頭取が参考人として招致された衆議院予算委員会で、母体行債権の全額を放棄する旨述べていること(前記一9)、原告が、JHL社に対する債権を平成八年三月期において全額貸し倒れすることを決断し、平成七年一一月二七日に自社の中間決算報告の記者会見において公表したこと(前記一10(二))、本件債権放棄を決議した原告の取締役会において配付された資料には、本件事業年度末に債権放棄をする合理性について、「仮に政府案の不成立により法的整理となっても、平等弁済の主張は社会的責任不履行による信用失墜を招きかねず、何れにしても債権放棄は不可避」との説明がされていたこと(前記一10(三))からすると、平成七年九月、新事業計画の失敗が明 整理となっても、平等弁済の主張は社会的責任不履行による信用失墜を招きかねず、何れにしても債権放棄は不可避」との説明がされていたこと(前記一10(三))からすると、平成七年九月、新事業計画の失敗が明らかになった時点までには、新事業計画を達成できなかったことにより、母体行としての責任を果たす意味から系統や一般行の受ける損害をできるだけ軽減するために少なくとも自己の債権回収は諦めざるを得ないとの判断に至り、さらに本件債権放棄の時点までには、政府の住専処理スキームに従ってJHL社を処理するのが最善の途であり、仮にこのスキームが成立しない場合にも、破産手続において自己の債権の回収を図ることは、仮にそれが法的に可能であっても、それに要する費用と時間は多大なものとなり、社会全体からの批判を受けるおそれもあったばかりか、系統や一般行という多くの同業者から信義則に反するとの非難を受け、さらには損害賠償請求を誘発し、回収可能額を超える損害を発生させるという結果を招くおそれがあるとの判断の下に、むしろ債権放棄をすることによって、それ以上の責任を追及されることによる負担の増加をできるだけ避けるのが得策であると判断したことによるものと認めるのが相当である。 原告が本件債権放棄を行わず、本件債権についてその一部でも回収するような動きに出た場合には、与野党双方及び世論の反発を招き、当時銀行に対する監督権限、免許の取消権限を有していた大蔵大臣ないし大蔵省の方針に反するものであり、また、機関投資家として、原告の金融債を引き受ける立場にある系統の反発を招き、原告が有形・無形の不利益を被るおそれがあることは明らかであって、そのような事態に至れば、銀行業を営む原告に計り知れない打撃を与え、経済的損失もばく大なものに上ることは明らかである。そうすると、右のような理由により 不利益を被るおそれがあることは明らかであって、そのような事態に至れば、銀行業を営む原告に計り知れない打撃を与え、経済的損失もばく大なものに上ることは明らかである。そうすると、右のような理由により本件債権放棄をすることは、経済的にみて合理的であって、これを損金と評価しないことは、納税者に対して、損害を顧ずに債権を行使することを命じているに等しく、経済的にみて無益かつ有害で非合理的な行動を強いる結果を招くことになるというべきである。 なお、被告は本件債権放棄の目的が多額の株式売却益に対する課税を回避することにあったと主張しており、確かに本件債権相当額を損金に算入しない場合には右のような課税がされる関係にあったことは明らかである。しかし、前記認定の事実関係によると、原告が多額の株式売却益を発生させたのは、本件債権はもはや回収できず本件事業年度において償却せざるを得ないと判断したことにより、それによって発生する欠損をできるだけ少なくするためにやむを得ず保有株式の含み益を現実化させたものであって、本件債権放棄は償却の一方法として選択されたものであるから、むしろ株式売却益の計上が債権放棄等何らかの方法による本件債権の償却を前提としてされたというべきであり、被告の主張は、このような事実の流れを考慮せず、最終的な時点における両者の関係のみをとらえているというほかない。また、保有株式の含み益は、いわゆるバブル経済崩壊後の厳しい経済状況の下においては、原告にとって経営体力を維持するために非常に貴重なものであって、できる限り現実化させず温存すべきものであるから、これを敢えて現実化させたことは、まず本件債権は回収できず償却せざるを得ないという確固たる判断があり、株式売却益の計上はその判断に従って採られた行動とみるべきものである。これらの点からすると、被告 これを敢えて現実化させたことは、まず本件債権は回収できず償却せざるを得ないという確固たる判断があり、株式売却益の計上はその判断に従って採られた行動とみるべきものである。これらの点からすると、被告の右主張は採用できない。 3 本件債権放棄の効力被告は本件債権放棄に解除条件が付されていることから、これによる損失は確定しておらず損金に算入することができない旨主張する。 しかし、損金算入の前提として、損失の確定を要するとしても、そこでいう確定とは、一般に税法上の権利確定主義という用語で言われる際の確定と同義のものと解すべきであって、抽象的な権利義務の発生にとどまらず訴訟において請求又は確認し得る程度に具体的に発生していることを意味するものと解すべきである。このような観点から本件債権放棄をみると、その内容は、前記事実関係からすると、民法一二七条二項にいう解除条件に当たり、その意思表示後条件成否未定の間も債権放棄の法的効力は発生しており、その効力は、抽象的なものではなく、訴訟においても本件債務の不存在が確認される程度に具体的に発生しているのであるから、損失の発生は確定しているというべきである。 被告は、本件債権放棄は、もともと一定の事実が生じたときに限り行使できる債権について、当該一定の事実が生じるか否か未定の間に、当該事実が生じないことを解除条件として債権放棄したに等しく無意味な行為であると主張する。この主張は、原告が本件債権を住専処理策の帰すうが明らかになるまで現実に行使することができないものであったことを前提とするものである。しかし、原告は、当時本件債権の行使につき、事実上はともかく(事実上の点を考慮すれば、むしろ前記のとおりもはや回収不能の状態にあったというべきである。)、何らの法的制約も受けていなかったのであるから、本件債権放棄 当時本件債権の行使につき、事実上はともかく(事実上の点を考慮すれば、むしろ前記のとおりもはや回収不能の状態にあったというべきである。)、何らの法的制約も受けていなかったのであるから、本件債権放棄の法的効力を考察するに当たっては、被告の右主張はその前提を欠くものというほかない。 また、被告は、賃料増額請求との対比から解除条件成否未定の間は法的効力が確定していないと主張しているが、賃料増額請求は賃借人がこれに応じない限り請求がされた時点では具体的な賃料額は定まらず、裁判所の判決確定によってはじめて具体的な賃料額が形成されるのに対し、解除条件付債権放棄は条件成否未定の間も債権放棄の効力は具体的に発生しており、当事者間に争いがあって裁判所がその判断をするとしても、当該判断は既に存在する権利状態を確認するにすぎないものである。このように被告の対比するものは全く性質を異にするものであり、右主張は採用できない。 さらに、被告は本件債権は既に利息が免除されていたから解除条件付債権放棄は経済的には停止条件付債権放棄と異ならないと主張するが、停止条件付債権放棄では、条件成否未定の間は債権が依然として存在しこれを行使することができ、例えば、自ら破産申立てをするなどして政府の住専処理スキームを瓦解させることも可能なのに対し、解除条件付債権放棄ではこのような行動に出ることはできず、単に住専処理スキームの成否を静かに見守るしかないという点で大きな違いがあるというほかなく、右主張は取るに足らないものというほかない。 4 本件債権放棄の損金該当性このように本件債権放棄の効力は、既にそれがされた時点において確定的に発生したと認めることができ、しかも、その理由は、経済的にみて合理的であって、これを損金と評価しないことは、納税者に対して経済的にみて無益かつ有害な行 の効力は、既にそれがされた時点において確定的に発生したと認めることができ、しかも、その理由は、経済的にみて合理的であって、これを損金と評価しないことは、納税者に対して経済的にみて無益かつ有害な行動を強いる結果を招くこととなると考えられるから、これを無償による経済的利益の供与として損金算入を否定することはできず、原告は本件債権放棄によってその債権相当額の損失を受けたものと評価すべきである。 四過少申告加算税賦課決定処分の取消しを求める趣旨について証拠(甲一、七)によると、被告は、平成八年八月二三日に、法人税額を一二五一億三七二一万二二〇〇円とし、これにより納付すべき税額を一二八五億一二一〇万六六〇〇円、これに対する過少申告加算税額を一九一億九二六三万三五〇〇円とする本件更正処分及び本件第一過少申告加算税賦課決定処分をしたこと、平成一〇年三月三一日に、法人税額を一二七三億一六三七万八二〇〇円とし、これにより納付すべき税額を二一億七九一六万六〇〇〇円、これに対する過少申告加算税額を三億一九一九万七〇〇〇円、重加算税額を三一一万八五〇〇円とする本件再更正処分、本件第二過少申告加算税賦課決定処分及び本件重加算税賦課決定処分をしたことが認められる。 本件更正処分は、本件再更正処分に吸収されるが、本件第一過少申告加算税賦課決定処分と本件第二過少申告加算税賦課決定処分は、それぞれ、本件更正処分、本件再更正処分によって納付すべきことになる税額に対応して決定されており、両者は別個の処分というべきである。そうすると、本件において、取消訴訟の対象となる処分は、本件再更正処分、本件第一過少申告加算税賦課決定処分、本件第二過少申告加算税賦課決定処分及び本件重加算税賦課決定処分であるというべきである。 原告は、本訴において、被告が平成一〇年三月三一日付けでした 本件再更正処分、本件第一過少申告加算税賦課決定処分、本件第二過少申告加算税賦課決定処分及び本件重加算税賦課決定処分であるというべきである。 原告は、本訴において、被告が平成一〇年三月三一日付けでした原告の平成七年四月一日から平成八年三月三一日までの事業年度の法人税の再更正処分のうち欠損金旗一一八億七三九〇万〇八三八円を超える部分並びに過少申告加算税変更賦課決定処分及び重加算税賦課決定処分を取り消すことを求め、過少申告加算税変更賦課決定処分という処分が存在することを前提としているが、かかる処分は存在しないため、請求の趣旨のうち右の部分は取消しを求める処分が存在しないので不適法との疑念が生じないでもない。 しかし、原告の平成一二年一〇月三一日付けの「求釈明申立に関する回答書」によると、原告が取消しを求めている過少申告加算税賦課決定処分は、本件第一過少申告加算税賦課決定処分及び本件第二過少申告加算税賦課決定処分を合計した一九五億一一八三万〇五〇〇円であることは明らかであって、原告は、右の二つの過少申告加算税賦課決定処分の取消しを求めているものと善解できる。 五結論前記二及び三のとおり、本件債権は、平成八年三月末までに社会通念上全額回収不能となっており、仮に回収不能でないとしても、本件債権放棄によってその全額を損金に算入すべきものであるから、法人税の計算において、本件債権相当額三七六〇億五五〇〇万円を損金の額に算入した原告の本件確定申告は適法である。右金額を損金の額に算入すると原告の所得金額はマイナスとなることは明らかであるから、右金額を損金の額に算入することができないとしてされた本件再更正処分は、その余の点を判断するまでもなく、違法なものとして取消しを免れないし、本件再更正処分によって新たに加えられた更正理由を考慮しても、原告には納付 額に算入することができないとしてされた本件再更正処分は、その余の点を判断するまでもなく、違法なものとして取消しを免れないし、本件再更正処分によって新たに加えられた更正理由を考慮しても、原告には納付すべき税額が発生しないことが明らかであるから、過少申告加算税及び重加算税を賦課されるいわれはなく、結局、本件再更正処分等は、争点3について判断するまでもなく、いずれも取消しを免れない。 よって、原告の本訴請求は理由があるからこれを認容することとし、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条を適用して主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第三部裁判長裁判官藤山雅行裁判官谷口豊裁判官加藤聡
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