平成26年8月28日判決言渡平成23年(行ウ)第164号法人税更正処分等取消請求事件 主文 1 処分行政庁が原告に対し平成16年6月29日付けでした原告の平成9年4月1日から平成10年3月31日までの事業年度の法人税の更正(ただし,平成19年7月9日付け異議決定による一部取消し後のもの)のうち納付すべき税額483億7486万3500円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定(ただし,上記異議決定による一部取消し後のもの)を取り消す。 2 処分行政庁が原告に対し平成16年6月29日付けでした原告の平成10年4月1日から平成11年3月31日までの事業年度の法人税の更正のうち納付すべき税額469億4874万6800円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定を取り消す。 3 処分行政庁が原告に対し平成16年6月29日付けでした原告の平成12年4月1日から平成13年3月31日までの事業年度の法人税の更正のうち納付すべき税額マイナス(還付金の額に相当する税額)16億1706万4506円を下回る部分及び過少申告加算税賦課決定のうち過少申告加算税の税額1419万1000円を超える部分を取り消す。 4 処分行政庁が原告に対し平成16年6月29日付けでした原告の平成13年4月1日から平成14年3月31日までの事業年度の法人税の更正のうち納付すべき税額66億5617万7000円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定の うち過少申告加算税の税額89万2000円を超える部分を取り消す。 5 処分行政庁が原告に対し平成18年3月28日付けでした原告の平成14年4月1日から平成15年3月31日までの事業年度の法人税の更正のうち納付すべき税額88億8022万8700円を超える部分及び平成16年6月29日付けでし 18年3月28日付けでした原告の平成14年4月1日から平成15年3月31日までの事業年度の法人税の更正のうち納付すべき税額88億8022万8700円を超える部分及び平成16年6月29日付けでした過少申告加算税賦課決定(ただし,平成17年4月27日付け変更決定による一部取消し後のもの)のうち過少申告加算税の税額3466万1000円を超える部分を取り消す。 6 訴訟費用は,被告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 請求の趣旨(1) 主文第1項ないし第4項同旨(以下,いずれも処分行政庁が原告に対し平成16年6月29日付けでした,① 原告の平成9年4月1日から平成10年3月31日までの事業年度の法人税の更正(ただし,平成19年7月9日付け異議決定による一部取消し後のもの)を「本件更正1」と,その更正に係る過少申告加算税賦課決定(ただし,上記異議決定による一部取消し後のもの)を「本件賦課決定1」と,② 原告の平成10年4月1日から平成11年3月31日までの事業年度の法人税の更正を「本件更正2」と,その更正に係る過少申告加算税賦課決定を「本件賦課決定2」と,③ 原告の平成12年4月1日から平成13年3月31日までの事業年度の法人税の更正を「本件更正3」と,その更正に係る過少申告加算税賦課決定を「本件賦課決定3」と,④ 原告の平成13年4月1日から平成14年3月31日までの事業年度の法人税の更正を「本件更正4」と,その更正に係る過少申告加算 税賦課決定を「本件賦課決定4」と,それぞれいう。また,本件更正1と本件賦課決定1を併せて「本件更正等1」と,本件更正2と本件賦課決定2を併せて「本件更正等2」と,本件更正3と本件賦課決定3を併せて「本件更正等3」と,本件更正4と本件賦課決定4を併せて「本件 1と本件賦課決定1を併せて「本件更正等1」と,本件更正2と本件賦課決定2を併せて「本件更正等2」と,本件更正3と本件賦課決定3を併せて「本件更正等3」と,本件更正4と本件賦課決定4を併せて「本件更正等4」と,それぞれいう。)(2) 次のア又はイの選択的併合ア処分行政庁が原告に対し平成16年6月29日付けでした原告の平成14年4月1日から平成15年3月31日までの事業年度の法人税の更正(ただし,平成17年4月27日付け更正による一部取消し後のもの。以下「本件更正5-1」という。)のうち納付すべき税額87億8893万3900円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定(ただし,同日付け変更決定による一部取消し後のもの。以下「本件賦課決定5」といい,本件更正5-1と併せて「本件更正等5-1」という。)のうち過少申告加算税の税額3466万1000円を超える部分を取り消す。 イ主文第5項同旨(以下,処分行政庁が原告に対し平成18年3月28日付けでした,原告の平成14年4月1日から平成15年3月31日までの事業年度の法人税の更正を「本件更正5-2」という。また,本件更正1ないし4並びに本件更正5-1及び本件更正5-2を併せて「本件各更正」と,本件賦課決定1ないし5を併せて「本件各賦課決定」と,本件更正等1ないし4並びに本件更正等5-1及び本件更正5-2を併せて「本件各更正等」と,それぞれいう。) 2 請求の趣旨に対する答弁(1) 本件各訴えのうち本件更正5-1及び本件更正5-2の各一部取消しを求めるものを却下する。 (2) 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 第2 事案の概要 本件は,自動二輪車,四輪車の製造及び販売を主たる事業とする内国法人である原告が,その間接子会社であり,ブラジ (2) 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 第2 事案の概要 本件は,自動二輪車,四輪車の製造及び販売を主たる事業とする内国法人である原告が,その間接子会社であり,ブラジル連邦共和国(以下「ブラジル」という。)アマゾナス州に設置されたマナウス自由貿易地域(以下「マナウスフリーゾーン」という。)で自動二輪車の製造及び販売事業を行っている外国法人であるP1 Ltda.(以下「P1社」という。)及びその子会社との間で,自動二輪車の部品等の販売及び技術支援の役務提供取引(以下「本件国外関連取引」という。)を行い,それにより支払を受けた対価の額を収益の額に算入して,平成10年3月期(平成9年4月1日から平成10年3月31日までの事業年度をいう。以下,他の事業年度についても同じ。),平成11年3月期,平成13年3月期,平成14年3月期及び平成15年3月期(以下,これらの事業年度を併せて「本件各事業年度」という。)の法人税の確定申告をしたところ,処分行政庁から,上記の支払を受けた対価の額が租税特別措置法(平成10年3月期,平成11年3月期及び平成13年3月期については平成13年法律第7号による改正前のもの,平成14年3月期については平成14年法律第79号による改正前のもの,平成15年3月期については平成18年法律第10号による改正前のもの。以下,これらの改正前のものを包括して「措置法」という。)66条の4第2項1号ニ及び2号ロ,租税特別措置法施行令(平成10年3月期,平成11年3月期及び平成13年3月期については平成13年政令第141号による改正前のもの,平成14年3月期及び平成15年3月期については平成16年政令第105号による改正前のもの。以下,これらの改正前のものを包括して「措置法施行令」という。)39条の12第8 141号による改正前のもの,平成14年3月期及び平成15年3月期については平成16年政令第105号による改正前のもの。以下,これらの改正前のものを包括して「措置法施行令」という。)39条の12第8項に定める方法(以下「利益分割法」という。)により算定した独立企業間価格(以下「本件独立企業間価格」という。)に満たないことを理由に,措置法66条の4第1項の国外関連者との取引に係る課税の特例(以下,この特例に基づく税制度を「移転価格税制」という。)の規定により,本件国外関連取引が本件独立企業間価格で行われたものとみなし,本件各事業年度の所得金額に本件独立 企業間価格と本件国外関連取引の対価の額との差額を加算すべきであるとして,本件各更正等を受けたため,処分行政庁の所属する国を被告として,本件各更正等の一部又は全部の取消しを求める事案である。 原告は,P1社及びその子会社はマナウスフリーゾーンで事業活動を行うことによる税制上の利益(以下「マナウス税恩典利益」といい,その基礎となる税制度を「マナウス税恩典」という。)を享受して多額の利益を得ているが,それはP1社及びその子会社が事業活動を行う市場の条件に基づくものであるからP1社及びその子会社に帰属すべきものであり,それが原告とP1社及びその子会社に配分されるべきものであることを前提としてされた処分行政庁による本件独立企業間価格の算定は違法であるなどと主張している。 なお,本件の当事者等及び本件国外関連取引の概要は,別図(P2㈱取引関係図)のとおりである。また,本判決の本文及び各別紙において定める用語のうち主要なものは,別紙1(略語一覧)のとおりであり,各別紙において定める用語の意義は,以下の本文においても同一であるものとする。 1 法令等の定め本件に関係する法 において定める用語のうち主要なものは,別紙1(略語一覧)のとおりであり,各別紙において定める用語の意義は,以下の本文においても同一であるものとする。 1 法令等の定め本件に関係する法令等の定めは,別紙2(関係法令等の定め)のとおりである(なお,措置法及び措置法施行令については,便宜上,平成15年3月31日現在のものを掲記する。)。 2 前提事実(証拠等を掲げていない事実は,当事者間に争いのない事実である。 なお,以下,書証については,枝番を含むものとする。)(1) 当事者等ア原告は,自動二輪車,四輪車,汎用製品の製造,販売等を主たる事業とする内国法人である。 イ P1社は,1975年(昭和50年)にブラジルで設立された外国法人であり,後述するマナウスフリーゾーンで自動二輪車を製造し,主としてブラジル国内向けに販売しているものである(以下,P1社が製造し販売 する自動二輪車を「本件製品」ということがある。)。P1社を設立し,その発行済株式の総数の99%超を保有しているP3 Ltda.(旧商号P4Ltda.。以下「P3社」という。)は,1971年(昭和46年)にブラジルで設立された外国法人であり,原告は,その発行済株式の総数の99%超を保有している。したがって,原告は,P1社の発行済株式の総数の99%超を間接に保有していることになる。(乙16,17,19,28)ウ P1社は,1985年(昭和60年)にブラジルで設立された自動二輪車の部品の製造を主たる事業とする外国法人であるP5 Ltda.(以下「P5社」という。)及び1992年(平成4年)にブラジルで設立された自動二輪車の製造設備の調整及び補修並びに金型の製作及び補修を主たる事業とする外国法人であるP6 Ltda.(以下「P6社」 以下「P5社」という。)及び1992年(平成4年)にブラジルで設立された自動二輪車の製造設備の調整及び補修並びに金型の製作及び補修を主たる事業とする外国法人であるP6 Ltda.(以下「P6社」という。)という二つの連結子会社を有している(以下,P1社と,P5社及びP6社の2社を併せて「P1社等」という。)。P5社は,P1社がマナウスフリーゾーンに有する工場の敷地内において,P1社が製造する自動二輪車の部品を製造し,P1社に販売しており,P6社は,同敷地内において,P1社及びP5社が使用する製造設備の調整及び補修並びに金型の製作及び補修をしている。P1社は,P5社及びP6社の各発行済株式の総数の99%超を保有しており,したがって,原告は,P3社及びP1社を通じて,P5社及びP6社の各発行済株式の総数の99%超を間接に保有していることになる。(乙16,17,19,28)エ株式会社P7(以下「P7社」という。)は,昭和35年に原告の研究開発部門を分離して設立された内国法人であり,原告の委託を受けて技術や商品の研究開発を行っているものである。P7社は,我が国に自動二輪車製品全般の開発を行う事業所としてP8を,ブラジルに自動二輪車の市場調査等を行う海外駐在事務所としてP9を,それぞれ設置している。(乙18) P10 Ltda.(以下「P10社」という。)は,P3社が1981年(昭和56年)にブラジルで設立した外国法人であり,ブラジル特有の販売形態であるコンソルシオ販売の管理運営,あっせん等の業務を行っているものである。コンソルシオ販売は,ブラジルにおいてハイパーインフレーション等を背景に金融機関から融資を受けることができない低所得者向けに発達した特有の販売形態であり,ある商品の購入希望者が講(コンソルシオ る。コンソルシオ販売は,ブラジルにおいてハイパーインフレーション等を背景に金融機関から融資を受けることができない低所得者向けに発達した特有の販売形態であり,ある商品の購入希望者が講(コンソルシオ)を構成し,金員を出し合い,購入可能な数の商品を購入し,抽選で当たった参加者から順次商品の引渡しを受けるというものである。(乙16)(2) マナウス税恩典利益法人がマナウスフリーゾーンで事業活動を行うことにより享受する税制上の利益であるマナウス税恩典利益の概要は,次のとおりである。(弁論の全趣旨)アマナウス税恩典は,ブラジルの連邦又はアマゾナス州の法令の規定により,マナウスフリーゾーンに進出する企業に対し,マナウス自由貿易地域監督庁(以下「SUFRAMA」という。)等の承認によって与えられる各種租税の減免措置である。 ブラジル連邦政府は,1957年(昭和32年)6月,法律第3173号により,アマゾン地域に自由貿易地域を指定し,1966年(昭和41年)12月,アマゾン地域を開発し,経済的に統合することを宣言し,アマゾン地域の開発を重要な国家プロジェクトと位置付けた。ブラジル連邦政府は,1967年(昭和42年)2月,大統領令第288号(以下「税恩典大統領令」という。)により,自由貿易地域に進出した企業に対する税制上の優遇措置(税恩典)を拡大した。その期限は,当初,1997年(平成9年)までとされていたが,1988年(昭和63年)制定のブラジル連邦憲法にマナウスフリーゾーンの設置が明記された後,2013年(平成25年)までその存続期間が延長され,さらに,2023年(平成 35年)まで再延長された。マナウスフリーゾーンは,ブラジル連邦憲法上設置が定められている唯一の自由貿易地域である。 連邦 年)までその存続期間が延長され,さらに,2023年(平成 35年)まで再延長された。マナウスフリーゾーンは,ブラジル連邦憲法上設置が定められている唯一の自由貿易地域である。 連邦の税恩典に加えて,1989年(平成元年)制定のアマゾナス州法第1939号(以下「1989年州法」という。)により,商品流通サービス税(以下「ICMS」という。)に関するアマゾナス州の税恩典も定められている。1996年(平成8年)制定のLeiHanan(以下「ハナン法」という。)により,認可企業は,1989年州法による税恩典を受けるためには「雇用を創出し,人件費の割合が製品の最終コストの少なくとも10%に相当する」必要があるものとされた(なお,上記の人件費の割合は,その後の州法改正により10%から1.5%に改められた。)。ハナン法は,恩典付与の要件として「雇用人数の維持」や「新規雇用の創出」,一定の「給与水準」の維持を定めている。 イマナウス税恩典による減免の対象は,輸入税,工業製品税,法人所得税(以上,連邦税),ICMS(州税),法人売上げに対する社会負担金及び社会統合基金(連邦の負担金)であるところ,これらのうち営業利益に重大な影響を及ぼすのは,輸入税とICMSである。 (ア) 輸入税は,商品や生産物の輸入に課される連邦税であり,我が国の関税に相当する。輸入税の納税義務は,輸入品の通関申告時に発生し,その課税標準額は,輸入品の価格に運賃と保険料を加えた外貨額を国内通貨に換算した金額である。 マナウスフリーゾーンで工場を建設し輸入税の軽減を受けようとする者は,SUFRAMAから輸入税の軽減を受けようとする工業プロジェクトに係る認可を受けなければならず,1991年(平成3年)以降は,基本製造工程(以下「PPB 場を建設し輸入税の軽減を受けようとする者は,SUFRAMAから輸入税の軽減を受けようとする工業プロジェクトに係る認可を受けなければならず,1991年(平成3年)以降は,基本製造工程(以下「PPB」という。)基準を満たすことがその認可の要件とされている。PPB基準には,マナウスフリーゾーンで製造業を行うに当たり最低限履行すべき基本製造工程が定められており,オー トバイ及びスクーターについては,1993年(平成5年)大統領令第783号の規定により,グループAの工程(プレス,鋳造,機械加工,塗装,プラスチック注入)から少なくとも2項目を,グループBの工程(燃料タンクの溶接と腐食防止処理,車台の溶接と腐食防止処理,リアフォークの溶接と腐食防止処理,サイドスタンド,センタースタンド及びフットレストの溶接と腐食防止処理)から少なくとも2項目を,それぞれ選択して実施し,さらに,グループCの工程(エンジンの組立て,最終組立て,最終検査,梱包)を実施することが求められている。 輸入税の軽減に係る認可を受けた企業は,部品等を輸入するに当たり,輸入税の納付猶予を受けることができる。そして,この納付猶予に係る輸入税は,当該部品等を用いて製造した製品をマナウスフリーゾーン外に移出する時に,納付すべきこととなるが,その税額の88%が軽減される。 (イ) ICMSは,主に商品,製品及び生産物の流通に課される州税であり,付加価値税の一種である。ICMSの課税方式としては,累積排除型の多段階課税が採用されている。多段階課税とは,物やサービスの製造,卸,小売など流通の各段階で各事業者の売上げに課税していく制度であり,累積排除型とは,各事業者がその売上げに対する税額からその仕入れに含まれた税額を控除した額を納付し,課税が累積することを排 造,卸,小売など流通の各段階で各事業者の売上げに課税していく制度であり,累積排除型とは,各事業者がその売上げに対する税額からその仕入れに含まれた税額を控除した額を納付し,課税が累積することを排除する制度である。ICMSにおいては,販売業者の売上げに係る税額から仕入額に含まれる税額を控除した額が納付すべき税額となる。 マナウスフリーゾーンでICMSの減免(以下「ICMS税減免」という。ICMS税減免は,後述のICMSみなし仕入税額控除,ICMS税額免除及びICMS税軽減から成る。)を受けようとする者は,アマゾナス州政府からICMS税減免に係る認可を受けなければならず,アマゾナス州における人件費が製造コストの一定の割合以上を占めるこ となどがその要件とされている。マナウスフリーゾーンで工場を建設し輸入税の軽減を受けようとする者は,SUFRAMAから工業プロジェクトに係る認可を受けなければならず,PPB基準を満たすことがその認可の要件とされていることは,上記(ア)のとおりであり,SUFRAMAから工業プロジェクトに係る認可を受けなければ,工場の建設及び稼動をすることができず,労働者を雇用することができないため,アマゾナス州における人件費が製造コストの一定の割合以上を占めることというICMS税減免に係る認可の要件を満たすことができない。アマゾナス州法上,ICMS税減免の要件としてPPB基準を満たすことが規定されているわけではないものの,実際には,PPB基準を満たさなければ,ICMS税減免を受けることができない。 アマゾナス州以外の州からの部品,原材料の購入がマナウスフリーゾーンでの製造のためのものである場合,ICMSは課されないため,ICMS税減免に係る認可を受けた企業がアマゾナス州以外の州から購入し アマゾナス州以外の州からの部品,原材料の購入がマナウスフリーゾーンでの製造のためのものである場合,ICMSは課されないため,ICMS税減免に係る認可を受けた企業がアマゾナス州以外の州から購入した部品等の価格にはICMSが含まれていないが,ICMS税減免に係る認可を受けた企業は,その価格に通常課されるICMSが含まれるものとみなして仕入税額控除(以下「ICMSみなし仕入税額控除」という。)を受けることができる。また,ICMS税減免に係る認可を受けた企業は,アマゾナス州政府と合意した生産販売数量基準を満たせば,基準数量を超過した製品に係る取引について税額免除(以下「ICMS税額免除」という。)を受けることができ,基準数量未満の製品に係る取引についても税率軽減(以下「ICMS税軽減」という。)を受けることができる。なお,アマゾナス州の税恩典利益を享受するには,州政府に対し,中小企業奨励金(FMPE),観光・地方開発事業基金(FTI),アマゾナス州立大学奨励金(UEA)といった拠出金を負担しなければならない。 ウブラジルの会計基準上,輸入税は売上原価となるところ,輸入税の軽減を受ける場合,製品を域外に移出するまでその税額が確定しないため,P1社等は,上記イ(ア)のとおり納付猶予を受けた後の輸入税の納付時に,これを販売費として会計処理をしていた。 ブラジルの会計基準上,ICMSは総売上げの控除項目となるところ,ICMSみなし仕入税額控除は,売上原価の低減項目となり,ICMS税額免除及びICMS税軽減は,総売上げの控除項目として処理される。なお,P1社等は,アマゾナス州政府に対する拠出金を総売上げの控除項目として処理していた。 (3) 本件国外関連取引原告は,本件各事業年度において,次のとおり 項目として処理される。なお,P1社等は,アマゾナス州政府に対する拠出金を総売上げの控除項目として処理していた。 (3) 本件国外関連取引原告は,本件各事業年度において,次のとおり,P1社に対し完成自動二輪車,組立部品及び補修部品を販売し,P1社及びP5社に対し製造設備及び金型を販売し,P1社等の事業活動を支援するためP1社等の工場等に技術者又はコンサルタントを派遣する役務の提供をし,それらの対価の支払を受けた。なお,本件国外関連取引の中に,原告の有する重要な無形資産の使用に係る取引が含まれるか否かについては,後記のとおり,当事者間に争いがある。 ア完成自動二輪車の販売取引原告は,本件各事業年度において,P1社に対し,完成自動二輪車を販売し,その対価の支払を受けた。 イ自動二輪車の部品の販売取引原告は,本件各事業年度において,P1社に対し,自動二輪車のエンジン及び車体の製造に必要なドリブンギア,クランクシャフト,シリンダーヘッド等の組立部品並びに自動二輪車の修理に必要な補修部品を販売し,その対価の支払を受けた。 ウ自動二輪車の製造設備等の販売取引 原告は,本件各事業年度において,P1社及びP5社に対し,自動二輪車若しくはその部品又は金型の製造に必要な鋳造設備,成型プレス設備等の製造設備及び金型を販売し,その対価の支払を受けた。 エ技術支援の役務提供取引原告は,本件各事業年度において,P1社等の要請を受けて,P1社等の事業活動を支援するため,P1社等の工場に技術者を派遣して技術指導の役務の提供をし,その対価の支払を受けた。 (4) 課税処分の経緯本件における課税処分の経緯は,別紙3(課税処分の経緯)及び別表1 するため,P1社等の工場に技術者を派遣して技術指導の役務の提供をし,その対価の支払を受けた。 (4) 課税処分の経緯本件における課税処分の経緯は,別紙3(課税処分の経緯)及び別表1の1ないし5のとおりである。 (5) 本件各訴えの提起原告は,平成23年3月11日,本件各訴えを提起した。(顕著な事実) 3 課税処分の根拠本件において被告が主張する課税処分の根拠は,別紙4(課税処分の根拠)及び別表2の1ないし8のとおりである。 4 争点(1) 本案前の争点本件の本案前の争点は,本件更正5-1及び本件更正5-2の各取消しの訴えの適否(争点1)であり,具体的には,① 本件更正5-1の取消しの訴えの利益の有無(本件更正5-1は本件更正5-2に吸収されて消滅したか否か。 争点1-1),② 本件更正5-2の取消しの訴えは国税通則法115条1項の不服申立て前置の規定及び行政事件訴訟法14条1項の出訴期間の規定に違反するか否か(国税通則法115条1項3号の「決定又は裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき」及び行政事件訴訟法14条1項ただし書の「正当な理由があるとき」に該当するか否か。争点1-2)である。 (2) 本案の争点 本件の本案の争点は,本件各更正等の適否であり,具体的には,処分行政庁が措置法66条の4第2項1号ニ及び2号ロ,措置法施行令39条の12第8項に定める利益分割法の一つである残余利益分割法を用いてした本件独立企業間価格の算定の適否(争点2)である。この争点は,次のとおり細分化することができる。 ア独立企業間価格の算定方法の選択の適否(争点2-1)処分行政庁が,独立企業間価格の算定方法として,基本三法の適用可能性がないことを 点は,次のとおり細分化することができる。 ア独立企業間価格の算定方法の選択の適否(争点2-1)処分行政庁が,独立企業間価格の算定方法として,基本三法の適用可能性がないことを理由に,措置法66条の4第2項1号ニ及び2号ロ,措置法施行令39条の12第8項に定める利益分割法を選択し,本件独立企業間価格を算定したことの適否イ独立企業間価格の算定単位の設定の適否(争点2-2)処分行政庁が,原告とP1社等との間の完成自動二輪車の取引,自動二輪車の部品の取引,自動二輪車の製造設備等の取引及び技術支援の役務提供取引から成る本件国外関連取引を一の取引として,本件独立企業間価格を算定したことの適否ウ基本的利益の算定の適否(争点2-3)(ア) 処分行政庁が,マナウス税恩典利益を享受するP1社等の比較対象法人として,マナウスフリーゾーン外で事業活動を行いマナウス税恩典利益を享受していないブラジル側比較対象企業を選定し,マナウス税恩典利益の享受の有無について差異調整を行わずに,本件独立企業間価格を算定したことの適否(イ) 処分行政庁がしたP1社等の比較対象法人のその余の除外基準の設定及び選定の適否,並びに,処分行政庁がP1社等とブラジル側比較対象企業との差異調整を行わずに本件独立企業間価格を算定したことの適否(ウ) 処分行政庁が基本的利益の算定における利益指標として総費用営業 利益率を選定したことの適否エ残余利益の分割の適否(争点2-4)処分行政庁がした残余利益の分割要因(ブラジル側分割要因及び日本側分割要因)の算定の適否 5 当事者の主張の要旨当事者の主張は別紙5(当事者の主張)のとおりであり,その要旨は次のとおりである 政庁がした残余利益の分割要因(ブラジル側分割要因及び日本側分割要因)の算定の適否 5 当事者の主張の要旨当事者の主張は別紙5(当事者の主張)のとおりであり,その要旨は次のとおりである。 (1) 本件更正5-1及び本件更正5-2の各取消しの訴えの適否(争点1)について(被告の主張)ア本件更正5-1の取消しの訴えの不適法性(争点1-1)処分行政庁は,平成15年3月期について,本件更正5-1の後に増額再更正である本件更正5-2をしたのであり,本件更正5-1は,本件更正5-2に吸収され,独立して取消訴訟の対象とする意義を失ったものである。 したがって,本件各訴えのうち本件更正5-1の一部取消しを求めるものは,訴えの利益を欠き,不適法である。 イ本件更正5-2の取消しの訴えの不適法性(争点1-2)本件各訴えのうち本件更正5-2の一部取消しを求めるものは,国税通則法115条1項の不服申立て前置を欠くものであり,そのことにつき同項3号の「正当な理由」があるということはできない。また,その訴えは,行政事件訴訟法14条1項の出訴期間を経過して提起されたものであり,そのことにつき同項ただし書の「正当な理由」があるということはできない。したがって,本件各訴えのうち本件更正5-2の一部取消しを求めるものは,不適法である。 (原告の主張)ア本件更正5-1の取消しの訴えの適法性(争点1-1) 本件更正5-2がされたからといって,本件更正5-1の一部取消しを求める訴えの利益は失われるものではない。したがって,その訴えは,不適法ではない。 イ本件更正5-2の取消しの訴えの適法性(争点1-2)本件各訴えのうち本件更正5-2の一部取消しを る訴えの利益は失われるものではない。したがって,その訴えは,不適法ではない。 イ本件更正5-2の取消しの訴えの適法性(争点1-2)本件各訴えのうち本件更正5-2の一部取消しを求めるものは,不服申立て前置を欠くことにつき国税通則法115条1項3号の「正当な理由」があるし,また,行政事件訴訟法14条の出訴期間を経過して提起されたことについても「正当な理由」がある。したがって,その訴えは,不適法ではない。 (2) 本件各更正等(本件独立企業間価格の算定)の適否(争点2)について(被告の主張)ア本件各更正等の適法性本件各更正は,原告が国外関連者であるP1社等との間で本件国外関連取引を行い支払を受けた対価の額が措置法通達66の4(4)-5の残余利益分割法を用いて算定した本件独立企業間価格に満たないことから,措置法66条の4第1項の規定を適用してされたものであるところ,同項の規定により,本件国外関連取引が本件独立企業間価格で行われたものとみなして,原告の本件各事業年度の所得の金額を計算すると,原告の本件各事業年度の納付すべき税額は別紙4(課税処分の根拠)のとおりであり,これらの金額はいずれも本件各更正における納付すべき税額を上回るから,本件各更正はいずれも適法である。また,原告の本件各事業年度の法人税の過少申加算税の額は別紙4のとおりであり,これらの金額はいずれも本件各賦課決定における過少申加算税の額と同額であるから,本件各賦課決定はいずれも適法である。 イ移転価格税制移転価格税制は,法人が国外関連者(特殊の関係のある外国法人)との 間で行った国外関連取引につき,支払を受ける対価の額(移転価格)が非関連者間で行われる取引において成立する価格(独立企業間価 移転価格税制は,法人が国外関連者(特殊の関係のある外国法人)との 間で行った国外関連取引につき,支払を受ける対価の額(移転価格)が非関連者間で行われる取引において成立する価格(独立企業間価格)に満たない場合,又は支払う対価の額(移転価格)が独立企業間価格を超える場合(いずれも我が国の課税所得が減少する場合)に,当該国外関連取引が独立企業間価格で行われたものとみなして,課税所得を計算するものである(措置法66条の4第1項)。 (ア) 独立企業間価格独立企業間価格は,支配従属関係のない独立した企業の間において当該国外関連取引と取引条件その他の事情が同一又は類似の状況の下で取引が行われた場合に成立するであろう対価の額であり,その額は,措置法66条の4第2項に定める方法により算定される。すなわち,独立企業間価格は,独立価格比準法,再販売価格基準法若しくは原価基準法という基本三法又はこれらの方法に準ずる方法その他政令で定める方法のいずれかにより算定される(ただし,基本三法に準ずる方法その他政令で定める方法は,基本三法を用いることができない場合に限り,用いることができる。)。措置法施行令39条の12第8項に定める利益分割法は,その他政令で定める方法の一つである。 (イ) 残余利益分割法残余利益分割法は,措置法施行令39条の12第8項に定める利益分割法(国外関連取引に係る棚卸資産の法人又は国外関連者による購入,製造,販売その他の行為に係る所得が,当該棚卸資産に係るこれらの行為のためにこれらの者が支出した費用の額,使用した固定資産の価額その他これらの者が当該所得の発生に寄与した程度を推測するに足りる要因に応じて当該法人及び当該国外関連者に帰属するものとして計算した金額をもって当該国外関連取 出した費用の額,使用した固定資産の価額その他これらの者が当該所得の発生に寄与した程度を推測するに足りる要因に応じて当該法人及び当該国外関連者に帰属するものとして計算した金額をもって当該国外関連取引の対価の額とする方法)の一つであって,利益分割法の適用に当たり,法人又は国外関連者が重要な無形資産を有 する場合に,分割対象利益のうち重要な無形資産を有しない非関連者間取引において通常得られる利益(基本的利益)に相当する金額を当該法人及び国外関連者にそれぞれ配分し,当該配分した金額の残額(残余利益)を当該法人又は国外関連者の有する当該重要な無形資産の価値に応じて合理的に配分する方法により独立企業間価格を算定するものである(措置法通達66の4(4)-5)。法人又は国外関連者が重要な無形資産を有しており,それが貢献して生み出された利益がある場合には,その貢献による利益を区分しないまま人件費等の費用の額,投下資本等の額等を分割要因として分割対象利益を配分すると,法人又は国外関連者の有する重要な無形資産の貢献により獲得した利益があるにもかかわらず,その貢献度が分割対象利益の配分に反映されないため,必ずしも合理的な配分ということができない。残余利益分割法は,第1段階で重要な無形資産を有しない非関連者間取引において通常得られる利益に相当する金額(基本的利益)を配分し,第2段階で配分した金額の残額(残余利益)を当該重要な無形資産の価値に応じて合理的に配分することにより,重要な無形資産の貢献を分割要因に反映することができる点で合理的な算定方法である。残余利益分割法の適用に当たり,当該重要な無形資産の価値による配分を当該重要な無形資産の開発のために支出した費用等の額により行っている場合には,合理的な配分として認められる(措置法通達66の4(4) 余利益分割法の適用に当たり,当該重要な無形資産の価値による配分を当該重要な無形資産の開発のために支出した費用等の額により行っている場合には,合理的な配分として認められる(措置法通達66の4(4)-5の注)。 ウ本件国外関連取引(ア) 本件国外関連取引の概要本件国外関連取引は,原告とP1社等との間の完成自動二輪車の販売取引,自動二輪車の部品の販売取引,自動二輪車の製造設備の販売取引,技術支援の役務提供取引に加えて,重要な無形資産の使用に係る取引から成るものであるところ,ここに技術支援の役務提供取引及び重要な無 形資産の使用に係る取引とは,原告が,P1社等の要請を受けて,P1社等の現調化,新機種製造管理計画等を支援するため,P1社等に対し,P1社等の工場に原告又は設備メーカーの技術者を派遣して技術指導の役務を提供するとともに,それにより,P1社等に対し,自動二輪車の製造及び販売に関する技術情報,部品及び製造設備の供給メーカー網を含む量産体制の確立及び生産体質の改革に関するノウハウを提供し,P1社等がこれらの情報を使用して本件製品を製造及び販売し,原告の商標,ブランド等の市場に関する無形資産を使用することを許諾するものである。そして,原告とP1社等は,ブラジルにおいてはロイヤルティの支払に関する規制が行われていることを踏まえて,ロイヤルティの収受を行っていなかった。 (イ) 本件国外関連取引に係る重要な無形資産本件国外関連取引においては,P1社の販売シェアの獲得,原告の研究開発活動,P8及びP9の市場調査,原告のP1社等に対する技術者派遣による技術支援,原告のP1社等に対する技術援助の委託,P1社等の生産体制の確立,P1社の販売網という,原告及びP1社等の各自の企業活 活動,P8及びP9の市場調査,原告のP1社等に対する技術者派遣による技術支援,原告のP1社等に対する技術援助の委託,P1社等の生産体制の確立,P1社の販売網という,原告及びP1社等の各自の企業活動により,原告については,① 知的財産権及びデザイン,図面,基準,設計書その他自動二輪車の製造及び販売に関する技術情報,② 部品及び製造設備の供給メーカー網を含む量産体制の確立及び生産体質の改革に関するノウハウ,③ 本件製品及び原告のブランドが,P1社等については,④ ブラジル向け製品を具現化するための量産体制の確立と生産体質の改革に関する製造設備及び工作工程の設計改良のノウハウ,⑤ コスト削減を実現するための内製化及び現調化の推進に関するブラジル固有のノウハウ,⑥ 本件製品のイメージを普及させるためのノウハウが,それぞれ形成,維持又は発展され,これらが原告及びP1社等の有する重要な無形資産として本件国外関連取引による利益の 源泉となった。 エ本件独立企業間価格(ア) 独立企業間価格の算定方法の選択(争点2-1)処分行政庁は,本件国外関連取引について合理的な調査を尽くしたが,本件国外関連取引を個別の取引とみても,一の取引とみても,比較可能性が担保された比較対象取引を把握することができず,基本三法を用いることができなかった。そこで,その他政令で定める方法の適用を検討すると,利益分割法のうち残余利益分割法の適用が最適である。すなわち,原告及びP1社等は,上記ウ(イ)の無形資産を総合的に活用することにより,ブラジルの自動二輪車市場において圧倒的な販売シェアを有するに至っているのであり,原告及びP1社等の有する重要な無形資産が利益の獲得に寄与している点に着目すると,本件国外関連取引については,利益分割法 ジルの自動二輪車市場において圧倒的な販売シェアを有するに至っているのであり,原告及びP1社等の有する重要な無形資産が利益の獲得に寄与している点に着目すると,本件国外関連取引については,利益分割法のうち重要な無形資産の価値に応じて残余利益を合理的に配分する残余利益分割法を適用して独立企業間価格を算定することが最適である。 (イ) 独立企業間価格の算定単位の設定(争点2-2)独立企業間価格の算定は,原則として個別の取引ごとに行われるが,複数の取引を個別的に評価するよりも一の取引とみて評価する方が合理的である場合には,例外的に複数の取引を一の取引とみて独立企業間価格を算定することができる(措置法通達66の4(3)-1)。本件国外関連取引は,P1社等の自動二輪車の製造及び販売に係る一体の取引であり,相互に重要な無形資産が寄与しているから,無形資産の寄与する範囲で一体とみて残余利益分割法を適用するのが合理的である。また,原告がP1社等に輸出する自動二輪車の部品等は,それ自体が市場で評価されるものではなく,P1社等が製造した自動二輪車を販売して初めて市場で評価されるものであるから,本件国外関連取引を,原告及びP1 社等のブラジルにおける自動二輪車の製造及び販売事業とみて,原告とP1社等は,その業務を分担しているものにすぎないとすることには,合理性がある。したがって,本件国外関連取引は,各取引を個別的に評価するよりも一の取引とみて評価する方が合理的であり,一の取引とみて本件独立企業間価格を算定することができる。 (ウ) 本件国外関連取引に係る分割対象利益の算出利益分割法は,国外関連取引に係る棚卸資産の法人又は国外関連者による購入,製造,販売その他の行為に係る所得が,当該棚卸資産に係るこれ (ウ) 本件国外関連取引に係る分割対象利益の算出利益分割法は,国外関連取引に係る棚卸資産の法人又は国外関連者による購入,製造,販売その他の行為に係る所得が,当該棚卸資産に係るこれらの行為のためにこれらの者が支出した費用の額,使用した固定資産の価額その他これらの者が当該所得の発生に寄与した程度を推測するに足りる要因に応じて当該法人及び当該国外関連者に帰属するものとして計算した金額をもって当該国外関連取引の対価の額とする方法であり,分割対象利益は,国外関連取引に係る棚卸資産の販売等により法人及び国外関連者に生じた営業利益の合計額である(措置法通達66の4(4)-1)から,利益分割法を用いて本件独立企業間価格を算定するに当たり,分割対象利益は,本件各事業年度及びP1社各事業年度(本件各事業年度に対応するP1社等の各事業年度)ごとの本件国外関連取引に係る原告及びP1社等の営業利益の合計額となる。本件国外関連取引に係る原告の本件各事業年度の営業利益の額は,原告のP1社等に対する売上高から当該売上高に係る売上原価,販売費及び一般管理費その他の営業費用,委託研究費を控除した金額である(別表2の1「原告の営業利益の算出」)。P1社等のP1社各事業年度の営業利益の額は,売上高から売上原価,販売費及び一般管理費を控除した金額に,営業外費用として会計処理されている売掛金及び買掛金に係る為替差損益を加算し,又は減算し,これにより算出された金額を電信売買相場の仲値の年中平均値によって円に換算した金額である(別表2の3「P1社の営業利益の算 出」)。 (エ) 本件国外関連取引に係る基本的利益の算定(争点2-3)a 基本的利益の算定方法残余利益分割法は,法人又は国外関連者が重要な無形資産を有する 出」)。 (エ) 本件国外関連取引に係る基本的利益の算定(争点2-3)a 基本的利益の算定方法残余利益分割法は,法人又は国外関連者が重要な無形資産を有する場合に,分割対象利益のうち,重要な無形資産を有しない非関連者間取引において通常得られる利益(基本的利益)に相当する金額を法人及び国外関連者に配分し,残額(残余利益)を法人又は国外関連者の有する重要な無形資産の価値に応じて合理的に配分することにより,独立企業間価格を算定するものであるところ,基本的利益の額は,国外関連取引の事業と同種で,市場,事業規模等が類似する法人(重要な無形資産を有する法人を除く。)の事業用資産又は売上高に対する営業利益の割合等で示される利益指標に基づいて計算する。すなわち,基本的利益は,まず,検証対象法人と類似する重要な無形資産を有しない法人(比較対象法人)を選定し,次に,その事業用資産又は売上高に対する営業利益の割合等で示される利益指標を算出し,その利益指標に基づいて算定するものである。原告及びP1社等の本件各事業年度又はP1社各事業年度の基本的利益の額は,次のbのとおり,本件国外関連取引に係る原告の事業と比較可能な日本企業及びP1社等の事業と比較可能なブラジル企業を選定し,次のcのとおり算定した金額である。 b 比較対象法人の選定原告の基本的利益の算定の基礎となる原告の比較対象法人として,原告の事業と同種の日本企業を抽出し,公開情報に基づき,① 年売上高が50億円以下の企業であること,② 売上高に対する研究開発費の割合が3%を超える企業であること,③ 資本関係が20%以上の関係会社との取引が20%以上を占める企業であること,④ 3年 以上連続した財務情報を入手することができない に対する研究開発費の割合が3%を超える企業であること,③ 資本関係が20%以上の関係会社との取引が20%以上を占める企業であること,④ 3年 以上連続した財務情報を入手することができないか又は現在稼動していない企業であること,⑤ 製造機能が50%未満の企業であることという条件のいずれかに該当する企業を除外して,39社を選定した。 また,P1社等の基本的利益の算定の基礎となるP1社等の比較対象法人として,P1社等の事業と同種のブラジル企業を抽出し,公開情報に基づき,① 二輪車又は四輪車に関連しない事業が50%以上の企業であること,② 年売上高が2500万ドル以下の企業であること,③ 3年以上連続した財務情報を入手することができない企業であること,④ アフターマーケット向けの製品に係る売上高が50%以上の企業であること,⑤ 関連会社との取引が売上げ又は総費用の50%以上の企業であること,⑥ 営業利益率がマイナスで債務超過の状態にあることから継続性に問題がある企業であることという条件のいずれかに該当する企業を除外して,8社を選定した。 c 基本的利益の算定原告の基本的利益について,日本側比較対象企業の本件各事業年度に最も近接する事業年度ごとの総費用営業利益率(総費用に対する営業利益の割合)を算出し,その中位値を日本側基本的利益率とする。 そして,本件国外関連取引に係る原告の本件各事業年度の総費用,その他の営業費用,委託研究費の額から原告が重要な無形資産の開発のために支出した費用等の額を控除し,この控除後の金額に日本側基本的利益率を乗ずると,原告の基本的利益の額は,別表2の4「原告の基本的利益及びP1社の基本的利益の算定」の原告欄記載の金額となる。 また,P1社等の基本的 の控除後の金額に日本側基本的利益率を乗ずると,原告の基本的利益の額は,別表2の4「原告の基本的利益及びP1社の基本的利益の算定」の原告欄記載の金額となる。 また,P1社等の基本的利益について,ブラジル側比較対象企業のP1社各事業年度に最も近接する事業年度ごとの総費用営業利益率を算出し,その中位値をブラジル側基本的利益率とする。そして,P1 社等のP1社各事業年度の総費用の額からP1社等が重要な無形資産の開発のために支出した費用等の額を控除し,この控除後の金額にブラジル側基本的利益率を乗ずると,P1社等の基本的利益の額は,別表2の4「原告の基本的利益及びP1社の基本的利益の算定」のP1社欄記載の金額となる。 (オ) 本件国外関連取引に係る残余利益の分割(争点2-4)a 残余利益の算定残余利益の額は,分割対象利益のうち基本的利益に相当する金額を法人及び国外関連者に配分した残額である。したがって,本件国外関連取引における残余利益の額は,本件各事業年度及びP1社各事業年度ごとに,上記(ウ)で算出した分割対象利益の額から上記(エ)で算定した原告の基本的利益の額及びP1社等の基本的利益の額を控除した額となる(別表2の5「残余利益の算定」)。 b 残余利益の分割比率の算出方法残余利益の分割は,法人又は国外関連者の有する重要な無形資産の価値に応じて合理的に行うものであり,重要な無形資産の価値による配分を当該重要な無形資産の開発のために支出した費用等の額により行っている場合には,合理的な配分として認められるところ,法人又は国外関連者の有する重要な無形資産の価値については,当該無形資産の法的な所有関係のみならず,それを形成,維持又は発展させるための活動において る場合には,合理的な配分として認められるところ,法人又は国外関連者の有する重要な無形資産の価値については,当該無形資産の法的な所有関係のみならず,それを形成,維持又は発展させるための活動において法人又は国外関連者の行った貢献の程度をも勘案する必要がある。 c 分割比率の算出の基礎となる原告の支出額本件各事業年度ごとに,上記aの残余利益の額を,原告又はP1社等の有する重要な無形資産の価値に応じて合理的に配分するため,原告又はP1社等が重要な無形資産の開発のために支出した費用等の額 についてみると,原告が支出した額は,本件国外関連取引に係る原告の本件各事業年度の総費用,その他の営業費用,委託研究費の額のうち,① ブラジル向け研究開発費(イネの遺伝子研究費用等及びP11の開発費を含む。),② ブラジル向けプロジェクト費用及び技術指導料(P12社向けプロジェクト費用及び技術者派遣による技術支援の費用を含む。),③ 提携部品メーカーへの支払ロイヤルティの合計額である。 d 分割比率の算出の基礎となるP1社等の支出額P1社各事業年度ごとに,上記aの残余利益の額を,原告又はP1社等の有する重要な無形資産の価値に応じて合理的に配分するため,原告又はP1社等が重要な無形資産の開発のために支出した費用等の額についてみると,P1社等が支出した額は,P1社等のP1社各事業年度の総費用の額のうち,① 新機種導入時の量産体制確立の費用,② 生産性向上の費用,③ 新規ディーラー開拓及びディーラー育成の費用,④ 広告宣伝費の合計額である。 e 原告に配分すべき残余利益の額上記c及びdの原告及びP1社等がそれぞれ重要な無形資産の開発のために支出した費用に基づいて上記aの残 用,④ 広告宣伝費の合計額である。 e 原告に配分すべき残余利益の額上記c及びdの原告及びP1社等がそれぞれ重要な無形資産の開発のために支出した費用に基づいて上記aの残余利益を配分すると,原告に配分すべき残余利益の額は,上記aの残余利益の額に,原告とP1社等の上記c及びdの各支出の合計額に占める原告の上記cの支出額の割合を乗じた金額となる(別表2の6「残余利益の分割比率の算出」及び同7「原告に配分すべき残余利益の額の計算」)。 (カ) 本件国外関連取引に係る所得移転額a 独立企業間価格の算定本件独立企業間価格は,本件各事業年度ごとに,本件国外関連取引の対価の額に,上記(エ)cの原告の基本的利益の額と上記(オ)eの原 告に配分すべき残余利益の額との合計額から上記(ウ)の原告の営業利益の額を控除した後の金額を加えた金額である(別表2の8「独立企業間価格の算定と所得移転額の計算」)。 b 所得移転額の計算本件国外関連取引に係るP1社等への所得移転額は,本件独立企業間価格から本件国外関連取引の対価の額を差し引いた金額であり,別表2の8「独立企業間価格の算定と所得移転額の計算」に記載のとおり,平成10年3月期について75億8414万5012円,平成11年3月期について69億2863万3860円,平成13年3月期について32億1717万3066円,平成14年3月期について49億3554万7134円,平成15年3月期について37億8983万8304円である。 (原告の主張)ア本件各更正等の違法性次のイないしオのとおり,本件各更正等は,独立企業間価格の算定方法の選択,独立企業間価格の算定単位の設定,残余利益分割法の ある。 (原告の主張)ア本件各更正等の違法性次のイないしオのとおり,本件各更正等は,独立企業間価格の算定方法の選択,独立企業間価格の算定単位の設定,残余利益分割法の適用における基本的利益の算定,残余利益の分割にそれぞれ瑕疵がある違法なものであるから,取り消されるべきである。 イ独立企業間価格の算定方法の選択の瑕疵(争点2-1)措置法施行令39条の12第8項に定める利益分割法は措置法66条の4第2項1号イないしハ及び2号イに定める基本三法を用いることができない場合に限り用いることができるものであるから,基本三法の適用可能性について合理的な調査を尽くすことなく利益分割法を用いて独立企業間価格の算定をすることは許されない。ところが,処分行政庁は,基本三法の適用可能性について合理的な調査を尽くさないまま,基本三法の適用可能性がないとし,利益分割法を用いて本件独立企業間価格の算定をしたの であって,処分行政庁による独立企業間価格の算定方法の選択には瑕疵がある。 ウ独立企業間価格の算定単位の設定の瑕疵(争点2-2)本件国外関連取引は,原告とP1社,原告とP5社,原告とP6社の間のそれぞれ別個の取引から成り,また,これらの取引は,いずれも完成自動二輪車の販売取引,自動二輪車の部品の販売取引,自動二輪車の製造設備の販売取引,技術支援の役務提供取引という複数の種類の取引から成るところ,これらを一括して独立企業間価格の算定をすることに合理性はないから,本件独立企業間価格は,原告とP1社,原告とP5社,原告とP6社のそれぞれの間のそれぞれの種類の取引ごとに算定しなければならない。ところが,処分行政庁は,複数の種類の取引を一の取引として本件独立企業間価格の算定をしただけで とP1社,原告とP5社,原告とP6社のそれぞれの間のそれぞれの種類の取引ごとに算定しなければならない。ところが,処分行政庁は,複数の種類の取引を一の取引として本件独立企業間価格の算定をしただけではなく,原告とP1社,原告とP5社,原告とP6社の間のそれぞれ別個の取引を一の取引として本件独立企業間価格の算定をしたのであって,処分行政庁による独立企業間価格の算定単位の設定には瑕疵がある。 エ基本的利益の算定の瑕疵(争点2-3)措置法通達66の4(4)-5に定める残余利益分割法の基本的利益の算定に当たっては,当該国外関連取引の事業と同種で,市場,事業規模等が類似する法人(重要な無形資産を有する法人を除く。)を比較対象法人として選定し,その事業用資産又は売上高に対する営業利益の割合等で示される利益指標に基づいて基本的利益を計算する。ところが,次のとおり,処分行政庁は,P1社等の比較対象法人を選定するために用いる除外基準としてマナウスフリーゾーン外で事業活動を行いマナウス税恩典利益を享受していない法人を除外する基準を設けることなく,P1社等の比較対象法人としてP1社等との比較可能性を欠くブラジル側比較対象企業を選定する等してブラジル側基本的利益の算定をしたのであって,処分行政庁によ るブラジル側基本的利益の算定には瑕疵がある。 (ア) マナウス税恩典利益P1社等は,マナウスフリーゾーンで事業活動を行い,ブラジル連邦憲法を始めとするブラジル連邦法及びアマゾナス州法の下でマナウス税恩典利益を享受しているものであり,その額は,本件各事業年度において合計約550億円に上る。P1社等の営業利益は,P1社等がマナウス税恩典利益を享受することにより,その額だけ増加しているところ,その額は,本件各事業 いるものであり,その額は,本件各事業年度において合計約550億円に上る。P1社等の営業利益は,P1社等がマナウス税恩典利益を享受することにより,その額だけ増加しているところ,その額は,本件各事業年度のP1社等の営業利益の60%以上を占める。 マナウス税恩典利益を除外すると,P1社等の営業利益は40%以下に落ち込み,営業利益率も低下する。 マナウス税恩典利益は,マナウスフリーゾーンというブラジル連邦憲法で保障された特殊な市場に基因するものであり,マナウスフリーゾーンで事業活動を行う認可企業に付与される政府助成金や補助金といった政府の介入の実質を有し,その享受の有無がP1社等及びブラジル側比較対象企業の営業利益ひいては営業利益率に客観的に明らかで重大な影響を及ぼすから,マナウスフリーゾーン外で事業活動を行いマナウス税恩典利益を享受していない企業は,マナウスフリーゾーンで事業活動を行いマナウス税恩典利益を享受しているP1社等との比較可能性を欠く。 (イ) P1社等の比較対象法人の選定の瑕疵処分行政庁は,P1社等の比較対象法人を選定するために用いる除外基準として,マナウスフリーゾーン外で事業活動を行いマナウス税恩典利益を享受していない法人を除外する基準を設けることなく,P1社等の比較対象法人として,マナウスフリーゾーンから遠く離れたブラジル南部の工業地帯で事業活動を行いマナウス税恩典利益を享受していないブラジル側比較対象企業を選定し,かつ,マナウス税恩典利益の享受の有無についてP1社等とブラジル側比較対象企業との差異調整をするこ となく,ブラジル側比較対象企業の総費用営業利益率の中位値をブラジル側基本的利益率としてブラジル側基本的利益の算定をしているが,マナウスフリーゾーン外で事業活動を行いマナ 差異調整をするこ となく,ブラジル側比較対象企業の総費用営業利益率の中位値をブラジル側基本的利益率としてブラジル側基本的利益の算定をしているが,マナウスフリーゾーン外で事業活動を行いマナウス税恩典利益を享受していない企業は,マナウスフリーゾーンで事業活動を行いマナウス税恩典利益を享受しているP1社等との比較可能性を欠くことは,上記(ア)のとおりであり,P1社等の比較対象法人の選定に当たっては,マナウス税恩典利益の享受の有無をP1社等との比較可能性の判断における重要な要素として考慮し,マナウスフリーゾーン外で事業活動を行いマナウス税恩典利益を享受していない法人を除外する基準を設けなければならず,また,そのような企業をP1社等の比較対象法人として選定するのであれば,マナウス税恩典利益の享受の有無についてP1社等とブラジル側比較対象企業との間の適切な差異調整をしなければならなかった。 処分行政庁がしたブラジル側基本的利益の算定には瑕疵がある。 (ウ) 基本的利益の算定のその余の瑕疵aP1社等の比較対象法人の除外基準の設定及び選定の瑕疵処分行政庁がP1社等の比較対象法人を選定するために用いた除外基準は,杜撰かつ不合理である。その基準には,重要な無形資産を有する法人を除外するための項目も,マナウスフリーゾーンと人件費水準が異なる市場で事業活動を行う法人,国外で事業活動を行う法人や輸出割合が大きい法人を除外するための項目も,設定されていない。 事業規模が異なる法人,事業の種類や取扱製品が異なる法人を除外するための項目は,設定されているものの,いずれも,不合理に緩やかであり,P1社等との比較可能性を欠く企業を除外することができない。処分行政庁がしたP1社等の比較対象法人の除外基準の設定には瑕疵があ るための項目は,設定されているものの,いずれも,不合理に緩やかであり,P1社等との比較可能性を欠く企業を除外することができない。処分行政庁がしたP1社等の比較対象法人の除外基準の設定には瑕疵がある。 処分行政庁がP1社等の比較対象法人として実際に選定したブラジ ル側比較対象企業は,P1社等と人件費水準,販売市場,事業規模,事業内容等が異なり,P1社等との比較可能性を欠いており,処分行政庁によるP1社等の比較対象法人の選定には瑕疵がある。 b 差異調整の懈怠P1社等とブラジル側比較対象企業との間には,人件費水準の差異,販売市場の差異,事業規模の差異,事業内容の差異等多くの差異が存在し,総費用営業利益率に客観的に明らかで重大な影響を及ぼしているにもかかわらず,処分行政庁はこれらについて差異調整をしていない。 c 利益指標の選定の瑕疵処分行政庁は総費用営業利益率をP1社等の利益指標としているが,その基礎となった総費用の中には本件国外関連取引の対価が含まれているのであって,処分行政庁による利益指標の選定には瑕疵がある。 オ残余利益の分割の瑕疵(争点2-4)残余利益の分割は,残余利益を当該法人又は国外関連者の有する重要な無形資産の価値に応じて合理的に配分する方法により行わなければならないところ,処分行政庁がした残余利益の分割には,P1社等の有する重要な無形資産であるコンソルシオ販売網に係るブラジル側分割要因を選定しておらず,残余利益の発生に寄与した程度を合理的に推測するに足りる要因に応じて分割したということができない等の瑕疵がある。 第3 当裁判所の判断 1 本件更正5-1及び本件更正5-2の各取消しの訴えの適否(争点1)について 度を合理的に推測するに足りる要因に応じて分割したということができない等の瑕疵がある。 第3 当裁判所の判断 1 本件更正5-1及び本件更正5-2の各取消しの訴えの適否(争点1)について原告は,本件更正5-1の一部取消しを求める請求と本件更正5-2の一部取消しを求める請求を選択的に併合しているところ,後記のとおり,本件更正5-2の一部取消しを求める請求は全て認容すべきものであるから,本件更正5- 1の一部取消しを求める訴えの利益の有無(争点1-1)については判断せず,本件更正5-2の一部取消しを求める訴えが不服申立て前置の規定及び出訴期間の規定に違反するものであるか否か(争点1-2)についてのみ判断する。 (1) 判断の要約前提事実(4)及び(5)のとおり,原告は,本件更正5-2があったことを知った日の翌日から起算して2月以内に,処分行政庁に対し,本件更正5-2に対する異議申立てをしていないため,本件更正5-2に対する審査請求についての裁決を経ておらず,また,本件更正5-2の一部取消しを求める訴えを含む本件各訴えは,本件更正5-2があったことを知った日から6か月を経過した後に提起されているが,本件においては,次の(2)のとおり,本件更正5-2に対する審査請求についての裁決を経ないことにつき正当な理由(国税通則法115条1項3号)があり,また,次の(3)のとおり,本件各訴えのうち本件更正5-2の一部取消しを求めるものが出訴期間の経過を理由として不適法とされることはないというべきである。 (2) 国税通則法115条1項3号の「正当な理由」についてア国税に関する法律に基づく処分で税務署長がしたものに不服がある者は,その処分があったことを知った日(処分に係る通知を受けた場合には,その受けた 法115条1項3号の「正当な理由」についてア国税に関する法律に基づく処分で税務署長がしたものに不服がある者は,その処分があったことを知った日(処分に係る通知を受けた場合には,その受けた日)の翌日から起算して2月以内に,その処分をした税務署長に対する異議申立てをすることができ(国税通則法75条1項1号,77条1項),この異議申立てについての決定があった場合において,当該異議申立てをした者が当該決定を経た後の処分になお不服があるときは,その者は,異議決定書の謄本の送達があった日の翌日から起算して1月以内に,国税不服審判所長に対して審査請求をすることができる(同法75条3項,77条2項)ところ,国税に関する法律に基づく処分で不服申立てをすることができるものの取消しを求める訴えは,異議申立てをすることができる処分(審査請求をすることもできるもの(異議申立てについての決定を 経た後審査請求をすることができるものを含む。)を除く。)にあっては異議申立てについての決定を,審査請求をすることができる処分にあっては審査請求についての裁決をそれぞれ経た後でなければ,提起することができない(同法115条1項本文)が,異議申立てについての決定又は審査請求についての裁決を経ることにより生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき,その他その決定又は裁決を経ないことにつき正当な理由があるときは,この限りでない(同項3号)。 国税通則法が国税に関する法律に基づく処分について特別な行政上の不服申立ての手続を設け,これを経た後でなければその取消しの訴えを提起することを許さないものとした趣旨は,国税に関する法律に基づく処分が大量かつ回帰的なものであり,当初の処分が必ずしも十分な資料と調査に基づいてされていない場合があることに鑑み,訴 取消しの訴えを提起することを許さないものとした趣旨は,国税に関する法律に基づく処分が大量かつ回帰的なものであり,当初の処分が必ずしも十分な資料と調査に基づいてされていない場合があることに鑑み,訴えの提起に先立って行政庁に再検討の機会を与え,行政内部における自律的な解決を期待するとともに,納税者がその結果になお不服がある場合に初めて裁判所の判断を受けることができるものとして,裁判所の負担の軽減を図ろうとする目的に出たものであり,他方で,納税者に対しても,訴えの提起に先立って事案を熟知し事実関係の究明に適する地位にある行政庁に不服申立てをさせ,簡易かつ迅速な救済を受ける機会を与えたものであると解される。 国税通則法24条ないし26条に定める更正,決定及び再更正は,課税要件の充足によって同法15条2項各号に定める時(法人税の場合には事業年度の終了の時)に成立している納税義務の内容,すなわち,その国税についての納付すべき税額を確定する行為であるところ,再更正のうちのいわゆる増額再更正は,税務署長が,更正又は決定をした後,その更正又は決定をした課税標準等又は税額等が過少であることを知ったときに,その調査により,当該更正又は決定に係る課税標準等又は税額等を更正するものであり(同法26条),当該納税者の納付すべき税額の計算の基礎と なる課税要件事実を全面的に見直して納付すべき税額を確定するものであるから,増額再更正は,当初の更正又は決定に係る税額を含む総額としての税額を確定するものであり,当初の更正又は決定は,増額再更正の処分内容として増額再更正に吸収されて一体となり,その外形が消滅すると解するのが相当である(吸収説。最高裁昭和27年(オ)第1058号同32年9月19日第一小法廷判決・民集11巻9号1608頁,最高裁昭和3 して増額再更正に吸収されて一体となり,その外形が消滅すると解するのが相当である(吸収説。最高裁昭和27年(オ)第1058号同32年9月19日第一小法廷判決・民集11巻9号1608頁,最高裁昭和39年(行ツ)第52号同42年9月19日第三小法廷判決・民集21巻7号1828頁,最高裁昭和53年(行ツ)第55号同55年11月20日第一小法廷判決・裁判集民事131号135頁参照)。したがって,当初の更正がされ,これに対する異議申立てがされた後に,増額再更正がされ,その後,当初の更正についての異議決定を経て,当初の更正に対する審査請求がされた場合,増額再更正は,当初の更正とは別個の処分であるから,当初の更正に対する審査請求の対象となっていたということはできないが,増額再更正は,当初の更正に係る税額を含む総額としての税額を確定するものであるから,増額再更正のうち当初の更正に係る税額に係る部分は,当初の更正とその目的及び効果を同一にするものであり,増額再更正は,当初の更正と相互に密接な関連を有するということができる(当初の更正の取消しの訴えを提起した者が,その訴訟の係属している間にされた増額再更正の取消しを求めようとするときには,同法115条1項2号の規定により,改めて審査請求についての裁決を経ることなく訴えを提起することができるのは,このことを前提としているというべきである。)。そうすると,増額再更正の取消しの訴えが,増額再更正の固有の違法事由を主張してその取消しを求めるものではなく,当初の更正に対する審査請求において主張した当初の更正の違法事由と同じ違法事由を主張して増額再更正の取消しを求めるものであるときは,当初の更正について適法な審査請求をし,この審査請求についての裁決を経たことをもって,増額再更正に ついて審査請求をし,裁決 じ違法事由を主張して増額再更正の取消しを求めるものであるときは,当初の更正について適法な審査請求をし,この審査請求についての裁決を経たことをもって,増額再更正に ついて審査請求をし,裁決を経たのと実質的に同視することができ,増額再更正について改めて不服申立てを経ることを要しないというべきであって,上記の場合に,増額再更正の取消しの訴えを提起するに当たり,改めて審査請求についての裁決を経ないことにつき正当な理由があると解するのが相当である。これを実質的にみても,増額再更正と当初の更正との間に上記のとおりの関係があることによれば,当初の更正に対する異議申立て及び審査請求がされたことにより,増額再更正のうち当初の更正に係る税額に係る部分についても,行政庁に再検討の機会が与えられるとともに,納税者に対しても行政庁による簡易かつ迅速な救済を受ける機会が与えられたということができるのであって,国税に関する法律に基づく処分の取消しの訴えの提起について不服申立て前置を定めた国税通則法の趣旨にもとるところはない上,上記の場合に,増額再更正の取消しの訴えを提起するに当たり,改めて審査請求についての裁決を経なければならないとするときには,行政庁に対しても,納税者に対しても,無益な手続を踏ませ,手続経済に反するとともに,納税者の救済を受ける権利を侵害することになるというべきである。 イこれを本件についてみると,処分行政庁は,原告の平成15年3月期の法人税について,原告に対し,平成16年6月29日に本件更正等5-1をし,平成17年4月27日に減額再更正及び減額変更決定をした後,平成18年3月28日に増額再々更正である本件更正5-2及び過少申告加算税の賦課決定をしたところ,原告は,平成16年8月27日,国税通則法75条2項1号の規定に基づ 再更正及び減額変更決定をした後,平成18年3月28日に増額再々更正である本件更正5-2及び過少申告加算税の賦課決定をしたところ,原告は,平成16年8月27日,国税通則法75条2項1号の規定に基づいて,東京国税局長に対し,本件更正等5-1の一部取消しを求める異議申立てをし,東京国税局長による平成19年7月9日付け異議決定を経て,同年8月9日,国税不服審判所長に対し,本件更正等5-1の一部取消しを求める審査請求をし,国税不服審判所長による平成22年9月9日付け本件裁決を経たものであり,かつ,本件更正 5-2の取消しの訴えは,本件更正5-2の固有の違法事由を主張してその取消しを求めるものではなく,本件更正5-1に対する審査請求において主張した本件更正5-1の違法事由と同じ本件国外関連取引に対する移転価格税制の適用の違法を主張して本件更正5-2の取消しを求めるものであるから,原告が,本件更正5-1について審査請求をし,本件裁決を経たことをもって,本件更正5-2について審査請求をし,裁決を経たのと実質的に同視し,原告は,本件更正5-2について改めて不服申立てを経ることを要しないということができる。 したがって,原告が本件更正5-2の一部取消しを求める訴えを提起するに当たり,改めて審査請求についての裁決を経ないことについては,正当な理由があるというべきである。 ウ被告は,二つの処分がある場合に,一つの処分についてのみ不服申立てをし,他の処分について不服申立てをしないことに「正当な理由」があるときとは,司法審査に先立ち不服申立てを経由させることにつき合理的理由がない場合,すなわち,各処分が実質的に同一である場合や,各処分がその理由を共通にし,不服申立てにおいて攻撃される点も専ら共通である場合であり,かつ,それに対す 立てを経由させることにつき合理的理由がない場合,すなわち,各処分が実質的に同一である場合や,各処分がその理由を共通にし,不服申立てにおいて攻撃される点も専ら共通である場合であり,かつ,それに対する行政庁の基本的な判断が一つの処分に対する不服申立てにおいて既に示されており変更の余地がないような場合に限られると主張する。 しかし,国税通則法75条5項は,異議申立てをしている者は,異議申立てをした日の翌日から起算して3月を経過しても異議申立てについての決定がないときは,当該異議申立てに係る処分について,決定を経ないで,国税不服審判所長に対して審査請求をすることができると定め,また,同法115条1項1号は,国税に関する法律に基づく処分で審査請求をすることができるものの取消しを求める訴えであっても,審査請求がされた日の翌日から起算して3月を経過しても裁決がないときは,審査請求につい ての裁決を経た後でなくても,提起することができる旨を定めている。これらの規定によれば,同法が国税に関する法律に基づく処分について特別な行政上の不服申立ての手続を設け,これを経た後でなければその取消しの訴えを提起することを許さないものとした趣旨が,訴えの提起に先立って行政庁に再検討の機会を与え,行政内部における自律的な解決を期待するという限度を超え,納税者の迅速な救済を受ける権利を劣後させてまでも,行政庁に納税者の不服申立てに対する判断を示させようとしたものであると解することはできないのであって,被告が主張するように,二つの処分がある場合に,一つの処分についてのみ不服申立てをし,他の処分について不服申立てをしないことに同項3号の「正当な理由」があるときとは,行政庁の基本的な判断が一つの処分に対する不服申立てにおいて既に示されており変更の余地が についてのみ不服申立てをし,他の処分について不服申立てをしないことに同項3号の「正当な理由」があるときとは,行政庁の基本的な判断が一つの処分に対する不服申立てにおいて既に示されており変更の余地がないような場合に限られるということはできない。被告の主張は採用することができない。 (3) 行政事件訴訟法14条の出訴期間の遵守についてア取消訴訟は,処分若しくは裁決があったことを知った日から6か月を経過したとき又は処分若しくは裁決の日から1年を経過したときは,提起することができず(行政事件訴訟法14条1項本文及び2項本文),また,処分又は裁決につき審査請求をすることができる場合において,審査請求があったときは,処分又は裁決に係る取消訴訟は,その審査請求をした者については,これに対する裁決があったことを知った日から6か月を経過したとき又は当該裁決の日から1年を経過したときは,提起することができない(同条3項本文)が,正当な理由があるときは,この限りでない(同条各項ただし書)。 当初の更正がされ,これに対する異議申立てがされた後に,増額再更正がされ,その後,当初の更正についての異議決定を経て,当初の更正に対する審査請求がされた場合,増額再更正は,当初の更正とは別個の処分で あるから,当初の更正に対する審査請求の対象となっていたということはできないが,増額再更正の取消しの訴えが,増額再更正の固有の違法事由を主張してその取消しを求めるものではなく,当初の更正に対する審査請求において主張した当初の更正の違法事由と同じ違法事由を主張して増額再更正の取消しを求めるものであるときは,当初の更正について適法な審査請求をし,この審査請求についての裁決を経たことをもって,増額再更正について審査請求をし,裁決を経たのと実質的に 由を主張して増額再更正の取消しを求めるものであるときは,当初の更正について適法な審査請求をし,この審査請求についての裁決を経たことをもって,増額再更正について審査請求をし,裁決を経たのと実質的に同視することができることは,上記(2)アのとおりであるから,この場合,増額再更正の取消しの訴えは,それが当初の更正についての審査請求に対する裁決があったことを知った日から6か月を経過して提起されたものであるか,又は当該裁決の日から1年を経過して提起されたものである場合には格別,そうでない限りは,出訴期間の経過を理由として不適法とされることはないというべきである。 イこれを本件についてみると,処分行政庁は,原告の平成15年3月期の法人税について,原告に対し,平成16年6月29日に本件更正等5-1をし,平成17年4月27日に減額再更正及び減額変更決定をした後,平成18年3月28日に増額再々更正である本件更正5-2及び過少申告加算税の賦課決定をしたところ,原告は,平成16年8月27日,国税通則法75条2項1号の規定に基づいて,東京国税局長に対し,本件更正等5-1の一部取消しを求める異議申立てをし,東京国税局長による平成19年7月9日付け異議決定を経て,同年8月9日,国税不服審判所長に対し,本件更正等5-1の一部取消しを求める審査請求をし,国税不服審判所長による平成22年9月9日付け本件裁決を経て,同月16日に本件裁決があったことを知ったものである。そして,原告は,同日から6か月以内である平成23年3月11日,本件更正5-1に対する審査請求において主張した本件国外関連取引に対する移転価格税制の適用の違法を主張して本件更 正5-2の一部取消しを求める訴えを提起したのであるから,同訴えは,出訴期間の経過を理由として不適法とされること て主張した本件国外関連取引に対する移転価格税制の適用の違法を主張して本件更 正5-2の一部取消しを求める訴えを提起したのであるから,同訴えは,出訴期間の経過を理由として不適法とされることはないというべきである。 2 独立企業間価格について(1) 移転価格税制について内国法人の各事業年度の所得の金額は,当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額であるとされる(法人税法22条1項)ところ,法人が,昭和61年4月1日以後に開始する各事業年度において,当該法人に係る国外関連者(外国法人で,当該法人との間にいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式の総数の100分の50以上を直接又は間接に保有する関係など特殊の関係のあるもの)との間で資産の販売,資産の購入,役務の提供その他の取引を行った場合に,当該取引(国外関連取引)につき,当該法人が当該国外関連者から支払を受ける対価の額が独立企業間価格(当該取引が特殊の関係にない者(非関連者)の間で同様の状況の下で行われた場合に成立するであろう合意に係る価格)に満たないとき,又は当該法人が当該国外関連者に支払う対価の額が独立企業間価格を超えるときは,当該法人の当該事業年度の所得に係る法人税法その他法人税に関する法令の規定の適用については,当該国外関連取引は,独立企業間価格で行われたものとみなされる(措置法66条の4第1項)。この場合における国外関連取引の対価の額と当該国外関連取引に係る独立企業間価格との差額は,法人の各事業年度の所得の金額の計算上,損金の額に算入されない(同条4項)。 特殊の関係のある企業の間における資産の販売,役務の提供,特許又は商標の使用許諾,ノウハウの提供,資金の貸付けその他の取引の対価の額を一般に移転価格と呼ぶところ,上記 れない(同条4項)。 特殊の関係のある企業の間における資産の販売,役務の提供,特許又は商標の使用許諾,ノウハウの提供,資金の貸付けその他の取引の対価の額を一般に移転価格と呼ぶところ,上記取引の当事者たる企業が,それぞれ,異なる国で事業活動を行い,別個の課税管轄に属する場合において,移転価格が独立企業間価格と異なる額に設定されるときには,本来一方の企業の所得となるべきであった経済的利益が他方の企業に移転され,移転元となった企業 がその課税管轄に属する国の課税権が侵害されるという問題が生ずる。この移転価格の問題は,国際的な経済交流の発展に伴い,企業の多国籍化が進み,そのグループ内取引が増大したことによって,各国の共通の関心事となり,米国を始めとする諸外国において移転価格税制が整備されたほか,OECD(経済協力開発機構)においても租税委員会を中心に検討が行われた。OECDは,1979年(昭和54年)5月16日,「移転価格と多国籍企業」と題する租税委員会の報告書を公表するとともに,加盟各国の政府に対し,独立企業間価格の算定に当たり同報告書の内容を考慮に入れるべきことを求める理事会勧告をしたところ,上記報告書は,税務当局がその権限の及ぶ地域外の特殊関係企業と取引を行う企業に対する課税をするに当たり独立企業間価格に基づいて所得の計算をすることは一般に認められているところであり,特殊関係企業間の取引に関するOECDモデル租税条約9条1項もこれを前提とするものであるとした上,独立企業間価格によるアプローチは同報告書の底流を成す考え方であるとしている。また,上記モデル条約の規定は,「(a) 一方の締約国の企業が他方の締約国の企業の経営,支配若しくは資本に直接若しくは間接に参加している場合又は (b) 同一の者が一方の締約国の企業及 としている。また,上記モデル条約の規定は,「(a) 一方の締約国の企業が他方の締約国の企業の経営,支配若しくは資本に直接若しくは間接に参加している場合又は (b) 同一の者が一方の締約国の企業及び他方の締約国の企業の経営,支配若しくは資本に直接若しくは間接に参加している場合であって,そのいずれの場合においても,商業上又は資金上の関係において,双方の企業の間に,独立の企業の間に設けられる条件と異なる条件が設けられ又は課されているときは,その条件がないとしたならば一方の企業の利得となったとみられる利得であってその条件のために当該一方の企業の利得とならなかったものに対しては,これを当該一方の企業の利得に算入して租税を課することができる」と定めている。上記報告書の記載及び上記モデル条約の規定は,いずれも独立企業原則(特殊関係企業間の取引に,独立企業間の取引に設けられる条件と異なる条件が設けられ,それにより自国企業の利益が減少している場合には,その条件が設けられて いなければ当該自国企業の利益となるはずであった利益を合算して当該自国企業に課税することができるとする原則)を明らかにしたものである。このような流れを受けて,我が国においても移転価格の問題が議論されるようになり,移転価格税制の導入を検討するものとした昭和56年の衆議院大蔵委員会の附帯決議及び法人が海外の特殊関係企業と取引を行った場合の課税所得の計算に関する規定を整備することが適当であるとした昭和60年12月19日の税制調査会「昭和61年度の税制改正に関する答申」を経て,昭和61年法律第13号による措置法の改正により,「国外関連者との取引に係る課税の特例」として,法人間の取引に限り,かつ,国際取引に限って,移転価格税制が制定された。 このように,措置法66条の4第1 律第13号による措置法の改正により,「国外関連者との取引に係る課税の特例」として,法人間の取引に限り,かつ,国際取引に限って,移転価格税制が制定された。 このように,措置法66条の4第1項の移転価格税制の規定は,移転価格の問題を放置することには適正かつ公平な課税の見地から問題があること,及び,諸外国においては既に移転価格税制が整備されていることに鑑みて,我が国においても,諸外国と共通の基盤に立って,特殊の関係のある企業の間の取引を通じた所得の海外移転に対処し,各国家の課税権の適切な調整を図り,もって適正な国際課税を実現するために規定されたものである。そうすると,我が国の移転価格税制の規定の解釈適用に当たっては,我が国の移転価格税制が独立企業原則という諸外国の移転価格税制と共通の基礎に立脚するものであることに配慮しなければならないのであって,具体的には,我が国の移転価格税制と諸外国の移転価格税制との間の整合性を確保するため,独立企業原則の見地から独立企業間価格の算定に当たり考慮すべき事項及び採り得る手段について記載しているOECD租税委員会の上記報告書及び同報告書の各章を1995年(平成7年)以降順次改訂したものである「多国籍企業と税務当局のための移転価格の算定に関する指針」(移転価格ガイドライン)の記載を踏まえてしなければならないというべきである。なお,移転価格の問題は多国籍企業による租税回避の問題であることも少なくはない が,独立企業原則は,特定の額の対価を支払うという当事者間の契約上の義務や租税の負担を軽減しようという当事者の意図の有無にかかわらず,現実の対価の額を独立企業間価格に修正するものであるから,移転価格税制が租税回避の防止に用いられることはあるものの,法人が租税回避の目的をもって移転価格を設定したこ 当事者の意図の有無にかかわらず,現実の対価の額を独立企業間価格に修正するものであるから,移転価格税制が租税回避の防止に用いられることはあるものの,法人が租税回避の目的をもって移転価格を設定したことは移転価格税制の適用要件とはならない。 (2) 独立企業間価格の算定方法について措置法66条の4第1項に規定する独立企業間価格とは,当該国外関連取引が特殊の関係にない者(非関連者)の間で同様の状況の下で行われた場合に成立するであろう合意に係る価格をいうことは,上記(1)のとおりであるところ,同条2項の規定は,上記(1)のOECD租税委員会の報告書を踏まえ,次のとおり,国外関連取引の類型ごとに,独立企業間価格の算定方法を定めている。すなわち,① 国外関連取引が棚卸資産の販売又は購入である場合については,ⅰ 独立価格比準法(特殊の関係にない売手と買手が,国外関連取引に係る棚卸資産と同種の棚卸資産を当該国外関連取引と取引段階,取引数量その他が同様の状況の下で売買した取引の対価の額(当該同種の棚卸資産を当該国外関連取引と取引段階,取引数量その他に差異のある状況の下で売買した取引がある場合において,その差異により生じる対価の額の差を調整できるときは,その調整を行った後の対価の額を含む。)に相当する金額をもって独立企業間価格とする方法。同項1号イ),ⅱ 再販売価格基準法(国外関連取引に係る棚卸資産の買手が特殊の関係にない者に対して当該棚卸資産を販売した対価の額(再販売価格)から通常の利潤の額(当該再販売価格に政令で定める通常の利益率を乗じて計算した金額)を控除して計算した金額をもって独立企業間価格とする方法。同号ロ),ⅲ 原価基準法(国外関連取引に係る棚卸資産の売手の購入,製造その他の行為による取得の原価の額に通常の利潤の額(当該原価 した金額)を控除して計算した金額をもって独立企業間価格とする方法。同号ロ),ⅲ 原価基準法(国外関連取引に係る棚卸資産の売手の購入,製造その他の行為による取得の原価の額に通常の利潤の額(当該原価の額に政令で定める通常の利益率を乗じて計算した金額)を加算して計算した金額をもって独立企業間価格とする方 法。同号ハ),及び,ⅳ これらの方法(基本三法)に準ずる方法その他政令で定める方法(同号ニ)という四つの方法を規定しており(ただし,基本三法に準ずる方法その他政令で定める方法は,基本三法を用いることができない場合に限り,用いることができるものとしている。同号括弧書き),また,② 国外関連取引が棚卸資産の販売又は購入以外の取引である場合については,ⅴ 基本三法と同等の方法(同項2号イ),及び,ⅵ 基本三法に準ずる方法その他政令で定める方法と同等の方法(同号ロ)を規定している(ただし,基本三法に準ずる方法その他政令で定める方法と同等の方法は,基本三法と同等の方法を用いることができない場合に限り,用いることができるものとしている。同号括弧書き)。 そこで,次に,これらの独立企業間価格の算定方法に関し本件で問題となる点について検討する。 ア独立価格比準法独立価格比準法(これと同等の方法を含む。以下同じ。)は,国外関連取引に係る棚卸資産と同種の棚卸資産を当該国外関連取引と取引段階,取引数量その他が同様の状況の下で売買した非関連者間取引の対価の額に直接比準し,その対価の額に相当する金額をもって独立企業間価格とする算定方法である(措置法66条の4第2項1号イ)。したがって,ある非関連者間取引をもって,当該事案においてその対価の額が独立企業間価格を超え又はこれに満たないものであるか否かの検証の対象とされている国外 方法である(措置法66条の4第2項1号イ)。したがって,ある非関連者間取引をもって,当該事案においてその対価の額が独立企業間価格を超え又はこれに満たないものであるか否かの検証の対象とされている国外関連取引(以下「検証対象取引」ともいう。)との比較対象取引とするためには,当該非関連者間取引が,① 検証対象取引に係る棚卸資産と同種の棚卸資産を,② 検証対象取引と取引段階,取引数量その他が同様の状況の下で売買した取引であることが,その要件となる。そして,上記①の比較対象取引に係る棚卸資産が検証対象取引に係る棚卸資産と同種のものであるというためには,比較対象取引に係る棚卸資産と検証対象取引に係 る棚卸資産とがその性状,構造,機能等の面において同種のものである必要があるところ,その同種性の有無は,比較対象取引に係る棚卸資産と検証対象取引に係る棚卸資産との間の性状,構造,機能等の差異がそれらの棚卸資産の間に対価の額の差異を生じさせる差異であるか否かによって判定すべきものであり,また,上記②の比較対象取引が検証対象取引と同様の状況の下で売買した取引であるか否かは,取引段階が当該棚卸資産の製造から消費者による購入までの間のどの段階に属するか(小売であるか卸売であるか等),取引数量が価格に影響を与える場合には取引数量,季節要因により又は一般的な経済市況の変化により価格が変動する場合には取引時期,棚卸資産の引渡条件が積地条件か揚地条件か,支払条件,当該市場の地理的位置,経済や社会の構造,消費者の消費性向,政府の規制などの市場の条件,特許権,商標権等の使用許諾,ノウハウの提供の有無等の諸般の事情を総合的に考慮して判定すべきものである(以上につき,措置法通達66の4(2)-2,3参照)。 もっとも,比較対象取引が検証対象取引に係る棚卸 使用許諾,ノウハウの提供の有無等の諸般の事情を総合的に考慮して判定すべきものである(以上につき,措置法通達66の4(2)-2,3参照)。 もっとも,比較対象取引が検証対象取引に係る棚卸資産と同種の棚卸資産を当該検証対象取引と取引段階,取引数量その他に差異のある状況の下で売買した取引である場合においても,その差異により生じる対価の額の差を調整することができるときは,その調整(差異調整)を行った後の対価の額に相当する金額をもって独立企業間価格とすることができる(措置法66条の4第2項1号イ括弧書き)が,そのような差異調整を行うことができない場合には,当該比較対象取引の対価の額に比準して独立企業間価格を算定することはできないこととなる。 イ再販売価格基準法再販売価格基準法(これと同等の方法を含む。以下同じ。)は,国外関連取引に係る棚卸資産と同種又は類似の棚卸資産を非関連者から購入した者(再販売者)が当該同種又は類似の棚卸資産を非関連者に対して販売し た取引に係る売上総利益率(当該再販売者の売上総利益の額,すなわち,当該比較対象取引に係る棚卸資産の販売による収入金額の合計額から当該比較対象取引に係る棚卸資産の原価の額の合計額を控除した金額の当該収入金額の合計額に対する割合)を通常の利益率として(措置法施行令39条の12第6項。ただし,同項ただし書の規定により,比較対象取引と,当該国外関連取引に係る棚卸資産の買手が当該棚卸資産を非関連者に対して販売した取引とが再販売者(売手)の果たす機能その他において差異がないことを必要とする。),この売上総利益に係る利益率に基づいて算定された価格,すなわち,国外関連取引に係る棚卸資産の買手が特殊の関係にない者に対して当該棚卸資産を販売した対価の額(再販売価格)から ないことを必要とする。),この売上総利益に係る利益率に基づいて算定された価格,すなわち,国外関連取引に係る棚卸資産の買手が特殊の関係にない者に対して当該棚卸資産を販売した対価の額(再販売価格)から通常の利潤の額(当該再販売価格に上記通常の利益率を乗じて計算した金額)を控除して計算した金額をもって独立企業間価格とする算定方法である(措置法66条の4第2項1号ロ)。したがって,ある非関連者間取引をもって比較対象取引とするためには,① 当該非関連者間取引が,検証対象取引に係る棚卸資産と同種又は類似の棚卸資産を非関連者から購入した者(再販売者)が当該同種又は類似の棚卸資産を非関連者に対して販売した取引であり,② 当該非関連者間取引と,当該検証対象取引に係る棚卸資産の買手が当該棚卸資産を非関連者に対して販売した取引とが再販売者(売手)の果たす機能その他において差異がないことが,その要件となるところ,再販売価格基準法は,再販売取引に係る通常の利益率が,当該取引に係る棚卸資産の種類そのものよりも,むしろ再販売者(売手)の果たす機能(及び負担するリスク)と密接に関係することに着目し,主として再販売者(売手)の果たす機能の類似性に基づいて独立企業間価格の算定をするものであるため,再販売価格基準法については,独立価格比準法のように比較対象取引に係る棚卸資産と検証対象取引に係る棚卸資産との間の厳密な類似性(同種性)は必要とならず,単なる類似性で足りる(上記 ①)一方で,比較対象取引と検証対象取引に係る棚卸資産の買手がした再販売取引とが再販売者(売手)の果たす機能,負担するリスクその他において差異がないことが必要となる(上記②)。そして,上記①の棚卸資産の類似性の有無は,比較対象取引に係る棚卸資産と検証対象取引に係る棚卸資産との間の性状,構造, 果たす機能,負担するリスクその他において差異がないことが必要となる(上記②)。そして,上記①の棚卸資産の類似性の有無は,比較対象取引に係る棚卸資産と検証対象取引に係る棚卸資産との間の性状,構造,機能等の差異が比較対象取引と検証対象取引に係る棚卸資産の買手がした再販売取引との間に再販売者(売手)の通常の利益率の差異を生じさせる差異であるか否かによって判定すべきものであり,また,上記②の比較対象取引と検証対象取引に係る棚卸資産の買手がした再販売取引とが再販売者(売手)の果たす機能その他において差異がないか否かは,それぞれの再販売者(売手)の果たす機能,負担するリスクのほか,それらが機能を果たしている市場の条件,特許権,商標権等の使用許諾,ノウハウの提供の有無等の諸般の事情を総合的に考慮して判定すべきものである(以上につき,措置法通達66の4(2)-2,3参照)。 したがって,類似の棚卸資産の卸売業者であっても,地理的な市場が異なれば,その利益率には階差が生ずると考えることができるし,また,特許権,商標の使用許諾やノウハウの提供をしている卸売業者とそれをしていない卸売業者とでも,その利益率には階差が生ずると考えることができる。 もっとも,比較対象取引と検証対象取引に係る棚卸資産の買手がした再販売取引とが再販売者(売手)の果たす機能その他において差異がある場合においても,その差異により生じる割合の差につき適切な調整(差異調整)を行うことができるときには,必要な差異調整を加えた後の割合をもって通常の利益率とすることができる(措置法施行令39条の12第6項ただし書)が,そのような差異調整を行うことができない場合には,当該比較対象取引の利益率に比準して独立企業間価格を算定することはできないこととなる。 ウ原価基準法 条の12第6項ただし書)が,そのような差異調整を行うことができない場合には,当該比較対象取引の利益率に比準して独立企業間価格を算定することはできないこととなる。 ウ原価基準法 原価基準法(これと同等の方法を含む。以下同じ。)は,国外関連取引に係る棚卸資産と同種又は類似の棚卸資産を非関連者から購入するなどして取得した者(販売者)が当該同種又は類似の棚卸資産を非関連者に対して販売した取引に係る売上総利益の総原価に対する割合(当該販売者の売上総利益の額,すなわち,当該比較対象取引に係る棚卸資産の販売による収入金額の合計額から当該比較対象取引に係る棚卸資産の原価の額の合計額を控除した金額の当該原価の額の合計額に対する割合)を通常の利益率として(措置法施行令39条の12第7項。ただし,同項ただし書の規定により,比較対象取引と,当該国外関連取引とが売手の果たす機能その他において差異がないことを必要とする。),この売上総利益に係る利益率に基づいて算定された価格,すなわち,国外関連取引に係る棚卸資産の売手の取得原価の額に通常の利潤の額(当該原価の額に上記通常の利益率を乗じて計算した金額)を加算して計算した金額をもって独立企業間価格とする算定方法である(措置法66条の4第2項1号ハ)。したがって,ある非関連者間取引をもって比較対象取引とするためには,① 当該非関連者間取引が,検証対象取引に係る棚卸資産と同種又は類似の棚卸資産を非関連者から購入するなどして取得した者(販売者)が当該同種又は類似の棚卸資産を非関連者に対して販売した取引であり,② 当該非関連者間取引と,当該検証対象取引とが販売者(売手)の果たす機能その他において差異がないことが,その要件となるところ,原価基準法は,検証対象取引に係る通常の利益率が,当該取 た取引であり,② 当該非関連者間取引と,当該検証対象取引とが販売者(売手)の果たす機能その他において差異がないことが,その要件となるところ,原価基準法は,検証対象取引に係る通常の利益率が,当該取引に係る棚卸資産の種類そのものよりも,むしろ販売者(売手)の果たす機能(及び負担するリスク)と密接に関係することに着目し,主として販売者(売手)の果たす機能の類似性に基づいて独立企業間価格の算定をするものであるため,原価基準法についても,独立価格比準法のように比較対象取引に係る棚卸資産と検証対象取引に係る棚卸資産との間の厳密な類似性(同種性)は必要とならず,単なる類似 性で足りる(上記①)一方で,比較対象取引と検証対象取引とが販売者(売手)の果たす機能,負担するリスクその他において差異がないことが必要となる(上記②)。そして,上記①の棚卸資産の類似性の有無は,比較対象取引に係る棚卸資産と検証対象取引に係る棚卸資産との間の性状,構造,機能等の差異が比較対象取引と検証対象取引との間に販売者(売手)の通常の利益率の差異を生じさせる差異であるか否かによって判定すべきものであり,また,上記②の比較対象取引と検証対象取引とが販売者(売手)の果たす機能その他において差異がないか否かは,それぞれの販売者(売手)の果たす機能,負担するリスクのほか,それらが機能を果たしている市場の条件,特許権,商標権等の使用許諾,ノウハウの提供の有無等の諸般の事情を総合的に考慮して判定すべきものである(以上につき,措置法通達66の4(2)-2,3参照)。 もっとも,比較対象取引と検証対象取引とが販売者(売手)の果たす機能その他において差異がある場合においても,その差異により生じる割合の差につき適切な調整(差異調整)を行うことができるときには,必要な差異調 ,比較対象取引と検証対象取引とが販売者(売手)の果たす機能その他において差異がある場合においても,その差異により生じる割合の差につき適切な調整(差異調整)を行うことができるときには,必要な差異調整を加えた後の割合をもって通常の利益率とすることができる(措置法施行令39条の12第7項ただし書)が,そのような差異調整を行うことができない場合には,当該比較対象取引の利益率に比準して独立企業間価格を算定することはできないこととなる。 エその他の方法(ア) 措置法66条の4第2項の規定は,上記アないしウの方法のほかに,これらの方法(基本三法)に準ずる方法その他政令で定める方法(これらと同等の方法を含む。以下同じ。)を規定している(措置法66条の4第2項1号ニ及び2号ロ)。これらの方法は,基本三法を用いることができない場合に限り,用いることができるものである(基本三法優先の原則。同項1号括弧書き及び2号括弧書き)ところ,課税処分の取消 訴訟においては,被告(国)が所得の存在について主張立証責任を負うのであるから,基本三法を用いることができないことについても,被告(国)が主張立証責任を負うものと解すべきであるが,被告(国)において,処分行政庁が合理的な調査を尽くしたにもかかわらず基本三法を用いることができなかった旨を主張立証した場合には,基本三法を用いることができないことが事実上推定され,原告(納税者)において,この推定を覆すに足りる主張立証をする必要が生ずるというべきである。 (イ) 上記(ア)のその他の方法のうち,基本三法に準ずる方法は,基本三法の考え方から乖離せず,かつ,当該取引の内容に適合する合理的な方法であると解すべきである。 また,上記(ア)のその他の方法のうち,政令で定める方法とし ,基本三法に準ずる方法は,基本三法の考え方から乖離せず,かつ,当該取引の内容に適合する合理的な方法であると解すべきである。 また,上記(ア)のその他の方法のうち,政令で定める方法として,措置法施行令は,昭和61年法律第13号による移転価格税制の制定当時,利益分割法を規定していた(39条の12第8項)。この方法は,国外関連取引に係る棚卸資産の法人又は当該法人に係る国外関連者による購入,製造,販売その他の行為に係る所得が,当該棚卸資産に係るこれらの行為のためにこれらの者が支出した費用の額,使用した固定資産の価額その他これらの者が当該所得の発生に寄与した程度を推測するに足りる要因に応じて当該法人及び当該国外関連者に帰属するものとして計算した金額をもって独立企業間価格とする算定方法(寄与度利益分割法)である。そして,我が国の移転価格税制の規定の解釈適用に当たっては,我が国の移転価格税制が独立企業原則という諸外国の移転価格税制と共通の基礎に立脚するものであることに配慮しなければならないことは,上記(1)のとおりであって,措置法66条の4第2項の規定は独立企業原則を反映しているものというべきであるから,同項1号ニ及び2号ロの規定による政令への委任も独立企業原則に沿った独立企業間価格の算定方法を定めることを命じているものと解されるのであり,そのような委 任に基づいて定められた措置法施行令39条の12第8項の規定の解釈及び適用も独立企業原則に従って行われる必要があるというべきである。 上記(1)の1979年(昭和54年)のOECD租税委員会の報告書については,1993年(平成5年)から,同委員会において全面的な見直し作業が行われ,1995年(平成7年)以降順次「多国籍企業と税務当局のための移転価格の算定に関する のOECD租税委員会の報告書については,1993年(平成5年)から,同委員会において全面的な見直し作業が行われ,1995年(平成7年)以降順次「多国籍企業と税務当局のための移転価格の算定に関するガイドライン」(移転価格ガイドライン)として公表された。上記の見直し作業は,米国が1993年(平成5年)1月に財務省規則を改正し,独立企業間価格の算定方法として伝統的手法(基本三法)及び利益分割法のほかに利益比準法を新たに採用したことを契機として行われたものであり,独立企業間価格の算定方法として,我が国が採用していた利益分割法(寄与度利益分割法),米国が主張した残余利益分割法を採用したほか,利益比準法を企業単位から取引単位に修正した取引単位営業利益法を採用している。 我が国は,1995年(平成7年)の移転価格ガイドラインの公表に伴い,措置法施行令39条の12第8項の改正をすることはせず,平成12年9月8日課法2-13による措置法通達の改正により,利益分割法の意義(66の4(4)-1)を明らかにするとともに,その中に比較利益分割法(66の4(4)-4)及び残余利益分割法(66の4(4)-5)が含まれるという課税当局の解釈を明らかにし,平成13年6月1日には事務運営指針を発出した。また,我が国は,平成15年11月6日に締結した「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約」(平成16年条約第2号)の交換公文第3項において,移転価格ガイドラインに従って企業の移転価格の調査を行うものとすると規定されたことを踏まえて,平成16年政令第105号による措置法施行令の改正により,措置法66条の4第2項1号ニ及び2号ロの政令で定める方法として,新たに取引単 位営業利益法を追加し すると規定されたことを踏まえて,平成16年政令第105号による措置法施行令の改正により,措置法66条の4第2項1号ニ及び2号ロの政令で定める方法として,新たに取引単 位営業利益法を追加した(39条の12第8項2号及び3号)。再販売価格基準法及び原価基準法は,売上総利益をベースにして原価の額又は売上金額を算出する方法であるところ,これに対して,取引単位営業利益法は,営業利益をベースにして原価の額又は売上金額を算出する方法である。 オ平成23年法律第82号による措置法改正等について措置法66条の4第2項の規定は,平成23年法律第82号により改正された。同改正前は,基本三法優先の原則により,基本三法に準ずる方法その他政令で定める方法は,基本三法を用いることができない場合に限り,用いることができるものとされていた(上記エ(ア))ところ,同改正により,基本三法優先の原則は廃止され,独立企業間価格とは,同項各号に定める方法のうち,当該国外関連取引の内容及び当該国外関連取引の当事者が果たす機能その他の事情を勘案して,当該国外関連取引が独立の事業者の間で通常の取引の条件に従って行われるとした場合に当該国外関連取引につき支払われるべき対価の額を算定するための最も適切な方法により算定した金額をいうものとされた(同項柱書き)。基本三法優先の原則は,移転価格ガイドラインを踏まえて設けられたものであるところ,上記改正は,移転価格ガイドラインが,基本三法優先の原則は移転価格税制の適用の実情に合わなくなったという理由により,2010年(平成22年)に改訂され,基本三法優先の原則が廃止されるとともに,当該事案の状況に応じて独立企業原則に一致した最も適切な方法を見出すことを目指すこととされたことに対応して,行われたものである。 成22年)に改訂され,基本三法優先の原則が廃止されるとともに,当該事案の状況に応じて独立企業原則に一致した最も適切な方法を見出すことを目指すこととされたことに対応して,行われたものである。 そして,このような措置法の改正に伴い,上記のような独立企業間価格の算定方法の選択の仕組みの下では,法令において,利用可能な算定方法を一覧することができ,それらの内容が明確化されていることが望ましいため,措置法施行令39条の12第8項の規定が平成23年政令第199 号により改正され,寄与度利益分割法(同項1号ロ)のほか,比較利益分割法及び残余利益分割法の意義が法令上明らかにされる(同項1号イ及びハ)とともに,取引単位営業利益法の意義も法令上明らかにされた(同項2号及び3号)。上記改正による残余利益分割法の規定は,それまで措置法通達66の4(4)-5によって明らかにされていた措置法施行令39条の12第8項の課税当局の解釈を確認した規定であり,新たな方法を創設した規定ではないと解される。 (3) 残余利益分割法についてア措置法施行令39条の12第8項と残余利益分割法について平成16年政令第105号による改正前の措置法施行令39条の12第8項が,措置法66条の4第2項1号ニに規定する政令で定める方法として,国外関連取引に係る棚卸資産の法人又は当該法人に係る国外関連者による購入,製造,販売その他の行為に係る所得が,当該棚卸資産に係るこれらの行為のためにこれらの者が支出した費用の額,使用した固定資産の価額その他これらの者が当該所得の発生に寄与した程度を推測するに足りる要因に応じて当該法人及び当該国外関連者に帰属するものとして計算した金額をもって当該国外関連取引の対価の額とする方法(利益分割法)を定めていたこ の者が当該所得の発生に寄与した程度を推測するに足りる要因に応じて当該法人及び当該国外関連者に帰属するものとして計算した金額をもって当該国外関連取引の対価の額とする方法(利益分割法)を定めていたことは,上記(2)エ(イ)のとおりであるところ,この規定を受けて定められた平成16年12月20日課法2-14による改正前の措置法通達66の4(4)-1は,利益分割法の意義について,原則として,国外関連取引に係る棚卸資産の販売等により法人及び国外関連者に生じた営業利益の合計額(分割対象利益)を措置法施行令39条の12第8項に規定する要因により分割する方法をいうものとして,利益分割法における分割の対象となる利益が営業利益であることを明らかにしていた。そして,平成23年10月27日課法2-13による改正前の措置法通達66の4(4)-5は,利益分割法の一つである残余利益分割法について,利益分割法の適 用に当たり,法人又は国外関連者が重要な無形資産を有する場合には,分割対象利益のうち重要な無形資産を有しない非関連者間取引において通常得られる利益に相当する金額を当該法人及び国外関連者それぞれに配分し,当該配分した金額の残額を当該法人又は国外関連者の有する当該重要な無形資産の価値に応じて合理的に配分する方法により独立企業間価格を算定することができるとして,その意義を明らかにした上,その注において,当該重要な無形資産の価値による配分を当該重要な無形資産の開発のために支出した費用等の額により行っている場合には,合理的な配分として,これを認めるとしていた。 上記のとおり,措置法施行令39条の12第8項は,利益分割法を,国外関連取引に係る法人又は国外関連者の所得をこれらの者がその所得の発生に寄与した程度を推測するに足りる要因に応じて分割した金額 上記のとおり,措置法施行令39条の12第8項は,利益分割法を,国外関連取引に係る法人又は国外関連者の所得をこれらの者がその所得の発生に寄与した程度を推測するに足りる要因に応じて分割した金額をもって独立企業間価格とする方法として定めていたところ,残余利益分割法は,法人又は国外関連者が重要な無形資産を有する場合に,国外関連取引に係る法人又は国外関連者の所得(分割対象利益)の金額を重要な無形資産を有しない非関連者間取引において通常得られる利益(基本的利益)に相当する金額と残額(残余利益の金額)とに区分し,そのそれぞれをこれらの者がその所得の発生に寄与した程度を推測するに足りる要因に応じて,すなわち,基本的利益に相当する金額については当該法人及び国外関連者それぞれに,残余利益の金額については当該法人又は国外関連者の有する当該重要な無形資産の価値に応じて合理的に,分割した金額をもって独立企業間価格とする方法であるということができるのであって,残余利益分割法は,上記(2)オの平成23年政令第199号による措置法施行令39条の12第8項の改正により明確化される以前から同項に規定されていたものと解することができる。したがって,平成23年政令第199号による措置法施行令改正前において,残余利益分割法を用いることが租税法律主義 (憲法84条)に違反することにはならない。 イ残余利益分割法の適用要件及び算定方法について(ア) 残余利益分割法は,企業間の取引における無形資産の重要性が高まっている現況にあって,従来の利益分割法によっては必ずしも合理的に分割対象利益を配分することができない事例が増加してきたこと(特に,商標やブランド等のいわゆる「市場に関する無形資産」がその市場の消費者に深く受け入れられ,その貢献により多額 っては必ずしも合理的に分割対象利益を配分することができない事例が増加してきたこと(特に,商標やブランド等のいわゆる「市場に関する無形資産」がその市場の消費者に深く受け入れられ,その貢献により多額の利益を生み出している場合には,人件費等の費用の額,投下資本の額等(措置法通達66の4(4)-2)を分割要因として分割対象利益を配分するのでは国外関連取引の当事者が当該分割対象利益の発生に寄与した程度を推測するにふさわしいものを用いた合理的な配分ということはできないこと)から,1995年(平成7年)に公表された移転価格ガイドラインに採用され,我が国においても,このことを踏まえて,上記措置法通達の定めにより,措置法施行令で定める利益分割法に含まれることが明らかにされたものである。残余利益分割法は,法人又は国外関連者が重要な無形資産を有する場合に適用され,第1段階として,国外関連取引に係る棚卸資産の販売等により法人及び国外関連者に生じた営業利益の合計額(分割対象利益)のうち重要な無形資産を有しない非関連者間取引において通常得られる利益(基本的利益)に相当する金額を法人及び国外関連者に配分し,第2段階として,配分した金額の残額(残余利益)を法人又は国外関連者の有する重要な無形資産の価値に応じて合理的に分割するという,2段階に分けて独立企業間価格の算定をすることを特徴とする。 (イ) そこで,まず,基本的利益の算定(配分)についてみるに,基本的利益,すなわち,重要な無形資産を有しない非関連者間取引において通常得られる利益に相当する金額とは,例えば,当該国外関連取引の事業と同種の事業を営み,市場,事業規模等が類似する法人(重要な無形資 産を有する法人を除く。)の事業用資産又は売上高に対する営業利益の割合等で示される利益指標に基づい ,当該国外関連取引の事業と同種の事業を営み,市場,事業規模等が類似する法人(重要な無形資 産を有する法人を除く。)の事業用資産又は売上高に対する営業利益の割合等で示される利益指標に基づいて算定されるものである(事務運営指針3-3)ところ,この場合において,ある非関連者たる法人を比較対象法人として選定するためには,当該法人が当該国外関連取引(検証対象取引)の事業と同種の事業を営み,市場,事業規模等が類似するものであり,かつ,重要な無形資産を有する法人ではないことが,その要件となるところ,このような基本的利益の算定方法は,比較対象法人の事業用資産又は売上高に対する営業利益の割合等で示される利益指標に比準して基本的利益の算定をしようとするものであるため,独立価格比準法のように棚卸資産の厳密な類似性(同種性)は必要とならず,単なる類似性で足りる(①)一方で,比較対象法人と検証対象法人とがその果たす機能,負担するリスクその他において差異がないことが必要となる(②)。ここで,上記①の棚卸資産の類似性の有無は,比較対象法人による取引に係る棚卸資産と検証対象法人による取引に係る棚卸資産との間の性状,構造,機能等の差異が比較対象法人と検証対象法人との間にその事業用資産又は売上高に対する営業利益の割合等の差異を生じさせる差異であるか否かによって判定すべきものであり,また,上記②の比較対象法人と検証対象法人とがその果たす機能,負担するリスクその他において差異がないか否かは,それぞれの法人の果たす機能,負担するリスクのほか,それらが機能を果たしている市場の条件,特許権,商標権等の使用許諾,ノウハウの提供の有無等の諸般の事情を総合的に考慮して判定すべきものであることは,再販売価格基準法及び原価基準法と同様である。 もっとも,比較対 場の条件,特許権,商標権等の使用許諾,ノウハウの提供の有無等の諸般の事情を総合的に考慮して判定すべきものであることは,再販売価格基準法及び原価基準法と同様である。 もっとも,比較対象法人と検証対象法人とがその果たす機能その他においてその事業用資産又は売上高に対する営業利益の割合等の差異を生じさせる差異がある場合においても,当該差異につき適切な調整を行う ことができるときには,その差異により生じる割合の差につき必要な調整(差異調整)を加えた後の割合をもって上記事業用資産又は売上高に対する営業利益の割合等としてこれに基づき基本的利益の算定をすることができるが,そのような差異調整をすることができないときには,当該比較対象法人の事業用資産又は売上高に対する営業利益の割合等に基づいて基本的利益の算定をすることはできないと解される。 (ウ) 次に,残余利益の分割についてみるに,残余利益とは,分割対象利益のうち基本的利益(重要な無形資産を有しない非関連者間取引において通常得られる利益)に相当する金額を当該法人及び国外関連者それぞれに配分した金額の残額をいうものであり,法人又は国外関連者の有する重要な無形資産の価値に応じて合理的に配分されるべきものであることは,上記(ア)のとおりである(措置法通達66の4(4)-5)ところ,ここに重要な無形資産の価値というのは,措置法施行令39条の12第8項にいう「当該棚卸資産に係るこれらの行為のためにこれらの者が支出した費用の額,使用した固定資産の価額その他これらの者が当該所得の発生に寄与した程度を推測するに足りる要因」のことであり,上記の重要な無形資産の価値による配分については,それを当該重要な無形資産の開発のために支出した費用等の額により行っている場合には,合理的な配分とし 与した程度を推測するに足りる要因」のことであり,上記の重要な無形資産の価値による配分については,それを当該重要な無形資産の開発のために支出した費用等の額により行っている場合には,合理的な配分として,これを認めることができるものと解される(措置法通達66の4(4)-5の注参照)。 3 認定事実前提事実に加えて,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。 (1) マナウスフリーゾーンとマナウス税恩典利益アマナウスフリーゾーンの設定と税恩典の整備ブラジル連邦政府は,アマゾン地域の中心都市であるマナウスの振興を 図るため,1957年(昭和32年)法律第3173号によりマナウスフリーゾーンを設定し,1967年(昭和42年)大統領令第288号(税恩典大統領令)により税恩典の整備を行った。税優遇措置の期間は,税恩典大統領令では1997年(平成9年)までの30年間と定められていたが,1988年(昭和63年)に制定されたブラジル連邦憲法により2013年(平成25年)まで延長され,その後の憲法改正により,2023年(平成35年)まで再延長された。(甲26,30ないし32,162,乙77,99)イ現調規制とPPB基準マナウスフリーゾーンに進出し事業活動を行う法人の全てがマナウス税恩典利益を享受することができるわけではなく,マナウスフリーゾーンで工場を建設しマナウス税恩典利益(輸入税の軽減)を享受しようとする者は,マナウス自由貿易地域監督庁(SUFRAMA)から,税恩典を享受しようとする工業プロジェクトに係る認可を取得する必要があり,この認可を取得するとマナウスフリーゾーンで工場を建設することが認められる。 SUFRAMAの認可を取得するためには,進出企業に対 典を享受しようとする工業プロジェクトに係る認可を取得する必要があり,この認可を取得するとマナウスフリーゾーンで工場を建設することが認められる。 SUFRAMAの認可を取得するためには,進出企業に対して部品等につき一定の現調率を達成することを求める現調規制(現地調達規制)を満たさなければならないものとされていたところ,現調規制は,ブラジル連邦政府が1990年代に従来の国内産業の保護育成のための工業製品の輸入制限から輸入自由化に産業政策を転換したことに伴い,1991年(平成3年)法律第8387号により,現調規制よりも達成が容易なPPB(基本製造工程)基準に切り替えられた。PPB基準は,進出企業がマナウスフリーゾーンで事業活動を行うに当たり最低限履行すべき基本製造工程について定めているものであり,1993年(平成5年)大統領令第783号は,「オートバイ及びスクーター」に関する基本製造工程として,グループA「プレス,鋳造,加工,塗装,プラスチック注入」,グループB「燃 料タンクの溶接と腐食防止処理,車体の溶接と腐食防止処理,リアフォークの溶接と腐食防止処理,サイドスタンド,センタースタンド及びステップの溶接と腐食防止処理」,グループC「エンジンの組立て,最終組立て,最終検査,梱包」を定め,オートバイ及びスクーターのメーカーは,同指令の公示日から起算して18か月以内にグループAに定められた工程のうちの少なくとも2項目及びグループBに定められた工程のうちの少なくとも2項目を実行し,直ちにグループCに定められた工程を実行しなければならないものとしているが,各工程の内容や技術水準に関する具体的基準は示されていない。(甲26,30ないし32,40,41,162,乙76ないし78,99)ウアマゾナス州の税恩典連邦の税 しているが,各工程の内容や技術水準に関する具体的基準は示されていない。(甲26,30ないし32,40,41,162,乙76ないし78,99)ウアマゾナス州の税恩典連邦の税恩典とは別に,アマゾナス州政府は,マナウスフリーゾーンへの産業の誘致と雇用の創出を図るため,1989年(平成元年)州法により,ICMSに関する税恩典を整備している。1989年州法による税恩典利益は,アマゾナス州の開発に対して基本的な重要性を有する企業に付与されるものであるところ,1996年(平成8年)アマゾナス州法第2390号(ハナン法)により,アマゾナス州の開発に対して基本的な重要性を有する企業であると州政府に認められ,ICMS税減免に係る認可を取得するためには,雇用を創出し人件費の割合が製品の最終原価の少なくとも10%に相当することを要するものとされ,その人件費の割合は,1996年(平成8年)アマゾナス州法第2430号により,10%から1.5%に改正された。マナウスフリーゾーンで工場を建設するためにはSUFRAMAから工業プロジェクトに係る認可を取得する必要があり,この認可を取得するためには上記工業プロジェクトがPPB基準を満たす必要があることは,上記イのとおりであるから,進出企業は,上記工業プロジェクトについてPPB基準を満たし,SUFURAMAから認可を取得し ない限り,工場を建設し稼働させることができず,労働者を雇用することもできないため,雇用を創出し人件費の割合が製品の最終原価の少なくとも1.5%に相当するという要件を満たすことができないこととなる。このように,アマゾナス州の税恩典を享受しようとする場合,PPB基準を満たし,SUFRAMAから工業プロジェクトに係る認可を取得しなければ,ICMS税減免に係る認可も取得する ができないこととなる。このように,アマゾナス州の税恩典を享受しようとする場合,PPB基準を満たし,SUFRAMAから工業プロジェクトに係る認可を取得しなければ,ICMS税減免に係る認可も取得することができないという関係がある。 (甲33,34,乙77,78)エマナウス税恩典の内容マナウス税恩典による減免の対象税目等は,輸入税,工業製品税,法人所得税(以上,連邦税),ICMS(州税),社会統合基金及び社会保険融資負担金(連邦の負担金)であるところ,これらのうち進出企業の営業利益に大きな影響を及ぼすのは,輸入税とICMSである。 輸入税は,ブラジルに輸入される商品や生産物に課される連邦税であり,我が国の関税に相当し,輸入品の通関申告時に発生する。その課税標準は,輸入品価格に運賃と保険料を加えた外貨額を国内通貨に換算した金額(購入金額)であり,NCM(南米共同市場(メルコスール)の域内共通商品分類番号)に基づいて商品分類が行われ,税率が設定されている。マナウス税恩典による輸入税の軽減は,次のとおりである。すなわち,マナウスフリーゾーンでの生産に用いる部品は輸入税の納付猶予を受けて輸入することができ,それを用いて製造した製品をマナウスフリーゾーン外に移出(販売)するときに輸入税を納付するところ,その際には輸入税の税額の88%が軽減される。ブラジルの企業会計上,輸入税は売上原価を構成し,輸入税の軽減は,政府助成金と同様に売上原価の低減項目として費用を減少させ,売上総利益ひいては営業利益を増加させる。輸入税の軽減を受ける場合,その税額は製品のマナウスフリーゾーン外への移出まで確定しないため,P1社等は,軽減後の輸入税(本来の税額の12%に相当する額) をその納付時に販売費として会計処理していた。 る場合,その税額は製品のマナウスフリーゾーン外への移出まで確定しないため,P1社等は,軽減後の輸入税(本来の税額の12%に相当する額) をその納付時に販売費として会計処理していた。 ICMSは,商品の移出や輸入等に課される州税であり,我が国の消費税(地方消費税)に相当する。ICMSについては,我が国の消費税と同様に,多段階課税・累積排除型の制度が採用されているため,販売業者の売上げに係る税額から仕入額に含まれる税額を控除したものが納付すべき税額となる。その税率は,州により異なり,対象商品によっても異なる。 アマゾナス州の税恩典によるICMS税減免は,次のとおりである。すなわち,ハナン法により,マナウスフリーゾーンでの生産に用いる部品,原材料の域外の供給者からの移入(購入)については,ICMSが免除されるところ,そのことと関わりなく,それらを用いて製造した製品をマナウスフリーゾーン外に移出(販売)するときには,それらの購入代金に通常課されるICMSが含まれているものとみなしてICMSみなし仕入税額控除を受けることができる。また,アマゾナス州政府と合意した数量を超えて製造及び販売をした製品に係る取引についてはICMS税額免除を受けることができ,その対象外の取引についてもICMS税軽減を受けることができる。ブラジルの企業会計上,ICMSみなし仕入税額控除は,政府助成金と同様に売上原価の低減項目として費用を減少させ,売上総利益ひいては営業利益を増加させる。ICMS税額免除及びICMS税軽減は,総売上げの控除項目であるICMS費用額の低減項目として純売上げを増加させ,売上総利益ひいては営業利益を増加させる。ICMSに関する税恩典利益を享受するためには,州政府に対し,ICMS税軽減額の6%に相当する中小企業奨励金(FMPE 額の低減項目として純売上げを増加させ,売上総利益ひいては営業利益を増加させる。ICMSに関する税恩典利益を享受するためには,州政府に対し,ICMS税軽減額の6%に相当する中小企業奨励金(FMPE),ICMSみなし仕入税額控除額の1%及び輸入品のFOB価格の2%に相当する観光・地方開発事業基金(FTI),ICMSみなし仕入税額控除額の10%に相当するアマゾナス州立大学奨励金(UEA)を負担しなければならないところ,P1社等は,これらの拠出金について総売上げの控除項目の中で費用処理をしていた。 (甲37,45ないし47,162,乙77,99)(2) ブラジルの自動二輪車市場と原告及びP1社ア原告がマナウスフリーゾーンで現地生産を開始した経緯原告は,1968年(昭和43年)にブラジルで完成自動二輪車の輸入が解禁されたのを受けて,1971年(昭和46年)に現在のP3社を設立し,ブラジル向けの完成自動二輪車の輸出を開始した。原告は,ブラジル政府が外貨不足を理由として完成自動二輪車の輸入を再度禁止することを懸念し,ブラジルで自動二輪車の現地生産を行うことにし,1975年(昭和50年)にP1社を設立した。原告は,東南アジア向けに開発されていたP13をブラジルで製造し販売することを決定し,P1社は,1976年(昭和51年)にマナウスフリーゾーンでP13等の自動二輪車の製造を開始した。原告は,当初,サンパウロ周辺で自動二輪車の現地生産を行うことを検討し,用地も取得したが,同地域では既に自動車産業が集積していたため,ブラジル政府から現調率,雇用,投資額等について厳しい条件を課せられ,サンパウロ周辺で自動二輪車の現地生産を行うことを断念した。原告は,マナウスで原告の製品の輸入販売業を営んでいた会社から,マナウスフ ジル政府から現調率,雇用,投資額等について厳しい条件を課せられ,サンパウロ周辺で自動二輪車の現地生産を行うことを断念した。原告は,マナウスで原告の製品の輸入販売業を営んでいた会社から,マナウスフリーゾーンで自動二輪車の現地生産を行うことを勧められ,マナウス税恩典利益を享受することにより費用を低減することができること,現調率等の条件がより緩やかであることなどから,マナウスフリーゾーンで自動二輪車の現地生産を行うことにした。なお,原告の競争事業者であるP14は,1974年(昭和49年)にサンパウロ州で自動二輪車の製造を開始したが,1985年(昭和60年)以降,製造機能を順次マナウスフリーゾーンに移転した。(甲26,29,乙28,34,88)イ P1社によるマナウス税恩典認可の取得P1社は,1975年(昭和50年)に,SUFRAMAから,マナウ スフリーゾーンで「P15」ブランドの自動二輪車を製造するための工業を導入することを目的とするプロジェクトに係る認可を取得し,同プロジェクトの完遂義務を課せられた。P1社は,1990年(平成2年)に,アマゾナス州政府から,「125CCオートバイ」等の製造についてICMS税減免に係る認可を取得した。P5社及びP6社も,それぞれマナウス税恩典について認可を受けている。(甲38,39,42,43,44)ウ P1社設立後の事業の状況とブラジル経済の混乱による業績の悪化P1社が現地生産を開始した1976年(昭和51年)当時,ブラジルの自動二輪車市場の販売台数は数千台にすぎず,P1社の販売台数も2200台にすぎなかった。ブラジルでは,早くから欧米系の四輪車メーカーが進出し,四輪車の販売を行っており,P1社が現地生産を開始した当時,高所得者には四輪車が普及して にすぎず,P1社の販売台数も2200台にすぎなかった。ブラジルでは,早くから欧米系の四輪車メーカーが進出し,四輪車の販売を行っており,P1社が現地生産を開始した当時,高所得者には四輪車が普及していた。ブラジルの自動二輪車市場では,我が国や欧米諸国のような大型機種,高性能機種に対する需要がほとんどなく,四輪車を購入することができない低所得者向けの実用車が中心であり,自動二輪車の性能(先進性や数値性能)ではなく,悪路での耐久性,修理の容易さを含む経済性が重視されていたところ,P13に搭載されていたエンジンは,その開発当時既に旧式化していたOHV(オーバーヘッドバルブ)型エンジンではあったものの,より新しいエンジン型式であるOHC(オーバーヘッドカムシャフト)型エンジンに比べて機構が単純であるため,耐久性やメンテナンス性に優れており,P13は,ブラジルの自動二輪車市場において求められる基本性能を優に満たすものであった。P1社等は,原告から供与された技術情報,ノウハウ等を用いて,P13等の自動二輪車に改良を加え,その量産体制を確立するとともに,生産体質を改善し,その販売台数を順調に伸ばし,1981年(昭和56年)には販売台数が10万台を超え,1983年(昭和58年)には販売台数が約17万台,販売シェアが約80%に達した。しかし,ブラジル経済は,19 85年(昭和60年)以降,ハイパーインフレーションの発生とブラジル政府によるその収束策の失敗のために混乱状態に陥り,ブラジルの自動二輪車市場は低迷し,P1社の販売台数も大幅に減少した。P1社は,1980年代後半,原告の指示により,インフレ分をディーラー向けの販売価格に上乗せする価格政策を採用しており,低所得者を主たる購買層とするP13の小売価格は低所得者が容易に購入することができない ,1980年代後半,原告の指示により,インフレ分をディーラー向けの販売価格に上乗せする価格政策を採用しており,低所得者を主たる購買層とするP13の小売価格は低所得者が容易に購入することができないものとなっていた。P1社は,1989年(昭和61年)には,P13にマイナーチェンジを加えたP16を発売したが,販売台数は増加しなかった。P1社等の業績は,原告がブラジルでの自動二輪車の製造及び販売事業から撤退することを検討するほどに悪化し,原告は,現在のP3社が果たしていたディーラーへの卸売機能をP1社に移管し,P1社が直接ディーラーに卸売をするようにすることで販売機能に係るコストの圧縮を図ったが,効果はなかった。(甲26,27,29,206,209,乙27,28,34,88ないし90,125,138,139)エ P17元工場長らによるP18工場の再建P17元工場長は,昭和35年に原告に入社した後,主として施設部門の仕事に携わり,1980年(昭和55年)から1年半,技術者としてP1社に出向した。P17元工場長は,その後,原告の自動二輪車生産部門課長,P19本社生産企画部主任技師等を務め,P20長を経て(この間,製造機能の海外移転のために稼働率が低下していた同製作所の再建を経験した。),1992年(平成4年)にP1社の副社長兼工場長としてブラジルに赴任し,2001年(平成13年)まで勤務した。P17元工場長の赴任の目的は,業績の悪化していたP1社等のP18工場を建て直し,P1社等の経営的自立を果たすというものであった。その当時,ブラジルのハイパーインフレーションの下で,マナウスフリーゾーンの製造業全体が深刻な打撃を受けていたところ,P17前工場長は,原告からP1社に 出向した他の現地駐在員と共に,従業員の削減, ブラジルのハイパーインフレーションの下で,マナウスフリーゾーンの製造業全体が深刻な打撃を受けていたところ,P17前工場長は,原告からP1社に 出向した他の現地駐在員と共に,従業員の削減,工場の操業停止,コスト及び在庫の管理,価格政策の変更,従業員の意識改革,コンソルシオ販売の積極的活用等の工場再建策を実行した。(甲206,209,229)オブラジル経済の安定とP1社の販売台数の増加ブラジル経済は,1994年(平成6年)のレアルプランの導入を契機にハイパーインフレーションが収束したことにより安定した。P1社等は,ブラジル市場における自動二輪車に対する需要に見合うP13等の低所得者向けの実用モデルに集中し,同年,P21を上市した。同機種は,前機種であるP16の外観を変更しただけのものであり,その基本技術は,1976年(昭和51年)の自動二輪車の生産開始当時のものと大きく変わるものではないが,P1社等は,製造コストの低減によって得た余力により,1993年(平成5年)の価格改定でディーラー向け販売価格を大幅に引き下げ,低所得者であってもコンソルシオ販売を利用することにより無理なく購入することができる程度の小売価格を設定し,その後の物価の上昇を反映させることなく基本的に据え置いたため,P1社がP13を販売することにより長年にわたって培ってきたP15ブランドに対する市場の信頼も相俟って,P1社の販売台数は急速に増加し,1997年(平成9年)には販売シェアが90%を超えた。P1社の販売台数中に占めるP10社のコンソルシオ販売の割合は,1997年(平成9年)の13.9%から,1998年(平成10年)に20.8%,1999年(平成11年)に28.4%,2000年(平成12年)に30.1%,2001年(平成13年)に 販売の割合は,1997年(平成9年)の13.9%から,1998年(平成10年)に20.8%,1999年(平成11年)に28.4%,2000年(平成12年)に30.1%,2001年(平成13年)に30.7%,2002年(平成14年)に32.4%,2003年(平成15年)に34.4%と上昇した。なお,P1社は,自動二輪車の大部分を国内のディーラーに販売しており,本件各事業年度の輸出割合は約4%から約10%であった。(甲8,26ないし28,206,209ないし211,乙19,28,34,88ないし90,125,138, 139)カ P10社によるコンソルシオ販売ブラジルでは,総人口に占める低所得者の割合が高いところ,ハイパーインフレーションとそれに対応するための金融引締策などの不安定な経済状況の下では,低所得者は,自動二輪車のような高額商品を購入するに当たり金融機関から借入れを受けることが困難であった。コンソルシオ販売は,このような事情を背景として金融機関から融資を受けることができない低所得者向けに発達した特有の販売形態であり,ある商品の購入希望者が講(コンソルシオ)を構成し,毎月,掛金を出し合い,購入可能な数の商品を購入し,抽選で当たった参加者から順次商品の引渡しを受ける仕組みである。コンソルシオ販売は,所得水準の高いブラジル南東部,南部よりも,所得水準の低いブラジル北部,北東部で重要性が高い。P10社は,P3社の子会社であり,コンソルシオの組成並びにその管理及び運営を業としている。P1社は,その販促資料中に同じ企業グループに属するP10社についての説明を加えたり,共同マーケティングを行う,情報管理システムへのP10社の組込みを行うなどの協力を行い,販売拡張を図っており,P1社等の出身者がP10社の取締 企業グループに属するP10社についての説明を加えたり,共同マーケティングを行う,情報管理システムへのP10社の組込みを行うなどの協力を行い,販売拡張を図っており,P1社等の出身者がP10社の取締役となるなど人的関係も深かった。P1社のディーラーは,P10社から,コンソルシオ販売を委託され,コンソルシオ販売員をその販売に従事させており,P10社は,コンソルシオ販売員の教育訓練等のほかに,販売・マーケティング資料を配布するなどすることにより,コンソルシオ販売員を援助し,また,ディーラーコミッションを支払うことにより,P1社のディーラーを支援している。P1社のディーラーは1997年(平成9年)の378店から2002年(平成14年)には563店となっており,P1社の販売網は,多数のディーラー及び各ディーラーが雇用し又は委託契約を締結しているコンソルシオ販売員によるコンソルシオ販売網によりブラジルの大部分をカバーしてい る。(甲26,123,124)キ部品の内製化P1社がマナウスフリーゾーンで現地生産を開始した当時,現地の部品メーカーで原告の品質基準を満たすことができる技術を有するものはほとんど存在せず,マナウスフリーゾーンへの日系の自動二輪車の部品メーカーの進出も進まなかった。そこで,P1社は,現調率規制をクリアーするため,原告から自動二輪車の製造設備を購入し,また,原告に技術者の派遣を要請し,原告又は原告の委託を受けた部品メーカーから派遣された技術者による技術支援を受けて,部品の内製化及び現調化を推進し,その後,P1社の販売台数が増加し,日系の自動二輪車の部品メーカーがマナウスフリーゾーンに進出するようになると,P1社等がそれを支援し,内製部品が現調部品に切り替えられることもあった。本件各事業年度には, P1社の販売台数が増加し,日系の自動二輪車の部品メーカーがマナウスフリーゾーンに進出するようになると,P1社等がそれを支援し,内製部品が現調部品に切り替えられることもあった。本件各事業年度には,P1社の主要機種であるP13の現調率は約90%に達しており,P1社等全体でみても,P1社が製造に使用する部品の約80%が現調化されており,そのうちの30%が内製部品,50%が現調部品であり,残りの20%が原告から購入する組立部品であった。P1社は,販売量が少ない大型機種及び製造に高度な技術を要する高性能機種については,自ら製造することなく,原告から完成自動二輪車を購入し,販売している。(甲26,27,29,乙28,34,88)ク P7社による研究開発(ア) 原告は,その研究開発部門を分離して設立したP7社に委託して研究開発を行っているところ,P7社は,将来の製品の技術の基盤となる新技術の開発のための基礎研究を行うとともに,商品開発の具現化に向けた「○」(技術要素の基本的な耐久性,信頼性,性能等を,長期的に研究評価し,創造的で革新的な技術として完成させることを目的として行われる研究)及び「○」(社会のニーズや顧客の期待に応える商品づ くりをすることを目的として行われる開発行為)と呼ばれる研究開発を展開している。(乙18)(イ) P7社の国内事業所の一つであるP8は,原告が製造する自動二輪車の研究開発を行っており,一つ一つの部品から完成車までの全てに関与している。P8は,原則として図面を作成し,最終的に,全ての図面,仕様書を確認し,誰が作っても必ず同一の機能,性能,耐久性を持った製品(完成車)を作ることができるようにしている。原告は,毎期発生するP8に対する委託研究費を,一定の基準で世界各地域に配賦して 面,仕様書を確認し,誰が作っても必ず同一の機能,性能,耐久性を持った製品(完成車)を作ることができるようにしている。原告は,毎期発生するP8に対する委託研究費を,一定の基準で世界各地域に配賦しているところ,P1社の製品については,後記ケのP11の研究開発が行われるまで,新たな技術の開発を必要とするエンジンの変更は行われたことがないが,外観の変更等を中心とするマイナーチェンジの際などに,それによって発生する不具合のチェックや,製品の強度の確認等が実施されていた。また,ブラジルでは,DIN規格(ドイツ工業規格)が用いられているため,我が国のJIS規格による図面を使用することができないことから,P1社等は,P8から提供された図面をポルトガル語に翻訳し,日本の材料を現地調達する材料に置き換え,素材図,小組図,メーカー図を反映し,仕様変更したブラジル向け図面(原告及びP1社等の中では「BRAZIL」の「R」をとって「R図」と呼ばれている。)を作成することにより,内製化や現調化を可能にしてきたところ,P8は,R図についても市場に出して問題がないか否かの最終確認を行っていた。(甲8,乙133)(ウ) P7社のブラジルにおける海外駐在事務所であるP9は,本件製品に対する市場の評価やニーズを把握するため,市場調査やその結果の分析を行い,それによって得られた本件製品の価格や仕様に関する顧客のニーズや製品の開発のタイミング等に関するデータから,商品開発の基本コンセプトをまとめ,P8に提案している。P1社等は,新機種導入 時に量産化のために行う準備を「量産化イベント」と呼んでおり,この準備は,第1段階(PP1)段取確認,第2段階(PP2)量産確認,第3段階(PP3)最終品質確認から成るものであるところ,P9は,この量産化イベントも 行う準備を「量産化イベント」と呼んでおり,この準備は,第1段階(PP1)段取確認,第2段階(PP2)量産確認,第3段階(PP3)最終品質確認から成るものであるところ,P9は,この量産化イベントも行っているが,P9の主要な業務は市場調査であり,P9のローカルスタッフがグループインタビューなどにより掘り下げた顧客の意見が上記のとおり本件製品の企画開発に生かされる。(乙35,133)(エ) P8は,P9から調査結果の報告及び商品開発の提案を受け,P9と意見交換をしながら,P9のスケッチ及びフレーム構造の変更提案に基づく検討を行い,設計図を作成し,クレイモデル及びテスト車の製作を行っている。P1社等は,製造の観点からP8と合同で検討を行い,P9は,先行モデルを作成する。P8は,先行モデルの図面を作成してP1社等に提供し,テスト車を製作してP9と共同でテストを行っている。(乙34)ケブラジルの自動二輪車市場の近時の動向ブラジル政府は,1990年(平成2年)に,国内産業の保護育成のための輸入制限から貿易の自由化に産業政策を転換し,1994年(平成6年)に,マナウスフリーゾーンの現調規制を改正し,マナウス税恩典利益を享受するためにはPPB基準を満たした上で生産プロジェクトの申請をすることが必要となった。PPB基準による現調規制はこれを満たすことが容易であるため,2000年(平成12年)以降,P22などの中国系の自動二輪車メーカーが,マナウスフリーゾーンに進出し,組立部品の輸入及びノックダウン生産を行い,低い販売価格を設定することにより,一時的に販売台数を伸ばしたが,その後,その販売台数は低迷している。他方で,P14が,2000年(平成12年)に,基本性能でP21よりも優れたP23の販売を開始し,販売シェアを高 定することにより,一時的に販売台数を伸ばしたが,その後,その販売台数は低迷している。他方で,P14が,2000年(平成12年)に,基本性能でP21よりも優れたP23の販売を開始し,販売シェアを高め,P1社の販売シェアが低下したことや,排気ガス規制が強化されたことを受けて,原告及びP1 社等は,P13のフルモデルチェンジを行う必要があると判断し,原告が進展国向けの次世代実用モデルエンジンとして開発した150ccOHCエンジンを搭載するP11を2004年(平成16年)に上市した。(甲26,128,165ないし170,乙28,34,101)(3) ブラジルにおけるP1社製品の販売シェア等P1社の1976年(昭和51年)から2003年(平成15年)までの間のブラジルにおける自動二輪車(本件製品)の生産台数及び販売シェアは,次のとおりである(各行の末尾の括弧内の数値は年間インフレ率である。)。 (乙26,27) 76 年 2,200 台(19.9%)現地生産開始,P13発売 77 年 26,791 台(75.1%) (41%) 78 年 29,022 台(76.5%) (40%) 79 年 47,100 台(71.0%) (67%) 80 年 70,523 台(61.3%) (85%) 81 年 103,403 台(74.4%)P10社設立(P3社) (91%) 82 年 149,049 台(70.3%) (95%) 83 年 169,691 台(79.2%) (164%) 1%) 82年149,049台(70.3%)(95%) 83年169,691台(79.2%)(164%) 84年116,848台(82.4%)(179%) 85年104,939台(85.4%)(228%) 86年103,614台(69.5%)P5社設立(68%) 87年118,239台(71.1%)(367%) 88年123,912台(74.9%)(892%) 89年126,658台(75.4%)P16発売(1637%) 90年107,070台(75.9%)輸入自由化(1639%) 91年92,204台(79.1%)(459%) 92年67,632台(77.7%)P6社設立(1129%) 93年64,313台(76.8%)現調率規制がPPB基準に変更(2491%) 94年111,105台(84.0%)レアルプラン実施(866%)P21発売 95年180,734台(86.0%)(23.2%) 96年256,255台(88.5%)(9.1%) 97年381,182台(90.7%)(4.7%) 98年 6 年 256,255 台(88.5%) (9.1%) 97 年 381,182 台(90.7%) (4.7%) 98 年 435,659 台(91.3%) (2.5%) 99 年 436,467 台(92.2%) (8.4%) 00 年 562,528 台(88.6%) (5.3%) 01 年 658,094 台(88.1%) (9.4%) 02 年 742,306 台(86.2%) (14.7%) 03 年 817,925 台(86.0%)(4) 原告とP1社との技術支援に関する合意の成立等ア原告とP1社との技術支援に関する合意の成立原告は,1988年(昭和63年)6月,P1社との間で,次のとおりの内容の製造ライセンス及び技術支援に関する合意をした。(乙22)(ア) 原告は,自動二輪車及びその部品の製造及び販売を業とし,これらの製品に関する工業所有権,製造及び組立てに係る情報とノウハウ,品質基準,マーケティングの手法を有している。P1社は,ブラジルにおいて本件製品の製造,組立て,マーケティング及び販売を行おうとするものである。この目的を達成するため,原告とP1社は,製造ライセンス及び技術支援に関する合意をする(前文)。 (イ) 原告は,P1社に対し,P13等の本件製品の製造,組立て及び販売,その部品の製造,その製造設備の製造又は設置,本件製品及びその部品のアフターサービスの提供のため,原告の有する情報(① 本件製品又はその部品の製造,② ,P13等の本件製品の製造,組立て及び販売,その部品の製造,その製造設備の製造又は設置,本件製品及びその部品のアフターサービスの提供のため,原告の有する情報(① 本件製品又はその部品の製造,② 本件製品又はその部品の製造に使用される P1社の工場の建設及び運営,③ 本件製品又はその部品の製造,組立て,試験,検査,保守,修理又はアフターサービスに必要な製造設備の設置及び運転に関する設計,図面,基準,仕様その他全てのデータ,情報及び知識をいう。1条5号)及び工業所有権(本件製品,その部品又はその製造設備の生産又は販売に関する特許,商標,意匠,著作権その他法令に定める工業財産権をいう。同条7号)をブラジルにおいて使用することを許諾する(2条1項)。 (ウ) 原告は,P1社に対し,① 技術情報の提供と開示,それに関する助言の提供をすること,② 原告の技術者又は原告が指定した他社の技術者をP1社の工場等に派遣し,P1社の従業員に技術指導を行うこと,③ 原告の工場又は原告が指定した他社の工場にP1社の従業員を受け入れ,その技術研修を行うことにより,技術支援を行う(5条)。 (エ) P1社は,原告に対し,本合意による情報及び工業所有権の使用許諾の対価として,ブラジル連邦共和国法に基づき原告へのロイヤルティの海外送金が許可された日以降の本合意期間中,ロイヤルティを支払う(12条)。 イブラジルにおけるロイヤルティの支払規制の改正ブラジルでは,1962年(昭和37年)法律第4131号の規定により,国外関連者に対するロイヤルティの支払が制限されているが,1991年(平成3年)法律第8383号の規定により,ブラジル工業所有権院(以下「INPI」という。)の承認を受けた契約に基づくものである場合には国外関 対するロイヤルティの支払が制限されているが,1991年(平成3年)法律第8383号の規定により,ブラジル工業所有権院(以下「INPI」という。)の承認を受けた契約に基づくものである場合には国外関連者に対するロイヤルティの支払が例外的に認められることとなった。原告は,P1社等を通じてブラジルの弁護士に相談した結果,国外関連者に対するロイヤルティの支払に係る契約についてINPIの承認を受けるためには当該技術,商標等が1992年(平成4年)1月以降にブラジルに導入されたものであることを必要とする上,ブラジル特許・ 商標局は当該技術が最新のものであることを求めていることを知り,P1社等からロイヤルティを収受することについてINPIの承認を受ける見込みはないと判断し,INPIに対する承認申請を断念するとともに,上記製造ライセンス及び技術支援に関する合意の更新を拒絶した。そのため,その合意は1994年(平成6年)5月31日をもって終了したが,P1社等は,その後も,従前と変わることなく,原告から購入した完成自動二輪車の販売,P13等の自動二輪車の製造及び販売,部品の製造,製造設備の設置等を行っており,原告は,そのことに異議を述べず,技術者の派遣や現地駐在員の出向により技術支援を継続していた。(乙23ないし25,28)ウ原告とP1社との技術者派遣に関する合意の成立原告は,1998年(平成10年)10月,P1社との間で,P1社の支援のため,原告の生産技術及びノウハウの移転並びに製造設備の据付や事業計画の遂行のための打合せ,アドバイス等と実作業の外注委託を目的として,次のとおりの内容の技術者派遣及びコンサルタント派遣に関する合意をした。(乙29,30,32)(ア) 技術者派遣に関する合意は,原告が自社の技術 ドバイス等と実作業の外注委託を目的として,次のとおりの内容の技術者派遣及びコンサルタント派遣に関する合意をした。(乙29,30,32)(ア) 技術者派遣に関する合意は,原告が自社の技術者を継続的にP1社に派遣する基本的条件について取り決める。原告がP1社の要請に応ずる場合,原告は,P1社が製造する自動二輪車及びその製造に使用する製造設備に関して,① 自動二輪車の製造を開始するに当たって必要となる技術支援,② 製造設備の運転に必要となる技術支援,③ 上記①及び②に関連するP1社の人員の研修を自社の技術者に実施させる目的で,自社の技術者をP1社に派遣するものとする(1条)。 (イ) コンサルタント派遣に関する合意は,原告が自社のコンサルタントを継続的にP1社に派遣する基本的条件について取り決める。原告がP1社の要請に応ずる場合,原告は,P1社が製造する自動二輪車及びそ の製造に使用する製造設備に関して,① 自動二輪車,その発売時期等に関するコンサルティング,② 自動二輪車の製造及び製造設備の据付の開始に係る調査,③ 製造設備の据付及び管理,④ P1社の事業に関する市場調査を自社のコンサルタントに実施させる目的で,自社のコンサルタントをP1社に派遣するものとする(1条)。 (ウ) P1社が原告からの技術者又はコンサルタントの派遣を希望する場合には,原告にその旨を書面で要請するものとする。原告がP1社の要請に応ずる旨の決定をした場合には,P1社にその旨を書面で通知するものとし,原告は,本合意の条件に従ってP1社に自社の技術者又はコンサルタントを派遣するものとする(3条)。 (エ) 本合意に基づく原告の技術者又はコンサルタントの派遣の対価として,P1社は,原告に対し,派遣された技術者又はコンサル に自社の技術者又はコンサルタントを派遣するものとする(3条)。 (エ) 本合意に基づく原告の技術者又はコンサルタントの派遣の対価として,P1社は,原告に対し,派遣された技術者又はコンサルタント一人について日当8万5000円を支払うものとする(5条)。 エ原告のP1社等に対する技術者の派遣原告は,本件各事業年度において,上記ウの技術者派遣及びコンサルタント派遣に関する合意に基づいて,P1社等の要請により,後記(5)のとおり,P20及びP24の各技術者等をP1社等に派遣し,P1社等から,技術者又はコンサルタント一人について日当8万5000円の対価の支払を受けた。(乙31)オ原告とP1社との技術協力に関する合意の成立とロイヤルティの支払(ア) P1社の販売シェアは,1999年(平成11年)には92.2%に達したが,P14がP13の対抗機種であるP23の販売を開始した2000年(平成12年)以降は徐々に低下した。原告は,P23に対抗する機種の製造及び販売のため,P1社等に高度な技術を供与し,P1社等は,2004年(平成16年)に,原告が進展国向けの次世代実用モデルエンジンとして開発した150ccOHCエンジンを搭載するP 11を上市したところ,この技術供与に伴い,原告は,2003年(平成15年)12月,P1社との間で,技術協力に関する合意をした。(乙33)(イ) P1社は,2004年(平成16年)1月,INPIに対し,P11に関連する技術の供与に係るロイヤルティの支払の承認申請をし,2005年(平成17年)1月,INPIから承認を受け,原告に対しロイヤルティを支払っている。なお,原告とP1社は,P11の後続機種についても,上記オの合意とほぼ同様の技術協力に関する合意を をし,2005年(平成17年)1月,INPIから承認を受け,原告に対しロイヤルティを支払っている。なお,原告とP1社は,P11の後続機種についても,上記オの合意とほぼ同様の技術協力に関する合意をし,P1社は,INPIから承認を受け,原告に対しロイヤルティを支払っている。(乙34)カ原告と部品メーカーとの技術援助契約の締結原告は,原告の自動二輪車の部品を製造するP25及びP26との間で,P25については昭和62年4月20日付けで,P26については平成11年5月18日付けで,P1社の自動二輪車の製造に関する技術援助契約を締結し,本件各事業年度において,同契約に基づいて,P1社等の要請により,後記(5)のとおり,提携部品メーカーの技術者等をP1社等に派遣した。(乙36)キ原告と設備メーカーとの技術援助契約の締結P1社等は,製造設備を購入する場合,設備メーカーから直接供給を受けるのではなく,原告を介して供給を受けることが多く,そのときは,原告と設備メーカーとの間の売買契約と,原告とP1社等との間の売買契約とが,それぞれ締結されるところ,設備メーカーは,それに伴い原告との間で締結する技術援助契約に基づいて,その技術者をP1社等に派遣し,製造設備の据付,検査及び調整,試運転等を行わせ,原告は,設備メーカーに対し,その対価を支払った上,P1社等から,技術者一人一日当たり8万5000円の対価の支払を受けた。原告が本件各事業年度において設 備メーカーとの間の技術援助契約に基づいてしたP1社等の要請による設備メーカーの技術者の派遣は,後記(5)のとおりである。(甲129,191,乙132)(5) 原告の技術支援原告は,海外の生産拠点の自立化を進めるとともに,自らは核となる製品 る設備メーカーの技術者の派遣は,後記(5)のとおりである。(甲129,191,乙132)(5) 原告の技術支援原告は,海外の生産拠点の自立化を進めるとともに,自らは核となる製品技術,技術情報の開発や海外の生産拠点の支援業務を行うというグローバル戦略を採用しており,P1社等については,原告のP20が新機種導入の支援を,P24が生産ラインの生産体質の向上等の支援を,それぞれ担当するものとしている。原告が本件各事業年度においてP1社等の要請に応じP1社等に対して行った技術者派遣等の支援業務は,次のとおりである。(乙34,132,134)ア新機種導入支援原告は,P1社等から,経験者及びノウハウ不足を補うための技術者派遣の要請を受け,P20海外生産支援室による人選を経て,原告の技術者を派遣した。 イ生産ラインの現調化推進支援原告は,P1社等から,技術者派遣の要請を受け,P20は,P1社等が現地調達しようと提案する備品が,図面の規格を満たしているか,材料の成分が適合しているか,耐久性を有するかという観点から適合性を検討し,又はテスト方法を提案し,適合証明書を発行した。 ウ生産体質改革支援原告は,P1社等から,技術者派遣の要請を受け,P24は,P1社等に対して生産工程ごとにその担当者を派遣し,計画台数生産のための問題点を洗い出し,P1社等に改善策を提案した。 P1社等は,P24の提案する改善策を実行するため,原告に,設備メーカーの推薦と,適切な製造設備の選択及びその発注を依頼した。原告は, 設備メーカーとの間で,製造設備の売買契約を締結した。P1社等は,原告との間で,原告の購入原価に一定の額を上乗せした価格で製造設備を購入する売買契約を締 択及びその発注を依頼した。原告は, 設備メーカーとの間で,製造設備の売買契約を締結した。P1社等は,原告との間で,原告の購入原価に一定の額を上乗せした価格で製造設備を購入する売買契約を締結した。 P1社等は,新規導入設備が分解された状態で工場に到着した後,原告に対し,その据付,試運転に必要な作業を行う設備メーカーの技術者の派遣を要請した。原告は,設備メーカーに対し,新たに導入した製造設備の据付,試運転の支援のためにその技術者をP1社等に派遣することを委託する技術者派遣委託契約を締結した。P1社等は,原告に対し,製造設備の据付,試運転等のためにその技術者をP1社等に派遣することを委託した。派遣された設備メーカーの技術者は,新規導入設備の据付,試運転支援をした。 エ原告の提携部品メーカーに対する技術支援の委託原告は,P1社等の要請を受けて,提携部品メーカーに対し,P1社等への技術支援を委託し,提携部品メーカーは,P1社等に対し,その技術者を派遣して技術指導を行った。原告は,提携部品メーカーに対し,技術援助の対価としてロイヤルティの支払をした。 (6) 本件国外関連取引原告は,本件各事業年度において,次のアないしエのとおり,P1社に対し完成自動二輪車,自動二輪車の組立部品及び補修部品並びに金型を販売し,P1社及びP5社に対し自動二輪車の製造設備等を販売し,P1社の事業活動を支援するためP1社等の工場等に技術者又はコンサルタントを派遣するなどの役務の提供をし,それにより対価の支払を受けた。また,これらの取引には,次のオのとおり,無形資産の使用に係る取引が随伴していた。(乙19,21)ア完成自動二輪車の販売取引原告は,本件各事業年度において,P1社に対し,完成 た,これらの取引には,次のオのとおり,無形資産の使用に係る取引が随伴していた。(乙19,21)ア完成自動二輪車の販売取引原告は,本件各事業年度において,P1社に対し,完成自動二輪車を販 売し,その対価を各事業年度の収益の額に計上した。この取引は,技術的,販売数量的にみてP1社で製造する合理性がない大型機種や高性能機種を輸出したものであり,その取引数量は年間数百台から千数百台にすぎなかった。その販売価格は原価基準法により原告の製造原価に一定の係数を乗じた金額として定められており,平成14年3月期の取引額は約2億円であった。 イ自動二輪車の部品の販売取引原告は,本件各事業年度において,P1社に対し,自動二輪車のエンジン及び車体の製造に必要なドリブンギア,クランクシャフト,シリンダーヘッド等の組立部品並びに自動二輪車の修理のための補修部品を販売し,その対価を各事業年度の収益の額に計上した。この取引は,P1社が自動二輪車の製造に用いる組立部品及び自動二輪車の販売に附随して販売する補修部品を輸出したものであり,本件国外関連取引の主要部分を構成する。 その販売価格は原価基準法により原告の売上原価に係数1.534を乗じた金額として定められており,平成14年3月期の取引額は約194億円であった。部品の大部分は,原告が内製したものではなく,部品メーカーから供給を受けたものであり,P13の場合,エンジンの外製部品が180種類,内製部品が零種類,車体の外製部品が58種類,内製部品が零種類であった。 ウ自動二輪車の製造設備等の販売取引原告は,本件各事業年度において,P1社及びP5社に対し,自動二輪車の製造又はその部品若しくは金型の製造のために必要な鋳造設備,成型プレス設備等の製 ウ自動二輪車の製造設備等の販売取引原告は,本件各事業年度において,P1社及びP5社に対し,自動二輪車の製造又はその部品若しくは金型の製造のために必要な鋳造設備,成型プレス設備等の製造設備及び金型を販売し,その対価を各事業年度の収益の額に計上した。この取引は,P1社又はP5社が用いる製造設備を原告が設備メーカーから購入してP1社又はP5社に転売したものであり,P1社又はP5社の要請を受けて臨時的に行われたものである。その販売価 格は原価基準法により原告の売上原価に一定の係数を乗じた金額として定められており,平成14年3月期の取引額は約19億円であった。 エ技術支援の役務提供取引原告は,本件各事業年度において,P1社等の要請を受けて,P1社等の支援のため,技術者又はコンサルタントをP1社等の工場等に派遣し,その対価の支払を受けた。この取引は,原告がP1社等の新機種導入時の量産体制の確立,生産体質の改革,部品の内製化,製造設備の設置及び運転開始等の支援のため原告の技術者を派遣し又は部品メーカー若しくは設備メーカーに委託してその技術者を派遣し技術指導等の役務提供をしたものであり,P1社等の要請を受けて臨時的に行われたものである。原告は,P1社等から技術者派遣料を収受しており,平成14年3月期の取引額は約3億円であった。 オ無形資産の使用に係る取引原告は,本件各事業年度において,P1社等に対し,自動二輪車の製造及び販売に関する技術情報,部品及び製造設備の供給メーカー網を含む量産体制の確立及び生産体質の改革に関するノウハウを供与し,原告の商標,ブランド等の市場に関する無形資産の使用を許諾していた。本件各事業年度において,原告とP1社との間の製造ライセンス及び技術支援に関する合 確立及び生産体質の改革に関するノウハウを供与し,原告の商標,ブランド等の市場に関する無形資産の使用を許諾していた。本件各事業年度において,原告とP1社との間の製造ライセンス及び技術支援に関する合意は既に終了していたが,これは,同合意に定められていたP1社の原告に対するロイヤルティの支払が社会観念上実現することができないことから,同合意を終了させたものであり,P1社等は,同合意の終了後も,従前と変わることなく,原告から購入した完成自動二輪車の販売,P13等の自動二輪車の製造及び販売,部品の製造,製造設備の設置等を行っており,原告は,そのことに異議を述べず,技術者の派遣や現地駐在員の出向により技術支援を継続していた。 (7) 本件調査担当者による調査 本件調査担当者は,本件国外関連取引について,独立企業間価格を算定するため,次のとおり,調査を実施した。(乙122)ア情報収集先法人の抽出本件調査担当者は,本件各更正等に当たり,本件国外関連取引に係る比較対象取引の有無を検討するため,ブラジル市場の状況や原告及びP1社等が行う事業の実態について広く情報を収集することとし,有名国内自動二輪車メーカー3社の中からインターネット等により収集した企業情報等によりブラジルで自動二輪車の製造販売を行っている可能性のある2社を情報収集の対象とした(なお,残りの1社については,ブラジルでは自動二輪車の販売のみを行い,製造を行っていなかったため,情報収集の対象とはしなかった。)。本件調査担当者は,これ以外にも,ブラジルにおける自動二輪車の製造及び販売事業に関する情報の収集が見込まれる企業として,自動二輪車の部品メーカーが考えられたことから,株式会社P27発行の「○」や同社発行の「○」等により,「二輪車部品の製造 おける自動二輪車の製造及び販売事業に関する情報の収集が見込まれる企業として,自動二輪車の部品メーカーが考えられたことから,株式会社P27発行の「○」や同社発行の「○」等により,「二輪車部品の製造」の分野から5社を,「ベアリング又は自動車部品の製造」の分野から自動二輪車の製造に関与している2社を抽出し,さらに,原告の取引先のうちブラジルへの進出が確認された1社を抽出した。そして,本件調査担当者は,遠隔地に所在する3社を情報収集対象外とし,合計7社に対する情報収集を措置法66条の4第9項の規定に基づいて実施した。 イ情報収集本件調査担当者は,上記7社に対し,事前に照会書面を送付した上,実際に臨場して情報収集を行った。本件調査担当者が収集した情報の内容は,情報収集先各社がブラジルの法人と行っている取引の内容,ブラジル又は南米への進出(事業展開)の経緯,国外関連者及び非関連者ごとの取引金額(組立部品等の売上金額及びロイヤルティ収入金額),モデル別生産台数,国内販売台数,ブラジル又は南米の自動二輪車市場の特色(マーケッ ト動向,顧客層,価格帯,人気クラス,人気ブランド等)と関連事業戦略,ブラジルでの自動二輪車の製造販売市場における原告の同業他社(ライバル企業)の状況,ブラジル及び南米の自動二輪車市場の情報全般である。 本件調査担当者は,情報収集の過程で,ブラジルでの自動二輪車市場に参入している企業に係る情報源として,ブラジルの自動二輪車業界団体であるP28のウェブサイトを把握しており,これも活用して,ブラジルで自動二輪車の製造及び販売事業を行う企業の製品別販売数量及び製造数量に関する情報(乙49)も入手した。本件調査担当者は,P1社等の事業と関連して原告との間で無形資産の使用に係る取引を行う自動二輪車の部品メ 車の製造及び販売事業を行う企業の製品別販売数量及び製造数量に関する情報(乙49)も入手した。本件調査担当者は,P1社等の事業と関連して原告との間で無形資産の使用に係る取引を行う自動二輪車の部品メーカー1社に対する反面調査を実施した。本件調査担当者は,原告から独立企業間価格の算定に必要な資料等の提示又は提出が遅滞なくされなかったことから,措置法66条の4第9項の規定に基づいて,同業他社からの情報収集を実施した。具体的には,本件調査担当者は,原告に対し,平成15年7月31日付けでブラジルにおけるロイヤルティの支払規制に係る説明資料の提出を求め,また,同年8月25日付けでブラジル自動二輪車の製造及び販売事業に係る説明資料の提出を求めたが,INPIに対する申請内容,交渉等の経緯に関する資料,P1社等が第三者に支払っているロイヤルティ等の状況(相手先,契約内容,契約期間,支払金額)等に関する資料について遅滞なく提示又は提出がなく,ブラジル側の情報等が得られなかったため,上記規定に基づいて,同年10月16日,原告に対し,ブラジルに関する情報がすみやかに出てこないため,ロイヤルティ料率等の現地規制の概要,同業他社及び部品メーカー等のマーケット情報について,同業他社からの情報収集をすることを説明した上,同業他社からの情報収集を実施した。 ウ調査の結果本件調査担当者は,P28のウェブサイトから取得したブラジルで自動 二輪車の製造及び販売を行う企業の製品別販売数量及び製造数量に関する情報や,上記書面照会及び原告の同業他社への臨場調査等で得られた情報を基に,棚卸資産が同種のものであること,比較対象取引の市場がブラジルであること等の条件により,基本三法の適用可能性の有無,すなわち,本件国外関連取引に係る比較対象取引の有無に 調査等で得られた情報を基に,棚卸資産が同種のものであること,比較対象取引の市場がブラジルであること等の条件により,基本三法の適用可能性の有無,すなわち,本件国外関連取引に係る比較対象取引の有無について検討を行ったところ,ブラジルで自動二輪車の製造及び販売を行っている企業の製品別販売数量及び製造数量においては,P1社が圧倒的な販売シェアを有し,第2位のP14を大きく引き離しており,本件各事業年度において,ブラジルの自動二輪車市場はP1社及びP14による寡占状態にあった。P1社及びP14以外のブラジルの自動二輪車メーカーの取引は,いずれもその無形資産の供与,品質及び販売数量からみて本件国外関連取引との比較可能性を有するものということができず,唯一本件国外関連取引との比較可能性を有すると思われたP14の取引は,関連者間取引のみが行われていることが確認され,比較対象取引とすることができなかった。本件調査担当者は,本件国外関連取引を個別の取引に分けて比較可能なブラジル向け非関連者間取引の有無を検討することとし,そのうちの棚卸資産の販売取引との比較可能性を確保するためには比較対象取引に係る棚卸資産にも同程度の無形資産の価値が含まれている必要があると考え,本件国外関連取引と比較可能な棚卸資産の販売取引として,本件製品と比較可能な製品を構成する自動二輪車の部品に係るブラジル向け非関連者間取引,及び,本件製品と比較可能な製品を製造することができる製造設備に係るブラジル向け非関連者間取引の有無を検討したが,その存在を把握することはできなかった。 情報収集先の自動二輪車の部品メーカー5社は自動二輪車の製造及び販売を行うものではないところ,本件調査担当者は,これらについても,部品の販売取引,製造設備の販売取引,役務提供取引及び無形資産の使用に係る取引の 自動二輪車の部品メーカー5社は自動二輪車の製造及び販売を行うものではないところ,本件調査担当者は,これらについても,部品の販売取引,製造設備の販売取引,役務提供取引及び無形資産の使用に係る取引の内容について聴取し,比較可能なブラジル向け非関連者間取引の 有無を検討したが,その存在を把握することはできなかった。本件調査担当者は,本件国外関連取引のうちの役務提供取引がP1社等に原告の有する技術情報,ノウハウを活用させるために行われたものであることを踏まえて,それと比較可能なブラジル向け非関連者間取引の有無を検討したが,その存在を把握することはできず,本件国外関連取引のうちの無形資産の使用に係る取引についても,比較可能なブラジル向け非関連者間取引の存在を把握することができなかった。本件調査担当者は,このような外部比較対象取引に係る検討のほか,内部比較対象取引に係る検討をもしたところ,ブラジルで自動二輪車の製造及び販売を行う企業の中には,P1社等以外に,原告から部品等の供給,役務の提供,無形資産の供与を受けているものはなく,比較可能な内部取引の存在を把握することはできなかった。 なお,本件調査担当者は,原告とP12社との取引については,コロンビアとブラジルとでは市場が異なり,比較可能性がないことから,比較対象取引として採用しなかった。このように,本件各事業年度のブラジルの自動二輪車市場において,P1社及びP14によって市場が寡占され,他社の参入が困難な状況になっていたため,本件調査担当者は,無形資産の供与,品質及び販売数量の面で比較可能な水準にある自動二輪車に関する取引を見出すことができず,さらに,部品,製造設備の販売取引及び役務提供取引に無形資産の使用に係る取引が伴っているため,本件調査担当者は,完成自動二輪車の販売取引,自動二 準にある自動二輪車に関する取引を見出すことができず,さらに,部品,製造設備の販売取引及び役務提供取引に無形資産の使用に係る取引が伴っているため,本件調査担当者は,完成自動二輪車の販売取引,自動二輪車の部品の販売取引,役務提供取引及び無形資産の使用に係る取引のそれぞれについて,比較可能な非関連者間取引を見出すことができなかった。 4 独立企業間価格の算定方法の選択の適否(争点2-1)及び算定単位の設定の適否(争点2-2)について(1) 基本三法の適用可能性の有無についてア基本三法に準ずる方法その他政令で定める方法は,基本三法を用いるこ とができない場合に限り,用いることができるものである(基本三法優先の原則。措置法66条の4第2項1号括弧書き及び2号括弧書き)ところ,基本三法を用いることができないことについては,被告(国)が主張立証責任を負うが,被告(国)において,処分行政庁が合理的な調査を尽くしたにもかかわらず基本三法を用いることができなかった旨を主張立証した場合には,基本三法を用いることができないことが事実上推定され,原告(納税者)において,この推定を覆すに足りる主張立証をする必要が生ずることは,上記2(2)エ(ア)のとおりである。 イまず,基本三法の適用可能性の有無の判断に当たり本件国外関連取引をどのような単位でみるかについて検討するに,基本三法の適用可能性の有無の判断は,基本三法を適用して独立企業間価格の算定をすることができるか否かについての判断であるから,基本三法の適用可能性の有無の判断に当たり国外関連取引をどのような単位でみるかは,独立企業間価格の算定に当たり当該国外関連取引をどのような単位でみるかという問題にほかならない。そして,独立企業間価格の算定に当たり国外関連取引をどのよう り国外関連取引をどのような単位でみるかは,独立企業間価格の算定に当たり当該国外関連取引をどのような単位でみるかという問題にほかならない。そして,独立企業間価格の算定に当たり国外関連取引をどのような単位でみるかという点について明示的に規定した法令の定めはないところ,措置法通達66の4(3)-1は,独立企業間価格の算定は,原則として,個別の取引ごとに行うのであるが,例えば,次に掲げる場合には,これらの取引を一の取引として独立企業間価格を算定することができるとした上,国外関連取引について,同一の製品グループに属する取引,同一の事業セグメントに属する取引等を考慮して価格設定が行われており,独立企業間価格についてもこれらの単位で算定することが合理的であると認められる場合,及び,国外関連取引について,生産用部品の販売取引と当該生産用部品に係る製造ノウハウの使用許諾取引等が一体として行われており,独立企業間価格についても一体として算定することが合理的であると認められる場合を掲げている。独立企業間価格とは,当該国外関連取引が 特殊の関係にない者(非関連者)の間で同様の状況の下で行われた場合に成立するであろう合意に係る価格をいうものであるところ,棚卸資産の販売価格の設定は,個別の取引ごとに行われるのが通常であるから,独立企業間価格の算定は,原則として,個別の取引ごとに行うべきものである。 しかし,措置法通達66の4(3)-1が掲げるように,複数の取引のそれぞれに係る棚卸資産の販売価格の設定が,各取引ごとに独立して行われるのではなく,それぞれの取引の関連性を考慮して行われるような場合や,複数の取引が,その目的,取引内容,取引数量等からみて,一体として行われているような場合には,複数の取引を一の取引として独立企業間価格の算定を行うことが合理的で 連性を考慮して行われるような場合や,複数の取引が,その目的,取引内容,取引数量等からみて,一体として行われているような場合には,複数の取引を一の取引として独立企業間価格の算定を行うことが合理的である。したがって,このような場合には,独立企業間価格の算定は複数の取引を一の取引として行うのが相当であり,このことは取引の当事者が複数の国外関連者に跨がっている場合においても異なるものではないというべきである。 これを本件についてみると,上記3(6)の認定事実によれば,本件国外関連取引のうち,① 完成自動二輪車の販売取引は,P1社の自動二輪車の販売機能を高めるため,自動二輪車の部品の販売取引に附随して行われた取引,② 自動二輪車の部品の販売取引のうち,組立部品の販売取引はP1社に自動二輪車の製造機能を果たさせるため,補修部品の販売取引はP1社に自動二輪車の販売機能を果たさせるため,それぞれ行われた取引であると解され,また,③ 自動二輪車の製造設備等の販売取引は,P1社及びP5社に自動二輪車又はその部品の製造機能を果たさせるため,自動二輪車の部品の販売取引に附随して行われた取引,④ 技術支援の役務提供取引は,P1社等に自動二輪車の製造機能等を果たさせ又はその機能を高めるため,自動二輪車の部品の販売取引に附随して行われた取引,⑤ 無形資産の使用に係る取引は,P1社等に自動二輪車の製造機能等を果たさせ,その機能を高め又はP1社に自動二輪車の販売機能を果たさせるため, 自動二輪車の部品の販売取引に附随して行われた取引であると解されるのであって,さらに,⑥ P5社及びP6社は,いずれも,P1社の子会社であり,かつ,P1社の自動二輪車の製造機能を補完する機能を果たしているものであることをも併せ考えると,本件国外関連取引は,原告とP1 あって,さらに,⑥ P5社及びP6社は,いずれも,P1社の子会社であり,かつ,P1社の自動二輪車の製造機能を補完する機能を果たしているものであることをも併せ考えると,本件国外関連取引は,原告とP1社との間の自動二輪車の組立部品の販売取引を主要部分として,付随的に,原告とP1社等との間の完成自動二輪車の販売取引,自動二輪車の補修部品の販売取引,自動二輪車の製造設備等の販売取引,技術支援の役務提供取引及び無形資産の使用に係る取引を組み合わせて構成され,P5社及びP6社との取引を含めて一体として行われたものであるということができる。 そうすると,本件国外関連取引については,P5社及びP6社との取引を含めて一の取引とみて独立企業間価格を算定するのが相当である。 ウそこで,本件国外関連取引を一の取引とみて基本三法を適用して独立企業間価格を算定することができるか否かについて検討するに,上記3(7)の認定事実によれば,本件調査担当者は,ウェブサイト及び書籍の閲覧による公開情報の調査,原告に対する資料の提示又は提出の求め及び措置法66条の4第9項の規定に基づく原告の同業他社からの情報収集を行い,合理的な調査を尽くしたが,それにもかかわらず,本件国外関連取引を一の取引とみても,個別の取引とみても,これと比較可能な比較対象取引を把握することができず,本件国外関連取引に係る独立企業間価格の算定について基本三法を用いることができなかったと認めることができる。そうであるとすると,本件国外関連取引に係る独立企業間価格の算定については,基本三法を用いることができないことが事実上推定され,かつ,この推定を覆すに足りる事情は,本件全証拠によってもこれを認めることができない。 したがって,本件国外関連取引に係る独立企業間価格の算定につ いることができないことが事実上推定され,かつ,この推定を覆すに足りる事情は,本件全証拠によってもこれを認めることができない。 したがって,本件国外関連取引に係る独立企業間価格の算定については, 基本三法を用いることができないということができるから,措置法66条の4第2項1号ニ及び2号ロに定める基本三法に準ずる方法その他政令で定める方法を用いることができるというべきである。 (2) 残余利益分割法の選定等について次に,本件国外関連取引に係る独立企業間価格の算定については,措置法66条の4第2項1号ニ及び2号ロに定める基本三法に準ずる方法その他政令で定める方法のうち,いずれの算定方法を用いるのが相当であるかについて検討するに,残余利益分割法は,法人又は国外関連者が重要な無形資産を有する場合に適用されるものであることは,上記2(3)イ(ア)のとおりであるところ,① P1社各事業年度中,P1社がブラジルの自動二輪車市場において約90%にも及ぶ極めて高い販売シェアを有していたことは,上記3(3)のとおりであり,その間,P1社等は多額の営業利益を得ていたことに加えて,② 原告は,本件各事業年度において,P1社等に対し,自動二輪車の製造及び販売に関する技術情報,部品及び製造設備の供給メーカー網を含む量産体制の確立及び生産体質の改革に関するノウハウを供与し,原告の商標,ブランド等の市場に関する無形資産の使用を許諾していたこと(上記3(6)オ),及び,③ P1社等も,原告から供与された技術情報,ノウハウ等を用いて,P13等の自動二輪車に改良を加え,その量産体制を確立するとともに,生産体質を改善する過程で,自動二輪車の製造に関する独自の技術,ノウハウを形成し,維持,発展させ,原告の商標,ブランド等の市場に関する無形 の自動二輪車に改良を加え,その量産体制を確立するとともに,生産体質を改善する過程で,自動二輪車の製造に関する独自の技術,ノウハウを形成し,維持,発展させ,原告の商標,ブランド等の市場に関する無形資産を使用して,事業活動を行っていたのであって(上記3(2)ウ及びオ),P1社の販売網は,数百店を超える数多くのディーラー及び各ディーラーが雇用し又は委託契約を締結しているコンソルシオ販売員によるコンソルシオ販売網によりブラジルの大部分をカバーしていたこと(上記3(2)カ)をも併せ考えると,原告及びP1社等は,本件各事業年度において,いずれも,重要な無形資産を有し,その貢献により重要な無形資産を有しない非関 連者間取引において通常得られる利益(基本的利益)を超える利益(超過利益)を得ていたと認めることができる。 したがって,本件国外関連取引に係る独立企業間価格の算定については,基本三法に準ずる方法その他政令で定める方法のうち,残余利益分割法を用いて行うのが最も適切であるというべきである。そして,上記(1)イによれば,残余利益分割法を適用するに当たっては,P5社及びP6社との取引を含めて本件国外関連取引を一の取引とみて独立企業間価格を算定するのが相当である。 5 基本的利益の算定の適否(争点2-3)について(1) 基本的利益の算定方法について基本的利益,すなわち,重要な無形資産を有しない非関連者間取引において通常得られる利益に相当する金額は,例えば,当該国外関連取引(検証対象取引)の事業と同種の事業を営み,市場,事業規模等が類似する法人(重要な無形資産を有する法人を除く。)の事業用資産又は売上高に対する営業利益の割合等で示される利益指標に基づいて算定されるものであり(事務運営指針3-3),そのようにして基 業規模等が類似する法人(重要な無形資産を有する法人を除く。)の事業用資産又は売上高に対する営業利益の割合等で示される利益指標に基づいて算定されるものであり(事務運営指針3-3),そのようにして基本的利益の算定をする場合において,ある非関連者たる法人を比較対象法人として選定するためには,当該法人が当該国外関連取引の事業と同種の事業を営み,市場,事業規模等が類似するものであり(比較可能性),かつ,重要な無形資産を有する法人ではないことが,その要件となることは,上記2(3)イ(イ)のとおりである。 (2) P1社等の比較対象法人の選定について処分行政庁は,① P1社等の事業と同種の事業を営み,市場,事業規模等が類似する法人で重要な無形資産を有しないものとして,市販のデータベースであるP29社の「○」,P30社の「○」及びP31株式会社の「○」に掲載されているブラジル企業のうち米国標準産業分類コードが3713,3714及び3751である二輪及び四輪車並びにその関係製品を製造して いるものの中から,公開情報等に基づいて,次のアないしカの条件のいずれかに該当する企業を除外し,財務情報を確認した上,8社(P32,P33,P34,P35,P36,P37,P38,P39)を選定し(乙85,127),② それらのP1社各事業年度に最も近接する事業年度ごとの総費用営業利益率(金利負担の差異調整後のもの)の中位値をブラジル側基本的利益率として(乙84,85),P1社等のP1社各事業年度の総費用(売上原価に販売費及び一般管理費,営業外費用として会計処理されている売掛金及び買掛金に係る為替差損益を加えたもの)の額からP1社等が支出した重要な無形資産の価値の指標となる費用の額を控除した金額に乗ずることにより,別表2の4「原告の基本的利益 て会計処理されている売掛金及び買掛金に係る為替差損益を加えたもの)の額からP1社等が支出した重要な無形資産の価値の指標となる費用の額を控除した金額に乗ずることにより,別表2の4「原告の基本的利益及びP1社の基本的利益の算定」のP1社欄記載の金額のブラジル側基本的利益の算定をしているところ,原告は,処分行政庁がしたブラジル側基本的利益の算定のうちP1社等の比較対象法人の選定の違法を主張する。そこで,P1社等の比較対象法人の選定の適否について,次の(3)で検討することとする。 ア二輪車又は四輪車に関連しない事業が50%以上である企業であること。 イ年売上高が2500万ドル以下の企業であること。 ウ 3年以上連続したデータが入手できない企業であること。 エアフターマーケット向け製品の売上高が50%以上である企業であること。 オ関連会社との取引が売上げ又は総費用の50%以上である企業であること。 カ営業利益率がマイナス,かつ,債務超過という状況等から継続性に問題がある企業であること。 (3) マナウス税恩典利益の享受の有無と比較可能性についてア原告は,処分行政庁がP1社等の比較対象法人を選定するために用いる除外基準として設定した基準の中に「マナウスフリーゾーン外で事業活動 を行いマナウス税恩典利益を享受していない企業であること」という基準がなく,P1社等の比較対象法人として,マナウスフリーゾーン外で事業活動を行いマナウス税恩典利益を享受していないブラジル側比較対象企業が選定されていることについて,マナウス税恩典利益を享受していないブラジル側比較対象企業は検証対象法人であるP1社等との比較可能性を有するものではないのであって,その点に関し適切な差異調整を行うことなく されていることについて,マナウス税恩典利益を享受していないブラジル側比較対象企業は検証対象法人であるP1社等との比較可能性を有するものではないのであって,その点に関し適切な差異調整を行うことなくしてされた本件各更正等は違法であると主張する。 イそこで,検討するに,残余利益分割法の適用上,比較対象法人の事業用資産又は売上高に対する営業利益の割合等で示される利益指標に基づいて基本的利益の算定をする場合においては,比較対象法人が事業活動を行う市場と検証対象法人が事業活動を行う市場とが類似するものであること(市場の類似性)を必要とするところ,一般に,政府の規制や介入は,それが行われている市場における棚卸資産の価格や法人の利益に影響を及ぼし得る性質を有し,それが行われている市場の条件を構成するということができるから,検証対象法人が市場において事業活動を行うに当たりその利益に政府の規制や介入の影響を受けている場合には,そのような影響を検証対象法人と同様に受けている法人を比較対象法人として選定するのでなければ,比較対象法人が事業活動を行う市場と検証対象法人が事業活動を行う市場とが類似するものであるということはできず,当該比較対象法人は検証対象法人との比較可能性を有するものではないこととなると解される(移転価格ガイドラインのパラグラフ1.55は,「価格統制(場合によっては価格の切下げ),金利統制,役務の提供や経営管理料に対する支払統制,使用料の支払に対する統制,特定の部門に対する助成金,為替管理,反ダンピング課税又は為替相場政策などの政府介入を考慮して独立企業間価格の調整を行うべきだと納税者が主張する環境がある。原則として,これらの政府の介入は,特定の国の市場の条件として扱われるべきであり, 通常ならば,その市場における当該納税 慮して独立企業間価格の調整を行うべきだと納税者が主張する環境がある。原則として,これらの政府の介入は,特定の国の市場の条件として扱われるべきであり, 通常ならば,その市場における当該納税者の移転価格を評価する場合に考慮に入れるべきである。そこで問題となるのは,これらの条件に照らした上で,関連当事者間で行われた取引が,独立企業間で行われる取引と矛盾しないかという点である」としており,改訂移転価格ガイドラインのパラグラフ1.73にも,これと同旨の記載がある。また,措置法通達66の4(2)-3は,「措置法66条の4の規定の適用上,比較対象取引に該当するか否かについては,例えば,次に掲げる諸要素の類似性に基づき判断することに留意する」とした上,その(11)で「政府の規制」を掲げており,平成23年10月27日課法2-13による改正後の措置法通達66の4(3)-3の注2にも,これと同旨の定めがある。さらに,参考事例集の事例20は,国外関連者(S社)が事業活動を行うX国の市場において,政府の価格規制により製品Aの市場価格が国際的な水準からみて相当程度高く維持されており,業界平均の利益水準が世界平均よりも高くなっているという事例を掲げて,市場の特殊性による価格水準は,同じ市場で事業を行う者が同様に影響を受けるものと考えられ,残余利益分割法の適用上,市場の特殊性(政府の価格規制等)による価格への影響については,同様の影響を受けていると考えられるX国の法人を選定してS社の基本的利益を計算する過程で反映されることになるとしている。)。なお,同一の国内であっても,政府の規制や介入がある特定の地域における棚卸資産の価格やある特定の地域で事業活動を行う法人の利益にのみ影響を及ぼす場合には,当該特定の地域とその他の地域とでは市場の条件が異なることとな であっても,政府の規制や介入がある特定の地域における棚卸資産の価格やある特定の地域で事業活動を行う法人の利益にのみ影響を及ぼす場合には,当該特定の地域とその他の地域とでは市場の条件が異なることとなるのであって,当該特定の地域とその他の地域はそれぞれ別個の市場であると解するのが相当である。 ウこれをマナウス税恩典利益の享受についてみると,マナウス税恩典利益は,それを享受する法人の輸入税及びICMSの負担を軽減し,その売上原価を低減させることなどにより,政府助成金や補助金と同様に当該法人 の利益を増加させる性質を有している。すなわち,上記3(1)エのとおり,ブラジルの企業会計上,輸入税は売上原価を構成するところ,輸入税の軽減は,政府助成金や補助金と同様に売上原価の低減項目として費用を減少させ,売上総利益ひいては営業利益を増加させ,また,ICMSみなし仕入税額控除は,政府助成金や補助金と同様に売上原価の低減項目として費用を減少させ,売上総利益ひいては営業利益を増加させるし,ICMS税額免除及びICMS税軽減は,総売上げの控除項目であるICMS費用額の低減項目として純売上げを増加させ,売上総利益ひいては営業利益を増加させる。そうすると,マナウス税恩典利益は,それを享受する法人の営業利益に影響を及ぼす性質を有し,政府助成金や補助金といった政府の介入の実質を有するものとして,マナウスフリーゾーンという市場の条件を構成するということができるのであって,検証対象法人がマナウスフリーゾーンで事業活動を行いマナウス税恩典利益を享受している場合には,マナウスフリーゾーンで事業活動を行い検証対象法人と同様にマナウス税恩典利益を享受している法人を比較対象法人として選定するのでなければ,比較対象法人が事業活動を行う市場と検証対象法人が事業活 には,マナウスフリーゾーンで事業活動を行い検証対象法人と同様にマナウス税恩典利益を享受している法人を比較対象法人として選定するのでなければ,比較対象法人が事業活動を行う市場と検証対象法人が事業活動を行う市場とが類似するものであるということはできず,当該比較対象法人は検証対象法人との比較可能性を有するものではないこととなるというべきである。 本件の場合,P1社等は,マナウスフリーゾーンで事業活動を行い,マナウス税恩典利益を享受しており,P1社等がP1社各事業年度中に享受したマナウス税恩典利益は,それを享受するためにアマゾナス州政府に対しFMPE等の拠出金を負担しなければならなかったことを考慮しても,P1社各事業年度のP1社の営業利益の合計額である13億7608万9000レアルの約59%に相当する8億0692万7000レアル(輸入税の軽減額2億9293万6000レアル,ICMSみなし仕入税額控除額1億8958万3000レアル,ICMS税額免除額1億3193万8 000レアル,ICMS税軽減額2億3059万9000レアルの合計額から,FMPE843万6000レアル,FTI2492万7000レアル,UEA476万6000レアルを控除した残額)に上っているのであって(甲45,52,133),マナウス税恩典利益の享受がP1社等の営業利益に大きな影響を及ぼしたことは客観的に明らかである。しかるに,処分行政庁がP1社等の比較対象法人を選定するために用いる除外基準として設定した基準の中に「マナウスフリーゾーン外で事業活動を行いマナウス税恩典利益を享受していない企業であること」という基準はなく,P1社等の比較対象法人として選定されたブラジル側比較対象企業は,いずれも,マナウスフリーゾーン外のサンパウロ州ほかのブラジル南部の工業地 恩典利益を享受していない企業であること」という基準はなく,P1社等の比較対象法人として選定されたブラジル側比較対象企業は,いずれも,マナウスフリーゾーン外のサンパウロ州ほかのブラジル南部の工業地帯で事業活動を行い,マナウス税恩典利益を享受していない(この事実は弁論の全趣旨により認められる。)。したがって,ブラジル側比較対象企業が事業活動を行う市場とP1社等が事業活動を行う市場とが類似するものであるということはできず,ブラジル側比較対象企業は,P1社等との比較可能性を有するものではないというべきである。 エ以上と異なる被告の主張は,次のとおり,いずれも採用することができない。 (ア) 被告は,重要な無形資産を有しない法人がマナウス税恩典利益を享受したとしても,その効果は限定的なものにとどまるから,マナウス税恩典利益の享受の有無は比較対象法人の比較可能性に重大な影響を及ぼす有意な差異ではないと主張する。 しかし,マナウス税恩典による輸入税の軽減及びICMSみなし仕入税額控除の額は当該法人がマナウスフリーゾーンでの生産に用いるために購入した部品,原材料の購入金額を,ICMS税額免除及びICMS税軽減の額は当該法人がマナウスフリーゾーンで生産し販売した製品の売上金額を,それぞれ基礎として一定の税率を乗じて計算されるもので あるから(上記3(1)エ),マナウス税恩典利益を享受する法人は,重要な無形資産を有しているか否かにかかわらず,その事業規模に応じた税恩典を受けられるものであり,また,営業利益率という総費用や売上高に対する営業利益の割合という割合的な数値を問題とする限りにおいては,マナウス税恩典利益を享受する法人は,事業規模の大小にかかわらず,そのような税恩典利益を享受できない場合と比較して,より高 売上高に対する営業利益の割合という割合的な数値を問題とする限りにおいては,マナウス税恩典利益を享受する法人は,事業規模の大小にかかわらず,そのような税恩典利益を享受できない場合と比較して,より高い営業利益率を得られることは明らかであって,マナウス税恩典利益の享受の有無は,比較対象法人の比較可能性に重大な影響を及ぼすものであるというべきである。 なお,被告は,一般に,政府から助成金の交付を受けた法人は,供給を増やす行動を取り,その結果,販売価格が下落し,助成金の便益が消費者に移転する現象がみられるとし,マナウス税恩典利益を享受する法人は,必ずしもその全てを収益に計上するものではなく,その一部を価格政策に活用するといった現象が起こり得ると主張するが,マナウス税恩典利益を享受している法人にそのような現象が起こっていることを客観的に裏付ける証拠はなく,被告の主張するところは,マナウス税恩典利益の享受の有無は比較対象法人の比較可能性に重大な影響を及ぼすものであるという上記の判断を左右するものではない。 また,被告は,マナウスフリーゾーンで事業活動を行うことには,消費地及び部品調達基地として重要なブラジル南部との距離が長いことによる輸送費や保険料の増加というマイナスの効果があり,そのマイナスの効果を補って営業利益を得るためには,相当程度の事業規模を要することとなるから,重要な無形資産を有することなく基本的な機能のみを果たす法人は,マナウス税恩典利益を享受しても高い営業利益率を得ることはできないと主張するが,輸送費や保険料といった費用の額は,その性質上,当該法人の事業規模の大きさに従ってその大きさが決定され るものであり,事業規模が小さければ,それに応じてこれらの費用も小さくなると考えられることからすれば, いった費用の額は,その性質上,当該法人の事業規模の大きさに従ってその大きさが決定され るものであり,事業規模が小さければ,それに応じてこれらの費用も小さくなると考えられることからすれば,被告の主張は直ちに採用することはできない。 (イ) 被告は,P1社等の製造工程は,原告及びP1社等の有する重要な無形資産の寄与なくしては構築することができなかったものであり,P1社等がマナウス税恩典の認可要件であるPPB基準を満たす製造工程を備えるに当たり,原告及びP1社等の有する重要な無形資産が寄与したことによれば,P1社等がマナウス税恩典利益の享受によって得た利益は,原告及びP1社等の有する重要な無形資産の貢献によって初めて得られたものであり,原告及びP1社等の有する重要な無形資産の貢献と極めて密接な関係にあるから,マナウス税恩典利益の享受の有無は,基本的利益の算定において市場の条件として考慮されるべきではないと主張する。 そこで,検討するに,マナウスフリーゾーンで工場を建設しマナウス税恩典利益のうち輸入税の軽減を受けようとする者は,マナウス自由貿易地域監督庁(SUFRAMA)から,税恩典を享受しようとする工業プロジェクトに係る認可を取得する必要があり,この認可を取得するためには,進出企業がマナウスフリーゾーンで事業活動を行うに当たり最低限履行すべき基本製造工程を定めるPPB(基本製造工程)基準を達成する必要があること,アマゾナス州政府からICMS税減免に係る認可を取得するためには,雇用を創出し人件費の割合が製品の最終原価の少なくとも1.5%に相当することを要するところ,進出企業は,SUFURAMAから当該工業プロジェクトに係る認可を取得しない限り,工場を建設し稼働させることができず,労働者を雇用することもできないた なくとも1.5%に相当することを要するところ,進出企業は,SUFURAMAから当該工業プロジェクトに係る認可を取得しない限り,工場を建設し稼働させることができず,労働者を雇用することもできないため,上記のICMS税減免に係る認可の要件を満たすことができないこととなることは,上記3(1)イ及びウのとおりである。したがって,進 出企業がマナウス税恩典利益を享受するためには,税恩典を享受しようとする工業プロジェクトについてPBB基準を満たす必要があるということになる。 しかし,PPB基準は,進出企業がマナウスフリーゾーンで事業活動を行うに当たり最低限履行すべき基本製造工程について定めているものであるところ,これを本件で問題になる「オートバイ及びスクーター」に関するPPB基準についてみると,グループA「プレス,鋳造,加工,塗装,プラスチック注入」,グループB「燃料タンクの溶接と腐食防止処理,車体の溶接と腐食防止処理,リアフォークの溶接と腐食防止処理,サイドスタンド,センタースタンド及びステップの溶接と腐食防止処理」,グループC「エンジンの組立て,最終組立て,最終検査,梱包」と定めた上,オートバイ及びスクーターのメーカーは,グループAに定められた工程のうちの少なくとも2項目及びグループBに定められた工程のうちの少なくとも2項目を実行し,グループCに定められた工程を実行しなければならないものとしているにすぎず,各工程の内容や技術水準に関する具体的基準は示されていないのであって(上記3(1)イ),このことによれば,PPB基準は,基本的活動のみを行い重要な無形資産を有しない法人であっても有しているような基本的な技術,ノウハウのみで満たすことができるものであり,重要な無形資産の貢献がなければ満たすことができないものではないと 本的活動のみを行い重要な無形資産を有しない法人であっても有しているような基本的な技術,ノウハウのみで満たすことができるものであり,重要な無形資産の貢献がなければ満たすことができないものではないということができる。 そうすると,P1社等がマナウス税恩典利益の享受によって得た利益は,原告及びP1社等の有する重要な無形資産の貢献によって初めて得られたものであるとか,原告及びP1社等の有する重要な無形資産の貢献と極めて密接な関係にあるということはできない。被告の主張は採用することができない。 (ウ) 被告は,本件製品がブラジルの自動二輪車市場において圧倒的な販 売シェアを獲得し,P1社等が競争上優位な地位を築くことができたのは,原告及びP1社等の有する重要な無形資産の貢献があったからであり,P1社等が事業規模を拡大し,多額の超過利益を得ている主な要因は,原告及びP1社等の有する重要な無形資産の貢献にあるとした上,マナウス税恩典利益は,原告及びP1社等の有する重要な無形資産の寄与と一体的な関係にあるから,残余利益として認識し,原告及びP1社等がそれぞれ有する重要な無形資産の寄与の程度に応じて分割するのが合理的であると主張する。 しかし,残余利益分割法は,法人又は国外関連者が重要な無形資産を有する場合に,分割対象利益のうち重要な無形資産を有しない非関連者間取引において通常得られる利益(基本的利益)に相当する金額を当該法人及び国外関連者それぞれに配分し,当該配分した金額の残額(残余利益)を当該法人又は国外関連者の有する重要な無形資産の価値に応じて合理的に配分する方法により独立企業間価格を算定するものである。 このように,法人又は国外関連者の有する重要な無形資産の寄与によって得られた超過利益が存在する可能性があ る重要な無形資産の価値に応じて合理的に配分する方法により独立企業間価格を算定するものである。 このように,法人又は国外関連者の有する重要な無形資産の寄与によって得られた超過利益が存在する可能性がある場合について,無形資産の寄与によって得られた利益自体を直接算出して配分するのではなく,基本的利益をまず算出して配分し,分割対象利益から基本的利益を控除した残額を法人又は国外関連者の有する重要な無形資産の寄与によって得られた超過利益と認識して,それを重要な無形資産の価値に応じて合理的に配分する算定方法が採用されているのは,技術,ノウハウ,ブランド等の無形資産は,それが法人の利益に寄与したといえる場合であっても,その範囲及び程度がどのようなものであるかを正確に判断することが極めて困難であるためであると解される。そして,このことは,原告又はP1社等の有する無形資産についても当てはまるのであって,P1社等が事業規模を拡大するに当たり,原告及びP1社等の有する無形資 産が寄与したということはできるとしても,そうであるからといって,マナウス税恩典利益を基本的利益の算定において考慮せずに,これを残余利益として認識し,本件国外関連取引に係る独立企業間価格を算定するのは,残余利益分割法の適用を誤るものというべきである。被告の主張は採用することができない。 (エ) 被告のその余の主張についても,これまで説示したところに照らし,いずれも採用することができない。 (4) 小括以上のとおり,ブラジル側比較対象企業は,マナウス税恩典利益を享受していないという点でP1社等との比較可能性を有するものではないから,処分行政庁が,上記の差異につき何らの調整も行わずにブラジル側基本的利益を算定した上,本件独立企業間価格を算定したことには誤り 受していないという点でP1社等との比較可能性を有するものではないから,処分行政庁が,上記の差異につき何らの調整も行わずにブラジル側基本的利益を算定した上,本件独立企業間価格を算定したことには誤りがあるというべきである。そして,上記の差異は,市場の特殊性という営業利益に大きく関わる基本的な差異であるため,そもそも,これにつき適切な差異調整を行うことができるのか否かは不明であり,いずれにしても,本件の証拠関係の下では,原告が本件国外関連取引により支払を受けた対価の額が独立企業間価格に満たないものであることにつき立証があったとは認められないから,本件国外関連取引に措置法66条の4第1項を適用して移転価格税制の課税を行うことはできないというべきである。 6 本件各更正等の適否について(1) 本件各更正について本件国外関連取引に移転価格税制の課税を行わないことを前提として,原告の本件各事業年度の法人税の税額の計算をすると,別紙6(原告の法人税の税額)のとおり,平成10年3月期の納付すべき税額は483億7486万3500円,平成11年3月期の納付すべき税額は469億4874万6800円,平成13年3月期の納付すべき税額はマイナス(還付金の額に相 当する税額)16億1706万4506円,平成14年3月期の納付すべき税額は66億5605万2100円,平成15年3月期の納付すべき税額は88億6419万3100円となる(なお,別紙6の税額計算の前提となる事実は,当事者間に争いのない事実及び弁論の全趣旨により認められる事実である。)。 そうすると,本件各更正のうち上記の各納付すべき税額を超える部分は違法である。 (2) 本件各賦課決定について上記(1)によれば,平成10年3月期及び平成11年3月期 )。 そうすると,本件各更正のうち上記の各納付すべき税額を超える部分は違法である。 (2) 本件各賦課決定について上記(1)によれば,平成10年3月期及び平成11年3月期の法人税については,それぞれ,本件更正1及び2により新たに納付すべき税額はなかったことになるから,本件賦課決定1及び2については,その全てが違法となる。 また,平成13年3月期,平成14年3月期及び平成15年3月期の法人税については,それぞれ,本件更正3及び4並びに本件更正5-1(ただし,いずれも上記(1)のとおり違法とされる部分を除く。)により新たに納付すべきこととなる税額(ただし,国税通則法65条4項の「正当な理由」があると認められる事実に係る分を除く。)に基づき原告が納付すべき過少申告加算税の税額を計算すると,別紙6(原告の法人税の税額)のとおり,平成13年3月期について1419万1000円,平成14年3月期について86万1000円,平成15年3月期について3304万4000円となるから,本件賦課決定3ないし5のうち上記の各納付すべき過少申告加算税の税額を超える部分は違法である。 第4 結論よって,原告の請求はいずれも理由があるから(ただし,本件更正5-1の一部取消しを求める請求については,これと選択的に併合された本件更正5-2の一部取消しを求める請求を全部を認容することから,判決の対象にはならない。),これらを認容することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官増田稔 裁判官内野俊夫及び裁判官日暮直子は異動のため署名押印をすることができない。 裁判長裁判官増田稔 裁判長 裁判官増田稔 裁判官内野俊夫及び裁判官日暮直子は異動のため署名押印をすることができない。 裁判長 裁判官増田稔
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