【DRY-RUN】主 文 原判決中、上告人の敗訴部分を破棄する。 前項の部分につき、被上告人の控訴を棄却する。 控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。 理
主 文 原判決中、上告人の敗訴部分を破棄する。 前項の部分につき、被上告人の控訴を棄却する。 控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。 理 由 上告代理人古高健司、同岡本日出子、同関通孝の上告理由第三の一、二について 一 原審の適法に確定した事実関係は、次のとおりである。 上告人(当時一六歳)は、昭和五五年六月一八日午前六時四五分ころ、在学中の 高等学校に登校するため、降雨の中、自転車に乗って、高架道路である国道二五〇 号線(明姫幹線)を走行し、兵庫県加古川市a町bc―d番地付近に至って、右国 道と並行する一般道路である高架下の側道(市道)に下りるため、同所の歩道橋か ら歩行者及び自転車の通行可能な傾斜面を自転車に乗って西方(姫路方面)から東 方(明石方面)に下降しようとした。その際、上告人は、被上告人(当時四九歳) が高架下の平坦な右側道を、左手に二本の引き綱に繋いだ犬二匹を連れ、右手に洋 傘をさして上告人と同一方向に向けて歩行中であるのを認めた。そこで、上告人は、 右斜面を自転車に乗って下り、被上告人との接触を避けてその右側を追い抜いたが、 被上告人に接触しなかったものの、被上告人の極めて至近距離で、かつ、下り勾配 であるのに減速しないで惰力を利用してそのまま走り過ぎたため、被上告人の連れ ていた犬が驚いて不規則な動作をし、右手に洋傘をさしていた被上告人は平衡を失 い、同所路上に転倒した(以下「本件事故」という。)。この結果、被上告人は、 左膝内側側副靱帯不全断裂、右肘関節打撲傷の傷害を負い、入通院による治療を受 けたが、後遺症として、左膝内側側副靱帯損傷、左膝棚障害、左膝蓋軟骨軟化症の 症状が残った。 二 原審は、右の事実関係のもとにおいて、上告人が自転車に乗って被上告人の右 - 1 - 側を追い抜こ 療を受 けたが、後遺症として、左膝内側側副靱帯損傷、左膝棚障害、左膝蓋軟骨軟化症の 症状が残った。 二 原審は、右の事実関係のもとにおいて、上告人が自転車に乗って被上告人の右 - 1 - 側を追い抜こうとする場合、自車の進路は急な下り勾配であり、また、前方を被上 告人が犬を連れて歩行しているのであるから、減速徐行して、その側方を充分距離 を保って通過するなど、危険の発生を未然に防止する注意義務があったのに、上告 人は、漫然、被上告人の右側の極めて至近距離を下り勾配の惰力を利用して減速し ないで走り過ぎた過失があるから、本件事故によって被上告人が被った損害を賠償 する責任があるとし、被上告人の請求を棄却した第一審判決を取り消し、被上告人 が本件事故によって被った損害は合計六五二万三六四四円(内訳、治療費四万五六 〇〇円、入院雑費六四〇〇円、通院交通費一八万三五二〇円、後遺症による逸失利 益三二八万八一二四円、慰謝料三〇〇万円)であるが、本件事故は、被上告人が降 雨の中を右手に洋傘をさし、左手に犬二匹を連れて不安定な体勢で歩行していたこ とにも起因するから、双方の過失割合を被上告人八割、上告人二割とするのが相当 であるとして、被上告人の本訴請求中、一三〇万四七二八円及びこれに対する昭和 五八年一二月六日から支払済まで年五分の割合による金員の支払を求める限度でこ れを認容し、その余の請求を棄却した。 三 しかしながら、原審の判断は是認することができない。その理由は、次のとお りである。 すなわち、原審の確定した右事実関係のもとで案ずるに、上告人は、被上告人が 公道上を、降雨の中、右手に洋傘をさし、左手に二本の引き綱に繋いだ犬二匹を連 れて上告人と同一方向に歩行しているのを認め、被上告人と自転車とが接触しない ようにその後方から走行して被上告人の右側を追い抜いた際、被上告人の連れ 手に洋傘をさし、左手に二本の引き綱に繋いだ犬二匹を連 れて上告人と同一方向に歩行しているのを認め、被上告人と自転車とが接触しない ようにその後方から走行して被上告人の右側を追い抜いた際、被上告人の連れてい た犬が驚いて不規則な動作をしたため、被上告人が平衡を失い路上に転倒したとい うものであるが、右転倒は、その状況に照らし、むしろ降雨の中、被上告人が右手 に洋傘をさし、左手に犬二匹を連れて人車の通行する公道上を不安定な体勢で歩行 していたことに起因するとみるべきであり、一方、犬の性癖等は様々であって、こ - 2 - とに自転車で接近したときの犬の反応動静を予測することは一般的に困難であり、 特段の事情がない限り、犬が驚いて不規則な動作をすることによって歩行者が転倒 するということを予見することも困難であるところ、本件においては、右特段の事 情を認めることができないのであるから、上告人には本件事故につき不法行為法上 責められるべき注意義務違反はないものというべきである。してみると、被上告人 の本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がなく、これを棄却す べきものである。しかるに、これと異なる見解に立って本訴請求を一部認容した原 判決は、民法七〇九条の解釈適用を誤った違法があり、その違法は判決の結論に影 響を及ぼすことが明らかであるから、この点の違法をいう論旨は理由があり、その 余の論旨について判断するまでもなく、原判決中、上告人の敗訴部分は破棄を免れ ない。そして、以上判示したところと結論を同じくする第一審判決は正当であるか ら、右部分に対する控訴は理由がなくこれを棄却すべきものである。 よって、民訴法四〇八条、三九六条、三八四条、九六条、八九条に従い、裁判官全 員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第二小法廷 裁判長裁判官 却すべきものである。 よって、民訴法四〇八条、三九六条、三八四条、九六条、八九条に従い、裁判官全 員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第二小法廷 裁判長裁判官 島 谷 六 郎 裁判官 牧 圭 次 裁判官 藤 島 昭 裁判官 香 川 保 一 裁判官 奧 野 久 之 - 3 -
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