- 1 -主文 原判決を次のとおり変更する。 (1)被控訴人が控訴人に対して平成9年12月19日付けでした重加算税賦課決定のうち,370万2000円を超える部分を取り消す。 (2)控訴人のその余の請求を棄却する。 訴訟の総費用は,これを5分し,その3を被控訴人の負担とし,その余を控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 被控訴人が控訴人に対して平成9年12月19日付けでした過少申告加算税賦課決定及び重加算税賦課決定をいずれも取り消す。 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 第2事案の概要 控訴人は,平成2年9月,昭和62年に6836万5000円で買い受けた川崎市α××××番2雑種地328平方メートル外8筆の土地(以下「本件土地」という)を1億3000万円で売却し譲渡所得を得たことから,平成3。 年3月3日,平成2年分の所得税に係る確定申告及び納税手続の税務代理をA税理士に委任したところ,A税理士は,B税務署員と共謀して控訴人の課税資料を廃棄させ,控訴人の平成2年分所得として事業所得のみを申告し,本件土地についての譲渡所得税を申告することなく,控訴人から預かった1800万円を領得した。上記事実が発覚した後の平成9年12月12日,控訴人は,平成2年分所得税につき,本件土地の譲渡に係る所得を加えた修正申告をし,納付すべき税額を納付し,これを受けて,被控訴人は,平成9年12月19日,控訴人の平成2年分の所得税について,事業所得に係る税額の過少分につき過少申告加算税賦課決定(税額1万1000円。以下「本件過少申告加算税賦課- 2 -決定処分」という)をし,譲渡所得に係る税額につき重加算税賦課決定(税。 。 「」。)。 額880万9500円以下本件重加算税 (税額1万1000円。以下「本件過少申告加算税賦課- 2 -決定処分」という)をし,譲渡所得に係る税額につき重加算税賦課決定(税。 。 「」。)。 額880万9500円以下本件重加算税賦課決定処分というをした課税経過及び計算は別紙1のとおりである。 本件は,本件過少申告加算税賦課決定処分及び本件重加算税賦課決定処分に対し,控訴人が,①平成2年分の所得税についての賦課決定は国税通則法(以下「通則法」という)70条4項の期間制限以後に行った点で違法であり,。 また,②控訴人が隠ぺい仮装の行為を行った事実もなく重加算税の課税要件も具備していない,③控訴人には,過少申告につき通則法65条4項に規定する正当な理由があると主張して,各賦課決定(以下「本件各賦課決定処分」という)の取消しを求めている事案である。 。 原審は,控訴人が通則法68条1項に規定する隠ぺい又は仮装の行為をし,同法70条5項に規定する偽りその他不正の行為により税額を免れているので,本件各賦課決定処分は同法70条4項所定の除斥期間後にされているが同条5項により適法であり,隠ぺい又は仮装されていない控訴人の事業所得の申告もれについても同法65条4項に規定する正当な理由が認められないとして,控訴人の請求をいずれも棄却したので,控訴人が控訴した。 差戻前の第2審は,控訴人が通則法68条1項に規定する隠ぺい又は仮装の行為をしたこと及び同法70条5項に規定する偽りその他不正の行為により税額を免れた行為をしたことのいずれも認められないから,本件各賦課決定処分は同条4項の期間経過後にされた違法なものであると判断して,原判決を取り消して,本件各賦課決定処分を取り消したので,被控訴人が上告した。 上告審は,通則法70条5項は,納税者から申告の委任を受けた者が偽りその他不正の行為を行 れた違法なものであると判断して,原判決を取り消して,本件各賦課決定処分を取り消したので,被控訴人が上告した。 上告審は,通則法70条5項は,納税者から申告の委任を受けた者が偽りその他不正の行為を行い,これにより納税者が税額の全部又は一部を免れた場合にも適用されるものというべきであるとして,同項の適用を認め,差戻前の第2審が認定した事実関係によれば,控訴人は,A税理士が架空経費の計上など違法な手段により税額を減少させようと企図していることを了知していたとみ- 3 -ることができるから,特段の事情のない限り,被上告人は同税理士が本件土地の譲渡所得につき架空経費を計上するなど事実を隠ぺいし,又は仮装することを容認していたと推認するのが相当であり,被上告人とA税理士との間に本件土地の譲渡所得につき事実を隠ぺいし,又は仮装することについて意思の連絡があったと認められるのであれば,通則法68条1項に規定する重加算税の賦課の要件を充足するというべきである等として,差戻前の第2審の判決を破棄し,被上告人とA税理士との間に前記意思の連絡があったと認められるかどうか等について審理を尽くさせるため,本件を差し戻した。 争点及び争点に関する当事者の主張(1)賦課決定の除斥期間の例外を定める通則法70条5項の適用の有無【被控訴人】①控訴人は,重加算税を賦課されるべき「偽りその他不正の行為」によって本件土地の譲渡に係る所得税額を免れたのであるから,通則法70条5項の規定により,加算税の納税義務成立の日である法定申告期限の経過の時から7年を経過する前にされた本件各賦課決定処分は適法である。 ②納税者から納税手続を受任した者の行為は,原則としてその効果が本人に帰属し,受任者の行為が納税者の行為と同一視でき,受任者による隠ぺい又は仮装の行為がされた以上, 件各賦課決定処分は適法である。 ②納税者から納税手続を受任した者の行為は,原則としてその効果が本人に帰属し,受任者の行為が納税者の行為と同一視でき,受任者による隠ぺい又は仮装の行為がされた以上,その選任,監督について納税者に過失がない場合を除き,受任者の申告の効果が納税者に帰属する。 【控訴人】控訴人には,脱税をする意思も脱税のための積極的な行為もなく「偽り,」,その他不正の行為によりその全部又は一部の税額を免れた事実はないから通則法70条4項の規定により,納税義務の成立の日から5年を経過した平成8年3月16日以後,平成2年分の所得税に係る加算税の賦課決定を行うことは許されない。 なお,本件上告審判決は,控訴人が委任したA税理士に偽りその他不正の- 4 -行為があればよいとするもののようであるが,A税理士の行為は,控訴人による委任の範囲を明白に越えてされており,上記上告審判決の判断の拘束力は及ばないものというべきである。 (2)重加算税の賦課要件たる通則法68条1項の事由の有無【被控訴人】①本件重加算税賦課決定処分の適法性控訴人は,下記のとおり,A税理士が控訴人の所得税をほ脱させることを容認した上で,具体的方法をA税理士に委ね,脱税報酬を含め,又はそ,,の全額が報酬に充てられても異存はないとの意思の下にA税理士に対し1805万円を支払い,A税理士が確定申告書を提出し,これにより,当初から所得を過少に申告することを意図した上で,同税理士の「隠ぺい又は仮装」の行為によって,本件土地の譲渡に係る所得税を免れた。 すなわち,A税理士は,平成3年2月末ころ,控訴人から本件土地の譲渡所得に係る所得税について相談を受け,裏付け資料等を示されることなく事情を聴取しながら別紙2のメモ(以下「本件メモ」という)を作成。 し,本件メモ 士は,平成3年2月末ころ,控訴人から本件土地の譲渡所得に係る所得税について相談を受け,裏付け資料等を示されることなく事情を聴取しながら別紙2のメモ(以下「本件メモ」という)を作成。 し,本件メモを控訴人に示しながら税額が約2600万円になると説明した。その際,経費に加えられた本件土地の購入に係る手数料207万円,本件土地の売却に係る買手の紹介料356万円及び草刈費用60万円については,実際には支払っていない架空経費であった。控訴人は,脱税手段の概略について説明を受け,購入手数料,紹介料及び草刈費用等の架空の経費を計上して税額を計算することを明確に認識しながら,これを積極的に認容し,納税額が約800万円低くなる理由について説明を受けることなく,A税理士に確定申告手続を依頼したものである。A税理士も,正規の税額を約2600万円という計算をしておきながら1800万円以内の納税しかせずに済まそうという話であるから,これがいわゆる脱税行為であることは控訴人も当然分かっているはずであると認識していた。 - 5 -控訴人は,A税理士が架空経費の計上など違法な手段により税額を減少させようと企図していることを了知していたものであるから,特段の事情のない限り,A税理士が本件土地の譲渡所得につき架空経費を計上するなど事実を隠ぺいし,又は仮装することを容認していたものと推認され,その間に意思の連絡があると認められるべきものであり,通則法68条1項所定の重加算税の賦課決定の要件は充足されている。 仮に,控訴人がA税理士に支払った1800万円に納税資金が含まれるとしても,重加算税は,その対象について納税者の認識を考慮する必要はなく,客観的に生じた過少申告の結果に対して賦課され,控訴人が譲渡所得税の全額について脱税することまでは意図していなかったとしても,納 ても,重加算税は,その対象について納税者の認識を考慮する必要はなく,客観的に生じた過少申告の結果に対して賦課され,控訴人が譲渡所得税の全額について脱税することまでは意図していなかったとしても,納税すべき額と1800万円の差額ではなく,納税を免れた金額の全額について賦課される。 ②他人による隠ぺい又は仮装の行為ア通則法68条1項にいう「納税者」は,納税者本人に限られず納税者以外の者で,納税者本人と同視し得る者を含む。 イ納税者が納税手続を他人に委任した場合,受任者の行為は原則としてその効果が本人たる納税者に帰属し,納税者の行為と同一視できるとい,,,うべきで受任者による隠ぺい又は仮装の行為がされた以上その選任監督について納税者に過失がないと認められる場合を除き,受任者の申告の効果が納税者に帰属し,重加算税の賦課要件を満たし,かつ,通則法70条5項の偽りその他不正の行為の要件を満たす。 ウ本件において,A税理士は,控訴人から申告手続を依頼され,隠ぺい又は仮装の行為に及んでおり,A税理士の行為は控訴人の行為と同視し得るというべきで,控訴人は,A税理士が架空の経費を計上することを知りながら黙認し,確定申告書の内容を確認しておらず,選任,監督について過失がなかったとはいえないのであって,A税理士の隠ぺい又は- 6 -仮装の行為についての控訴人の認識のいかんにかかわらず,重加算税の賦課要件が満たされる。 ③税理士による隠ぺい又は仮装の行為ア税理士による隠ぺい又は仮装の行為について,当該税理士に委任した納税者に重加算税を賦課すべきかどうかは,税理士による当該行為によって生じた国家的損失を当該納税者の負担によって補填させるのが公平か,当該納税者に補填させず国家の損失,即ち,他の正当な申告納付義務の履行者全体の損失のまま止めるこ うかは,税理士による当該行為によって生じた国家的損失を当該納税者の負担によって補填させるのが公平か,当該納税者に補填させず国家の損失,即ち,他の正当な申告納付義務の履行者全体の損失のまま止めることが公平かという観点から決すべきで,かかる観点からすれば,納税者が税理士に隠ぺい又は仮装の行為やそれに基づく過少申告を指示したか否か,あるいは,納税者が税理士による隠ぺい又は仮装の事実やその具体的方法を知悉していたか否かにかかわらず,税理士に納税手続を委任した以上,選任,監督に過失がないことを立証しない限り,当該税理士の行為は納税者の行為と同視すべきで,重加算税の賦課がされるべきである。 イ控訴人は,A税理士から,税額約2600万円を2310万円に減額するに当たり,C有限会社(以下「訴外会社」という)に対する紹介。 料や本件土地の草刈費用等の架空経費を計上すると説明を受け「全部,で1800万円でやってあげますよ」と言われ,脱税に当たると認識。 ,,しつつ納税と報酬を含めて1800万円で済むと考えて委任しており職務の公正を疑わせる事情のあるA税理士の選任を中止することも,不正行為に及ぶことのないように監督することもなく,逆に,不正行為を,,。 利用して脱税を図ろうとしたのであり選任監督について過失がある④仮定主張控訴人が納税を免れた全額について重加算税の賦課要件を満たさないとしても,A税理士に渡した1800万円を超える部分は,控訴人とA税理士との委任契約の趣旨に基づくもので,少なくとも,重加算税の賦課要件- 7 -を満たす。 【控訴人】①A税理士は,控訴人から,平成2年分の所得税の申告及び納付の手続を受任し,1800万円を預かり,控訴人について虚偽の転入通知をし,B,,税務署員が課税資料を廃棄する方法により控訴人の所 人】①A税理士は,控訴人から,平成2年分の所得税の申告及び納付の手続を受任し,1800万円を預かり,控訴人について虚偽の転入通知をし,B,,税務署員が課税資料を廃棄する方法により控訴人の所得税申告を妨害し1800万円を横領したのであり,控訴人は,不正行為に巻き込まれ,濡れ衣を着せられたのである。 控訴人は,脱税する意思はなく,脱税のための積極的な行為もなかったものであり,A税理士も控訴人に対し,隠ぺい又は仮装の行為をする旨を表示したこともない。まして,控訴人は,A税理士が架空経費の計上など違法な手段により税額を減少させようと企図していることを了知していたことはなく,A税理士が本件土地の譲渡所得につき架空経費を計上するなど事実を隠ぺいし,又は仮装することを容認していたものでもなく,A税理士との間に意思の連絡があったものでもないから,通則法68条1項所定の重加算税の賦課決定の要件は充足されていない。 ア控訴人の検察官に対する供述調書(乙8。以下「本件検面調書」という)中には,A税理士から説明を受けた際,虚偽の経費を計上するな。 どして申告を行い,不正に税金を安く済ませることを理解しており,大変悪いことをしたと深く反省しているとの記載があるが,控訴人は,当初から脱税の意思はなかったと述べ,訂正を求めていたが,東京地検の西山卓爾検事(以下「西山検事」という)から,連日にわたる取調べ。 と台湾人は嘘つきで嫌いだとの差別的発言を受け,偽りの転居届をしたと決めつけられ,大学教授の地位を失うのではないかと混乱に陥り,当時,危篤状態にあった台湾在住の父親を訪問する必要があったほか,所得税法違反は公訴時効が成立していて起訴されることはなく,A税理士の責任のみを追及するためである等と言われ,取調べから免れるため,- 8 -事実に反する供述調 の父親を訪問する必要があったほか,所得税法違反は公訴時効が成立していて起訴されることはなく,A税理士の責任のみを追及するためである等と言われ,取調べから免れるため,- 8 -事実に反する供述調書に署名押印したものであり,上記供述部分は,任意性及び信用性を欠くものである。 また,東京国税局調査官に対する聴取書(乙9)中にも,任せて貰えれば1800万円に安くしてくれると話されて乗ってしまい「Aに税,金が安くなると持ち掛けられそれにのり不正な申告をしたことは私の不。」,徳の致すところで非常に申し訳なく思っていますとの部分があるが控訴人は,上記のとおり,検察官から連日にわたる苛酷な取調べを受けて疲労困憊し,判断力が低下した状態にあり,事実と異なる聴取書に署名押印したのであり,上記部分も任意性及び信用性を欠くものである。 イ控訴人は,本件土地取得後,平成2年9月に売却するまでの3年間,留学生に年3回の草刈りと年1回の土留作業を依頼し,1回に4,5人の留学生が作業に従事し,アルバイト代として1人1回1万円を支給しており,これら草刈り等の費用として合計約60万円を負担していたので,A税理士がメモに記載した草刈費用は架空経費ではなく,控訴人には架空経費との認識はなかった。 ウ本件メモのうち「内紹介料356万・・・・・C有限会社」との記,載は,A税理士がメモしたものではない。平成3年3月になって控訴人が妻Dに本件メモを見せた際,Dが有限会社Eに仲介手数料を支払ったのであれば,Eを控訴人に紹介した訴外会社(Dが代表取締役をしている会社)にも紹介料を払って欲しいと言って,上記のとおり記載したものである。したがって,A税理士及び控訴人は,上記紹介料356万円を本件土地譲渡の際の経費とは全く考えていなかったものであり,架空経費計上の根拠とな 料を払って欲しいと言って,上記のとおり記載したものである。したがって,A税理士及び控訴人は,上記紹介料356万円を本件土地譲渡の際の経費とは全く考えていなかったものであり,架空経費計上の根拠となるものではない。 ②A税理士は,所得税の申告手続を受任しながら,控訴人の意思とは全く反対に,B税務署員と共謀して,控訴人の納税資金を着服横領したのであり,控訴人のために行為をしたとはいえず,その法律効果が控訴人に帰属- 9 -することはない。 ③控訴人は,次のとおり,A税理士の選任及び監督について過失がなかった。 ア控訴人は,税務知識がなく,知人のFに照会して,資格のある税理士であることを確認し,A税理士に対し,平成2年分の譲渡所得の申告手続を依頼した。 イ控訴人は,A税理士に申告手続を委任し,納税資金1800万円を預け,税務代理報酬5万円を支払い,預り証及び領収書を受領しており,A税理士がB税務署員と共謀して納税資金を横領する意図であったことを知る由もなかった。 ウ控訴人は,税務知識に乏しく,当時多忙を極めており,A税理士を信頼して申告手続を一任し,その後,妻Dを介して納税が完了したとの報,,告を受け平成2年分の所得税の納税は終了したと考えていたのでありA税理士について「職務の公正を疑わせる事情」は存在せず,選任を中止し,又は監督する必要を感じなかった。 ④仮に,控訴人が本件メモに基づき架空経費の計上の方法による税額800万円に係る隠ぺい又は仮装について認容する意思を表示したとしても,A税理士が実行した事績書廃棄の方法による不申告についての意思の連絡はない。この場合,A税理士の意思は,事績書廃棄の方法による,税額2600万円の脱税であるから,控訴人とA税理士との間には,隠ぺい又は仮装の態様,目的とする金額がいずれにおいても ついての意思の連絡はない。この場合,A税理士の意思は,事績書廃棄の方法による,税額2600万円の脱税であるから,控訴人とA税理士との間には,隠ぺい又は仮装の態様,目的とする金額がいずれにおいても全く一致せず,両者の間に意思の連絡は認められない。 また,控訴人は,A税理士に対し,1800万円を納税資金として交付したものであり,1800万円に相応する所得額については,隠ぺい又は仮装の意思の連絡は全くなかったものである。 ⑤本件は,控訴人の与り知らないところの土地の譲渡所得の課税資料に対- 10 -する国の杜撰な管理に起因し,これに元及び現税務署員が結託したことから生じたもので,税務当局に重大な落度がみられるものであり,被控訴人が本税だけでなく,重加算税まで徴収しようとすることは,徴税権の濫用であり,本件重加算税賦課決定処分は違法である。 (3)過少申告についての正当な理由(通則法65条4項)【被控訴人】①本件過少申告加算税賦課決定処分について控訴人は,平成2年分の所得税の確定申告において,事業所得の金額の計算上,収入を過少に申告するとともに必要経費を過大に計上することにより事業所得の金額を過少に申告しており,事業所得の金額が過少申告となったことについて通則法65条4項に規定する正当な理由があるとは認められないから,同条1項の規定により過少申告加算税が賦課される。 ②本件重加算税賦課決定処分について仮に,本件重加算税賦課決定処分について,通則法68条1項所定の加重事由である納税者による「税額の計算の基礎となる事実の全部又は一部について隠ぺい又は仮装の行為」が存在することが認められない場合においても,少なくとも,過少申告加算税額に相当する額を超えない部分は適法というべきである。 【控訴人】控訴人の平成2年分の所得税の申告が過少 隠ぺい又は仮装の行為」が存在することが認められない場合においても,少なくとも,過少申告加算税額に相当する額を超えない部分は適法というべきである。 【控訴人】控訴人の平成2年分の所得税の申告が過少となったのは,上記のとおり,A税理士及びB税務署員による妨害のためであって,被控訴人の行政処理や指導が的確を欠いたのであり,納税者のみにその責めを帰することは酷であり,このような事情は通則法65条4項に規定する「正当な理由」その他真にやむを得ない事情がある場合に該当し,控訴人に対して過少申告加算税を課すことは許されない。 控訴人は,検察官による苛酷な取調べが終了した直後の平成9年12月初- 11 -,,,,旬修正申告について税務署職員の調査を受け同月12日いわれるまま,(「」同職員が下書きした書面を写すことにより修正申告以下本件修正申告という)をしたが,当時,未だ心身の疲労から脱却されない諸症状に継続。 的に悩まされ,税務署職員による調査結果を十分理解できないまま,いわれ,「」,るとおり修正申告をしたのであって不当若しくは酷になる場合であり通則法65条4項に規定する「正当な理由」があるというべきである。 第3当裁判所の判断当裁判所は,控訴人の請求は本件重加算税賦課決定処分のうち,370万2000円を超える部分の取消しを求める限度で理由があり,その余は理由がないものと判断する。その理由は,次のとおりである。 争点(1)について検討する。 通則法70条5項は,納税者本人が偽りその他不正の行為を行った場合に限らず,納税者から委任を受けた者が偽りその他不正の行為を行い,これにより納税者が税額の全部又は一部を免れた場合にも適用されるものと解すべきであるところ(本件上告審判決参照,本件において,控訴人が平成2年分の所得) 委任を受けた者が偽りその他不正の行為を行い,これにより納税者が税額の全部又は一部を免れた場合にも適用されるものと解すべきであるところ(本件上告審判決参照,本件において,控訴人が平成2年分の所得)税の申告手続をA税理士に委任し,同税理士が偽りその他不正の行為を行い,これにより納税者である控訴人が平成2年分の所得税に係る税額の一部を免れたことについては争いがないから,同条5項2号の期間内にされた本件各賦課決定処分に,同条4項に規定する除斥期間経過後であることの違法は認められない。 この点につき,控訴人は,A税理士の行為は,控訴人による委任の範囲を越えたものであるから,上記上告審判決の判断の拘束力は及ばないと主張する。 しかし,通則法70条は,課税(賦課)権について時的限界を規定するものであり,通則法73条3項に規定する徴収権の消滅時効と同様,納税義務自体の消長又は納税義務の多寡を規定するものではない。そして,通則法70条5項は,同条4項で賦課権の除斥期間を規定した国税についても,偽りその他不正- 12 -の行為による申告行為等,課税当局の発見,調査が妨げられるような事情があった場合に,その例外を規定するものであって,これは偽りその他不正の行為をした者への制裁を目的としたものではない。したがって,納税者,その補助者又は代理人によるものであっても,納税者の納税義務の確定手続において客観的に「偽りその他不正の行為により全部又は一部の税額を免れ」たとの事実がある場合には,納税者自身が具体的な偽りその他不正の行為を意図し,又は,,指示したか否かを問うことなく同条5項が適用されるものと解すべきであり本件上告審判決の上記説示も同趣旨を説くものと解すべきである。 過少申告加算税について(1)申告納税額につき修正申告又は更正がされたときは,新 うことなく同条5項が適用されるものと解すべきであり本件上告審判決の上記説示も同趣旨を説くものと解すべきである。 過少申告加算税について(1)申告納税額につき修正申告又は更正がされたときは,新たに納付すべきこととなった税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税が課せられる(通則法65条1項。これは,過少申告に対)して経済的不利益を与えることにより,より正確な申告を一般的に奨励し,申告納税方式による税の税額の確定を円滑ならしめることを目的とするものであり,過少申告となったことの原因や,納税者の認識や過失の有無を問うものではない。 (2)もっとも,納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちにその修正申告又は更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて,単なる租税法令の不知又は誤解を超えて,真にやむを得ない理由があるときは,「正当な理由」があるものとして,その正当な理由があると認められる事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除して,過少申告加算税を算出することとなる(通則法65条4項。そして,この過)少申告加算税の例外事由である「正当な理由」の主張立証責任は,納税者にあるものと解すべきである(最高裁平成11年6月10日第一小法廷判決・裁判集民事193号315頁参照。 )(3)また,過少申告加算税の要件を満たす場合で,納税者が課税標準等又は- 13 -,,税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装しその隠ぺいし,又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき,,()。 は過少申告加算税に代えて重加算税が賦課される通則法68条1項重加算税の制度は,税務行政を混乱させて余分な徴税コストを負担させたという国家的損失を補填さ 書を提出していたとき,,()。 は過少申告加算税に代えて重加算税が賦課される通則法68条1項重加算税の制度は,税務行政を混乱させて余分な徴税コストを負担させたという国家的損失を補填させるとともに,一般的に正確な申告を奨励するに止まらず,悪質な納税義務違反に対するより大きな経済的制裁を課することにより悪質な納税義務違反行為への誘因を減殺し,申告納税制度による適正な徴税の実現を確保しようとするものである。そして,この制度目的及び法の文理に従えば,重加算税の賦課要件としては,過少申告の計算の基礎となるべき事実につき客観的に隠ぺい又は仮装の行為があり,この隠ぺい,仮装の行為に合わせた申告がされるというだけでは足りず,その隠ぺい,仮装の行為が納税者の行為と評価し得る(納税者に帰責すべき)事由が必要である。 もっとも,この場合,納税者自身が資料の隠匿,隠ぺい又は仮装等の積極的な行為をすることまでの必要はなく,当該隠ぺい又は仮装の行為をした補助者又は代理人が過少申告の計算の基礎となるべき事実につき架空経費の計上などの違法な手段により税額を減少させようと企図していることを了知していたなど,隠ぺい又は仮装の行為がされることを容認し,その間に意思の連絡がある場合には,上記通則法68条1項所定の重加算税の賦課の要件を充足するものというべきである。また,補助者又は代理人のした隠ぺい又は仮装の行為が納税者の意図し又は委任した行為とその態様を異にし,又はその態様において過大であったとしても,納税者の目的が納税の一部又は全部を免れることにある以上,隠ぺい又は仮装の行為の態様を異にし又はその態様が過大であることは納税者の目的に反するものではないから,特段の事情のない限り,納税者は使者又は代理人による当該隠ぺい又は仮装の行為をも容認していたものと推認さ 仮装の行為の態様を異にし又はその態様が過大であることは納税者の目的に反するものではないから,特段の事情のない限り,納税者は使者又は代理人による当該隠ぺい又は仮装の行為をも容認していたものと推認される。 この点につき,被控訴人は,納税者が納税手続を他人に委任した場合には- 14 -受任者の行為は原則としてその効果が本人たる納税者に帰属し,納税者の行為と同一視すべきであると主張するが,上記のとおり重加算税が納税者の悪質な行為への誘因を減殺することにあることからすれば,上記の意思連絡等がある場合に限定されないとしても,受任者の隠ぺい又は仮装行為を納税者自身に帰責すべき事由が存することを要すると解すべきである。 そして,重加算税が過少申告加算税の加重形態であることからすれば,その要件は,課税庁において立証すべきものと解すべきである。 (4)通則法65条の規定による過少申告加算税と同法68条1項の規定による重加算税とは,相互に無関係な別個独立の処分ではなく,上記のとおり重加算税は過少申告加算税の加重形態として理解されるから,重加算税賦課決定は,過少申告加算税において賦課されるべき一定の税額に加重額に当たる一定の金額を加えた額の税を賦課する処分として,過少申告加算税の賦課に相当する部分をその中に含んでいるものと解される(最高裁昭和58年10月27日第一小法廷判決・民集37巻8号1196頁参照。 )したがって,同法68条1項による重加算税の賦課決定に対する取消訴訟において,同項所定の加重事由は認められないが,同法65条所定の過少申告加算税の賦課要件の存在が認められる場合には,上記賦課決定のうち過少申告加算税額に相当する額を超える部分のみを取り消すことができるものと解するのが相当である。 本件の事実経過について証拠(甲1ないし4,7,8,1 在が認められる場合には,上記賦課決定のうち過少申告加算税額に相当する額を超える部分のみを取り消すことができるものと解するのが相当である。 本件の事実経過について証拠(甲1ないし4,7,8,10の1~4,12ないし14,18ないし20,26ないし28,29ないし34の各1・2,35ないし39,乙1ないし10,12,14,15,当審証人D,当審控訴人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (),,,(1)控訴人西暦▲年▲月生はG大学卒業後H大学教育学部を卒業しI大学大学院教育学研究科教育社会学修士課程・同博士課程を修了し,I大- 15 -学から教育学博士を授与され,日本国内の6大学の教授又は講師を歴任しており,主要担当科目は教育社会学である(甲7。控訴人は,昭和40年2)月にDと婚姻し,平成2年当時はJ大学文学部の教授をしていたほか,H大学,K大学,L大学及びM大学で非常勤講師をしていた(乙15。妻のD)は,元K大学文学部初等教育学科の非常勤講師等をする傍ら,身体障害者らと設立した訴外会社の代表取締役に就任していた(甲39。 )(2)控訴人は,細かい金銭の計算や納税申告などの事務を不得手としていたため,平成2年までは,大学教授として得る収入について,勤務先で秘書的業務をしていた事務員に申告書の作成を依頼し,同年3月に平成元年分の所得税の申告の際は,銀行口座から引き落として納税するための手続をとっていた。 (3)控訴人は,友人のNの紹介により,昭和62年10月に本件土地を6836万5000円で購入し,その資金は,株式会社O銀行から5000万円の融資を受け,台湾在住の父P及び姪から合計1480万円の借入れをしたほかは自己資金によった。 なお,控訴人は,当時,Nに対して約300万円の貸金債権があっ その資金は,株式会社O銀行から5000万円の融資を受け,台湾在住の父P及び姪から合計1480万円の借入れをしたほかは自己資金によった。 なお,控訴人は,当時,Nに対して約300万円の貸金債権があったが,同人に対する仲介手数料の弁済とする趣旨で,この債権を免除した(当審控訴人24頁,32頁。なお,後記のとおり,控訴人の供述を厳密な意味で法的に解釈することは相当でなく,控訴人が「相殺」とする供述も,上記購入額の概数6900万円の3%相当額である207万円を明確な報酬と定めた,。)。 ,上で相殺の意思表示をしたものと解することはできないこの点につき被控訴人は,本件検面調書(乙8・15頁)で控訴人がNに対して謝礼として金銭を渡したことがない旨供述していること等から,仲介手数料207万円は架空経費であるとするが,控訴人は上記のとおり,差引勘定(世俗的意味で相殺)で処理したと供述しているのであり,実際に現金の支払(授受)がないことと矛盾しない。 - 16 -,,,,また控訴人は本件土地取得後平成2年9月に売却するまでの3年間留学生に年3回の草刈りと年1回の土留作業(本件土地の横を流れている小川の水流によって沿岸が崩れないようにするための作業)を依頼し,1回に4,5人の留学生が作業に従事していた。控訴人は,アルバイト代として1人に1万円を支給していたほか,食事等も提供しており,これら草刈に際して合計約60万円を負担していた(甲36,当審控訴人。この点につき,)被控訴人は,本件検面調書では,控訴人が草刈費用を支払った事実はないから架空経費であると主張するが,控訴人は,本件検面調書において,本件土地を売却するために敢えて草刈りをしたことはない,このような費用は払っていないと供述しているのであって,ここでの供述の趣旨は「本件土地を売 であると主張するが,控訴人は,本件検面調書において,本件土地を売却するために敢えて草刈りをしたことはない,このような費用は払っていないと供述しているのであって,ここでの供述の趣旨は「本件土地を売却するために敢えて」草刈りをしたか否かに対してである。控訴人は,当初居住予定地として本件土地を購入し,その後通勤に不便と思われたことから学生寮の建築等を検討していたものであり,その間の土地の管理として草刈等を行い,アルバイト代等の費用を支払っていた旨を供述しているのであるから,本件検面調書の記載は上記認定の妨げになるものではない。 (4)控訴人は,平成2年9月5日,Eの仲介で本件土地を1億3000万円で株式会社Qに譲渡し(甲26,同月19日には代金決済のうえ移転登記)を了し(乙8,同年12月30日にはEに仲介手数料396万円を支払っ)た(甲27。なお,控訴人は,上記O銀行からの融資については昭和62)年10月23日から平成2年9月19日までの利息として756万7466円を支払い(乙8,また,親族2名からの借入金1480万円については)昭和62年10月1日から平成2年10月1日までの利息として合計377万4000円を支払い(甲29ないし34の各1・2,支払った借入利息)は合計1134万1466円になる。 (5)控訴人は,多額の譲渡所得を得たことから,平成2年分の所得税に係る確定申告については,事務員に委ねることは無理であり,税務知識の不足か- 17 -ら過大な税金を払うことがないよう税務の専門家である税理士に委任することとし,平成3年2月ころ,妻が所有するマンションの賃貸借契約を仲介していた縁で知ったRからA税理士を紹介された。 (6)A税理士(昭和▲年▲月生)は,昭和42年麹町税務署を最後に税務署を退職し,以来,20年余にわた ころ,妻が所有するマンションの賃貸借契約を仲介していた縁で知ったRからA税理士を紹介された。 (6)A税理士(昭和▲年▲月生)は,昭和42年麹町税務署を最後に税務署を退職し,以来,20年余にわたり税理士を開業していた者である。 ところで,不動産譲渡に係る所得税の課税の仕組みとしては,税務署において作成される事績書等の課税資料,譲渡所得を生じた納税義務者の氏名等を登載した譲渡者名簿等に基づき,納税義務者に申告書用紙等を郵送して確定申告を促して徴税が図られていた。そして,事績書等の課税資料は,納税義務者が転居したときは,転居先の所轄税務署に送付されるが,その授受を確認する手続はとられておらず,課税資料の送付を受けた税務署において,これに基づいて譲渡者名簿が作成される前に課税資料が隠匿され,又は廃棄されると,譲渡所得の発生が事実上把握されず,納税義務者は,譲渡所得の申告をしないことにより譲渡所得税の納税を免れることができた。 そこで,A税理士は,昭和44年ないし45年ころから永年にわたり,受任した納税義務者について虚偽の転居通知をし,送付を受けた税務署の署員に課税資料を廃棄させ,当該納税義務者の譲渡所得税を申告しない方法による脱税を実行し,昭和49年ころからはB税務署員と共謀して脱税をし,依,,頼者から預かった納税資金等を納税に使用することなくその全額を領得し共犯であるB税務署員に報酬金を支払っていた(乙3,4。 )(7)A税理士は,平成3年2月下旬ころ,控訴人から本件土地の譲渡所得税の申告について相談を受け,βに所在する控訴人のSの事務所に赴き,控訴人から本件土地の売買契約書,借入資金に係る利息額等の資料をもとに控訴人から,事情を聴取した(乙4・20頁,当審控訴人。なお,控訴人にお)いて裏付け資料等を示さなかった旨の差戻前控訴審 赴き,控訴人から本件土地の売買契約書,借入資金に係る利息額等の資料をもとに控訴人から,事情を聴取した(乙4・20頁,当審控訴人。なお,控訴人にお)いて裏付け資料等を示さなかった旨の差戻前控訴審判決の認定は採用できない。 - 18 -控訴人は,必要経費としては,本件土地購入に関しては,Nへの仲介手数料207万円,銀行借入等の利息があり,また,本件土地の維持管理に要した費用としては,何度か留学生に頼んで草刈り等を実施しアルバイト代を支払っており,領収書等は徴求していなかったものの,草刈費用が60万円位あること,本件土地の譲渡費用としてはEに仲介手数料396万円を支払ったこと等を説明した(乙15,甲36。 )(8)A税理士は,上記資料や控訴人からの事情聴取から必要事項をメモ用紙にメモして,税額を概算して説明した。 その際に作成された本件メモの記載内容は,別紙2のとおりであるが,青色でなぞった部分は原本ではボールペンで記載され,黄色でなぞった部分は原本では万年筆等の水性インクで記載され,赤色部分はサインペンで記載され,その余は鉛筆で記載されている。 鉛筆部分の記載は,上から順に,①「平成2年9月19日「売却◎130,000「購入△69,」」,000」との記載に続き,②昭和62年8月購入の字の右に3段にその必要経費に当たる手「」「」「数料2,070「登記300「印紙100」及びこれら3種の数字」,」,の右にその合計「△2,470」と記載され,③「内紹介料356万・・・・・C有限会社」が行線を跨いで,やや異なる筆致で記載され(3「6」の数字は特徴を見いだし難いが,それで「」,,「」,「,」,「」,も上記 は①の売却◎130 ②の登記300後記④の「手数 なる筆致で記載され(3「6」の数字は特徴を見いだし難いが,それで「」,,「」,「,」,「」,も上記 は①の売却◎130 ②の登記300後記④の「手数料3,960」の各「3」がいずれも右斜めに傾いているのに対し,その傾きの度合いが明らかに異なるうえ「5」に至っては,,上の横「-」の位置が後記⑥の「差引54,000「25,920」」,の各「5」とも明らかに異なる,。)「」「,」,④売却の字の右に4段にその必要経費に当たる手数料3 - 19 -「草刈600「印紙100,と,前3者の数字の右にその合計として」,」「△4,660」との記載があり(なお,手数料396万円はEに支払った仲介手数料(甲27)である,。)⑤区分線の下に「合計」として,上記①②及び④の各右側に記載した購入代金,購入及び売却の各必要経費の合計額である「76.130,」⑥「差引」として,①の売却額1億3000万円から⑤の必要経費の合計額を控除した5387万円の概数と解される「53,000」の「3」に「4」を上書きした「54,000」並びに次行に「地方税8%国税(40%)×「48%」及び5400万円に税率48%を乗じたて求めた」,税額2592万円の表示として「25,920」の記載があり,その下に行を替えて,⑦「◎18,00」との記載があるが,以上の記載における金額は,③を除き,千円単位で記載されている。 ボールペン部分の記載は,右上の「事務長T(×」を「×」と誤記し」「たと認められる跡がある)及び④の「手数料3,960」の前の「○「印」,紙100」の下の「○(利息11,340」及び上記の各○を結び,左下)に向かう矢印及び左下の部分であるが,左下の部分は, たと認められる跡がある)及び④の「手数料3,960」の前の「○「印」,紙100」の下の「○(利息11,340」及び上記の各○を結び,左下)に向かう矢印及び左下の部分であるが,左下の部分は,⑧④の必要経費として④記載のものに加え「利息11,340」をも考()慮した場合の算式と解されるものであり,単位が万円であり,①ないし⑦の鉛筆書き部分とは明らかに異なる筆跡である。なお,その計算式としては「5,4000万(正しくは千)-780万=4620(万「4,)」,620×1/2=2310,さらに上記780万を求める算式「※11」340(千)-350(万)=780(万」との記載がされている。 )赤色サインペン部分は,①,②及び④ないし⑦の説明部分を強調するための指示及び⑨右下の四角で囲われた「26「18「△8」の記載であるが,この数」」- 20 -字は,⑥の税額の概数である2600万円から⑦の1800万円の差額800万円を示すものと認められる。なお,右上方にも,鉛筆での同様の記載が認められる。 水性インクによる部分は,⑩④の「草刈600」の右の「40万と訂正」との記載及び④の「手数()料3,960」を囲み,この囲みから上記「40万と訂正」及び③の記()載の「内」を結ぶ細線であるが「万」の筆致は③の記載と全く異なるも,のである。 (9)本件メモの上記記載内容によれば,筆跡,金額単位の使用法において少なくとも3名の者が,本件メモの記載に関わっているものと認められるところ,その内容に照らし,①,②及び④ないし⑦はA税理士が控訴人の提出資料及び説明に基づいて記載したものであり,⑨のサインペン及び鉛筆の記載は,書き慣れた筆致からみて,A税理士の記載と推認され,①,②及び④ないし⑦による概算結果を100万円単位に 理士が控訴人の提出資料及び説明に基づいて記載したものであり,⑨のサインペン及び鉛筆の記載は,書き慣れた筆致からみて,A税理士の記載と推認され,①,②及び④ないし⑦による概算結果を100万円単位にして,約2600万円の税額が1800万円で納まるとの趣旨を強調したものと認められる。 また,ボールペン書きの数字部分は,その筆跡,金額の単位を誤っていること照らし,A税理士の記載とは認められず,約2600万円の税額が1800万円で納まる旨のA税理士の計算過程に含まれない計算であること,そして,A税理士事務所の事務長の名を同税理士が誤記することは考えにくいことからすると,ボールペン書き部分は,A税理士から約2600万円の税額が1800万円で納まるとの説明を受けた後,控訴人が,経費に算入され,,,なかった借入利息を算入した場合の説明を受けまた連絡等の便宜のため事務長の名を聞いて,記入したものと解することが合理的である。 そして,③の「内紹介料356万・・・・・C有限会社」との記載は,数字の記載,単位の取り方において,以上に検討した部分とは異なる上,行に跨って記載されていることからすると,上記各記載の後に記載されたものと- 21 -認められ,また,⑩の水性インク部分との記載を照合すると,③の記載は裏付資料の存在する④の「手数料3,960」の「内」金として計上され,その場合には,④の金額396万円が,これと③の金額356万円との差額40万円になる旨が水性インクで記載されたものと認められる。そうする,A税理士の税額の概算のためには裏付けのある④の「手数料3,960」で十分であり,その一部を裏付けのない経費に置き換えることは税額の概算に影響しない上,過大経費の計上にも役立たないから,③の記載部分はA税理士の税額概算過程で考慮されたものではないと認 3,960」で十分であり,その一部を裏付けのない経費に置き換えることは税額の概算に影響しない上,過大経費の計上にも役立たないから,③の記載部分はA税理士の税額概算過程で考慮されたものではないと認められる。すなわち,③の部分は,A税理士の税額算定における経費として取り上げる意味のない記載というほかなく,税額の計算とは無縁な記載と解することが合理的である。 この点に関する甲38,39及び当審証人Dの証言は,Eに仲介手数料を支払ったのであれば,Eを控訴人に紹介した訴外会社(Dが代表取締役をしている身体障害者らで設立した会社)にも紹介料を払って欲しいと言った際の記載であるとする。この記載が譲渡所得に係る税額に関連したものであるとすると,上記のとおり意味不明の記載というほかないが,上記のとおり,税額算定過程と無縁な記載であることからすれば,譲渡所得の税額に関する話題から,Eへ支払った手数料との対比において,Dが控訴人の譲渡利益からDの事業への協力を依頼した際のメモと解することが可能であり,いずれにしても,この記載がA税理士の税額概算に利用されたものと認めることはできず,この点において,③の部分がA税理士に述べられた架空経費である旨の差戻前控訴審判決の認定は採用できない。 (10)控訴人は,A税理士に相談した当日には直ちに依頼することなく,I大学の研究室に在籍時以来の知人で当時都知事の秘書であったFがかつて都の主税局に勤務していたと聞いていたことから,同人にA会計事務所について確認したところ,A税理士が資格のある税理士であり,ちゃんとした事務所であるとの確認を得たうえで,数日後,A税理士に対し,委任する意向を電- 22 -話で告げた。 控訴人は,平成3年3月6日,A税理士から手数料は取り敢えず5万円と言われて,A税理士に対し,税務代理報酬5 との確認を得たうえで,数日後,A税理士に対し,委任する意向を電- 22 -話で告げた。 控訴人は,平成3年3月6日,A税理士から手数料は取り敢えず5万円と言われて,A税理士に対し,税務代理報酬5万円を支払い,東京税理士会会員用の領収書用紙による税務代理報酬5万円の領収書(甲3)を受領し,また,納税資金として(乙8・36頁)1800万円を交付して,コクヨの便せんに記載された預り證(甲1)を受領し,さらに,A税理士に対する同月3日付け委任状(甲2)を作成交付した。その後,控訴人は,税務申告のため必要な資料である本件土地の譲渡に関する書類,給与所得に関する書類等をA税理士に送付した。 控訴人は,A税理士に依頼する際,A税理士から1800万円で納税資金が不足する場合は,また請求すると言われており,控訴人も不足する場合には追加して支払う旨を伝えていた(当審控訴人,乙9。 )(11)A税理士は,B税務署員と共謀のうえ以前から行っていた脱税を控訴人の譲渡所得税の申告手続においても行うこととし,平成3年2月中旬ころから3月上旬ころにかけて,虚偽の転居通知をして荻窪税務署に控訴人外6名の平成2年分の譲渡所得に係る課税資料を送付させ,同署に勤務していたB税務署員にこれを廃棄させた。その上で,A税理士は,同年3月15日,被控訴人に対し,控訴人の平成2年分の所得税につき,総合課税の所得金額999万3048円,納付すべき税額7100円とする確定申告書を提出し,本件土地の譲渡に係る譲渡所得については申告も,納税もせず,控訴人から納税資金として預かった1800万円を領得した(乙4,8。 )(12)そのころ5つの大学で講義をし多忙を極めていた控訴人は,納税予定額1800万円で不足がないか心配し,妻を通じてA税理士に確認させ,A税理士から申告手続が無事完了し 領得した(乙4,8。 )(12)そのころ5つの大学で講義をし多忙を極めていた控訴人は,納税予定額1800万円で不足がないか心配し,妻を通じてA税理士に確認させ,A税理士から申告手続が無事完了し追加納付分はないとの返事を得て安心し,その後はA税理士に対して上記申告書の控えの交付を求めることもなく,平成2年分の所得税7100円が銀行振替され,以後,平成9年まで,控訴人の- 23 -所得税の申告手続をA税理士に委任していた。 (13)控訴人は,A税理士の脱税が発覚した後の平成9年12月12日,渋谷税務署の係官のしょうようを受け,被控訴人に対し,平成2年分の所得税について,本件土地の譲渡に係る所得を加えた本件修正申告をし(総合課税の,,所得金額1036万5148円分離課税の所得金額4882万2934円申告納税額2552万7800円,予定納税額23万4200円,納付すべき税額2529万3600円,納付すべき税額2529万3600円から)既に納付済みの7100円を控除した新たに納付すべき税額2528万6500円のうち,平成8年分所得税の還付金により充当された21万9300,,円を除く2506万7200円につき平成9年12月24日に160万円平成10年1月23日に400万円,同年2月5日に400万円,同月6日(,,,)。 に1546万7200円を各納付した甲810の1~412乙10(14)控訴人は,平成9年12月19日,本件各賦課決定処分を受け,平成1,,(),0年2月12日被控訴人に対し異議申し出をし同年5月22日棄却同年6月19日,国税不服審判所長に対し,審査請求したが,平成12年3月16日棄却された。 (15)B税務署員は,平成10年7月3日,A税理士から,上記(11)の平成3年2月中旬ころから3月 棄却同年6月19日,国税不服審判所長に対し,審査請求したが,平成12年3月16日棄却された。 (15)B税務署員は,平成10年7月3日,A税理士から,上記(11)の平成3年2月中旬ころから3月上旬ころにかけての課税資料廃棄の謝礼として合計850万円の支払を受けた×の罪により×の有罪判決を受け(乙1,A税)理士は,平成10年7月21日,平成6年から平成8年にかけて行った×及び×の罪で×,×の×判決を受けた(乙2。 ) 争点(2)について(1)以上の認定事実によれば,税務に疎かった控訴人は,平成3年2月下旬ころ,何が経費となるものかどうかもよく分からないまま,A税理士に手持ちの資料を示し,あるいは資料はないが本件不動産の購入から売却までの出費を述べて,A税理士からは,譲渡所得税額は概算では2600万円となる- 24 -がA税理士が受任した場合には1800万円程度で済ますことができるであろうとの説明を受け,銀行借入の利息を必要経費に算入した場合の譲渡所得税額の概算は2310万円程度になることを理解し,更にA税理士の専門的な知識に基づいて正確な計算をし控除可能な諸経費を控除する等すれば最終的には税額が1800万円程度にまでなるものと理解したものと認められ,この際,控訴人が資料を示さなかった支出も控訴人の認識において現実の支出又は財貨の移転を伴ったものであり,架空の経費を告知したものではなかった。また,控訴人は,初対面であったA税理士の税理士としての信用を知人に確認した上で,A税理士に税務代理を委任したものであり,税額の大さを考えれば,このような慎重さは当然であり,このことから,A税理士の税額の概算及び説明に不正の疑惑を感じていたのに,あえて税務代理を委任したと解することは相当でない。なぜなら,不正の疑惑を抱きながらあえて委任 このような慎重さは当然であり,このことから,A税理士の税額の概算及び説明に不正の疑惑を感じていたのに,あえて税務代理を委任したと解することは相当でない。なぜなら,不正の疑惑を抱きながらあえて委任するのであれば,事情を知らない第三者に信用を確認する理由はないからである(第三者は適正な業務を行う税理士であるか否かの観点から回答するのであって,巧みに不正をしていたことを回答したものではない。また,。)特段の事情や経緯がないのに,税理士が初対面の受任前の相談者に不正な申告をすることを仄めかしてその信頼を失う危険を敢えて冒すとは考えられない。さらに,A税理士は,当初から,初対面の控訴人から譲渡所得に関する税務代理を受任し,税額名下に納税資金を預かることを目的としていたものであり,預かるべき納税資金が多いほど(適正な税額に近いほど)利益となる関係にあり,税額が少なくて済むとの話も,相談者がA税理士に税務代理の委任をする動機付けになれば足りるのであって,セールス・トークとしても,相談者が積極的に不正手段を容認している場合以外は,むしろ,不正な手段によることなく最大の利益を得るとの説明をすることが合理的であり,控訴人が初対面のA税理士に対して,不正手段による課税回避を容認している旨の表示をしたと認めるべき事情のない本件では,A税理士は,自己に委- 25 -任すれば,適法に多大の節税効果を得ることができる旨の説得をしたものと解することが相当であり,A税理士が,不正な手段による税額の圧縮を仄めかしたことを窺わせる証拠もない(1800万円と5万円の領収書の形式を変えた点も,控訴人を信頼させるため,金銭受領の趣旨が異なることの外観を明らかにしたものと認められる。 。)(2)この点につき,A税理士の検察官に対する供述調書(乙4)には,控訴人から 形式を変えた点も,控訴人を信頼させるため,金銭受領の趣旨が異なることの外観を明らかにしたものと認められる。 。)(2)この点につき,A税理士の検察官に対する供述調書(乙4)には,控訴人から「納める税金の額を正規の金額より安くしてほしいという意味の依頼を受け,これを引き受けてあげました「本当なら2600万円くらいの税金。」を払わなければいかんが,税金分,手数料などすべて含めて1800万円で手続をしてあげますよ。というように言いました「正規の税額が2600。」万円という計算をしておきながら,1800万円以内の納税しかせずに済ま,,そうという話ですからこれがいわゆる脱税行為であることは明らかであり・・・控訴人にも)当然分かっているはずでした」との記載部分がある。 (しかし,A税理士の目的は,相談者から確実に税務代理を受任し,納税資金を預かるということにあり,その目的のためには,安心確実な節税が可能であり,A税理士がその専門と経験からそのノウハウを有することを強調することが合理的であり,初対面の税理士に不正な申告を依頼し,初対面の相談者に税理士が脱税を前提に説明をすることは不合理であることは前記説示のとおりである。しかも,上記供述部分は,A税理士の推測にすぎず,控訴人との間に,不正な方法による申告をすることについて黙示的な意思の合致があった根拠とすることはできないうえ,本来本件土地の取得費に要した費用に付随する費用として控除の対象となり得る約1134万円もの借入金利息()最高裁平成4年7月14日第三小法廷判決・民集46巻5号492頁参照を考慮しないで概算した約2600万円を「正規の税額」にすり替えて陳述することで,依頼者である控訴人もA税理士の不正行為を知っていたはずだと推測して自己の罪責を少しでも軽くしたいとの意向 92頁参照を考慮しないで概算した約2600万円を「正規の税額」にすり替えて陳述することで,依頼者である控訴人もA税理士の不正行為を知っていたはずだと推測して自己の罪責を少しでも軽くしたいとの意向が容易に読み取れる供- 26 -,(,,,述であって信用性の乏しいものであるなお他面ではA税理士自身も上記2600万円の税額を概算した際の控除費目である取得及び譲渡の際の必要経費である手数料207万円,登記30万円,印紙10万円,譲渡手数料396万円,草刈費用60万円,印紙10万円の合計713万円を一応正当な必要経費であると理解したうえでの供述となり,これらを隠ぺい又は仮装の行為に係る経費と理解していたものではないということになる。 。)(3)また,本件検面調書(乙8)には「A税理士に依頼して正規に納めるべ,き税金より安く済むようにしてもらい,所得税を脱税しました「A税理。」,士は支払ってもいない嘘の費用を計算に入れて税額を計算した上,その税額よりも更に800万円も安く済ませてあげると言っているのですから,税務署にばれないようにうまく嘘の費用を計算に盛り込むなどして嘘の内容の申告を行い,不正に税金を安く済ませるのだということは私にもよく分かりました「私自身も税金を安く済ませてもらえるようにA税理士に依頼して。」,全てを任せたわけですので,私自身も大変悪いことをしたと深く反省しています」との記載がある。 。 ところで本件検面調書の作成のための取調べは身柄拘束のない状態在,,(宅)で,約2週間余の期間に6,7回行われたものであり,1日当たりの取調時間は長いときで3,4時間程度というものであり(乙15,当時,控)訴人が69歳で高血圧の持病があって精神的,肉体的に疲労し体調を崩していたことが窺われる点を考慮 れたものであり,1日当たりの取調時間は長いときで3,4時間程度というものであり(乙15,当時,控)訴人が69歳で高血圧の持病があって精神的,肉体的に疲労し体調を崩していたことが窺われる点を考慮しても,過酷な取調が行われたものとは認められない。なお,A税理士の脱税方法の大胆さと継続期間のみならず,控訴人が譲渡所得に係る税額の支払を免れ,控訴人がA税理士に渡した1800万円を考慮しても多額の利益を得た結果となることから,検察官が,取調に当たり,控訴人自身にも脱税の意図があったとの嫌疑を抱いていたことを不当ということはできず,また,次に説示する本件記録中に見られる控訴人の対,,,応からは在宅取調べという記憶の喚起確認が可能な状況下にありながら- 27 -控訴人の当時の応答は,上記嫌疑を晴らすには至らなかったものと推認されることからすれば,本件検面調書及びその作成までの取調に控訴人の意に添わない点があったとしても,控訴人が主張するような違法な取調べや任意性を疑わせるような事情があったと認めることはできない。 しかし,本件記録中から認められる控訴人の従前の供述及び立証は,自己が潔白であったとの結論を主張することに急であり,控訴人の性格の善性を示すための社会的地位,活動に関する資料の提出は多いが,A税理士との相談内容,本件メモの個別的記載事項の意味など,事案解明の上で重要な事項についての供述は極めてあいまいで,ときに不正確であり,この不正確さは。 ,,控訴人の主張の変遷にも現れているところであるまた本件検面調書には従前の確定申告は全て控訴人自身が行っていた旨の供述のように,税理士に委任していなかったという点では真実であるが,控訴人自身が申告書を記載していたと誤解させる部分や,A税理士との面談においては,購入又は売却に関する支払関 人自身が行っていた旨の供述のように,税理士に委任していなかったという点では真実であるが,控訴人自身が申告書を記載していたと誤解させる部分や,A税理士との面談においては,購入又は売却に関する支払関係の書類を用意していなかった旨の供述のように,Nに対する購入手数料や草刈料のように裏付資料がなかったものがあったことは真実であるが,手元の資料を示したことはAの検面調書にも記載されているのであって,その供述内容は不正確なものとなっている。したがって,本件検面調書の任意性は肯定できるが,その供述内容の信用性は低いといわざるを得ないから,本件事実関係は,控訴人の供述に関する証拠よりも他の関係証拠を客観的に検討した結果を基礎に検討すべきものである。この観点からすると,本件検面調書中,架空経費の計上による脱税を図った旨の供述は本件メモに関する前記認定に反するものであり,架空経費の計上を前提にする虚偽申告の認識があった旨の供述も採用することはできず「所得税を脱税しま,した」との供述は,控訴人の検察官への供述結果を整理した上での法的評。 価を要約したものと理解できるが,その供述結果の信用性は弱く,既に説示した事実関係を前提とすれば,この法的評価の要約をもって,A税理士の行- 28 -うであろう隠ぺい又は仮装の行為による過少申告を容認し,又はA税理士との間に意思の連絡があったとするには足りない。 (4)さらに,同検面調書が作成される9日前である平成9年11月21日,控訴人の事務所において,東京国税局課税第一部資料調査第一課の調査官から事情聴取され(渋谷税務署職員立会)た際の聴取書(乙9)には「A税理,士に税金が安くなるともちかけられ,それにのり不正な申告をしたことは私の不徳の至すところで,非常に申訳なく思っています」との記載がある。 。 しかし,控 職員立会)た際の聴取書(乙9)には「A税理,士に税金が安くなるともちかけられ,それにのり不正な申告をしたことは私の不徳の至すところで,非常に申訳なく思っています」との記載がある。 。 しかし,控訴人としては,事情聴取に際し「こんな事件に巻き込まれた,,」,こと自体不覚で人間を見る目の甘さは不徳の致すところである旨を述べ被害者であるが道徳的には修養が足りなかったとの謙虚に謙った趣旨で述べたものであって,自己の脱税行為を認める趣旨の供述と解するには足りない(,「」この点同書面の末尾に何か追加することか訂正することはありますかの問いに対し「私としては1800万円渡して後日不足があれば支払うつ,もりでした。その後なにも話がなかったので申告が終ったと思いました」。 と記載されており,控訴人が故意による脱税を意図していたとすると,これに矛盾する発言をしていることになることからも窺い知ることができる。 。)(5)本件税務事務代理を委任した後,控訴人が1800万円で不足がないかを,,確認させたのみでA税理士に対して上記申告書の控えの交付を求めるなど具体的な結果報告を求めなかった点は,税務代理の委任者としては不注意であったということができるが,経験豊かで有能な税理士と信じたA税理士に対する敬意及び遠慮から,ことさら詳細を確認しなかったことを不合理ということはできず,また,平成2年分の所得税については事業所得に係る7100円のみが銀行振替されていることについても,税務知識がない控訴人としては,納税資金をA税理士に交付して税務代理を委ね,同税理士を信頼していた以上,上記銀行振替を奇異に感じなかったことを不合理ということはできない。 - 29 -以上によれば,控訴人がA税理士による隠ぺい又は仮装の行為による過少申告を容認し,A ,同税理士を信頼していた以上,上記銀行振替を奇異に感じなかったことを不合理ということはできない。 - 29 -以上によれば,控訴人がA税理士による隠ぺい又は仮装の行為による過少申告を容認し,A税理士との間に意思の連絡があったということはできず,また,その余の事情も,A税理士による隠ぺい行為による譲渡所得の過少申告につき,控訴人の帰責事由を認めるには足りないから,控訴人に対して本件重加算税賦課決定処分をすることはできないものというべきである。 争点(3)について(1)争点(3)は平成2年分所得税の事業所得の金額に係るものであるが,すでに説示したとおり,重加算税を賦課するための通則法68条1項所定の加重事由は認められない場合でも,同法65条所定の過少申告加算税の賦課要件の存在が認められる場合には,上記賦課決定のうち過少申告加算税額に相当する額を超える部分のみを取り消すことができると解するべきであるから,以下では譲渡所得に係る過少申告加算税を含めて同条4項に規定する正,,「当な理由」の有無を検討する。 (2)控訴人は,平成2年分の所得税の申告が過少となったのは,A税理士及びB税務署員による妨害のためであって,被控訴人の行政処理や指導が的確を欠いたためであり,上記正当な理由,その他真にやむを得ない事情がある旨主張する。しかしながら,A税理士の行為は控訴人との委任契約の履行上の問題として解決すべきものであり,本件事実関係の下において,控訴人の過少申告は,A税理士による事業所得の申告もれあるいはA税理士による譲渡所得の隠ぺいという違法行為に基づくものであり,それが被控訴人の行政処理の盲点を利用したものであったとしても,違法行為に基づく過少申告について正当な理由があることにはならず,他に被控訴人の指導上の落ち度によるものというこ 為に基づくものであり,それが被控訴人の行政処理の盲点を利用したものであったとしても,違法行為に基づく過少申告について正当な理由があることにはならず,他に被控訴人の指導上の落ち度によるものということはできない(被控訴人の落ち度をいう論旨は,A税理士との委任契約上の問題を被控訴人にすり替えるものというべきである,。)他に本件証拠によっては正当な理由があるとは認められない。 また,控訴人は,検察官による苛酷な取調べが終了した直後の平成9年1- 30 -2月初旬,税務署職員の調査を受け,同月12日,いわれるまま,同職員が下書きした書面を写すことにより,本件修正申告をしたが,当時,未だ心身の疲労から脱却されない諸症状に継続的に悩まされ,税務署職員による調査結果を十分理解できないまま,いわれるとおり修正申告をしたのであって,「不当若しくは酷になる場合」であり,上記正当な理由がある旨主張する。 しかしながら,上記認定の事実によれば,当時,控訴人が69歳で高血圧の持病があって精神的,肉体的に疲労し体調を崩していたこと,税務署職員にしょうようされて本件修正申告に至ったことが認められるが,検察官による取調べが苛酷であったといえないことは既に説示したとおりであり,控訴人は,自分が委任したA税理士において本件土地の譲渡に係る譲渡所得税の申告も納税もしていなかった事実を確認したうえで,本件土地の購入及び売却時の手持ち資料に基づいて本件修正申告をしていたものであり,本件修正申告時点で控訴人が税務署職員による調査結果を十分理解できないまま,本件修正申告に及んだとまでは認められず,本件事案に現れた諸般の事情を考慮しても,上記正当な理由が存在するとは認められない。 したがって,本件過少申告加算税賦課決定処分に違法は認められない。 (3)以上によれば,本件事実関係 は認められず,本件事案に現れた諸般の事情を考慮しても,上記正当な理由が存在するとは認められない。 したがって,本件過少申告加算税賦課決定処分に違法は認められない。 (3)以上によれば,本件事実関係の下においては,控訴人の平成2年度所得税について,事業所得及び譲渡所得の過少申告分につき,過少申告加算税の賦課要件が存するというべきである。 そして,以下の計算のとおり,事業所得に係る本件過少申告加算税賦課決定に違法はなく,譲渡所得に係る本件重加算税賦課決定処分のうち過少申告加算税額370万2000円に相当する額を超えない部分には違法がないこととなる。 ア上記事業所得に係る過少申告加算税を含めた控訴人の過少申告加算税に相当する額は,次の(ア)と(イ)の合計額371万3000円である。 (ア)通則法65条1項の規定に基づき,本件修正申告書の提出により- 31 -控訴人が新たに納付すべきこととなった税額2528万円(本件修正申告書における納付すべき税額2529万3600円から平成2年分の所得税の確定申告で控訴人が既に納付済みの7100円を控除した後の金額である2528万6500円で,同法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの)に,100分の10の割合を乗じて算出した金額である252万8000円。 (イ)通則法65条2項の規定に基づき,新たに納付すべき税額2528万6500円(本件修正申告書における納付すべき税額2529万3600円から上記既に納付済みの7100円を控除した後の金額)のうち,Ⅰ期限内申告税額158万3734円(平成2年分の所得税の確定申告における控訴人の納付すべき税額7100円に,予定納税額23万4200円と源泉徴収税額134万2434円を加算した税額)と,Ⅱ50万円とのいずれか多い方の金額であるⅠの1 成2年分の所得税の確定申告における控訴人の納付すべき税額7100円に,予定納税額23万4200円と源泉徴収税額134万2434円を加算した税額)と,Ⅱ50万円とのいずれか多い方の金額であるⅠの158万3734円を超える部分に相当する税額2370万円(ただし,同法1),18条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のものに100分の5の割合を乗じて算出した金額である118万5000円。 イ上記371万3000円から本件過少申告加算税賦課決定処分に係る税額1万1000円を控除すると370万2000円となる。 よって,原判決を一部変更することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第11民事部裁判長裁判官富越和厚- 32 -裁判官桐ヶ谷敬三裁判官佐藤道明
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