判決 主文 被告人を懲役21年に処する。 未決勾留日数中540日をその刑に算入する。 本件公訴事実中、訴因変更後の傷害の点については、被告人は無罪。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、交際相手である分離前の相被告人Aと共謀の上第1 令和4年11月8日、仙台市(住所省略)Bホテル(住所省略)において、分離前の相被告人A及び被告人から暴行等を加えられてC(当時22歳)が分離前の相被告人A及び被告人を怖がっていることに乗じて、Cに対し、「大便を食ったらアパートに居させてやる。一緒に居たいなら自分のうんこも食え。」などと言って、分離前の相被告人A、被告人及びCの大便を食べるよう要求し、もしその要求に応じなければその身体、自由に危害を加えかねない気勢を示して同人を怖がらせ、よって、その頃、同所において、同人をして分離前の相被告人A、被告人及びCの大便を食べさせ、もって同人をして義務のないことを行わせた。 第2 同月10日、仙台市(住所省略)当時の被告人及び分離前の相被告人A方(以下「本件アパート」という。)において、Cに対し、殺意をもって、その頸部をタオル様のもので絞め付け、よって、その頃、同所において、同人を頸部圧迫による窒息により死亡させて殺害した。 第3 同月12日頃から同月14日までの間、本件アパートにおいて、チェーンソー等を用いて、Cの死体の頸部、両上腕部及び両大腿部を順次切断するなどした上、それらをキャリーケースに入れて、同日、同所から同市(住所省略)内まで運搬して同所付近の地中に埋め、もって死体を損壊、遺棄した。 (事実認定の補足説明) 第1 判示第1の強要について れらをキャリーケースに入れて、同日、同所から同市(住所省略)内まで運搬して同所付近の地中に埋め、もって死体を損壊、遺棄した。 (事実認定の補足説明) 第1 判示第1の強要について 1 争点争点は、分離前の相被告人Aと被告人が、Cを怖がらせて大便を食べさせたといえるか否かである。被告人は、Cが怖がっていた様子はなく、冗談混じりに判示の文言を申し向けたところ、大便を食べてしまった、Cが大便を食べるとは全く思っていなかったなどと供述し、弁護人は、その供述に基づき、強要罪は成立しないと主張する。 2 当裁判所の判断証拠によれば、以下の事実が認められる。 分離前の相被告人Aは、令和4年(以下省略。)8月頃以降、Cが分離前の相被告人Aの陰口を言ったり、アパートから出て行かないことなどを理由に、Cに殴る蹴るの暴行を加えていたほか、Cが分離前の相被告人Aに謝罪したり、自慰行為をする様子や、髪の毛を切られた姿を撮影するなどの行為にも及んでいた。同様に、被告人も、分離前の相被告人Aと一緒に、Cに殴る蹴るの暴行を加えたことが複数回あった。 11月8日、Cは、本件アパートから出て別の場所に寝泊まりすることを何度か提案したが、分離前の相被告人Aからいずれの提案も却下され、その後、分離前の相被告人Aらと仲直りをして本件アパートに居させてほしいとの意向を示すに至った。分離前の相被告人Aと被告人が、判示の文言を申し向けて弁当の空き箱に大便を用意すると、Cはそれを食べた。 そこで検討すると、そもそも大便を食べるという行為は、常識的に考えて、自発的に行うものとは到底考えられないものである。このことに加え、前記事実経過や判示の文言内容等を踏まえると、Cは、分離前の相被告人Aらと仲直りをすることができずに、本件アパートから追い出されることや更な に行うものとは到底考えられないものである。このことに加え、前記事実経過や判示の文言内容等を踏まえると、Cは、分離前の相被告人Aらと仲直りをすることができずに、本件アパートから追い出されることや更なる暴行を受けることを恐れて、大便を食べたとしか考えられない。 また、被告人は、分離前の相被告人Aが、以前よりCに対して暴行を加える などしていることを知っていたほか、そうした仕打ちを受けていたにもかかわらず、Cが本件アパートに居させてほしいと求めていることを認識しながら、実際に大便を準備していることからすれば、Cが、本件アパートから追い出されることや更なる暴行を受けることを恐れて大便を食べる可能性を認識していたといえる。これに反する被告人の前記供述は信用できない。 以上によれば、判示のとおり強要罪が成立する。 第2 判示第2の殺人について 1 争点争点は、被告人と分離前の相被告人Aが、Cの首をタオル様のもので絞め付けて、窒息により死亡させたか否かである。 2 当裁判所の判断⑴ 分離前の相被告人Aは、公判廷において、てんかんの発作を起こしたCに部屋を散らかされたと思って立腹し、分離前の相被告人Aと被告人が、Cの頭部を床や壁にたたき付けるなどした後、Cの首に掛けられたタオルを片方ずつ持って引っ張り、首を絞めた、Cは、手足をばたつかせたり、タオルをほどこうとしていたが、やがて動かなくなって死亡したなどと述べる。 分離前の相被告人Aは、記憶が薄れている部分もあるとはいえ、首を絞めるに至った経緯や態様、Cの抵抗状況、てんかんの発作の状況等について、一連の経過として筋の通った供述をしている。現にCが死亡していることや、分離前の相被告人Aや被告人が119番通報をしなかったこと、その後に死体遺棄等の発覚を免れる行為に及んでいること 況等について、一連の経過として筋の通った供述をしている。現にCが死亡していることや、分離前の相被告人Aや被告人が119番通報をしなかったこと、その後に死体遺棄等の発覚を免れる行為に及んでいることとも整合し、自然である。また、分離前の相被告人Aは、自首当初から一貫してCの首を2人で絞めたと述べているが、分離前の相被告人Aがあえて自分に不利となる嘘を述べ続ける動機は乏しい。加えて、被告人は、分離前の相被告人Aからの自首の提案に対し、「うちがさせたって言うから」「分離前の相被告人Aだけどうにかならないかな」など、2人でCを殺害したことを前提としているとみるのが 自然なやり取りをしているし、被告人自身、分離前の相被告人Aによる突然の提案で別々に自首した際、Cの首を絞めて殺した旨申告をしている。これらも、分離前の相被告人Aの前記供述と合致する。 これらによれば、分離前の相被告人Aの前記供述は、他に弁護人が指摘する点を踏まえても、信用できる。 ⑵ これに対し、被告人は、分離前の相被告人Aが馬乗りになって押さえてもCが暴れ続けたので、Cを落ち着かせるため、左手で持ったタオルをCの口と鼻に一瞬押し当てた、Cが動かなくなってからてんかんの発作だと気づき、服薬を試みるなどしたが、Cは死亡してしまったなどと述べる。 しかし、Cのてんかんで生じる発作の最中は全身に相当強い力が働くことからすれば(D証人の供述)、分離前の相被告人AがCに馬乗りになって押さえたり、被告人がCの口と鼻にタオルを押し当てることができたとは考え難い。また、被告人は、前記のとおり、分離前の相被告人Aからの自首の提案に対し、分離前の相被告人Aの関与を前提とするかのような返事を送っている上、自首当初、Cの首を絞めて殺した旨申告している。被告人の前記供述は、自首前後の被告人 り、分離前の相被告人Aからの自首の提案に対し、分離前の相被告人Aの関与を前提とするかのような返事を送っている上、自首当初、Cの首を絞めて殺した旨申告している。被告人の前記供述は、自首前後の被告人の言動と整合しない内容であるが、このことについて納得できる説明はされていない。 そうすると、被告人の前記供述は信用できない。 ⑶ 信用できる分離前の相被告人Aの前記供述によれば、被告人と分離前の相被告人Aが、Cの首をタオル様のもので絞めたと認められ、その行為態様からすると、Cは、窒息により死亡したと推認できる。そして、タオル様のもので首を絞め付けるという行為は、人を死亡させる危険性の高いものであるから、被告人に殺意があったことも認定できる。 (一部無罪の理由)第1 公訴事実の要旨及び争点傷害に係る公訴事実(ただし、訴因変更後のもの。)は、「被告人は、分離 前の相被告人Aと共謀の上、令和4年11月上旬頃から同月10日午後4時頃までの間(以下「本件期間」という。)、本件アパート並びに前記ホテル(住所省略)において、Cに対し、その顔面及び頭部を、多数回にわたり、拳で殴り、足で蹴るなどの暴行を加え、よって、同人に全治までの期間不明の顔面打撲傷及び鼻骨骨折の傷害を負わせた。」というものである。 争点は、①本件期間において、Cに前記傷害、特に鼻骨骨折が生じたといえるか否か、②共謀の有無である。検察官は、②について、分離前の相被告人Aと被告人は、Cに対し、以前から継続的に暴行を加えていた中、11月上旬頃までに、Cに継続的に暴行を加えることについて、明示又は黙示で包括的な共謀を遂げた、と主張する。 第2 当裁判所の判断 1 争点①について11月5日、Cは顔面打撲傷を負っている状態にあるが、10月30日にはそのような傷は見られ ついて、明示又は黙示で包括的な共謀を遂げた、と主張する。 第2 当裁判所の判断 1 争点①について11月5日、Cは顔面打撲傷を負っている状態にあるが、10月30日にはそのような傷は見られない(甲103)のであるから、本件期間において、Cに顔面打撲傷が生じたものと認められる。なお、その傷害は、分離前の相被告人Aが、被告人がいない場面で、単独でCに加えた暴行により生じた可能性が否定できないから、争点②の検討においては、それを前提とする。 鼻骨骨折については、解剖時に確認されているものの、その発生時期は明らかでない(E証人の供述)。本件期間以前にも暴行があったことや、死後に判示第3の犯行が行われたことなども踏まえると、鼻骨骨折が本件期間とは異なる機会に生じた疑いが残るから、同傷害は認定できない。 2 争点②について証拠によれば、11月上旬頃以前から本件期間にかけて、分離前の相被告人Aが、陰口を言ったり、本件アパートから出て行かないことなどを理由に、Cに殴る蹴るの暴行を加えることが複数回あったこと、被告人が傍にいるときもいないときもあったが、被告人が分離前の相被告人Aの暴行を止めたことはな かったこと、被告人も、分離前の相被告人Aとともに同様の暴行を加えることが複数回あったことが認められる。 そこで検討すると、分離前の相被告人Aや被告人による暴行は複数回あったといえるものの、その頻度は明らかでなく、各暴行が長時間に及んでいたことを示す証拠もない。10月30日に撮影されたCの顔面には暴行の痕跡が見られないことからしても、少なくとも10月下旬頃に、継続的な暴行が行われていたとは認められない。そうすると、遅くとも11月上旬頃までに、Cに継続的に暴行を加えることについて包括的な共謀を遂げていたことを推認させるほどに、継 なくとも10月下旬頃に、継続的な暴行が行われていたとは認められない。そうすると、遅くとも11月上旬頃までに、Cに継続的に暴行を加えることについて包括的な共謀を遂げていたことを推認させるほどに、継続的な暴行が行われていたと認めることは困難である。 検察官は、被告人が、分離前の相被告人Aに対し、Cを殴りたいといったメッセージを送っていることや、怪我をしたCの写真が分離前の相被告人Aから送られても暴行を止めるようには言っていないこと、傍にいても分離前の相被告人Aの暴行を止めていないことなどに照らせば、被告人は、疎ましく思っていたCに対する暴行を許容しており、継続的に暴行を加えることについて包括的な共謀を遂げていたことが推認されると主張する。しかし、前記メッセージのやり取りは10月上旬頃のものであり、本件期間とは隔たりがある。また、被告人が分離前の相被告人Aの暴行を止めていないという事情があるにせよ、そもそも暴行の頻度が明らかでない以上、それにより、継続的に暴行を加えることについて共謀があったとまで推認するのは無理がある。結局、検察官が指摘する事情をもって共謀があったことを推認するのは困難である。 以上によれば、11月上旬頃までに、分離前の相被告人Aと被告人との間に、Cに継続的に暴行を加えることについて包括的な共謀があったことを認めるに足りる十分な証拠はないというほかない。したがって、前記公訴事実については犯罪の証明がないから、刑事訴訟法336条により、被告人に無罪の言渡しをする。 (量刑の理由) 被告人は、交際相手である共犯者とともに、同居していた知人男性に対し、強要(判示第1)や殺人(判示第2)、死体損壊、死体遺棄(判示第3)の各犯行を立て続けに行った。 量刑判断の中心となる殺人についてみると、被告人らは、被害者 とともに、同居していた知人男性に対し、強要(判示第1)や殺人(判示第2)、死体損壊、死体遺棄(判示第3)の各犯行を立て続けに行った。 量刑判断の中心となる殺人についてみると、被告人らは、被害者を殺してやろうと積極的に思っていたとはいえないが、わざわざタオル様のものを使って、被害者が必死に抵抗しても全く意に介さず、執拗に首を絞め続けて殺害している。このような行為は、人を死亡させる危険がかなり高いものであって相当悪質である。本件結果は重大であり、突然命を奪われた被害者の無念は察するに余りある。被害者を失った遺族らの悲しみも計り知れない。それにもかかわらず、被告人からの慰謝の措置は何も講じられていない。殺人に及んだ経緯や動機について、酌量すべき事情も見当たらない。 確かに、以前から暴行や金銭の巻き上げなどを行い、そうした行為を繰り返した末に本件各犯行に及んだ共犯者と比べると、被告人は、各犯行以前の行為に主導的に関与していたとはいえず、むしろ従属的な立場であったとうかがわれるから、この点では共犯者との間に差がある。しかし、被告人は、共犯者とともに前記の態様で被害者の首を絞めるなど、殺人に主体的に関与し、その後、共犯者と一緒に居たいという身勝手すぎる理由から、自首しようとした共犯者を引き留めるとともに、自ら被害者の遺体を切断して無残な姿にした上で遺棄している。これらのことからすると、被告人の責任は、共犯者よりも大幅に軽いとはいえない。 加えて、強要を含む一連の犯行からすれば、被告人が被害者の人格や尊厳を著しく軽視していたことは明らかである。 以上によれば、本件犯情はかなり悪く、被告人の刑事責任は重大である。したがって、殺人及び死体損壊、死体遺棄について、真摯な反省に基づくとはいえないものの法律上自首が成立することや、被告人に前科前 以上によれば、本件犯情はかなり悪く、被告人の刑事責任は重大である。したがって、殺人及び死体損壊、死体遺棄について、真摯な反省に基づくとはいえないものの法律上自首が成立することや、被告人に前科前歴がないことなど、被告人に有利な事情を考慮した上で、主文の刑に処するのが相当であると判断した。(求刑懲役26年) 令和7年7月14日 仙台地方裁判所第2刑事部 裁判長 裁判官 須田雄一 裁判官 小林礼子 裁判官 高橋祐梨子
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