平成22年3月4日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成20年(ワ)第10735号商標使用差止等請求事件口頭弁論終結日平成21年12月22日判決東京都府中市<以下略>原告A同訴訟代理人弁護士赤井文彌同笹浪恒弘同布井要太郎同横田高人同川義郎同波光巖東京都西東京市<以下略>被告B同訴訟代理人弁護士秋田一惠主文 被告は,その運営するネイルサロン店及びネイルスクール店の店舗看板,パンフレット,インターネット上のウェブ広告,電車及びバスの車内広告,新聞雑誌の紙上広告,並びにチラシなどの広告宣伝物に別紙標章目録記載の標章を使用してはならない。 被告は,別紙標章目録記載の標章を付した店舗看板,パンフレット及びチラシなどの広告宣伝物を廃棄し,インターネット上のウェブ広告から別紙標章目録記載の標章を削除せよ。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1請求 主文と同旨第2事案の概要本件は,別紙商標目録記載の商標につき後記商標権を有する原告が,別紙標章目録記載の標章(以下「被告標章」という。)をその経営するネイルサロン店及びネイルスクール店の店舗の看板,広告宣伝物等に付して使用する被告に対し,被告によるこれらの行為が原告の有する商標権を侵害する行為であると主張して,商標法37条1号,36条1項,2項に基づき,上記店舗看板や広告宣伝物等に被告標章を付す行為の差止めを求めるとともに,被告標章を付した店舗看板や広告宣伝物の廃棄等を求める事案である。 前提となる事実等(認定事実については末尾に証拠を掲記する。)(1)当事者ア原告は,ネイルサロン店の経営等を業とする株式会社スムース(以下「スムース」という。)の代表取締役である。 スムー 前提となる事実等(認定事実については末尾に証拠を掲記する。)(1)当事者ア原告は,ネイルサロン店の経営等を業とする株式会社スムース(以下「スムース」という。)の代表取締役である。 スムースは,東京都板橋区内に本店を置き,池袋に2店舗,恵比寿に1店舗,横浜に1店舗,新宿に1店舗,渋谷に1店舗を設け,顧客に対してネイルアートを施すなど,つめの美容等に関する業務を行っている。 (甲1,2,原告本人,弁論の全趣旨)イ被告は,平成17年ころ以降,東京都西東京市ひばりが丘(以下「ひばりが丘」という。)に店舗を設け,現在2店舗において,顧客に対しネイルアートを施したり,つめの美容に関するスクールを運営したりするなど,つめの美容等に関する業務を営んでいる。 (弁論の全趣旨)(2)原告の商標権原告は,次の商標権(以下「本件商標権」といい,本件商標権に係る商標を「本件商標」という。)を有する。 登録番号第5105907号 出願年月日平成19年4月2日登録年月日平成20年1月18日商品及び役務の区分第44類指定役務美容,理容商標別紙商標目録記載のとおり(甲4,5)(3)被告の行為被告は,平成18年ころから,自己の経営するネイルサロン店及びネイルスクール店の店舗の看板(甲3の1ないし5),そのパンフレット(甲3の7),インターネット上のウェブページ(甲3の6),チラシ(甲3の8)に別紙標章目録記載の標章(被告標章)を付して,使用している。 (甲3の1ないし8,弁論の全趣旨)(4)指定役務の同一被告のネイルサロン店及びネイルスクール店における役務は,本件商標権の指定役務である「美容」に含まれる。 (当事者間に争いがない) 争点 (1)被告標章は本件商標に類似するか否か(争点1)(2)被告は被告標章を使用する権利を有する ル店における役務は,本件商標権の指定役務である「美容」に含まれる。 (当事者間に争いがない) 争点 (1)被告標章は本件商標に類似するか否か(争点1)(2)被告は被告標章を使用する権利を有するか否か(商標法32条1項の適用の有無)(争点2)(3)本訴請求は原告による商標権の濫用に当たるか否か(争点3)第3争点に関する当事者の主張 争点1(被告標章は本件商標に類似するか否か)について〔原告の主張〕本件商標と被告標章とは,以下のとおり,外観,称呼,観念のいずれにおいても,同一であるか,又は類似しており,両者は全体としてもほとんど同一の 印象を与えるものである。 したがって,被告標章は本件商標に類似する。 (1)外観ア本件商標は,「I」,「❤」及び「NAILS」という単語及び図形から成る。 被告標章は,「I」,「❤」及び「Nail」という単語及び図形から成る。 両者は,ともにその主要部分が「I」と「❤」と「NAILS」(「つめ」を意味する英単語の複数形)又は「Nail」(「つめ」を意味する英単語の単数形)の組合せである点において共通している。 イ本件商標と被告標章とは,①本件商標が英文字部分である「I」及び「NAILS」がすべて明朝体の大文字で表記されているのに対し,被告標章は頭文字である「I」及び「N」のみが大文字の飾り文字で表記され,その他の部分である「ail」は小文字の飾り文字で表記されている点,②本件商標には「NAIL」の語尾に「S」が付されているのに対し,被告標章にはこれが付されていない点,③本件商標の配列が二段であるのに対し,被告標章の配列は一段である点において異なる。 しかしながら,本件商標,被告標章のいずれにおいても,外観上の主要部分は「I」,「」及び「NAIL」という英文字及び図形から構成さ❤れる点 に対し,被告標章の配列は一段である点において異なる。 しかしながら,本件商標,被告標章のいずれにおいても,外観上の主要部分は「I」,「」及び「NAIL」という英文字及び図形から構成さ❤れる点であり,両者は上記主要部分において共通である。上記①の点は,英語で「つめ」を意味する「Nail」という単語を用いている点で共通し,②の点は,上記単語の単数形と複数形との違いにすぎず,③の点も,本件商標において配列が要部であるとはいえない。上記のとおり,本件商標と被告標章とは,主要部分が共通であることからすれば,両者は外観上極めて紛らわしく,誤認混同を生じさせるおそれがある。 ウしたがって,本件商標と被告標章とは,その外観において類似している。 (2)称呼本件商標は,「アイラブネイルズ」又は「アイハートネイルズ」との称呼を生じる。被告標章は,「アイハートネイル」との称呼を生じる。 したがって,本件商標と被告標章とは,その称呼において同一又は類似している。 (3)観念一般に「」の図形は,愛情又は好感を表現する記号であるから,本件商❤標及び被告標章は,いずれも「私はつめを愛する」という観念を生じる。 したがって,本件商標と被告標章とは,その観念において同一又は類似している。 (4)全体的印象本件商標及び被告標章が,いずれも識別力の顕著な「」の図形を中心と❤して,その両側に「わたくし」を意味する「I」と「つめ」を意味する「NAILS」又は「Nail」とが隣接して配置されていることや日本における英語の普及状況,本件商標の指定役務である「美容」に関心を有する一般顧客の関心度に照らせば,離隔的観察において,本件商標と被告標章とは,ほとんど同一の印象を生じ,同一の営業主体によるものであるとの印象を与える。 〔被告の主張〕本件商標と被告標章とは を有する一般顧客の関心度に照らせば,離隔的観察において,本件商標と被告標章とは,ほとんど同一の印象を生じ,同一の営業主体によるものであるとの印象を与える。 〔被告の主張〕本件商標と被告標章とは,以下のとおり相違しており,被告標章は本件商標に類似しない。 (1)外観についてア原告の主張は,デザイン性を看過した主張である。 本件商標は,「ボテッ」とした印象を与える活字体で表記されているのに対し,被告標章はシャープな印象を与える筆記体で表記されており,しかも,「I」や「N」や「l」については飾り文字風にデフォルメされて いる。 イ本件商標と被告標章とでは,「」の図形の形状が全く異なる。 ❤本件商標の「❤」の図形は,横広がりの丸みを帯びたものであるのに対し,被告標章の「❤」の図形は,飾り文字に合わせて踊るがごとく表記されており,先端は右側に跳ねていて,軽快でスマートな印象を与える。 ウ本件商標と被告標章とでは,文字や「❤」の図形の配列が異なる。 本件商標では上下二段に表記されているのに対し,被告標章では横一行に表記されている。 (2)称呼について本件商標は「アイラブネイルズ」との称呼を生じ,被告標章は「アイハートネイル」との称呼を生じるから,両者は称呼においても相違する。 (3)観念について「❤」の図形は,一般に「ラブ」(愛情)以外の意味においても使用されており,同図形が直ちに本件商標の「私はつめを愛する」(アイラブネイルズ)との観念に結び付くわけではない。 (4)全体的印象について本件商標と被告標章とは,文字の表記の違い,「❤」の図形の形状の違い,配列の違い,被告標章では「アイハートネイル」と表記されていることなどの点において異なり,全体の印象において大きく異なる。 (5)出所混同のおそれがないこと原告の経営するネイルサロン店 形状の違い,配列の違い,被告標章では「アイハートネイル」と表記されていることなどの点において異なり,全体の印象において大きく異なる。 (5)出所混同のおそれがないこと原告の経営するネイルサロン店は,安価なサービスを提供し,多店舗出店の営業形態をとっている。他方,被告の経営するネイルサロン店は,一人一人の顧客を大切にするという理念の下で,広範囲に店舗展開をしない地域密着型の営業形態をとっている。 原告と被告の営業形態は,上記のとおり異なるものであって,需要者に与える印象も異なるから,出所混同のおそれはない。 争点2(被告は被告標章を使用する権利を有するか否か)について〔被告の主張〕(1)被告は,平成18年から,被告標章を使用している。 被告は,被告標章を使用して広告宣伝等を行っていた(乙1ないし12等)。これらにより,被告標章は,原告が本件商標について商標登録出願をした当時,ひばりが丘周辺地域において,被告の運営するネイルサロン店,ネイリスト養成スクール店の役務標章として周知であった。 (2)このように,①被告は,本件商標の商標登録出願がされた平成19年4月2日より前から不正競争の目的なく,被告の開設するネイルサロン店の役務標章として被告標章を使用していたこと,②上記当時,被告標章は被告の開設するネイルサロン店の役務標章として需要者の間に広く認識されていたことから,被告は,商標法32条1項に基づき,被告標章の使用をする権利を有する。 〔原告の主張〕(1)被告の主張は否認ないし争う。 被告標章は,少なくとも,商標法32条1項の要件のうち,「その商標登録出願の際現にその商標が自己の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとき」との要件(周知性の要件)を充足しない。 (2)周知性とは,特定の誰かの商標 「その商標登録出願の際現にその商標が自己の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとき」との要件(周知性の要件)を充足しない。 (2)周知性とは,特定の誰かの商標であることが取引者,需要者間に相当広く知られ,業務の信用の基礎となっている客観的な状態をいうのであり,周知性が認められるためには,必ずしも全国的に周知である必要はないものの,相当程度に広い範囲に知られている必要があるというべきである。 したがって,仮に,被告が主張するとおり被告標章がひばりが丘周辺地域において周知であったとしても,この程度の地域的範囲における周知性では,商標法32条1項の定める周知性の要件を充足するとはいえない。 (3)また,被告標章の広告媒体が特定の雑誌及び情報誌に限られていること,雑誌等における掲載形態も,多数の同時に行われた同業者広告の中の一つとして掲載されているにすぎず,掲載スペースも小さいこと,広告掲載の頻度も多いとはいえないことなどに照らせば,被告標章が被告の主張する地域(ひばりが丘周辺地域)内における取引者,需要者の間に広く認識されていたともいえない。 争点3(本訴請求は原告による商標権の濫用に当たるか否か)について〔被告の主張〕(1)被告は,平成17年8月27日,ネイルサロン店(第1号店)を開設した。 被告が,当時使用していた標章は,以下のとおりである。被告は同標章を店舗の看板やパンフレット等の広告宣伝物に付して使用するなどしていた(乙15ないし20の各枝番)。 (以下「当初被告標章」という。)(2)被告がネイルサロン店を開店してから数ヶ月が経ったころ,原告から被告の店舗に何度も電話がかかってきた。 被告が原告からの求めで,電話をかけると,原告は,被告に対し,執拗に,「自分のところのロゴと同じであるから変 サロン店を開店してから数ヶ月が経ったころ,原告から被告の店舗に何度も電話がかかってきた。 被告が原告からの求めで,電話をかけると,原告は,被告に対し,執拗に,「自分のところのロゴと同じであるから変えろ」,「変えないならば,弁護士から内容証明郵便がいく」,「何回でも出してやる」などと脅すような口調で述べた。 なお,平成18年4月には,原告から委任を受けた弁護士から,被告に対し,被告の用いている標章(「ILOVENAIL」)が原告の商標(「ILOVENAILSアイラブネイルズ」)と類似し,その使用は原告の有する商標権を侵害するとして,使用を中止するように求める警告 書(内容証明郵便)が送付された(乙13)。 上記警告において問題とされた原告の商標は,以下のとおりである(甲6)。 (以下「当初原告商標」という。)(3)被告は,平成18年3月ころ,弁理士に相談した上で,当初原告商標と当初被告標章とは類似しないと考えていたものの,原告から執拗に電話がかかってきたことや,原告から警告を受けることに精神的苦痛を感じていたことなどから,当初被告標章を以下のとおり変更した。 (以下「変更後被告標章」という。)(4)被告が当初被告標章を変更後被告標章に変更した後も,間もなく,原告から「❤」の図形は「ラブ」と称呼されるので,変更後被告標章と当初原告商標とは類似する旨の電話が執拗にかかってきた。 そこで,被告は,変更後被告標章では「❤」の図形が用いられていることや,「❤」の図形は「ラブ」以外の称呼も生じることなどから,変更後被告標章は当初原告商標とは類似しないと考えていたものの,原告からの警告を受けて,当初原告商標との違いを明確にするため,変更後被告標章を以下のとおり変更した。 (被告標章)(5)ところが,原告は,被告の営業を妨害する目的 しないと考えていたものの,原告からの警告を受けて,当初原告商標との違いを明確にするため,変更後被告標章を以下のとおり変更した。 (被告標章)(5)ところが,原告は,被告の営業を妨害する目的で,「❤」の図形を用いていた被告の標章をまねて,平成19年4月2日本件商標につき商標登録出願をした。 (6)以上の経過に照らせば,原告による本件商標権の行使は,被告が獲得した営業表示(被告標章)の周知性を奪い,その変更に多額の費用をかけさせ,あるいは,業務上の信用を失わせて,被告の業務を妨害することを目的としたものであるというほかなく,権利の濫用として許されない。 〔原告の主張〕(1)被告の主張は否認ないし争う。 (2)被告が「❤」の図形を用いた標章を平成17年8月ころから使用していたことは知らない。 原告は,それまで使用していた当初原告商標(甲6)に類似する関連商標の登録を追加的に行ったにすぎず,それ以外の意図,すなわち,被告の営業を妨害する意図で本件商標について商標登録出願をしたわけではないし,被告標章をまねて本件商標を考案したわけでもない。 もともと,原告は,「❤」の図形の表示に魅力を感じており,平成17年5月ころの時点においても,既に「❤」の図形を用いた商標について商標登録出願をしたいと考えていた。そして,実際に,遅くとも平成18年3月ころから,「I❤NAILS」の文字及び図形から成り,かつ,「❤」の図形の中に「LOVE」という文字を挿入した標章(甲8の2)を,店舗の看板やグッズ等に使用していた。そこで,平成19年4月2日に本件商標及び甲第9号証の商標(本件商標の「❤」の図形の中に「LOVE」という文 字を挿入した商標)について商標登録出願を行ったものである。 原告が,被告標章を認識したのは,本件商標の登録日である平成20年1 第9号証の商標(本件商標の「❤」の図形の中に「LOVE」という文 字を挿入した商標)について商標登録出願を行ったものである。 原告が,被告標章を認識したのは,本件商標の登録日である平成20年1月18日よりも後である同年2月中旬ころのことであったから,本件商標の商標登録出願に当たって,被告標章を意識していたという事実はなく,原告には被告の営業を妨害する意図などなかったことも明らかである。 (3)スムースは,被告の運営する店舗の所在する西武池袋線ひばりヶ丘駅周辺地域にも,約500名の顧客を有する。 原告は,当初原告商標(甲6)やこれに類似する本件商標を使用して店舗の展開を図っており,原告が本件商標権を取得してこれを行使することは,何ら商標権の濫用には当たらない。 (4)被告の主張する経緯についてア原告が,平成17年末ころから平成18年初めころ,被告に対して電話をかけ,被告の使用する標章の使用の中止を申し入れ,その際,内容証明郵便を差し向けることになることを述べたことは事実である。しかしながら,原告が電話により上記申入れを行ったのは1度のみであるし,脅すような口調で申入れを行ったこともない。 当時,被告は,「ILOVENAIL」との標章を用いており(甲7),当該標章は当初原告商標(甲6)と同一又は類似するものと考えられたため,原告から被告に警告したものである。 イ原告が被告に電話をかけた際,被告の店舗側で「ILOVENAILです。」と応対したため,原告は,被告に対し,「私は,『ILOVENAILS』のライセンスを持っているので,使用を止めてほしい。」と告げた。これに対し,被告から「うちはSがついていないが,同じですか。」と尋ねられたので,原告は,「類似になります。」と回答したものである。 なお,上記電話において,「❤」の図 を止めてほしい。」と告げた。これに対し,被告から「うちはSがついていないが,同じですか。」と尋ねられたので,原告は,「類似になります。」と回答したものである。 なお,上記電話において,「❤」の図形についてのやりとりはなかった。 ウその後,原告は,被告に対し,さらに1度だけ電話をかけたことがある。 電話をかけた時期は,原告の委任を受けた弁護士から内容証明郵便(乙13)を送付した平成18年4月27日前後のころである。 第4当裁判所の判断 争点1(被告標章は本件商標に類似するか否か)について(1)本件商標についてア外観本件商標は,文字と図形とから成る結合商標であり,次のとおりの外観を有する。 (ア)黒色で表示されたアルファベットの「I」の文字,黒色で表示されたアルファベットの「NAILS」の文字列及び赤色で表示された「❤」の図形から成る。 (イ)アルファベット文字はいずれもブロック体の大文字で表示されている。 (ウ)アルファベットの「I」の文字と「❤」の図形が上段に横1行に,アルファベットの「NAILS」の文字列が下段に横1行に配されている。 上段の「I」の文字は,下段の「N」の文字の上部に,上段の「❤」の図形は,下段の「AILS」の文字列の上部にまたがって配されている。 イ称呼(ア)アルファベットの「I」の文字は,「私は」を意味する,一般に認知された英単語であり,「アイ」との称呼を生じる。 アルファベットの「NAILS」の文字列は,「つめ」を意味する,一般に認知された英単語である「NAIL」の複数形であり,「ネイルズ」との称呼を生じる。 そして,「❤」の図形は,「愛情を持っている」との意味を有する,一般に認知された英単語である「LOVE」を表すために用いられるこ とがあり,「ラブ」との称呼を生じ得る。また,「❤」の図形 じる。 そして,「❤」の図形は,「愛情を持っている」との意味を有する,一般に認知された英単語である「LOVE」を表すために用いられるこ とがあり,「ラブ」との称呼を生じ得る。また,「❤」の図形は,トランプの札の印や「愛情」や「心」等を意味する記号として用いられており,「ハート」との称呼を生じ得る。 (イ)したがって,本件商標からは,「アイラブネイルズ」,「アイハートネイルズ」との称呼を生じ得る。 ウ観念上記イで述べたところによれば,本件商標からは,「私はつめに愛情を持っている」との観念を生じ得る。 (2)被告標章についてア外観被告標章は,文字と図形とから成る結合商標であり,次のとおりの外観を有する。 (ア)黒色で表示されたアルファベットの「I」の文字,黒色で表示されたアルファベットの「Nail」の文字列,黒色で表示されたカタカナの「アイ・ハート・ネイル」の文字列,赤色で表示された「❤」の図形から成る。 (イ)アルファベットの「I」の文字は,ブロック体の大文字の飾り文字で表示されている。 アルファベットの「Nail」の文字列のうち「N」の文字はブロック体の大文字の飾り文字で,「a」「i」「l」の各文字はブロック体の小文字の飾り文字でそれぞれ表示されている。 (ウ)アルファベットの「I」の文字,「❤」の図形,アルファベットの「Nail」の文字列は,その順で左から右に向かって横1行に配されている。 カタカナの「アイ・ハート・ネイル」の文字列は,他のアルファベットの文字よりも相当小さな文字で表示されており,「Nail」の文字 列の下部に,同文字列が表示された幅に収まるように横1行に配されている。 イ称呼(ア)アルファベットの「I」の文字は,「私は」を意味する,一般に認知された英単語であり,「アイ」との称呼を生じる。 アルフ に,同文字列が表示された幅に収まるように横1行に配されている。 イ称呼(ア)アルファベットの「I」の文字は,「私は」を意味する,一般に認知された英単語であり,「アイ」との称呼を生じる。 アルファベットの「Nail」の文字列は,「つめ」を意味する,一般に認知された英単語であり,「ネイル」との称呼を生じる。 そして,「❤」の図形は,「愛情を持っている」との意味を有する,一般に認知された英単語である「LOVE」を表すために用いられることがあり,「ラブ」との称呼を生じ得る。また,「❤」の図形は,トランプの札の印や「愛情」や「心」等を意味する記号として用いられており,「ハート」との称呼を生じ得る。 (イ)そして,被告標章の外観,すなわち,アルファベットの「I」の文字,「❤」の図形,アルファベットの「Nail」の文字列を横1行に配した上で,「Nail」の文字列の下部に,カタカナの「アイ・ハート・ネイル」との文字列を付記するように配していることに照らせば,被告標章からは,「アイハートネイル」との称呼を生じる。 ウ観念上記イで述べたところによれば,被告標章からは,「私はつめに愛情を持っている」との観念を生じ得る。 (3)対比ア被告標章の前記外観に照らせば,被告標章の要部は,アルファベットの「I」の文字,「❤」の図形,アルファベットの「Nail」の文字列を横1行に配した部分であるといえる(カタカナの「アイ・ハート・ネイル」の文字列は,上記要部の称呼を表示したものにすぎないと考えられる。)。 そうすると,本件商標と被告標章の上記要部とは,外観において,①アルファベット文字の字体の点,②「❤」の図形の形状の点,③「つめ」を意味する英単語が単数形で用いられているか複数形で用いられているかの点において異なるものの,④アルファベット文字の「I」を て,①アルファベット文字の字体の点,②「❤」の図形の形状の点,③「つめ」を意味する英単語が単数形で用いられているか複数形で用いられているかの点において異なるものの,④アルファベット文字の「I」を構成要素とする点,⑤「❤」の図形を構成要素とする点,⑥英語で「つめ」を意味するアルファベット文字列を構成要素とする点,⑦アルファベット文字は黒色で,「❤」の図形は赤色で表示されている点において共通しているから,本件商標と被告標章とを離隔的に観察すれば,両者は類似するといえる。 また,本件商標と被告標章とは,称呼において類似し,観念において一致する。 イ以上によれば,被告標章は本件商標に類似するものと認められる。 (4)そして,ネイルサロン店及びネイルスクール店における役務は,本件商標権の指定役務である「美容」に含まれるから,被告が自己の経営するネイルサロン店及びネイルスクール店の店舗の看板,そのパンフレット,インターネット上のウェブページ,チラシ等の広告宣伝物に被告標章を付して使用する行為は,指定役務についての登録商標に類似する商標の使用(商標法2条3項8号)に該当し,同法37条1号により,本件商標権を侵害するものとみなされる。 本件の経緯等について(1)前提となる事実等に証拠(甲2,甲3の1ないし8,甲6,7,甲8の1・2,甲9,10,甲14の1ないし5,甲15,16,乙1ないし14,乙17の1・2,乙19の1・2,乙20の1・2,乙22,乙24の1・2,乙25の1,乙27,31,原告本人,被告本人)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 ア原告とスムースとの関係及びスムースの営業内容等原告は,ネイルサロンの経営等を業とするスムースの代表取締役であり, スムースとの間で,本件商標を含め原告が商標権を有する商標につ 認められる。 ア原告とスムースとの関係及びスムースの営業内容等原告は,ネイルサロンの経営等を業とするスムースの代表取締役であり, スムースとの間で,本件商標を含め原告が商標権を有する商標につき,専用使用権設定契約を締結している。 スムースは,顧客に対してネイルアートを施すなどのつめの美容等に関する業務を行う店舗(ネイルサロン店)を,池袋に2店舗,恵比寿に1店舗,横浜に1店舗,新宿に1店舗,渋谷に1店舗開設し,運営している。 スムースが開設,運営するネイルサロン店の店舗名称は,「Smooth」(スムース)又は「SPATICA」(スパティカ)である。 イ被告の営業内容等被告は,東京都西東京市ひばりが丘において,第1号店を平成17年8月に,第2号店を平成18年6月に,それぞれ開設し,運営している。なお,現在,第1号店の店舗はネイルスクールとして営業を行っており(「アイハートネイルスクール駅前店」),第2号店の店舗はネイルサロンとして営業を行っている(「アイハートネイル本店」)。 ウ原告の被告に対する警告及び被告の標章の変遷状況等(ア)原告は,平成17年5月12日,当初原告商標について,商標登録出願をし,当初原告商標は,平成18年1月20日,商標登録された(甲6)。 (イ)被告は,平成17年8月27日,ひばりが丘において,ネイルサロン店(第1号店)を開設した。 被告のネイルサロン店の当時の名称は「アイラブネイル」であり,当初被告標章を店舗の看板やパンフレット,顧客への葉書等に付して使用していた。 (ウ)平成17年の年末か平成18年の初めころ,原告は,被告の使用する当初被告標章が,当初原告商標と類似し,当初原告商標に類似する標章の使用は商標権を侵害する行為であることを警告し,標章の使用中止を求めるため,被告の店舗に電話をかけた。 原告は,被告の使用する当初被告標章が,当初原告商標と類似し,当初原告商標に類似する標章の使用は商標権を侵害する行為であることを警告し,標章の使用中止を求めるため,被告の店舗に電話をかけた。 原告から電話での警告を受けた被告は,当初被告標章は当初原告商標と類似しないと考え,原告にもその旨を伝えたものの,原告との間で紛争となることを避けるため,弁理士にも相談の上,被告のネイルサロン店の名称を「アイハートネイル」に変更し,用いる標章も,当初被告標章から変更後被告標章に変更することにした。 (エ)他方,原告は,被告が当初原告商標と類似する標章の使用を止めないものと判断し,被告との交渉を弁護士らに委任した。 そこで,原告の代理人弁護士らは,平成18年4月27日,被告に対し,「ご通知」と題する書面(乙13。以下「本件通知書」という。)を内容証明郵便として差し出した。 本件通知書には,①被告が営業に係る広告において,原告に無断で,「ILOVENAIL」という当初原告商標(「ILOVENAILSアイラブネイルズ」)と類似する標章を用いており,同行為は原告の当初原告商標に係る商標権を侵害する行為であること,②商標権者は,商標法に基づき,商標権を侵害する者に対し,侵害行為の差止めを請求するとともに,損害賠償を請求し得ること,商標権を侵害する者は,5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処せられることになっていること,③原告は被告に対し,書面到達後30日以内における当初原告商標に係る商標権の侵害行為の停止を求めること,被告が上記期限を徒過した場合には,原告は,商標法に基づく差止請求,損害賠償請求等の法的手続をとること,が記載されていた。 これに対し,被告は,弁理士に相談の上,平成18年5月22日,原告の代理人弁護士に対し,「回答書」と題す には,原告は,商標法に基づく差止請求,損害賠償請求等の法的手続をとること,が記載されていた。 これに対し,被告は,弁理士に相談の上,平成18年5月22日,原告の代理人弁護士に対し,「回答書」と題する書面(乙14。以下「本件回答書」という。)を内容証明郵便として差し出した。 本件回答書には,「被告は,現在,原告の保有する商標『ILOVENAILS/アイラブネイルズ』と類似する商標を使用してい る事実は一切ありません。」と記載されていた。 (オ)原告は,平成18年5月30日に発行された「NAILMAX」平成18年6月号(甲7)において,サンプルの掲載された店舗リスト中に被告のネイルサロン店が「ILOVENail」と表示されているのを見付けた。 そこで,原告は,被告の店舗に電話をかけ,被告に対し,上記標章の使用を止めるように申し入れた。被告は,既に,ネイルサロン店の名称を「アイハートネイル」に変更し,当初被告標章も変更後被告標章に変えた後であったため,原告に対し,既に「アイラブネイル」との名称は使用しておらず,上記雑誌における表示は誤りである旨を話した。 原告は,当初被告標章を変更後被告標章に変えても,「❤」の図形は「ラブ」と称呼され,当初原告商標と類似するとして譲らなかったため,被告は,変更後被告標章の「❤」の図形が「ラブ」と称呼されることがないようにしようと考え,変更後被告標章を被告標章に変更することにした。 (カ)被告のネイルサロン店は,平成18年7月1日発行の「ネイルUP!」平成18年夏号(乙1)では「INail」又は「I♥Nai♡l」と,平成18年8月20日発行の「ネイルマスターBOOK」平成18年版(乙2)では「INail」と表示されていたものの,その♡後,平成18年9月22日発行の「ぱど」(乙9), I♥Nai♡l」と,平成18年8月20日発行の「ネイルマスターBOOK」平成18年版(乙2)では「INail」と表示されていたものの,その♡後,平成18年9月22日発行の「ぱど」(乙9),同年10月13日発行の「ぱど」(乙10),同年12月8日発行の「ぱど」(乙11),平成19年2月9日発行の「ぱど」(乙12)に,それぞれ掲載された広告では「I♡Nail」と,平成18年12月17日発行のアイハートネイル「HONEYgirl」平成19年1月号(乙25の1)では「I♥Nail~Academy~(アイハートネイルアカデミー本店)」と,平成19年1月1日発行の「ネイルUP!」平成19年冬号(乙5) では「I♥Nailサロン&アカデミー(アイハートネイルサロン&アカデミー本店)」と,平成19年1月1日発行の「LUIRE」平成19年1月号(乙6)では「I♥Nail~サロン&スクール~本店[アイハートネイルサロンアンドスクール]」と,表示されるなどした。 さらに,本件商標が商標登録された平成20年1月18日までの間に,被告のネイルサロン店が,平成19年7月1日発行の「ネイルUP!」平成19年夏号(乙8)では,「I♥Nail(アイハートネイル)」と表示され,平成19年9月1日発行の「NAILVENUS」平成19年秋号(乙27)では,被告標章が付されるとともに,「I♥NAILサロン&アカデミー」と表示され,平成19年12月1日発行の「全国ネイルサロンオーダーBOOK」平成20年版(乙24の2)では,「アイハートネイルサロン&スクール駅前店」,「アイハートネイル本店」,「I♥Nail本店アイハートネイル」と表示されるなどしている(なお,上記のほか,本件商標が商標登録された平成20年1月18日までの間に ネイルサロン&スクール駅前店」,「アイハートネイル本店」,「I♥Nail本店アイハートネイル」と表示されるなどしている(なお,上記のほか,本件商標が商標登録された平成20年1月18日までの間に被告のネイルサロン店が掲載された雑誌として,「ネイルUP!」平成18年秋号(乙3),「全国ネイルサロンオーダーBOOK」平成19年版(乙4),「NAILVENUS」平成19年夏号(乙7)があり,「I♥Nailサロン&アカデミー本店」,「I♥NAILサロン&アカデミー」等と表示されている。)。 (キ)原告は,平成19年4月2日,本件商標について商標登録出願をし,本件商標は,平成20年1月18日,商標登録された。 なお,原告は,少なくとも,平成18年9月ころには,甲第9号証(商標登録証)記載の商標(本件商標の「❤」の図形の中に「LOVE」の文字列が記載されている商標)をプリントしたTシャツを,スム ースの店舗店員用に作成し,使用するなどしていた(甲8の1・2)。 (ク)原告は,本件通知書を差し出した後も,被告が「アイラブネイル」との称呼を生じる,当初原告商標と類似する標章を継続して使用していると考えていたことから,毎月1回,弁護士に被告への対処方を相談していた。そして,本件商標が商標登録されると,原告は,直ちに,弁護士に相談の上,弁護士からの助言を受けて,被告のネイルサロン店の写真を撮影したり,パンフレットを入手するなどして標章の使用状況を調査し,平成20年2月中旬ころには,原告代理人弁護士らを伴って,自ら被告のネイルサロン店を訪問するなどした。 エ原告(スムース)の本件商標の使用状況等(ア)平成20年4月11日当時,スムースのウェブページ(甲2)においては,トップページの右端に「I❤NAILSは,スムースの商標登Ⓡ録です。商 た。 エ原告(スムース)の本件商標の使用状況等(ア)平成20年4月11日当時,スムースのウェブページ(甲2)においては,トップページの右端に「I❤NAILSは,スムースの商標登Ⓡ録です。商品名・店名など類似商標には十分にご注意下さい。」(ただし,「❤」の図形の中に「LOVE」と記載されている。)と記載されていたほか,メニューページのメニュー名(「I❤NAILSフルセット」。ただし,「❤」の図形の中に「LOVE」と記載されている。)及び英語のトップページの右上(「I❤NAILSSmooth」。 Ⓡただし,「❤」の図形の中に「LOVE」と記載されている。)に甲第9号証の商標(ただし,「I❤NAILS」と横一行に表示したもの)が用いられていた。 (イ)平成21年11月当時,スムースの開設するネイルサロン店のうち渋谷店や池袋店の看板に本件商標が付されていた(甲14の1ないし5)。 また,平成21年11月ころに作成されたスムースのパンフレット(甲15)には,「Smooth」との表示の下部に本件商標(ただし,「I❤NAILS」と横一行に表示したもの)が付されているほか,メニュー表の上部にも本件商標が付されていた(なお,本件商標を付した パンフレットとして乙32の1もある。)。 (ウ)平成21年11月当時のスムースのウェブページ(甲16)においては,トップページの右端に「I❤Nailsは,スムースの商標登録Ⓡです。商品名・店名など類似商標には十分にご注意下さい。」と記載されているほか,各頁の左上に,「Smooth」との表示とともに本件商標(ただし,「Nails」と小文字で表記され,「I❤Nails」と横一行に表示したもの)が付されていた。 オ被告の被告標章の使用状況等被告は,被告のネイルサロン店及びネイルスクール店の店舗の看板や店 ただし,「Nails」と小文字で表記され,「I❤Nails」と横一行に表示したもの)が付されていた。 オ被告の被告標章の使用状況等被告は,被告のネイルサロン店及びネイルスクール店の店舗の看板や店舗に掲示するポスター(甲3の1ないし5),パンフレット(甲3の7),ウェブページ(甲3の6),チラシ(甲3の8),雑誌広告(乙31)に被告標章を付して,使用している。 (2)上記認定に反し,原告は,被告が被告標章を使用していることを認識したのは,本件商標が商標登録された平成20年1月18日よりも後の同年2月中旬ころのことであり,本件商標の商標登録出願に当たって,原告が被告標章を意識していたという事実はない旨主張し,その本人尋問においても,これに沿う供述をする。 しかしながら,原告は,平成17年の年末か平成18年の初めころ,被告の店舗に電話をかけ,被告に対し,被告の使用する標章が当初原告商標に類似する旨の警告をし,さらに,原告からの警告によっても被告が当初原告商標と類似する標章の使用を止めないものと判断して,平成18年4月には弁護士に委任して,被告に対して本件通知書を送付していること,本件通知書に対しては,同年5月に被告側から,被告は当初原告商標に類似する商標を使用していない旨の本件回答書を受領していること,原告はその後も,弁護士に対して被告への対処方を継続して相談していたこと,原告は本件商標が商標登録されるや否や,直ちに,被告のネイルサロン店の標章の使用状況を 調査していることは,上記(1)で認定したとおりであり,これらの事実に照らせば,原告が,自ら又は弁護士に委任して,被告に対して,原告の有する商標権に係る商標と類似する標章であることを警告し,その使用中止を要求しておきながら,被告の使用する標章がどのようなものであるか,原告側からの ,自ら又は弁護士に委任して,被告に対して,原告の有する商標権に係る商標と類似する標章であることを警告し,その使用中止を要求しておきながら,被告の使用する標章がどのようなものであるか,原告側からの警告や使用中止の要求に対して,被告がどのように対応したか,を全く確認することがなかったとは考え難いのであって,原告の上記供述部分は直ちに信用することができない(なお,原告は,その本人尋問において,甲第7号証の雑誌(「NAILMAX」平成18年6月号)において,被告のネイルサロン店が「ILOVENail」と表示されているのを発見したことから,被告に対して自ら警告の電話をかけ,その後,弁護士に委任して本件通知書(平成18年4月27日付け)を送付した旨述べるものの,上記雑誌の発行日は平成18年5月30日であるから(平成21年1月9日付け原告証拠説明書参照),甲第7号証の雑誌に掲載されたのを見て,初めて,被告が当初原告商標と類似する標章を使用しているのを知ったとする原告の上記供述部分も信用することができない。)。 そして,上記(1)で認定したとおり,被告はそのネイルサロン店(第1号店)を開店した当初から「❤」の図形を含む当初被告標章を使用しており,その後,原告から警告を受けたことを契機として標章を変更した際にも,一貫して「❤」の図形を含む標章(変更後被告標章及び被告標章)を使用していたこと及び上記事実に照らせば,原告は,本件商標について商標登録出願をする以前から,被告が「I❤Nail」と「❤」の図形を含む標章を使用していることを認識しながら,本件商標について商標登録出願を行ったものと認められる。 争点2(商標法32条1項の適用の有無)について(1)被告は,本件商標の商標登録出願がされた平成19年4月2日より前から不正競争の目的なく,被告の ついて商標登録出願を行ったものと認められる。 争点2(商標法32条1項の適用の有無)について(1)被告は,本件商標の商標登録出願がされた平成19年4月2日より前から不正競争の目的なく,被告の開設するネイルサロン店の役務標章として被告 標章を使用し,本件商標の商標登録出願がされた当時,被告標章は被告の開設するネイルサロン店の役務標章として需要者の間に広く認識されていたことから,被告は,商標法32条1項に基づき,被告標章の使用をする権利を有する旨主張する。 (2)前記2(1)で認定した事実によれば,①被告は,平成17年8月にネイルサロン店(第1号店)を開設し,続いて平成18年6月にネイルサロン店(第2号店)を開設し,本件商標の商標登録出願がされた平成19年4月2日当時,ひばりが丘において合計2店舗を運営していたこと,②本件商標の商標登録出願より以前において,被告のネイルサロン店は,つめの美容に関する専門雑誌や地域情報誌等において,紹介されたり,広告の掲載がされたりすることがあったこと,③被告は,現在,被告のネイルサロン店及びネイルスクール店の店舗の看板や店舗に掲示するポスター,パンフレット,ウェブページ,チラシ,雑誌広告に被告標章を付して使用していること,が認められる。 しかしながら,つめの美容に関する専門雑誌(甲7,乙1ないし6,乙25の1)における被告のネイルサロン店の掲載態様は,1ページに他の多数のネイルサロン店とともに紹介されるというものであり,その掲載スペースも大きいものではなく,格別に読者の注意を惹くような態様での掲載ではない。また,地域情報誌(乙9ないし12)における広告も,無料情報誌に他の多数の広告のうちの一つとして掲載されたものであって,格別に読者の注意を惹くような態様での掲載であるとはいえない。しかも,これ い。また,地域情報誌(乙9ないし12)における広告も,無料情報誌に他の多数の広告のうちの一つとして掲載されたものであって,格別に読者の注意を惹くような態様での掲載であるとはいえない。しかも,これら雑誌や情報誌への掲載の頻度は,月に1回ないし3回というものであって,高いとはいえない。これらの事情に照らせば,被告のネイルサロン店が雑誌や情報誌に掲載されたり,広告が掲載されたりすることがあったからといって,被告標章が被告のネイルサロン店が所在するひばりが丘及びその近隣地域以外の需要者に広く知られていたものと認めることはできない。 また,仮に,被告標章が被告のネイルサロン店としての営業活動により,被告の役務標章としてひばりが丘及びその近隣地域の需要者に対する周知性を獲得していたとしても,この程度の限定された範囲内における周知性をもって,商標法32条1項の要件を充足するということはできない。 (3)よって,被告の上記主張は採用することができない。 争点3(本訴請求は原告による商標権の濫用に当たるか否か)について(1)被告は,原告による本件商標権の行使は,被告が獲得した営業表示(被告標章)の周知性を奪い,その変更に多額の費用をかけさせ,あるいは,業務上の信用を失わせて,被告の業務を妨害することを目的としてされたものであり,権利の濫用として許されない旨主張する。 (2)商標権の行使であっても,商標の取得経過や取得意図,その行使の態様等によっては,客観的に公正な競争秩序を乱すものとして権利の濫用に当たり,許されない場合もあると考えられる。 しかしながら,原告はネイルサロン店の経営等を業とするスムースの代表者であり,スムースは東京都内及び横浜において複数のネイルサロン店を運営していること,スムースの運営する店舗の中には,ひばりが丘と同一沿線( ら,原告はネイルサロン店の経営等を業とするスムースの代表者であり,スムースは東京都内及び横浜において複数のネイルサロン店を運営していること,スムースの運営する店舗の中には,ひばりが丘と同一沿線(西武池袋線)の池袋店もあること,原告は,被告がネイルサロン店(第1号店)を開設するより前の平成17年5月に,当初原告商標について商標登録出願をし,当初原告商標は平成18年1月には商標登録されていること,原告は,少なくとも,平成18年9月ころには,甲第9号証の商標(本件商標の「❤」の図形の中に「LOVE」の文字列が記載されている商標)をプリントしたTシャツを,スムースの店舗店員用に作成し,使用していたこと,原告(スムース)は,現在においても,本件商標又はこれに類似する商標をウェブページ,店舗看板,パンフレットに表示して使用していることは,前記2(1)で認定したとおりである。 これらの原告による本件商標の使用状況等の事実に照らせば,前記2 (1)で認定した経過,すなわち,原告が,当初原告商標の商標権に基づき,当初被告標章を用いていた被告に対して標章の使用の中止を求め,被告において,当初被告標章を変更後被告標章に変更し,更に,当初原告商標との相違を明確にするため,「アイハートネイル」との称呼を付記して被告標章に変更したにもかかわらず,また,原告において,被告が「❤」の図形を含む標章を使用していることを認識しながら,本件商標について商標登録を得て,本件商標権の行使をするに至ったという経過が認められるとしても,そのことから,直ちに,原告が,被告に標章の変更を強いることにより多額の費用をかけさせて被告の業務を妨害することや,被告に被告標章を使用させないことによりその業務上の信用を失わせて被告の業務を妨害することを目的として,本件商標について商標登録 を強いることにより多額の費用をかけさせて被告の業務を妨害することや,被告に被告標章を使用させないことによりその業務上の信用を失わせて被告の業務を妨害することを目的として,本件商標について商標登録を得たとか,あるいは,本件商標権を被告に対して行使したとかということはできないというべきである。 そして,他に,原告による本件商標権の行使が,客観的に公正な競争秩序を乱すものとして権利の濫用に当たるといえるような事情があることを認めるに足る証拠はない。 (3)以上のとおりであるから,被告の上記主張は採用することができない。 以上によれば,原告の本訴請求はいずれも理由があるから,これを認容することとし,仮執行宣言については相当でないからこれを付さないこととして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部裁判長裁判官阿部正幸 裁判官柵木澄子裁判官舟橋伸行 (別紙)標章目録 (別紙)商標目録
▼ クリックして全文を表示