【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人久保哲男の上告趣意は、単なる法令違反の主張であつて、刑訴法四〇五条 の上告理由にあたらない。 なお、所論にかんが
主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人久保哲男の上告趣意は、単なる法令違反の主張であつて、刑訴法四〇五条 の上告理由にあたらない。 なお、所論にかんがみ職権により判断するに、本件のように、税関空港や保税地 域等外国貨物に対する税関の実力的管理支配が及んでいる地域に外国から航空機又 は船舶により大麻を持ち込み、これを携帯していわゆる通関線を突破しようとして 果さなかつた場合、関税法の無許可輸入罪については未遂罪が成立するにとどまる が、大麻取締法二四条二号、四条の大麻輸入罪については、同法と関税法とでは外 国からわが国に持ち込まれる大麻に対する規制の趣旨・目的を異にし、大麻取締法 は、大麻の濫用による保健衛生上の危害を防止するため必要な取締を行うことを目 的とするものと解され、右危害発生の危険性は、大麻を税関空港に着陸した航空機 から取りおろし、あるいは船舶から保税地域に陸揚げすることにより既に生じてお り、通関線を突破したか否かは、同法の取締の趣旨・目的からは特に重要な意味を 持つものではないと考えられるところから、右取りおろしあるいは陸揚げによつて 同罪が成立するものと解するのが相当である(最高裁昭和五七年(あ)第一一五三 号同五八年九月二九日第一小法廷判決参照)。したがつて、原判決が「大麻取締法 の輸入罪は、犯人が大麻を携帯して空路外国から本邦に到着した時点で既遂に達す る」旨判示している点は前叙説示に照らし首肯し難いが、原判決の是認した第一審 判決の判示するところによれば、被告人が本件大麻を携帯して新東京国際空港に到 着し同判示の航空機から取りおろしていることは明らかであるから、被告人の本件 所為につき大麻輸入罪が成立するものとした第一審判決を是認した原判決は、結論 において相当である。 - 1 - ところで、原判決 同判示の航空機から取りおろしていることは明らかであるから、被告人の本件 所為につき大麻輸入罪が成立するものとした第一審判決を是認した原判決は、結論 において相当である。 - 1 - ところで、原判決は、本件大麻輸入罪と無許可輸入未遂罪とが刑法四五条前段の 併合罪の関係にあるとした第一審判決を是認しているところ、前示のように、税関 空港や保税地域等税関の実力的管理支配が及んでいる地域を経由する場合、両罪は その既遂時期を異にするけれども、外国から航空機又は船舶によつて大麻を右地域 に持ち込み、これを携帯して通関線を突破しようとする行為者の一連の動態は、法 的評価をはなれ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとにおいては、社会的見 解上一個の大麻輸入行為と評価すべきものであり、それが両罪に同時に該当するの であるから、両罪は刑法五四条一項前段の観念的競合の関係にあると解するのが相 当である(前記最高裁第一小法廷判決参照)。したがつて、第一審判決がこれを併 合罪の関係にあるものとし、原判決がこれを是認したのは、罪数関係についての法 令の解釈適用を誤つたものといわなければならないが、これを破棄しなくても著し く正義に反するものとは認められない。 よつて、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、主文のとおり決定する。 この決定は、裁判官谷口正孝の意見があるほか、裁判官全員一致の意見によるも のである。 裁判官谷口正孝の意見は、次のとおりである。 一 私も大麻取締法二四条二号、四条の大麻無許可輸入罪の既遂時期については、 大麻を携帯して空路税関空港に到着したという本件の如きばあいには、被告人が搭 乗した航空機が税関空港に着陸して人の乗降が開始され被告人がその携帯にかかる 大麻を航空機から機外に持ち出した時点にこれを求めるべきであるとする多数意見 に賛成する。ただし、右の持ち出 には、被告人が搭 乗した航空機が税関空港に着陸して人の乗降が開始され被告人がその携帯にかかる 大麻を航空機から機外に持ち出した時点にこれを求めるべきであるとする多数意見 に賛成する。ただし、右の持ち出しの時点にまで達すれば、同罪の保護法益である わが国内における公共の健康に対する抽象的危険が現実化したものと考えてよいか らである。論旨は、関税法所定の無許可輸入罪の既遂時期については、同法二条一 項一号の規定の解釈上通関線突破の時としながら、大麻無許可輸入罪の既遂時期を - 2 - 通関線突破以前の時点に求めることは、「輸入」の概念を二義に解するものである ばかりか、大麻無許可輸入罪についてはその未遂犯処罰の規定がないためことさら 輸入罪既遂の時期をいわば未遂の時点にまで遡らせた恣意的解釈であるという。然 し、この点についても多数意見の説示するように、同じ大麻の無許可輸入罪であつ ても、大麻取締法と関税法とではその規制の趣旨、目的を異にするのであるから、 無許可輸入罪の既遂時期について両者において各別の解釈が導かれることは当然と いうべきである。関税の確保と通関手続の適正を図るための法規である関税法(無 許可輸入罪については後者が特に問題となる)の解釈上無許可輸入罪の既遂時期を 通関線突破の時点と解したからといつて、大麻取締法の無許可輸入罪の既遂時期も また同一時点までずらすべきであるという論旨は理由がない。 二 然し、本件事案において大麻無許可輸入罪と関税法上の無許可輸入の未遂罪 との罪数関係について、多数意見は、両罪は自然的、社会的見解上一個の行為であ つて刑法五四条一項前段の観念的競合の関係にある、というが、私はこの見解に賛 成することはできない。両罪の構成要件の評価の対象となる行為が一個・同一であ るとはとうてい考えられないからである。その詳細は、最高裁判所・昭和五 段の観念的競合の関係にある、というが、私はこの見解に賛 成することはできない。両罪の構成要件の評価の対象となる行為が一個・同一であ るとはとうてい考えられないからである。その詳細は、最高裁判所・昭和五七年( あ)第一一五三号・同五八年九月二九日判決中に私の反対意見として述べたとおり である。両罪は併合罪と解すべく、第一審判決及びこれを肯認した原判決にこの点 についての法令違反はない。 本件上告は棄却されるべきである。 昭和五八年一二月二一日 最高裁判所第一小法廷 裁判長裁判官 谷 口 正 孝 裁判官 藤 崎 萬 里 裁判官 中 村 治 朗 - 3 - 裁判官 和 田 誠 一 裁判官 角 田 禮 次 郎 - 4 -
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