平成20(わ)171 死体遺棄,強盗殺人被告事件

裁判年月日・裁判所
平成21年2月6日 さいたま地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-37645.txt

判決文本文20,332 文字)

主文 被告人を無期懲役に処する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1A(当時41歳)を殺害して同人から金品を強取しようと企て,分離前相被告人B,同C及び同Dと共謀の上,平成17年10月20日午前1時ころ,a県b市の国道上において,同所に停止中の上記A使用に係る普通乗用自動車に乗車していた同人に対し,その顔面を手拳で数回殴打するなどして降車させ,同人の両脇を抱えて同所付近に停止中の上記C使用に係る普通乗用自動車内に押し込むなどの暴行を加え,その反抗を抑圧して,上記A使用に係る車両内にあった上記A所有の現金約350万円を強取した上,そのころから同日午前1時10分ころまでの間,同所から同県c市内のパーキングエリアに至るまでの路上を走行中の上記C使用に係る車両内において,殺意をもって,上記Aの左前胸部をナイフ様の刃物で突き刺し,よって,そのころ,同車両内において,上記Aを左胸部刺創による胸部臓器損傷に伴う失血により死亡させて殺害し,第2上記B,同C,同D,分離前相被告人E及びFと共謀の上,同日午前5時ころから同日午前6時ころまでの間,d県e市内のG方敷地内において,深さ約1. 5メートルの穴を掘った上,前記Aの死体を同穴に落とし入れて土中に埋没し,もって死体を遺棄したものである。 (証拠の標目)〔省略〕(争点に対する判断) 被告人は,強盗殺人,死体遺棄いずれの事実についても他の共犯者らと共謀していないし,本件各犯行当日に強盗殺人及び死体遺棄のいずれの現場にも赴いて いない旨供述をしていずれも無罪と主張した。 弁護人は,被告人と同様無罪を主張し,骨子,以下のように指摘した。 (1)被告人がC及びDと本件以前に強盗団を結成して複数の強盗等を実行していたところ,被告人がこれらの事件で逮捕後に最初に自白したことで,C及び 人と同様無罪を主張し,骨子,以下のように指摘した。 (1)被告人がC及びDと本件以前に強盗団を結成して複数の強盗等を実行していたところ,被告人がこれらの事件で逮捕後に最初に自白したことで,C及びDの恨みを買い,本件に被告人も関与していた旨の虚偽自白をされた疑いがある。 (2)被告人には本件各犯行当時にアリバイがある。 (3)被告人には当時守るべき妻子がおり,また,Cに対する不信感から同人と距離を置こうと考えていたことなどから強盗殺人を犯す主観的動機がなかった。 (4)検察官が,任意性の争われた捜査段階における被告人の自白調書(検察官調書)の請求を撤回しながら,公判廷において被告人に対し,捜査段階での自白に関する質問を行ったことについて,本来任意性の立証を経て顕出されるべき自白調書を実質的にその手続を経ずに証拠化することとなり,伝聞法則に違反する脱法的な訴訟行為であって違法であるから,この点に関する被告人供述は証拠能力がないとして排除されるべきである。 (5)本件の証拠構造を検討すると,強盗殺人においての客観的な証拠物とされる物は押収してあるナイフ様のもの1本であり,強盗殺人,死体遺棄の罪体についての直接証拠はいずれも共犯者と主張される者らの証言があるだけであって,他には携帯電話の履歴などの状況証拠が存するのみである。そこで,共犯者らが己の責任を軽減したり,被告人に対する恨みや真犯人を隠匿するために被告人に刑事責任を転嫁する危険性があることから,これらの共犯者の証言は信用できない。 関係各証拠によると,以下の事実を認めることができる。 本件では,被告人が共犯者であると供述する他の共犯者らの証言が存するが被告人を犯人であると直接裏付けるに足りる物的証拠は提出されていないことは弁護人の指摘するとおりである。しかし,共犯者証言が無垢の 本件では,被告人が共犯者であると供述する他の共犯者らの証言が存するが被告人を犯人であると直接裏付けるに足りる物的証拠は提出されていないことは弁護人の指摘するとおりである。しかし,共犯者証言が無垢の人間を巻き込む危険 性があるとの一事で一律にその信用性が否定されるべきものとは言えず,被告人と共犯者との関係,共犯者証言の内容の信憑性を個々具体的に検討してその信用性の有無を判断すべきものである。この点に関し,被告人が主張するアリバイが認められれば,他の共犯者らの証言はすべて信用できないことになる。 しかし,本件証拠上,本件犯行時に被告人のアリバイは認められないと判断される。そこで,関係者の証言を,順次検討する。 (1)本件事件関係者の関係等被告人を除外すると,判示第1の強盗殺人にかかる共犯者は,C,D及びBで,判示第2の死体遺棄にかかる共犯者は,以上の3名に加え,E及びFの合計5名であり,本件被害者である被害者を含めていずれも暴力団組織関係のつながりがある。 ア被告人とC及びDの関係等被告人は,20歳頃から約7年間暴力団組員として活動した後堅気に戻り,内装関係の仕事をしていたが,Cが被告人の暴力団構成員時代の兄貴分と従兄弟同士で,元暴力団構成員でもあったことなどから知り合いになり,Cから仕事を世話してもらうなどの付き合いをしていた。 その後被告人は,C及び同人を介して知り合いになった別の組織の暴力団構成員であるDらと共に強盗団を結成して東京都内や埼玉県内で強盗を繰り返すようになり,その中で平成17年4月から同年8月ころまでの間にCらと共謀の上敢行した住居侵入,強盗罪等により平成19年1月に東京地方裁判所で懲役18年の判決言い渡しを受けて確定し,現在受刑中である。 イ被害者とBの関係等被害者は,暴力団組織の構成員であったが,Bに対し債 敢行した住居侵入,強盗罪等により平成19年1月に東京地方裁判所で懲役18年の判決言い渡しを受けて確定し,現在受刑中である。 イ被害者とBの関係等被害者は,暴力団組織の構成員であったが,Bに対し債権取り立てをして面識を得たことから当時金銭に窮していたBを口説いて被害者の舎弟とし,その運転手等として使用していた。 Bは,約10年前に知人の紹介でCと知り合い,以降,同人とは月に二, 三回の頻度で金儲け話で連絡をとる程度の付き合いをしていたが,それ以上に親しい関係にはなかった。 Bは,前記のとおり運転手等として被害者に仕えていた。しかし,被害者から暴行を受け,酷使されるなど理不尽な扱いをされていた。そこで,Bに対する被害者の言動は許し難いものであるとして被害者に恨みを抱き,Cに対して被害者が大金を所持しているのでその大金から1000万円程度を報酬に与えることができると説明して,被害者殺害やその死体遺棄を依頼し,CがDに話を持ちかけ,Dがこれを承諾して,被害者を殺害して金銭を奪う旨の謀議が企てられている。 なお,被告人とBとの間には,従前の交友関係等の直接の接点は認められない。 ウFとEの関係等Fは,Cの義兄であり,Eを暴力団組織で子分とする関係にあった。 Cは被害者を殺害した後,Eに死体遺棄の手伝いをさせるためにFに電話し,Eを使う許可を得た上,穴を掘るためのスコップ等を持参したEと合流し,死体遺棄の犯行に及んでいる。 (2)被害者の死体の状況及び同死体の発見現場の状況ア被害者の死体は,死亡後2年余り経過した平成20年1月10日に遺棄現場の土中に埋没しているところを一部白骨化した状態で発見された。同死体の胸腹部には,左前胸部左側で剣状突起部の左方に長さ約3センチメートルの創傷様のものが1個認められた。 被害者の死因は,被害者の死体の 土中に埋没しているところを一部白骨化した状態で発見された。同死体の胸腹部には,左前胸部左側で剣状突起部の左方に長さ約3センチメートルの創傷様のものが1個認められた。 被害者の死因は,被害者の死体の司法解剖を行ったH医師の証言及びその作成に係る鑑定書から,同死体の内臓の遺残物の色調等から左前胸部刺創に基づく失血死であると認められる。なお,同医師は,法医学を専門とする医師であり,これまで多数の司法解剖の経験を有しており,その専門的知識,豊富な経験に基づいて被害者の遺体の状況を詳細に検討して上記のような判 断を行ったものであり,その判断過程は,専門的な知見に基づく合理的なものと認められ,疑念を差し挟む余地はないと認められる。 イ平成18年4月12日,別件の住居侵入,強盗被疑事件に関して本件死体発見現場の検証が実施された際,その敷地内に置かれていたドラム缶の中から,いわゆるバタフライナイフの形状をしたナイフ様のもの(甲39。平成20年押第95号の1)が発見された。 (3)C使用に係る車両内の状況についてアC使用に係る車両(以下「C車両」という)はミニバン型メルセデス・ベンツで,車内の状況は最大7名乗車可能な3列構造(前列右側運転席・左側助手席,左右2脚のセカンドシート及び3人掛けのサードシート)となっている。 イ左側セカンドシートについては,座面部分のみならず,同シート固定部の底面,左右両側及び後側いずれにも複数個の血痕様付着物が認められる。そして,左側セカンドシートの床面で,フロアマットから露出しているシートレール部分の2箇所,フロアマット部分の4箇所において,いずれからも血液反応が認められた。 また,右側セカンドシートから採取された複数の血痕様付着物からも血液反応が認められたが,このうち最も広範囲なものは,シートベルト部分に付 ト部分の4箇所において,いずれからも血液反応が認められた。 また,右側セカンドシートから採取された複数の血痕様付着物からも血液反応が認められたが,このうち最も広範囲なものは,シートベルト部分に付着した長さ約40センチメートル,幅1.5センチメートルの血痕様付着物である。 (4)本件犯行前後における被告人と関係者らとの携帯電話等の通話履歴についてア被告人とCとの間の電話のやりとりについて平成17年10月15日に約5分20秒の1回,同月16日は2回にわたり合計約2分50秒,同月17日は7回にわたり合計約5分40秒,同月18日は8回にわたり合計約7分20秒,同月19日は2回にわたり合計約3 分20秒,同月20日には5回にわたり合計約26分10秒の通話履歴を含め,同月の1か月間では,被告人とCとの間には,合計して計93回の通話履歴が認められる。上記通話のうち,同月18日の5回目の通話(午後1時55分から約50秒)及び7回目の通話(午後2時14分から約2分40秒)はいずれもCから被告人への架電であり,それぞれその直後に被告人からDへ架電(午後1時58分から約1分40秒,午後2時17分から約40秒)した履歴が認められる。なお,この1か月間で,被告人とCとの間で電話のやりとりがなかったのは,2日,3日,9日,10日,12日ないし14日,24日及び26日の合計9日である(なお,通話時間のうち秒の単位については四捨五入の計算による。以下同様)。 イ被告人とDとの間の電話のやりとりについて平成17年10月18日に2回にわたる合計約2分10秒の通話,同月20日に約2分30秒の1回の通話の履歴がそれぞれ認められる。その他に,同月の1か月間では,被告人とDとの間には,8日に2回,23日に3回の通話履歴が認められるが,これら以外には通話履歴は認めら 月20日に約2分30秒の1回の通話の履歴がそれぞれ認められる。その他に,同月の1か月間では,被告人とDとの間には,8日に2回,23日に3回の通話履歴が認められるが,これら以外には通話履歴は認められない。 ウ被告人とEとの間の電話のやりとりについて平成17年10月23日に7回にわたり合計約6分30秒の通話履歴が認められる。同月の1か月間では,被告人とEとの間の電話のやりとりはこの1日のみである。なお,このうちの6回目の電話(午後3時17分から30秒間)については,発信元は千葉であり,被告人はこの時千葉県内からEに電話をかけたことが認められる。 (5)先行する強盗等事件により被告人らが逮捕された経緯等についてア平成18年2月15日,被告人は,C及びDらが敢行した平成17年8月22日の強盗を幇助したという被疑事実により通常逮捕された。なお,被告人については,平成18年2月12日付けで上記強盗事件の正犯として東京簡易裁判所から逮捕状が発付されたものの,同月15日に同逮捕状が同裁判 所に返還され,同日,同裁判所から強盗幇助により逮捕状が発付されたという経緯がある。 イ平成18年2月18日,Cは,平成17年8月22日の前記強盗等の被疑事実により通常逮捕された。同逮捕状は,被告人に対する上記強盗の正犯としての逮捕状が発付されたのと同じ日である平成18年2月12日に東京簡易裁判所から発付されたものである。 ウ平成18年3月18日,Dは,Cと同内容の被疑事実により通常逮捕(同年2月17日東京簡易裁判所より逮捕状発付。同月24日同裁判所より再発付)された。 エなお,被告人は,平成20年2月12日に本件強盗殺人の被疑事実により通常逮捕された。 各共犯者証言の検討(1)各共犯者の当公判廷における証言内容は,それぞれ概ね次のとおりである。 された。 エなお,被告人は,平成20年2月12日に本件強盗殺人の被疑事実により通常逮捕された。 各共犯者証言の検討(1)各共犯者の当公判廷における証言内容は,それぞれ概ね次のとおりである。 アC証言(ア)平成17年9月下旬ころから,Bから,被害者殺害の話を何度か持ちかけられ,同年10月17日に最終的に1000万円の報酬の約束でBからの依頼を承諾した。Bからの話と並行して,強盗団の仲間であった被告人やDに対し,直接あるいは携帯電話を通じてBから聞いた話を伝えて,報酬を与える旨の条件でDや被告人の承諾を得た。 (イ)同月18日にBからの連絡を受け,被害者殺害を実行するため,被告人やDに電話をかけて同人らと合流し,被告人の運転するC車両で,被害者を乗せたB運転車両(以下「B車両」という)を追跡して殺害の機会を窺ったものの,実行には至らなかった。 (ウ)翌19日に再度Bからの連絡を受け,前日同様,被告人やDに電話をかけて同人らと合流し,被告人の運転するC車両で被害者を乗せたB車両を追跡し,最終的に自分が指示をした待ち合わせ場所でB車両の到着を待 った。 B車両が待ち合わせ場所に到着すると,運転席のBが何か叫びながら被害者を殴っていたので,コードを持ってDと被告人と共にC車両を降りて自分はB車両の被害者のちょうど真後ろの後部座席左側に座り込み,被害者の首にコードを掛けて絞め殺そうとしたが,コードが切れてしまった。 そこで自分がB車両から降りるのと入れ替えにDが後部座席に乗り込み,被告人は同車両の左側助手席側のドアを開けて被害者に覆い被さるような体勢だった。 それからCがC車両をB車両に近づけ,被告人とDが被害者をB車両から引きずり出してC車両の左側セカンドシートに乗せた。その際,被告人が,同人のバイクのヘルメットなどの置いてあ るような体勢だった。 それからCがC車両をB車両に近づけ,被告人とDが被害者をB車両から引きずり出してC車両の左側セカンドシートに乗せた。その際,被告人が,同人のバイクのヘルメットなどの置いてある運転席と助手席の間にバタフライナイフを置いた。その時までに被告人がこのナイフを使ったところを直接見てはいないが,被害者をC車両に連れてくる際に被告人の足の辺りが濡れているような気がしたので,被告人がそのナイフを置いたのを見て,ナイフを使ったのかと思い,被告人に対し,被害者を刺したのかと尋ねたが,被告人は何も答えなかった。 (エ)その後,Dがサードシートに移動し,シートベルトで被害者を絞めていた。この時,自分がいた運転席から見える被告人は,自分に背を向けて被害者に覆い被さるような態勢であった。被告人やDが被害者を押さえている間,車内は揺れていたが,静かにさせろと言ってからC車両を発進させた。バックミラーを見ると,B車両がUターンして来た道を戻って行くのが見えた。そこからc市内のパーキングエリアに向かう途中で,Dから被害者が死亡したと聞かされた。パーキングエリアで停車させた車内で確認すると,被害者は上半身を膝につけるような形で倒れており,車の左側スライドドア付近の床にかなりの量の血がたまっているのが見えた。また,サードシートの座席中央付近に前記バタフライナイフが置いてあった。 (オ)被害者の死亡確認後,同人の死体を土に埋めるために,被告人の発案で本件死体遺棄現場に向かうこととした。途中,義兄であるFに電話して,Eを使う許可を得た上で,同人にスコップを持ってくるよう依頼した。その後,やってきたEと合流してから死体遺棄現場に向かった。現場で穴を掘る作業をしたのは,被告人,D,Eの3人であり,実際に被害者の死体を掘った穴に入れて土を被せる作 ップを持ってくるよう依頼した。その後,やってきたEと合流してから死体遺棄現場に向かった。現場で穴を掘る作業をしたのは,被告人,D,Eの3人であり,実際に被害者の死体を掘った穴に入れて土を被せる作業をしたのは被告人とDの2人であった。 同所で被告人に対し,「何で刺したんだ」と理由を尋ねたところ,被告人は,「K(別の強盗事件の共犯者のうちの1名)みたいだったから」,「気に入らないタイプだったからだ」などと答えた。 (カ)本件各犯行後被告人,C,Dで被害者から強取した金員を分配した。 イD証言(ア)平成17年10月20日の数日前から,Cから被害者を殺害するという話を持ちかけられ,約1時間ほどかけて具体的な話を聞かされることもあった。 (イ)同月18日の午後1時ないし2時ころに,被告人から電話があり,被害者殺害を実行する旨告げられたため,被告人らと合流して,被告人運転のC車両に乗って,B車両を追跡したものの,殺害実行には至らなかった。 追跡の途中,被告人の持っていたウエストポーチの中にバタフライナイフが入っていたのが見えた。被告人は,ナイフについて,「これ買うのに身分証明書がいる」などと話していた。 (ウ)翌19日,被告人やCと共に,被告人運転のC車両に乗って,B車両の追跡を再開し,被害者を乗せたB車両と合流した。この時Bが被害者の顔や頭を素手で殴っていたが,被害者を襲うために助手席の後部座席から体を入れていたCが「何かが切れた」と言って出て来た。 それから自分が助手席側の後部座席から上半身を,被告人が運転席側後部座席から体をそれぞれ乗り入れ,被害者を促してB車両から降車させ, 自分は被害者の右腕を,被告人は被害者の左腕をそれぞれ抱えて同人をC車両に連れて行った。その途中,被告人は右手でナイフを被害者の左肩付近に突き付けていた。そ 被害者を促してB車両から降車させ, 自分は被害者の右腕を,被告人は被害者の左腕をそれぞれ抱えて同人をC車両に連れて行った。その途中,被告人は右手でナイフを被害者の左肩付近に突き付けていた。そして,被害者が暴れるような仕草をした時,被告人の右腕が被害者の左腰の辺りで動き,被害者は「ぎゃあ」というような声を上げた。 (エ)被害者をC車両2列目の左側に乗せ,後方からロープで被害者を縛り付けようとしたものの,手が滑って怪我をしてしまったので,できなかった。被告人が何回目かわからないが「往生しろ」と言って被害者に覆い被さり,起き上がって腰の辺りを蹴るような動作をすると,被害者はいびきをかくような息遣いとなり,やがてその息が止まった。そこで被告人が被害者の顔付近に手をやって同人の死亡を確認した。途中のパーキングエリアで被害者の死体にブルーシートを掛けた際,C車両の床が血で濡れていたような感じがした。 (オ)本件死体遺棄現場に向かう途中にEと合流した。現場では,自分,被告人及びEの3人で穴を堀り,その後,自分と被告人の2人で被害者の死体をその穴に入れて土をかけた。 ウE証言(ア)Fから,Cらが殺害した被害者の死体を埋めるのを手伝うよう指示を受けたので,Cらと合流して本件死体遺棄現場に向かった。現場では,被告人とCが穴を掘る場所を決め,自分,被告人,Dの3人で穴を掘った。 途中で,被告人に対し,被害者殺害の状況を尋ねたところ,被告人は,「自分がやった」,「うるせえから刺した」,「ぐでんとなって死んだ」などと言っていた。穴を掘り終えた後は,被告人とDの2人で,被害者の死体を埋めた。死体を埋める作業終了後,敷地内の部屋で被告人がおにぎりを食べたほか,敷地内にあるドラム缶に火をつけて洋服類を燃やしていた。それからC車両を同所に置いたまま自分 とDの2人で,被害者の死体を埋めた。死体を埋める作業終了後,敷地内の部屋で被告人がおにぎりを食べたほか,敷地内にあるドラム缶に火をつけて洋服類を燃やしていた。それからC車両を同所に置いたまま自分が乗ってきたレジアスで帰宅 した。 (イ)その二,三日後,車内が血だらけのC車両を洗車するために被告人と2人で本件死体遺棄現場に向かった。洗車している時に車内は血の海だったが,その最中に改めて被害者を殺害した時の状況について被告人に尋ねたところ,被告人が被害者を刺し,凶器は敷地内に置いてあったドラム缶の中に捨てたことなどを話してきた。ドラム缶の中を確認してみたところ,刃物っぽいものがあるのが見えた。 エB証言平成17年10月20日,Cらとの待ち合わせ場所にB車両を停車させ,被害者に暴行を加えていたところ,Cとその仲間がやってきて,Cは,被害者の首をワイヤみたいなもので絞めようとしたが,被害者が抵抗し失敗した。 また,Dと被告人が車内に乗り込んできた。なお,被告人とは,本件当日まで全く面識はなかった。 (2)上記各証言は,次のような理由から,いずれもその信用性を肯定できることに加え,相互にそれぞれの信用性を補強し合うものと評価することができる。 ア客観的証拠と一致することC証言のうち,平成17年10月18日の1回目の追跡行為及び同月19日の2回目の追跡行為の直前に被告人に電話をかけたという部分,D証言のうち,同月18日の1回目の追跡行為の直前に被告人から電話があったという部分については,それぞれ符合する通話履歴がある。その他,C及びDはいずれも,被害者はC車両の左側セカンドシートで死亡し,同車の床には血があった旨の証言をしているが,これは,同車内に血痕様の付着物が多数あり,特に左側セカンドシート部分にそれが集中し,同シートの下床面部 れも,被害者はC車両の左側セカンドシートで死亡し,同車の床には血があった旨の証言をしているが,これは,同車内に血痕様の付着物が多数あり,特に左側セカンドシート部分にそれが集中し,同シートの下床面部分にも血痕の付着が認められるという客観的状況と符合しているものといえる。 また,E証言は,本件の二,三日後に死体遺棄現場にてC車両を洗車していた際に,被告人から,被害者殺害に用いた凶器をドラム缶の中に捨てたと 聞かされたので,確認したところ,刃物っぽいものが見えた旨証言しているところ,これは,実際に同所にあったドラム缶の中からナイフ様のものが発見されているという客観的状況に符合しているものといえる。 イ供述内容が具体的で迫真性が認められること各共犯者の証言内容をみると,いずれも具体的で迫真性があり,それぞれの証言内容自体に特段不自然,不合理な点は認められない。被告人と本件との結び付きに関する証言部分について限定してみても,C証言では,同人から被害者を刺した理由について尋ねられた被告人が「Kみたいだから」,「気に入らないタイプだったからだ」などと述べたこと,D証言では,被告人が被害者に覆い被さった際に「往生しろ」と述べていたこと,E証言では,同人から被害者殺害状況について尋ねられた被告人が「自分がやった」,「うるせえから刺した」,「ぐでんとなって死んだ」などと述べたことなど,いずれも被告人とのやりとりについて具体的に証言している。 ウ相互に供述が符合すること上記各証言の内容を見ると,①まず,被告人が本件各犯行現場に現在したことについてはいずれも一致している(強盗殺人については,C,D及びBの各証言,死体遺棄については,C,D及びEの各証言)。②各犯行の具体的状況に関しても,死体遺棄については,被告人が穴を掘って被害者の死体を埋めたこと 一致している(強盗殺人については,C,D及びBの各証言,死体遺棄については,C,D及びEの各証言)。②各犯行の具体的状況に関しても,死体遺棄については,被告人が穴を掘って被害者の死体を埋めたことについて一致した証言をしており,また,強盗殺人についても,いずれの共犯者も被告人が被害者の胸部を刺した場面を目撃したわけではないが,Cは被告人が所持していたバタフライナイフが被害者の死体の側にあったことや死体遺棄現場で被告人が被害者を刺した旨話していたのを聞いたこと,Dは被告人がバタフライナイフを所持していたことや同人が「往生しろ」と言って被害者に覆い被さった後に被害者の息遣いが止まったこと,Eは被告人が被害者を刺した旨話していたのを聞いたことなどの理由を挙げて,それぞれが別々の根拠を基に被告人が被害者を刺したという認識を持つに至 った旨証言している。このように,各共犯者の証言内容は本件の核心部分について一致しているほか,③犯行前日にB車両の追跡に失敗したことや,犯行当日にB車両と合流した際のBの言動,B車両内での殺害に失敗してからC車両に被害者を拉致して殺害するに至るまでのC,D及び被告人それぞれの言動等の周辺事情についても,C証言とD証言とは概ね一致している。 エ虚偽証言をする動機の不存在共犯者のうち,C及びDについては,同事実について別に審理され,事実関係をすべて認めて既に無期懲役判決を受け,Cについてはこれが確定しており,また,Bについては本件まで被告人とは面識がなく,Eについてもそれほど深い付き合いはなかったのであるから,いずれの共犯者も,被告人と格別の利害対立関係は認められない。 なお,C及びDについては,被告人を引き込み殺害行為の実行行為を被告人がやったとすれば幾分量刑上斟酌される可能性が考えられるが,自らの刑責を免れる 者も,被告人と格別の利害対立関係は認められない。 なお,C及びDについては,被告人を引き込み殺害行為の実行行為を被告人がやったとすれば幾分量刑上斟酌される可能性が考えられるが,自らの刑責を免れるためであれば,自らが犯行に関与していないと口裏合わせすることがより容易であり,この理はEが被告人を死体遺棄に引き込んだ場合にも同様と考えられ,いずれも偽証罪の危険を冒してまで殊更虚偽の証言をして被告人を陥れる動機は考えられない。 (3)各共犯者の証言の信用性に関する弁護人の指摘する事情等についての検討アC証言及びD証言の信用性について弁護人は,C証言について,①本件前における被告人とCとの電話は回数こそ多いがいずれも短時間であって,被害者殺害の具体的な話をするのには不十分であり,また,これ以外に被告人とCとの間で本件について直接話をするのに十分な時間はなく,両名の間で強盗殺人等について共謀をとげるほどのやりとりがあったとは考えにくいこと,②Bから依頼された被害者殺害の話を他の共犯者に持ちかけた際,Dがどう答えたかという点については具体的に証言する反面,被告人からの返答については「分かりました」という 程度の内容しか思い出せないというのは不自然であること,C証言及びD証言については,③CとDには,被告人と共に敢行した別の強盗等事件について,被告人が他の者に先駆けて自白したことを恨んでいたため虚偽の証言をする動機もあることなどから,C及びDの証言は信用できない旨主張する。 そこで検討するに,①については,C証言によると,平成17年9月下旬ころから被告人に対して本件各犯行の話を大まかにしており,詳しい話をするようになったのが同年10月15日前後であったというのであるから,本件直前の電話のやりとりの時間のみを捉えて事前の話し合いの時間として不 被告人に対して本件各犯行の話を大まかにしており,詳しい話をするようになったのが同年10月15日前後であったというのであるから,本件直前の電話のやりとりの時間のみを捉えて事前の話し合いの時間として不十分であったということはできない。また,C証言によると,当時被告人はCの運転手をしており,同人の送り迎えをしている際に被告人に対し本件各犯行についての話をしたというのであるが,被告人がCの運転手をしていたという点については,前記のとおりの被告人とCとの間の頻繁な連絡のやりとりがこれを裏付けているものといえ,その機会に,Cが本件各犯行の内容について被告人に話す時間は十分にあったと認めることができる。次に,②については,Dについては特徴的な返答があったために記憶に残り,単純な回答であった被告人について特別の記憶が残らないことは格別不自然であるとまではいえない。このことは,弁護人が指摘するとおり日頃から被告人が無口だったのであれば,Cが証言する程度の返答しかしなかったというのも不合理ではなく頷ける。そして,③については,確かに別の強盗等事件について一番最初に逮捕されたのは被告人である。しかし,被告人及びCに対する強盗被疑事件についての逮捕状はいずれも同日に請求,発付されている。 C及びDの証言によれば,警察は,被告人らを逮捕する前から,CやDについても強盗の嫌疑をかけて捜査をしていたことが窺われる。仮にC及びDが先に自白をした被告人を恨みに思って陥れようとしたのであれば,Cは自らが逮捕されるのに先立ち,他の共犯者であるD,B及びEを交えて予めまだ自らが捜査当局から嫌疑をかけられてもいない本件各犯行について入念な口 裏合わせを行っていたことになろう。けれども,被告人の前記逮捕から自らが上記強盗等事件で逮捕されるまでの3日間にCが被告人の自白を知 査当局から嫌疑をかけられてもいない本件各犯行について入念な口 裏合わせを行っていたことになろう。けれども,被告人の前記逮捕から自らが上記強盗等事件で逮捕されるまでの3日間にCが被告人の自白を知って関係者と口裏合わせをするなどということは現実味に乏しい。本件各犯行は,被害者を殺害した上死体を土中に埋めて犯行の発覚を隠蔽しようとして長期間発覚を免れていたものである。そこで,C及びDが,上記強盗等事件について被告人が自白をしたことを恨みに思って被告人を陥れるべく虚偽の証言をしているとは考え難い。さらに翻って考えると,B及びEは上記強盗等事件とは全く関係がないから,B及びEにおいて,被告人が同事件について先に自白したことで虚偽証言をする動機とはなり得ないであろう。そうだとすると,弁護人の指摘は,いずれも,C及びDの証言の信用性を否定すべき事情ということはできない。 イE証言の信用性について弁護人はE証言について,①無口な被告人が,それほど深い関係にないEに対して,自分が被害者を刺した旨の話をするのは不自然であること,②Eは,自分が持ってきた衣類に着替えたのはDだけであり,被告人は着替えていないとする一方で,被告人はそのままコンビニエンスストアに買い物に行ったり,ファミリーレストランで食事をした旨証言しているところ,C及びDの証言するような被告人の行為態様からすると,被告人の衣類には相当量の血液が付着しているはずであるのに,被告人がそのような行動をとることはおよそ考えられないことを理由にEの証言が信用できない旨主張する。 そこで検討すると,①については,仮に被告人が普段は無口な人物であるとしても,自らの手で人を殺害した直後において,共に被害者の死体遺棄に関与しているEからの問いかけに対し,自己の犯行について話をすることがそれほど不自然 ついては,仮に被告人が普段は無口な人物であるとしても,自らの手で人を殺害した直後において,共に被害者の死体遺棄に関与しているEからの問いかけに対し,自己の犯行について話をすることがそれほど不自然なものであるとはいえない。また,②についても,C証言によると,被告人は上着を脱いだり,あるいは雨がっぱを着たりなどして犯行時とは服装が替わっていたと躊躇なく自然に供述し,その証言に疑念を挟む 余地は無いと認められる。したがって,Eが証言するような行動を被告人がおよそとり得ないものということはできない。そうすると,E証言についても,弁護人の指摘する事情をもってその信用性を否定すべきものということはできない。 ウB証言の信用性について弁護人は,B証言について,①深夜,それまで面識がなかった被告人を特定できるほど認識していたことに疑問があること,②捜査の初期段階では,被害者の拉致現場にやってきた人物について,四,五人であると述べたり,CとD以外に2人いたなどと述べていたことを理由にその信用性に疑問がある旨主張する。 そこで検討すると,まず,①については,C証言によると,被害者を拉致した現場にはライトがあったというのであり,人の顔を識別できる程度に明るさはあったものといえるから,BはC及びD以外の人物の顔を十分認識できたものといえ,その認識をもとに,逮捕後の取調べ時において,捜査官から写真を見せられた上,現場で目撃した人物が被告人であったと特定しているのであり,その過程に特段不自然な点は認められない。この点,Bは,最初に見せられた被告人の写真は坊主頭だったので分からなかったと証言しているところ,平成17年11月3日に撮影された被告人の写真(弁5)からすると,本件当時の被告人の髪型と捜査官がBに示した被告人の髪型は異なるものであったことが認め だったので分からなかったと証言しているところ,平成17年11月3日に撮影された被告人の写真(弁5)からすると,本件当時の被告人の髪型と捜査官がBに示した被告人の髪型は異なるものであったことが認められ,Bが最初に見せられた写真で被告人を特定できなかったことは,むしろ自然なものであると評価することができる。また,②についても,Cらが乗っていたC車両内の様子が見えず,中にもまだ仲間がいるかもしれないと思っていたと一応合理的な説明をしており,この点もB証言の信用性を否定する事情ということはできない。 (4)その他,弁護人は,C及びDが量刑上の思惑から,被害者の致命傷を与えることになった行為について被告人に擦り付けている可能性があることや,暴 力団関係者が関与しているという本件事案の特質を捉えて,組織防衛等の思惑からある真実を隠蔽するために組織的画策がなされた結果,被告人に被害者刺殺の責任が押しつけられた可能性がある旨指摘する。しかしながら,量刑上の思惑については,先に検討したとおり,C及びDが被告人に責任を押しつけるために敢えて虚偽の証言を行う動機に乏しい。加えて,仮にそうであるとするならば,C,Dいずれも被告人が被害者をバタフライナイフで刺す場面を目撃した旨明確に証言するはずであるが,いずれもその場面を見たわけではなく,その時の状況やその後の被告人の言動から被告人が刺したものと思うという証言にとどまっているから,むしろ,自己が経験し,目撃した場面を記憶どおりに証言したものといえよう。また,組織防衛等の思惑についても,確かにCの関係する暴力団組織で本件について話し合いを行ったという事情は窺えるものの,これと本件との関係は明らかではなく,その場で本件について口裏合わせ等が行われたとの合理的な疑いを生じさせるべき事情は認められない。よって 組織で本件について話し合いを行ったという事情は窺えるものの,これと本件との関係は明らかではなく,その場で本件について口裏合わせ等が行われたとの合理的な疑いを生じさせるべき事情は認められない。よって,この点についての弁護人の主張も採用することはできない。 (5)弁護人の指摘する事情以外にも,共犯者の各証言には,被害者に飲ませることを前提に用意されたとする睡眠薬の受け渡しや強盗殺人後のDの着替えの点などについての説明の食い違いの他,一部曖昧な点も見受けられる。しかしながら,いずれも周辺事情に関するものであり,また,本件が約3年前の事件であることからすると,これらの事情をもって被告人を犯人であるとする共犯者の証言の核心部分の信用性は否定されるべきものではないと判断される。 被告人の弁解についての検討(1)前記のとおり,被告人は,本件各犯行への関与を否定し,無罪を主張しているが,その具体的内容は,①本件当時,元妻が妊娠中であったことに加え,うつ病や尿道結石を患って体調不良であったこともあって,長時間家を空けることはできなかったこと,②前記強盗事件で強取した物についてCから虚偽の事実を告げられた上,分け前を一切もらえなかったことから,Cに対する不信 感を抱くようになり,同人と距離を置いていたことなどを理由に,同人からの誘いに応じて本件各犯行に関与する動機はないというものである。以下,被告人の主張について検討する。 (2)関係各証拠によると,被告人の元妻は平成18年1月26日に長男を出産しており,本件当時である平成17年の10月ころは妊娠およそ7か月の状態にあったことは確かであり,被告人もこれを認識していたものといえる。しかしながら,被告人がCやDと行った一連の強盗等事件のうち最後の犯行は同年8月22日に敢行されたものであり,元妻が そ7か月の状態にあったことは確かであり,被告人もこれを認識していたものといえる。しかしながら,被告人がCやDと行った一連の強盗等事件のうち最後の犯行は同年8月22日に敢行されたものであり,元妻が妊娠中であるという状況は同じであったこと,体調不良についても,被告人の供述によれば,うつ病については被告人と交際する前,尿道結石についても,同月20日に判明していたことなどに照らすと,そのような状況で上記強盗等事件に関わった被告人が,本件に限って,元妻の体調を理由にCからの誘いを拒んだというのは不自然である。 (3)また,前記認定のとおり,被告人とCとの間には,平成17年10月の1か月間において,短いものも含めて100回近くの通話履歴があることや,被告人は,本件犯行前々日である10月18日午後のCやDとの電話でのやりとりの内容が,ある人物を車で後付けしたいので一緒に加わってほしいと依頼されたが断ったというものであったと供述していることからすると,被告人がCに不信感を抱き,距離を置こうとしていたとは考え難いことに加え,被告人は,Cの命令でEと本件死体遺棄現場に赴き,事情も分からず同所にあったC車両を洗車したこと自体は認めているところ,距離を置こうとしていた者の命令で,それほど面識のないEとわざわざ2人で千葉県まで赴き,何ら事情を聞くことなく洗車を手伝ったというのは不自然である。 この点,被告人は,平成17年10月の1か月間におけるCとの電話のやりとりについて,まず,同月1日から8日までの電話は,別の強盗等事件の共犯者であるIの舎弟にあたるJと話をしてくれという電話であり,また,その他の電話については大部分が薬物の売買についての電話である旨供述している。 確かに,通話履歴を見ると,被告人がCからの電話を受けた後に,被告人から上記Jへの通話履 れという電話であり,また,その他の電話については大部分が薬物の売買についての電話である旨供述している。 確かに,通話履歴を見ると,被告人がCからの電話を受けた後に,被告人から上記Jへの通話履歴が認められることからすると,被告人の供述するようなやりとりがあったことは排斥し難い。しかしながら,同月9日以降も,被告人とCとの間では多数回電話のやりとりが行われているが,これについては,何ら合理性のある説明をしていない。被告人の供述する薬物の売買については,その真偽は明らかではないが,距離を置こうとしていたCと薬物の売買を頻繁に行っていたということ自体が不自然であり,この説明をもって,合理的な説明がなされたということはできない。 (4)次に弁護人の証拠排除に関する主張について判断する。 被告人が任意に供述する場合には,必要とする事項について,裁判長は,何時でもその供述を求めることができ(刑事訴訟法311条2項),検察官も同様の権利(同条3項)を有し,被告人のその公判供述を証拠として採用することができる。また,検察官は,自らの主張に関し,捜査段階の被告人の自白調書を証拠請求する方法で立証することも,これを撤回して被告人質問で立証することも自由である。もとより,捜査段階の自白が任意性に欠けるものであれば,同様の内容を公判廷で再現できても少なくともその公判供述の信用性には疑念が生じるであろうし,それが形式的に公判廷で供述調書どおりなぞって質問して包括的にその旨述べたと肯定の回答を得ても刑事訴訟規則199条の11の立法趣旨を潜脱したとして質問自体が制限され,結局証拠としてその部分を採用できない場合もあり得よう。しかし,このことと被告人が公判廷で否認した場合に,これを弾劾し真相を解明するため,検察官において被告人(被疑者)が捜査段階で自白した事実 れ,結局証拠としてその部分を採用できない場合もあり得よう。しかし,このことと被告人が公判廷で否認した場合に,これを弾劾し真相を解明するため,検察官において被告人(被疑者)が捜査段階で自白した事実の有無,経緯,内容を公判廷で質問し,公判廷での被告人の供述内容を弾劾するため質問できることは当然別の事柄である。 この理は,期日間整理手続において検察官が一旦請求した被告人の検察官に対する自白調書を弁護人の任意性がないとの意見で撤回し,被告人の有罪立証の証拠として被告人質問を掲げていない本件の審理経過を前提としても同様で あると思料される。 これに反する弁護人の主張は独自の見解であって,これを採用することはできない。 (5)その他,被告人の供述によれば,Cに不信感を抱いてCの強盗団から脱退しようとしていた時期で家庭的にも守るべき妻子がいたのであるから,本件各犯行に加担する主観的動機が存しないという。 けれども,前述のCとの携帯電話の通話履歴が本件当時多数に及んでいて,客観的には同人との関係が切断されていないのは前記のとおりである。むしろ,Cが強盗事件で物品調達役をしていた被告人に本件強盗殺人に使用する睡眠薬の調達を依頼しその承諾を得た旨証言していることに一部符合していると理解可能である。 また,被告人は,前刑の強盗等事件においても当初その犯行を否認してアリバイ主張しその後自白した経緯が窺える上,本件強盗殺人事件の捜査段階においても公判で供述を覆して捜査官らに意趣返しをすることを意図して捜査官に迎合する供述をした旨述べるなどその供述内容自体一貫していないと認められる。ただ,一貫していて被告人の供述中真摯性が感じられるのは,子供や離婚した妻などを気遣う気持ちを述べる部分である。しかし,家族のため強盗団から逃れようとしていたとの弁解は,真に家族 ないと認められる。ただ,一貫していて被告人の供述中真摯性が感じられるのは,子供や離婚した妻などを気遣う気持ちを述べる部分である。しかし,家族のため強盗団から逃れようとしていたとの弁解は,真に家族を思えばそもそも強盗団に加わることなどあり得ないと考えられることからしても説得力に乏しい。また,Cに対する不信感を抱いたのも畢竟強盗による取得物件の分け前についての不満として理解でき,分け前を求めて本件各犯行に及ぶ動機は否定できない状況であったと認められる。そこで,被告人は前記の元妻や子のためにさらなる重罪に服することに耐え難く自らの刑責を免れようとして弁解を弄しているものと推察できる。 結語以上検討したとおり,各共犯者の証言はいずれもその信用性を肯定することが でき,これに反する被告人の弁解は不合理,不自然で,いずれもこれを採用することができず,判示各事実について被告人の関与(犯人性)が認められ,判示のとおり被告人には強盗殺人及び死体遺棄罪が成立するものと判断した。 (確定裁判)被告人は,平成19年1月31日東京地方裁判所で住居侵入,強盗傷人,建造物侵入,強盗致傷,窃盗,強盗罪により懲役18年に処せられ,その裁判は,同年6月29日に確定したものであって,この事実は検察事務官作成の前科調書(乙58)によって認める。 (法令の適用)被告人の判示第1の所為は刑法60条,240条後段に,判示第2の所為は同法60条,190条にそれぞれ該当するところ,判示第1の罪について所定刑中無期懲役刑を選択し,以上の各罪と前記確定裁判があった罪とは同法45条後段により併合罪の関係にあるから,同法50条によりまだ確定裁判を経ていない判示各罪について更に処断することとし,なお,判示各罪もまた同法45条前段により併合罪の関係にあるが,同法46条2項本文,10 により併合罪の関係にあるから,同法50条によりまだ確定裁判を経ていない判示各罪について更に処断することとし,なお,判示各罪もまた同法45条前段により併合罪の関係にあるが,同法46条2項本文,10条により重い判示第1の罪につき選択した無期懲役刑で処断し他の刑を科さないこととして被告人を無期懲役に処し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由)本件は,○○組系列暴力団の三次団体若頭の地位にあったBが,本来格下であるべき四次団体の若頭補佐の地位にあった被害者から事実上配下に置かれて顎使されていたことに憤懣を抱き,この事態を打開しようと決意し,以前から祭りの関係で面識のあった元暴力団組員のCに対し,被害者の殺害及び死体遺棄を依頼したところ,Cは1000万円の報酬を条件にこれを承諾し,かねてから強盗団の仲間であったDや被告人に順次この話を持ちかけてその同意を得た上,被害者を金品強取の目的で殺害し,被害者が所持していた現金約350万円を強取した強盗殺人(判示 第1)を実行し,さらにその罪跡を隠滅するために,被害者の死体を土中に埋めて死体遺棄(判示第2)の犯行を敢行したという各事案である。 被告人は,多額の報酬を得る目的で特段の接点も利害関係もない被害者の殺害に及んだものであり,その利欲的で自己中心的な動機に酌量の余地は全くない。 被告人は,C及びDと共に,Bからの連絡を受けながら,被害者を乗せて競輪場等を回るB車両の後を追跡して被害者殺害の機会を窺い,そして,B車両が人けのない路上に停車したところ,被告人らは暴行を加えてB車両から被害者を引きずり出し,C車両に乗せた上,被告人においてナイフ様のもので被害者の左前胸部を突き刺して殺害している。その犯意は強固で,態様は粗暴かつ残忍で冷酷なも ころ,被告人らは暴行を加えてB車両から被害者を引きずり出し,C車両に乗せた上,被告人においてナイフ様のもので被害者の左前胸部を突き刺して殺害している。その犯意は強固で,態様は粗暴かつ残忍で冷酷なものというべきである。さらに,被告人らは,犯行発覚を防ぐべく,殺害した被害者の死体を自動車で運搬し,約1.5メートルの深さの穴を掘った上でその死体を同穴に落とし入れて土中に埋めたのであって,死体遺棄の態様も,死者への畏敬の念が微塵も感じられない悪質なものである。 本件により,被害者は,その生命を奪われたばかりか,遺棄された結果,約2年後に見るも無惨な姿で発見されたのであり,その結果は極めて悲惨で重大である。 普段行動を共にしていて信頼していたBから突然暴行を加えられた上,見知らぬ被告人らにも襲われて殺害された被害者の受けた驚愕,恐怖感,苦痛は甚大であったといえる。そして,被害者の無念さはもとより,残された遺族の悲しみも深く大きい。被害者の妻は夫を殺害された憤り,悔しさの心中を吐露し,被告人らの刑罰については厳罰を望む旨述べており,その処罰感情は峻烈であることは看過し難い。 また,強取金額も約350万円に上り,財産的被害も大きい。そして,被告人は元暴力団組員であり,Cらと共に強盗団を結成し,本件各犯行前に犯した強盗致傷罪等で懲役18年に処せられた前科があり,その規範意識は相当鈍麻していると指摘せざるを得ない。 以上の事情からすると,被告人の刑事責任は重大であり,本件各犯行の首謀者はB,Cであり,同人らとの関係においては被告人は従属的立場にあったことや,被 告人には養育すべき子供がいることなどの事情を十分考慮しても,被告人を無期懲役に処することが相当であると判断した。 (求刑無期懲役)平成21年2月6日さいたま地方裁判所第5刑事部(裁判長裁判 告人には養育すべき子供がいることなどの事情を十分考慮しても,被告人を無期懲役に処することが相当であると判断した。 (求刑無期懲役)平成21年2月6日さいたま地方裁判所第5刑事部(裁判長裁判官大谷吉史裁判官西野牧子裁判官長橋政司)

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る