令和5(わ)148 強盗殺人等

裁判年月日・裁判所
令和6年12月16日 津地方裁判所
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判決文本文18,479 文字)

主文 被告人Aを無期懲役に、被告人Bを懲役20年に、被告人Cを懲役15年に処する。 被告人らに対し、未決勾留日数中各400日を、それぞれその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)第1 被告人Aは、D(当時46歳)を殺害して同人から金品を強奪しようと考え、被告人Bは、Dに暴行を加えて同人から金品を強奪するが、その際もしかしたらAがDを殺害するかもしれないと考え、共謀の上、令和5年5月3日午後9時45分頃から同日午後9時49分頃までの間、三重県鈴鹿市(住所省略)西側階段付近路上において、Aが、殺意をもって、Dに対し、その頭部、頸部等を手斧で切り付けるなどの暴行を加えてその反抗を抑圧し、Bが、D所有又は管理の財布1個等18点在中の鞄1個(時価合計約4万7000円相当)を強奪するとともに、前記暴行により、同日午後11時7分頃、同県四日市市大字日永5450番地132三重県立総合医療センターにおいて、Dを左頸部の血管、神経損傷による失血等により死亡させて殺害した。 第2 被告人Cは、A及びBが前記第1の犯行を行うに際し、A及びBがDに暴行を加えて同人から金品を強奪するが、その際もしかしたらAがDを殺害するかもしれないと考えながら、令和5年5月3日午後9時過ぎ頃、Bを乗せた軽四輪自動車を運転して、三重県鈴鹿市(住所省略)G駐車場に同人を運搬した上、引き続き、同所付近で見張りをし、Aに対し、携帯電話機でアプリケーションソフトのメッセージ機能を利用してDの帰宅を知らせるとともに、同日午後9時45分頃から同日午後9時49分頃までの間、同市(住所省略)H駐車場において、前記第1の犯行を終えてきたA及びBの逃走を容易にすべく、同車両の運転席に乗車して待機するなどし、もってA及びBによる 時45分頃から同日午後9時49分頃までの間、同市(住所省略)H駐車場において、前記第1の犯行を終えてきたA及びBの逃走を容易にすべく、同車両の運転席に乗車して待機するなどし、もってA及びBによる前記第1の犯行を 容易にしてこれを幇助した。 第3 Aは、Dから強奪した同人名義のキャッシング機能付クレジットカードを使用して現金を窃取しようと考え、別表1のとおり、令和5年5月4日午前2時17分頃から同日午前2時19分頃の間、3回にわたり、岐阜県海津市(住所省略)I店共同出張所において、同所に設置された現金自動預払機に、前記クレジットカードを挿入して同機を作動させ、株式会社J銀行金融犯罪対策部長管理の現金合計49万円を引き出してこれを窃取した。 第4 Aは、Dから強奪した同人名義のキャッシング機能付クレジットカードを使用して現金を窃取しようと考え、別表2のとおり、令和5年5月4日午後8時19分頃から同日午後8時22分頃までの間、5回にわたり、愛知県豊田市(住所省略)K店共同出張所において、同所に設置された現金自動預払機に、前記クレジットカードを挿入して同機を作動させ、株式会社J銀行金融犯罪対策部長管理の現金合計90万円を引き出してこれを窃取した。 (事実認定の補足説明)第1 本件の争点 1 関係証拠によれば、令和5年5月3日(以下は令和5年の日付をいう)午後9時45分頃から午後9時49分頃までの間に、D宅アパートの階段付近路上で、A又はBのいずれかが、Dの頭部、頸部等を手斧で切り付けるなどし、左頸部に致命傷を負わせて殺害したこと、Bが、前記暴行で反抗を抑圧されたDから財布等在中の鞄を奪ったこと(以下「本件犯行」という)、Cが本件犯行を容易にする行為をした(判示第2のとおり)ことは明らかである。 2 本件の争点は次のとお Bが、前記暴行で反抗を抑圧されたDから財布等在中の鞄を奪ったこと(以下「本件犯行」という)、Cが本件犯行を容易にする行為をした(判示第2のとおり)ことは明らかである。 2 本件の争点は次のとおりである。 (1) Dの殺害を実行したのはAかBか(争点1)(2) (前記(1)がAであるとして)BはAがDを殺害すると知っていたか(争点2)(3) Bは共同正犯か幇助犯か(争点3) (4) CはA又はBがDを殺害して金品を奪うと知っていたか(争点4)第2 本件犯行に至るまでの被告人らのやり取り・行動、犯行状況等について 1 B供述とA供述(1) B供述(要旨、AがDを殺害して所持金品を奪おうと企て、BとCに協力を求め、同人らを指示どおり行動させ、Aが手斧で切り付けるなどしてDを殺害した旨)ア本件犯行前日までの経緯等(ア) Bは、3月13日(覚醒剤使用・所持の罪で執行猶予付きの有罪判決を受けて釈放された)から、交際相手のC、その父親のAと、A宅で同居していた。 (イ) Aの妻のDは、Aとの関係が悪く、A宅を出て別居していた。Aは、Dの住居を知らなかった。 (ウ) Aは、3月20日頃から、5回くらい、BとCに対し、Dの住居を探してほしいと頼んだ。Bは、これに応じて、A、Cと一緒にDの通う教会や勤務先に行き、Dを探した。 (エ) Bは、4月5日、Dの住居を探すため、CとDの勤務先に行き、Dの車にCのGPS機能付き携帯電話機を取り付けた。Cがその位置情報からDの住居を突き止め、Aに伝えた。 (オ) Aは、その後、BとCに対し、「Dが車を停めている間に車の中から鞄を盗む。Dから鞄を奪い、奪ったキャッシュカードで現金を引き出す」などと言った。 Cは「いいんじゃない」と言い、Bはうなずいた。しかし、Dが車に鞄 後、BとCに対し、「Dが車を停めている間に車の中から鞄を盗む。Dから鞄を奪い、奪ったキャッシュカードで現金を引き出す」などと言った。 Cは「いいんじゃない」と言い、Bはうなずいた。しかし、Dが車に鞄を置き放しにすることはなかった。 (カ) Aは、4月中旬から下旬頃、4回くらい、Bに直接又はCを通じて、Dを殴って鞄を奪うと言った。 (キ) Aは、Dから鞄を奪う方法について、①Dの自宅で待ち伏せする(Aは、「自分がやるから心配しなくていい」、「B、Cは見張りをする」、「金は口座から引き出して盗む」と言った)、②Dの車のタイヤのナットをゆるめて事故に見せかけ る(BがDの車のナットをゆるめ、走行中にタイヤが外れたり事故になったりするようにし、AがDの車の後をつけて鞄を奪う)、③Dの車にわざと車をぶつけて事故に見せかける(AがDの車に別の車をぶつける、BとCが別の車で後をつけて鞄を奪う)などと話した。Cも一緒に聞いた。 (ク) 4月下旬頃(本件犯行の1週間くらい前)、実際に②の計画を実行しようとした。Aの指示で、Cと教会に行き、Dの車の近くまで行ったが、何かあったら嫌だと思い、タイヤのナットをゆるめるなどしなかった。AとCには、「パトカーが通ったのでできなかった」とうそを言った。 (ケ) 4月末頃、本件犯行前に最後に計画の話を聞いた。CがAとスピーカーモードで通話した際、Cと一緒に聞いた。Aは、「Dの車が信号待ちをしている時、AがDの車に乗り込み、Dを乗せたまま人けのない場所に連れて行き、金品を奪う」、「Bはザッツ(Bが使用していた車)、Cはハリアー(Aが使用していた車)でついてきて、Aはハリアー、BとCはザッツで帰る」など言った。実際にどのように金品を奪うのかについては、「自分にまかせろ」などと言った。BとCはうなずいた 車)、Cはハリアー(Aが使用していた車)でついてきて、Aはハリアー、BとCはザッツで帰る」など言った。実際にどのように金品を奪うのかについては、「自分にまかせろ」などと言った。BとCはうなずいた。 イ本件犯行当日の犯行直前までの経緯等(ア) 5月3日(当日)、午後5時頃までA宅で寝ていると、Cに起こされた。Cは、「お父さんが呼んでいる。お父さんを手伝って」と言った。 (イ) BとCは、午後8時頃、Dの通う教会に行ったが、Dを見付けられなかった。 BはAに「彼女は教会に来なかった」とメッセージを送信した。Aは「分からないけどその計画に従って」と返信した。CにAのメッセージを見せると、分かったようにうなずいてLに向かった。 (ウ) CのザッツでLに行くと、Aがハリアーで来ていた。ザッツの窓越しにAと話した。Aは、「D宅で待ち伏せて鞄を奪う」と言い、Cに対し、Dの帰宅を見張ること、現場付近で車を停めて待機し、実行を終えたAとBを逃がすこと、Bに対し、現場付近で見張ること、鞄を持ち去ることを、それぞれ指示した。BとCはう なずいた。Aは、「僕にまかせて。僕が指示したのだけすればいい」と言った。Aはハリアー、BとCはザッツで、Lを出た。 (エ) Aは、DがAのハリアーを知っていたので、ハリアーをM(D宅近くの飲食店)の駐車場に停めた。 (オ) Cは、Dの帰宅を見張るため、ザッツをD宅近くの駐車場に停めた。Bはザッツを降り、見張りや鞄の持ち去りがしやすそうな場所(現場から25mくらい離れた丁字路交差点の電柱付近)で見張りをした。携帯電話機だけを持ち、手袋は着けていなかった。 (カ) 見張りをしていると、Aから手招きされた。近くに行くと、Aは、「しくじるなよ。ちゃんと見張りして。Dが誰かを連れていたら延期する」と言っ 。携帯電話機だけを持ち、手袋は着けていなかった。 (カ) 見張りをしていると、Aから手招きされた。近くに行くと、Aは、「しくじるなよ。ちゃんと見張りして。Dが誰かを連れていたら延期する」と言った。また、当日実行までに2回くらい、「今日実行しないといつになるか分からないので、今日実行しよう」と言った。Aは、両手に黒色手袋を着け、バッグを肩に掛け、手には何も持っていなかった。Bは丁字路交差点の電柱付近の見張り場所に戻った。 ウ犯行状況等(ア) 30分くらいして、Cから、Dの車を発見した旨のメッセージを受信した。 BもDの車を見た。その後をつけ、アパートの階段下付近に隠れた。Dが車から降り、階段を上る音を聞いた。Aがどこにいたかは分からない。 (イ) 何かが地面に落ちる音と、「キャー」という叫び声を聞いた。怖くなり、反射的に近くのフェンスを上って逃げようとしたが、できなかった。路上に出ると、Dは階段下で寝転がり、「やめてください、助けてください」と言っていた。AはDの上でしゃがみ、左手でDの肩辺りを押さえ付け、右手で手斧を持ち、5回くらい、手斧を頭の後ろ付近まで振り上げ、Dの頭や首や肩辺りに振り下ろした。 (ウ) Aは、Bに対し、「早く鞄をとれ」と言った。BはDの右手近くに落ちていた鞄を拾った。Dは最初抵抗していたが、この時は動いていなかった。鞄には血が付いており、Bが触った時、手に血が付いた。 (エ) Aの後を追って、Cがザッツを停めて待機していた場所に行った。Bが助手 席、Aが運転席側後部座席に乗った。ザッツに乗った後、Aに鞄を渡した。Aは、その時手斧を持っていなかった。Aは左手にけがをしており、「斧をバッグにしまうときけがをした」と言った。 (オ) Aに対し、なぜDを殺したのか聞かなかった。怖かったし、放心 、Aに鞄を渡した。Aは、その時手斧を持っていなかった。Aは左手にけがをしており、「斧をバッグにしまうときけがをした」と言った。 (オ) Aに対し、なぜDを殺したのか聞かなかった。怖かったし、放心状態だったからである。 エ犯行後の行動等(ア) Aは、Mの駐車場でザッツを降りた。Aがその後どこに行ったか分からない。 (イ) ザッツの車内で、CにDが死んだと話した。Cから、何が起きたのか聞かれたが、説明できなかった。Cは表情を変えず、特に何も言わなかった。 (ウ) Cとの間で、Dを殺す計画を知っていたかについて、事件後一度も話したことはない。 (エ) 5月7日夜、Aから、「犯行前からDを殺す計画をしていた」、「Dの運転する車に別の車をぶつけて火をつけて金品を奪う、Dを自宅で待ち伏せて襲って殺し金品を奪うなど、Dを殺すためのいろいろな計画があった」と聞いた。この時初めて、Aが本件犯行前からDを殺すつもりでいたことを知った。 (オ) Aは、5月7日、Bを手斧とDの携帯電話機の投棄場所に連れて行き、「手斧をここ(三重県四日市市内の国道23号線沿いの川)に捨てた。鉄なので錆びるし、血や指紋は消える」、「Dの携帯をここ(同市内の競輪場近くの川)に捨てた」と言った。 (2) A供述(要旨、BがDを殺害して所持金品を奪おうと企て、AとCに協力を求め、同人らがBに協力し、Bが手斧で切り付けるなどしてDを殺害した旨)ア本件犯行前日までの経緯等(ア) Bは、AのETCカードを無断使用した。Aは、Bに無断使用分100万円の支払を求めた。3月末頃、「E(Bの知人)に払ってもらう」とプレッシャーをかけたところ、Bは、「Dから金を奪えないか」と言った。Aは、Bの提案に協力する気はなく、「金さえ払ってくれたらどうでもいい」と言った。 「E(Bの知人)に払ってもらう」とプレッシャーをかけたところ、Bは、「Dから金を奪えないか」と言った。Aは、Bの提案に協力する気はなく、「金さえ払ってくれたらどうでもいい」と言った。 (イ) Bは、しばらくして、「Dが車に置き放した鞄を盗ろう」と言い、自分一人ではできないとしてAに協力を求めた。Aは、Cと一緒にブラジルに行くため、Bに協力することにした。 (ウ) A、B、Cは、Dの住居を知らなかったので、教会やDの兄弟の家に行き、Dの車を探した。D宅が分かった後、Aは数回D宅を見に行った。 (エ) Dが車の中に鞄を置き放しにすることはなく、車から鞄を盗む計画は成功しなかった。 (オ) Bは、4月中旬から下旬頃、Aに対し、「もし車内から鞄を盗めなかったら、Dを襲って鞄を奪おう」と言った。Aは、「そのためにはDの意識を失わせなければならない。素手では難しいので、鍋、フライパン、木製ローラー等で頭を殴打しなければならない」と言った。Bは「斧を使う」と言った。 (カ) Aは、4月26日、斧を使えばDを殺してしまう危険が高いと説明してやめさせるため、インターネットで、「頭部外傷死のリスク」「頭に斧」等と検索し、インターネット記事の画面をBに見せて説明した。 イ本件犯行当日の犯行直前までの経緯等(ア) Aは、5月3日(当日)、午後8時から午後9時頃、Dの車があるかを確認するため、一人でDの兄弟宅とD宅に行った(Dが教会に行く日で、財布を持って行くと思ったから。B、Cには告げなかった)。Dの車はなかった。 (イ) その後、Lに行った。Bから電話で「Dが教会に来ていない」と言われた。 Aは、B、Cが教会に行くことを知らなかった。Bは、電話の後、「彼女は教会に来なかった」とメッセージを送信した。Aは、「分からないけどその計画に従って Bから電話で「Dが教会に来ていない」と言われた。 Aは、B、Cが教会に行くことを知らなかった。Bは、電話の後、「彼女は教会に来なかった」とメッセージを送信した。Aは、「分からないけどその計画に従って」と返信した。「計画」とは、Dの車を見付けて車の中から鞄を盗むことを意味する。 (ウ) LでBとCに会い、これから何をするか話し合った。その結果、Bは、Dが車で帰宅して鞄を車の中に置き放すのを確認したらAに連絡し、夜中にAが鞄を奪いに行くことになった。Aは「今日か次の土曜日しか協力できない」と言った。 (エ) AがMの駐車場で待機していると、Bが電話で「土曜日に大きな荷物を運ば なければいけないので、今日Dを襲うことはできないか」と言った。Aは「分かった」と言った。Dを襲うことになったので、サンダルをスニーカーに履き替え、D宅の駐車場に歩いて移動した。 (オ) 現場近くの用水路辺りでBとどのようにDを襲うかを話した。Aの提案で、AがD宅アパートの階段上で待機し、Dが階段を上ってきたら突き落とし、意識を失わせる、Bは、階段下で待機し、Dが意識を失わなければ殴って意識を失わせて鞄を奪うことになった。Bはこの時、手に何も持たず、手袋を着けていなかった。 (カ) Aは、Dを蹴って突き落とすつもりでいたが、2階の廊下に消火器があったので、これを使ってDを突き落とそうと考えた。 ウ犯行状況等(ア) Aが2階の廊下で隠れていると、Dが帰宅して階段を上ってきた。あと二、三段で上り切るところで、Aは、右手に消火器のグリップ、左手で側面を持ち、消火器の底をDに押し付けるようにして、Dを階段から突き落とした。Dは叫び、階段を落ちて道路に転倒した。 (イ) Dは意識を失わなかった。Aが階段を下りていた時、Bが右手に何かを持ち、Dを殴っていた。道路に をDに押し付けるようにして、Dを階段から突き落とした。Dは叫び、階段を落ちて道路に転倒した。 (イ) Dは意識を失わなかった。Aが階段を下りていた時、Bが右手に何かを持ち、Dを殴っていた。道路に出ると、それが手斧だと分かった。Bは、Dの横に立ち、Dの上半身の左側に向けて手斧を数回振り下ろした。 (ウ) Aは、BがDを殺してしまうと思い、制止しようとして、大声で「やめて」と言い、消火器を右手に持ったまま、Bの正面に行き、左手を前に出した。この時、Bが振り下ろした手斧が左手の甲(親指付け根付近)に当たり、けがをした。 (エ) Aは、犯行当時、黒色ゴム製手袋を着けていた(現場付近に落ちてた手袋とは異なる)。Bが手袋を着けていたかどうか分からない。 (オ) Aは、Bが攻撃をやめたか確認しないまま、「もう帰ろう」と言い、消火器を持って用水路の方に向かった。BはDの鞄を持っていた。 (カ) Aはザッツの運転席側の後部座席、Bは助手席に乗った。 エ犯行後の行動等 (ア) ザッツに乗ってから、誰とも話さなかった。BにDを殺したことを抗議しなかった。CにもDを殺したことを話さなかった。 (イ) ザッツでMの駐車場に移動し、ハリアーに乗り換えた。BとCがその後ザッツでどこに行ったか分からない。 2 関係証拠で明らかに認められる事実との整合性について(1) Dの殺害を実行した者についてア関係証拠によれば、次の事実が明らかに認められる。 (ア) ❶Aのインターネット検索履歴Aは、4月26日、インターネットで、「頭部外傷死のリスク」、「野球のバットで頭を殴打」、「頭に斧」、「頭部外傷」、「頭蓋骨骨折は死に至る?」、「頸部損傷による死」、「死に繋がる頭への強い打撲はどこか」、「頭で最も壊れやすいのはどの部分」等と検索した。(甲18 球のバットで頭を殴打」、「頭に斧」、「頭部外傷」、「頭蓋骨骨折は死に至る?」、「頸部損傷による死」、「死に繋がる頭への強い打撲はどこか」、「頭で最も壊れやすいのはどの部分」等と検索した。(甲189)(イ) ❷現場付近に遺留された、血液と毛髪の付いた手袋本件犯行後、H駐車場の直近路上に、黒っぽい色の右手の手袋が遺留されていた。 その外側の示指部分に、Dのものと認められる毛髪(同人のDNAが検出)が付着しており、外側の手首部分に、AとDのものと認められる血液(同人らの混合DNAが検出)が付着していた。なお、前記手袋からAとD以外の者(Bを含む)に由来するDNAは検出されなかった。(甲190、甲191)Aは、本件犯行当時、黒色ゴム製手袋を着けていた。(A、B供述)(ウ) ❸ザッツに付いた血液ザッツの運転席側の後部座席ドア内側1か所に、Dのものと認められる血液(同人のDNAが検出)が付着していた。他方、ハッチバックドア内側1か所にもDのものと認められる血液が付着していたほかは、助手席、助手席ドアを含むその他の部分に血液は付着していなかった。(甲191)A、Bは、犯行後間もなく、Cがザッツを停めて待機するHの駐車場に行き、Aが運転席側後部座席、Bが助手席に乗った。(甲182、A、B、C供述) (エ) ❹Aの左手のけがAは、本件犯行を実行した頃、左手親指付け根付近を負傷した。(甲182、A、B、C供述)イ ❶の事実は、Aが手斧でDの頭部等を切り付けるなどして殺害した旨(更には、Aが本件犯行を企てて主導した旨)のB供述とよく整合する(検索履歴の内容は、Aが実際に行ったというDの殺害方法によく符合する。Aは自ら実行しようとしていた殺害方法について、犯行の7日前から関心を持ち、あらかじめインターネットで検索して調べて く整合する(検索履歴の内容は、Aが実際に行ったというDの殺害方法によく符合する。Aは自ら実行しようとしていた殺害方法について、犯行の7日前から関心を持ち、あらかじめインターネットで検索して調べていたと考えられる)。他方、A供述とは整合しない(Aは、「BがDを気絶させるため斧で頭を殴るなどと言ったので、それをやめさせようとして、インターネットの記事を示してDを死亡させる危険があることを説明するために検索した」などという[前記1(2)ア(オ)(カ)]。しかしながら、斧で頭部等を殴ることが極めて危険で人を死亡させるおそれの高いことは、それ自体として明らかであり、わざわざインターネットで検索して調べる必要はないと考えられる。また、検索内容は、斧による頭部等への攻撃にとどまらない[頭部へのより危険な攻撃方法、バットによる頭の殴打、頸部損傷による死等についても検索している]。Aの説明はかなり不自然である)。 ウ B供述は、❷から❹までの事実も矛盾なく説明できる(B供述によれば、❷の事実は、Aが、右手に前記手袋を着けた状態で、Dを手斧で切り付けるなどした際[前記1(1)ウ(イ)]、Dの毛髪と血液が手袋に付着し、犯行後手斧をバッグにしまう時左手を負傷した際[同ウ(エ)]、Aの血液が手袋に付着した、❸の事実は、AがDを手斧で切り付けるなどした際[同ウ(イ)]、Dの血がAの身体や衣服に付いたが、Bは現場で鞄を持ち去ったにとどまるので[同ウ(ウ)。Bは「Dの鞄に触れた時、手に血が付いた」という]、車のドアや座席に付着するほどの血が付かなかった、❹の事実は、Aが手斧でDを殺害した後、手斧をバッグにしまう際負傷した[同ウ(エ)]、とそれぞれ説明できる)。もっとも、❷から❹までの事実は、A供述によっても説明できなくはない(A供述によれば、❷の事実は、「犯行当時 斧でDを殺害した後、手斧をバッグにしまう際負傷した[同ウ(エ)]、とそれぞれ説明できる)。もっとも、❷から❹までの事実は、A供述によっても説明できなくはない(A供述によれば、❷の事実は、「犯行当時着けていた手 袋は❷の手袋とは異なる」[前記1(2)ウ(エ)]ことを前提とすると、❷の手袋はBが着けていたと考えるほかなく[もっとも、Aは、実行前Bと最後に話した際、Bは手袋を付けていなかったという《同イ(オ)》]、その場合、BがDを手斧で切り付けるなどした際[同ウ(イ)]、Dの毛髪と血液が手袋に付着し、AがBを制止しようとしてBの振り下ろした手斧で左手を負傷した際[同ウ(ウ)]、Aの血液が手袋に付着した、❸の事実は、BがDを手斧で切り付けるなどした際、Aはその近くに居てBを制止しようとして左手を伸ばすなどしたので[同ウ(ウ)]、Dの血液がAの身体や衣服に付いた、BはDを手斧で切り付けるなどした際[同ウ(イ)]、身体や衣服にDの血液が付いたと考えられるが、車のドアや座席には付着しなかった、❹の事実は、Bが手斧でDを切り付けるなどし、Aがこれを制止しようとして左手を伸ばすなどした際、Bが振り下ろした手斧が当たり左手を負傷した[同ウ(ウ)]、とそれぞれ説明することになる。このような事態があり得ないとまではいい切れない)。 (2) 犯行を企てて主導した者についてア関係証拠によれば、次の事実が明らかに認められる。 (ア) ❺本件犯行直前のAとBのメッセージのやり取り5月3日(本件犯行当日)午後8時34分頃、BはA対し「彼女は教会に来なかった」と送信した。午後8時36分頃、AはBに対し「分からないけどその計画に従って」と返信した。(甲181)(イ) ❻AとFのメッセージのやり取りAは、令和4年11月14日から令和5年5月22日( 」と送信した。午後8時36分頃、AはBに対し「分からないけどその計画に従って」と返信した。(甲181)(イ) ❻AとFのメッセージのやり取りAは、令和4年11月14日から令和5年5月22日(逮捕直前頃)まで、Fなる女性との間で、互いに好意を示すメッセージを交わした。Aは、Fと結婚してブラジルで暮らしたい旨述べ、何度かFに送金するなどした。Aは、4月27日から5月7日までの間、Fに対し、次のようなメッセージを送信した。 「私の計画を一人で実行するのは難しいです」、「でも今週中、それを終えられることを信じている」(4月27日)、「今日、その計画を実行する準備が整った」(4月28日)、「私の計画を実行することができていない」(4月29日)、「私 たちの計画がうまくいきますように」(5月1日)、「今日、それを解決し始める新しいチャンスを持てると信じてる」(5月3日[午前8時35分])、「8日に仕事が始まるので今週私の計画を実行しなければならない」(同日[午後8時1分])、「もうすぐアメリカにあなたたちを迎えに行き、ブラジルへ行きます」、「今、私はあなたのためにフリーです」、「いつでもあなたが望む時に本当の結婚をするために」、「もう私たちの関係を正式なものにすることを妨げるものは何もありません」(5月7日)(甲192)(ウ) ❼D宅周辺を頻繁に走行していたハリアー、AとCのメッセージのやり取り4月23日から5月3日(本件犯行当日)までの間、毎日、Aの使用するハリアーがD宅周辺を頻繁に走行していた。Aは、4月30日、D宅周辺を走行中、Cに対し、「彼女はまだ戻っていない」、CはAに対し、「まじかー、くそっ」、「彼女がこの時間に外にいるのはめっちゃ怪しい」、「しかも雨の日に」とメッセージを送信した。(甲180、181)イ 中、Cに対し、「彼女はまだ戻っていない」、CはAに対し、「まじかー、くそっ」、「彼女がこの時間に外にいるのはめっちゃ怪しい」、「しかも雨の日に」とメッセージを送信した。(甲180、181)イ ❶の事実に加え、❺から❼までの事実は、Aが本件犯行を企て、BとCに協力を求め、同人らを指示どおり行動させた旨のB供述とよく整合する(❶の事実は、AがDの殺害方法について本件犯行前から関心を持ち、あらかじめ調べていたこと、❺の事実は、BはAに状況を報告するにとどまるのに対し、AはBに行動を指示していること、❻の事実は、Aが、妻のDがいるにもかかわらず、Fと結婚してブラジルで暮らすことを希望し、それを実現するため、何らかの「計画」を「実行」する準備を進めていること、❼の事実は、AがDを襲って金品を奪う企てを実行するため、かなり積極的に行動していることを、それぞれ示す)。 他方、Bが本件犯行を企て、AはBに頼まれて協力した旨のA供述は、❶、❺から❼までの事実にそぐわない(なお、❻の事実について、Aは、「4月27日のメッセージにいう『計画』はDから奪った金を持ってブラジルに行くことであるが、それ以外の『計画』はFX取引のことである」旨いう。しかしながら、一連のメッ セージで繰り返し使われている「計画」の意味が変わるのは不自然である。メッセージの内容を見ても、「計画」がFX取引をいうとは理解できない)。 3 供述内容それ自体について(1) A供述は、内容自体がかなり不自然、不合理である。 ア実行直前の計画は、AがDを階段から突き落として気絶させる、それで気絶しなければBが殴って気絶させるというものだったという(前記1(2)イ(オ))。しかしながら、Dを都合よく気絶させられるか疑問だし、Dに犯人であることを容易に知られてしまうから、強盗 る、それで気絶しなければBが殴って気絶させるというものだったという(前記1(2)イ(オ))。しかしながら、Dを都合よく気絶させられるか疑問だし、Dに犯人であることを容易に知られてしまうから、強盗の実行方法としてかなり不確実なもので、不自然、不合理である。 イまた、BがDを手斧で攻撃するのを制止しようとしながら、攻撃をやめたか確認しないまま現場を立ち去ったという(前記前記1(2)ウ(オ))のは、不自然、不合理である。 ウさらに、Bが計画を逸脱してDを殺害したのに、犯行後ザッツに乗ってからBを問い質したり責めたりしなかったという(前記1(2)エ(ア))のは、不自然、不合理である。 エ加えて、本件犯行当日Lの駐車場でBとCに会い、その後Bからの電話でDを襲うことになった後、Mの駐車場で、現場に向かうためサンダルをスニーカーに履き替えたという(前記1(2)イ(エ))。しかしながら、防犯カメラ映像によれば、Aは、当日BとCと会う前に、Lで前記靴の履替えをしたことが明らかである(甲181)。 (2) 他方、B供述は、①Aが手斧でDの頭部等を切り付けるなどして殺害した旨、②Aが本件犯行を企てて主導した旨の重要部分に関しては、内容それ自体として不自然、不合理な点はない。 Aの弁護人は、AがBに手斧やDの携帯電話機の投棄場所を教えたという(前記1(1)エ(オ))のは不自然(AはBと不仲だったから、Bに重要な証拠の投棄場所を教えるとは考え難い)という。しかしながら、本件犯行の共犯であるBに対し、重 要な証拠を隠滅したことを知らせて安心させるなどのため、投棄場所等を教えることはあり得ると考えられるから、不自然とはいえない。 4 以上のとおり、B供述は、①AがDの殺害を実行した旨、②Aが犯行を企てて主導した旨の重要部分が、証拠で明ら るなどのため、投棄場所等を教えることはあり得ると考えられるから、不自然とはいえない。 4 以上のとおり、B供述は、①AがDの殺害を実行した旨、②Aが犯行を企てて主導した旨の重要部分が、証拠で明らかに認められる事実(①について❶の事実、②について❶、❺から❼までの事実)とよく整合し、これらの事実によって裏付けられている(①について❷から❹までの事実も矛盾なく説明できる)。①、②の供述の重要部分に不自然、不合理な点はない。 他方、A供述は、証拠で明らかに認められる事実(Dの殺害を実行した者に関し❶の事実、犯行を企てて主導した者に関し❶、❺から❼までの事実)にそぐわず、内容自体もかなり不自然、不合理である。 Bは、自己の刑責を軽減するため、殊更に自己の役割を小さく、Aの役割を大きく供述する可能性があるから、Aに不利益な供述については、その信用性を特に慎重に考えるべきであるが、そのことを踏まえても、①、②の趣旨を述べるB供述の重要部分は十分信用できる。A供述はその重要部分が信用できない。 第3 争点1(Dの殺害を実行したのはAかBか)について 1 検察官、BはAが実行したといい、AはBが実行したという。 2 B供述によれば、AがDの頭部、頸部等を手斧で切り付けるなどして、確定的殺意をもってDの殺害を実行したと認められる(前記1(1)ウ(イ))。 第4 争点2(BはAがDを殺害すると知っていたか)、争点4(CはA又はBがDを殺害して金品を奪うと知っていたか)について 1 検察官は、B、CはAがDを殺害して金品を奪うと知っていたという。 Bは、AがDに暴行を加えて金品を奪うとは思ったが、殺害するとは思わなかったという。 Cは、AとBが、Dを殺害して金品を奪うことはもとより、暴行を加えるとも、金品を奪うとも思わなかった、Aの計画は現実味が がDに暴行を加えて金品を奪うとは思ったが、殺害するとは思わなかったという。 Cは、AとBが、Dを殺害して金品を奪うことはもとより、暴行を加えるとも、金品を奪うとも思わなかった、Aの計画は現実味がなく、本気で実行するとは思わなかったという。 2(1) B供述によれば、次のとおり指摘できる。 ア Aは、本件犯行を実行するまでのやり取りにおいて、BとCに対し、Dを襲って鞄を奪う方法として、Dの車のタイヤのナットをゆるめておき、走行中にタイヤが外れるようにして事故を起こさせる、Dの車に別の車をぶつけるなどと、Dの生命を危険にさらすような、それなりに具体的な計画を話し、実際に一部の計画を実行するために行動した(前記1(1)ア(カ)~(ケ))。本件犯行当日も、BとCに対し、それぞれの役割分担を具体的に指示し、計画を実行するために行動させた(同イ(ウ))。 計画にあいまいな部分はあったが、Aは何度か自分にまかせるよう告げていたから(同ア(キ)(ケ)、イ(ウ))、具体的な実行方法はAに委ねられていたと考えられる。このことから、Cが、Aの計画が現実味のない架空の話で、Aが本気で実行することはないと思っていたとは考えられない(なお、Cは「Aが本件犯行当日Dと離婚の話をしに行くと思っていた」というけれども、B供述にある本件犯行当日のやり取りや行動[AがBとCに対し「待ち伏せて鞄を奪う」旨明確に告げたこと等]に明らかに反する)。 イ仮に、BとCが犯行前AがDを殺害すると知らなかったとした場合、AはDの殺害を計画しながら、BとCにはそのことを隠したまま協力させたことになる。 その場合、BとCは、Aが現場で突然Dを殺害するという全く予期しなかった事態に直面し、どのような行動をとるか分からず(Aを制止したり、指示に従わなくなったり、反発したり、逃走 協力させたことになる。 その場合、BとCは、Aが現場で突然Dを殺害するという全く予期しなかった事態に直面し、どのような行動をとるか分からず(Aを制止したり、指示に従わなくなったり、反発したり、逃走したり、警察に通報したりするなど)、Aの計画した犯行が失敗に終わる可能性が大きいと考えられる。 ウまた、Dを襲って所持金品を奪うという方法による場合(前記1(1)ア(カ)~(ケ)、イ(ウ))、Dは犯人を容易に知ることができるから、AらがDから所持金品を奪ったとしても、警察に通報されて検挙されたり、奪ったクレジットカードで現金を引き出せなくされたりする可能性が大きい。Aが計画した犯行の目的を達成するためには、Dを殺害して口を封じる必要があることは、容易に想定できると考えられる。 エさらに、AがDの殺害を実行した後、BとCがそのことを知っても、驚愕、狼狽したり、Aに説明を求めたり、Aを責めたりせず、予想外の事態に直面したことを示すような行動をしなかった。AもBとCにDを殺害した理由を説明するなどしなかった(前記1(1)ウ(ウ)~(オ)、エ(イ)(ウ))。また、BとCは、本件犯行後、2人の間でも、AがDを殺すつもりであると知っていたかどうかについて話したことがない(同エ(ウ))。 (2) これらの事情に照らすと、BとCが、AがDを殺害するつもりであることを、犯行前に全く知らなかったとは考えられない。 (3) もっとも、Aは、BとCに対し、Dを手斧で切り付けるなどして殺害することについて、本件犯行前に一度も話したことはない。実行直前も、「Dを待ち伏せて襲う」、「僕にまかせて。僕が指示したのだけすればいい」などと告げたにとどまり、具体的な暴行の仕方を告げていない。Bは、Aが実際に行ったように手斧で切り付けてDを殺害することは、実行す を待ち伏せて襲う」、「僕にまかせて。僕が指示したのだけすればいい」などと告げたにとどまり、具体的な暴行の仕方を告げていない。Bは、Aが実際に行ったように手斧で切り付けてDを殺害することは、実行するまで知らなかった。Cには実行後も知らされなかった。 このような事情に照らせば、BとCが、Aが実行した日時・場所においてDを殺害することを、確定的に認識していたとは認められない。もしかしたらAがDを殺害するかもしれないと未必的に認識していたと認められるにとどまる。 (4) この点、Bの捜査段階供述(「AがDを殺して所持金品を奪うと思っていた」旨、未必的殺意を超える殺意があった旨をいうものと理解できる)は、その信用性を裏付けるに足りる証拠はなく、また、前記2(3)の説示に照らし採用できない(なお、検察官は、「Aが『車ごと放火する』と言った」事実[C供述と一致]を特に指摘するけれども、仮にその事実があったとしても、Bに未必的殺意を超える殺意があったとまでは認定できず、それがあった旨の捜査段階供述も採用できない)。 3 Bは強盗殺人の、Cは強盗殺人幇助の未必的故意があったと認められる。 第5 争点3(Bは共同正犯か幇助犯か)について 1 検察官は共同正犯が成立するといい、Bは幇助犯にとどまるという。 2 以上のとおり認められる事実によれば、次のとおり指摘できる。 (1) Bは、Aから、同人が企てたDを襲って所持金品を奪う犯行への協力を求められ、脅すような言葉を掛けられるなどし、同人を怖れて逆らいにくかったこともあり、同人の求めに応じて協力した。Dの殺害については、もしかしたらDを殺害することになるかもしれないと未必的に認識していたにとどまる。Dを殺害して金品を奪うことを積極的に意欲していたとまでは認められない。終始専らAの指示に従っ 。Dの殺害については、もしかしたらDを殺害することになるかもしれないと未必的に認識していたにとどまる。Dを殺害して金品を奪うことを積極的に意欲していたとまでは認められない。終始専らAの指示に従って行動した。犯行の分け前や報酬を受け取る約束はなく、犯行後も犯行に関与したことで利益を取得していない。 (2) しかしながら、Bは、殺意は未必的であるものの、Aとの間でDに対する強盗殺人を実行する意思を通じ合い、Aと共に現場付近に赴き、同人の指示に従って見張りをするなどした上(見張りや鞄の持ち去りをしやすい場所を選ぶなど[前記第2の1(1)イ(オ)]、指示の範囲でそれなりに主体的に行動した一面もある)、AがDを手斧で切り付けるなどして殺害した直後、Dから鞄を奪うという強盗殺人の実行行為の一部を担った。 3 前記2(1)のような消極的事情は少なからずあるものの、同(2)の事情、特に実行場面でBの果たした役割の重要性は軽視できない。Bは、Aと互いに利用し合い、二人で協力してDに対する強盗殺人を実行したといえる。強盗殺人の共同正犯が成立する。 第6 結論AとBには、強盗殺人の共同正犯が成立する。Aは本件犯行を企て、BとCに指示するなどして犯行を主導し、確定的殺意をもって、Dの殺害を実行した。Bは、未必的殺意をもって、Aの指示に従い、Dから鞄を奪うなどして、Aと強盗殺人を共同して実行した。Cは、未必的殺意をもって、AとBの強盗殺人を幇助した。 (量刑の理由) 1 AとBは、共謀の上、Dから所持金品を奪うため、Dの自宅付近で待ち伏せ、帰宅したDに対し、Aが頭部や頸部を狙って手斧を振り下ろして少なくとも11回 切り付けるなどし、致命傷を負わせて殺害し、Bが所持品を奪った(第1)。 Cは、車を運転してBを現場付近に連れて行き、現場付近を見 Aが頭部や頸部を狙って手斧を振り下ろして少なくとも11回 切り付けるなどし、致命傷を負わせて殺害し、Bが所持品を奪った(第1)。 Cは、車を運転してBを現場付近に連れて行き、現場付近を見張り、Dの帰宅をAに知らせ、犯行後AとBを車に乗せて逃走させるなどして、AとBの犯行を幇助した(第2)。 2 Aの指示の下、役割を分担し、協力して犯行を遂行した。ずさんではあるものの、相応に計画された犯行である。Dが悲鳴をあげ抵抗するのを意に介さず、前記のような凄惨な攻撃を執ように繰り返した。残虐な犯行である。Dの生命を奪った結果は極めて重大である(もっとも、このこと自体は強盗殺人事案の中で差を付ける事情とはなり得ない)。夫、娘、その交際相手による凶行で突然生命を断たれたDの身体的・精神的苦痛、無念は計り知れない。遺族の悲しみ、憤りは言うまでもなく大きい。 3 Aは、SNSで連絡を取り合っていた女性と結婚するため、かねてから不仲であったDがいなくなればいいと考えるとともに、Dの所持金品を奪い、手っ取り早く金品を得たいという、誠に安易、身勝手で短絡的な考えから本件を企てた。B、Cに協力を求め、同人らを指示どおり行動させて、終始犯行を主導した上、強固な殺意をもって、残酷な方法で自らDの殺害を実行した。本件の主犯格であり、極めて厳しい非難が向けられるべきである。刑責は最も重い。 また、強盗殺人の実行後、2回にわたり、Dから奪ったクレジットカードを利用して合計139万円もの多額の現金を不正に引き出して盗んだ(第3、第4)。強盗殺人と併せて相応に刑責を加重すべきである。 強盗殺人(1件)事案の中で比較しても、中等度より重い部類(もっとも、死刑相当の極めて重い部類でなく、無期懲役刑が相当の部類)に位置付けられる。 加えて、Bに責任を押し付けるような すべきである。 強盗殺人(1件)事案の中で比較しても、中等度より重い部類(もっとも、死刑相当の極めて重い部類でなく、無期懲役刑が相当の部類)に位置付けられる。 加えて、Bに責任を押し付けるような不合理な弁解に終始しており、反省の態度は見られない。他方、日本での前科がない。二女が更生を願いAのために証言した。 4 BとCは、Aから同人の企てた犯行への協力を求められ、これに応じて、同人に指示されるままに関与した。安易、浅はかで強い非難に値する。 他方、BはAから脅すような言葉を掛けられ、Cはかねてから口汚く罵られるなどして、いずれも、Aを怖れ、同人に逆らいにくかった一面がある。終始専らAの指示に従って行動した。殺意については、もしかしたらAがDを殺害するかもしれないと認識していたにとどまる。分け前や報酬を受け取る約束はなく、犯行後も受け取っていない。 5 Bは、Aと共に現場に赴き、AがDを殺害した直後、Dから鞄を奪った。強盗殺人の実行行為の一部を担ったことは軽視できない。しかしながら、Dには一切暴行を加えておらず、自らそれをする意思もなかった。関与の仕方は相当従属的で、役割は限られたものだったといえる。 強盗殺人(1件)事案の中で比較すれば、かなり軽い部類(無期懲役刑は酷に過ぎ、有期懲役刑が相当な部類)に位置付けられる。 加えて、令和5年3月13日、覚醒剤取締法違反(覚醒剤使用・所持)の罪で懲役1年6月執行猶予3年に処せられたのに、その判決後2か月も経たないうちに、本件のような重大犯罪に関与した。規範意識は乏しい。おおむね事実を認め、自己の役割も含めて具体的に供述し、凶器の投棄場所を供述するなどして事案解明に協力するなどしたことは、有利な事情として相応に評価できるが、Dに対する殺意を否認するなど、自己の刑責に真摯に向き合 め、自己の役割も含めて具体的に供述し、凶器の投棄場所を供述するなどして事案解明に協力するなどしたことは、有利な事情として相応に評価できるが、Dに対する殺意を否認するなど、自己の刑責に真摯に向き合っているとはいい難い。他方、母親が更生を願いBのために証言した。 6 Cは、幇助犯にとどまるとはいえ、その行為は実際にAとBの犯行を容易にし、相当に寄与したといえる。Cの果たした役割は決して小さくない。幇助犯として法律上の減軽をした上、A、Bの量刑との均衡も考慮して、相応に重い刑を科すべきである。 加えて、おおむね事実を認め、自己の役割も含めて具体的に供述しているものの、犯罪の認識を否認し、自己の果たした役割の大きさに向き合っておらず、十分な反省の態度はうかがえない。他方、日本での前科はない。 7 以上の事情を考慮し、被告人ら3名に対し、それぞれ主文の刑を科すのが相 当である。 (求刑 Aにつき無期懲役、Bにつき懲役20年、Cにつき懲役15年) 令和6年12月16日 津地方裁判所刑事部 裁判長裁判官出口博章 裁判官深見翼 裁判官髙島菜緒 日時(頃)場所金額日時(頃)場所金額同日午後8時22分同上10万円合計90万円同日午後8時20分同上20万円同日午後8時21分同上20万円別表2令和5年5月4日午後8時19分愛知県豊田市(住所省略)K店共同出張所20万円同日午後8時20分同上20万円同日午前2時19分同上10万円別表1合計49万円令和5年5月4日午前2時17分岐阜県海津市(住所省略)I店共同出張所20万円同上同日午前2時18分19万円 同上20万円同日午前2時19分同上10万円別表1合計49万円令和5年5月4日午前2時17分岐阜県海津市(住所省略)I店共同出張所20万円同上同日午前2時18分19万円

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