平成25年3月18日判決言渡平成24年(行ケ)第10252号審決取消請求事件平成25年2月6日口頭弁論終結判決 原告タカラバイオ株式会社 訴訟代理人弁理士伊藤晃同冨田憲史同澤本真奈美 被告特許庁長官 指定代理人冨永みどり同鵜飼健同瀬良聡機同中島庸子同芦葉松美 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び 理由 第1 請求特許庁が不服2009-17666号事件について平成24年5月28日にした審決を取り消す。 第2 争いのない事実 1 特許庁における手続の経緯原告は,平成18年6月16日,発明の名称を「耐熱性リボヌクレアーゼH」とする発明について,特許出願(特願2006-167465号。平成13年9月13日を国際出願日とする出願である特願2002-527273号(優先権主張平成12年9月14日)の分割出願。以下「本願」という。)をしたが,平成21年6月19日付けで拒絶査定を受けたので,同年9月18日,これに対する不服の審判(不服2009-17666号事件)を請求するとともに,手続補正書を提出した(以下「本件補正」という。)。特許庁は,平成24年5月28日 で拒絶査定を受けたので,同年9月18日,これに対する不服の審判(不服2009-17666号事件)を請求するとともに,手続補正書を提出した(以下「本件補正」という。)。特許庁は,平成24年5月28日,本件補正を却下した上,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「審決」という。)をし,その謄本は,同年6月12日,原告に送達された。 2 特許請求の範囲(1) 本件補正に基づく本願の特許請求の範囲における請求項1の記載は次のとおりである(甲5。以下,この発明を「本願補正発明」という。また,本件補正に基づく本願の特許請求の範囲,発明の詳細な説明(甲3,甲5)を総称して「本願明細書」ということがある。)。 【請求項1】下記の群より選択され,かつ,耐熱性リボヌクレアーゼH活性を有することを特徴とするポリペプチド:(a)配列表の配列番号47に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;(c)配列表の配列番号46に示される塩基配列を有する核酸にコードされるポリペプチド。 (2) 本件補正前の平成21年5月28日付け手続補正に基づく本願の特許請求の範囲における請求項1の記載は次のとおりである(甲4。以下,この発明を「本願発明」という。)【請求項1】下記の群より選択され,かつ,耐熱性リボヌクレアーゼH活性を有し,一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうち,RNA鎖を含む鎖を切断することができることを特徴とするポリペプチド: (a)配列表の配列番号47又は57に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;(b)配列表の配列番号47又は57に示されるアミノ酸配列において,少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失,付加,挿入又は置換を有するポリペプチド;(c)配列表の配列番号46又は56に示される塩基配列を有す 列表の配列番号47又は57に示されるアミノ酸配列において,少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失,付加,挿入又は置換を有するポリペプチド;(c)配列表の配列番号46又は56に示される塩基配列を有する核酸,当該核酸又はその相補鎖とストリンジェントな条件下にハイブリダイズしうる核酸にコードされるポリペプチド。 3 審決の理由(1) 別紙審決書写しのとおりである。その概要は以下のとおりである。 本願補正発明は,本願出願日前に頒布された刊行物であるJ. Bacteriol. (1998)vol.180, no.23, p.6207-6214 (甲1。以下「引用文献3」という。)に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができず,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。 本願発明は,本願補正発明を含むものであり,同様の理由により,引用文献3に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。本願は拒絶すべきものである。 (2) 審決は,引用文献3にRNaseHIIPkの発明が記載されるとする。 また,審決の認定したRNaseHIIPkの発明と本願補正発明との一致点及び相違点は,以下のとおりである。 ア一致点両者は,耐熱性リボヌクレアーゼH活性を有するポリペプチドである点。 イ相違点 たRNaseHIIPkの発明と本願補正発明との一致点及び相違点は,以下のとおりである。 ア一致点両者は,耐熱性リボヌクレアーゼH活性を有するポリペプチドである点。 イ相違点本願補正発明のポリペプチドが,配列表の配列番号47に示されるアミノ酸配列を有するものであるのに対し,引用文献3の図1に記載されるRNaseHIIPkのアミノ酸配列の70%弱は,本願補正発明のものと一致しているものの,その余の配列は相違している点。 第3 当事者の主張 1 審決の取消事由に係る原告の主張審決は,引用文献3に記載された発明の認定の誤り(取消事由1),顕著な作用効果の看過(その1)(取消事由2),顕著な作用効果の看過(その2)(取消事由3)があり,これらの誤りは,審決の結論に影響を及ぼすから,審決は取り消されるべきである。 (1) 引用文献3に記載された発明の認定の誤り(取消事由1)ア審決は,「本願明細書の実施例11の記載をみると,Pfu(パイロコッカスフリオサス),Pho(パイロコッカスホリコシイ)などのRNaseHIIは3’側のRNAの5’側を切断するものであり(段落0251),2本鎖の一方の鎖にRNAを3つ,あるいは,2つ含むDNA断片であるVFN3やVFN2においては,DNA-RNA,RNA-DNAの接合部を切断しないものであって,引用文献3に記載される『RNaseHIIPk及び大腸菌RNasesHIIは,RNA-DNA 接合部の最後のリボヌクレオチドの5’端で,29-bpのDNA-RNA-DNA-DNA基質を開裂できる』ものと何ら違いがないものである。また,本願明細書の実施例11には,引用文献3に記載されるPyrococcuskodakaraensisKOD1株と同じパイロコッカス属に属する,P 開裂できる』ものと何ら違いがないものである。また,本願明細書の実施例11には,引用文献3に記載されるPyrococcuskodakaraensisKOD1株と同じパイロコッカス属に属する,Pfu(パイロコッカスフリオサス),Pho(パイロコッカスホリコシイ)のRNaseHIIが,一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうちRNAを含む鎖を切断することが記載されているのであるから,引用文献3に記載されるRNaseHIIPkも同様に,一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAの うちRNAを含む鎖を切断することができると推認することができ,・・・本願補正発明のポリペプチドが,引用文献3に記載されるRNaseHIIPkと,格別な違いがあることにはならない」と認定した。 しかし,本願明細書の実施例11に記載されたPfuおよびPhoのRNaseHIIが一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうちRNAを含む鎖を切断することができるという事実は,本願補正発明によって初めて見出された事項であって,本願の優先権主張日当時の当該分野の技術常識ではない。本願明細書(甲3)の段落【0251】に「RNAが1つでも切断するRNaseHは報告されていない」と記載があるように,本願の優先権主張日当時,RNAを1つだけ含むDNA鎖であっても切断する耐熱性リボヌクレアーゼHは報告されていなかった。 特許出願の審査においては,特許出願前の技術常識を参酌して,引用発明から本願発明を容易に想到できたか否かが判断されるべきであり,本願出願前には知られていなかった事実を参酌して判断することは違法である。しかるに,審決は,PfuおよびPhoのRNase HIIが一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうちRNAを含む鎖を切断することができるという本願補正発明に を参酌して判断することは違法である。しかるに,審決は,PfuおよびPhoのRNase HIIが一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうちRNAを含む鎖を切断することができるという本願補正発明によって初めて見出された事実,すなわち,本願補正発明の内容を,あたかも出願前の技術常識であったかのごとく参酌している。このような本願明細書から得た知識,いわゆる後知恵を根拠として引用文献3に記載された発明を認定する手法は,特許法の趣旨に反するものであり,違法である。 したがって,本願明細書の記載に基づいて引用文献3に記載された発明の酵素の基質切断特異性を推認できるとした審決の判断は誤りである。 イ審決は,「本願の出願後の文献FEBSLetters,531(2002)p.204-208のFig. 1には,引用文献3に記載されるRNaseHIIPkが,一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうちRNAを含む鎖を切断することが示されていることからも,本願補正発明のポリペプチドが,引用文献3に記載されるRNaseHIIPkと比べて,格別な違いはない」と認定した。 しかし,本願の出願後の文献FEBSLetters,531(2002)p.204-208 (甲2)の図1に示される一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAに対する実験結果は,甲2で初めて確認された事項である。すなわち,甲2が公表された2002年10月まで,T.kodakaraensisのRNase HIIが一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうちRNAを含む鎖を切断することは当該分野で知られていなかったのであるから,本願の出願後に公表された文献である甲2の図1は,本願の出願後の技術を示しているのである。 しかも,本願の親出願である国際出願に基づく特願2002-527273号 で知られていなかったのであるから,本願の出願後に公表された文献である甲2の図1は,本願の出願後の技術を示しているのである。 しかも,本願の親出願である国際出願に基づく特願2002-527273号は,甲2の論文受領日である2002年7月23日より前の2002年3月21日に国際公開されているから,当該国際公開された明細書の記載内容に依拠して甲2の実験が行われた可能性を否定できず,甲2の図1の記載内容を根拠として引用文献3に記載された発明を認定することは,いわゆる後知恵であり,許されない。 したがって,本願の出願後に公表された文献である甲2に基づいて引用文献3に記載された発明の酵素の基質切断特異性を推認できるとした審決は誤りである。 (2) 顕著な作用効果の看過(その1)(取消事由2)審決は,上記(1) のとおり,引用文献3に記載された発明の酵素の基質切断特異性について誤認した結果,本願補正発明のポリペプチドの「一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうちRNAを含む鎖を切断する」という顕著な作用効果を看過した誤りがある。 すなわち,引用文献3には,RNase HIIPkがRNAを1つしか含まないDNA鎖を切断することは記載されておらず,示唆もなく,RNase HIIPkが,一方の鎖にRNAを4個含む29塩基対の2本鎖DNA基質において,DNA-RNA接合点またはRNA-DNA接合点のいずれも切断できないと記載される(甲1の6213頁左欄15ないし20行(訳文の項目5の1ないし5行))。 RNAを1つしか含まないDNA鎖の場合,DNAとRNAの接合部はDNA-RNA接合点及びRNA-DNA接合点のみから構成されるので,引用文献3の上記 記載は,RNAを1つしか含まないDNA鎖を切断しないことを示している。そうすると,引用文 NAの接合部はDNA-RNA接合点及びRNA-DNA接合点のみから構成されるので,引用文献3の上記 記載は,RNAを1つしか含まないDNA鎖を切断しないことを示している。そうすると,引用文献3には,「一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうちRNAを含む鎖を切断する」という基質切断特異性を否定する記載があるというべきである。 また,本願優先権主張日当時において,RNAを1つしか含まないDNA鎖であっても切断する耐熱性リボヌクレアーゼHは報告されておらず(甲3の【0251】),RNAを一つしか含まないDNA鎖を切断する耐熱性リボヌクレアーゼHは存在しないであろうというのが技術常識であった。そうすると,本願優先権主張日当時の技術常識を参酌しても,引用文献3記載のRNase HIIPkが「一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうちRNAを含む鎖を切断する」という基質切断特異性を有することは示唆されない。むしろ,当業者ならば,引用文献3の記載内容及び技術常識に基づいて,RNase HIIPkは,一方の鎖にRNAを含む2本鎖DNAのうちRNAを4個含む鎖を切断することができるが,RNAの両端がDNAに接している,RNAを1個しか含まない鎖を切断することはできないと理解する。 一方,本願補正発明の耐熱性リボヌクレアーゼH活性を有するポリペプチドは,一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうち,RNAを含む鎖を切断することができるという格別顕著な作用効果を奏する。すなわち,本願補正発明のサーモコッカスリトラリス(TLI)由来のRNase HII(TliRNaseHII)は,本願明細書の実施例1ないし実施例7に記載される様々な耐熱性RNase HIIのアミノ酸配列の間で保存されている部分をもとにしてオリゴヌクレオチドプラ HII(TliRNaseHII)は,本願明細書の実施例1ないし実施例7に記載される様々な耐熱性RNase HIIのアミノ酸配列の間で保存されている部分をもとにしてオリゴヌクレオチドプライマーを合成し,遺伝子をクローニングして得られたものであるから(【0202】ないし【0210】),これらの耐熱性RNase HIIが共通の性質を有することは,当業者であれば推認できる。また,本願明細書の実施例11(2)では,PfuRNase HII(パイロコッカスフリオサス由来のRNase HII),PhoRNase HII(パイロコッカスホリコシ イ由来のRNase HII),およびAfuRNase HII(アルカエオグロバスフルギダス由来のRNase HII)の作用機作について試験された結果(【0248】ないし【0251】),PfuRNase HIIおよびPhoRNase HIIが,一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNA基質を切断することが示されたが(【0250】,【0251】),AfuRNaseHIIは,当該基質を切断しなかった。本願補正発明のTliRNase HIIは,PfuRNase HIIと65%のアミノ酸配列相同性を有し,PhoRNase HIIは,PfuRNase HIIと69%のアミノ酸配列相同性を有するが(【0240】),AfuRNase HIIは,PfuRNase HIIに対し,45%のアミノ酸配列相同性しか示さない。そして,本願明細書の実施例11(2)の結果,TliRNase HIIと65%のアミノ酸配列相同性を有するPfuRNase HII及びPfuRNase HIIに対してTliRNase HIIと同程度に高いアミノ酸配列相同性を有 TliRNase HIIと65%のアミノ酸配列相同性を有するPfuRNase HII及びPfuRNase HIIに対してTliRNase HIIと同程度に高いアミノ酸配列相同性を有するPhoRNase HIIもまた,PfuRNase HIIと同様に,「一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうち,RNA鎖を含む鎖を切断する」特性を示したのであるから,当業者は,当該実施例において見出された耐熱性RNase HIIにおける「一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうち,RNA鎖を含む鎖を切断する」という基質切断特異性に関し,PfuRNase HIIに対してアミノ酸配列相同性が45%より高く,69%前後のアミノ酸配列相同性を有する耐熱性RNase HIIであれば,当該特性を有していると予測することができる。そうすると,本願明細書の上記記載から,当業者は,本願補正発明のTliRNaseHIIも,基質切断特異性を有すると推認できる。 上記のとおり,引用文献3は,「一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうちRNAを含む鎖を切断する」という基質切断特異性を全く示唆せず,かえって,RNAを1つしか含まないDNA鎖を切断しないことを示すから,引用文献3はむしろ,本願補正発明のポリペプチドの基質切断特異性を想起するに至る阻害要因と なる。加えて,本願優先権主張日当時の技術常識において,RNAを一つしか含まないDNA鎖を切断する耐熱性リボヌクレアーゼHは存在しないと考えられていたから,当業者は,RNase HIIPkが一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうちRNAを含む鎖を切断するだろうとは予測し得ないし,Pyrococcuskodakaraensisと同じThermococcaceaeに属する他の古細 一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうちRNAを含む鎖を切断するだろうとは予測し得ないし,Pyrococcuskodakaraensisと同じThermococcaceaeに属する他の古細菌由来の耐熱性リボヌクレアーゼHが一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうちRNAを含む鎖を切断するだろうとは全く予測し得ない。そうすると,一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうちRNAを含む鎖を切断するという本願補正発明のポリペプチドの作用効果は,本願優先権主張日当時の技術常識を参酌しても,引用文献3に記載された発明から予想できない格別顕著な作用効果であり,このような作用効果については実証されている(甲9の3頁下から5行ないし4頁下から9行)。 したがって,一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうちRNAを含む鎖を切断することができるという基質切断特異性の点で,本願補正発明のポリペプチドが引用発明と比べて格別な違いがないとした審決の判断は,その顕著な作用効果を看過した誤りがある。 (3) 顕著な作用効果の看過(その2)(取消事由3)審決は,「本願明細書の段落0219には,実施例3-(5)に記載の方法により酵素活性を測定した結果,酵素活性が認められたことが記載され,・・・4mM酢酸マグネシウムを含む反応液が記載されてはいるものの,その活性がどの程度のものであるのかについての記載はない。」,「請求人は,・・・審判請求の理由において,実験データを提出しているが,そのようなデータに基づく効果は明細書に記載されているとはいえない」,「本願補正発明のポリペプチドが,4mM酢酸マグネシウムの反応液でリボヌクレアーゼH活性があることを,単に見出したからといって,それが従来技術からは予想できない顕著な効果であるということはできない」,「本願補正 のポリペプチドが,4mM酢酸マグネシウムの反応液でリボヌクレアーゼH活性があることを,単に見出したからといって,それが従来技術からは予想できない顕著な効果であるということはできない」,「本願補正発明のポリペプチドが4mM酢酸マグネシウムの反応液でリボヌ クレアーゼH活性があったというだけでは,引用文献3に記載されるRNaseHIIPkを,最適化して用いる場合と比較して,格別顕著な効果が奏されているものと認めることはできない」と認定した。 しかし,審決の認定は,以下のとおり誤りである。 ア本願明細書の記載から,本願補正発明が顕著な効果を奏することは明らかである。 (ア) 本願明細書には,本願補正発明のポリペプチドの酵素活性を実施例3-(5)に記載の方法により測定した結果,リボヌクレアーゼH活性が認められたことが記載され(【0213】),実施例3-(5)には,4mM酢酸マグネシウムの存在下で酵素反応を行ったことが記載される(【0133】)。本願明細書には,測定された酵素活性がどの程度のものであるかについての具体的な記載はないが,得られた酵素標品が所望の活性を有するかどうかを確認する目的で酵素反応を行う場合,予め,複数の条件を検討して,十分に高い活性が得られる最適又は最適に近い条件を用いることが当該技術分野における常法であるから,当業者は,本願明細書の上記記載から,本願補正発明のポリペプチドが4mMマグネシウム濃度条件下で最大又は最大に近いリボヌクレアーゼH活性を有していると理解する。 従来のRNase Hの場合,例えば,RNase HIIPkでは10mMマグネシウム濃度条件下(甲1の6211頁表1(訳文の項目2)),大腸菌及びB. subtilis由来のRNase Hでは10mM又は50mMマグネシウム濃度条件下(拒 e HIIPkでは10mMマグネシウム濃度条件下(甲1の6211頁表1(訳文の項目2)),大腸菌及びB. subtilis由来のRNase Hでは10mM又は50mMマグネシウム濃度条件下(拒絶査定の拒絶の理由における引用文献2(甲11)の612頁表3(訳文の項目3))でリボヌクレアーゼH活性を測定している。このように,本願優先権主張日当時に知られていたRNase Hの活性測定には,4mMよりもはるかに高濃度のマグネシウムが使用されていたから,当業者が,4mMマグネシウムの存在下で酵素活性測定を行ったという本願明細書の上記記載を見れば,本願補正発明のポリペプチドが従来のRNaseHと比べて非常に低いマグネシウム濃度条件下で最大又は最大に近いリボヌクレアーゼH活性を有しており,4mM等の 低いマグネシウム濃度条件下において十分に高いリボヌクレアーゼH活性を有することを明確に把握できる。 一方,引用文献3に記載のRNase HIIPkは,20mMマグネシウム濃度条件下で最大のリボヌクレアーゼH活性を示し,5mMマグネシウム濃度条件下で最大活性の50%の活性,2.5mMマグネシウム濃度条件下で最大活性の約16%の活性を示す(甲1の図3(訳文の項目3))。すなわち,4mMマグネシウム濃度条件下でのRNase HIIPkのリボヌクレアーゼH活性は,最大活性の半分にも満たない低い活性であるといえる。 本願補正発明のポリペプチドにとって4mMマグネシウム濃度という反応条件は,最適又は最適に近い条件なので,4mMマグネシウム濃度下における本願補正発明のポリペプチドの酵素活性は,最大活性又は最大活性に近いものであり,最大活性の50%未満というような低い酵素活性であるはずがない。 したがって,4mM等の低いマグネシウム濃度条件下にお 本願補正発明のポリペプチドの酵素活性は,最大活性又は最大活性に近いものであり,最大活性の50%未満というような低い酵素活性であるはずがない。 したがって,4mM等の低いマグネシウム濃度条件下において十分に高い活性を示すという本願補正発明のポリペプチドの効果は,引用文献3に記載された発明と比較して有利な効果であり,同発明から予想できない顕著な作用効果である。 (イ) 当初明細書に,「発明の効果」に関し,何らの記載がない場合はさておき,当業者において「発明の効果」を認識できる程度の記載がある場合やこれを推論できる記載がある場合には,記載の範囲を超えない限り,出願の後に補充した実験結果等を参酌することは許されるというべきであり,許されるか否かは,公平の観点に立って判断すべきである。上記(ア) のとおり,当業者ならば,本願明細書の記載から,4mM等の従来のRNase Hと比べて非常に低いマグネシウム濃度条件下において十分に高いリボヌクレアーゼH活性を示すという本願補正発明のポリペプチドの効果を合理的に推論することができ,かかる効果は本願明細書に開示されているに等しいものであるから,実験データは参酌されるべきである。そして,審判手続において提出した実験データにおける(B)実験結果から明らかなように,本願補正発明のポリペプチドは,1~4mMマグネシウム濃度条件下で高い活性を 示し,2mMマグネシウム濃度条件下において最大のリボヌクレアーゼH活性を示す(甲9の4頁の(B)実験結果)。 一方,引用文献3に記載のRNase HIIPkは,上記(ア) のとおり,20mMマグネシウム濃度条件下で最大のリボヌクレアーゼH活性を示し,4mMマグネシウム濃度条件下では,最大活性の半分にも満たない低い活性しか示さない。 そうすると,本願補正発明のポ ) のとおり,20mMマグネシウム濃度条件下で最大のリボヌクレアーゼH活性を示し,4mMマグネシウム濃度条件下では,最大活性の半分にも満たない低い活性しか示さない。 そうすると,本願補正発明のポリペプチドは,引用文献3に記載された発明と比べて,極めて低濃度のマグネシウム濃度条件下でリボヌクレアーゼH活性を示すという格別顕著な作用効果を奏するといえる。4mM等の低いマグネシウム濃度条件下における本願補正発明のポリペプチドのリボヌクレアーゼH活性は,十分に高い活性であり,「4mM酢酸マグネシウムの反応液でリボヌクレアーゼH活性があることを単に見出した」という程度のものではない。しかも,本願補正発明のリボヌクレアーゼH活性は,4mMマグネシウム濃度条件下で最大活性の半分にも満たない引用文献3に記載のRNase HIIPkの活性と比べて,顕著に高い活性であるといえる。 イまた,4mM等の低いマグネシウム濃度条件下で十分なリボヌクレアーゼH活性があるという本願補正発明のポリペプチドの特徴は,以下のような場面において格別顕著な作用効果を奏する。 すなわち,RNase HとDNAポリメラーゼを同一の反応液中に共存させて使用する場合,RNase Hの至適マグネシウム濃度の違い,例えば4mMと10mMとの違いは,大きな意味を有する(甲12)。20mMマグネシウム濃度を最適条件とする引用文献3に記載のRNase HIIPkをはじめ,10mM以上のマグネシウム濃度を最適条件とする従来のRNase Hは,TaqDNAポリメラーゼとの共存下で使用することができない(甲1の図3(訳文の項目3),甲11の611頁右欄下から20ないし17行,表3(訳文の項目2,3))。これに対し,本願補正発明のポリペプチドは,4mM等の低いマグネシウム濃度条件下 ことができない(甲1の図3(訳文の項目3),甲11の611頁右欄下から20ないし17行,表3(訳文の項目2,3))。これに対し,本願補正発明のポリペプチドは,4mM等の低いマグネシウム濃度条件下で十分なリボヌクレアーゼH活性を有するので,TaqDNAポリメラーゼと の共存下での使用が可能である。 このように,本願発明のポリペプチドは,引用文献3に記載されたRNaseHIIPkを最適化して用いる場合と比較しても,格別顕著な効果を奏する。 ウしたがって,本願補正発明のポリペプチドは,引用文献3に記載された発明を含めた従来技術と比べて,格別顕著な作用効果を奏するのであり,これを看過した審決には誤りがある。 2 被告の反論原告の主張する取消事由は,以下のとおり,いずれも理由がなく,審決に取り消されるべき違法はない。 (1) 取消事由1(引用文献3に記載された発明の認定の誤り)に対し原告は,本願明細書の記載に基づいて引用文献3に記載された発明の酵素の基質切断特異性を推認できるとした審決の判断は誤りである,本願の出願後に公表された文献である甲2に基づいて引用文献3に記載された発明の酵素の基質切断特異性を推認できるとした審決の認定は誤りである旨主張する。 しかし,原告の主張は以下のとおり失当である。 ア審決は,引用文献3から,「PyrococcuskodakaraensisKOD1株由来のリボヌクレアーゼHII」(「RNaseHIIPk」)という物の発明が1つの独立した技術思想として把握できるとしたものであり,原告も,この認定を認めており,引用文献3に記載された発明の認定について実質的に争っていない。 イ 「一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうちRNAを含む鎖を切断する」という酵素の基質切断特異性は,酵素と 認定を認めており,引用文献3に記載された発明の認定について実質的に争っていない。 イ 「一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうちRNAを含む鎖を切断する」という酵素の基質切断特異性は,酵素という物質の発明の構成自体ではなく,それが奏する作用・効果である。 引用文献3に記載された発明であるRNaseHIIPkは,引用文献3に記載されたその構造(化学構造であるアミノ酸配列)により特定できるものであり,その構造を有するものが本来有している作用・効果については,物の発明である引 用発明を特定する事項として認定する必要はない。言い換えれば,物の作用・効果を物の発明を特定する事項として認定したところで,それはその物であれば当然に有する作用・効果であるから,物の発明として何ら相違することにはならない。 また,引用文献3に記載されたRNase HIIPkが「一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうちRNAを含む鎖を切断する」という基質切断特異性を有するか否かは引用文献3において具体的に確認はされていないが,基質切断特異性は,RNase HIIPkが本来的に有している性質である(甲2)。原告が主張する本願補正発明の基質切断特異性に係る効果は,引用文献3に記載された発明の物が本来有していた効果と同様の効果を単に発見したに過ぎないものである。 そして,引用文献3に記載された発明の物が本来どのような作用・効果を奏するものであったのかの認定において,出願後の知見や文献を考慮することは認められるべきである。なぜならば,一般に,技術的貢献のない発明に対しては保護を与えないという進歩性の要件の趣旨からみて,効果の顕著性により進歩性を認めるのは,引用発明との構成の相違により新たな効果が奏される場合に限られるべきであり,そうでなければ,引用発明の物 しては保護を与えないという進歩性の要件の趣旨からみて,効果の顕著性により進歩性を認めるのは,引用発明との構成の相違により新たな効果が奏される場合に限られるべきであり,そうでなければ,引用発明の物が本来有していた作用・効果を後に発見したことにより,後に出願された発明が進歩性を有することになり不合理な結果となるからである。 さらに,進歩性の存在を推認するために必要な顕著な効果が存在することを主張・立証する責任は原告にあるところ,本願補正発明の酵素が有する基質切断特異性を引用文献3に記載された発明の酵素が有さないという具体的な根拠を原告は何ら示していない。 したがって,審決には,引用文献3に記載された発明の内容,作用効果の認定について誤りはない。 (2) 取消事由2(顕著な作用効果の看過(その1))に対し原告は,一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうちRNAを含む鎖を切断することができるという基質切断特異性の点で,本願補正発明のポリペプチドが引 用文献3に記載された発明と比べて格別な違いがないとした審決の判断は,その顕著な作用効果を看過した誤りがある旨主張する。 しかし,本件において,原告が本願で初めて見出したと主張する「一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうちRNAを含む鎖を切断する」という基質切断特異性は,引用文献3に記載されたRNase HIIPkも本来有していた性質であるから(甲2),本願は,Pfu(パイロコッカスフリオサス)及びPho(パイロコッカスホリコシイ)由来のRNaseHIIがその基質切断特性を有することを単に開示しただけであって,進歩性を認めるに足る技術的貢献をしたものとはいえない。 また,本願明細書において,「一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうちRNAを含む鎖を切断する」とい することを単に開示しただけであって,進歩性を認めるに足る技術的貢献をしたものとはいえない。 また,本願明細書において,「一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうちRNAを含む鎖を切断する」という基質切断特異性を有することを具体的に確認したのは,Pfu及びPho由来のRNase HIIのみである(甲3の段落【0250】)。一方,本願明細書の実施例8の段落【0201】,【0210】の記載から,本願補正発明は,サーモコッカスリトラリス(TLI)由来のRNase HIIに係る発明であるところ,本願明細書には,TLI由来のRNaseHIIについては,「一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうちRNAを含む鎖を切断する」という基質切断特異性は具体的に確認されておらず,実際にこの基質切断特異性を有するかは本願明細書の記載からは不明である。 したがって,本願補正発明の酵素が,「一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうちRNAを含む鎖を切断する」という基質切断特異性を有するものであったとしても,このことから本願補正発明が格別顕著な効果を奏するとはいえず,本願補正発明のポリペプチドが基質切断特異性の点で引用文献3に記載されているRNase HIIPkと比べて格別な違いはないとした審決の判断に誤りはない。 (3) 取消事由3(顕著な作用効果の看過(その2))に対し原告は,①4mM等の低いマグネシウム濃度条件下において十分に高い活性を示すという本願補正発明のポリペプチドの効果は,引用文献3に記載された発明と比 較して有利な効果であり,同発明から予想できない顕著な作用効果である,②本願補正発明のポリペプチドは,4mM等の低いマグネシウム濃度条件下で十分なリボヌクレアーゼH活性を有するので,TaqDNAポリメラーゼとの共存下での使 明から予想できない顕著な作用効果である,②本願補正発明のポリペプチドは,4mM等の低いマグネシウム濃度条件下で十分なリボヌクレアーゼH活性を有するので,TaqDNAポリメラーゼとの共存下での使用が可能であり,引用文献3に記載されたRNase HIIPkを最適化して用いる場合と比較しても,格別顕著な効果を奏するとして,本願補正発明のポリペプチドの格別顕著な作用効果を看過した審決には誤りがある旨主張する。 ア上記①の主張について本願明細書には,本願補正発明の酵素は4mM酢酸マグネシウム濃度条件下で単に「RNase H活性が認められた。」(甲3の実施例8の段落【0219】及び実施例3-(5)の段落【0133】)と記載されているだけで,本願補正発明の酵素が最大活性となるマグネシウム濃度を決定する実験はなされておらず,本願補正発明の酵素が特に4mMで最大活性を示すことは示されていない。 本願明細書では,実施例2ないし9において8種類のRNase Hを取得しているが,これらはそれぞれ由来も異なり,また,RNase HのクラスもIIまたはIIIと異なるものである。本願明細書では,これらの8種類すべてのRNase HにおけるリボヌクレアーゼH活性の確認において,実施例3-(5)の4mMマグネシウム濃度条件を一律に適用していることからみても,本願補正発明の酵素が4mMマグネシウム濃度において最大又は最大に近いリボヌクレアーゼH活性を有していることは,本願明細書の記載からは推認できるものではない。 また,甲9に記載されたその後の実験結果によれば,最大活性を示す酵素の濃度は4mMではなく2mMと認められ,このことからも,本願明細書の実施例におけるマグネシウム濃度は,最大活性となる濃度を示しているわけではないことが裏付けられる。 一方, ,最大活性を示す酵素の濃度は4mMではなく2mMと認められ,このことからも,本願明細書の実施例におけるマグネシウム濃度は,最大活性となる濃度を示しているわけではないことが裏付けられる。 一方,引用文献3の図3によれば,RNase HIIPkは,4mMマグネシウム濃度条件下においても酵素活性があることが確認できるから,本願補正発明がこの点において引用文献3に記載されたRNase HIIPkに比して格別顕著 な効果を奏するものとは認められない。 イ上記②の主張について引用文献3に記載されたRNase HIIPkも4mMマグネシウム濃度条件下においてそれなりの活性を有するから(甲1の図3),4mMのマグネシウム濃度条件でTaqDNAポリメラーゼとの共存下で使用することができる。 なお,本願補正発明のRNase Hは,審判手続において提出された実験データによれば,引用文献3に記載されたRNase HIIPkがリボヌクレアーゼ活性を発揮できないほど,極めて低いマグネシウム濃度条件で活性を有するDNAポリメラーゼと共存下で使用することができる可能性はあるかもしれないが,RNase Hは,RNAを切断する活性を有する酵素であり,DNAポリメラーゼは,核酸を鋳型にしてDNA鎖を合成する酵素であって,両者は,必ずしも共存下で使用するものとは限らないのであるから,極めて低いマグネシウム濃度条件で活性を有するDNAポリメラーゼと共存下で使用することができるとしても,そのことが進歩性を認めるに足る顕著な効果とまではいえない。 また,本願明細書には,本願補正発明が,1~4mMマグネシウム濃度条件下で高い活性を示し,2mMマグネシウム濃度条件下において最大のリボヌクレアーゼH活性を有することは記載されておらず,このような極めて低い 願明細書には,本願補正発明が,1~4mMマグネシウム濃度条件下で高い活性を示し,2mMマグネシウム濃度条件下において最大のリボヌクレアーゼH活性を有することは記載されておらず,このような極めて低いマグネシウム濃度条件下で活性を有することは審判手続において提出された実験データにより示された事項である。このような場合に,後で提出された実験データに基づき顕著な効果を認めて進歩性の存在を推認することは,出願人と第三者との公平の観点からもできないというべきであり,かかる実験データは進歩性の判断において参酌することができない。 ウしたがって,本願補正発明のポリペプチドの格別顕著な作用効果を看過した審決には誤りはない。 第4 当裁判所の判断当裁判所は,以下のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,審決に 取り消すべき違法はないものと判断する。なお,本来なら順序として取消事由1から判断すべきところであるが,事案にかんがみ,まず,取消事由2から検討する。 1 取消事由2(顕著な作用効果の看過(その1))について原告は,一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうちRNAを含む鎖を切断することができるという基質切断特異性の点で,本願補正発明のポリペプチドが引用文献3に記載された発明と比べて格別な違いがないとした審決の判断は,その顕著な作用効果を看過した誤りがある旨主張する。これに対し,被告は,本願補正発明が上記基質切断特異性を有するかは本願明細書の記載からは不明である旨主張するので,以下,検討する。 (1) 認定事実本件補正に基づく本願明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載は,上記第2の2(1) のとおりである。また,発明の詳細な説明には,以下の記載がある(甲3)。 【発明が解決しようとする課題】【0011】本発明の目的は, 本願明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載は,上記第2の2(1) のとおりである。また,発明の詳細な説明には,以下の記載がある(甲3)。 【発明が解決しようとする課題】【0011】本発明の目的は,遺伝子工学において利用価値の高いRNaseH活性を有するポリペプチド,該ポリペプチドをコードする遺伝子ならびに該ポリペプチドの遺伝子工学的製造方法を提供することにある。 【0067】ないし【0076】実施例1好熱菌バチルスカルドテナックス由来のRNaseHの調製・・・耐熱性RNaseH活性は,次の方法により測定した。 ポリ(rA)及びポリ(dT)(ともにアマシャムファルマシアバイオテク製)1mgをそれぞれ1mM EDTAを含む40mMトリス-HCl(pH7. 7)1mlに溶解し,ポリ(rA)溶液及びポリ(dT)溶液を調製した。 次に,4mM MgCl2,1mM DTT,0.003%BSA,4%グリセロールを含む40mMトリス-HCl(pH7.7)に,終濃度20μg/mlとなるようポリ(rA)溶液を,終濃度30μg/mlとなるようポリ(dT)溶液 を加え,37℃で10分間反応後,4℃に冷却し,ポリ(rA)-ポリ(dT)溶液を調製した。 ポリ(rA)-ポリ(dT)溶液100μlに酵素液1μlを加え,40℃で10分間反応させ,0.5M EDTA 10μlを加えて反応を停止させた後,260nmの吸光度を測定した。対照として,上記反応液に0.5M EDTA10μlを加えた後,40℃で10分間反応させ,吸光度を測定した。その後,EDTA非存在下で反応させ求めた吸光度から対照の吸光度を引いた値(吸光度差)を求めた。すなわち,酵素反応によってポリ(rA)-ポリ(dT)ハイブリッドから遊離したヌクレオチドの濃度を吸光 その後,EDTA非存在下で反応させ求めた吸光度から対照の吸光度を引いた値(吸光度差)を求めた。すなわち,酵素反応によってポリ(rA)-ポリ(dT)ハイブリッドから遊離したヌクレオチドの濃度を吸光度差から求めた。RNaseHの1単位は,1nmolのリボヌクレオチドが遊離したのに相当するA260を10分間に増加させる酵素量とし,下記の式に従って算出した。なお,酵素液を希釈した場合は,下記式の値を希釈率で補正した。 単位(unit)=〔吸光度差×反応液量(ml)〕/0.0152【0077】ないし【0109】実施例2バチルスカルドテナックス RNaseHII遺伝子のクローニング・・・(6)精製RNaseHII標品の調整・・・上記で得られたBcaRNaseHII標品を用いて,以下の方法により酵素活性を測定した。 BcaRNaseHII標品1μlに40℃であらかじめインキュベーションした反応液〔20mMヘペス-水酸化カリウム(pH7.8),0.01%牛血清アルブミン(宝酒造社製),1%ジメチルスルホキシド,10mM塩化マンガン,20μg/mlポリ(dT)(アマシャムファルマシアバイオテク社製),30μg/mlポリ(rA)(アマシャムファルマシアバイオテク社製)〕100μlを添加し,40℃で10分間反応さた後,0.5M EDTA(pH8.0)10μlで反応を停止し,260nmの吸光度を測定した。 その結果,BcaRNaseHII標品にRNaseH活性が認められた。 【0110】ないし【0134】実施例3バチルスカルドテナックス RNaseHIII遺伝子のクローニング・・・(5)精製RNaseHIII標品の調整・・・上記で得られたBcaRNaseHIII標品を用いて,以下の方法により酵素活性 バチルスカルドテナックス RNaseHIII遺伝子のクローニング・・・(5)精製RNaseHIII標品の調整・・・上記で得られたBcaRNaseHIII標品を用いて,以下の方法により酵素活性を測定した。 BcaRNaseHIII標品1μlに40℃であらかじめインキュベーションした反応液〔20mMヘペス-水酸化カリウム(pH7.8),0.01%牛血清アルブミン(宝酒造社製),1%ジメチルスルホキシド,4mM酢酸マグネシウム,20μg/mlポリ(dT)(アマシャムファルマシアバイオテク社製),30μg/mlポリ(rA)(アマシャムファルマシアバイオテク社製)〕100μlを添加し,40℃で10分間反応さた後,0.5M EDTA(pH8.0)10μで反応を停止し,260nmの吸光度を測定した。 その結果,BcaRNaseHIII標品にRNaseH活性が認められた。 【0135】ないし【0150】実施例4ピロコッカスフリオサスのRNaseHII遺伝子のクローニング・・・上記で得られたPfuRNaseHII標品を用いて,実施例3-(5)に記載の方法により酵素活性を測定した結果,PfuRNaseHII標品にRNaseH活性が認められた。 【0151】ないし【0170】実施例5サーモトガマリティマ RNaseHII遺伝子のクローニング・・・上記で得られたTmaRNaseHII標品を用いて,実施例2-(6)に記載の方法で酵素活性を測定した結果,TmaRNaseHII標品にRNaseH活性が認められた。 【0171】ないし【0186】 実施例6ピロコッカスホリコシイのRNaseHII遺伝子のクローニング・・・上記で得られたPhoRNaseHII標品を用いて,実施例3-(5)に記載の方法により いし【0186】 実施例6ピロコッカスホリコシイのRNaseHII遺伝子のクローニング・・・上記で得られたPhoRNaseHII標品を用いて,実施例3-(5)に記載の方法により酵素活性を測定した結果,PhoRNaseHII標品にRNaseH活性が認められた。 【0187】ないし【0200】実施例7アルカエオグロバスフルギダスのRNaseHII遺伝子のクローニング・・・上記で得られたAfuRNaseHII標品を用いて,実施例3-(5)に記載の方法により酵素活性を測定した結果,AfuRNaseHII標品にRNaseH活性が認められた。 【0201】ないし【0219】実施例8サーモコッカスリトラリス RNaseHII遺伝子のクローニング・・・得られた塩基配列の結果を解析したところ,RNaseHIIをコードすると考えられるオープンリーディングフレームが見出された。pTLI204のオープンリーディングフレームの塩基配列を配列表の配列番号46に示す。また,該塩基配列から推定されるRNaseHIIのアミノ酸配列を配列表の配列番号47に示す。・・・上記で得られたTliRNaseHII標品を用いて,実施例3-(5)に記載の方法により酵素活性を測定した結果,TliRNaseHII標品にRNaseH活性が認められた。 【0220】ないし【0238】実施例9サーモコッカスセラー RNaseHII遺伝子のクローニング・・・上記で得られたTceRNaseHII標品を用いて,実施例3-(5)に記載の方法により酵素活性を測定した結果,TceRNaseHII標品にRN aseH活性が認められた。 【0239】ないし【0243】実施例10実施例2から実施例9において得られたバチルスカルドテナックス を測定した結果,TceRNaseHII標品にRN aseH活性が認められた。 【0239】ないし【0243】実施例10実施例2から実施例9において得られたバチルスカルドテナックス(以下BCAとする),ピロコッカスフリオサス(PFU),サーモトガマリティマ(TMA),アルカエオグロバスフルギダス(AFU),サーモコッカスリトラリス(TLI),サーモコッカスセラー(TCE),ピロコッカスホリコシイ(PHO)のアミノ酸配列と塩基配列について,ホモロジー検索を行なった。検索プログラムは,DNASIS-Mac(宝酒造社製)のMaximum MatchingとコンピュータアルゴリズムFASTA(バージョン3.0;パーソン(Pearson,W. R.)ら,Pro.Natl.Acad.Sci.,85:2444-2448,1988)で算出した。 まず,DNASISによりPFUに対するPHO,AFU,TLI,TCEのアミノ酸配列の相同性はそれぞれ69%,45%,65%,58%,塩基配列の相同性はそれぞれ68%,60%,65%,61%であった。・・・【0244】ないし【0251】実施例11各種RNaseHの作用機作と性質・・・(2)Pfu,Pho,AfuRNaseHIIの作用機作Pfu(パイロコッカスフリオサス),Pho(パイロコッカスホリコシイ),Afu(アルカエオグロバスフルギダス)のRNaseHIIの切断様式を解析するため,以下のように基質を調整した。・・・以上のことより,Pfu,Pho,AfuのRNaseHIIは3’側のRNAの5’側を切断した。PfuとPhoのRNaseHIIはRNAが1つの場合でもRNAの5’側を切断した。RNAが1つでも切断するRNaseHは報告されていない。切断された場 eHIIは3’側のRNAの5’側を切断した。PfuとPhoのRNaseHIIはRNAが1つの場合でもRNAの5’側を切断した。RNAが1つでも切断するRNaseHは報告されていない。切断された場合のシグナル強度はRNAの数にかかわらず同様の強さを示し,RNAの数による切断効率に差がないことが示された。また,一旦現われた シグナルが経時的に減少したり,さらに短いシグナルが現われないことより,RNAの3’側にDNAが結合していないと切断されないことが示された。 (2) 判断ア上記(1) 認定の事実によれば,本願明細書には,①本願補正発明のポリペプチドは,様々な耐熱性RNaseHIIのアミノ酸配列の間で保存されている部分の配列情報に基づいてクローニングされた遺伝子がコードするサーモコッカスリトラリス由来RNaseHII(TliRNaseHII)であって,RNase H活性を有することが確認されたこと(実施例8),②PfuRNaseHII(パイロコッカスフリオサス由来のRNaseHII)に対するアミノ酸配列相同性は,PhoRNase HII(パイロコッカスホリコシイ由来のRNase HII)が69%,本願補正発明であるサーモコッカスリトラリス由来のRNaseHIIが65%,TceRNase HII(サーモコッカスセラー由来のRNaseHII)が58%,AfuRNaseHII(アルカエオグロバスフルギダス由来のRNase HII)が45%であること(実施例10),③一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうちRNAを含む鎖を切断するという基質切断特異性を,PhoRNase HII及びPfuRNase HIIは有することが確認され,AfuRNase HIIは有さないことが確認さ DNAのうちRNAを含む鎖を切断するという基質切断特異性を,PhoRNase HII及びPfuRNase HIIは有することが確認され,AfuRNase HIIは有さないことが確認されたことが記載されていると認められるが(実施例11),本願補正発明であるサーモコッカスリトラリス由来RNaseHII及びTceRNase HIIについて,基質切断特異性を有することが確認されたことの記載はない。 したがって,本願明細書には,本願補正発明が,一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうちRNAを含む鎖を切断するという基質切断特異性を有していることが開示されているとはいえない。 イこの点,原告は,本願補正発明のTliRNase HIIは,本願明細書の実施例1ないし実施例7に記載される様々な耐熱性RNase HIIのアミ ノ酸配列の間で保存されている部分をもとにしてオリゴヌクレオチドプライマーを合成し,遺伝子をクローニングして得られたものであり,これらの耐熱性RNase HIIが共通の性質を有すると推認できること,本願明細書の実施例11(2)では,PfuRNase HII及びPhoRNase HIIが,一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNA基質を切断することが示されたが,AfuRNase HIIは,当該基質を切断しなかったこと,TliRNase HIIは,PfuRNase HIIと65%のアミノ酸配列相同性を有し,PhoRNase HIIは,PfuRNase HIIと69%のアミノ酸配列相同性を有するが,AfuRNase HIIは,PfuRNase HIIに対し,45%のアミノ酸配列相同性しか示さないことから,当業者は,当該実施例において見出された耐熱性RNase HI 相同性を有するが,AfuRNase HIIは,PfuRNase HIIに対し,45%のアミノ酸配列相同性しか示さないことから,当業者は,当該実施例において見出された耐熱性RNase HIIにおける「一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうち,RNA鎖を含む鎖を切断する」という基質切断特異性に関し,PfuRNase HIIに対してアミノ酸配列相同性が45%より高く,69%前後のアミノ酸配列相同性を有する耐熱性RNase HIIであれば,当該特性を有していると予測することができ,本願明細書の上記記載から,本願補正発明のTliRNaseHIIも,基質切断特異性を有すると推認できる旨主張する。 しかし,2つのポリペプチドの間のアミノ酸配列相同性が65%であることは,全体のアミノ酸配列の3分の1以上が異なることでもあり,一般的には,このような場合に両者の構造上の差異が小さいとは言い難く,両者のアミノ酸配列相同性が65%であるというだけでは,両者が同じ活性を有しているか否かは不明と考えざるを得ない(当業者が,両者のアミノ酸配列相同性が65%であれば同じ活性を有していると解し得ることを認めるに足りる証拠はない。)。また,本願において,PhoRNase HII及びPfuRNase HIIというアミノ酸配列相同性が69%のものが,一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうちRNAを含む鎖を切断するという基質切断特異性を共有していることが確認されたことは, ともにパイロコッカス属に属する耐熱性微生物である2種に由来するポリペプチドにおいては30%超のアミノ酸配列に変異があっても上記基質切断特異性に関わる部分の構造は保存されていたという事実を示すにとどまり,本願補正発明のようにパイロコッカス属以外の微生物由来であって プチドにおいては30%超のアミノ酸配列に変異があっても上記基質切断特異性に関わる部分の構造は保存されていたという事実を示すにとどまり,本願補正発明のようにパイロコッカス属以外の微生物由来であっても,その微生物が耐熱性であり,ポリペプチドが上記2種のいずれかと65%程度のアミノ酸配列相同性を有するものでさえあれば,基質切断特異性を有するとまでは認められない。仮に,基質切断特異性を有する可能性が示唆されるとしても,上記のとおり,2つのポリペプチドの間のアミノ酸配列相同性が65%であるというだけでは,両者が同じ活性を有しているか否かは不明であるから,このような場合,実験等による確認なくしては,基質切断特異性の有無は不明というほかなく,本願補正発明が基質切断特異性を有しているとまでは認められない。加えて,原告主張のように,本願出願時までに基質切断特異性を有する耐熱性RNaseHは報告されておらず,そのようなものは存在しないであろうという技術常識があるならば,なおさらである。 以上のとおり,本願明細書の記載から,本願補正発明が,一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうちRNAを含む鎖を切断するという基質切断特異性を有していることが推認されるとはいえない。 なお,原告は,審判段階でこの点についての審理が尽くされなかったとも主張するが,当審において主張立証が尽くされているので,結論を左右するものではない。 ウしたがって,本願補正発明が基質切断特異性という効果を有することを前提とする原告の取消事由2の主張は,前提を欠き,理由がない。 2 取消事由1(引用文献3に記載された発明の認定の誤り)について原告は,本願明細書の記載に基づいて引用文献3に記載された発明の酵素の基質切断特異性を推認できるとした審決の判断は誤りである,本願の出願後に公表さ (引用文献3に記載された発明の認定の誤り)について原告は,本願明細書の記載に基づいて引用文献3に記載された発明の酵素の基質切断特異性を推認できるとした審決の判断は誤りである,本願の出願後に公表された文献である甲2に基づいて引用文献3に記載された発明の酵素の基質切断特異性を推認できるとした審決の認定は誤りである旨主張する。 一般に,発明の進歩性の判断は,審査を行う時点ではなく,出願日(優先権主張 がなされている場合は優先権主張日)を基準になされるものであるから(特許法29条2項),発明の進歩性の有無を判断するにあたって参酌することができる知見は,出願前までのものであって,このことは,発明の構成の容易想到性判断のみならず,発明の効果の顕著性の判断に関しても同様である。また,特許出願された発明に関する明細書に記載された知識に基づいて出願前の発明ないし技術常識を認定することは,後知恵に基づいて特許出願された発明の進歩性を判断することになりかねず,同項の趣旨に反するものであり,許されない。 本件において,審決が,本願明細書の記載に基づいて,「引用文献3に記載されるRNaseHIIPkも同様に,一方の鎖にRNAを1つ含む2本鎖DNAのうちRNAを含む鎖を切断することができると推認することができ」とし,あるいは,本願出願後の文献である甲2に基づいて,「本願補正発明のポリペプチドが,引用文献3に記載されるRNaseHIIPkと比べて,格別な違いはない」とした判断手法は,誤りである。 しかし,上記1のとおり,「本願補正発明が基質切断特異性を有する」との効果が認められないので,このことを考慮すると,上記の誤りは,審決の結論に影響を及ぼすものではないというべきである。 したがって,原告の取消事由1の主張も理由がない。 3 取消事由3( る」との効果が認められないので,このことを考慮すると,上記の誤りは,審決の結論に影響を及ぼすものではないというべきである。 したがって,原告の取消事由1の主張も理由がない。 3 取消事由3(顕著な作用効果の看過(その2))について原告は,①4mM等の低いマグネシウム濃度条件下において十分に高い活性を示すという本願補正発明のポリペプチドの効果は,引用文献3に記載された発明と比較して有利な効果であり,同発明から予想できない顕著な作用効果である,②本願補正発明のポリペプチドは,4mM等の低いマグネシウム濃度条件下で十分なリボヌクレアーゼH活性を有するので,TaqDNAポリメラーゼとの共存下での使用が可能であり,引用文献3に記載されたRNase HIIPkを最適化して用いる場合と比較しても,格別顕著な効果を奏するとして,本願補正発明のポリペプチドの格別顕著な作用効果を看過した審決には誤りがある旨主張するので,以下, 検討する。 (1) 上記①の主張について本願明細書には,本願補正発明のポリペプチドが,4mM酢酸マグネシウム濃度条件下でどの程度の大きさのRNaseH活性を示したかについて直接的な記載はないが,原告は,得られた酵素標品が所望の活性を有するかどうかを確認する目的で酵素反応を行う場合,予め複数の条件を検討して,十分に高い活性が得られる最適又は最適に近い条件を用いることが当該技術分野における常法であることから,4mM程度のマグネシウム濃度条件下の活性が最大又はそれに近いと理解できる旨主張する。 そこで,本願明細書の記載を検討すると,上記1(1) のとおり,本願補正発明のポリペプチドであるTliRNaseHII(実施例8)以外に,BcaRNaseHIII(実施例3),PfuRNaseHII(実施例4),P 載を検討すると,上記1(1) のとおり,本願補正発明のポリペプチドであるTliRNaseHII(実施例8)以外に,BcaRNaseHIII(実施例3),PfuRNaseHII(実施例4),PhoRNaseHII(実施例6),AfuRNaseHII(実施例7),及び,TceRNaseHII(実施例9)について,4mM酢酸マグネシウムを含む反応液中でRNaseH活性を確認したこと,BcaRNaseH(実施例1)について,4mM塩化マグネシウム(MgCl2)を含む反応液中でRNaseH活性を確認したことが,それぞれ記載されている。上記実施例において,本願補正発明を含む上記7種類のRNaseHは,それぞれ由来が異なり,クラスもII又はIIIと異なるから,イオン要求性等の性質も異なると考えられるにもかかわらず,一律に4mMマグネシウム濃度条件下でRNaseH活性が確認されている。 そうすると,上記各実施例において,必ずしも,十分に高い活性が得られる最適又は最適に近い条件を用いて酵素の活性が確認されたとは考え難く,本願補正発明の酵素が4mMマグネシウム濃度条件下において最大又は最大に近いRNase活性を有するか否かを,本願明細書の記載から推認することはできないから,4mM等の低いマグネシウム濃度条件下において十分に高い活性を示すという効果が,本願補正発明のポリペプチドにおける格別顕著な作用効果であるとは認められない。 また,原告は,甲9に記載された実験データを参酌すべきである旨主張する。しかし,上記のとおり,本願補正発明について,4mM等の従来のRNase Hと比べて非常に低いマグネシウム濃度条件下において十分に高いRNaseH活性を示すという効果が本願明細書に開示されているとはいえないから,その効果について示す上記実験 mM等の従来のRNase Hと比べて非常に低いマグネシウム濃度条件下において十分に高いRNaseH活性を示すという効果が本願明細書に開示されているとはいえないから,その効果について示す上記実験データは本願明細書の記載から当業者が推認できる範囲を超えるものであって,参酌することはできないというべきである。 したがって,原告の上記①の主張は理由がない。 (2) 上記②の主張について上記(1) のとおり,4mM等の低いマグネシウム濃度条件下において十分に高い活性を示すという効果が,本願補正発明のポリペプチドにおける格別顕著な作用効果であるとは認められないから,これを前提とする上記②の原告の主張は採用できない。 (3) 以上のとおり,原告の主張はいずれも採用できず,取消事由3は理由がない。 4 なお,原告は,取消事由として,本願補正発明についての上記1ないし3の主張に加えて,「本願発明の進歩性にかかる判断の誤り」をも主張するのか,明瞭ではない。しかし,仮にその主張をしていると解されるとしても,本願発明は本願補正発明を含むものであるから,本願補正発明についての上記判断と同様の理由により,原告の主張は理由がない。 第5 結論以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,審決に取り消すべき違法はないものと判断される。原告は,他にも縷々主張するが,いずれも採用の限りでない。 よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官芝田俊文 裁判官岡本岳 芝田俊文 裁判官岡本岳 裁判官武宮英子
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