- 1 -平成25年5月30日判決言渡平成25年(行ケ)第10028号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成25年4月30日判決 原告X 訴訟代理人弁護士矢野義宏弁理士阪本清孝 被告株式会社いづみや 訴訟代理人弁護士鈴木修中野亮介弁理士柳生征男 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 原告の求めた判決特許庁が無効2012-890048号事件について平成24年12月27日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要本件は,商標登録無効審判請求を認容した審決の取消訴訟である。争点は,無効- 2 -審判申立適格及び商標法4条1項7号の該当性である。(以下,「7号」というときは商標法4条1項7号を指す。) 1 特許庁における手続の経緯(1) 原告は,本件商標権者である。 【本件商標】(登録第3161363号) ・指定商品第30類「菓子及びパン」・出願日平成5年9月21日・登録日平成8年5月31日(2) 被告は,平成24年6月6日,本件商標について7号に該当 ・指定商品第30類「菓子及びパン」・出願日平成5年9月21日・登録日平成8年5月31日(2) 被告は,平成24年6月6日,本件商標について7号に該当することを理由として46条1項1号又は5号に基づいて商標登録の無効審判(無効2012-890048号)を請求した。 特許庁は,平成24年12月27日,「登録第3161363号の登録を無効とする。」との審決をし,その謄本は平成25年1月9日,原告に送達された。 2 審決の理由の要点 1 請求の利益について被告は,栃木県那須郡那須町において,菓子の製造・販売を業とする会社であり,平成23年5月ないし7月ころから,平成23年5月27日に設定登録(商標登録第5415157号)された「御用邸の月」の文字からなる商標を菓子について使用を開始したところ,当該「御用邸の月」の文字からなる商標は,本件商標の商標権を侵害するなどとの訴えが原告(商標権者)及び同人が代表取締役を務める株式会社庫や- 3 -から提起されたこと(本件商標権侵害事件)が認められる(甲1~甲3)。 そうすると,被告は,本件商標の登録有効性の存否について,重大な利害関係を有する者ということができるから,本件審判を請求するについて法律上正当な利益を有しているというべきである。 2 7号について「御用邸」の語について(1)御用邸とは,栃木県那須郡那須町にある那須御用邸,神奈川県三浦郡葉山町にある葉山御用邸及び静岡県下田市にある須崎御用邸をいい,また,かつて,神戸御用邸(現在は神戸ハーバーランドの一部),熱海御用邸(昭和3年廃止。現在は熱海市役所),伊香保御用邸(昭和20年廃止。現在は群馬大学伊香保研修所),山内御用邸(現在は日光東照宮社務所),沼津御用邸(昭和44年廃止 戸ハーバーランドの一部),熱海御用邸(昭和3年廃止。現在は熱海市役所),伊香保御用邸(昭和20年廃止。現在は群馬大学伊香保研修所),山内御用邸(現在は日光東照宮社務所),沼津御用邸(昭和44年廃止。現在は沼津御用邸記念公園),宮ノ下御用邸(現在は富士屋ホテル別館菊華荘),田母沢御用邸(昭和22年廃止。現在は日光田母沢御用邸記念公園),鎌倉御用邸(昭和6年廃止。現在は鎌倉市立御成小学校・鎌倉市役所),静岡御用邸(昭和5年廃止。現在は静岡市役所),小田原御用邸(昭和5年廃止。現在は小田原城内),塩原御用邸(現在は国立光明寮国立塩原視力障害センター・一部「天皇の間記念公園」移築)が存在していた(甲5,甲4)。 (2)国有財産法3条1項及び同2項3号には,国有財産は,行政財産と普通財産に分類され,皇室用財産は,行政財産に分類されるものであって,国において皇室の用に供し,又は供するものと決定したものであり,同法5条には,「各省各庁の長は,その所管に属する行政財産を管理しなければならない。」と規定されている(甲5の4等,職権調査)。また,宮内庁法1条には,「内閣府に,内閣総理大臣の管理に属する機関として,宮内庁を置く。」「2 宮内庁は,皇室関係の国家事務及び政令で定める天皇の国事に関する行為に係る事務をつかさどり,御璽国璽を保管する。」と規定され,同法2条には,宮内庁は皇室用財産を管理する旨規定されている(甲5の1)。 - 4 -(3)そして,宮内庁ホームページによれば,皇室用財産に前記(1)の那須御用邸,須崎御用邸及び葉山御用邸の3か所の御用邸が含まれていること(甲5の3),宮内庁には長官官房及び侍従職などのほか,管理部があり,管理部の御用邸管理事務所では,那須御用邸,須崎御用邸及び葉山御用邸の管理に関する事務を担当すること(甲5の2等) まれていること(甲5の3),宮内庁には長官官房及び侍従職などのほか,管理部があり,管理部の御用邸管理事務所では,那須御用邸,須崎御用邸及び葉山御用邸の管理に関する事務を担当すること(甲5の2等)などを認めることができる。 (4)前記(1)ないし(3)によれば,「御用邸」は,皇室の別荘として,かつては,関東地方を中心に,日本各地に10数か所存在していたが,現在は,那須御用邸,須崎御用邸及び葉山御用邸の3か所をいい,これらは,昭和23年7月1日に施行された国有財産法に基づいて,皇室の用に供する国有財産のうちの皇室用財産として,国(宮内庁)が管理することが定められている。 また,かつての御用邸であったものは,現在では,記念公園といった観光地や私的又は公的施設等となっており,それら施設の名称は,所在地名に「御用邸」の文字のみを付加した名称(例えば,「沼津御用邸」等)は使用されておらず,これらの文字に「記念公園」の文字を付加した名称(例えば,「沼津御用邸記念公園」等)又は「御用邸」の文字を全く含まない名称が使用されている(ただし,「旧塩原御用邸」のように,かつて存在した御用邸の名称に「旧」の文字を付加した呼び名もある(甲10)。)。 そして,「御用邸」は,天皇や皇族が年に数回,静養を兼ねて避暑や避寒に訪れる皇室の別荘を意味するものとして,本件商標の登録査定時前から我が国の国民の間に深く浸透しており,単に「御用邸」という場合は,その有する意味からしても,また,法律上の見地からしても,現存する那須御用邸,須崎御用邸及び葉山御用邸の3か所の御用邸を総称し,また,国民一般においても,そのように認識されているものと判断するのが相当である。 そうとすると,皇室と何らの関係を有しない者と認められる本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。) 称し,また,国民一般においても,そのように認識されているものと判断するのが相当である。 そうとすると,皇室と何らの関係を有しない者と認められる本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)が,皇室の用に供する国有財産のうち皇室用財産に属するものとして国が管理するものであって,我が国の国民の間においても,皇室- 5 -の別荘として広く認識されている「御用邸」と同一の文字よりなる本件商標を,専ら自己の業務(利益)のために利用する意図をもってその指定商品について独占使用することは,皇室の尊厳を損ねるばかりか,国民一般の不快感や反発を招くものであり,穏当ではない。 してみれば,本件商標は,その登録査定時(平成7年11月16日)において既に,その指定商品について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反するものである場合に該当する商標であったというべきである。 したがって,本件商標の登録は,7号に違反してされたものである。 第3 原告主張の審決取消事由 1 取消事由1(請求人適格についての判断の誤り)審決は,被告は,訴えを受けているので「本件商標の登録有効性の存否について,重大な利害関係を有する者」であるから,「審判を請求をするについて法律上正当な利益を有している」と判示する。 しかし,上記訴訟は,原告と被告間の私益に係る争いである。このような場合,「後発的な公益的無効理由」を根拠に無効審判を求めうる法律上の利益を有すると認めることは,法の予想する範囲のものということはできない。 無効審判において「後発的な公益的無効理由」を設けた趣旨は,公益性が高い市民団体などが採択した商標が登録商標に類似するような場合,公益的な見地からその商標の使用を確保するため,その商標に類似する既登録の商標を無効にできる 的な公益的無効理由」を設けた趣旨は,公益性が高い市民団体などが採択した商標が登録商標に類似するような場合,公益的な見地からその商標の使用を確保するため,その商標に類似する既登録の商標を無効にできるようにしたもので,請求人適格を有する審判請求人は,公益的な理由でその商標を使用する者である。 すなわち,「後発的な公益的無効理由」という以上,訴訟法上の当事者適格の考え方からすれば,その当事者適格は,「公益的な当事者」,換言すれば,「公益的な当事者が当該商標により不利益を受ける場合」を指すというべきで,「私益的」な当事者である被告などは含まれないと解するほかはない。 - 6 -公益的な当事者が何等の主張もしていないのに,私的な当事者がそれを云々することは,認められるべきではない。 したがって,原・被告間の私的な紛争に起縁して,公益的理由をもって無効審判を請求することはできないと解すべきである。 2 取消事由2(7号該当性)(1) 国民一般が,「御用邸」の語に接したとき,「現存する那須御用邸,須崎御用邸,葉山御用邸の三か所の御用邸を総称する」と認識されているとの審決の判断は独断であり,相当でない。 一般国民は,「御用邸」が,「皇室の別荘」と理解しても,それが現存する三つの御用邸の総称とまでの理解はなく,調べてみて初めて判明する事柄である。審決も摘示しているように,かつての「神戸御用邸」,「熱海御用邸」,「伊香保御用邸」等,多数の御用邸が存在していたのであり,それらは様々な形で現存している。 したがって,一般国民にとっての御用邸は,現に皇室で使用されている別荘(狭義の御用邸)ばかりでなく,広く過去において皇室の別荘として私的に使用されてきたものを含む広い概念(広義の御用邸)なのであって,狭義の御用邸に限定して判断するの は,現に皇室で使用されている別荘(狭義の御用邸)ばかりでなく,広く過去において皇室の別荘として私的に使用されてきたものを含む広い概念(広義の御用邸)なのであって,狭義の御用邸に限定して判断するのは相当でない。 広義の「御用邸」は,それを使用したからといって,皇室の尊厳を損ねるとか,国民一般の不快感や反発を招くとか,社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反するとかの審決の判断は,根拠がない。 (2) 本件商標は,平成7年の登録査定時に何の問題もなく認められたのであり,その後も「御用邸」や「御所」等の登録例がある。また,「御用邸のお水/那須の聖水」という「御用邸」の文字を含む商標(登録第4753032号)も登録されている。 その後の審査(平成23年頃)においても,「御用邸の月」(登録第5415157号),「御用邸の花」(登録第5470304号)等,「御用邸」の文字を含むものであっても登録を認めてきた。これは,「御用邸」の文字を含むものであっ- 7 -ても,「皇室の尊厳を損ねる」「国民一般の不快感や反発を招く」ことがないとの判断が審査基準として一般化されていたからに他ならない。 ところが,最近の審査では,「御用邸の森」(商願2012-11425号),「御用邸の海」(商願2012-29997号)が7号を理由に拒絶査定を受けている。これは,特許庁における「御用邸」の文字を含む商標の審査基準が変化していることに他ならない。 審決によれば,「本件商標の登録査定時における審査基準とそれ以降における審査基準とに,本質的な変化があるものとは考え難い」としているが,上述した特許庁における「御用邸」の文字を含む商標の登録可否状況の経過を見れば誤りである。 そして,少なくとも,本件商標の登録査定時においては,他にも前記のとおり「御用邸 とは考え難い」としているが,上述した特許庁における「御用邸」の文字を含む商標の登録可否状況の経過を見れば誤りである。 そして,少なくとも,本件商標の登録査定時においては,他にも前記のとおり「御用邸」の文字から成る商標が存在することや,「御用邸」と同じように皇室の建物を意味する「御所」の文字から成る商標も複数(登録第2344518号など)存在しており,また,「御所」を含む「御所かま」,「御所ちく」,「御所おでん」等も多数登録されていることからも,7号に該当しないという取り扱いがされていたものである。 すなわち,本件商標の登録査定時(平成7年11月16日)において公序良俗に反しないものとして登録を認められた本件商標は,商標法46条1項1号に基づく無効理由は存在しない。 (3) また,本件商標について,現在の審査基準を適用して,17年も経過した今になってそれを公序良俗に反するものとして無効とするには,それが「穏当でない」程度の理由では,許されるべくもなく,法的安定性を著しく損なうものである。 因みに,平成24年12月25日,本件商標を使用して「御用邸」チーズケーキを製造販売する株式会社庫やは,那須塩原市企画部企画情報課から,『那須地区を代表する菓子等を製造する庫やの工場を,「ロイヤル」な地域資源に焦点を当てて工場見学をしたい』旨の申出を受け,平成25年1月10日,御用邸チーズケーキの由来等の紹介を求められた。 - 8 -このことは,那須塩原市においてさえ,「御用邸」チーズケーキ等が,皇室の尊厳を損う,社会一般の不快感や反発を招くものではないし,社会一般の道徳観念に反しておらず,むしろ那須塩原市にあっては,地域活性化の一翼を担っていると積極的に評価しているところである。 インターネット上でも,「御用邸」チーズケーキ等が,皇 ではないし,社会一般の道徳観念に反しておらず,むしろ那須塩原市にあっては,地域活性化の一翼を担っていると積極的に評価しているところである。 インターネット上でも,「御用邸」チーズケーキ等が,皇室の尊厳を損う等の記載はみられない。 原告が経営する株式会社庫やでは,「御用邸」という商標を用いて永年に亘ってチーズケーキ等を製造販売し,今まで一度も当該クレームを受けたこともないし,新聞・テレビ・雑誌等のメディアに掲載されてきているが,同様に何の問題もなく経過している。 審決の言うように,本件商標「御用邸」が「国民一般の不快感や反発を招くもの」であれば,本件商標を付したチーズケーキ等の商品が那須土産として相当数の販売量を誇る人気商品となるはずもなく,この点からも本件商標「御用邸」に接した需要者(国民一般)が不快感や反感を招くなどとする判断は,容認できない。 (4) 以上から,審決の判断は,一貫性がなく,法的安定性の見地から取消しを免れない。 第4 被告の反論 1 取消事由1に対して審決は,本件商標「御用邸」が,登録査定時から7号に該当していた旨述べ,法46条1項1号を適用し,本件商標の無効を判断しているのであるから,商標法46条1項5号に対する判断は,本件訴訟の取消事由ではない。 したがって,原告の主張はその前提を欠き,失当である。 なお,本件では,審判請求人たる被告に対し,審判請求時以前に原告により商標権侵害訴訟(東京地方裁判所平成24年(ワ)第8346号事件)を提起されていたのであるから,審判被請求人たる原告の商標権者という法律的地位が,被告の利- 9 -益を阻害するおそれがあったことは明白である。 2 取消事由2に対して(1) 原告は,訴状及びその準備書面において,審決の本件商標の7号該当性 標権者という法律的地位が,被告の利- 9 -益を阻害するおそれがあったことは明白である。 2 取消事由2に対して(1) 原告は,訴状及びその準備書面において,審決の本件商標の7号該当性に対する認定判断に誤りがある旨主張する。 しかし,原告は,本件商標に無効事由が存在していない旨再度主張するのみであり,審決の7号該当性に対する認定判断のいかなる点において,いかなる誤りが存在し,それがいかに審決の違法性を形成しているかについては,具体的に主張していない。 審決の7号該当性の判断はいずれも正当なものであり,原告の主張には理由がない。 (2) 原告は「御所」の文字を用いた商標が複数登録されていること,及び「御所」が「御用邸」と同様の意義を有することから,本件商標「御用邸」には無効事由が存在しないとの主張をしている。 しかし,「御所」は,「天皇の座所。またその居所。禁中。内裏。」の意味があるが,他にも「天皇の敬称,上皇,三后,皇子,親王,将軍,大臣などの居所,またはそれらの人の敬称」との意味もある(新村出編『広辞苑』1014頁(岩波書店,第6版,2008年))。また,『広辞苑の記載』では,御所には「御所羹」,「御所車」,「御所桜」,「御所侍」,「御所染」,「御所人形」,「御所模様」,「御所落雁」等の「御所~」といった御所に他の言葉が結合している語が複数存在している。これは,御所という言葉が,単に「天皇の居所」という意味だけでなく,「公家風」等の意味を有し,一般に形容詞的に用いられ得ることを表している。 他方,「御用邸」に関しては「御用邸~」といった言葉は認められない。これは,「御用邸」は皇室の別邸以外の意味を有していないことを表している。 また,「御所」は「ごしょ」という読みの他に「ごせ」という読みもあり,奈良 しては「御用邸~」といった言葉は認められない。これは,「御用邸」は皇室の別邸以外の意味を有していないことを表している。 また,「御所」は「ごしょ」という読みの他に「ごせ」という読みもあり,奈良県には「御所市」(ごせし)という地名が認められる。この他にも「御所」という文字は地名に用いられることが比較的多く,広島県,京都府,兵庫県,石川県その- 10 -他の土地には「御所町」(ごしょまち・ごしょちょう)といった地名も存在する,また,徳島県には「御所温泉」(ごしょおんせん),岩手県には「御所湖」(ごしょこ)がある。このように「御所」という文字を含む地名が日本国内に多数存在することからも,「御所」の意味が「天皇の居所」だけではないことが認められる。 以上からすれば,「御所」と「御用邸」は,その文字の表す意味の範囲が大きく異なっているため,「御所」と「御用邸」を同列に扱おうとする原告の主張には,誤りがある。 第5 当裁判所の判断 1 取消事由1(請求人適格についての判断の誤り)について原告が被告に対し本件商標権の侵害訴訟を提起していることは当裁判所に顕著である(当裁判所平成25年(ネ)第10045号)。被告に本件無効審判請求の利益があるとした審決の判断に誤りはない。 2 取消事由2(7号該当性)について甲4,甲5及び弁論の全趣旨によれば,「御用邸」とは皇室の別邸を意味し,天皇又は皇族の静養等に用いられるもので,現在,那須御用邸,葉山御用邸,須崎御用邸の3つがあること,御用邸は国有財産であって,行政財産のうち皇室用財産に属し,宮内庁が管理するものであることが認められる。「御用邸」が皇室の別邸であることは広く知られており,「御用邸」の文字には,皇室と関係があるかのように感じさせる効果があり,顧客誘因力がある(甲6,22) 宮内庁が管理するものであることが認められる。「御用邸」が皇室の別邸であることは広く知られており,「御用邸」の文字には,皇室と関係があるかのように感じさせる効果があり,顧客誘因力がある(甲6,22)。そうすると,皇室と何らの関係もない者が,自己の業務のために指定商品について「御用邸」の文字を独占使用することは,皇室の尊厳を損ね,国民一般の不快感や反発を招くものであり,相当ではない。このことは,本件商標の登録査定時である平成7年11月16日においても,現在でも同様である。したがって,本件商標は,その登録査定時において既に,指定商品について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反するものであったと認めることかできる。そうすると,本件商標は,- 11 -公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であり,その登録は,7号に違反してされたものであるから,商標法46条1項1号により登録を無効とした審決に誤りはない。 原告は,一般国民は「御用邸」が「皇室の別荘」と理解しても,それが現存する三つの御用邸の総称とまでの理解はないと主張するが,「御用邸」が皇室の別邸を意味することは広く知られていて誰でもが理解することであるから,理由がない。 原告は,他にも「御用邸」の文字からなる商標や「御用邸」の文字を含む商標が登録されていること,「御所」の文字からなる商標や「御所」の文字を含む商標が登録されていることを主張するが,それらの商標登録に瑕疵があるか否かは,本件の判断とは別論であるから,理由がない。 原告は,原告が経営する株式会社庫やでは,本件商標を用いて永年に亘りチーズケーキ等を製造販売し,那須土産として相当数の販売量を誇る人気商品となって,メディアでも取り上げられているが,皇室の尊厳を損ねる等のクレームを受けたことがない では,本件商標を用いて永年に亘りチーズケーキ等を製造販売し,那須土産として相当数の販売量を誇る人気商品となって,メディアでも取り上げられているが,皇室の尊厳を損ねる等のクレームを受けたことがないと主張するが,原告が指定商品について「御用邸」の文字を独占していることが国民一般に知られているとはいえないし,そもそもその独占自体が相当でないから,理由がない。 よって,取消事由2には理由がない。 第6 結論以上によれば,原告主張の取消事由にはいずれも理由がない。よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官塩月秀平- 12 - 裁判官池下朗 裁判官新谷貴昭
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