平成30年4月19日判決言渡平成27年(行ウ)第393号所得税更正処分等取消請求事件 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 兵庫税務署長が平成26年3月14日付けでした原告の平成22年分の所得税の更正のうち納付すべき税額マイナス(還付金の額に相当する税額)88万0900円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定を取り消す。 2 兵庫税務署長が平成26年3月14日付けでした原告の平成23年分の所得税の更正のうち納付すべき税額4万7400円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定を取り消す。 3 兵庫税務署長が平成26年3月14日付けでした原告の平成24年分の所得税の更正のうち納付すべき税額40万4600円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定を取り消す。 第2 事案の概要本件は,B商店の屋号でLPガス,A重油,灯油等の燃料小売業を営む原告が,平成22年分から平成24年分まで(以下「本件各年分」という。)の所得税の確定申告において,原告が代表者を務める株式会社C(以下「本件会社」という。)にB商店の業務を委託したとして,その外注費(以下「本件外注費」という。)を事業所得の金額の計算上必要経費に算入したところ,兵庫税務署長が,本件外注費を必要経費に算入することはできないとして,原告に対し,本件各年分の所得税の更正(以下「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定(以下「本 件各賦課決定処分」といい,本件各更正処分と併せて「本件各処分」という。)をしたため,被告を相手に,本件各更正処分のうち各申告額を超える部分及び本件各賦課決定処分の取消しを求める事案である。 1 関係法令の定め いい,本件各更正処分と併せて「本件各処分」という。)をしたため,被告を相手に,本件各更正処分のうち各申告額を超える部分及び本件各賦課決定処分の取消しを求める事案である。 1 関係法令の定め(1) 所得税法27条2項は,事業所得の金額は,その年中の事業所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする旨規定し,同法37条1項は,その年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,事業所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費,一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額とする旨規定する。 (2) 所得税法157条1項1号は,税務署長は,法人税法2条10号に規定する同族会社の行為又は計算で,これを容認した場合にはその株主等である居住者の所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは,その居住者の所得税に係る更正又は決定に際し,その行為又は計算にかかわらず,税務署長の認めるところにより,その居住者の各年分の総所得金額等(所得税法120条1項1号等に掲げる金額)を計算することができる旨規定する。 2 前提となる事実(当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。以下,書証番号は特に断らない限り枝番号を含む。)(1) 原告及びB商店(甲1~3,35)原告の父であるDは,B商店の屋号でLPガス(液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律(以下「液化石油ガス法」という。)2条1項にいう液化石油ガス),A重油,灯油等の燃料小 売業を営んでいたが,平成18年1月1日,息子である原告にB商店の事業を承継し,それ以後, 関する法律(以下「液化石油ガス法」という。)2条1項にいう液化石油ガス),A重油,灯油等の燃料小 売業を営んでいたが,平成18年1月1日,息子である原告にB商店の事業を承継し,それ以後,原告がB商店の事業主となった。 原告は,本件各年分の所得税の課税対象期間である平成22年1月1日から平成24年12月31日までの間(以下「本件期間」という。),B商店の屋号で上記の燃料小売業を営んでいた。 (2) 本件会社(甲16,25~28)本件会社は,上下水道,給排水,衛生設備及び浄化槽設計施工,冷暖房及びポンプ設計施工,空調機器設計施工,消防施設工事設計施工,土木工事業等を目的とする株式会社である。 本件会社は,法人税法2条10号に規定する同族会社であり,原告は,平成14年4月1日から平成26年3月31日まで同社の代表取締役であった。また,原告は,本件会社の平成21年9月1日から平成22年8月31日までの事業年度(以下「平成22年8月期」といい,その他の事業年度も同様に表記する。)から平成25年8月期まで,本件会社の主要な株主であった。 (3) 本件各処分に至る経緯(甲1~4)ア原告は,兵庫税務署長に対し,平成23年2月17日,原告の平成22年分の所得税の確定申告書を,平成24年2月23日,平成23年分の所得税の確定申告書を,平成25年3月5日,平成24年分の所得税の確定申告書を,それぞれ提出した。 原告の本件各年分における申告額は,別表「課税の経緯」の「確定申告」欄のとおりである。 イ原告は,本件各年分の所得税の申告において,B商店の業務であるLPガス等の配達,販売,保守等の業務(以下「本件配達販売」という。)を本件会社に委託し,本件会社に本件外注費を支払った( イ原告は,本件各年分の所得税の申告において,B商店の業務であるLPガス等の配達,販売,保守等の業務(以下「本件配達販売」という。)を本件会社に委託し,本件会社に本件外注費を支払った(以下「本件取引」という。)として,これを事業所得の金 額の計算上必要経費に算入した。ただし,本件配達販売を実際に行ったのは,B商店の事業主たる地位と本件会社の代表取締役たる地位を併有していた原告である。 本件外注費の金額は,平成22年分が665万円,平成23年分が692万5000円,平成24年分が675万5000円である。 ウ兵庫税務署長は,原告に対し,平成26年3月14日付けで,本件外注費を必要経費に算入することは,事業経営者自身に対する報酬を必要経費として認めることと等しい効果が認められ,原告の所得税の負担を不当に減少させる結果となるなどとして,所得税法157条1項の規定を適用し,本件各処分をした。 本件各処分における更正額等は,別表「課税の経緯」の「更正処分等」欄のとおりである。 (4) 本件訴訟に至る経緯等(甲5,6)ア原告は,平成26年4月30日付けで,兵庫税務署長に対し,本件各処分の全部の取消しを求めて異議申立てをしたが,同税務署長は,同年6月27日付けで,原告の異議申立てをいずれも棄却する旨の決定をした。 イ原告は,平成26年7月28日,国税不服審判所長に対し,本件各処分の全部の取消しを求めて審査請求をしたが,同所長は,平成27年6月24日付けで,原告の審査請求をいずれも棄却する旨の裁決をした。 ウ原告は,平成27年10月28日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。 3 主たる争点(1) 本件外注費は原告の事業所得に係る必要経費に該当するか も棄却する旨の裁決をした。 ウ原告は,平成27年10月28日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。 3 主たる争点(1) 本件外注費は原告の事業所得に係る必要経費に該当するか (2) 本件取引が所得税法157条1項の規定による同族会社の行為計算否認の対象となるか(3) 本件各更正処分の理由附記に不備があるか 4 主たる争点に関する当事者の主張の要旨(1) 本件外注費は原告の事業所得に係る必要経費に該当するか(争点①)(被告の主張)ア必要経費該当性の判断基準所得税法は,「必要経費」の直接的な定義規定を設けていないものの,同法37条1項の文理及びその趣旨に照らせば,ある支出が必要経費に該当するというためには,①それが事業活動と直接の関連性を有し(以下「関連性要件」という。),②事業の遂行上必要な支出である(以下「必要性要件」という。)との2要件を充足しなければならず,この2要件を満たさないものは,同法45条1項の家事上の経費(家事費)に該当し,必要経費には算入されない。そして,上記2要件の判断は,関係者の主観的判断を基準とするのではなく,客観的にされなければならない。 そして,ある支出が事業の遂行上必要であるかどうか(必要性要件)の判断は,所得税法が必要経費の控除を認める趣旨を踏まえた上で,当該業務の内容,当該支出及びその原因となった契約の内容,支出先と納税者との関係など個別具体的な諸事情に即し,社会通念に従って実質的に行われるべきである。 イ本件外注費の必要経費該当性(ア) 原告は,B商店の事業主の地位と本件会社の代表取締役の地位を兼ねている者であるところ,B商店の事業主として本件会社に本件配達販売を外注し,本件会社 イ本件外注費の必要経費該当性(ア) 原告は,B商店の事業主の地位と本件会社の代表取締役の地位を兼ねている者であるところ,B商店の事業主として本件会社に本件配達販売を外注し,本件会社に本件外注費を支払った 上で,原告自身が本件配達販売に従事していた。 本件取引は,原告以外の本件会社の従業員が本件配達販売に従事することを想定しておらず,飽くまで原告のみが本件配達販売に従事することを前提としてされたものであり,現に本件配達販売に従事していたのは原告のみであった。また,B商店の事業主である原告は,本件配達販売等の業務の遂行に必要な設備や,液化石油ガスの販売登録及び保安機関の認定を有していたが,本件会社はこれらを有しておらず,本件会社の事業目的に本件配達販売は含まれていなかったのであるから,B商店の事業主である原告ではなく,本件会社の代表取締役としての原告に本件配達販売をさせる必要はなかった。 そして,原告は,本件配達販売に従事するに当たり,B商店の保有する車両等の設備を使用し,その経費もB商店の事業主である原告自身が全て負担する一方,本件会社の役員でありながら個人業務(本件配達販売)をしているという理由で,個人業務の従事日数に日当を掛けて算出した外注配達費を本件会社に支払っていたというのである。 以上の事実からすると,本件取引は,B商店の事業主である原告が本件会社に本件配達販売を外注し,本件外注費を支払うという体裁を取っているものの,これを実質的にみれば,原告の個人事業に係る業務の遂行を原告自身が行ったことに対して外注費名目の金銭が支払われたというにすぎない。B商店の事業主である原告が,本件会社に本件配達販売を外注して本件外注費を支払っても,結局は原告自身が本件配達販売に 遂行を原告自身が行ったことに対して外注費名目の金銭が支払われたというにすぎない。B商店の事業主である原告が,本件会社に本件配達販売を外注して本件外注費を支払っても,結局は原告自身が本件配達販売に従事することになる以上,本件取引に基づく本件外注費の支払は,社会通念上,B商店の事業を遂行する上で,客観的な必要性が認め られない。 したがって,本件外注費は,必要経費の2要件のうち必要性要件を充足しないから,原告の事業所得に係る必要経費に該当しない。 (イ) 所得税法37条1項が必要経費の控除を認める趣旨は,投下資本の回収部分に課税が及ぶことを避ける点にある。しかるに,上記(ア)の事実関係からすれば,本件外注費は,B商店の事業主である原告が,自らの個人事業に係る業務を自らの設備と労力を使用して行ったことに対して支払われた金銭にほかならない。 そうすると,本件外注費を原告の事業所得の計算上必要経費として認めることは,原告自身が行った個人事業に係る労力の対価を必要経費に算入することに等しく,また,このような金銭を原告が支払ったとしても,結局は原告自身が本件配達販売を含むB商店の業務全般に従事することとなる以上,これによって原告の業務上の負担を軽減したり,原告(B商店)の収益を増加させる効果はなく,かえって収益を減少させる結果を招くのであるから,本件外注費に投下資本の回収部分は存在しない。 したがって,本件外注費を必要経費に算入することは,所得税法の趣旨に反するというべきである。 (ウ) 仮に本件外注費を必要経費として認めるとすると,個人事業主と同族会社の代表取締役を兼務している者の場合,本来は,自らの個人事業に従事した報酬相当額は必要経費に算入することができないにもかかわらず, 仮に本件外注費を必要経費として認めるとすると,個人事業主と同族会社の代表取締役を兼務している者の場合,本来は,自らの個人事業に従事した報酬相当額は必要経費に算入することができないにもかかわらず,当該個人事業の業務を同族会社に外注して外注費を支払うという体裁を取ることによって,これを個人事業の必要経費に算入し,個人の所得税の負担を減少させることが可能となる(更にいえば,同族会社の所得が赤字 の場合には,当該外注費を当該同族会社の売上げに計上しても,法人税の負担が増加することはない。)。そして,当該個人事業主が当該同族会社に対して支払った当該外注費については,役員報酬の名目で同額の返金を受けることとすれば,当該役員報酬には給与所得控除が適用されるため,その給与所得控除の分だけ個人事業主の所得が圧縮され,所得税が不当に減少することとなる。 このように,本件外注費を必要経費として認めるとすると,個人事業主と同族会社の代表取締役を兼務する者に対し,自由に税負担額を操作することを許すことにつながり,適正かつ公平な税負担という租税法の基本的な趣旨に反する結果となる。 (原告の主張)ア本件外注費の必要経費該当性本件外注費については,B商店の事業主である原告と本件会社との間に有効な法律行為(本件取引)が存在することを前提として,本件取引に基づいて本件会社(実際の業務従事者はその代表者である原告)が業務に従事しているという実態があり,さらに,本件取引に基づく業務の遂行に対して,原告から本件会社に対して対価が支払われ,本件会社においてはこれが売上げとして計上されている。そして,被告は,これらの行為の存在や有効性を争っていない。 そうすると,B商店の事業主である原告は,本件取引に基づき 対価が支払われ,本件会社においてはこれが売上げとして計上されている。そして,被告は,これらの行為の存在や有効性を争っていない。 そうすると,B商店の事業主である原告は,本件取引に基づき本件会社が従事した業務によって事業所得を得ており,その事業所得のために本件会社に対して本件外注費を支払っているのであるから,本件外注費が業務の遂行上必要な支出であることは明らかであり,原告の事業所得に係る必要経費に該当する。 イ被告の主張に対する反論等(ア) 被告は,本件取引に関して,実質的には,原告個人が営む事業を自ら遂行したものにすぎないというが,上記アのような法律行為や実態の存在は,実質的には原告個人が営む事業を自ら遂行したものにすぎないとの主張とは相容れないし,実質的にみればなおのこと,原告個人が営む事業を自ら遂行したものとはいえないはずである。 しかも,上記のような一連の取引は,B商店の事業主がDであった頃から行われていたものである。すなわち,B商店と本件会社との間の有効な私法上の取引は,原告がB商店の事業主になる前から存在し,その当時から,原告は,本件会社から派遣されて本件配達販売に従事していたのであり,原告がB商店の事業主になった後も,これまでの状況が維持されていたにすぎない。したがって,B商店の事業主が原告になったというだけで,本件外注費の必要経費該当性が否定される理由はないはずである。 (イ) 被告は,本件外注費を必要経費に算入することは,B商店の事業主である原告自身に対する報酬を必要経費に算入することに等しく,必要経費の控除を認める趣旨に反するなどと主張する。 しかし,所得税法上,必要経費の要件(関連性要件及び必要性要件)を充足しているにもかかわら る報酬を必要経費に算入することに等しく,必要経費の控除を認める趣旨に反するなどと主張する。 しかし,所得税法上,必要経費の要件(関連性要件及び必要性要件)を充足しているにもかかわらず必要経費該当性が否認されるのは,同法56条等の限られた場合のみであって,同法においては,このような規定以外に,私法上有効に成立した法律行為に基づき支払われている費用で必要経費の要件を充足するものにつき,必要経費該当性を否定する別段の定めは存しな い。被告の上記主張は,本件外注費を実質的に原告自身に対する報酬とみた上で,その必要経費該当性を否定するものであるが,このような実質課税は,有効に成立した法律行為を無効又は不存在とみなすものであって同法37条1項の解釈の範囲を超えており,租税法律主義に反するものであって,許されない。 (ウ) 原告の妻であるEは,平成19年4月に本件会社の従業員となり,平成21年3月から平成24年8月までの間,B商店(原告)から本件会社への事務委託に基づき,B商店の事務処理に従事していた。この間,本件会社は,本件外注費と共に事務費の名目で月額7万5000円を請求しており,原告は,この事務費を本件会社に支払うとともに,所得税の確定申告においても,事業所得に係る必要経費として申告していた。所轄税務署長も,上記事務費を原告の事業所得に係る必要経費として認めていたのであり,本件会社に委託された業務を誰が履行するかという点により,必要経費該当性が異なる理由はなく,本件外注費についても上記事務費と同様に必要経費該当性が認められるべきである。 (エ) 原告は,平成18年以降,本件会社からの役員報酬(年間600万円)のほか,B商店の事業主として事業所得を得ている。 そして,原告は,本件 要経費該当性が認められるべきである。 (エ) 原告は,平成18年以降,本件会社からの役員報酬(年間600万円)のほか,B商店の事業主として事業所得を得ている。 そして,原告は,本件会社での勤務時間のうち少なくとも4分の3以上の時間,B商店から受託した本件配達販売に従事していたものであるから,上記600万円のうち少なくとも450万円は,実質的には,B商店(原告)から本件会社に支払われた本件外注費の一部である。そうすると,仮に本件外注費が必要経費と認められない場合,上記450万円に対して二重に課税がされる結果となるのであり,このような結果が不合理であ ることは明らかである。 (2) 本件取引が所得税法157条1項の規定による同族会社の行為計算否認の対象となるか(争点②)(被告の主張)ア所得税法157条1項の「所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められる」かどうかは,専ら経済的,実質的見地において当該行為又は計算が通常の経済人の行為として,不合理又は不自然であるか否かにより判断すべきである。また,上記「所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められる」かどうかを検討するに当たっては,専ら経済的,実質的見地から判断すべきであるから,それが,独立・対等で相互に特殊関係のない当事者間で通常行われる取引とは異なっている場合も,経済的合理性を欠く行為等に当たるとするのが相当であり,そのような経済的合理性を欠く取引により,同族会社の株主等の税負担の減少が生じている場合には,所得税の負担を不当に減少させる結果が生じているということができると解される。 イ原告がした本件配達販売等のB商店の業務は,原告が営む個人事業の業務を原告自身が行ったものにすぎず,それを本件会社に外 を不当に減少させる結果が生じているということができると解される。 イ原告がした本件配達販売等のB商店の業務は,原告が営む個人事業の業務を原告自身が行ったものにすぎず,それを本件会社に外注する必要はなかったのであり,本件取引は,本件会社に本件配達販売を外注して「外注配達費」を支払うという体裁を取っているだけで,実質的には,原告の個人事業に係る業務全般を原告自らが行ったことについて本件会社に金銭を支払うというものにほかならないから,経済的,実質的見地から判断すると,純経済人の行為又は計算として不合理かつ不自然であり,経済的合理性があるとは認められない。 本件会社は原告の同族会社であるところ,本件会社が原告によ り意思決定を支配されている同族会社であるからこそ,原告の個人事業である本件配達販売等のB商店の業務全般を本件会社に外注し,原告自身がこれに従事するという実質的に不必要な取引が行われ,その対価が「外注配達費」という名目で本件会社に支払われるという体裁を取ることができたのであり,本件取引は,本件会社が原告の同族会社でなければなし得ない取引であったというべきである。 このように,本件取引は,独立・対等で相互に特殊関係のない当事者間で通常行われる取引とは異なり,同族会社でなければ通常行われ得ないものであって,経済的,実質的見地から判断すると,純経済人の行為又は計算として不合理かつ不自然なものである。 ウ本件では,本件取引及びこれに基づく本件外注費の支払によって,本件外注費が原告個人の事業所得の費用に計上され,原告個人の所得税の負担を本件各年分合計で578万9800円減少させているのであるから,本件外注費の支払によって原告の所得税の負担が不当に減少していることは明らかである。なお, 得の費用に計上され,原告個人の所得税の負担を本件各年分合計で578万9800円減少させているのであるから,本件外注費の支払によって原告の所得税の負担が不当に減少していることは明らかである。なお,本件外注費を本件会社の売上げに計上しなかった場合,本件会社の平成22年8月期,平成23年8月期及び平成24年8月期の所得はいずれも赤字であり,本件外注費を本件会社の売上げに計上しても,その法人税の負担は49万9500円しか増加していない。 エ以上のとおり,本件取引は,所得税法157条1項の規定による同族会社の行為計算否認の対象となる。 (原告の主張)ア B商店において,本件配達販売を第三者である法人等に委託することは通常行われるものであるし,他方,そのような場合に, 第三者である法人等は収益を得ることになるのであるから,第三者である法人等がこれを受託し,その所属員を当該業務に従事させることは,同族会社に限定されることなく,通常行われるものである。本件における委託先は,原告が代表取締役を務める本件会社であるところ,かかる取引は,独立かつ対等で相互に特殊な関係にない当事者間で通常行われるべき取引と比較して,純経済人の行為として不自然なところは何ら存しないし,本件取引によってB商店から本件会社に支払われた金額は,外注配達費として相当な金額であり,同族会社であるが故に高額な支払が行われていたという事実もなく,本件取引は,純経済人の行為として不合理かつ不自然な行為ではなく,何らの異常性も認められない。 イ被告も,Dと本件会社との間の契約に係る取引が正常な行為であると認めているところ,原告がB商店の事業を承継しても,取引の内容はもとより,その経済的実態も何ら変わらない。すなわち,B商店の事業主は本 被告も,Dと本件会社との間の契約に係る取引が正常な行為であると認めているところ,原告がB商店の事業を承継しても,取引の内容はもとより,その経済的実態も何ら変わらない。すなわち,B商店の事業主は本件配達販売を本件会社に外注し,本件会社は本件配達販売を受託して本件外注費を売上げに計上する点で何ら変更はないのであって,事業承継の前後を問わず,所得税額の不当な減少はないから,所得税法157条1項を適用する余地はない。 (3) 本件各更正処分の理由附記に不備があるか(争点③)(原告の主張)本件各更正処分の通知書(以下「本件各通知書」という。)において,「6.否認する行為」に否認する行為は示されているものの,「所得税の負担を不当に減少させる結果」の判断基準に基づいた判断過程(あてはめ)が具体的に示されていない。すなわち,所得税の納税義務者である原告が,更正の対象となった事実及びそれに対す る法的評価を明確に判断し得るものとはなっておらず,理由附記に不備があるといわざるを得ない。そして,本件各通知書は,「今回の人夫派遣に係る費用を必要経費に算入することは,事業経営者自身に対する報酬を必要経費として認めることと等しい結果が認められる」として,所得税の負担を不当に減少させる結果になっているとするが,所得税法157条1項の規定を適用したことについての具体的理由の記載はなく,この理由のみでは,同法155条2項の理由附記の趣旨に照らして十分なものとはいえない。 (被告の主張)本件各更正処分は,本件外注費が所得税法157条1項の規定による同族会社の行為計算否認の対象となり,その支払が否認されるという法的評価・判断に基づいて行われたものであり,必要経費を算定する基になった帳簿書類の記 は,本件外注費が所得税法157条1項の規定による同族会社の行為計算否認の対象となり,その支払が否認されるという法的評価・判断に基づいて行われたものであり,必要経費を算定する基になった帳簿書類の記載自体を否認したものではない。 よって,本件各更正処分は,帳簿書類の記載自体を否認することなく更正をする場合に該当する。 そして,本件各通知書には,処分理由として,前提となる事実及び根拠条文が示され,本件外注費が同族会社の行為計算否認規定の対象となった結果,その支払が否認されること及び更正後の具体的な事業所得の金額が記載されている。 そうすると,本件各更正処分は,更正の対象を特定し,その必要経費の一部を否認する旨,具体的な金額及び理由を法令に即して明示してされたものであるから,行政庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由附記制度の趣旨目的を充足する程度に更正の根拠を明示したものといえる。 したがって,本件各更正処分に係る理由附記には,同法155条2項の要求する更正理由の附記として欠けるところはない。 第3 当裁判所の判断 1 本件外注費は原告の事業所得に係る必要経費に該当するか(争点①)(1) 必要経費該当性の判断基準等所得税法27条2項は,事業所得の金額は,その年中の事業所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする旨規定し,同法37条1項は,その年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,当該所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費,一般管理費その他当該所得を生ずべき業務について生じた費用の額とする旨規定する。これらの規定による必要経費の控除の趣旨は,原資を維持しつ 金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費,一般管理費その他当該所得を生ずべき業務について生じた費用の額とする旨規定する。これらの規定による必要経費の控除の趣旨は,原資を維持しつつ拡大再生産を図るという資本主義経済の要請から,所得を稼得するための投下資本の回収部分に課税が及ぶことを避ける点にあるものと解される。 他方,同法45条1項は,居住者が支出し又は納付する家事上の経費及びこれに関連する経費で政令に定めるもの(1号)の額は,事業所得の金額の計算上,必要経費に算入しない旨規定し,所得税法施行令96条1項1号は,必要経費に該当する経費として,「家事上の経費に関連する経費の主たる部分が… 事業所得… を生ずべき業務の遂行上必要であり,かつ,その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費」を掲げている。 以上のような関係規定の文言及びその趣旨を踏まえると,ある支出が事業所得の金額の計算上必要経費として控除されるためには,当該支出が事業所得を生ずべき業務と合理的な関連性を有し(関連性要件),かつ,当該業務の遂行上必要であること(必要性要件)を要すると解するのが相当である。 そして,必要経費該当性(関連性要件及び必要性要件)の判断に当たっては,投下資本の回収部分に課税が及ぶことを避けるという必要経費の控除の趣旨に加え,家事上の経費との区別や恣意的な必要経費の計上防止の要請等の観点も踏まえると,関係者の主観的判断を基準とするのではなく,客観的な見地から判断すべきであり,また,当該支出の外形や名目等から形式的類型的に判断するのではなく,当該業務の内容,当該支出及びその原因となった契約の内容,支出先と納税者との関係など個別具体的な諸事情に即し,社会通 すべきであり,また,当該支出の外形や名目等から形式的類型的に判断するのではなく,当該業務の内容,当該支出及びその原因となった契約の内容,支出先と納税者との関係など個別具体的な諸事情に即し,社会通念に従って実質的に判断すべきである。 (2) 認定事実前記前提となる事実,証拠(甲35,乙7及び原告本人のほか,各項掲記の証拠)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア原告がB商店の事業を承継するまでの経緯(ア) 原告は,昭和53年頃,本件会社の前身であるFに就職し,製図や現場工事を担当していたが,平成元年頃に本件会社を退職し,その後,Dが営んでいたB商店の事業専従者となり,Dと共にその業務全般に従事していた。 ただし,原告は,本件会社を退職した後も,本件会社の応援依頼に応じて,同社の業務である配管工事等に従事することがあり,その場合には,原告が本件会社から直接日当を受け取るのではなく,B商店たるDが,本件会社に原告の日当相当額を請求し,これを受け取っていた。 (イ) 本件会社は,昭和58年2月23日に設立された。本件会社の目的は,上下水道,給排水,衛生設備及び浄化槽設計施工,冷暖房及びポンプ設計施工,空調機器設計施工,消防施設工事 設計施工,土木工事業等であり,本件配達販売(LPガス等の配達,運搬,保守等)や労働者派遣は含まれていない(甲16)。 (ウ) 原告は,平成14年4月1日,本件会社の代表取締役に就任し,これと同時にB商店の事業専従者から外れたが,原告の他に本件配達販売を行う適任者がいなかったため,その後も原告が本件配達販売等の業務に従事することとなった。 原告の上記就任等に伴い,原告,D及びG税理士 から外れたが,原告の他に本件配達販売を行う適任者がいなかったため,その後も原告が本件配達販売等の業務に従事することとなった。 原告の上記就任等に伴い,原告,D及びG税理士(B商店及び本件会社の顧問税理士。)の3名が協議し,これ以後,B商店たるDが本件会社にB商店の業務(主に本件配達販売であるがそれ以外の業務も含む。以下「本件委託業務」という。)を委託し,原告が本件委託業務に従事し,月ごとに本件会社がDに「人夫派遣費」名目の外注費(本件会社の受注業務に係る日当相当額を参考にして算出)を請求し,Dがこれを本件会社に支払い,これをB商店の事業に係る必要経費に計上するものとされた(以下「本件取決め」という。)。ただし,本件取決めにつき,契約書等の書面は作成されず,本件委託業務の範囲はもとより,原告が本件委託業務に従事する日数や時間,本件取決めの及ぶ期間等についても,明確な合意や取決めはなかった。 本件取決めにより本件委託業務に従事するのは原告のみであり,本件会社の他の従業員らがこれに従事することは予定されておらず,実際にもそのようなことはなかった。 イ原告がB商店の事業を承継した後の経緯(ア) Dは,平成17年2月頃から入退院を繰り返すようになり,原告は,平成18年1月1日,DからB商店の事業を承継し,その事業主となった。 原告は,同月16日,液化石油ガス法3条1項に基づく液化 石油ガスの販売登録を受けるとともに,同日,同法27条3項及び同法29条1項に基づく液化石油ガスの保安機関の認定を受けた(乙3)。 (イ) 原告は,DからB商店の事業を承継した後も,B商店たる原告が本件会社に本件委託業務を委託し,原告が本件委託業務に従事し,原 に基づく液化石油ガスの保安機関の認定を受けた(乙3)。 (イ) 原告は,DからB商店の事業を承継した後も,B商店たる原告が本件会社に本件委託業務を委託し,原告が本件委託業務に従事し,原告が本件会社に外注費を支払うという本件取決めによる取扱いを継続した(甲29,30)。なお,原告によるB商店の承継の際には,原告,D及びG税理士の間で特段の協議は行われず,従前と同様に,契約書等の書面も作成されなかった。 (ウ) 本件取決め以降,原告が本件委託業務に従事したことによりB商店たるD又は原告から本件会社に支払われた外注費は,D又は原告の所得税の確定申告において,「外注加工費」又は「外注配達費」の科目(平成18年末に外注加工費から外注配達費に科目振替)で,事業所得に係る必要経費に計上された(甲1~3,8~15)。他方,本件会社においては,平成14年8月期以後の確定申告において,本件取決めによりB商店たるD又は原告から支払われた外注費を売上げとして計上した(甲17~27)。 (エ) 本件取決め以降,原告がいつ本件会社の業務に従事するか本件委託業務に従事するかは,原告自ら判断して決めており,原告は,基本的に,本件会社の受注業務に係る現場作業等に従事した日を除く平日(月曜日から土曜日まで)は,ほぼ全日,本件委託業務に従事するものとしていた(ただし,原告は,平日の朝と夕方には,必ず本件会社の事務所に顔を出し,指示をしたり報告を受けたりしていた。)。そして,本件委託業務に従事した日数については,原告が,自己の手帳にメモする方法で 記録し,これを本件会社の従業員に伝えており,外注費の金額は,原告が申告したこの日数を基に算出されていた。 また,本件委託業務の範囲は,本件配達販売を含むB商店の業務全般 記録し,これを本件会社の従業員に伝えており,外注費の金額は,原告が申告したこの日数を基に算出されていた。 また,本件委託業務の範囲は,本件配達販売を含むB商店の業務全般に及ぶもので,その範囲に特段の限定はなかった。 ウ本件期間に関する事情(ア) 本件期間における本件外注費の金額は,原告が本件委託業務に従事した日数に1日当たり2万円又は2万5000円の単価を乗じて計算されており(甲29,30),平成22年分が665万円,平成23年分が692万5000円,平成24年分が675万5000円である。 原告が本件委託業務に従事した日数は,平成22年が266日,平成23年が277日,平成24年が284日である(なお,日曜及び祝日を除く日数は,年間で300日程度である。)。 (イ) 本件期間において,原告は,本件配達販売等の業務の遂行に必要な液化石油ガスの販売登録及び保安機関の認定を受けていたが,本件会社は,上記登録及び認定を受けていなかった(乙3)。なお,液化石油ガス法27条1項等の規定により,LPガスのガスボンベを交換する際には,保安機関の認定を受けた者が設備の点検等の保安業務を行う必要があるとされているため,保安機関の認定を受けた者が上記交換作業を行うのが通例である(乙4)。 (ウ) 本件期間において,原告は,B商店の事業用の資産として,石油貯蔵タンク,石油防油堤等の石油貯蔵設備及びタンクローリー車2台等を保有し,これらの設備,車両等を使用して本件配達販売を行っており,その燃料代等の経費も全て原告が負担していた。他方,本件会社は,本件期間において,上記のよう な設備,車両等を保有していなかった。(以上につき甲1~3,乙1)(エ) ており,その燃料代等の経費も全て原告が負担していた。他方,本件会社は,本件期間において,上記のよう な設備,車両等を保有していなかった。(以上につき甲1~3,乙1)(エ) 本件期間において,原告が本件会社から役員報酬として受け取った給与所得の収入金額は,平成22年及び平成23年がいずれも年600万円(平成18年から平成21年までの期間も年600万円)であり,平成24年が年570万円であった(甲1~15)。これらの金額は,原告が本件配達販売又は本件委託業務に従事した日数や,本件外注費の金額の多寡とは連動しておらず,年間当たりの金額で決められていた。 (3) 本件外注費の必要経費該当性(当てはめ)上記認定事実によれば,原告は,本件期間において,B商店の事業主の地位と本件会社の代表取締役の地位を併有していたものであるが,①本件会社の目的は,上下水道,給排水,衛生設備及び浄化槽設計施工等であり,本件配達販売や労働者派遣は含まれていないこと(認定事実ア(イ)),②原告は,本件配達販売等の業務の遂行に必要な液化石油ガスの販売登録及び保安機関の認定を受けていたが,本件会社は,上記登録及び認定を受けていなかったこと(同ウ(イ)),③原告は,B商店の事業主として保有する設備,車両等を使用して本件配達販売等の業務を行っており,その燃料代等の経費も全て原告が負担し,他方で,本件会社は,このような設備,車両等を保有していなかったこと(同ウ(ウ)),④本件取決めにより本件委託業務に従事するのは原告のみであり,本件会社の他の従業員らがこれに従事することは予定されておらず,実際にもそのようなことはなかったこと(同ア(ウ)),⑤原告がいつ本件会社の業務に従事するか本件委託業務に従事するかは,原告自ら判断して決めており,原 業員らがこれに従事することは予定されておらず,実際にもそのようなことはなかったこと(同ア(ウ)),⑤原告がいつ本件会社の業務に従事するか本件委託業務に従事するかは,原告自ら判断して決めており,原告は,本件会社の受注業務に係る現場作業等に従事した日を除く平日は, ほぼ毎日,本件委託業務に従事していたこと(同イ(エ),ウ(ア)),⑥本件委託業務の範囲は,本件配達販売を含むB商店の業務全般に及ぶもので,その範囲に特段の限定はなかったこと(同ア(ウ),イ(エ)),以上の事実が認められる。これらの事情によれば,原告は,本件期間において,自己の個人事業(B商店)に係る業務全般を,自己の保有する設備,車両等や資格を用いて,日常的に,自己の経験と判断に基づき,自己の労力及び経費負担をもって遂行していたものというべきである。そして,本件取決め又は本件取引については,契約書等の書面が作成されておらず,契約の重要な要素についても明確に定められていないなど(同ア(ウ),イ(イ)),一般的な事業者間の業務委託契約や労働者派遣契約とは明らかに異質のものであることも考慮すると,原告による本件委託業務の遂行の実質は,本件会社による役務の提供(業務委託)や労働力の提供(労働者派遣)といったものではなく,正に,原告が自らB商店の事業主として主体的にその業務を遂行していたものというほかはない。 そうすると,B商店の業務に関し,B商店たる原告が本件会社に対し本件配達販売を委託し,本件会社がこれを遂行し,原告から本件会社に対し本件外注費が支払われたという形式及び外観が存在するものの,その実質は,原告が自らB商店の事業主としてその業務を遂行する一方で,本件取決めに基づく取扱いを継続することにより,本来支払う必要のない事業主自身の労働の対価(報酬)を, 及び外観が存在するものの,その実質は,原告が自らB商店の事業主としてその業務を遂行する一方で,本件取決めに基づく取扱いを継続することにより,本来支払う必要のない事業主自身の労働の対価(報酬)を,「外注配達費」や「人夫派遣費」という名目で本件外注費として本件会社に支払っていたものといわざるを得ない。 以上によれば,本件外注費は,社会通念上,B商店の業務の遂行上必要であるとはいえず,必要経費該当性の判断基準における必要性要件を欠くものと認められるから,原告の事業所得に係る必要経 費には該当しないというべきである。 (4) 原告の主張についてア原告は,本件取引に基づく本件外注費の支払は,DがB商店の事業主であった頃から行われていたものであり,原告がB商店の事業をDから承継した後もそれまでの状況が維持されていたにすぎないから,本件外注費の必要経費該当性が否定される理由はないはずであるなどと主張する。 しかし,DがB商店の事業主であった頃は,事業主と業務遂行者は形式的にも実質的にも異なるのであるから,Dが支払った外注費を必要経費と認めることに特段の問題はないというべきであるが,原告がB商店の事業主となった後は,上記(2)及び(3)で認定説示した事情の下では,その実質において,原告が自らB商店の業務を遂行していたものとみざるを得ないのであって,本件外注費には業務遂行上の必要性が認められないから,その必要経費該当性は否定されるというべきである。このように,原告がB商店の事業を承継する前と後では,判断の基礎となる事情が大きく異なるのであるから,必要経費該当性の判断が異なることには合理的な理由がある。原告の主張は採用することができない。 また,原告は,平成21年3月から平成24年8月まで 礎となる事情が大きく異なるのであるから,必要経費該当性の判断が異なることには合理的な理由がある。原告の主張は採用することができない。 また,原告は,平成21年3月から平成24年8月までの間,B商店(原告)の本件会社に対する事務委託に伴い,本件会社の従業員である原告の妻がB商店の事務を処理し,原告から本件会社に対し月額7万5000円の事務費が支払われているところ,当該事務費は必要経費として認められているから,本件外注費についても必要経費該当性が認められるべきであるとも主張する。 しかし,これも上記と同様であって,原告自身がB商店の業務を遂行する場合と,本件会社の従業員である原告の妻がB商店の業 務を遂行する場合とでは,判断の基礎となる事情が大きく異なるのであるから,必要経費該当性の判断が異なることには合理的な理由がある。原告の主張は採用することができない。 イ原告は,被告の主張は,必要経費該当性の判断に名を借りた実質課税であり,有効に成立した法律行為を無効又は不存在とみなすものであって,所得税法37条1項の解釈の範囲を超えており,租税法律主義に反し許されないなどと主張する。 しかし,前述のとおり,必要経費該当性(関連性要件及び必要性要件)の判断に当たっては,支出の外形や名目等から形式的類型的に判断するのではなく,個別具体的な諸事情に即し,社会通念に従って実質的に判断すべきであり(上記(1)),このような判断の方法は,所得税法37条1項の文理から離れるものではなく,その解釈として許される範囲を超えるものではない。そして,前述のとおり,本件の事案に係る個別具体的な諸事情に即し,社会通念に従って実質的に判断すれば,本件外注費はB商店の業務の遂行上必要であるとはいえないのであって(上記(2) えるものではない。そして,前述のとおり,本件の事案に係る個別具体的な諸事情に即し,社会通念に従って実質的に判断すれば,本件外注費はB商店の業務の遂行上必要であるとはいえないのであって(上記(2)(3)),このような判断は,同項の解釈及び適用(当てはめ)の範疇を超えるものではなく,租税法律主義に反するものでないことは明らかである。 なお,本件外注費の業務遂行上の必要性(必要性要件)を否定することは,あくまでも必要性の評価の問題であって,本件取決めや本件取引を無効又は不存在とみなすものではないから,このような理解を前提とする原告の主張は,その前提を誤るものというほかはない。 ウ原告は,本件期間において,本件会社での勤務時間のうち少なくとも4分の3以上の時間は,B商店から受託した本件配達販売 に従事していたから,本件会社からの役員報酬である年600万円のうち少なくとも450万円は本件外注費の支払に依拠しているなどとして,仮に本件外注費が必要経費と認められない場合,上記450万円は,原告の事業所得及び給与所得において二重に課税される結果となり,不合理であるなどと主張する。 しかし,原告が本件会社から役員報酬として受け取った給与所得の収入金額は,平成18年から平成23年までは一律に年600万円,平成24年が年570万円であって,原告が本件配達販売又は本件委託業務に従事した日数や,外注配達費(人夫派遣費)の金額の多寡とは連動しておらず,年間当たりの金額で決められていたものと認められる(認定事実ウ(エ))。このような役員報酬の算定方法等に加え,一般に,会社の役員報酬は,勤務時間や売上げ等から機械的に算出されるものではなく,役員としての責任の軽重や職務の内容等の諸事情を総合的に勘案し 事実ウ(エ))。このような役員報酬の算定方法等に加え,一般に,会社の役員報酬は,勤務時間や売上げ等から機械的に算出されるものではなく,役員としての責任の軽重や職務の内容等の諸事情を総合的に勘案して金額が決せられるものであることも考慮すると,仮に上記役員報酬の原資に事実上本件外注費が含まれていたとしても,原告の事業所得と給与所得(役員報酬)は所得の発生原因を異にする別個のものといわざるを得ず,上記役員報酬の一部を原告の事業所得と同視することはできないから,同一の所得が事業所得と給与所得の二重に計上されているとはいえない。原告の主張は採用することができない。 エ原告は,以上のほかにも,要旨,①本件外注費は,いわゆる個別対応の経費(所得税法37条1項の「事業所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用」)であって,必要性要件該当性を吟味するまでもなく,必要経費に該当することは明らかである,②必要経費該当性の判断基 準(関連性要件及び必要性要件)は,必要経費と家事費との区別を行うためのものであるところ,本件外注費が家事費に該当しないことは明らかであるから,本件外注費は必要経費に該当しない,③金額が過大である場合はともかく,関連性要件が認められる支出の全額につき,必要性要件が否定されることはあり得ないなどと主張する。 しかし,①については,必要経費該当性は,上記(1)の判断基準のとおり,関連性要件と必要性要件の2つの要件をもって判断するのが相当であると解され,上記基準により必要経費に該当すると認められる場合に,個別対応の経費と期間対応の経費に区分されるにすぎない。したがって,本件外注費が上記のいずれの経費に該当するかは,その必要経費該当性を判断する上で直接 準により必要経費に該当すると認められる場合に,個別対応の経費と期間対応の経費に区分されるにすぎない。したがって,本件外注費が上記のいずれの経費に該当するかは,その必要経費該当性を判断する上で直接問題となるものではない。しかも,本件の事実関係の下では,本件外注費と本件配達販売による売上げとは個別的に対応するとは認められないから(認定事実イ(エ),ウ(エ)等),本件外注費は個別対応の経費とはいえず,原告の上記①の主張はその前提を欠くものというほかはない。 ②については,上記のとおり,必要経費該当性は,関連性要件と必要性要件の2つの要件をもって判断するのが相当であり,必要経費に該当しないものが家事費であるというべきであるから,家事費に該当するかどうかを必要経費該当性の判断基準とすることはできない。また,典型的な家事費に該当しないことをもって,必要経費に該当すると推認することもできない。 ③については,たとい支出の外形や名目等から業務との関連性が認められる場合であっても,当該支出の実質に照らしてその全部又は一部につき業務遂行上の必要性が認められないときは,必 要経費の控除の趣旨に照らし,これを必要経費と認めることはできないというべきであり,関連性要件該当性につき当事者間に特段の争いがないからといって,当然に必要性要件も認められるというものではない。 また,仮に,本件のような事情の下で,本件外注費を原告の事業所得に係る必要経費として認めるとすると,個人事業主(農家,個人商店など)と同族会社の代表者を兼務する者の場合,事業主自身が従事する業務を会社に外注し,その外注費を支払うことにすれば,本来は必要経費に算入することのできない事業主自身の労働の対価を,個人事業の必要経費とすることがで 代表者を兼務する者の場合,事業主自身が従事する業務を会社に外注し,その外注費を支払うことにすれば,本来は必要経費に算入することのできない事業主自身の労働の対価を,個人事業の必要経費とすることができることとなり,ひいては,税額の自由な操作を許すことになりかねないのであって,租税法の根本原則に反する不合理な結論となることは明らかである。 以上のとおり,原告の主張はいずれも採用することができない。 また,原告は,他にも様々な観点から縷々主張するが,いずれも上記認定判断を左右するに足りない。 (5) まとめ以上によれば,本件外注費は,原告の事業所得に係る必要経費には該当しないというべきである。なお,本件外注費が原告の事業所得に係る必要経費に該当しない以上,本件取引が所得税法157条1項の規定による同族会社の行為計算否認の対象となるか(争点②)については,判断する必要がない。 2 本件各更正処分の理由附記に不備があるか(争点③)(1) 所得税法155条2項が,青色申告書に係る所得税について更正をする場合には,更正通知書にその更正の理由を附記すべきものとしているのは,同法が,青色申告書に係る所得の金額の計算につい ては,それが法定の帳簿組織による正当な記載に基づくものである以上,その帳簿の記載を無視して更正がされることがないことを納税者に保障した趣旨に鑑み,行政庁の判断の慎重,合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与える趣旨に出たものと解されるところ,帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合においては,当該更正は納税者による帳簿の記載を覆すものではないから,更正通知書に記載されている更正の理由が当該更正の根拠 ものと解されるところ,帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合においては,当該更正は納税者による帳簿の記載を覆すものではないから,更正通知書に記載されている更正の理由が当該更正の根拠を上記の理由附記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するものである限り,同法の要求する更正理由の附記として欠けるところはないと解するのが相当である(最高裁判所昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁参照)。 (2) 本件各通知書(甲4)には,要旨,①本件各年分の所得税の確定申告書について,調査の結果,事業所得の金額に誤りがある旨(○処分の理由),②本件会社から請求された「人夫派遣費」は,原告が,原告の経営する事業に従事するために本件会社に支払った金額と認められる旨(1 外注配達費),③所得税法157条1項の規定の内容(3 所得税法第157条(同族会社の行為又は計算の否認等)),④本件各年分において,本件会社は同族会社に該当し,原告はその株主であると認められる旨(5 同族会社),⑤所得税法上,事業経営者自身に対する報酬は必要経費とすることができないところ,本件外注費を必要経費に算入することは,事業経営者自身に対する報酬を必要経費として認めることと等しい効果が認められ,原告の所得税の負担を不当に減少させる結果となるので,本件外注費に係る取引行為を否認する旨(6 否認する行為),⑥本件各年分の事業所得の金額は,本件外注費の金額を加算した金額となる旨 (7 事業所得の金額)などが記載されている。 本件各更正処分は,帳簿書類の記載自体を否認するものではないところ,本件各通知書には,上記のとおり,処分理由として,否認の対象とされた経費の名目とその実質の認定,否認の根拠とされた条文(所得税法1 本件各更正処分は,帳簿書類の記載自体を否認するものではないところ,本件各通知書には,上記のとおり,処分理由として,否認の対象とされた経費の名目とその実質の認定,否認の根拠とされた条文(所得税法157条1項)とその内容,否認の対象となった行為と上記規定への当てはめ,否認により加算される事業所得の金額等が順を追って示されているものと認められる。そうすると,本件各通知書に附記された理由は,本件各更正処分の根拠を,行政庁の判断の慎重,合理性を担保してその恣意を抑制し,不服申立ての便宜を図るという理由附記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するものというべきであり,同法が求める理由の附記として欠けるところはなく,本件各更正処分について理由附記の不備の違法はないというべきである。 3 結論以上のとおり,原告が主張する本件各処分の違法事由はいずれも採用することができず,その他,本件各処分を取り消すべき違法事由は見当たらないから,本件各処分はいずれも適法であると認められる。 よって,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部裁判長裁判官山田明 裁判官徳地淳 裁判官小林真由美
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