平成21(行ヒ)25 公文書非公開決定処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成22年2月25日 最高裁判所第一小法廷 判決 その他 大阪高等裁判所 平成19(行コ)29
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判決文本文3,752 文字)

- 1 -主文原判決中1審被告敗訴部分を破棄し,同部分につき1審原告の控訴を棄却する。 1審原告の上告を棄却する。 控訴費用及び各上告費用は1審原告の負担とする。 理由 平成21年(行ヒ)第25号上告代理人高坂敬三ほかの上告受理申立て理由及び同第26号上告代理人田窪五朗,同河村学の上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について 本件は,1審原告が,茨木市情報公開条例(平成15年茨木市条例第35号。以下「本件条例」という。)に基づき,同条例所定の実施機関である茨木市教育委員会(以下「市教委」という。)に対して,平成15年度及び同16年度に茨木市立学校の教職員の評価等に関して教職員が作成した自己申告票及び校長が作成した評価・育成シートの一部につき,その公開を請求したところ,本件条例7条6号柱書き及び同号エ所定の非公開情報が記録されているとしてこれを非公開とする旨の各決定(以下「本件各処分」という。)を受けたため,その取消しを求めている事案である。 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。 (1)本件条例7条は,「実施機関は,公開請求があったときは,公開請求に係る公文書に次の各号に掲げる情報(以下「非公開情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き,公開請求者に対し,当該公文書を公開しなければならない。」と定めた上,非公開情報の一つとして,同条6号柱書きにおいて,「市の機- 2 -関(中略)が行う事務又は事業に関する情報であって,公にすることにより,次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」を掲げ,その例の一つとして,同号エにおいて,「人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ」を掲げている。 ,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」を掲げ,その例の一つとして,同号エにおいて,「人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ」を掲げている。 (2)市教委は,教職員が個人目標を主体的に設定し,他と協力しながらその達成に積極的に取り組み,評価,改善等を行うことにより,教職員の意欲・資質能力の向上,教育活動等の充実及び組織の活性化を図ることを目的として,茨木市立学校に勤務する教職員の評価・育成システム(以下「本件システム」という。)を導入した。その手順は,教職員が取り組む目標を記載した自己申告票を作成し,校長との目標設定面談を経るなどしながら,目標達成状況等を順次追記して自己申告票を完成させた上,これを校長に提出し,校長において,当該教職員に対する日常の観察や自己申告票の内容等を踏まえてその評価を記載した評価・育成シートを作成し,当該教職員との間でその開示をしつつ面談を行うなどして指導助言を行うものである。この過程で作成された自己申告票及び評価・育成シート(以下,両者を併せて「本件各文書」という。)の写しは,校長から勤務成績の評定権者である市教委(地方教育行政の組織及び運営に関する法律46条)に提出される。 平成15年度及び同16年度の本件各文書は,以上のようにして作成されたものであり,このうち,自己申告票は,作成者の所属校,氏名,経歴等及び今年度の組織目標を記載する各欄のほか,設定目標,進ちょく状況,目標の達成状況及び「今後習得したい知識・技能及び今後取り組みたいこと」の各欄(以下「本件公開請求部分1」という。)から構成されている。他方,評価・育成シートは,作成者の氏- 3 -名及び所属校等を記載する欄のほか,能力の評価及び総合評価の各欄(以下「本件公開請求部分2」という。)並び 請求部分1」という。)から構成されている。他方,評価・育成シートは,作成者の氏- 3 -名及び所属校等を記載する欄のほか,能力の評価及び総合評価の各欄(以下「本件公開請求部分2」という。)並びに業績の評価及び「次年度に向けた課題・今後の育成方針」の各欄(以下「本件公開請求部分3」といい,これと本件公開請求部分1,2を併せて「本件各公開請求部分」という。)から構成されている。 (3)1審原告は,市教委に対し,本件各公開請求部分の公開請求をしたが,市教委は,本件各公開請求部分に係る情報は,本件条例7条6号柱書き及び同号エ所定の非公開情報に当たるとして,いずれについても非公開とする本件各処分をした。 原審は,上記事実関係等の下において,要旨次のとおり判断し,市教委が,本件公開請求部分1,2につき非公開としたのは適法であるが,本件公開請求部分3につき非公開としたのは違法であるとして,本件公開請求部分3に係る請求を認容すべきものとし,その余の請求を棄却すべきものとした。 (1)本件公開請求部分1,2が公開されると,教職員は他の教職員,生徒及び保護者との無用な摩擦を避けるなどのために率直な記載を控えたり,教職員からの本件システムへの協力が得られなくなったりするおそれがあり,同部分に係る情報は本件条例7条6号柱書き及び同号エ所定の非公開情報に当たる。 (2)これに対し,本件公開請求部分3は,教職員個人に対する評価としての性格は弱く,余り具体的な記載が要求されているとも考えられない。したがって,その記載内容を公開しても,それによって教職員からの本件システムへの協力が得られなくなるおそれがあるとは認められず,同部分に係る情報は本件条例7条6号柱書き及び同号エ所定の非公開情報に当たるとはいえない。 原審の上記3の判断のうち,(1)は是認するこ ステムへの協力が得られなくなるおそれがあるとは認められず,同部分に係る情報は本件条例7条6号柱書き及び同号エ所定の非公開情報に当たるとはいえない。 原審の上記3の判断のうち,(1)は是認することができるが,(2)は是認する- 4 -ことができない。その理由は,次のとおりである。 前記事実関係等によれば,本件システムは,教職員による主体的な目標設定と達成状況等の点検及びこれを踏まえた教職員に対する評価,指導等を通じて,教職員の意欲・資質能力の向上,教育活動等の充実及び組織の活性化を図ることを目的とするものであり,本件各文書は,このような本件システムを運用する過程で教職員及び校長により作成され,その写しが勤務成績評定権者である市教委に送付されて,人事管理及び人事評価の資料として用いられるものである。そうすると,本件システムの上記のような目的が達成されるためには,教職員は,その目標や達成状況等を,他の教職員,生徒及び保護者に関する事情等も含めて,自己申告票に率直かつ具体的に記載し,校長は,当該教職員に係る所見,課題及び育成方針等を評価・育成シートに率直かつ具体的に記載することがそれぞれ期待されていると考えられる。 ところが,このような本件各文書の性質等からして,本件各公開請求部分には,作成者である教職員若しくは校長又は記載されている関係者が特定できるような記載がされたり,教職員や評価者が外部に公開されることを望まないような記載がされることがあり得ると考えられる(記録によれば,実際にもそのような記載がされている例があることがうかがわれる。)。したがって,本件各公開請求部分が公開されることになった場合,作成者や記載内容中の関係者が特定されて問題が生じるのをおそれたり,自らが記載した具体的内容が広く第三者に公開される可能性があるのを嫌ったり がって,本件各公開請求部分が公開されることになった場合,作成者や記載内容中の関係者が特定されて問題が生じるのをおそれたり,自らが記載した具体的内容が広く第三者に公開される可能性があるのを嫌ったりして,教職員や校長が当たり障りのない記載しかしなくなる結果,本件各文書の記載内容が形骸化するおそれがあるというべきである。このことは,本件公開請求部分3についても,何ら変わるところがないものと考えられる。 - 5 -そうすると,本件各公開請求部分に係る情報は,これを公開した場合に,学校の組織活性化等を目的とした本件システムに係る事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり,ひいては公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあるものであり,本件条例7条6号柱書き及び同号エの定める非公開情報に当たるというべきである。 以上と異なる見解の下に本件公開請求部分3につき請求を認容すべきものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。1審被告の論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決中の1審被告敗訴部分は破棄を免れない。そして,同部分について請求を棄却した第1審判決は正当であるから,同部分に係る1審原告の控訴を棄却すべきである。原判決中のその余の部分は是認することができる。1審原告の論旨は採用することができない。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官宮川光治裁判官櫻井龍子裁判官金築誠志裁判官横田尤孝)

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