- 1 -平成31年1月24日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成29年(ワ)第35663号特許権侵害差止請求事件口頭弁論終結日平成30年11月6日判決 原告大塚製薬株式会社 同訴訟代理人弁護士城山康文 山内真之 村上遼 同訴訟復代理人弁護士大出萌 被告株式会社アドバンスト・メディカル・ケア 同訴訟代理人弁護士水野晃丹羽厚太郎中田裕人同訴訟代理人弁理士関根宣夫 被告補助参加人株式会社ダイセル 同訴訟代理人弁護士吉澤敬夫同訴訟代理人弁理士紺野昭男井波実 同補佐人弁理士伊藤武泰- 2 -主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,別紙被告製品目録記載の製品を生産し,譲渡し,貸し渡し,譲渡若しくは貸渡しの申出をし,又は輸出してはならない 2 被告は,別紙被告製品目録記載の製品を廃棄せよ第2 事案の概要本件は,発明の名称を「エクオール含有大豆胚軸発酵物,及びその製造方法」 とする特許権を有する原告が,被告による大豆胚芽抽出発酵物含有食品の生産・販売等が原告の上記特許権を侵害すると主張して,被告に対し,特許法100条1項及び2項に基づき,上記製品の生産・譲渡等の差止め及び上記製品の廃棄を 原告が,被告による大豆胚芽抽出発酵物含有食品の生産・販売等が原告の上記特許権を侵害すると主張して,被告に対し,特許法100条1項及び2項に基づき,上記製品の生産・譲渡等の差止め及び上記製品の廃棄を求める事案である。 1 前提事実(証拠等を掲げた事実以外は,当事者間に争いがない。) (1) 原告の特許権原告は,次の特許権(以下,「本件特許権」といい,この特許を「本件特許」といい,本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)を有している。 ア特許番号特許第5946489号 イ発明の名称エクオール含有大豆胚軸発酵物,及びその製造方法ウ出願日平成26年4月15日エ優先日平成17年12月6日,平成18年10月11日オ優先権主張国日本カ登録日平成28年6月10日 (2) 本件特許の出願経過- 3 -本件特許に係る出願(特願2014-083507号)は,特願2007-549133号(丙3の1。以下「親出願」という。)の一部を分割した特願2012-082486号の一部を分割した特願2012-149675号の一部を分割したものである。 そして,親出願については,特願2005-352337(平成17年1 2月6日出願,丙16)及び特願2006-277934(平成18年10月11日出願,丙17)を基礎出願とする国内優先権主張がある。 (3) 特許請求の範囲の記載本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1及び3の記載は,本判決添付の本件特許に係る特許公報の該当項記載のとおりである(以下,請 求項1に係る発明を「本件発明1」といい,請求項3に係る発明を「本件発明3」といい,両発明を併せて「本件各発明」という。)。 (4) 本件 に係る特許公報の該当項記載のとおりである(以下,請 求項1に係る発明を「本件発明1」といい,請求項3に係る発明を「本件発明3」といい,両発明を併せて「本件各発明」という。)。 (4) 本件各発明の構成要件ア本件発明1を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれの符号に従い「構成要件1-A」のようにいう。)。 1-A オルニチン及び1-B エクオールを含有する1-C 大豆胚軸発酵物。 イ本件発明3を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれの符号に従い「構成要件3-A」のようにいう。)。 3-A 請求項1又は2に記載の大豆胚軸発酵物を配合した3-B 食品,特定保健用食品,栄養補助食品,機能性食品,病者用食品,化粧品,又は医薬品。 (5) 原告による訂正審判請求原告は,平成30年10月15日付けで,本件特許の請求項1及び3の特 許請求の範囲について,訂正審判請求を行った(以下「本件訂正審判請求」- 4 -という。)。訂正後の請求項1及び3の記載は,次のとおりである。(甲31の1~2)ア請求項1の記載(以下,この発明を「本件訂正発明1」という。)「オルニチン及びエクオールを含有する大豆胚軸発酵物であって,発酵生成物であるオルニチンを前記大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり8m g以上含有し,発酵生成物であるエクオールを前記大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり1mg以上含有する,該大豆胚軸発酵物。」イ請求項3の記載(以下,この発明を「本件訂正発明3」という。)「オルニチン及びエクオールを含有する大豆胚軸発酵物であって,発酵生成物であるオルニチンを前記大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり8m g以上含有し, ,この発明を「本件訂正発明3」という。)「オルニチン及びエクオールを含有する大豆胚軸発酵物であって,発酵生成物であるオルニチンを前記大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり8m g以上含有し,発酵生成物であるエクオールを前記大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり1mg以上含有し,前記大豆胚軸発酵物中のゲニステイン類の総和の含有比率が前記大豆胚軸発酵物中のイソフラボンの総量当たり12重量%以下である,前記大豆胚軸発酵物を配合した食品,特定保健用食品,栄養補助食品,機能性食品,又は病者用食品。」 (6) 被告の行為被告は,業として,別紙被告製品目録記載の製品(以下「被告製品」という。)を生産し,その販売及び販売の申出を行っている。 被告製品は,被告補助参加人(以下「補助参加人」という。)が被告に供給する「EQ-5」を原材料とし,これに「ビール酵母」,「ラクトビオン酸含 有乳糖発酵物」などを配合したものをカプセルに封入したサプリメントである(甲3,弁論の全趣旨)。そして,「EQ-5」は,大豆胚軸から抽出された大豆胚軸抽出物であるイソフラボン(以下「原料イソフラボン」という。)を発酵させて得られたものである(丙5)。 (7) 被告製品の構成等 被告製品の構成について,原告は,別紙被告製品の構成記載1のとおり主- 5 -張するのに対し,被告及び補助参加人(以下,併せて「被告ら」という。)は,同記載2のとおり主張する。そして,被告製品は,構成要件1-A,1-B及び3-Bを充足する(1-A,1-Bにつき弁論の全趣旨)。 2 争点(1) 被告製品は本件発明の技術的範囲に属するか(争点1) 具体的には,被告製品は構成要件1-C及び3-Aを充足するか(2) 本件特許には無効理由が存するか(争点2)ア丙6 争点 (1) 被告製品は本件発明の技術的範囲に属するか(争点1) 具体的には,被告製品は構成要件1-C及び3-Aを充足するか(2) 本件特許には無効理由が存するか(争点2)ア丙6に基づく進歩性欠如(補助参加人主張の無効理由1)イ分割出願要件違反等(補助参加人主張の無効理由2)ウ明確性要件違反(補助参加人主張の無効理由3) エ丙11に基づく新規性ないし進歩性欠如(補助参加人主張の無効理由4)オ丙14の1に基づく新規性ないし進歩性欠如(補助参加人主張の無効理由5)カ丙15に基づく新規性ないし進歩性欠如(補助参加人主張の無効理由 6)キ実施可能要件及びサポート要件違反(補助参加人主張の無効理由7)ク分割出願要件違反等(補助参加人主張の無効理由8)ケ乙1に基づく進歩性欠如(被告主張の無効理由1)コ乙2に基づく進歩性欠如(被告主張の無効理由2) サ乙3に基づく新規性ないし進歩性欠如(被告主張の無効理由3)(3) 訂正により本件特許の無効理由が解消したか(争点3) 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点1について別紙「当事者の主張(争点1について)」のとおり (2) 争点2について- 6 -別紙「当事者の主張(争点2について)」のとおり(3) 争点3について別紙「当事者の主張(争点3について)」のとおり第3 当裁判所の判断 1 被告製品は構成要件1-C及び3-Aを充足するか(争点1)について 当裁判所は,構成要件1-C及び3-Aにおける「大豆胚軸発酵物」とは,大豆胚軸自体の発酵物をいい,大豆胚軸抽出物の発酵物を含まないと解すべきところ,被告製品は,大豆胚軸自体の発酵物を含有しないから,上記各構成要件を充足し C及び3-Aにおける「大豆胚軸発酵物」とは,大豆胚軸自体の発酵物をいい,大豆胚軸抽出物の発酵物を含まないと解すべきところ,被告製品は,大豆胚軸自体の発酵物を含有しないから,上記各構成要件を充足しないと判断する。以下,詳述する。 (1) 本件明細書の記載 本件明細書には,以下の記載がある(甲2)。 ア 【技術分野】【0001】本発明は,エクオールを含有する大豆胚軸の発酵物,及びその製造方法に関する。 イ 【背景技術】 【0005】従来,エクオールの製造方法としては,ダイゼインを含む原料に対して,ダイゼインを資化してエクオールを産生する微生物(以下,エクオール産生菌と表記する)で発酵処理する方法が知られている。この製造方法において,使用されるダイゼインを含む原料としては,大豆,葛根湯,レッドグローブ,アルファルファ等が知られている。また,エクオ ール産生菌についても既に公知であり,例えば,本発明者等によって,バクテロイデスE-23-15(FERMBP-6435号),ストレプトコッカスE-23-17(FERMBP-6436号),ストレプトコッカスA6G225(FERMBP-6437号)及びラクトコッカス20-92(FERMBP-10036号)がヒトの糞便から単離されている(特許文献1及び2参照)。 【0006】しかしながら,単に,上記のダイゼイン類を含む原料に対- 7 -して,エクオール産生菌を用いて発酵処理しても,得られる発酵物中のエクオール量は十分ではなく,その発酵物をそのまま摂取しても,エクオールの作用に基づく所望の有用効果を十分には望めないという問題点があった。 【0007】一方,大豆胚軸部分には,大豆加工食品として利用されて いる子葉部分に比べて,イソフラボンやサポニン クオールの作用に基づく所望の有用効果を十分には望めないという問題点があった。 【0007】一方,大豆胚軸部分には,大豆加工食品として利用されて いる子葉部分に比べて,イソフラボンやサポニン等の有用成分が高い割合で含まれていることが知られており,その抽出物については種々の用途が開発されている(例えば,特許文献3)。しかしながら,大豆胚軸抽出物は,それ自体コストが高いという欠点がある。また,大豆胚軸抽出物は,エクオールの製造原料とする場合には,エクオール産生菌による発酵のた めに別途栄養素の添加が必要になるという問題点がある。このような理由から,大豆胚軸抽出物は,エクオールを工業的に製造する上で,原料として使用できないのが現状である。 【0008】一方,大豆胚軸自体については,特有の苦味があるため,それ自体をそのまま利用することは敬遠される傾向があり,大豆の胚軸の 多くは廃棄されているのが現状である。また,大豆胚軸には,大豆の子葉部分と同様に,アレルゲン物質が含まれているため,大豆アレルギーを持つ人にとって,大豆胚軸を摂取乃至投与することができなかった。そのため,大豆胚軸を有効利用するには,大豆胚軸自体に更に付加価値を備えさせることにより,その有用性を高めることが重要である。 ウ 【発明が解決しようとする課題】【0010】本発明の目的は,エクオールを含有し,食品素材,医薬品素材,又は化粧品素材等として有用な大豆胚軸発酵物を提供することである。更に,本発明は,エクオールを含有する大豆胚軸発酵物を製造する方法を提供することを目的とする。 エ 【課題を解決するための手段】- 8 -【0011】本発明者らは,上記課題を解決すべく鋭意検討したところ,ダイゼイン類を資化してエクオールを産生する能 供することを目的とする。 エ 【課題を解決するための手段】- 8 -【0011】本発明者らは,上記課題を解決すべく鋭意検討したところ,ダイゼイン類を資化してエクオールを産生する能力を有する微生物を用いて,大豆の胚軸を発酵させると,高い効率でエクオールが生成し,エクオール含有大豆胚軸発酵物が得られることを見出した。更に,斯くして得られるエクオール含有大豆胚軸発酵物には,大豆胚軸に含まれるアレルゲン が低減されているので,低アレルゲンの素材としても有用であることを見出した。本発明は,これらの知見に基づいて,更に改良を重ねることにより完成したものである。 オ 【発明の効果】【0013】本発明の大豆胚軸発酵物は,エクオールと共に,エクオー ル以外のイソフラボンやサポニン等の有用成分をも含有しているので,食品,医薬品,化粧料等の分野での有用である。特に,本発明の大豆胚軸発酵物は,大豆,葛根湯,レッドグローブ,アルファルファ等のダイゼイン含有原料を発酵させたものに比べて,エクオールの生成量が格段に多く,エクオールに基づく有用生理効果を一層良好に奏することができる。 【0014】更に,本発明の大豆胚軸発酵物は,大豆胚軸に含まれるアレルゲンが低減されているので,低アレルギー性素材として,大豆アレルギーを持つ人にとっても安全に摂取乃至適用することができるという利点がある。また,本発明の大豆胚軸発酵物は,大豆の食品加工時に廃棄されていた大豆胚軸を原料としており,資源の有効利用という点でも産業上の 利用価値が高い。 カ 【発明を実施するための形態】【0019】本発明において,発酵原料としては大豆胚軸が用いられる。 大豆胚軸とは,大豆の発芽時に幼芽,幼根となる部分であり,ダイゼイン配糖体やダイゼイン 高い。 カ 【発明を実施するための形態】【0019】本発明において,発酵原料としては大豆胚軸が用いられる。 大豆胚軸とは,大豆の発芽時に幼芽,幼根となる部分であり,ダイゼイン配糖体やダイゼイン等のダイゼイン類が多く含まれていることが知られて いる。本発明に使用される大豆胚軸は,含有されているダイゼイン類が失- 9 -われていないことを限度として,大豆の産地や加工の有無については制限されない。例えば,生の状態のもの;加熱処理,乾燥処理,蒸煮処理等に供された大豆から分離したもの;未加工の大豆から分離した胚軸を加熱処理,乾燥処理又は蒸煮処理等に供したもの等のいずれであってもよい。また,本発明で使用される大豆胚軸は,脱脂処理や脱タンパク処理に供した ものであってもよい。また,本発明に使用される大豆胚軸の形状については,特に制限されるものではなく,粉末状であっても,粉砕又は破砕されたのものであってもよい。より効率的にエクオールを生成させるという観点からは,粉末状の大豆胚軸を使用することが望ましい。 【0020】大豆胚軸の発酵処理は,適量の水を大豆胚軸に加えて水分 含量を調整し,これに上記エクオール産生菌を接種することにより行われる。 【0022】また,大豆胚軸の発酵において,発酵原料となる大豆胚軸には,必要に応じて,発酵効率の促進や発酵物の風味向上等を目的として,酵母エキス,ポリペプトン,肉エキス等の窒素源;グルコース,シュクロ ース等の炭素源;リン酸塩,炭酸塩,硫酸塩等の無機塩;ビタミン類;アミノ酸等の栄養成分を添加してもよい。特に,エクオール産生菌として,アルギニンをオルニチンに変換する能力を有するもの(以下,「オルニチン・エクオール産生菌」と表記する)を使用する場合には,大豆胚軸にアルギニンを添加して発 してもよい。特に,エクオール産生菌として,アルギニンをオルニチンに変換する能力を有するもの(以下,「オルニチン・エクオール産生菌」と表記する)を使用する場合には,大豆胚軸にアルギニンを添加して発酵を行うことによって,得られる発酵物中にオルニ チンを含有させることができる。この場合,アルギニンの添加量については,例えば,大豆胚軸(乾燥重量換算)100重量部に対して ,アルギニンが0.5~3重量部程度が例示される。なお,アルギニンをオルニチンに変換する能力を有するエクオール産生菌としては,具体的には,ラクトコッカス・ガルビエから選択することができ,具体的には,ラクトコッ カス20-92(FERMBP-10036号)が挙げられる。 - 10 -【0023】更に,使用する発酵原料(大豆胚軸含有物)のpHについては,エクオール産生菌が生育可能である限り特に制限されないが,エクオール産生菌を良好に増殖させるという観点からは,発酵原料のpHを6~7程度,好ましくは6.3~6.8程度に調整しておくことが望ましい。 【0024】また,使用する発酵原料(大豆胚軸含有物)には,更に, 前記ダイゼイン類を含むイソフラボンを添加しておいてもよい。このようにイソフラボンを発酵原料に別途添加しておくことにより,得られる大豆胚軸発酵物中のエクオール含量をより高めることが可能になり,その有用性を一層向上させることができる。 【0035】更に,大豆胚軸発酵物には,大豆胚軸に由来するサポニン をも有しているので,サポニンの作用に基づく有用生理活性(例えば,抗ウイルス活性等)までも獲得することができる。大豆胚軸発酵物中のサポニンは,大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり,サポニンが10~80mg,好ましくは20~50mg,更に好ましくは30~4 例えば,抗ウイルス活性等)までも獲得することができる。大豆胚軸発酵物中のサポニンは,大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり,サポニンが10~80mg,好ましくは20~50mg,更に好ましくは30~40mg含まれている。 【0038】本発明の大豆胚軸発酵物は,前述するように,エクオールを初めとして,種々の有用生理活性物質が含まれているので,様々な生理活性や薬理活性を発現することができる。(中略)アルギニンを含む発酵原料に対して,オルニチン・エクオール産生菌を使用して発酵させて得られた大豆胚軸発酵物には,オルニチンも生成・蓄積しているので,当該大 豆胚軸発酵物によれば,肝機能改善,成長ホルモン分泌促進,免疫賦活,筋肉量増大,基礎代謝能の改善等のオルニチンに基づく有用生理作用をも得ることができる。 【0039】(中略)このような大豆胚軸発酵物を含有する食品は,エクオールの有用生理活性に加えて,その他のイソフラボンやサポニン等の 生理活性をも備えているので,有用性が高く健保効果に優れている。また,- 11 -アルギニンを含む発酵原料に対して,オルニチン・エクオール産生菌を使用して発酵させて得られた大豆胚軸発酵物を使用する場合には,食品中にオルニチンをも含有させることができるので,食品としての有用性を一層高めることができる。 (2) 本件明細書の記載に基づく構成要件1-C及び3-Aの解釈 ア上記記載によれば,①本件各発明の課題として,大豆胚軸抽出物は,それ自体コストが高いなどの理由から,エクオールを工業的に製造する上で,原料として使用できないのが現状であったこと,一方,大豆胚軸自体については,特有の苦味があるため,それ自体をそのまま利用することは敬遠される傾向があり,大豆の胚軸の多くは廃棄されているのが 上で,原料として使用できないのが現状であったこと,一方,大豆胚軸自体については,特有の苦味があるため,それ自体をそのまま利用することは敬遠される傾向があり,大豆の胚軸の多くは廃棄されているのが 現状であったなどのため,大豆胚軸を有効利用するには,大豆胚軸自体の有用性を高めることが重要であったことが挙げられており,また,②本件各発明の効果としては,本件各発明の大豆胚軸発酵物は,エクオールと共に,エクオール以外のイソフラボンやサポニン等の大豆胚軸に由来する有用成分をも含有しているので,食品,医薬品,化粧料等の分野 で有用であること,本件各発明の大豆胚軸発酵物は,大豆の食品加工時に廃棄されていた大豆胚軸を原料としており,資源の有効利用という点でも産業上の利用価値が高いこと等が挙げられている。 イこのように,本件明細書の記載によれば,本件各発明は,従来利用されずに廃棄されていた大豆胚軸自体を有効利用できるようにし,大豆胚 軸に由来する有用成分を含有して食品等に有用な大豆胚軸発酵物に係るものであることが明らかであるから,そうである以上,本件各発明の構成要件1-C及び3-Aにおける「大豆胚軸発酵物」とは,大豆胚軸自体の発酵物をいい,大豆胚軸抽出物の発酵物を含まないと解すべきである。 ウこれに対し,原告は,本件明細書の段落【0007】及び【000- 12 -8】の記載は,従来技術の記載に過ぎず,本件各発明は,大豆胚軸に豊富に含まれるダイゼイン類から多量のエクオールが生成されるとともに,栄養成分として発酵原料に含まれるアルギニンを,アルギニン変換能を有するエクオール産生菌によってオルニチンに変換させることで,従来技術において大豆胚軸抽出物に存在したコスト高という欠点を克服する と共に,発酵物をより有用なも アルギニンを,アルギニン変換能を有するエクオール産生菌によってオルニチンに変換させることで,従来技術において大豆胚軸抽出物に存在したコスト高という欠点を克服する と共に,発酵物をより有用なものにしたものであり,本件各発明は,むしろ発酵原料に栄養素を含めることを積極的に必要としている旨主張する。原告の主張の趣旨は必ずしも判然としないところもあるが,いずれにしても,上記説示のとおり,本件明細書の記載によれば,本件各発明は,従来利用されずに廃棄されていた大豆胚軸自体を有効利用できるよ うにし,大豆胚軸に由来する有用成分を含有して食品等に有用な大豆胚軸発酵物に係るものであることが明らかであるから,原告の上記主張は,明細書の記載に反し,採用できない。 (3) 本件特許の親出願の出願経過について上記の解釈は,本件特許の親出願の出願経過からも裏付けられる。 ア親出願の審査の過程で,特許庁は,国際公開2005/000042号(丙3の2)を引用文献1として,平成23年11月9日を起案日とする拒絶理由通知をした(丙3の3)。そこには,以下の記載がある。 「引用文献1の請求項9には,ダイゼイン類およびダイゼイン類含有物質からなる群から選ばれる少なくとも1種に,ダイゼイン類を資化してエ クオールを産生する能力を有するラクトコッカス属に属する乳酸菌を作用させることにより,エクオールを製造することが記載され,請求項10には,乳酸菌がラクトコッカス・ガルビエであることが記載されている。また,第9頁37~41行には,ダイゼイン類含有物質として大豆胚軸が記載されている。 してみれば,引用文献1の記載に基づいて,ダイゼイン類含有物質であ- 13 -る大豆胚軸に上記ラクトコッカス・ガルビエを作用させることにより,エクオール て大豆胚軸が記載されている。 してみれば,引用文献1の記載に基づいて,ダイゼイン類含有物質であ- 13 -る大豆胚軸に上記ラクトコッカス・ガルビエを作用させることにより,エクオール含量を高めた大豆胚軸発酵物を製造することは,当業者が容易になしうることである。」イこれに対し,出願人は平成23年11月29日付意見書(丙3の4)において,以下のとおり主張した。 「審査官殿がご指摘の通り,引用文献1には,ダイゼイン類を資化してエクオールを産生する能力を有するラクトコッカス・ガルビエをダイゼイン類及びダイゼイン類含有物質からなる群から選ばれる少なくとも1種に作用させることによって,エクオールを産生すること(請求項9及び10),及び,ダイゼイン含有物質として大豆胚軸が記載されています。 しかしながら,引用文献1には,ダイゼイン類含有物質として,大豆胚軸以外にも,大豆イソフラボン,葛,葛根,レッドクローブ,アルファルファ,並びにこれら植物の誘導体及び加工品(例えば,大豆粉,煮大豆,豆腐,油揚げ,豆乳),これらの発酵調理物(例えば,納豆,醤油,味噌,テンペ,発酵大豆飲料)等多数の具体例が示されています。また,引用文 献1の実施例において,実際にエクオール産生能を有するラクトコッカス・ガルビエを用いた発酵の原料として使用されているものは,豆乳,牛乳及びスキムミルクだけであります。そして,以下にご説明する事情を考慮しますと,エクオール産生能を有するラクトコッカス・ガルビエを用いたエクオールの製造において,その発酵原料として大豆胚軸を選択するこ とには阻害要因が存在します。 即ち,本願明細書の第0028段落並びに表1及び表2の記載から明らかなように,大豆胚軸にはダイゼイン類だけでなく,ゲニスチン,マロニ して大豆胚軸を選択するこ とには阻害要因が存在します。 即ち,本願明細書の第0028段落並びに表1及び表2の記載から明らかなように,大豆胚軸にはダイゼイン類だけでなく,ゲニスチン,マロニルゲニスチン,アセチルゲニスチン,ゲニステイン,ジハイドロゲニステイン等のゲニステイン類,グリシチン,マロニルグリシチン,アセチルグ リシチン,グリシテイン,ジハイドログリシテイン等のグリシテイン類等- 14 -の多くのイソフラボンやサポニンが含まれています。そして,これら大豆胚軸に含まれる成分には,微生物の生育や微生物を用いた発酵(ダイゼインのエクオールへの変換)を阻害する作用があることが本願の優先日前から知られています。 例えば,InternationalJournalofAntimicrobalAgents, 23, p.99 - 102, 2004(別途,手続補足書にて「参考資料1」として提出します。)にはゲニステイン(YS13)を含む植物由来のイソフラボンは抗菌活性を有することが示されています(要約及び第101頁左欄結果(3.1)の項)。これは,エクオール産生能を有するラクトコッカス・ガルビエを用いて大豆胚軸からエクオールを製造する際に,そこに含まれるゲニステ イン等の存在により,その生育や発酵が阻害され得ることを示しています。 よって,参考資料1の記載から当業者であれば,ゲニステインを含む大豆胚軸は,微生物の生育や微生物を用いた発酵の基質として適していないと通常理解します。 また,日本老年医学会雑誌38巻臨時増刊号(2001)144頁P1 35(別途,手続補足書にて「参考資料2」として提出します。)には,大豆胚軸に存在するサポニンが微生物のα-グルコシダーゼ活性を阻害することが記載されています。 刊号(2001)144頁P1 35(別途,手続補足書にて「参考資料2」として提出します。)には,大豆胚軸に存在するサポニンが微生物のα-グルコシダーゼ活性を阻害することが記載されています。一方,エクオール産生能を有するラクトコッカス・ガルビエがダイゼイン配糖体,特にはダイジンをダイゼインに代謝しエクオール産生の基質に変換するためには,当該微生物のグルコシダー ゼ作用により糖を配糖体から切断する必要があります。そうすると,大豆胚軸に存在するサポニンによるグルコシダーゼ活性阻害が,ダイゼイン類からのエクオールの産生に阻害的に働くこととなります。従って,サポニンを含有する大豆胚軸が,エクオール産生のための原料として適していないことは明らかです。 加えて,Biosci. Biotechnol. Biochem., 62, 1498-1503, 1999(別途,- 15 -手続補足書にて「参考資料3」として提出します。)やBiosci.Biotechnol. Biochem., 68, 428-432,2004(別途,手続補足書にて「参考資料4」として提出します。)には,大豆成分によるHMC-CoAレダクターゼ阻害活性や膵リパーゼ阻害活性が記載されております。つまりは,大豆成分には,種々の酵素阻害成分が含まれているため,酵素変換に基づき産 生させる基質としては,多くの阻害的要因を有することがわかります。 このように,大豆胚軸には,微生物の生育や微生物を用いた発酵によるエクオールの製造に適していない成分が含まれていることが知られていたため,当業者であれば,エクオールの製造における発酵基質として大豆胚軸を使用することは困難と考えるのが相当です。これに対し,本発明は, そのような阻害要因の存在にもかかわらず,他 知られていたため,当業者であれば,エクオールの製造における発酵基質として大豆胚軸を使用することは困難と考えるのが相当です。これに対し,本発明は, そのような阻害要因の存在にもかかわらず,他の微生物では困難性を有するのに対し,ラクトコッカス・ガルビエであれば,大豆胚軸に存在する多くのイソフラボン類の存在下でも生育が可能であり,更に大豆胚軸を基質とすることで効率的にエクオールを産生するという本願出願時には予期し得なかった知見に基づいて完成した発明です。」 ウ要するに,親出願の出願経過における原告(出願人)の上記主張は,ダイゼイン類含有物質としては,大豆胚軸以外にも,大豆イソフラボンなどが存在するところ,「大豆胚軸にはダイゼイン類だけでなく,ゲニスチン,マロニルゲニスチン,アセチルゲニスチン,ゲニステイン,ジハイドロゲニステイン等のゲニステイン類,グリシチン,マロニルグリ シチン,アセチルグリシチン,グリシテイン,ジハイドログリシテイン等のグリシテイン類等の多くのイソフラボンやサポニンが含まれています。そして,これら大豆胚軸に含まれる成分には,微生物の生育や微生物を用いた発酵(ダイゼインのエクオールへの変換)を阻害する作用があることが本願の優先日前から知られています。」として,「エクオー ル産生能を有するラクトコッカス・ガルビエを用いたエクオールの製造- 16 -において,その発酵原料として大豆胚軸を選択することには阻害要因が存在します。」とするものであり,ここでは,原告は,明らかに,「大豆胚軸」を「大豆胚軸の抽出物(イソフラボン等)」と異なる「発酵を阻害する成分が含まれる大豆胚軸自体」であると主張していると認められる。 本件特許は親出願の分割出願に係るものであるから,本件発明における「大豆胚 抽出物(イソフラボン等)」と異なる「発酵を阻害する成分が含まれる大豆胚軸自体」であると主張していると認められる。 本件特許は親出願の分割出願に係るものであるから,本件発明における「大豆胚軸」も親出願と同様に理解されるべきところ,親出願の出願経過における原告の上記主張の内容は,上記(2)の説示と同内容であり,これを裏付けるものということができる。 エこれに対し,原告は,親出願の出願経過における上記主張は,(ダイ ゼイン類以外の)イソフラボンや,サポニンの存在を,大豆胚軸を選択する阻害要因として主張したのであって,大豆イソフラボンと大豆胚軸を殊更に区別して,後者のみに阻害要因があると主張したのではないことは明らかであり,まして,大豆胚軸の抽出物を発酵させた場合が「大豆胚軸発酵物」から除外されるということはどこにも述べられていない と主張する。しかし,上記説示のとおり,親出願の出願経過における原告の意見書における前記主張は,明らかに,「大豆胚軸」を「大豆胚軸の抽出物(イソフラボン等)」と異なる「発酵を阻害する成分が含まれる大豆胚軸自体」であるとするものであるから,これに反する原告の上記主張は採用できない。 (4) 被告製品についてア証拠(甲3,丙5)によれば,被告製品は,補助参加人が被告に供給する「EQ-5」に「ビール酵母」,「ラクトビオン酸含有乳糖発酵物」などを配合したものをカプセルに封入したサプリメントであること,上記の「EQ-5」は,大豆胚軸から抽出された大豆胚軸抽出物である高い純度 の原料イソフラボン(その90%以上がダイジンなどの大豆イソフラボ- 17 -ンである。)を,さらに発酵させて得られたものであることが認められる。 そうすると,被告製品に含まれる「EQ-5」は,大豆胚軸 フラボン(その90%以上がダイジンなどの大豆イソフラボ- 17 -ンである。)を,さらに発酵させて得られたものであることが認められる。 そうすると,被告製品に含まれる「EQ-5」は,大豆胚軸抽出物の発酵物であって,大豆胚軸自体の発酵物ではないから,「EQ-5」ひいては被告製品も,本件発明の構成要件1-C及び3-Aを充足せず,本件発明の技術 的範囲に属さないものというべきである。 イこれに対し,原告は,被告らが主張する原料イソフラボンの組成(丙5の別紙1)を見ても,ダイゼイン類,グリシテイン類,ゲニステイン類の順にその含有量が多く,中でも配糖体であるダイジン,グリシチン及びゲニスチンの含有量が多いという,大豆胚軸に特徴的な組成を示し ており,さらに,たんぱく質,脂質,灰分及び食物繊維は,本件明細書(段落【0019】)に記載された加熱処理,乾燥処理,蒸煮処理,脱脂処理又は脱タンパク処理によっても減少しうるものであるから,結局,当該発酵原料は大豆胚軸と質的に異なるものではなく,せいぜい,大豆胚軸にダイゼイン類が失われない限度で処理を施したものにすぎない旨 主張する。 しかし,証拠(丙5)によれば,原料イソフラボンは,100gあたり92gの総イソフラボン含有量であり,大豆イソフラボン以外の成分の含有量は,100g中せいぜい8gにすぎないことが認められるところ,本件明細書記載の実施例をみると,大豆胚軸の総イソフラボン類は100gあたり1.942gであり (表2),これに本件明細書【0019】に記載されているような脱タンパク,脱脂,蒸煮,乾燥などの処理を行っても,100gあたりのタンパク質38.1g,脂質13.0g,灰分4.3g,食物繊維10.5g,水分3.2g(表3)が減量するだけで,原料イソフラボンのような パク,脱脂,蒸煮,乾燥などの処理を行っても,100gあたりのタンパク質38.1g,脂質13.0g,灰分4.3g,食物繊維10.5g,水分3.2g(表3)が減量するだけで,原料イソフラボンのような100gあたり92gもの総イソフラボン含有量には到底なり得ず,結局,原料イソフラボンが本件明細書に記載されてい るような加工を行った大豆胚軸と質的に異ならないなどとはいうことがで- 18 -きないから,原告の上記主張は採用できない。 (5) 小括以上のとおり,被告製品は本件発明の構成要件1-C及び3-Aを充足しない。これに対し,原告はるる主張するが,いずれも採用できない。 2 結論 よって,その余の争点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官沖中康人 裁判官奥俊彦 裁判官髙櫻慎平 - 19 -(別紙)被告製品目録 大豆胚芽抽出発酵物含有食品製品名エクオール+ラクトビオン酸 以上- 20 -(別紙) 被告製品の構成 1 原告の主張 a 大豆胚芽を原料とし,アルギニンを添加して発酵工程を経ることにより生成され,b 1.32g(3カプセル)あたりエクオール約10mgを含有し,c 1.32g(3カプセル)あたりオルニチン約24.29mgを含有するd 経口摂取型のサプリメント。 2 被告らの主張 a 大豆胚軸から抽出されたイソフラボンを酵素処理したものに種菌と栄 養培地を添加して チン約24.29mgを含有するd 経口摂取型のサプリメント。 2 被告らの主張 a 大豆胚軸から抽出されたイソフラボンを酵素処理したものに種菌と栄 養培地を添加して発酵させたもの,ビール酵母,及びラクトビオン酸含有乳糖発酵物,とをHPMC及びカラメル色素から成るハードカプセルに封入したb 1.32g(3カプセル)あたりエクオール約10mgを含有し,c 1.32g(3カプセル)あたりオルニチン約24.29mgを含有する d 経口摂取型のサプリメント。 - 21 -(別紙)当事者の主張(争点1について) 〔原告の主張〕(1) 本件各発明の内容本件特許の請求項1の記載から明らかなとおり,本件各発明は,①大豆胚 軸を基本的な原料として発酵を行い,大豆胚軸に多く含まれるダイゼイン類から発酵物中にエクオールを得ることのほか,②発酵物中に,エクオールの生成と同時にもう1つの有用成分であるオルニチンをも含有させることを内容とするものである。 これらのことは,「ダイゼイン類を資化してエクオールを産生する能力を 有する微生物を用いて,大豆の胚軸を発酵させると,高い効率でエクオールが生成し,エクオール含有大豆胚軸発酵物が得られることを見出した。」(段落【0011】),「大豆胚軸とは,…ダイゼイン配糖体やダイゼイン等のダイゼイン類が多く含まれていることが知られている。」(段落【0019】),「特に,エクオール産生菌として,アルギニンをオルニチンに変 換する能力を有するもの…を使用する場合には,大豆胚軸にアルギニンを添加して発酵を行うことによって,得られる発酵物中にオルニチンを含有させることができる。」(段落【0022】),「アルギニンを含む発酵原料に対して,オルニチン・エク 場合には,大豆胚軸にアルギニンを添加して発酵を行うことによって,得られる発酵物中にオルニチンを含有させることができる。」(段落【0022】),「アルギニンを含む発酵原料に対して,オルニチン・エクオール産生菌を使用して発酵させて得られた大豆胚軸発酵物には,オルニチンも生成・蓄積しているので,当該大豆胚軸発酵 物によれば,肝機能改善,成長ホルモン分泌促進,免疫賦活,筋肉量増大,基礎代謝能の改善等のオルニチンに基づく有用生理作用をも得ることができる。」(段落【0038】),「アルギニンを含む発酵原料に対して,オルニチン・エクオール産生菌を使用して発酵させて得られた大豆胚軸発酵物を使用する場合には,食品中にオルニチンをも含有させることができるので, 食品としての有用性を一層高めることができる」(段落【0039】)とい- 22 -った本件明細書の記載から明らかであり,実施例1~3には,大豆胚軸及びアルギニンを混合した原料を発酵させた発酵物には高効率でエクオールが生成されていることが,実施例4には,大豆胚軸及びアルギニンを含む原料を発酵させた発酵物には,高含量のエクオールに加えてオルニチンが生成されることが記載されている(なお,実施例5~12の大豆胚軸発酵物も,製造 の条件は実施例3と同様とされており,アルギニンから生成されるオルニチンを含有している。)。 (2) 「大豆胚軸発酵物」の意義ア本件各発明の「大豆胚軸発酵物」とは,大豆胚軸を発酵原料として用いた発酵物をいい,ダイゼイン類が失われない限度で各種処理・工程を 経た大豆胚軸を発酵原料として生成された発酵物も含むと解される。 イ本件明細書では,段落【0019】において,「発酵原料としては大豆胚軸が用いられる」と記載され,また,「本発明に使用される大豆胚軸 た大豆胚軸を発酵原料として生成された発酵物も含むと解される。 イ本件明細書では,段落【0019】において,「発酵原料としては大豆胚軸が用いられる」と記載され,また,「本発明に使用される大豆胚軸は,含有されているダイゼイン類が失われていないことを限度として,大豆の産地や加工の有無については制限されない。例えば,生の状態の もの;加熱処理,乾燥処理,蒸煮処理等に供された大豆から分離したもの;未加工の大豆から分離した胚軸を加熱処理,乾燥処理又は蒸煮処理等に供したもの等のいずれであってもよい。また,本発明で使用される大豆胚軸は,脱脂処理や脱タンパク処理に供したものであってもよい。 また,本発明に使用される大豆胚軸の形状については,特に制限される ものではなく,粉末状であっても,粉砕又は破砕されたの[原文ママ]ものであってもよい。」とされている。大豆胚軸に施す処理のうち,本件明細書に記載されている加熱処理,乾燥処理,蒸煮処理,脱脂処理及び脱タンパク処理によっても,その成分組成の変化は生じうる。すなわち,発酵原料として用いられる大豆胚軸は,エクオールを生成するため に必要なダイゼイン類が失われない限度であれば,その成分の除去や成- 23 -分組成の変化を伴うものも含めて「加工の有無については制限され」ず,またその形状についても制限はない。加えて,本件明細書においては,大豆胚軸には「発酵効率の促進や発酵物の風味向上等を目的として,酵母エキス,ポリペプトン,肉エキス等の窒素源;グルコース,シュクロース等の炭素源;リン酸塩,炭酸塩,硫酸塩等の無機塩;ビタミン類; アミノ酸等の栄養成分を添加してもよ」く(段落【0022】),「発酵原料のpHを…調整しておくことが望ましい」ともされている(段落【0023】)。このように,発酵 酸塩等の無機塩;ビタミン類; アミノ酸等の栄養成分を添加してもよ」く(段落【0022】),「発酵原料のpHを…調整しておくことが望ましい」ともされている(段落【0023】)。このように,発酵原料として用いられる大豆胚軸は,各種処理・工程を経たものであってもよいとされている。 また,本件明細書では,「使用する発酵原料(大豆胚軸含有物)には, 更に,前記ダイゼイン類を含むイソフラボンを添加しておいてもよ」く,「イソフラボンを発酵原料に別途添加しておくことにより,得られる大豆胚軸発酵物中のエクオール含量をより高めることが可能になり,その有用性を一層向上させることができる。」ともされている(段落【0024】)。すなわち,大豆胚軸が基本的な発酵原料である限り,(添加し た)イソフラボンの発酵により得られる物(エクオール)も「大豆胚軸発酵物」の一部をなすものとされ,「大豆胚軸発酵物」は,大豆胚軸自体を発酵させたもののみには限定されていない。 ウ加えて,上記(1)で述べた本件各発明の内容に鑑みると,本件各発明は,大豆,葛根湯,レッドグローブ,アルファルファ等のダイゼイン含有原 料を発酵させたものに比べてエクオールの生成量が多いこと(本件明細書段落【0013】),及びエクオール以外の有用成分としてオルニチンが含まれること(段落【0038】)がその主要な効果であり,それらは,(ダイゼイン類を多く含有する)大豆胚軸に由来し,かつアルギニンを含む発酵原料を用いる以上は,大豆胚軸が(ダイゼイン類が失わ れない限度で)各種処理・工程を経たものであっても変わりはない。 - 24 -エ一方で,大豆胚軸から大豆胚軸の抽出物を排除する趣旨の記載は,本件明細書には存在しない。 オ以上の本件明細書の記載によれば,本件各発明の「 を経たものであっても変わりはない。 - 24 -エ一方で,大豆胚軸から大豆胚軸の抽出物を排除する趣旨の記載は,本件明細書には存在しない。 オ以上の本件明細書の記載によれば,本件各発明の「大豆胚軸発酵物」は,ダイゼイン類が失われない限度で各種処理・工程を経た大豆胚軸を発酵原料として生成された発酵物も含むものである。 (3) 本件明細書の記載に関する被告らの主張についてア被告らは,従来技術に関する本件明細書段落【0007】及び【0008】の記載を挙げて,大豆胚軸と大豆胚軸抽出物が別物と理解されていると主張するが,上記の記載は,従来技術の記載に過ぎない。本件各発明は,上記(1)でも述べたとおり,大豆胚軸に豊富に含まれるダイゼイ ン類から多量のエクオールが生成されるとともに,栄養成分として発酵原料に含まれるアルギニンを,アルギニン変換能を有するエクオール産生菌によってオルニチンに変換させることで,同じ発酵工程でオルニチンというもう1つの有用成分を得ることを可能とし,それにより従来技術において大豆胚軸抽出物に存在したコスト高という欠点を克服したも のである。また,本件各発明は,栄養成分として発酵原料に含有されるアルギニンをもう1つの有用成分であるオルニチンに変換することで,大豆胚軸の抽出物を発酵原料として利用する際に別途栄養素の添加が必要になるという従来技術の欠点を逆に利用し,発酵物をより有用なものにしたものである。すなわち,本件各発明は,従来技術と異なり,むし ろ,発酵原料に栄養素を含めることを積極的に必要としているのである。 したがって,被告らが指摘する点は,「大豆胚軸発酵物」の上記解釈を否定する理由とはならない。 イ被告らは,本件明細書段落【0011】の記載を挙げ,大豆胚軸抽出物とは区別された しているのである。 したがって,被告らが指摘する点は,「大豆胚軸発酵物」の上記解釈を否定する理由とはならない。 イ被告らは,本件明細書段落【0011】の記載を挙げ,大豆胚軸抽出物とは区別された「大豆の胚軸」を発酵させたものが本件各発明の対象 であると主張するが,段落【0011】には発酵原料から大豆胚軸抽出- 25 -物を排除するような記載はないし,大豆胚軸発酵物の原料となる大豆胚軸が各種処理・工程を経たものでもよいことは,上記(2)で述べたとおりである。 ウまた,被告らは,本件明細書に記載された実施例がいずれも「粉末状大豆胚軸」を発酵処理したものである点,大豆イソフラボン類以外の成 分が大量に含まれている点を挙げるが,構成要件1-C及び3-Aにそのような要件が含まれているものではないし,本件明細書に大豆胚軸抽出物を発酵原料として用いることを排除するような記載はないこと,大豆胚軸が各種処理・工程を経たものであってもよいとされていることは,繰り返し述べているとおりである。 (4) 出願経過に関する被告らの主張についてア被告らは,原告が親出願の審査過程で提出した意見書(丙3の4)において,発酵原料となるダイゼイン類含有物質として大豆胚軸を選択することには阻害理由があると主張したこと,それと同時に各請求項を「大豆胚軸を…発酵させて得られるもの」に限定したことを以て,大豆 胚軸が大豆胚軸それ自体を指すことを明らかにしたと述べる。 しかし,まず,原告が上記主張と同時に,基礎出願の各請求項を大豆胚軸を発酵させて得られるものに限定したという事実はない。当該意見書(丙3の4)の提出(平成23年11月29日)より前に公表されている基礎出願の明細書(丙3の1)記載の請求項1には,既に「大豆胚軸を発 酵させ られるものに限定したという事実はない。当該意見書(丙3の4)の提出(平成23年11月29日)より前に公表されている基礎出願の明細書(丙3の1)記載の請求項1には,既に「大豆胚軸を発 酵させて得られる」という要件が入っており,この要件の存在や内容は上記主張の前後で変わりはない。 次に,原告が行った阻害要因に関する主張は,「大豆胚軸にはダイゼイン類だけでなく,ゲニスチン,マロニルゲニスチン,アセチルゲニスチン,ゲニステイン,ジハイドロゲニステイン等のゲニステイン類,グリシチン, マロニルグリシチン,アセチルグリシチン,グリシテイン,ジハイドログ- 26 -リシテイン等のグリシテイン類等の多くのイソフラボンやサポニンが含まれて」おり,これらが微生物の生育や微生物を用いた発酵を阻害する作用がある,というものである。すなわち,(ダイゼイン類以外の)イソフラボンや,サポニンの存在を,大豆胚軸を選択する阻害要因として主張したのであって,大豆イソフラボンと大豆胚軸を殊更に区別して,後者のみに 阻害要因があると主張したのではないことは明らかである。まして,大豆胚軸の抽出物を発酵させた場合が「大豆胚軸発酵物」から除外されるということは,意見書(丙3の4)のどこにも述べられていない。実際に,大豆イソフラボンには大豆胚軸から抽出したものだけでなく丸大豆から抽出したもの等も存在し,それらの間で成分組成が異なっており(甲6~8), また,大豆胚軸にはサポニンが多く含まれる(甲8)。これらは,本件特許の出願時点においても技術常識であった(甲7,8)。 なお,丙5の別紙1によれば,被告らが発酵原料であると主張するものにおいても,相当量のゲニステイン類(ゲニスチン,ゲニステイン,アセチルゲニスチン)及びグリシテイン類(グリシチン,グリシ ,8)。 なお,丙5の別紙1によれば,被告らが発酵原料であると主張するものにおいても,相当量のゲニステイン類(ゲニスチン,ゲニステイン,アセチルゲニスチン)及びグリシテイン類(グリシチン,グリシテイン,アセ チルグリシチン)が含まれており,また,原告は,被告製品にサポニンが含まれることを確認している。原告が挙げる上記阻害要因,すなわち,ダイゼイン類以外のイソフラボンやサポニンが微生物の生育や微生物を用いた発酵を阻害するという事象は,被告製品にも同様に当てはまる。 イ次に,被告らは,原告が,本件特許の審査過程において提出した意見 書(丙4の3)において,拒絶理由通知書(丙4の2)で引用された引例1(丙4の1)について,大豆胚軸の発酵物ではなくその発酵物の抽出物が開示されているに過ぎない等と主張したことを以て,抽出した物と抽出前の物は別異の物であることを明らかにした,と主張する。しかし,原告は,引例1(丙4の1)に開示されているのが大豆胚軸の発酵 物からの抽出物で,しかも高脂血症に対する緩和作用等が確認されたイ- 27 -ソフラボンアグリコンを含むものであるという点を,有用成分の組み合わせの動機付けに関して主張したに過ぎず,大豆胚軸発酵物の発酵原料について,大豆胚軸の抽出物が除かれるという趣旨の主張を行ったのではない。 ウ次に,被告らは,原告が本件各発明の対象に大豆胚軸の抽出物の発酵 物を含むと主張するのであれば,禁反言の原則により許されないと主張する。しかし,上記のとおり,原告が審査過程において「大豆胚軸発酵物」から大豆胚軸に抽出処理を施したものを発酵させた場合を除外する主張をしていた事実はない。また,被告らが指摘する部分(丙4の3の3頁目「加えて,」で始まる段落)は,原告が上記引例1のみについて 物」から大豆胚軸に抽出処理を施したものを発酵させた場合を除外する主張をしていた事実はない。また,被告らが指摘する部分(丙4の3の3頁目「加えて,」で始まる段落)は,原告が上記引例1のみについて 付加的に述べた主張に過ぎず,拒絶理由の解消,すなわち本件特許の特許査定とは因果関係がない。このことは,同じ拒絶理由について引例1とともに引例2及び3も同時に引用されていたところ(丙4の2),当該意見書(丙4の3)によって,(当該付加的な主張が当てはまらない)引例2及び引例3との関係でも拒絶理由が同時に解消し,特許査定 に至っていることから明らかである。 エ以上より,被告らが主張する点は,いずれも本件各発明に大豆胚軸の抽出物の発酵物が含まれないと解する理由にはならない。また,原告は,審査過程において,大豆胚軸と大豆胚軸抽出物を区別してその違いを主張したものではなく,本件訴訟における上記主張が禁反言の原則により 禁じられるものでもない。 (5) 被告製品が大豆胚軸発酵物に該当することア前記(2)で述べたとおり,本件各発明の「大豆胚軸発酵物」には,ダイゼイン類が失われない限度で,大豆胚軸に各種の処理・工程を施したものを発酵原料として生成された発酵物も含まれる。 イ被告らは,被告製品の原材料であるEQ-5は,大豆胚軸から抽出過- 28 -程を経て抽出された純度の高いイソフラボン(原料イソフラボン)が発酵原料となっており,その発酵物は「大豆胚軸発酵物」には当たらないと主張する。 しかし,被告らが「原料イソフラボン」であると主張するものは,より正確には,大豆イソフラボンを100g中92g,その余の成分を100 g中8g含む物質(丙5の別紙1参照)であり,その全体が大豆胚軸からの抽出物である。 また,被 であると主張するものは,より正確には,大豆イソフラボンを100g中92g,その余の成分を100 g中8g含む物質(丙5の別紙1参照)であり,その全体が大豆胚軸からの抽出物である。 また,被告らが主張する発酵原料のイソフラボンの組成(丙5の別紙1)を見ても,ダイゼイン類,グリシテイン類,ゲニステイン類の順にその含有量が多く,中でも配糖体であるダイジン,グリシチン及びゲニスチ ンの含有量が多いという,大豆胚軸に特徴的な組成(本件明細書段落【0053】の【表2】「発酵前」の欄,甲6~8)を示している。さらに,たんぱく質,脂質,灰分及び食物繊維(丙5,4頁「表2」)は,本件明細書(段落【0019】)に記載された加熱処理,乾燥処理,蒸煮処理,脱脂処理又は脱タンパク処理によっても減少しうるものである。結局,被 告らが主張する「抽出」の内実は,エクオールの直接の材料となるダイゼイン類の割合を高めるために行った加工に過ぎない。 このように,当該発酵原料は大豆胚軸と質的に異なるものではなく,せいぜい,大豆胚軸にダイゼイン類が失われない限度で処理を施したものである。 したがって,当該発酵原料の発酵物であるEQ-5を原材料とする被告製品は,「大豆胚軸発酵物」に該当する。 (6) まとめ以上より,被告製品は本件各発明の構成要件1-C及び3-Aを充足し,本件各発明の技術的範囲に属する。 〔被告らの主張〕- 29 -(1) 本件明細書によれば,構成要件1-C及び構成要件3-Aの「大豆胚軸発酵物」は,「大豆胚軸抽出物の発酵物」を含まないことア 「大豆胚軸」と「大豆胚軸抽出物」についての記載本件明細書の段落【0007】【0008】では,「大豆胚軸」と「大豆胚軸抽出物」とは別の物であると理解し,それぞれの問題点 酵物」を含まないことア 「大豆胚軸」と「大豆胚軸抽出物」についての記載本件明細書の段落【0007】【0008】では,「大豆胚軸」と「大豆胚軸抽出物」とは別の物であると理解し,それぞれの問題点(課題)を 記載している。 「抽出」とは,「液状または固状の混合物に溶剤を接触させて,混合物の中のある特定の物質を他から分離する操作をいう。」(丙1:化学大辞典924頁)ところ,上記の「大豆胚軸抽出物」とは,そのような抽出操作を経て大豆胚軸から分離された特定の物質であるイソフラボンなどを意 味する。 現に上記明細書の記載において「その抽出物については種々の用途が開発されている(例えば,特許文献3)」と記載されている特許文献3(特開2002-234844号,丙2)に記載されている「大豆胚軸抽出物」は,「イソフラボンまたはサポニン」(【請求項6】【0011】) とされていることからも,本件明細書でいう「大豆胚軸抽出物」とは,大豆胚軸から抽出して分離された「イソフラボンまたはサポニン」などの抽出成分を指しており,抽出作業を経ていない「大豆胚軸自体」とは区別して理解していることが分かる。 さらに,上記記載においては,「大豆胚軸抽出物は,それ自体コストが 高いという欠点がある」「大豆胚軸抽出物は,…発酵のために別途栄養素の転嫁が必要となるという問題点がある」「このような理由から,大豆胚軸抽出物は,エクオールを工業的に製造する上で原料として使用できない」とされており,大豆胚軸抽出物を発酵原料として用いることは本件特許の範囲には入らないことが意識的に記載されているというべきである。 なお,大豆胚軸抽出物を発酵原料として用いることの問題点は,後述の通- 30 -り,本件特許の分割前の親出願の出願過程でも一貫して指摘され いことが意識的に記載されているというべきである。 なお,大豆胚軸抽出物を発酵原料として用いることの問題点は,後述の通- 30 -り,本件特許の分割前の親出願の出願過程でも一貫して指摘されており,前記のことを裏付けている。 イ発明の課題と解決手段についての記載本件発明の課題は「大豆胚軸発酵物を提供する」とされ(段落【0010】),課題を解決する手段としては,「大豆の胚軸を発酵させる」と記 載されている(段落【0011】)から,本件発明では,前記の「大豆胚軸抽出物」とは区別された「大豆の胚軸」を選択してこれを発酵させたものが本件発明の対象と理解される。 ウ大豆胚軸の加工についての記載また本件明細書の段落【0019】の記載でも,「発酵原料としては大 豆胚軸が用いられる」と記述しているので,前述した抽出物を含まないものと理解される。なお,同段落には「加工の有無については制限されない」との記載もあるが,その加工の例としては,「生の状態のもの;加熱処理,乾燥処理,蒸煮処理等に供された大豆から分離したもの;未加工の大豆から分離した胚軸を加熱処理,乾燥処理又は蒸煮処理等に供したもの 等」としていて,抽出操作は含まれておらず,したがって,抽出したイソフラボンなどの成分を発酵原料とすることを記載していない。 エ実施例の記載さらに,本件発明の実施例1~14では,いずれも「粉末状大豆胚軸」を発酵処理しており,大豆胚軸から抽出した「イソフラボン」などの成分 を原料として発酵させた例は存在しない。 また,実施例4に関する段落【0052】では,粉末状大豆胚軸100gあたりの大豆イソフラボン類の合計(総イソフラボン)はわずか1942.0mg(約1.9g)であり,「原料として使用した粉末状大豆胚軸」中には,大豆イ する段落【0052】では,粉末状大豆胚軸100gあたりの大豆イソフラボン類の合計(総イソフラボン)はわずか1942.0mg(約1.9g)であり,「原料として使用した粉末状大豆胚軸」中には,大豆イソフラボン類のみに止まらず,たんぱく質,脂質,灰分,食物繊維など が大量に含まれていることを表2,表3において明らかにしている。 - 31 -オ本件明細書の記載に基づく「大豆胚軸」の解釈以上のとおり本件明細書の記載によると,本件発明の「大豆胚軸」とは,「大豆胚軸」それ自体,すなわち表3に記載のようなたんぱく質・脂質・灰分・食物繊維などの多様な成分を含むものを意味する。その結果,本件発明の「大豆胚軸」には,大豆胚軸から抽出操作を経て得られた「大豆胚 軸抽出物」は含まれない。したがって,「大豆胚軸発酵物」とは,そのような「大豆胚軸」自体を発酵させた物と解釈され,「大豆胚軸抽出物の発酵物」は含まれない。 (2) 出願経過による「大豆胚軸」の解釈出願経過を参照しても,本件発明の「大豆胚軸」は,「大豆胚軸抽出物」 を含まず,「大豆胚軸発酵物」には「大豆胚軸抽出物の発酵物」を含まないことが理解できる。 ア分割前の親出願による解釈本件特許の親出願の審査過程において,原告は,引用例に記載の発酵の原料である「大豆胚軸の抽出物」を「大豆胚軸」に置き換えることには阻 害要因が存在する,と述べている。すなわち,親出願の審査過程で,特許庁から平成23年11月9日付で国際公開2005/000042号を引用文献1(丙3の2)とする拒絶理由が発せられた(丙3の3)のに対し,出願人は平成23年11月29日付意見書において,引用文献1にはダイゼイン類含有物質として,大豆胚軸以外にも,大豆イソフラボンなどが記 載されているが,この が発せられた(丙3の3)のに対し,出願人は平成23年11月29日付意見書において,引用文献1にはダイゼイン類含有物質として,大豆胚軸以外にも,大豆イソフラボンなどが記 載されているが,この発明において,「大豆胚軸」を選択することには阻害事由がある,と主張した(丙3の4)。このように主張すると同時に出願人は手続補正書で各請求項について,「大豆胚軸を・・・発酵させて得られる」ものに限定した。 以上のとおり,親出願において出願人は,ダイゼイン類含有物質として, 大豆胚軸以外にも,大豆イソフラボンなどが存在するところ,「大豆胚軸- 32 -に含まれる成分には,微生物の生育や微生物を用いた発酵(ダイゼインのエクオールへの変換)を阻害する作用があることが知られているため,大豆胚軸を選択することには阻害理由がある」と主張している。すなわち,出願人は,親出願において,大豆胚軸とは,大豆胚軸の抽出物(イソフラボン)などと異なり,発酵を阻害する成分が含まれる大豆胚軸それ自体で あることを明らかにしている。 本件発明は,親出願に係る発明と当初同一の明細書に関連する発明として記載されていたものであり,本件発明における用語「大豆胚軸」が,親出願における当該用語と異なる意味に用いられることはないはずであるから,親子関係にある本件特許においても,「大豆胚軸」とは,大豆胚軸の 抽出物(イソフラボン)を含まないものである,と理解せざるを得ない。 イ本件特許の出願経過本件特許は,平成27年10月21日付で「日本未病システム学会雑誌,2002年,Vol.8, No.2,pp.232-2」を引用文献1(丙4の1)として拒絶理由通知(丙4の2)を受けた。 これに対し原告は,平成27年12月16日意見書(丙4の3)において,「引例 年,Vol.8, No.2,pp.232-2」を引用文献1(丙4の1)として拒絶理由通知(丙4の2)を受けた。 これに対し原告は,平成27年12月16日意見書(丙4の3)において,「引例1には,大豆胚軸の発酵物ではなく,その抽出物であってイソフラボンアグリコンを含むものに高脂血症に対する緩和作用等があることが記載されているに過ぎません」としている。つまり,引例1は,大豆胚軸の発酵物自体ではなく,大豆胚軸発酵物から抽出した物を開示するもの であると述べ,その上で,引例1と「エクオール及びオルニチン」を組み合わせるとすれば,抽出物と組み合わせになる筈であるところ,本件発明におけるように「抽出前の大豆胚軸発酵物を敢えて選択」することはない,と主張している。 すなわち,出願人は,抽出した物と抽出前の物は別異の物であり,本件 発明の対象は「抽出していない大豆胚軸そのもの」を用いた発酵物である- 33 -ことを自ら明らかにしている。 ウ出願経過のまとめ以上の通り,本件特許等の出願経過を見れば,原告は本件発明の「大豆胚軸」は抽出操作前の「大豆胚軸」それ自体を意味するものと主張していた。したがって,本件特許登録後において,本件発明の対象に「大豆胚軸 の抽出物」の発酵物を含むと解することはできず,仮にこれを含むと主張するのであれば,禁反言の原則により許されない。 (3) 被告製品の非侵害被告製品は,補助参加人が被告に供給する「EQ-5」を原材料とし,これに「ビール酵母」,「ラクトビオン酸含有乳糖発酵物」などを配合したものを カプセルに封入したサプリメントである(甲3,3頁)。 ここで,上記被告製品の原材料である「EQ-5」は大豆胚軸から抽出過程を経て抽出された高い純度のイソフラボン(原料イソフラボン)を のを カプセルに封入したサプリメントである(甲3,3頁)。 ここで,上記被告製品の原材料である「EQ-5」は大豆胚軸から抽出過程を経て抽出された高い純度のイソフラボン(原料イソフラボン)を,さらに発酵させて得られたものである(丙5:報告書)。 この原料イソフラボンは,その90%以上がダイジンなどの大豆イソフラ ボンであるから,これが大豆胚軸の抽出物であることは明らかである(丙5別紙1「分析試験成績書」) 。 このようにして原料イソフラボンを発酵させたあとの「EQ-5」中のイソフラボンについては,ほぼ全部がエクオールであり(丙5別紙4),イソフラボン類以外の成分(脂質・灰分・食物繊維など)についても丙5別紙5に示 すとおりで,本件特許の「大豆胚軸発酵物」(本件特許公報10頁段落番号【0054】【表3】「発酵後」)とは大きく異なっている。 したがって,「EQ-5」は「大豆胚軸発酵物」ではなく「大豆胚軸抽出物の発酵物」である。このように,被告製品は,原材料として「大豆胚軸抽出物の発酵物」である「EQ-5」を含有するが,「大豆胚軸発酵物」を含有せず, その余の原材料も大豆由来の原材料ではないから,被告製品は本件発明の技- 34 -術的範囲に含まれない。 以上 - 35 -(別紙)当事者の主張(争点2について) (1) 丙6に基づく進歩性欠如の有無(補助参加人主張の無効理由1)について〔補助参加人の主張〕 ア公知文献丙6(特公平7-61241号公報)には,「健康食品やその他の各種分野の食品などの製造に利用」できる,大豆胚軸を発酵生産物,すなわち「大豆胚軸発酵物」の発明が記載されている。 丙7(食品と開発 Vol.40 No.11,p62)は,「オルニチン」がいわゆ る の食品などの製造に利用」できる,大豆胚軸を発酵生産物,すなわち「大豆胚軸発酵物」の発明が記載されている。 丙7(食品と開発 Vol.40 No.11,p62)は,「オルニチン」がいわゆ るサプリメントに添加される成分として周知であることを記載している。 丙8(医学のあゆみ Vol.208 No. 12 p996-1000 2004.3.20)999頁左欄10~20行の記載及び丙9(栄養評価と治療 Vol.22 no.2p47(151))47(151)頁右欄IIの記載によれば,本件特許の出願時において「エクオール」はそもそもヒトの体内で産生され得る複数の有用な生 理作用を有する物質であり,かつヒトがそれ自体を摂取することは有効であると当業者に認識されていたことからして,「エクオール」は食品等に添加される成分として周知のものであったことは明らかである。さらに,このことは,本件明細書の記載からして本件特許権者も認めている。 イ本件発明1との一致点及び相違点 本件発明1と丙6記載の発明を対比すると,両者は「大豆胚軸発酵物」である点で一致する。 他方,本件発明1は,オルニチン及びエクオールを含有するが,丙6には,オルニチン及びエクオールを含有する点について記載がない点で相違する。 ウ相違点について- 36 -本件特許の出願日において,食品,さらにサプリメントや健康食品の分野にあって,それら食品等を多機能化し,あるいはその機能を高度化し,さらに商品の付加価値を高めるため,複数の生理活性物質を構成成分として含有させて食品等とすることは,通常行われていた食品開発の手法であり,技術常識である。この技術常識の下,「健康食品やその他の各種分野 の食品などの製造に利用」できる,丙6に記載の「大豆胚軸発酵物」 有させて食品等とすることは,通常行われていた食品開発の手法であり,技術常識である。この技術常識の下,「健康食品やその他の各種分野 の食品などの製造に利用」できる,丙6に記載の「大豆胚軸発酵物」を多機能化し,あるいはその機能を高度化し,さらに商品の付加価値を高めるため,これに,生理活性物質として有用性が周知の「オルニチン」及び「エクオール」を添加することは,当業者が極めて容易に想到可能な事項である。 また,本件明細書には,このような組み合わせにより予想外の結果が得られたとする記載はない。 したがって,本件発明1は,丙6及び丙7~9,さらに技術常識から当業者が容易に発明することができた発明であり,進歩性を有しない。 エ本件発明3について 丙6に記載の「大豆胚軸発酵物」は,「健康食品やその他の各種分野の食品などの製造に利用」できるものであるから,これを配合し,食品とすること,さらにその機能に着目して,特定保健用食品,栄養補助食品,機能性食品,病者用食品,化粧品,又は医薬品とすることは,当業者が容易に想到できる事項である。 したがって,本件発明3も,丙6及び丙7~9,さらに技術常識から当業者が容易に発明することができた発明であり,進歩性を有しない。 〔原告の主張〕ア補助参加人による本件各発明の要旨の主張は誤っていることまず,補助参加人が前提とする本件各発明の要旨の認定には誤りがある。 本件発明1は,「オルニチン及びエクオールを含有する大豆胚軸発酵- 37 -物」の発明であり,本件発明3は,「請求項1…に記載の大豆胚軸発酵物を配合した」食品等の発明である。本件各発明において,オルニチン及びエクオールは大豆胚軸発酵物に「含有」されている必要があり,大豆胚軸発酵物に後からオルニチン及びエク 求項1…に記載の大豆胚軸発酵物を配合した」食品等の発明である。本件各発明において,オルニチン及びエクオールは大豆胚軸発酵物に「含有」されている必要があり,大豆胚軸発酵物に後からオルニチン及びエクオールを加えても,それは当該大豆胚軸発酵物がオルニチン及びエクオールを「含有」していることにはならな い。本件明細書においても,「上記の条件で発酵処理されて得られる大豆胚軸発酵物には,エクオールが生成されて蓄積されており,エクオールの有用生理作用を発現することができる。」(段落【0028】),「アルギニンを含む発酵原料に対して,オルニチン・エクオール産生菌を使用して発酵させて得られた大豆胚軸発酵物には,オルニチンも生成・蓄積して いるので」(段落【0038】),「アルギニンを含む発酵原料に対して,オルニチン・エクオール産生菌を使用して発酵させて得られた大豆胚軸発酵物を使用する場合には,食品中にオルニチンをも含有させることができる」(段落【0039】)等の記載がある一方で,大豆胚軸発酵物の生成後にオルニチン及びエクオールを加えることに関する記載が一切なく, 「含有」とは,大豆胚軸発酵物が生成された時点で,その成分としてオルニチン及びエクオールが含まれることを意味していることは明らかである。 イ丙6の発酵生産物にオルニチン及びエクオールを含有させることは容易想到でないこと本件各発明は,発酵工程により得られるエクオールとオルニチンという 2つの有用成分を同時に含有する大豆胚軸発酵物であることを特徴とするものである。 一方で,丙6には,有用成分である大豆サポニンを多く含む大豆胚軸を,大豆サポニンを高濃度に残留させつつ大豆胚軸特有の苦味や渋味を除去して食用に適するようにするために,納豆菌,麹菌又はテンペ菌で発酵させ 丙6には,有用成分である大豆サポニンを多く含む大豆胚軸を,大豆サポニンを高濃度に残留させつつ大豆胚軸特有の苦味や渋味を除去して食用に適するようにするために,納豆菌,麹菌又はテンペ菌で発酵させ て得られる大豆胚軸の発酵生産物が記載されている(第8カラム〔発明の- 38 -効果〕)。しかし,オルニチン及びエクオールについては何らの記載もなく,発酵生産物中にそれらが存在していることや,それらが人間にとって有用な成分であることを示唆する記述もない。 また,オルニチン及びエクオールがそれぞれ生理活性を有することが知られていたとしても,オルニチン及びエクオールを含有させることができ る物質は無数に存在し,かつ,生理活性を有する物質は他にも無数にある(補助参加人が挙げる丙7から丙9において,特にオルニチン及びエクオールと大豆胚軸の発酵生産物との組み合わせを示唆する記載もない。)。 その中で,大豆胚軸特有の苦味や渋味を除去するために大豆胚軸を納豆菌,麹菌又はテンペ菌で発酵させるという特定の処理を経た大豆胚軸の発酵生 産物と,オルニチン及びエクオールという組み合わせのみを選択し,敢えて大豆胚軸の発酵生産物にオルニチン及びエクオールを含有させる動機付けはない。また,仮に,当業者が,大豆胚軸の発酵生産物,オルニチン及びエクオールの3つを組み合わせることに想到したとしても,発酵生産物である大豆胚軸発酵物の中にオルニチン及びエクオールを含有させるとい う本件各発明の着想に至ることはない。 丙6には,オルニチン及びエクオールに関する記載はもとより,有用成分の追加に関する記載すらなく,丙7から丙9までにおいても,オルニチン及びエクオールを大豆胚軸の発酵生産物と組み合わせることに関する記載はないのであるから,「当該発明の特徴点に到達する より,有用成分の追加に関する記載すらなく,丙7から丙9までにおいても,オルニチン及びエクオールを大豆胚軸の発酵生産物と組み合わせることに関する記載はないのであるから,「当該発明の特徴点に到達するためにしたはずで あるという示唆等」が存在したということは到底できない。 (2) 分割出願要件違反等の有無(補助参加人主張の無効理由2)について〔補助参加人の主張〕親出願(特願2007-549133号(丙3の1))に付与された特許第5030790号(丙10)の請求項6は,本件発明と同一発明であり, 本件特許は,分割出願要件違反(特許法44条)か,特許第5030790- 39 -号(丙10)との先願主義違反(特許法39条)であって,無効である。 すなわち,特許第5030790号の請求項1の記載は,「大豆胚軸を,ダイゼイン配糖体,ダイゼイン,及びジヒドロダイゼインよりなる群から選択される少なくとも1種のダイゼイン類を資化してエクオールを産生する能力を有するラクトコッカス・ガルビエで,発酵させて得られる,エクオール 含有大豆胚軸発酵物。」であり,請求項6の記載は,「更に,オルニチンを含む,請求項1に記載の大豆胚軸発酵物。」である。請求項1は,いわゆるプロダクトバイプロセスクレーム(PBPクレーム)と解されるが,あくまで「物」の発明と解すると,「エクオールを含有する大豆胚軸発酵物」であり,これに請求項6の事項を加えれば,「オルニチン及びエクオールを含有 する大豆胚軸発酵物」となり,本件特許の請求項1とまさに一致する。 〔原告の主張〕まず,特許法44条に違反して出願がなされたことは特許の無効理由とはならない(特許法123条1項)。 また,本件発明1は「オルニチン及びエクオールを含有する大豆胚軸発酵 物」であ の主張〕まず,特許法44条に違反して出願がなされたことは特許の無効理由とはならない(特許法123条1項)。 また,本件発明1は「オルニチン及びエクオールを含有する大豆胚軸発酵 物」であるところ,親出願の請求項6(丙10)は,「大豆胚軸を,ダイゼイン配糖体,ダイゼイン,及びジヒドロダイゼインよりなる群から選択される少なくとも1種のダイゼイン類を資化してエクオールを産生する能力を有するラクトコッカス・ガルビエで,発酵させて得られる,エクオール含有大豆胚軸発酵物」であって,「オルニチンを含む」ものである。後者は,「ダ イゼイン配糖体,ダイゼイン,及びジヒドロダイゼインよりなる群から選択される少なくとも1種のダイゼイン類を資化してエクオールを産生する能力を有するラクトコッカス・ガルビエで,発酵させて得られる」という要件を含むものであり,また,生成される発酵物にはラクトコッカス・ガルビエが含まれることになるから,本件発明1とは構成が異なり,本件発明1と親出 願の請求項6に係る発明は同一でない。 - 40 -(3) 明確性要件違反の有無(補助参加人主張の無効理由3)について〔補助参加人の主張〕本件発明1の構成要件「1-C 大豆胚軸発酵物」は,その文言から,大豆胚軸を発酵させて得られた物,と理解される。つまり,本件発明1は,「物」の発明であるにもかかわらず,その物がその物の製造方法により記載 されている。そして,本件発明につき,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するとの立証がされていない。したがって,本件特許には明確性要件違反(特許法36条6項2号違反)の無効理由がある。この点,原告も自ら,本件発明1は方法の発明であると主張して 的でないという事情が存在するとの立証がされていない。したがって,本件特許には明確性要件違反(特許法36条6項2号違反)の無効理由がある。この点,原告も自ら,本件発明1は方法の発明であると主張している。 〔原告の主張〕「発酵物」は,単に発酵したという状態を示すことにより,構造又は特性を特定している文言にすぎない。「発酵物」の発明が特許査定を受けている例も複数存在する(甲11~13)。被告製品も,その原材料として「ラクトビオン酸含有乳糖発酵物」及び「大豆胚芽抽出発酵物」を含むと表示して おり(甲3,3頁下部),「発酵物」は,物の構造又は特性を特定する用語として概念が定着しているものである。 また,「発酵物」は,「発酵」(これも辞書的に定義され,その概念が定着しているものである。甲14)したという特性を有する物として明確であり,特許請求の範囲等の記載を読む第三者が構造若しくは特性を理解できな い,又はどの範囲の物が権利の対象となるのかが不明確になるという事情はない。 なお,補助参加人が指摘する原告の主張は,原告が本件各発明の特徴を説明したものであり,それを以て特許請求の範囲が製造方法を含むことになるものではない。 したがって,補助参加人主張の無効理由は失当である。 - 41 -(4) 丙11に基づく新規性ないし進歩性欠如の有無(補助参加人主張の無効理由4)について〔補助参加人の主張〕ア丙11の記載丙11(国際公開第2005/000042号公報)の11~12頁に は,大豆イソフラボンなどのダイゼイン類含有物質をGAM培地,BHIブロス培地などに添加し,ラクトコッカス20-92株を培養することで,エクオールが得られることを記載している。 ここで,本件明細書の段落0007に「大豆胚軸部 イゼイン類含有物質をGAM培地,BHIブロス培地などに添加し,ラクトコッカス20-92株を培養することで,エクオールが得られることを記載している。 ここで,本件明細書の段落0007に「大豆胚軸部分には,大豆加工食品として利用されている子葉部分に比べて,イソフラボンやサポニン等の 有用成分が高い割合で含まれていることが知られており,」と述べられているように,丙11に開示の「大豆イソフラボンなどのダイゼイン類含有物質」は大豆胚軸から抽出されたもの,すなわち「大豆胚軸抽出物」である。 なお,丙11は,「大豆胚軸抽出物」を開示する(9頁11~23行)。 具体的には,丙11は,「ダイゼイン類を含有する物質(ダイゼイン類含有物質)の代表例として」,「大豆イソフラボン」,例えば「フジッコ社製「フジフラボンP10」」を挙げ,「ダイゼイン類を含有する物質の他の具体例」として,「大豆胚軸抽出物」などを例示している。 したがって,丙11には,「大豆胚軸抽出物」をGAM培地に添加し, ラクトコッカス20-92株を培養することで,エクオールを得る発明が開示されている。つまり,「エクオールを含有する大豆胚軸抽出物発酵物」が記載されている。 イ丙11記載の発明と本件発明1との対比本件発明の「大豆胚軸」が「大豆胚軸の抽出物」を含むと理解するので あれば,丙11には,「エクオールを含有する大豆胚軸発酵物」が記載さ- 42 -れており,丙11記載の発明と本件発明1とは,「エクオールを含有する大豆胚軸発酵物」である点で一致する。 他方,丙11には「オルニチン」を含有することの記載がなく,本件発明にあっては「オルニチン」を含有するとしている点で相違する。 ウ相違点について (ア) 丙7にあるように,「オルニチン」が生理活性 11には「オルニチン」を含有することの記載がなく,本件発明にあっては「オルニチン」を含有するとしている点で相違する。 ウ相違点について (ア) 丙7にあるように,「オルニチン」が生理活性物質として有用であり,サプリメントや食品に添加して用いられる用途は周知である。前記のとおり,本件特許の出願日において,複数の生理活性物質を構成成分として含有させて食品等とすることは,通常行われていた食品開発の手法であり,このような開発手法は技術常識である。したがって, 丙11記載の「エクオールを含有する大豆胚軸発酵物」に「オルニチン」を組み合わせることは当業者が容易に想到可能な事項である。 また,本件明細書にあって,オルニチンと,エクオールとの組み合わせにより相加的な効果を越えて相乗的な効果が得られたとする記載はない。 よって,本件発明1は進歩性を有さない。 (イ) 丙12及び13に示すように,「オルニチン」は,GAM培地に含まれる成分である。したがって,丙11の記載に従い,培地をGAM培地とした態様は「オルニチン」を含むものとなり,本件発明1と同一の発明が記載されていることとなる。よって,本件発明1は新規性 を有さない。 さらに,丙11の記載に従い,培地としてGAM培地を選択することは当業者が容易に想到し得る事項であるから,その結果,丙11記載の「エクオールを含有する大豆胚軸発酵物」においてオルニチンを含む態様は,当業者が容易に想到可能な発明である。したがって,本件発明1 は進歩性を有さない。 - 43 -(ウ) 丙13にあるように,GAM培地には「オルニチン」だけでなく,「アルギニン」も含まれる。 また,丙11記載の「ラクトコッカス 20-92株」は,本件明細書において用いられている株と全く同一の ウ) 丙13にあるように,GAM培地には「オルニチン」だけでなく,「アルギニン」も含まれる。 また,丙11記載の「ラクトコッカス 20-92株」は,本件明細書において用いられている株と全く同一の株である。本件明細書において,「ラクトコッカス20-92」が「アルギニン」を「オルニチン」に変換す る能力を有する,と記載されている以上,丙11記載の「ラクトコッカス 20-92株」も当然に「アルギニン」を「オルニチン」に変換する能力を有する。したがって,丙11は,GAM培地に由来する「アルギニン」が「ラクトコッカス 20-92株」により「オルニチン」へと変換されることを開示するか又は示唆している。 よって,本件発明1は,新規性を有さないか又は進歩性を有さない。 (エ) 小括よって,本件発明の「大豆胚軸発酵物」における「大豆胚軸」が「大豆胚軸の抽出物」を含むと理解するのであれば,本件発明1は新規性欠如または進歩性欠如の,無効理由を有する。 エ本件発明3について丙11の13頁7行~13行の開示事項は,構成3-Bの「食品」に相当する。なお,丙11又は丙11と丙12~丙13のいずれかとの組合せが構成3-Aを開示又は示唆していることは上述したとおりである。よって,本件発明3の構成は,新規性を有さないか又は進歩性を有しない。 〔原告の主張〕ア丙11の組成物にオルニチンを含有させることは容易想到でないことまず,生成された発酵物に事後的にオルニチンを添加しても,当該発酵物がオルニチンを「含有」することはならず,本件各発明はオルニチンが発酵物の生成後に添加された形態を含むものでない。 次に,丙11には,エクオール含有組成物にオルニチンを含有させるこ- 44 -とに関する記載は存在せず,当該組成物中 発明はオルニチンが発酵物の生成後に添加された形態を含むものでない。 次に,丙11には,エクオール含有組成物にオルニチンを含有させるこ- 44 -とに関する記載は存在せず,当該組成物中におけるオルニチンの存在やそれが人間にとって有用であることを示唆する記述もない。既に述べたとおり,オルニチンが生理活性を有することが知られていたとしても,オルニチンと組み合わせることができる物質は無数に存在し,かつ,生理活性を有する物質は他にも無数にある(補助参加人が挙げる丙7において,特に オルニチンとエクオール含有組成物との組み合わせを示唆する記載もない。)。その中で,ダイゼイン類含有物質をラクトコッカス20-92株で発酵させるという特定の処理を経て得られるエクオール含有組成物とオルニチンという組み合わせのみを選択し,敢えて,当該特定の組成物にオルニチンを含有させる動機付けはない。また,仮に,当業者が,当該組成 物とオルニチンを組み合わせることに想到したとしても,発酵生産物である大豆胚軸発酵物の中にオルニチン及びエクオール含有させるという本件各発明の着想に至ることはない。 したがって,丙11の組成物にオルニチンを含有させることが,当業者に容易に想到できるとはいえない。 イ本件特許の優先日当時,当業者は培地由来のオルニチンが丙11の組成物に含まれることを理解できなかったこと(ア) 新規性について丙11には,補助参加人が主張しているとおり,エクオール含有組成物を生成するにあたり,培地としてGAM培地が使用できることが記載 されており,丙13には,補助参加人が具体的なGAM培地の商品として挙げる丙12の「GAMブイヨン」を分析すると遊離オルニチンが検出されるとの分析試験結果が記載されている。 しかし,丙1 されており,丙13には,補助参加人が具体的なGAM培地の商品として挙げる丙12の「GAMブイヨン」を分析すると遊離オルニチンが検出されるとの分析試験結果が記載されている。 しかし,丙11にはオルニチンに関する記載は全くなく,培地に由来するオルニチンを含むエクオール含有組成物が丙11に記載されている とはいえない。 - 45 -また,丙12にはGAMブイヨンにおけるオルニチンの含有に関する記載はなく,本件特許の優先日後に作成された丙13によっても,GAMブイヨンに含まれる遊離オルニチンの量は微量である(丙13によれば,GAMブイヨンのオルニチンの含有量は118mg/100gであるが,これは被告製品のオルニチン含有量24.29mg/1.32g (100gあたりに換算すると,1840.15mg)と比べても著しく低い。)。また,GAMブイヨンは,嫌気性菌の「一般的培養・感受性試験用」,すなわち実験用の培地にすぎず(丙13),オルニチン量の規格も存在しないことから,一定量のオルニチンが安定して含まれているという保証もない。 さらに,オルニチンは発酵により分解されることがある(甲16,17)。すなわち,本件特許の優先日前に公表された甲16には,硝酸還元菌及び乳酸菌にオルニチン脱炭酸能が認められることが記載され(70~71頁),硝酸還元菌及び乳酸菌により,プトレシン等が生成されることが記載されている(74頁)。また,同じく本件特許の優先日前 に公表された甲17には,ポリアミンの1つであるプトレシンがオルニチンの脱炭酸反応から生成されることが記載され(47頁左欄),さらにプトレシンから先のポリアミンの生合成経路も記載されている(47頁図3)。また,丙7でも,オルニチンの生理活性の1つとして,代謝の過程で 脱炭酸反応から生成されることが記載され(47頁左欄),さらにプトレシンから先のポリアミンの生合成経路も記載されている(47頁図3)。また,丙7でも,オルニチンの生理活性の1つとして,代謝の過程でポリアミンへと変換されることが挙げられている(62頁右欄 「④」の部分,同欄「3.」の部分)。このように,本件特許の優先日当時,オルニチンは,乳酸菌(なお,丙11に開示されている菌も,乳酸菌である。)等のオルニチン脱炭酸能により別の物質へと転換されうることが知られていた。そのため,当業者は,丙11においてGAM培地を選択した場合に当該GAM培地に含まれうるオルニチンは,分解さ れて,エクオール含有組成物中には残存していない可能性があることを- 46 -理解する。 また,上述したようにGAM培地中の遊離オルニチン量は極微量であり,それが仮にそのまま残存していたとしても,培地に加える原料の量なども考慮すると,不可避含有物(不可避的に含有される不純物)程度の量しかないと当業者は理解する。実際に,丙11の実施例2では,ラ クトコッカス20-92株をGAM培地に懸濁させた液1mlを調製し,該液を豆乳100gに加えて培養している。丙12によれば,GAMブイヨン1lは栄養成分にして59g分に相当し,丙13によれば,当該栄養成分に含まれる遊離オルニチンの量は118mg/100g,これを59g分(GAM培地1l相当)に換算すると,69.62mg(1 18mg/100g×59g)となる。すなわち,GAMブイヨン1l中に含まれる遊離オルニチン量が69.62mg,GAMブイヨン1ml中では0.06962mg(69.62mg÷1000ml)である。 次に,丙13によれば,GAMブイヨンの栄養成分59gに含まれるアルギニン(なお,分析試験項 量が69.62mg,GAMブイヨン1ml中では0.06962mg(69.62mg÷1000ml)である。 次に,丙13によれば,GAMブイヨンの栄養成分59gに含まれるアルギニン(なお,分析試験項目の「アルギニン」には「遊離アルギニ ン」も内数として含むものと理解される。)の量は2.56%,重量に換算すると1.5104g(59g×2.56%)であるから,GAMブイヨン1l中に含まれるアルギニン量が1.5104g,1ml中では1.5104mg(1.5104g÷1000ml)である。アルギニンとオルニチンの分子量の比は174.2:132.16であるから, 補助参加人の主張するアルギニンからオルニチンへの変換が全てのアルギニンについて起こったと仮定すると,アルギニン1.5104mgからオルニチン約1.15mg(1.5104mg×132.16/174.2)が生成される。これと上記の遊離オルニチンが全て残存していると仮定して,その数値を合計しても,GAMブイヨン1g(1ml= 1gとして計算する。)と豆乳100gから成る豆乳培養物101g中,- 47 -オルニチンの含有量は約1.22mg,豆乳培養物1g中ではわずか約0.0122mg(1.22mg÷101g)と,極微量(不可避含有物程度の量)にしかならない。 そうすると,丙12の記載を参酌しても,当業者が丙11のエクオール含有組成物中に培地由来のオルニチンが含まれると理解することがで きず,丙11に,本件発明1の技術的思想を実施しうる程度にその内容が開示されているとはいえない。 加えて,丙11において発酵に用いられているラクトコッカス20-92株は,原告により,平成15年1月23日に独立行政法人産業技術総合研究所の特許生物寄託センター(なお,現在は独立行政法人製品 い。 加えて,丙11において発酵に用いられているラクトコッカス20-92株は,原告により,平成15年1月23日に独立行政法人産業技術総合研究所の特許生物寄託センター(なお,現在は独立行政法人製品評 価技術基盤機構に承継されている。)に寄託されたが(丙11,6頁3~7行),特許法施行規則において,寄託された微生物の分譲を受けることができるのは,寄託者である原告及び原告の承諾を得た者の申請による場合のほかは,①当該微生物に係る発明について特許権の設定の登録があったとき,②丙11に係る発明の内容を記載した書面を提示され て特許法65条1項の警告を受けたとき,又は③特許法50条1項に定める拒絶理由通知書に対する意見書を作成するために必要があるときに限られていた(特許法施行規則27条の3)。そして,本件特許の優先日(平成17年12月6日及び平成18年10月11日)時点では丙11に係る出願(及びその対応出願)に対して特許の設定登録がされてい なかったのであるから(設定登録は平成18年10月13日である。),当業者は,本件特許の優先日当時,寄託されているラクトコッカス20-92株の分譲を受けることはできなかった(なお,「当業者」として,上記②又は③のような特殊な状況にある者が想定されるものではない。)。すなわち,当業者は,丙11に記載されているラクトコッカス 20-92株を使用して追試を実施し,丙11のエクオール含有組成物- 48 -にオルニチンが含まれるか否かを自ら確認することも不可能であった。 したがって,オルニチンを含むエクオール含有組成物は,「頒布された刊行物に記載された発明」又は「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明」ではない。 (イ) 進歩性について 上記(ア)において述べたとおり, 含むエクオール含有組成物は,「頒布された刊行物に記載された発明」又は「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明」ではない。 (イ) 進歩性について 上記(ア)において述べたとおり,当業者が仮に丙11においてGAM培地の使用を選択したとしても,GAM培地を使用して生成された丙11のエクオール含有組成物に培地に由来するオルニチンが含まれていることを理解することはできないのであるから,当業者は,丙11に記載されたエクオール含有組成物をGAM培地を使用して生成することによ り,培地に由来するオルニチンを含有する当該組成物を得ることを容易に想到することができたとはいえない。 ウ本件特許の優先日当時,当業者はアルギニンが変換されたオルニチンが丙11の組成物に含まれることを理解できなかったこと(ア) 新規性について 丙11には,補助参加人が主張しているとおり,エクオール含有組成物を生成するにあたり,培地としてGAM培地が使用できることが記載されており,丙13には,丙12の「GAMブイヨン」を分析するとアルギニンが検出されるとの分析試験結果が記載されている。しかし,丙11にはアルギニンがラクトコッカス20-92株によりオルニチンに 変換されるとの記載は全くなく,アルギニンが変換されたオルニチンを含むエクオール含有組成物が丙11に記載されているとはいえない。 また,補助参加人は,本件明細書の記載を参照して,丙11には,GAM培地に含まれるアルギニンがオルニチンに変換されることが開示されている,と主張するが,本件明細書は,いうまでもなく本件特許の優 先日後に頒布され,又はその内容が電気通信回線を通じて公衆に利用可- 49 -能となったものである。本件特許の優先日当時,当業者は本件明細書に接すること 書は,いうまでもなく本件特許の優 先日後に頒布され,又はその内容が電気通信回線を通じて公衆に利用可- 49 -能となったものである。本件特許の優先日当時,当業者は本件明細書に接することができなかったのであるから,本件明細書の記載を参酌して,丙11にアルギニンがラクトコッカス20-92株によりオルニチンに変換されることが開示されていたということはできない。 (イ) 進歩性について 上記(ア)において述べたとおり,当業者が仮に丙11においてGAM培地の使用を選択したとしても,GAM培地を使用して生成された丙11のエクオール含有組成物にアルギニンが変換されたオルニチンが含まれていることを理解することはできないのであるから,当業者は,丙11に記載されたエクオール含有組成物をGAM培地を使用して生成する ことにより,培地に含まれるアルギニンが変換されたオルニチンを含有する当該組成物を得ることを容易に想到することができたとはいえない。 エ小括以上より,本件発明1の新規性及び進歩性は否定されず,それに従属する本件発明3の新規性及び進歩性も否定されない。 (5) 丙14の1に基づく新規性ないし進歩性欠如の有無(補助参加人主張の無効理由5)について〔補助参加人の主張〕ア丙14の1の記載丙14の1(WO99/07392号)の34頁以下の実施例6には, 大豆イソフラボンの水溶液にストレプトコッカスA6G-225をGAM培地に懸濁させた液を加え培養してエクオールを製造することが記載されている。 既に論じたように,本件明細書の段落0007に「大豆胚軸部分には,大豆加工食品として利用されている子葉部分に比べて,イソフラボンやサ ポニン等の有用成分が高い割合で含まれていることが知られており,」と ように,本件明細書の段落0007に「大豆胚軸部分には,大豆加工食品として利用されている子葉部分に比べて,イソフラボンやサ ポニン等の有用成分が高い割合で含まれていることが知られており,」と- 50 -述べられているように,丙14の1に開示の「大豆イソフラボンの水溶液」である水溶性大豆イソフラボン素材(フジッコ社製「フジフラボンP10」)は,「大豆胚芽抽出物」(丙14の2)であり,大豆胚軸から抽出されたもの,すなわち「大豆胚軸抽出物」である。 したがって,丙14の1には,「大豆胚軸抽出物」をGAM培地に添加 し,ストレプトコッカスA6G-225を培養することで,エクオールを得る発明が開示されている。つまり,「エクオールを含有する大豆胚軸抽出物発酵物」が記載されている。 イ丙14の1記載の発明と本件発明1との対比本件発明の「大豆胚軸」が「大豆胚軸の抽出物」を含むと理解するので あれば,丙14の1には,「エクオールを含有する大豆胚軸発酵物」が記載されており,丙14の1記載の発明と本件発明1とは,「エクオールを含有する大豆胚軸発酵物」である点で一致する。 他方,丙14の1には「オルニチン」を含有することの記載がなく,本件発明にあっては「オルニチン」を含有するとしている点で相違する。 ウ相違点について補助参加人主張の無効理由4記載のとおり,丙14の1記載の「エクオールを含有する大豆胚軸発酵物」に「オルニチン」を組み合わせることは当業者が容易に想到可能な事項であるから,本件発明1は進歩性を有さない。また,丙12及び丙13で示すように,「オルニチン」は,GAM培 地に含まれる成分であるため,丙14の1に記載の,培地をGAM培地として得られた「エクオールを含有する大豆胚軸発酵物」は「オルニチン」を含 及び丙13で示すように,「オルニチン」は,GAM培 地に含まれる成分であるため,丙14の1に記載の,培地をGAM培地として得られた「エクオールを含有する大豆胚軸発酵物」は「オルニチン」を含むものとなり,本件発明1と同一の発明が記載されていることとなるから,本件発明1は新規性を有さない。 エ小括 よって,本件発明の「大豆胚軸発酵物」における「大豆胚軸」が「大豆- 51 -胚軸の抽出物」を含むと理解するのであれば,本件発明1は新規性欠如または進歩性欠如の,無効理由を有する。 オ本件発明3について丙14の1の39頁の請求項9及び請求項11の開示事項は,構成3-Bの「食品」又は「医薬品」に相当する。なお,丙14の1又は丙14の 1と丙7,丙12又は丙13のいずれかとの組合せが構成3-Aを開示又は示唆していることは上述したとおりである。よって,本件発明3の構成は,新規性を有さないか又は進歩性を有さない。 〔原告の主張〕ア丙14の1の組成物にオルニチンを含有させることは容易想到でない ことまず,生成された発酵物に事後的にオルニチンを添加しても,当該発酵物がオルニチンを「含有」することはならず,本件各発明はオルニチンが発酵物の生成後に添加された形態を含むものでないことは,補助参加人主張の無効理由4について述べたとおりである。 次に,丙14の1には,エクオール含有組成物にオルニチンを含有させることに関する記載は存在せず,当該組成物中におけるオルニチンの存在やそれが人間にとって有用であることを示唆する記述もない。既に述べたとおり,オルニチンが生理活性を有することが知られていたとしても,無数にありうる物質と有用成分との組み合わせの中から,水溶性大豆イソフ ラボン素材をストレプトコッカスA 記述もない。既に述べたとおり,オルニチンが生理活性を有することが知られていたとしても,無数にありうる物質と有用成分との組み合わせの中から,水溶性大豆イソフ ラボン素材をストレプトコッカスA6G-225で発酵させるという特定の処理を経て得られるエクオール含有組成物とオルニチンという組み合わせのみを選択し,敢えて当該特定の組成物にオルニチンを含有させる動機付けはない。また,仮に,当業者が,当該組成物とオルニチンを組み合わせることに想到したとしても,発酵生産物である大豆胚軸発酵物の中にオ ルニチン及びエクオールを含有させるという本件各発明の着想に至ること- 52 -はない。 したがって,丙14の1の組成物にオルニチンを含有させることが,当業者に容易に想到できるとはいえない。 イ本件特許の優先日当時,当業者は培地由来のオルニチンが丙14の1の組成物に含まれることを理解できなかったこと 丙14の1には,補助参加人が主張しているとおり,エクオール含有組成物を生成するにあたり,培地としてGAM培地を使用することが記載されており,丙13には,丙12の「GAMブイヨン」を分析すると遊離オルニチンが検出されるとの分析試験結果が記載されている。 しかし,丙14の1にはオルニチンに関する記載は全くなく,培地に由 来するオルニチンを含むエクオール含有組成物が丙14の1に記載されているとはいえない。 また,既に述べたとおり,丙12にはGAMブイヨンにおけるオルニチンの含有に関する記載はなく,本件特許の優先日後に作成された丙13によっても,GAMブイヨンに含まれる遊離オルニチンの量は微量であるう え,GAMブイヨンは実験用の培地にすぎず,GAMブイヨンにおけるオルニチン量の規格も存在しないことから,一定量のオルニチンが っても,GAMブイヨンに含まれる遊離オルニチンの量は微量であるう え,GAMブイヨンは実験用の培地にすぎず,GAMブイヨンにおけるオルニチン量の規格も存在しないことから,一定量のオルニチンが安定して含まれているという保証もない。さらに,本件特許の優先日当時,オルニチンは乳酸菌等の微生物により分解されることがあることが知られていた(甲16,17,丙7)ため,当業者は,丙14の1において使用される GAM培地に含まれうるオルニチンは,分解されて,エクオール含有組成物中には残存していない可能性があることを理解する。また,上述したように,GAM培地中の遊離オルニチン量は極微量であり,それが仮にそのまま残存していたとしても,培地に加える原料の量なども考慮すると,不可避含有物程度の量しかないと当業者は理解する。そうすると,丙12の 記載を参酌しても,当業者が丙14の1のエクオール含有組成物中に培地- 53 -由来のオルニチンが含まれると理解することができず,丙14の1に,本件発明1の技術的思想を実施しうる程度にその内容が開示されているとはいえない。 したがって,オルニチンを含むエクオール含有組成物は「頒布された刊行物に記載された発明」又は「電気通信回線を通じて公衆に利用可能とな った発明」ではない。 ウ小括以上より,本件発明1の新規性及び進歩性は否定されず,それに従属する本件発明3の新規性及び進歩性も否定されない。 (6) 丙15に基づく新規性ないし進歩性欠如(補助参加人主張の無効理由 6)について〔補助参加人の主張〕ア親出願及び本件特許に係る出願は,基礎出願2件に記載されていない事項を含むこと親出願は,基礎出願2件に記載されていない事項を含む。具体的には, 例えば,親出願の再公表公 加人の主張〕ア親出願及び本件特許に係る出願は,基礎出願2件に記載されていない事項を含むこと親出願は,基礎出願2件に記載されていない事項を含む。具体的には, 例えば,親出願の再公表公報WO2007/066655(丙3の1)の段落番号【0010】の第2文,【発明の効果】の【0012】~【0013】,【図面の簡単な説明】の【図2】~【図4】,及び【図面】の【図2】~【図4】は,基礎出願のいずれにおいても記載されていない。また,これらの記載は,第3世代分割出願にかかる本件特許の明細書にも受け継がれ,同じ段落番 号,同じ図番で記載されている。なお,親出願(丙3の1)及び本件特許の明細書の段落番号【0010】の第2文,【発明の効果】の【0012】~【0013】は,本件発明の目的・効果に関する事項である。 このように,基礎出願2件に記載されていない事項を,本件特許の親出願,及び本件特許の明細書が含んでおり,かつ該事項は基礎出願の補正に よっては含めることができない事項であるため,親出願及びその第3世代- 54 -分割出願である本件特許は,基礎出願の国内優先権を主張する効果が認められない。したがって,本件特許の請求項にかかる発明の新規性又は進歩性の判断基準日は,親出願の出願日(国際出願日:2006(平成18)年12月5日)である。 イ公知文献 丙15(JournalofBioscienceandBioengineering, Vol. 102, No.3, p. 247-250, 2006)(公開日:2006年9月)には,蒸留水1リットルあたりGAMブロス59g及びダイゼイン(最終濃度:200 μM)を含むエクオールアッセイ培地に,1%L-アルギニンを含むGAMブロス及びエクオール産生菌であるdo 6年9月)には,蒸留水1リットルあたりGAMブロス59g及びダイゼイン(最終濃度:200 μM)を含むエクオールアッセイ培地に,1%L-アルギニンを含むGAMブロス及びエクオール産生菌であるdo03を加え,培養してエクオールを製造することが記載 されている。なお,本件明細書の段落0019に「大豆胚軸とは,(中略)ダイゼイン配糖体やダイゼイン等のダイゼイン類が多く含まれていることが知られている。」と記載されているとおり,丙15に開示の「ダイゼイン」は大豆胚軸から得られたもの,すなわち「大豆胚軸抽出物」である。 したがって,丙15には,「大豆胚軸抽出物」を1%L-アルギニンを含むGAM培地に添加し,エクオール産生菌であるdo03と共に培養することで,エクオールを得る発明が開示されている。つまり,「エクオールを含有する大豆胚軸抽出物発酵物」が記載されている。 ウ丙15記載の発明と本件発明1との対比 本件発明の「大豆胚軸」が「大豆胚軸の抽出物」を含むと理解するのであれば,丙15には,「エクオールを含有する大豆胚軸発酵物」が記載されており,丙15に記載の発明と本件発明1とは,「エクオールを含有する大豆胚軸発酵物」である点で一致する。 他方,丙15には「オルニチン」を含有することの明示がなく,本件発 明にあっては「オルニチン」を含有するとしている点で相違する。 - 55 -エ相違点について(ア) 丙12及び13にあるように,「オルニチン」は,GAM培地に含まれる成分である。したがって,丙15に記載の,培地をGAM培地として得られた「エクオールを含有する大豆胚軸発酵物」は「オルニチン」を含むものとなり,本件発明1と同一の発明が記載されている こととなる。よって,本件発明1は新規性を有さない。 ( AM培地として得られた「エクオールを含有する大豆胚軸発酵物」は「オルニチン」を含むものとなり,本件発明1と同一の発明が記載されている こととなる。よって,本件発明1は新規性を有さない。 (イ) 丙15には,「株do03が成長のためにアルギニンを用いている」こと,「成長のために,アルギニンジヒドロラーゼ経路を用いて,エネルギーを得るからである(19)」こと,「アルギニンの菌代謝により,NH3が産生され」ることを開示し,「成長のために,アルギニンジヒ ドロラーゼ経路を用いて,エネルギーを得るからである」ことに関して,文献19を引用している。ここで,文献19(丙18:Sperry, J.F. andWilkins, T. D., J. Bacteriol., 127, 780-784 (1976))は,アルギニンジヒドロラーゼ経路について開示しており,アルギニンからシトルリン,またシトルリンからオルニチンが産生される経路を開 示する(FIG. 2.)。なお,アルギニンジヒドロラーゼ経路は,本件特許の出願当時,周知事項であり,各種の文献(例えば,丙19の1ないし3)などで確認できる事項である。 上記FIG. 2.において,「アルギニンジヒドロラーゼ経路を用いて,エネルギーを得る」点に関して,(III)で表される化学式で,AD PからATPへの変換が開示され,且つNH3産生が開示される。ATPが産生されると,該ATPからADPへ変換される際にエネルギーを得ることができる。したがって,丙15における「エネルギーを得る」こと及び「NH3,が産生され」ることから,(III)で表される化学式の反応が進んでいることが示唆される。即ち,丙15は,丙18を参照 することにより,オルニチンが産生されていることを示唆している 及び「NH3,が産生され」ることから,(III)で表される化学式の反応が進んでいることが示唆される。即ち,丙15は,丙18を参照 することにより,オルニチンが産生されていることを示唆している。 - 56 -したがって,丙15は,「エクオールを含有する大豆胚軸発酵物」が「オルニチン」を含むことを実質的に開示し,本件発明1と同一の発明が記載されていることとなる。よって,本件発明1は新規性を有さない。 または,丙15と丙18とを組み合わせることにより,当業者は,丙15で得られた「エクオールを含有する大豆胚軸発酵物」が「オルニチ ン」を含むものと当然に解釈するため,本件発明1は,丙15と丙18との組合せにより,進歩性を有さない。 (ウ) 丙7にあるように,「オルニチン」が生理活性物質として有用であり,サプリメントや食品に添加して用いられる用途は周知である。 本件特許の出願日において,複数の生理活性物質を構成成分として含 有させて食品等とすることは,通常行われていた食品開発の手法であり,このような開発手法は技術常識である。したがって,丙15記載の「エクオールを含有する大豆胚軸発酵物」に「オルニチン」を組み合わせることは当業者が容易に想到可能な事項である。 また,本件明細書にあって,オルニチンと,エクオールとの組み合わ せにより相加的な効果を越えて相乗的な効果が得られたとする記載はない。 よって,本件発明1は進歩性を有さない。 オ本件発明3について丙15の247頁の左欄4~8行及び14~16行の開示事項は,エク オールが構成3-Bの「食品」又は「医薬品」として有用であることを示唆している。なお,無効理由1で上述したとおり,エクオールを食品として用いることは周知である(丙8,9)。 また,丙15,ない オールが構成3-Bの「食品」又は「医薬品」として有用であることを示唆している。なお,無効理由1で上述したとおり,エクオールを食品として用いることは周知である(丙8,9)。 また,丙15,ないしは丙15と丙7,丙12,丙13又は丙18のいずれかとの組合せが構成3-Aを開示又は示唆していることは上述したと おりである。 - 57 -よって,本件発明3の構成は,新規性を有さないか又は進歩性を有さない。 〔原告の主張〕国内優先権主張は,国内優先権主張を伴う特許出願に係る発明のうち,出願をした者が特許又は実用新案登録を受ける権利を有する特許出願又は実用 新案登録出願であって先にされたものの願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面に記載された発明については,新規性及び進歩性の判断等を当該先にされた出願の日を基準に行うというものである(特許法41条1項及び2項)。そして,国内優先権の主張の効果が認められるかどうかの判断は,原則として請求項ごとに行われ, 出願単位で行われるのではない(甲19)。 本件発明1は,「オルニチン及びエクオールを含有する大豆胚軸発酵物」の発明であるところ,本件特許の出願に係る国内優先権主張の基礎となった特願2005-352337(平成17年12月6日出願)に最初に添付された明細書(丙16)には,エクオール含有大豆胚軸発酵物が記載され(段 落【0009】,【0010】,【0011】等),アルギニンを含む発酵原料を発酵させることにより,大豆胚軸発酵物にオルニチンを含有させることができることも記載され(段落【0019】,【0029】等),それに関する実施例及びデータも記載されている(段落【0040】~【0047】)。さらに,当該大豆胚軸発酵物は食品, チンを含有させることができることも記載され(段落【0019】,【0029】等),それに関する実施例及びデータも記載されている(段落【0040】~【0047】)。さらに,当該大豆胚軸発酵物は食品,特定保健用食品,栄養補助食 品,機能性食品,病者用食品,化粧品又は医薬品として使用できることも記載されている(段落【0030】~【0037】)。 以上より,本件特許の請求項1及び3に係る優先日は平成17年12月6日であって,これが親出願の出願日に繰り下げられることはない。 したがって,補助参加人主張の無効理由6は本件特許の優先日以後に公表 された文献に基づくものとなるから,補助参加人主張の無効理由6は成り立- 58 -たない。 (7) 実施可能要件及びサポート要件違反の有無(補助参加人主張の無効理由7)について〔補助参加人の主張〕原告は,本件発明1の「大豆胚軸発酵物」の解釈として,本件発明1にお ける「オルニチン」と「エクオール」は,大豆胚軸にアルギニンを添加して,これを,ダイゼイン類を資化してエクオールを産生する能力とアルギニンをオルニチンに変換する能力とを併せ持つ微生物により,発酵させて発酵物中に同時に得たものである,と主張するものである。 ここで,上記の微生物を用いることを本件発明1の構成要件とするなら ば,「エクオールを産生する能力」と「アルギニンをオルニチンに変換する能力」とを併せ持つものとして,本件明細書は,ラクトコッカス・ガルビエ20-92(FERMBP-10036号)を開示するのみ(段落【0022】,段落【0048】,段落【0051】)である。また,いかなる微生物が「エクオールを産生する能力」と「アルギニンをオルニチンに変換する能力」とを併せ持 つものであるのかは,技術常識 0022】,段落【0048】,段落【0051】)である。また,いかなる微生物が「エクオールを産生する能力」と「アルギニンをオルニチンに変換する能力」とを併せ持 つものであるのかは,技術常識からは明らかではない。 したがって,上記の微生物として,本件明細書が開示するラクトコッカス・ガルビエ20-92(FERMBP-10036号)以外,いかなる微生物を用いることができるのかを当業者は理解できず,その結果,本件明細書は,ラクトコッカス・ガルビエ20-92(FERMBP-10036号)以外の微生物を用いた場合につい ては,本件発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載していない。よって,実施可能要件(特許法36条4項1号)を満たさない無効理由を有する。 また,いかなる微生物が「エクオールを産生する能力」と「アルギニンをオルニチンに変換する能力」とを併せ持つものであるのかは,技術常識からは明らかではないから,微生物としてラクトコッカス・ガルビエ 20-92(FERMBP-10036号)以外の微生物を用いた範囲は,本件明細書には記- 59 -載されていない。したがって,本件発明1は,発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。よって,サポート要件(特許法36条6項1号)を満たさない無効理由を有する。 〔原告の主張〕本件明細書には,本件発明1に係る大豆胚軸発酵物の製造方法が記載され ており(段落【0017】以下,【0048】,【0051】),これに従えば,当業者は本件発明1に係る大豆胚軸発酵物を製造することが可能であり,かつ適宜の方法により本件発明3に係る食品,特定保健用食品,栄養補助食品,機能性食品,病者用食品,化粧品又は医薬品として調製することも可能である(段落【0037】,【0058】,【006 能であり,かつ適宜の方法により本件発明3に係る食品,特定保健用食品,栄養補助食品,機能性食品,病者用食品,化粧品又は医薬品として調製することも可能である(段落【0037】,【0058】,【0060】,【006 3】)。エクオールを産生する能力及びアルギニンをオルニチンに変換する能力を有する微生物の特定のためには,適宜の方法によりスクリーニングを行えばよいことは,当業者にとって自明である。また,本件明細書には,本件各発明に係る大豆胚軸発酵物が食品,医薬品,化粧品等の分野で有用であることが記載されており(段落【0013】等),当業者は,その記載に基 づき,大豆胚軸発酵物を使用することが可能である。したがって,本件明細書は,「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである」(特許法36条4項1号)といえる。 また,本件発明1は物の発明であり,本件明細書には本件発明1に係る大 豆胚軸発酵物の構造及び特性が記載され,ダイゼイン類を含む原料から生成されるエクオールの量が十分でないこと,大豆胚軸抽出物のコスト高及び栄養素添加の必要性,大豆胚軸の使用の敬遠やアレルゲン物質の存在といった従来技術の課題(段落【0006】~【0008】,【0010】)を,大豆胚軸に多く含まれるダイゼイン類から発酵物中に高含量のエクオールを得 ること(段落【0013】),発酵物中にもう1つの有用成分であるオルニ- 60 -チンをも含有させること(段落【0038】)により解決し,さらに当該発酵物ではアレルゲンが低減されること(段落【0014】)も明らかにされている(なお,上記のとおり,適宜の方法によりスクリーニングを行うことで,エクオールを産生する能力及びアルギニンをオ さらに当該発酵物ではアレルゲンが低減されること(段落【0014】)も明らかにされている(なお,上記のとおり,適宜の方法によりスクリーニングを行うことで,エクオールを産生する能力及びアルギニンをオルニチンに変換する能力を有する微生物の特定できることは,当業者にとって自明である。)。本件 明細書に接した当業者は,請求項1に記載された「オルニチン及びエクオールを含有する大豆胚軸発酵物」という発明により,上記の課題を解決することを認識することは明らかであるから,本件特許に係る請求項1の記載は,「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものである」(特許法36条6項1号)といえる。 補助参加人は,本件明細書には当該大豆胚軸発酵物の製造に用いる具体的な微生物としてラクトコッカス・ガルビエ20-92以外の微生物が開示されていないことを指摘しているが,本件発明1は物の構造及び特性が新規かつ進歩性を有することから特許が与えられているものであり,製造方法に関する要件を含むものでもなく,本件明細書に記載した方法により当該物が製 造及び使用できることが記載されている以上,実施可能要件及びサポート要件に欠けるところはない。 (8) 分割出願要件違反等の有無(補助参加人主張の無効理由8)について〔補助参加人の主張〕原告は,「大豆胚軸発酵物の発酵原料について,大豆胚軸の抽出物が除か れるという趣旨の主張を行ったのではない」と主張し,「大豆胚軸発酵物」の発酵原料として「大豆胚軸の抽出物」を含む,と主張する。しかしながら,上記の原告の主張は,本件特許に係る分割出願の要件である「分割出願の明細書等に記載された事項が,原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であること」に違反している。 すなわち,本件特許 原告の主張は,本件特許に係る分割出願の要件である「分割出願の明細書等に記載された事項が,原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であること」に違反している。 すなわち,本件特許の原出願である特願2007-549133号の審査- 61 -段階における意見書(丙3の4)を見ると,「発酵原料として大豆胚軸を選択することには阻害要因が存在します」と述べている。 また,本件特許の原出願である特願2007-549133号(丙3の1)は,「大豆胚軸抽出物」を発酵原料とすることが一切,開示されていない。むしろ「大豆胚軸抽出物」を発酵原料とすることの欠点が開示されてお り,「大豆胚軸」を用いていることが開示されている。 なお,本件特許の審査段階の拒絶理由通知書(起案日:平成27年5月25日)(丙20の1)においても指摘されている通り,親出願(原出願)には,大豆胚軸以外は開示されていない。 また,原告は,上記拒絶理由通知書を受けて,平成27年2月16日付手 続補正書(丙20の2)に記載した特許請求の範囲を,平成27年6月18日付手続補正書(丙20の3)に記載した特許請求の範囲に補正した。具体的には,請求項1及び5について,「オルニチン及びエクオールを含有する組成物」を「オルニチン及びエクオールを含有する大豆胚軸発酵物」と補正した。補正された「大豆胚軸発酵物」という語は,上記拒絶理由通知書の指 摘を受けて,「大豆胚軸」を発酵原料とすることに減縮したことにほかならない。 以上から,原告が主張する「大豆胚軸発酵物の発酵原料には大豆胚軸の抽出物が含まれる」という事項は,本件特許の原出願である特願2007-549133号(丙3の1)には開示されておらず,「原出願の出願当初の明 細書等に記載された事項の範囲内」では は大豆胚軸の抽出物が含まれる」という事項は,本件特許の原出願である特願2007-549133号(丙3の1)には開示されておらず,「原出願の出願当初の明 細書等に記載された事項の範囲内」ではない。 したがって,原告の上記主張に基づくならば,本件特許に係る出願(第3世代の分割出願)は,分割出願の要件を満たさないため,実際の出願日である2014(平成26)年4月15日を判断基準日として,新規性・進歩性が判断される。その結果,本件発明は,親出願の国際公開公報,WO200 7/066655(丙3の1)により,新規性欠如又は進歩性欠如となる無- 62 -効理由を有する。 〔原告の主張〕まず,分割出願の要件を満たすか否かは,特許法44条1項及び2項並びに審査基準にも記載されているとおり,分割出願とその(分割前の)原出願との間で判断されるべきものである。本件特許に係る出願の原出願は特願2 012-149675であり,親出願(特願2007-549133)との関係で要件の充足性を論ずる補助参加人の主張は不適切である。また,その点を措くとしても,当該意見書(丙3の4)における原告の主張が大豆胚軸の発酵原料から大豆胚軸抽出物を除外する趣旨のものでないことは,既に述べたとおりであり,親出願又は原出願の明細書に抽出の処理・工程を施した 大豆胚軸を発酵原料とする場合が記載されていないことにはならない。したがって,補助参加人主張の無効理由8は失当である。 (9) 乙1に基づく進歩性欠如の有無(被告主張の無効理由1)について〔被告の主張〕ア公知文献 乙1(特開2004-290012号公報)には,乳酸菌によって大豆胚芽を発酵させて得られ,かつイソフラボンを含有している「大豆胚芽発酵食品」の発明が記載されている。また, ア公知文献 乙1(特開2004-290012号公報)には,乳酸菌によって大豆胚芽を発酵させて得られ,かつイソフラボンを含有している「大豆胚芽発酵食品」の発明が記載されている。また,乙1では,「大豆胚芽」と「大豆胚軸」は同義であるとしている。 丙7(食品と開発 Vol.40 No.11,p62)には,「オル ニチン」がいわゆるサプリメントに添加される成分として周知であることが記載されている。 丙11(国際公開第2005/000042号公報)には,乳癌,前立腺癌などに対する予防効果,及び更年期障害,閉経後の骨粗鬆症・高脂血症・高血圧などに対する改善効果を有するのが大豆イソフラボンではなく, 大豆イソフラボンの活性代謝物であるエクオールであること,及びイソフ- 63 -ラボンの一種であるダイゼインを,ラクトコッカス属に属する乳酸菌で発酵させて,イソフラボンの一種であるエクオールを生成できることが記載されている。 丙14の1(国際公開第99/07391号公報)には,更年期女性の不定愁訴と密接に関係しているのが,イソフラボンの一種であるエクオー ルであること,及びイソフラボンの一種であるダイゼインを,ストレプトコッカス・インターメディアス及びストレプトコッカス・コンステラータス等の乳酸菌で発酵させて,イソフラボンの一種であるエクオールを生成できることが記載されている。 イ本件発明1と乙1記載の発明との一致点及び相違点 乙1において示されているように「大豆胚芽」と「大豆胚軸」は同義であると理解すれば,乙1記載の発明の「大豆胚芽発酵食品」は,本件発明1の「大豆胚軸発酵物」に相当する。したがって,本件発明1と乙1記載の発明とは,本件発明1の構成要件1-Cについて一致する。 他方,乙1には,「大豆 乙1記載の発明の「大豆胚芽発酵食品」は,本件発明1の「大豆胚軸発酵物」に相当する。したがって,本件発明1と乙1記載の発明とは,本件発明1の構成要件1-Cについて一致する。 他方,乙1には,「大豆胚芽発酵食品(大豆胚軸発酵物)」が「オルニ チン」及び「エクオール」を含有することについての記載がない点で,本件発明1と乙1記載の発明とは相違する。すなわち,本件発明1と乙1記載の発明とは,本件発明1の構成要件1-A及び1-Bについて相違する。 ウ構成要件1-Aについて丙7にあるように,「オルニチン」は生理活性物質として有用であり, サプリメントや食品に添加して用いられることが周知である。 本件特許の出願日において,食品,さらにサプリメントや健康食品の分野において,それら食品等を多機能化し,あるいはその機能を高度化し,さらに商品の付加価値を高めるため,複数の生理活性物質を構成成分として含有させて食品等とすることは,通常行われていた食品開発の手法であ り,このような開発手法は技術常識である。この技術常識の下,乙1記載- 64 -の発明の「大豆胚芽発酵食品」を多機能化し,あるいはその機能を高度化し,さらに商品の付加価値を高めるため,これに,生理活性物質としての有用性が周知の「オルニチン」を添加することは,当業者が極めて容易に想到可能な事項である。 また,本件明細書において,オルニチンと,エクオールとの組み合わせ により相加的な効果を越えて相乗的な効果が得られたとする記載はない。 エ構成要件1-Bについて丙11及び丙14の1に記載のように,本件特許の出願当時には,乳癌,前立腺癌などに対する予防効果,及び更年期障害,閉経後の骨粗鬆症・高脂血症・高血圧などに対する改善効果を有するのが,イソフラボンの一種 14の1に記載のように,本件特許の出願当時には,乳癌,前立腺癌などに対する予防効果,及び更年期障害,閉経後の骨粗鬆症・高脂血症・高血圧などに対する改善効果を有するのが,イソフラボンの一種 である「エクオール」であること,及びイソフラボンの一種であるダイゼインを特定の乳酸菌で発酵させてこの「エクオール」を生成できることが知られていた。 したがって,本件特許の出願当時の当業者であれば,乙1記載の発明において用いる乳酸菌として,丙11及び丙14の1にあるように,イソフ ラボンの一種であるダイゼインからイソフラボンの一種である「エクオール」を生成できる乳酸菌を選択することを容易に想到し得た。 オ本件発明3について乙1記載の発明の「大豆胚芽発酵食品(大豆胚軸発酵物)」は,「食品」であるから,本件発明3の構成要件は新たな相違点ではない。 カ小括上記のとおり,本件発明1及び3は,乙1,丙7,11及び14の1,並びに技術常識に基づいて容易に想到できたものであり,進歩性を有さない。 〔原告の主張〕 ア被告による本件各発明の要旨の主張は誤っていること- 65 -本件各発明において,オルニチンは大豆胚軸発酵物に「含有」されている必要があり,大豆胚軸発酵物に後からオルニチンを加えても,それは当該大豆胚軸発酵物がオルニチンを「含有」していることにはならない。被告が前提とする本件各発明の要旨の認定は誤っている。 イ乙1の発酵食品にオルニチン及びエクオールを含有させることは容易 想到でないこと本件各発明は,発酵工程により得られるエクオールとオルニチンという2つの有用成分を同時に含有する大豆胚軸発酵物であることを特徴とするものである。 一方で,乙1には,有用成分であるイソフラボン及び大豆サポニン等の 発酵工程により得られるエクオールとオルニチンという2つの有用成分を同時に含有する大豆胚軸発酵物であることを特徴とするものである。 一方で,乙1には,有用成分であるイソフラボン及び大豆サポニン等の 栄養素を含む大豆胚芽を,大豆胚芽特有の強い苦味や渋味を除去し,優れた食感・風味を有するおいしい食品として提供するために,大豆胚芽を含む均質化液に乳酸菌を作用させて乳酸発酵させた大豆胚芽発酵食品が記載されている(段落【0013】)。しかし,乙1には,発酵食品中に有用成分としてオルニチンを含有させることに関する記載も示唆もない。また, 発酵食品中にエクオールが存在していることや,それが人間にとって有用な成分であることの記載もないし,エクオール産生能を有する特定の乳酸菌を選択して発酵食品中にエクオールを含有させるという記載もなく,それらを示唆する記述もない。 加えて,オルニチン及びエクオールがそれぞれ生理活性を有することが 知られていたとしても,大豆胚芽を発酵させる乳酸菌の中にはエクオールを産生しないものも多数あるし,オルニチン及びエクオールと組み合わせることができる物質は無数に存在し,かつ,生理活性を有する物質は他にも無数にある。その中で,乙1において均質化液中の大豆胚芽の発酵に用いる乳酸菌としてエクオール産生能を有する微生物を選択し,かつ,無数 の有用成分の中からオルニチンを選択し,それを乙1の大豆胚芽発酵食品- 66 -と組み合わせることで,敢えて当該発酵食品をオルニチン及びエクオールを含有したものとする動機付けはない。また,仮に,当業者が,大豆胚軸を含む均質化液を乳酸発酵させた大豆胚芽発酵食品,エクオール産生菌を有する乳酸菌の使用及びオルニチンの3つを組み合わせることに想到したとしても,発酵生産物である大 い。また,仮に,当業者が,大豆胚軸を含む均質化液を乳酸発酵させた大豆胚芽発酵食品,エクオール産生菌を有する乳酸菌の使用及びオルニチンの3つを組み合わせることに想到したとしても,発酵生産物である大豆胚軸発酵物の中にエクオールに加えてオ ルニチンをも含有させるという本件各発明の着想に至ることはない。被告が挙げる各先行技術に,本件各発明の特徴点に到達するためにそれらの試みをしたはずであるという示唆等が存在したということができないことは明らかである。 (10) 乙2に基づく進歩性欠如の有無(被告主張の無効理由2)について 〔被告の主張〕ア公知文献乙2(国際公開WO03/097037号公報)には,エクオールを有効成分とするアレルギー症状緩和剤の発明が記載されており,かつエクオールを生成するための発酵原料として,「大豆胚軸」の「抽出液」が好ま しいとしている。また,この乙2には,有効成分であるエクオールを健康食品などの可食性組成物に添加できること,及びこの場合に,他の有効成分を更に含有させてもよいことが記載されている。 丙11(国際公開第2005/000042号公報)には,イソフラボンの一種であるダイゼインを,ラクトコッカス属に属する乳酸菌で発酵さ せて,エクオールを生成できること,及びこの場合に,乳酸菌のための栄養培地としてGAM培地等の培地を用いることが記載されている。 丙14の1(国際公開第99/07391号公報)には,イソフラボンの一種であるダイゼインを,ストレプトコッカス・インターメディアス及びストレプトコッカス・コンステラータス等の乳酸菌で発酵させて,エク オールを生成できること,及びこの場合に,乳酸菌のための栄養培地とし- 67 -てGAM培地等の培地を用いることが記載されている。 コッカス・コンステラータス等の乳酸菌で発酵させて,エク オールを生成できること,及びこの場合に,乳酸菌のための栄養培地とし- 67 -てGAM培地等の培地を用いることが記載されている。 イ本件発明1と乙2記載の発明との一致点及び相違点乙2には,エクオールを有効成分とするアレルギー症状緩和剤の発明が記載されており,かつエクオールを生成するための発酵原料として,「大豆胚軸」の「抽出液」が好ましいとしている。したがって,本件発明1の 「大豆胚軸」が「大豆胚軸の抽出物」を含むと理解するのであれば,本件発明1と乙2記載の発明とは,「エクオールを含有する大豆胚軸発酵物」である点で一致する。すなわち,本件発明1と乙2記載の発明とは,本件発明1の構成要件1-B及び1-Cについて一致する。 他方,乙2には,「大豆胚軸発酵物」が「オルニチン」を含有すること の記載がない点で,本件発明1と乙2記載の発明とは相違する。すなわち,本件発明1と乙2記載の発明とは,本件発明1の構成要件1-Aについて相違する。 ウ本件発明1と乙2記載の発明との相違点についての検討(ア) 乙2の「大豆胚軸発酵物」に「オルニチン」を添加することが当業 者にとって極めて容易に想到可能な事項であったこと丙7にあるように,「オルニチン」は生理活性物質として有用であり,サプリメントや食品に添加して用いられることが周知である。本件特許の出願日において,複数の生理活性物質を構成成分として含有させて食品等とすることは,通常行われていた食品開発の手法であり,このよう な開発手法は技術常識である。これに関して,乙2には,有効成分であるエクオールを健康食品などの可食性組成物に添加として用いることができること,及びこの場合に,他の有効成分を更に含有させてもよ な開発手法は技術常識である。これに関して,乙2には,有効成分であるエクオールを健康食品などの可食性組成物に添加として用いることができること,及びこの場合に,他の有効成分を更に含有させてもよいことも記載されている。この技術常識の下,乙2の「大豆胚軸発酵物」を多機能化し,あるいはその機能を高度化し,さらに商品の付加価値を高 めるため,これに,生理活性物質としての有用性が周知の「オルニチ- 68 -ン」を添加することは,当業者にとって極めて容易に想到可能な事項である。 また,本件明細書において,オルニチンと,エクオールとの組み合わせにより相加的な効果を越えて相乗的な効果が得られたとする記載はない。 よって,この相違点について,本件発明1は進歩性を有さない。 (イ) 丙11記載の方法を参照して製造された乙2の「大豆胚軸発酵物」が「オルニチン」を含有すること丙12(日水製薬株式会社製品要覧I)及び丙13(日本食品分析センターの「分析試験成績書」)に示すように,「オルニチン」は,エ クオール生成菌のための栄養培地であるGAM培地等の培地に含まれる成分である。したがって,丙11の記載に従い,エクオール生成菌のための栄養培地としてGAM培地等の培地を用いて製造された乙2の「大豆胚軸発酵物」は,GAM培地等の培地に含まれていた「オルニチン」を含むものとなる。 なお,乙2では,丙14の1(国際公開WO99/07392号公報)の記載に従って,エクオールを生産できるとしていること,及び丙11では,丙11記載の発明が,丙14の1(国際公開WO99/07392号公報)の改良発明であるとしていることから明らかなように,当業者であれば当然に,乙2の「大豆胚軸発酵物」を丙11の記載に従 って製造することを考慮 ,丙14の1(国際公開WO99/07392号公報)の改良発明であるとしていることから明らかなように,当業者であれば当然に,乙2の「大豆胚軸発酵物」を丙11の記載に従 って製造することを考慮する。 更に,丙12及び丙13に示すように,エクオール生成菌のための栄養培地であるGAM培地等の培地は,アルギニンを含んでおり,また丙11記載の「ラクトコッカス20-92」は,本件特許の明細書の段落0022等に記載されているとおり,「アルギニン」を「オルニチン」 に変換する能力を有するものである。したがって,丙11の記載に従い,- 69 -エクオール生成菌のための栄養培地としてGAM培地等の培地を用い,かつエクオール生成菌として「ラクトコッカス20-92」を用いて製造された乙2の「大豆胚軸発酵物」は,GAM培地等の培地に含まれていた「アルギニン」が変換されて得られる「オルニチン」を含むものとなる。 よって,本件発明1は進歩性を有さない。 (ウ) 丙14の1記載の方法を参照して製造された乙2の「大豆胚軸発酵物」が「オルニチン」を含有すること丙12及び丙13に示すように,「オルニチン」は,エクオール生成菌のための栄養培地であるGAM培地等の培地に含まれる成分である。 したがって,丙14の1の記載に従い,エクオール生成菌のための栄養培地としてGAM培地等の培地を用いて製造された乙2の「大豆胚軸発酵物」は,GAM培地等の培地に含まれていた「オルニチン」を含むものとなる。 なお,乙2では,丙14の1(国際公開WO99/07392号公 報)の記載に従って,エクオールを生産できるとしている。 よって,本件発明1は進歩性を有さない。 エ本件発明3について乙2記載の発明は医薬品であるし,また乙2には,有効成分であ 2号公 報)の記載に従って,エクオールを生産できるとしている。 よって,本件発明1は進歩性を有さない。 エ本件発明3について乙2記載の発明は医薬品であるし,また乙2には,有効成分であるエクオールを健康食品などの可食性組成物に添加して用いることができること が記載されている。よって,本件発明3は進歩性を有さない。 オ小括上記のとおり,本件発明の「大豆胚軸発酵物」における「大豆胚軸」が「大豆胚軸の抽出物」を含むと理解するのであれば,本件発明1及び3は,乙2,丙7,11ないし13,14の1及び技術常識に基づいて容易に想 到できたものであり,進歩性を有さない。 - 70 -〔原告の主張〕ア乙2の有効成分としてオルニチンを含有させることは容易想到でないことまず,生成された発酵物に事後的にオルニチンを添加しても,当該発酵物がオルニチンを「含有」することにはならず,本件各発明はオルニチン が発酵物の生成後に添加された形態を含むものでない。 次に,乙2には,アレルギー症状の緩和に有効であるとされるポリフェノール類又はフラボノイド類その他の有効成分を含有させ,相乗効果を得ることは可能であるとの記載はあるものの(6頁19~24行),アレルギー症状緩和剤の有効成分としてアレルギー症状の緩和作用が明らかとな っていないオルニチンを含有させることに関する記載は存在しない。既に述べたとおり,オルニチンが生理活性を有することが知られていたとしても,オルニチンと組み合わせることができる物質は無数に存在し,かつ,生理活性を有する物質は他にも無数にある(被告が挙げる丙7において,特にオルニチンとエクオール含有組成物との組み合わせを示唆する記載も ない。)。その中で,アレルギー症状緩和剤(しかも,その一形態 活性を有する物質は他にも無数にある(被告が挙げる丙7において,特にオルニチンとエクオール含有組成物との組み合わせを示唆する記載も ない。)。その中で,アレルギー症状緩和剤(しかも,その一形態及び一製造方法にすぎない,大豆胚軸の抽出液を発酵処理することにより生成したイソフラボン類の代謝産物たるエクオールを有効成分として含むアレルギー症状緩和剤)とオルニチンという組み合わせのみを選択し,敢えて上記特定の処理を経て生成されたアレルギー症状緩和剤にオルニチンを含有 させる動機付けはない。また,仮に,当業者が,当該アレルギー症状緩和剤とオルニチンを組み合わせることに想到したとしても,発酵生産物である大豆胚軸発酵物の中にオルニチン及びエクオールを含有させるという本件各発明の着想に至ることはない。 したがって,乙2のアレルギー症状緩和剤にオルニチンを含有させるこ とが,当業者に容易に想到できるとはいえない。 - 71 -イ本件特許の優先日当時,当業者は丙11又は丙14の1における培地由来のオルニチンが組成物に含まれることを理解できなかったこと補助参加人の無効理由4について述べたとおり,本件特許の優先日当時,当業者は,丙11又は丙14の1におけるGAM培地に由来するオルニチンが,同各号証に記載された発明に係る組成物に含有されることを理解す ることはできなかった。 したがって,仮に当業者が乙2において引用された丙14の1,又はそれをさらに引用する丙11の方法で,乙2における大豆胚軸の抽出液を発酵処理して代謝産物を得ることに想到したとしても,それによって培地に由来するオルニチンを含有するアレルギー症状緩和剤を得ることを容易に 想到することができたとはいえない。 ウ本件特許の優先日当時,当業者は丙11においてア 到したとしても,それによって培地に由来するオルニチンを含有するアレルギー症状緩和剤を得ることを容易に 想到することができたとはいえない。 ウ本件特許の優先日当時,当業者は丙11においてアルギニンが変換されたオルニチンが組成物に含まれることを理解できなかったこと補助参加人の無効理由4について述べたとおり,本件特許の優先日当時,当業者は,丙11におけるGAM培地に含まれるアルギニンが発酵工程で オルニチンに変換され,同各号証に記載された発明に係る組成物に含有されることを理解することはできなかった。 したがって,仮に当業者が乙2において引用された丙14の1を引用する丙11の方法で,乙2における大豆胚軸の抽出液を発酵処理して代謝産物を得ることに想到したとしても,それによって培地に含まれるアルギニ ンから変換されたオルニチンを含有するアレルギー症状緩和剤を得ることを容易に想到することができたとはいえない。 エ小括以上より,本件発明1の新規性及び進歩性は否定されず,それに従属する本件発明3の新規性及び進歩性も否定されない。 (11) 乙3に基づく新規性ないし進歩性欠如の有無(被告主張の無効理由3)- 72 -について〔被告の主張〕ア本件特許の優先権主張の効果の無効補助参加人主張の無効理由6のとおり,本件特許の優先権主張の効果は無効とされるべきものであり,したがって本件特許の請求項にかかる発明 の新規性及び進歩性の判断基準日は,親出願の出願日(国際出願日)である2006年(平成18年)12月5日である。 イ公知文献乙3(DECROOSKarel, etal., JournalofNutrition, Vol.136, No. 4, 006, Pages 946- である。 イ公知文献乙3(DECROOSKarel, etal., JournalofNutrition, Vol.136, No. 4, 006, Pages 946-952)(発行日:2006年4月1日)では,ダイゼインをエクオールに有効に変換する混合微生物培養物(EPC4)をヒトの腸内微生物エコシステムのシミュレータ(SHIME)に投与し,そしてSHIMEに大豆胚芽粉を与えて,エクオールを産生することを示している。また,この乙3では,混合微生物培養物(EP C4)のための培地として,ブレインハートインフュージョン培地(BHI培地)を使用するとしている。 乙4(日本食品分析センターの「分析試験成績書」)は,ブレインハートインフュージョン培地(BHI培地)の組成の分析結果を報告するものであり,BHI培地には,遊離オルニチンが含まれている。 ウ本件発明1と乙3記載の発明との一致点及び相違点本件発明1と乙3記載の発明とは,「エクオールを含有する大豆胚軸発酵物」である点で一致する。すなわち,本件発明1と乙3記載の発明とは,本件発明1の構成要件1-B及び1-Cについて一致する。 他方,乙3には,「大豆胚軸発酵物」が「オルニチン」を含有すること の記載がない点で,本件発明1と乙3記載の発明とは相違する。すなわち,- 73 -本件発明1と乙3記載の発明とは,本件発明1の構成要件1-Aについて相違する。 エ相違点についての検討乙3には,「大豆胚軸発酵物」が「オルニチン」を含有すること(構成要件1-A)についての記載がない点で,本件発明1と乙3記載の発明と は相違する。 しかしながら,乙4に示すように,「オルニチン」は,乙3記載の発明において栄養培地として用いられているブレイン 要件1-A)についての記載がない点で,本件発明1と乙3記載の発明と は相違する。 しかしながら,乙4に示すように,「オルニチン」は,乙3記載の発明において栄養培地として用いられているブレインハートインフュージョン培地(BHI培地)に含まれる成分である。したがって,エクオール生成菌のための栄養培地としてBHI培地を用いて製造された乙3の「大豆胚 軸発酵物」は,「オルニチン」を含むものとなる。よって,本件発明1は新規性を有さない。 オ本件発明3について乙3には,乙3の「大豆胚軸発酵物」を食品等に用いることが記載されていない。しかしながら,乙2,丙11,及び丙14の1に記載のように, イソフラボンを含有する乙3記載の発明の「大豆胚軸発酵物」を食品等に用いることは,当業者であれば当然に想到した。よって,本件発明3は進歩性を有さない。 カ小括上記のとおり,本件特許の優先権主張の効果が無効とされるべきもので あり,したがって本件特許の請求項にかかる発明の新規性及び進歩性の判断基準日は,親出願の出願日(国際出願日)である2006年(平成18年)12月5日であるので,本件発明1及び3は,乙3と乙4,乙2,丙11及び丙14の1並びに技術常識に基づいて容易に想到できたものであり,進歩性を有さない。 〔原告の主張〕- 74 -被告の上記主張は,補助参加人主張の無効理由6と同様,本件特許に係る出願には国内優先権主張の効果が認められないという前提に立つものである。 しかし,上記前提が誤りであることは,既に上記(6)で述べたとおりであるから,被告主張の無効理由3は失当である。 以上 - 75 -(別紙)当事者の主張(争点3について) 〔原告の主張〕(1) 訂正審判請求前記前提事実( で述べたとおりであるから,被告主張の無効理由3は失当である。 以上 - 75 -(別紙)当事者の主張(争点3について) 〔原告の主張〕(1) 訂正審判請求前記前提事実(5)のとおり,原告は,平成30年10月15日付けで,本 件特許の請求項1及び3の特許請求の範囲について,訂正審判請求をした。 訂正後の請求項1及び3の記載は,前記前提事実(5)のとおりである。 訂正の目的は,特許請求の範囲の減縮(特許法126条1項1号)又は誤記若しくは誤訳の訂正(同項2号)及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること(同項4号)で ある。 なお,請求項1及び3のオルニチンの含有量を大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり8mg以上含有するとした点については,本件特許の願書に添付した明細書(甲21の2)には,エクオール及びオルニチンを含有する大豆胚軸発酵物におけるオルニチンの含有量として,大豆胚軸発酵物の乾燥重量 1g当たり,8mg以上が好ましいことが記載されており(段落【0036】),同大豆胚軸発酵物におけるエクオールの含有量として,大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり,1mg以上が好ましいことが記載されており(段落【0028】),オルニチン及びエクオールの各成分が「発酵生成物」であることが記載されている(段落【0022】,【0028】,【0 036】,【0038】,【0039】,【0052】等)から,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。 また,上記目的から明らかなように,独立特許要件も満たされる。なお,本件訂正発明に無効理由がないことは,後記(3)のとおりである。 (2) 被告製品 てするものであることは明らかである。 また,上記目的から明らかなように,独立特許要件も満たされる。なお,本件訂正発明に無効理由がないことは,後記(3)のとおりである。 (2) 被告製品が訂正後の請求項1及び3に係る原告の特許権を侵害すること- 76 -ア本件訂正発明1の構成要件を分説すると,以下のとおりである(以下,各構成要件を「構成要件1-A’」のように呼称する。)。 1-A’オルニチン及びエクオールを含有する大豆胚軸発酵物であって,1-B’発酵生成物であるオルニチンを前記大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり8mg以上含有し, 1-C’発酵生成物であるエクオールを前記大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり1mg以上含有する,1-D’該大豆胚軸発酵物イ本件訂正発明3の構成要件を分説すると,以下のとおりである(以下,各構成要件を「構成要件3-A’」のように呼称する。)。 3-A’オルニチン及びエクオールを含有する大豆胚軸発酵物であって,3-B’発酵生成物であるオルニチンを前記大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり8mg以上含有し,3-C’発酵生成物であるエクオールを前記大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり1mg以上含有し, 3-D’前記大豆胚軸発酵物中のゲニステイン類の総和の含有比率が前記大豆胚軸発酵物中のイソフラボンの総量当たり12重量%以下である,3-E’前記大豆胚軸発酵物3-F’を配合した食品,特定保健用食品,栄養補助食品,機能性食品,又は病者用食品 ウ上記の訂正発明との関係で,被告製品の構成は以下のとおりである。 a’大豆胚芽を原料とし,アルギニンを添加して発酵工程を経ることにより生成され,b’被告製品1.32g(3カプセル)あたりエクオール約10mgを含有 係で,被告製品の構成は以下のとおりである。 a’大豆胚芽を原料とし,アルギニンを添加して発酵工程を経ることにより生成され,b’被告製品1.32g(3カプセル)あたりエクオール約10mgを含有し, c’被告製品1.32g(3カプセル)あたりオルニチン約24.29- 77 -mgを含有し,d’イソフラボン類中のゲニステイン類の総和の含有比率がイソフラボンの総量当たり0.6重量%である,e’EQ-5を原材料とする,f’経口摂取型のサプリメント。 エ被告製品と本件訂正発明1との対比(ア) 構成要件1-A’構成要件1-A’は本件発明1の構成要件と同様である。また,被告製品の構成a’ないしc’及びe’は,被告製品の構成aないしdと共通であるから,被告製品がこれを満たすことは,既に述べたとおりであ る。 (イ) 構成要件1-B’被告製品は,1.32gあたりオルニチンを約24.29mg含有している(構成c)。 被告製品は,ビール酵母,ラクトビオン酸含有乳糖発酵物及び大豆胚 芽抽出発酵物並びにカプセルの原材料としてのHPMC及びカラメル色素を原材料とするものとされているが,このうち「大豆胚芽抽出発酵物」とされているものはEQ-5であり,被告製品に含まれるオルニチンはこれに由来するものである。 そして,被告製品は,ビール酵母及びラクトビオン酸含有乳糖発酵物 が付加された後において,1.32gあたりオルニチンを約24.29mg(1gあたりに換算すると,約18.4mg)含有している(構成c)から,本件訂正発明1の大豆胚軸発酵物に該当するEQ-5が,その乾燥重量1gあたり8mg以上のオルニチンを含有していることは明らかである。 また,補助参加人の挙げる丙12及び丙13に基づき丙1 ,本件訂正発明1の大豆胚軸発酵物に該当するEQ-5が,その乾燥重量1gあたり8mg以上のオルニチンを含有していることは明らかである。 また,補助参加人の挙げる丙12及び丙13に基づき丙11の実施例- 78 -2の豆乳培養物中のオルニチン量を仮定的に計算しても,培養物1g中約0.0122mgと極微量にしかならない。このように,培地由来のオルニチンのみによって生成されるオルニチン量はごく微量にしかならず,被告製品に含まれるオルニチン,すなわちEQ-5に含まれるオルニチンの全量が培地に含まれるオルニチン又はアルギニンに由来すると は通常考えられず,発酵原料に含まれるアルギニンの発酵生成物であると考えるのが相当である。なお,EQ-5の製造工程について,発酵前後にオルニチンを添加する工程が記載されていない(丙5)ことからも,EQ-5に含まれるオルニチンは,発酵原料に含まれるアルギニンの発酵生成物であると考えられる。したがって,EQ-5に含まれるオルニ チンは,発酵生成物である。 したがって,EQ-5を配合した被告製品は構成要件1-B’を満たす。 (ウ) 構成要件1-C’被告製品は,1.32gあたりエクオールを約10mg含有している (構成b)。 上述のとおり,被告製品の原材料として表示されている「大豆胚芽抽出発酵物」とされているものはEQ-5であり,被告製品に含まれるエクオールはこれに由来するものである。 そして,被告製品は,ビール酵母及びラクトビオン酸含有乳糖発酵物 が付加された後において,1.32gあたりエクオールを約10mg(1gあたりに換算すると,約7.58mg)含有している(構成b)から,本件訂正発明1の大豆胚軸発酵物に該当するEQ-5が,その乾燥重量1gあたり1mg以上のエクオールを たりエクオールを約10mg(1gあたりに換算すると,約7.58mg)含有している(構成b)から,本件訂正発明1の大豆胚軸発酵物に該当するEQ-5が,その乾燥重量1gあたり1mg以上のエクオールを含有していることは明らかである。 さらに,EQ-5中のエクオールは,原料イソフラボンを発酵させて- 79 -得られる物であり(丙5),明らかに発酵生成物である。 したがって,EQ-5を配合した被告製品は構成要件1-C’を満たす。 (エ) 構成要件1-D’構成要件1-D’は本件発明1の構成要件と同様である。また,被告 製品の構成a’ないしc’及びe’は,被告製品の構成aないしdと共通であるから,被告製品がこれを満たすことは,既に述べたとおりである。 (オ) 小括以上より,被告製品は本件訂正発明1の技術的範囲に属する。 オ被告製品と本件訂正発明3との対比(ア) 構成要件3-A’構成要件3-A’は本件発明1の構成要件と同様である。また,被告製品の構成a’ないしc’及びe’は,被告製品の構成aないしdと共通であるから,被告製品がこれを満たすことは,既に述べたとおりであ る。 (イ) 構成要件3-B’構成要件1’-B’と同様に,EQ-5を配合した被告製品は構成要件3-B’を満たす。 (ウ) 構成要件3-C’ 構成要件1’-C’と同様に,EQ-5を配合した被告製品は構成要件3-C’を満たす。 (エ) 構成要件3-D’既に述べているとおり,被告製品の原材料として表示されている「大豆胚芽抽出発酵物」とされているものはEQ-5であるところ,EQ- 5中のイソフラボン中,ゲニステイン類の総和は0.6重量%である- 80 -(丙5)。したがって,本件訂正発明3の大豆胚軸発酵物に該当 酵物」とされているものはEQ-5であるところ,EQ- 5中のイソフラボン中,ゲニステイン類の総和は0.6重量%である- 80 -(丙5)。したがって,本件訂正発明3の大豆胚軸発酵物に該当するEQ-5中のゲニステイン類の総和の含有比率が,EQ-5中のイソフラボンの総量当たり12重量%以下であることは明らかである。したがって,EQ-5を配合した被告製品は構成要件3-D’を満たす。 (オ) 構成要件3-E’ 被告製品は,大豆胚軸発酵物に該当するEQ-5を含有するから(構成e),「食品」に該当し,構成要件3-E’を満たす。 (カ) 構成要件3-F’被告製品は,経口摂取型のサプリメントであるから(構成f),「食品」に該当し,構成要件3-F’を満たす。 (キ) 小括以上より,被告製品は本件訂正発明3の技術的範囲に属する。 (3) 本件訂正発明1に係る特許が無効理由を有しないこと訂正前の本件発明1について述べたほか,以下のとおりであり,無効理由がないことは一層明らかである。 ア補助参加人主張の無効理由1(丙6に基づく進歩性欠如)について本件訂正発明1は,オルニチン及びエクオールを含有する大豆胚軸発酵物に係る発明であり,その有用性が高まるよう,大豆胚軸発酵物中に含まれるオルニチンの下限量を,大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり8mg,エクオールの下限量を,大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり1mgと特 定したものである。しかし,丙6はもとより,丙7においてもオルニチンの生理機能が記載されるのみで,有用性が高まるよう当該分量のオルニチンを含有させることについては記載も示唆もされておらず,他にそれが技術常識であったことを示す証拠も示されていない。 また,本件訂正発明1は,その有用性が高まるよう,大豆 高まるよう当該分量のオルニチンを含有させることについては記載も示唆もされておらず,他にそれが技術常識であったことを示す証拠も示されていない。 また,本件訂正発明1は,その有用性が高まるよう,大豆胚軸発酵物中 に含まれるエクオールの下限量を,大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり- 81 -1mgと特定したものである。しかし,有用性が高まるよう,当該分量のエクオールを含有させることについて,丙6はもとより,丙7ないし丙9においても記載も示唆もされておらず,他にそれが技術常識であったことを示す証拠も示されていない。 イ補助参加人主張の無効理由4(丙11に基づく新規性ないし進歩性欠 如)について本件訂正発明1は,オルニチン及びエクオールを含有する大豆胚軸発酵物に係る発明であり,その有用性が一層高まるよう,大豆胚軸発酵物中に含まれるオルニチンの下限量を,大豆胚軸発酵物の乾燥重量1gあたり8mgと特定したものである。しかし,その有用性が高まるように当該分量 のオルニチンを含有させることについては,丙11はもとより,補助参加人がオルニチンに関して引用する丙7及び丙12において記載も示唆もされていない。 GAMブイヨンに含まれる遊離オルニチンの量は微量(100gあたり118mg)であること,GAMブイヨンは実験用の培地にすぎないこと, GAMブイヨンにおけるオルニチン量の規格は存在しないこと,オルニチンはさらに乳酸菌等の微生物により分解される可能性もあったことから,補助参加人の主張するように丙11においてGAM培地を用いた場合においても,その結果得られるエクオール含有組成物に乾燥重量1gあたり8mg以上のオルニチンが,アルギニンからの変換の結果又は培地に含まれ ていたオルニチンが残存することによって含有され 場合においても,その結果得られるエクオール含有組成物に乾燥重量1gあたり8mg以上のオルニチンが,アルギニンからの変換の結果又は培地に含まれ ていたオルニチンが残存することによって含有されるという具体的な技術的思想を抽出することはできない。また,丙11,丙7及び丙12には,当業者が丙11のエクオール含有組成物中のオルニチン量を測定してそのような技術的思想を抽出する示唆もない。実際に,丙11の実施例2の豆乳培養物中のオルニチン量は,仮定的に計算して1gあたり約0.012 2mgと極微量にしかならない。加えて,丙11には,エクオール含有組- 82 -成物中のオルニチンの分量や,アルギニンからオルニチンへの変換に関する記載も示唆もないのであるから,当業者が,アルギニンからの変換の結果,生成されるエクオール含有組成物に乾燥重量1g当たり8mg以上という特定量のオルニチンが含有されるという技術的思想を抽出することは,なおさら不可能である。 さらに,本件訂正発明1は,その有用性が一層高まるよう,大豆胚軸発酵物中に含まれるエクオールの下限量を,大豆胚軸発酵物の乾燥重量1gあたり1mgと特定したものである。しかし,その有用性が高まるように当該分量のエクオールを含有させることについては,丙11はもとより,補助参加人がエクオールに関して引用する丙6,丙8及び丙9において記 載も示唆もされていないのであるから,当業者が,当該分量のエクオールを含有させるという具体的な技術的思想を抽出することはできない。 ウ補助参加人主張の無効理由5(丙14の1に基づく新規性ないし進歩性欠如)についてオルニチン及びエクオールを含有する大豆胚軸発酵物において,その有 用性が一層高まるよう,大豆胚軸発酵物の乾燥重量1gあたり8mg以上 5(丙14の1に基づく新規性ないし進歩性欠如)についてオルニチン及びエクオールを含有する大豆胚軸発酵物において,その有 用性が一層高まるよう,大豆胚軸発酵物の乾燥重量1gあたり8mg以上のオルニチンを含有させることについては,補助参加人が挙げる丙14の1,丙7及び丙12において記載も示唆もされていない。上記イと同様に,丙14の1においてGAM培地を用いた場合においても,当業者が,その結果得られるエクオール含有組成物に乾燥重量1gあたり8mg以上のオ ルニチンが含有されるとの具体的な技術的思想を抽出することはできないし,丙14の1から,当業者が,アルギニンからの変換の結果,生成されるエクオール含有組成物に乾燥重量1g当たり8mg以上という特定量のオルニチンが含有されるという技術的思想を抽出することは,なおさら不可能である。 さらに,上記イと同様に,丙14の1はもとより丙6,丙8及び丙9に- 83 -おいても,当業者が,大豆胚軸発酵物の乾燥重量1gあたり1mgのエクオールを含有させるという具体的な技術的思想を抽出することはできない。 エ補助参加人主張の無効理由6(丙15に基づく新規性ないし進歩性欠如)についてオルニチン及びエクオールを含有する大豆胚軸発酵物において,その有 用性が一層高まるよう,大豆胚軸発酵物の乾燥重量1gあたり8mg以上のオルニチンを含有させることについて,丙15はもとより,補助参加人がオルニチンに関して引用する丙7及び丙12においてもこの点は記載も示唆もされていない。上記イと同様に,丙15においても,当業者が,その結果得られるエクオール含有組成物に乾燥重量1gあたり8mg以上の オルニチンが含有されるとの具体的な技術的思想を抽出することはできないし,丙15から,当業者が 15においても,当業者が,その結果得られるエクオール含有組成物に乾燥重量1gあたり8mg以上の オルニチンが含有されるとの具体的な技術的思想を抽出することはできないし,丙15から,当業者が,アルギニンからの変換の結果,生成されるエクオール含有組成物に乾燥重量1g当たり8mg以上という特定量のオルニチンが含有されるという技術的思想を抽出することは,なおさら不可能である。 さらに,上記イと同様に,丙15はもとより丙6,丙8及び丙9においても,当業者が,当該分量のエクオールを含有させるという具体的な技術的思想を抽出することはできない。 オ補助参加人主張の無効理由7(実施可能要件及びサポート要件違反)について 本件明細書には,オルニチン及びエクオールを含有する大豆胚軸発酵物の製造方法が記載されており(段落【0017】以下,【0048】,【0051】),また,発酵原料に含まれるダイゼイン類を含むイソフラボンの分量を調整することにより大豆胚軸発酵物に含有されるエクオール量を調整することが可能であること(段落【0024】)及び発酵原料に 含まれるアルギニンの分量を調整することにより大豆胚軸発酵物に含有さ- 84 -れるオルニチン量を調整することが可能であること(段落【0036】)は当業者に明らかである。さらに,本件明細書には,本件各発明に係る大豆胚軸発酵物が肝機能改善,成長ホルモン分泌促進,免疫賦活,筋肉量増大,基礎代謝能の改善等のオルニチンに基づく有用生理作用が発揮されることが記載されており(段落【0038】等),当業者は,その記載に基 づき,大豆胚軸発酵物を使用することが可能である。したがって,訂正後の請求項1も,「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる ,当業者は,その記載に基 づき,大豆胚軸発酵物を使用することが可能である。したがって,訂正後の請求項1も,「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである」(特許法36条4項1号)といえる。 また,本件訂正発明1は物の発明であり,本件明細書には本件訂正発明 1に係る大豆胚軸発酵物の構造及び特性が記載され,ダイゼイン類を含む原料から生成されるエクオールの量が十分でないこと,大豆胚軸抽出物のコスト高及び栄養素添加の必要性,大豆胚軸の使用の敬遠やアレルゲン物質の存在といった従来技術の課題(段落【0006】~【0008】,【0010】)を,大豆胚軸に多く含まれるダイゼイン類から発酵物中に 高含量のエクオールを得ること(段落【0013】),発酵物中にもう1つの有用成分であるオルニチンをも含有させること(段落【0038】)により解決したことが記載されている。さらに,本件明細書には,当該発酵物ではアレルゲンが低減されること(段落【0014】),有用成分であるエクオールの分量としては大豆胚軸発酵物の乾燥重量1gあたり1m g以上が好ましいこと(段落【0028】),有用成分であるオルニチンの分量としては大豆胚軸発酵物の乾燥重量1gあたり8mg以上が好ましいこと(段落【0036】),オルニチン及びエクオールの各成分が「発酵生成物」であること(段落【0022】,【0028】,【0036】,【0038】,【0039】,【0052】等)も明らかにされている。 したがって,本件明細書に接した当業者は,本件訂正発明1により,上記- 85 -の課題を解決することを認識することは明らかであるから,訂正後の請求項1の記載は,サポート要件(特許法36条6項1号) たがって,本件明細書に接した当業者は,本件訂正発明1により,上記- 85 -の課題を解決することを認識することは明らかであるから,訂正後の請求項1の記載は,サポート要件(特許法36条6項1号)を満たす。 カ被告主張の無効理由1(乙1に基づく進歩性欠如)について本件訂正発明1は,オルニチン及びエクオールを含有する大豆胚軸発酵物に係る発明であり,その有用性が一層高まるよう,大豆胚軸発酵物中に 含まれるオルニチンの下限量を,大豆胚軸発酵物の乾燥重量1gあたり8mgと特定したものである。しかし,その有用性が高まるように当該分量のオルニチンを含有させることについては,乙1はもとより,被告がオルニチンに関して引用する丙7において記載も示唆もされておらず,他にそれが技術常識であったことを示す証拠も示されていない。 また,本件訂正発明1は,その有用性が高まるよう,大豆胚軸発酵物中に含まれるエクオールの下限量を,大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり1mgと特定したものである。しかし,有用性が高まるよう,当該分量のエクオールを含有させることについて,乙1はもとより,丙7ないし丙9においても記載も示唆もされておらず,他にそれが技術常識であったこと を示す証拠も示されていない。 キ被告主張の無効理由2(乙2に基づく進歩性欠如)について当業者が,乙2における発酵物にオルニチンが含有されることはもとより,その乾燥重量1gあたり8mg以上のオルニチンが含有されるという具体的な技術的思想は,乙2に当該分量のオルニチンを含有させることに ついて記載も示唆もされていない他,上記イで述べたところと同様にかかる技術的思想を抽出することは不可能である。 さらに,当業者が,乙2における発酵物にその乾燥重量1gあたり1mg以上のエクオール ついて記載も示唆もされていない他,上記イで述べたところと同様にかかる技術的思想を抽出することは不可能である。 さらに,当業者が,乙2における発酵物にその乾燥重量1gあたり1mg以上のエクオールが含有されるという具体的な技術的思想を抽出することが不可能であることは,乙2に当該分量のエクオールを含有させること について記載も示唆もされていない他,上記イで述べたところと同様に,- 86 -かかる技術的思想を抽出することは不可能である。 ク被告主張の無効理由3(乙3に基づく新規性ないし進歩性欠如)について乙3にも当該分量のエクオール及びオルニチンを含有させることについては記載も示唆もなく,上記エで述べたとおり,オルニチン及びエクオー ルの下限量についての具体的な技術的思想を抽出することは不可能である。 (4) 本件訂正発明3に係る特許が無効理由を有しないこと本件発明3について述べたほか,以下のとおりであり,無効理由がないことは一層明らかである。 ア補助参加人主張の無効理由1(丙6に基づく進歩性欠如)について 本件訂正発明3の前段は,本件訂正発明1と同一であり,本件訂正発明3に係る大豆胚軸発酵物に含有されるオルニチン及びエクオールの下限量がそれぞれ大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり8mg及び1mgと特定されていることについて,丙6はもとより,丙7ないし丙9においても記載も示唆もされておらず,他にそれが技術常識であったことを示す証拠も 示されていないことは,上記(3)アで述べたとおりである。 また,本件訂正発明3は,オルニチン及びエクオールを含有する大豆胚軸発酵物に係る発明であり,イソフラボン類として,内分泌攪乱物質として作用する懸念があるゲニステイン類も含有されるところ,ゲニステイン類の上限量を大 明3は,オルニチン及びエクオールを含有する大豆胚軸発酵物に係る発明であり,イソフラボン類として,内分泌攪乱物質として作用する懸念があるゲニステイン類も含有されるところ,ゲニステイン類の上限量を大豆胚軸発酵物中のイソフラボンの総量当たり12重量%以 下と限定している。しかし,当該作用を抑制するよう,当該分量をゲニステイン量の上限と定めることについて,丙6はもとより,丙7ないし丙9において記載も示唆もされておらず,他にそれが技術常識であったことを示す証拠も示されていない。むしろ,丙9においては,ゲニステインに骨量減少抑制作用があることが記載されており(2頁目右列3(1)),ゲ ニステイン類の上限値を見出すという具体的な技術的思想を抽出するには- 87 -阻害要因がある。 イ補助参加人主張の無効理由4(丙11に基づく新規性ないし進歩性欠如)について本件訂正発明3の前段は,本件訂正発明1と同一であり,本件訂正発明3に係る大豆胚軸発酵物に含有されるオルニチンの下限量が大豆胚軸発酵 物の乾燥重量1g当たり8mgと特定されていることについて,丙11はもとより,補助参加人がオルニチンに関して引用する丙7及び丙12において記載も示唆もされていないことは,上記(3)イで述べたとおりである。 また,丙11,丙7及び丙12には,当業者が丙11のエクオール含有組成物中のオルニチン量を測定してそのような技術的思想を抽出する示唆も ないことも,上記(3)イで述べたとおりである。 さらに,本件訂正発明3に係る大豆胚軸発酵物に含有されるエクオールの下限量が大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり1mgと特定されていることについて,丙11はもとより,補助参加人がエクオールに関して引用する丙6,丙8及び丙9において記載も示唆もされていないこと ールの下限量が大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり1mgと特定されていることについて,丙11はもとより,補助参加人がエクオールに関して引用する丙6,丙8及び丙9において記載も示唆もされていないことについて も,上記(3)イで述べたとおりである。 また,上記アで述べたとおり,本件訂正発明3はゲニステイン類の上限量を大豆胚軸発酵物中のイソフラボンの総量当たり12重量%以下と限定しているところ,当該作用を抑制するよう,当該分量をゲニステイン量の上限と定めることについて,丙11はもとより,その他の被告らが本訴訟 において提出した証拠において記載も示唆もされていない。むしろ,丙9の記載は,ゲニステイン類の上限値を見出すという具体的な技術的思想を抽出することの阻害要因となることは,上記アで述べたとおりである。 ウ補助参加人主張の無効理由5(丙14の1に基づく新規性ないし進歩性欠如)について 本件訂正発明3の前段は,本件訂正発明1と同一であり,本件訂正発明- 88 -3に係る大豆胚軸発酵物に含有されるオルニチンの下限量が大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり8mgと特定されていることについて,丙14の1はもとより,補助参加人がオルニチンに関して引用する丙7及び丙12において記載も示唆もされていないことは,上記(3)ウで述べたとおりである。また,丙11,丙7及び丙12には,当業者が丙11のエクオール 含有組成物中のオルニチン量を測定してそのような技術的思想を抽出する示唆もないことも,上記(3)ウで述べたとおりである。 さらに,本件訂正発明3に係る大豆胚軸発酵物に含有されるエクオールの下限量が大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり1mgと特定されていることについて,丙14の1はもとより,補助参加人がエクオールに関して 本件訂正発明3に係る大豆胚軸発酵物に含有されるエクオールの下限量が大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり1mgと特定されていることについて,丙14の1はもとより,補助参加人がエクオールに関して 引用する丙6,丙8及び丙9において記載も示唆もされていないことについても,上記(3)ウで述べたとおりである。 また,上記アで述べたとおり,本件訂正発明3はゲニステイン類の上限量を大豆胚軸発酵物中のイソフラボンの総量当たり12重量%以下と限定しているところ,当該作用を抑制するよう,当該分量をゲニステイン量の 上限と定めることについて,丙14の1はもとより,その他の被告らが本訴訟において提出した証拠において記載も示唆もされていない。むしろ,丙9の記載は,ゲニステイン類の上限値を見出すという具体的な技術的思想を抽出することの阻害要因となることは,上記アで述べたとおりである。 エ補助参加人主張の無効理由6(丙15に基づく新規性ないし進歩性欠 如)について本件訂正発明3の前段は,本件訂正発明1と同一であり,本件訂正発明3に係る大豆胚軸発酵物に含有されるオルニチンの下限量が大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり8mgと特定されていることについて,丙15はもとより,補助参加人がオルニチンに関して引用する丙7及び丙12にお いて記載も示唆もされていないことは,上記(3)エで述べたとおりである。 - 89 -さらに,本件訂正発明3に係る大豆胚軸発酵物に含有されるエクオールの下限量が大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり1mgと特定されていることについて,丙15はもとより,補助参加人がエクオールに関して引用する丙6,丙8及び丙9において記載も示唆もされていないことについても,上記(3)エで述べたとおりである。 また,上記アで述べたと ついて,丙15はもとより,補助参加人がエクオールに関して引用する丙6,丙8及び丙9において記載も示唆もされていないことについても,上記(3)エで述べたとおりである。 また,上記アで述べたとおり,本件訂正発明3はゲニステイン類の上限量を大豆胚軸発酵物中のイソフラボンの総量当たり12重量%以下と限定しているところ,当該作用を抑制するよう,当該分量をゲニステイン量の上限と定めることについて,丙15はもとより,その他の被告らが本訴訟において提出した証拠において記載も示唆もされていない。むしろ,丙9 の記載は,ゲニステイン類の上限値を見出すという具体的な技術的思想を抽出することの阻害要因となることは,上記アで述べたとおりである。 オ補助参加人主張の無効理由7(実施可能要件及びサポート要件違反)について本件訂正発明3の前段は,本件訂正発明1と同一であるところ,本件明 細書には,当業者が本件訂正発明1の大豆胚軸発酵物を実施することができる程度に明確かつ十分な記載があることは,上記(3)オで述べたとおりである。また,本件明細書には,大豆胚軸発酵物がエクオール以外のイソフラボンの組成の点でも大豆胚軸に含まれるイソフラボンとは異なる組成を有し,大豆胚軸発酵物ではゲニステイン類が減少していること(段落 【0030】,【0053】,【0056】),ゲニステイン類は内分泌攪乱物質として作用することが懸念されているところ,本件訂正発明3に係る大豆胚軸発酵物はイソフラボン組成の観点からも発酵前の大豆胚軸に比べて有利であること(段落【0030】),及び本件訂正発明3に係る大豆胚軸発酵物が食品の分野で有用であることが記載されており(段落 【0013】),当業者は,その記載に基づき,大豆胚軸発酵物を食品に- 90 -使用する 0】),及び本件訂正発明3に係る大豆胚軸発酵物が食品の分野で有用であることが記載されており(段落 【0013】),当業者は,その記載に基づき,大豆胚軸発酵物を食品に- 90 -使用することが可能である。したがって,訂正後の請求項3も,実施可能要件(特許法36条4項1号)を満たす。 また,本件訂正発明3の前段は,本件訂正発明1と同一であるところ,本件明細書には,当業者が本件訂正発明1に係る大豆胚軸発酵物を実施することができる程度に明確かつ十分な記載があることは,上記⑶オで述べ たとおりである。これに加え,本件明細書には,ゲニステイン類は内分泌攪乱物質として作用することが懸念されているという課題が存在すること,本件訂正発明3に係る大豆胚軸発酵物においてはゲニステイン類が減少されること,上記課題の存するゲニステイン類の総和の含有比率としては,大豆胚軸発酵物のイソフラボンの総量当たり,12重量%以下が好ましい こと,が明らかにされている(段落【0030】)。したがって,本件明細書に接した当業者は,本件訂正発明3により,上記の課題を解決することを認識することは明らかであるから,訂正後の請求項3の記載は,サポート要件(特許法36条6項1号)を満たす。 カ被告主張の無効理由1(乙1に基づく進歩性欠如)について 本件訂正発明3の前段は,本件訂正発明1と同一であり,本件訂正発明3に係る大豆胚軸発酵物に含有されるオルニチン及びエクオールの下限量がそれぞれ大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たり8mg及び1mgと特定されている。しかし,有用性が高まるよう,当該分量のオルニチンを含有させることについて,乙1はもとより,被告がオルニチンに関して引用す る丙7においても記載も示唆もされておらず,他にそれが技術常識であったこと ,有用性が高まるよう,当該分量のオルニチンを含有させることについて,乙1はもとより,被告がオルニチンに関して引用す る丙7においても記載も示唆もされておらず,他にそれが技術常識であったことを示す証拠も示されていない。また,有用性が高まるよう,当該分量のエクオールを含有させることについて,乙1はもとより,丙7ないし丙9においても記載も示唆もされておらず,他にそれが技術常識であったことを示す証拠も示されていない。 また,本件訂正発明3はゲニステイン類の上限量を大豆胚軸発酵物中の- 91 -イソフラボンの総量当たり12重量%以下と限定している。しかし,当該作用を抑制するよう,当該分量をゲニステイン量の上限と定めることについて,乙1はもとより,その他の被告らが本訴訟において提出した証拠において記載も示唆もされていない。むしろ,丙9の記載は,ゲニステイン類の上限値を見出すという具体的な技術的思想を抽出することの阻害要因 となることは,上記アで述べたとおりである。 キ被告主張の無効理由2(乙2に基づく進歩性欠如)について当業者が,乙2における発酵物にオルニチンが含有されることはもとより,大豆胚軸発酵物の乾燥重量1gあたり8mg以上のオルニチンが含有されるという具体的な技術的思想及び大豆胚軸発酵物の乾燥重量1gあた り1mg以上のエクオールが含有されるという具体的な技術的思想を抽出することが一層不可能であることは,上記(3)キで述べたところと同様である。 さらに,当業者が,乙2における発酵物のうち,ゲニステイン類が大豆胚軸発酵物中のイソフラボン中12重量%以下しか含有されていないとい う具体的な技術的思想は,乙2に当該分量のオルニチンを含有させることについて記載も示唆もされていない他,上記イで述べたとこ 胚軸発酵物中のイソフラボン中12重量%以下しか含有されていないとい う具体的な技術的思想は,乙2に当該分量のオルニチンを含有させることについて記載も示唆もされていない他,上記イで述べたところと同様にかかる技術的思想を抽出することは不可能である。 ク被告主張の無効理由3(乙3に基づく新規性ないし進歩性欠如)について 上記(3)エで述べたとおり,オルニチン及びエクオールの下限量についての具体的な技術的思想を抽出することは不可能である。 さらに,乙3にも当該分量のゲニステイン類の上限量については記載も示唆もなく,上記カで述べたとおり,乙3における発酵物のうち,ゲニステイン類が大豆胚軸発酵物中のイソフラボン中12重量%以下しか含有さ れていないという具体的な技術的思想を抽出することは不可能である。 - 92 -〔被告らの主張〕(1) 本件訂正審判請求が不適法であること本件訂正審判請求は,新規事項を含むものである(特許法126条5項違反)か,明確性要件,サポート要件ないし実施可能要件(特許法36条6項2号,同条6項1号,同条4項1号)違反であるか,進歩性を欠いて独立特 許要件を満たさない(特許法126条7項違反)。 ア新規事項の追加について原告が指摘する本件特許の願書に添付した明細書の段落【0036】には,「大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たりオルニチンが5~2mg,好ましくは8~15mg,更に好ましくは9~12mg程度が例示され る。」と記載されるだけであり,「8mg以上が好ましい」ことは全く記載されていない。また,オルニチン量として,「5~2mg」とまず記載され,その後,「好ましくは8~15mg」と記載されているが,「5~2mg」のうちの「好ましい」範囲として,なぜ「8~15mg」となる されていない。また,オルニチン量として,「5~2mg」とまず記載され,その後,「好ましくは8~15mg」と記載されているが,「5~2mg」のうちの「好ましい」範囲として,なぜ「8~15mg」となるかが不明である。したがって,本件訂正発明1の構成要件1-B’及び本 件訂正発明の構成要件3-B’は新規事項を含むものである。 イ明確性要件違反について本件訂正発明3の構成要件3-B’,3-C’及び3-E’は,構成要件3-F’に規定する「食品」などにおいて,オルニチン,エクオールがいかなる量で含まれると規定しているのか不明であり,明確性要件を満た さない。 ウサポート要件ないし実施可能要件違反について(ア) 本件訂正発明1の構成要件1-B’及び本件訂正発明3の構成要件3-B’は,第1本件訂正発明3の構成要件3-A”と同様に,「オルニチン」を「8mg以上」「含有」することを規定する。 ここで,上記構成要件は,「オルニチン」を「8mg以上」「含有」- 93 -すればいかなる量であってもよいことを規定している。 しかしながら,本件特許の特許公報における明細書の段落番号【0036】には,「大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たりオルニチンが5~2mg,好ましくは8~15mg,更に好ましくは9~12mg程度が例示される。」と記載されるだけであることは上述したとおりであり, 「8mg以上」であればいかなる量であってもよいことは開示されていない。 また,原告の主張に従えば,「大豆胚軸発酵物」に「含有」させることができるオルニチンの量に上限が存在することは明らかであり,例えば大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たりオルニチンを800mgとか9 00mgといった量で含有させることができないのは明らかである。 (イ) 本件 ンの量に上限が存在することは明らかであり,例えば大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たりオルニチンを800mgとか9 00mgといった量で含有させることができないのは明らかである。 (イ) 本件特許の明細書の実施例において,オルニチン量が記載されているのは,段落番号【0054】の【表3】だけである。この表3によると,「発酵後」「100gあたり」「1.06g」という記載があるだけである。なお,表3には,少量の水分(6.2g)が含まれて いるので,訂正後の請求項3に規定する「その乾燥重量1g当たり」の「乾燥重量」に相当するのか否かが不明であるが,仮に表3の重量を「乾燥重量」とすると,実施例4における大豆胚軸発酵物の乾燥重量1g当たりのオルニチン量は,1.06/100(g)=10.6(mg)と算出される。 したがって,実施例を見ても,オルニチン量が「8mg以上」であること,及びオルニチン量が「8mg以上」であればいかなる量であってもよいこと,が,実施例においてサポートされていないことは明らかである。 (ウ) したがって,当業者は,「8mg以上」である全ての場合にわたっ て発明を実施することができないため,本件訂正発明1及び本件訂正- 94 -発明3は,実施可能要件(特許法36条4項1号)を満たさない。また,オルニチン量が「8mg以上」であればいかなる量であってもよいことは開示されていないから,本件訂正発明1及び本件訂正発明3は,サポート要件(特許法36条6項1号)を満たさない。 エ進歩性欠如について 補助参加人主張の無効理由1,4ないし6は,訂正後の請求項3においても解消していない。 すなわち,成分の添加量を定めることは当業者が通常行う創作行為であり,また本件明細書においてもこの特定の添加量によっ 加人主張の無効理由1,4ないし6は,訂正後の請求項3においても解消していない。 すなわち,成分の添加量を定めることは当業者が通常行う創作行為であり,また本件明細書においてもこの特定の添加量によって相加的な効果を越えて,顕著とされるような効果が得られたとする事実も確認できない。 また,丙15には「発酵生成物であるオルニチン」が実質的に開示されており,丙15の再現実験を行った丙27では発酵生成物である「オルニチン」が「586mg/100g(培養液)」存在し,丙15では,「ダイゼイン」をdo03により発酵しているので,「ゲニステイン類」が生成されないため,「イソフラボンの総量当たり12重量%以下」であること も開示している。したがって本件訂正発明1又は本件訂正発明3と丙15とでは相違点はなく,本件訂正発明1又は本件訂正発明3にかかる発明は丙15から当業者が容易になしえた事項に過ぎないので,本件訂正発明1及び本件訂正発明3は進歩性を欠如している。 (2) 訂正後の発明との対比について ア被告製品の構成についてa’は否認し,その余は認める。 イ被告製品と本件訂正発明1との対比構成要件1-A’については否認し,その余は認める。 ウ被告製品と本件訂正発明3との対比について 構成要件3-C’については認め,その余については,被告製品には大- 95 -豆胚軸発酵物は含まれないため,否認する。 以上
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