令和6(わ)118 被告人両名に対する不正競争防止法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
令和7年4月10日 山口地方裁判所
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判決文本文4,009 文字)

主文 被告人Aを罰金40万円に、被告人Bを懲役10月に処する。 被告人Bに対し、この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。 訴訟費用は被告人両名の連帯負担とする。 理由 (犯罪事実)被告人Aは、山口県下関市a町b丁目c番d号に当時の事務所兼加工場を置き、水産物の加工及び販売等の業務を目的とするもの、被告人Bは、同社取締役として同社の業務全般を統括管理していたものであるが、被告人Bは、被告人Aの業務に関し、不正の目的をもって、別表記載のとおり、令和元年12月2日頃から同月5日頃までの間、2回にわたり、C株式会社D支社に対し、原産地を外国とするしじみを販売するに当たり、前記加工場において、原産地を外国とするしじみを詰めたネットに「青森県産シジミ」と記載されたラベルを入れ、商品の原産地について誤認させるような虚偽の表示をした上、情を知らない運送業者にその運送を依頼し、同月3日頃から同月6日頃までの間、千葉県成田市飯仲39番地1所在の当時の成田市公設地方卸売市場において、C株式会社D支社にこれを納品し、前記しじみ合計約20キログラムを税抜販売代金合計1万4600円で販売譲渡し、もって、不正競争を行った。 (証拠) 省略(事実認定の補足説明) 1 弁護人は、被告人Bには、本件において被告人Aが青森県産と表示して販売譲渡したしじみが外国産であるとの認識がなく、本罪の故意や不正の目的が認められないから、被告人両名は無罪である旨主張するので、以下、裁判所の判断を補足して説明する。 2 関係証拠によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 被告人Aは水産物の加工及び販売等の業務を目的とする有限会社であり、被告人Bは被告人Aの取締役と るので、以下、裁判所の判断を補足して説明する。 2 関係証拠によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 被告人Aは水産物の加工及び販売等の業務を目的とする有限会社であり、被告人Bは被告人Aの取締役として業務全般を統括管理し、本件当時、もっぱら被告人Bがしじみの仕入れや経理を担当していた。 ⑵ 被告人Aは、令和元年6月から令和2年2月まで、しじみをE及びFから仕入れたものとして会計帳簿に記載していた。このうち被告人AがEから仕入れたものとしたしじみは、株式会社Gが株式会社Hから購入したロシア産のものであり、Fから仕入れたものとしたしじみは、株式会社IがJ株式会社から購入し、株式会社IがFに卸した海外産のものであった。 ⑶ 令和元年11月28日、G及びJが輸入したロシア産しじみがそれぞれ被告人Aの加工場に運ばれた。 ⑷ 被告人Aは、同年12月2日頃、C株式会社D支社から青森県産しじみ10キログラムの注文を受け、被告人Aの従業員であるKが出荷準備を行って発送し、同月3日頃、1キログラムあたり730円でC株式会社D支社に納品した。また、同月5日頃、被告人Aは、C株式会社D支社から青森県産しじみ10キログラムの注文を受け、同様にKが出荷準備を行って発送し、1キログラム当たり730円でC株式会社D支社に納品した。 ⑸ 令和2年1月6日頃、被告人Aは、Fから1キログラム当たり345円でしじみを購入し、被告人Aのしじみを1キログラム当たり400円でFに販売した。 3 Kは、当公判廷において、骨子以下のとおり供述する。「被告人Aでは、被告人Bが『Gのしじみ』と呼んでいるしじみと、『Jのしじみ』と呼んでいるしじみの2種類を取り扱っていた。被告人Bが『Gのしじみ』が届くと言った日には、オレンジ色の袋に入ったしじみが、『Jのしじみ』が届くと言っ Gのしじみ』と呼んでいるしじみと、『Jのしじみ』と呼んでいるしじみの2種類を取り扱っていた。被告人Bが『Gのしじみ』が届くと言った日には、オレンジ色の袋に入ったしじみが、『Jのしじみ』が届くと言った日には、白色の袋に入ったしじみが被告人Aに搬入された。被告人Aにおいて、青森県産のしじみの注文が入った時には、白色の土嚢袋に入った『Jのしじみ』を使い、それで足りなかった時に『Gのしじみ』を若干混ぜて出荷していた。その後、『Jのしじみ』をFが管理するようになったが、青森県産のしじみの注文が入った際には、Fから『Jのしじみ』を借りて出荷していた。被告人BからEという業者の名前を聞いたことはない。」。以上のとおりである。 Kの供述内容は、Kが被告人Aにおいて日常的に行ってきた業務に関するものであって、記憶違いが生じにくい事柄といえる上、客観的な証拠との矛盾もない。Kが被告人Bに不利な供述をする特段の動機が見当たらないことも併せ考慮すれば、前記供述は十分に信用 することができる。 4 Kの供述によれば、被告人Bは、被告人Aに搬入されるしじみを「Gのしじみ」又は「Jのしじみ」と呼び、青森県産のしじみの注文が入った際には、基本的には「Jのしじみ」を使用し、不足した際には「Gのしじみ」を混ぜて出荷することになっており、「Jのしじみ」をFが管理するようになってからも、同様の取扱いが行われてきたことになる。このことに被告人Bも、「Gのしじみ」はGから入手するしじみ、「Jのしじみ」はJから入手するしじみの意味であって、GやJがロシア産のしじみを取り扱っていることはわかっていた旨述べていることも併せ考えると、被告人Bは、本件のしじみが外国産のしじみであることを認識していたものと推認できる。 また、前記のとおり、被告人Aは、本件と近接した時期において、F とはわかっていた旨述べていることも併せ考えると、被告人Bは、本件のしじみが外国産のしじみであることを認識していたものと推認できる。 また、前記のとおり、被告人Aは、本件と近接した時期において、Fから1キログラム当たり345円でしじみを購入し、被告人Aが仕入れたしじみを1キログラム当たり400円で販売している。関係証拠によれば、本件当時、被告人Aのような卸売業者が国産しじみを400円程度で仕入れることは不可能であったものと認められ、被告人Aの仕入れや経理を担当してきた被告人Bがこの点を認識していなかったとは考えられない。このような被告人Aにおけるしじみの取引価格も前記の推認を裏付けるものである。 5 これに対し、被告人Bは、本件当時、被告人Aは、島根県産及び青森県産のしじみをEから仕入れていたが、Eがどこからしじみを仕入れていたかは知らなかった旨述べる。 しかし、被告人Bによれば、Eから渡された請求書や代金の領収書は紛失したというのであり、その他、被告人Bの供述するEという業者が現に存在したことを裏付ける客観的な証拠は見当たらない。また、前記のとおり、被告人Aは、EとFしか仕入先がなかったとする本件当時において、Fに対して1キログラム当たり400円でしじみを販売しているから、Eからそれ以下の値段で仕入れたものと考えられるが、被告人Bにおいて、青森県産や島根県産のしじみであると誤信していたならば、Eがそのような低額で被告人Aに国産しじみを販売することは考えられない。被告人Bの供述は、裁判所の前記推認を揺るがすものとはいえない。 6 以上によれば、被告人Bには本罪の故意及び不正の目的が認められる。弁護人の主 張は採用できない。 (法令の適用)被告人Aについて罰条包括して令和5年法律第51号による改正前の不 被告人Bには本罪の故意及び不正の目的が認められる。弁護人の主 張は採用できない。 (法令の適用)被告人Aについて罰条包括して令和5年法律第51号による改正前の不正競争防止法21条2項1号、2条1項20号、22条1項3号訴訟費用の連帯負担刑訴法181条1項本文、182条被告人について罰条包括して令和5年法律第51号による改正前の不正競争防止法21条2項1号、2条1項20号刑種の選択懲役刑刑の執行猶予刑法25条1項訴訟費用の連帯負担刑訴法181条1項本文、182条(量刑の理由)本件は、判示のとおりの不正競争防止法違反の事案である。被告人Aは、安価な外国産しじみを国産しじみと偽装して販売したものであって、本件犯行は、水産加工業者間の公正な競争を害するとともに、原産地表示に対する消費者の信頼を揺るがすものといえる。 被告人Bは、本件以前に被告人Aが産地偽装を疑われて山口県等からの調査を受けたにもかかわらず、本件犯行に及んだものであって、産地偽装が常習的に行われていたものと認められることからしても、厳しい責任非難を免れない。以上によれば、本件で販売したしじみの量は多いものではないことを考慮しても、被告人両名の刑事責任を軽視することはできない。 そこで、同種事件の量刑傾向を踏まえた上で、被告人Bに前科がないこと等の事情も考慮し、被告人両名にそれぞれ主文のとおりの刑を量定した上で、被告人Bに対し、懲役刑の執行を猶予することとした。 (求刑・被告人Aにつき罰金50万円被告人Bにつき懲役1年)(検察官田邊哲寛被告人両名に対する私選弁護人道山智成各出席) 令和7年4月10日山口地方裁判所第3部 求刑 被告人Aにつき罰金50万円 被告人Bにつき懲役1年 (検察官田邊哲寛 被告人両名に対する私選弁護人道山智成 各出席) 令和7年4月10日 山口地方裁判所第3部 裁判官 安達拓 別表 番号 発送日(頃) 納品日(頃) 数量 合計(約) 価格合計(税抜) 令和元年12月2日 令和元年12月3日 10キログラム 7300円 令和元年12月5日 令和元年12月6日 10キログラム 7300円 計 1万4600円以上

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