平成22(行ケ)10059 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成22年10月26日 知的財産高等裁判所 1部 判決 請求棄却
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判決文本文26,361 文字)

- 1 -平成22年(行ケ)第10059号審決取消請求事件(特許)口頭弁論終結日平成22年10月19日判決原告X被告特許庁長官指定代理人豊島唯同森川元嗣同黒瀬雅一同田村正明主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1請求特許庁が不服2008-33026号事件について平成21年12月14日にした審決を取り消す。 第2事案の概要 本件は,原告が,名称を「すくい具」とする発明につき特許出願をしたところ,拒絶査定を受けたので,これに対する不服の審判請求をし,その中で更に,平成20年12月26日付けで特許請求の範囲の変更等を内容とする手続補正(以下「本件補正」という)もしたが,特許庁から請求不成立の審決を。 受けたことから,その取消しを求めた事案である。 争点は,本件補正による請求項1に係る発明が下記引用発明との間で進歩性を有し本件補正が適法か(特許法29条2項,平成18年法律第55号による改正前の同法17条の2第5項,126条5項,等である。 )記- 2 -・実願昭55-174778号(実開昭57-99547号)のマイクロフィルム(考案の名称「料理用万能ターナー,出願人A,公開日昭和57年」6月18日,以下「引用例」という。甲1,乙2)に記載された発明(以下「引用発明」という)。 第3当事者の主張 請求の原因(1)特許庁における手続の経緯原告は,平成16年9月13日,名称を「すくい具」とする発明について特許出願(特願2004-299396号。請求項の数4,公開日は平成18年3月23日〔特開2006-75571号。乙1)をし,平成20年〕5月29日付けで特許請求の範囲の変更等を内容とする手続補正(請求項 (特願2004-299396号。請求項の数4,公開日は平成18年3月23日〔特開2006-75571号。乙1)をし,平成20年〕5月29日付けで特許請求の範囲の変更等を内容とする手続補正(請求項の数3,以下「第1次補正」という。甲7)をしたが,平成20年11月14日付けで拒絶査定を受けたので,これに対する不服の審判請求をした。 特許庁は,上記請求を不服2008-33026号事件として審理し,その中で原告は,平成20年12月26日付けで特許請求の範囲の変更等を内容とする本件補正(請求項の数3。甲10)をし,さらに,平成21年2月20日付けで明細書添付の図面の変更等を内容とする手続補正(甲12)をしたが,特許庁は,平成21年12月14日,平成20年12月26日付けでなされた本件補正を却下した上「本件審判の請求は,成り立たない」と,。 の審決をし,その謄本は平成22年1月21日原告に送達された。 (2)発明の内容ア本件補正前(第1次補正後)の請求項の数は前記のとおり3であるが,各請求項(以下併せて「本願発明」といい,各請求項ごとに「本願発明1」等という)の内容は,以下のとおりである。 。 ・請求項1】「【すくい板と,該すくい板の把手が辺内にあれば,当辺と両側の2側辺- 3 -との3個所に渡って,あるいは把手が角部にあれば,当角部とその両側2側辺との3個所に渡って,側面に設けられた屈折あるいは湾曲した壁部とよりなるすくい部と,該すくい部に設けられた把手とよりなり,前記すくい板と壁部により汁溜め部を形成するとともに,すくい板先端に壁部を有しない平板状の突きだし部を有することを特徴とする,すくい具」。 ・請求項2】「【,,すくい板に汁溜め部を残す範囲で汁切り孔を設けたことを特徴とするすくい具」。 ・請求項3】「【 有しない平板状の突きだし部を有することを特徴とする,すくい具」。 ・請求項2】「【,,すくい板に汁溜め部を残す範囲で汁切り孔を設けたことを特徴とするすくい具」。 ・請求項3】「【すくい板の一部と壁部で,汁溜め部を構成するとともに,すくい板先端が上方に向くように,途中から屈曲あるいは湾曲したものであることを特徴とする,請求項1,2又は3記載のすくい具」。 イ本件補正後の請求項の数も前記のとおり3であるが,各請求項(以下併せて「本願補正発明」といい,各請求項ごとに「本願補正発明1」等という。 下線部は補正箇所)の内容は,以下のとおりである。 。 ・請求項1】「【すくい板と,該すくい板の辺内での壁部の延長上に把手があれば,当辺と両側の2側辺との3個所に渡って,あるいは角部での壁部の延長上に把,,手があれば当角部の把手下部側とその両側の2側辺との3個所に渡ってすくい板側面に把手位置より近似値の使用対象に合わせた長さで設けられた屈折あるいは湾曲した壁部とよりなるすくい部と,該すくい部に壁部の延長方向に設けられた把手とよりなり,前記すくい板と壁部により汁溜め部を形成するとともに,すくい板先端に壁部を有しない平板状の突きだし部を有することを特徴とする,すくい具」。 ・請求項2】「【,,すくい板に汁溜め部を残す範囲で汁切り孔を設けたことを特徴とする- 4 -すくい具」。 ・請求項3】「【すくい板の一部と壁部で,汁溜め部を構成するとともに,すくい板先端が上方に向くように,途中から屈曲あるいは湾曲して,すくい板とは別面で底面を設けたあることを特徴とする,請求項1,2又は3記載のすくい具」。 (3)審決の内容ア審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その要点は,本願補正発明1は引用発明及び周知技術 別面で底面を設けたあることを特徴とする,請求項1,2又は3記載のすくい具」。 (3)審決の内容ア審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その要点は,本願補正発明1は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたから特許法29条2項により特許を受けることができず,したがって本件補正手続は却下を免れず,また,本件補正前の本願発明1も同様の理由により特許を受けることができない,というものである。 イなお,審決が認定した引用発明の内容,本願補正発明1と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。 (ア) 引用発明の内容「本体1と,本体1の辺内に位置して柄3が設けられ,その辺と隣り合う片側の辺との2個所に渡って,本体1に設けられた屈折した立ち上がり部2とよりなる部分と,該立ち上がり部2に本体1の平面に平行な方向に設けられた柄3とよりなり,前記本体1と立ち上がり部2により料理をこぼれないようにした部分を形成するとともに,立ち上がり部2を有しない平坦部を有する料理用万能ターナー」。 (イ)一致点本願補正発明1と引用発明は,次の点で一致する。 「すくい板と,該すくい板の辺内に把手があり,その辺を含めた辺に設けられた屈折した壁部とよりなるすくい部と,該すくい部に設けられた把手とよりなり,前記すくい板と壁部により汁溜め部を形成するととも- 5 -に,すくい板先端に壁部を有しない平板状の突きだし部を有することを特徴とする,すくい具」。 (ウ) 相違点本願補正発明1と引用発明は,次の2点で相違する。 ・<相違点1>「すくい部に設けられた把手について,本願補正発明は,壁部の延長方向に設けられているのに対し,引用発明はすくい板に平行な方向に設けられている点」。 ・<相違点2>「壁部について,本願補正発明は,辺内 くい部に設けられた把手について,本願補正発明は,壁部の延長方向に設けられているのに対し,引用発明はすくい板に平行な方向に設けられている点」。 ・<相違点2>「壁部について,本願補正発明は,辺内に把手があれば,当辺と両側の2側辺との3個所に渡って,すくい板側面に把手位置より近似値の使用対象に合わせた長さで設けられた屈折あるいは湾曲したものとされているのに対し,引用発明は,辺内に把手があり,その辺と隣り合う片側の辺との2個所に渡って,すくい板に設けられた屈折したものとされている点」。 (4)審決の取消事由しかしながら,引用発明及び周知技術から本願補正発明1及び本願発明1は容易想到である(特許法29条2項)とした審決には,本願補正発明1及び本願発明1の認定を誤り(取消事由1,本願補正発明1と引用発明の一)致点・相違点を誤り(取消事由2及び3,その結果,相違点2についての)容易想到性の判断を誤った(取消事由4)ばかりか,本願補正発明2及び3に関する審理不尽がある(取消事由5)から,違法として取り消されるべきである。 ア取消事由1(本願補正発明1及び本願発明1認定の誤り)本願補正発明1及び本願発明1では,突き出し部からすくい板までが平板であることで,従来品のお玉にあった,前面のたるみがなくなるので,- 6 -お玉でありながら対象物の底に突き出し部先端を差し込みやすく,また鍋の底に先端が到達しやすく,固形物やカレールーのような半固形物もより完全にすくいあげられるという機能を併せ持つことになるが,引用発明のように,先端が角を有していたり,片側側面に立ち上がり部がなく平板のままであったり,審決が周知例として示す実願昭48-74466号(実開昭50-24473号,以下「周知例A」という。甲2,乙3)のよ)うに,刃や底側に穴を有し ,片側側面に立ち上がり部がなく平板のままであったり,審決が周知例として示す実願昭48-74466号(実開昭50-24473号,以下「周知例A」という。甲2,乙3)のよ)うに,刃や底側に穴を有していたりしては,これらは困難である。 他に,本願補正発明1及び本願発明1では,先端側が平板であることのメリットとして,舌や唇がまだうまく使えないような赤ん坊にお粥などの粘着質な食べ物を与えるとき,当箇所に凹みがないので流れ出やすく玉部の中に食べ物が残らないし,吊したお玉の先端に洗いきれなかった汚れが溜まることがない,等が挙げられる。 なお,本願補正発明1及び本願発明1はスプーンとしての使用も想定しており,お玉の改良に限定するものではなく,汁を溜めることを主目的とした,取っ手部を有した上部のみ開口する器具全般である。 以上より,本願補正発明1及び本願発明1はお玉やスプーンの改良を目的としたものであり,汁を溜めるには,あるいは口内へ入れるには不都合な引用発明と混同された認定は認められない。 イ取消事由2(本願補正発明1と引用発明の対比・一致点認定の誤り)(ア) 対比における認定の誤りa審決は,本願補正発明1と引用発明とを対比すると,後者の「本体1」は,前者の「すくい板」に相当すると認定するが,本願補正発明1は汁をすくうのを第一の目的としたもので「本体」と称する対象,は,周囲がすくい板と壁部によって囲まれた箇所の汁溜め部である。 bまた,審決は,引用発明で「料理をこぼれないようにした部分」が本願補正発明1の「汁溜め部」に相当すると認定するが,両者は成り- 7 -立ちが異なる。すなわち,引用発明で汁が溜まるのは,後部の左右どちらかでしかなく,汁をそこに溜めるためには,本体をその側に傾けなければ不可能であるのに対して,本願補正発明1の「汁溜め部 - 7 -立ちが異なる。すなわち,引用発明で汁が溜まるのは,後部の左右どちらかでしかなく,汁をそこに溜めるためには,本体をその側に傾けなければ不可能であるのに対して,本願補正発明1の「汁溜め部」とは底面から突き出し部の付け根かつ壁部上端位置までを呼ぶが,左右に傾ければむしろ汁は零れる。このように,両者は汁を溜めるための操作が異なるのであり,この相違を看過した対比は誤りである。 cさらに,本願補正発明1では,突き出し部をその付け根の壁部の上端ラインで切断すれば,元のお玉に戻るが,引用発明の立ち上がり部の両端部の対角線上で切断するなら,取っ手部方向に対して斜めとなり,少なくとも上側のみが開口する汁の溜められるお玉には戻らず,三角状の横向きすくい具になる。 (イ) 一致点認定の誤りa本願補正発明1の原型はお玉であるのに対し,引用発明はターナーであることから,そもそも一致点は発見しにくい関係にある。 審決は,本願補正発明1における「‥‥すくい板の辺内での壁部の延長上に把手があれば‥‥」と表現した個所から「での壁部の延長,上」箇所を除いた文を作り,これを一致点としているが「壁部の延,長上」に把手があるとは,把手は汁溜め部の最後部から取り付けられることであり「辺内に把手がある」とは,把手は汁溜め部の底面つ,まり最下端中央から取り付けられ,壁部に添わせるか,本願補正発明1なら底面とだけ接合することをいい,不安定な形態となる。このように,壁部の有無では形態は異なるため,上記一致点の認定は誤りである。 b本願補正発明1の「‥‥すくい板先端に壁部を有しない‥‥」に対して,引用発明の「‥‥本体1の対角線上より‥‥下部端を平坦とした‥‥」とが一致するという認定も誤りである。加えて,柄側だけに- 8 -立ち上がり部を有するにすぎない引用発 部を有しない‥‥」に対して,引用発明の「‥‥本体1の対角線上より‥‥下部端を平坦とした‥‥」とが一致するという認定も誤りである。加えて,柄側だけに- 8 -立ち上がり部を有するにすぎない引用発明と本願補正発明1が一致するという認定も認められない。 ウ取消事由3(相違点認定の誤り)(ア) 審決の認定した相違点について本願補正発明1の場合,側面図としては少しの変形はあるがすり鉢状の汁を溜めるに十分な形態で,取っ手部からすくい板並びに突き出し部にそれぞれ中央線を引くなら,その両側は対称形となるのに対し,引用発明では対称形にはならない。 また,本願補正発明1の突き出し部先端はなめらかな一曲線か一直線を描くのに対し,引用発明は一つの角を描く。 本願の突き出し部をその付け根から切り外した時,周囲の全ての高さが底面よりほぼ同じであるのに対して,引用発明は同じにはならない。 あるいは同じ個所ではない。 (イ) 審決の認定していない相違点についてa引用発明に「‥‥本体1の対角線上より,上部端に立ち上がり部を設け‥‥」と記載され,続けてその明細書に「対角線を境として」と表記されているが,この対角線である理由は,少なくとも汁を溜めるのが目的ではなく,唐揚げなどの固形物がすくう対象であって,明細書では「‥‥料理をすくう際,小さいものは先端で行い,大きいものは側部からすくえる‥‥」と表記されているが,これによっても,そ。 「」,れが分かるまた大きいものは側部からすくえるの捉え方としてこれは,側部に立ち上がり部を有さないことを示しているのであり,その側部から水分は廃棄できるあるいは廃棄されてしまうことを意味し,つまりは汁を溜めにくいことを表している。 bまた,引用例には「‥‥必要に応じて貫通した複数の小穴,長穴を設ける‥‥」と表記されているが, から水分は廃棄できるあるいは廃棄されてしまうことを意味し,つまりは汁を溜めにくいことを表している。 bまた,引用例には「‥‥必要に応じて貫通した複数の小穴,長穴を設ける‥‥」と表記されているが,これは,本願補正発明2に比べ,- 9 -汁を溜めるには不要で無意味な箇所に汁切り孔を設けるものであり,別の言い方をすれば,口内や椀内,鍋内に必ず入る箇所に設けるともいえる。そうすると,引用発明の場合は,片側側面には立ち上がり部がなく汁を溜めることができないので,すくい板のほとんどを口内へ入れるしかない使い方となる。 また,引用例の穴は余計な油などの廃棄をより効果的にするために設けられるものに違いないことが前記によっても明らかであって,本願補正発明2の汁切り孔とは,意味合いも異なり,設ける形態自体が異なるので,同じ孔とはいえない。 エ取消事由4(周知例Aに基づく相違点認定判断の誤り)(ア) 相違点2の判断の誤り審決は,相違点2について「‥‥すくい具の把手を設けた辺及びそ,の左右両側の辺の3か所に渡って壁部を形成することは引用例2〔判決注,周知例A〕に記載の事項に示されるように,周知の事項‥‥」と判,,断していることに関して汁を溜めるための容器を容器としてなすとき本願補正発明1では開口部となる側を上方に置くことになるのに対し,周知例Aの場合は,主に横臥状にして使用するため,その3か所の流れ止め片の機能はストッパーの役目をする箇所となるのである。しかし,本願補正発明1でそれに対応する箇所は容器側面の一部であるが,機能としてストッパーには当たらない。したがって,周知例Aから,すくい具の把手を設けた辺及びその左右両側の辺の3か所に渡って壁部を形成することが周知の事項と判断することはできない。 (イ) 本願補正発明1と周知例Aとのその他の相 ない。したがって,周知例Aから,すくい具の把手を設けた辺及びその左右両側の辺の3か所に渡って壁部を形成することが周知の事項と判断することはできない。 (イ) 本願補正発明1と周知例Aとのその他の相違点a舌や唇が上手に使えない対象者の口内へ差し込む目的を有する本願補正発明1としては,触れる箇所に庖丁刃及び山形刃を設けることはあり得ない。 - 10 -bまた,汁を溜めたい本願補正発明1としては,流れ止め片真下壁面のところに,つまり容器の底あたりに水切り穴を設けることはあり得ない。 c周知例Aのすくい上げ手が本願補正発明1のすくい板であるとの見解において,本願補正発明1は,底面であるすくい板の下端を後方と称することはない。 d周知例Aの水切り穴の位置は汁を溜めるには矛盾し,口内に差し込むことは不可能である。 eまた,本願補正発明の有する突き出し部,汁切り孔について,相違点として触れられていない。 オ取消事由5(本願補正発明2及び3に関する審理不尽)本願補正発明の形態が,汁を溜める目的であり,それを,本願補正発明3によって,すくい板を曲げて別面で底面部を設けることによってより明白にし,また本願補正発明2における汁切り孔の位置も新たな形態における位置になったにもかかわらず,審決においては,これらに触れられた箇所は見当たらない。したがって,審決には審理不尽の違法がある。 請求原因に対する認否請求原因(1)ないし(3) の各事実は認めるが,(4)は争う。 被告の反論審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。 (1) 取消事由1に対し審決は,本願補正発明1を,明細書全体の記載からみて,本件補正後の特許請求の範囲の請求項に記載されたとおりのものと認定し,また,本願発明1を,第1次補正で補正された特許請求 (1) 取消事由1に対し審決は,本願補正発明1を,明細書全体の記載からみて,本件補正後の特許請求の範囲の請求項に記載されたとおりのものと認定し,また,本願発明1を,第1次補正で補正された特許請求の範囲の請求項に記載されたとおりのものと認定しているのであって,原告が主張する「汁を溜めるためには,また口内へ入れるには不都合な引用発明と混同」した認定をしたものではな- 11 -い。 したがって,審決の本願補正発明1及び本願発明1のいずれの認定にも誤りはなく,原告の主張は,審決を誤解したものであって,理由がない。 (2) 取消事由2に対しア原告の主張(ア)aにつき審決は「本願補正発明と引用発明とを対比すると,機能または構造か,らみて,後者の『本体1』は,前者の『すくい板』に相当し,‥‥『立ち上がり部2』は『壁部』に,‥‥『料理をこぼれないようにした部分』は『』,。」,,汁溜め部‥‥にそれぞれ相当するとしているのであってこれは引用発明の「本体1」は,本願補正発明1の「すくい板」と同様に板状の部材であって,鍋内等の料理をすくい取るものであるから,両者は,機能または構造からみて,相当すると認定したものである。したがって,審決は,引用発明の「本体1」を,原告の主張する「本体」と称する対象である「周囲がすくい板と壁部によって囲まれた箇所の汁溜め部」に相当すると認定したものではなく,原告は審決の認定を誤解している。 イ原告の主張(ア) bにつき引用発明の「料理をこぼれないようにした部分」は「本体1」と「立,ち上がり部2」とにより構成され,本体を傾ける必要があるにしろ,料理がこぼれないようにする,言い換えれば,汁等の料理を溜めることができる部分である。一方,本願補正発明1の「汁溜め部」は「すくい板」と,「壁部」とにより構成 され,本体を傾ける必要があるにしろ,料理がこぼれないようにする,言い換えれば,汁等の料理を溜めることができる部分である。一方,本願補正発明1の「汁溜め部」は「すくい板」と,「壁部」とにより構成され,汁を溜める部分である。そして,審決のとおり,引用発明の「本体1「立ち上がり部2」は,その機能または構造等」,からみて,それぞれ本願補正発明1の「すくい板「壁部」に相当する。 」,してみると,引用発明の「本体1と立ち上がり部2により」形成される部分である「料理をこぼれないようにした部分」と「すくい板と壁部」,により形成される部分である本願補正発明1の「汁溜め部」とは,機能及- 12 -び構造において差異がないから,両者を,機能または構造からみて,相当すると認定したものである。 なお,本願補正発明1において「汁溜め部」が,どのような状態で汁,を溜めるかは何ら特定されていない。そうしてみると,審決の引用発明の「料理をこぼれないようにした部分」は,本願補正発明1の「汁溜め部」に相当するとした点に誤りはない。 ウ原告の主張(イ) aにつき審決は,本願補正発明1と引用発明との一致点を前記のとおり認定しているところ,本願補正発明1において「すくい板の辺内での壁部の延長上に把手があれば,‥‥角部での壁部の延長上に把手があれば」と記載されているとおり,把手が設けられる方向として壁部の延長方向を特定しているものであり「すくい板の辺内」又は「角部」は把手が設けられる場所,を特定しているといえる。そうすると,審決で一致点とした「すくい板の」,()辺内に把手があるということはすくい板の辺の部分壁を含めた部分に把手があることを特定しているものとなる。一方,審決では『本体1,「の対角線上より上端部に立ち上がり部2を設け,対角線上より下端部 )辺内に把手があるということはすくい板の辺の部分壁を含めた部分に把手があることを特定しているものとなる。一方,審決では『本体1,「の対角線上より上端部に立ち上がり部2を設け,対角線上より下端部は平坦とし」たとの記載及び図示された柄3の配置によれば,第1図の正面図で本体1の角部でなく辺内に当たる位置に柄3が設けられており(3頁』13~16行)として,引用発明を「本体1の辺内に位置して柄3が設けられ」るものと認定したものである。そうすると,引用発明の「本体1の辺内に位置して柄3が設けられ」るということは「すくい板の辺内に把,手がある」ことといえるから,審決が「すくい板の辺内に把手があ」る,ことを一致点とした認定に誤りはない。 そして,本願補正発明1において,把手が設けられる方向として壁部の延長方向を特定している点については,相違点1として「本願補正発明,は,壁部の延長方向に設けられているのに対し,引用発明はすくい板に平- 13 -行な方向に設けられている点」と認定しているものである。 。 エ原告の主張(イ) bにつき,「」引用例には対角線上より下部端は立ち上がり部2を有しない平坦部が記載され(1頁6行,第1図,また,引用発明の「立ち上がり部2」)は本願補正発明1の「壁部」に相当するから,引用発明の「立ち上がり部」「」,,「」2を有しない平坦部は壁部を有しない部分といえまた平坦部は平板状であって,壁を設けた部分に対してみれば突きだしているといえる。 そして,引用例に「本案の特長は対角線を境いとして,先端部と片側側部で料理をすくい,‥‥料理が簡単にすくえ,‥‥本案は上述のような構成,作用であるため料理をすくったり,返したりしやすい等の多大な利点を有した,料理用万能ターナーである(2頁6~18行 部と片側側部で料理をすくい,‥‥料理が簡単にすくえ,‥‥本案は上述のような構成,作用であるため料理をすくったり,返したりしやすい等の多大な利点を有した,料理用万能ターナーである(2頁6~18行)と記載されて。」いるように,引用発明の「平坦部」は,料理をすくいやすい,つまり対象物(料理)の底に差し込みやすいという本願補正発明1の「突きだし部」,「」と同様の機能または作用を奏するものであるから平板状の突きだし部ということができる。 してみると,引用発明の「立ち上がり部2を有しない平坦部」は「壁部を有しない平板状の突きだし部」ということができる。さらに,引用発明において「立ち上がり部2を有しない平坦部」は,柄3の側からみれば本体1の先端側といえる。したがって,審決が「すくい板先端に壁部を有,しない平板状の突きだし部を有する」ことを一致点とした認定に誤りはない。よって,原告の上記のいずれの主張も理由がない。 (3) 取消事由3に対しア原告の主張(ア) につき本願の特許請求の範囲には「取っ手部(把手)からすくい板並びに突,き出し部にそれぞれ中央線を引」いたときの形「突き出し部先端」の形,- 14 -状,及び「突き出し部をその付け根から切り外した時」の周囲の高さについて,特定されておらず,原告のいずれの主張も,特許請求の範囲の記載に基づくものではない。したがって,原告の主張は理由がない。 イ原告の主張(イ) aにつき原告は「引用発明は,少なくとも汁を溜めるのが目的でなく,唐揚げ,などの固形物がすくう対象である」旨主張しているが,引用例には「料,」(),理をフライパン等から皿等の器に盛り付けを行なう1頁11~12行「中華料理等のかくはんが行なえ,料理が簡単にすくえ,またこぼすことがない(2頁10~12行「ま ,引用例には「料,」(),理をフライパン等から皿等の器に盛り付けを行なう1頁11~12行「中華料理等のかくはんが行なえ,料理が簡単にすくえ,またこぼすことがない(2頁10~12行「また本案を小さく製作すれば,幼児用の」),スプーンとして最適である(2頁14~15行)と記載されており,引」用発明が「唐揚げなどの固形物」のみならず,例えば,フライパンで調,理する際のタレやソース等もすくう対象であること,またスプーンであれば汁等を溜めることができることは,明らかである。 さらに,引用発明において「スプーン」として使用すれば,本願補正発明の「すくい具」にも,本願明細書(甲3)の段落【0011【001】,5】や図8-10,14-15に記載されているようなスプーンが包含されるから,両者はこの点において何ら違いがない。 したがって,原告の主張は,引用例の記載を独自に解釈したものであって,理由がない。 ウ原告の主張(イ) bにつき引用例には「本体1の平面上には必要に応じて貫通した複数の小穴,,」(),「」長穴を設けるものとする2頁3~5行と記載されているとおり穴を設けることは任意であり,必須のものではないから,審決において,引「」。 用発明は本体1に穴を有するものと認定しなかったことに誤りはないそして,前記(2) イのとおり,引用発明の「料理をこぼれないようにした部分」は,機能または構造からみて,本願補正発明1の「汁溜め部」に- 15 -相当するから,引用発明は,汁等を溜めることができるものである。 また,本願補正発明1も「汁切り孔」を有するものではない。 ,したがって,原告の主張は,審決を離れた独自の解釈に基づくものであって,理由がない。 (4) 取消事由4に対しア原告の主張(ア) につき周知例A 正発明1も「汁切り孔」を有するものではない。 ,したがって,原告の主張は,審決を離れた独自の解釈に基づくものであって,理由がない。 (4) 取消事由4に対しア原告の主張(ア) につき周知例Aには「葉(1,流れ止め片(5,把手からなる家庭用すく,))い上げ手小道具において,流れ止め片(5)が葉(1)の後方及び左右両側に設けられ,葉(1)の後方に設けられた流れ止め片(5)の延長上に把手(2)を設けること」との記載が認められることから,審決は「す。 ,くい具の把手を設けた辺及びその左右両側の3個所に渡って壁部を形成すること」が周知の事項であることを示すために,周知例Aを周知例として引用したものであり,周知例Aを上記周知例とした認定に誤りはない。 なお,周知例Aの第16図に図示されているような,水切り穴を有さないものにおいては,葉と流れ止め片が汁を溜める機能を有すること,汁を溜める際には,横臥状でなくても汁を溜めておくことができる状態で使用されることは明らかである。 したがって,原告の主張は,周知例Aの記載を独自に解釈したものであって,理由がない。 イ原告の主張(イ) につき上記アのとおり,周知例Aは「すくい具の把手を設けた辺及びその左,右両側の3個所に渡って壁部を形成すること」が周知の事項であることを示すために,引用した周知例である。 そして,審決は,周知例Aに記載された周知の事項を引用発明に適用するに際し,壁部の長さは使いやすさを考えて決めることであるから,相違点2に係る本願補正発明1の構成のようにすることは,周知の事項に基づ- 16 -いて当業者が容易に想到し得たと判断したものである。 原告の主張は「触れる箇所に包丁刃及び山形刃を設けること「流れ,」,止め片真下壁面の処に,つまり容器の底あたりに水切り穴を設けるこ 16 -いて当業者が容易に想到し得たと判断したものである。 原告の主張は「触れる箇所に包丁刃及び山形刃を設けること「流れ,」,止め片真下壁面の処に,つまり容器の底あたりに水切り穴を設けること」等,審決で周知例Aから認定していない事項に基づくものであり,また,これらの事項は「壁部を形成すること」とは技術的に何ら関連のないものであるから,いずれの主張も理由がない。 (5) 取消事由5に対し特許法49条及び51条の規定によれば,1つの特許出願に複数の請求項に係る発明が含まれている場合であっても,そのうちのいずれか1つでも特許法29条等の規定に基づき特許をすることができないものであるときは,その特許出願全体を拒絶すべきことになる。このことは,拒絶査定不服審判においても異なるところはないものである。 したがって,審決は本願補正発明の請求項のうち,請求項1について審理した結果,請求項1に係る発明は特許法29条2項の規定に基づき特許を受,,けることができないとして本件補正を却下すべきものと判断している以上それ以上に請求項2及び3について審理することなく理由を示さなかったこと自体は,違法ということはできない。 第4当裁判所の判断 請求原因(1) (特許庁における手続の経緯,(2) (発明の内容,(3) (審))決の内容)の各事実は,当事者間に争いがない。 容易想到性の有無審決は,本願補正発明1は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できるとし,一方,原告はこれを争うので,以下検討する。 (1) 本願補正発明の意義ア本願明細書(甲3,7,10)には,次の記載がある。 ・技術分野】「【- 17 -本発明は煮物を鍋内からすくう,金網から焼き魚を持ち上げる,油内から揚げ物をすくう,あるいは食事用として食物をすくって 細書(甲3,7,10)には,次の記載がある。 ・技術分野】「【- 17 -本発明は煮物を鍋内からすくう,金網から焼き魚を持ち上げる,油内から揚げ物をすくう,あるいは食事用として食物をすくって口に運ぶ,すくい具に関するものである(甲3の段落【0001)。」】・背景技術】【従来,煮物を鍋内からすくう器具としては,縁部に高さがあり底側が出っ張っているお玉,挟み取る形式のトングや箸,焼き魚に対しては箸。 ,,かトングがある揚げ物の取り出し用にはトングやお玉状の網がありフライパンに対しては,平板状のフライ返し,もんじゃ焼きには平面状のすくい具がある。食事用としてはスプーン,又はレンゲやそれに付随する穴あきレンゲがある(甲3の段落【0002)。」】・発明が解決しようとする課題】「【そのために次のような問題点があった。 (イ)お玉は底が出っ張っているので,煮魚等の対象物の底に差し込みにくく,差し込めば対象物は崩れる。 (ロ)お玉はお玉より大きい煮魚などをすくう場合に,対象物を,上に突き出ている縁の2点で支えるため崩れやすく,不安定である。 (ハ)お玉では,鍋底の隅に先端が届きにくくカレールーなどがすくいにくい。 (ニ)お玉では,その先端を対象物に当てにくく,対象物を切りくずしにくい。 (ホ)フライ返しでは,対象物が落ちやすく,汁はすくえない。 (ヘ)穴あきレンゲは汁からコーンやみじん切りの葱をすくいとることは出来るが,汁を溜められないために,それらを口に流し込むことが出来ない。 (ト)トングや箸では,対象物が崩れやすく,汁はすくえない。 (チ)箸を伝い,あるいはフライ返しでは油切りのための孔から,油が- 18 -たれ続ける。 (リ)スプーンとしても縁部の高さや底の出っ張りは,スプーンを極端に傾けて口に流し込んだり,窪み えない。 (チ)箸を伝い,あるいはフライ返しでは油切りのための孔から,油が- 18 -たれ続ける。 (リ)スプーンとしても縁部の高さや底の出っ張りは,スプーンを極端に傾けて口に流し込んだり,窪み内に残るカレー等の粘着質な対象物を舌で再度舐め取ったりしなければならず,邪魔になっている。カップ内の壁に付着しているヨーグルトもすくいにくい。西瓜やメロンや羊羹を切り取りにくく,載せにくい。 本発明はこれらの問題点を解決するためになされたものである(甲3。」の段落【0003)】・すくい板の突きだし部が平面状なので,対象物の底に差し込み易く,「対象物をその面で支え持ち上げることが出来る。 すくい板の突きだし部で開放されていて,一部に壁部を有するので,壁部に対象物を添えるように取り込めて落ちにくい。 すくい板の突きだし部が,平板状のために,対象物に刺し込められ切り分けられる。 鍋やカップ容器等の隅に残った残留物をすくい易く,鍋の壁からも剥がし取り易い。 平板状の裏面を押しつけて対象物を潰すことが出来る。 汁溜め部を形成することで,突きだし部を対象物の底に差し込みつつ汁が取り込める。 汁溜め部にかからない位置に汁切り孔を設けることで,不要な汁を切ることが出来,必要な汁は溜められる。 すくい板先端が上方に向くように,途中から屈曲あるいは湾曲することによって,汁を安定して溜めることが出来る(甲10の段落【00。」05)】・発明を実施するための最良の形態】「【以下,本発明の実施の形態について説明する。 - 19 -便宜的に,調理用では鍋内と鍋外に分け,それに食事用具の場合を加えて10種の形態を説明する。 先ず,主として鍋内で使用する形態について説明する。 図1~図6を用いて,第1の形態について説明する。これは左右対称のすくい板に対し,壁 に分け,それに食事用具の場合を加えて10種の形態を説明する。 先ず,主として鍋内で使用する形態について説明する。 図1~図6を用いて,第1の形態について説明する。これは左右対称のすくい板に対し,壁部が共に左右対称に設けられているものである。以下に掲げる条件について当形態の独自性を明示しない場合は,第1から第10までの全形態に共通するものである。 図1,図2,図3,図4について説明する。先ず図1aの斜視図より,当形態の場合,直角あるいは直角からそれほど遠くない鈍角の扇形に近似するすくい板(2)とし,扇支点位置から,左右方向に壁部(3)を。 ()設けるこの壁部の中心位置に持ちやすい幅のステイック状の把手4を設ける。すくい板と壁部により,汁溜め部(5)が形成される。左右の壁部の始点を結ぶラインを境界ライン(6)とし,aでは斜線で,bでは側面図で,当ラインと突きだし部(7)を示している。 突きだし部の境界ラインからの突きだし加減については,扇形の半径による周縁でもよいが,これにこだわらず,すくい板の径の長短は選択出来る。また突きだし部の側辺のラインが,壁部の始点個所から同方向をしばらく描くかすぐ離れるかは,選択範囲である。すくい板の平板状態については,少し上から回転を加えながら対象物をすくうのが自然なので,側面側からの底面形状は完全な水平状より,先端に向かって少し上がり気味にしてもよい。これは先端が平板状によって生じるかもしれない危険の防止を加味しての形状でもあり,対象物を傷つけない範囲とする。bには心持ち次第に上がっている底面形状を示した(甲3の段落。」【0006】2頁10~32行)・使い方は従来のお玉のように使用すると共に,図2のように鍋底の内「側に先端を添わせながら対象物をすくい上げる。また図3aのように把- 20 -, 3の段落。」【0006】2頁10~32行)・使い方は従来のお玉のように使用すると共に,図2のように鍋底の内「側に先端を添わせながら対象物をすくい上げる。また図3aのように把- 20 -,,()手を持ちすくい板の先端から鍋内に差し込み煮魚などの対象物9の下に差し込んで,bのように載せて持ち上げる。その他切り分けたい。 ,煮物に先端から突き刺して切り分ける押しつけたい時は把手をつかみ。 ()すくい板の前半部方向に力を加えて裏面を押しつける必要な汁10は汁溜まり部に残り,不要な汁はすくい板の縁から流れ落ちる(甲3。」の段落【0006】3頁8~13行)イ上記記載によると,本願補正発明1は,次のとおりの意義を有する発明であると認めることができる。 すなわち,本願補正発明1は煮物を鍋内からすくう,金網から焼き魚を持ち上げる,油内から揚げ物をすくう,あるいは食事用として食物をすくって口に運ぶ,すくい具に関するものである。 従来,このような器具としては,お玉,トングや箸,お玉状の網,平板状のフライ返し,スプーン,又はレンゲやそれに付随する穴あきレンゲ等があるが,それぞれ,お玉は,対象物の底に差し込みにくく,対象物が崩れやすい,対象物を切りくずしにくい,フライ返しでは,対象物が落ちやすく,汁はすくえない,スプーンは,極端に傾けて口に流し込んだり,窪み内に残るカレー等の粘着質な対象物を舌で再度舐め取ったりしなければならない等,種々の問題があった。 - 21 -本願補正発明1はこのようなお玉,トング,箸,フライ返し,スプーン等の問題を解決するためになされたものであり,同発明1のすくい具は,請求項1で特定された構成とされているが,特に,すくい板と,すくい板側面に使用対象に合わせた長さで設けられた壁部とよりなるすくい部と,すく を解決するためになされたものであり,同発明1のすくい具は,請求項1で特定された構成とされているが,特に,すくい板と,すくい板側面に使用対象に合わせた長さで設けられた壁部とよりなるすくい部と,すくい部に壁部の延長方向に設けられた把手とよりなっており,すくい板と壁部により汁溜め部を形成するとともに,すくい板先端に壁部を有しない平板状の突きだし部を有している。 これにより,すくい板の突きだし部が平面状なので,対象物の底に差し込み易く,対象物をその面で支え持ち上げることができ,すくい板の突きだし部で開放されていて,一部に壁部を有するので,壁部に対象物を添えるように取り込めて落ちにくく,さらに汁溜め部を形成することで,突きだし部を対象物の底に差し込みつつ汁を取り込んで必要な汁を溜められる効果がある。 なお,本願補正発明2は,すくい板に汁切り孔を設けること,本願補正発明3は,すくい板先端が上方に向くように,途中から屈曲あるいは湾曲した形状とされることが特定されている。本願補正発明2のような構成を有する場合は,不要な汁を切ることができ,また,本願補正発明3のような構成を有する場合は,すくい板が途中で屈曲等するので,底面が形成されて立体状となる。 (2) 引用発明の意義ア引用例(甲1)の「考案の詳細な説明」には,次の記載がある。 「この考案は料理用のターナーに関するものである。従来の料理用ターナは平面状のものであるため,料理をフライパン等から皿等の器に盛り付けを行なう際,ターナーからこぼれることがあり不便である。本案はこれらの欠点を除くために考案されたもので,これを図面について説明すれば,第1図の正面図および第2図の側面図からわかるように,平面状の本体1- 22 -において,本体1の対角線上より上部端に立ち上がり部2を設け,対角線上より下部端 ので,これを図面について説明すれば,第1図の正面図および第2図の側面図からわかるように,平面状の本体1- 22 -において,本体1の対角線上より上部端に立ち上がり部2を設け,対角線上より下部端は平坦としたものに,柄3を立ち上がり部2側に設けた構造の料理用万能ターナーである。本案の本体1は図面でわかるとおり,長円形であるので対角線はこの長円形を長方形に置きかえて表現したものである。また本体1の先端部は図面においては弧状であるが必要に応じて直線等の形状とする。また本体1の平面上には必要に応じて貫通した複数の小穴,長穴を設けるものとする。 本案の特長は対角線を境いとして,先端部と片側側部で料理をすくい,かくはんができることとまた対角線を境として,柄3側に料理がこぼれないための立ち上がり部2を設けたものである。 本案はこのような構造であるため,中華料理等のかくはんが行なえ,料理が簡単にすくえ,またこぼすことがない,特に料理をすくう際,小さいものは先端で行ない,大きいものは側部からすくえる等の利点がある。また本案を小さく製作すれば,幼児用のスプーンとして最適である(1頁。」9行~2頁15行)イ上記記載によれば,引用発明は,従来の料理用ターナーは平面状であるため,料理をフライパンから器に盛り付けを行なう際,ターナーからこぼれることがあるという問題があったところ,この問題を除くためになされたものであり,中華料理等のかくはんが行なえ,料理が簡単にすくえ,ま- 23 -たこぼすことがないとともに,小さく製作することによって,幼児用のスプーンとしても最適な料理用万能ターナーという発明であると認めることができる。 (3) 原告主張の取消事由に対する判断ア取消事由1(本願補正発明1及び本願発明1認定の誤り)について(ア) 本願補正発明1の意 も最適な料理用万能ターナーという発明であると認めることができる。 (3) 原告主張の取消事由に対する判断ア取消事由1(本願補正発明1及び本願発明1認定の誤り)について(ア) 本願補正発明1の意義は,前記(1) イ認定のとおりであるところ,審決は,本願補正発明1を,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1(甲10)に記載されたとおりのものと認定し,また,本願発明1についても,本件補正前である平成20年5月29日付けの手続補正書(甲7)により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認定しているのであって,その認定に何ら誤りはない。 (イ) この点に関し,原告は,本願補正発明1及び本願発明1の特徴を主張した上,本願補正発明1及び本願発明1はお玉やスプーンの改良を目的としたものであり,汁を溜めるには,あるいは口内へ入れるには不都合な引用発明と混同された認定は認められないと主張する。 しかし,本願明細書の記載からすると,前記(1) のように,本願補正発明1及び本願発明1は,お玉,トング,箸,フライ返し,スプーン等の問題を解決するためになされたものとされていて,お玉を発想の出発点としたという発想過程をうかがい知ることはできない。このように本願補正発明1及び本願発明1は,お玉やスプーンを改良の対象として特定しているものではなく,一方,引用例でも,前記(2) 記載のとおり,スプーンとして用いることも最適であるとされ,汁を溜める部分を有していると認められるのであって,口内に食物を運ぶスプーンとして用いることは可能と考えられることからすれば,引用発明が口内へ入れるには不都合な物の発明とはいえないから,この点に関する原告の主張は失当であり,採用することができない。 - 24 -イ取消事由2(本願補正発明1と引用発明の対比・一致点認定 引用発明が口内へ入れるには不都合な物の発明とはいえないから,この点に関する原告の主張は失当であり,採用することができない。 - 24 -イ取消事由2(本願補正発明1と引用発明の対比・一致点認定の誤り)について(ア)対比における認定の誤りにつき,a本願補正発明1の内容及び意義は前記(1)ア及びイのとおりでありまた,引用発明の内容及び意義は前記(2) ア及びイのとおりであるところ,引用例における平面状の「本体1」は,料理をすくったりする部材であるから,その機能又は構造から,本願補正発明1の「すくい板」に相当する。また,引用例において「本体1」の周縁に設けられた料理がこぼれないための「立ち上がり部2」は,本願補正発明1の「壁部」に相当し,この「料理をこぼれないようにした部分」は,当然,汁を溜めることができるものと解されるから,本願補正発明1の「汁溜め部」に相当すると認められる。 bこの点につき,原告は,前記第3,1(4) イ(ア) aのとおり,本願補正発明1は汁をすくうのを第一の目的としたものであるから「本,体」と称する対象は,すくい板と壁部によって囲まれた汁溜め部であると主張する。しかし,汁留め部が本願補正発明1における「本体」であるとしても,引用発明で「本体1」とされている部位は「立ち,上がり部2」に対して平板上の部分を指すのであるから,本願補正発明1の「壁部」を含まないことは明らかであり,原告の主張は失当である。 cまた原告は前記第31(4) イ(ア) bのとおり引用発明の料,,,,「理をこぼれないようにした部分」と本願補正発明1の「汁溜め部」とは,成り立ちが異なる旨主張する。 しかし,引用例における「料理をこぼれないようにした部分」は,汁を溜めることが可能と解されることは前記認定のとおりで ようにした部分」と本願補正発明1の「汁溜め部」とは,成り立ちが異なる旨主張する。 しかし,引用例における「料理をこぼれないようにした部分」は,汁を溜めることが可能と解されることは前記認定のとおりであるところ,引用例において汁を溜めるために左右のどちらかに傾ける必要が- 25 -あることは,立ち上がり部(壁部)の配置場所が本願補正発明1とは異なることによるものであり,この点は審決において本願補正発明1と引用例の相違点2として抽出されているから,本願補正発明1と引用発明の一致点の認定に関する取消事由としては理由がない。 dさらに,原告は,前記第3,1(4) イ(ア) cのとおり,引用発明のすくい具を対角線上で切断しても上側のみが開口する汁の溜められるお玉には戻らないことを理由として,本願補正発明1とは異なる旨主張する。 しかし,前記ア(イ) で認定したとおり,そもそも本願補正発明1はお玉のみを改良したものとはいえないから,本願補正発明1においても,突き出し部をその付け根の壁部の上端ラインで切断した場合,その形状が元のお玉に戻るとはいえない。したがって,切断した場合上側のみが開口する汁の溜められるお玉に戻るか否かは対比する上で考慮すべき事項でないことは明らかであって,この点に関する原告の主張は失当である。 (イ)一致点認定の誤りにつきa上記(ア) aの認定と同様,引用例1の「立ち上がり部2を有しない平坦部」は本願補正発明1の「壁部を有しない平板状の突きだし部」,「」「」,「」に柄3は把手に相当し引用例1の料理用万能ターナーは料理をすくうことができる器具であるから,本願補正発明1の「すくい具」に相当する。 そして,本願補正発明1では,すくい板の辺内に把手があり,その辺を含めた辺に設けられた屈折した壁部とす 能ターナーは料理をすくうことができる器具であるから,本願補正発明1の「すくい具」に相当する。 そして,本願補正発明1では,すくい板の辺内に把手があり,その辺を含めた辺に設けられた屈折した壁部とすくい板より,すくい部を形成している。同様に,引用例でも,本願補正発明1の「すくい板」に相当する「本体1」の辺内に把手に相当する「柄3」が設けられ,その辺を含めた辺に設けられた本願補正発明1の屈折した「壁部」に- 26 -相当する「立ち上がり部2」と「本体1」より,料理をすくう部分を形成している。 そうすると,本願補正発明1と引用発明は「すくい板と,該すく,い板の辺内に把手があり,その辺を含めた辺に設けられた屈折した壁部とよりなるすくい部と,該すくい部に設けられた把手とよりなり,前記すくい板と壁部により汁溜め部を形成するとともに,すくい板先端に壁部を有しない平板状の突きだし部を有することを特徴とする,すくい具」で一致するということができる。 。 審決における本願補正発明1の認定,及び本願補正発明1と引用発明との一致点の認定はこれと同旨であって,その認定に誤りはなく,原告の主張する取消事由2は理由がない。 bこの点につき,原告は,前記第3,1(4) イ(イ) aのとおり,本願補正発明1の原型はお玉であるのに対し,引用発明はターナーであることから,そもそも一致点は発見しにくい関係にあると主張する。 しかし,前記ア(イ) で認定したとおり,本願補正発明1の対象はお玉に限定されるものとはいえず,かえって,その対象として想定している上記の「フライ返し」は,料理をひっくり返すための器具であっ,「」,て引用例のターナーと同種の器具を意味すると考えられるから本願補正発明1は引用発明の「ターナー」を排除していないと認められる。したがって,原告の主 料理をひっくり返すための器具であっ,「」,て引用例のターナーと同種の器具を意味すると考えられるから本願補正発明1は引用発明の「ターナー」を排除していないと認められる。したがって,原告の主張は失当である。 また,原告は,審決が「辺内に把手がある」との点を一致点と認定したことに関し,本願補正発明1と引用発明では壁部の形態が異なるとの理由で誤りであると主張する。 ,,しかし壁部及び把手の位置関係に関する認定に誤りがないことは前記(ア) aのとおりであり,審決は,壁部の延長上に把手があることと,辺内に把手があることに関しては相違点1として抽出しているの- 27 -であるから,本願補正発明1と引用発明の一致点に関する原告の主張は理由がない。 cまた,原告は,前記第3,1(4) イ(イ) bのとおり,本願補正発明1の「‥‥すくい板先端に壁部を有しない‥‥」に対して,引用発明の「‥‥本体1の対角線上より‥‥下部端を平坦とした‥‥」とが一致するという認定や柄側だけに立ち上がり部を有するにすぎない引用発明と本願補正発明1が一致するという認定は誤りである旨主張する。 しかし,引用発明においても,すくい板に相当する「本体1」の先(),端は本願補正発明1と同様に立ち上がり部壁部を有していないし本願補正発明1は把手側に「壁部」があり,引用発明でも柄側(把手側)に「立ち上がり部2」があるから,これらの点が一致しているものとした審決の認定に誤りはなく,原告の主張は理由がない。 ウ取消事由3(相違点認定の誤り)について(ア) 本願補正発明1の内容及び意義は前記(1) ア及びイのとおりであり,引用発明の意義及び内容は前記(2) ア及びイのとおりであるところ,前記ア及びイのとおり,審決における本願補正発明の認定,及び本願補正発明1と引用発明の び意義は前記(1) ア及びイのとおりであり,引用発明の意義及び内容は前記(2) ア及びイのとおりであるところ,前記ア及びイのとおり,審決における本願補正発明の認定,及び本願補正発明1と引用発明の一致点の認定に誤りはなく,このことを前提にすると本願補正発明1と引用発明は審決認定のとおり前記第31(3),,,,イ記載の点で相違しているといえ,審決の認定に誤りはない。 (イ) 原告の主張(ア) につき原告は,相違点として,中央線を引くと,本願補正発明1の場合は両側が対称形となるのに対し引用発明では対称形にはならないとか,本願補正発明1の突き出し部先端はなめらかな一曲線か一直線を描くのに対し,引用発明では角を描くとか,本願補正発明1の突き出し部を切り外したとき,周囲の全ての高さが底面よりほぼ同じであるのに対し,引用- 28 -発明では同じにはならないなどと主張する。 しかし,すくい具がすり鉢状であること,すくい板が対称形であること,及び突き出し部先端の形状については,本願補正発明1に何ら特定。 ,,されていないまた本願明細書には底面に関する記載もないばかりか壁部の高さを含め,底面と周囲の高さの関係についても特段の特定はな。 ,,,いしたがって原告の主張は請求項の記載に基づくものとはいえず失当である。 (ウ) 原告の主張(イ) aにつき原告は,引用例において,立ち上がり部を設ける部分が対角線である理由は,少なくとも汁を溜めるのが目的ではなく,唐揚げなどの固形物がすくう対象であり,また「大きいものは側部からすくえる」の捉え方として,これは,側部に立ち上がり部を有さないことを示しているのであり,その側部から水分は廃棄できるあるいは廃棄されてしまい,汁を溜めにくいことを表している旨主張する。 しかしながら,引用発明は, として,これは,側部に立ち上がり部を有さないことを示しているのであり,その側部から水分は廃棄できるあるいは廃棄されてしまい,汁を溜めにくいことを表している旨主張する。 しかしながら,引用発明は,料理がこぼれないようにするものとされているから,液状物もすくう対象としていると考えられる上,スプーンとして最適とされており,スプーンですくう対象として汁が含まれることは自明であるから,引用発明が汁を溜めることを目的としていることは明らかであり,また,引用例には,前記(2)ア記載のとおり「料理を,フライパン等から皿等の器に盛り付けを行なう「中華料理等のかくは」,んが行なえ,料理が簡単にすくえ,またこぼすことがない」とも記載されており,引用発明が「唐揚げなどの固形物」のみをすくう対象とす,るものでないことは明らかである。 したがって,この点に関する原告の主張は失当である。 (エ) 原告の主張(イ) bにつき原告は,引用例の穴は,本願補正発明2の汁切り孔とは意味合いも異- 29 -なり,設ける形態自体が異なるので,同じ孔とはいえない旨主張する。 しかし,特許法36条5項には「各請求ごとに特許出願人が特許を,受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない」とされ,発明は請求毎に捉えられるべきもので。 ある。審決が容易想到性について判断した本願補正発明1には,汁切り孔に関する特定はないから,本願補正発明2で特定された汁切り孔に関する構成を基にした,引用発明との相違点に関する主張は,採用の限りでない。 エ取消事由4(周知例Aに基づく相違点認定判断の誤り)について(ア) 周知例Aの意義a周知例A(甲2)には,次の記載がある。 ・2実用新案登録請求の範囲「すくい上げ手本体の葉(1)前方先端(3)及前方 4(周知例Aに基づく相違点認定判断の誤り)について(ア) 周知例Aの意義a周知例A(甲2)には,次の記載がある。 ・2実用新案登録請求の範囲「すくい上げ手本体の葉(1)前方先端(3)及前方左右両側切面’に包丁刃(3)及山形刃(4)を設け,且つ本体の葉(1)の後方及後方左右両側に流れ止め片(5)を設け,流れ止め片(5)の真下壁面(7)の処に水切り穴(6)を設けて出来た家庭用すくい上げ手小道具(1頁4~8行)」・3考案の詳細な説明「‥‥。 ()故に本考案はかかる諸欠点を補うために図に示す如く本体の葉1(’)()()前方先端及その左右周辺切面に包丁刃 又は山形刃 を設けて気軽に所要に応じて切断しながら物を救い上げるようにし且つ葉(1)の後方及その左右周辺に流れ止め片(5)を設けて一旦すくい上げたものは全面的に葉(1)の中に内蔵出来るようにした。又葉(1)の後部真下壁面(7)に水切り穴(6)を設けて葉(1)の中にすくい上げたものと混同している水分を完- 30 -全に排出させることが出来るのである。 -この様に構成したのであるから一般家庭の調理場においても煮もの,焼もの等をする時気軽に切断しながらすくい上げることが出来,又希望通りすくい上げたものが葉の中に内蔵されるので無駄がなく,又葉の中に混同している水分を完全に排出することによってすくい上げたものだけが皿の上に載せうことが出来るからである(1頁20。」~2頁11行)b甲2の図には,各種形態の家庭用すくい上げ小道具が示されているが例えば水切り穴6を設けた例第十八図や設けていない例第,(),(十六図)が,それぞれ多数示されている。 ・c以上の記載によれば,周知例Aは,一旦すくい上げたものを全面的に葉1の中に内蔵でき り穴6を設けた例第十八図や設けていない例第,(),(十六図)が,それぞれ多数示されている。 ・c以上の記載によれば,周知例Aは,一旦すくい上げたものを全面的に葉1の中に内蔵できるようにした家庭用すくい上げ小道具である。 また水切り穴6が設けられた家庭用すくい上げ小道具は,すくい上げたものと混同している水分を完全に排出させることができるようになっており,周知例Aは,水切り穴を設けたものと設けていないものをそれぞれ開示しているが,この水切り穴を設けた家庭用すくい上げ小道具について,実用新案登録を請求しているものである。 ,,,そして上記記載からすれば周知例Aに記載された事項について「葉(1,流れ止め片(5,把手からなる家庭用すくい上げ手小道))具において,流れ止め片(5)が葉(1)の後方及び左右両側に設け- 31 -られ,葉(1)の後方に設けられた流れ止め片(5)の延長上に把手(2)を設けること」と認定した審決の認定に誤りはない。 。 (イ) 以上の認定を前提として,相違点2について検討すると,周知例Aでは「葉1」の後方及び左右両側に「流れ止め辺5」が設けられ,後方,の流れ止め辺に「把手」が設けられているから,周知例Aは,本願補正発明1における,すくい具の把手を設けた辺及びその両側の2側辺との3箇所に渡って壁部を形成する構成を有していると認められ,すくい具は,すくう対象に応じて適宜の大きさのものを使用すると認められるから,壁部が近似値の使用対象に合わせた長さであるのは当然のことである。 そして,本願補正発明1,引用例及び周知例Aは,それぞれ調理物をすくう器具に関する点で全く同一の技術分野に属するものである。 したがって,周知例Aは,相違点2に係る本願補正発明1の構成を有していると認められるから,これを周知技 例及び周知例Aは,それぞれ調理物をすくう器具に関する点で全く同一の技術分野に属するものである。 したがって,周知例Aは,相違点2に係る本願補正発明1の構成を有していると認められるから,これを周知技術の参考例として引用発明に適用することによって,相違点2は容易想到であるとした審決の判断に誤りがあるとはいえない。 (ウ) この点に関し原告は,前記第3,1(4) エ(ア) のとおり,汁を溜めるための容器を容器としてなすとき,本願補正発明1では開口部となる側を上方に置くことになるのに対し,周知例Aの場合は,主に横臥状にして使用するなどと主張する。 しかし,周知例Aにおける第9図,第10図の例などは横臥状であるかもしれないが,第8図,第11図及び第16図に示された「流れ止め片5」は,本願補正発明1の壁部と同様の配置となっており,横臥状で使用されるとは考えられないから,この点に関する原告の主張は失当である。 (エ) また,原告は,前記第3,1(4) エ(イ) aないしeのとおり,相違点- 32 -に関し周知例Aの適用阻害事由がある旨主張する。 しかし,上記aについては,審決は周知例Aにおける葉の先端形状を引用発明に適用しようとするものではない上,本願補正発明1ではすくい板の先端形状について特に限定はないから,原告の主張は請求項の記載に基づかない主張にすぎない。 上記bについては,周知例Aには水切り穴を形成していない例(第十六図)も開示されている。 上記cについては,周知例Aの葉1は,調理物をすくい上げる部材であるから,本願補正発明1のすくい板に相当するものであることは明らかであり,すくい板の下端を後方と称するか否かは,この対応関係に影響するとはいえない。 上記dについては,周知例Aに水切り穴が形成されていない例(第十六図)も開示されているのであ のであることは明らかであり,すくい板の下端を後方と称するか否かは,この対応関係に影響するとはいえない。 上記dについては,周知例Aに水切り穴が形成されていない例(第十六図)も開示されているのであるから何ら問題はない。 上記eについては,突き出し部について,審決は,周知例Aから突き出し部の構成を抽出したものではない上,例えば周知例Aの第十六図における実施例では,本願補正発明1の突き出し部と同様の形状が描かれているのであるから何ら問題はなく,また,本願補正発明1には,汁切り孔の場所の特定は存しないから,この点は周知例Aとの相違点とはならない。 したがって,この点に関する原告の主張はいずれも失当である。 オ取消事由5(本願補正発明2及び3に関する審理不尽)についてこの点に関し,原告は,審決には,本願補正発明2及び3に言及しない審理不尽がある旨主張する。 しかし,特許法49条は「審査官は,特許出願が次の各号のいずれかに該当するときは,その特許出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。‥‥2その特許出願に係る発明が‥‥第29条‥‥の規定- 33 -により特許をすることができないものであるとき‥‥」と規定しており,1つの特許出願に複数の請求項に係る発明が含まれている場合であっても,そのうちのいずれか1つでも特許法29条等の規定に基づき特許とすることができないものであるときは,その特許出願全体を拒絶すべきことが明らかである。 そして,前記アないしエのとおり,本願補正発明1が特許法29条2項により特許出願の際に独立して特許を受けることができないとした審決の判断に誤りはない。 そうすると,本願補正発明1に特許性がない以上,本件補正は独立特許,,要件がないとして却下されるべきであり同様の構成を持つ本願発明1も特許法49条の規定によ ないとした審決の判断に誤りはない。 そうすると,本願補正発明1に特許性がない以上,本件補正は独立特許,,要件がないとして却下されるべきであり同様の構成を持つ本願発明1も特許法49条の規定により拒絶査定を免れないのであるから,本願補正発明2及び3について検討しない審決の手続に違法があるとすることはできない。 したがって,この点に関する原告の主張も失当である。 結論 以上のとおり,原告の主張する取消事由はいずれも理由がない。 よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第1部裁判長裁判官中野哲弘裁判官東海林保- 34 -裁判官矢口俊哉

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