平成29年1月11日宣告広島高等裁判所岡山支部判決平成28年(う)第60号貸金業法違反,出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(以下「出資法」という。)違反,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(以下「組織犯罪処罰法」という。)違反原審岡山地方裁判所津山支部(平成28年(わ)第41号等) 主文 原判決を破棄する。 被告人を懲役3年及び罰金100万円に処する。 その罰金を完納することができないときは,金1万円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 被告人がA信用金庫に対して有するB名義の普通預金債権(A信用金庫本店,口座番号C)金2014万5684円のうち金241万8000円(岡山地方裁判所津山支部平成28年(む)第24号没収保全請求事件で没収保全にかかるもの,当該金241万8000円は犯罪被害財産)を没収する。 この裁判が確定した日から5年間その懲役刑の執行を猶予する。 理由 1 本件控訴の趣意は,弁護人田中将之(主任),同立田久義及び同山本多美子連名で作成の控訴趣意書に記載のとおりである。 論旨は,原判決は,被告人を懲役2年及び罰金100万円(没収241万8000円)に処したが,原判決の量刑は重きに失し不当である,懲役 刑の執行を猶予すべきであるというのである。 2 職権判断(法令適用の誤り)控訴理由に対する判断に先立ち,職権で調査したところ,原判決は,その主文第4項において,「被告人がA信用金庫に対して有するB名義の普通預金債権(A信用金庫本店,口座番号C)金2014万5684円のうち金241万8000円を没収する。」とし,同財産 ,原判決は,その主文第4項において,「被告人がA信用金庫に対して有するB名義の普通預金債権(A信用金庫本店,口座番号C)金2014万5684円のうち金241万8000円を没収する。」とし,同財産が犯罪被害財産であることを明示していない。 原判決は,上記241万8000円の債権が犯罪収益に当たるとして組織犯罪処罰法13条1項によりこの没収をしたものである。 他方,同法18条の2によれば,没収すべき財産が犯罪被害財産である場合は,裁判所は,没収と同時に犯罪被害財産である旨を示さなければならないとされているところ,関係証拠によれば,上記241万8000円は,被告人が業として高金利を受領する形態の無登録貸金業を営むことによって得た財産等が仮装された財産であると認められる。すなわち,その中に出資法違反(高金利受領あるいは業としての高金利受領)に該当する犯罪行為の被害者が振り込んだ金額が含まれていることが明白であり,その余の財産も同様のものであると推認できるから,上記財産は全体として犯罪被害財産と認定することができる。そうすると,上記財産は,組織犯罪処罰法13条3項2号によって没収することができるものとなり,これを没収するときには同法18条の2により犯罪被害財産である旨を示さなければならない。 そうすると,原判決は,上記没収すべき財産につき犯罪被害財産と認定 せず,その結果,没収についての法令適用を誤り,ひいては,主文に没収すべき財産が犯罪被害財産である旨を示さなかったものとなるから,上記没収に関する各規定の解釈適用を誤ったものと言わざるを得ず,その誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかである。弁護人の控訴理由について判断するまでもなく,破棄を免れない。 3 破棄自判そこで,刑事訴訟法397条1項,380条により原判決を破棄し,同 ず,その誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかである。弁護人の控訴理由について判断するまでもなく,破棄を免れない。 3 破棄自判そこで,刑事訴訟法397条1項,380条により原判決を破棄し,同法400条ただし書を適用して,被告事件について,更に判決する。 (罪となるべき事実)原判決に記載されたとおりである。 (法令の適用)「未決勾留日数の算入同法21条」との記載を削除し,「刑の執行猶予同法25条1項」との記載を付加し,没収については,「組織犯罪処罰法13条1項5号,2項4号,3項2号,同法14条,15条1項本文,なお,同法18条の2第1項」と改める外は,原判決に記載されたとおりである。 (量刑の理由)本件は,無登録貸金業を行った貸金業法違反及び業として高金利を受領する契約をした出資法違反並びに無登録貸金業で得た犯罪収益の帰属を仮装した組織犯罪処罰法違反の事案である。 被告人は,暴力団組織に所属し,配下の組員や貸金の債務者に貸し付け行為や取り立て等をさせるなどし,組織的に高金利無登録貸金業を続けて いたものであり,本件で起訴された無登録貸金業の期間だけでも4年近くに上っていること,その間,貸付金から天引きをし,天引き前の元金を返還させる方法により,4回にわたり,合計130万円(実際の交付額は117万円)を貸し付けるとともに,年109.5パーセントを超える高金利を受領する契約をしたこと,また,このような貸金業から得た犯罪収益等につき,借主に他人名義の口座に振込入金させ,その都度被告人が多数回にわたり別の他人名義の口座に移転させて事実仮装していたことからすれば,本件はいずれも巧妙な手口で行われた組織的犯行であり,悪質というべきである。被告人は,平成10年に貸金業法違反(無登録営業)を含む罪(処断罪は銃砲刀剣類 に移転させて事実仮装していたことからすれば,本件はいずれも巧妙な手口で行われた組織的犯行であり,悪質というべきである。被告人は,平成10年に貸金業法違反(無登録営業)を含む罪(処断罪は銃砲刀剣類所持等取締法違反罪)で服役した前科があるのに,上記のような共犯者とともに,また同種犯行を繰り返していたものであり,この種犯行の常習性が認められ,規範意識もかなり鈍麻しているといえる。 被告人の刑事責任は到底軽視できない。 しかしながら,本件で,無登録,高金利で貸し付けたとして起訴されたのは,4回分の元本合計130万円分(実交付額は117万円)に止まっているし,事実仮装した金額も241万円余に止まっている。被告人の組織的かつ継続的な高金利貸金業の実態がさらに広範に及ぶものであるとしても,その点は上記事実の範囲内で考慮できるに過ぎない。前科との関係を見ても,本件は,いずれも同種前科から10年以上,服役終了からは7年余を経た時からのものである。現在,被告人は,被害弁償する意思を示している。これに加え,被告人の病状等,所論指摘の諸事情を考慮すれば, 懲役刑については,刑の執行を猶予するのが相当である。 よって,主文のとおり判決する。 平成29年1月11日広島高等裁判所岡山支部第1部 裁判長裁判官大泉一夫 裁判官難波宏 裁判官村川主和
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