平成18(行ヒ)168 損害賠償代位請求事件

裁判年月日・裁判所
平成20年3月17日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄差戻 仙台高等裁判所 平成17(行コ)19
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判決文本文4,977 文字)

- 1 -主文原判決を破棄する。 本件を仙台高等裁判所に差し戻す。 理由 上告代理人十河弘,同松澤陽明の上告受理申立て理由について 本件は,宮城県の住民を構成員とし,同県の区域内に事務所を有する権利能力のない社団である上告人が,平成6年度及び同7年度における宮城県警察本部総務室総務課(以下「総務課」という。)の事務連絡又は業務視察を目的とする県外出張に係る旅費の支出について,これらの出張は架空のもの又は業務上必要のないものであり,同県は上記旅費相当額の損害を被ったとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの)242条の2第1項4号に基づき,上記旅費を受領した職員等に対し,同県に代位して損害賠償を求める事案である。 原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。 (1)宮城県は,平成6年度及び同7年度において,総務課の事務連絡又は業務視察を目的とする県外出張に係る旅費として,第1審判決添付別紙1,2記載のとおりの支出をした。これらの出張のうち,同別紙1の番号25ないし28,33及び34並びに同別紙2の番号1,2,5,6,26,27,34,35,55及び56記載の出張(以下「本件各出張」という。)は,捜査関係用務による出張とされているものである。 (2)宮城県は,平成8年6月12日,議会及び警察を除く同県の全部局で内部調査をした結果として,平成6年度及び同7年度において総額約5億8100万円相当の架空の出張による旅費の支出があった旨を公表した。上告人は,かねてから- 2 -宮城県警察(以下「宮城県警」という。)以外の警察につき架空の出張による裏金作りといった不正経理の疑惑がある旨の報道等があったこともあり,同県の他の部局で行われていた架空の出張による旅費の支出が宮城県警にないはずはないと考え,同月24日 外の警察につき架空の出張による裏金作りといった不正経理の疑惑がある旨の報道等があったこともあり,同県の他の部局で行われていた架空の出張による旅費の支出が宮城県警にないはずはないと考え,同月24日,同県の情報公開条例に基づき,宮城県知事に対し,平成6年度及び同7年度における総務課の職員による出張に関する一切の資料等の開示を求める請求をし,同請求につき同知事がした不受理決定の取消訴訟等を経て,同12年5月31日,上記出張に係る支出負担行為兼支出命令決議書,旅行命令(依頼)票,復命書等の開示(以下「第1次開示」という。)を受けた。 第1次開示において,捜査関係用務以外の用務による出張に関しては,旅行期間,目的地,用務等に関する情報が記録された部分を含めて主要な部分が開示されたが,本件各出張に関しては,支出負担行為兼支出命令決議書につき支出負担行為日,支出命令日,支払日,旅費額等が,旅行命令(依頼)票につき旅行命令日,旅行者氏名,旅行期間,旅行内容,目的地,旅費の支給額及び受領月日等が,復命書につき作成日付,出張者の職及び氏名,用務,用務先,旅行期間等が,それぞれ墨塗りされて開示されなかった。ただし,第1次開示において開示された文書から,本件各出張に係る旅費が一部を除き一般警察活動費から支出された事実は知ることができた。なお,これらの支出がされた当時,宮城県警の捜査部門における捜査関係用務による出張に係る旅費は,刑事警察費から支出されるのが通常であったが,一般警察活動費にも,鉄道警察隊,交番等の捜査活動に関する経費が含まれていた。 (3)上告人の構成員らは,第1次開示において開示された文書から総務課の職員による県外出張の特徴を分析し,平成6年度及び同7年度とも1月から3月にか- 3 -けての出張が多く,特定都市への2年続いての同一時期の出 成員らは,第1次開示において開示された文書から総務課の職員による県外出張の特徴を分析し,平成6年度及び同7年度とも1月から3月にか- 3 -けての出張が多く,特定都市への2年続いての同一時期の出張,同一年度における同一都市への複数回の出張,雪祭りの時期における札幌市への3名の出張,日帰りが可能な福島市への泊付きの出張,観光地である京都市及び神戸市への出張等があったことから,総務課の職員による出張の存在及び相当性につき疑いを深め,さらに,本件各出張に係る文書のほとんどが墨塗りされていたことから,本件各出張につき高度の関心を持ち,これらの出張が架空の出張等ではないかとの相当の疑惑を抱くに至ったが,すべての出張の存在及び相当性につき疑いが強いとまでいうことはできないと判断して,平成12年7月19日,上記のような特徴がそろっていると認められるもののみを対象として宮城県監査委員に対し監査請求をし,本件各出張を含むその余の出張については監査請求を見送った。 (4)上告人は,平成12年10月31日までには,本件各出張の用務が捜査関係用務とされていることを知り,同13年10月24日までには,本件各出張を含む平成6年度及び同7年度における総務課の31件の出張の出張者のうち上席の者1名は被上告人Yであることを知った。また,上告人は,総務課の職員による出 張の状況について,第1次開示に係る情報公開請求とは別に,宮城県知事に対し情報公開請求をし,同年4月19日までに開示を受けた文書から,平成9年度以降において1月ないし3月における出張が同6年度及び同7年度の同時期と比較して激減していることを知った。一方,第1次開示に関して,上告人は,その部分開示決定を不服として異議申立てを行い,同知事から上記決定を一部変更する旨の決定を受けて,同14年5月24日,本件 期と比較して激減していることを知った。一方,第1次開示に関して,上告人は,その部分開示決定を不服として異議申立てを行い,同知事から上記決定を一部変更する旨の決定を受けて,同14年5月24日,本件各出張に係る支出負担行為兼旅費支出命令決議書,旅行命令(依頼)票及び復命書について,警部補及び警部補相当職以下の職にある者の氏名等を除くすべての事項の開示(以下「第2次開示」という。)を受け- 4 -た。 そして,上告人は,同年6月24日,宮城県監査委員に対し,本件各出張を含む平成6年度及び同7年度における総務課の事務連絡又は業務視察を目的とする県外出張に係る旅費の支出について監査請求(以下「本件監査請求」という。)をした。 原審は,上記事実関係等の下において,要旨次のとおり説示し,本件各出張に係る旅費の支出につき監査請求期間経過後に本件監査請求がされたことについては,地方自治法242条2項ただし書にいう正当な理由はないと判断し,本件各出張に係る上告人の被上告人らに対する訴えは適法な監査請求の前置を欠く不適法な訴えであるとして,第1審判決のうち上記訴えに係る部分を取り消し,上記訴えを却下した。 (1)住民監査請求においては,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて監査請求をするに足りる程度に財務会計上の行為の存在又は内容を知ることができなかった場合には,地方自治法242条2項ただし書にいう正当な理由の有無は,特段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものであるが,当該普通地方公共団体の一般住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみ 為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものであるが,当該普通地方公共団体の一般住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて上記の程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなくても,監査請求をした者が上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される場合には,上記の正当な理由の有無は,そのように解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきもので- 5 -ある。 (2)上告人は,かねてから警察の不正経理疑惑が報道等で取り上げられていた中で,宮城県の知事部局等において架空の出張による旅費の支出があったことが公表されたことを受けて,宮城県警においても同様の不正経理があるのではないかと疑っていたところ,本件各出張について,遅くとも平成13年10月24日までには,その用務が総務課では本来まれなはずの捜査関係用務とされていること,これにつき開示された文書のほとんどが墨塗りされていること,その旅費が捜査部門の出張においては通常見られない一般警察活動費から支出されていること,その復命書が他の23件の出張とともに上席出張者である被上告人Yにより作成されてい ること,平成9年度以降の1月ないし3月における総務課の職員による出張が同6年度及び同7年度の同時期と比較して激減していること等を知っていたのであるから,遅くとも同日には,本件各出張に係る旅費の支出について監査請求をするに足りる程度にその存在及び内容を知っていたということができ,それから8か月後の同14年6月24日に本件監査請求がされたことについては,地方自治法242条2項ただし書にいう正当な理由はない。 しかしながら,原審の上記判断のうち(2)は,是認することができない。その理由 の同14年6月24日に本件監査請求がされたことについては,地方自治法242条2項ただし書にいう正当な理由はない。 しかしながら,原審の上記判断のうち(2)は,是認することができない。その理由は,次のとおりである。 前記事実関係等によれば,本件各出張に関しては,第1次開示において,支出負担行為兼支出命令決議書につき支出負担行為日,支出命令日,支払日,旅費額等が,旅行命令(依頼)票につき旅行命令日,旅行者氏名,旅行期間,旅行内容,目的地,旅費の支給額及び受領月日等が,復命書につき作成日付,出張者の職及び氏名,用務,用務先,旅行期間等が,それぞれ墨塗りされて開示されず,平成14年- 6 -5月24日の第2次開示において初めてこれらの事項が開示されたというのである。そうすると,第2次開示によって本件各出張ないし本件各出張に係る旅費の支出について具体的な内容が明らかにされる以前の段階では,上告人において,本件各出張が架空のものであるかどうか,また,業務上必要のないものであるかどうかを判断することは困難であったものというべきである。この段階において原審が掲げる諸事実を根拠として本件各出張が架空のものであるなどと主張したとしても,その主張は単なる憶測の域を出ないものとならざるを得ない。 そうであるとすれば,第2次開示によって本件各出張ないし本件各出張に係る旅費の支出について具体的な内容が明らかにされる以前の段階では,上告人において本件各出張に係る旅費の支出に違法又は不当な点があると考えて監査請求をするに足りる程度にその存在及び内容を知ることができたと解することはできず,第2次開示において本件各出張の旅行期間,目的地,用務等に関する情報が記録された部分が開示されてから1か月後に,本件各出張に係る旅費の支出につき本件監査請求がされたことについては することはできず,第2次開示において本件各出張の旅行期間,目的地,用務等に関する情報が記録された部分が開示されてから1か月後に,本件各出張に係る旅費の支出につき本件監査請求がされたことについては,地方自治法242条2項ただし書にいう正当な理由があるというべきである。 以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,本件については,本案の審理をさせるため,原審に差し戻すのが相当である。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官横尾和子裁判官甲斐中辰夫裁判官泉徳治裁判官才口千晴裁判官涌井紀夫)

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