令和4年2月16日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和2年(ワ)第19931号特許権侵害差止請求事件(第1事件),同第22285号特許権侵害差止請求事件(第2事件),同第22289号特許権侵害差止請求事件(第3事件)口頭弁論終結日令和3年11月12日 判決第1事件ないし第3事件原告ワーナー-ランバートカンパニーリミテッドライアビリティーカンパニー同訴訟代理人弁護士飯村敏明 同磯田直也同森下 梓同訴訟代理人弁理士泉谷玲子同訴訟復代理人弁護士永島太郎同補佐人弁理士小 野 新次郎 第 事件被告辰巳化学株式会社(以下「被告辰巳」という。)第 事件被告株式会社陽進堂(以下「被告陽進堂」という。)第 事件被告三笠製薬株式会社 (以下「被告三笠」という。)上記3名訴訟代理人弁護士佐藤明夫同杉原嘉樹同鮎川拓弥同訴訟代理人弁理士下山 潤 同補佐人弁理士奥谷雅子 樹同鮎川拓弥同訴訟代理人弁理士下山 潤 同補佐人弁理士奥谷雅子 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 (目次)省略第1 請求 1 第1事件(1) 被告辰巳は,別紙物件目録記載1の医薬品を販売し,販売の申出をしてはならない。 (2) 被告辰巳は,別紙物件目録記載2の医薬品を製造し,販売し,販売の申出をしてはならない。 (3) 被告辰巳は,別紙物件目録記載1及び2の医薬品を廃棄せよ。 2 第2事件(1) 被告陽進堂は,別紙物件目録記載1の医薬品を製造し,販売し,販売の申 出をしてはならない。 (2) 被告陽進堂は,別紙物件目録記載1の医薬品を廃棄せよ。 3 第3事件(1) 被告三笠は,別紙物件目録記載3の医薬品を製造し,販売し,販売の申出をしてはならない。 (2) 被告三笠は,別紙物件目録記載3の医薬品を廃棄せよ。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,発明の名称を「イソブチルGABAまたはその誘導体を含有する鎮痛剤」とする特許第3693258号の特許(以下「本件特許」という。)に 係る特許権(以下「本件特許権」という。)の特許権者である原告が,別紙物 件目録記載1ないし3の医薬品(以下,用量等にかかわらず「被告医薬品」という。)が本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし4記載の各発明の技術的範囲に属し,被告らによる被告医 る原告が,別紙物 件目録記載1ないし3の医薬品(以下,用量等にかかわらず「被告医薬品」という。)が本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし4記載の各発明の技術的範囲に属し,被告らによる被告医薬品の製造等が上記各発明の実施に当たると主張して,特許法(以下「法」という。)100条1項に基づき,被告辰巳に対し,同目録記載1の医薬品の販売及び販売の申出並びに同目録記載2の医 薬品の製造,販売及び販売の申出の差止めを,被告陽進堂に対し,同目録記載1の医薬品の製造,販売及び販売の申出の差止めを,被告三笠に対し,同目録記載3の医薬品の製造,販売及び販売の申出の差止めをそれぞれ求めるとともに,同条2項に基づき,被告辰巳に対し,同目録記載1及び2の医薬品の廃棄を,被告陽進堂に対し,同目録記載1の医薬品の廃棄を,被告三笠に対し,同 目録記載3の医薬品の廃棄をそれぞれ求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠(以下,書証番号は,特記しない限り枝番を含む。また,甲号証の書証番号は,特記しない限り,第1事件のものである。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者 ア原告は,米国の法人であり,本件特許権の特許権者である。 なお,原告は,ファイザー株式会社に対し,本件特許権に係る専用実施権を設定しており,同社は,神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛の治療薬である先発医薬品(商品名:リリカカプセル,リリカOD錠)を販売している(甲5,弁論の全趣旨)。 イ被告らは,ジェネリック医薬品の製造,販売等を業とする会社である(弁論の全趣旨)。 (2) 本件特許の設定登録から一部無効審決までの経緯ア原告は,平成9年7月16日(優先日平成8年7月24日, ジェネリック医薬品の製造,販売等を業とする会社である(弁論の全趣旨)。 (2) 本件特許の設定登録から一部無効審決までの経緯ア原告は,平成9年7月16日(優先日平成8年7月24日,優先権主張国米国),本件特許に係る特許出願(特願平10-507062号。以下 「本件出願」という。)をし,平成17年7月1日,本件特許権の設定の 登録(請求項の数4)を受けた(甲1,2。以下,本件出願の願書に添付した明細書及び図面を併せて「本件明細書」という。)。 イ原告は,別紙延長登録目録記載のとおり,本件特許権について,存続期間の延長登録の出願をし,その登録を受けた(甲1)。 ウ沢井製薬株式会社は,平成29年1月16日,本件特許の特許請求の範 囲の請求項1ないし4に係る発明について,特許無効審判の請求(無効2017-800003号事件。以下「本件無効審判事件」という。)をした。被告辰巳は,平成31年4月5日,本件無効審判事件への参加を申請し,同年6月7日,同申請が許可された。(甲9)。 原告は,本件無効審判事件において,平成31年2月28日付けの審決 の予告(以下「本件審決予告」という。)を受けたため,令和元年7月1日付けで,本件特許の特許請求の範囲を,請求項1ないし4を一群の請求項として,後記(3)イのとおりに訂正する旨の訂正請求(以下,この請求に係る訂正を「本件訂正」という。)をした(甲3,4,9)。 特許庁は,令和2年7月14日,本件無効審判事件において,請求項1 及び2に係る本件訂正を認めず,請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とし,他方,請求項3及び4に係る本件訂正を認め,請求項3及び4に係る発明についての審判の請求は成り立たないとする審決(以下「本件審 る本件訂正を認めず,請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とし,他方,請求項3及び4に係る本件訂正を認め,請求項3及び4に係る発明についての審判の請求は成り立たないとする審決(以下「本件審決」という。)をした(甲9)。 エ原告は,令和2年11月19日,本件審決のうち請求項1及び2に係る 部分の取消しを求める審決取消訴訟(知財高裁令和2年(行ケ)第10135号)を提起した(弁論の全趣旨)。 本件審決のうち請求項3及び4に係る部分は確定したので,本件特許の請求項3及び4は後記(3)イ(ウ)及び(エ)のとおりに訂正された。 (3) 本件特許の特許請求の範囲 ア本件出願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし4の各記載 は,以下のとおりである(以下,請求項1及び2に係る発明をそれぞれ「本件発明1」及び「本件発明2」といい,請求項3及び4に係る発明をそれぞれ「本件訂正前発明3」及び「本件訂正前発明4」という。甲2。)。 (ア) 【請求項1】(本件発明1) 式I (式中,R1は炭素原子1〜6個の直鎖状または分枝状アルキルであり,R2は水素またはメチルであり,R3は水素,メチルまたはカルボキシルである)の化合物またはその医薬的に許容される塩,ジアステレオマー,もしくはエナンチオマーを含有する痛みの処置における鎮痛剤。 (イ) 【請求項2】(本件発明2) 化合物が,式IにおいてR3およびR2はいずれも水素であり,R1は-(CH2)0-2-iC4H9である化合物の(R),(S),または(R,S)異性体である請求項1記載の鎮痛剤。 (ウ) 【請求項3】(本件訂正前発明3)化合物が, ,R1は-(CH2)0-2-iC4H9である化合物の(R),(S),または(R,S)異性体である請求項1記載の鎮痛剤。 (ウ) 【請求項3】(本件訂正前発明3)化合物が,(S)-3-(アミノメチル)-5-メチルヘキサン酸ま たは3-アミノメチル-5-メチルヘキサン酸である請求項1記載の鎮痛剤。 (エ) 【請求項4】(本件訂正前発明4)痛みが炎症性疼痛,神経障害による痛み,癌による痛み,術後疼痛,幻想肢痛,火傷痛,痛風の痛み,骨関節炎の痛み,三叉神経痛の痛み, 急性ヘルペスおよびヘルペス後の痛み,カウザルギーの痛み,特発性の痛み,または線維筋痛症である請求項1記載の鎮痛剤。 イ本件特許の本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし4の各記載は,以下のとおりである(下線部は本件訂正に係る部分である。以下,請求項1及び2に係る発明をそれぞれ「本件訂正発明1」及び「本件訂正発明2」といい,請求項3及び4に係る発明をそれぞれ「本件発明3」及び「本件発明4」という。甲3,4。)。 (ア) 【請求項1】(本件訂正発明1)式I (式中,R1は炭素原子1〜6個の直鎖状または分枝状アルキルであり,R2は水素またはメチルであり,R3は水素,メチルまたはカルボキシルである)の化合物またはその医薬的に許容される塩,ジアステレオマー,もしくはエナンチオマーを含有する,痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処 置における鎮痛剤。 (イ) 【請求項2】(本件訂正発明2)式I (式中,R3およびR2はいずれも水素であり,R1は-(CH2)0-2-iC4H9である)の化合物の(R),( イ) 【請求項2】(本件訂正発明2)式I (式中,R3およびR2はいずれも水素であり,R1は-(CH2)0-2-iC4H9である)の化合物の(R),(S),または(R,S)異性体を含有する,神経障害又は線維筋痛症による,痛覚過敏又は接触異痛の 痛みの処置における鎮痛剤。 (ウ) 【請求項3】(本件発明3)(S)-3-(アミノメチル)-5-メチルヘキサン酸または3-ア ミノメチル-5-メチルヘキサン酸を含有する,炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛みの処置における鎮痛剤。 (エ) 【請求項4】(本件発明4)式I (式中,R1は炭素原子1〜6個の直鎖状または分枝状アルキルであり,R2は水素またはメチルであり,R3は水素,メチルまたはカルボキシル である)の化合物またはその医薬的に許容される塩,ジアステレオマー,もしくはエナンチオマーを含有する,炎症性疼痛による痛覚過敏の痛み,又は術後疼痛による痛覚過敏若しくは接触異痛の痛みの処置における鎮痛剤。 (4) 本件特許に係る発明の構成要件の分説 ア本件発明1及び2並びに本件訂正前発明3及び4は,以下の構成要件に分説することができる(以下,各構成要件につき,頭書の記号に従って「構成要件1A」などという。後記イにおいても同じ。)。 (ア) 本件発明11A 式I (式中,R1は炭素原子1〜6個の直鎖状または分枝状アルキルであり,R2は水素またはメチルであり,R3は水素,メチルまたはカルボキシルである)の化合物またはその医薬的に許容される塩,ジアステレオマー,もしく 1は炭素原子1〜6個の直鎖状または分枝状アルキルであり,R2は水素またはメチルであり,R3は水素,メチルまたはカルボキシルである)の化合物またはその医薬的に許容される塩,ジアステレオマー,もしくはエナンチオマーを含有する 1B 痛みの処置における1C 鎮痛剤。 (イ) 本件発明22A 化合物が,式IにおいてR3およびR2はいずれも水素であり,R1は-(CH2)0-2-iC4H9である化合物の(R),(S), または(R,S)異性体である請求項1記載の2C 鎮痛剤。 (ウ) 本件訂正前発明33A’ 化合物が,(S)-3-(アミノメチル)-5-メチルヘキサン酸または3-アミノメチル-5-メチルヘキサン酸である請求 項1記載の3C 鎮痛剤。 (エ) 本件訂正前発明44B’ 痛みが炎症性疼痛,神経障害による痛み,癌による痛み,術後疼痛,幻想肢痛,火傷痛,痛風の痛み,骨関節炎の痛み,三叉神 経痛の痛み,急性ヘルペスおよびヘルペス後の痛み,カウザルギーの痛み,特発性の痛み,または線維筋痛症である請求項1記載の4C 鎮痛剤。 イ本件訂正発明1及び2並びに本件発明3及び4は,以下の構成要件に分 説することができる(構成要件1A,1C,2C,3C及び4Cは,本件訂正の前後で変わらない。また,構成要件1A,2A,3A,4A,2A’及び3A’のいずれかの構造を有する化合物を総称して「本件化合物」という。)。 (ア) 本件訂正発明1 1A 式I (式中,R1は炭素原子1〜6個の直鎖状または分枝状アルキルで 件化合物」という。)。 (ア) 本件訂正発明1 1A 式I (式中,R1は炭素原子1〜6個の直鎖状または分枝状アルキルであり,R2は水素またはメチルであり,R3は水素,メチルまたはカルボキシルである)の化合物またはその医薬的に許容される塩,ジアステレオマー,もしくはエナンチオマーを含有する,1B’ 痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置における 1C 鎮痛剤。 (イ) 本件訂正発明22A’ 式I (式中,R3およびR2はいずれも水素であり,R1は-(CH2)0-2-iC4H9である)の化合物の(R),(S),または(R, S)異性体を含有する,2B’ 神経障害又は線維筋痛症による,痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置における2C 鎮痛剤。 (ウ) 本件発明3 3A (S)-3-(アミノメチル)-5-メチルヘキサン酸または3-アミノメチル-5-メチルヘキサン酸を含有する,3B 炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛みの処置における3C 鎮痛剤。 (エ) 本件発明44A 式I (式中,R1は炭素原子1〜6個の直鎖状または分枝状アルキルであり,R2は水素またはメチルであり,R3は水素,メチルまたはカルボキシルである)の化合物またはその医薬的に許容される塩, ジアステレオマー,もしくはエナンチオマーを含有する,4B 炎症性疼痛による痛覚過敏の痛み,又は術後疼痛による痛覚過敏若しくは接触異痛 )の化合物またはその医薬的に許容される塩, ジアステレオマー,もしくはエナンチオマーを含有する,4B 炎症性疼痛による痛覚過敏の痛み,又は術後疼痛による痛覚過敏若しくは接触異痛の痛みの処置における4C 鎮痛剤。 (5) 被告医薬品 ア被告医薬品は,以下の構成を有する。 a (S)-3-(アミノメチル)-5-メチルヘキサン酸(一般名:プレガバリン)を有効成分とし,b 効能・効果を神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛とする,c 疼痛治療剤 イ被告陽進堂及び同三笠は令和2年8月17日に,被告辰巳は令和3年8月に,それぞれ,被告医薬品の製造販売について,医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「薬機法」という。)14条1項に基づく厚生労働大臣の承認を受けた(甲12,153)。 ウ被告医薬品は,本件発明1及び2の各技術的範囲に属する。 また,被告医薬品は,構成要件3A,3C,4A及び4Cを充足する(弁論の全趣旨)。 3 争点 (1) 本件発明1及び2についてア無効の抗弁(ア) 実施可能要件違反の成否(争点1-1)(イ) サポート要件違反の成否(争点1-2)イ訂正の再抗弁 (ア) 本件訂正が訂正要件を満たすか(争点1-3)(イ) 本件訂正により無効理由が解消されるか(争点1-4)ウ延長登録された本件発明1及び2に係る本件特許権の効力が被告医薬品の製造等に及ぶか(争点1-5)(2) 本件発明3及び4について ア被告医薬品が本件発明3及び4の技術的範囲に属するか 件発明1及び2に係る本件特許権の効力が被告医薬品の製造等に及ぶか(争点1-5)(2) 本件発明3及び4について ア被告医薬品が本件発明3及び4の技術的範囲に属するか(ア) 文言侵害の成否(争点2-1)(イ) 均等侵害の成否(争点2-2)イ延長登録された本件発明3及び4に係る本件特許権の効力が被告医薬品の製造等に及ぶか(争点2-3) 第3 争点に関する当事者の主張 1 本件発明1及び2について(1) 争点1-1(実施可能要件違反の成否)について(被告らの主張)ア痛みの分類及び機序 (ア) 本件出願当時,痛みは,その病態生理に基づいて,侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛(神経因性疼痛)及び心因性疼痛(特発性疼痛)に大別されており,侵害受容性疼痛の一態様として炎症性疼痛が,心因性疼痛の一態様として線維筋痛症が含まれていることが知られていた。そして,各痛みに対して異なる治療法が選択されることも,本件出願当時に知ら れていた。 (イ) 本件出願当時,神経障害性疼痛は,疼痛伝達系の一部に対する神経損傷により生じるものであることが知られていた。 また,本件出願当時,心因性疼痛(特発性疼痛)は,心因性(心理的要因が関与)であることが知られていた。そして,心因性疼痛に分類される線維筋痛症は,性格,不安,ストレス,不眠等が症状の誘発や増幅 に関与していると考えられており,各種検査において炎症性変化や筋肉損傷を疑わせるような所見は皆無であると理解されていた。 (ウ) これに対して,原告は,① 本件出願当時,慢性疼痛は,原因にかかわらず,末梢や中枢の神経細胞の感作という神経の機能異常により生じる痛覚過 るような所見は皆無であると理解されていた。 (ウ) これに対して,原告は,① 本件出願当時,慢性疼痛は,原因にかかわらず,末梢や中枢の神経細胞の感作という神経の機能異常により生じる痛覚過敏や接触異痛の痛みであると理解されていた,② 本件出願当時, ケタミンという物質について,中枢性感作阻害性が裏付けられており,痛覚過敏や接触異痛に効果を奏することが確認されていたから,当業者は,中枢性感作を阻害できる物質であれば,痛覚過敏や接触異痛に効果があることを理解できた,③ 線維筋痛症は痛覚過敏を伴う慢性疼痛症候群であり,中枢性感作の痛みと理解されていたと主張する。 しかし,上記①について,本件出願当時,痛みについて,原告が主張するような分類はされておらず,本件明細書にそのようなことは一切記載されていないし,そのような技術常識が存在したことの明確な証拠は何ら提出されていない。神経細胞の感作といっても,個々の種類の疼痛ごとに,どの部位の神経細胞で生じるのか,神経細胞がどのようなメカ ニズムで感作されるのかなど,様々な感作の態様があり得るところ,原告はこれらの点を明らかにしていない。 上記②について,本件明細書には本件化合物の作用メカニズムについて一切記載がなく,その示唆もないから,中枢性感作を阻害できる物質であれば痛覚過敏や接触異痛に効果があることが知られていたとしても, 本件化合物が痛覚過敏や接触異痛に効果があると理解できるものではな い。また,ケタミンと本件化合物とでは化学構造が全く異なるところ,化学構造が異なればその作用機序も異なることは技術常識である。 上記③について,線維筋痛症は,本件出願当時,前記(イ)のとおりに理解されており,中枢性感作による痛覚過敏や接 なるところ,化学構造が異なればその作用機序も異なることは技術常識である。 上記③について,線維筋痛症は,本件出願当時,前記(イ)のとおりに理解されており,中枢性感作による痛覚過敏や接触異痛であるとは理解されていなかった。 したがって,原告の上記各主張はいずれも理由がない。 イ混合性疼痛原告は,本件出願当時,痛みを原因により明確に区別することはできず,炎症性疼痛や術後疼痛と神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛は相互に重複する痛み(混合性疼痛)であると理解されていたと主張する。 しかし,例えば,神経障害性疼痛に対して鎮痛効果を有する医薬品であれば,あくまで神経障害性疼痛の適切な診断を前提として,神経障害性疼痛と診断された痛みに対して処方されるものである。つまり,これが処方される患者において,仮に神経障害性疼痛以外に侵害受容性疼痛や心因性疼痛等が併存していたとしても,混合性疼痛に対して処方されるのではな く,あくまで神経障害性疼痛に対して処方されるものである。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 ウ動物モデル試験(ア) 痛みには種々のものがあり,その原因や病態生理もさまざまであることは,本件出願当時の技術常識であった。また,痛みの種類や原因によ って治療法が異なり,鎮痛剤であればあらゆる種類の痛みに有効であるわけではないことも,本件出願当時の技術常識であった。 したがって,以下のとおり,本件出願当時,疾患や症状の種類に応じて動物モデル試験に対する考え方が異なることは,周知であった。 (イ) まず,本件出願当時,ホルマリン試験は,侵害受容性疼痛の一種であ る炎症性疼痛を反映した動物モデル試験であ に応じて動物モデル試験に対する考え方が異なることは,周知であった。 (イ) まず,本件出願当時,ホルマリン試験は,侵害受容性疼痛の一種であ る炎症性疼痛を反映した動物モデル試験であることが技術常識であった ところ,同試験が中枢性感作による痛覚過敏や接触異痛に対する薬剤の効果を確認する試験であるという技術常識は存在しなかった。 次に,本件出願当時,カラゲニン試験は,炎症性疼痛に対する薬剤の効果を確認するための試験であると理解されていた。したがって,カラゲニン試験において痛覚過敏の痛みに対する効果が確認された物質であ るとしても,それが痛覚過敏全般に効果を有するということにはならない。 また,本件出願当時,術後疼痛試験は,侵害受容性疼痛の一態様である術後疼痛に関する動物モデル試験と理解されていた。したがって,動物の皮膚を切開することによって神経細胞の感作が起こり,痛覚過敏等 の神経の機能異常による症状が生じ,これを痛覚過敏等の研究に使用するといったことが,本件出願当時の技術常識であったとはいえない。 さらに,本件出願当時,ベネットモデル及びチャングモデルは,神経損傷を原因とする痛覚過敏や接触異痛に対して鎮痛効果を有するかを確認するための動物モデルであり,炎症や組織損傷を原因とするホルマリ ン試験やカラゲニン試験等とは痛覚過敏や接触異痛を発生するメカニズムが全く異なることが知られていた。 (ウ) これに対して,原告は,痛覚過敏や接触異痛は,疼痛の原因にかかわらず,神経細胞の感作により生じることから,任意の方法により痛覚過敏や接触異痛を生じさせれば,これらに対する薬剤の効果を確認するこ とができると主張する。 しかし,本件出願当時,カラゲニン試験や術後疼痛試験 じることから,任意の方法により痛覚過敏や接触異痛を生じさせれば,これらに対する薬剤の効果を確認するこ とができると主張する。 しかし,本件出願当時,カラゲニン試験や術後疼痛試験等が神経の機能異常(末梢性感作及び中枢性感作)を反映した動物モデル試験であるという技術常識は存在しなかったから,痛覚過敏等に対する薬理効果を確認するための動物モデル試験は,症状や神経細胞の感作を適切に反映 したものであればよいというものではない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 エ実施可能要件の判断基準及びあてはめ(ア) 判断基準実施可能要件(平成14年法律第24号による改正前の法36条4項)を満たすというためには,明細書の発明の詳細な説明が,当業者が当該 発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでなければならない。 原告は,「パイオニア発明」に対しては実施可能要件等の記載要件を厳格に適用すべきではないと主張するが,「パイオニア発明」との用語の定義は不明であるし,本件発明1及び2が「パイオニア発明」に該当 するかも不明であるから,同主張には理由がない。 (イ) あてはめa 本件明細書では,ラットホルマリン足蹠試験(ホルマリン試験),カラゲニン誘発痛覚過敏に対する効果を検証する試験(カラゲニン試験)及びラット術後疼痛モデルによる試験(術後疼痛試験)の三つの 動物モデル試験の結果しか記載されていないところ,前記ウ(イ)のとおり,これらの動物モデル試験は,侵害受容性疼痛の一態様である炎症性疼痛又は術後疼痛に対する薬剤の効果を確認する試験であり,当業者は,これらの薬理試験結果に接しても,本件明細書に記載され (イ)のとおり,これらの動物モデル試験は,侵害受容性疼痛の一態様である炎症性疼痛又は術後疼痛に対する薬剤の効果を確認する試験であり,当業者は,これらの薬理試験結果に接しても,本件明細書に記載された痛みのうち「炎症性疼痛」及び「術後疼痛」以外の痛みに対して鎮痛効 果を有すると認識することはできない。 b これに対して,原告は,本件明細書に記載された薬理試験の結果によれば,本件化合物が,麻薬性鎮痛剤や非ステロイド性抗炎症薬(以下「NSAID」という。)が有効である組織損傷や炎症による侵害刺激で生じる通常の痛みではなく,神経細胞の感作による痛覚過敏や 接触異痛に対して効果を奏することは明らかであり,また,本件明細 書を見た当業者は,本件化合物が,モルヒネなどのオピオイド(麻薬性鎮痛剤)と同様の機序を有すると理解したりすることはないと主張する。 しかし,ホルマリン試験が侵害受容性疼痛の一種である炎症性疼痛を反映した動物モデル試験であることは前記ウ(イ)のとおりであるし,本件明細書には,本件化合物の作用メカニズムについての記載はなく, その示唆もないから,これに接した当業者が,本件化合物の作用機序について,原告が主張するように理解するとはいえない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 c 以上によれば,当業者は,本件明細書に記載された三つの薬理試験結果に接しても,本件発明1及び2が,本件明細書に記載された痛み のうち「炎症性疼痛」及び「術後疼痛」以外の痛みに対して鎮痛効果を有することを認識することはできない。 オ小括したがって,本件明細書の発明の詳細な説明は,本件発明1及び2を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではない 痛効果を有することを認識することはできない。 オ小括したがって,本件明細書の発明の詳細な説明は,本件発明1及び2を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではないから,実施 可能要件に違反する。 (原告の主張)ア痛みの分類及び機序(ア) 末梢組織に傷害や炎症等の損傷が起きると,損傷による侵害刺激は末梢神経の侵害受容器を刺激し,その後,末梢神経を通じて脊髄後角の中 枢神経に伝達されて,最後には脳に伝わり,痛みとして認識される。これが通常の痛みである。 しかし,それだけでなく,侵害刺激は,その強度や頻度等により,末梢の神経細胞の感作(末梢性感作)や中枢の神経細胞の感作(中枢性感作)を引き起こすことがあるところ,神経細胞は,感作されると,興奮 状態になって通常の知覚を行うことができず,神経の機能異常が起きる。 その結果,侵害刺激以上の痛みを感じる痛覚過敏や本来痛みを感じない羽毛の接触等の非侵害刺激に対しても痛みを感じる接触異痛が生じる。 このように,痛覚過敏や接触異痛は,通常の痛みとは異なり,末梢性感作や中枢性感作による神経の機能異常で生じる痛みであり,そのため,末梢組織の傷害が治癒した後も痛みが持続し,慢性疼痛となる。 (イ) 本件出願当時,神経障害性疼痛は,神経系の一次的な損傷,あるいはその機能異常が原因となって生じた疼痛と定義されていた。そして,神経障害性疼痛には,上腕神経叢捻除,帯状疱疹後神経痛,幻肢痛,視床痛,カウザルギー,三叉神経痛,糖尿病性神経障害等の様々な疾患が含まれるが,これらは,結局のところ,神経障害性疼痛に分類され,求心 路遮断性,交感神経依存性,末梢性といった分類にかかわらず,等しく カウザルギー,三叉神経痛,糖尿病性神経障害等の様々な疾患が含まれるが,これらは,結局のところ,神経障害性疼痛に分類され,求心 路遮断性,交感神経依存性,末梢性といった分類にかかわらず,等しく神経細胞の感作により痛覚過敏や接触異痛を生じると理解されていた。 また,本件出願当時,線維筋痛症は,原因では定義することができなかったことから,痛覚過敏を伴う慢性疼痛症候群と定義されていた。そして,心因性疼痛は,神経障害性疼痛と同じく,心因性の要因で侵害刺 激が生じ,又は器質的病変が心理的要因で増幅され,神経細胞の感作により痛覚過敏や接触異痛を生じるものであるところ,心因性疼痛に分類されることもある線維筋痛症も,中枢性感作の痛みとされていた。 (ウ) 前記(ア)及び(イ)によれば,慢性疼痛は,原因にかかわらず,組織損傷や炎症によるものであっても,神経損傷その他神経の障害によるもので あっても,心因性の要因によるものであっても,神経障害性疼痛や線維筋痛症におけるものであっても,いずれも末梢や中枢の神経細胞の感作という神経の機能異常により生じる痛覚過敏や接触異痛の痛みであるということができる。 (エ) ところで,本件出願当時,本件化合物とは異なるケタミンという物質 について,ホルマリン試験により,中枢性感作阻害性が裏付けられてい た。そして,ケタミンは,虚血性疼痛,術後疼痛,癌性疼痛,末梢性及び中枢性神経障害性疼痛,帯状疱疹後神経痛並びに線維筋痛症,さらにはこれらに由来する痛覚過敏及び接触異痛に対して効果を奏することが確認されていた。このようなケタミンの研究等により,前記(ウ)の痛覚過敏や接触異痛の痛みに対しては,その直接の原因である神経細胞の感作 を抑制することで,原因にかかわらず痛 て効果を奏することが確認されていた。このようなケタミンの研究等により,前記(ウ)の痛覚過敏や接触異痛の痛みに対しては,その直接の原因である神経細胞の感作 を抑制することで,原因にかかわらず痛みを治療することができると知られていた。 具体的には,ホルマリン試験等を用いた研究により,慢性疼痛に共通する痛覚過敏や接触異痛の機序として,組織損傷や炎症の後に,興奮性アミノ酸を伝達物質とするNMDAレセプター作動性の中枢性感作を生 じることが知られており,カラゲニンによる炎症や術後疼痛における感作も,これと同様の機序であると理解されていた。また,神経損傷の後にも,同様に,NMDAレセプター作動性の中枢性感作を生じることが知られていた。 したがって,本件出願当時,当業者は,原因にかかわらず,痛覚過敏 や接触異痛を生じる感作の機序は同一であると考えており,組織損傷や炎症の疼痛モデルの結果を用いて,神経障害性疼痛や線維筋痛症等の慢性疼痛について研究がされていた。 (オ) これに対して,被告らは,本件出願当時,① 痛みは,その病態生理に基づいて,侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛及び特発性疼痛に大別され ていた,② 神経障害性疼痛は,疼痛伝達系の一部に対する神経損傷により生じるものである,③ 線維筋痛症の原因は,性格,不安,ストレス,不眠等が症状の誘発や増幅に関与していると主張する。 しかし,上記①について,被告らの主張するように分類することは,原因にかかわらず神経細胞の感作により痛覚過敏や接触異痛を生じ,神 経細胞の感作を抑制することで鎮痛することができることを否定するも のではない。 また,上記②について,神経障害性疼痛は,本件出願当時,権威ある国際疼痛 触異痛を生じ,神 経細胞の感作を抑制することで鎮痛することができることを否定するも のではない。 また,上記②について,神経障害性疼痛は,本件出願当時,権威ある国際疼痛学会により,「神経系の一次的な損傷,あるいはその機能異常が原因となって生じた疼痛」と定義されていた。 さらに,上記③について,線維筋痛症が,中枢性感作による痛覚過敏 や接触異痛の痛みであり,中枢性感作の抑制により鎮痛することができ,炎症や手術を原因とする痛みであることは,本件出願当時の技術常識であった。 したがって,被告らの上記各主張はいずれも理由がない。 イ混合性疼痛 本件出願当時,組織損傷や炎症により神経を損傷し,逆に,神経損傷により炎症を生じ,また,ストレスで侵害刺激を生じたり増幅したりし,これらが原因となって,神経細胞の感作を生じ,痛覚過敏や接触異痛を生じることから,痛みを組織損傷,炎症,神経損傷,あるいは心因性の要因といった原因により明確に区別することはできず,炎症性疼痛や術後疼痛と 神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛は,相互に重複する痛み(混合性疼痛)であると理解されていた。 例えば,本件出願当時,神経障害性疼痛を生じる椎間板ヘルニアは,筋肉や関節等の末梢組織の損傷と神経の圧迫等の両方から,炎症により神経細胞の感作を生じることが知られており,神経障害性疼痛を生じる複合性 局所疼痛症候群(反射性交感神経性ジストロフィーを含む。)も,炎症により神経細胞の感作を生じることが知られていた。 ウ動物モデル試験(ア) 痛覚過敏や接触異痛は,疼痛の原因にかかわらず,神経の機能異常によって現れる神経細胞の感作により生じることから,任意の方法で痛 生じることが知られていた。 ウ動物モデル試験(ア) 痛覚過敏や接触異痛は,疼痛の原因にかかわらず,神経の機能異常によって現れる神経細胞の感作により生じることから,任意の方法で痛覚 過敏や接触異痛を生じさせれば,これらに対する薬剤の効果を確認する ことができる。 本件出願当時,痛みのメカニズムを解明するために種々の動物モデル試験が開発されていたところ,痛覚過敏や接触異痛に対する薬理効果を確認するための動物モデル試験は,症状や神経細胞の感作を適切に反映したものであればよいと考えられていた。 (イ) ホルマリンを投与すると,ラットには二相性の侵害刺激応答が生じるところ,初期相(第1相)と呼ばれるホルマリン投与後直ちに生じる侵害刺激に対応した行動は,ホルマリンそのものが誘発する侵害刺激によって引き起こされるものである。その後に,後期相(第2相)と呼ばれる持続する侵害刺激行動が生じるが,後期相は中枢性感作(脊髄後角に おける神経細胞の発火)を反映していることから,本件出願当時,ホルマリン試験により中枢性感作の研究を行うことができること及びホルマリン試験が痛覚過敏や接触異痛の慢性疼痛の研究に有用な動物モデル試験であることは周知であった。 したがって,当業者は,ホルマリン試験における後期相に効果を有す る薬剤が痛覚過敏や接触異痛に対して効果を奏すると理解した。 (ウ) カラゲニン試験は,もともとNSAIDの効果を確認するための動物モデル試験であったが,痛覚過敏の研究のために拡張されたものであり,本件出願当時,神経細胞の感作を反映するものとして,神経障害性疼痛治療薬の研究に用いられていた。 (エ) 術後疼痛試験は,動物の皮膚を切開し,切開 研究のために拡張されたものであり,本件出願当時,神経細胞の感作を反映するものとして,神経障害性疼痛治療薬の研究に用いられていた。 (エ) 術後疼痛試験は,動物の皮膚を切開し,切開による損傷後に生じる痛覚過敏及び接触異痛を検討する試験であり,本件出願当時,神経細胞の感作を反映したものであることが知られていた。 (オ) 本件出願当時,ベネットモデルやチャングモデル等の神経障害により痛みを生じさせる動物モデルは,開発途上であり,広く用いられている ものではなかったため,本件化合物の鎮痛効果を確かめるのに必要であ るとはいえなかった。また,慢性疼痛は神経細胞の感作という共通の機序により生ずるものであるから,ベネットモデルやチャングモデルを実施しなくとも,ホルマリン試験,カラゲニン試験及び術後疼痛試験により慢性疼痛の研究を行うことは可能であった。 (カ) これに対して,被告らは,本件出願当時,ホルマリン試験,カラゲニ ン試験及び術後疼痛試験は,いずれも侵害受容性疼痛の一種である炎症性疼痛及び術後疼痛に対する鎮痛効果を確認するための試験であると理解されていたと主張する。 しかし,前記(イ)ないし(エ)のとおり,上記各試験は,神経細胞の感作による痛覚過敏や接触異痛に対する鎮痛効果を確かめるための試験であ る。侵害受容性疼痛は,侵害受容器への刺激により生じ,侵害刺激に比例する通常の痛みであると理解されており,神経細胞の感作により生じる痛覚過敏や接触異痛等の病的な慢性疼痛を含まないから,上記各試験が侵害受容性疼痛に係る試験であると理解されることはない。 したがって,被告らの上記主張は理由がない。 エ実施可能要件の判断基準及びあてはめ(ア) 記各試験が侵害受容性疼痛に係る試験であると理解されることはない。 したがって,被告らの上記主張は理由がない。 エ実施可能要件の判断基準及びあてはめ(ア) 判断基準物の発明において実施可能要件を充足するためには,明細書において,当業者が,発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づき,過度の試行錯誤を要することなく,その物を生産し,かつ,使用すること ができる程度の記載があれば足りる。そして,医薬用途発明においては,出願時の技術常識に照らし,医薬としての有用性を当業者が理解できるように記載されていればよい。 また,革新的な発明を十分に保護することができるように,本件特許に係る発明のようなパイオニア発明に対しては,実施可能要件やサポー ト要件等の記載要件を厳格に適用すべきでない。 (イ) あてはめa 本件明細書には,ホルマリン試験,カラゲニン試験及び術後疼痛試験の各結果が記載されている。 上記ホルマリン試験の結果によれば,本件化合物である「CI-1008」及び「3-アミノメチル-5-メチル-ヘキサン酸」が,初期相には 効果を奏さず,痛覚過敏や接触異痛の直接の原因である中枢性感作を反映した後期相に効果を奏することが確認できる。また,上記カラゲニン試験の結果によれば,本件化合物である「CI-1008」が,神経細胞の感作により生じた痛覚過敏に対して効果を奏することが確認できる。 さらに,上記術後疼痛試験の結果によれば,本件化合物である「S- (+)-3-イソブチルギャバ」が,切開創の治癒後も持続する神経細胞の感作により生じた痛覚過敏や接触異痛に対して効果を奏することが確認できる。 b 本件明細書では,組織損傷や炎症による通常の痛みに対して -3-イソブチルギャバ」が,切開創の治癒後も持続する神経細胞の感作により生じた痛覚過敏や接触異痛に対して効果を奏することが確認できる。 b 本件明細書では,組織損傷や炎症による通常の痛みに対して効果を奏し,慢性疼痛に効果の不十分なことがある麻薬性鎮痛剤であるモル ヒネを比較例として,本件化合物の効果を確認している。例えば,術後疼痛試験において,本件化合物である「S-(+)-3-イソブチルギャバ」がモルヒネの効かない痛覚過敏や接触異痛に有効であること(7頁37行目以下)や,モルヒネと異なり対側後肢のPWL(PawWithdrawalLatency。足蹠回避潜時。)に 影響を与えないこと(8頁7行目以下)が示されている。 また,本件明細書では,慢性疼痛である神経障害性疼痛に有効なギャバペンチンという物質を比較例として,これと同じ作用により,より優れた効果を有することも確認している。 したがって,本件化合物が,麻薬性鎮痛剤やNSAIDが有効であ る組織損傷や炎症による侵害刺激で生じる通常の痛みに対してではな く,神経細胞の感作による痛覚過敏や接触異痛に対して直接効果を奏することは明らかであるし,当業者は,麻薬性鎮痛剤と同じオピオイド作用(オピオイド特異的受容体と結合する作用)やNSAIDと同じ抗炎症作用を有すると理解することもない。 c さらに,本件明細書では,本件出願当時,いまだ一般的に用いられ ていなかったチャングモデルやベネットモデルが存在することについても紹介しており(6頁33行目以下),当業者は,これらの動物モデルにより,容易に追試することが可能であった。 d したがって,本件明細書では,本件出願当時の技術常識に照らして,本件化合物が慢性疼痛に有用であることを当業者が理解できるように, れらの動物モデルにより,容易に追試することが可能であった。 d したがって,本件明細書では,本件出願当時の技術常識に照らして,本件化合物が慢性疼痛に有用であることを当業者が理解できるように, 可能な限りの記載がされているといえる。 オ小括以上によれば,本件発明1及び2について実施可能要件に違反するとは認められない。 (2) 争点1-2(サポート要件違反の成否)について (被告らの主張)前記(1)(被告らの主張)のとおり,本件化合物が「炎症性疼痛」及び「術後疼痛」以外の本件明細書記載の各痛みの処置における鎮痛効果を有することは,本件明細書に記載されておらず,また,本件出願当時の技術常識を参酌しても,当業者は,本件化合物が「炎症性疼痛」及び「術後疼痛」以外の 本件明細書記載の各痛みに対して鎮痛効果を有することを認識できないから,本件明細書の発明の詳細な説明に接した当業者が,本件発明1及び2により上記課題を解決できると認識できるとはいえない。 したがって,本件発明1及び2は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえないから,サポート要件(法36条6項1号)に 違反する。 (原告の主張)発明がサポート要件を充足するといえるためには,明細書に接した当業者が技術常識を踏まえて課題を解決できるであろうとの合理的期待が得られれば足り,明細書に基づき追試や分析をすることによって更なる技術の発展に資することができれば足りる。 前記(1)(原告の主張)のとおり,本件明細書の記載によれば,当業者は,本件発明1及び2の化合物が慢性疼痛に効果を奏することを十分に理解できるから,サポート要件に違反するとは認められない。 前記(1)(原告の主張)のとおり,本件明細書の記載によれば,当業者は,本件発明1及び2の化合物が慢性疼痛に効果を奏することを十分に理解できるから,サポート要件に違反するとは認められない。 (3) 争点1-3(本件訂正が訂正要件を満たすか)について(原告の主張) ア請求項1に係る本件訂正請求項1に係る本件訂正は,「痛みの処置における鎮痛剤」との記載を「痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置における鎮痛剤」と訂正するものであり,鎮痛剤の処置対象となる痛みを更に限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするもの(法134条の2第1項ただし書1号) に該当する。 そして,上記のとおり,請求項1に係る本件訂正は,「痛みの処置における鎮痛剤」との発明特定事項を,概念的により下位の「痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置における鎮痛剤」にするものであるから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない(法134条の2 第9項,126条6項)。 また,前記(1)(原告の主張)のとおり,本件出願当時,痛覚過敏及び接触異痛が,その原因にかかわらず,共通して,末梢や中枢の神経細胞の感作によって引き起こされる神経の機能異常により生じること,ホルマリン試験,カラゲニン試験及び術後疼痛試験が,神経細胞の感作という神経の 機能異常により生じる痛覚過敏及び接触異痛に対する薬剤の効果を確認す る試験であることは,いずれも技術常識であった。本件明細書には,上記の各試験により,上記の各痛みの処置に本件化合物を用いた効果を確認したことが記載されているから,請求項1に係る本件訂正は,本件明細書に記載した事項の範囲内においてされたものである(法134条の2第9項, により,上記の各痛みの処置に本件化合物を用いた効果を確認したことが記載されているから,請求項1に係る本件訂正は,本件明細書に記載した事項の範囲内においてされたものである(法134条の2第9項,126条5項)。 したがって,請求項1に係る本件訂正は,訂正要件を満たす。 イ請求項2に係る本件訂正請求項2に係る本件訂正は,「神経障害又は線維筋痛症による,痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置における」との記載により,鎮痛剤の処置対象となる痛みを更に限定するとともに,請求項間の引用関係を解消して独 立形式請求項へ改めるものであるから,特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするもの(法134条の2第1項ただし書1号,4号)に該当する。 そして,前記アのとおり,請求項2に係る本件訂正のうち,「痛覚過敏 又は接触異痛の痛みの処置における」との記載により鎮痛剤の処置対象となる痛みを特定する部分は,実質的な内容の変更を伴うものではない。 「神経障害又は線維筋痛症による」との記載により鎮痛剤の処置対象となる痛みを特定する部分については,神経障害性疼痛や線維筋痛症の主症状として痛覚過敏及び接触異痛の痛みが生じることは当業者の技術常識であ って,そのため,神経障害性疼痛は痛覚過敏や接触異痛の直接の原因となる神経の機能異常による疼痛と,線維筋痛症は痛覚過敏を伴う疼痛と,それぞれ定義されており,本件明細書には,本件化合物を神経障害性疼痛や線維筋痛症を含む慢性疼痛に用いるとの記載があるので,本件化合物を「神経障害又は線維筋痛症による,痛覚過敏又は接触異痛の痛み」の処置 に用いることは自明である。したがって,請求項2に 性疼痛や線維筋痛症を含む慢性疼痛に用いるとの記載があるので,本件化合物を「神経障害又は線維筋痛症による,痛覚過敏又は接触異痛の痛み」の処置 に用いることは自明である。したがって,請求項2に係る本件訂正は,鎮 痛剤の処置対象となる痛みを,概念的により下位の「神経障害又は線維筋痛症による,痛覚過敏又は接触異痛の痛み」にするとともに,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであるから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当しない(法134条の2第9項,126条6項)。 また,請求項2に係る本件訂正のうち,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする部分については,何ら実質的な内容の変更を伴うものではない。したがって,請求項2に係る本件訂正は,本件明細書に記載した事項の範囲内においてされたものである(法134条の2第9項,126条5項)。 以上によれば,請求項2に係る本件訂正は,訂正要件を満たす。 (被告らの主張)ア請求項1に係る本件訂正本件訂正前の請求項1は,本件訂正前の請求項2と一群の請求項を構成し,請求項2に係る本件訂正は,当該請求項についての訂正が認められる ときは請求項1とは別の訂正単位として扱われることを求めるものであるところ,後記イのとおり,請求項2に係る本件訂正が認められない以上,請求項1と請求項2が別の訂正単位として扱われないことになるから,請求項1に係る本件訂正も一体的に認められない。 イ請求項2に係る本件訂正 請求項2に係る本件訂正は,本件化合物が効果を有する痛みを「神経障害又は線維筋痛症による,痛覚過敏又は 1に係る本件訂正も一体的に認められない。 イ請求項2に係る本件訂正 請求項2に係る本件訂正は,本件化合物が効果を有する痛みを「神経障害又は線維筋痛症による,痛覚過敏又は接触異痛の痛み」と特定するものであるが,本件明細書に明示的に記載された事項であるとも,本件明細書の記載から自明な事項であるとも認めることができない痛みに個別化するものであり,上記訂正は,本件明細書の全ての記載を総合しても導き出す ことができない技術的事項を含むものであるから,本件明細書に記載され た事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものである。 したがって,請求項2に係る本件訂正は,訂正要件(法134条の2第9項,126条5項)に違反する。 (4) 争点1-4(本件訂正により無効理由が解消されるか)について(原告の主張) ア本件訂正発明1(ア) 実施可能要件本件明細書では,本件化合物が,侵害刺激による通常の痛みとは異なる痛覚過敏に対する「抗痛覚過敏作用」(2頁4行目)を有することや,神経障害性疼痛や線維筋痛症を含む慢性疼痛に有効であることが記載さ れ,ホルマリン試験,カラゲニン試験及び術後疼痛試験という原因の異なる三つの試験により,本件化合物が侵害刺激の後も持続する痛覚過敏や接触異痛の痛みに対して効果を奏することが確かめられている。 また,本件出願当時,神経障害性疼痛や線維筋痛症の主症状である痛覚過敏や接触異痛は,その原因にかかわらず(炎症や手術を原因とする 場合も含めて)末梢や中枢の神経細胞の感作によって生じることが周知であった。 さらに,本件出願当時,当業者は,疼痛の原因にかかわらず,痛覚過敏や接触異痛を発現する動物モデ する 場合も含めて)末梢や中枢の神経細胞の感作によって生じることが周知であった。 さらに,本件出願当時,当業者は,疼痛の原因にかかわらず,痛覚過敏や接触異痛を発現する動物モデル試験で効果を確認できれば,その動物モデルとは別の原因により生じた痛覚過敏や接触異痛に対しても,同 様に効果を奏すると理解していた。 そのため,当業者は,本件明細書に記載されたベネットモデルやチャングモデルにより,炎症や手術とは異なる原因により生じた痛覚過敏や接触異痛の痛みに本件化合物が有用であると十分に理解するし,本件化合物をこれらのモデルに投与し,神経障害性疼痛や線維筋痛症に共通す る神経細胞の感作に対して作用することを確かめることもできる。 そして,本件訂正発明1では,処置対象となる痛みが,慢性疼痛のうち「痛覚過敏又は接触異痛の痛み」に明確に限定されている。これは,ホルマリン試験の後期相に反映された中枢性感作で生じる痛みであり,上記のとおり,本件明細書記載のカラゲニン試験及び術後疼痛試験において,本件化合物の効果が明示的に確かめられた痛みである。 したがって,本件明細書の記載を見た当業者は,本件化合物が原因にかかわらず「痛覚過敏」や「接触異痛」に対して効果を奏すると理解するから,本件訂正発明1は実施可能要件を満たす。 (イ) サポート要件前記(ア)のとおり,当業者は,本件化合物が痛覚過敏や接触異痛の痛み に効果を奏するとの合理的期待を有するから,本件訂正発明1はサポート要件を満たす。 イ本件訂正発明2(ア) 実施可能要件前記ア(ア)のとおり,本件明細書の記載を見た当業者は,本件化合物が 原因にかかわらず痛覚過敏や接触異痛に対して効果を奏 を満たす。 イ本件訂正発明2(ア) 実施可能要件前記ア(ア)のとおり,本件明細書の記載を見た当業者は,本件化合物が 原因にかかわらず痛覚過敏や接触異痛に対して効果を奏すると理解する。 そして,本件訂正発明2では,処置対象となる痛みが「神経障害又は線維筋痛症による,」痛覚過敏又は接触異痛の痛みと更に限定されている。本件出願当時,神経障害性疼痛は,神経系の一次的な損傷,あるいはその機能異常が原因となって生じた疼痛と定義されており,炎症や組 織損傷だけでなく神経損傷によっても,神経細胞の感作という神経の機能異常を生じ,痛覚過敏や接触異痛を生じることが知られていた。また,線維筋痛症は,痛覚過敏を伴う慢性疼痛症候群と定義されており,中枢性感作により痛覚過敏や接触異痛を生じることが知られていた。本件明細書では,このように神経障害又は線維筋痛症の痛みであると理解され ていた神経細胞の感作による痛覚過敏や接触異痛に対する本件化合物の 効果が確かめられている。 したがって,本件明細書を見た当業者は,本件化合物が少なくとも神経障害性疼痛や線維筋痛症の痛覚過敏や接触異痛の痛みに対して効果を奏すると理解するから,本件訂正発明2は実施可能要件を満たす。 (イ) サポート要件 前記(ア)のとおり,当業者は,本件化合物が神経障害又は線維筋痛症による痛覚過敏又は接触異痛の痛みに効果を奏するとの合理的期待を有するから,本件訂正発明2はサポート要件を満たす。 (被告らの主張)ア本件訂正発明1 本件訂正発明は,処置対象となる痛みの症状を「痛覚過敏又は接触異痛」に限定しているものの,痛みの種類に関しては,特に限定がない。そして,前記(1)(被告ら ア本件訂正発明1 本件訂正発明は,処置対象となる痛みの症状を「痛覚過敏又は接触異痛」に限定しているものの,痛みの種類に関しては,特に限定がない。そして,前記(1)(被告らの主張)のとおり,当業者は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された三つの薬理試験(ホルマリン試験,カラゲニン試験及び術後疼痛試験)の結果に接しても,本件化合物が「炎症性疼痛」及び「術 後疼痛」以外の本件明細書に記載された各痛みの処置における鎮痛効果を有することを認識することはできない。 したがって,神経障害性疼痛及び線維筋痛症を処置対象に含む本件訂正発明1は,実施可能要件及びサポート要件に違反する。 イ本件訂正発明2 本件訂正発明2は,本件訂正発明1と同様に,処置対象となる痛みの症状を「痛覚過敏又は接触異痛」とし,これに「神経障害又は線維筋痛症による」との限定を更に付したのみである。そして,前記(1)(被告らの主張)のとおり,当業者は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載された三つの薬理試験(ホルマリン試験,カラゲニン試験及び術後疼痛試験)の結果に 接しても,本件化合物が「炎症性疼痛」及び「術後疼痛」以外の本件明細 書に記載された各痛みの処置における鎮痛効果を有することを認識することはできない。 したがって,本件訂正発明2は,実施可能要件及びサポート要件に違反する。 (5) 争点1-5(延長登録された本件発明1及び2に係る本件特許権の効力が 被告医薬品の製造等に及ぶか)について(原告の主張)ア延長登録後の特許権の効力は,当該延長登録の理由となった処分の対象物についての特許発明の実施に及ぶほか(法68条の2),その実質同一物にも及ぶ。そして,実質 いて(原告の主張)ア延長登録後の特許権の効力は,当該延長登録の理由となった処分の対象物についての特許発明の実施に及ぶほか(法68条の2),その実質同一物にも及ぶ。そして,実質同一性は,製造販売承認の審査事項である「成 分,分量,用法,用量,効能及び効果」に基づき判断され,剤形は考慮要素とならないところ,特許発明の内容に基づき,その内容との関連で,技術的特徴及び作用効果の同一性を比較検討して判断すべきであり,両者の差異が技術的特徴や作用効果に関わるものでなければ,実質同一性が肯定されるというべきである。 イ別紙延長登録目録記載の各延長登録に係る処分の対象物は,リリカカプセル25mg,75mg及び150mg(以下「処分対象物」という。)であるところ,処分対象物の有効成分はプレガバリンであり,被告医薬品の有効成分もプレガバリンであって,同一である。 処分対象物と被告医薬品とでは添加物が異なるが,本件発明1及び2は, いずれも有効成分である特定の化合物を鎮痛剤という新規の用途に用いることを見いだしたものであり,添加物の特定はされておらず,上記添加物の差異は,カプセルをOD錠に変更したことに伴い,周知慣用技術に基づき添加物を置換したにとどまるから,実質同一性を阻害するものではない。 ウ処分対象物の分量は25mg,75mg及び150mgであり,被告医 薬品は25mg,50mg,75mg及び150mgであるから,分量を 50mgとする被告医薬品を除き,同一である。 そして,後記エのとおり,処分対象物及び被告医薬品は,一錠に含有される有効成分の分量にかかわらず,同一の用法及び用量で用いることとされていることからすると,分量を50mgとする被告医薬品も含めて, そして,後記エのとおり,処分対象物及び被告医薬品は,一錠に含有される有効成分の分量にかかわらず,同一の用法及び用量で用いることとされていることからすると,分量を50mgとする被告医薬品も含めて,処分対象物と被告医薬品は実質同一である。 エ処分対象物の用法及び用量は,神経障害性疼痛に関し,1日150mgを1日2回に分けて経口投与し,その後,1週間以上かけて,1日用量として300mgまで漸増し,年齢及び症状により適宜増減するが,1日の最高用量は600mgを超えないこととし,いずれも1日2回に分けて経口投与するというものであり,線維筋痛症に伴う疼痛に関し,1日150 mgを1日2回に分けて経口投与し,その後,1週間以上かけて,1日用量として300mgまで漸増した後,300ないし450mgで維持し,年齢及び症状により適宜増減するが,1日の最高用量は450mgを超えないこととし,いずれも1日2回に分けて経口投与するというものである。 そして,被告医薬品の用法及び用量も,これと同一である。 オ処分対象物の効能及び効果は神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛であり,被告医薬品の効能及び効果も神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛であるから,同一である。 カ以上のとおり,処分対象物と被告医薬品は,有効成分,分量の大部分,用法,用量,効能及び効果において全く同一であり,特許の技術的特徴及 び作用効果とは無関係の添加物及び分量の一部が異なるのみであるから,両者は実質同一である。 したがって,被告医薬品には,本件発明1及び2について,延長登録により存続期間が延長された本件特許権の効力が及ぶ。 (被告らの主張) ア本件特許は,平成9年7月16日に出願され,現時点において 薬品には,本件発明1及び2について,延長登録により存続期間が延長された本件特許権の効力が及ぶ。 (被告らの主張) ア本件特許は,平成9年7月16日に出願され,現時点において既に20 年以上経過している。 したがって,存続期間が延長された本件特許権に基づき被告医薬品に対して権利行使するためには,被告医薬品が本件発明1及び2の技術的範囲に属するだけでなく,成分,分量,用法,用量,効能及び効果からして,被告医薬品が処分対象物及びその用途と実質同一でなければならない。ま た,原告は,延長登録された本件発明1及び2に係る本件特許権の効力が被告医薬品の製造等に及ぶと主張しているから,処分対象物そのものが本件発明1及び2の技術的範囲に含まれることが必要である。 イ本件特許権の専用実施権者であるファイザー株式会社は,プレガバリンを有効成分とする医薬品として,リリカカプセル及びリリカOD錠を,そ れぞれ25mg,75mg及び150mgの規格で販売しているところ,処分対象物は,いずれもリリカカプセルに係るものであり,リリカOD錠に係るものはない。 そして,処分対象物と被告医薬品の成分を比較すると,有効成分であるプレガバリンを除き全く異なっている。薬機法14条1項の承認申請にお ける審査のポイントは医薬品の有効成分,効能及び効果に限られるものではなく,有効成分以外の成分も医薬品の品質,有効性及び安全性を左右する重要なポイントであることは,技術常識である。また,OD錠は,口腔内で崩壊して有効成分が放出されることを特徴としており,水なしでも安全に服用できることや,そのことが有効成分の吸収性,有効性,保存安定 性等に影響を与えないことという品質特性が要求されるのに対し,カプセ 有効成分が放出されることを特徴としており,水なしでも安全に服用できることや,そのことが有効成分の吸収性,有効性,保存安定 性等に影響を与えないことという品質特性が要求されるのに対し,カプセルは,口腔内で崩壊することなく,その形状を維持した状態で摂取され,体内で胃液等により分解されることで有効成分が放出されるという品質特性が要求される。このように,OD錠とカプセルとでは,要求される品質特性が全く異なり,それに伴い有効成分以外の成分の選択や製剤設計も全 く異なる。 したがって,被告医薬品は,処分対象物と実質同一であるとはいえない。 ウ前記(1)(被告らの主張)のとおり,当業者は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載の三つの薬理試験(ホルマリン試験,カラゲニン試験及び術後疼痛試験)の結果に接しても,本件化合物が本件明細書に記載された痛みのうち「炎症性疼痛」及び「術後疼痛」以外の痛みに対して鎮痛効果を 有することを認識することはできない。したがって,仮に本件発明1及び2に係る本件特許が有効であるとしても,権利として認められる用途は,本件明細書からその有用性が認識される「炎症性疼痛」及び「術後疼痛」に限られることになる。 しかし,処分対象物について特定された用途は,「帯状疱疹後神経痛」, 「末梢性神経障害性疼痛(帯状疱疹後神経痛を除く)」,「線維筋痛症に伴う疼痛」及び「神経障害性疼痛,線維筋痛症に伴う疼痛(末梢性神経障害性疼痛,線維筋痛症に伴う疼痛を除く)」であるから,本件発明1及び2の技術的範囲に含まれない。 エ以上のとおり,被告医薬品は処分対象物と実質同一であるとはいえず, また,処分対象物は本件発明1及び2の技術的範囲に含まれないから,延長登録された本件発明1及 的範囲に含まれない。 エ以上のとおり,被告医薬品は処分対象物と実質同一であるとはいえず, また,処分対象物は本件発明1及び2の技術的範囲に含まれないから,延長登録された本件発明1及び2に係る本件特許権の効力は,被告医薬品の製造等には及ばない。 2 本件発明3及び4について(1) 争点2-1(文言侵害の成否)について (原告の主張)ア被告医薬品の構成要件3Bの充足性(ア) 神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛が「炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛み」に該当することa 本件発明3の処置対象となる痛みは,「炎症を原因とする痛み,又 は手術を原因とする痛み」である。そして,「炎症を原因とする痛み」 とは本件明細書のカラゲニン試験の痛みであり,「手術を原因とする痛み」とは本件明細書の術後疼痛試験の痛みであって,これらの試験では,炎症や手術から神経細胞の感作を生じ,痛覚過敏や接触異痛を生じるまでの機序は限定されていない。 本件明細書では,炎症性疼痛や術後疼痛について,神経障害性疼痛 や線維筋痛症と並び,麻薬性鎮痛剤やNSAIDでは効果が不十分なことがある慢性疼痛として記載されており(3頁44行目以下),カラゲニン試験や術後疼痛試験が,このような慢性疼痛に対して効果を奏するかを検証するための試験として位置付けられている。 前記1(1)(原告の主張)アのとおり,本件出願当時,慢性疼痛は, 原因にかかわらず,神経細胞の感作という神経の機能異常により生じることが知られており,神経細胞の感作を抑制することで,原因にかかわらず痛みを治療することができるとも知られていた。また,同イのとおり,本件出願当時,炎症により神経の という神経の機能異常により生じることが知られており,神経細胞の感作を抑制することで,原因にかかわらず痛みを治療することができるとも知られていた。また,同イのとおり,本件出願当時,炎症により神経の病変や疾患を生じたり,手術で末梢神経や神経終末を損傷し,これにより炎症を生じたりする ことなどから,痛みを原因で区別することができず,炎症性疼痛や術後疼痛と神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛とは,相互に重複すると理解されていた。そのため,同ウのとおり,本件出願当時,当業者は,痛みの症状に着目して動物モデル試験を用いており,カラゲニン試験や術後疼痛試験は,神経細胞の感作により痛覚過敏や接触異痛 を生じさせる動物モデル試験として,神経障害性疼痛治療薬の探索や感作のメカニズムの研究に利用されていた。 したがって,本件明細書のカラゲニン試験や術後疼痛試験により,神経細胞の感作により生じる神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛等の慢性疼痛に共通する痛覚過敏や接触異痛に対する効果が確認され たことは明らかであり,本件発明3の技術的範囲には,神経の病変や 疾患,損傷が関与するか否かにかかわらず,炎症や手術によって生じる痛覚過敏や接触異痛の全てが含まれる。 b 被告医薬品は,変形性関節症,リウマチ性関節炎,癌性疼痛,帯状疱疹後神経痛,アレルギー性肉芽腫性血管炎,結合組織病(血管炎),結節性多発動脈炎,多発性単神経炎,神経叢炎,炎症性脱髄性多発性 神経障害,有痛性糖尿病性神経障害,尿毒症性ニューロパチー,椎間板ヘルニア,反射性交感神経性ジストロフィー,手根管症候群,自己免疫疾患等において,炎症を原因として生じた神経障害性疼痛の鎮痛を用途とする。また,被告医薬品は,術後遷延性疼痛,開胸術後疼痛症候群,外 ヘルニア,反射性交感神経性ジストロフィー,手根管症候群,自己免疫疾患等において,炎症を原因として生じた神経障害性疼痛の鎮痛を用途とする。また,被告医薬品は,術後遷延性疼痛,開胸術後疼痛症候群,外傷後後遺症,手術後後遺症,乳房切除術後痛,ヘルニア縫 合術後痛,複合性局所疼痛症候群,手根管症候群,橈骨遠位端骨折,デュプイトラン拘縮,CM関節症,股関節置換術等において,手術を原因として生じた神経障害性疼痛の鎮痛を用途とする。 さらに,被告医薬品は,関節炎,胃炎,アレルギー炎症,リウマチ等の炎症性疾患や手術により生じる線維筋痛症に伴う疼痛の鎮痛を用 途とする。例えば,線維筋痛症は腱付着部炎を生じる疾患であるところ,腱付着部炎を生じた線維筋痛症に伴う疼痛は,被告医薬品の保険診療上の適応症である。 そして,前記1(1)(原告の主張)イのとおり,神経障害性疼痛の疾患において,炎症や手術による組織損傷から神経細胞の感作という神 経の機能異常を生じ,痛覚過敏や接触異痛を生じることや,炎症により神経の病変や疾患を生じ,手術により神経を損傷し,これらの神経の病変や疾患,損傷により,神経細胞の感作を生じ,痛覚過敏や接触異痛を生じること,神経の病変や疾患,損傷により,組織や神経の炎症を生じ,炎症により神経細胞の感作を生じ,痛覚過敏や接触異痛を 生じることがある。明確に神経の病変や疾患が見いだされない場合で も,痛覚過敏や接触異痛といった神経細胞の感作によって生じる症状により,神経障害性疼痛と診断され,先発医薬品や被告医薬品が投与される。 したがって,被告医薬品の効能・効果である神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛は,「炎症を原因とする痛み,又は手術を原因と する痛み」に該当 医薬品や被告医薬品が投与される。 したがって,被告医薬品の効能・効果である神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛は,「炎症を原因とする痛み,又は手術を原因と する痛み」に該当する。 (イ) 被告医薬品が「炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛み」の鎮痛を用途とすることa 前記1(1)(原告の主張)イのとおり,炎症や手術で神経細胞の感作を生じることがあり,また,炎症や手術により神経を損傷し,これに より神経の病変や疾患を生じ,神経細胞の感作を生じることもあり,さらに,神経の病変や疾患,損傷により,組織や神経の炎症を生じ,炎症により神経細胞の感作を生じることもある。これらは,全て神経障害性疼痛を生じるから,神経障害性疼痛は,侵害受容性疼痛との混合性疼痛とされている。 また,線維筋痛症は,炎症性疾患や手術により生じる疾患であるので,線維筋痛症に伴う疼痛は,侵害受容性疼痛との混合性疼痛である。 b 痛みは患者の主観的心理状態であるから,混合性疼痛において,侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛とは,同一の患者において生じる一つの痛みであり,両者を区別することはできない。線維筋痛症に伴う疼 痛についても同様である。 本件発明3を実施した先発医薬品は,適応症に用いられることにより,上記のような混合性疼痛を生じた患者の痛みの処置に用いられて効果を奏しており,被告医薬品も,これと同じ効能・効果を有するジェネリック医薬品として,混合性疼痛を生じた患者の痛みの処置に用 いられる。 このように,被告医薬品の用途は,侵害受容性疼痛の処置と神経障害性疼痛又は線維筋痛症に伴う疼痛の処置とを含むものである。 したがっ 処置に用 いられる。 このように,被告医薬品の用途は,侵害受容性疼痛の処置と神経障害性疼痛又は線維筋痛症に伴う疼痛の処置とを含むものである。 したがって,本件発明3の技術的範囲が侵害受容性疼痛に限られるか否かにかかわらず,また,侵害受容性疼痛の定義とは無関係に,神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛の疼痛治療剤である被告医薬 品の鎮痛の対象は,「炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛み」に該当する。 (ウ) 神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛が本件訂正により除外されていないこと原告が本件無効審判事件と本件訴訟事件とで矛盾する主張をした場合 には,禁反言の法理(無効審判における訂正の経緯に基づき,発明の技術的範囲を限定するような他の法理を含む。)が適用される可能性があるものの,原告は,本件訂正の前後を問わず,カラゲニン試験や術後疼痛試験により神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛に対する本件化合物の効果を確認することができることを一貫して主張している。 本件審決予告は,カラゲニン試験や術後疼痛試験により本件化合物の効果が確かめられたこと及び炎症や手術を原因とする痛み以外の部分について本件化合物の効果を確認することができないことを述べているにすぎず,神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛のうち,カラゲニン試験や術後疼痛試験の痛みに含まれる部分についてまで,本件化合物の効 果を確認することができないとは判断していないし,カラゲニン試験や術後疼痛試験における痛みが神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛と重複しないとも判断していない。したがって,本件審決予告の判断に基づき,禁反言の法理が成立する余地はない。 さらに,原 術後疼痛試験における痛みが神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛と重複しないとも判断していない。したがって,本件審決予告の判断に基づき,禁反言の法理が成立する余地はない。 さらに,原告は,請求項4に係る本件訂正により,「神経障害による 痛み」及び「線維筋痛症」(構成要件4B’)の記載を削除したが,前 記(イ)aのとおり,構成要件4B’記載の痛みは相互に重複するものであるから,上記訂正により,神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛が本件発明4の技術的範囲から除外されることはないし,本件発明4について除外されない以上,本件発明3の技術的範囲から除外されることもない。 仮に,本件発明3の技術的範囲が侵害受容性疼痛に限られるとしても,前記(イ)a のとおり,神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛は,侵害受容性疼痛との混合性疼痛であるから,本件訂正の経緯にかかわらず,被告医薬品の鎮痛の対象は,本件発明3の「炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛み」に該当する。 (エ) 小括以上によれば,被告医薬品は,「炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛みの処置における」(構成要件3B)を充足すると認められる。 イ被告医薬品の構成要件4Bの充足性 (ア) 神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛が「炎症性疼痛」又は「術後疼痛」に該当すること本件発明4の処置対象となる痛みは,「炎症性疼痛による痛覚過敏の痛み,又は術後疼痛による痛覚過敏若しくは接触異痛の痛み」である。 そして,前記ア(ア)のとおり,被告医薬品の効能・効果の対象である神 経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛は,上記「炎症性疼痛による痛覚過敏の痛み,又は術後疼痛によ み」である。 そして,前記ア(ア)のとおり,被告医薬品の効能・効果の対象である神 経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛は,上記「炎症性疼痛による痛覚過敏の痛み,又は術後疼痛による痛覚過敏若しくは接触異痛の痛み」に該当する。 (イ) 被告医薬品が「炎症性疼痛による痛覚過敏の痛み,又は術後疼痛による痛覚過敏若しくは接触異痛の痛み」の鎮痛を用途とすること 前記ア(イ)のとおり,本件発明4の技術的範囲が侵害受容性疼痛に限ら れるか否かにかかわらず,神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛の疼痛治療剤である被告医薬品の鎮痛の対象は,「炎症性疼痛による痛覚過敏の痛み,又は術後疼痛による痛覚過敏若しくは接触異痛の痛み」に該当する。 (ウ) 神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛が本件訂正により除外され ていないこと前記ア(ウ)のとおり,本件訂正により本件発明4の技術的範囲から神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛が除外されることはない。 (エ) 小括以上によれば,被告医薬品は,「炎症性疼痛による痛覚過敏の痛み, 又は術後疼痛による痛覚過敏若しくは接触異痛の痛みの処置における」(構成要件4B)を充足すると認められる。 (被告らの主張)ア被告医薬品の構成要件3Bの充足性(ア) 原告は,本件審決予告を受け,本件発明1及び2については,本件明 細書に記載された三つの薬理試験結果から,「炎症性疼痛」及び「術後疼痛」以外の痛みに対しても効果を奏することが確認されたとして,本件発明1及び2の鎮痛剤が「痛覚過敏又は接触異痛の痛み」に対して効果を奏すると主張した。これに対し,本件訂正前発明3及び4について,原告は,上記薬理試験結果からは, 奏することが確認されたとして,本件発明1及び2の鎮痛剤が「痛覚過敏又は接触異痛の痛み」に対して効果を奏すると主張した。これに対し,本件訂正前発明3及び4について,原告は,上記薬理試験結果からは,当業者は「炎症性疼痛」及び「術後 疼痛」以外の本件訂正前の請求項4に記載された各痛みの処置における鎮痛効果を認識することができないとする本件審決予告の判断に従い,本件訂正を行ったものである。このように,原告が本件訂正において本件発明1及び2と本件訂正前発明3及び4とで異なる対応をしたことは明らかである。 したがって,本件発明3及び4は侵害受容性疼痛に限定されず,炎症 や手術による神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛を含むとの原告の主張は,包袋禁反言の法理に照らして許されない。 (イ) これに対して,原告は,① 本件明細書のカラゲニン試験や術後疼痛試験により,神経細胞の感作により生じる神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛等の慢性疼痛に共通する痛覚過敏や接触異痛に対する効果が確 認されたから,本件発明3の技術的範囲は,神経の病変や疾患,損傷が関与するか否かにかかわらず,炎症や手術によって生じる痛覚過敏や接触異痛の全てが含まれる,② 被告医薬品の用途は,侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛又は線維筋痛症に伴う疼痛の混合性疼痛の処置を含むものであるから,本件発明3の技術的範囲が侵害受容性疼痛に限られるか否 かにかかわらず,「炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛み」に該当する,③ 原告はカラゲニン試験や術後疼痛試験により神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛に対する本件化合物の効果を確認することができることを一貫して主張しており,本件無効審判事件と本件訴訟事件とで矛盾する主張をしたことはなく,禁反 後疼痛試験により神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛に対する本件化合物の効果を確認することができることを一貫して主張しており,本件無効審判事件と本件訴訟事件とで矛盾する主張をしたことはなく,禁反言の法理が成立する余地は ないと主張する。 しかし,上記①について,前記1(1)(被告らの主張)ウのとおり,本件出願当時,カラゲニン試験及び術後疼痛試験は侵害受容性疼痛の一種である炎症性疼痛及び術後疼痛の動物モデル試験であると理解されていたから,原告の主張は前提を欠く。 上記②について,例えば,神経障害性疼痛についていえば,被告医薬品は,あくまで神経障害性疼痛の適切な診断を前提として,神経障害性疼痛と診断された痛みに対して処方されるものである。つまり,被告医薬品が処方される患者において,仮に神経障害性疼痛以外に侵害受容性疼痛や心因性疼痛等が併存していたとしても,被告医薬品は,混合性疼 痛に対して処方されるのではなく,あくまで神経障害性疼痛に対して処 方されるものである。 上記③について,原告の本件無効審判事件におけるカラゲニン試験や術後疼痛試験に関する主張は,請求項1及び2に係る本件訂正についての主張であり,請求項3及び4に係る本件訂正についての主張ではない。 したがって,原告の上記各主張はいずれも理由がない。 (ウ) 以上によれば,被告医薬品は,効能・効果を神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛とするものであって,「炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛みの処置における」(構成要件3B)ものとは認められないので,構成要件3Bを充足しない。 イ被告医薬品の構成要件4Bの充足性 原告は,請求項4に係る本件訂正により,鎮 る痛みの処置における」(構成要件3B)ものとは認められないので,構成要件3Bを充足しない。 イ被告医薬品の構成要件4Bの充足性 原告は,請求項4に係る本件訂正により,鎮痛の対象を「炎症性疼痛」及び「術後疼痛」に限定したところ,前記ア(ア)のとおり,原告が本件発明3及び4は侵害受容性疼痛に限定されることはなく炎症や手術による神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛を含むと主張することは,包袋禁反言の法理により許されない。 したがって,被告医薬品は,効能・効果を神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛とするものであって,「炎症性疼痛による痛覚過敏の痛み,又は術後疼痛による痛覚過敏若しくは接触異痛の痛みの処置における」(構成要件4B)ものとは認められないので,構成要件4Bを充足しない。 (2) 争点2-2(均等侵害の成否)について (原告の主張)ア被告医薬品が本件発明3の構成と均等なものであること(ア) 本件発明3は,慢性疼痛に対する画期的処方薬として,抗てんかん作用を有するGABA類縁体を痛みの処置に用いることを見いだしたものである。したがって,本件発明3の本質的部分は,本件化合物を慢性疼 痛の処置に用いる点にあり,対象となる痛みが侵害受容性疼痛に分類さ れるか,神経障害性疼痛や線維筋痛症に分類されるかという点は本質的部分ではない。そして,被告医薬品は,神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛を効能及び効果とし,慢性疼痛の処置に用いる鎮痛剤であるから,均等の第1要件を満たす。 (イ) 本件発明3は,神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛の処置に用い ても,カラゲニン試験や術後疼痛試験において確認された神経細胞の感作による痛みに用いられる の第1要件を満たす。 (イ) 本件発明3は,神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛の処置に用い ても,カラゲニン試験や術後疼痛試験において確認された神経細胞の感作による痛みに用いられることになるから,同様に鎮痛作用を有する。 したがって,被告医薬品は,均等の第2要件を満たす。 (ウ) 本件化合物を神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛の処置に用いることは,先発医薬品によって既に行われており,被告医薬品の製造販売 時において容易想到であったといえる。したがって,被告医薬品は,均等の第3要件を満たす。 (エ) 本件出願当時,本件化合物を痛みの処置に用いることは全く知られておらず,その当時の公知技術から容易に推考できたものとは認められない。したがって,被告医薬品は,均等の第4要件を満たす。 (オ) 前記(1)(原告の主張)ア(ウ)のとおり,請求項3に係る本件訂正につき禁反言の法理は適用されず,被告医薬品が本件発明3の技術的範囲から除外されているとみるべき特段の事情は認められない。したがって,被告医薬品は,均等の第5要件を満たす。 (カ) 以上によれば,仮に本件発明3の「炎症を原因とする痛み,又は手術 を原因とする痛み」が侵害受容性疼痛であると解釈された場合であっても,神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛のうち,炎症や手術を原因として生じる痛みについては,本件発明3の「痛み」と均等なものであると認められる。 したがって,被告らによる被告医薬品の製造等について,本件発明3 に係る本件特許権の均等侵害が成立する。 イ被告医薬品が本件発明4の構成と均等なものであること前記アと同様に,仮に本件発明4の「炎症性疼痛による痛覚過敏の痛み,又は に係る本件特許権の均等侵害が成立する。 イ被告医薬品が本件発明4の構成と均等なものであること前記アと同様に,仮に本件発明4の「炎症性疼痛による痛覚過敏の痛み,又は術後疼痛による痛覚過敏若しくは接触異痛の痛み」が侵害受容性疼痛であると解釈された場合であっても,神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛における痛覚過敏や接触異痛のうち,炎症性疼痛や術後疼痛について は,本件発明4の「痛み」と均等なものであると認められる。 したがって,被告らによる被告医薬品の製造等について,本件発明4に係る本件特許権の均等侵害が成立する。 (被告らの主張)ア被告医薬品が本件発明3の構成と均等なものではないこと (ア) 特許発明の本質的部分は,当該特許発明の特許請求の範囲の記載のうち,従来技術に見られない特有の技術的思想を構成する特徴的部分であると解される。本件化合物は既知の薬物であり,本件発明3は,本件化合物を「炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛みの処置における鎮痛剤」として用いるものである。そうすると,本件発明3におい て,従来技術に見られない特有の技術思想を構成する特徴的部分とは,本件化合物を「炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛みの処置における鎮痛剤」として用いる点にあると解されるから,効能・効果を神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛とする被告医薬品は,均等の第1要件を満たさない。 これに対して,原告は,本件発明3の本質的部分は,本件化合物を慢性疼痛の処置に用いる点にあると主張する。しかし,慢性疼痛の基礎となる病態生理には著しい差異があって,侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛及び心因性疼痛は,病態生理も治療法も異なり,分けて考えることが重 性疼痛の処置に用いる点にあると主張する。しかし,慢性疼痛の基礎となる病態生理には著しい差異があって,侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛及び心因性疼痛は,病態生理も治療法も異なり,分けて考えることが重要であるというのが,本件出願当時の技術的常識である。したがって, 本件発明3における「炎症を原因とする痛み」及び「手術を原因とする 痛み」との記載を根拠に,これを慢性疼痛という上位概念化した範囲にまで拡大して本質的部分とすることはできないから,原告の上記主張は理由がない。 (イ) 本件発明3は,本件訂正前の請求項4に記載された痛みのうち,「炎症性疼痛」及び「術後疼痛」に相当する痛みの処置における鎮痛剤であ るところ,処置の対象となる痛みを被告医薬品の効能・効果である神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛に置き換えると,処置の対象となる痛みが異なるため,本件発明3の目的を達することはできず,また,同一の作用効果を奏するものでもない。 したがって,均等の第2要件を満たさない。 (ウ) 本件明細書に記載された三つの薬理試験は,いずれも神経障害又は線維筋痛症による痛みの処置に係る試験ではないから,当業者は,本件明細書の記載から,本件発明3の鎮痛剤が神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛に効果があると理解できたものではない。 したがって,本件発明3の対象となる痛みを神経障害性疼痛及び線維 筋痛症に伴う疼痛に置き換えるためには,別途薬理試験による検証が必要となり,当業者が容易に想到し得たことであるとはいえないから,均等の第3要件を満たさない。 (エ) 均等の第5要件は,対象製品等が,特許発明の出願手続において,特許請求の範囲から意識的に除外されたなどの特段の事情が存在する とであるとはいえないから,均等の第3要件を満たさない。 (エ) 均等の第5要件は,対象製品等が,特許発明の出願手続において,特許請求の範囲から意識的に除外されたなどの特段の事情が存在するとき は,これを満たさないと解されている。 請求項3に係る本件訂正の経緯によれば,原告は,神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛を本件発明3の特許請求の範囲から意識的に除外したことが明確である。 したがって,均等の第5要件を満たさない。 (オ) 以上のとおり,被告医薬品の製造等について,本件発明3に係る本件 特許権の均等侵害は成立しない。 イ被告医薬品が本件発明4の構成と均等なものではないこと(ア) 本件化合物は既知の薬物であるところ,本件発明4は,本件化合物を「炎症性疼痛による痛覚過敏の痛み,又は術後疼痛による痛覚過敏若しくは接触異痛の痛みの処置における鎮痛剤」として用いるものである。 そうすると,本件発明4において,従来技術に見られない特有の技術思想を構成する特徴的部分とは,本件化合物を「炎症性疼痛による痛覚過敏の痛み,又は術後疼痛による痛覚過敏若しくは接触異痛の痛みの処置における鎮痛剤」として用いる点にあると解される。 したがって,効能・効果を神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛 とする被告医薬品は,均等の第1要件を満たさない。 (イ) 本件発明4は,本件訂正前の請求項4に記載された痛みのうち,「炎症性疼痛」及び「術後疼痛」の痛みの処置における鎮痛剤であるところ,処置の対象となる痛みを被告医薬品の効能・効果である神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛に置き換えると,処置の対象となる痛みが異 なるため,本件発明4の目的を達することはで 剤であるところ,処置の対象となる痛みを被告医薬品の効能・効果である神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛に置き換えると,処置の対象となる痛みが異 なるため,本件発明4の目的を達することはできず,また,同一の作用効果を奏するものでもない。 したがって,均等の第2要件を満たさない。 (ウ) 当業者は,本件明細書の記載から,本件発明4の鎮痛剤が神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛に効果があると理解できたものではない。 したがって,本件発明4の対象となる痛みを神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛に置き換えることは,当業者が容易に想到し得たことであるとはいえないから,均等の第3要件を満たさない。 (エ) 請求項4に係る本件訂正の経緯によれば,原告は,神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛を本件発明4の特許請求の範囲から意識的に除 外したことが明確であるから,均等の第5要件を満たさない。 (オ) 以上のとおり,被告医薬品の製造等について,本件発明4に係る本件特許権の均等侵害は成立しない。 (3) 争点2-3(延長登録された本件発明3及び4に係る本件特許権の効力が被告医薬品の製造等に及ぶか)について(原告の主張) 前記1(5)(原告の主張)のとおり,処分対象物と被告医薬品とは実質同一であり,被告医薬品は,延長後の本件発明3及び4の効力範囲に含まれる。 (被告らの主張)前記1(5)(被告らの主張)のとおり,被告医薬品は,処分対象物と実質同一とは認められない。また,前記(1)(被告らの主張)によれば,処分対象物 について特定された用途(「帯状疱疹後神経痛」,「末梢性神経障害性疼痛(帯状疱疹後神経痛を除く)」,「線維筋 と実質同一とは認められない。また,前記(1)(被告らの主張)によれば,処分対象物 について特定された用途(「帯状疱疹後神経痛」,「末梢性神経障害性疼痛(帯状疱疹後神経痛を除く)」,「線維筋痛症に伴う疼痛」及び「神経障害性疼痛,線維筋痛症に伴う疼痛(末梢性神経障害性疼痛,線維筋痛症に伴う疼痛を除く)」)は,本件発明3及び4の技術的範囲に含まれるとはいえない。 したがって,延長登録された本件発明3及び4に係る本件特許権の効力は,被告医薬品の製造等には及ばない。 第4 当裁判所の判断 1 本件明細書の記載事項等(1) 本件明細書(甲2)の「発明の詳細な説明」には,以下のとおりの記載が ある(下記記載中に引用する図については,別紙図面目録記載のとおり)。 ア発明の背景(2頁3行目以下)本発明は,痛みの治療において鎮痛/抗痛覚過敏作用を発揮する化合物としてのグルタミン酸およびγ-アミノ酪酸(GABA)の類縁体の使用である。これらの化合物の使用の利点には,反復使用により耐性を生じな いことまたはモルヒネとこれらの化合物の間に交叉耐性がないことの発見 が包含される。 本発明の化合物は,てんかん,ハンチントン舞踏病,大脳虚血,パーキンソン病,遅発性ジスキネジアおよび痙性のような中枢神経系疾患に対する抗発作療法に有用な既知の薬物である。また,これらの化合物は抗うつ剤,抗不安剤および抗精神病剤としても使用できることが示唆されている。 WO92/09560(米国特許出願第618,692 号,1990 年11 月27 日出願)およびWO93/23383(米国特許出願第886,080 号,1992 年5 月20 日出願)参照。 イ発明の概要(2頁13行目以下) 18,692 号,1990 年11 月27 日出願)およびWO93/23383(米国特許出願第886,080 号,1992 年5 月20 日出願)参照。 イ発明の概要(2頁13行目以下)本発明は,以下の式Ⅰの化合物の,痛みの処置とくに慢性の疼痛性障害の処置における使用方法である。このような障害にはそれらに限定される ものではないが炎症性疼痛,術後疼痛,転移癌に伴う骨関節炎の痛み,三叉神経痛,急性疱疹性および治療後神経痛,糖尿病性神経障害,カウザルギー,上腕神経叢捻除,後頭部神経痛,反射交感神経ジストロフィー,線維筋痛症,痛風,幻想肢痛,火傷痛ならびに他の形態の神経痛,神経障害および特発性疼痛症候群が包含される。 化合物は式Ⅰ (式中,R1 は炭素原子1〜6個の直鎖状または分枝状アルキル,フェニルまたは炭素原子3〜6個のシクロアルキルであり,R2 は水素またはメチルであり,R3 は水素,メチルまたはカルボキシルである)の化合物またはその医薬的に許容される塩である。 式Ⅰの化合物のジアステレオマーおよびエナンチオマーも本発明に包含される。 本発明の好ましい化合物は式Ⅰにおいて,R3およびR2は水素であり,R1は-(CH2)0-2-iC4H9 の化合物の(R),(S),または(R,S)異性体である。 本発明のさらに好ましい化合物は(S)-3-(アミノメチル)-5- メチルヘキサン酸および3-アミノメチル-5-メチルヘキサン酸である。 ウ発明の詳述(3頁44行目以下)本発明は,上記式Ⅰの化合物の上に掲げた痛みの処置における鎮痛剤としての使用方法である。痛みにはとくに炎症性疼痛,神経障害の痛み, ン酸である。 ウ発明の詳述(3頁44行目以下)本発明は,上記式Ⅰの化合物の上に掲げた痛みの処置における鎮痛剤としての使用方法である。痛みにはとくに炎症性疼痛,神経障害の痛み,癌の痛み,術後疼痛,および原因不明の痛みである特発性疼痛たとえば幻想 肢痛が包含される。神経障害性の痛みは末梢知覚神経の傷害または感染によって起こる。これには以下に限定されるものではないが,末梢神経の外傷,ヘルペスウイルス感染,糖尿病,カウザルギー,神経叢捻除,神経腫,四肢切断,および血管炎からの痛みが包含される。神経障害性の痛みはまた,慢性アルコール症,ヒト免疫不全ウイルス感染,甲状腺機能低下症, 尿毒症またはビタミン欠乏からの神経障害によっても起こる。神経障害性の痛みには,神経傷害によって起こる痛みに限らず,たとえば糖尿病による痛みも包含される。 上に掲げた状態が,現在市場にある鎮痛剤たとえば麻薬性鎮痛剤または非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)では,不十分な効果または副作用からの限 界により不完全な処置しか行われていないことは周知である。 エラットホルマリン足蹠試験におけるギャバペンチン,CI-1008,および3-アミノメチル-5-メチル-ヘキサン酸の効果(5頁47行目以下)雄性Sprague-Dawley ラット(70〜90g)を試験前に少なくとも15 分間パースペックスの観察チャンバー(24cm×24cm×24cm)に馴化させた。ホルマリ ン誘発後肢リッキングおよびバイティングを5%ホルマリン溶液(等張性食塩溶液中5%ホルムアルデヒド)50μl の左後肢の足蹠表面への皮下注射によって開始させた。ホルマリンの注射直後から,注射した後肢のリッキング/バイティングを60 分間5 分毎 マリン溶液(等張性食塩溶液中5%ホルムアルデヒド)50μl の左後肢の足蹠表面への皮下注射によって開始させた。ホルマリンの注射直後から,注射した後肢のリッキング/バイティングを60 分間5 分毎に評価した。結果はリッキング/バイティングを合わせた平均時間として初期相(0〜10 分)および後期相(10〜45 分)について示す。 ギャバペンチン(10〜300mg/kg)またはCI-1008(1〜100mg/kg)のホルマリン投与1時間前の皮下投与は,ホルマリン応答の後期相におけるリッキング/バイティング行動を,それぞれ最小有効用量(MED)30 および10mg/kg で用量依存性にブロックした(図1)。しかしながら,いずれの化合物も試験した用量では初期相には影響しなかった。3-アミノメチル-5-メチル -ヘキサン酸の同様の投与は100mg/kg で後期相の中等度のブロックを生じたのみであった。 オギャバペンチンおよびCI-1008 のカラゲニン誘発痛覚過敏に対する効果(6頁11行目以下)試験日にラット(雄性Sprague-Dawley70〜90g)に2〜3のベースライン測 定を行ったのち,2%カラゲニン100μl を右後肢の足蹠表面に皮下注射した。痛覚過敏のピークの発症後,動物に試験薬物を投与した。機械的および熱的痛覚過敏に対する試験には別個の動物群を使用した。 A.機械的痛覚過敏侵害受容圧閾値を,ラット足蹠加圧試験により鎮痛計(UgoBasile)を用 いて測定した。足蹠への傷害を防止するため,250g のカットオフ点を使用した。カラゲニンの足蹠内注射は注射後3〜5時間の間侵害受容圧閾値を低下させ,痛覚過敏の誘発を示した。モルヒネ(3mg/kg,皮下 測定した。足蹠への傷害を防止するため,250g のカットオフ点を使用した。カラゲニンの足蹠内注射は注射後3〜5時間の間侵害受容圧閾値を低下させ,痛覚過敏の誘発を示した。モルヒネ(3mg/kg,皮下)は痛覚過敏の完全なブロックを生じた(図2)。ギャバペンチン(3〜300mg/kg,皮下)およびCI-1008(1〜100mg/kg,皮下)は用量依存性に痛覚過敏に拮抗し,MED はそれぞれ10 および3mg/kg であった(図2)。 B.熱痛覚過敏ベースライン足蹠回避潜時(PWL)を各ラットについてHargreaves モデルを用いて測定した。上述のようにカラゲニンを注射した。カラゲニン投与2時間後に,動物を熱痛覚過敏について試験した。ギャバペンチン(10〜10 0mg/kg)またはCI-1008(1〜30mg/kg)は,カラゲニン投与後2.5 時間に皮下 に投与し,PWL をカラゲニン投与3および4時間後に再評価した。カラゲニンは注射後2,3および4時間に足蹠回避潜時の有意な低下を誘発し,熱痛覚過敏の誘発を示した(図3)。ギャバペンチンおよびCI-1008 は用量依存性に痛覚過敏に拮抗し,MED は30 および3mg/kg を示した(図3)。 これらのデータはギャバペンチンおよびCI-1008 が炎症性疼痛の処置に 有効であることを示す。 カ(6頁33行目以下)BennettG.J.のアッセイはヒトに認められるのと類似の疼痛感覚の障害を生じるラットにおける末梢性単発神経障害の動物モデルを提供する(Pain,1988; 33: 87-107)。 KimS.H.らのアッセイは,ラットにおける分節脊椎神経の結紮によって生じる末梢神経障害の一つの実験 の動物モデルを提供する(Pain,1988; 33: 87-107)。 KimS.H.らのアッセイは,ラットにおける分節脊椎神経の結紮によって生じる末梢神経障害の一つの実験モデルを提供する(Pain, 1990; 50: 355-363)。 キ(6頁37行目以下)(ア) 術後疼痛のラットモデルも報告されている(Brennan ら,1996)。それに は,後肢足蹠面の皮膚,筋膜および筋肉の切開が包含される。これは数日間続く再現可能かつ定量可能な機械的痛覚過敏の誘発を招く。このモデルはヒトの術後疼痛状態にある種の類似性を示す。 本研究においては,本発明者らは術後疼痛のこのモデルでギャバペンチンおよびS-(+)-3-イソブチルギャバの活性を調べ,モルヒネ の場合と比較した。 (イ) 方法BantinandKingmen(Hull, U.K.)から入手した雄性Sprague-Dawley ラット(250〜300g)をすべての実験に使用した。手術の前に動物は6匹の群として飼育ケージに入れ,12 時間明暗サイクル(07 時00 分に点灯)下に 置いて飼料および水は自由に与えた。動物は手術後,同じ条件下に,空 気を含んだセルロースから構成される”Aqua-sorb”床(BetaMedicalandScientific, Sale, U.K.)上に対で収容した。すべての実験は薬物処置に盲検とした観察者により行われた。 (ウ) 手術動物は2%イソフルオランおよび1.4 O2/NO2 混合物で麻酔し,鼻円錐 により手術中を通じて麻酔下に維持した。右後肢足蹠表面を50%エタノールで準備して踵の端から0.5cm に開始し 動物は2%イソフルオランおよび1.4 O2/NO2 混合物で麻酔し,鼻円錐 により手術中を通じて麻酔下に維持した。右後肢足蹠表面を50%エタノールで準備して踵の端から0.5cm に開始し足指の方向に皮膚および筋膜を通して1-cm 縦に切開した。足蹠の筋肉は鉗子によって持ち上げ縦に切開した。傷口を編んだ絹の縫合糸によりFST-02 の針を用いて2個所で閉じた。傷口の部位はテラマイシンスプレーおよびオーロマイシン末で被覆 した。手術後,すべての動物において感染の徴候は認められず,創傷は2 4 時間後には良好に治癒した。 縫合糸は48 時間後に抜糸した。 (エ) 熱痛覚過敏の評価熱痛覚過敏はラット足蹠試験(UgoBasile, Italy)を用い,Hargreaves らの方法(1988)の改良法に従い評価した。ラットは上方に傾斜したガラステーブル上3個の個々のパースペックスの箱からなる装置に順化させた。テーブルの下に可動性放射熱源を置き,後肢足蹠に焦点を合わせ足蹠回避潜時(PWL)を記録した。組織の傷害を回避するため,自動カットオフ点を22.5 秒に設定した。各動物の両後肢について2〜3回PWL を測定 し,その平均を左右後肢のベースラインとした。装置は約10 秒のPWL が得られるように検量した。PWL(秒)は上述のプロトコールに従い術後2,24,48 および72 時間に再評価した。 (オ) 接触異痛の評価接触異痛はシーメンス・ワインシュタイン・フォン・フライの毛(Stoe ltingIllinois, USA)を用いて測定した。動物は,針金の網の底のケー ジに収容して,足蹠に接触できるようにした。動物は実験の開始前に,この環境に順化 イの毛(Stoe ltingIllinois, USA)を用いて測定した。動物は,針金の網の底のケー ジに収容して,足蹠に接触できるようにした。動物は実験の開始前に,この環境に順化させた。接触異痛試験は動物の後肢の足蹠表面に,順次力を増大させて(0.7,1.2,1.5,2,3.6,5.5,8.5,11.8,15.1,および29g)フライの毛で触れ,後肢の回避が誘発されるまで試験した。フライの毛はそれぞれ6秒間または反応が起こるまで後肢に適用した。回避 反応が確立されたならば,後肢を次に下降するフライの毛で試験を始めて反応が起こらなくなるまで再試験した。したがって,後肢を上げて反応が誘発される最高の力29gがカットオフ点となった。各動物を,この様式で両後肢について試験した。反応が誘発されるのに必要な最低の力量を回避閾値としてグラムで記録した。化合物を手術前に投与する場合 には,接触痛覚過敏,接触異痛および熱痛覚過敏に対する薬物効果の試験に同一の動物を使用し,各動物について熱痛覚過敏試験の1時間後に接触異痛の試験を行った。術後にS-(+)-3-イソブチルギャバを投与する場合には,接触異痛および熱痛覚過敏の検査に別個の群の動物を使用した。 (カ) 統計熱痛覚過敏試験で得られたデータは一元(分散分析)ANOVA に付し,ついでDunnett’st-検定を実施した。フライの毛で得られた接触異痛の結果は個別のMannWhitneyt-検定に付した。 (キ) 結果 ラット足蹠筋肉の切開は熱痛覚過敏および接触異痛を生じた。いずれの侵害受容反応も手術後1時間以内にピークに達し,3日間維持された。 実験期間中,動物はすべて良好な健康状態を維持した。 ( ラット足蹠筋肉の切開は熱痛覚過敏および接触異痛を生じた。いずれの侵害受容反応も手術後1時間以内にピークに達し,3日間維持された。 実験期間中,動物はすべて良好な健康状態を維持した。 (ク) 手術前に投与したギャバペンチン,S-(+)-3-イソブチルギャバおよびモルヒネの熱痛覚過敏に対する効果 手術1時間前におけるギャバペンチンの単回用量投与(3〜30mg/kg,皮 下)は,用量依存性に熱痛覚過敏の発生を遮断し,MED は30mg/kg であった(図4b)。最大用量のギャバペンチン30mg/kg は痛覚過敏の反応を24時間防止した(図4b)。S-(+)-3-イソブチルギャバを同様に投与した場合も用量依存性(3〜30mg/kg,皮下)に熱痛覚過敏の発生が遮断され,MED は30mg/kg であった(図4c)。30mg/kg 用量のS-(+)-3 -イソブチルギャバは3日まで有効であった(図4c)。手術0.5 時間前のモルヒネの投与は,用量依存性(1〜6mg/kg,皮下)は熱痛覚過敏の発生に拮抗し,MED は1mg/kg であった(図4a)。この作用は24 時間維持された(図4a)。 (ケ) 手術前に投与したギャバペンチン,S-(+)-3-イソブチルギャ バおよびモルヒネの接触異痛に対する効果接触異痛の発生に対する薬物の効果は上述の熱痛覚過敏に用いたのと同じ動物で測定した。熱痛覚過敏試験と接触異痛試験の間には1時間の間隔を置いた。ギャバペンチンは,用量依存性に接触異痛の発生を防止し,MED は10mg/kg であった。ギャバペンチン10 および30mg/kg の用量 はそれぞれ25 および49 時間有効であった(図5b)。S-(+)-3-イソブチルギャバも同様に用 し,MED は10mg/kg であった。ギャバペンチン10 および30mg/kg の用量 はそれぞれ25 および49 時間有効であった(図5b)。S-(+)-3-イソブチルギャバも同様に用量依存性(3〜30mg/kg)に接触異痛の発生を遮断し,MED は10mg/kg であった(図5c)。この侵害受容応答の遮断は30mg/kg 用量のS-(+)-3-イソブチルギャバにより3日間維持された(図5c)。これに反して,モルヒネ(1〜6mg/kg)は,6mg/kg の最大用量で 術後3時間,接触異痛の発生を防止したのみであった(図5a)。 (コ) 手術1時間後に投与したS-(+)-3-イソブチルギャバの接触異痛および熱痛覚過敏に対する効果接触異痛および熱痛覚過敏はすべての動物で1 時間以内にピークに達し,以後5〜6時間維持された。30mg/kg のS-(+)-3-イソブチル ギャバの手術1時間後における皮下投与は接触異痛および熱痛覚過敏の 維持を3〜4時間ブロックした。この時間後に,侵害受容の両応答はいずれも対照レベルに復し,これは抗熱痛覚過敏および抗接触異痛作用の消失を示す(図6)。 ギャバペンチンおよびS-(+)-3-イソブチルギャバは,すべての実験で試験された最大用量まで,対側後肢の熱痛覚過敏試験または接 触異痛評点におけるPWL に影響しなかった。これに反して,モルヒネ(6mg/kg,皮下)は熱痛覚過敏試験おける対側後肢のPWL を増大させた(データは示していない)。 ここに掲げた結果はラット足蹠筋肉の切開は少なくとも3時間続く熱痛覚過敏および接触異痛を誘発することを示している。本試験の主要な 所見は,ギャバペンチンおよびS-(+)-3-イソブチルギ ここに掲げた結果はラット足蹠筋肉の切開は少なくとも3時間続く熱痛覚過敏および接触異痛を誘発することを示している。本試験の主要な 所見は,ギャバペンチンおよびS-(+)-3-イソブチルギャバがいずれの侵害受容反応の遮断に対しても等しく有効なことである。これに反し,モルヒネは接触異痛よりも熱痛覚過敏に有効であることが見出された。さらに,S-(+)-3-イソブチルギャバは接触異痛および熱痛覚過敏の誘発および維持を完全に遮断した。 (2) 前記(1)の記載事項によれば,本件明細書には,本件発明1ないし4に関し,以下とおりの開示があると認められる。 ア痛みには,特に炎症性疼痛,神経障害の痛み,癌の痛み,術後疼痛及び原因不明の痛みである特発性疼痛(例えば,幻想肢痛)が包含され,それらのうち,神経障害性の痛みは,末梢知覚神経の傷害又は感染によって起 こり,これには以下に限定されるものではないが,末梢神経の外傷,ヘルペスウイルス感染,糖尿病,カウザルギー,神経叢捻除,神経腫,四肢切断,血管炎からの痛みがあり,また,神経障害性の痛みは,慢性アルコール症,ヒト免疫不全ウイルス感染,甲状腺機能低下症,尿毒症又はビタミン欠乏からの神経障害によっても起こるが,さらに,神経傷害によって起 こる痛みに限らず,例えば,糖尿病による痛みも包含されるところ,これ らの状態に対しては,現在市場にある鎮痛剤(例えば,麻薬性鎮痛剤又はNSAID)では,不十分な効果又は副作用からの限界により,不完全な処置しか行われていないことは周知である(前記(1)ウ)。 イ 「本発明」の化合物は,てんかん,ハンチントン舞踏病,大脳虚血,パーキンソン病,遅発性ジスキネジア及び痙性のような中枢神経系疾患に対 する抗発作療法に有用な である(前記(1)ウ)。 イ 「本発明」の化合物は,てんかん,ハンチントン舞踏病,大脳虚血,パーキンソン病,遅発性ジスキネジア及び痙性のような中枢神経系疾患に対 する抗発作療法に有用な既知の薬物であり,抗うつ剤,抗不安剤及び抗精神病剤としても使用できることが示唆されているところ,「本発明」は,以下の式Ⅰの化合物を,痛みの処置,特に慢性の疼痛性障害の処置における使用するものであり,このような障害には,それらに限定されるものではないが,炎症性疼痛,術後疼痛,転移癌に伴う骨関節炎の痛み,三叉神 経痛,急性疱疹性および治療後神経痛,糖尿病性神経障害,カウザルギー,上腕神経叢捻除,後頭部神経痛,反射交感神経ジストロフィー,線維筋痛症,痛風,幻想肢痛,火傷痛,他の形態の神経痛,神経障害及び特発性疼痛症候群が包含される(前記(1)ア,イ)。 (式Ⅰ) (式中,R1 は炭素原子1~6個の直鎖状または分枝状アルキル,フェニル または炭素原子3~6個のシクロアルキルであり,R2 は水素またはメチルであり,R3 は水素,メチルまたはカルボキシルである) 2 本件発明1及び2について(1) 争点1-1(実施可能要件違反の成否)についてア実施可能要件違反の判断基準について いわゆる医薬用途発明においては,一般に,当業者にとって,物質名, 化学構造等が示されることのみによっては,当該用途の有用性及びそのための当該医薬の有効量を予測することは困難であり,当該発明に係る医薬を当該用途に使用することができないから,そのような発明において実施可能要件を満たすためには,明細書の発明の詳細な説明に,薬理データの記載又はこれと同視し得る程度の記載をすることなどにより,当該用 を当該用途に使用することができないから,そのような発明において実施可能要件を満たすためには,明細書の発明の詳細な説明に,薬理データの記載又はこれと同視し得る程度の記載をすることなどにより,当該用途の 有用性及びそのための当該医薬の有効量を裏付ける記載を要するものと解するのが相当である。 本件発明1及び2の特許請求の範囲においては,本件化合物が「痛みの処置における」(構成要件1B)「鎮痛剤」(構成要件1C)及び「鎮痛剤」(構成要件2C)として作用することが記載されているところ,いず れも本件化合物の鎮痛効果が認められる痛みは特定されていない。しかし,本件明細書には,本件化合物について,「痛みの処置とくに慢性の疼痛性障害の処置における使用方法である。このような障害にはそれらに限定されるものではないが炎症性疼痛,術後疼痛,転移癌に伴う骨関節炎の痛み,三叉神経痛,急性疱疹性および治療後神経痛,糖尿病性神経障害,カウザ ルギー,上腕神経叢捻除,後頭部神経痛,反射交感神経ジストロフィー,線維筋痛症,痛風,幻想肢痛,火傷痛ならびに他の形態の神経痛,神経障害および特発性疼痛症候群が包含される。」(前記1(1)イ)と記載されていることに照らすと,本件発明1及び2は,本件化合物が少なくとも上記各痛みに対して鎮痛効果を有することを内容とするものと解される。 したがって,本件発明1及び2について実施可能要件を満たすというためには,本件明細書の発明の詳細な説明に,薬理データの記載又はこれと同視し得る程度の記載をすることなどにより,上記各痛みに対して鎮痛効果があること及びそのための当該医薬の有効量を裏付ける記載が必要であるというべきである。 イ痛みの分類及び機序について (ア) などにより,上記各痛みに対して鎮痛効果があること及びそのための当該医薬の有効量を裏付ける記載が必要であるというべきである。 イ痛みの分類及び機序について (ア) 痛みの分類及び機序について,証拠(甲15の1,甲26,39,41,42,46,55,59,77ないし84,86,88)によれば,本件出願当時,以下の文献が存在したことが認められる。 a 内野治人編著,「病態生理よりみた内科学改訂3版」,金芳堂(平成8年)(甲79) 「このような病的な痛みは,しばしば慢性疼痛となる。これらの慢性疼痛は極めて多彩な特徴を持ち,その基礎となる病態生理に著しい差異があることを示す。これらを大別すると,侵害受容性(nociceptive),神経障害性(neuropathic),心因性(psycogenic)の3 つの異なった疼痛機序が考えられる(図6-27)。 侵害受容性疼痛は,侵害受容神経路に進行しつつある侵害刺激による痛みであり,その程度はその神経経路における活動の程度に比例すると考えられる。…一般的な例として,癌の痛みや関節炎の痛みなどがある。鎮痛薬としてのモルヒネは有効である。 神経障害性(神経因性)疼痛は,3 つの亜型に分けられる。中枢性ニ ューロンの活動に一次的に関連するもの,交感神経系の遠心性機能に依存するもの(いわゆる交感神経依存性疼痛sympathetic-maintainedpain),および末梢性機能に関連したものである。」(652頁)「第3 の機序による疼痛は心因性のもので,特発性疼痛ともよばれる。 この痛みは,器質性病変を伴うものと伴わないものとがある。この種 の痛みを特徴付けるのは困難で,診断に 52頁)「第3 の機序による疼痛は心因性のもので,特発性疼痛ともよばれる。 この痛みは,器質性病変を伴うものと伴わないものとがある。この種 の痛みを特徴付けるのは困難で,診断には器質的要因と心理的要因とがどの程度疼痛経験に寄与しているかを識別する必要があり,問題はしばしば複雑となる。」(653頁)b 坪川孝志ら編,「最新脳神経外科学」,朝倉書店(平成8年)(甲80) 「b.病的痛みの発症機序 病的な痛みを発症機序よりみると,炎症や組織損傷による痛覚レセプターを異常に刺激することにより,痛覚求心系を激しく興奮させる侵害受容性疼痛(nociceptivepain),神経痛などに認められる痛覚求心系,とくに末梢神経での圧迫や絞扼によって発生する神経性疼痛(neurogenicpain)がある。さらにそのほかに痛覚求心系が末梢神経 で遮断された後に発生する末梢神経除神経性疼痛(peripheraldeafferentationpain)と痛覚求心系が中枢神経内で遮断される中枢神経除神経性疼痛(centraldeafferentationpain)に分類される。 (1) 侵害受容性疼痛組織損傷による機械的な侵害レセプターへの過剰刺激や炎症による 内因性発痛物質や発痛増強物質がレセプターを刺激することにより発生する痛みが侵害受容性疼痛である。この侵害レセプターの過剰な興奮が,痛覚求心系を興奮させて,情動反応を伴う痛みとなる。したがって,刺激となる組織障害に対処し,抗炎症療法を施行し,それらが効果をみる前には,モルフィンなどの鎮痛薬で対処することが可能であ る。 (2) 神経性疼痛神 がって,刺激となる組織障害に対処し,抗炎症療法を施行し,それらが効果をみる前には,モルフィンなどの鎮痛薬で対処することが可能であ る。 (2) 神経性疼痛神経性疼痛は,末梢神経に対する圧迫や絞扼によって発生するもので,脱髄や虚血のために異常知覚が発生したり,細系線維と太系線維との間でエファプス伝達(ephatictransmission)が発生したり,細 径線維に過剰興奮を惹起させたりして,脊髄後角へ有害刺激の信号を大量に送り込み,脊髄視床路を介して,激しい痛みとして認識されるわけである。 その代表的な疾患は特発性三叉神経痛(ticdouloureux),椎間板ヘルニアによる疼痛などがあげられる。三叉神経や脊髄後根が中枢神 経系へ入る部分では,髄鞘がミエリン鞘から,グリア細胞性の鞘に移 行する部分にあたり,この部分での絞扼や圧迫は簡単に脱髄に陥り,線維間の短絡伝達(ephaticconduction)を誘発し,触刺激などの非侵害性刺激によっても,Aδ・C 線維が興奮し,中枢神経内での生理的痛覚系を異常興奮させて,激しい痛みとして感じられることになる。 (3) 除神経性疼痛 末梢神経から大脳皮質知覚野までの新脊髄視床路-視床皮質路が病変や障害によって遮断されると,その遮断された神経経路に一致する末梢部での痛覚障害が発生する。遮断発生後一定の期間を経ると,その痛覚障害部を中心に激しい痛みが発生する。それを除神経性疼痛といい,その遮断部が末梢神経にあるとき,末梢性除神経性疼痛といい, 中枢神経内で遮断されている場合,中枢性除神経性疼痛という。…除神経性疼痛では生理的痛覚求心路が遮断されたのち,数か月,年余の経過を経て,痛 が末梢神経にあるとき,末梢性除神経性疼痛といい, 中枢神経内で遮断されている場合,中枢性除神経性疼痛という。…除神経性疼痛では生理的痛覚求心路が遮断されたのち,数か月,年余の経過を経て,痛覚障害が発生している部位を中心に激しい自発痛を訴え,非侵害性刺激である軽い触刺激を加えるとその自発痛が誘発され,激化するもので,モルフィン系薬物にはまったく反応しない特徴があ る。この疼痛の発生機序に関して,視床痛を中心に,① 障害された視床後腹外・内側核の細胞,線維の2 次的な病変に求める説,② 主痛覚路が障害されることで,側副性の痛覚路が興奮するとする説,③ 大脳皮質からの抑制系が障害されるとする説に大別されるが(表5.26),今日なお実証されていない点が多い。」(199~200頁) 「a)末梢性除神経性疼痛末梢神経傷害後の変性・再生の過程で,…脊髄後角内の第1 層,第4・5 層での後角ニューロンが激しい過興奮に陥り,この第5 層の過興奮は除神経性疼痛の発生源となっている。…この過興奮が痛覚抑制系の入力を凌駕し,加えて脊髄視床路を過剰に活動させ,大脳知覚領に 投射されて頑痛として認知されることになる。」(201頁) 「b)中枢性除神経性疼痛…障害部位を含め,脊髄視床路-視床皮質路で障害部位より上位のシナプスで,激しい過興奮状態にあるニューロンを認める。…最近,過興奮の認められる痛覚求心路では,興奮性アミノ酸を伝達物質とするNMDA レセプターが著しく増加し(図5.46),その拮抗薬であるMK- 801 の投与で,過興奮を60%以上,容量依存性に抑制できることが判明した。…これらの事実より,痛覚求心路が障害されるとその障害部で,変性,グリアの増生, 5.46),その拮抗薬であるMK- 801 の投与で,過興奮を60%以上,容量依存性に抑制できることが判明した。…これらの事実より,痛覚求心路が障害されるとその障害部で,変性,グリアの増生,ついで障害神経細胞よりの発芽,シナプスの形成,NMDA レセプターを有する新しいシナプスの増加など,maladaptiveneuroplastisity が発現し,そのために,障害部位での過放電とそれ より上位の痛覚求心系を異常興奮させて除神経性疼痛を発生せしめるものと考えられる。」(201~202頁)「まとめ感覚としての痛みは,自由終末のレセプターにより,Aδ・C 繊維を経て,後角第1 層,第4・5 層の新脊髄視床路ニューロンにシナプス結合し,対側の脊髄前側索を上行し,視床路腹側核に終わり, 次に視床-皮質路にシナプス結合して,大脳知覚領に終わる痛覚求心系を中心に認知される。…病的痛みは,過剰刺激性疼痛(excesspain)…と,もう1 つは除神経性疼痛(deafferentationpain)として,痛覚求心路が障害遮断され,…障害部より上位での痛覚求心系を異常に興奮させて痛みを発生するものとがある。生理的な感覚としての痛覚 系が,病的疼痛の発生にどのように関与して,病的疼痛を発生させるかを知らなくては,病的疼痛のみを除去する治療計画を立てることは困難であるといえよう。」(202~203頁)c 後藤稠ら編,「最新医学大辞典第2版」,医歯薬出版(平成9年)(甲78) 「カウザルギー causalgia《灼熱痛,疼痛性熱感;burningpain,th ermalgia》主として外傷性の末梢神経の損傷後にみられる,自律神経症状を伴った灼熱性の疼痛を訴える疾 カウザルギー causalgia《灼熱痛,疼痛性熱感;burningpain,th ermalgia》主として外傷性の末梢神経の損傷後にみられる,自律神経症状を伴った灼熱性の疼痛を訴える疾患である。損傷を受けた神経の支配領域を中心に焼けつくような痛みと同部の血管拡張または血管収縮を示し,発汗過多や減少を呈することもある。また同部の皮膚は痛覚過敏や鈍麻などの知覚異常もみられる。原因としては,損傷部位に おいて遠心性の交感神経線維と求心性の知覚線維の間に“artifitialSynaps”が形成され,血管運動神経と知覚神経が正のフィードバックをもつためと考えられている。治療は交感神経節切除または交感神経節のブロックが有効である。」(231頁)「三叉神経痛 trigeminalneuralgia《顔面痛,疼痛〔性〕チック, フォザーギル神経痛;prosopalgia,Fticdouloureux,Fothergill* neuralgia》JohnF.(1712-1780,医師,英)。顔面に激痛を起こす神経痛。特発性(真性)のものと症候性のものがある。特発性三叉神経痛は,神経痛の代表であり,発作的な激痛が数~数十秒続き,緩解時は無症状である。痛みの性質は電気が走るような激痛である。」(64 5頁)「術後疼痛 postoperativepain 切開創の痛み,あるいは内臓痛や術中体位の影響による関節・筋・腰痛などが総合されてその原因となる。 術後1~2 日まで特に痛みが激しいが,抜糸まで続くものである。術後疼痛は,創部の乏血により治癒を遅らせ,痛みによる呼吸の抑制で肺 合併症をきたしやすい。治療は,一般に麻薬性鎮痛薬,ペンタゾシンやブプレノルフィンなど非麻薬性鎮痛薬,解熱性 くものである。術後疼痛は,創部の乏血により治癒を遅らせ,痛みによる呼吸の抑制で肺 合併症をきたしやすい。治療は,一般に麻薬性鎮痛薬,ペンタゾシンやブプレノルフィンなど非麻薬性鎮痛薬,解熱性鎮痛薬が投与される。 トランキライザーの併用も有効である。硬膜外ブロックや硬膜外モルヒネ投与は極めて有効な疼痛処置である。」(766頁)「心因性疼痛 psychogenicpain 精密検査を行っても,原因となる ような器質的病変ないし病態生理的機序が見出されないにもかかわら ず訴えられる疼痛,またある程度関連する器質的病変が存在する場合でも,その身体的所見から期待されるものを上回る強さで訴えられる疼痛などで,背景に心理的要因が関与していると考えられるものをいう。」(825頁)「ヘルペス後神経痛 postherpeticneuralgia 帯状疱疹を起こす水 痘・帯状疱疹ウイルスが脊髄後根神経節やそれに対応する神経節を侵し,疱疹が治癒した後も数ヵ月また何年にもわたって起こる疼痛。好発部位は三叉神経第1 枝の領域で,そのほか肋間神経にも起こる。疼痛は痒いような,刺すような,焼けつくようななどと表現される。比較的年齢の高い人に多く,種々の治療も奏効しないことが多い。」(1 569頁)d 矢田賢三ら編,「標準脳神経外科学第7版」,医学書院(平成8年)(甲82)「カウザルギー(causalgia,灼熱痛):正中神経,坐骨神経の中枢側,腕神経叢の下神経幹が不完全損傷を受けたときに起こる。疼痛は,障 害神経支配領域の灼熱感を伴う発作性のもので,交感神経節後線維と,感覚神経線維の電気的短絡が原因と考えられている。疼痛は,受傷後数週以内に始まる。精神的興奮や,驚愕で きに起こる。疼痛は,障 害神経支配領域の灼熱感を伴う発作性のもので,交感神経節後線維と,感覚神経線維の電気的短絡が原因と考えられている。疼痛は,受傷後数週以内に始まる。精神的興奮や,驚愕で誘発され,睡眠中は軽減する。ふつう,数か月で自然緩解する。」(351頁)e 柏崎禎夫編,「運動器の痛み-診かた・治しかた-」,医薬ジャー ナル社(平成7年)(甲83)「IV.幻肢痛これは一般には特別な疼痛として扱われるが,運動器の心因性疼痛に入れられるもので,心因性という面から見れば最も純粋なものである。診断は切断されて目に見えない四肢が痛むので,特別な診断法を 要しない。 人は,吐き気,痛みはその人の訴えによってあることを確認する。 幻肢は感覚的に存在する(絵まで描ける)が,見ることもさわることもできない。 ここに感覚の中で,ある,ない,の混乱が生じ,疼痛のもととなるばかりでなく,治療が困難になると考えている。この治療は幻肢を消 す努力は無駄のように思われ,幻肢をはっきりして,それから治療に入るのがよいようであり,筆者らは幻肢を自由に動かせるようにする方法(自動訓練法)を考案したが他にも色々な方法があるので文献を挙げておく。ただまだ完成されたものはない。」(136頁)f 水野美邦編,「神経内科QuickReference 第2版」,文光堂(平成 7年)(甲84)「4.三叉神経痛…従来多くの三叉神経痛の原因は不明といわれてきたが,近年動脈硬化により蛇行した脳底動脈やその枝が三叉神経根を圧迫しているためという説が有力となってきた。治療はcarbamazepine(テグレトー ル),dip の原因は不明といわれてきたが,近年動脈硬化により蛇行した脳底動脈やその枝が三叉神経根を圧迫しているためという説が有力となってきた。治療はcarbamazepine(テグレトー ル),diphenylhydantoin(アレビアチン),三環系抗うつ薬などの内服薬が有効であり,それでも効果が得られない場合には三叉神経ブロックや三叉神経から硬化した動脈を遊離させる手術が行われる。」(198頁)「5.帯状疱疹後神経痛 post-herpeticneuralgia 帯状疱疹は後根神経節や脳神経節に潜在的に存在している帯状疱疹ウイルスが活動的になることが原因である。…治療として,三環系抗うつ薬やcarbamazepine などの薬物療法がまず行われ,薬物療法が無効な場合には経皮的電気刺激や神経ブロックが施行される。」(198頁) 「6.神経根痛 radicularpain 神経根や脊髄内で後角が障害された際にみられるもので,…椎間板ヘルニア,変形性脊椎症に対する治療は,まず鎮痛薬投与,安静,牽引などを行い,無効な場合に外科的治療を考える。」(198~199頁)「7.視床痛 thalamicpain 視床が障害された後,しばらくたってから対側の半身に起こる不快な痛みをいう。視床の梗塞や出血などの血管障害の後に起こることが多いが,腫瘍や術後に起こることもある。痛みは視床の障害直後ではなく,通常,数週から数ヵ月後から起こり始め,その後年余にわたって続く。痛みの内容は,ナイフで切られるような,刺されるような, 焼けつくような,締めつけられるような,はぎとられるような,などに表現され,個人差が大きく,同時に不快なしびれ の後年余にわたって続く。痛みの内容は,ナイフで切られるような,刺されるような, 焼けつくような,締めつけられるような,はぎとられるような,などに表現され,個人差が大きく,同時に不快なしびれ感を伴う。自発的な痛みはあることもないこともあるが,特徴的なことは障害部位に対する外部からの刺激で誘発されることで,時には爆発的な情動反応を伴う。刺激の強さと痛みの程度とは一定の関係がなく,軽く触るとい った軽い刺激でも強い痛みが誘発される。 視床痛の発現機序としては視床内の神経線維や細胞の閾値が低下し,わずかな刺激で発火するためと考えられている。治療は三環系抗うつ薬やphenothiazine が有効であるが,完全には治りにくい。モルフィンは無効である。 なお,視床以外の中枢神経の病変でも痛みが起こることがあり,中枢性疼痛centralpain と呼ばれる。脊髄から脳幹,大脳白質,大脳皮質のどの部位の病変でも起こるが,視床痛に比べるとまれである。」(199頁)「8.カウザルジア causalgia 末梢神経の外傷後にみられる痛みをいう。… カウザルジアは交感神経ブロックで症状がおさまることから,その発現機序に交感神経が関与していることが考えられており,反射性交感神経性ジストロフィー reflexsympatheticdystrophy とも呼ばれる。末梢神経の不完全な切断端において,感覚線維と交感神経とがシナプスを形成するためという説が有力である。治療は交感神経ブロッ クを行う。cordotomy やthalamotomy は通常無効である。」(199頁)「9.心因性疼痛 psychogenicpain 力である。治療は交感神経ブロッ クを行う。cordotomy やthalamotomy は通常無効である。」(199頁)「9.心因性疼痛 psychogenicpain中枢神経系に器質的病変がなく,直接末梢からの侵害刺激がないにもかかわらず存在する痛みで,通常慢性疼痛の形をとるものをいう。 痛む部位は通常限局性であるが解剖学的な神経支配領域に一致せず, 精神的な影響を受けやすい。痛みのほかに心因性と思われる筋力低下,痛覚過敏,自律神経症状を伴うことがある。…心因性疼痛の多くは転換ヒステリーであり,その他は心気症,うつ病,分裂病,性格異常の部分症状と考えられている。治療は精神安定薬,抗うつ薬の投与や精神療法が行われるが,一般になかなか治りにくい。」(199~20 0頁)「10.治療上述の各項目毎に治療についても簡単に触れたが,以下疼痛の対症療法についてまとめる。 A.末梢において痛みを減らすもの a.プロスタグランジンなどの化学物質の抑制アスピリン,インドメサシン,ステロイド剤,その他の非ステロイド性抗炎症薬b.侵害受容器を活性化する伝達物質に拮抗するものセロトニン拮抗薬:ergotamine,methysergide β アドレナリン遮断薬,抗ヒスタミン薬 B.侵害刺激の伝達を末梢にて抑制するものa.神経ブロック(プロカイン,アルコール,フェノール),b. 経皮的電気刺激,c.針治療,d.抗てんかん薬,e.神経切断C.エンドルフィン受容器を直接刺激するもの .神経ブロック(プロカイン,アルコール,フェノール),b. 経皮的電気刺激,c.針治療,d.抗てんかん薬,e.神経切断C.エンドルフィン受容器を直接刺激するもの モルフィン,meperidineD.中枢における痛覚路の遮断cordotomy,commissural,myelotomy,thalamotomyE.その他精神安定薬,抗うつ薬,下垂体破壊,frontallobotomy,cingulo tomy」(200頁)g 高久史麿監修,「図説病態内科講座第18巻症状・症候-1」,メジカルビュー社(平成8年)(甲88)「心因性の線維筋痛症によって筋肉痛が起こる機序(図5)線維筋痛症は,痛覚中枢の機能的異常により痛みが増幅されて感じ られる疾患である。性格,不安,ストレス,不眠などが症状の誘発や増幅に関与していると考えられている。」(246頁)h Pain,vol.44,p.293-299(1991)(甲39)「中枢性感作はヒトにおける損傷後疼痛過敏状態の原因となる可能性があるので,これらのデータは,予防的な鎮痛のため,そして,確立 した疼痛状態を治療するため,の双方におけるNMDAアンタゴニストの潜在的な役割に関して意義がある。」(293頁)「末梢組織の損傷に続いて生じる痛覚過敏は,損傷付近の一次求心性侵害受容器の感受性の増大(末梢性感作)[1,2,23],および,脊髄におけるニューロンの興奮性の増大(中枢性感作)の結果生じる[35, 38]。中枢性感作は侵害受容の求心性入力によって引き起こされ[30, 梢性感作)[1,2,23],および,脊髄におけるニューロンの興奮性の増大(中枢性感作)の結果生じる[35, 38]。中枢性感作は侵害受容の求心性入力によって引き起こされ[30, 41],閾値の長期的減少,範囲の拡大,後角ニューロンの皮膚受容野の応答性の増大[3,6,14,25,40]となって現れる。」(293頁)「より長時間の促通は,筋肉神経の刺激によってあるいは化学性の刺激物であるマスタードオイルの皮膚塗布によって生み出すことができる[30,41]。マスタードオイルは,ヒトの皮膚に塗布されたときに強 烈な灼熱感を生み出し,最大で24 時間続く,ラットにおける機械的及び熱痛覚過敏を生み出す[37]。…この皮膚への塗布の後,後角ニューロンの受容野特性における変化[39]と屈曲反射の促通[41]が発生し,1 時間より長く持続する。この化学性刺激物は,化学敏感性繊維における短期間の求心性放火(barrage)の持続した中枢性効果の研究 に有用なモデルを提供する。」(294頁)i Brain,vol.117,p.579-591(1994)(甲41)「ブラシ誘発性の痛み(機械的接触異痛,動的機械的痛覚過敏)は,神経障害性および炎症性の疼痛状態の顕著な特徴である。ここで,我々は,機械的痛覚過敏のこの構成要素を誘導し維持する神経機構を調 べた。これらの実験の本質的な結果は,ブラシ誘発性の痛みの重症度は,慢性の苦痛な神経障害を患う患者および急性の実験的な化学物質誘発性の痛みを伴う正常な個体における,背景となる痛みの強度と相関関係をもつということである。 9人の健常者における実験で,5分間のマスタードオイルの局所塗 布は,強い灼熱痛と軽い機械的刺激に対する痛覚 体における,背景となる痛みの強度と相関関係をもつということである。 9人の健常者における実験で,5分間のマスタードオイルの局所塗 布は,強い灼熱痛と軽い機械的刺激に対する痛覚過敏を引き起こした。」(579頁)「ブラシ誘発性の痛みは,中枢性感作の結果として最もうまく説明される一方,一次求心性神経の異常な興奮性が神経障害性疼痛の状態に関与していることも明らかである。」(580頁) j Pain,vol.56,p.51-57(1994)(甲42) 「NメチルDアスパラギン酸(NMDA)受容体の過剰活性は,神経障害性疼痛の発生における要因の1つである可能性がある。」(51頁)「動物の神経障害性疼痛モデルにおいて示唆されるように(YamamotoとYaksh,1992 年),痛覚過敏はNMDA 受容体によって介在される「ワ インドアップ現象」の提示である可能性がある。これに関して神経障害性疼痛症候群における痛覚過敏はホルマリン誘発性の痛みの第二相(Haley 等,1990 年)と局所貧血の間の痛覚過敏(Sher とMitchell,19 90 年)に類似する。これらはすべて,NMDA受容体介在性の中枢性促通による脊髄レベルでのワインドアップ現象によって生じると思わ れる。」(56頁)k Pain,vol.63,p.163-172(1995)(甲59)「カプサイシンの皮膚内注入(Simoneetal.1989;LaMotteetal.1991)は,かかるモデルを提供する。一時的な感覚症状は,点状刺激に対する強度の灼熱痛,接触異痛及び痛覚過敏を含んでおり,これは炎症 または神経損傷によって生ずる臨床的症状に共 etal.1991)は,かかるモデルを提供する。一時的な感覚症状は,点状刺激に対する強度の灼熱痛,接触異痛及び痛覚過敏を含んでおり,これは炎症 または神経損傷によって生ずる臨床的症状に共通して見られる。」(164頁)「カプサイシン後の薬の注入実験による発見は,中枢性感作によって部分的に媒介される臨床症状のための治療を発達させるためのツールとして皮下カプサイシンモデルを用いることを裏付ける。コントロー ルされた治験からのデータは,ケタミン(Byas-Smithetal.1993;Backonjaetal.1994;Eideetal.1994)及びオピオイド(Portenoyetal.1990;Rowbothametal.1991;Chernyetal.1994;しかしまたArnerandMeyerson 1980 にも見られる。)が,神経障害性疼痛の患者における痛み及び痛覚過敏を緩和しており,これは我々の結果と一致する。」 (168頁) l Pain,vol.64,p.493-501(1996)(甲15の1)「要約本研究で我々は,切開痛のラットモデルを開発した。ハロタン麻酔ラットの皮膚,筋膜,および足蹠の足底側面の筋肉を1-cm 縦に切開した。手術前及び手術に続く6日間,創傷周辺のさまざまな領域でフォン・フライの毛を使用して,回避反応を測定した。動物の体重負 荷行動に基づく累積疼痛スコアも利用した。 回避反応試験及び体重負荷に基づくスコアの結果は,ラット足の外科的切開が,術後数日間続く信頼性のある定量可能な機械的痛覚過敏を引き起こすことを示唆している。」(493頁)「術後疼痛は,急性痛の一般的な形態である づくスコアの結果は,ラット足の外科的切開が,術後数日間続く信頼性のある定量可能な機械的痛覚過敏を引き起こすことを示唆している。」(493頁)「術後疼痛は,急性痛の一般的な形態である。」(493頁) 「本研究において,切開からおよそ10mm離れた位置の調査は,逃避反射の閾値減少を示した(図4)。切開から10mmの一次求心性の感作は起こらないだろうことから,この離隔した敏感さが示唆するのは,外科的切開が我々の動物において二次痛覚過敏を生ずるだろうということである。人間における切開後の二次痛覚過敏は,女性に行 われた腹部子宮全摘出術における筋肉内モルヒネの術前鎮痛作用を評価したRichmondetal.(1993)による研究で示されている。フライのフィラメントを用いて,著者らは,傷の上10cmの位置での疼痛閾値の減少を検出し,これが中枢性感作による二次痛覚過敏であったことを示した。」(500頁) m ScandJRheumatol,vol.24,p.360-365(1995)(甲26)「疼痛の強度,筋力,静的筋持久力,圧痛閾値,および圧痛点と対照点での疼痛耐性を,線維筋痛症(FM)を有する患者31例において,モルヒネ(9例),リドカイン(11例),およびケタミン(11例)の静脈内投与の前後で評価した。…これらの結果は,NMDA 受容体が線 維筋痛症の疼痛機構に関与するという仮説を支持する。これらの知見 から,FM に中枢性感作があること,および圧痛点が二次痛覚過敏を示すことも示唆される。」(360頁)「線維筋痛症は,慢性的な全身性筋肉痛,数カ所における圧痛覚過敏(圧痛点),筋硬直,睡眠障害および疲労からなる(1)。米国リウマチ学 次痛覚過敏を示すことも示唆される。」(360頁)「線維筋痛症は,慢性的な全身性筋肉痛,数カ所における圧痛覚過敏(圧痛点),筋硬直,睡眠障害および疲労からなる(1)。米国リウマチ学会(ACR)が提案した線維筋痛症(FM)の分類基準では,FM は,痛 覚過敏を伴う慢性疼痛症候群と定義されている(2)。」(360頁)「Torebjörk 等(11,12)は,マイクロ神経記録法(microneurography)の技術を用いて,実験的に誘導した皮膚の熱に対する一次痛覚過敏が,一次侵害受容ニューロンの感作によるものであることを示した。彼らはまた,動的接触に対する二次痛覚過敏が,脊髄の後角にある侵害受 容ニューロンの興奮性の増加を反映する中枢性感作によるものであることを示した。」(364頁)n StevenD.Waldman ら編,「InterventionalPainManagement」,W.B.SaundersCompany(1996)(甲86)「異常な痛みのメカニズム:アロディニア 正常な状態下では,A線維を活性化する入力のような低閾値機械的入力は,侵害事象として伝達されない。神経損傷後のような特定の状態下では,臨床的にカウザルギーや反射交感神経ジストロフィーと呼ばれる事象が,極めて痛い,鋭く撃つ痛みとして伝達され得る(アロディニア)。この低閾値求心性情報の翻訳ミスのメカニズ ムは理解されていないが,以下のような特定の現象が考慮されるべきである。」(24頁)「神経損傷」(31頁)「末梢神経の病変に続いて,痛覚過敏や接触異痛,そして自発痛の状態が発生する。前述のとおり,損傷した神経で生ずるこのような継続 ある。」(24頁)「神経損傷」(31頁)「末梢神経の病変に続いて,痛覚過敏や接触異痛,そして自発痛の状態が発生する。前述のとおり,損傷した神経で生ずるこのような継続 的な繰り返しの活動は,定常的な疼痛状態だけでなく,後角の感作を も生じさせうる。」(31頁)о BrainResearch,vol.518,p.218-226(1990)(甲46)「後角深層の多種感覚受容(収束)の侵害受容ニューロンである後肢末梢受容野へのホルマリンの皮下注射は,この細胞の持続的活性化(1時間)のため使用された。この化学的侵害刺激は,発火の最初のピー クを生み出し,これは10 分間持続して,その後に長く続く活性の第2ピークが発生しこれは50 分間観測された。」(218頁)「それゆえ,ホルマリンによって生成される求心性集中砲火(barrage)比較的に短いタイムスパンでNMDA 介在性の中枢性活性を誘発し,この誘発された活性が長期間の痛みの状態における侵害受容とその調節の 変化の一つの基礎となっている可能性があると思われる。」(218頁)「急性あるいは短期間に続く状態と比較して,持続したあるいは慢性的な痛みに関連する多くの問題の一つは,長く持続する痛みのある種の形態を緩和する難しさにあり,これは特に,神経損傷に関連する形 態についてである[4]。一般的には,これらの問題は傷害による他の結果に加えて,末梢および中枢神経の過敏によって生じ得る。動物についての様々な研究は,末梢の侵害受容繊維の感作が発生し得ること(参照6を見よ)を明らかに示し,さらに最近では,マイナー入力に対する後角の侵害受容的システムの反応を顕著に促進する,急速に誘 発さ ての様々な研究は,末梢の侵害受容繊維の感作が発生し得ること(参照6を見よ)を明らかに示し,さらに最近では,マイナー入力に対する後角の侵害受容的システムの反応を顕著に促進する,急速に誘 発された中枢性過敏についての証拠が蓄積している[9,24,33,34,37]。」(218頁)p Pain,vol.61,p.221-228(1995)(甲55)「要旨神経損傷性疼痛へのケタミンの連続皮下(s.c.)投与の効果を,帯状疱疹後神経痛を有する患者で検討した。」(221頁) 「接触異痛は,0.05mg/kg/hを1週間注入後に59~10 0%の最大の軽減を示し,wind-up様疼痛は,0.15mg/kg/hを1週間注入後に60~100%の最大の軽減を示した。」(221頁)「本研究では,ケタミン輸注が終わった後の疼痛の重症度は,処置の開始時に記録されたレベルに戻った。この観察は,ケタミンが帯状疱 疹後に侵害受容ニューロンの過剰興奮性の長く続く低減をもたらさないことを示している。NMDA受容体の遮断が,中枢性感作が起こった後に確立された侵害受容ニューロンの過剰興奮性を逆転させることができることを示唆する実験データが提示されている(Woolf およびThompson 1991)。」(226頁) q DavidBorsook ら編,「TheMassachusettsGeneralHospitalHandbookofPainManagement」,Little,BrownandCompany(1996)(甲81)「痛みのタイプ(定義)侵害受容性-侵害受容器の活性化によって発生する痛み。侵害受容器は,中枢神経 ittle,BrownandCompany(1996)(甲81)「痛みのタイプ(定義)侵害受容性-侵害受容器の活性化によって発生する痛み。侵害受容器は,中枢神経系を除くすべての組織に存在する。痛みは,皮 膚や内臓の求心性神経線維の化学的,熱的又は機械的な活性化の程度と臨床的に比例し,急性又は慢性である(体性痛,癌性疼痛,術後疼痛)。 神経障害性-末梢又は中枢の痛みの経路に対する損傷に起因する痛み。進行中の疾病がなくても痛みが持続する(例えば,糖尿病 性神経障害)。」(32,34頁)「心因性-神経系の解剖学的分布と一致しない痛み。しばしば,十分な検索を行っても,痛みを説明する器質的障害を認めない。」(34頁)「神経障害性疼痛は,数多くの病因,提案されている病態生理,そし て臨床症状を伴う,最も治療困難で複雑な疼痛症候群の1つである。 それは,形態の変化を伴うことなく日常生活に支障を生じる可能性があり,患者と医師の双方に我慢と忍耐を要求する。神経障害性疼痛とは,疼痛伝達系の一部に対する,末梢又は中枢,あるいはこの両者の神経損傷により生じる症状である。」(219頁)「腕神経叢引き抜き損傷では,強度の灼熱感,重圧感あるいは発作性 の刺すような痛みが,単独又は混在して存在する。引き抜きの場合,大部分の患者に疼痛がある。高齢者ほど疼痛は強い。また,多くの患者は,通常麻痺した弱い腕となる。疼痛は,損傷レベルでの後角における,求心路遮断された細胞の異常かつ自発性の発火のためと考えられている。」(233頁) r HaroldMerskey ら編,「CLASSIFICATIONOFCHRONICPAIN 遮断された細胞の異常かつ自発性の発火のためと考えられている。」(233頁) r HaroldMerskey ら編,「CLASSIFICATIONOFCHRONICPAIN」(SecondEdition),IASPPRESS(1994)(甲77)「痛覚過敏通常は痛い刺激に対する増大した応答痛覚過敏は,閾値を超えた刺激への増加した応答を反映する。普通は痛くない刺激によって誘発された痛みは,異痛という用語が好まし いが,痛覚過敏は,普通の閾値での増加した応答の場合や,神経障害の患者などの増加した閾値での増加した応答の場合に適切に用いられる。」(211頁)「現在の証拠は,痛覚過敏が末梢又は中枢の感作あるいはその両方を伴う侵害受容系の混乱の結果であることを示している。しかし,重要 なのは,この定義を強調する臨床的な現象と,知識の進歩により更に変化するかもしれない解釈とを区別することである。」(211頁)「神経障害性疼痛神経系の一次的な損傷,あるいはその機能異常が原因となって生じた疼痛」(212頁)(イ) 前記(ア)aないしgの文献の記載によれば,痛みは,その機序により大 きく分けると,①炎症や組織損傷による侵害レセプターへの刺激により 生じる侵害受容性疼痛,②末梢神経又は中枢神経が圧迫されたり,絞扼されたり,遮断されたりすることにより生じる神経障害性疼痛,③直接末梢からの侵害刺激がないにもかかわらず存在し,心因性のもので,特発性疼痛とも呼ばれる心因性疼痛の三つに分類することができること,線維筋痛症は,上記③の心因性疼痛に分類されること,上記のとおりに 分類された痛みの中にも様々なものがあり,それぞれの痛みについ 発性疼痛とも呼ばれる心因性疼痛の三つに分類することができること,線維筋痛症は,上記③の心因性疼痛に分類されること,上記のとおりに 分類された痛みの中にも様々なものがあり,それぞれの痛みについて機序や症状,治療方法が存在することが,本件出願当時,技術常識であったと認めるのが相当である。 (ウ) これに対して,原告は,痛覚過敏及び接触異痛は,通常の痛みとは異なり,末梢性感作や中枢性感作による神経の機能異常で生じる痛みであ ると主張し,その根拠として,本件出願当時に前記(ア)hないしlのとおりの文献が存在したことを指摘する。 しかし,前記(ア)h,i,k及びlの各文献は,マスタードオイル,カプサイシン及び切開による侵害刺激を与える実験の結果に基づくものであるから,これらの実験により,痛覚過敏及び接触異痛が,その原因に かかわらず,末梢性感作や中枢性感作による神経の機能異常により生じると,直ちにいうことはできない。 また,前記(ア)jの文献では,「NメチルDアスパラギン酸(NMDA)受容体の過剰活性は,神経障害性疼痛の発生における要因の1つである可能性がある。」,「動物の神経障害性疼痛モデルにおいて示唆される ように…,痛覚過敏はNMDA 受容体によって介在される「ワインドアップ現象」の提示である可能性がある。」などと記載されているところ,これらの記載は,NMDA受容体の過剰活性が神経障害性疼痛の要因となること,あるいは痛覚過敏がNMDA受容体によって介在されるワインドアップ現象(神経細胞の感作)によるものであることの可能性を指摘 したにすぎず,これをもって,上記文献の記載内容が本件出願当時の技 術常識であったということはできない。 そして,他に,本件出願 の感作)によるものであることの可能性を指摘 したにすぎず,これをもって,上記文献の記載内容が本件出願当時の技 術常識であったということはできない。 そして,他に,本件出願当時,痛覚過敏及び接触異痛がその原因にかかわらず末梢性感作や中枢性感作による神経の機能異常で生じる痛みであることが技術常識であったと認めるに足りる的確な証拠はない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (エ) 原告は,神経障害性疼痛は神経系の一次的な損傷あるいはその機能異常が原因となって生じた疼痛であり,線維筋痛症は痛覚過敏や接触異痛を伴う慢性疼痛症候群であると定義されるところ,神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う痛覚過敏や接触異痛はいずれも神経細胞の感作により生じるものであると主張し,その根拠として,本件出願当時に前記(ア)m ないしrのとおりの文献が存在したことを指摘する。 しかし,前記(ア)mの文献においては,線維筋痛症を痛覚過敏を伴う慢性疼痛症候群と定義する例があることが紹介されているものの,それは線維筋痛症の具体的な原因について言及するものではないし,痛覚過敏自体,前記(ウ)のとおり,その原因にかかわらず神経細胞の感作により生 じるものであることが本件出願当時に技術常識であったとは認められない。また,上記文献は,線維筋痛症に「中枢性感作があること,および圧痛点が二次痛覚過敏を示すことも示唆される。」と記載するにとどまっており,上記文献の記載内容が本件出願当時の技術常識であったとは認め難い。 前記(ア)nの文献は,神経損傷後,「後角の感作」が生じ得ると指摘するが,他方で,「臨床的にカウザルギーや反射交感神経ジストロフィーと呼ばれる事象が,極めて たとは認め難い。 前記(ア)nの文献は,神経損傷後,「後角の感作」が生じ得ると指摘するが,他方で,「臨床的にカウザルギーや反射交感神経ジストロフィーと呼ばれる事象が,極めて痛い,鋭く撃つ痛みとして伝達され得る(アロディニア)。この低閾値求心性情報の翻訳ミスのメカニズムは理解されていない」とされているから,神経損傷により生じるカウザルギー等 としての痛覚過敏又は接触異痛の症状が神経細胞の感作により生じると 確定的に理解されていたことを示すものとは認められない。 前記(ア)оの文献は,「NMDA 介在性の中枢性活性を誘発し,この誘発された活性が長期間の痛みの状態における侵害受容とその調節の変化の一つの基礎となっている可能性があると思われる。」と述べるにすぎず,神経細胞の感作の可能性を指摘するにとどまるものである(なお,上記 文献は,ホルマリン試験の結果について述べたものであり,後記ウのとおり,ホルマリン試験は侵害受容性疼痛に対する薬剤の鎮痛効果を確認するための試験であるから,この意味においても,神経障害性疼痛や線維筋痛症による痛覚過敏や接触異痛が神経細胞の感作により生じることを裏付けるとはいえない。)。 前記(ア)pの文献は,神経損傷性疼痛(神経障害性疼痛)に対してケタミンを投与する実験結果について述べたものであるところ,本件全証拠によっても,本件出願当時,ケタミンが神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛に対して鎮痛効果を生じる機序が明らかとなっていたとは認められないから,上記実験結果をもって,神経障害性疼痛や線維筋痛症に よる痛覚過敏や接触異痛が神経細胞の感作により生じることが本件出願当時の技術常識であったとはいえない。 前記(ア)qの文献は, 上記実験結果をもって,神経障害性疼痛や線維筋痛症に よる痛覚過敏や接触異痛が神経細胞の感作により生じることが本件出願当時の技術常識であったとはいえない。 前記(ア)qの文献は,疼痛が「細胞の異常かつ自発性の発火のため」に生じたと述べるが,腕神経叢引き抜き損傷における疼痛について述べたものであり,神経障害性疼痛一般について述べたものではないし,「細 胞の異常かつ自発性の発火」が,原告が主張する神経障害性疼痛や線維筋痛症による痛覚過敏や接触異痛の原因となる神経細胞の感作を意味するものかは明らかでない。むしろ,上記文献は,痛みを①侵害受容性のもの,②神経障害性のもの及び③心因性のものに分類しており,前記(イ)の認定を裏付けるといえる。 前記(ア)rの文献によれば,国際疼痛学会は,平成6年,神経障害性疼 痛を「神経系の一次的な損傷,あるいはその機能異常が原因となって生じた疼痛」と定義したが,その定義に係る「神経系の一次的な損傷」は,前記(イ)のとおり,神経障害性疼痛が,末梢神経又は中枢神経が圧迫されたり,絞扼されたり,遮断されたりすることにより生じる痛みであることと,矛盾するものではない。また,本件出願当時,当業者が,上記の 定義に係る「その機能異常」について,原告が慢性疼痛の共通の原因であると主張する神経細胞の感作を意味するものと理解していたことを認めるに足りる証拠はない。したがって,国際疼痛学会の上記定義をもって,本件出願当時,神経障害性疼痛に伴う痛覚過敏や接触異痛が神経細胞の感作により生じるものであることが技術常識であったとは認められ ない。 そして,他に,本件出願当時,神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う痛覚過敏及び接触異痛が神経細胞の感作により生じるもので 生じるものであることが技術常識であったとは認められ ない。 そして,他に,本件出願当時,神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う痛覚過敏及び接触異痛が神経細胞の感作により生じるものであったことが技術常識であったことを認めるに足りる的確な証拠はない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (オ) 原告は,痛覚過敏及び接触異痛がその原因にかかわらず末梢や中枢の神経細胞の感作により生じることや,神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う痛覚過敏や接触異痛がいずれも神経細胞の感作により生じることについて,専門家の意見書(甲67,68,124,125)を提出する。 しかし,上記の各意見書は,いずれも本件出願後に作成されたもので あり,前記(ウ)及び(エ)のとおり,それらの記載内容を裏付け得る本件出願当時の技術常識に関する文献が存在するとは認められないから,いずれも採用することができない。 ウホルマリン試験について(ア) 本件明細書には,本件化合物に係るホルマリン試験の結果が記載され ているところ,ホルマリン試験について,証拠(甲27,43,45な いし51,64)によれば,本件出願当時,以下の文献が存在したことが認められる。 a NeuroReport,vol.6,p.2301-2304(1995)(甲27)「ホルマリン試験は,動物における侵害刺激のモデルとして使用されてきている。ホルマリンの皮下注射は,ラット,猫,マウス及び霊長 類で観察される二相性の侵害応答を引き起こす。」(2301頁)「ホルマリンの皮下注射は,行動性の応答と脊髄後角における神経細胞の発火とによって特徴づけられる二相性の侵害応答を 長 類で観察される二相性の侵害応答を引き起こす。」(2301頁)「ホルマリンの皮下注射は,行動性の応答と脊髄後角における神経細胞の発火とによって特徴づけられる二相性の侵害応答を引き起こす。」(2302頁)「初期相の反応は,ホルマリン注射によって生じる一次求心性神経の 高レベルの活動によるものである一方で,後期相の反応は,引き続いて誘発される組織の炎症を反映した連続的な低レベルのC繊維の活動によるものであることが示唆されている。また,これら2つの相では興奮性アミノ酸とプロスタグランジンが異なって関与することも示唆されている。非ステロイド性抗炎症薬とステロイドが,後期相では鎮痛 作用を生むにもかかわらず,ホルマリンによって生じる初期相にほとんどあるいは全く影響を及ぼさないという事実は,後期相における炎症とプロスタグランジンの関与を支持するであろう。」(2302頁)「更に,タンパク質キナーゼCの阻害がlatephase の応答を減少させるが,earlyphase の応答は減少させないことが証明されていることか ら,痛覚過敏の主要な機序もlatephase の応答に寄与しているかもしれない。」(2302,2303頁)b BrainResearch,vol.518,p.218-226(1990)(甲46)「後角深層の多種感覚受容(収束)の侵害受容ニューロンである後肢末梢受容野へのホルマリンの皮下注射は,この細胞の持続的活性化(1 時間)のため使用された。」(218頁) 「ケタミン(1-8mg/kg)は,ホルマリンへのニューロン反応に短期間ではあるが顕著で投与量依存的な阻害を生み出した(n=11)。」(218頁) 用された。」(218頁) 「ケタミン(1-8mg/kg)は,ホルマリンへのニューロン反応に短期間ではあるが顕著で投与量依存的な阻害を生み出した(n=11)。」(218頁)「それゆえ,ホルマリンによって生成される求心性集中砲火(barrage)が比較的に短いタイムスパンでNMDA 介在性の中枢性活性を誘発し,こ の誘発された活性が長期間の痛みの状態における侵害受容とその調節の変化の一つの基礎となっている可能性があると思われる。」(218頁)「急性あるいは短期間に続く状態と比較して,持続したあるいは慢性的な痛みに関連する多くの問題の一つは,長く持続する痛みのある種 の形態を緩和する難しさにあり,これは特に,神経損傷に関連する形態についてである[4]。一般的には,これらの問題は傷害による他の結果に加えて,末梢および中枢神経の過敏によって生じ得る。動物についての様々な研究は,末梢の侵害受容繊維の感作が発生し得ること(参照6 を見よ)を明らかに示し,さらに最近では,マイナー入力に対 する後角の侵害受容的システムの反応を顕著に促進する,急速に誘発された中枢性過敏についての証拠が蓄積している[9,24,33,34,37]。 このようなメカニズムは,痛みを増幅し,持続する痛みの状態の問題に貢献する可能性がある。 ホルマリンの皮下注射は,短期間持続する一過性の活性(phasicac tivity)を生み出すことが示されてきており,侵害受容の長引く持続期がこの後に発生し,これは様々な種における行動学的研究によって評価されており[3,18],持続した侵害刺激の有用なモデルであると考えられる。」(218頁)c TheJournalofNeurosc これは様々な種における行動学的研究によって評価されており[3,18],持続した侵害刺激の有用なモデルであると考えられる。」(218頁)c TheJournalofNeuroscience,vol.12(9),p.3665-3670(1992)(甲4 7) 「我々は以前(Coderreetal.,1990),損傷に誘導される中枢性感作の行動モデルとして,ホルマリン試験を用いた。」(3665頁)「ホルマリン応答の初期相の間に生じた神経作用が中枢神経系の機能の変化(すなわち,中枢性感作)を引き起こし,それが次いで後期相の間の処理に影響すること,をもたらし得ることを示唆する。」(3 665頁)d PainReviewArticle,vol.51,p.5-17(1992)(甲45)「主にラットとマウスで使用されている侵害受容のホルマリン試験は,傷害を受けた組織によって発生する中程度の継続的な痛みを伴う。このように,それは閾値強度の短い刺激に頼るほとんどの伝統的な侵害 受容の試験とは異なる。本稿では,刺激の特性や侵害受容行動の変化をどのように測定し解釈するかを含め,ホルマリン試験の主な特徴について説明する。ホルマリンへの応答は初期相と後期相を示す。初期相は主に末梢刺激によるC-線維活性化によって引き起こされるように思われるが,後期相は末梢組織における炎症反応と脊髄後角の機能的 変化の組み合わせに依存するように思われる。」(5頁)「結論として,ホルマリン試験は侵害受容を研究するために利用可能な一連の方法への価値ある追加である。」(5頁)「NSAID であるインドメタシンは,ホルマリン試験の第2 相における反 「結論として,ホルマリン試験は侵害受容を研究するために利用可能な一連の方法への価値ある追加である。」(5頁)「NSAID であるインドメタシンは,ホルマリン試験の第2 相における反応を低下させるが,第1 相では効果を持たないことが示されている」 (12頁)e NeuroscienceLetters,vol.208,p.45-48(1996)(甲48)「ホルマリン試験は広く用いられる化学物質誘発性の持続性疼痛の行動モデルであるが,一次求心性侵害受容器のホルマリンへの反応についてはあまり知られていない。」(45頁) 「ホルマリン誘発性の行動の第一相は,ホルマリン誘発性のC 線維の 一次求心性侵害受容器の活性化を反映しており,第二相は,第一相の間の一次求心性インプットの初期の集中砲火により後角ニューロンが感作(中枢性感作)した結果か,炎症に誘発された一次求心性侵害受容器の活性化の結果か,またはその両方の組合せ[2,15]であるとの仮説が立てられてきた[2,5,13]。ホルマリンに対する行動反応の第 二相への末梢性侵害受容作用の寄与については,議論が引き起こされている。」(45頁)f 齋藤洋ら編,「医薬品の開発9巻医薬品の探索〔Ⅰ〕」,廣川書店(平成2年)(甲64)「6)持続性の痛み(痛覚過敏)を指標にする方法 動物を用いて持続的な痛みに有効な薬物を検定するためには,動物の局所に起炎剤を適用し,その炎症部位に生ずる自発痛に伴う仮性疼痛反応や,その部位での疼痛閾値の低下(痛覚過敏)を指標として用いる。」(99頁)「起炎剤としてはさまざまな薬物が用いられる。希釈ホルマリンをラ ットの足蹠に皮 痛に伴う仮性疼痛反応や,その部位での疼痛閾値の低下(痛覚過敏)を指標として用いる。」(99頁)「起炎剤としてはさまざまな薬物が用いられる。希釈ホルマリンをラ ットの足蹠に皮下注射したのちに見られる応答のうち,再現性と定量性に優れる注射部位をなめる反応(lickingresponse)頻度の時間的経過は,注射直後の急性反応期と,15 分頃より再び増加しはじめて1時間程度持続する遅延反応期から成る二峰性を示す。これらはそれぞれ急性痛と持続痛を反映していると考えられており,それぞれの痛み に対する作用を同時に評価する鎮痛効力検定法として用いることができる。」(99頁)g TheJournalofNeuroscience,vol.12(9),p.3671-3675(1992)(甲49)「ホルマリン誘発組織損傷の後の持続性侵害受容におけるNMDA 受容体 作動性カルシウムチャネルの役割」(3671頁) 「ラットにおける組織損傷に対する応答である中枢性感作および持続性侵害受容への細胞内カルシウムの貢献が,後肢へのホルマリンの皮下注射の後に調べられた。」(3671頁)「この結果は,ホルマリン損傷により誘発された組織損傷後の中枢性感作および持続性侵害受容は,主にNMDA 受容体作動性(比較的程度は 低いが電位依存性の)カルシウムチャネルを介したカルシウム流入に依存することを示す。」(3671頁)h Pain,vol.54,p.291-300(1993)(甲50)「L-NAME による第2 相ホルマリン応答の抑制は,ラットの足へのホルマリン注射の前と後のいずれに投与しても類似していた。L-NAME(370 n 00(1993)(甲50)「L-NAME による第2 相ホルマリン応答の抑制は,ラットの足へのホルマリン注射の前と後のいずれに投与しても類似していた。L-NAME(370 nmol)の脊髄投与はN-メチル-D-アスパルテート(NMDA;6.8nmol)のi.t.注射により誘導された熱痛覚過敏をも阻止したが,D-NAME(3.7μmol)は阻止しなかった。」(291頁)「これらの研究は脊髄性NO 合成の調節が継続する求心性集中砲火により誘導される求心性活動の促進された処理(ホルマリン試験の第2相) を減少させうることを示す。この痛覚過敏要素は,脊髄のNMDA 受容体の活性化によって開始され,それはNO 生成を介して求心性インプットの実際の増大処理および続く疼痛行動の関連する痛覚過敏要素に導く。」(291頁)i EuropeanJournalofNeuroscience,vol.6,p.1328-1334(1994)(甲 51)「細胞内メッセンジャーである一酸化窒素,アラキドン酸およびプロテインカイネースC のラットにおける組織損傷に反応した持続性侵害受容への寄与が,後肢へのホルマリンの皮下投与の後に調べられた。」(1328頁) 「L-グルタミン酸またはサブスタンスP を用いて処理されたラットに おけるホルマリン侵害行為の増加(痛覚過敏)は,一酸化窒素阻害剤(L-NAME),アラキドン酸阻害剤(デキサメタゾン)またはプロテインカイネースC 阻害剤(H-7)を用いた前処理によって覆された。この結果は,ホルマリン損傷により誘発された組織損傷後の中枢性感作および持続性侵害受容,およびL-グルタミン酸およびサブスタンスP に より引 阻害剤(H-7)を用いた前処理によって覆された。この結果は,ホルマリン損傷により誘発された組織損傷後の中枢性感作および持続性侵害受容,およびL-グルタミン酸およびサブスタンスP に より引き起こされたホルマリン試験における痛覚過敏は,細胞内メッセンジャーである一酸化窒素,アラキドン酸およびプロテインカイネースC に依存することを示す。」(1328頁)j Pain,vol.4,p.161-174(1977)(甲43)「ラットに適用された際の試験の更なる特徴は,注射後最初の半時間 において観察される変化である。疼痛評価カーブが一時的に低下する理由は不明である。おそらく2種類の痛みが作られる:感覚受容器に対するホルマリンの直接的影響によって生じる短期間の痛みと,その後にさらに長く続く炎症による痛みである。」(173頁)「要するに,ホルマリンテストは様々な鎮痛治療における違いだけで なく,鎮痛の時的変化における評価も可能とする。これは疼痛の閾値を測定するものではないけれども,むしろ比較的長く続く疼痛刺激に対する行動的反応を定量化するものである。したがって,これは実際の病的な状態において見られるような痛みに類似している。このテストは,それ故に,疼痛を評価するために現在利用可能な方法への価値 ある追加である。」(173頁)(イ) 前記(ア)の各文献の記載によれば,本件出願当時,ホルマリンを皮下注射することにより二相の侵害応答が引き起こされ,そのうち後期相は炎症を反映した持続する疼痛であるところ,ホルマリン試験はこれら二相の侵害応答に対する薬剤の鎮痛効果を確かめる動物モデル試験であり, NSAIDは後期相において鎮痛効果を生じることが,技術常識であっ たと る疼痛であるところ,ホルマリン試験はこれら二相の侵害応答に対する薬剤の鎮痛効果を確かめる動物モデル試験であり, NSAIDは後期相において鎮痛効果を生じることが,技術常識であっ たと認められる。 そして,前記イ(イ)のとおりに痛みが分類されることや,本件出願当時,NSAIDが一般的に侵害受容性疼痛に対して有効であると考えられており,神経障害性疼痛や線維筋痛症に対して有効であるとは考えられていなかったと認められること(甲123)を併せ考えると,本件出願当 時,ホルマリン試験のうち後期相におけるものは,侵害受容性疼痛に対する薬剤の鎮痛効果を確認するための試験であったと認めるのが相当である。 この点に関し,本件明細書には,「CI-1008」((S)-3-(アミノメチル)-5-メチルヘキサン酸であり(甲2),構成要件3Aを充足 する本件化合物の一種である。)及び「3-アミノメチル-5-メチル-ヘキサン酸」(構成要件3A)がホルマリン試験の後期相において有効であったとの記載があること(前記1(1)エ)からすると,本件出願当時,本件明細書のホルマリン試験の結果に接した当業者は,本件化合物について,侵害受容性疼痛としての持続する疼痛に対して有効であると 理解し,その他の痛みに対して有効であると理解することは困難であったというべきである。 (ウ) これに対して,原告は,ホルマリン試験により中枢性感作の研究を行い得ることが広く知られており,ホルマリン試験は痛覚過敏や接触異痛の慢性疼痛の研究に有用な動物モデル試験であると主張し,前記(ア)の各 文献にはこれを裏付ける記載があると指摘する。 しかし,前記(ア)の各文献には,「脊髄後角における神経細胞の発火とによって特徴づ 用な動物モデル試験であると主張し,前記(ア)の各 文献にはこれを裏付ける記載があると指摘する。 しかし,前記(ア)の各文献には,「脊髄後角における神経細胞の発火とによって特徴づけられる二相性の侵害応答を引き起こす」(前記(ア)a),「ホルマリン応答の初期相の間に生じた神経作用が中枢神経系の機能の変化(すなわち,中枢性感作)を引き起こし,それが次いで後期相の間 の処理に影響する」(同c),「第二相は,第一相の間の一次求心性イ ンプットの初期の集中砲火により後角ニューロンが感作(中枢性感作)した結果か,炎症に誘発された一次求心性侵害受容器の活性化の結果か,またはその両方の組合せ[2,15]である」(同e),「ホルマリン損傷により誘発された組織損傷後の中枢性感作」(同i)等の記載はあるが,これらの「中枢性感作」等が,原告が主張するようにあらゆる痛覚過敏 や接触異痛の原因となる神経細胞の感作を意味するのかは明らかではないし,ホルマリン試験の結果により,前記イ(イ)の痛みの分類又は原因にかかわらず,あらゆる慢性疼痛に対する鎮痛効果を確認することができることを示唆する記載はない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (エ) 原告は,ホルマリン試験が中枢性感作の研究に用いられ,痛覚過敏や接触異痛の慢性疼痛の研究に有用な動物モデル試験であると知られていたことについて,専門家の意見書(甲69,124)を提出する。 しかし,上記の各意見書は,いずれも本件出願後に作成されたものであって,本件出願当時の技術常識を認定する証拠として直ちに的確なも のとはいえない上,前記(ウ)のとおり,それらの記載内容を裏付け得る本件出願当時の技術常識に関する文献が存在すると れたものであって,本件出願当時の技術常識を認定する証拠として直ちに的確なも のとはいえない上,前記(ウ)のとおり,それらの記載内容を裏付け得る本件出願当時の技術常識に関する文献が存在するとは認められないから,いずれも採用することができない。 エカラゲニン試験について(ア) 本件明細書には,本件化合物に係るカラゲニン試験の結果が記載され ているところ,カラゲニン試験について,証拠(甲44,56,57,146)によれば,本件出願当時,以下の文献が存在したことが認められる。 a Pain,vol.32,p.77-88(1988)(甲44)「皮膚の痛覚過敏における熱侵害受容を測定するための新たな精度の 高い方法」(77頁) 「拘束されていない動物における熱刺激に対する皮膚痛覚過敏を測定する方法が記載されている。テストの枠組みは,行動の終点の自動検出を使用し,繰り返しテストしても,観察される痛覚過敏の発症には寄与しない。カラゲニンに誘発された炎症は,食塩水で処置した足と比較して有意に短い足回避潜時をもたらし,そしてこれらの潜時変化 は熱侵害受容閾値の低下に対応した。」(77頁)b EuropeanJournalofPharmacology,vol.194,p.135-143(1991)(甲56)「カラゲニン誘導炎症は,1962 年Winter 等によって説明された,そして,非ステロイド抗炎症薬のスクリーニングのために広く使われるよ うになっている(Otterness とBliven,1985 年)。最近,皮膚の痛覚過敏のモデルとして適合されている(Hargreaves 等,1988 年)。このモデルにおいて,皮膚の うになっている(Otterness とBliven,1985 年)。最近,皮膚の痛覚過敏のモデルとして適合されている(Hargreaves 等,1988 年)。このモデルにおいて,皮膚の熱痛覚過敏は,熱刺激に対する引っ込め時間の減少によって評価される。」(135頁)「我々は,片側性カラゲニン誘発の炎症モデルにおけるオピオイドア ゴニストの脊髄媒介性の抗侵害受容効果を調べた。」(140頁)c Pain,vol.50,p.345-354(1992)(甲57)「カラゲニン誘導炎症は,1962 年Winter 等によって最初に説明された,そして,今日,カラゲニンの足底内注入は,片側のみ(unilateral)の炎症/痛覚過敏のモデルを作製するために,実験的に広く用いられ ている。」(345頁)「本電気生理学的研究は,カラゲニンによって誘起された炎症に続く,後角ニューロンにおけるC線維誘発応答の髄腔内オピエイトに対する過敏さを,非炎症動物に対するものと比較して調査する。」(345,346頁) 「カラゲニンは,炎症及び痛覚過敏を誘発するために広く用いられて いる。カラゲニンで処理された動物における多くの行動試験は,有害な圧力(足圧力試験),及び有害な熱に対する足蹠回避を用いて,炎症状態によって誘起された変化と,これらの変化に対する様々な薬物の効果を決定している。」(351頁)「ニューロンのC 及びAβ線維の両方の応答における変化の方向は,細 胞のワインドアップの初期の程度に依存する(図1を見よ)。これは,これらの後角ニューロンにおけるC線維誘起ワインドアップの発現において重要であると示されるN-メチル-D-アスパルテート( ,細 胞のワインドアップの初期の程度に依存する(図1を見よ)。これは,これらの後角ニューロンにおけるC線維誘起ワインドアップの発現において重要であると示されるN-メチル-D-アスパルテート(NMDA)レセプターの役割を指し示している」(351頁)d Anesthesiology,vol.83(5),p.1046-1054(1995)(甲146) 「侵害刺激への増加した感受性(痛覚過敏)及び通常は痛くない刺激に対する痛みの知覚(異痛)によって特徴付けられる神経障害性疼痛は,治療が難しい。行動的に定義される痛覚過敏や異痛は,末梢の神経障害や組織の炎症などを含む,様々な亜急性の動物モデルで生ずる。 モデルは急増しているけれども,神経損傷と炎症のモデルは,結果と して得られる痛覚過敏の脊椎での薬理学及び生理学に一般的に違いはない。両方の種類のモデルにおいて,介入から維持される有害な感覚入力は,脊椎でのN−メチル-D-アスパルテート(NMDA)レセプターの活動に依存して痛覚過敏を生ずるという強い証拠がある。そのため,NMDA レセプターアンタゴニストのクモ膜下腔内注射は,これらのモデルに おいて痛覚過敏を妨げ,元に戻すのであり,さらにNMDA レセプターアンタゴニストのクモ膜下腔内注射により長く続く神経障害性疼痛の患者の痛覚過敏や異痛が減少するという事実は,これらのモデルが臨床と関係することを示す。」(1046頁)「まとめると,クモ膜下腔内のアミトリプチリン投与により,足底内 にカラゲニン注射を受けたラットにおける炎症性浮腫に影響を与える ことなく,熱痛覚過敏は元に戻った…前臨床のアミトリプチリンの毒性スクリーニングに問題がなければ,この薬剤のクモ膜下腔内注射は,慢 ラゲニン注射を受けたラットにおける炎症性浮腫に影響を与える ことなく,熱痛覚過敏は元に戻った…前臨床のアミトリプチリンの毒性スクリーニングに問題がなければ,この薬剤のクモ膜下腔内注射は,慢性の神経障害性疼痛の治療の新たなアプローチを提供することができる。」(1053頁)(イ) 前記(ア)の各文献の記載によれば,本件出願当時,カラゲニン試験とは, カラゲニンにより炎症を誘発し,痛覚過敏の状態を引き起こして,これに対する薬剤の効果を確かめる試験であることが,技術常識であったと認められる。 そして,本件明細書には,本件化合物の一種である「CI-1008」(前記ウ(イ))がカラゲニン試験において有効であったことが記載されており, さらに,「これらのデータはギャバペンチンおよびCI-1008 が炎症性疼痛の処置に有効であることを示す。」(前記1(1)オ)との記載がある。 以上によれば,本件出願当時,本件明細書のカラゲニン試験の結果に接した当業者は,本件化合物について,侵害受容性疼痛としての痛覚過敏に対して有効であると理解し,その他の痛みに対して有効であると理 解することはなかったというべきである。 (ウ) これに対して,原告は,カラゲニン試験について,痛覚過敏の研究のために拡張されたものであり,本件出願当時において,神経細胞の感作を反映するものとして神経障害性疼痛治療薬の研究に用いられていたと主張し,前記(ア)bないしdの各文献にはこれを裏付ける記載があると指 摘する。 しかし,前記(ア)bの文献からは,カラゲニン試験が,痛覚過敏のモデルとして,「炎症モデル」における「抗侵害受容効果」を調べるために用いられたことは理解できるものの,同文献において,神経細胞 しかし,前記(ア)bの文献からは,カラゲニン試験が,痛覚過敏のモデルとして,「炎症モデル」における「抗侵害受容効果」を調べるために用いられたことは理解できるものの,同文献において,神経細胞の感作について説明した記載はない。 前記(ア)cの文献には,「後角ニューロンにおけるC 線維誘起ワインド アップの発現において重要であると示されるN-メチル-D-アスパルテート(NMDA)レセプターの役割を指し示している。」との記載があるが,カラゲニン試験については,「炎症及び痛覚過敏を誘発するために広く用いられている」と記載されているのみであり,カラゲニン試験の結果により,神経障害性疼痛に対して有効であることを確認することができた ことを示唆する記載はない。 前記(ア)dの文献には,「神経損傷と炎症のモデルは,結果として得られる痛覚過敏の脊椎での薬理学及び生理学に一般的に違いはない。両方の種類のモデルにおいて,介入から維持される有害な感覚入力は,脊椎でのN−メチル-D-アスパルテート(NMDA)レセプターの活動に依存すると いう強い証拠がある。」との記載があるが,これをもって,本件出願当時,あらゆる痛覚過敏が神経細胞の感作により生じることが技術常識であったとは直ちには認められないし,カラゲニン試験の結果により,神経障害性疼痛に対して有効であることを確認していたとはいえない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (エ) 原告は,カラゲニン試験が神経細胞の感作を反映するものであると主張し,神経障害性疼痛治療薬の研究に用いられていることを示すものとして,専門家の意見書(甲69)を提出する。 しかし,上記各意見書は,本件出願後に作成された 感作を反映するものであると主張し,神経障害性疼痛治療薬の研究に用いられていることを示すものとして,専門家の意見書(甲69)を提出する。 しかし,上記各意見書は,本件出願後に作成されたものであって,本件出願当時の技術常識を認定する証拠として直ちに的確なものとはいえ ない上,前記(ウ)のとおり,それらの記載内容を裏付け得る本件出願当時の技術常識に関する文献が存在するとは認められないから,いずれも採用することができない。 オ術後疼痛試験について(ア) 本件明細書には,本件化合物に係る術後疼痛試験の結果が記載されて いるところ,術後疼痛試験について,証拠(甲15の1,甲58)によ れば,本件出願当時,以下の文献が存在したことが認められる。 a Pain,vol.64,p.493-501(1996)(甲15の1)「要約本研究で我々は,切開痛のラットモデルを開発した。ハロタン麻酔ラットの皮膚,筋膜,および足蹠の足底側面の筋肉を1-cm 縦に切開した。手術前及び手術に続く6日間,創傷周辺のさまざまな領域で フォン・フライの毛を使用して,回避反応を測定した。動物の体重負荷行動に基づく累積疼痛スコアも利用した。 回避反応試験及び体重負荷に基づくスコアの結果は,ラット足の外科的切開が,術後数日間続く信頼性のある定量可能な機械的痛覚過敏を引き起こすことを示唆している。足の皮膚と筋膜のみを含み,筋肉 を含まない切開は,最初の術後期間中にそれほど重度の痛覚過敏を引き起こさなかった。 本モデルにより,手術による感作のメカニズムを理解し,ヒトの術後疼痛の新しい治療法を調査できるであろう。」(493頁)b J.Physiol,vol. き起こさなかった。 本モデルにより,手術による感作のメカニズムを理解し,ヒトの術後疼痛の新しい治療法を調査できるであろう。」(493頁)b J.Physiol,vol.297,p.207-216(1979)(甲58) 「2.いくつかの多モード侵害受容器の受容野から5(n=15)mm または10(n=12)mm 外で小さな損傷を与えた。これは自然発火の発生をもたらし,そして受容野の加熱に対する閾値を低下させた。」(207頁)「損傷部位での痛覚過敏の他に,それまでに損傷を受けていない皮膚上にも痛みの領域がその周りに発生し(Lewis,1935-36),これも多モ ード侵害受容器感作に関連している可能性があるようである。 ここで述べられる実験は,多モード侵害受容器がそれらの受容野外での侵害刺激によって感作され得るかどうかを立証するために行われた。Perl ら(1974)は,広範囲の皮膚の傷害は損傷場所からいくらかの距離の受容野を持つ多モード侵害受容器の自然発火をもたらし得る ことを指摘したが,感作の定量的な測定はなされなかった。」(20 8頁)(イ) 前記(ア)の各文献の記載によれば,本件出願当時,術後疼痛試験は,ラットの皮膚,筋膜及び足蹠の足底側面の筋肉を切開することにより,痛覚過敏を引き起こし,これに対する薬剤の効果を確かめる試験であることが,技術常識であったと認められる。 そして,本件明細書には,「S-(+)-3-イソブチルギャバ」(弁論の全趣旨によれば,構成要件3Aを充足する本件化合物の一種であると認められる。)が術後疼痛試験において有効であったことが記載されており,さらに,「ラット足蹠筋肉の切開は熱痛覚過敏 チルギャバ」(弁論の全趣旨によれば,構成要件3Aを充足する本件化合物の一種であると認められる。)が術後疼痛試験において有効であったことが記載されており,さらに,「ラット足蹠筋肉の切開は熱痛覚過敏および接触異痛を生じた。いずれの侵害受容反応も手術後1時間以内にピークに達 し,3日間維持された。実験期間中,動物はすべて良好な健康状態を維持した。」(前記1(1)キ(キ)),「ここに掲げた結果はラット足蹠筋肉の切開は少なくとも3時間続く熱痛覚過敏および接触異痛を誘発することを示している。本試験の主要な所見は,ギャバペンチンおよびS-(+)-3-イソブチルギャバがいずれの侵害受容反応の遮断に対して も等しく有効なことである。」(同(コ))との記載がある。 以上によれば,本件出願当時,本件明細書の術後疼痛試験の結果に接した当業者は,本件化合物について,侵害受容性疼痛としての熱痛覚過敏及び接触異痛に対して有効であると理解し,その他の痛みに対して有効であると理解することはなかったというべきである。 (ウ) これに対して,原告は,術後疼痛試験は,動物の皮膚を切開し,切開による損傷後に生じる痛覚過敏及び接触異痛を検討する試験であって,神経細胞の感作を反映したものであると主張し,前記(ア)の各文献にはこれを裏付ける記載があると指摘する。 しかし,前記(ア)aの文献には,「本モデルにより,手術による感作の メカニズムを理解し,ヒトの術後疼痛の新しい治療法を調査できるであ ろう。」との記載があるものの,この「手術による感作」という記載が,原告が痛覚過敏や接触異痛を生じさせる神経の機能異常を引き起こすと主張する神経細胞の感作(前記第3の1(1)(原告の主張)ア(ア))を意味するのかは明らかで の,この「手術による感作」という記載が,原告が痛覚過敏や接触異痛を生じさせる神経の機能異常を引き起こすと主張する神経細胞の感作(前記第3の1(1)(原告の主張)ア(ア))を意味するのかは明らかでない。 また,前記(ア)bの文献には,「多モード侵害受容器感作」等の記載が あるが,上記と同様に,これらの記載が,原告が主張するような神経細胞の感作を意味するのかは明らかではない。むしろ,上記文献には,「小さな損傷を与えた。これは自然発火の発生をもたらし,そして受容野の加熱に対する閾値を低下させた。」との記載があることから,術後疼痛試験を侵害受容性疼痛としての痛覚過敏を引き起こすものであると の理解が示されているというべきである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 カその他の原告の主張について(ア) ケタミンについて原告は,ケタミンについて,中枢性感作阻害性を有し,虚血性疼痛, 術後疼痛,癌性疼痛,末梢性及び中枢性神経障害性疼痛,帯状疱疹後神経痛並びに線維筋痛症,さらには,これらに由来する痛覚過敏及び接触異痛に対して効果を奏することが確認されていたから,神経細胞の感作を抑制することで,原因にかかわらず痛みを治療することができると知られていたと主張する。 しかし,証拠(甲26,42,46,52ないし55)によれば,本件出願当時,NMDA遮断薬であるケタミンは,神経障害性疼痛,線維筋痛症,虚血性疼痛,術後疼痛,幻肢痛等に対して鎮痛効果を生じることが技術常識であり,これらの疼痛の発生にNMDA受容体が関与している可能性が指摘されていることは認められるものの,上記の証拠を含 む本件全証拠によっても,これらの疼痛の発生原因を特定すること とが技術常識であり,これらの疼痛の発生にNMDA受容体が関与している可能性が指摘されていることは認められるものの,上記の証拠を含 む本件全証拠によっても,これらの疼痛の発生原因を特定することはで きず,本件出願当時,ケタミンがこれらの疼痛に対して鎮痛効果を生じる機序が明らかとなっていたとは認められない。 また,弁論の全趣旨によれば,ケタミンの化学式と本件化合物の化学式は全く異なることが認められる上,本件全証拠によっても,本件化合物がケタミンと同様の機序に基づき同様の鎮痛効果を奏することを認め ることはできない。 そうすると,ケタミンが神経障害性疼痛や線維筋痛症,術後疼痛等に対して鎮痛効果を生じることをもって,当業者が,本件出願当時,本件化合物がこれらの痛みに対して同様の鎮痛効果を生じると理解していたということはできない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (イ) 混合性疼痛について原告は,本件出願当時,痛みを組織損傷,炎症,神経損傷又は心因性の要因といった原因により明確に区別することはできず,炎症性疼痛や術後疼痛と神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う痛みは相互に重複する痛 みであると理解されていたと主張し,その根拠として,関連する文献等(甲92ないし99,126ないし132,137,138)を提出する。 しかし,本件出願当時,痛みは前記イ(イ)のとおりに分類されていたものであり,侵害受容性疼痛である炎症性疼痛や術後疼痛が生じると,必 ずこれらと重複して神経障害性疼痛や心因性疼痛である線維筋痛症に伴う痛みをも生じるといったことが,技術常識であったと認めるに足りる証拠はない。また,一人の患者が炎症性疼痛又は術後疼痛と神経 ずこれらと重複して神経障害性疼痛や心因性疼痛である線維筋痛症に伴う痛みをも生じるといったことが,技術常識であったと認めるに足りる証拠はない。また,一人の患者が炎症性疼痛又は術後疼痛と神経障害性疼痛又は線維筋痛症に伴う痛みを併発するといった事例があったとしても,そのことから直ちに,本件出願当時,当業者が,これらを一つの混 合性疼痛として理解し,炎症性疼痛又は術後疼痛に対して有効である鎮 痛剤が神経障害性疼痛又は線維筋痛症に伴う痛みに対しても有効であり,神経障害性疼痛又は線維筋痛症に伴う痛みに対して有効である鎮痛剤が炎症性疼痛又は術後疼痛に対しても有効であると認識していたと認めることはできず,他にそのような事実を認めるに足りる証拠もない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (ウ) 動物モデル試験全般についてa 原告は,本件出願当時,痛覚過敏や接触異痛に対する薬理効果を確認するための動物モデル試験は,症状や神経細胞の感作を適切に反映したものであればよいと考えられていたと主張する。 しかし,本件出願当時,ホルマリン試験,カラゲニン試験及び術後 疼痛試験が侵害受容性疼痛としての痛覚過敏や接触異痛等の痛みに対する鎮痛効果を確認するための試験であると理解されていたことは,前記ウないしオのとおりであり,本件全証拠によっても,当業者が,痛覚過敏や接触異痛に対する薬理効果を確認するための動物モデル試験は症状や神経細胞の感作を適切に反映したものであればよいと考え ていたとは認められない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 b 原告は,本件出願当時,ベネットモデルやチャングモデル等の神経障害により痛みを生じさせる動物モデル ていたとは認められない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 b 原告は,本件出願当時,ベネットモデルやチャングモデル等の神経障害により痛みを生じさせる動物モデルは開発途上にあったため,本件化合物の鎮痛効果を確かめるのに必要であるとはいえなかったもの であり,他方,本件明細書では,これらの動物モデルが存在することを紹介していたから,当業者はこれらにより容易に追試することができ,本件化合物の用途を確認することができたと主張する。 しかし,本件明細書には,ベネットモデルやチャングモデルに係る文献が指摘されているが(前記1(1)カ),いずれも本件出願より数年 前の文献であり,本件全証拠によっても,これらのモデルが開発途上 であって本件化合物の効果の検証に用いることが必要ではなかったとは認められない。他方で,本件明細書でこれらのモデルの存在を指摘しただけでは,本件化合物についていかなる鎮痛効果が得られるかを確認する具体的な方法は不明であり,本件明細書に記載のあるホルマリン試験,カラゲニン試験及び術後疼痛試験の各結果により確認でき る鎮痛効果以外の鎮痛効果を確かめることはできないから,本件明細書に実施可能要件を満たすに足りる薬理データの記載又はこれと同視し得る程度の記載はないというほかない。また,本件出願当時,当業者において,これらのモデルを用いて本件化合物につき行った薬理試験の結果を予測できたことを認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 キ小括以上によれば,本件明細書の発明の詳細な説明においては,ホルマリン試験,カラゲニン試験及び術後疼痛試験の各薬理データの記載により,本件化合物が侵 用することができない。 キ小括以上によれば,本件明細書の発明の詳細な説明においては,ホルマリン試験,カラゲニン試験及び術後疼痛試験の各薬理データの記載により,本件化合物が侵害受容性疼痛に分類される痛みに対して鎮痛効果があること 及びそのための当該医薬の有効量は裏付けられているといえる。しかし,本件発明1及び2がその内容とする「痛み」,すなわち,少なくとも「炎症性疼痛,術後疼痛,転移癌に伴う骨関節炎の痛み,三叉神経痛,急性疱疹性および治療後神経痛,糖尿病性神経障害,カウザルギー,上腕神経叢捻除,後頭部神経痛,反射交感神経ジストロフィー,線維筋痛症,痛風, 幻想肢痛,火傷痛ならびに他の形態の神経痛,神経障害および特発性疼痛症候群」(前記1(1)イ)の各痛みに対して鎮痛効果があること及びそのための当該医薬の有効量を裏付ける記載はない。したがって,本件発明1及び2は,実施可能要件に違反するものと認められる。 (2) 争点1-2(サポート要件違反の成否)について ア特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件(法36条6項1号)に 適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる と認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 イ本件発明1及び2の特許請求の範囲において,本件化合物が「痛みの処置における」(構成要件1B)「鎮痛剤」(構成要件1C)又は「鎮痛剤」(構成要件2C 否かを検討して判断すべきものである。 イ本件発明1及び2の特許請求の範囲において,本件化合物が「痛みの処置における」(構成要件1B)「鎮痛剤」(構成要件1C)又は「鎮痛剤」(構成要件2C)として作用することが記載されているところ,前記(1)アのとおり,本件明細書の記載に照らせば,上記各構成要件の記載は,本件 化合物が少なくとも「炎症性疼痛,術後疼痛,転移癌に伴う骨関節炎の痛み,三叉神経痛,急性疱疹性および治療後神経痛,糖尿病性神経障害,カウザルギー,上腕神経叢捻除,後頭部神経痛,反射交感神経ジストロフィー,線維筋痛症,痛風,幻想肢痛,火傷痛ならびに他の形態の神経痛,神経障害および特発性疼痛症候群」の各痛みに対して鎮痛効果を有すること を規定したものと解される。 そして,本件明細書の記載(前記1(1)ウ)によれば,本件発明1及び2は,少なくとも上記各痛みに対して,市場にある鎮痛剤,例えば,麻薬性鎮痛剤やNSAIDでは不十分な効果しか得られず,また,これらの鎮痛剤には副作用があるため,不完全な処置しか行われていなかったことから, 上記各痛みに対する鎮痛効果が高く,副作用の少ない鎮痛剤を提供することを課題とし,この課題を解決しようとしたものであると認められる。 しかし,前記(1)キのとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件化合物について,上記各痛みのうち,侵害受容性疼痛に分類される痛みに対して鎮痛効果があることの記載はあるものの,その余の痛みに対して鎮 痛効果があることについての記載があるとは認められない。 したがって,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者が,本件発明1及び2の上記課題の解決,すなわち少なくとも上記各痛みの全てに対して鎮痛効果を有するこ るとは認められない。 したがって,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者が,本件発明1及び2の上記課題の解決,すなわち少なくとも上記各痛みの全てに対して鎮痛効果を有することを認識できる範囲のものとはいえず,また,当業者が本件出願当時の技術常識に照らして上記各痛みに対して鎮痛効果を有することを認識できる範囲のものともいえないから,本件発明1及び 2は,サポート要件に違反すると認められる。 ウこれに対して,原告は,サポート要件を充足するといえるためには,明細書に接した当業者が技術常識も踏まえて課題が解決できるであろうとの合理的期待が得られれば足り,明細書に基づき追試や分析をすることによって更なる技術の発展に資することができれば足りると主張する。 しかし,明細書は,発明の技術内容を一般に開示するとともに,特許権として成立した後にその効力の及ぶ範囲(特許発明の技術的範囲)を明らかにするという役割を有するものであるから,サポート要件に適合するというためには,前記アのとおり,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業 者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである必要があるというべきである。 そして,前記イのとおり,本件明細書に接した当業者は,本件出願当時の技術常識を踏まえても,本件発明1及び2で鎮痛効果を有するとされる各 痛みに対して鎮痛効果を生じると認識することができたとはいえない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (3) 争点1-3(本件訂正が訂正要件を るとされる各 痛みに対して鎮痛効果を生じると認識することができたとはいえない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (3) 争点1-3(本件訂正が訂正要件を満たすか)についてア請求項2に係る本件訂正について請求項2に係る本件訂正のうち,「鎮痛剤」(構成要件2C)を「神経 障害又は線維筋痛症による,痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置における 鎮痛剤」(構成要件2B’及び2C)と訂正する点について,形式上は,特許請求の範囲を減縮するものといえる。 しかし,前記(1)キのとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件化合物について,侵害受容性疼痛に対して鎮痛効果があること及びそのための当該医薬の有効量を裏付ける記載があるものの,その他の痛みに対し て鎮痛効果があることなどを裏付ける記載があるとはいえない。そして,前記(1)イ(イ)によれば,「神経障害又は線維筋痛症による,痛覚過敏又は接触異痛の痛み」とは,侵害受容性疼痛ではなく,神経障害性疼痛又は心因性疼痛に分類されるものである。 したがって,上記訂正は,神経障害性疼痛又は心因性疼痛の処置におけ る鎮痛剤という新規事項を追加するものであって,本件明細書に記載した事項の範囲内においてされたものではないので,訂正要件を満たすとは認められない(法134条の2第9項,126条5項)。 イ請求項1に係る本件訂正について本件訂正前の請求項2は請求項1を引用しており,これらは一群の請求 項を構成する。そして,請求項2に係る本件訂正は,当該請求項についての訂正が認められるときは請求項1とは別の訂正単位として扱われることを求めるものである。しかし,前記アのとおり,請求項2に係る 項を構成する。そして,請求項2に係る本件訂正は,当該請求項についての訂正が認められるときは請求項1とは別の訂正単位として扱われることを求めるものである。しかし,前記アのとおり,請求項2に係る本件訂正は認められないから,請求項1と請求項2は依然として一群の請求項を構成していることになり,請求項1に係る本件訂正も認められない(法13 4条の2第3項)。 (4) 小括以上によれば,その余の点を判断するまでもなく,本件発明1及び2については,実施可能要件違反及びサポート要件違反が認められるから,無効の抗弁は理由があり,請求項1及び請求項2に係る本件訂正は訂正要件に違反 するものであるから,訂正の再抗弁は理由がない。 したがって,延長登録により存続期間が延長された本件特許権の効力が被告医薬品に及ぶか否かにかかわらず,原告の被告らに対する本件発明1及び2に係る本件特許権に基づく被告医薬品の製造,販売及び販売の申出の差止請求並びに被告医薬品の廃棄請求は,いずれも理由がない。 3 本件発明3及び4について (1) 争点2-1(文言侵害の成否)についてア被告医薬品の構成要件3Bの充足性について(ア) 本件発明3の特許請求の範囲及び本件明細書の各記載a 本件発明3の特許請求の範囲には,「炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛みの処置における」(構成要件3B)「鎮痛剤」 (構成要件3C)との記載がある。 b 本件明細書には,「発明の背景」として,「本発明は,痛みの治療において鎮痛/抗痛覚過敏作用を発揮する化合物としてのグルタミン酸およびγ-アミノ酪酸(GABA)の類縁体の使用である。」(前記1(1)ア)との記載があり,「発明の概要」と ,「本発明は,痛みの治療において鎮痛/抗痛覚過敏作用を発揮する化合物としてのグルタミン酸およびγ-アミノ酪酸(GABA)の類縁体の使用である。」(前記1(1)ア)との記載があり,「発明の概要」として,「本発明は,以 下の式Ⅰの化合物の,痛みの処置とくに慢性の疼痛性障害の処置における使用方法である。このような障害にはそれらに限定されるものではないが炎症性疼痛,術後疼痛,転移癌に伴う骨関節炎の痛み,三叉神経痛,急性疱疹性および治療後神経痛,糖尿病性神経障害,カウザルギー,上腕神経叢捻除,後頭部神経痛,反射交感神経ジストロフィ ー,線維筋痛症,痛風,幻想肢痛,火傷痛ならびに他の形態の神経痛,神経障害および特発性疼痛症候群が包含される。」(前記1(1)イ)との記載があり,「発明の詳述」として,「本発明は,上記式Ⅰの化合物の上に掲げた痛みの処置における鎮痛剤としての使用方法である。 痛みにはとくに炎症性疼痛,神経障害の痛み,癌の痛み,術後疼痛, および原因不明の痛みである特発性疼痛たとえば幻想肢痛が包含され る。」(前記1(1)ウ)との記載がある。 また,本件明細書には,構成要件3Aを充足する本件化合物の一種である「CI-1008」及び「S-(+)-3-イソブチルギャバ」(前記2(1)ウ(イ),オ(イ))について,ホルマリン試験,カラゲニン試験及び術後疼痛試験を実施し,鎮痛効果があったことが記載されている(前 記1(1)エ,オ及びキ)。 (イ) 本件訂正の経緯証拠(甲3,4,18,21,乙4,5)によれば,本件訂正の経緯について,以下の事実を認めることができる。 a 特許庁は,本件無効審判事件において,平成31年2月28日付け で,① 本件明細書の発明の詳 21,乙4,5)によれば,本件訂正の経緯について,以下の事実を認めることができる。 a 特許庁は,本件無効審判事件において,平成31年2月28日付け で,① 本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,ホルマリン試験,カラゲニン試験及び術後疼痛試験の結果に基づき,本件化合物が本件訂正前発明4記載の各痛みを初めとする種々の種類の痛みの治療に有効であることを当業者に認識させようとするものであること,② 本件明細書のホルマリン試験及びカラゲニン試験の結果の記載を見た当業者 であれば,本件化合物が本件訂正前発明4記載の「炎症性疼痛」の処置における鎮痛効果を有すると認識することができ,術後疼痛試験の結果の記載を見た当業者であれば,本件化合物が本件訂正前発明4記載の「術後疼痛」の処置における鎮痛効果を有すると認識できること,③ 痛みには本件訂正前発明4記載の各痛みを含む種々のものがあり, その原因や病態生理も様々であることは,本件出願当時の技術常識であり,鎮痛剤であればあらゆる種類の痛みに有効であるというわけではないことも,本件出願当時の技術常識であったこと,④ 当業者は,本件明細書のホルマリン試験,カラゲニン試験及び術後疼痛試験の結果の記載に接しても,本件発明1及び2並びに本件訂正前発明3及び 4に係る鎮痛剤が「炎症性疼痛」及び「術後疼痛」以外の本件訂正前 発明4記載の各痛みの処置における鎮痛効果を有することを認識することができないから,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,本件発明1及び2並びに本件訂正前発明3及び4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえないこと,⑤ 本件明細書の発明の詳細な説明に接した当業者が,本件発明1及び2並びに本 件訂正前発明3及び4により,本件 3及び4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえないこと,⑤ 本件明細書の発明の詳細な説明に接した当業者が,本件発明1及び2並びに本 件訂正前発明3及び4により,本件訂正前発明4記載の各痛みを含む痛みの処置をすることができる鎮痛剤を提供するという課題を解決できると認識できるとはいえないから,本件訂正前発明1ないし4は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではないことを理由として,本件特許は平成14年法律第24号による改正前の法36条 4項,法36条6項1号に規定する各要件を満たさず,法123条1項4号により無効とすべきものである旨の本件審決予告をした(甲21,乙4)。 b 原告は,前記aの本件審決予告を受け,令和元年7月1日付けで,本件発明1及び2並びに本件訂正前発明3及び4を前記前提事実(3)イ のとおりに訂正する本件訂正をした(甲3,4)。 さらに,原告は,同年8月7日付けの手続補正書により本件訂正に係る訂正請求書を補正したところ,補正後の訂正請求書の訂正の理由では,① 請求項3に係る本件訂正について,「炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛みの処置における」との記載により,鎮痛剤 の処置対象となる痛みを限定するものであるところ,本件明細書に記載されたカラゲニン試験では,カラゲニンを用いて炎症を原因とする痛みを引き起こし,この痛みの処置に本件化合物を用い,また,術後疼痛試験では,手術を原因とする痛みを引き起こし,この痛みの処置に本件化合物を用いていることなどからすると,本件明細書等に記載 された事項の範囲内のものであること,② 請求項4に係る本件訂正に ついて,訂正前の請求項4においては炎症性疼痛から線維筋痛症までの13項目 ることなどからすると,本件明細書等に記載 された事項の範囲内のものであること,② 請求項4に係る本件訂正に ついて,訂正前の請求項4においては炎症性疼痛から線維筋痛症までの13項目の痛みが選択的に記載されていたものを,「炎症性疼痛」及び「術後疼痛」のみを残し,その他の選択肢を削除するとともに,「炎症性疼痛」については,これによって生じる痛みのうち鎮痛剤の処置対象とする痛みを,「による痛覚過敏の」との記載により痛覚過 敏に特定し,「術後疼痛」については,これによって生じる痛みのうち鎮痛剤の処置対象とする痛みを,「による痛覚過敏若しくは接触異痛の」との記載により痛覚過敏又は接触異痛に特定することによって限定するものであるところ,本件明細書に記載されたホルマリン試験では,ホルマリンを用いた侵害刺激の後期相(痛覚過敏及び接触異痛) の処置に本件化合物を用い,カラゲニン試験では,カラゲニンを用いて炎症を原因とする痛みを引き起こし,この痛みの処置に本件化合物を用い,また,術後疼痛試験では,手術を原因とする痛みを引き起こし,この痛みの処置に本件化合物を用いていることなどからすると,本件明細書等に記載された事項の範囲内のものであることが記載され ていた(甲4)。 c また,原告は,本件訂正とともに,令和元年7月1日付けで,① 本件訂正発明1及び2について,本件明細書に記載されたホルマリン試験,カラゲニン試験及び術後疼痛試験により,これらの鎮痛剤が痛覚過敏又は接触異痛の痛みに対して効果を奏することが明確に確認され ており,当業者は,痛覚過敏や接触異痛等の原因となる神経の機能異常が原因の疼痛である神経障害性疼痛や痛覚過敏を伴う疼痛である線維筋痛症に対しても効果を奏すると理解するので,実施可能要件及び ており,当業者は,痛覚過敏や接触異痛等の原因となる神経の機能異常が原因の疼痛である神経障害性疼痛や痛覚過敏を伴う疼痛である線維筋痛症に対しても効果を奏すると理解するので,実施可能要件及びサポート要件を満たすこと,② 本件発明3及び4について,本件審決予告において実施可能要件及びサポート要件を満たすと判断された 「炎症を原因とする痛み(炎症性疼痛)」及び「手術を原因とする痛 み(術後疼痛)」に限定するものであるから,実施可能要件及びサポート要件を満たすことを記載したことを記載した上申書を提出した(甲18,乙5)。 (ウ) 構成要件3Bの充足性a 前記(ア)の本件発明3に係る特許請求の範囲及び本件明細書の記載を 総合すると,構成要件3Bの「炎症を原因とする痛み」及び「手術を原因とする痛み」とは,それぞれ本件明細書における「炎症性疼痛」及び「術後疼痛」を意味するものと理解できる。 そして,前記(ア)bのとおり,本件明細書には,構成要件3Aを充足する「CI-1008」及び「S-(+)-3-イソブチルギャバ」について, ホルマリン試験,カラゲニン試験及び術後疼痛試験において鎮痛効果があったことが記載されているところ,前記2(1)ウないしオのとおり,ホルマリン試験,カラゲニン試験及び術後疼痛試験は侵害受容性疼痛としての痛覚過敏,接触異痛等に対する鎮痛効果を検証するための試験であることが本件出願当時の技術常識であった。そうすると,上記 の記載から,本件明細書において動物モデル試験により本件化合物の鎮痛効果が検証されたのは,侵害受容性疼痛のみであったと理解できる。 さらに,前記(イ)のとおり,本件審決予告において,痛みには本件訂正前発明4記載の各痛みを含む種々のものがあり,鎮痛剤であればあ 効果が検証されたのは,侵害受容性疼痛のみであったと理解できる。 さらに,前記(イ)のとおり,本件審決予告において,痛みには本件訂正前発明4記載の各痛みを含む種々のものがあり,鎮痛剤であればあ らゆる種類の痛みに有効であるというわけではないところ,本件明細書からは「炎症性疼痛」及び「術後疼痛」以外の本件訂正前発明4記載の各痛みに対して鎮痛効果を有することを認識することはできないと指摘されたことを受けて,原告は,本件訂正を行い,鎮痛剤の処置対象となる痛みを本件審決予告において実施可能要件及びサポート要 件を満たすと判断された「炎症を原因とする痛み(炎症性疼痛)」及 び「手術を原因とする痛み(術後疼痛)」に限定したと説明したものである。 以上の本件発明3に係る特許請求の範囲及び本件明細書の記載の解釈並びに本件訂正の経緯等によれば,構成要件3Bの「炎症を原因とする痛み」及び「手術を原因とする痛み」とは,侵害受容性疼痛であ る炎症性疼痛及び術後疼痛を意味し,これら以外の痛みを含むものではないと解するのが相当である。 b 前記前提事実(5)アのとおり,被告医薬品は,効能・効果を神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛とする疼痛治療剤であり,「炎症を原因とする痛み」及び「手術を原因とする痛み」の鎮痛剤であるとは 認められないから,構成要件3Bを充足するとは認められない。 (エ) 原告の主張についてa 原告は,本件明細書のカラゲニン試験や術後疼痛試験により,神経細胞の感作により生じる神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛等の慢性疼痛に共通する痛覚過敏や接触異痛に対する効果が確認されたの で,本件発明3の技術的範囲には,神経の病変や疾患,損傷が関与するか否かにかかわらず,炎症や手術によ や線維筋痛症に伴う疼痛等の慢性疼痛に共通する痛覚過敏や接触異痛に対する効果が確認されたの で,本件発明3の技術的範囲には,神経の病変や疾患,損傷が関与するか否かにかかわらず,炎症や手術によって生じる痛覚過敏や接触異痛の全てが含まれると主張する。 しかし,前記2(1)イ(ウ)のとおり,本件出願当時,痛覚過敏及び接触異痛が,その原因にかかわらず,神経細胞の感作により生じる痛み であることが技術常識であったとは認められない。 また,前記2(1)エ及びオのとおり,本件明細書に記載されたカラゲニン試験及び術後疼痛試験により,本件化合物について,侵害受容性疼痛としての痛覚過敏や接触異痛に対する鎮痛効果が確かめられたものであって,痛みの原因にかかわらず痛覚過敏や接触異痛に対する鎮 痛効果が確かめられたものではない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 b 原告は,神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛は侵害受容性疼痛との混合性疼痛とされるところ,被告医薬品はこのような混合性疼痛を生じた患者の痛みの処置に用いられるから,本件発明3の技術的範囲が侵害受容性疼痛に限られるか否かにかかわらず,また,侵害受容 性疼痛の定義とは無関係に,被告医薬品の鎮痛の対象は「炎症を原因とする痛み,又は手術を原因とする痛み」(構成要件3B)を充足すると主張する。 しかし,前記2(1)カ(イ)のとおり,本件出願当時,痛みは侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛及び心因性疼痛に大別されたところ,侵害受 容性疼痛である炎症性疼痛や術後疼痛が生じると必ず神経障害性疼痛や心因性疼痛である線維筋痛症に伴う痛みを生じるということが技術常識であったとは認められず,これら 痛に大別されたところ,侵害受 容性疼痛である炎症性疼痛や術後疼痛が生じると必ず神経障害性疼痛や心因性疼痛である線維筋痛症に伴う痛みを生じるということが技術常識であったとは認められず,これらの痛みを併発することがあったとしても,当業者が,これらを一つの混合性疼痛として理解し,侵害受容性疼痛に対して有効である鎮痛剤が神経障害性疼痛又は心因性疼 痛に対しても有効であり,神経障害性疼痛又は心因性疼痛に対して有効である鎮痛剤が侵害受容性疼痛に対しても有効であると認識していたとは認められない。 また,前記(ウ)のとおり,「炎症を原因とする痛み」及び「手術を原因とする痛み」とは侵害受容性疼痛である炎症性疼痛及び術後疼痛を 意味し,本件発明3に係る特許請求の範囲及び本件明細書の各記載を見ても,これらが炎症又は手術を原因として生じた神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛をも含むと理解することはできず,このような解釈が本件出願当時の技術常識であったことを認めるに足りる証拠もない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 c 原告は,① 本件訂正の前後を問わず,カラゲニン試験や術後疼痛試験により神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛に対する本件化合物の効果を確認することができると一貫して主張してきたものであり,② 本件審決予告は,神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛のうちカラゲニン試験や術後疼痛試験の痛みに含まれる部分についてまで本件 化合物の効果を確認することができないとまでは判断していないと主張する。 しかし,上記①について,証拠(甲18,19,乙5)によれば,原告は,本件訂正後も,カラゲニン試験や術後疼痛試験により,本件化合物が神経障害性 いとまでは判断していないと主張する。 しかし,上記①について,証拠(甲18,19,乙5)によれば,原告は,本件訂正後も,カラゲニン試験や術後疼痛試験により,本件化合物が神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛に対して鎮痛効果を 有することを確認することができるなどと主張していることが認められるが,前記前提事実(3)のとおり,請求項1及び2に係る本件訂正においては,請求項3及び4に係る本件訂正とは異なり,鎮痛の対象を「痛覚過敏又は接触異痛の痛み」及び「神経障害又は線維筋痛症による,痛覚過敏又は接触異痛の痛み」としていたものである。そして, 前記(イ)のとおり,本件審決予告は,本件明細書に記載されたカラゲニン試験及び術後疼痛試験の結果を見た当業者は,炎症性疼痛及び術後疼痛の処置において鎮痛効果を有すると認識し,これら以外の痛みの処置において鎮痛効果を有すると認識することはできないから,本件特許には実施可能要件違反及びサポート要件違反が認められると指摘 し,これを受けて,原告は,請求項3及び4に係る本件訂正を行い,これによって請求項3及び4の「痛み」を本件審決予告において実施可能要件及びサポート要件を満たすと判断された「炎症を原因とする痛み(炎症性疼痛)」及び「手術を原因とする痛み(術後疼痛)」に限定するものであると説明した。そうすると,請求項3及び4との関 係においては,原告は,本件化合物の鎮痛の対象を「炎症を原因とす る痛み(炎症性疼痛)」及び「手術を原因とする痛み(術後疼痛)」に限定する意図であったと認めるのが相当である。 また,上記②については,本件審決予告における上記の指摘に照らし,本件審決予告が神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛のうちカラゲニン試験及び術後疼痛試 あったと認めるのが相当である。 また,上記②については,本件審決予告における上記の指摘に照らし,本件審決予告が神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛のうちカラゲニン試験及び術後疼痛試験により鎮痛効果を確認することができ る部分が存在することを前提としていないことは明らかである。 したがって,原告の上記各主張はいずれも採用することができない。 イ被告医薬品の構成要件4Bの充足性について本件発明4の特許請求の範囲には,「炎症性疼痛による痛覚過敏の痛み,又は術後疼痛による痛覚過敏若しくは接触異痛の痛みの処置における」 (構成要件4B)「鎮痛剤」(構成要件4C)との記載がある。 そして,前記ア(ウ)によれば,構成要件4Bの「炎症性疼痛」及び「術後疼痛」とは,構成要件3Bの「炎症を原因とする痛み」及び「手術を原因とする痛み」と同様に,侵害受容性疼痛である炎症性疼痛及び術後疼痛を意味し,本件訂正前発明4記載の「神経障害による痛み」及び「線維筋痛 症」は含まないと解するのが相当である。 そうすると,前記前提事実(5)アのとおり,被告医薬品は,効能・効果を神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛とする疼痛治療剤であり,「炎症性疼痛」及び「術後疼痛」の鎮痛剤であるとは認められないから,構成要件4Bを充足するとは認められない。 (2) 争点2-2(均等侵害の成否)についてア被告医薬品が本件発明3の構成と均等なものであるかについて(ア) 原告は,本件発明3は,慢性疼痛に対する画期的処方薬として,抗てんかん作用を有するGABA類縁体を痛みの処置に用いることを見いだしたものであり,その本質的部分は本件化合物を慢性疼痛の処置に用い る点に 件発明3は,慢性疼痛に対する画期的処方薬として,抗てんかん作用を有するGABA類縁体を痛みの処置に用いることを見いだしたものであり,その本質的部分は本件化合物を慢性疼痛の処置に用い る点にあるから,対象となる痛みが侵害受容性疼痛か,神経障害性疼痛 や線維筋痛症かは本質的部分ではなく,効能・効果を神経障害性疼痛や線維筋痛症に伴う疼痛とし,慢性疼痛の処置に用いる鎮痛剤である被告医薬品は,均等侵害の第1要件を満たすと主張する。 しかし,前記1(1)アのとおり,本件特許に係る発明は,てんかん,ハンチントン舞踏病等の中枢性神経系疾患に対する抗発作療法等に有用な 薬物である本件化合物が,痛みの治療における鎮痛作用及び抗痛覚過敏作用を有し,反復使用により耐性を生じず,モルヒネと交叉耐性がないことに着目した医薬用途発明であるところ,前記2(1)イのとおり,本件出願当時,痛みには種々のものがあり,その原因や機序も様々であることが技術常識であった。 そうすると,いかなる痛みに対して鎮痛効果を有するかは,本件発明3において本質的部分というべきであり,その鎮痛効果の対象を異にする被告医薬品は,本件発明3の本質的部分を備えているものと認めることはできない。したがって,本件発明3に係る特許請求の範囲に記載された構成中の被告医薬品と異なる部分が本件発明3の本質的部分でない ということはできないから,被告医薬品は均等の第1要件を満たさない。 (イ) また,前記(1)アによれば,原告は,本件訂正前発明3においては鎮痛の対象となる痛みを限定していなかったところ,本件訂正により「炎症を原因とする痛み」及び「手術を原因とする痛み」に限定していることからすると,本件発明3との関係においては,被告医薬品の効能 ては鎮痛の対象となる痛みを限定していなかったところ,本件訂正により「炎症を原因とする痛み」及び「手術を原因とする痛み」に限定していることからすると,本件発明3との関係においては,被告医薬品の効能・効果 である神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛を意図的に除外したと認めるのが相当である。 したがって,被告医薬品は均等の第5要件も満たさない。 (ウ) 以上によれば,被告医薬品は,本件発明3の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとは認められない。 イ被告医薬品が本件発明4の構成と均等なものであるかについて 前記アと同様に,いかなる痛みに対して鎮痛効果を有するかは,本件発明4の本質的部分というべきであり,被告医薬品は均等の第1要件を満たさず,また,本件発明4との関係においては,被告医薬品の効能・効果である神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛が意図的に除外されているから,均等の第5要件も満たさない。 したがって,被告医薬品は,本件発明4の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとは認められない。 (3) 小括以上によれば,被告医薬品は,本件発明3及び4の各技術的範囲に属するとは認められないから,その余の点について判断するまでもなく,被告医薬 品が本件発明3及び4に係る本件特許権を侵害するものとは認められない。 したがって,原告の被告らに対する本件発明3及び4に係る本件特許権に基づく被告医薬品の製造,販売及び販売の申出の差止請求並びに被告医薬品の廃棄請求は,いずれも理由がない。 第5 結論 以上の次第で,原告の被告らに対する請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 医薬品の廃棄請求は,いずれも理由がない。 第5 結論 以上の次第で,原告の被告らに対する請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 國分隆文 裁判官 小川暁 裁判官 佐 々 木亮 (別紙) 物件目録 1 (S)-3-(アミノメチル)-5-メチルヘキサン酸(一般名:プレガバリン)を有効成分とし,「効能又は効果」として「神経障害性疼痛」又は「線維筋痛症に伴う疼痛」を含み,以下の商品名で特定される医薬品・プレガバリンOD錠25mg「YD」・プレガバリンOD錠50mg「YD」・プレガバリンOD錠75mg「YD」・プレガバリンOD錠150mg「YD」 2 (S)-3-(アミノメチル)-5-メチルヘキサン酸(一般名:プレガバリン)を有効成分とし,「効能又は効果」として「神経障害性疼痛」又は「線維筋痛症に伴う疼痛」を含み,以下の商品名で特定される医薬品・プレガバリンOD錠25mg「TCK」・プレガバリンOD錠75mg「TCK」・プレガバリンOD錠150mg「TCK」 3 (S)-3-(アミ 含み,以下の商品名で特定される医薬品・プレガバリンOD錠25mg「TCK」・プレガバリンOD錠75mg「TCK」・プレガバリンOD錠150mg「TCK」 3 (S)-3-(アミノメチル)-5-メチルヘキサン酸(一般名:プレガバリン)を有効成分とし,「効能又は効果」として「神経障害性疼痛」又は「線維筋痛症に伴う疼痛」を含み,以下の商品名で特定される医薬品・プレガバリンOD錠25mg「三笠」・プレガバリンOD錠50mg「三笠」・プレガバリンOD錠75mg「三笠」・プレガバリンOD錠150mg「三笠」 以上 (別紙) 延長登録目録 1 出願年月日平成22年6月25日出願番号 2010-700105号延長の期間 4年9月14日登録年月日平成22年11月24日特許法第67条第2項の政令で定める処分の内容(1) 特許権の存続期間の延長理由となる処分薬事法第14条第1項に規定する医薬品に係る同項の承認(2) 処分を特定する番号承認番号 22200AMX00297000(3) 処分の対象となった物プレガバリン(販売名:リリカカプセル25mg)(4) 処分の対象となった物について特定された用途帯状疱疹後神経痛 2 出願年月日平成22年6月25日出願番号 2010-700106号延長の期間 4年9月14日登録年月日平成22年11月24日特許法第67条第2項の政令で定める処分の内容(1) 特許権の存続期間の延長理由となる処分薬事法第1 4年9月14日登録年月日平成22年11月24日特許法第67条第2項の政令で定める処分の内容(1) 特許権の存続期間の延長理由となる処分薬事法第14条第1項に規定する医薬品に係る同項の承認(2) 処分を特定する番号 承認番号 22200AMX00298000(3) 処分の対象となった物プレガバリン(販売名:リリカカプセル75mg)(4) 処分の対象となった物について特定された用途帯状疱疹後神経痛 3 出願年月日平成22年6月25日出願番号 2010-700107号延長の期間 4年9月14日登録年月日平成22年11月24日特許法第67条第2項の政令で定める処分の内容(1) 特許権の存続期間の延長理由となる処分薬事法第14条第1項に規定する医薬品に係る同項の承認(2) 処分を特定する番号承認番号 22200AMX00299000(3) 処分の対象となった物プレガバリン(販売名:リリカカプセル150mg)(4) 処分の対象となった物について特定された用途帯状疱疹後神経痛 4 出願年月日平成23年1月14日出願番号 2011-700002号延長の期間 5年登録年月日平成24年2月15日特許法第67条第2項の政令で定める処分の内容(1) 特許権の存続期間の延長理由となる処分 薬事法第14条第9項に規定する医薬品に係る同項の承認(2) 処分を特定する番号 める処分の内容(1) 特許権の存続期間の延長理由となる処分 薬事法第14条第9項に規定する医薬品に係る同項の承認(2) 処分を特定する番号承認番号 22200AMX00297000(3) 処分の対象となった物プレガバリン(販売名:リリカカプセル25mg)(4) 処分の対象となった物について特定された用途末梢性神経障害性疼痛(帯状疱疹後神経痛を除く) 5 出願年月日平成23年1月14日出願番号 2011-700003号延長の期間 5年登録年月日平成24年2月15日特許法第67条第2項の政令で定める処分の内容(1) 特許権の存続期間の延長理由となる処分薬事法第14条第9項に規定する医薬品に係る同項の承認(2) 処分を特定する番号承認番号 22200AMX00298000(3) 処分の対象となった物プレガバリン(販売名:リリカカプセル75mg)(4) 処分の対象となった物について特定された用途末梢性神経障害性疼痛(帯状疱疹後神経痛を除く) 6 出願年月日平成23年1月14日出願番号 2011-700004号延長の期間 5年登録年月日平成24年2月15日 特許法第67条第2項の政令で定める処分の内容(1) 特許権の存続期間の延長理由となる処分薬事法第14条第9項に規定する医薬品に係る同項の承認(2) 処分を特定する番号承認番号 22200AMX00299000( 間の延長理由となる処分薬事法第14条第9項に規定する医薬品に係る同項の承認(2) 処分を特定する番号承認番号 22200AMX00299000(3) 処分の対象となった物プレガバリン(販売名:リリカカプセル150mg)(4) 処分の対象となった物について特定された用途末梢性神経障害性疼痛(帯状疱疹後神経痛を除く) 7 出願年月日平成24年8月30日出願番号 2012-700107号延長の期間 5年登録年月日平成25年10月23日特許法第67条第2項の政令で定める処分の内容(1) 特許権の存続期間の延長理由となる処分薬事法第14条第9項に規定する医薬品に係る同項の承認(2) 処分を特定する番号承認番号 22200AMX00297000(3) 処分の対象となった物プレガバリン(販売名:リリカカプセル25mg)(4) 処分の対象となった物について特定された用途線維筋痛症に伴う疼痛 8 出願年月日平成24年8月30日出願番号 2012-700108号 延長の期間 5年登録年月日平成25年10月23日特許法第67条第2項の政令で定める処分の内容(1) 特許権の存続期間の延長理由となる処分薬事法第14条第9項に規定する医薬品に係る同項の承認(2) 処分を特定する番号承認番号 22200AMX00298000(3) 処分の対象となった物プレガバリン(販売名:リリカカプセル る同項の承認(2) 処分を特定する番号承認番号 22200AMX00298000(3) 処分の対象となった物プレガバリン(販売名:リリカカプセル75mg)(4) 処分の対象となった物について特定された用途線維筋痛症に伴う疼痛 9 出願年月日平成24年8月30日出願番号 2012-700109号延長の期間 5年登録年月日平成25年10月23日特許法第67条第2項の政令で定める処分の内容(1) 特許権の存続期間の延長理由となる処分薬事法第14条第9項に規定する医薬品に係る同項の承認(2) 処分を特定する番号承認番号 22200AMX00299000(3) 処分の対象となった物プレガバリン(販売名:リリカカプセル150mg)(4) 処分の対象となった物について特定された用途線維筋痛症に伴う疼痛 10 出願年月日平成25年4月26日出願番号 2013-700062号延長の期間 5年登録年月日平成26年4月23日特許法第67条第2項の政令で定める処分の内容(1) 特許権の存続期間の延長理由となる処分薬事法第14条第9項に規定する医薬品に係る同項の承認(2) 処分を特定する番号承認番号 22200AMX00297000(3) 処分の対象となった物プレガバリン(販売名:リリカカプセル25mg)(4) 処分の対象となった物について特定された用途神経障害性疼痛,線 (3) 処分の対象となった物プレガバリン(販売名:リリカカプセル25mg)(4) 処分の対象となった物について特定された用途神経障害性疼痛,線維筋痛症に伴う疼痛(末梢性神経障害性疼痛,線維筋痛症に伴う疼痛を除く) 11 出願年月日平成25年4月26日出願番号 2013-700063号延長の期間 5年登録年月日平成26年4月23日特許法第67条第2項の政令で定める処分の内容(1) 特許権の存続期間の延長理由となる処分薬事法第14条第9項に規定する医薬品に係る同項の承認(2) 処分を特定する番号承認番号 22200AMX00298000(3) 処分の対象となった物プレガバリン(販売名:リリカカプセル75mg) (4) 処分の対象となった物について特定された用途神経障害性疼痛,線維筋痛症に伴う疼痛(末梢性神経障害性疼痛,線維筋痛症に伴う疼痛を除く) 12 出願年月日平成25年4月26日出願番号 2013-700064号延長の期間 5年登録年月日平成26年4月23日特許法第67条第2項の政令で定める処分の内容(1) 特許権の存続期間の延長理由となる処分薬事法第14条第9項に規定する医薬品に係る同項の承認(2) 処分を特定する番号承認番号 22200AMX00299000(3) 処分の対象となった物プレガバリン(販売名:リリカカプセル150mg)(4) 処分の対象となった物について特定された用途 処分の対象となった物プレガバリン(販売名:リリカカプセル150mg)処分の対象となった物について特定された用途神経障害性疼痛,線維筋痛症に伴う疼痛(末梢性神経障害性疼痛,線維筋痛症に伴う疼痛を除く)以上 (別紙) 図面目録 【図1a】 【図1b】 【図1c】 【図1d】 【図1e】 【図1f】 【図2a】 【図2b】 【図3a】 【図3b】 【図4a】 【図4b】 【図4c】 【図5a】 【図5b】 【図5c】 【図6a】 【図6b】 以上
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