平成12(行ウ)8 文書非開示決定処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成15年3月26日 宇都宮地方裁判所 情報公開
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判決文本文10,365 文字)

主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告が原告に対して平成12年6月26日付けでした公文書非開示決定(文学第183号)は,これを取り消す。 第2 事案の概要本件は,栃木県情報公開条例(平成11年栃木県条例第32号。平成13年3月の条例改正前のもの。以下「本件条例」という。)に基づく原告の公文書開示請求についての,対象となる文書を保有していないことを理由とする公文書非開示決定は違法であるとして,その取消しを求めた抗告訴訟である。 1 争いのない事実等(1) 原告は,栃木県内に主たる事務所を置く法人でない社団である。 (2) 本件条例5条によれば,栃木県内に事務所又は事業所を有する法人でない社団で代表者の定めがあるものは,被告をはじめとする本件条例の「実施機関」に対し,当該実施機関の保有する「公文書」の開示を請求することができるとされている。 そして,本件条例2条2項によれば,同条例において「公文書」とは,「実施機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書及び図画(これらを撮影したマイクロフィルムを含む。)並びに電磁的記録(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)であって,当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして,当該実施機関が保有しているもの」(「ただし,官報,公報,新聞,書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるものを除く。」)をいうとされている。 (3) 原告は,平成12年6月16日,被告に対し,本件条例5条に基づき,「平成11年10/1~平成12年3/31までに支出した栃木県警察本部総務課職員の出張旅費と食糧費に関する一切の資料(復命書も含む)」(以下「本件文書」とい 6日,被告に対し,本件条例5条に基づき,「平成11年10/1~平成12年3/31までに支出した栃木県警察本部総務課職員の出張旅費と食糧費に関する一切の資料(復命書も含む)」(以下「本件文書」という。)の開示を請求した(甲1)。 これに対し,被告は,同月26日付けで,原告に対し,本件文書に該当する公文書は保有していないとの理由により,これを開示しない旨の決定をした(甲2,以下「本件決定」という。)。 (4) 本件決定時において,少なくとも,平成11年10月1日から平成12年3月31日までに支出された栃木県警察本部総務課(以下単に「総務課」と表記する。)の職員の出張旅費に関する,①旅費受取委任状,②旅行命令書,③復命書,④旅費請求書,⑤支出負担行為兼支出決議書及び⑥旅費口座振替通知書(以下一括して「本件各旅費関係文書」という。)の全部又は一部が,栃木県の関連機関に保管されていた。 (5) 本件決定当時,栃木県出納局長の管理するホストコンピュータに,本件各旅費関係文書の一部の内容が,電磁的記録として保存されており(以下「本件コンピュータ記録」という。),さらに,本件決定の前後に,同記録が磁気テープにコピーされた(以下「本件テープ記録」という。)。 本件テープ記録は,現在,栃木県出納局に保管されている。 2 争点及び当事者の主張(1) 本件決定当時,本件文書に該当する執行伺及び支出負担行為文書は存在したか。 (原告の主張)栃木県財務規則(平成7年3月17日栃木県規則第12号,以下「財務規則」という。)74条,2条3号によれば,栃木県警察本部会計課(以下単に「会計課」と表記する。)の課長は,歳出予算を執行しようとするときは,執行伺を作成し,これに決裁を得て行わなければならないとされているのであり,特に旅費に関しては,その支出の必要性・妥当 (以下単に「会計課」と表記する。)の課長は,歳出予算を執行しようとするときは,執行伺を作成し,これに決裁を得て行わなければならないとされているのであり,特に旅費に関しては,その支出の必要性・妥当性の判断につき格別の判断が求められるものであるから,執行伺を省略できる制度が存在するとは常識上考えられない。 また,少なくとも旅行社を通じて鉄道切符を購入した場合や宿泊した場合には文書が作成されるはずであり,支出負担行為文書が一切存在しないとは考えられない。 (被告の主張)「栃木県財務規則の運用について」と称する総務部長・出納局長通知により,旅費に関しては執行伺を省略できることになっており,実際作成されていない。 旅費に関する支出負担行為は旅行の事実等であって契約締結等の法律行為はなく,したがって旅費に関する支出負担行為文書は作成されていない。 (2) 被告の「職員」は,本件決定当時までに,本件文書に該当する旅行命令書及び復命書を作成又は取得したか。 (原告の主張)旅行命令書については,作成後会計課長に送付されるが,会計課長は被告の予算執行の補助職員であるから,被告の「職員」が取得したものといえる。 また,復命書については,作成者である旅行者が会計職員であった場合には,会計職員は被告の予算執行の補助職員であるから,被告の「職員」が作成したものといえる。 (被告の主張)②旅行命令書の作成者は総務課長であり,③復命書の作成者は当該出張旅行をした総務課職員であり(なお,総務課にはいわゆる会計職員はおらず,したがって,同課内の出張旅行者が会計職員であったことはない。),いずれも,被告の「職員」が作成又は取得した文書とはいえない。 (3) 被告は,本件決定当時,本件各旅費関係文書を「保有」していたか。 (原告の主張)ア本件条例1条が栃木県民の ったことはない。),いずれも,被告の「職員」が作成又は取得した文書とはいえない。 (3) 被告は,本件決定当時,本件各旅費関係文書を「保有」していたか。 (原告の主張)ア本件条例1条が栃木県民の公文書開示請求権及び栃木県の説明責任を認めていること,本件条例2条2項が,旧来の情報公開条例において用いられていた「管理」という文言を用いずに,あえて「保有」というやや不明瞭な表現を用いたことなどに照らせば,同項の「保有」はできる限り広く解すべきであり,具体的には,管理,所有,占有,所持等の状態を含めて,何らかの法的権限が及んでいることにより法律上又は事実上当該文書に対する支配が可能な状態をいうものと解すべきである。 イ被告は「証書及び公文書類を保管する」権限を有するのであり(地方自治法149条8号),本件各旅費関係文書が警察本部の建物内にあったとしても,それは便宜上の処置に過ぎず,被告の上記保管権限を排除するものではない。 ウまた,被告は「予算を調製し,及びこれを執行する」権限を有するところ(地方自治法149条2号),本件各旅費関係文書は予算執行に関するものであるから,これらが既に総務課等に返却されていたとしても,上記権限の適正な行使のため,同文書等の作成名義人として,これを取り寄せて閲覧・使用することができることは明らかであり,法律上ないし事実上の支配はなお失っていない。 エ本件条例2条1項が公安委員会や警察本部を実施機関から除外しているにもかかわらず,同条例7条6号は非開示情報の1つとして「公開することにより,犯罪の予防,犯罪の捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障が生ずるおそれがある情報」を挙げているのであり,本件条例上の公開対象文書に警察関係の文書が含まれることを当然の前提としている。 オ以上の点からすれば,本件各旅費関係文書 共の安全と秩序の維持に支障が生ずるおそれがある情報」を挙げているのであり,本件条例上の公開対象文書に警察関係の文書が含まれることを当然の前提としている。 オ以上の点からすれば,本件各旅費関係文書を実際に保管している者が総務課長や会計課長であったとしても,結局,いずれも被告が「保有」するものというべきである。 (被告の主張)ア本件条例2条2項の「保有」とは,実施機関が自ら当該文書を公的かつ適法に所持するか,又はその行政組織内部における公的な上命下服関係に基づき,文書取扱規程等の内規あるいは個々の指揮監督を通じて,当該文書を適法かつ有効に支配しており,実施機関又はその所属職員が,他の機関等の干渉や援助等を受けることなしに,他者に閲覧させたり写しを交付したりすることができる状態にあることをいうものと解すべきである。 イ本件各旅費関係文書はいずれも,本件決定当時,栃木県の条例,規則等に基づく一連の手続を経て,総務課ないし会計課において保管されていたものである。そして,上記各課の課長は,警察本部における所属長の承認を得ずに同文書の内容を部外者に知らせたりしないという警察組織内部の服務上の義務を負っているのであり,被告が前記アのような意味で「保有」していたとは到底いえない。 ウなお,「保有」という文言が使われたのは,行政機関の保有する情報の公開に関する法律2条2項の用語に合わせたにすぎない。 また,警察本部の職員以外に,被告の職員である麻薬取締員や漁業監督吏員も,特別司法警察職員として犯罪捜査等の事務にあたっているから,本件条例上の公開対象文書に警察関係の文書が含まれることが当然の前提になっているとはいえない。 (4) 被告は,本件条例上,本件テープ記録についての開示義務を負うか。 (被告の主張)ア本件テープ記録は,本件決定の時点では未 警察関係の文書が含まれることが当然の前提になっているとはいえない。 (4) 被告は,本件条例上,本件テープ記録についての開示義務を負うか。 (被告の主張)ア本件テープ記録は,本件決定の時点では未だ作成されていなかったから,本件文書には該当しない。 イまた,本件テープ記録に関しては,その内容を人の知覚によって認識できる状態にするための再生等のシステムが備えられておらず,任意のデータを出力するには,いかなる方法を用いても多大な費用(最低でも130万円前後)や労力を要すると見込まれる。そして,本件テープ記録は,専ら本件コンピュータ記録などの削除処理中に万一エラー等が生じた場合に備えてバックアップをとることを目的として作成されたものであり,かかる目的は本件テープ記録の再生等のシステムがなくても達成できるから,多大な費用等をかけて再生等のシステムをあらかじめ備えておかなかったことが不合理とはいえないし,少なくとも,被告の恣意によりあえて備えなかったものではない。このような本件テープ記録は,本件条例2条2項の「当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして,当該実施機関が保有しているもの」とはいえず,「公文書」に該当しないというべきであるし,仮に該当するとしても,本件条例が,上記のような事情のある本件テープ記録について,その開示のためだけに多大な費用等をかけて再生等のシステムを備える義務を実施機関に課しているとは到底解されない。 (原告の主張)ア本件テープ記録は,ホストコンピュータの容量が限られていることから,本件コンピュータ記録を機械的にコピーしたものであるから,法的にみても本件コンピュータ記録と同一物とみなされるべきである。 イ 「職員が組織的に用いるものとして」との要件は,純然たる職員の私的文書を除外するために設けられたものであり,栃木 ものであるから,法的にみても本件コンピュータ記録と同一物とみなされるべきである。 イ 「職員が組織的に用いるものとして」との要件は,純然たる職員の私的文書を除外するために設けられたものであり,栃木県のホストコンピュータのデータのバックアップとして作成され出納局に保管されている本件テープ記録が上記要件を満たすことは明白である。本件テープ記録が5年間保存されることなどに照らせば,本件テープ記録は,本件コンピュータ記録の削除処理時のバックアップのみならず,その後財務会計書類が消失した場合などに再出力することをも予定して作成されたものとみるべきである。また,本件テープ記録の内容の出力について,被告が主張するほどの費用や労力がかからない方法も複数想定できる。本件条例7条は詳細かつ多様な非開示事由を規定しており,これら以外の非開示事由を新たに作出することは,「実施機関は,公文書の開示を請求する権利が十分に保障されるようこの条例を解釈し,運用するものとする。」と定める本件条例3条に反するし,本件テープ記録を再生できる動作環境を自ら廃棄しておいて,開示の手段がないから開示義務を負わないとの主張は,信義則にも反するものである。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)について証拠(乙3)及び弁論の全趣旨によれば,「栃木県財務規則の運用について」と称する総務部長・出納局長通知において,予算の配当等があった旅費については執行伺を省略することができるとされ,栃木県内の執行伺に関する実際の事務も,原則として同通知に従って処理されていることが認められ,その他本件全証拠によっても,本件決定当時,本件文書に該当する出張旅費関係の執行伺が作成されて存在していたことは認めるに足りない。 また,支出負担行為というのは一般的には当該地方公共団体に直接債務を負担させる行為を指 ても,本件決定当時,本件文書に該当する出張旅費関係の執行伺が作成されて存在していたことは認めるに足りない。 また,支出負担行為というのは一般的には当該地方公共団体に直接債務を負担させる行為を指すところ,警察の職員1名ないし数名が出張旅行をする際に,当該職員の所属する都道府県自身が常に旅行会社等との契約における直接の当事者になるとは限らないのであり(むしろ例外的と考えられる。),その他本件全証拠によっても,本件決定当時,本件文書に該当する出張旅費関係の支出負担行為文書が作成されて存在していたことは認めるに足りない。 2 争点(3)について(1) 本件決定当時の本件条例2条1項が,同条例の「実施機関」として「知事,地方公営企業の管理者,教育委員会,選挙管理委員会,人事委員会,監査委員,地方労働委員会,収用委員会及び内水面漁場管理委員会」というように細分して挙示しつつ,公安委員会ないし警察本部を除外していることからすれば,専ら栃木県公安委員会ないし栃木県警察本部が「保有」しているとみるべき文書等については,本件条例の実施機関が「保有」するものとみることはできず(この理は,用いられている文言が「保有」であるか「管理」であるかによって左右されるものでない。),本件条例2条2項所定の「公文書」に該当しないというべきである。そして,ある文書等を誰が「保有」しているかは,当該文書の保管の根拠規定,保管に至る手続,保管の方法等の実態に照らして判断すべきである。 (2) 証拠(乙3)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア(ア) 職員等の旅費に関する条例(昭和36年12月21日栃木県条例第49号)4条1項1号,2条1項1号,栃木県警察職員等の旅費に関する訓令(昭和37年7月31日栃木県警察本部訓令第10号)3条によれば,総務課職員による, る条例(昭和36年12月21日栃木県条例第49号)4条1項1号,2条1項1号,栃木県警察職員等の旅費に関する訓令(昭和37年7月31日栃木県警察本部訓令第10号)3条によれば,総務課職員による,旅費支給の対象となる出張旅行は,総務課長の旅行命令によらなければならないとされている。 (イ) 財務規則4条,2条2号及び3号によれば,旅費に関する事案の決定は会計課長の,旅費に関する支出命令は会計課課長補佐の,それぞれ専決事項とされている。 (ウ) 財務規則6条,5条2項によれば,旅費に関する支出負担行為の確認(地方自治法232条の4第2項)は,会計課課長補佐の中から1名充てられる出納員に委任されている。 (エ) 財務規則7条によれば,旅費の支払事務(口座振替,債権者への通知等)は,栃木県出納局会計課長の専決事項とされている。 イ本件決定当時,総務課職員の出張旅費に関しては,上記の条例,規則等を背景として,以下の手続を経て支出される取扱いが概ね確立されていた。 (ア) 年度当初に,総務課職員らが,連名で,同課の特定の職員1名をいわゆる受取代人とし,同人に出張旅費の受領を委任する旨の①旅費受取委任状を作成し,会計課課長補佐に提出する。以後,①旅費受取委任状は,会計課において保管される。 (イ) 総務課長が,同課職員に対し,②旅行命令書を交付することにより,旅行命令を発する。 (ウ) 総務課職員が出張旅行をし,その後,総務課長に対し,書面による場合には③復命書を提出することにより,出張の結果報告をする。以後,③復命書は総務課において保管される。 (エ) 総務課長は,上記②旅行命令書をいったんとりまとめて会計課に送付し,その後同課から返送を受ける。以後,②旅行命令書も総務課において保管される。 そして,当該旅行者は,会計課が上記旅行命令書をもとに作成 務課長は,上記②旅行命令書をいったんとりまとめて会計課に送付し,その後同課から返送を受ける。以後,②旅行命令書も総務課において保管される。 そして,当該旅行者は,会計課が上記旅行命令書をもとに作成した旅費請求書用紙を受け取り,これに押印することにより④旅費請求書を作成し,これを会計課課長補佐に提出する。 (オ) 会計課課長補佐は,④旅費請求書に係る請求を正当と認めたときは,⑤支出負担行為兼支出決議書を作成することにより,支出負担行為の整理及び支出命令を行い,その後,同書面に上記④旅費請求書を添えて会計課出納員に送付する。 (カ) 会計課出納員は,⑤支出負担行為兼支出決議書及び④旅費請求書につき審査を行い,正当と認めたときは,支出命令確認の登録を行い,その後,同各書面を会計課課長補佐に返却する。以後,④旅費請求書及び⑤支出負担行為兼支出決議書は会計課において保管される。 栃木県出納局会計課長は,上記登録内容が記録された磁気テープを指定金融機関に引き継ぐことにより,同機関に対して,当該旅費を前記アの受取代人の口座に振り込むよう依頼するとともに,出納長名義の⑥旅費口座振替通知書を作成して,受取代人に送付する。 受取代人は,上記振込金の払戻しを受けて,これを当該旅行者に交付し,上記⑥旅費口座振替通知書に領収印を得た後,同通知書を総務課長に引き継ぐ。以後,⑥旅費口座振替通知書は総務課において保管される。 (3) 前項の事実並びに弁論の全趣旨によれば,本件決定当時,本件各旅費関係文書は,いずれも,前記(2)アの諸規定を背景として確立された同(2)イの手続を経て,総務課ないし会計課に終局的に保管されていたと認めるのが相当であり,これが一時的・例外的な処置であるとか,情報公開を免れるための恣意的な処置であるなどと評価すべき事情は認められない。 そう を経て,総務課ないし会計課に終局的に保管されていたと認めるのが相当であり,これが一時的・例外的な処置であるとか,情報公開を免れるための恣意的な処置であるなどと評価すべき事情は認められない。 そうすると,本件各旅費関係文書を「保有」していたのは,栃木県公安委員会ないし栃木県警察本部であって本件条例の実施機関ではないと認められるから,争点(2)について判断するまでもなく,本件各旅費関係文書は,本件条例2条2項所定の「公文書」に該当しないものというべきである。 (4) なお,地方公共団体の長は,本来的には当該地方公共団体の行政権全般を掌握する者であり,地方自治法149条も,このような観点から長の担任事務を網羅的かつ一般的に挙示した規定と解されるところ(このことは地方自治法149条9号の存在からも明らかである。),仮に本件条例上の被告の「保有」の及ぶ範囲を,地方自治法149条所定の各権限の及ぶ範囲に準じて解するとすれば,結局,栃木県で取り扱われる公文書の大半が被告の「保有」に属することになる。このような解釈が,実施機関を細分して定めた本件条例の趣旨を没却するものであることは明らかであって,到底採用できない。 また,被告その他の実施機関が公開に適さない犯罪捜査等に関する文書を独自に作成・取得することも十分あり得ることであるから,本件条例が7条6号の規定を設けているからといって,総務課や会計課に保管されている文書等が被告の「保有」に属することが前提になっているとはいえない。 3 争点(4)について(1) 本件条例は,「公文書」の開示作業自体に特別な費用や労力を要するような事態を明確には想定しておらず,少なくとも,開示のために無尽蔵に費用や労力を投じても構わないというような態度をとっていないことは明らかであり,同条例2条2項所定の「電磁的記録」に 労力を要するような事態を明確には想定しておらず,少なくとも,開示のために無尽蔵に費用や労力を投じても構わないというような態度をとっていないことは明らかであり,同条例2条2項所定の「電磁的記録」に関しても,それを保有する実施機関に備えられている設備・技術によりその情報内容を一般人に認識させることの容易なものが主として想定されていることは明らかである。広い意味での電磁的記録の中には,当該記録の存在自体によって何らかの機能を果たすことが予定され,他方その情報内容を人に直接認識させることは予定されず,そのため,通常の設備や技術ではその情報内容を直接認識することができないような方式で作成されるものもあり得るが,本件条例が,このような電磁的記録についてまで,理論的に開示可能であるからといって,その実質的な情報内容の開示のためにあらゆる措置を講ずべき義務を実施機関に課しているとは解し難い。このような観点からすれば,本件条例2条2項所定の「電磁的記録」とは,それを保有する実施機関において現に備えられ又は通常備えられるべき設備,技術等により,その実質的な情報内容を,一般人の知覚により認識できる形で提示することが可能なものに限られると解するのが相当である(なお,このような提示可能性の有無を,当該電磁的記録が作成された趣旨,経緯等を踏まえて実質的に判定することにより,本件条例の趣旨が潜脱される事態は回避できると考えられる。)。 (2) 証拠(乙4の1ないし7)及び弁論の全趣旨によれば,本件テープ記録は,そのままその内容を出力しても,数字やアルファベットの羅列された書面(ダンプリスト)が作成されるだけであって,その実質的情報内容を直接認識できるようにするためには,相当高価なソフトウェアあるいは多大な労力などを用いて加工する必要があること,被告は,少なくとも 書面(ダンプリスト)が作成されるだけであって,その実質的情報内容を直接認識できるようにするためには,相当高価なソフトウェアあるいは多大な労力などを用いて加工する必要があること,被告は,少なくとも本件決定時には,上記加工を可能とする設備等(ハードウェア・ソフトウェア)を備えていなかったこと,本件テープ記録は,専ら,本件コンピュータ記録の削除処理中に万一エラー等が生じた場合に,本件テープ記録をホストコンピュータの記憶装置に復元して削除処理をやり直すことができるようにすること(いわゆるバックアップをとること)を目的として作成されたものであり,このような目的との関係では,本件テープ記録の情報内容を人が直接認識できるようにする必要はないこと,本件コンピュータ記録の情報内容は,栃木県警察本部に保管されている本件各旅費関係文書の全部又は一部と同一のものであるところ,少なくとも栃木県内部の事務処理においては,本件各旅費関係文書の方が正規の文書として取り扱われており,この点からも,本件テープ記録の情報内容を直接人に認識させる必要性が生じる可能性は僅少であることが認められる。 以上の事実によれば,本件テープ記録の実質的な情報内容を一般人の知覚で認識できる形で提示することを可能とする設備等は,本件決定時の被告において備えられていなかったし,また,本件テープ記録の保有者として通常備えるべきものであったということもできないから,本件テープ記録が本件決定時に存在していたか否かなどの点につき判断するまでもなく,本件テープ記録は,本件条例2条2項所定の「電磁的記録」には該当しないというべきである。 4 なお,本件文書に該当する文書等のうち食糧費に関するものについては,被告は本件決定時に存在しなかった旨主張しており,原告もこれを特段争っておらず,その他,本件決定時に 当しないというべきである。 4 なお,本件文書に該当する文書等のうち食糧費に関するものについては,被告は本件決定時に存在しなかった旨主張しており,原告もこれを特段争っておらず,その他,本件決定時に上記文書等が存在したことを認めるに足りる証拠はない。 5 以上の次第であって,本件文書を非開示とした本件決定に違法性はなく,原告の請求は理由がないのでこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 宇都宮地方裁判所第2民事部裁判長裁判官羽田弘裁判官鳥飼晃嗣裁判官秋吉信彦

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