平成14(行ウ)2 損害賠償等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成16年3月18日 札幌地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-8604.txt

判決文本文19,957 文字)

主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告A及び同Bは,北海道に対し,連帯して300万円及びこれに対する平成14年2月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告A及び同Cは,北海道に対し,連帯して1700万円及びこれに対する平成14年3月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告Dは,北海道に対し,2000万円及びうち300万円に対する平成14年2月23日から,うち1700万円に対する同年3月12日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,平成13年9月に開催された自動車競技会を主要行事とするインターナショナルラリーイン北海道2001(以下「本件ラリー」という。)に対し,北海道知事がイベント推進事業費補助金を交付し,また本件ラリーに合わせて開催された「21世紀のあるべき車社会を探る地域交流事業」(以下「本件地域政策事業」という。)に対し,北海道十勝支庁長が地域政策補助金を交付したことは,いずれも違法であると主張して,北海道の住民である原告らが,地方自治法242条の2第1項4号(地方自治法等の一部を改正する法律(平成14年法律第4号)1条による改正前のもの)に基づき,北海道に代位して,被告A,同C及び同Bに対し損害賠償を,上記各交付の相手方である被告Dに対し不当利得の返還を,それぞれ請求する住民訴訟である。 1 争いのない事実(1) 当事者原告らは,北海道に居住する住民である。 被告Aは北海道知事,被告Cは北海道経済部長,被告Bは北海道十勝支庁長,被告Dはインターナショナルラリーイン北海道2001大会運営委員会(以下「運営委員会」という。)会長を務めていた者である。 る。 被告Aは北海道知事,被告Cは北海道経済部長,被告Bは北海道十勝支庁長,被告Dはインターナショナルラリーイン北海道2001大会運営委員会(以下「運営委員会」という。)会長を務めていた者である。 (2) 本件ラリー及び本件地域政策事業の開催平成13年9月14日から16日にかけて,運営委員会の主催により,本件ラリーが開催された。本件ラリーは,十勝支庁管内の林道を利用した自動車ラリー競技会を中心にしたイベントで,これに付随して,運営委員会の主催により,地場産品の販売PR等を行う本件地域政策事業が実施された。 本件ラリーの主催者は,毎日新聞社,スポーツニッポン新聞社,メガポート放送及び株式会社プランニング・フォーの4者で組織された運営委員会であり,北海道は,帯広市などの8市町村等とともに本件ラリーを後援した。 本件ラリーの参加台数は27台,観客動員数は約7700人であった。 (3) 本件ラリーに対する公金交付運営委員会は,平成13年9月14日,北海道知事に対し,本件ラリーに対するイベント推進事業費補助金1700万円(以下「本件イベント補助金」という。)の交付を申請した。 この申請を受け,北海道知事は,本件ラリーがイベント推進事業費補助金交付要綱(以下「イベント補助金要綱」という。)の要件を充たすものと判断し,平成13年10月22日,申請どおり本件イベント補助金の交付を決定し,この決定に基づき,北海道知事は,平成14年3月11日,運営委員会に対し,本件イベント補助金として1700万円を交付した。 なお,本件イベント補助金の交付決定は,北海道財務規則(昭和45年北海道規則第30号)13条1項に基づき,北海道経済部長である被告Cが専決した。 (4) 本件地域政策事業に対する公金交付運営委員会は,平成14年1月16日,北海道十勝支庁長に対し,本件地域政 45年北海道規則第30号)13条1項に基づき,北海道経済部長である被告Cが専決した。 (4) 本件地域政策事業に対する公金交付運営委員会は,平成14年1月16日,北海道十勝支庁長に対し,本件地域政策事業に対する地域政策補助金300万円(以下「本件地域政策補助金」といい,これと本件イベント補助金とを併せて,以下「本件各補助金」という。)の交付を申請した。 この申請を受け,北海道十勝支庁長は,本件地域政策事業が十勝支庁の平成13年度地域政策補助金交付要綱(以下「地域政策補助金要綱」という。)の要件を充たすものと判断し,平成14年1月18日,申請どおり本件地域政策補助金の交付を決定し,この決定に基づき,北海道十勝支庁長は,同月24日,運営委員会に対し,本件地域政策補助金として300万円を交付した。 (5) 本件各補助金の指令前着手本件イベント補助金の交付内示は,本件ラリーの着手後である平成13年9月14日に行われた。本件地域政策補助金については交付内示はなく,補助金交付申請が補助金指令前着手届とともに事業完了後に行われた。 (6) 住民監査請求原告らは,平成13年11月19日,北海道監査委員に対し,本件各補助金の交付が違法であるとして,本件各補助金の交付決定(決定予定のものを含む。)を取り消すことを求めたが,北海道監査委員は,平成14年1月11日,原告らの上記監査請求を棄却した。 2 争点(1) 北海道が本件各補助金を交付したこと自体の違法性の有無(原告らの主張)ア北海道環境基本条例(平成8年北海道条例第37号。以下「環境条例」という。)違反,北海道省エネルギー・新エネルギー促進条例(平成12年北海道条例第108号。以下「省エネ条例」という。)違反本件ラリーのような自動車ラリー競技大会は,改造ガソリン車が高出力で林道を走行し,自然環 ,北海道省エネルギー・新エネルギー促進条例(平成12年北海道条例第108号。以下「省エネ条例」という。)違反本件ラリーのような自動車ラリー競技大会は,改造ガソリン車が高出力で林道を走行し,自然環境を破壊するもので,環境条例に違反する。また,燃費の悪い四輪駆動車の利用拡大につながり,化石燃料の多大な使用をもたらすものであり,省エネ条例に違反する。 現に,本件ラリーによって,①ラリー車の路外逸脱による樹木の損傷,②ラリー車の疾走による砂塵等の飛散,③観客やラリー関係者による植生の踏み荒らし,④ラリー車による損害,⑤林道の柔構造の破壊という自然破壊が引き起こされた。そもそも,ラリー競技は必然的に甚大な環境破壊を招くものである。環境への影響については,長期間にわたるモニタリングをしなければ影響がないと評価することはできない。 したがって,本件イベント補助金の交付は違法である。また,本件ラリーと本件地域政策事業は,一体不可分の事業ないし後者は前者に附属する事業に過ぎないから,本件地域政策補助金の交付も違法である。 イ公共性,大衆性及び公益性の欠如地方自治法232条の2により,北海道は,大衆性,公共性及び公益性の認められない事業に対して補助金を交付することは許されない。 本件ラリーを含む自動車ラリー大会は,特殊なもので,参加者及び観戦者はごく一部の特定の人々に限られる。また,ごく一部の者ないし団体によって取り仕切られた広がりのない企画である。また,本件ラリーによる実際の集客数は,十勝圏域の観光客総数のわずか0.09パーセントにとどまるなど,北海道の観光の振興及び経済活性化への寄与や,十勝地域の広域的な振興に寄与する程度のものではない。本件ラリーが国際格式のものであることも,何ら公益性の根拠となるものではない。 したがって,本件ラリーに大衆性,公 の振興及び経済活性化への寄与や,十勝地域の広域的な振興に寄与する程度のものではない。本件ラリーが国際格式のものであることも,何ら公益性の根拠となるものではない。 したがって,本件ラリーに大衆性,公共性及び公益性は認められず,本件イベント補助金の交付は地方自治法232条の2に反し違法である。また,本件ラリーと本件地域政策事業は,一体不可分の事業ないし後者は前者に附属する事業に過ぎないから,本件地域政策補助金の交付も違法である。 ウ営利目的の事業北海道観光イベント育成事業実施要領(以下「実施要領」という。)において,営利を目的とする事業に対して補助金を交付することができないこととされている。この規定の趣旨は現在でも生きており,本件ラリーに対しても適用がある。 本件ラリーは,自動車関連業界の利益と毎日新聞社の販売部数増加を目的とする営利目的の企画であり,実施要領によれば補助金交付の対象にはできないイベントである。また,営利を目的としていないとしても,結果的に特定の業者等に利益が誘導されるものであれば,実施要領に反し違法である。 したがって,本件イベント補助金の交付は違法である。また,本件ラリーと本件地域政策事業は,一体不可分の事業ないし後者は前者に附属する事業に過ぎないから,本件地域政策補助金の交付も違法である。 エ補助金の重複イベント補助金要綱4条1項ただし書,地域政策補助金交付要綱第3ただし書及び同運用方針第2の2(1)では,北海道の他の補助金の交付の対象となる事業について補助対象事業から除くとされている。 しかし,本件ラリーと本件地域政策事業は,一体不可分の事業ないし後者は前者に附属する事業に過ぎず,2つの事業とは言えないから,本件地域政策補助金も本件ラリーに交付されたものである。 したがって,本件各補助金の交付は重複しており,いず 業は,一体不可分の事業ないし後者は前者に附属する事業に過ぎず,2つの事業とは言えないから,本件地域政策補助金も本件ラリーに交付されたものである。 したがって,本件各補助金の交付は重複しており,いずれの補助金の交付要綱にも違反しており,違法である。 オ公共団体の主催しない事業イベント補助金要綱2条は,道内市町村及び観光関係団体等が主体となって組織される実行委員会等をイベント補助金の交付の対象としている。 しかし,本件ラリーの主催者は運営委員会であり,公共団体等が主催するものではない。また,イベントを後援することとその主体となることとは別であるから,関係市町村や観光協会が本件ラリーを後援したからといって,イベント補助金要綱2条の要件を充たすものではない(平成14年に開催されたアジア・パシフィックラリー選手権では,関係市町村等が後援ではなく主催に立場が変わったことも,後援しただけではイベント補助金要綱2条を充たさないことの証左である。)。 したがって,本件イベント補助金の交付はイベント補助金要綱に反し違法である。 カ特別の必要性の不存在(ア) イベント補助金要綱4条では,同条1項で定める要件をすべて充たし,北海道観光の振興と北海道経済の活性化に大きく寄与すると認められる事業を補助対象事業としており,2項では,その他知事が特に必要と認める事業につき補助対象事業とされている。 同条2項にいう「特に必要と認める事業」とは,同条1項の要件を全て充たすものに匹敵するイベントであることが必要である。 しかし,本件ラリーは,自然環境を破壊することに加え,観客数は約7700人にとどまり,2000万円という補助金額は観客数に比して高額に過ぎる。また,北海道経済の活性化への寄与や集客力が大きいとも認められないし,もたらす経済効果も一過性である。 また,予算 は約7700人にとどまり,2000万円という補助金額は観客数に比して高額に過ぎる。また,北海道経済の活性化への寄与や集客力が大きいとも認められないし,もたらす経済効果も一過性である。 また,予算の交付を検討する際には,事業の将来性を検討する必要があるところ,本件ラリーに対する本件各補助金の交付は,本件ラリーが世界ラリー選手権(以下「WRC」という。)に昇格することを前提とした先行投資というべきものであるが,その実現可能性は極めて低い。 加えて,営利を目的とする事業に対して補助金を交付することができないとする実施要領の趣旨は,イベント補助金要綱4条の「知事が特に必要と認める事業」の判断材料となるところ,前記ウのとおり,本件ラリーは営利を目的とする事業であって,実施要領によれば補助金を交付することができないイベントである。 さらに,環境条例及び省エネ条例は,イベント補助金要綱4条の「知事が特に必要と認める事業」及び6条の「知事が特に必要と認める場合」の解釈指針となるものであり,本件イベント補助金の支出には上記各条例の精神を上回る合理的,積極的理由が必要であるところ,そのような理由がない。 本件ラリーが国際格式であることも,「知事が特に必要と認める事業」及び「知事が特に必要と認める場合」に当たることの根拠とはならない。 したがって,本件ラリーはイベント補助金要綱4条2項の「その他知事が特に必要と認める事業」に該当せず,本件イベント補助金の交付はイベント補助金要綱に反し違法である。 (イ) イベント補助金要綱6条では,イベント補助金の額が300万円を超え1000万円以内とされており,知事が特に必要と認める場合はこの限りではないとされているところ,本件ラリーへの交付には,以上の原告らの主張のとおり様々な違法性があり,特に観客数が約7700人にとど 0万円以内とされており,知事が特に必要と認める場合はこの限りではないとされているところ,本件ラリーへの交付には,以上の原告らの主張のとおり様々な違法性があり,特に観客数が約7700人にとどまったことに照らせば,1700万円もの高額な補助金を交付することに特別の必要性は認められない。 さらに,環境条例及び省エネ条例は,イベント補助金要綱6条の「知事が特に必要と認める場合」の解釈指針となるものであり,本件イベント補助金を1000万円を超えて支出するには,上記条例の精神を上回る合理的,積極的理由が必要であるところ,そのような理由がない。本件ラリーが国際格式であることも,「知事が特に必要と認める場合」に当たることの根拠とはならない。 したがって,少なくとも,本件イベント補助金のうち1000万円を超える部分の交付は違法である。 (被告ら及び参加人の主張)ア環境条例違反・省エネ条例違反の主張について原告らが引用する環境条例及び省エネ条例の規定は,いずれも訓示規定であり,具体的な法規制を定めたものではないから,これらの規定から直ちに補助金交付の違法性を論ずることはできない。 本件ラリーによって発生する騒音及び排ガスは,環境に打撃を与えるほどのものではなく,環境への損害は,認められるとしても一過性のものに過ぎない。 イ公益性の欠如の主張について本件ラリーは,国内外からの大会関係者及び観光客の誘致が見込まれ,国際格式のイベントの開催地としての北海道を内外にアピールするのに格好の事業であること,北海道観光のイメージアップや国際的知名度の向上が図られること,札幌以外の地域への観光客誘致の契機になること等,北海道観光の振興及び経済活性化に寄与し,十勝地域の広域的地域振興にも寄与することなどから,公益性が認められる。 また,本件地域政策事業は, れること,札幌以外の地域への観光客誘致の契機になること等,北海道観光の振興及び経済活性化に寄与し,十勝地域の広域的地域振興にも寄与することなどから,公益性が認められる。 また,本件地域政策事業は,地場産品の消費拡大を図り,来場者と地域住民,地域住民相互間の交流を促進するもので,十勝地域の広域的地域振興及び活性化に寄与することなどから,公益性が認められる。 ウ営利目的の事業の主張について地方自治法232条の2によっても,営利目的事業に対する補助が禁じられているものではないし,そもそも,本件ラリー及び本件地域政策事業は,営利を目的とする事業ではない。また,北海道観光イベント育成事業は平成12年度限りで廃止した事業であり,実施要領が本件イベント補助金に適用されることはあり得ない。 エ補助金の重複の主張について本件ラリーと本件地域政策事業は別個の事業であり,本件地域政策補助金が本件ラリーに交付されたのと同視することはできない。 オ公共団体の主催しない事業の主張について本件ラリーは,関係市町村や観光協会が後援したもので,実質的には後援にとどまらず,運営委員会と一体となって大会の運営を担っていた。 カ特別の必要性の不存在の主張について本件ラリーは,北海道観光の振興と北海道経済の活性化に大きく寄与する事業であることから,イベント補助金要綱4条2項の「知事が特に必要と認める事業」及び6条ただし書の「知事が特に必要と認める場合」に該当すると判断した。 そのうち,補助対象事業の要件については,本件ラリーがイベント補助金要綱4条1項各号の要件のうち,「北海道観光のPRが効果的に実施できる事業規模を有すると認められる事業」(2号),「国際観光の推進又は冬季の北海道観光を推進する趣旨を有すると認められる事業」(3号)の要件に概ね該当していることも踏ま 道観光のPRが効果的に実施できる事業規模を有すると認められる事業」(2号),「国際観光の推進又は冬季の北海道観光を推進する趣旨を有すると認められる事業」(3号)の要件に概ね該当していることも踏まえて総合的に判断した。 また,補助金額の要件については,上記のほか,本件ラリーの予算規模,運営委員会の資金調達の状況,平成13年度のイベント補助金の予算計上額のうち半分の2000万円はいわゆる枠予算(臨時に支援する必要が生じた大規模イベントに対応するために,予算編成段階では交付先が特定されていない予算)として措置されたものであること,イベント補助金要綱6条本文における補助率(補助対象経費の2分の1以内)の範囲内であること等をも踏まえて総合的に判断した。 なお,本件イベント補助金の交付と将来のWRC開催は無関係であり,WRCの開催の可能性を考慮の対象としなかったことに何ら問題はない。 (2) 北海道が本件各補助金を交付した手続の違法性の有無(原告らの主張)補助事業は,一般的に交付決定通知又は内示を受けた後,初めて事業の執行に着手し,交付決定の内容及びこれに付した条件に従って事業を遂行しなければならないところ,本件においては,争いのない事実(5)記載のとおり,本件イベント補助金の交付内示は事業着手後に行われ,本件地域政策補助金については,交付内示は行われず,事業完了後に補助金交付申請がされている。 したがって,本件各補助金の交付手続には違法があり,地方自治法232条の2に違反して交付されたことになる。 (被告ら及び参加人の主張)補助金の交付決定通知又は内示前の事業着手は禁じられておらず,通知又は内示を待っていては事業実施の適期を失するなどの正当な理由があれば,通知又は内示前の事業着手も認められている。 本件ラリーは,交付決定通知又は内示の前から宣伝 前の事業着手は禁じられておらず,通知又は内示を待っていては事業実施の適期を失するなどの正当な理由があれば,通知又は内示前の事業着手も認められている。 本件ラリーは,交付決定通知又は内示の前から宣伝活動を行う必要性が高いことや,前例のない事業であることから補助金申請に向けての準備が進まなかったという事情から,通知又は内示を待てない正当な理由があったもので,交付決定通知又は内示前に事業に着手しても手続違反とはならない。 (3) 被告らの損害賠償責任等(原告らの主張)被告A,同B及び同Cは,違法な補助金の交付をした者として,北海道に対し,損害賠償責任を負う。被告Dは,違法な補助金の交付を受けた相手方であり,北海道に対し,不当利得返還義務を負う。 よって,原告らは,被告らに対し,第1に記載のとおり,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,北海道に代位して損害賠償及び不当利得の返還並びに遅延損害金(ただし,本件イベント補助金については交付の日の翌日以降の,本件地域政策補助金については訴状送達の日の翌日以降の各遅延損害金)の支払を求める。 (被告ら及び参加人の主張)争う。 第3 争点に対する判断 1 証拠(かっこ内に掲記したもののほか,丙14ないし16,証人E,同F及び同G)及び弁論の全趣旨によれば,上記争いのない事実のほか,本件各補助金交付の経緯について,以下の事実が認められる。 (1) 運営委員会は,北海道に対し,平成13年3月16日付けで本件ラリーに対する北海道の後援を要請するとともに,同年4月25日付けで北海道知事の大会名誉会長就任を要請した(丙14添付の別紙3及び4)。 (2) 北海道の後援及び北海道知事の大会名誉会長就任の件については,北海道の総合企画部政策室(以下「政策室」という。)が事務を所管していた。政策室は,本件ラリーのイベ 丙14添付の別紙3及び4)。 (2) 北海道の後援及び北海道知事の大会名誉会長就任の件については,北海道の総合企画部政策室(以下「政策室」という。)が事務を所管していた。政策室は,本件ラリーのイベントとしての性格,とりわけ,その観光振興や地域振興といった経済波及効果の点に着目する一方で,関係機関の許認可の見込,安全対策や環境への配慮といったことについても総合的に勘案しながら検討を進めていた。 このうち,環境への配慮という点については,政策室において,まず平成13年5月18日付けで,運営委員会に対し,自然環境や生活環境の保全について十分配慮すること,季節ごとに実施している環境調査の結果について逐次関係者に情報提供するとともに,調査結果によって希少動物等に影響が出ることが想定される場合には,コースの変更等必要な対応策を講じることなどの事項について照会し(丙14添付の別紙7),これを受けて,運営委員会は,同月22日付けで,運営委員会が実施している環境調査の内容は,関係者に対し随時情報提供するとともに,調査の結果,希少動物等への重大な影響が懸念される場合には,コース変更を含めて必要な措置を講じることなどといったことを回答した(丙14添付の別紙8)。 政策室は,環境生活部環境政策課及び同自然環境課を含む関係各課とも協議の上,運営委員会側から上記のとおり一定の責任ある回答が得られたことを評価して,平成13年6月18日付けで,北海道の後援を決定するとともに,同日付けで北海道知事の大会名誉会長就任についても知事の決裁を得た。なお,後援の決定に当たっては,上記回答内容どおりの必要な対応策をとることを後援の条件とし,条件をクリアできない場合については,後援の取消も含めた必要な措置を講じる旨,併せて運営委員会側に通知した(丙14添付の別紙5及び6)。 (3 回答内容どおりの必要な対応策をとることを後援の条件とし,条件をクリアできない場合については,後援の取消も含めた必要な措置を講じる旨,併せて運営委員会側に通知した(丙14添付の別紙5及び6)。 (3) 平成13年6月末ころ,運営委員会は,本件ラリー等の事業計画を公表した。そのころ,運営委員会から北海道の窓口であった政策室に対し,2000万円の補助金交付についても打診があった。政策室においては,運営委員会から事業内容に関する聴取を進める中,同事業は,実質的に見て本件ラリー本体とその周辺イベントである本件地域政策事業の2つからなるものと判断し,2つの事業に対応する本件各補助金がある旨を運営委員会に伝えるとともに,上記2つの事業に対応する各補助金を主管する経済部観光振興課(本件イベント補助金の主管)及び十勝支庁地域政策部地域政策課(本件地域政策補助金の主管。以下「地域政策課」という。)に対し,以上の区分を前提にそれぞれ補助金交付の可否について検討するよう依頼した。 (4) 運営委員会は,平成13年9月14日,北海道知事に対し,本件イベント補助金1700万円の交付を申請した(丙10)。 これについて,観光振興課は,以下のとおり,イベント補助金要綱の要件を充たすものであり,補助金交付が相当であると判断し,その結果,同年10月22日付けで,被告Cによって本件イベント補助金の交付決定がされた(丙11)。 すなわち,補助の目的及び効果については,本件ラリーは,国内初のアジア・パシフィックラリー選手権,WRCという国際的かつ集客力のある大規模レースの招致に向けた国際格式で開催されるイベントで,国内外から一定程度の集客が見込まれること,国際格式のイベントの開催地としての北海道を内外にアピールするのに格好の事業であること,各種メディアによる十勝圏域の観光PRによ 格式で開催されるイベントで,国内外から一定程度の集客が見込まれること,国際格式のイベントの開催地としての北海道を内外にアピールするのに格好の事業であること,各種メディアによる十勝圏域の観光PRにより北海道観光のイメージアップが図られることなどから,北海道観光の振興及び北海道経済の活性化に寄与するものと判断した(イベント補助金要綱2条関係)。 補助対象者の要件については,要綱及びその具体的運用を定めた規定によって,「市町村又は観光協会が主体となって構成組織される団体」を対象者とする旨規定されているところ,本件ラリーにおいて,関係市町村及び観光協会の立場は,名目こそ後援であるものの,実際には,イベント会場にブースを設置して観光PRや情報提供,関係者への宿泊施設の提供を行ったり,車両による送迎,来場者の誘導等を行うなど,大会の運営の一翼を担って主催者と共に実質的に事業に参画しているものとみなし得ることから,要件を充たすものと判断した(同2条及び3条関係)。 補助対象事業の要件については,イベント補助金要綱4条1項2号に定める北海道観光のPRが効果的に実施できる事業規模を有すると認められる事業や,同3号に定める国際観光の推進等の趣旨を有すると認められる事業といった要件に概ね該当するほか,上記のとおり,本件ラリーが北海道観光の振興と北海道経済の活性化に大きく寄与する事業であるといった事情を総合的に考慮した上で,「知事が特に必要と認める事業」という要件に該当するものと判断した(同4条関係)。 1700万円という補助金額については,本件ラリーの事業効果,本件ラリーの予算規模,運営委員会の資金調達状況といった具体的事情を考慮し,その上で,平成13年度のイベント推進事業費補助金のうち2000万円がいわゆる枠予算(臨時に支援する必要が生じた大規模イベント ラリーの予算規模,運営委員会の資金調達状況といった具体的事情を考慮し,その上で,平成13年度のイベント推進事業費補助金のうち2000万円がいわゆる枠予算(臨時に支援する必要が生じた大規模イベントに対応するために,予算編成段階では交付先が特定されていない予算)として措置されていたことや,申請の金額が補助率(補助対象経費の2分の1以内)の範囲内であったことなどを総合考慮の上,「知事が特に必要と認める場合」に該当するものと認めるのが相当と判断した(同6条関係)。 なお,観光振興課においては,環境問題は同課が直接所管するものではなく,他方で,既に窓口として本件ラリーの環境への影響等について一定の検討を進めていた政策室から問題がない旨の連絡を受けていたことから,こうした主管部署の判断等も念頭においた上,特に補助金交付に当たって支障があるものとは判断しなかった。 (5) 観光振興課は,一般的に,イベント事業は準備期間に時間がかかること,特に本件ラリーの場合,同種の前例のない事業であったから直前まで資金計画も定まらず,補助金申請に向けた準備が遅れたのもやむを得なかった面があること,本件ラリーの場合,交付決定通知又は内示の以前から宣伝活動を効果的に行わなければ,補助の目的である国内外からの観光客等の誘致,イベント開催地としてのPR等が十分にできず,事業の効果が著しく損なわれるおそれがあったことなどの諸事情を勘案して,交付決定通知又は内示前に事業に着手していてもやむを得ないものと判断した。 (6) 平成13年11月19日の住民監査請求を受けて,同請求が棄却された平成14年1月11日までの間,本件地域政策補助金の申請手続が一時中断したため,運営委員会は,同年1月16日付けで,北海道十勝支庁長に対し,本件地域政策事業に対する地域政策補助金300万円の交付 た平成14年1月11日までの間,本件地域政策補助金の申請手続が一時中断したため,運営委員会は,同年1月16日付けで,北海道十勝支庁長に対し,本件地域政策事業に対する地域政策補助金300万円の交付を指令前着手届とともに申請した(丙12)。 同庁地域政策部地域政策課は,本件地域政策事業が本件ラリーの開催に合わせて地域特産品の奨励や地域間の交流連携などが図られており,十勝圏域の活性化に寄与するものであると認める一方,地域政策補助金交付要綱の要件についても充たしたことから,本件地域政策補助金の交付が適当であるとの判断に至った。また,一般的にイベント開催事業は,準備期間に時間がかかることや事業内容等が開催直前まで固まらないものも多いことから,交付決定通知又は内示前に事業に着手していてもやむを得ないものと判断した。そこで,北海道十勝支庁長は,平成14年1月18日,本件地域政策補助金の交付を決定した(丙13)。 これらの事実を前提として,以下,本件各補助金の交付が違法か否かにつき,争点に従って判断する。 2 争点(1)ア(環境条例違反及び省エネ条例違反)についてまず,原告らは,補助金交付の対象となった本件ラリーが環境条例及び省エネ条例に違反することをもって,本件各補助金交付はいずれも違法である旨主張する。 しかしながら,地方自治法242条の2第1項4号及び同条が前提とする同法242条所定の違法とは,財務会計法規違反を意味するものであるところ,環境条例及び省エネ条例の諸規定は環境やエネルギーに関する施策についての基本理念や関係者の責務等を定めたものであって,財務会計に関する具体的な法規制を定めたものでないことは,その規定の文言等に照らし,およそ明らかである。 実質的に見ても,原告らは,本件ラリーによる環境破壊ということを排ガス,粉塵,埃,騒音,樹木 ,財務会計に関する具体的な法規制を定めたものでないことは,その規定の文言等に照らし,およそ明らかである。 実質的に見ても,原告らは,本件ラリーによる環境破壊ということを排ガス,粉塵,埃,騒音,樹木の損傷,植生の踏み荒らしなどといった一般的かつ抽象的な事項で殊更強調するのみで,特に本件ラリーによって実際上甚大な破壊がもたらされたのか,それが補助金交付の違法性を実質的に基礎付ける具体的な法令上の根拠について,その主張の上でも,何ら具体的に明らかにしていないものと言うほかない。 よって,原告らの環境条例違反及び省エネ条例違反を根拠とする違法の主張は,理由がない。 3 争点(1)イ,オ及びカ(公益性の欠如,公共団体の主催しない事業及び特別の必要性の不存在)について(1) 補助金交付の根拠規定である地方自治法232条の2は,「普通地方公共団体は,その公益上必要がある場合においては,寄附又は補助をすることができる。」と定めているところ,補助金を交付するか否かは,地方公共団体の長が,地方公共団体における経済的,社会的,文化的な諸要素や各種の行政施策の在り方等の諸事情を総合的に考慮した上で,住民の多様な意見及び利益を勘案して,様々な政策要求の優先関係を政治的に決定してその行政目的を達成し,もって住民の福祉の増進に寄与するという見地から判断すべきものであるから,地方公共団体の長に政策判断としての裁量権が認められていると解すべきである。他方で,同条文が「公益上」の「必要」を要件とした趣旨は,恣意的な補助金交付によって地方公共団体の財政秩序を乱すことを防止することにあると解されるから,このような「規制要件」である「公益上」の「必要」性に関する行政判断の裁量権の範囲は無制約な自由裁量とはいえないことは明らかであって,同要件を充足しない補助金交付は当然違法と にあると解されるから,このような「規制要件」である「公益上」の「必要」性に関する行政判断の裁量権の範囲は無制約な自由裁量とはいえないことは明らかであって,同要件を充足しない補助金交付は当然違法となるものと解するのが相当である。 そして,公益上の必要性の有無は,補助の目的,経緯及び効果,補助の対象となる事業の目的,性質及び状況,地方公共団体の財政規模及び状況,補助金交付手続の公正等の諸事情を総合的に判断して決せられるべきである。ところで,本件各補助金については,補助金の交付の申請,決定等に関して手続等を定めた北海道補助金等交付規則(昭和47年北海道規則第34号)の外に,本件各要綱において,補助の目的,対象となる事業及び補助金交付の要件等につき具体的に定めて,公益上の必要性についての判断基準を明らかにしているものであるが,本件各要綱は,行政当局が行政の指針として制定する内部規則であって,法律や条例等の委任規定に基づき定められたものではなく,それ自体法規としての性質をもつものではないから,本件各補助金の交付が本件各要綱に違反するからといって,直ちに違法となるものとまではいえないと解すべきである。しかしながら,本件各要綱に違反して補助金が交付された場合には,それが補助金が「公益上」の「必要」がないにもかかわらず交付されたことを推認させる事情となる余地があることになる。したがって,以下,本件各要綱所定の各要件該当性(争点(1)イとオ及びカは,相互に関連することから,併せて判断する。)につき検討する。 (2) イベント補助金要綱2条に定める補助対象者の要件について,原告らは,第2の2項(1)記載のとおり主張する(争点(1)オ)。 イベント推進事業費補助金の補助対象者は,イベント補助金要綱2条及び3条には,道内市町村,観光関係団体等が主体となって 要件について,原告らは,第2の2項(1)記載のとおり主張する(争点(1)オ)。 イベント推進事業費補助金の補助対象者は,イベント補助金要綱2条及び3条には,道内市町村,観光関係団体等が主体となって組織される実行委員会等であると定められ,同要綱の具体的運用について定めた「イベント推進事業費補助金の運用について」第3条には,市町村又は観光協会が主体となって構成組織される団体であると定められている。これらの規定の趣旨は,市町村等が主体的積極的に参画する団体が主催するイベント事業であれば,北海道観光の振興及び北海道経済の活性化に寄与するといった補助金交付のそもそもの目的の実現性が大きいことに着目して対象者の限定を図ったものと見るのが合理的である。したがって,補助対象者の要件該当性の判断,特に「主体」か否かの判断に当たっては,補助金の交付元と交付先とは本来異なるものであるという「補助」の趣旨を踏まえ,主催か後援かといった関与の名目,形式的地位,立場のみならず,市町村等が当該事業主体や事業そのものに実質的に参画しているか否かの観点からも判断するのが相当である。 これを本件ラリーについて見ると,証拠(丙18)及び弁論の全趣旨によれば,後援した関係市町村等において,イベント会場にブースを設置して観光PRや情報提供,関係者への宿泊施設提供を行ったり,車両による送迎,来場者の誘導等を行うなど,事業の一部に参画して自らこれを執り行ったことが認められるところ,観光振興課においても,1項(4)で認定したとおり,関係市町村等が運営委員会に実質的に参画しているものと評価して,イベント補助金要綱3条所定の要件を充たすものと判断しているのであり,こうした判断は,上記の実態に照らしても不相当とまではいえない。結局,本件イベント補助金の補助対象者が要綱等の定めに違反して て,イベント補助金要綱3条所定の要件を充たすものと判断しているのであり,こうした判断は,上記の実態に照らしても不相当とまではいえない。結局,本件イベント補助金の補助対象者が要綱等の定めに違反していたとまではいえないから,争点(1)オに関する原告らの主張は理由がない。 (3) 次いで,補助対象事業の要件ないし補助金額の要件(争点(1)イ及びカ)について判断する。 イベント補助金要綱4条は,イベント推進事業費補助金交付の対象となる事業として,①来道観光客をはじめとする集客力が極めて高いと認められる事業,②北海道観光のPRが効果的に実施できる事業規模を有すると認められる事業,③国際観光の推進又は冬季の北海道観光を推進する趣旨を有すると認められる事業及び④市町村が経費負担する事業のすべてに該当し,北海道観光の振興と北海道経済の活性化に大きく寄与すると認められる事業(1項)又は知事が特別に必要と認める事業(2項)と定めている。1項(4)記載のとおり本件イベント補助金は同条2項に基づくものであるところ,前記のとおり,イベント補助金要綱は,補助対象事業について,地方自治法232条の2所定の公益上の必要性の判断基準を行政指針として具体化したものであって,同要綱4条1項と並んで,知事が同条2項にいう特別の必要性があると判断したものも補助対象となることを定めているのであるから,同条1項本文は例示的な基準であって,同条2項の特別の必要性の有無については,同条1項本文で例示的に明示された判断基準等とも対比しながら,北海道における経済的社会的要素,地理的文化的要素等の諸事情を踏まえて道民の福祉の増進に寄与するものであるかどうかといった見地から総合的政策的に判断することができると解するのが相当である。 この点,1項(4)記載のとおり,観光振興課は,本件ラリーは, の諸事情を踏まえて道民の福祉の増進に寄与するものであるかどうかといった見地から総合的政策的に判断することができると解するのが相当である。 この点,1項(4)記載のとおり,観光振興課は,本件ラリーは,国際格式イベントで国内外から一定程度の集客が見込まれること,国際格式のイベントの開催地としての北海道を内外にアピールするのに格好の事業であること,各種メディアによる十勝圏域の観光PRによる北海道観光のイメージアップが図られることなどから,補助の目的及び効果において北海道観光の振興及び北海道経済の活性化に寄与するものと捉えた上で,イベント補助金要綱4条1項2号及び3号の要件にも合致すること等を総合的に考慮して,同条2項所定の補助の対象とすべき特別の必要性があると判断したものと認められる。現実の事業内容を見ても,証拠(丙12)及び弁論の全趣旨によれば,本件ラリーは,平成13年9月14日から16日までの間,帯広競馬場をメイン会場に,帯広市など北海道十勝支庁管内の8市町村内にある国有林や道有林の林道などを走行コースとしたラリー競技会をメインイベントとして開催され,このラリー競技会は,北海道で初めて(国内でも2例目)国際自動車連盟(FIA)の規定する国際格式で実施されたものであること,本件ラリーの参加車両台数は27台であり,観客動員数は約7700人,大会関係者は約800人であったことが認められ,相応の事業規模をもって観光振興及び地域経済の活性化に寄与したことが窺われる。こうした客観的事実を踏まえて,上記観光振興課の判断を見る限り,特に要綱の定める補助対象事業の要件該当性について,要綱に違反する判断があったものとは認められないと言うべきである。 また,イベント補助金要綱6条によれば,イベント推進事業費補助金の額は300万円を超え1000万円以内とされる の要件該当性について,要綱に違反する判断があったものとは認められないと言うべきである。 また,イベント補助金要綱6条によれば,イベント推進事業費補助金の額は300万円を超え1000万円以内とされる一方で,知事が特に必要と認める場合は1000万円を超えて交付し得るものとされている。知事が1000万円を超えてイベント推進事業費補助金を交付することについて特別の必要性の有無を判断するに当たっても,住民の多様な意見及び利益を勘案しつつ,北海道における経済的社会的要素,地理的文化的要素等の諸事情を踏まえて道民の福祉の増進に寄与するものであるかどうかといった前同様の見地から,政策的にその採否を判断することができると解するのが相当である。 これについても,観光振興課は,1項(4)で認定したとおり,本件ラリーの事業効果,本件ラリーの予算規模,運営委員会の資金調達状況といった具体的事情を考慮し,その上で,平成13年度のイベント推進事業費補助金のうち2000万円が臨時に支援する必要が生じた大規模イベントに対応するために,予算編成段階では交付先が特定されていない予算として措置されていたことや,申請の金額が補助率(補助対象経費の2分の1以内)の範囲内であったことなどを総合考慮して,1000万円を超えてイベント推進事業費補助金を交付すべき特別の必要性があると判断したものと認められる。関係証拠によって認められる本件ラリーの事業規模や事業効果その他の事情を勘案しても,観光振興課の上記判断が特に要綱の定めに反するものと認めるだけの具体的事情は何ら窺われない。 よって,争点(1)オに関する原告らの主張は理由がない。 (4) これに対して,原告らは,本件ラリーが特定かつ少数のラリー愛好者の参加や観戦しか期待できない特殊なイベントであり,もたらす経済効果も一過性のものに過 1)オに関する原告らの主張は理由がない。 (4) これに対して,原告らは,本件ラリーが特定かつ少数のラリー愛好者の参加や観戦しか期待できない特殊なイベントであり,もたらす経済効果も一過性のものに過ぎないなど公共性,大衆性及び公益性を欠いた事業であるから,本件各補助金の交付は地方自治法232条の2に違反する旨主張する。しかしながら,前記説示のとおり,同法の「公益上必要」か否かの要件は,政策的な裁量権のある要件であるところ,前記説示のとおり,本件ラリーが相応の事業規模や集客数をもって実施されたことが認められ,観光振興及び経済活性化に寄与したことが窺われることに照らすと,原告らの主張をもってしても,本件ラリーが,補助金交付の要件である「公益上必要」を欠くとはいえないことは明らかであるのみならず,他方で(1)ないし(3)において説示したように地方自治法232条の2所定の公益上の必要性の判断基準を内部指針として具体化したイベント補助金要綱の要件該当性について,要綱に違反する認定,判断をしたとも認められないのであるから,原告らの上記主張は理由がない。 また,原告らは,本件ラリーによる環境破壊といった視点からしても,補助対象事業の要件該当性判断は違法であるといった趣旨の主張もしているが,そもそも環境破壊に関する原告らの主張が理由がないことは,既に説示したとおりである。 よって,争点(1)イに関する原告らの主張も理由がない。 4 争点(1)ウ(営利目的の事業)について原告らは,本件ラリーは,自動車関連業界及び毎日新聞社が営利を目的として企画した営利目的の事業であって,旧実施要領に違反する旨主張する。 しかしながら,弁論の全趣旨によれば,北海道観光イベント育成事業は平成12年度限りで廃止された事業であることが認められ,旧実施要領自体も失効しているのである あって,旧実施要領に違反する旨主張する。 しかしながら,弁論の全趣旨によれば,北海道観光イベント育成事業は平成12年度限りで廃止された事業であることが認められ,旧実施要領自体も失効しているのであるから,これを根拠としての違反を言う原告らの主張は,前提を欠くもので理由がない(なお,補助金交付の対象となる事業には,相当の収益が生じる事業も含まれている(北海道補助金交付規則5条2項参照)。また,イベント補助金要綱は,営利を目的とした事業に対する補助金の交付を別段禁止するものではないところ,本件ラリーが営利目的の事業であったと認めるに足りる証拠はなく,北海道観光の振興と北海道経済の活性化に寄与する側面があったことは上記のとおりであるし,営利目的事業に対する補助金交付の一事をもって,その公益上の必要性が否定されるとは解されない。したがって,いずれにせよ原告の主張は失当である。)。 よって,争点(1)ウに関する原告らの主張は理由がない。 5 争点(1)エ(補助金の重複)について原告らは,本件ラリーと本件地域政策事業は一体不可分の事業であるから,本件各補助金の交付が同一事業に対する複数の交付を禁じた要綱等の規定に違反する旨主張している。 確かに,両事業については,その事業主体がいずれも運営委員会であり,同一の機会に実施されたものであったことは当事者間に争いがない。しかしながら,上記認定のとおり,本件ラリーはラリー競技会を中心とした事業であり,一方,本件地域政策事業は地域物産等の販売及びPR等からなる事業であって,実際の事業自体から見ても内容を異にすると認められることに加え,それぞれの事業がイベント補助金要綱又は地域政策補助金交付要綱に定める補助金交付の対象事業に該当するか否かという点について見ても,各別の補助金制度の差異にまさに対応する形で要件に合致 ることに加え,それぞれの事業がイベント補助金要綱又は地域政策補助金交付要綱に定める補助金交付の対象事業に該当するか否かという点について見ても,各別の補助金制度の差異にまさに対応する形で要件に合致するものと認められるのであるから,これらが同一の事業に当たり補助金の重複交付に該当するとする原告らの主張は理由がない。上記のような事情に照らせば,1項(3)記載のとおり,政策室において,当初の事業内容を検討する中で,ラリー競技会そのもの(本件ラリー)の開催とこれに合わせて開催される地域物産等の販売等の本件地域政策事業の開催とが実質上区別できるものと判断した上,その後,各主管部署に格別の検討を依頼するに至ったことなどの一連の検討経緯は,それ自体として特に問題がないものと見るべきであるし,また,こうした検討経緯に沿う形で,実際,運営委員会において,各別の補助金申請手続を行っているのであるから,手続的にも問題は認められない。 以上のとおり,本件各補助金が重複して交付されたものとは認められないから,争点(1)エに関する原告らの主張は理由がない。 6 争点(2)について北海道財務会計関係例規集(質疑応答編)(丙9)によれば,補助事業は,それに係る補助金の交付決定を受けた後に着手すべきものであるのが原則であるが,交付決定を待っていたのでは事業実施の適期を失する等正当な理由がある場合には,交付決定前の事業着手も認められるものとされている。こうした例外的な取扱については,それ自体として特に法令の明文規定に反するものではないほか,当該取扱を容認する上記実質的な理由を勘案しても,相応の合理性を有しているものと認めるのが相当である。 これを本件について見ると,1項(4)に記載したとおり,観光振興課及び地域政策課は,本件各事業の性質及び進捗状況,財政の規模及び状況等の しても,相応の合理性を有しているものと認めるのが相当である。 これを本件について見ると,1項(4)に記載したとおり,観光振興課及び地域政策課は,本件各事業の性質及び進捗状況,財政の規模及び状況等の諸事情を斟酌した上で,補助金の交付決定を待っていたのでは補助事業実施の適期を失し,補助の目的及び効果が減殺されることになると判断したことが認められ,そうした判断自体について,特に問題があったことを窺わせるような特段の事情は見当たらないのであるから,結局のところ,交付決定通知又は内示前の事業着手について何ら手続違背はないものと言うべきである。よって,争点(2)に関する原告らの主張は理由がない。 7 結論以上のとおりであって,争点(3)について判断するまでもなく,本件各補助金交付が違法であるとする原告らの主張はいずれも理由がないから,原告らの請求をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第3部裁判長裁判官生野考司裁判官佐伯恒治裁判官大淵茂樹

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る