平成26年5月30日判決言渡平成25年(行ウ)第324号(第1事件),同第347号(第2事件),同第348号(第3事件),同第349号(第4事件)退去強制令書発付処分取消等請求事件 主文 1 東京入国管理局長が平成24年11月21日付けで原告らに対してした出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく異議の申出には理由がない旨の裁決をいずれも取り消す。 2 東京入国管理局主任審査官が平成24年12月5日付けで原告らに対してした退去強制令書発付処分をいずれも取り消す。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文と同旨第2 事案の概要本件は,ボリビア多民族国(以下「ボリビア」という。)の国籍を有する外国人である第1事件原告P1(以下「原告母」という。)並びにその子でありボリビア国籍を有する外国人である第2事件原告P2(以下「原告長男」という。),第3事件原告P3(以下「原告長女」という。)及び第4事件原告P4(以下「原告二女」といい,原告長男及び原告長女と併せて「原告子ら」という。)が,出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)所定の退去強制手続において,法務大臣から権限の委任を受けた東京入国管理局長(以下「東京入管局長」という。)から入管法49条1項に基づく異議の申出には理由がないとの各裁決(以下「本件各裁決」という。)を受け,東京入国管理局主任審査官から各退去強制令書の発付処分(以下「本件各退令発付処分」という。)を受けたことにつ いて,原告らに対して在留特別許可をしないでされた本件各裁決は裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法なものであり,本件各裁決を前提とする本件各退令発付処分もまた違法であると主張して,本件各裁決及び本件各退令発付処分 留特別許可をしないでされた本件各裁決は裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法なものであり,本件各裁決を前提とする本件各退令発付処分もまた違法であると主張して,本件各裁決及び本件各退令発付処分の取消しを求めている事案である。 1 前提事実(当事者間に争いがないか,文中記載の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実等)(1) 原告らの身分事項ア原告母は,1977年(昭和52年)▲月▲日にボリビアで出生したボリビア国籍を有する外国人である(乙1の1,乙2)。 イ原告長男は,平成18年 ▲月 ▲日に本邦で出生したボリビア国籍を有する外国人である(乙1の2)。 ウ原告長女は,平成19年 ▲月 ▲日に本邦で出生したボリビア国籍を有する外国人である(乙1の3)。 エ原告二女は,平成24年▲月▲日に本邦で出生したボリビア国籍を有する外国人である(乙1の4)。 オ P5は,1977年(昭和52年) ▲ 月 ▲ 日生まれのボリビア国籍を有する外国人であり,平成11年9月4日に上陸許可を受けて本邦に入国した。P5の祖父が日本人であるため,P5は日系3世に当たり,定住者(3年)の在留資格で本邦に在留している。(乙7,原告母4頁)(2) 原告らの入国及び在留の状況ア原告母の入国及び在留状況(乙1の1)(ア) 原告母は,1993年(平成5年)12月10日,ボリビアにおいて,虚偽の身分事項(生年月日を1970年5月3日とするもの)により,「日本人の配偶者等」の在留資格を持つ外国人であるP6と偽装結婚した上で(乙3),平成11年5月11日,真実とは異なる生年月日(1970年5月3日)が記載された内容虚偽の旅券を所持して名古屋 空港に到着し,名古屋入国管理局名古屋空港出張所入国審査官から,入管法所定の在留 平成11年5月11日,真実とは異なる生年月日(1970年5月3日)が記載された内容虚偽の旅券を所持して名古屋 空港に到着し,名古屋入国管理局名古屋空港出張所入国審査官から,入管法所定の在留資格「定住者」,在留期間「1年」とする上陸許可の証印を受け,本邦に不法入国した。 (イ) 原告母は,愛知県 ○ 市長に対し,前記(ア)の身分事項で,居住地を「愛知県 ○ 市 α ( 以下住所省略 )」,世帯主を「P7」,続柄を「兄の子」とする外国人登録法(平成21年法律第79号による廃止前のもの。以下「外登法」という。)3条1項に基づく新規登録の申請をし,平成11年6月4日,その旨の登録を受けた。 (ウ) 原告母は,栃木県 △ 市(以下「 △ 市」という。)長に対し,前記(ア)の身分事項で,居住地を「 △ 市 β (以下住所省略)」,世帯主を「P5」,続柄を「同居人」とする外登法8条1項及び9条2項に基づく変更登録の申請をし,平成17年11月14日,その旨の登録を受けた。 (エ) 原告母は, △ 市長に対し,前記(ア)の身分事項で,居住地を「△市 γ ( 以下住所省略 )」とする外登法8条2項に基づく変更登録の申請をし,平成18年10月19日,その旨の登録を受けた。 (オ) 原告母は, △ 市長に対し,前記(ア)の身分事項で,居住地を「△市 β ( 以下住所省略 )」とする外登法8条2項に基づく変更登録の申請をし,平成20年4月18日,その旨の登録を受けた。 (カ) 原告母は,茨城県 □ 市(以下「 □ 市」という。)長に対し,前記(ア)の身分事項で,居住地を「 □ 市 δ ( 以下住所省略 )」とする外登法8条1項に基づく変更登録の申請をし,平成22年11月26日,その旨の登録を受けた。 (キ) 原告母は,群馬県 ◇ ア)の身分事項で,居住地を「 □ 市 δ ( 以下住所省略 )」とする外登法8条1項に基づく変更登録の申請をし,平成22年11月26日,その旨の登録を受けた。 (キ) 原告母は,群馬県 ◇ 市(以下「 ◇ 市」という。)長に対し,前記(ア)の身分事項で,居住地を「 ◇ 市 ε ( 以下住所省略 )」とする外登法8条1項に基づく変更登録の申請をし,平成23年3月1日, その旨の登録を受けた。 (ク) 原告母は, △ 市長に対し,前記(ア)の身分事項で,居住地を「△市ζ(以下住所省略)」とする外登法8条1項に基づく変更登録の申請をし,平成23年5月9日,その旨の登録を受けた。 (ケ) 原告母は,山形県 ▽ 市(以下「 ▽ 市」という。)長に対し,前記(ア)の身分事項で,居住地を「 ▽ 市 η ( 以下住所省略 )」とする外登法8条1項に基づく変更登録の申請をし,平成23年12月9日,その旨の登録を受けた。 (コ) 原告母は,茨城県 ◎ 市(以下「 ◎ 市」という。)長に対し,前記(ア)の身分事項で,居住地を「 ◎ 市 θ ( 以下住所省略 )」とする外登法8条1項に基づく変更登録の申請をし,平成24年3月1日,その旨の登録を受けた。 (サ) 原告母は, △ 市長に対し,前記(ア)の身分事項で,居住地を「△市 ι ( 以下住所省略 )」とする外登法8条1項に基づく変更登録の申請をし,平成24年5月31日,その旨の登録を受けた。 イ原告長男の在留状況(乙1の2)(ア) 原告長男は,平成18年 ▲月 ▲日,原告母とP5との間の子として,栃木県●郡λ町において出生した。 (イ) 原告長男は, △ 市長に対し,居住地を「 △ 市 β (以下住所省略)」,世帯主を「P5」,続柄を「同居人」とする外登法3条1項に 5との間の子として,栃木県●郡λ町において出生した。 (イ) 原告長男は, △ 市長に対し,居住地を「 △ 市 β (以下住所省略)」,世帯主を「P5」,続柄を「同居人」とする外登法3条1項に基づく新規登録の申請をし,平成18年4月7日,その旨の登録を受けた。 (ウ) 原告長男は,入管法22条の2第3項又は第4項の規定に基づく在留資格の取得許可を受けることなく,出生後60日を経過する平成18年▲月▲日を超えて不法残留するに至った。 (エ) 原告長男は,△市長に対し,居住地を「△市γ(以下住所省略)」 とする外登法8条2項に基づく変更登録の申請をし,平成18年10月19日,その旨の登録を受けた。 (オ) 原告長男は,△市長に対し,居住地を「△市β(以下住所省略)」とする外登法8条2項に基づく変更登録の申請をし,平成20年4月18日,その旨の登録を受けた。 (カ) 原告長男は,□市長に対し,居住地を「□市δ(以下住所省略)」とする外登法8条1項に基づく変更登録の申請をし,平成22年11月26日,その旨の登録を受けた。 (キ) 原告長男は,◇市長に対し,居住地を「◇市ε(以下住所省略)」とする外登法8条1項に基づく変更登録の申請をし,平成23年3月1日,その旨の登録を受けた。 (ク) 原告長男は, △ 市長に対し,居住地を「△市ζ(以下住所省略)」とする外登法8条1項に基づく変更登録の申請をし,平成23年5月9日,その旨の登録を受けた。 (ケ) 原告長男は, △ 市長に対し,続柄を「子」とする外登法9条2項に基づく変更登録の申請をし,平成23年7月8日,その旨の登録を受けた。 (コ) 原告長男は,▽市長に対し,居住地を「▽市η(以下住所省略)」とする外登法8条1項に基づく変更登録の申請をし,平成23年 く変更登録の申請をし,平成23年7月8日,その旨の登録を受けた。 (コ) 原告長男は,▽市長に対し,居住地を「▽市η(以下住所省略)」とする外登法8条1項に基づく変更登録の申請をし,平成23年12月9日,その旨の登録を受けた。 (サ) 原告長男は,◎市長に対し,居住地を「◎市θ(以下住所省略)」とする外登法8条1項に基づく変更登録の申請をし,平成24年3月1日,その旨の登録を受けた。 (シ) 原告長男は,△市長に対し,居住地を「△市ι(以下住所省略)」とする外登法8条1項に基づく変更登録の申請をし,平成24年5月31日,その旨の登録を受けた。 ウ原告長女の在留状況(乙1の3)(ア) 原告長女は,平成19年▲月▲日,原告母とP5との間の子として,栃木県●市において出生した。 (イ) 原告長女は, △ 市長に対し,居住地を「 △ 市 γ (以下住所省略)」,世帯主を「P5」,続柄を「同居人」とする外登法3条1項に基づく新規登録の申請をし,平成19年7月11日,その旨の登録を受けた。 (ウ) 原告長女は,入管法22条の2第3項又は第4項の規定に基づく在留資格の取得許可を受けることなく,出生後60日を経過する平成19年▲月▲日を超えて不法残留するに至った。 (エ) 原告長女は, △ 市長に対し,居住地を「 △ 市 β (以下住所省略)」とする外登法8条2項に基づく変更登録の申請をし,平成20年4月18日,その旨の登録を受けた。 (オ) 原告長女は,□市長に対し,居住地を「□市δ(以下住所省略)」とする外登法8条1項に基づく変更登録の申請をし,平成22年11月26日,その旨の登録を受けた。 (カ) 原告長女は,◇市長に対し,居住地を「◇市ε(以下住所省略)」とする外登法8条1項に基づく変更登録の申 8条1項に基づく変更登録の申請をし,平成22年11月26日,その旨の登録を受けた。 (カ) 原告長女は,◇市長に対し,居住地を「◇市ε(以下住所省略)」とする外登法8条1項に基づく変更登録の申請をし,平成23年3月1日,その旨の登録を受けた。 (キ) 原告長女は,△市長に対し,居住地を「△市ζ(以下住所省略)」とする外登法8条1項に基づく変更登録の申請をし,平成23年5月9日,その旨の登録を受けた。 (ク) 原告長女は, △ 市長に対し,続柄を「子」とする外登法9条2項に基づく変更登録の申請をし,平成23年7月8日,その旨の登録を受けた。 (ケ) 原告長女は,▽市長に対し,居住地を「▽市η(以下住所省略)」 とする外登法8条1項に基づく変更登録の申請をし,平成23年12月9日,その旨の登録を受けた。 (コ) 原告長女は,◎市長に対し,居住地を「◎市θ(以下住所省略)」とする外登法8条1項に基づく変更登録の申請をし,平成24年3月1日,その旨の登録を受けた。 (サ) 原告長女は,△市長に対し,居住地を「△市ι(以下住所省略)」とする外登法8条1項に基づく変更登録の申請をし,平成24年5月31日,その旨の登録を受けた。 エ原告二女の在留状況(乙1の4)(ア) 原告二女は,原告母とP5との間の子として,平成24年▲月▲日,◎市において出生した。 (イ) 原告二女は, ▽ 市長に対し,居住地を「 ▽ 市 η (以下住所省略)」,世帯主を「P5」,続柄を「同居人」とする外登法3条1項に基づく新規登録の申請をし,平成24年2月14日,その旨の登録を受けた。 (ウ) 原告二女は, ◎ 市長に対し,居住地を「 ◎ 市 θ (以下住所省略)」とする外登法8条1項に基づく変更登録の申請をし,平成24年3月1 平成24年2月14日,その旨の登録を受けた。 (ウ) 原告二女は, ◎ 市長に対し,居住地を「 ◎ 市 θ (以下住所省略)」とする外登法8条1項に基づく変更登録の申請をし,平成24年3月1日,その旨の登録を受けた。 (エ) 原告二女は,平成24年3月2日,東京入国管理局(以下「東京入管」という。)において,在留資格取得許可申請をした。 (オ) 法務大臣から権限の委任を受けた東京入管局長は,平成24年3月13日,原告二女に対し,上記(エ)の在留資格取得許可申請については,原告母が退去手続中であることから,付与すべき在留資格がなく,在留資格の取得を適当と認めるに足りる相当の理由があるとは認められないことを理由に,これを不許可とした。 (カ) 原告二女は,入管法22条の2第3項又は第4項の規定に基づく在 留資格の取得許可を受けることなく,出生後60日を経過する平成24年▲月▲日を超えて不法残留するに至った。 (キ) 原告二女は, ◎ 市長に対し,続柄を「子」とする外登法9条2項に基づく変更登録の申請をし,平成24年4月26日,その旨の登録を受けた。 (ク) 原告二女は,△市長に対し,居住地を「△市ι(以下住所省略)」とする外登法8条1項に基づく変更登録の申請をし,平成24年5月31日,その旨の登録を受けた。 (3) 本件各裁決及び本件各退令発付処分に至る経緯等ア原告母,原告長男及び原告長女は,平成21年12月4日,東京入管に出頭し,原告母は不法入国の事実を,原告長男及び原告長女は不法残留の事実をそれぞれ申告した(乙4の1ないし3)。 イ東京入管入国警備官は,平成23年7月7日,原告母,原告長男及び原告長女に係る違反調査を行い(乙6),P5からも事情を聴取した(乙7)。 ウ東京入管入国警備官 した(乙4の1ないし3)。 イ東京入管入国警備官は,平成23年7月7日,原告母,原告長男及び原告長女に係る違反調査を行い(乙6),P5からも事情を聴取した(乙7)。 ウ東京入管入国警備官は,平成23年9月16日,原告母が入管法24条1号(不法入国)に,原告長男及び原告長女が入管法24条7号(不法残留)に,それぞれ該当すると疑うに足りる相当の理由があるとして,東京入管主任審査官から各収容令書の発付を受け,同月22日,各収容令書を執行し(乙8の1ないし3),原告母を入管法24条1号該当容疑者,原告長男及び原告長女を入管法24条7号該当容疑者として,それぞれ東京入管入国審査官に引き渡した(乙9の1ないし3)。 エ東京入管主任審査官は,平成23年9月22日,原告母,原告長男及び原告長女に対し,それぞれ仮放免を許可した(乙10の1ないし3)。 オ東京入管入国審査官は,平成23年9月22日,原告母,原告長男及び原告長女に係る違反審査を行い(乙11の1及び2,乙12の1及び2,乙13の1及び2),その結果,原告母が入管法24条1号に該当する旨, 原告長男及び原告長女が入管法24条7号に該当し,かつ,出国命令対象者に該当しない旨の認定をし,原告母,原告長男及び原告長女にその旨通知したところ(乙14の1ないし3),同人らは,同日,特別審理官による口頭審理を請求した(乙11の2,乙12の2,乙13の2)。 カ東京入管入国警備官は,平成24年6月18日,原告二女に係る入管法違反容疑について違反事件として立件した(乙1の4)。 キ東京入管入国警備官は,平成24年7月4日,原告二女に係る違反調査をした(乙15)。 ク東京入管入国警備官は,平成24年8月27日,原告二女が入管法24条7号(不法残留)に該当すると疑うに足り 東京入管入国警備官は,平成24年7月4日,原告二女に係る違反調査をした(乙15)。 ク東京入管入国警備官は,平成24年8月27日,原告二女が入管法24条7号(不法残留)に該当すると疑うに足りる相当の理由があるとして,東京入管主任審査官から収容令書の発付を受け,同月30日,収容令書を執行し(乙16),原告二女を入管法24条7号該当容疑者として,東京入管入国審査官に引き渡した(乙17)。 ケ東京入管主任審査官は,平成24年8月30日,原告二女に対し,仮放免を許可した(乙18)。 コ東京入管入国審査官は,平成24年8月30日,原告二女に係る違反審査を行い(乙19の1及び2),その結果,原告二女が入管法24条7号に該当し,かつ,出国命令対象者に該当しない旨の認定をし,原告二女にその旨通知したところ(乙20),原告二女は,同日,特別審理官による口頭審理を請求した(乙19の2)。 サ東京入管特別審理官は,平成24年11月9日,原告らに係る口頭審理を行い(乙21),その結果,入国審査官の前記オ及びコの認定に誤りはない旨の判定をし,原告らにその旨通知したところ(乙22の1ないし4),原告らは,同日,法務大臣に対し,異議の申出をした(乙23の1ないし4)。 シ法務大臣から権限の委任を受けた東京入管局長は,平成24年11月2 1日,前記サの異議の申出には理由がない旨の各裁決(本件各裁決)をし(乙24の1ないし4),同日,東京入管主任審査官に同裁決を通知した(乙25の1ないし4)。 ス前記シの通知を受けた東京入管主任審査官は,平成24年12月5日,原告らに対し,本件各裁決を通知するとともに(乙26の1ないし4),原告らに係る各退去強制令書(以下「本件各退令」という。)を発付し(本件各退令発付処分),東京入管入国警 は,平成24年12月5日,原告らに対し,本件各裁決を通知するとともに(乙26の1ないし4),原告らに係る各退去強制令書(以下「本件各退令」という。)を発付し(本件各退令発付処分),東京入管入国警備官は,同日,原告らに対し,本件各退令を執行した(乙27の1ないし4)。 セ東京入管主任審査官は,平成24年12月5日,原告らに対し,仮放免を許可した(乙28の1ないし4)。 現在,原告らは仮放免中である。 ソ原告らは,平成25年6月4日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。 2 争点及び当事者の主張本件の争点は,本件各裁決及び本件各退令発付処分の適法性である。 (1) 原告らの主張の要旨ア本件各裁決の違法性(ア) 在留特別許可における法務大臣等の裁量権の範囲法務大臣又は法務大臣から権限の委任を受けた地方入国管理局長(以下,両者を併せて「法務大臣等」という。)が,在留特別許可をするか否かの判断に際しては,法務大臣等に一定の裁量権が認められているが,その判断において,基礎となる事実に誤認がある場合,考慮すべき事項を考慮せず,若しくは考慮すべきでない事実を考慮して処分の理由が判断された場合,又はその判断が社会通念又は関連する憲法,法律ないし条約の趣旨に照らして合理性を欠くときには,裁量権の範囲を超え,又はその濫用があったとして違法とすべきである。 (イ) ガイドライン及び平等原則違反 a 法務大臣等が在留特別許可に関して判断する際にどの事項を重視すべきかについて,法律の解釈上基準が導かれ,又は実務上明示又は黙示の基準が設けられ,それに基づく運用がされているときには,平等原則の要請から,その基準を無視することは許されない。法務省が,平成21年7月10日付けの地方入国管理局長向け通達により 務上明示又は黙示の基準が設けられ,それに基づく運用がされているときには,平等原則の要請から,その基準を無視することは許されない。法務省が,平成21年7月10日付けの地方入国管理局長向け通達により,退去強制手続において異議申出があった場合の地方入国管理局長の裁決及び在留特別許可の許否の決定について,法務省が公表している「在留特別許可に係るガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)を踏まえて行うように要請していることからすると,ガイドラインは,単なる基本的な考え方や指針としての位置付けを超えて,在留特別許可の判断基準として扱われていることは明らかである。 b 積極要素原告らは,自ら東京入管に出頭して不法滞在者であることを申告しており,ガイドラインの「その他の積極要素」である「当該外国人が,不法滞在者であることを申告するため,自ら地方入国管理官署に出頭したこと」に該当する。 また,ガイドラインは「当該外国人が,別表第二に掲げる在留資格(注参照)で在留している者と婚姻が法的に成立している場合であって,前記1の(3)のア(夫婦として相当期間共同生活をし,相互に協力して扶助していること)及びイ(夫婦の間に子がいるなど,婚姻が安定かつ成熟していること)に該当すること」も積極要素として挙げているところ,原告母は,別表第二に含まれる「定住者」の在留資格を有するP5と事実婚の状況にある。在留特別許可の許否の判断においては,事実婚を一律に除外すべき理由はなく,夫婦の実態に基づいて判断することが法務大臣等の義務であると考えるべきであるところ,原告母とP5は,平成12年3月頃から同居を開始し,夫婦生活は本 件各裁決の時点でも13年弱に及んでいた上,その間に3人の子をもうけていたのであり,原告母とP5との関係は,相当期間相互に協 原告母とP5は,平成12年3月頃から同居を開始し,夫婦生活は本 件各裁決の時点でも13年弱に及んでいた上,その間に3人の子をもうけていたのであり,原告母とP5との関係は,相当期間相互に協力して扶助し,かつ,子供がいて婚姻が安定かつ成熟していたといえるから,原告母は上記の積極事情に該当する。 更に,原告母の日本での在留期間は既に13年以上に及んでおり,原告母は「当該外国人が,本邦での滞在期間が長期間に及び,本邦への定着性が認められること」という積極要素にも該当する。 一方,原告子らは,「当該外国人が,別表第二に掲げる在留資格で在留している者の扶養を受けている未成年・未婚の実子であること」に該当する。 このように,原告らは,いずれもガイドライン上の複数の積極要素に該当する。 c 消極要素原告子らは,何らの消極要素も有していない。原告子らは,定住者であるP5の子として在留資格を得るべき立場にあったが,原告母との婚姻が成立していなかったことなどから,P5との法的父子関係が成立せず,在留資格を得られなかったにすぎない(原告長男及び原告長女について,P5は △ 市役所に認知届を提出したが,その後当該届出は無効であるとして,職権で消除された。)。特に原告二女については,法定期間内に在留資格取得申請をしており,原告母やP5における手続的な懈怠もない。 原告母についても,出生日の誤った旅券による入国及び偽装結婚の事実が「船舶による密航,若しくは偽造旅券等又は在留資格を偽装して不正に入国したこと」ないし「その他在留状況に問題があること」に該当し得るのみである。偽装結婚による来日が原告母に一定程度不利益に考慮されることはやむを得ないとしても,原告母が出頭申告を して,違法状態の解消に寄与していること 状況に問題があること」に該当し得るのみである。偽装結婚による来日が原告母に一定程度不利益に考慮されることはやむを得ないとしても,原告母が出頭申告を して,違法状態の解消に寄与していることなどを考慮すれば,上記の事実を過度に悪質として評価すべきではない。 d 小括このように,消極要素と比較して明らかに大きな積極要素を多く持つ原告らに対して,在留特別許可を認めなかった本件各裁決は,平等原則に違反し,法務大臣等の裁量権を逸脱・濫用した違法なものである。 (ウ) 比例原則違反比例原則は,行政の権利活動一般に妥当する原理であり,在留特別許可を行わないことが,退去強制令書の発付及びそれに伴う収容や送還につながることに鑑みれば,在留特別許可に係る裁決も行政の権力活動として比例原則の適用対象となる。 本件各裁決後,原告母及びP5間に三女P8が出生し,三女は「定住者」の在留資格を得ている。そのため,現在では,P5と三女が在留資格を有する一方,原告らは在留資格を有しないという状況になっている。 そして,原告らが退去強制されると,原告らは上陸拒否の対象者として長年にわたり本邦に上陸することができないから,かかる処分は,原告母とP5との夫婦関係,P5と原告子らとの親子関係,原告母と三女との親子関係,原告子らと三女のきょうだい関係を長年にわたり断絶し,家族としての生活を実質的に不可能とするものであり,原告ら家族が被る不利益は余りにも大きい。 他方で,原告らに在留資格を与えたとしても,許可の適否は各個別事件の実情に応じて判断されるのであるから,同種の事案について在留資格を付与せざるを得なくなること等の,出入国管理上の抽象的不利益すら存しない。 このように,原告ら及びP5が受ける著しい不利益との比較衡量にお るのであるから,同種の事案について在留資格を付与せざるを得なくなること等の,出入国管理上の抽象的不利益すら存しない。 このように,原告ら及びP5が受ける著しい不利益との比較衡量にお いて,本件各裁決により達成される利益ははるかに小さく,本件各裁決は比例原則に違反する。 (エ) B規約違反国際慣習法上,国家が外国人の在留及び退去について判断権限を有し,それに基づく退去強制が認められているとしても,退去強制に関する判断の裁量は,市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下「B規約」という。)の各条項が保障する人権上の制約に服する。 B規約23条は,1項において「家族は,社会の自然かつ基礎的な単位であり,社会及び国による保護を受ける権利を有する。」,2項において「婚姻をすることができる年齢の男女が婚姻をしかつ家族を形成する権利は,認められる。」と定め,婚姻の権利を保障している。B規約23条が,婚姻の権利を,退去強制との関係で絶対的に認めるものではないとしても,退去強制の適否の判断において,国家がかかる権利を考慮することは当然に要請されていると考えるべきである。 本件各裁決は,原告ら及びP5の家族の結合の権利を害し,家族の強制的な分断を来すものであり,B規約23条に違反する。 (オ) 原告らの身分関係の確定を待たずに行われた本件各裁決が違法であることa 原告らの身分関係確定に向けた手続は順調に進んでいたこと(a) 原告長男の出生時に行った手続原告母及びP5は,平成18年▲月の原告長男出生時, △ 市役所に出生届を提出したほか,P5による認知手続のために領事館に行ったが,原告の母の旅券の生年月日に誤りがあるため,ボリビアでの手続によってこれを訂正しなければ,認知の手続ができないこ 時, △ 市役所に出生届を提出したほか,P5による認知手続のために領事館に行ったが,原告の母の旅券の生年月日に誤りがあるため,ボリビアでの手続によってこれを訂正しなければ,認知の手続ができないことが判明した。また,原告母及びP5は,原告長男の在留資格の取得について,栃木県 ● 市にある入国管理局(以下「入管」とい う。)の出張所に相談に行ったが,東京入管でなければ在留資格取得許可申請ができないと言われた。原告母及びP5は,その後,東京入管において原告長男の在留資格取得許可申請をしたが,申請期限を1日過ぎていたことから,同申請は受け付けられなかった。 (b) 原告長女の出生時に行った手続原告母及びP5は,平成19年▲月の原告長女出生時には,原告母の旅券の誤記の問題が解決していなかったこと,原告長男の出生時に認知も在留資格の取得も実現しなかったことから,出生届を提出する以外の手続を断念した。 (c) 出頭申告後に行った手続原告母,原告長男及び原告長女は,平成21年12月4日に入管に出頭して,在留特別許可を求めた。原告らは,平成23年7月7日に違反調査を受けた際,入管から,P5による原告長男及び原告長女の認知手続が必要であると指示された。そのため,P5は,翌8日に △ 市役所において,原告長男及び原告長女の認知届出をした。原告らは認知届の記載事項証明書を取って入管に提出したが,入管からは,日本での認知手続では不十分であり,ボリビアでの認知手続が必要であると指示された。 そこで,原告母及びP5は,再度ボリビアの領事館で認知の手続をしようとしたが,そのためには,まず原告母の旅券における生年月日の記載を訂正しなければならなかった。生年月日の正しい旅券を取得するに そこで,原告母及びP5は,再度ボリビアの領事館で認知の手続をしようとしたが,そのためには,まず原告母の旅券における生年月日の記載を訂正しなければならなかった。生年月日の正しい旅券を取得するには,正しく記載された出生記録証明書及び婚姻証明書並びにこれらに基づいて発行された身元証明書が必要であった(甲13,14)。しかし,これらは,ボリビア国内での原告母の登録事項に関わるものであったため,大部分の手続を領事館や弁護士を通じてボリビア国内で行わなければならず,遅々として進まなかっ た。原告母及びP5は,早く手続を進めるように入管から督促され,領事館から言われていた所要期間を入管に説明したが,それらの期限はボリビア側の都合で守られず,手続を進めることができなかった。 (d) 原告二女の出生時に行った手続原告母及びP5は,平成24年▲月▲日の原告二女出生時, ▽市役所に出生届を提出した。その後,原告らは ◎ 市に転居し,◎市役所に二女の認知届を提出しようとしたが,認知届は受け付けられなかった。 原告二女は,法定期間内に在留資格取得許可申請を行ったが,結果は不許可であった。 その後,原告母及びP5は, △ 市に再度戻り,原告二女の認知届を再度提出しようとしたが, △ 市役所は原告二女の認知届を受け付けず,更に,以前提出した原告長男及び原告長女の認知届も無効になったと原告らに告げた。 (e) 原告母の旅券の訂正手続の進ちょく状況前記(c)のとおり,原告母が生年月日の正しい旅券を取得するには,正しく記載された出生記録証明書及び婚姻証明書並びにこれらに基づいて発行された身元証明書が必要であった。 出生登録証明書は,原告母の父親の名字に誤りがあり(甲15),平成23年9月5日に訂正手続を終え(甲16),同年11月3 び婚姻証明書並びにこれらに基づいて発行された身元証明書が必要であった。 出生登録証明書は,原告母の父親の名字に誤りがあり(甲15),平成23年9月5日に訂正手続を終え(甲16),同年11月3日に訂正された出生登録証明書を発行の上(甲17),平成24年1月9日にその認証を受けた(甲18)。婚姻証明書は,生年月日に誤りがあったようであり,平成24年11月20日に訂正した上(甲19),同年11月27日にその発行を受けた(甲20)。身元証明書は,生年月日が正しいものと誤っているものが重複して発行さ れていたようであり,平成24年12月24日に誤ったものを無効化して,正しい身分証明書のみを有効化した(甲21)。これらの全ての手続を経て,原告母は,平成25年4月30日,旅券の発行を受けた(甲22)。 その結果,P5は,平成25年6月11日付けで,原告子ら全員について認知手続を完了し(甲4の1~3),現在ではP5と原告子らの親子関係は法的に成立している。また,三女については出生後の認知手続により在留資格取得も許可されている。 上記のとおり,原告母は,平成24年11月21日の本件各裁決時までに,既に出生登録証明書及び婚姻証明書の訂正手続を終えており,あとはそれらに基づいて身元証明書を訂正すれば,旅券の発行が受けられる状況にあった。 b 手続の遅延について原告らに責任はないこと原告らがボリビアにおける出生登録の必要性を認識するに至ったのは,平成23年7月に行われた違反調査後,日本で原告子らの認知届を済ませ,かかる手続では不十分であることを入管から指摘された以降のことである。その後,原告らは,同年9月における出生証明書の誤記修正から,平成25年4月30日の新旅券取得に至るまで,ボリビアでの様々な手続を叔 る手続では不十分であることを入管から指摘された以降のことである。その後,原告らは,同年9月における出生証明書の誤記修正から,平成25年4月30日の新旅券取得に至るまで,ボリビアでの様々な手続を叔父や現地の弁護士を通じて行ってきたところ,ボリビアでは各手続に常に時間がかかり,特に親族を通じてボリビア国内で手続をしなければならなかったことに鑑みれば,原告らが前記の全ての手続を終えるのに相当期間を要したことは不自然ではない。 特に,婚姻証明書の訂正は,生年月日の変更という重要な事項に関するものであり,出生登録証明書において父親の名字を訂正するのと比して時間がかかったとしても不思議ではない。原告らは,入管に指摘されたとおり,身分事項の訂正及び原告子らの出生登録をするために できる限りの努力をしていたのであり,怠慢等により手続を放置していたことはなく,身分関係の確定に時間を要したことについて,原告らが責を負うべきではない。 c 身分関係の確定を待たずに本件各処分を行う具体的必要性はなかったこと一般に,退去強制手続については,法律ないし規則上,手続に要する期間について制限や基準などは設けられておらず,対象者が収容されていない場合,在留特別許可の許否の判断まで長期間を要することは珍しくない。 原告らが平成21年12月に入管に出頭してから,平成24年11月の本件各裁決までは3年弱が経過しているものの,原告らに対する違反調査が行われたのが平成23年7月であり,それまでは原告らの事情聴取等実質的な調査は行われていなかったことに鑑みれば,本件各裁決がされるまでの実質的審理期間は約1年4か月にすぎず,他の退去強制案件と比して,特段長期ではない。 そして,原告らが出頭してから最初の違反調査まで1年8か月が経過していることも明らかである 各裁決がされるまでの実質的審理期間は約1年4か月にすぎず,他の退去強制案件と比して,特段長期ではない。 そして,原告らが出頭してから最初の違反調査まで1年8か月が経過していることも明らかであるように,原告らに対する在留特別許可の許否の判断を急いで行う具体的必要性は何もなかった。 d 本件各裁決が違法であること原告子らとP5間の生物学的な父子関係の存在は事実上明らかであり,原告らは,P5による認知に向けて法的手続を進めていた。原告らは,ボリビアで進められている諸手続について,正確な必要期間の展望こそ把握できていなかったが,手続を進めていることは入管の調査においても供述しており,入管においても,原告らの身分関係がいずれ法的に確定することは容易に想像し得た。 そして,前記bのとおり,原告らがボリビアにおける出生登録が在留 特別許可に不可欠であることを認識し,その前提となる原告母の身分事項の訂正等の手続を進めるようになったのは,平成23年7月の違反調査後にすぎないのであり,原告らによる諸手続が,他国において遠隔で行う法的手続として,過度に時間を費やしていたとまではいえない。 前記cのとおり,東京入管局長が本件各裁決について早急に判断しなければならない事情はなく,また,上記のとおり,原告らがボリビアで手続を進めていることを入管に供述していたことに鑑みれば,東京入管局長は,原告らに対して在留特別許可の不許可という重大な不利益処分を行うに先立って,原告らに対して身分関係手続の進ちょくを確認するとともに,客観的な手続関係書面の提出を求めるなどして身分関係が確定する時期の見込みを判断し,また,手続に時間を要している理由について原告らに弁明の機会を与えるなど,許否の判断の基礎となる事実関係について,より慎重に調査すべ 面の提出を求めるなどして身分関係が確定する時期の見込みを判断し,また,手続に時間を要している理由について原告らに弁明の機会を与えるなど,許否の判断の基礎となる事実関係について,より慎重に調査すべきであった。 実際に,本件各裁決のわずか5か月後には原告母は生年月日の訂正された旅券を取得し,その1か月後にはP5による認知が完了しているところ,本件各裁決の時点においても,前記a(e)のとおり身分関係確定の手続は,諸手続のかなり後半部分である原告母の婚姻証明書の訂正まで進んでいたのであるから,東京入管局長が本件各裁決前にごく簡単な進ちょくの調査をしていれば,身分関係の確定を待ってから在留特別許可の許否の判断をすることは容易に可能だったのであり,また,それが本件処理の過大な遅延を招くこともなかった。 P5と原告子らの間の父子関係は,本件における在留特別許可の許否の判断に際して最も重要な事実なのであるから,かかる身分関係の確定が直前に迫っていたにもかかわらず,それを待たずしてなされた本件各裁決における在留特別許可を不許可とする旨の判断は,明らかに判断のための重要な事実の基礎を欠き,社会通念上著しく妥当性を欠く。 よって,本件各裁決は,法務大臣等の裁量権を逸脱・濫用したものであり違法である。 (カ) 結論以上によれば,本件各裁決は,法務大臣等の裁量権を逸脱・濫用したものである上,ガイドライン,平等原則,比例原則,B規約23条などに違反する違法なものである。 イ本件各退令発付処分の違法性主任審査官は,法務大臣等から異議の申出が理由がないとの裁決の通知を受けたときには,速やかに当該容疑者に対し,その旨を知らせるとともに,退去強制令書を発付しなければならない(入管法49条6項)。 このように,法務大 臣等から異議の申出が理由がないとの裁決の通知を受けたときには,速やかに当該容疑者に対し,その旨を知らせるとともに,退去強制令書を発付しなければならない(入管法49条6項)。 このように,法務大臣等による異議の申出が理由がないとの裁決は,主任審査官に退去強制令書の発付を法律上義務付けるものであり,主任審査官には,退去強制令書を発付するか否かについての裁量の余地はないところ,東京入管主任審査官は,東京入管局長から前記のとおり違法な本件各裁決の通知を受け,これを前提として本件各退令を発付したのであるから,本件各退令発付処分も違法であり,無効ないし取消しを免れない。 (2) 被告の主張の要旨ア本件各裁決の適法性(ア) 在留特別許可に関する法務大臣等の裁量権在留特別許可の許否の判断については,法務大臣等に極めて広範な裁量権が認められていることから,在留特別許可を付与しないという法務大臣等の判断が裁量権の範囲の逸脱又は濫用に当たるとして例外的に違法となり得る場合があるとしても,それは,法律上当然に退去強制されるべき外国人について,なお我が国に在留することを認めなければならない積極的な理由があったにもかかわらずこれが看過されたなど,在留特別許可の制度を設けた入管法の趣旨に明らかに反するような極めて特 別な事情が認められる場合に限られる。 (イ) 原告母の入国・在留状況は極めて悪質であり,出入国管理行政上看過することができないことa 原告母が,内容虚偽の旅券を所持して本邦に不法入国したこと原告母は,平成11年5月11日,真実とは異なる生年月日が記載された内容虚偽のボリビア旅券を所持し,入管法所定の在留資格「定住者」,在留期間「1年」とする上陸許可の証印を受けて本邦に不法入国した。原 告母は,平成11年5月11日,真実とは異なる生年月日が記載された内容虚偽のボリビア旅券を所持し,入管法所定の在留資格「定住者」,在留期間「1年」とする上陸許可の証印を受けて本邦に不法入国した。原告母の不法入国は,我が国の出入国管理の基本秩序を害するものとして到底看過し得ないものであり,在留特別許可の判断に当たって極めて消極的な事情としてしん酌されるべきである。 b 原告母が,本邦での稼働を目的とし,P6との婚姻を偽装して「定住者」の在留資格を不正に受けたこと原告母は,ボリビアにおいて,虚偽の身分事項(生年月日を1970年5月3日とするもの)で「日本人の配偶者等」の在留資格を持つP6と偽装結婚した上で,平成11年5月11日,本邦での稼働を目的として,内容虚偽のボリビア旅券を行使し,入管法所定の在留資格「定住者」,在留期間「1年」の上陸許可の証印を受けて本邦に不法入国した。原告母の上記行為は,「出入国の公正な管理」(入管法1条)を著しく阻害するものであり,我が国の出入国管理行政の根幹を揺るがす甚だ悪質な行為であるから,これだけをみても,原告母について恩恵としての在留特別許可を付与する必要はないというべきである。 c 原告母が虚偽の身分事項で外登法上の登録を行ったこと原告母は,虚偽の身分事項で,外登法上の新規登録及び変更登録を申請し,その登録を受けた。このような原告母の行動は,本邦に在留する外国人の居住関係及び身分関係を明確ならしめ,もって在留外国 人の公正な管理に資することを目的とする外登法の趣旨に反し(同法1条),同法18条1項に定められた罰則規定にも抵触するものであり,在留特別許可を付与しない事情としてしん酌すべきことは当然である。 d 小括以上のとおり,原告母の入国及び在留状況は,我が国の 法18条1項に定められた罰則規定にも抵触するものであり,在留特別許可を付与しない事情としてしん酌すべきことは当然である。 d 小括以上のとおり,原告母の入国及び在留状況は,我が国の法秩序を乱す極めて悪質なものであって,出入国管理行政上到底看過することができないから,これらの事情は,原告母に対する在留特別許可を付与するか否かの判断において重要な消極的要素として十分考慮されるべきである。 (ウ) 原告らとP5との関係は在留特別許可を付与すべき事情として格別有利にしん酌すべき事情ではないことa 在留資格「定住者」を有する外国人との内縁関係は在留資格該当性を基礎付ける事情ではないこと在留特別許可は,在留資格制度を前提とするもので,在留資格該当性のない者に対し在留特別許可を付与することはおよそあり得ないところ,定住者との内縁関係は,在留資格該当性を基礎づける事実ではない。また,日本人や永住者等の配偶者であっても,在留特別許可の許否の判断に当たり当然に保護されなければならないものではなく,その上,婚姻が成立している事案との対比からすれば,本件のように内縁関係にあったにすぎない事案は,より保護の必要性が低いというべきである。 b 原告母とP5との関係は法的保護の必要性が低いこと仮に,原告母とP5との間に,事実上何らかの関係があったとしても,それは,原告母の不法在留という違法状態の上に築かれたものであり,保護すべき必要性が低いというべきである。 また,原告母とP5は,平成12年3月頃から交際を開始したとのことであり,原告母が,平成18年 ▲月 ▲日に原告長男を,平成19年 ▲月 ▲日に原告長女を,それぞれ出産したにもかかわらず,本件各裁決及び本件各退令発付処分時ばかりか,現時点にお を開始したとのことであり,原告母が,平成18年 ▲月 ▲日に原告長男を,平成19年 ▲月 ▲日に原告長女を,それぞれ出産したにもかかわらず,本件各裁決及び本件各退令発付処分時ばかりか,現時点においてもなお婚姻届を提出していない。このように,原告母とP5が,婚姻に向けた具体的な手立てを講じることなく漫然と過ごしていたことに照らしても,両者の関係を,原告母の在留特別許可の許否の判断において,積極的な事情として考慮しなければならない理由はない。 したがって,原告母とP5との関係は,原告母の在留特別許可を判断する上で格別積極的にしん酌しなければならない事情とはいえないというべきである。 c 原告子らとP5の関係は在留特別許可を付与すべき事情として格別有利にしん酌すべき事情ではないこと原告母とP5は,少なくとも平成23年7月7日に行われた原告母,原告長男及び原告長女に係る違反調査時まで,ボリビア大使館におけるP5の原告長男及び原告長女に対する認知手続を行っておらず,原告子らとP5との間には,本件各裁決時,法的に父子関係が存していなかった。 原告母は,入管に出頭する以前から,P5と原告子らとの法的な父子関係を成立させるためには,認知手続等が必要であること,及びそのために原告母の旅券の訂正が必要であることを認識していたにもかかわらず,東京入管に出頭するまで,旅券の生年月日を訂正する手続すらしておらず,原告母及びP5は,原告子らの認知手続をしなかった。かかる状況からすれば,原告子らとP5との間に法的な父子関係が認められない状況にあることにつき,しん酌すべき事情が存するなどとみる余地はない。 したがって,原告子らとP5の関係は,在留特別許可を付与すべき事情として格別有利にしん酌すべき事情であるとはいえ ない状況にあることにつき,しん酌すべき事情が存するなどとみる余地はない。 したがって,原告子らとP5の関係は,在留特別許可を付与すべき事情として格別有利にしん酌すべき事情であるとはいえない。 d 原告らが退去強制を受けることが,P5との完全な別離を意味するわけではないこと原告らが退去強制を受けたからといって,本邦でP5と生活することができなくなるだけであって,ボリビア国籍を有するP5との別離を余儀なくされるものではない。P5が再入国許可を利用してボリビアに渡航することは可能であるし,原告らとP5が,手紙や国際電話,インターネット等によって連絡をとることも容易である。 e 小括以上のとおりであるから,原告らとP5との関係は,原告らに在留特別許可を付与すべき特別な事情とはならないというべきである。 (エ) 原告らと三女との関係は在留特別許可の許否の判断に当たりしん酌されることのある事情の一つにすぎないこと三女は,本件各裁決の約1年後である平成25年 ▲ 月 ▲ 日に出生したものであり,同人が「定住者」の在留資格を付与されたのも,平成26年2月4日であるから,同人の存在もその在留資格の付与も,裁決後の事情であり,本件各裁決の適法性の判断を左右しない。 上記の点をおくとしても,法務大臣等の在留特別許可の許否に関する裁量の範囲は極めて広範であり,退去強制事由に該当する外国人に定住者の在留資格を有する子がいることは,法務大臣等が当該外国人に対して特別に在留を許可すべきか否かの判断をする際にしん酌される事情の一つとはなり得るものの,定住者の在留資格を有する者との親子関係の存在が,法務大臣等の在留特別許可をすべきか否かの判断に関する裁量権の行使に対する制約になるとは解し得ない。 また,原告らが本邦から とはなり得るものの,定住者の在留資格を有する者との親子関係の存在が,法務大臣等の在留特別許可をすべきか否かの判断に関する裁量権の行使に対する制約になるとは解し得ない。 また,原告らが本邦から退去強制されてボリビアに帰国したとしても, 本邦において三女と生活することができなくなるというだけであって,三女との別離を余儀なくされるものではないし,三女が原告らと共に本国であるボリビアに帰国して共に生活することは十分に可能である。 (オ) 原告母が日系人であることは在留を特別に許可すべき特別な事情とはならないこと法務大臣等の在留特別許可の許否に関する裁量の範囲は極めて広範であり,退去強制事由のある外国人が日系人であることは,法務大臣等が当該外国人に対して特別に在留を許可すべきか否かの判断をする際にしん酌される事情の一つとはなり得るものの,法務大臣等の在留特別許可の許否の判断に関する裁量権の行使の制約となるとは解されない。 なお,前記(イ)のとおり,原告母の入国及び在留状況は極めて悪質であることなどからすれば,原告母が日系人であるとしても,かかる事情をもって原告母に恩恵としての在留特別許可を付与する余地はないというべきである。 (カ) 原告らが本邦に長期間在留していることは在留特別許可を付与すべきか否かの判断において格別積極的にしん酌すべき事情とはいえないこと法務大臣等の在留特別許可の許否に関する裁量の範囲は極めて広く,入管法は,在留特別許可を行うか否かの判断に関して,特定の事項を考慮しなければならないなどとする規定は設けていない。また,長期間不法残留していたということは,違法状態の長期間の継続にほかならず,法的保護を受け得る筋合いのものではない。 したがって,原告らが本邦において長期間 どとする規定は設けていない。また,長期間不法残留していたということは,違法状態の長期間の継続にほかならず,法的保護を受け得る筋合いのものではない。 したがって,原告らが本邦において長期間在留していることは在留特別許可を付与すべきか否かの判断において格別積極的にしん酌すべき事情とはならないというべきである。 (キ) B規約に係る原告らの主張には理由がないこと 原告らは,本件各裁決が,B規約23条で認められる家族の結合の権利を侵害する違法なものである旨主張する。 しかし,そもそも,国家は,外国人を受け入れる義務を国際慣習法上負うものではなく,外国人を自国内に受け入れるか否か,これを受け入れる場合にいかなる条件を付すかは,国際慣習法上自由にこれを決することができるというのが原則である。憲法上も,外国人は,我が国に入国する自由を保障されているものでないことはもちろん,本邦に在留する権利ないし引き続き本邦に在留することを要求する権利を保障されているものでもない。B規約中には上記国際慣習法上の原則を排斥する規定が存在しない上,B規約13条が,外国人について,法律に基づき退去強制手続を執ることを容認していることに照らすと,B規約は,上記国際慣習法上の原則を当然の前提とし,その原則を基本的に変更するものとは解されない。また,B規約23条は,その文言からして,外国人の在留の権利を特に定めたものとは認められず,外国人が家族生活を営むために本邦に残留する権利を保障したものとも解されない。 したがって,B規約23条は,憲法13条,24条あるいは適正手続を定めた憲法の諸規定による人権保障を超える権利を外国人に付与するものではなく,少なくとも国内法が規定する退去強制事由のある外国人を国籍国に送還することについての法務大臣等の裁量権 あるいは適正手続を定めた憲法の諸規定による人権保障を超える権利を外国人に付与するものではなく,少なくとも国内法が規定する退去強制事由のある外国人を国籍国に送還することについての法務大臣等の裁量権をB規約23条の規定が制限する趣旨のものであると解することはできない。本件各裁決がB規約23条に違反するとの原告らの主張は,在留特別許可の法的性格を正解しないものであり,失当である。 (ク) ガイドライン及び平等原則に係る原告らの主張が失当であること原告らは,ガイドラインが在留特別許可の判断基準として扱われているとし,原告らがガイドラインに掲げられた積極要素に該当しているとして,本件各裁決が平等原則に違反し,違法である旨主張する。 しかし,そもそも,在留特別許可は,諸般の事情を総合的に考慮した上で個別的に決定されるべき恩恵的措置であって,平等原則にのっとってその許否を判断するものではない上,その許否の判断を拘束する行政先例ないし一義的,固定的基準なるものは存在しない。 ガイドラインは,在留特別許可の許否の判断に当たって考慮すべき当該外国人の個別的事情を,「積極要素」と「消極要素」に分けて類型的に分類し,「在留特別許可方向」で検討する例,「退去方向」で検討する例を一般的抽象的に例示したものであるが,在留特別許可を付与するか否かは,ガイドラインに例示された事情だけで判断されるものではない。その意味で,ガイドラインは在留特別許可に係る一義的,固定的な基準とはいえない。 したがって,仮に,ガイドラインに示された「積極要素」に該当すると評価できるような事情が存在したとしても,そのことだけで当然に在留特別許可を付与すべきであるということにはならず,まして在留特別許可をしなかったことが法務大臣等に与えられた裁量権の逸脱・濫用 すると評価できるような事情が存在したとしても,そのことだけで当然に在留特別許可を付与すべきであるということにはならず,まして在留特別許可をしなかったことが法務大臣等に与えられた裁量権の逸脱・濫用になるということはできない。 (ケ) 比例原則に係る原告らの主張が失当であること原告らは,原告ら及びP5が受ける著しい不利益との比較衡量において,本件各裁決により達成される利益ははるかに小さく,本件各裁決は比例原則に違反すると主張する。 しかし,そもそも,在留特別許可は,退去強制事由のある外国人に対して法務大臣が恩恵的に付与するものであり,比例原則にのっとって判断をするものではない。すなわち,法務大臣等が在留特別許可を付与しなかったことに関する司法審査の在り方としては,法務大臣等の第一次的な裁量判断が既に存在することを前提として,在留特別許可の制度を設けた法の趣旨に明らかに反するような特別の事情が認められるか否か が判断されるべきである。 したがって,法務大臣等の裁量権が比例原則に拘束されることを前提とする原告らの上記主張は,在留特別許可の法的性格を正解しないものであり,失当である。 (コ) 原告らを本国に送還する上で特段の支障がないことa 原告母は,本国であるボリビアで生まれ育ち,本国において教育を受けたものであり,本邦に入国するまで,我が国とは何ら関わりのなかった者である。 また,原告母は,稼働能力を有する成人であり,本国での稼働歴も有し,本国には妹が在住しており,月に1,2回は連絡を取っているなど,交流は継続している。 b また,原告子らは,本件各裁決時において,原告長男が満6歳,原告長女が満5歳,原告二女が満0歳であり,いまだ環境の変化に対する順応性 1,2回は連絡を取っているなど,交流は継続している。 b また,原告子らは,本件各裁決時において,原告長男が満6歳,原告長女が満5歳,原告二女が満0歳であり,いまだ環境の変化に対する順応性や可塑性に富む年齢であり,原告長男及び原告長女については,原告母やP5とスペイン語で会話をしているというのであるから,自国の生活習慣及び言語等に習熟した原告母とともに本国に帰国し,親族の協力を得て,本国での生活に慣れ親しむことは十分に可能である。そして,原告子らは,健康状態が良好である。 c さらに,P5が本国であるボリビアに帰国することについて特段の支障はなく,原告ら家族がボリビアにおいて共に生活することは十分に可能である。 d したがって,原告らを本国に送還することに特段の支障があるとは認められない。 (サ) 小括以上のとおり,原告母の入国及び在留状況は極めて悪質であって,原告らに格別積極的にしん酌すべき事情はなく,原告らが帰国する上で特 段の支障もないことからすれば,法務大臣等の広範な裁量権を前提として,原告らに在留を特別に許可しなければ法の趣旨に明らかに反するような極めて特別な事情があるとは認められない。 したがって,原告らに在留特別許可を付与しないとの東京入管局長の判断に裁量権の逸脱又は濫用があるとはいえないから,本件各裁決は適法である。 イ本件各退令発付処分の適法性退去強制手続において,法務大臣等から異議の申出には理由がないとの裁決をした旨の通知を受けた場合,主任審査官は,速やかに退去強制令書を発付しなければならず(入管法49条6項),退去強制令書の発付につき裁量の余地は全くないから,本件各裁決が適法である以上,本件各退令発付処分も当然に適法である。 第3 当裁判所の判断 制令書を発付しなければならず(入管法49条6項),退去強制令書の発付につき裁量の余地は全くないから,本件各裁決が適法である以上,本件各退令発付処分も当然に適法である。 第3 当裁判所の判断 1 本件各裁決の適法性について(1) 在留特別許可の許否の判断における法務大臣等の裁量権国際慣習法上,国家は外国人を受け入れる義務を負うものではなく,特別の条約がない限り,外国人を自国内に受け入れるかどうか,また,これを受け入れる場合にいかなる条件を付すかを自由に決定することができるものとされており,憲法上,外国人は我が国に入国する自由を保障されているものでないことはもちろん,在留の権利ないし引き続き在留することを要求することができる権利を保障されているものでもない(最高裁昭和32年6月19日大法廷判決・刑集11巻6号1663頁,最高裁昭和53年10月4日大法廷判決・民集32巻7号1223頁参照)。 そして,入管法50条1項の在留特別許可については,入管法24条各号が定める退去強制事由に該当する外国人が入管法50条1項各号のいずれかに該当するときにすることができるとされているほかは,その許否の判断 の要件ないし基準とすべき事項は定められていない上,外国人の出入国管理は国内の治安と善良な風俗の維持,保健・衛生の確保,労働市場の安定等の国益の保持を目的として行われるものであって,このような国益の保持の判断については,広く情報を収集しその分析の上に立って時宜に応じた的確な判断を行うことが必要であり,高度な政治的判断を要求される場合もあり得ることを勘案すれば,在留特別許可をすべきか否かの判断は法務大臣の広範な裁量に委ねられているというべきである。 そうすると,在留特別許可をするか否かについての法務大臣の判断が される場合もあり得ることを勘案すれば,在留特別許可をすべきか否かの判断は法務大臣の広範な裁量に委ねられているというべきである。 そうすると,在留特別許可をするか否かについての法務大臣の判断が違法となるのは,その判断が重要な事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるなど,法務大臣が裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用した場合に限られるというべきであって,このことは法務大臣から権限の委任を受けた地方入国管理局長についても同様というべきである。 以上と異なる原告ら及び被告の各主張はいずれも採用することができない。 そこで,以上の見地から,本件各裁決における東京入管局長の判断が上記の裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものと認められるか否かについて検討する。 (2) 認定事実前提事実,文中記載の各証拠(下記認定事実に反する部分を除く。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア原告らの身上・経歴等(ア) 原告母は,1977年(昭和52年)▲月▲日にボリビアで出生したボリビア国籍を有する外国人である。 原告母の祖母(父の母)であるP9は,日本人であるP10の二女として,1927年(昭和2年)▲月▲日にボリビアで出生し,平成12年 ▲ 月 ▲ 日に日本の戸籍に入籍した者である(甲24,25,乙2)。 そのため,原告母は,平成12年 ▲ 月 ▲ 日以降において日系3世の 立場にあった。 この点に関し,原告らは,昭和2年当時,ボリビアで出生した日本人は出生時の国籍の留保を必要とされていなかったことから,原告母の祖母は出生以来日本人であり,原告母は出生より日系3世であった旨主張する。確かに,旧国籍法(昭和25年法律第147号による廃止前のもの)20条の 国籍の留保を必要とされていなかったことから,原告母の祖母は出生以来日本人であり,原告母は出生より日系3世であった旨主張する。確かに,旧国籍法(昭和25年法律第147号による廃止前のもの)20条の2は,勅令で指定する外国で出生したことによりその国の国籍を取得した日本人は,日本国籍を留保する意思表示をしない限り,出生時に遡って日本国籍を失う旨定めており,ボリビアは上記勅令で指定する外国に含まれていなかったことから,原告母の祖母は,上記規定により出生時に遡って日本国籍を喪失することはなかったと解される。 しかし,原告母の祖母のその後における国籍の得喪等に係る事実関係は明らかでなく,同人が出生時から現在まで日本国籍を保持し続けていたことを認めるに足りる的確な証拠はないから,原告らの上記主張を採用することはできない。 (イ) P5は,1977年(昭和52年) ▲ 月 ▲ 日生まれのボリビア国籍を有する外国人であり,平成11年9月4日に上陸許可を受けて本邦に入国した。P5の祖父が日本人であるため,P5は日系3世に当たり,定住者(3年)の在留資格で本邦に在留している。(前提事実(1)オ)(ウ) 原告母とP5との間には,原告長男,原告長女,原告二女及び三女の4子がおり,原告ら家族5人は,肩書住所地において同居し,P5の稼働収入によって生計を維持している(甲1・4頁及び5頁)。 イ原告らの入国・在留状況,本件各裁決及び本件各退令発付処分に至る経緯等(ア) 原告母は,1993年(平成5年) ▲ 月 ▲ 日,ボリビアにおいて虚偽の身分事項(生年月日を1970年5月3日とするもの)で「日本人の配偶者等」の在留資格を持つ外国人であるP6と偽装結婚した。 (イ) 原告母は,平成11年5月11日,本邦での稼働を目 身分事項(生年月日を1970年5月3日とするもの)で「日本人の配偶者等」の在留資格を持つ外国人であるP6と偽装結婚した。 (イ) 原告母は,平成11年5月11日,本邦での稼働を目的として(乙6・7頁,原告母7頁),真実とは異なる生年月日(1970年5月3日)が記載された内容虚偽のボリビア旅券を行使し,入管法所定の在留資格「定住者」,在留期間「1年」とする上陸許可の証印を受けて本邦に不法入国した。 (ウ) 原告母は,平成11年12月にP5と知り合い,平成12年3月頃に交際を始め,その後程なくして同居を開始した。原告母は,本邦入国後,約1年間は不法就労に従事したが,在留資格が切れてからは主婦業に専念した。(乙6・11頁ないし13頁,原告母7頁)(エ) 平成18年 ▲月 ▲日,原告母とP5との間に原告長男が出生し,原告母は,△市役所に原告長男の出生届を提出した(甲1・1頁)。 原告長男は,入管法22条の2第3項又は第4項の規定に基づく在留資格の取得許可を受けることなく,出生後60日を経過する平成18年5月25日を超えて不法残留するに至った。 原告長男の出生後,P5による認知手続を行うため,原告母及びP5がボリビア大使館に行ったところ,認知をするためには,原告母の旅券の出生年月日の記載を訂正する必要があり,そのためには,ボリビアで様々な手続を行う必要がある旨の説明を受けた。しかし,原告母は,本国での手続を代理してくれる人がなかなか見付からなかったこともあり,その時点では当該手続を行わなかった。(甲1・1~2頁,原告母10頁。なお,原告母は,本人尋問において,平成23年7月の入管での取調べの際,入管から原告子らの認知が必要であると言われ,その後に自己のパスポートの生年月日の訂正手続が必要であることが分かった旨供 頁。なお,原告母は,本人尋問において,平成23年7月の入管での取調べの際,入管から原告子らの認知が必要であると言われ,その後に自己のパスポートの生年月日の訂正手続が必要であることが分かった旨供述するが(原告母14頁),原告母の陳述書(甲1)に上記認定事実のとおりの記載があることに照らして,採用できない。)(オ) 平成19年 ▲月 ▲日,原告母とP5との間に原告長女が出生し, 原告母は,△市役所に原告長女の出生届を提出した(甲1・2頁)。 原告長女は,入管法22条の2第3項又は第4項の規定に基づく在留資格の取得許可を受けることなく,出生後60日を経過する平成19年8月28日を超えて不法残留するに至った。 (カ) 原告母,原告長男及び原告長女は,平成21年12月4日,東京入管に出頭し,原告母は不法入国の事実を,原告長男及び原告長女は不法残留の事実をそれぞれ申告した。 その後,原告らと入管との間でやり取りはなく,後記(キ)のとおり平成23年7月に最初の違反調査が行われるまでの間,原告らは入管からの呼出しを待っている状態であった(原告母13頁及び14頁)。 (キ) 東京入管入国警備官は,平成23年7月7日,原告母,原告長男及び原告長女に係る違反調査を行い,P5からも事情を聴取した。 原告母及びP5は,上記違反調査の際,両者が日本人の祖母又は祖父を持つ日系3世であり,P5が定住者の在留資格で本邦に在留していること,原告長男及び原告長女が原告母とP5の実子であることは間違いないこと,現在,P6の所在がわからず,原告母の離婚手続ができない状態であるが,離婚手続が完了次第,婚姻する予定であることを述べた(乙6・3頁,4頁,9頁及び11頁,乙7・1頁,2頁及び4頁,6頁及び14頁)。 原告母及びP5は,上記違反調査 続ができない状態であるが,離婚手続が完了次第,婚姻する予定であることを述べた(乙6・3頁,4頁,9頁及び11頁,乙7・1頁,2頁及び4頁,6頁及び14頁)。 原告母及びP5は,上記違反調査の際,東京入管から,原告長男及び原告長女が在留資格を得るためには,P5による認知手続が必要である旨を指示された(甲1・2頁,原告母14頁)。そこで,P5は,上記違反調査の翌日である平成23年7月8日, △ 市役所において,原告長男及び原告長女の認知届を提出し,原告長男及び原告長女は,いずれも世帯主であるP5との続柄を「子」とする外登法9条2項に基づく変更登録を受けた(甲5の1,2,乙1の2・3枚目及び4枚目,乙1の 3・3枚目及び4枚目)。ただし,上記認定届出は,後に無効な認知として職権消除された(甲1・3頁,乙21・12頁)。 原告母及びP5は,上記認知届出に係る証明書を取得して東京入管に提出したが,東京入管からは,本邦における認知届出ではなく,ボリビアでの認知手続が必要であると指摘された(甲1・2頁)。これを受けて,原告母は,後記ウのとおりの手続を行った。 (ク) 東京入管入国警備官は,平成23年9月16日,原告母が入管法24条1号(不法入国)に,原告長男及び原告長女が入管法24条7号(不法残留)に,それぞれ該当すると疑うに足りる相当の理由があるとして,東京入管主任審査官から各収容令書の発付を受け,同月22日,各収容令書を執行し,原告母を入管法24条1号該当容疑者,原告長男及び原告長女を入管法24条7号該当容疑者として,それぞれ東京入管入国審査官に引き渡した。 (ケ) 東京入管主任審査官は,平成23年9月22日,原告母,原告長男及び原告長女に対し,それぞれ仮放免を許可した。 (コ) 東京入管入国審査官は,平成23年9月 京入管入国審査官に引き渡した。 (ケ) 東京入管主任審査官は,平成23年9月22日,原告母,原告長男及び原告長女に対し,それぞれ仮放免を許可した。 (コ) 東京入管入国審査官は,平成23年9月22日,原告母,原告長男及び原告長女に係る違反審査を行い,その結果,原告母が入管法24条1号に該当する旨,原告長男及び原告長女が入管法24条7号に該当し,かつ,出国命令対象者に該当しない旨の認定をし,原告母,原告長男及び原告長女にその旨通知したところ,同人らは,同日,特別審理官による口頭審理を請求した。 (サ) 平成24年▲月▲日,原告母とP5との間に原告二女が出生し,原告母は,▽市役所に原告二女の出生届を提出した(甲1・3頁)。 原告二女は,平成24年3月2日,東京入管において,在留資格取得許可申請をしたが,東京入管局長は,平成24年3月13日,これを不許可とした。 原告二女は,入管法22条の2第3項又は第4項の規定に基づく在留資格の取得許可を受けることなく,出生後60日を経過する平成24年4月7日を超えて不法残留するに至った。 なお,P5は,平成24年4月26日に,原告二女の認知届を提出した(乙1の4・3枚目)。 (シ) 東京入管入国警備官は,平成24年6月18日,原告二女に係る入管法違反容疑について違反事件として立件した。 (ス) 東京入管入国警備官は,平成24年7月4日,原告二女に係る違反調査をした。 原告母は,上記違反調査において,原告二女の認知手続のためには,原告母の旅券が必要であるところ,現在,本国から,原告母の生年月日が訂正された婚姻証明書と身分証明書の送付を待っている状態であり,これらが到着次第,真正身分事項による旅券を作成する予定であるが,旅券作成までには,あと2か月くらいかかると思う ら,原告母の生年月日が訂正された婚姻証明書と身分証明書の送付を待っている状態であり,これらが到着次第,真正身分事項による旅券を作成する予定であるが,旅券作成までには,あと2か月くらいかかると思う旨,また,真正身分事項による旅券を作成し,P6との離婚手続をした上で,ボリビアの法律に基づいて3か月の待婚期間を経た後,P5との婚姻手続を行う予定である旨を供述した(乙15・10頁ないし12頁)。 (セ) 東京入管入国警備官は,平成24年8月27日,原告二女が入管法24条7号(不法残留)に該当すると疑うに足りる相当の理由があるとして,東京入管主任審査官から収容令書の発付を受け,同月30日,収容令書を執行し,原告二女を入管法24条7号該当容疑者として,東京入管入国審査官に引き渡した。 (ソ) 東京入管主任審査官は,平成24年8月30日,原告二女に対し,仮放免を許可した。 (タ) 東京入管入国審査官は,平成24年8月30日,原告二女に係る違反審査を行い,その結果,原告二女が入管法24条7号に該当し,かつ, 出国命令対象者に該当しない旨の認定をし,原告二女にその旨通知したところ,原告二女は,同日,特別審理官による口頭審理を請求した。 (チ) 東京入管特別審理官は,平成24年11月9日,原告らに係る口頭審理を行った。 原告母及びP5は,上記口頭審理において,同居を始めてから結婚を考えていたが,原告母の離婚や生年月日など難しい問題がたくさんあったため,出頭申告前には婚姻のための行動は取らなかったこと,入管に出頭後,ボリビアの叔父が弁護士に依頼して,原告母の出生証明書の生年月日を訂正する手続を終えたこと,現在,原告母の婚姻証明書の生年月日を訂正する手続中であり,あと1か月くらいで同手続が完了し,その後,P6との離婚手続を経て3か月の 頼して,原告母の出生証明書の生年月日を訂正する手続を終えたこと,現在,原告母の婚姻証明書の生年月日を訂正する手続中であり,あと1か月くらいで同手続が完了し,その後,P6との離婚手続を経て3か月の待婚期間後にP5と結婚できる見込みであるが,弁護士によると,結婚まであと9か月くらい掛かる見通しであること,原告子らの出生登録は未了であるが,出生登録のためには,原告母の正しい旅券が必要であり,旅券を作るには,原告母の正しい生年月日の出生証明書だけでなく,正しい生年月日の婚姻証明書を提出する必要があること,いまだにP5との婚姻や出生登録等ができないのは,ボリビアでの手続がなかなか進まないためであること,婚姻証明書の生年月日の訂正が完了し,出生登録ができるまであと2か月くらい掛かる見込みであることなどを供述した(乙21・9頁ないし13頁)。 東京入管特別審理官は,口頭審理の結果,入国審査官の前記(コ)及び(タ)の認定に誤りはない旨の判定をし,原告らにその旨通知したところ,原告らは,同日,法務大臣に対し,異議の申出をした。 (ツ) 法務大臣から権限の委任を受けた東京入管局長は,平成24年11月21日,前記(チ)の異議の申出には理由がない旨の各裁決(本件各裁決)をし,同日,東京入管主任審査官に同裁決を通知した。 (テ) 前記(ツ)の通知を受けた東京入管主任審査官は,平成24年12月 5日,原告らに対し,本件各裁決を通知するとともに,原告らに係る各退去強制令書(本件各退令)を発付し(本件各退令発付処分),東京入管入国警備官は,同日,原告らに対し,本件各退令を執行した。 (ト) 東京入管主任審査官は,平成24年12月5日,原告らに対し,仮放免を許可した。 (ナ) 平成25年 ▲ 月 ▲ 日,原告母とP5との間に三女が出生し,原告母は し,本件各退令を執行した。 (ト) 東京入管主任審査官は,平成24年12月5日,原告らに対し,仮放免を許可した。 (ナ) 平成25年 ▲ 月 ▲ 日,原告母とP5との間に三女が出生し,原告母は,平成25年 ▲ 月 ▲ 日, △ 市役所に三女の出生届を提出した(甲10)。 三女については,2014年(平成26年)1月24日に出生登録が行われ,三女は同年2月4日付けで定住者(1年)の在留資格取得許可を受けた(甲26)。 ウ原告らとP5間の身分関係の確定のための手続(ア) ボリビアでの出生登録には,両親の身元証明書,旅券,出生登録証明書(Certificadodenacimiento)及び婚姻証明書の各原本などが必要とされているため(甲12),P5の子として原告子らの出生登録をするためには,その前提として,原告母の旅券の生年月日を訂正する手続が必要であった。 そして,旅券の更新には,身元証明書,婚姻証明書及び出生登録証明書の各原本などが必要であり(甲13),身元証明書の発行のためには,出生登録証明書及び婚姻証明書の各原本などが必要であること(甲14)から,生年月日が正しく記載された旅券の発行を受けるためには,正しく記載された出生登録証明書及び婚姻証明書並びにそれらに基づいて発行された身元証明書の取得が必要であった。これらの手続は,ボリビア国内での原告母の登録事項に関わるものであったことから,いずれもボリビア国内で行う必要があり,原告母はボリビアの親族及び弁護士を通じて手続を行わざるを得なかったが,手続は遅々として進まなかった(甲 1・2頁及び3頁,原告母14頁)。 (イ) 原告母の出生登録証明書(甲15)は,父親の名字に誤りがあったことから,原告母は,2011年(平成23年)9月5日,その訂正手続を終え た(甲 1・2頁及び3頁,原告母14頁)。 (イ) 原告母の出生登録証明書(甲15)は,父親の名字に誤りがあったことから,原告母は,2011年(平成23年)9月5日,その訂正手続を終え(甲16),同年11月3日,訂正された出生登録証明書の発行を受け(甲17),2012年(平成24年)1月9日,その認証を受けた(甲18)。 (ウ) 原告母の婚姻証明書(P6との婚姻に係るもの)は,原告母の生年月日に誤りがあったことから,原告母は,2012年(平成24年)11月20日にこれを訂正した上で(甲19),同年11月27日,訂正された内容の婚姻証明書の発行を受けた(甲20)。 (エ) 原告母の身元証明書については,2012年(平成24年)12月24日に誤ったものを無効化して,正しい身元証明書のみを有効化する手続を行った(甲21)。 (オ) これらの全ての手続を経て,原告母は,2013年(平成25年)4月30日,生年月日が正しく記載された旅券の発行を受けた(甲22)。 (カ) 2013年(平成25年)6月11日,P5を父とする原告子らの出生登録手続が完了した(甲4の1ないし3)。 (キ) 原告母は,弁護士に依頼をして,P6の住所を調査した上で(甲1・4頁),名古屋家庭裁判所に対し,婚姻無効確認の申立てを行い,平成25年7月12日,原告母とP6間の婚姻無効確認審判がされ(甲2),同年8月9日,同審判は確定した(甲3)。 ボリビアの再婚禁止期間は300日であることから,原告母とP5は同期間が満了する平成26年6月頃に婚姻する予定である(原告母5頁)。 (3) 検討ア原告子らについて(ア) 原告子らは,前記のとおり,入管法24条7号所定の退去強制事由 に該当するから,原則として本邦から当然に退去されるべき 母5頁)。 (3) 検討ア原告子らについて(ア) 原告子らは,前記のとおり,入管法24条7号所定の退去強制事由 に該当するから,原則として本邦から当然に退去されるべき法的地位にあるということができる。しかしながら,在留特別許可に係る判断については,以下のような事情を検討する必要がある。 (イ) 原告子らの積極要素について「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第二の定住者の項の下欄に掲げる地位を定める件」(平成2年法務省告示第132号,以下「定住者告示」という。)は,4号において「日本人の子として出生した者でかつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるものの実子の実子(略)であって素行が善良であるものに係るもの」を挙げ,また,6号のハにおいて「第三号,第四号又は前号ハに掲げる地位を有する者として上陸の許可,在留資格の変更の許可又は在留資格の取得の許可を受けた者で一年以上の在留期間を指定されている定住者の在留資格をもって在留するものの扶養を受けて生活するこれらの者の未成年で未婚の実子であって素行が善良であるもの」を挙げている。 この定住者告示は,直接には上陸申請の許否の基準を定めたものであるが(7条1項2号),「定住者」の在留資格を与える者の地位が類型化して列挙されており,「特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して居住を認める」(入管法別表第二)か否かに係る法務大臣の裁量的判断を具体化したものというべきところ,上陸許可に係る在留資格該当性の判断と在留特別許可に係る判断との整合性確保の観点からすれば,後者の判断においても,定住者告示の趣旨及び内容は十分に尊重されるべきであると解される。 しかるに,前記(2)ア(イ)のとおり,P5は日系3世であり, 係る判断との整合性確保の観点からすれば,後者の判断においても,定住者告示の趣旨及び内容は十分に尊重されるべきであると解される。 しかるに,前記(2)ア(イ)のとおり,P5は日系3世であり,定住者(3年)の在留資格をもって本邦に在留している者であるから,P5の子であり,同人に扶養されて生活している原告子らは,定住者告示6号のハ が定める要件を充たし得る立場にある。そして,原告子らは,いずれも,原告母の来日後に本邦で出生した者であり,不法残留に至った経緯について原告子ら自身に責められるべき点はない。さらに,前記(2)イ(ナ)のとおり,平成25年 ▲ 月 ▲ 日,原告母及びP5間には三女としてP8が出生し,三女については,平成26年2月4日に「定住者」の在留資格が付与されている。 以上の点を勘案すると,原告子らが「定住者」の在留資格を有する父P5の子であることは,定住者告示の趣旨及び内容に照らし,在留特別許可の判断に当たって斟酌されるべき重要な積極要素であるということができる。 (ウ) 認知手続の遅延について前記(2)イ(キ)のとおり,平成23年7月7日に行われた違反調査において,東京入管の担当者は,原告母及びP5に対し,原告長男及び原告長女が在留資格を得るためには,P5による認知の手続(P5を父とする原告子らについての出生登録証明書の取得)が必要である旨を指示したことが認められるところ,上記の指示は,原告子らとP5との間の法的な父子関係を確定させることが,在留特別許可の判断にとって重要な積極要素となることを示唆していたものということができる。 もっとも,本件各裁決がされた平成24年11月当時,原告子らについて,P5を父とする出生登録手続は完了しておらず,原告子らとP5との間の法律上の父子関係は確定し いたものということができる。 もっとも,本件各裁決がされた平成24年11月当時,原告子らについて,P5を父とする出生登録手続は完了しておらず,原告子らとP5との間の法律上の父子関係は確定していなかった。 しかしながら,それは,前記(2)ウ(ア)のとおり,ボリビアでの出生登録には,原告母の旅券の生年月日を訂正する手続及び,その前提として,原告母の出生登録証明書,婚姻証明書及び身元証明書の訂正等の手続が必要であり,それらの手続に期間を要したためであった。これらの手続は,ボリビア国内での原告母の登録事項に関わるものであり,いずれも 同国内で行う必要があったことから,手続の完了までには一定程度時間が掛かることが見込まれたが,原告子らについて出生登録手続を行う障害となっているのは,原告母の旅券の生年月日に不備があるという点のみであったから,上記の諸手続を経て,原告母の旅券の訂正手続が完了すれば,原告子らがP5の子として定住者の在留資格を取得できることが見込まれる状況にあった。 そして,前記(2)ウのとおり,原告母は上記の各手続をボリビア国内で親族等を通じて行わざるを得ず,手続は遅々として進まなかったものの,本件各裁決がされた時点では,既に原告母の出生登録証明書及び婚姻証明書の訂正手続を完了し,後はこれらに基づいて身元証明書の訂正を行えば原告母の旅券が訂正できる状況となっていた。そして,本件各裁決の約5か月後には,原告母は生年月日が正しく記載された旅券の発行を受けており,その約1か月半後にはP5を父とする原告子らの出生登録手続が完了した。 上記の各手続の進ちょく状況について,原告母は,平成24年7月4日に行われた原告二女に係る違反調査において,本国から,原告母の生年月日が訂正された婚姻証明書と身分証明書の 手続が完了した。 上記の各手続の進ちょく状況について,原告母は,平成24年7月4日に行われた原告二女に係る違反調査において,本国から,原告母の生年月日が訂正された婚姻証明書と身分証明書の送付を待っている状態であり,これらが到着次第,真正身分事項による旅券を作成する予定であるが,旅券作成までには,あと2か月くらい掛かると思う旨を供述した。 また,原告母及びP5は,平成24年11月9日に行われた口頭審理において,既に原告母の出生証明書の訂正手続を終えており,現在,原告母の婚姻証明書の生年月日を訂正する手続中であるが,あと1か月くらいで同手続が完了する見込みであること,原告母の婚姻証明書の訂正が完了し,原告子らの出生登録ができるまであと2か月くらい掛かる見込みであること,いまだにP5との婚姻や出生登録等ができないのは,ボリビアでの手続がなかなか進まないためであることなどを供述した。原 告母及びP5が供述した手続の完了見込み時期は,これを裏付ける資料を伴うものではなかったが,東京入管においては,手続の進ちょく状況を把握することができていたのであり,原告子らとP5との親子関係が近い将来,法的に確定するに至るであろうことを容易に予測することができる状況にあった。 他方,前記(2)イ(カ)及び(キ)のとおり,原告らが平成21年12月に出頭申告をしてから平成23年7月まで入管からの呼出しはなく,出頭申告の約1年8か月を経過して初めて違反調査が行われたことからすれば,本件各裁決当時,原告らに対する在留特別許可の許否の判断を急いで行わなければならないような事情があったとは認められない。 (エ) 以上のとおり,原告子らにとって,定住者であるP5との父子関係が法的に確定されることは,在留特別許可の許否の判断において重要な積極要素 なければならないような事情があったとは認められない。 (エ) 以上のとおり,原告子らにとって,定住者であるP5との父子関係が法的に確定されることは,在留特別許可の許否の判断において重要な積極要素となるものであり,本件においては,そのことが原告母に対して示唆されていたという状況にあったところ,本件における原告子らの認知手続の経緯,すなわち,①認知手続の障害となっていたのは,原告母の生年月日の訂正という形式的な点であったこと,②もっとも,その訂正はボリビア本国で行うことが必要であり,かつ,原告母に関する複数の書類にわたるため,手続の完了までに相当程度時間が掛かることが見込まれたこと,③原告母が出頭申告を行ってから,入管の担当者が認知手続に関する指示をするまでの間,既に約1年8か月が経過していたこと,④入管の担当者が認知手続の指示をした約1年後の平成24年7月の時点においては,原告母の出生登録証明書の訂正が終わっており,原告母の婚姻証明書の生年月日の訂正を行っている段階であったこと,⑤同年11月9日の口頭審理において,原告母は,婚姻証明書の訂正は約1か月で完了する予定であり,その後,出生登録を行うのに2か月程度必要であると説明したこと,⑥実際にも,婚姻証明書の訂正は同月中 に完了し,出生登録に必要な原告母の旅券の訂正には5か月程度,出生登録にはさらに1か月半程度の期間を要したものの,完了するに至ったことをも総合勘案すると,東京入管局長において,原告子らとP5との父子関係の確定に関する手続の帰趨をいま暫く待つことなく,その手続の途上であった本件各裁決の時点(平成24年11月21日)で原告子らに対して在留特別許可を付与しない旨の判断をしたことについては,拙速であったという評価を免れることはできず,このような東京入管局長の判断は, った本件各裁決の時点(平成24年11月21日)で原告子らに対して在留特別許可を付与しない旨の判断をしたことについては,拙速であったという評価を免れることはできず,このような東京入管局長の判断は,裁判所や行政当局が児童の最善の利益を主として考慮すべきことを定めている児童の権利に関する条約3条1項や,児童がその父母の意思に反してその父母から分離されるべきではないとの原則を定めている同条約9条1項の趣旨に照らして,社会通念上著しく妥当性を欠き,その裁量の範囲を逸脱したものというべきである。 (オ) これに対し,被告は,原告母及びP5が,入管に出頭する前から,認知手続をするためには原告母の旅券の訂正が必要であることを認識していたにもかかわらず,入管に出頭するまで必要な手続に着手しなかったことからすると,本件裁決時に原告子らとP5との間に法的な父子関係が認められない状況にあることにつきしん酌すべき事情はない旨主張する。 確かに,前記(2)イ(エ)のとおり,原告母及びP5が,ボリビア大使館において必要な手続について説明を受けたにもかかわらず,平成23年7月に至るまで当該手続に着手しなかったことからすると,原告らが漫然と手続を怠っていたとみられてもやむを得ない面がある。 しかし,前記(2)イ(キ)のとおり,原告母及びP5が,平成23年7月7日の違反調査において,東京入管から,原告長男及び原告長女が在留資格を得るためにはP5による認知が必要である旨を指示され,その翌日には,P5が △ 市役所において原告長男及び原告長女の認知届を提 出していることからすると,原告母及びP5は,認知の必要性を漠然と認識しながらも,入管から指示を受けるまでは,これが原告子らの在留資格の取得のために必要不可欠であるとの認識までは有していなかった 出していることからすると,原告母及びP5は,認知の必要性を漠然と認識しながらも,入管から指示を受けるまでは,これが原告子らの在留資格の取得のために必要不可欠であるとの認識までは有していなかったものと推認される。そして,上記の各手続はいずれもボリビア国内で行う必要があり,原告母が本国で手続を代理してくれる人を容易に見付けられなかったことをも考慮すれば,原告母及びP5が,手続の煩雑さからこれを先延ばしした面があることは否定できないものの,原告子らの在留資格の取得のために認知の手続が必要不可欠であることを承知しながらあえて手続を放置していたとまでは認められない。 また,前記(2)ウのとおり,入管からの指示があってから,原告子らの出生登録が完了するまでには2年近い期間を要しているが,出生登録のためには,原告母の身分事項に関する複数の書類の訂正等が必要であり,原告母がこれらの手続を親族等を通じて遠隔地であるボリビア国内で行わざるを得なかったことや,その間,少しずつではあっても,着実に手続が進められていたこと,出頭申告から最初の違反調査が行われるまでの約1年8か月間は退去強制手続が進行していなかったことなどの事情に照らすと,原告母がいたずらに手続に時間を費やしていたと評価するのは相当でない。 したがって,被告の前記主張は採用できない。 (カ) 小括以上のとおり,原告子らに対し在留特別許可を付与しないとした東京入管局長の判断は,その裁量権の範囲を逸脱したものであるから,原告子らに係る本件各裁決は違法であり,取り消されるべきである。 イ原告母について(ア) 原告母は,前記のとおり,入管法24条1号所定の退去強制事由に該当するから,原則として本邦から当然に退去されるべき法的地位にあると いうことが る。 イ原告母について(ア) 原告母は,前記のとおり,入管法24条1号所定の退去強制事由に該当するから,原則として本邦から当然に退去されるべき法的地位にあると いうことができる。 (イ) 原告母の消極要素について原告母は,稼働目的で,偽装結婚をして「定住者」の在留資格を不正に受けた上,内容虚偽の旅券を所持して本邦に不法入国したものであり,このことは,在留特別許可の許否の判断に当たり,消極要素として考慮されてもやむを得ない。さらに,原告母が,虚偽の身分事項で外登法上の新規登録及び変更登録の申請をし,その旨の登録を受けたことも,在留特別許可の許否の判断に当たり,消極要素として考慮されるべき事情であるといえる。 しかしながら,原告母については,平成12年12月13日以降において日系3世であったことが認められるから(前記(2)ア(ア)),原告母は,定住者告示4号が定める要件に該当し得る立場にあったということができる。そして,上記ア(イ)で判示したとおり,在留特別許可の判断に当たっても,定住者告示の趣旨及び内容は十分に尊重されるべきであることからすると,原告母が偽装結婚をして「定住者」の在留資格を不正に受けたことについては,その主観的意図において容認し難いものがあるにせよ,そのことを決定的に重大な消極要素として勘案することは必ずしも当を得ないというべきである。 また,上記のとおり,原告母は,真実とは異なる生年月日が記載された旅券を行使して本邦に入国しているが,同旅券が偽造であることを認めるに足りる証拠はなく,そうであるとすれば,上記旅券を行使したことや,同旅券に基づき,虚偽の身分事項で外登法上の新規登録及び変更登録の申請をしたことをもって,重大な消極要素として勘案することはできな に足りる証拠はなく,そうであるとすれば,上記旅券を行使したことや,同旅券に基づき,虚偽の身分事項で外登法上の新規登録及び変更登録の申請をしたことをもって,重大な消極要素として勘案することはできないというべきである。 そして,原告母は,稼働目的で入国し,本邦に入国後,約1年間は不法就労に従事していたが,在留資格が切れた後は主婦業に専念し,不法就労 をしていなかったことは前記(2)イ(ウ)のとおりであるから,稼働目的があったという点についても,これを重大視することは必ずしも合理的とはいえないと解される。 (ウ) 原告母の積極要素について原告母については,平成12年12月13日以降において日系3世であったことが認められ(前記(2)ア(ア)),この点は在留特別許可の判断に当たって重要な積極要素として勘案されるべきものということができる。また,原告母については,①本邦での在留期間が本件各裁決時点で約13年6か月に及び,本邦への定着性が認められること,②本件各裁決当時,原告母と定住者の在留資格を有するP5との同居生活は約12年に及び,両者の関係は,法律上の婚姻関係こそ成立していないものの,婚姻の実質を備え,安定かつ成熟したものであったこと,③本件各裁決当時,原告母とP5との間には3人の子(原告長男,原告長女,原告二女)がいて,原告母が同居して監護養育しており,原告長男は小学校に在学する年齢に達していること,④原告母は,自ら東京入管に出頭して不法入国の事実を申告したこと(前記(2)イ(カ))が認められるところ,これらの諸点は,在留特別許可の判断に当たって積極要素として勘案されるべきものということができる。 さらに,上記アで判示したとおり,原告子らについては,在留特別許可が認められるべきであるところ,原告子らがまだ幼く 留特別許可の判断に当たって積極要素として勘案されるべきものということができる。 さらに,上記アで判示したとおり,原告子らについては,在留特別許可が認められるべきであるところ,原告子らがまだ幼く,その監護養育に母親の存在が不可欠であることからすれば,原告母についてのみ退去強制を行い,原告子らと長期間の離別を余儀なくさせることは,子らの福祉に深刻な影響を与えるおそれがあるということができる。したがって,この点についても,在留特別許可の判断に当たって重要な積極要素として勘案されるべきものということができる。 なお,上記の点に関連して,被告は,原告らが退去強制を受けてもP5 との完全な別離を意味するものではなく,また,原告らがP5と共にボリビアに帰国して共に生活することは十分に可能である旨主張する。しかし,母親である原告母が幼少の子らの監護養育に当たることがその健全な成長に必要不可欠であることはいうまでもないし,正規の在留資格をもって本邦に在留するP5及び三女が事実上ボリビアへの帰国を強制されるような事態も相当ではないから,原告母の退去強制が原告ら一家に与える影響は重大であるというべきであり,これに反する被告の上記主張は採用できない。 (エ) 以上のとおり,原告母には,在留特別許可の許否の判断に当たり,消極要素として評価すべき事由があることが認められるが,それらの消極要素を重大視することは必ずしも相当ではない一方で,重要な積極要素又は積極要素として評価すべき事由も相当数あることが認められる。 とりわけ,東京入管局長においては,原告子らについて在留特別許可を認めず退去強制を行うことを前提として,原告母の在留特別許可を認めないという判断を行ったことが明らかであるところ,このような前提を採り難いことは上記アで判示したとおりで 告子らについて在留特別許可を認めず退去強制を行うことを前提として,原告母の在留特別許可を認めないという判断を行ったことが明らかであるところ,このような前提を採り難いことは上記アで判示したとおりであるから,原告母の在留特別許可に係る判断の基礎となる重要な前提を誤ったものといわざるを得ず,この点に関する瑕疵は,裁判所や行政当局が児童の最善の利益を主として考慮すべきことを定めている児童の権利に関する条約3条1項,児童がその父母の意思に反してその父母から分離されるべきではないとの原則を定めている同条約9条1項,家族は社会の自然かつ基礎的な単位であり社会及び国による保護を受ける権利を有すると定めているB規約23条1項の各趣旨に照らして,重大なものであると評価せざるを得ない。 以上の点を総合すれば,原告母に在留特別許可を付与しないとする東京入管局長の判断は,社会通念上著しく妥当性を欠き,その裁量の範囲を逸脱するものというべきである。 (オ) 小括以上のとおり,原告母に対し在留特別許可を付与しないとの東京入管局長の判断は,その裁量権の範囲を逸脱したものであるから,原告母に係る本件各裁決は違法であり,取り消されるべきである。 2 本件各退令発付処分の適法性について主任審査官は,法務大臣等から入管法49条1項に基づく異議の申出には理由がない旨の裁決の通知を受けたときは,同条6項に基づき速やかに退去強制令書を発付しなければならず,この点には裁量の余地がないものと解される。 そうすると,前記1のとおり本件各裁決は違法である以上,これに従ってされた本件各退令発付処分もまた違法であるというべきであるから,本件各退令発付処分は取消しを免れない。 第4 結論よって,原告らの請求はいずれも理由があるから認容し,訴訟 以上,これに従ってされた本件各退令発付処分もまた違法であるというべきであるから,本件各退令発付処分は取消しを免れない。 第4 結論よって,原告らの請求はいずれも理由があるから認容し,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部 裁判長裁判官谷口豊 裁判官下和弘 裁判官中丸隆は,転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官谷口豊
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