-1-主文 被控訴人Y1の関係で,原判決を次のとおり変更する。 (1)被控訴人Y1は,控訴人に対し,2000万円及びこれに対する平成17年3月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (2)控訴人の同被控訴人に対するその余の請求を棄却する。 2(1)被控訴人Y2の関係で,原判決を取り消す。 (2)被控訴人Y2は,控訴人に対し,1000万円及びこれに対する平成17年3月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 3(1)控訴人と被控訴人Y1との間に生じた訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを3分し,その1を控訴人の負担とし,その余を同被控訴人の負担とする。 (2)控訴人と被控訴人Y2との間に生じた訴訟費用は,第1,2審とも同被控訴人の負担とする。 この判決は,第1項(1)及び第2項(2)に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 被控訴人Y1は,控訴人に対し,3200万円及びこれに対する平成17年3月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 被控訴人Y2は,控訴人に対し,1000万円及びこれに対する平成17年3月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,債務の返済に苦慮して両親とともに一家心中を遂げた長男が,被控訴人らとの間で生命保険契約を締結しており,その死亡保険金の受取人を父親と指定していたところ,控訴人において,上記心中に先立ち,死亡保険金の受-2-取人が父親から控訴人に変更されたと主張して,被控訴人らに対し,生命保険契約に基づき,死亡保険金及びこれに対する訴状送達の日の翌日以降の商事法定利率による遅延損害金の支払いを求めた事案である。 原審が,控訴人の請求をいずれも棄却したため,控訴 被控訴人らに対し,生命保険契約に基づき,死亡保険金及びこれに対する訴状送達の日の翌日以降の商事法定利率による遅延損害金の支払いを求めた事案である。 原審が,控訴人の請求をいずれも棄却したため,控訴人が控訴した。なお,当審において,従前の主張に加えて,父親が保険金請求権を控訴人に死因贈与した旨の主張が追加された。 前提事実(争いがない事実又は証拠等により容易に認定できる事実)(1)当事者等アB(年月日省略生,以下「B」という。)とC(年月日省略生,以下「C」という。)は夫婦であり(以下「B夫婦」という。),A(年月日省略生,以下「A」という。)はB夫婦の長男である。上記3名は,h市k町(以下番地省略)に居住していた。 イ控訴人は,Cの実妹であり(ただし,戸籍上は,Cは控訴人とは別の親の子として出生届がなされている。),B夫婦の住所に比較的近いi市に住んでいることもあって,B夫婦とは日ごろから親しく交流していた。 ウ被控訴人らは,いずれも生命保険業を目的とする会社である。 (以上につき,争いがない,甲1,5)(2)保険契約の締結アAは,平成9年3月1日,被控訴人Y1との間で,被保険者をA,死亡保険金受取人をB,死亡保険金額を2000万円(災害以外による死亡のとき。なお,これ以外に災害以外による死亡のときに支払われる保険金の約定の存在を認めるに足りる証拠はない。)などとする生命保険契約を締結した(以下「本件契約1」という。)。 イAは,平成14年4月1日,被控訴人Y2との間で,被保険者をA,死亡保険金受取人をB,死亡保険金額を300万円,特約保険金額(被保険者が当該特約の保険期間中(本件では平成44年3月末日まで)に死亡し-3-たときに支払われる保険金)を700万円などとする生命保険契約を締結した(以下「本件契約2」と 0万円,特約保険金額(被保険者が当該特約の保険期間中(本件では平成44年3月末日まで)に死亡し-3-たときに支払われる保険金)を700万円などとする生命保険契約を締結した(以下「本件契約2」という。)。 (以上につき,甲1,2,乙イ1)(3)Aらの死亡A及びB夫婦は,平成16年9月10日早朝,h市l町のj港岸壁から,B運転の自動車もろとも海に飛び込んで,一家心中(以下「本件心中」という。)を図った。これにより,Aは同日午前6時33分,同市m町(以下番地省略)所在のo病院において,溺水により死亡した。また,Cはこれに先立つ同日午前4時50分ころ上記港で死亡し,BはAの死亡後である同日午前6時56分に,同市n町(以下番地省略)所在のs病院で,やはり溺水により死亡した。 (甲4の1~3,弁論の全趣旨)(4)控訴人は,同月11日に,同月10日の消印があり,裏面に差出人として「B」と書かれた「X’」宛ての封筒(以下「本件封筒」という。)に封入された同年8月24日付けの手紙(以下「本件手紙」という。)を受領した。本件手紙の体裁及び内容は別紙のとおりである。なお,「X’」とは控訴人のことである。 (甲3の1・2,弁論の全趣旨) 本件の争点(1)本件手紙をもって,①Aが,本件契約1及び2にかかる各死亡保険金(以下,一括して「本件保険金」という。)の受取人をBから控訴人に変更する旨の意思表示をした(原審からの控訴人の主張)と認めることができるか,②Bが,本件保険金請求権を控訴人に譲渡(死因贈与)する旨の意思表示をした(当審における控訴人の追加主張)と認めることができるか。 (2)(上記(1)②の場合)そもそもBの本件保険金請求権が発生するか,換言すれば,Bは保険契約-4-者であるAを故意に死亡させたもの(故殺)であるかどうか(商 追加主張)と認めることができるか。 (2)(上記(1)②の場合)そもそもBの本件保険金請求権が発生するか,換言すれば,Bは保険契約-4-者であるAを故意に死亡させたもの(故殺)であるかどうか(商法680条1項2号該当性の有無)。 (3)ア(上記(1)①の場合)本件保険金受取人の変更についての対抗要件(商法677条1項の通知)の要否イ(上記(1)②の場合)本件保険金請求権の譲渡についての効力発生要件(被保険者の同意)の有無及び対抗要件(債務者への通知若しくは債務者の承諾)の要否(4)上記争点のうち当審における追加主張及びそれに関係する主張(上記(1)②及び(2),(3)イ)は以下のとおりであり,それ以外の争点に関する双方の主張は原判決の「第2事案の概要」欄の第2項記載のとおりであるから,これを引用する。 (控訴人の主張)ア上記(1)②につき(ア)Bは,平成16年9月10日,本件手紙を控訴人に送付したが,これは本件保険金請求権を死因贈与する旨の意思表示である。控訴人は,これを同月11日に受け取り,上記贈与を承諾した。 (イ)Aは同月10日午前6時33分に死亡し,Bが本件保険金請求権を取得した。その後の同日午前6時56分にBが死亡した。 イ上記(2)につき本件心中は,Aが自ら引き起こした不始末に打ちひしがれて自殺を図ったことから,一人息子の将来を悲観したB夫婦らもともに心中することになって自動車もろとも海に飛び込んだものであって,たまたま当該自動車を運転していたのがBであるからといって,同人がAを故意に死亡させたというのは当たらない。 ウ上記(3)イにつき-5-Aも本件保険金請求権の控訴人への譲渡に同意していたものである。また,本件のような一家心中の事案において,債権譲渡の対抗要件を具備することを求めるのは酷であ らない。 ウ上記(3)イにつき-5-Aも本件保険金請求権の控訴人への譲渡に同意していたものである。また,本件のような一家心中の事案において,債権譲渡の対抗要件を具備することを求めるのは酷であるし,その実益もない(対抗要件を備えていないからといって,二重払いの危険が生じるというような危険性ないし弊害もない。)。 (被控訴人らの主張)ア上記(1)②につき本件手紙によっては,控訴人主張のような本件保険金請求権譲渡の意思表示はなされていない。本件手紙に記載されているのは,保険金の使途についてのBの指示ないし希望のみである。 また,控訴人の承諾の意思表示がなされたかどうかが不明である(この点は,被控訴人Y1のみの主張である。)。 イ上記(2)につきBは,同人の運転する自動車を海に飛び込ませて,同乗していたAを死亡させたものであるから,同人を故意に死亡させたことは明白である。 仮に,Aの同意があったとしても,上記結論に影響はない(この点は,被控訴人Y2のみの主張である。)。 ウ上記(3)イにつき(ア)保険金請求権の譲渡が効力を有するためには,被保険者であるAの同意が必要であるところ(商法674条2項),本件の場合には同人の同意がない(この点は,被控訴人Y2のみの主張である。)。 (イ)保険金請求権の譲渡については,対抗要件としての被控訴人らに対するその旨の通知若しくは被控訴人らの承諾が必要であるところ,本件ではそれがない。 第3当裁判所の判断 本件は,本件契約1及び2の各保険契約者兼被保険者であるAが,父母であ-6-るB夫婦とともに心中を図り,全員が死亡したという一家心中事件にまつわる死亡保険金(本件保険金)の請求をめぐる事案である。本件保険金の受取人に指定されていたのは父Bであるところ,同人から,本件保険金によりAの残し に心中を図り,全員が死亡したという一家心中事件にまつわる死亡保険金(本件保険金)の請求をめぐる事案である。本件保険金の受取人に指定されていたのは父Bであるところ,同人から,本件保険金によりAの残した債務の整理等をしてもらいたい旨の控訴人宛の本件手紙がBらの死亡した翌日に届いたため,控訴人が本件保険金の請求に及んだものである。 このように,本件は,極めて特殊異例な部類に属する事案であるといってよい。 本件手紙の解釈(争点(1))(1)本件心中の背景事情アAはB夫婦の唯一人の子であることもあって,B夫婦はAを大変可愛がって育ててきた。 ところが,そのAが勤め先の会社(t書店)の金(約650万円)を使い込み,同社を解雇されてしまった。同人はまた,サラ金各社に対する合計350万円にのぼる債務も抱えていたが,無職無収入となって上記使い込み金やサラ金への債務の返済の当てもなくなり,かといって親にも相談できずに悩んだ末,自殺を図ったが未遂に終わった。 イB夫婦らは,一睡もせずにAの行方を捜し回り,漸く2日後に同人の友人によって発見してもらった。そこで,初めてAの置かれた状況を知らされた。 ウしかし,B夫婦にもこれといった資産があるわけではなく,またB自身も病気がちであるため,到底Aの1000万円以上にものぼる借財等を返済する力はないということで,親子ともども将来を悲観し,生きる気力をなくしてしまった。 エこうして,3人で話し合った結果,いっそ3人で心中して楽になろうということになった。 (以上につき,甲3の1,5,弁論の全趣旨)-7-(2)本件手紙の趣旨ア本件手紙の末尾にはB夫婦及びAの名が記載されているけれども,その文面のみならず,本件封筒の裏面には差出人としてBの氏名のみが記載されていることなどからして,本件手紙の作成者 )本件手紙の趣旨ア本件手紙の末尾にはB夫婦及びAの名が記載されているけれども,その文面のみならず,本件封筒の裏面には差出人としてBの氏名のみが記載されていることなどからして,本件手紙の作成者がBであることは明白である。そして,この点は控訴人も認めているところである。 イしかしながら,本件手紙は,上記(1)のような背景事情のもとに,親子3人で話し合った結果,一家心中を決意した上で,Cの実妹であり,日ごろから親しく交流していた控訴人に死後の後始末を託そうとしたものであって,親子3人の総意を踏まえて一家の長であるBがしたためたものと解するのが相当である。B主体の文面であるにもかかわらず,その末尾に3人の名が記載されているのはその点を明らかにする趣旨であるものといってよい。 ウそして,控訴人に後事を託するに当たり,B夫婦及びAが念頭に置いたのが,本件保険金の扱いであることもまた明らかである。すなわち,同人らは,Aの命の代償に得られる本件保険金をもって,Aの不始末の清算(t書店への使い込み金の支払い,サラ金の返済)をするとともに,B夫婦のR(控訴人の夫)に対する債務の残金170万円を支払い,残余のうちからB夫婦及びAの永代供養料を支払ってもらいたい旨を控訴人に依頼したのである(甲3の1)。 そして,その依頼に当たっては,当然のことながら,本件保険金を控訴人において受領すべきことが前提にされているのであり,単に「保険金の使途を指定して,その実行を控訴人に委託」しているにとどまるものではない。被控訴人らは,本件手紙の趣旨がそれにとどまるかのように主張するけれども,形式的に過ぎ,到底採用することができない。 エしたがって,控訴人をして本件保険金を受領せしめるというB夫婦及びAの意思はこの上なく明確であるが,これを,本件保険金受取人をBから 主張するけれども,形式的に過ぎ,到底採用することができない。 エしたがって,控訴人をして本件保険金を受領せしめるというB夫婦及びAの意思はこの上なく明確であるが,これを,本件保険金受取人をBから-8-控訴人に変更する旨のAの意思表示(争点(1)①)と解すべきなのか,それとも,Bの本件保険金請求権の控訴人への死因贈与の意思表示(同②)と解すべきなのかは微妙なものがある。 ただ,本件保険金の受取人であるBが本件保険金請求権を取得した上で,これを控訴人に譲渡(死因贈与)するというからには,Bが被保険者であるAよりも先に死亡してしまったのでは前提が成り立たないが,本件心中の方法が前提事実(3)のようなものである以上,BがAよりも先に死亡しないという保証はないから,上記②だとするのはいささか無理がある。 控訴人をして本件保険金を確実に受領せしめるためには,本件保険金の受取人をBから控訴人に変更しておくに如くはない。そして,本件手紙がBによってしたためられたものではあっても,それはB夫婦及びAの3人の総意に基づくものと解すべきであることは上記イのとおりであるから,本件手紙には,本件保険金受取人をBから控訴人に変更する旨のAの意思表示が含まれていると解することもできないわけではない。 オもっとも,本件手紙には,「これ(本件手紙)を読み終わり次第,必要事項をメモをして,これはすぐに焼き捨てて下さい」とも記されていることからすると,Bらが本件手紙の意義を全く重視していなかったことが明らかである。そして,B方自宅のちゃぶ台の上に本件各保険契約の保険証券(2通)が置かれていたこと(甲5)をも勘案すれば,Bらは,Aが死亡したという事実と上記保険証券がありさえすれば,控訴人が本件保険金を受領するのに何らの障害もないという認識であったことが窺われるのであ 通)が置かれていたこと(甲5)をも勘案すれば,Bらは,Aが死亡したという事実と上記保険証券がありさえすれば,控訴人が本件保険金を受領するのに何らの障害もないという認識であったことが窺われるのである。そうであれば,本件手紙の解釈として上記①であるか,それとも同②であるかなどといっても,所詮は,いかにすれば控訴人が本件保険金を受領することができるかという観点から,Bらの真意とは別のところで議論しているにすぎないとの感を免れない。 しかし,それにしても,上記のとおり,本件保険金をもってAの不始末-9-などを清算するべく,控訴人をして本件保険金を受領せしめるというB夫婦及びAの意思はこの上なく明確である以上,そのような意思は可能な限り酌んで然るべきである。そして,上記エで見たところに照らせば,同①と解する方がより合理性があるものと解する。 商法680条1項2号の免責事由の有無(争点(2))(1)争点(1)についての検討の結果,本件手紙をもって,本件保険金の受取人をBから控訴人に変更する旨の保険契約者(A)の意思表示がなされたものと解すべきであるとの結論が導かれた以上,それとは前提を異にする争点(2)についてはもはや検討する必要はないことになる筋合いである。しかしながら,上記争点(1)についての結論が多分に微妙であり,Bから控訴人への保険金請求権の譲渡があったものと解される余地もあること(上記2(2)オ参照)を考慮して,争点(2)についても念のため判断しておくこととする。 (2)本件心中は,前提事実(3)のような方法で敢行されたものであり,その際にはBが運転していたこと,同人は,本件手紙の中でも「私が二人を連れて逝きます」と記載していることなどからして,同人が本件心中において主導的な役割を果たしたであろうことは十分推認されるところであ 際にはBが運転していたこと,同人は,本件手紙の中でも「私が二人を連れて逝きます」と記載していることなどからして,同人が本件心中において主導的な役割を果たしたであろうことは十分推認されるところである。 しかしながら,事の発端は,Aが自ら引き起こした不始末に打ちひしがれて自殺を図ったことにあり,B夫婦も一人息子であるAの将来を悲観するとともに,自分達も生きる気力を失って,いっそ親子3人で心中して楽になろうという結論に達したものである(上記2(1))。このように,本件心中はあくまで親子3人の総意に基づくものであるから,たまたま当該自動車を運転していたのがBであるなど,本件心中においてBが主導的な役割を果たしているからといって,同人がAを故意に死亡させたというのは当たらない。 (3)そうすると,被控訴人らが商法680条1項2号により免責されることはないものというべきである。 保険金受取人の変更についての対抗要件の要否(争点(3)ア)-10-(1)被控訴人らは,保険金受取人の変更につき,保険契約者であるA(又はその相続人)が保険者である被控訴人らに通知するまで,控訴人を保険金受取人と認めない旨主張する。 確かに,商法677条1項は,保険契約者が保険金受取人を変更したときは,これを保険者に通知しなければ,これをもって保険者に対抗することができない旨規定し,さらに,本件契約1及び2の各約款においては,「(保険金受取人の)変更は,保険証券に表示を受けてからでなければ,会社に対抗することができません。」(乙イ1),「(保険金受取人を)変更したときは,保険契約者はその旨を会社に通知して保険証券に裏書を受けることを要します。」(乙ロ1)と規定され,保険者に対する対抗要件が加重されていることが認められる。 (2)しかしながら,本件は,上記1におい 保険契約者はその旨を会社に通知して保険証券に裏書を受けることを要します。」(乙ロ1)と規定され,保険者に対する対抗要件が加重されていることが認められる。 (2)しかしながら,本件は,上記1において指摘したとおりの特殊異例な部類に属する事案であって,本件手紙に「私達がこんな事を考えているのを皆さんにきずかれないようにするのに精一杯です」としたためられていることからしても,A及びB夫婦において,本件心中の結論に達した後は(そのような結論に到達したのは,本件手紙の文面からして,平成16年8月24日の直前であるものと認められる。),その企図を周囲に覚られないように,ひたすら隠密に行動していたものであることは明らかである。しかも,同人らが,上記通知をしなければ保険金受取人の変更を被控訴人らに対抗することができないなどということを認識し理解していたとは到底考えられないのである(上記2(2)オ参照)。 そうであれば,A及びB夫婦が本件心中を決意してからこれを敢行するまでの間に,被控訴人らに対して上記のような通知をすることを求めるなどということは,およそ期待可能性がないことを強いるものにほかならない。しかも,本件の場合においては,理論上はともかくとして,被控訴人らが上記通知がないことを理由に本件保険金の支払いを拒まなければ,二重払いの危-11-険性を生じるなどという弊害は実際にはおよそ想定し難いのである(甲5,弁論の全趣旨)。 (3)そうすると,本件保険金の受取人の変更について,Aからのその旨の通知がない以上,控訴人にこれを支払うことはできない旨の被控訴人らの上記主張は採用することができない。 本件保険金請求権の譲渡についての効力発生要件の有無及び対抗要件の要否(争点(3)イ)(1)争点(1)についての検討の結果に照らして,本争点につい 訴人らの上記主張は採用することができない。 本件保険金請求権の譲渡についての効力発生要件の有無及び対抗要件の要否(争点(3)イ)(1)争点(1)についての検討の結果に照らして,本争点についてはもはや検討する必要がない筋合いであるが,上記争点(1)についての結論が多分に微妙であること(上記2(2)オ参照)を考慮して,本争点についても念のため判断しておくこととする。 (2)被控訴人Y2は,上記第2の2(4)の被控訴人らの主張ウ(ア)のとおり主張するが,商法674条2項は,前項の規定を受けて,「権利の譲渡」には被保険者の同意があることを要する旨の規定であるところ,同条1項は「他人の死亡により保険金額の支払をなすべきことを定める保険契約」についての規定であるのに,本件保険契約1及び2は,Aが自らを被保険者として締結したものであるから,明らかに前提を異にする。 したがって,上記Y2の主張はそれ自体失当である。 (3)債権譲渡の対抗要件としての,被控訴人らに対するその旨の通知ないしは被控訴人らの承諾が必要であるとの被控訴人らの主張については,基本的に上記4(2)で述べたところがそのまま妥当するものと考えられる。 したがって,この点の被控訴人らの主張もまた採用することができない。 結論 以上の次第で,控訴人の,(1)被控訴人Y1に対する請求は死亡保険金2000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるからこれ-12-を認容し,その余は棄却すべきであり,(2)被控訴人Y2に対する請求はすべて理由があるからこれを認容すべきである。これと結論を異にし,控訴人の請求を全部棄却した原判決は,被控訴人Y1の関係では上記の限度で変更を免れず,同Y2の関係では取消 被控訴人Y2に対する請求はすべて理由があるからこれを認容すべきである。これと結論を異にし,控訴人の請求を全部棄却した原判決は,被控訴人Y1の関係では上記の限度で変更を免れず,同Y2の関係では取消しを免れないこととなる。したがって,本件控訴は被控訴人Y1に対する関係では上記の限度で理由があり,同Y2に対する関係では全部理由がある。 福岡高等裁判所第3民事部裁判長裁判官西理裁判官有吉一郎裁判官吉岡茂之別紙省略
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